説明

包装袋用積層フィルム及び包装袋

【課題】バリア層を有する包装袋用積層フィルムから形成された包装袋に、バリア性を確保しながら、該包装袋を容易に横方向から開封することのできる包装袋を提供すること。
【解決手段】シーラントフィルム01と、バリア層03と、基材層フィルム02を含む積層フィルムで構成される包装袋とし、シーラントフィルム01は、低融点ポリオレフィン層を含み、バリア層03は、本質的に不飽和カルボン酸化合物金属塩重合体からなり、基材層フィルム02は、二軸延伸フィルムを含み、前記二軸延伸フィルムは、フィルムの長さ方向よりも、該長さ方向に対して直角方向に高い配向性を有し、かつ、包装袋の両横側面のうち、少なくとも一方の横側面を含むいずれかの箇所において、包装袋を構成する層のうち基材層フィルム02のみに、傷痕加工23を施すものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封性の優れたバリア性を有する包装袋用積層フィルム及び包装袋、とくに、スナック菓子等の食品を包装するのに適した、包装袋用積層フィルム及びその積層フィルムから形成された包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
スナック菓子等の食品は、酸素,水蒸気等のガスに対する遮断性を有する、すなわち、ガスバリア性(以下、単に「バリア性」ということがある。)を有する包装袋用積層フィルム(以下、単に「積層フィルム」ということがある。)から形成された包装袋に充填され、ヒートシールにより密封されて流通している。包装袋に封入される食品の品質を維持するため、包装袋に用いられる積層フィルムは、強靭であり、また、ヒートシール部分の接着力も高いため、消費者にとって袋の開封は容易ではなかった。そこで、包装袋の開封性を高めるために、積層フィルムのヒートシール性樹脂層をイージーピール性樹脂組成物から形成するとか、特許文献1および2に示されているような、袋を形成する積層フィルムの所定の箇所に傷痕加工を施した例がある。
【特許文献1】特公平6−51487号公報
【特許文献2】特開2000−7016号公報
【0003】
図4には、特許文献1に開示されている傷痕加工帯が設けられた包装袋の例を示した。この図の包装袋では、縦シール部(A1)と横シール部(A2)のなかで、縦シール部(A1)の縦方向全長にわたって傷痕加工(A3)が施されている。縦シール部分のみに傷痕加工が施されているため、食品を包装している部分の包装フィルムには傷痕加工が及んでいないので、傷痕加工が包装袋の包装性能に実質的に影響されることなく、開封性が向上していると言える。
しかしながら、包装袋の縦方向に開封性を与えたのでは、封入されている食品の一部を取り出し、残りを袋の中に保存するには不便であるという問題があった。
【0004】
また、特許文献2には、横一軸延伸フィルムとヒートシール性樹脂層とをラミネートした包装袋用積層フィルムにおいて、少なくとも横一軸延伸フィルムに縦方向に傷痕加工帯を形成し、しかるのちヒートシール性樹脂層をラミネートした積層フィルムを用いて形成された包装袋が開示されている。この発明では、包装袋の縦方向に沿って、傷痕加工帯が形成されているが、包装フィルムとして横一軸延伸フィルムが用いられているので、横方向への開封性が付与されている。
しかしながら、この文献に開示されている包装袋用積層フィルムには、バリア層が形成されていないので、酸素遮断性に乏しいものであった。
【0005】
通常、積層フィルムに、バリア性を付与するために、金属アルミニウム層、酸化ケイ素層、酸化アルミニウム層等のバリア層が蒸着により形成されているが、蒸着を行う際には、蒸着を受けるフィルムに耐熱性が要求される。このため、通常、積層フィルムを構成するフィルムのうち、延伸フィルムに蒸着を行ってバリア層を形成している。ところが、開封性を与えるためには、少なくとも、包装袋の外表面を形成する該延伸フィルムに傷痕加工を施すことが必要である。従って、延伸フィルムに蒸着によるバリア層が形成されている場合には、傷痕加工が該バリア層にも及んで、包装袋のバリア性が失われるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、バリア層を有する包装袋用積層フィルムから形成された包装袋に、バリア性を確保しながら、該包装袋を容易に横方向から開封することのできる包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する手段として、本発明では、包装袋の製造に用いられる包装袋用積層フィルムが、シーラントフィルムと、バリア層と、基材層フィルムを含む包装袋用積層フィルムであり、前記シーラントフィルムが、低融点ポリオレフィン層を含み、前記バリア層が、本質的に不飽和カルボン酸化合物金属塩重合体からなり、前記基材層フィルムが、二軸延伸フィルムを含み、前記二軸延伸フィルムが、フィルムの長さ方向よりも、該長さ方向に対して直角方向に高い配向性を有し、かつ、包装袋を横方向から容易に開封できるように、所定の箇所に傷痕加工が施されていることを最も主要な特徴とする。
