説明

包装袋

【課題】フィルムの印刷性や製膜時の操業性に優れ、また、透明性、柔軟性およびシール強度に優れた包装袋を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸(A)50〜90質量部と、乳酸成分を30〜70質量%を含むポリ乳酸系共重合ポリマー(B)10〜50質量部とを含む樹脂組成物から構成されたポリ乳酸系二軸延伸フィルムであって、ラクチド量が0.5質量%以下、引張弾性率が3.0GPa以下、かつヘイズが10%以下であるポリ乳酸系二軸延伸フィルムをシールしてなる包装袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明性と柔軟性を有するポリ乳酸系フィルムから得られる、シール強度に優れる包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新聞・雑誌・食品などの包装材料として使用されるフィルムは、近年の環境保全に関する社会的要求の高まりに伴い、生分解性ポリマーにて形成されることが望まれている。中でも自然界に広く存在し、動植物や人畜に対して無害なポリ乳酸は、融点が140〜175℃であり十分な耐熱性を有し、非常に高い透明性を有するとともに、比較的安価な熱可塑性樹脂であり、また植物由来原料であるため、大きな注目を集めている。
【0003】
しかし、ポリ乳酸からなるフィルムは、そのままでは非常に固く脆い性質をもつために、食品用フィルムや工業用フィルムなどの従来から知られた用途に用いる場合には、二軸延伸を施すことにより機械物性を付与する必要がある。しかし、もともと、ポリ乳酸系重合体は生分解性ポリマーの中でも融点が高く、二軸延伸により分子配向や配向結晶化が進むとヒートシール性を損なう傾向にあり、ヒートシール性のさらなる改良が求められている。
【0004】
特許文献1には、面配向指数ΔPを3.0×10−3以上とし、フィルムを昇温したときの結晶融解熱量ΔHmと昇温中の結晶化により生じる結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が20J/g以上、{(ΔHm−ΔHc)/ΔHm}が0.75以上となるように制御した、結晶性ポリ乳酸系重合体からなる配向結晶化フィルムを溶断シールしてなる包装袋が開示されている。しかし、包装袋体として柔軟性に優れるものではなかった。
【0005】
特許文献2には、ポリ乳酸に柔軟性を付与するために、可塑剤を添加する技術が開示されており、この技術により製造したフィルムは、透明性を損なうことなく、柔軟性を付与される。しかし、十分な柔軟性を得るためには、可塑剤を多量に添加する必要があり、このため可塑剤がブリードアウトしやすく、印刷性などの表面特性を損なうという問題がある。また、耐熱性に乏しいという問題もあるため、溶断シール機を用いて溶断シール袋を作る際に、フィルムがシール機に対する適性を有しているとは言えない。
【0006】
特許文献3には、ポリ乳酸系重合体とガラス転移点Tgが0℃以下である生分解性脂肪族/芳香族ポリエステルとを主成分とし、[ポリ乳酸系重合体]/[生分解性脂肪族/芳香族ポリエステル]=98/2〜50/50であり、二軸延伸フィルムのMD方向の引張伸度が100〜200%であり、かつ引張弾性率が3.0GPa以下とすることで、溶断シール性能に優れたポリ乳酸系フィルムが開示されている。しかし上記の範囲で脂肪族/芳香族ポリエステルを混合すると、結晶性が高くなるため透明性が損なわれやすい。特に二軸延伸を行った場合には、結晶化や相分離を生じることにより透明性の低下が顕著である。
【0007】
特許文献4には、ポリ乳酸系重合体とガラス転移点Tgが0℃以下である生分解性脂肪族ポリエステルとを主成分とし、ポリ乳酸系重合体/生分解性脂肪族ポリエステル=85/15〜50/50である積層フィルムを溶断シールすることにより得られる透明性な生分解性袋体が開示されている。しかし、二軸延伸を行った場合には、結晶化や相分離を生じ、透明性が十分ではなかった。
【特許文献1】特開平9−77124号公報
【特許文献2】特開2004−090522号公報
【特許文献3】特開2004−161925号公報
