匍匐害虫用の毒餌剤容器
【課題】誘引成分を広範囲に拡散させるとともに、匍匐害虫をできるだけ警戒させないようにして容器内の毒餌剤まで誘き寄せることができるようにして、匍匐害虫の防除力を向上させる。
【解決手段】匍匐害虫を防除するための毒餌剤を収容する匍匐害虫用の毒餌剤容器1は、当該容器1の設置場所に置かれる設置用板部10を備えている。設置用板部10の中央寄りの部位には、毒餌剤が載置される載置面部10cが設けられている。設置用板部10の外周側は、バリアフリー構造とされて開放されている。
【解決手段】匍匐害虫を防除するための毒餌剤を収容する匍匐害虫用の毒餌剤容器1は、当該容器1の設置場所に置かれる設置用板部10を備えている。設置用板部10の中央寄りの部位には、毒餌剤が載置される載置面部10cが設けられている。設置用板部10の外周側は、バリアフリー構造とされて開放されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリやゴキブリ等の匍匐害虫を防除するための毒餌剤を収容する匍匐害虫用の毒餌剤容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の匍匐害虫用の毒餌剤容器としては各種考案されており、例えば、特許文献1には、底板材と上板材との間に毒餌剤を収容するように構成されたものが開示されている。特許文献1の容器の底板材の外周側には、上方へ突出して縁部に沿うように延びる突条部が形成され、また、上板材の外周側には、下方へ突出する同様な突条部が形成されている。底板材の突条部と上板材の突条部との先端面同士が接合されて、毒餌剤を囲むような周壁部を構成している。
【0003】
また、特許文献2の容器も、底板材と上板材とを備えている。底板材には、毒餌剤を囲むように延びる周壁部が形成されている。
【0004】
また、特許文献3の容器は、2枚の側板材の間に毒餌剤を収容するように構成されている。容器の底部には、毒餌剤の収容部分よりも外側に、毒餌剤の周囲を囲むような形状のスロープが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−110285号公報
【特許文献2】実開昭62−13176号公報
【特許文献3】特開2001−37396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アリやゴキブリ等の匍匐害虫は、地面や屋内の床面等を匍匐しながら移動しており、しかも、障害物等には極めて敏感に反応する習性を持っている。従って、特許文献1、2の容器のように、毒餌剤を囲む周壁部が存在していると、容器を地面等に置いた際に、匍匐害虫から見ると周壁部が大きな障害物として認識される。また、特許文献3の容器のスロープも毒餌剤を囲むような形状である。アリ等の小型害虫では、特許文献1、2の周壁部や特許文献3のスロープを乗り越えることは難しく、ひいては、毒餌剤に達し難くなり、匍匐害虫の防除力が低下してしまう。
【0007】
また、毒餌剤には、一般に、匍匐害虫を誘引するための誘引成分が混入されている。ところが、特許文献1、2の容器の周壁部は毒餌剤を囲んでいるので、誘引成分が容器の周りに広範囲に拡散しにくくなっている。また、特許文献3の容器もスロープが毒餌剤を囲んでいるので、誘引成分が拡散しにくい。このことにより、例えば臭覚の発達したゴキブリ等の匍匐害虫の防除力が低下してしまう。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、誘引成分を広範囲に拡散させることができるようにするとともに、例えばアリ等の小型害虫が乗り越えるのが難しい様な高さを有する周壁部等の障害物を除去して、匍匐害虫の防除力を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、毒餌剤が載置される板部の外周側をバリアフリー構造として開放するようにした。
【0010】
第1の発明は、匍匐害虫を防除するための毒餌剤を収容する匍匐害虫用の毒餌剤容器であって、当該容器の設置場所に置かれる設置用板部を備え、上記設置用板部の中央寄りの部位には、毒餌剤が載置される載置面部が設けられ、上記設置用板部の外周側は、バリアフリー構造とされて開放されていることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、設置用板部の外周側に周壁部が無く開放されているので、設置用板部の載置面部に載置された毒餌剤に含まれる誘引成分は、設置用板部の外周側から容器の周りに広範囲に拡散し易くなる。また、小型の匍匐害虫にとっては乗り越えるのが難しい様な高さを有する周壁部等の障害物が無いことにより、本発明の容器に対しては従来例のものに比べて毒餌剤への接近性(毒餌剤への接近のし易さ)が格段に向上することとなる。また、上記誘引成分の広範囲への拡散効果によって、臭覚の発達した匍匐害虫が毒餌剤まで達し易くなる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、設置用板部と対向するように配置される対向板部と、上記対向板部を上記設置用板部に対し間隔をあけた状態で連結する柱状部とを備え、上記対向板部は、当該容器の設置場所に置くことが可能に形成されるとともに、バリアフリー構造とされていることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、対向板部を容器の設置場所に置くことが可能になるので、設置用板部と対向板部のどちら側を設置場所に置いてもよく、設置の自由度が向上する。そして、対向板部もバリアフリー構造であるので、上述したように匍匐害虫が毒餌剤まで達し易くなる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、設置用板部と対向板部との離間方向の寸法は、設置用板部及び対向板部の外形寸法よりも短く設定されていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、例えば、容器を地面に放り投げることによって設置する場合に、設置用板部と対向板部との離間方向の寸法が両板部の外形寸法よりも短いので、設置用板部又は対向板部のいずれかが地面に接するように倒れ易い形状となる。これにより、放り投げることによって設置しても、所期の防除力が得られるようになる。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、対向板部には、載置面部よりも外側へ延出する庇部が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、容器を外側から見ると、毒餌剤が奥まったところに位置することになるので、匍匐害虫が好んで出入りする暗い環境を作り出すことが可能になる。
【0018】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、設置用板部の外周側には、周縁に行くほど設置場所における設置面に接近するように下降傾斜し、匍匐害虫を該設置用板部の中央側へと案内するための害虫案内面が形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、匍匐害虫を害虫案内面によって毒餌剤へ案内することが可能になる。
【0020】
第6の発明は、第5の発明において、害虫案内面の傾斜角度は、20゜以下に設定されていることを特徴とするものである。
【0021】
すなわち、アミメアリ及びクロヤマアリ等の人家周辺によく現れるアリを対象とした場合、これらアリは害虫案内面の角度が20゜以下であれば、害虫案内面を大きな障害物として認識し難く、しかも、害虫案内面を歩行する際に脚が滑り難くなる。よって、上記角度以下とすることで、匍匐害虫としてのアリを害虫案内面によって毒餌剤へ効果的に案内することが可能になる。
【0022】
第7の発明は、第5または6の発明において、害虫案内面の下縁部から上縁部までの長さは、5mm以下に設定されていることを特徴とするものである。
【0023】
すなわち、アミメアリ及びクロヤマアリ等の人家周辺によく現れるアリは、体長が数mm〜5mm程度である。これらアリを対象とした場合、害虫案内面の長さが体長程度もしくは体長の2倍程度であれば、害虫案内面を大きな障害物として認識し難くなる。よって、上記範囲の長さとすることで、匍匐害虫としてのアリを害虫案内面によって毒餌剤へ効果的に案内することが可能になる。
【0024】
第8の発明は、第5から7のいずれか1つの発明において、害虫案内面には滑り止め加工が施されていることを特徴とするものである。
【0025】
この構成によれば、匍匐害虫が害虫案内面を通って毒餌剤まで容易に達するようになる。
【0026】
第9の発明は、第8の発明において、滑り止め加工は、害虫案内面に施したシボ加工であり、シボの深さは13μm以上に設定されていることを特徴とするものである。
【0027】
すなわち、毒餌剤容器を屋外に置いた場合には、害虫案内面に埃等が付着することがある。アミメアリ及びクロヤマアリ等の人家周辺によく現れるアリを対象とした場合、シボの深さが13μm以上であれば、害虫案内面に埃等が付着していても、アリの脚が滑り難くなり、アリを害虫案内面によって毒餌剤へ効果的に案内することが可能になる。
【0028】
第10の発明は、第1から9のいずれか1つの発明において、複数の容器を連結するための連結部を備え、上記連結部は、隣り合う容器を分離可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0029】
この構成によれば、使用前に連結部によって複数の容器を連結しておくことで、搬送時には一体化されて取扱いが容易になる。一方、使用時には容器を分離させることで、別々の場所に設置することが可能になる。