【0008】
本発明の様態としては、まず第1の様態として、フィルム長さ方向が、形成される包装袋の長さ単位でそれぞれ切断されて、1以上の包装袋を形成するための連続した包装袋用積層フィルムの様態である。具体的には、
前記包装袋用積層フィルムが、シーラントフィルムと、バリア層と、基材層フィルムを含み、
前記シーラントフィルムが、低融点ポリオレフィン層を含み、
前記バリア層が、本質的に不飽和カルボン酸化合物金属塩重合体からなり、
前記基材層フィルムが、二軸延伸フィルムを含み、
前記二軸延伸フィルムが、フィルムの長さ方向よりも、該長さ方向に対して直角方向に高い配向性を有し、かつ、切断される前記包装袋の単位ごとに、それぞれ少なくとも一箇所に傷痕加工が施されていることを特徴とする、包装袋用積層フィルムである。
【0009】
第1の様態において、前記傷痕加工の施される箇所が、前記積層フィルムから形成される包装袋において、両横側面に形成される部分うち、少なくとも一方の横側面を含む領域に存在するものとすることができる。
【0010】
また、本発明の第2の様態は、シーラントフィルムと、バリア層と、基材層フィルムを含み、基材層フィルムとを含む連続積層フィルムを包装機に供給して筒状に成形して、しかる後、縦シールおよび横シールを行って形成された包装袋の様態である。具体的には、
前記シーラントフィルムが、低融点ポリオレフィン層を含み、
前記バリア層が、本質的に、前記シーラントフィルムの片面上に形成された不飽和カルボン酸化合物金属塩重合体からなり、
前記基材層フィルムが、フィルムの長さ方向よりも、長さ方向に対して直角方向に高い配向性を有する二軸延伸フィルムを含み、
包装袋の両横側面のうち、少なくとも一方の横側面を含むいずれかの箇所において、包装袋を構成する層のうち前記基材層フィルムのみに、傷痕加工が施されていることを特徴とする包装袋である。
【0011】
前記基材層フィルムの片面には、印刷層が形成されていることが好ましい。
【0012】
前記シーラントフィルムの片面には、前記バリア層が形成されていることが好ましい。
【0013】
基材層フィルムの片面には、印刷層が形成され、シーラントフィルムの片面には、前記バリア層が形成されている包装袋用積層フィルムの場合、前記シーラントフィルムの該バリア層側の面と、前記基材層フィルムの前記印刷層側の面とが、接着剤または接着性樹脂を介して積層されていることが好ましい。
【0014】
前記基材層フィルムは、前記印刷層が形成された後に前記傷痕加工が施された、二軸延伸フィルムからなることが好ましい。
【0015】
前記シーラントフィルムは、低融点ポリオレフィン層と、延伸ポリオレフィン層とからなり、該延伸ポリオレフィン層側の面に、前記バリア層が形成されていることが好ましい。
【0016】
前記バリア層は、前記シーラントフィルム表面に、不飽和カルボン酸化合物金属塩溶液を塗布した後、該不飽和カルボン酸金属塩化合物を重合して形成された重合体層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、基材層フィルムとして、フィルムの長さ方向よりも、長さ方向に対して直角方向に対して高い分子配向を有する、すなわち、フィルムの縦方向の延伸倍率よりも横方向の延伸倍率を高くした二軸延伸フィルムを用いて、積層フィルムが形成され、これにさらに包装袋の横側面に当たる部分に傷痕加工が施されるので、包装袋を横側面から横方向に容易に開封できる。したがって、該包装袋を開封した後にも、必要な量の内容物だけを取り出し、残りを袋内に保持できる。
【0018】
本発明のうち、シーラントフィルムに、本質的に不飽和カルボン酸化合物金属塩重合体からなるバリア層を形成し、該バリア層が形成された該シーラントフィルムと、傷痕加工を施した基材層フィルムとを積層した包装袋用積層フィルムの場合、バリア層を傷めることなく傷痕加工が施された包装袋用の積層フィルムを製造することができるので、バリア性を有しながら、開封性のよい包装袋を得ることができる。
【0019】
本発明のうち、印刷層を設けた積層フィルムの場合、該印刷層にアイマークを印刷することで、該アイマークを検出しながら、所定箇所に傷痕加工を施すことができるので、横側面の少なくとも一部に精度よく傷痕加工が施された包装袋を形成することができる。