【特許文献4】特開2004−082512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は従来の前記問題点を解決し、フィルムの印刷性や製膜時の操業性に優れ、また、透明性、柔軟性およびシール強度に優れた包装袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、ポリ乳酸(A)に、乳酸成分を特定量含有したポリ乳酸系共重合ポリマー(B)を特定量配合することにより、高い透明性、柔軟性およびシール性を付与することができ、また、フィルム中に含まれるラクチド量を0.5質量%以下にすることにより、製膜時の操業性に優れ、かつ印刷性に優れたポリ乳酸系フィルムからなる包装袋が提供されることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、ポリ乳酸(A)50〜90質量部と、乳酸成分を30〜70質量%を含むポリ乳酸系共重合ポリマー(B)10〜50質量部とを含む樹脂組成物から構成されたポリ乳酸系二軸延伸フィルムであって、ラクチド量が0.5質量%以下、引張弾性率が3.0GPa以下、かつヘイズが10%以下であるポリ乳酸系二軸延伸フィルムをシールしてなる包装袋である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の包装袋は、ポリ乳酸(A)に、相容性の高いポリ乳酸系共重合ポリマー(B)を配合することで、ポリ乳酸フィルムの本来有する高い透明性が維持された二軸延伸フィルムが得られるうえに、柔軟性も付与されており、さらに表面印刷性にも優れているので、このフィルムを用いた、食品や衣料品などの包装用に好適な包装袋が得られる。また、フィルム製造時の操業安定性に優れているので工業的にも有利である。
【0012】
本発明の包装袋は各種のシール方法により製造することができ、15N/15mm以上という実用上問題のないシール強度を得ることができる。特に、溶断シール機への適性に優れており、この方法を用いれば、より外観に優れた包装袋とすることが可能である。
【0013】
また、本発明の包装袋においては、可塑剤をあえて用いる必要がなく、可塑剤を使用しなければブリードアウトによって印刷性が損なわれることがない。
【0014】
さらに、帯電防止特性として、表面固有抵抗値LOGを14.0未満とすることにより、フィルム表面に印刷したり、これを製袋する際の操業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明の包装袋は、ポリ乳酸(A)とポリ乳酸系共重合ポリマー(B)とを構成成分とする樹脂組成物からなるポリ乳酸系二軸延伸フィルムにて形成される必要がある。
【0017】
ポリ乳酸(A)としては、乳酸の構造単位がL−乳酸であるポリL−乳酸、構造単位がD−乳酸であるポリD−乳酸、L−乳酸とD−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、またはこれらの混合体が挙げられる。その重量平均分子量が15万〜30万の範囲にあることが好ましく、より好ましくは16万〜20万である。主成分であるポリ乳酸の重量平均分子量が15万未満であると得られるフィルムは機械的特性に劣るものになり、重量平均分子量が30万を超えると溶融粘度が高くなりすぎて溶融押出が困難となる。
【0018】
ポリ乳酸(A)は、結晶性ポリ乳酸と非晶性ポリ乳酸とを併用することができるが、ポリ乳酸の結晶化による製膜安定性と耐熱性の確保を考慮すると、結晶性ポリ乳酸を用いるのが好ましい。ここでいう結晶性ポリ乳酸とは、140〜175℃の範囲の融点を有するポリ乳酸樹脂を指し、非晶性ポリ乳酸とは実質的に融点を保有しないポリ乳酸樹脂を指す。結晶性ポリ乳酸と非晶性ポリ乳酸との配合割合は、質量比で(結晶性ポリ乳酸)/(非晶性ポリ乳酸)=80/20〜100/0(質量%)の範囲にあることが好ましい。結晶性ポリ乳酸と非晶性ポリ乳酸の配合割合がこの範囲にあると、シール部が伸びやすくなり、応力集中が起こりにくい。結晶性ポリ乳酸の配合割合が80質量%未満であると、ポリ乳酸の結晶化に劣るため安定した製膜が行えない。
【0019】
ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)は乳酸成分を30〜70質量%含むことが必要である。乳酸成分が70質量%を超えると、得られるフィルムの柔軟性を付与するためにポリ乳酸系共重合ポリマー(B)を多量に使用する必要があり好ましくない。乳酸成分が30質量%未満であると、ポリ乳酸(A)とポリ乳酸系共重合ポリマー(B)との相容性が低くなり、得られるフィルムの透明性は悪くなり、好ましくない。
【0020】
ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)を構成する乳酸成分は、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸のいずれかであればよいが、ポリ乳酸(A)の主成分をなす乳酸系樹脂の構造単位と同じ構造のものが特に好ましい。
【0021】
乳酸成分以外の共重合成分としては、ジカルボン酸とジオールからなるポリエステルか、もしくはポリエーテルであることが好ましい。
【0022】
前記ポリエステルを構成するジカルボン酸成分は特に限定されないが、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンなどを挙げることができる。ポリ乳酸との相容性の面から炭素数が10以下のジカルボン酸が好ましい。
【0023】
前記ポリエステルを構成するジオール成分は特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体などを挙げることができる。ポリ乳酸との相容性の面から炭素数が10以下のグリコールが好ましい。
【0024】
また、ポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。ポリエーテルの重量平均分子量は200〜5000とすることが好ましい。この範囲であると、ポリ乳酸との相容性を低下させずに、ポリ乳酸に柔軟性を付与することができる。
【0025】
ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)には、さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3官能化合物等を少量用いてもよい。
【0026】
ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)における上記共重合成分は、2種以上併用してもよい。
【0027】
ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)の重量平均分子量は、1万〜10万の範囲であることが好ましく、2万〜8万であることがより好ましい。重量平均分子量が1万未満であると、得られるフィルムの強度が著しく低下するだけでなく、フィルムを製膜する際に溶融粘度の差が大きすぎて混練性に劣る場合がある。一方、重量平均分子量が10万を超えると、ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)の柔軟化効果が低下し、得られる包装袋に十分な柔軟性を付与することができない場合がある。
【0028】
ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)のガラス転移温度は、柔軟性を考慮すると、40℃以下であることが好ましく、0〜30℃の範囲がより好ましい。
【0029】
ポリ乳酸(A)とポリ乳酸系共重合ポリマー(B)との配合割合は、(ポリ乳酸(A))/(ポリ乳酸系共重合ポリマー(B))(質量部/質量部)=90/10〜50/50の範囲であることが必要であり、85/15〜60/40が好ましく、85/15〜70/30がより好ましい範囲である。ポリ乳酸(A)成分が90質量部を超えると、フィルムのコシが強くなりすぎるため、すなわち、フィルムの引張弾性率が高くなるため、シール部に応力が集中し、破袋しやすくなる。ポリ乳酸(A)成分が50質量部未満であると、延伸性や滑り性を含めた操業性が悪化し、またフィルムが容易に伸びすぎるため、製袋時にしわやひげが多くなり、シール外観不良を招く。
【0030】
ポリ乳酸(A)とポリ乳酸系共重合ポリマー(B)から得られる樹脂組成物の重量平均分子量は、10万以上が好ましく、12万〜20万がより好ましい。重量平均分子量が10万未満であると、包装材料として使用する際に強度が劣る場合がある。
【0031】
本発明においては、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムに含まれるラクチド量を0.5質量%以下とすることが必要であり、0.1〜0.4質量%であることが好ましい。ラクチド量が0.5質量%を超えると、フィルム製膜時の発煙が著しく、ダイス近辺の装置が汚染されたり、酷い場合にはキャストロールを介してフィルム表面に転写されたりして、操業性が悪化する。
【0032】
ラクチド量を低減する方法としては、ポリ乳酸(A)またはポリ乳酸系共重合ポリマー(B)を重合する際に融点以上の温度で減圧して除去する方法や、ポリ乳酸(A)またはポリ乳酸系共重合ポリマー(B)の重合後のペレットを、高温、減圧下で処理してガス化除去する方法や、温水中に浸漬して抽出除去する方法が挙げられる。