【発明の効果】
【0030】
第1発明によれば、毒餌剤が載置される設置用板部の外周側をバリアフリー構造として開放したので、毒餌剤に含まれる誘引成分を容器の周りに広範囲に拡散させることができるとともに、特に小型害虫にとっては乗り越えるのが難しい高さの周壁部を取り除くことができる。これにより、匍匐害虫が毒餌剤まで達し易くなり、匍匐害虫の防除力を向上させることができる。
【0031】
第2の発明によれば、設置用板部に対向板部を連結し、この対向板部を容器の設置場所に置けるようにし、しかも、バリアフリー構造としたので、防除力を向上させながら、設置の自由度を高めて扱い易い容器にすることができる。
【0032】
第3の発明によれば、設置用板部と対向板部との離間方向の寸法を、設置用板部及び対向板部の外形寸法よりも短くしたので、容器を放り投げるようにして設置しても、所期の防除力を得ることができ、より一層扱い易い容器にすることができる。
【0033】
第4の発明によれば、対向板部に、載置面部よりも外側へ延出する庇部を設けたので、匍匐害虫が好んで出入りする環境を作り出すことができ、防除力をより一層向上できる。
【0034】
第5の発明によれば、設置用板部の外周側に害虫案内面を設けたので、害虫の防除力をより一層向上できる。
【0035】
第6、7の発明によれば、匍匐害虫がアリの場合に毒餌剤まで達し易くなり、防除力をより一層向上できる。
【0036】
第8、9の発明によれば、害虫案内面に滑り止め加工を施したことで、害虫が毒餌剤まで達し易くなり、防除力をより一層向上できる。
【0037】
第10の発明によれば、複数の容器を連結するための連結部を備え、連結部は、隣り合う容器を分離可能に構成されているので、複数の容器の搬送時に取扱いを容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態1にかかる容器の斜視図である。
【図2】実施形態1にかかる容器の平面図である。
【図3】実施形態1にかかる容器の底面図である。
【図4】実施形態1にかかる容器の正面図である。
【図5】実施形態1にかかる容器の背面図である。
【図6】実施形態1にかかる容器の左側面図である。
【図7】図2におけるVII−VII線断面図である。
【図8】図6におけるVIII−VIII線断面図である。
【図9】実施形態1にかかる容器の使用状態を説明する図である。
【図10】設置用板部の一部を拡大して示す側面図である。
【図11】実施形態1にかかる複数の容器を連結した状態の斜視図である。
【図12】実施形態1にかかる複数の容器を連結した状態の平面図である。
【図13】実施形態1にかかる容器を分離した状態の平面図である。
【図14】実施形態1の変形例にかかる図1相当図である。
【図15】実施形態2にかかる図1相当図である。
【図16】実施形態2にかかる図2相当図である。
【図17】実施形態2にかかる図3相当図である。
【図18】実施形態2にかかる図4相当図である。
【図19】図16におけるXVIII−XVIII線断面図である。
【図20】図18におけるXIX−XIX線断面図である。
【図21】図18におけるXX−XX線断面図である。
【図22】実施形態2にかかる図9相当図である。
【図23】実施形態2にかかる図12相当図である。
【図24】実施形態2にかかる図13相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0040】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる匍匐害虫用の毒餌剤容器1を示すものである。容器1には、詳細は後述するが、匍匐害虫を防除するための毒餌剤A(図9に示す)が収容されるようになっている。毒餌剤Aが収容された容器1は、例えば、屋外の地面や、屋内の床面(図9に符号Gで示す)等の設置場所に設置される。この容器1が防除対象としている匍匐害虫は、アルゼンチンアリ、トビイロケアリ、ルリアリ、イエヒメアリ等のアリ類である。尚、防除対象の匍匐害虫は、アリ類に限らず、例えば、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ等のゴキブリ類、ダンゴムシ、ワラジムシ、ナメクジ等を対象とすることも可能であり、この場合、毒餌剤Aの組成を変更したり、また、容器1の大きさを変更すればよい。
【0041】
図1〜図7に示すように、容器1は、設置場所に置かれる設置用板部10と、設置用板部10と対向するように配置される対向板部20と、対向板部20を設置用板部10に対し間隔をあけた状態で連結する第1〜第3柱状部31〜33とを備えている。
【0042】
設置用板部10は、樹脂材を略平板状に成形してなるものである。図3に示すように、設置用板部10の形状は、容器1の底面から見て、5枚の花びらを有する花をモチーフにした形状であり、全体が例えば透光性を有する薄いピンク色等に着色されている。設置用板部10の外周側には、花びらを形作るように延出した第1〜第5延出部11〜15が設けられている。これら延出部11〜15は同じ形状であり、設置用板部10の周方向に等間隔に配置されて放射状に延び、図9に示す設置面Gに沿うような形状となっている。
【0043】
図7に示すように、設置用板部10における容器1内側に位置する内面10aには、対向板部20側へ向けて突出して周方向に延びる突条部16が形成されている。図8に示すように、突条部16は、平面視で円環を形成するように周方向に連続していて、その中心は、設置用板部10の中心と略一致している。
【0044】
突条部16の幅は、全周に亘って同じに設定されている。図7に示すように、突条部16の高さは、該突条部16の幅方向の中央部よりも、設置用板部10の中心に寄った部位が最も高くなっており、この最も高い部分は、設置用板部10の内面10aからの高さh1が、3mm以下に設定されている。その理由としては、外部から容器1内に雨水等の水が侵入するのを防止する機能、あるいは毒餌剤Aが容器1から脱落するのを防止する機能を維持しつつ、アリの接近性(毒餌剤Aへの接近のし易さ)に支障のない程度の高さとするためである。
【0045】
突条部16の外周側を構成する外周面16aは、設置用板部10の中心側に行くほど対向板部20に近づくように傾斜する傾斜面で構成されている。また、突条部16の内周側を構成する内周面16bは、設置用板部10の外側に行くほど対向板部20に近づくように傾斜する傾斜面で構成されている。内周面16bの外縁は、外周面16aの内縁に連なっている。従って、突条部16の縦方向の断面は略三角形状となっている。
【0046】
外周面16aの傾斜度合いは、内周面16bの傾斜度合いよりも小さく設定されており、外周面16aが比較的緩やかになっている。また、外周面16aには、アリの滑り止めとなるように、シボ加工(滑り止め加工)が全周に亘って形成されている。尚、外周面16aには、シボ以外の滑り止め加工を施してもよく、例えば、微小な凸又は凹を形成してもよい。
【0047】
設置用板部10の内面10aのうち、突条部16よりも内側部分は毒餌剤Aが載置される毒餌剤載置面10cとされている。毒餌剤載置面10cは、略平面で構成されている。この毒餌剤載置面10cと、第1〜第5延出部11〜15の内面とは、略同一面上に位置するようになっている。
【0048】
図9にも示すように、設置用板部10の内面10aの外周側には、アリを設置用板部10の中央側へと案内するための傾斜面(害虫案内面)10dが形成されている。傾斜面10dは、設置用板部10の外周縁に行くほど設置場所の面Gに接近するような傾斜角度となっている。
【0049】
図10に示す傾斜面10dの傾斜角度αは、20゜以下に設定されている。これは、人家周辺によく現れるアリを対象として、当該アリが毒餌剤Aまで到達し易い角度を本発明者らが実験により得て設定されたものである。傾斜面10d上には、タルクを散布して、人工的に滑りやすい状況(屋外に放置されて埃が付着した状況)を作った。タルクの散布量は、1平方センチメートルあたり0.05〜0.08mgである。また、散布したタルクは、健栄製菓株式会社製の「タルクケンエ」である。
【0050】
この実験に用いたアリは、アミメアリ、クロヤマアリである。実験では傾斜面10dの角度を10゜から45゜まで変更し、アミメアリ及びクロヤマアリをそれぞれ5匹用意し1匹ずつ傾斜面10dに載せて上に向かって歩行するか観察した。その結果、傾斜面10dの角度が20゜を越えると、アミメアリ及びクロヤマアリの両方で脚を滑らせてしまうアリが多く(全体の80%)、一方、20゜以下にすると、アミメアリ及びクロヤマアリの両方で傾斜面10dを上に向かって歩行するアリが多い(全体の80%)。また、傾斜面10dの角度が20゜を越えると、アリの中には傾斜面10dを大きな障害物として認識するものが多く、傾斜面10dを下へ歩行するようになる傾向が見られた。一方、傾斜面10dの角度が20゜以下であると、傾斜面10dを大きな障害物として認識し難くなり、傾斜面10dを上へ歩行するようになる傾向が見られた。
【0051】
つまり、傾斜面10dの角度を20゜以下とすることで、アリが傾斜面10dを大きな障害物として認識し難く、しかも、傾斜面10dを歩行する際に脚が滑り難くなるので、アリを傾斜面10dによって毒餌剤Aへ効果的に案内することが可能になる。尚、傾斜面10dの角度は18゜以下が好ましく、より好ましくは15゜である。傾斜角度が15゜あれば、毒餌剤容器1内に雨水等が入り難くなる。
【0052】
傾斜面10dは、図8に示すように、設置用板部10の略全周に亘るように形成されており、第1〜第5延出部11〜15の形状に対応して、平面視で湾曲しながら延びている。傾斜面10dの形成によって、設置用板部10の外周側の厚みは外周縁に行くほど薄くなっている。また、傾斜面10dには、上記突条部16の外周面16aと同様に滑り止め加工が施されている。