【0020】
本発明のうち、フィルム上に不飽和カルボン酸金属塩化合物溶液を塗布し、紫外線等の電離性放射線照射により重合させて、バリア層を形成した積層フィルムの場合、耐熱性に乏しい低融点ポリオレフィンを含むシーラントフィルムの上でも、シーラント性を損なうことなく、バリア層を形成することができる。すなわち、基材層フィルム上にバリア層を形成する必要がないので、該基材層フィルムの所定箇所に傷痕加工を施しても、バリア性は維持され、かつ開封性のよい包装袋を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、図面に示した様態に限られるものではない。図1は、本発明の積層フィルム(F)の実施形態の一例を示す断面図である。
【0022】
(包装袋用積層フィルム)
一般的に、包装袋を製造するために用いられる積層フィルムを構成する基本要素は、シーラント層、基材層及び該シーラント層と該基材層との間に設けられたバリア層(金属または無機酸化物蒸着層、エチレンビニルアルコール樹脂層等)であり、基材層となる二軸延伸フィルム上にバリア層が形成されたフィルムと、シーラント層となる低融点の無延伸フィルムとが積層されて包装袋用の積層フィルムが製造されている。
【0023】
ただし、本発明の積層フィルム(F)においては、図1にその断面図を示したように、低融点のポリオレフィンからなるシーラントフィルム(01)の片面上に、紫外線照射等によりバリア層(03)(不飽和カルボン酸金属塩化合物重合体層)を形成し、一方、二軸延伸フィルムからなる基材層フィルム(02)の所定箇所に傷痕加工(23)を施し、バリア層(03)が形成されたシーラントフィルム(01)と所定箇所に傷痕加工(23)が施された基材層フィルム(02)とを積層して形成されることが好ましい。
【0024】
一般的に、包装袋用の積層フィルムには、印刷層が形成されるが、本発明の積層フィルム(F)においては、基材層フィルム(02)の片面に印刷層(04)が形成された後に、所定箇所に傷痕加工(23)が施されることが好ましい。そうすると、所定箇所に傷痕加工(23)を行うためのフィルム上の位置決めは、基材層フィルム(02)に印刷されたアイマークを検出しながら行うことができる。基材層フィルム(02)への傷痕加工は、印刷層が積層されている面の反対側表面から行なっても良いし、印刷層が積層されている側の面から行なっても良い。印刷層側の面から傷痕加工を行なう場合、図1の様態と若干相違し、傷痕加工は印刷層にも及ぶことになる。片面に印刷層(04)が形成された基材層フィルム(02)の印刷層側の面と、シーラントフィルム(01)のバリア層側の面とが、接着剤または接着性樹脂(05)を介して積層される。
【0025】
(基材層フィルム)
本発明において用いられる基材層フィルム(02)としては、通常の積層フィルムと同様に、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリアミド、二軸延伸ポリ乳酸等の二軸延伸フィルムが用いられる。なかでも、汎用的に用いられている二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)が本発明においても好ましく用いられる。二軸延伸ポリプロピレンフィルムとしては、ヒートシーラブル性を有するポリプロピレンフィルム(OPH)も用いられる。基材層を構成するフィルムの厚さは、通常10〜70μmの範囲である。
【0026】
本発明を構成する基材層フィルム(02)に用いられる二軸延伸フィルムとしては、フィルムの長さ方向(「MD方向」ともいう。)よりも、該長さ方向に対して直角方向(「TD方向」ともいう。)に高い配向性を有するもの、すなわち、高延伸されているものが用いられる。
例えば、ポリプロピレン樹脂を溶融してフィルムを形成後、縦方向に5倍、横方向に10倍として、逐次延伸を行い、しかる後熱処理が行われたフィルムが用いられる。このような二軸延伸フィルムの場合、横方向に引裂性を有することになる。かかる二軸延伸フィルムの縦方向をフィルム長さ方向として、本発明の積層フィルム(F)の基材層フィルム(02)とした場合、該積層フィルムは、フィルム長さ垂直方向に引裂性を持つことになり、これを用いて製造した包装袋は、袋の縦方向には引裂きにくく、横方向には引裂きやすい性質を持つことになる。
【0027】