【0033】
本発明に用いるポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、ガラス転移温度が40〜55℃であることが好ましい。柔軟性の面からすると、ガラス転移温度は低い方が好ましいが、本発明では40℃未満にまで低下させることは好ましくない。ガラス転移温度が低下すると、フィルム製膜時のキャストロール温度をそれに応じて低くする必要があるが、ポリ乳酸系樹脂の場合、ラクチドのフィルム表面への析出やキャストロールへの付着等の問題があるためキャストロールの温度は30℃以上が好ましく、それに伴ってガラス転移温度としては40℃以上が好ましい。一方、ガラス転移温度が55℃を超えるとポリ乳酸系フィルムの柔軟効果が小さい。
【0034】
本発明に用いるポリ乳酸系二軸延伸フィルムの融点は140℃以上が好ましく、特に150℃以上であることが好ましい。融点が140℃未満であると、製袋時のシールや印刷・ラミネートといった加熱処理が必要な場合に、耐熱性が不足する場合がある。
【0035】
なお、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムを構成する樹脂組成物には、製膜時の溶融張力の低下を抑制する目的で、必要に応じて有機過酸化物などの架橋剤および架橋助剤を併用して樹脂組成物に軽度の架橋を施してもよい。
【0036】
本発明の包装袋を構成するポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、帯電防止性を有していることが好ましい。ポリ乳酸樹脂は疎水性が強く、帯電し易い性能を有しているため、フィルム化した後に、印刷や製袋等の2次加工に供する際の静電気トラブルを避けるために、帯電防止性の付与は重要である。より詳しく説明すれば、フィルムが帯電していると、フィルムの巻き取り、スリット、その後の印刷や製袋といったロール走行時に、ロールに巻きついたりシワが発生し易い。また、印刷時にインキがはじいたり、包装体に内容物を梱包する際に飛散したり、また、包装体の内外に内容物や内容物以外のくずが付いたりする。さらに帯電がひどい場合には、ロール走行時に静電気による火花が発生する場合もある。帯電防止性付与の指標として、表面固有抵抗値LOGが14.0[Ω]未満であることが好ましい。表面固有抵抗値LOGを14.0未満とすることにより、上記のような帯電に由来する各種の問題を抑制することができ、製袋や印刷といった2次加工時の操業性が向上する。
【0037】
フィルムに帯電防止性を付与する方法としては、フィルムを構成する樹脂に帯電防止剤を練り込んだり、フィルム表面に帯電防止剤をコートする方法が挙げられ、本発明では特に限定されないが、練り込み法はコートする必要がないため製造工程を簡素化でき、しかもコートに由来する作業環境の悪化や、干渉縞やブロッキングといった品質上の問題の発生がないことから好ましい方法である。
【0038】
練り込み法で使用される帯電防止剤としては、アニオン系やカチオン系のイオン系と、非イオン系が使用できるが、イオン系の帯電防止剤をポリ乳酸に使用すると押出機中で熱分解を引き起こし、分子量が低下するという問題があり、特に、カチオン系は少量で高い帯電防止効果が得られるものの、熱分解による分子量低下が著しく使用が困難である。従って、本発明では、非イオン系の帯電防止剤を用いることが好ましい。帯電防止剤を練り込む量としては、フィルムを構成する樹脂組成物100質量部あたり、0.1〜5.0質量部程度の範囲が適当である。
【0039】
非イオン系の帯電防止剤としては、脂肪酸アミンもしくはアミドが挙げられる。特に、脂肪族アミンもしくはアミドと、高級脂肪酸エステルとほう酸の反応物(以下、ほう酸エステルと記載する)との併用が好ましい。脂肪酸アミンもしくはアミドとほう酸エステルを併用することにより、ポリ乳酸の分子量低下を抑えつつ、少量で高い帯電防止効果が得られる。
【0040】
脂肪族アミンもしくはアミドの脂肪酸の炭素数は1〜30で、好ましくは1つ以上の脂肪酸の炭素数8〜30であるが、特に限定されない。
【0041】