【0053】
滑り止め加工としては、シボ加工が好ましい。シボ加工のシボの深さは、13μm以上に設定されている。これは、人家周辺によく現れるアリを対象として、当該アリが毒餌剤Aまで到達し易いか否かを本発明者らが実験により得て設定されたものである。
【0054】
実験に用いたアリは、上記と同じアミメアリ、クロヤマアリである。シボの深さは、5μm〜120μmまで複数段階に変化させ、アミメアリ及びクロヤマアリを1匹ずつ傾斜面10d上に載せて傾斜面10dを上に向かって歩行するか観察した。このとき、傾斜面10d上には、タルクを散布して、人工的に滑りやすい状況を作った。タルクの散布量は、1平方センチメートルあたり0.05〜0.08mgである。また、この実験においては、傾斜面10dの角度を20゜、30゜、45゜に変化させている。
【0055】
小型種であるアミメアリの場合は、傾斜面10dに形成したシボの深さが例えば5μmでは、傾斜角度が20゜であれば略全てのアリが傾斜面10dを上に歩行できたが、傾斜角度が30゜、45゜では略全てのアリが脚を滑らせて傾斜面10dを上に歩行できなかった。一方、シボの深さが13μmでは、傾斜角度が20゜、30゜であれば略全てのアリが傾斜面10dを上に歩行でき、また、傾斜角度が45゜であれば60%のアリが傾斜面10dを上に歩行できた。
【0056】
大型種のクロヤマアリの場合は、傾斜面10dに形成したシボの深さが例えば5μmでは、傾斜角度が20゜であれば略全てのアリが傾斜面10dを上に歩行できたが、傾斜角度が30゜、45゜では略全てのアリが脚を滑らせて傾斜面10dを上に歩行できなかった。一方、シボの深さが13μmでは、傾斜角度が20゜であれば略全てのアリが傾斜面10dを上に歩行でき、また、傾斜角度が30゜であれば、60%のアリが傾斜面10dを上に歩行でき、また、傾斜角度が45゜であれば80%のアリが傾斜面10dを上に歩行できた。
【0057】
従って、シボの深さを13μm以上にすることで、毒餌剤容器1が屋外に放置されて傾斜面10d上に埃が付着した状況であっても、アリが脚を滑らせ難く、アリを傾斜面10dによって毒餌剤Aへ効果的に案内することが可能になる。尚、シボの深さの上限は、100μmが好ましく、より好ましくは50μmである。シボが深くなり過ぎるとアリが警戒するためである。
【0058】
また、図10に示す傾斜面10dの下縁部から上縁部までの長さLは、2mm以上5mm以下に設定するのが好ましい。これは、人家周辺によく現れるアリを対象として、当該アリが毒餌剤Aまで到達し易い長さを本発明者らが実験により得て設定されたものである。
【0059】
実験では傾斜面10dの長さLを1mmから20mmまで変更し、アミメアリ及びクロヤマアリを1匹ずつ設置面上に置き、傾斜面10dを上に向かって歩行するか観察した。その結果、傾斜面10dの長さLが5mmを越えると、アミメアリ及びクロヤマアリの両方が傾斜面10dを大きな障害物として認識するものが多く、下へ歩行し、最終的に傾斜面10dを登り切ることができない。これは、成虫のアミメアリの体長が約3mm程度で、成虫のクロヤマアリの体長が約5mm程度であり、傾斜面10dの長さLが、これらアリの体長よりも大幅に長い(体長の2.5倍〜3倍以上)と傾斜面10dを大きな障害物として認識し易くなることに起因している。
【0060】
つまり、傾斜面10dの長さLを5mm以下とすることで、傾斜面10dを大きな障害物として認識し難くなり、アリを傾斜面10dによって毒餌剤Aへ効果的に案内することが可能になる。
【0061】
傾斜面10dの角度を上述した20゜以下とし、かつ、傾斜面10dの長さLを5mm以下とすることで、設置用板部10の内面10aは低い所に位置することになる。これにより、バリアフリー構造が実現される。
【0062】
設置用板部10の延出部11〜15における傾斜面10d以外の部分の厚みT(図9に示す)は、0.5mm以上3.0mm以下に設定されている。これにより、第1〜第5延出部11〜15がアリの障害となりにくい。また、設置用板部10は、匍匐状態のアリの頭部位置よりも高い所まで延びるような周壁部の無い、いわゆるバリアフリー構造とされており、容器1の側部は開放されるようになっている。
【0063】
尚、設置用板部10の外周側には、匍匐状態にあるアリの頭部位置よりも低い高さの突条を設けてもよく、この程度の低い突条であれば、アリの警戒心がそれほど高まることはない。
【0064】
図3に示すように、設置用板部10の容器1外側に位置する外面10bには、第1凹部11a〜15aが形成されている。これら第1凹部11a〜15aは、それぞれ、第1〜第5延出部11〜15の中央部に位置している。また、設置用板部10の外面10bには、隣り合う延出部11〜15の間に対応する部分に第2凹部10gが形成されている。
【0065】
図2に示すように、対向板部20は、設置用板部10と同じ形状とされている。すなわち、対向板部20は、第1〜第5延出部21〜25を有し、また、図7に示すように、対向板部20の内面20aには、外周面26a及び内周面26bを有する突条部26と、後述する害虫案内面となる傾斜面20dとが形成されている。対向板部20の外面20bには、図1及び図2に示すように、第1凹部21a〜25aと、第2凹部20gとが形成されている。
【0066】
また、対向板部20は、設置用板部10と同様に、周壁部の無いバリアフリー構造とされており、従って、容器1の側部は設置用板部10側から対向板部20側に亘って全体が開放されている。さらに、対向板部20は、設置用板部10と略平行である。
【0067】
図2や図3に破線で示すように、第1〜第3柱状部31〜33は、略円形断面を有している。図4〜図6に示すように、第1〜第3柱状部31〜33は、それぞれ、設置用板部10と一体成形される基端側部31a〜33aと、対向板部20と一体成形される先端側部31b〜33bとを備えている。
【0068】
尚、基端側部31a〜33aの長さと、先端側部31b〜33bの長さとは、同じにしてもよいし、異ならせてもよい。
【0069】
図8に示すように、第1柱状部31の基端側部31aは、設置用板部10の内面における第1延出部11と第2延出部12との間から突出している。第2柱状部32の基端側部32aは、設置用板部10の内面における第3延出部13と第4延出部14との間から突出している。第3柱状部33の基端側部33aは、設置用板部10の内面における第1延出部11と第5延出部15との間から突出している。
【0070】
また、同様に、第1柱状部31の先端側部31bは、対向板部20の内面における第1延出部21と第2延出部22との間から突出している。第2柱状部32の先端側部32bは、対向板部20の内面における第3延出部23と第4延出部24との間から突出している。第3柱状部33の先端側部33bは、対向板部20の内面における第1延出部21と第5延出部25との間から突出している。
【0071】
基端側部31a〜33aの先端面は、先端側部31b〜33bの突出方向先端面と溶着されている。溶着時に用いられる方法としては、例えば超音波溶着法が挙げられるが、これ以外の方法で溶着するようにしてもよいし、例えば、接着剤で接着するようにしてもよい。
【0072】
容器1の設置用板部10と対向板部20との離間方向の寸法h2は、設置用板部10及び対向板部20の外形寸法W1よりも十分に小さく設定されている。従って、容器1は、例えば放り投げられた際に、設置用板部10と対向板部20との一方が設置場所に接するように倒れ易い、扁平形状となっており、設置用板部10及び対向板部20が鉛直に延びるような姿勢で立つことは殆ど無いように設計されている。尚、設置用板部10及び対向板部20の外形寸法W1は、例えば、25mm以上50mm以下に設定されており、小型の容器1となっている。
【0073】
図9に示すように、容器1に収容される毒餌剤Aは、略球状に成形されており、設置用板部10の毒餌剤載置面10cに載置されている。毒餌剤Aの直径は、設置用板部10の内面10aと対向板部20の内面20aとの離間寸法h2(図4に示す)よりも予め大きめに設定されている。そして、毒餌剤Aは、毒餌剤載置面10cに載置された状態で、対向板部20の内面20aにおける突条部26よりも内側の面にも接触するようになっている。この状態で毒餌剤Aが僅かに押し潰された状態で容器1に保持される。
【0074】
毒餌剤Aは、フィプロニル(殺虫成分)、溶剤、ホウ酸、グリセリン、煮干を粉末状にした煮干粉、グラニュー糖、水飴、マッシュポテトを乾燥させた乾燥マッシュポテト、ビトレックス(安息香酸デナトニウム)、イオン交換水を混合してなるものである。ホウ酸は、防腐剤の目的で混合している。また、グリセリン及び水飴は、保湿剤の目的で混合している。また、煮干粉、グラニュー糖は、アリを誘引するための誘引剤である。また、乾燥マッシュポテトは、毒餌剤Aの基材になるとともに、誘引剤としても作用する。ビトレックスは毒餌剤Aに強い苦みを与えて誤飲防止を図るものである。
【0075】
毒餌剤Aの成分中、アリが好むグラニュー糖の重量割合が最も多く、このグラニュー糖は水飴に溶解している。すなわち、グラニュー糖が析出しないように水飴の量が設定されている。また、保湿剤として作用する水飴及びグリセリンを混合していることで、毒餌剤Aにはしっとりとした感触を与えることが可能となっている。アリは、しっとりとした(保湿されている)毒餌剤Aを好むので、水飴及びグリセリンの量を調整することでアリの好む程度のしっとり感を与えている。また、水分が毒餌剤Aから垂れ出さないように、グリセリンの量が適切に設定されている。さらに、煮干粉及び乾燥マッシュポテトを混合させることで、長期間に亘って所定形状を維持できる形状維持性が得られる。
【0076】