本発明において、フィルムの縦方向よりも横方向に高い配向性を有するとは、具体的にはフィルムの縦方向よりも、横方向のフィルムの引張強度が、1.5倍以上高く、横方向の破断時のフィルム伸びが、1/2以下であることを意味する。かかるフィルムとしては、例えば、厚さ25〜30μmの二軸ポリプロピレンフィルム(引張強度 縦/横:50MPa/300MPa;伸び 縦/横:180%/40%)などが挙げられる。このようなフィルムは、市販されているので(例えば、二村化学(株)製 商品名FOF、東レフィルム加工(株)製 YT42等)、入手可能である。
【0028】
本発明において、少なくとも1の基材層フィルム(02)が、必要であるが、2以上の基材層フィルムを用いても良い。2の基材層フィルム(基材層フィルム1,基材層フィルム2)を用いる様態としては、例えば、
シーラントフィルム/基材層フィルム2(傷痕加工)/印刷層/基材層フィルム1(傷痕加工)
のような構成を挙げることができる。この場合、前記基材層フィルム1または基材層フィルム2のいずれかに1つについて、傷痕加工を施さないものとすることもできる。
【0029】
(シーラントフィルム)
本発明において用いられるシーラントフィルム(01)は、低融点ポリオレフィン層を有するフィルムを含んで構成される。低融点ポリオレフィン層面は、製袋過程において、積層フィルム同士が合わされたとき、相手方の低融点ポリオレフィン層面と熱融着して製造される包装袋の密封部を形成する。
【0030】
本発明において、シーラントフィルム(01)は、低融点ポリオレフィンフィルムからなる単層でもよく、低融点ポリオレフィン層と、低融点ポリオレフィン以外のポリマー層からなる複層でもよい。上記の単層の場合には、一方の面がヒートシールされる面として利用され、もう一方の面に、バリア層(03)が形成される。上記の複層の場合には、低融点ポリオレフィン層の側面がヒートシールされる面として利用され、他のポリマー層側の面がバリア層(03)を形成する面として利用される。
【0031】
本発明において、低融点ポリオレフィン層とは、180℃以下(好ましくは、160℃以下、さらに好ましくは、120℃以下)の低融点のポリオレフィンから構成される層である。かかるフィルムとしては、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンを含む)フィルム、プロピレンと炭素数2〜20(ただし3を除く)(エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、ヘプテン−1、4−メチルヘキセン等)のα−オレフィンとの共重合体からなる無延伸フィルムなどが挙げられる。また、本発明において用いられるシーラントフィルム(01)としては、前述のように、フィルムの片面が低融点ポリオレフィン層で形成されていればよく、他の片面は、低融点ポリオレフィン以外のポリマーで形成されていてもよい。例えば、ヒートシーラブル二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどは、フィルムの片面に低融点ポリオレフィン層を有しているので、本発明のシーラントフィルム(01)として用いることができる。この場合、ヒートシーラブル二軸延伸ポリプロピレンフィルムとしては、基材層フィルム(02)で用いられる、横引裂性を有する二軸延伸フィルムを用いるのが好ましい。本発明において、シーラントフィルム(01)の厚さとしては、20〜70μmの範囲内で選ばれるのが好ましい。
【0032】
(バリア層)
バリア層は酸素、包装袋に水蒸気等のガスに対するバリア性を与えるための層であるが、本発明では、バリア層(03)が、傷痕加工(23)される基材層フィルム(02)上ではなく、シーラントフィルム(01)上に形成されることが好ましい。この場合、シーラントフィルム(01)は熱に弱いので、アルミニウムなどの金属を直接シーラントフィルム(01)に蒸着する方法でバリア層(03)を形成させることは非常に困難である。そこで本発明では、シーラントフィルム(01)の片面に、本質的に不飽和カルボン酸化合物金属塩重合体からなる層を形成することで、バリア層(03)を構成させることが好ましい。重合体層は、シーラントフィルム(01)の片面上に、不飽和カルボン酸金属化合物溶液を塗布して、紫外線、可視光線、電子線等の電離性放射線を照射して、不飽和カルボン酸金属化合物を重合させて形成される。ここで「本質的に」とは、重合体においては、一般に未重合化合物や、反応分解物が混在していることが多く、このような不純物などが含有している場合を含むという趣旨である。
【0033】
