説明

包装装置

【課題】 ストレッチフィルムを用いた包装装置においてフィルムを包装部に張設して長時間放置した場合でも、搬送ベルトからフィルムがスムースに抜けるようにする。
【解決手段】 フィルムFの搬送方向に沿った両側縁部を挟持してフィルムFを包装部の所定の包装位置まで搬送する上下で一対の搬送ベルト3,3と、各搬送ベルト3,3よりも内側で、フィルムFを挟持する2組のクランプ7b,7fと、クランプ7b,7fによるフィルムFの挟持中に、一対の搬送ベルト3,3で挟持されたフィルムFの両側縁部とクランプ7b,7fとを相対移動させるように搬送ベルト3,3およびクランプ7b,7fの動作を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装部に張設したストレッチフィルムに向って下方から被包装物を押し上げた後、フィルムで被包装物を包装する包装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の包装装置では、フィルムロールからフィルムを引き出し、当該フィルムの搬送方向に沿った両側縁部を上下一対の搬送ベルトで挟持して包装部に搬送している。引き出されたフィルムは被包装物の大きさに応じてカッタで切断される。(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−12008号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、オペレータが作業を中止するなどの理由により、包装部に搬送されたフィルムに対しトレーを突き上げずに、フィルムを長時間クランプした状態となる場合がある。この場合に、フィルムが搬送ベルトのベルト表面に付着し、包装時にフィルムが搬送ベルトから抜けずにフィルムに大きな張力が発生し、フィルムの張り状態が通常と異なり、包装の仕上り状態が悪くなる原因となる。また、軟弱トレーなどの場合には、トレーを潰してしまうこともある。
【0004】
したがって、本発明の目的は、ストレッチフィルムを用いた包装装置において、フィルムを包装部に張設した状態で長時間放置した場合でも、搬送ベルトからフィルムがスムースに抜けるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の包装装置は、フィルムロールからフィルムを引き出し包装部へ搬送し、そのフィルムの下側からエレベータ機構により被包装物を突き上げて該被包装物の上面をフィルムで覆って包装する包装装置であって、前記フィルムの搬送方向に沿った両側縁部を挟持して前記フィルムを前記包装部の所定の包装位置まで搬送する上下で一対の搬送ベルトと、前記各搬送ベルトよりも内側で、前記フィルムを挟持する2組のクランプと、前記クランプによるフィルムの挟持中に、前記一対の搬送ベルトで挟持されたフィルムの両側縁部と前記クランプとを相対移動させるように前記搬送ベルトおよびクランプの動作を制御する制御手段とを備えている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、搬送ベルトで挟持されたフィルムの両側縁部と前記クランプとを相対移動させることにより、搬送ベルトのベルト表面に貼り付いたフィルムを、該ベルト表面から剥がすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明においては、前記フィルムが前記包装部の所定の包装位置まで搬送された後、当該フィルムを用いた被包装物の包装動作の実行の直前に、前記相対移動が実行されるのが好ましい。
このように、包装動作の実行の直前に前記相対移動を実行することにより、包装部に長時間放置されたフィルムが搬送ベルトから剥がされて、包装動作時にフィルムが搬送ベルトから抜け易くなる。
【0008】
本発明においては、前記搬送ベルトを回転駆動させることにより、前記相対移動が実行されるのが好ましい。
この態様によれば、ハードウエアを変更する必要がないので、コストアップを招くことなく、搬送ベルトの表面に貼りついたフィルムを剥がすことができる。
【0009】
本発明においては、前記フィルムが前記包装部の所定の包装位置まで搬送された後、包装前に所定以上の時間が経過した場合に、前記相対移動が実行されるのが好ましい。