また、水飴の粘性と、煮干粉及び乾燥マッシュポテトの形状維持性とにより、毒餌剤Aが、常温雰囲気から夏場の外気温程度の高温雰囲気中において垂れにくい性質を有する高粘度のペースト状になる。
【0077】
尚、グラニュー糖の代わりに、上白糖や三温糖、黒砂糖等を用いてもよく、これらを混合したものを用いてもよい。つまり、毒餌剤Aにはショ糖が含まれていればよい。
【0078】
また、毒餌剤Aには、米粉、米ぬか、トウモロコシ粉、小麦粉、でんぷん等の粉体を混合させてもよい。
【0079】
上記毒餌剤Aは、上記の成分を有していて、特に水飴の持つ粘着性により、設置用板部10の毒餌剤載置面10cに粘着し、また、対向板部20の内面20aにも粘着する。このとき、毒餌剤Aは上述の形状維持性を備えているので、搬送等の通常の取扱いで容器1から外れて落ちることはなく、また、垂れたりすることもない。
【0080】
図11及び図12に示すように、使用前の容器1は、10個が連結された状態で一体化されている。容器1の対向板部20の外縁部には、隣接する容器1の対向板部20の外縁部に連結する連結片81が形成されている。また、設置用板部10の外縁部にも、同様な連結片80が形成されている。
【0081】
各容器1の設置用板部10は、連結片80を介して一体成形され、また、対向板部20は、連結片81を介して一体成形されるようになっている。対向板部20の連結片81は、設置用板部10の連結片80よりも脆弱に形成されており、後述する超音波溶着時の振動によって割れて分離するようになっている。分離後の連結片81を、図13に符号81a、81bで示す。符号81aは図1等にも示す。また、設置用板部10の連結部80は、折り曲げ方向に力を加えることで割れて分離するようになっている。分離後の連結片80を、同図に符号80a、80bで示す。符号80aは図1等にも示す。
【0082】
10枚の設置用板部10の第1〜第3柱状部31〜33の基端側部31a〜33aのうち、任意の数個は、対向板部20の先端側部31b〜33bに嵌って位置決めされるようになっている。すなわち、図7に示すように、所定の容器1の基端側部32aの先端面には凹部45が形成され、この凹部45の形成された基端側部32aに対応する先端側部32bには凹部45に嵌合する凸部46が形成されている。
【0083】
次に、上記のように構成された容器1の製造要領について説明する。まず、10枚の設置用板部10を縦2枚、横5枚となるように並んだ状態となるように、かつ、連結部80により連結された状態となるように一体成形する。また、10枚の対向板部20を同様に、連結部81により連結された状態となるように一体成形する。
【0084】
次いで、毒餌剤Aを各設置用板部10の毒餌剤載置面10cに載置する。
【0085】
その後、設置用板部10の上から対向板部20を被せるように配置し、図7に示すように、凸部46を凹部45に嵌合させる。これにより、対向板部20が設置用板部10に位置決めされる。その後、対向板部20を周知の超音波溶着機によって振動させることで、各柱状部31〜33の基端側部31a〜33aが先端側部31b〜33bに溶着する。この溶着時には、振動によって対向板部20の連結部81が分離するので、各容器1は、設置用板部10の連結部80のみで連結された状態となっている。
【0086】
尚、超音波溶着時に、設置用板部10の連結部80を分離させるようにして、容器1を対向板部20の連結部81のみで連結してもよい。
【0087】
このようにして、図11に示すように10個の容器1が一体化した製品100が得られる。この製品100は例えば樹脂フィルム等で包装されて流通する。各容器1が設置用板部10の連結部80で連結されているので、使用前まで、各容器1が分離することはなく、取扱いが容易である。
【0088】
そして、使用する際には、容器1を手で持って設置用板部10の連結部80を折るように力を加えるだけで連結部80が割れ、容器1を分離させて任意の複数箇所に置くことができる。
【0089】
各容器1を設置場所に設置する際には、放り投げればよい。容器1の設置用板部10と対向板部20との離間方向の寸法h2を、設置用板部10及び対向板部20の外形寸法W1よりも十分に小さく設定して容器1を扁平形状としているので、放り投げるだけで、設置用板部10又は対向板部20が設置場所に接する姿勢となる。
【0090】
図9に基づいて、容器1が、設置用板部10が設置場所に接する姿勢で置かれた場合について説明する。設置用板部10の外周側に周壁部が無く開放されているので、毒餌剤Aの誘引成分は、設置用板部10の外周側から容器1の周りに広範囲に拡散し易くなる。アリの様な小型害虫にとっては、乗り越えられない様な高さを有する障害物となる周壁部が無いことになり、よって、アリが毒餌剤Aまで容易に到達できることとなる。つまり、容器1の構造は、アリが毒餌剤Aまで到達するのを阻害しないような構造となっている。
【0091】
また、本発明をゴキブリ等の臭覚の発達した害虫の防除に適用する場合には、障害物が無いことと、特に誘引成分の広範囲への拡散効果とによってゴキブリ等が毒餌剤Aまで誘引されやすくなるので好適である。
【0092】
また、対向板部20の第1〜第5延出部21〜25は、毒餌剤Aよりも外側へ延出しているので、容器1の庇部として機能することになる。これにより、容器1を外側から見ると、毒餌剤Aが奥まったところに位置することになるので、ゴキブリ等が好んで出入りする暗い環境を容器1内部に作り出すことが可能になる。また、屋外で雨等が降った際に雨水が毒餌剤Aに直接付着してしまうのを抑制できる。
【0093】
一方、対向板部20が設置場所に接する姿勢で設置された場合について説明する。この場合も、対向板部20の外周側に周壁部が無く開放されているので、上記したように、誘引成分が拡散し易くなることにより、臭覚の発達したゴキブリ等の誘引性が向上し、かつ、小型害虫であるアリ等にとって乗り越え難い障害物となる周壁部が無いことにより、毒餌剤Aまで達し易くなる。
【0094】
つまり、容器1を放り投げた際に、設置用板部10と対向板部20とのどちらが設置場所に接する姿勢となっても、同程度の高い防除力が得られるので、設置時の方向性が無く、取扱いが容易である。
【0095】
以上説明したように、この実施形態1にかかる容器1によれば、設置用板部10の外周側をバリアフリー構造として開放したので、小型のアリ等が毒餌剤Aまで達し易くなり、アリの防除力を向上させることができる。また、毒餌剤Aの誘引成分を容器1の周りに広範囲に拡散させることができることから、臭覚の発達したゴキブリ等の誘引効果を向上でき、防除力を向上させることができる。
【0096】
また、設置用板部10に対向板部20を連結し、この対向板部20も設置場所の設置面Gに置けるようにし、しかも、バリアフリー構造としたので、防除力を向上させながら、設置の自由度を高めて扱い易い容器1にすることができる。
【0097】
また、図4に示すように、設置用板部10と対向板部20との離間方向の寸法h2を、設置用板部10及び対向板部20の外形寸法W1よりも短くして容器1を扁平形状としたので、放り投げるようにして設置しても、設置用板部10と対向板部20のいずれかを設置面Gに接触させることができ、所期の防除力を得ることができる。
【0098】
また、設置用板部10の外周側に傾斜面10dを設けてアリを容器1の内側まで案内可能にしたので、アリの防除力をより一層向上できる。
【0099】
また、傾斜面10dに滑り止め加工を施したことで、アリが毒餌剤Aまで達し易くなり、防除力をより一層向上できる。
【0100】
また、複数の容器1を設置用板部10の連結部80により連結するようにしたので、複数の容器1の搬送時に取扱いを容易にできる。
【0101】
また、対向板部20に、載置面部10cよりも外側へ延出する第1〜第5延出部21〜25を設けたので、設置用板部10が設置面Gに接する姿勢で容器1が設置された際に、第1〜第5延出部21〜25を庇部として機能させることができる。これにより、アリが好んで出入りする環境を作り出すことができ、防除力をより一層向上できる。また、対向板部20が設置面Gに接する姿勢で設置された際には、設置用板部10の第1〜第5延出部11〜15が庇部として機能することになる。
【0102】
尚、上記実施形態1では、各容器1に柱状部を3本設けているが、柱状部の数はこれに限られるものではない。例えば、図14に示す変形例のように、各容器1に5本の柱状部35を設けるようにしてもよい。この変形例では、各柱状部35が設置用板部10の第1〜第5延出部11〜15と、対向板部20の第1〜第5延出部21〜25とを連結するように延びている。また、各柱状部35は容器1の周方向に長い略長円形の断面を有している。
【0103】
(実施形態2)
図15〜24は、実施形態2にかかる容器1を示すものである。この実施形態2の容器1は、実施形態1のものに対し、形状が異なっている。以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0104】
すなわち、図17に示すように、実施形態2の容器1の設置用板部50は、葉っぱをモチーフにした細長い形状であり、全体が例えば透光性を有する薄い緑色等に着色されている。設置用板部50の内面50aには、外周面56a及び内周面56bを有する突条部56が形成されている。図21に示すように、突条部56は、設置用板部50の長手方向中央部よりも一方側に偏位している。内面50aにおける突条部56の内側部分が毒餌剤載置面50cである。設置用板部50の内面50aの外周側には、害虫案内面となる傾斜面50dが形成されている。傾斜面50dは、設置用板部50の略全周に亘るように形成されており、平面視で湾曲している。
【0105】
設置用板部50は、バリアフリー構造とされており、図15に示すように、容器1の側部は開放されるようになっている。
【0106】