本発明のバリア層(03)形成に用いられる不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物が挙げられるが、なかでも、(メタ)アクリル酸が好ましい。本発明において、バリア層(03)を構成する重合体は、上記単量体のみから構成されてもよいが、50重量%以下の不飽和カルボン酸エステルとの共重合により構成されていてもよい。すなわち、本発明にいう不飽和カルボン酸化合物金属塩重合体には、不飽和カルボン酸化合物金属塩の共重合体化合物を含む。共重合体形成のために用いられる不飽和カルボン酸エステルとしては、上記の不飽和カルボン酸化合物と多価アルコールとのエステルが好ましく、エチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール・ジ(メタ)アクリレート、PEG#200・ジ(メタ)アクリレート、PEG#400・ジ(メタ)アクリレート、PEG#600・ジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオール・ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン・トリメクリレートなどが挙げられる。
【0034】
上記の不飽和カルボン酸の金属塩を形成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等の1価の金属、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、鉄等の2価以上の金属が挙げられる。特に、1価の金属塩よりも、2価以上の金属塩が好ましく、例えば、アクリル酸亜鉛、アクリル酸カルシウムなどが挙げられる。また、本発明において、不飽和カルボン酸金属塩化合物形成にあたり、上記金属の中で、1種の金属を用いて金属塩化合物を形成してもよいが2種以上を用いてもよい。2種以上の金属塩化合物を用いる場合には、2価以上の金属により形成される不飽和カルボン酸金属塩化合物と1価の金属により形成される不飽和カルボン酸金属塩化合物(1価の金属塩化合物が50モル%以下)とを共重合することにより重合体層を形成することにより、高湿度下におけるガスバリア性に優れている積層フィルム(F)とすることができる。具体的には、アクリル酸亜鉛と、アクリル酸ナトリウム若しくはカリウムとの共重合体などが挙げられる。さらにまた、アクリル酸亜鉛とPEG#200・ジアクリレートとの共重合体なども用いられる。特に後者の場合のバリア層は、タフネスについても優れたものとなる。
【0035】
本発明において、不飽和カルボン酸化合物金属塩は、例えば、アクリル酸水溶液に、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属化合物を添加することにより形成できる。また、市販のアクリル酸金属塩水溶液を用いることもできる。
【0036】
本発明において、重合体層の形成は、上記の不飽和カルボン酸金属塩溶液、例えば、アクリル酸金属塩水溶液に、重合開始剤のメタノール溶液を加えた溶液を、シーラントフィルム(01)の片面に、0.1〜10g/mになるように塗布またはスプレーし、乾燥した後、電離性放射線(紫外線、可視光線、電子線等)、好ましくは、紫外線を照射して、不飽和カルボン酸金属塩化合物を重合させることにより行われる。重合開始剤としては、公知のもの、例えば、ダロキュアー1173(チバ・スペシャリテイ ケミカルズ社製)、イルガキュアー2959(チバ・スペシャリテイ・ケミカルズ社製)等の光重合開始剤等が用いられる。バリア層(03)の厚さは、0.1〜10μmの範囲にあるのが好ましい。得られたバリア層(03)は、高いガスバリア性を有しており、しかも、透明性を有しており、高湿度下でもガスバリア性の低下はない。
【0037】
本発明において、バリア層(03)として働く前記重合体層の形成は、シーラントフィルム(01)の片面に不飽和カルボン酸金属塩化合物溶液を塗布またはスプレーすることにより行なうことができるが、前記シーラントフィルム(01)と前記重合体層との密着性を向上させるため、塗布またはスプレーされる前に、塗布またはスプレーされる側のシーラントフィルム(01)面を、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の表面処理することが好ましい。
【0038】