ほう酸エステルは、多価アルコールと高級脂肪酸をエステル化反応させて高級脂肪酸エステルとした後、これをほう酸と反応させて得られる。高級脂肪酸エステルに使用される多価アルコールには、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、アラビトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グルコース、ラクトース、単糖類、あるいは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられるが、特に限定されない。高級脂肪酸は炭素数が1〜30であり、飽和脂肪酸でも不飽脂肪酸でも良く、直鎖でも分岐鎖を有していても構わないが、炭素数は8〜24であることが好ましい。ほう酸の添加量は高級脂肪酸エステル1モルに対し、0.1〜2.0モルが好ましく、0.5〜1.0モルが特に好ましい。ほう酸添加量が多く、未反応残存量が多いと、延伸フィルムの保存時にブリードアウトし白粉化するので好ましくない。
【0042】
脂肪族アミンもしくはアミド(a)とほう酸エステル(b)の配合比は、(a)/(b)で30〜90/70〜10質量%が好ましく、50〜80/50〜20質量%が特に好ましい。脂肪族アミンもしくはアミドが30質量%未満であると、延伸フィルムにした際の帯電防止性能に劣り、90質量%以上であると分子量低下が生じる場合がある。
【0043】
脂肪族アミンもしくはアミドとほう酸エステルの混合物を使用する場合、フィルムを構成する樹脂組成物100質量部あたり0.1〜3.0質量部、好ましくは0.5〜2.0質量部添加することが好ましい。この範囲の添加量とすることにより、表面固有抵抗値LOGを14.0[Ω]未満とすることができ、良好な帯電防止性が付与される。
【0044】
また、本発明に用いるポリ乳酸系二軸延伸フィルムを構成する樹脂組成物には、用途に応じて紫外線防止剤、光安定剤、防曇剤、防霧剤、難燃剤、着色防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料など上記以外の添加剤も添加できる。
【0045】
次に、本発明の包装袋を構成するポリ乳酸系二軸延伸フィルムの製法について説明する。
【0046】
樹脂組成物を製膜する方法は特に限定されず、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等が例示できるが、中でもTダイ法が好ましい。Tダイ法では、ポリ乳酸(A)とポリ乳酸系共重合ポリマー(B)とを配合した樹脂組成物を、押出機ホッパーに供給し溶融混練して押し出し、キャストロールで冷却することにより未延伸シートが得られる。このとき、温度条件としては、シリンダー温度は180〜250℃、Tダイ温度は200〜250℃が適当である。また、キャストロールは20〜40℃に制御されていることが適当である。この方法によれば、厚み100〜600μmの未延伸シートが得られる。
【0047】
未延伸シートを二軸延伸することにより二軸延伸フィルムを得る。延伸方法としては、ロール法、テンター法等が挙げられ、逐次二軸延伸法あるいは同時二軸延伸法のどちらを採用してもよい。また、二軸延伸での面倍率は6〜16倍であることが好ましい。面倍率が6倍未満であると、得られるフィルムの機械物性、特に引張強度が低く、実用に耐えないことがある。また、面倍率が16倍を超えると、フィルムが延伸途中で延伸応力に耐えきれず破断してしまうことがあるため好ましくない。
【0048】
得られた延伸フィルムの厚みは10〜50μmとするのが好ましい。厚みが10μm未満であると、包装袋のコシがないものとなり、50μmより厚いと、コスト的に不利であり、好ましくない。
【0049】
延伸温度としては、50〜90℃が好ましく、60〜80℃がさらに好ましい。延伸温度が50℃未満であると、延伸のための熱量不足によりフィルムが延伸初期で破断する。また90℃を超えると、フィルムに熱が加わりすぎてドロー延伸となり延伸斑を多発する傾向がある。
【0050】
延伸工程前の未延伸シートに対して、必要に応じてコート剤をコーティングすることもできる。コーティング方法は特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング等が挙げられる。
【0051】
また、二軸延伸フィルムに寸法安定性を付与する目的で、延伸後、熱弛緩処理を実施してもよい。熱弛緩処理の方法としては、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法、ヒートロール上に接触させる方法等が選択でき、均一に精度良く加熱できる点で熱風を吹き付ける方法が好ましい。その際、80〜160℃の範囲で1秒以上であることが好ましく、かつ、2〜8%のリラックス率の条件下で実施することが好ましい。
【0052】