図17に示すように、設置用板部50の外面50bには、凹部50gが形成されている。凹部50gは葉の葉脈を形作るように延びている。
【0107】
図16に示すように、対向板部60は、設置用板部50と略同じ形状とされており、図19に示すように、対向板部60の内面60aには、外周面66a及び内周面66bを有する突条部66と、害虫案内面となる傾斜面60dとが形成されている。図15に示すように、対向板部60の外面60bには、凹部60gが形成されている。対向板部60もバリアフリー構造である。
【0108】
図16に示すように、この実施形態2の容器1は、第1〜第4柱状部71〜74を備えている。第1〜第4柱状部71〜74は、略長円断面を有している。図18に示すように、第1〜第4柱状部71〜74は、それぞれ、設置用板部50と一体成形される基端側部71a〜74aと、対向板部60と一体成形される先端側部71b〜74bとを備えている。
【0109】
第1柱状部71は、容器1の長手方向一端側(図17における下側)に位置している。また、第2柱状部72及び第3柱状部73は、容器1の長手方向中央部近傍に位置している。また、第4柱状部74は、容器1の長手方向他端側(図17における上側)に位置している。
【0110】
図21に示すように、先端側部71b〜74bは筒状とされている。図15に示すように、対向板部60には、先端側部71b〜74bの中空部分に連通する貫通孔60fが形成されている。
【0111】
基端側部71a〜74aの先端面と、先端側部71b〜74bの突出方向先端面とは溶着されている。
【0112】
また、この実施形態2の容器1も扁平形状となるように各部の寸法が設定されている。
【0113】
使用前の容器1は、図22及び図23に示すように、実施形態1と同様に、10個が連結された状態で一体化されている。設置用板部50は連結片80により連結され、対向板部60は連結片81により連結されている。
【0114】
容器1が、設置用板部50が設置場所に接する姿勢で置かれた場合には、設置用板部50の外周側に周壁部が無く開放されているので、実施形態1のものと同様に、アリが毒餌剤Aまで達し易くなる。この状態では、対向板部60の長手方向の両側が庇部として機能することになり、アリが好んで出入りする暗い環境を容器1内部に作り出すことが可能になる。
【0115】
また、対向板部20が設置場所に接する姿勢で設置された場合についても、同様に、アリが毒餌剤Aまで達し易くなる。
【0116】
以上説明したように、この実施形態2にかかる容器1によれば、設置用板部50の外周側をバリアフリー構造として開放したので、実施形態1と同様に、アリやゴキブリ等の防除力を向上させることができる。
【0117】
尚、上記実施形態2では、各容器1に柱状部を4本設けているが、柱状部の数はこれに限られるものではない。
【0118】
また、実施形態1、2では、10個の容器1を1つにして製品100を構成しているが、製品100を構成する容器1の個数はこれに限られるものではなく、任意の個数で構成すればよい。また、1つの容器1を単独で流通させるようにしてもよい。
【0119】
また、上記実施形態1、2では、各容器1を一体化する際、設置用板部10側の連結部80を全て連結するようにしているが、これに限らず、一部を非連結とするようにしてもよい。これにより、使用前に容器1を簡単に分離させることができる。
【0120】
また、容器1の材質は、樹脂以外にも、例えば、紙であってもよい。
【0121】
また、実施形態1、2の容器1の形状は一例を示すものであり、花や葉以外の形状であってもよいのはもちろんのことである。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上説明したように、本発明にかかる匍匐害虫用の毒餌剤容器は、例えば、アリやゴキブリを防除するのに適している。
【符号の説明】
【0123】
1 容器
10、50 設置用板部
10c、50c 毒餌剤載置面
10d、50d 傾斜面(害虫案内面)
11〜15 第1〜第5延出部(庇部)
20、60 対向板部
31〜33 柱状部
80 連結部
A 毒餌剤
G 地面、床面(設置面)
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリやゴキブリ等の匍匐害虫を防除するための毒餌剤を収容する匍匐害虫用の毒餌剤容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の匍匐害虫用の毒餌剤容器としては各種考案されており、例えば、特許文献1には、底板材と上板材との間に毒餌剤を収容するように構成されたものが開示されている。特許文献1の容器の底板材の外周側には、上方へ突出して縁部に沿うように延びる突条部が形成され、また、上板材の外周側には、下方へ突出する同様な突条部が形成されている。底板材の突条部と上板材の突条部との先端面同士が接合されて、毒餌剤を囲むような周壁部を構成している。
【0003】
また、特許文献2の容器も、底板材と上板材とを備えている。底板材には、毒餌剤を囲むように延びる周壁部が形成されている。
【0004】
また、特許文献3の容器は、2枚の側板材の間に毒餌剤を収容するように構成されている。容器の底部には、毒餌剤の収容部分よりも外側に、毒餌剤の周囲を囲むような形状のスロープが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−110285号公報
【特許文献2】実開昭62−13176号公報
【特許文献3】特開2001−37396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アリやゴキブリ等の匍匐害虫は、地面や屋内の床面等を匍匐しながら移動しており、しかも、障害物等には極めて敏感に反応する習性を持っている。従って、特許文献1、2の容器のように、毒餌剤を囲む周壁部が存在していると、容器を地面等に置いた際に、匍匐害虫から見ると周壁部が大きな障害物として認識される。また、特許文献3の容器のスロープも毒餌剤を囲むような形状である。アリ等の小型害虫では、特許文献1、2の周壁部や特許文献3のスロープを乗り越えることは難しく、ひいては、毒餌剤に達し難くなり、匍匐害虫の防除力が低下してしまう。
【0007】
また、毒餌剤には、一般に、匍匐害虫を誘引するための誘引成分が混入されている。ところが、特許文献1、2の容器の周壁部は毒餌剤を囲んでいるので、誘引成分が容器の周りに広範囲に拡散しにくくなっている。また、特許文献3の容器もスロープが毒餌剤を囲んでいるので、誘引成分が拡散しにくい。このことにより、例えば臭覚の発達したゴキブリ等の匍匐害虫の防除力が低下してしまう。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、誘引成分を広範囲に拡散させることができるようにするとともに、例えばアリ等の小型害虫が乗り越えるのが難しい様な高さを有する周壁部等の障害物を除去して、匍匐害虫の防除力を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、毒餌剤が載置される板部の外周側をバリアフリー構造として開放するようにした。
【0010】
第1の発明は、匍匐害虫を防除するための毒餌剤を収容する匍匐害虫用の毒餌剤容器であって、当該容器の設置場所に置かれる設置用板部を備え、上記設置用板部の中央寄りの部位には、毒餌剤が載置される載置面部が設けられ、上記設置用板部の外周側は、バリアフリー構造とされて開放されていることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、設置用板部の外周側に周壁部が無く開放されているので、設置用板部の載置面部に載置された毒餌剤に含まれる誘引成分は、設置用板部の外周側から容器の周りに広範囲に拡散し易くなる。また、小型の匍匐害虫にとっては乗り越えるのが難しい様な高さを有する周壁部等の障害物が無いことにより、本発明の容器に対しては従来例のものに比べて毒餌剤への接近性(毒餌剤への接近のし易さ)が格段に向上することとなる。また、上記誘引成分の広範囲への拡散効果によって、臭覚の発達した匍匐害虫が毒餌剤まで達し易くなる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、設置用板部と対向するように配置される対向板部と、上記対向板部を上記設置用板部に対し間隔をあけた状態で連結する柱状部とを備え、上記対向板部は、当該容器の設置場所に置くことが可能に形成されるとともに、バリアフリー構造とされていることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、対向板部を容器の設置場所に置くことが可能になるので、設置用板部と対向板部のどちら側を設置場所に置いてもよく、設置の自由度が向上する。そして、対向板部もバリアフリー構造であるので、上述したように匍匐害虫が毒餌剤まで達し易くなる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、設置用板部と対向板部との離間方向の寸法は、設置用板部及び対向板部の外形寸法よりも短く設定されていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、例えば、容器を地面に放り投げることによって設置する場合に、設置用板部と対向板部との離間方向の寸法が両板部の外形寸法よりも短いので、設置用板部又は対向板部のいずれかが地面に接するように倒れ易い形状となる。これにより、放り投げることによって設置しても、所期の防除力が得られるようになる。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、対向板部には、載置面部よりも外側へ延出する庇部が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、容器を外側から見ると、毒餌剤が奥まったところに位置することになるので、匍匐害虫が好んで出入りする暗い環境を作り出すことが可能になる。