本発明の積層フィルム(F)では、前記バリア層(03)は、本質的に不飽和カルボン酸化合物金属塩重合体からなるバリア層(03)を必須とするが、バリア層を単層にする必要はなく、別のバリア層を設けて複層化することもできる。別のバリア層を設ける場合、本質的に不飽和カルボン酸化合物金属塩重合体からなるバリア層(03)とシーラントフィルム(01)との間に設けることもできるが、別のバリア層が蒸着層の場合には、シーラントフィルム(01)の面に、本質的に不飽和カルボン酸化合物金属塩重合体からなるバリア層(03)を設け、更にその上に、蒸着による別のバリア層を設けることが好ましい。すなわち、別のバリア層を形成させる際に、本質的に不飽和カルボン酸化合物金属塩重合体からなるバリア層(03)が、シーラントフィルム(01)表面を保護するので、蒸着によるバリア層との複層化が可能になる。別のバリア層としては、常法で形成させるバリア層を用いることができ、具体的には、金属アルミニウム等の金属層、酸化ケイ素、酸化アルミ等の無機酸化物層、エチレンビニルアルコール樹脂層等との複層であってもよい。
【0039】
(傷痕加工)
本発明において、傷痕加工(23)は、包装袋の横側面に形成されるように、基材層フィルム(02)に施される。包装袋の片側の横側面のみに傷痕加工(23)を形成してもよく、両方の横側面に傷痕加工(23)を形成してもよい。積層フィルム(F)の長さ方向に沿って、包装袋の横側面となるべき領域の全長に渡って傷痕加工(23)が施されていてもよいが、包装袋を開封するに必要な長さで包装袋の横側面となるべき領域の一部に形成されておればよく、通常は、包装袋の上側密封部の直下となるべき領域に形成されるのが好ましい。図2は、かかる好ましい形態について図示したものである。傷痕加工(23)が施される面のサイズとしては、幅135mm、長さ200mmの包装袋の場合、横側面になるべき位置に沿って幅10〜20mm、横側面からの長さ15〜50mmの範囲にあることが好ましい。通常、傷痕加工(23)は、図2に示したように、包装袋の横側面に1箇所設けられるが、包装袋の形状が長いものの場合には、複数箇所の横側面に設けてもよい。
1つ1つの傷痕の形状、大きさ等は特に限定されないが、本発明では横方向から開封が容易な包装袋とすることから、それぞれの傷痕においては、包装袋において横方向に長い形状、すなわち、積層フィルム(F)において、フィルム長さに対して垂直方向に長い形状であることが好ましい。
【0040】
本発明においては、傷痕加工(23)が、各包装袋の横側面になるべき領域に形成されるように基材層フィルム(02)に傷痕加工(23)が施される。そのため、基材層フィルム(02)の片面にアイマークを印刷した印刷層(04)を形成すれば、基材層フィルム(02)上の該アイマークを検出しながら、所定の位置に所定の大きさの傷痕加工(23)を行なうことができるので、製造される全ての包装袋について所望の位置のみに再現性よく傷痕加工(23)することができる。基材層フィルム(02)への印刷層(04)は、アイマークの印刷だけでなく、商品情報に係る印刷も行われる。しかし、本発明においては、バリア層(03)として、不飽和カルボン酸金属塩化合物重合体層からなるバリア層(03)を単層で設けた場合、積層フィルム(F)が透明となるため、シーラントフィルム(01)において商品情報印刷を行なうこともできる。
【0041】
基材層フィルムへの傷痕加工の手段は、上記特許文献1,2に記載されるような公知の方法・装置が知られており、かかる方法・装置は本発明においても適用される。例えば、基材層フィルムに砥面を圧着させる方法、突起刃が多数形成された面を圧着させる方法等により行うことができる。適度な粒度を有する金属粉を、合成樹脂をバインダーとして金属ロールの外周面に塗布して形成した砥石ロール、また、外周面に鋭利で微細な突起刃を多数形成した金属ロールと受けロールとの間で、所定の長さの傷痕加工が形成されるように基材層フィルムが処理される。砥面の粒度、突起刃の径を選択することにより、傷痕の大きさを調節することができる。所定幅の所定長さの傷痕加工を形成するためには、連続的に供給される基材層フィルムを所定幅の金属ロールに所定時間、断続的に接触させるようにすることにより行われる。
【0042】
(基材層フィルムとシーラントフィルムの積層)
上記のように傷痕加工(23)が形成された基材層フィルム(02)には、通常、印刷が施されているので、基材層フィルム(02)の印刷層(04)面と、シーラントフィルム(01)のバリア層(03)面とが、接着剤を用いるドライラミネートまたは押出ポリエチレン等の接着性樹脂を用いるサンドイッチラミネート(05)により積層されて、本発明の包装袋用の積層フィルム(F)となる。
【0043】
本発明において用いられる接着剤としては、ポリエーテル/ポリウレタンを主成分とする2液溶液型、芳香族ポリエーテル系、芳香族ポリエステル系、脂肪族ポリエステル系、脂肪族ウレタン系、脂肪族ポリエーテル系のポリマーを溶剤に溶かした接着剤、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメタクリレート共重合体等の熱溶融型の接着剤を用いることができる。また、バリア性を有する接着剤、具体的には、三菱瓦斯化学株式会社製『マクシーブ(商品名)』などを使用することもできる。