本発明のフィルムは単層でも良好な包装体が得られるが、内容物や保存方法、製袋方法にあわせて、他の樹脂を積層してもよい。積層方法は、コート、ダイレクトラミ、押出ラミ等が挙げられ、要求される性能に応じて適宜選択することができる。
【0053】
次に、得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムを用いて包装袋を製造する。
【0054】
フィルムを製袋するには各種の自動製袋機が用いられる。例えば、サイドウエルド自動製袋機、三方プレスシール自動製袋機、プレスセンターシール自動製袋機、サイドシール自動製袋機等各種の自動製袋機が挙げられる。これら製袋機により各種の規格袋、キャリングバッグ、レジ袋等の袋が高速で作製される。製袋機で製袋されるフィルムは一方を折り曲げ二方を熱融着するか、あるいは折り曲げずに三方を熱融着するかして平面的に被収納物を収納する袋にされる。
【0055】
製袋における接着方法としては、ヒートシール法、インパルスシール法、溶断シール法、インパルス溶断シール法、超音波シール法、高周波シール法等が利用される。中でもヒートシール法、インパルスシール法、溶断シール法が一般的によく用いられる。本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムは上述の各シール法を利用でき、シール強度も良好であるが、延伸等の結晶化を伴う処理を行う場合はインパルスシール法、溶断シール法、インパルス溶断シール法、超音波シール法、高周波シール法が利用できる。 包装袋におけるシール強度は、一般に15N/15mm以上あれば良好であり実用上問題ないとされており、上記いずれの方法においてもこのシール強度が達成可能である。
【0056】
前記したシール方法のなかでも、溶断シールは、融着部(シール部)に幅がなく線状となるためすっきりした外観を有するとともに、溶融がごく幅の狭い局部にとどまるため、その部分の重合体を十分に溶融させることができ、またフィルムの特性に悪影響を及ぼすことが少ないため、好ましいシール方法である。溶断シール温度は、重合体の融点、溶断シール時間によっても異なるが、180〜400℃の範囲が好適である。
【0057】
溶断シールにおいては溶断刃の先端の角度が製袋性に大きく影響する。一般に先端の角度が鋭角であればフィルムの切断がスムーズに行えるが、シール強度は弱くなる。逆に、先端の角度が鈍角であればフィルムの切断はしにくくなるがシール強度は強くなる。本発明のような乳酸系ポリマーフィルムを溶断シールする場合は溶断刃の先端の角度は45度以上、120度以内が好ましく、より好ましくは60度以上、90度以内である。
【0058】
包装袋の製造にあたっては、従来知られている方法を支障なく適用することができる。例えば、長尺の配向結晶化フィルムを2枚重ねで送りだし、あるいは中央から2つ折りの半折フイルムとして送りだし、回転するリング状のシール刃、上下動する電熱線や溶断刃などによりシールすることができる。また包装袋を予め一辺開口で製袋して後から内容物を詰めることもできるし、製袋と同時に内容物を詰めることもできる。また少量であれば、いわゆるL型シーラーを用いて手動で製袋しながら包装することもできる。
【0059】
包装袋の形態としては、袋周囲の3方(内容物収納前)または4方(内容物収納後)をシールするのが通常であるが、内容物収納用の開口辺には再剥離性粘着剤を使用することもできる。また、フィルムを長さ方向にシールして筒状とし、90度ねじってシールが中央部にくるようにすることもできる。
【0060】
得られた包装袋は、上述のようにそのシール部の強力が高く、しかも熱収縮によるしわの発生など抑えた外観性のよいものとなるため、食品や衣料品や各種賞品などの包装袋として好適に使用できる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
【0062】
実施例及び比較例におけるフィルムの原料、および、特性値の測定法は次の通りである。
【0063】
(原料)
(A)ポリ乳酸
ネイチャーワークス社製4032D、D体含有量1.2モル%、残留ラクチド量0.22質量%、重量平均分子量20万。
(B)ポリ乳酸系共重合ポリマー
(B−1):大日本インキ社製プラメートPD350、乳酸成分含有量50質量%、融点158℃、ガラス転移温度18℃、重量平均分子量5万、ラクチド含有量2.02質量%。
(B−2):上記B−1を110℃、0.5mmHg以下の減圧下で24時間熱処理し、ラクチド量を0.54質量%までに低減したもの。
(C)ポリエステル