【0018】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、設置用板部の外周側には、周縁に行くほど設置場所における設置面に接近するように下降傾斜し、匍匐害虫を該設置用板部の中央側へと案内するための害虫案内面が形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、匍匐害虫を害虫案内面によって毒餌剤へ案内することが可能になる。
【0020】
第6の発明は、第5の発明において、害虫案内面の傾斜角度は、20゜以下に設定されていることを特徴とするものである。
【0021】
すなわち、アミメアリ及びクロヤマアリ等の人家周辺によく現れるアリを対象とした場合、これらアリは害虫案内面の角度が20゜以下であれば、害虫案内面を大きな障害物として認識し難く、しかも、害虫案内面を歩行する際に脚が滑り難くなる。よって、上記角度以下とすることで、匍匐害虫としてのアリを害虫案内面によって毒餌剤へ効果的に案内することが可能になる。
【0022】
第7の発明は、第5または6の発明において、害虫案内面の下縁部から上縁部までの長さは、5mm以下に設定されていることを特徴とするものである。
【0023】
すなわち、アミメアリ及びクロヤマアリ等の人家周辺によく現れるアリは、体長が数mm〜5mm程度である。これらアリを対象とした場合、害虫案内面の長さが体長程度もしくは体長の2倍程度であれば、害虫案内面を大きな障害物として認識し難くなる。よって、上記範囲の長さとすることで、匍匐害虫としてのアリを害虫案内面によって毒餌剤へ効果的に案内することが可能になる。
【0024】
第8の発明は、第5から7のいずれか1つの発明において、害虫案内面には滑り止め加工が施されていることを特徴とするものである。
【0025】
この構成によれば、匍匐害虫が害虫案内面を通って毒餌剤まで容易に達するようになる。
【0026】
第9の発明は、第8の発明において、滑り止め加工は、害虫案内面に施したシボ加工であり、シボの深さは13μm以上に設定されていることを特徴とするものである。
【0027】
すなわち、毒餌剤容器を屋外に置いた場合には、害虫案内面に埃等が付着することがある。アミメアリ及びクロヤマアリ等の人家周辺によく現れるアリを対象とした場合、シボの深さが13μm以上であれば、害虫案内面に埃等が付着していても、アリの脚が滑り難くなり、アリを害虫案内面によって毒餌剤へ効果的に案内することが可能になる。
【0028】
第10の発明は、第1から9のいずれか1つの発明において、複数の容器を連結するための連結部を備え、上記連結部は、隣り合う容器を分離可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0029】
この構成によれば、使用前に連結部によって複数の容器を連結しておくことで、搬送時には一体化されて取扱いが容易になる。一方、使用時には容器を分離させることで、別々の場所に設置することが可能になる。
【発明の効果】
【0030】
第1発明によれば、毒餌剤が載置される設置用板部の外周側をバリアフリー構造として開放したので、毒餌剤に含まれる誘引成分を容器の周りに広範囲に拡散させることができるとともに、特に小型害虫にとっては乗り越えるのが難しい高さの周壁部を取り除くことができる。これにより、匍匐害虫が毒餌剤まで達し易くなり、匍匐害虫の防除力を向上させることができる。
【0031】
第2の発明によれば、設置用板部に対向板部を連結し、この対向板部を容器の設置場所に置けるようにし、しかも、バリアフリー構造としたので、防除力を向上させながら、設置の自由度を高めて扱い易い容器にすることができる。
【0032】
第3の発明によれば、設置用板部と対向板部との離間方向の寸法を、設置用板部及び対向板部の外形寸法よりも短くしたので、容器を放り投げるようにして設置しても、所期の防除力を得ることができ、より一層扱い易い容器にすることができる。
【0033】
第4の発明によれば、対向板部に、載置面部よりも外側へ延出する庇部を設けたので、匍匐害虫が好んで出入りする環境を作り出すことができ、防除力をより一層向上できる。
【0034】
第5の発明によれば、設置用板部の外周側に害虫案内面を設けたので、害虫の防除力をより一層向上できる。
【0035】
第6、7の発明によれば、匍匐害虫がアリの場合に毒餌剤まで達し易くなり、防除力をより一層向上できる。
【0036】
第8、9の発明によれば、害虫案内面に滑り止め加工を施したことで、害虫が毒餌剤まで達し易くなり、防除力をより一層向上できる。
【0037】
第10の発明によれば、複数の容器を連結するための連結部を備え、連結部は、隣り合う容器を分離可能に構成されているので、複数の容器の搬送時に取扱いを容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態1にかかる容器の斜視図である。
【図2】実施形態1にかかる容器の平面図である。
【図3】実施形態1にかかる容器の底面図である。
【図4】実施形態1にかかる容器の正面図である。
【図5】実施形態1にかかる容器の背面図である。
【図6】実施形態1にかかる容器の左側面図である。
【図7】図2におけるVII−VII線断面図である。
【図8】図6におけるVIII−VIII線断面図である。
【図9】実施形態1にかかる容器の使用状態を説明する図である。
【図10】設置用板部の一部を拡大して示す側面図である。
【図11】実施形態1にかかる複数の容器を連結した状態の斜視図である。
【図12】実施形態1にかかる複数の容器を連結した状態の平面図である。
【図13】実施形態1にかかる容器を分離した状態の平面図である。
【図14】実施形態1の変形例にかかる図1相当図である。
【図15】実施形態2にかかる図1相当図である。
【図16】実施形態2にかかる図2相当図である。
【図17】実施形態2にかかる図3相当図である。
【図18】実施形態2にかかる図4相当図である。
【図19】図16におけるXVIII−XVIII線断面図である。
【図20】図18におけるXIX−XIX線断面図である。
【図21】図18におけるXX−XX線断面図である。
【図22】実施形態2にかかる図9相当図である。
【図23】実施形態2にかかる図12相当図である。
【図24】実施形態2にかかる図13相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0040】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる匍匐害虫用の毒餌剤容器1を示すものである。容器1には、詳細は後述するが、匍匐害虫を防除するための毒餌剤A(図9に示す)が収容されるようになっている。毒餌剤Aが収容された容器1は、例えば、屋外の地面や、屋内の床面(図9に符号Gで示す)等の設置場所に設置される。この容器1が防除対象としている匍匐害虫は、アルゼンチンアリ、トビイロケアリ、ルリアリ、イエヒメアリ等のアリ類である。尚、防除対象の匍匐害虫は、アリ類に限らず、例えば、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ等のゴキブリ類、ダンゴムシ、ワラジムシ、ナメクジ等を対象とすることも可能であり、この場合、毒餌剤Aの組成を変更したり、また、容器1の大きさを変更すればよい。
【0041】
図1〜図7に示すように、容器1は、設置場所に置かれる設置用板部10と、設置用板部10と対向するように配置される対向板部20と、対向板部20を設置用板部10に対し間隔をあけた状態で連結する第1〜第3柱状部31〜33とを備えている。
【0042】
設置用板部10は、樹脂材を略平板状に成形してなるものである。図3に示すように、設置用板部10の形状は、容器1の底面から見て、5枚の花びらを有する花をモチーフにした形状であり、全体が例えば透光性を有する薄いピンク色等に着色されている。設置用板部10の外周側には、花びらを形作るように延出した第1〜第5延出部11〜15が設けられている。これら延出部11〜15は同じ形状であり、設置用板部10の周方向に等間隔に配置されて放射状に延び、図9に示す設置面Gに沿うような形状となっている。
【0043】
図7に示すように、設置用板部10における容器1内側に位置する内面10aには、対向板部20側へ向けて突出して周方向に延びる突条部16が形成されている。図8に示すように、突条部16は、平面視で円環を形成するように周方向に連続していて、その中心は、設置用板部10の中心と略一致している。
【0044】
突条部16の幅は、全周に亘って同じに設定されている。図7に示すように、突条部16の高さは、該突条部16の幅方向の中央部よりも、設置用板部10の中心に寄った部位が最も高くなっており、この最も高い部分は、設置用板部10の内面10aからの高さh1が、3mm以下に設定されている。その理由としては、外部から容器1内に雨水等の水が侵入するのを防止する機能、あるいは毒餌剤Aが容器1から脱落するのを防止する機能を維持しつつ、アリの接近性(毒餌剤Aへの接近のし易さ)に支障のない程度の高さとするためである。
【0045】
突条部16の外周側を構成する外周面16aは、設置用板部10の中心側に行くほど対向板部20に近づくように傾斜する傾斜面で構成されている。また、突条部16の内周側を構成する内周面16bは、設置用板部10の外側に行くほど対向板部20に近づくように傾斜する傾斜面で構成されている。内周面16bの外縁は、外周面16aの内縁に連なっている。従って、突条部16の縦方向の断面は略三角形状となっている。
【0046】