【0044】
(包装袋の製造)
上記のようにして得られた包装袋用の積層フィルムから包装袋(B)を製造するには、公知の製袋包装機、特に、図3に示されるような縦ピロー型の包装機を用いて行われる。上記の積層フィルムを巻いた供給ロール(図示せず)から、本発明に係る積層フィルム(F)が包装機(10)に供給される。包装機は、包装袋用の積層フィルムを筒状に成形するための管状フォーマ(13)、筒状に成形された積層フィルムを管状フォーマに沿わせながら下方に移送するためのプルダウンベルト(14)、筒状になった積層フィルムの両端部を長さ方向に重なり合わせ、重なり合う箇所を筒状フォーマ上でシールするための縦シール装置(11)、および縦シールされた筒状の積層フィルムを所定間隔で横シールして、所定の位置で切断するためのナイフを備えた一対の横シール装置(12)から構成されている。
【0045】
上記の包装機を用いて、本発明の包装袋(B)は下記のようにして製造される。本発明に係る積層フィルムを、供給ロールから包装機(10)の管状フォーマのショルダー部(13a)に供給し、積層フィルムはショルダー部(13a)から筒状部(13b)に移行させながら、円筒状に成形される。筒状の積層フィルム(F)は、プルダウンベルト(14)により管状フォーマに沿いながら下方に移行する過程において、縦シール装置(11)により、長さ方向に重なり合う積層フィルムの両端部が縦シールされる。縦シールの形式としては、積層フィルムの一方の表側端面と他方の裏側端面を重ね合わせてもよく(封筒貼り)、一方の裏側端面(低融点ポリオレフィン層面)と他方の裏側端面(低融点ポリオレフィン層面)とを重ね合わせてもよい(合掌貼り)。封筒貼りを行う場合には、基材層表面でシールが可能なように、基材層フィルムとしては、ヒートシーラブル二軸延伸フィルム(ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)が用いられることが好ましい。ついで、筒状にされた積層フィルムは、下方に送られ、横シール機構(12)により、所定間隔ごとに横シールが行われ、横シール機構に備えられたナイフにより上下に切り離され、下側はフォーマ上部から供給されたスナック菓子等の食品(C)が充填された包装袋(B)となり、下方に落下して、包装機下に配置されたコンベア(図示せず)に載せられる。また、上側は、開口した未完成の袋であり、フォーマ上部から落下する食品が充填されながら、次のサイクルで、包装袋の上部がシールされて完成した袋となる。
【実施例】
【0046】
図2は、本発明の一例として、傷痕加工が施された包装袋の裏側を示した平面図である。図2に示した包装袋では、通常の包装袋と同じく縦シール部(21)、横シール部(22)を具備する他、本発明の左側面横側面を含み、上部の横シール部(22)の直下の位置に、本発明の特徴である傷痕加工(23)を所定幅、所定長さで具備する。この例では、横引裂き性を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムを基材層フィルムとして用い、該基材層フィルムの片面に印刷層を形成した後、図示したような傷痕加工(23)を施した。一方、無延伸ポリプロピレンフィルムをシーラントフィルムとして用いて、該シーラントフィルムの片面に、アクリル亜鉛水溶液を塗布して、紫外線照射によりアクリル酸亜鉛重合体層からなるバリア層を形成した。
前記基材層フィルムの印刷層面と、前記シーラントフィルムのバリア層面とを、ウレタン系接着剤を用いて積層して、包装袋用の連続積層フィルムとし、図3に示した縦ピロー型の包装機を用いて包装袋が形成されている。図2に示されているような基材層フィルムの傷痕加工と、基材層フィルムが有する横引裂き性とが相俟って、本発明の包装袋は、横方向に容易に開封することができる。また、バリア層がシーラントフィルム上に形成されているため、傷痕加工の影響を受けることなく、優れたバリア性を有している。本発明において、不飽和カルボン酸金属塩化合物が紫外線重合して重合体層をバリア層として形成する場合には、直接、低融点のポリオレフィンフィルム層の面にバリア層を形成することができる。さらにまた、基材層フィルムにアイマークを印刷すれば、このアイマークを検出しながら、所定の箇所にのみ傷痕加工が施されるから、基材層の機械的性能を維持しながら、開封性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の積層フィルムの実施形態の一例を示す断面図である。