(C−1):昭和高分子社製ビオノーレ#3001、融点95℃、ガラス転移温度−45℃。ポリ乳酸成分を含まない脂肪族ポリエステルである。
(C−2):BASF社製エコフレックスF、融点105、ガラス転移温度−30℃。ポリ乳酸成分を含まない脂肪族−芳香族ポリエステルである。
(D)可塑剤
理研ビタミン社製ポエムG−038
(E)帯電防止剤
(E−1):ヤシ油ジエタノールアミド(三洋化成社製ケミスタット2500)
(E−2):グリセリンステアリン酸エステルとホウ酸との反応物
ガラス製オートクレーブに、グリセリン1.0モル及びステアリン酸1.0モルを仕込み、Nガスを導入しつつ、塩基性触媒下、220〜250℃に昇温し5時間エステル化し、グリセリンモノステアリン酸エステルを合成した。続いて合成したグリセリンモノステアリン酸エステル1.0モルに対して0.5モルのホウ酸を仕込み、130〜135℃まで徐々に加熱脱水し、その後、230℃まで徐々に昇温して、グリセリンモノステアリン酸エステルとホウ酸の反応物を得た。
【0064】
(測定法)
(1)ラクチド量
Hewlett Packard社製HP−6890 Series GC Systemおよびカラム30m×0.25mm ID DB−17 キャピラリーカラム(0.25μm f.t.)を用いて、ヘリウムをキャリアガスとして使用し、測定した。
(2)重量平均分子量
島津製作所製GPC装置LC−VPを用い、溶離液テトラヒドロフランとし、温度40℃、流速1mL/分で測定を行い、分子量分布曲線を得た。分子量は、分子量1千〜300万の範囲の標準ポリスチレン試料6点を用いた検量線に基づき、ポリスチレン換算で評価した。
(3)融点、ガラス転移温度(℃)
Perkin Elmer社製の示差走査熱量計DSC−7型を用いて、昇温速度を20℃/分で測定した。
(4)押出操業性
3時間の連続製膜を行った後のTダイ付近の汚染、発煙状況とキャストロールの汚れの程度を、目視により以下の基準に従い評価した。
○:汚染・発煙が少なく、キャストロールの汚れが認められない。
△:汚染・発煙が少しあり、キャストロールの汚れがやや有り。
×:汚染・発煙があり、キャストロールの汚れ有り。
(5)ヘイズ(透明性)
JIS−K7105に準じて測定した。本発明においては、10%以下を合格とした。5%以下であることが実用上より好ましい。
(6)引張弾性率(GPa)、引張強度(MPa)および引張伸度(%)
JIS K―7127に記載の方法に準じて測定した。
(7)ブリード性
延伸フィルムを50℃、40%RH雰囲気下に30日間放置し、以下の基準により判定した。
○:ブリードアウトは見られなかった。
△:ややブリードアウトが見られたが、実用上の問題なし。
×:ブリードアウトが顕著に見られた。
(8)表面固有抵抗値:
製造後のフィルムを、23℃、50%RH条件下で1日静置した後、JIS−K6911に準じて測定した。
(9)印刷性
フィルムのコロナ処理面にフレキソ印刷機にて印刷をした後、40℃の熱風で乾燥した。印刷の状態を長さ3mの範囲を目視で観察し、その後、幅15mm、長さ50mmのセロハンテープを正常部の印刷面に貼り、続いてそのセロハンテープを剥がして、以下の基準により判定した。
◎:目視で印刷の抜けがなく、テープ剥離でインキが全く剥離しなかった
○:目視で印刷の抜けが認められたが、テープ剥離でインキが全く剥離しなかった
×:テープ剥離でインキが剥離した
(10)溶断シール強度
刃角が90°である熱刃を装備した三方サイドシール機(トタニ技研工業社製HK−40V)を用い、シール温度380℃、1ピッチ200mm、ショット数100rpmで製袋された袋のシール部からシール巾15mmの試験片を切り出し、引張速度300mm/分で180°剥離による引張試験を行った。
(11)包装袋評価
上記(10)に記載の方法により包装袋を作製し、シール部外観の良いものを○、しわやひげが発生して外観に劣るものを×とした。
(12)総合評価
上記、各評価項目を総合的に判断し、以下の基準に従い評価した。
○:各評価項目で問題がなく、優れた実用レベルである。
×:各評価項目の少なくとも1つ以上問題があり、実用レベルではない。
【0065】
実施例1
Aを85質量%、B−2を15質量%を計量後、ドライブレンドし、90mmΦの単軸押出機にてTダイ温度230℃で溶融押出しし、35℃に温度制御されたキャストロールに密着冷却し、厚さ240μmの未延伸シートを得た。次いで、この未延伸フィルムの端部をテンター式同時二軸延伸機のクリップに把持し、70℃の予熱ゾーンを走行させた後、温度68℃でMDに3.0倍、TDに3.3で同時二軸延伸した。その後TDの弛緩率5%として、温度140℃で4秒間の熱処理を施した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ25μmの2軸延伸フィルムを得た。得られた2軸延伸フィルムを(1)〜(12)の測定法で評価した。