外周面16aの傾斜度合いは、内周面16bの傾斜度合いよりも小さく設定されており、外周面16aが比較的緩やかになっている。また、外周面16aには、アリの滑り止めとなるように、シボ加工(滑り止め加工)が全周に亘って形成されている。尚、外周面16aには、シボ以外の滑り止め加工を施してもよく、例えば、微小な凸又は凹を形成してもよい。
【0047】
設置用板部10の内面10aのうち、突条部16よりも内側部分は毒餌剤Aが載置される毒餌剤載置面10cとされている。毒餌剤載置面10cは、略平面で構成されている。この毒餌剤載置面10cと、第1〜第5延出部11〜15の内面とは、略同一面上に位置するようになっている。
【0048】
図9にも示すように、設置用板部10の内面10aの外周側には、アリを設置用板部10の中央側へと案内するための傾斜面(害虫案内面)10dが形成されている。傾斜面10dは、設置用板部10の外周縁に行くほど設置場所の面Gに接近するような傾斜角度となっている。
【0049】
図10に示す傾斜面10dの傾斜角度αは、20゜以下に設定されている。これは、人家周辺によく現れるアリを対象として、当該アリが毒餌剤Aまで到達し易い角度を本発明者らが実験により得て設定されたものである。傾斜面10d上には、タルクを散布して、人工的に滑りやすい状況(屋外に放置されて埃が付着した状況)を作った。タルクの散布量は、1平方センチメートルあたり0.05〜0.08mgである。また、散布したタルクは、健栄製菓株式会社製の「タルクケンエ」である。
【0050】
この実験に用いたアリは、アミメアリ、クロヤマアリである。実験では傾斜面10dの角度を10゜から45゜まで変更し、アミメアリ及びクロヤマアリをそれぞれ5匹用意し1匹ずつ傾斜面10dに載せて上に向かって歩行するか観察した。その結果、傾斜面10dの角度が20゜を越えると、アミメアリ及びクロヤマアリの両方で脚を滑らせてしまうアリが多く(全体の80%)、一方、20゜以下にすると、アミメアリ及びクロヤマアリの両方で傾斜面10dを上に向かって歩行するアリが多い(全体の80%)。また、傾斜面10dの角度が20゜を越えると、アリの中には傾斜面10dを大きな障害物として認識するものが多く、傾斜面10dを下へ歩行するようになる傾向が見られた。一方、傾斜面10dの角度が20゜以下であると、傾斜面10dを大きな障害物として認識し難くなり、傾斜面10dを上へ歩行するようになる傾向が見られた。
【0051】
つまり、傾斜面10dの角度を20゜以下とすることで、アリが傾斜面10dを大きな障害物として認識し難く、しかも、傾斜面10dを歩行する際に脚が滑り難くなるので、アリを傾斜面10dによって毒餌剤Aへ効果的に案内することが可能になる。尚、傾斜面10dの角度は18゜以下が好ましく、より好ましくは15゜である。傾斜角度が15゜あれば、毒餌剤容器1内に雨水等が入り難くなる。
【0052】
傾斜面10dは、図8に示すように、設置用板部10の略全周に亘るように形成されており、第1〜第5延出部11〜15の形状に対応して、平面視で湾曲しながら延びている。傾斜面10dの形成によって、設置用板部10の外周側の厚みは外周縁に行くほど薄くなっている。また、傾斜面10dには、上記突条部16の外周面16aと同様に滑り止め加工が施されている。
【0053】
滑り止め加工としては、シボ加工が好ましい。シボ加工のシボの深さは、13μm以上に設定されている。これは、人家周辺によく現れるアリを対象として、当該アリが毒餌剤Aまで到達し易いか否かを本発明者らが実験により得て設定されたものである。
【0054】
実験に用いたアリは、上記と同じアミメアリ、クロヤマアリである。シボの深さは、5μm〜120μmまで複数段階に変化させ、アミメアリ及びクロヤマアリを1匹ずつ傾斜面10d上に載せて傾斜面10dを上に向かって歩行するか観察した。このとき、傾斜面10d上には、タルクを散布して、人工的に滑りやすい状況を作った。タルクの散布量は、1平方センチメートルあたり0.05〜0.08mgである。また、この実験においては、傾斜面10dの角度を20゜、30゜、45゜に変化させている。
【0055】
小型種であるアミメアリの場合は、傾斜面10dに形成したシボの深さが例えば5μmでは、傾斜角度が20゜であれば略全てのアリが傾斜面10dを上に歩行できたが、傾斜角度が30゜、45゜では略全てのアリが脚を滑らせて傾斜面10dを上に歩行できなかった。一方、シボの深さが13μmでは、傾斜角度が20゜、30゜であれば略全てのアリが傾斜面10dを上に歩行でき、また、傾斜角度が45゜であれば60%のアリが傾斜面10dを上に歩行できた。
【0056】
大型種のクロヤマアリの場合は、傾斜面10dに形成したシボの深さが例えば5μmでは、傾斜角度が20゜であれば略全てのアリが傾斜面10dを上に歩行できたが、傾斜角度が30゜、45゜では略全てのアリが脚を滑らせて傾斜面10dを上に歩行できなかった。一方、シボの深さが13μmでは、傾斜角度が20゜であれば略全てのアリが傾斜面10dを上に歩行でき、また、傾斜角度が30゜であれば、60%のアリが傾斜面10dを上に歩行でき、また、傾斜角度が45゜であれば80%のアリが傾斜面10dを上に歩行できた。
【0057】
従って、シボの深さを13μm以上にすることで、毒餌剤容器1が屋外に放置されて傾斜面10d上に埃が付着した状況であっても、アリが脚を滑らせ難く、アリを傾斜面10dによって毒餌剤Aへ効果的に案内することが可能になる。尚、シボの深さの上限は、100μmが好ましく、より好ましくは50μmである。シボが深くなり過ぎるとアリが警戒するためである。
【0058】
また、図10に示す傾斜面10dの下縁部から上縁部までの長さLは、2mm以上5mm以下に設定するのが好ましい。これは、人家周辺によく現れるアリを対象として、当該アリが毒餌剤Aまで到達し易い長さを本発明者らが実験により得て設定されたものである。
【0059】
実験では傾斜面10dの長さLを1mmから20mmまで変更し、アミメアリ及びクロヤマアリを1匹ずつ設置面上に置き、傾斜面10dを上に向かって歩行するか観察した。その結果、傾斜面10dの長さLが5mmを越えると、アミメアリ及びクロヤマアリの両方が傾斜面10dを大きな障害物として認識するものが多く、下へ歩行し、最終的に傾斜面10dを登り切ることができない。これは、成虫のアミメアリの体長が約3mm程度で、成虫のクロヤマアリの体長が約5mm程度であり、傾斜面10dの長さLが、これらアリの体長よりも大幅に長い(体長の2.5倍〜3倍以上)と傾斜面10dを大きな障害物として認識し易くなることに起因している。
【0060】
つまり、傾斜面10dの長さLを5mm以下とすることで、傾斜面10dを大きな障害物として認識し難くなり、アリを傾斜面10dによって毒餌剤Aへ効果的に案内することが可能になる。
【0061】
傾斜面10dの角度を上述した20゜以下とし、かつ、傾斜面10dの長さLを5mm以下とすることで、設置用板部10の内面10aは低い所に位置することになる。これにより、バリアフリー構造が実現される。
【0062】
設置用板部10の延出部11〜15における傾斜面10d以外の部分の厚みT(図9に示す)は、0.5mm以上3.0mm以下に設定されている。これにより、第1〜第5延出部11〜15がアリの障害となりにくい。また、設置用板部10は、匍匐状態のアリの頭部位置よりも高い所まで延びるような周壁部の無い、いわゆるバリアフリー構造とされており、容器1の側部は開放されるようになっている。
【0063】
尚、設置用板部10の外周側には、匍匐状態にあるアリの頭部位置よりも低い高さの突条を設けてもよく、この程度の低い突条であれば、アリの警戒心がそれほど高まることはない。
【0064】
図3に示すように、設置用板部10の容器1外側に位置する外面10bには、第1凹部11a〜15aが形成されている。これら第1凹部11a〜15aは、それぞれ、第1〜第5延出部11〜15の中央部に位置している。また、設置用板部10の外面10bには、隣り合う延出部11〜15の間に対応する部分に第2凹部10gが形成されている。
【0065】
図2に示すように、対向板部20は、設置用板部10と同じ形状とされている。すなわち、対向板部20は、第1〜第5延出部21〜25を有し、また、図7に示すように、対向板部20の内面20aには、外周面26a及び内周面26bを有する突条部26と、後述する害虫案内面となる傾斜面20dとが形成されている。対向板部20の外面20bには、図1及び図2に示すように、第1凹部21a〜25aと、第2凹部20gとが形成されている。
【0066】
また、対向板部20は、設置用板部10と同様に、周壁部の無いバリアフリー構造とされており、従って、容器1の側部は設置用板部10側から対向板部20側に亘って全体が開放されている。さらに、対向板部20は、設置用板部10と略平行である。
【0067】
図2や図3に破線で示すように、第1〜第3柱状部31〜33は、略円形断面を有している。図4〜図6に示すように、第1〜第3柱状部31〜33は、それぞれ、設置用板部10と一体成形される基端側部31a〜33aと、対向板部20と一体成形される先端側部31b〜33bとを備えている。
【0068】
尚、基端側部31a〜33aの長さと、先端側部31b〜33bの長さとは、同じにしてもよいし、異ならせてもよい。
【0069】
図8に示すように、第1柱状部31の基端側部31aは、設置用板部10の内面における第1延出部11と第2延出部12との間から突出している。第2柱状部32の基端側部32aは、設置用板部10の内面における第3延出部13と第4延出部14との間から突出している。第3柱状部33の基端側部33aは、設置用板部10の内面における第1延出部11と第5延出部15との間から突出している。
【0070】
