説明

包装箱

【課題】周方向に屈曲部3〜6を介して連接された四面の側面部7〜10を備えた四角柱状をなし、各側面部7〜10の中心軸方向の中間部に、各側面部7〜10を周方向に連続して切り離し可能なミシン目25が形成された捻り開封式の包装箱について、大きく潰れることなく容易かつ確実に開封することができるようにする。
【解決手段】各屈曲部3〜6の長さ方向の少なくとも中間領域が、中心軸方向に対してそれぞれ周方向に同じ向きの傾斜角θを有する捻れ四角柱状の包装箱を用いて捻り開封式の包装箱を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単に二つに分離して開封することができる包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二つに分離して開封することができる包装箱として、捻り開封式の包装箱が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、周方向に屈曲部を介して連接された四面の側面部を備えた四角柱状をなし、各側面部の中心軸方向の中間部に、前記各側面部を周方向に連続して切り離し可能なミシン目が形成されたものとなっている。この捻り開封式の包装箱は、両端部を持って捻ることで、ミシン目を介して二つに分離して開封することができる。
【0003】
一方、デザイン的に変化を付けた包装箱として、捻れ多角柱状の包装箱が知られている(例えば、特許文献2参照)。通常の多角柱の場合、周側部は、中心軸方向に伸びた屈曲部を介して複数面の側面部が周方向に連接されたものとなるが、この特許文献2の捻れ多角柱の場合、各屈曲部の長さ方向少なくとも中間領域が、中心軸方向に対してそれぞれ周方向に同じ向きの傾斜角を有するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−91038号公報
【特許文献2】アメリカ特許第3912156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の捻り開封式の包装箱は、捻って開封しようとした時に、ミシン目に沿って切断される前に箱が大きく潰れて変形してしまうことで、開封できなくなる問題がある。特に子供の場合、強く握ってしまうことが多く、開封できなくなりやすい。また、内容物が硬い物である場合には、箱の潰れが内容物で支えられて開封することができるが、内容物が柔らかい物や割れやすい物である場合、無理に開封しようとすると、内容物が潰れたり割れたりしやすいという問題もある。
【0006】
一方、捻れ多角柱の包装箱は、変化のある外観の包装体とすることを目的としたもので、前記特許文献2は、捻り開封式の包装箱として用いることや、捻り開封式の包装箱として用いることによる特別な利益については何ら開示していない。
【0007】
本発明は、上記従来の捻り開封式の包装箱の問題点に鑑みてなされたもので、大きく潰れることなく容易かつ確実に開封することができる捻り開封式の包装箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的のために、周方向に屈曲部を介して連接された複数の側面部を備え、前記各屈曲部の長さ方向の少なくとも中間領域が、中心軸方向に対してそれぞれ周方向に同じ向きの傾斜角を有する捻れ多角柱状をなし、しかも前記各側面部の中心軸方向の中間部に、前記各側面部を周方向に連続して切り離し可能なミシン目が形成されていることを特徴とする包装箱を提供するものである。
【0009】
また、上記本発明は、前記屈曲部に前記ミシン目の切り込み部が形成されており、該屈曲部に形成された切り込み部が、両隣に相隣接する切り込み部の前記屈曲部側の端部の向きに沿った延長線上から中心軸方向にずれていることを第一の好ましい態様として有する。
【0010】
また、本発明は、少なくとも前記側面部が紙で構成されており、該側面部を構成する紙の紙目が周方向を向いていることを第二の好ましい態様として有する。
【0011】
更に、本発明は、前記ミシン目が波形に形成されていることを第三の好ましい態様として有する。
【0012】