【0066】
実施例2〜5、比較例1〜6
原料樹脂および添加剤を、表1に示したように変更し、実施例1と同様にして各種フィルムを得た。
【0067】
【表1】

実施例1〜5に示すように、本発明で特定した範囲にあるものは、ヘイズが5%以下で透明性が高く、引張弾性率が3.0GPa以下で柔軟性に優れ、かつ、フィルム製膜時の操業性や、ブリード性といった保存時の性能変化の少なく、印刷性に優れた包装袋であった。
【0068】
実施例4および5に示すように、帯電防止剤を添加することにより、表面固有抵抗値が低下し、特に、実施例4に使用した組成の帯電防止剤は、フィルムの分子量やその他性能を低下させることなく帯電防止効果を付与することができた。一方、実施例5は帯電防止剤中の脂肪酸アミドの含有量が多かったため、フィルムの分子量が低下し、それに伴って強度が低下したが実用上問題ない範囲であった。また、実施例4,5は表面固有抵抗値が低下していたため、実施例1〜3と比較して、帯電性に起因する印刷の抜けがなく、印刷性に優れていた。
【0069】
比較例1では、ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)の添加量が少なかったため、フィルムの柔軟性に劣り、かつ、得られた包装袋は溶断シール強度にも劣っていた。
【0070】
比較例2では、フィルム中のラクチド量が多かったため、操業性に劣り、かつ溶断シール時にしわやひげが発生し、包装袋の外観が優れなかった。
【0071】
比較例3では、ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)の添加量が多かったため、フィルムの柔軟性に優れ、かつ、得られた包装袋は溶断シール強度にも優れたものの、溶断シール時にしわやひげが発生し、包装袋の外観が優れなかった。さらに、フィルムの分子量が低く、引張強度が実用レベルに達しなかった。
【0072】
比較例4では、ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)の添加量が少なかったため、低分子の可塑剤で柔軟性を付与したが、得られた包装袋は、ブリード性に劣り、印刷性も優れなかった。
【0073】
比較例5では、ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)に代えて、ポリ乳酸成分を含まない脂肪族ポリエステルを用いたため、ポリ乳酸(A)との相溶性が悪く、得られた包装袋は、溶断シール強度や柔軟性には優れるものの、ヘイズが高く、透明性に劣っていた。
【0074】
比較例6では、ポリ乳酸系共重合ポリマー(B)に代えて、ポリ乳酸成分を含まない脂肪族−芳香族ポリエステルを用いたため、ポリ乳酸(A)との相溶性が悪く、得られた包装袋は、溶断シール強度や柔軟性には優れるものの、ヘイズが高く、透明性に劣っていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸(A)50〜90質量部と、乳酸成分を30〜70質量%を含むポリ乳酸系共重合ポリマー(B)10〜50質量部とを含む樹脂組成物から構成されたポリ乳酸系二軸延伸フィルムであって、ラクチド量が0.5質量%以下、引張弾性率が3.0GPa以下、かつヘイズが10%以下であるポリ乳酸系二軸延伸フィルムをシールしてなる包装袋。
【請求項2】
シール方法が、溶断シールであることを特徴とする請求項1記載の包装袋。
【請求項3】
シール強度が15N/15mm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の包装袋。
【請求項4】
表面固有抵抗値LOGが14.0[Ω]未満であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の包装袋。


【公開番号】特開2009−107669(P2009−107669A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281810(P2007−281810)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】