この態様によれば、必要な場合にしか相対移動を行わないので、通常の包装時には無駄な動作を行わないことにより、生産性の低下を防止することができる。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
以下の説明では被包装物の一例として内容物の収容されたトレーTを例示して説明するが、被包装物としては、トレーTに載せられていない商品であってもよい。
【0011】
まず、本包装装置の基本的な構造および動作について説明する。
図1に示すように、本包装装置は、被包装物を正面側2aから搬入して包装した後、正面側2aに排出する前方排出型の包装装置であって、正面2aには、コンベヤなどの供給装置20が設けてある。
【0012】
図2において、供給装置20は、内容物Mの載ったトレー(被包装物)Tをリフタ(エレベータ機構)201上に供給する。リフタ201の各ポスト210は、包装機構200の包装ステーション(包装部)Sの直下に配置されていると共に、昇降手段208により上下昇降自在とされている。このリフタ201は、供給装置20からトレーTが供給されると、上昇してトレーTを包装ステーションSまで持ち上げる。
【0013】
一方、包装動作に先立ち、前記包装ステーションSには、張設状態のフィルムFが一対の搬送ベルト3,3によって供給されている。このフィルムFは、トレーTが押し上げられると、トレーTの上面に密着する。この状態で、フィルム折込み機構203は、図3の一対の左右折込板204,204と、後折込板205と、丸棒状の前折込部材206と、プッシャー207(図2)によって、フィルムFの前後左右の各側縁部を、トレーTの底面側に折り込んで包装すると共に、図2の熱溶着コンベヤ10上に包装済のトレーTを搬送する。熱溶着コンベヤ10は、底面に折り込まれたフィルムF同士を互いに溶着し、その後、トレーTが図1の排出台209上に排出される。
なお、排出される包装済の商品Mには、ラベル貼付機12によってラベルが貼付される。
【0014】
フィルム供給機構:
図4の概略断面図に示すように、本装置の左右方向Yの両側には、フィルム渡し手段5および切断装置6からなるフィルム供給機構と、フィルムロールFrとが、それぞれ一対設けられている。前記左右のフィルム供給機構のうち、いずれか一方のフィルム供給機構が選択されてフィルムFが、搬送ベルト(供給手段)3,3により包装ステーションSに供給される。
【0015】
フィルム渡し手段5は、フィルムロールFrから引き出されたフィルムFを前記搬送ベルト3,3に受け渡す。図5の搬送ベルト3,3は、フィルムFの搬送方向Yに沿った両側縁部Feを挟持し、該フィルムFを図4の包装ステーションSに向って引き出す。
【0016】
前記フィルム供給機構は概ね左右対称に構成されており、以下の説明では、主に右側の部分について説明する。
前記フィルム渡し手段5は、一対のフィルム差込板51,52と、フィルム差込板51に支持される複数のワンウェイローラ53とを備えている。
前記フィルム差込板51,52は、搬送ベルト3,3に渡すフィルムFの先端側を挟み付けて上下に移動する。フィルム差込板51,52は、退避端位置P1から上昇し、搬送ベルト3,3にフィルムの先端部F2を差し渡す。
【0017】
前記搬送ベルト3,3は、それぞれ前後に2組の下駆動ベルト31、上従動ベルト32および導入ベルト33を備えている。導入ベルト33は、フィルム渡し手段5によって下方から送られてくるフィルムFを下駆動ベルト31の上流端部との間で挟持して、このフィルムFを下駆動ベルト31と上従動ベルト32との間へと導く。
【0018】
前記切断装置6は、カッタ61とチョッピングベース62とを備えている。カッタ61は、チョッピングベース62に当接してフィルムFを切断する。
【0019】
包装ステーションS:
図5は、包装ステーションSの概略平面断面図である。
図2および図5に示すように、前記搬送ベルト3,3の内側(フィルムF側)には、2組のクランプ装置7b,7fが設けられている。各クランプ装置7b,7fは、搬送ベルト3,3により包装ステーションSの所定の包装位置まで搬送されたフィルムFを搬送ベルト3,3の内側においてフィルムFの側縁部Feの近傍をクランプする。
【0020】
図6(a)〜(d)は、図5のVI-VI 線断面を模式化して示す。
図6(a)に示すように、クランプ装置7b(7f)は、可動クランプ板74a、固定クランプ板74bおよび駆動機75を備えている。