なお、本発明における中心軸方向とは、捻れ多角柱における端面部の対向方向をいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る包装箱は、各屈曲部の長さ方向の少なくとも中間領域が、中心軸方向に対してそれぞれ周方向に同じ向きの傾斜角を有する捻れ多角柱状であることから、両端部を持って捻った時に、捻り力は各屈曲部に対して直角方向ではなく、傾きを持って作用する。屈曲部は、捻り力が直角に作用した場合に比して、斜めに作用した場合の方が押し込まれにくいことから、本発明の包装箱は、通常の多角柱(中心軸回りの捻れのない多角柱)の箱を用いた捻り開封式の包装箱に比して、開封時に潰れにくい。従って、開封できなくなるような大きな潰れによる変形を防止でき、子供でも容易に開封することができると共に、内容物が柔らかい物や割れやすい物であっても、開封時にこれらの内容物を痛めてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一の例に係る包装箱の斜視図で、(a)は端面部を閉じた状態の正面斜視図、(b)は端面部を閉じた状態の背面斜視図、(c)は端面部を半開きにした状態の正面斜視図、(d)は端面部を半開きにした状態の背面斜視図である。
【図2】図1に示される包装箱の外面側から見た展開図である。
【図3】屈曲部付近のミシン目の形成状態の例を示す図である。
【図4】本発明の第二の例に係る包装箱の正面斜視図である。
【図5】図3に示される包装箱の外面側から見た展開図である。
【図6】本発明の第三の例に係る包装箱の外面側から見た展開図である。
【図7】実施例及び比較例で作成した包装箱の主要な寸法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明を説明する。なお、以下に参照する図面において、同じ符号は同様の構成要素を示す。
【0016】
まず、図1及び図2に基づいて本発明の第一の例に係る包装箱について説明する。
【0017】
本例の包装箱は、図1に示されるように、相対向して平行に位置する二面の正方形の端面部1,2と、両端面部1,2間に位置し、周方向に屈曲部3〜6を介して連接された四面の側面部7〜10とを備えている。端面部1は、側面部7の一端(図面上の上端)にヒンジ部11を介して連接されており、端面部2は、側面部8の他端(図面上の下端)にヒンジ部12を介して連接されている。各側面部7〜10は、両端面部1,2の対向方向である中心軸方向に対してそれぞれ周方向に同じ向きの傾斜角θ〔図1(a)参照〕を有する屈曲部3〜6を介して斜めに連接されており、本包装箱は捻れ四角柱状をなしている。
【0018】
端面部1が連接された側面部7に隣接する側面部8と9の一端には、それぞれヒンジ部13と14を介してフラップ部17と18が連接されている。端面部2が連接された側面部8に隣接する側面部10の分割片10aと側面部7の他端には、それぞれヒンジ部15と16を介してフラップ部19と20(図2参照)が連接されている。各フラップ部17〜20は、端部の開口部側に突き出しており、端面部1,2は、それぞれ先端にヒンジ部21,22を介して連接された差し込み片23,24を端部の開口部内に差し込んで、当該開口部を覆っている。
【0019】
各側面部7〜10の中心軸方向の中間部には、両端部を持って捻った時に各側面部7〜10を周方向に連続して切り離し可能なミシン目25が形成されている。
【0020】
図2に示されるように、展開箱における各側面部7〜10は、折罫線3’〜6’で区画されている。端面部1が連接された側面部7は展開箱において中央に位置しており、この側面部7とその左右に隣接する側面部8,9は平行四辺形をなしている。もう一つの側面部10は分割片10a,10bに分かれており、糊代部26を介して分割片10a,10b同士を接着した時の全体形状が側面部7〜9と同じ平行四辺形となるように形成されている。各側面部7〜10間に設けられている折罫線3’〜6’は、それぞれを山折りすることで図1の屈曲部3〜6を形成するものとなっている。
【0021】
各折罫線3’〜6’は、箱として組み立てた時の中心軸方向に対してそれぞれ同じ向きの傾斜角θを有している。図1の各屈曲部3〜6の傾斜角θとこの各折罫線3’〜6’の傾斜角θは同じで、5度〜20度であることが好ましい。傾斜角θが小さすぎると開封時の箱の潰れを防止しにくく、大きすぎると箱の組み立てが行いにくくなる。
【0022】
側面部7の一端には、折罫線11’を介して一方の端面部1が連接されている。この側面部7に隣接する側面部8,9の一端には、端面部1の左右に位置するフラップ部17,18が折罫線13’,14’を介して連接されている。側面部8の他端には、折罫線12’を介して他方の端面部2が連接されている。また、この側面部8に隣接する側面部10の一方の分割片10aと側面部7の他端には、端面部2の左右に位置するフラップ部19,20が折罫線15’,16’を介して連接されている。これらの折罫線11’〜16’は、いずれも山折りすることで、図1のヒンジ部11〜16を形成し、端面部1,及びフラップ部17〜20を、それぞれが連なっている側面部7〜10に対して傾動可能とするものである。