【図2】包装袋の左横側面に傷痕加工部を有する本発明の実施形態の一例を示す包装袋の平面図である。
【図3】本発明の包装袋を製造するために用いられる縦型包装機を示す概略図である。
【図4】従来の傷痕加工が施された包装袋の平面図である。
【符号の説明】
【0048】
01 シーラントフィルム
02 基材層フィルム
03 バリア層
04 印刷層
05 接着剤または接着性樹脂(層)
10 包装機
11 縦シール装置
12 横シール装置
13 管状フォーマ
13a 管状フォーマのショルダー部
13b 管状フォーマの筒状部
14 プルダウンベルト
21 縦シール部
22 横シール部
23 傷痕加工
F 積層フィルム
B 包装袋
C 封入される内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム長さ方向が、形成される包装袋の長さ単位でそれぞれ切断されて、1以上の包装袋を形成するための連続した包装袋用積層フィルムであって、
該積層フィルムは、シーラントフィルムと、バリア層と、基材層フィルムを含み、
前記シーラントフィルムは、低融点ポリオレフィン層を含み、
前記バリア層は、本質的に不飽和カルボン酸化合物金属塩重合体からなり、
前記基材層フィルムは、二軸延伸フィルムを含み、
前記二軸延伸フィルムは、フィルムの長さ方向よりも、該長さ方向に対して直角方向に高い配向性を有し、かつ、切断される前記包装袋の単位ごとに、それぞれ少なくとも一箇所に傷痕加工が施されていることを特徴とする、包装袋用積層フィルム。
【請求項2】
前記傷痕加工の施される箇所が、前記積層フィルムから形成される包装袋において、両横側面に形成される部分のうち、少なくとも一方の横側面を含む領域に存在する、請求項1記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項3】
前記基材層フィルムの片面に、印刷層が形成されている、請求項1に記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項4】
前記シーラントフィルムの片面に、前記バリア層が形成されている請求項3に記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項5】
前記シーラントフィルムの該バリア層側の面と、前記基材層フィルムの前記印刷層側の面とが、接着剤または接着性樹脂を介して積層されている、請求項4に記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項6】
前記基材層フィルムは、前記印刷層が形成された後に前記傷痕加工が施された、二軸延伸フィルムからなる、請求項3に記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項7】
前記シーラントフィルムは、低融点ポリオレフィン層と、延伸ポリオレフィン層とからなり、
該延伸ポリオレフィン層側の面に、前記バリア層が形成されている、請求項1に記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項8】
前記バリア層が、前記シーラントフィルム表面に、不飽和カルボン酸化合物金属塩溶液を塗布した後、該不飽和カルボン酸金属塩化合物を重合して形成された重合体層である、請求項1に記載の包装袋用積層フィルム。
【請求項9】
シーラントフィルムと、バリア層と、基材層フィルムを含み、基材層フィルムとを含む連続積層フィルムを包装機に供給して筒状に成形して、しかる後、縦シールおよび横シールを行って形成された包装袋において、
前記シーラントフィルムは、低融点ポリオレフィン層を含み、
前記バリア層は、本質的に、前記シーラントフィルムの片面上に形成された不飽和カルボン酸化合物金属塩重合体からなり、
前記基材層フィルムは、フィルムの長さ方向よりも、長さ方向に対して直角方向に高い配向性を有する二軸延伸フィルムを含み、
包装袋の両横側面のうち、少なくとも一方の横側面を含むいずれかの箇所において、包装袋を構成する層のうち前記基材層フィルムのみに、傷痕加工が施されていることを特徴とする包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−102048(P2009−102048A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276790(P2007−276790)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】