【0021】
可動クランプ板74aは、昇降自在で、フィルムFの搬送方向Yに複数個に分割して設けられている。固定クランプ板74bは、可動クランプ板74aの下方に固定された帯状の板で構成されている。可動クランプ板74aが駆動機(たとえば電磁弁)75により上下することで、図6(a),(b)に示す可動クランプ板74aと固定クランプ板74bが若干離れた開放状態から、図6(c),(d)に示す可動クランプ板74aと固定クランプ板74bとの間にフィルムFが挟持された挟持状態とに設定される。
【0022】
図4の搬送ベルト3,3のベルト31〜33が回転駆動され、フィルムFが下駆動ベルト31および上従動ベルト32間を移送されることで、該フィルムFがフィルムロールFrから引き出される。切断装置6によって切断されたフィルムFは、図6(b)に示すように、該ベルト31,32によって所定の包装位置まで搬送され張設された状態で保持される。
【0023】
なお、各ベルト31〜33としては、回転駆動して、該フィルムFの引き出しおよび搬送を行うために、たとえば、ゴム弾性を持つ熱可塑性エラストマーやゴムなどのゴム様部材を用いるのが好ましい。
【0024】
一方、可動クランプ板74aおよび固定クランプ板74bのフィルムFに接する側の材質としては、搬送ベルト3,3よりも硬度の大きいものを用いるのが好ましく、たとえば、ポリオキシメチレン(POM:一般的には、ポリアセタールやアセタール樹脂と呼ばれる)等の熱可塑性樹脂を用いることができ、より具体的には、ポリプラスチック株式会社(登録商標)のジュラコン(登録商標)等を採用することができる。フィルムFが各クランプ板74a,74bの表面に粘着しにくくするためである。
【0025】
前述の各装置は、たとえば、モータドライバなどの駆動回路およびマイクロコンピュータからなる制御手段(図示せず)によって制御されている。制御手段には、たとえば、タイマからなる図示しない計時手段が内蔵されている。
【0026】
包装動作:
図6(a)のようにクランプ板74a,74bが開いた開放状態において、図4のフィルム渡し手段5によりフィルムFの先端が、搬送ベルト3,3の下駆動ベルト31と上従動ベルト32との間に進入すると、両ベルト31,32によりフィルムFがフィルムロールFrから引き出される。この引き出しにより、フィルムFの長さが所定のカット長さに達すると、切断装置6によりフィルムFが切断される。
図6(b)に示すように、切断されたフィルムFは、前記ベルト31,32により、包装ステーションSの所定の包装位置(たとえば包装ステーションSの中心)まで搬送される。
【0027】
前記搬送後、図6(c)に示すように、可動クランプ板74aが若干下降し、固定クランプ板74bとの間で、フィルムFの両側縁部Feを挟持し、包装動作に対して待機する。その後、図2に示すリフタ201が所定の上昇端まで上昇すると、トレーTがフィルムFに密着する位置まで上昇し、前述のフィルムFの折り込みが開始される。つまり、前記包装動作が実行される。前記挟持状態の各クランプ装置7b,7fは、各折込板204,205が所定の状態までフィルムを折り込んだときに、開放状態となるように制御される。
【0028】
ここで、図6(b)のフィルムFが包装ステーションSの所定の包装位置に搬送されると、前記計時手段が計時を開始する。前記制御手段は、前記計時手段からの計時信号に基づき、以下のように包装動作の制御を行う。すなわち、前記包装動作が開始されるまでの間に、所定の時間が経過していない場合には、フィルムFが所定の包装位置に搬送された後に、前述の包装動作が直ちに行われる。一方、包装動作前に、所定以上の時間が経過した場合には、つまり、オペレータが作業を中止するなどの理由により、フィルムFの待機時間が長くなった場合には、フィルムFが搬送ベルト3,3のベルト表面に粘着することがある。そのため、かかる場合には、前記包装動作に先立ち、前記包装動作の直前に、以下に述べる相対移動が行われる。
【0029】
相対移動:
図6(d)に示すように、クランプ装置7b(7f)がフィルムFを挟持した状態で、搬送ベルト3,3がフィルムFの搬送方向に若干回転駆動される。かかる回転により、一対の搬送ベルト3,3で挟まれたフィルムFの両側縁部Feと、クランプ装置7b,7fとが相対移動される。この相対移動により、搬送ベルト3,3はフィルムFを搬送方向に移動させようとするが、クランプ装置7b(7f)がフィルムFを挟持しているので、搬送ベルト3,3のベルト表面にフィルムFが貼り付いていても、フィルムFが搬送ベルト3,3の表面から剥がれる。