【0023】
端面部1,2の先端には、それぞれ折罫線21’,22’を介して差し込み片23,24が連接されている。この折罫線21’,22’は山折りすることで図1のヒンジ部211,22を形成し、差し込み片23,24を、それぞれが連なっている端面部1,2に対して傾動可能とするものである。
【0024】
ミシン目25は、側面部7〜10の中心軸方向中間部に、糊代部26を含む側面部7〜10全体を横断して形成されている。ミシン目25の形成位置は、通常は側面部7〜10の中心軸方向中央部であるが、一方の端面部1又は他方の端面部2側へ片寄った位置に設けることもできる。
【0025】
本発明におけるミシン目25は、切り込みを断続的に形成したもので、例えば2〜7mm程度の長さの切り込みを0.5〜2mm程度の間隔を開けて断続的に形成したものを用いることができる。また、このミシン目25は、総ての切り込みが一直線上に並んだ状態のものとして設けることもできるが、図3に示すように、屈曲部3〜6(折罫線3’〜6’)上に形成される切り込み部(角切り込み部)27を、両隣に相隣接する切り込み部(隣接切り込み部)28,28の屈曲部3〜6側の端部の向きに沿った延長線上から中心軸方向にずらせておくことが好ましい。図3(a)は隣接切り込み部28,28が直線状で、角切り込み部27の位置を隣接切り込み部28,28の位置とは中心軸方向にずらせている。(b)は、隣接切り込み部28,28の屈曲部3〜6側の端部を中心軸方向に屈曲させることで、角切り込み部27の位置を、隣接切り込み部28,28の屈曲部3〜6側の端部の向きに沿った延長線上から中心軸方向にずらせている。(c)は、隣接切り込み部28,28の角切り込み部27側の端部をY字形にすることにより、角切り込み部27の位置を、隣接切り込み部28,28の屈曲部3〜6側の端部の向きに沿った延長線上から中心軸方向にずらせている。このようにしておくと、例えば箱の組み立て作業中や組み立て後に、ミシン目25が屈曲部3〜6の位置から不用意に裂けてしまうことを防止することができる。
【0026】
以上のような本包装箱の開封は、従来の捻り開封式の包装箱と同様に、両端部を持って捻ることで行うことができる。本発明の包装箱においては、捻り力が屈曲部3〜6に対して斜めに作用することから、屈曲部3〜6が内側に押し込まれにくく、箱を大きく潰すことなく容易に開封することができる。本包装箱は、通常、全体又は少なくとも側面部7〜10を紙で構成する。この場合、側面部7〜10を構成する紙の目を周方向に向けておくと、ミシン目25に沿った引き裂きを行いやすくなる。また、上記角切り込み部27と隣接切り込み部28,28間の位置のずれと組み合わせると、この角切り込み部27の位置ずれは中心軸方向であるので裂けにくく、不用意な裂け防止と、ミシン目25に沿った引き裂きのしやすさの両者を満たすことができる。
【0027】
図4及び図5で本発明の第二の例に係る包装箱について説明する。
【0028】
本例の包装箱も、基本的には既に説明した第一の例に係る包装箱と同様であるが、傾斜角θを有しているのは、屈曲部3〜6(折罫線3’〜6’)の中心軸方向中間部だけで、中心軸方向両端部は中心軸と平行方向に伸びている。このような屈曲部3〜6(折罫線3’〜6’)とし、両端部と中間部の比率を調整することで、デザイン的に変化を付けることができる。
【0029】
図6に示される本発明の第三の例に係る包装箱は、ミシン目25が波形をなしている点が第一の例に係る包装箱とは相違している。このようなミシン目25としておくと、ブランクの状態においてミシン目25部分で折れにくくすることができ、ミシン目25部分で折れることによる強度低下により、製造工程途中での裂けの発生を防止することができる。
【0030】
以上説明した例は総て四角柱であるが、本発明の包装箱は多角柱であれば、三角柱や五角柱以上の多角柱とすることもできる。また、一方の端面部1と他方の端面部2の大きさが異なる多角柱とすることもできる。
【実施例】
【0031】
実施例1〜4
坪量310g/m2の三菱製紙社製の「Nパールカード」を用い、捻れ四角柱状をなす捻り開封式の包装箱を作成し、その開封性について調べた。
【0032】
包装箱の形状は、端面が40mm四方の正方形となった長さ150mmの捻れ四角柱状で、主な寸法を図7に示す。図7に示す寸法の単位はmmである。また、図7に示すa,b,cの各寸法は、表1の通りとした。実施例1のa=c=0の場合とは、図1及び図2で説明した第一の例の場合である。
【0033】
【表1】

【0034】
ミシン目は、長さ4.5mmの直線状の切り込み部と、1mm幅の非切り込み部が交互に位置する破線状の直線とし、屈曲部上の切り込み部(角切り込み部)もずらさずに、側面部の中心軸方向中央に周方向に連続して形成した。また、側面部における紙の目は周方向に向けた。開封試験は、トルクメーターをセットし、開封に要するトルク強度を測定しながら手で捻りを加えて行うトルクメーター付開封を3回行い、トルクメーターを付けない人手による手での開封を1回行った。結果を表2に示す。なお、表2における評価結果の基準は以下の通りである。
「◎」:ほとんど潰れることなく開封できた場合
「○」:わずかな潰れで開封できた場合
「△」:潰れを生じたが開封できた場合
「×」:大きく潰れ、部分的な開封に止まった場合又は全く開封できなかった場合
【0035】
【表2】

【0036】
実施例5〜8
また、側面部における紙の目を中心軸方向に向けた以外は実施例1〜4と同様の包装箱を作成し、トルクメーター付開封と手での開封をそれぞれ1回ずつ行った。図7に示すa,b,cの各寸法を表3に、結果を表4に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
比較例1
屈曲部を中心軸方向にした、捻りのない四角柱とした以外は実施例1〜4と同様の包装箱を作成して開封を行った。その結果、トルクメーター付開封及び手での開封共に大きく潰れて完全には開封することができず、評価は「×」であった。
【0040】
実施例9、10
ミシン目を、長さ4.0mmの直線状の切り込み部と、1mm幅の非切り込み部が交互に位置する破線状で、角切り込み部を図3(a)に示されるように隣接切り込み部から中心軸方向に1mmずらせた以外は実施例1と同様の包装箱(実施例9)と実施例4と同様の包装箱(実施例10)とを作成し、それぞれトルクメーター付開封を3回、手での開封を1回行った。結果を表5に示す。
【0041】
【表5】

【0042】
実施例11
坪量が260g/m2の紙を用い、ミシン目を長さ6.0mmの直線状の切り込み部と、1.0mm幅の非切り込み部が交互に位置する破線状の直線としたた他は実施例1〜4と同様の包装箱を作成して開封試験を行ったところ、いずれも評価「○」以上の開封性が得られた。
【符号の説明】
【0043】
1,2 端面部
3〜6 屈曲部
3’〜6’ 折罫線
7〜10 側面部
10a,10b 分割片
11〜16 ヒンジ部
11’〜16’ 折罫線
17〜20 フラップ部
21,22 ヒンジ部
21’,22’ 折罫線
23,24 差し込み片
25 ミシン目
26 糊代部
27 切り込み部(角切り込み部)
28 切り込み部(隣接切り込み部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に屈曲部を介して連接された複数の側面部を備え、前記各屈曲部の長さ方向の少なくとも中間領域が、中心軸方向に対してそれぞれ周方向に同じ向きの傾斜角を有する捻れ多角柱状をなし、しかも前記各側面部の中心軸方向の中間部に、前記各側面部を周方向に連続して切り離し可能なミシン目が形成されていることを特徴とする包装箱。
【請求項2】
前記屈曲部に前記ミシン目の切り込み部が形成されており、該屈曲部に形成された切り込み部が、両隣に相隣接する切り込み部の前記屈曲部側の端部の向きに沿った延長線上から中心軸方向にずれていることを特徴とする請求項1に記載の包装箱。
【請求項3】
少なくとも前記側面部が紙で構成されており、該側面部を構成する紙の紙目が周方向を向いていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装箱。
【請求項4】
前記ミシン目が波形に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の包装箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−23248(P2013−23248A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159598(P2011−159598)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】