【0030】
すなわち、包装動作を一時停止させたまま放置した場合には、前記包装動作の直前に、前記相対移動が行われることにより、搬送ベルト3,3の下駆動ベルト31および上従動ベルト32の表面に張りついたフィルムFを、該ベルト31,32表面から剥がすことができる。したがって、搬送ベルト3,3の間からフィルムFがスムースに抜けるので、美しい包装の仕上り状態が期待できる。
【0031】
また、前記ベルト31,32に貼り付いたフィルムFを、搬送ベルト3,3を駆動することにより剥がすので、ハードウエアを変更する必要もない。したがって、殆どコストアップを招くことなく、フィルムFの剥がしを行うことができる。
さらに、所定以上の時間が経過した場合にのみ相対移動を行い、通常の包装動作では相対移動を行わないので、通常の包装時のサイクルタイムが長くならない。
【0032】
なお、相対移動の方法としては、種々の方法が考えられるが、前述のベルト31,32を回転駆動する以外に、たとえば、両搬送ベルト3,3の回転を停止したまま、両搬送ベルト3,3を互いにフィルムFの外側に向って移動させてもよい。また、搬送ベルト3,3を搬送方向に逆転させてもよい。
【0033】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、包装装置としては、正面側から包装済の商品を排出するタイプの包装装置の他に、包装済の商品を背後に排出するタイプであってもよい。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、フィルムロールから引き出したフィルムを用いて被包装物を包装する包装装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例にかかる包装装置の概略斜視図である。
【図2】包装機構を示す概略側面図である。
【図3】フィルムの折り込み動作を示す斜視図である。
【図4】フィルムの供給機構を示す概略断面図である。
【図5】包装ステーションを示す概略平面断面図である。
【図6】相対移動の方法を示す包装ステーション付近の概略断面図である。
【符号の説明】
【0036】
3:搬送ベルト
7b:クランプ装置
7f:クランプ装置
201:リフタ(エレベータ機構)
F:フィルム
Fe:フィルムの側縁部
Fr:フィルムロール
S:包装ステーション(包装部)
T:トレー(被包装物)
Y:フィルムの搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムロールからフィルムを引き出し包装部へ搬送し、そのフィルムの下側からエレベータ機構により被包装物を突き上げて該被包装物の上面をフィルムで覆って包装する包装装置であって、
前記フィルムの搬送方向に沿った両側縁部を挟持して前記フィルムを前記包装部の所定の包装位置まで搬送する上下で一対の搬送ベルトと、
前記各搬送ベルトよりも内側で、前記フィルムを挟持する2組のクランプと、
前記クランプによるフィルムの挟持中に、前記一対の搬送ベルトで挟持されたフィルムの両側縁部と前記クランプとを相対移動させるように前記搬送ベルトおよびクランプの動作を制御する制御手段とを備えた包装装置。
【請求項2】
請求項1において、前記フィルムが前記包装部の前記所定の包装位置まで搬送された後、当該フィルムを用いた被包装物の包装動作の実行の直前に、前記相対移動が実行される包装装置。
【請求項3】
請求項1もしくは2において、前記搬送ベルトを回転駆動させることにより、前記相対移動が実行される包装装置。
【請求項4】
請求項1,2もしくは3において、前記フィルムが前記包装部の前記所定の包装位置まで搬送された後、包装前に所定以上の時間が経過した場合に、前記相対移動が実行される包装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−327670(P2006−327670A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157193(P2005−157193)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】