また、同様に、第1柱状部31の先端側部31bは、対向板部20の内面における第1延出部21と第2延出部22との間から突出している。第2柱状部32の先端側部32bは、対向板部20の内面における第3延出部23と第4延出部24との間から突出している。第3柱状部33の先端側部33bは、対向板部20の内面における第1延出部21と第5延出部25との間から突出している。
【0071】
基端側部31a〜33aの先端面は、先端側部31b〜33bの突出方向先端面と溶着されている。溶着時に用いられる方法としては、例えば超音波溶着法が挙げられるが、これ以外の方法で溶着するようにしてもよいし、例えば、接着剤で接着するようにしてもよい。
【0072】
容器1の設置用板部10と対向板部20との離間方向の寸法h2は、設置用板部10及び対向板部20の外形寸法W1よりも十分に小さく設定されている。従って、容器1は、例えば放り投げられた際に、設置用板部10と対向板部20との一方が設置場所に接するように倒れ易い、扁平形状となっており、設置用板部10及び対向板部20が鉛直に延びるような姿勢で立つことは殆ど無いように設計されている。尚、設置用板部10及び対向板部20の外形寸法W1は、例えば、25mm以上50mm以下に設定されており、小型の容器1となっている。
【0073】
図9に示すように、容器1に収容される毒餌剤Aは、略球状に成形されており、設置用板部10の毒餌剤載置面10cに載置されている。毒餌剤Aの直径は、設置用板部10の内面10aと対向板部20の内面20aとの離間寸法h2(図4に示す)よりも予め大きめに設定されている。そして、毒餌剤Aは、毒餌剤載置面10cに載置された状態で、対向板部20の内面20aにおける突条部26よりも内側の面にも接触するようになっている。この状態で毒餌剤Aが僅かに押し潰された状態で容器1に保持される。
【0074】
毒餌剤Aは、フィプロニル(殺虫成分)、溶剤、ホウ酸、グリセリン、煮干を粉末状にした煮干粉、グラニュー糖、水飴、マッシュポテトを乾燥させた乾燥マッシュポテト、ビトレックス(安息香酸デナトニウム)、イオン交換水を混合してなるものである。ホウ酸は、防腐剤の目的で混合している。また、グリセリン及び水飴は、保湿剤の目的で混合している。また、煮干粉、グラニュー糖は、アリを誘引するための誘引剤である。また、乾燥マッシュポテトは、毒餌剤Aの基材になるとともに、誘引剤としても作用する。ビトレックスは毒餌剤Aに強い苦みを与えて誤飲防止を図るものである。
【0075】
毒餌剤Aの成分中、アリが好むグラニュー糖の重量割合が最も多く、このグラニュー糖は水飴に溶解している。すなわち、グラニュー糖が析出しないように水飴の量が設定されている。また、保湿剤として作用する水飴及びグリセリンを混合していることで、毒餌剤Aにはしっとりとした感触を与えることが可能となっている。アリは、しっとりとした(保湿されている)毒餌剤Aを好むので、水飴及びグリセリンの量を調整することでアリの好む程度のしっとり感を与えている。また、水分が毒餌剤Aから垂れ出さないように、グリセリンの量が適切に設定されている。さらに、煮干粉及び乾燥マッシュポテトを混合させることで、長期間に亘って所定形状を維持できる形状維持性が得られる。
【0076】
また、水飴の粘性と、煮干粉及び乾燥マッシュポテトの形状維持性とにより、毒餌剤Aが、常温雰囲気から夏場の外気温程度の高温雰囲気中において垂れにくい性質を有する高粘度のペースト状になる。
【0077】
尚、グラニュー糖の代わりに、上白糖や三温糖、黒砂糖等を用いてもよく、これらを混合したものを用いてもよい。つまり、毒餌剤Aにはショ糖が含まれていればよい。
【0078】
また、毒餌剤Aには、米粉、米ぬか、トウモロコシ粉、小麦粉、でんぷん等の粉体を混合させてもよい。
【0079】
上記毒餌剤Aは、上記の成分を有していて、特に水飴の持つ粘着性により、設置用板部10の毒餌剤載置面10cに粘着し、また、対向板部20の内面20aにも粘着する。このとき、毒餌剤Aは上述の形状維持性を備えているので、搬送等の通常の取扱いで容器1から外れて落ちることはなく、また、垂れたりすることもない。
【0080】
図11及び図12に示すように、使用前の容器1は、10個が連結された状態で一体化されている。容器1の対向板部20の外縁部には、隣接する容器1の対向板部20の外縁部に連結する連結片81が形成されている。また、設置用板部10の外縁部にも、同様な連結片80が形成されている。
【0081】
各容器1の設置用板部10は、連結片80を介して一体成形され、また、対向板部20は、連結片81を介して一体成形されるようになっている。対向板部20の連結片81は、設置用板部10の連結片80よりも脆弱に形成されており、後述する超音波溶着時の振動によって割れて分離するようになっている。分離後の連結片81を、図13に符号81a、81bで示す。符号81aは図1等にも示す。また、設置用板部10の連結部80は、折り曲げ方向に力を加えることで割れて分離するようになっている。分離後の連結片80を、同図に符号80a、80bで示す。符号80aは図1等にも示す。
【0082】
10枚の設置用板部10の第1〜第3柱状部31〜33の基端側部31a〜33aのうち、任意の数個は、対向板部20の先端側部31b〜33bに嵌って位置決めされるようになっている。すなわち、図7に示すように、所定の容器1の基端側部32aの先端面には凹部45が形成され、この凹部45の形成された基端側部32aに対応する先端側部32bには凹部45に嵌合する凸部46が形成されている。
【0083】
次に、上記のように構成された容器1の製造要領について説明する。まず、10枚の設置用板部10を縦2枚、横5枚となるように並んだ状態となるように、かつ、連結部80により連結された状態となるように一体成形する。また、10枚の対向板部20を同様に、連結部81により連結された状態となるように一体成形する。
【0084】
次いで、毒餌剤Aを各設置用板部10の毒餌剤載置面10cに載置する。
【0085】
その後、設置用板部10の上から対向板部20を被せるように配置し、図7に示すように、凸部46を凹部45に嵌合させる。これにより、対向板部20が設置用板部10に位置決めされる。その後、対向板部20を周知の超音波溶着機によって振動させることで、各柱状部31〜33の基端側部31a〜33aが先端側部31b〜33bに溶着する。この溶着時には、振動によって対向板部20の連結部81が分離するので、各容器1は、設置用板部10の連結部80のみで連結された状態となっている。
【0086】
尚、超音波溶着時に、設置用板部10の連結部80を分離させるようにして、容器1を対向板部20の連結部81のみで連結してもよい。
【0087】
このようにして、図11に示すように10個の容器1が一体化した製品100が得られる。この製品100は例えば樹脂フィルム等で包装されて流通する。各容器1が設置用板部10の連結部80で連結されているので、使用前まで、各容器1が分離することはなく、取扱いが容易である。
【0088】
そして、使用する際には、容器1を手で持って設置用板部10の連結部80を折るように力を加えるだけで連結部80が割れ、容器1を分離させて任意の複数箇所に置くことができる。
【0089】
各容器1を設置場所に設置する際には、放り投げればよい。容器1の設置用板部10と対向板部20との離間方向の寸法h2を、設置用板部10及び対向板部20の外形寸法W1よりも十分に小さく設定して容器1を扁平形状としているので、放り投げるだけで、設置用板部10又は対向板部20が設置場所に接する姿勢となる。
【0090】
図9に基づいて、容器1が、設置用板部10が設置場所に接する姿勢で置かれた場合について説明する。設置用板部10の外周側に周壁部が無く開放されているので、毒餌剤Aの誘引成分は、設置用板部10の外周側から容器1の周りに広範囲に拡散し易くなる。アリの様な小型害虫にとっては、乗り越えられない様な高さを有する障害物となる周壁部が無いことになり、よって、アリが毒餌剤Aまで容易に到達できることとなる。つまり、容器1の構造は、アリが毒餌剤Aまで到達するのを阻害しないような構造となっている。
【0091】
また、本発明をゴキブリ等の臭覚の発達した害虫の防除に適用する場合には、障害物が無いことと、特に誘引成分の広範囲への拡散効果とによってゴキブリ等が毒餌剤Aまで誘引されやすくなるので好適である。
【0092】
また、対向板部20の第1〜第5延出部21〜25は、毒餌剤Aよりも外側へ延出しているので、容器1の庇部として機能することになる。これにより、容器1を外側から見ると、毒餌剤Aが奥まったところに位置することになるので、ゴキブリ等が好んで出入りする暗い環境を容器1内部に作り出すことが可能になる。また、屋外で雨等が降った際に雨水が毒餌剤Aに直接付着してしまうのを抑制できる。
【0093】
一方、対向板部20が設置場所に接する姿勢で設置された場合について説明する。この場合も、対向板部20の外周側に周壁部が無く開放されているので、上記したように、誘引成分が拡散し易くなることにより、臭覚の発達したゴキブリ等の誘引性が向上し、かつ、小型害虫であるアリ等にとって乗り越え難い障害物となる周壁部が無いことにより、毒餌剤Aまで達し易くなる。
【0094】
つまり、容器1を放り投げた際に、設置用板部10と対向板部20とのどちらが設置場所に接する姿勢となっても、同程度の高い防除力が得られるので、設置時の方向性が無く、取扱いが容易である。
【0095】
以上説明したように、この実施形態1にかかる容器1によれば、設置用板部10の外周側をバリアフリー構造として開放したので、小型のアリ等が毒餌剤Aまで達し易くなり、アリの防除力を向上させることができる。また、毒餌剤Aの誘引成分を容器1の周りに広範囲に拡散させることができることから、臭覚の発達したゴキブリ等の誘引効果を向上でき、防除力を向上させることができる。
【0096】
また、設置用板部10に対向板部20を連結し、この対向板部20も設置場所の設置面Gに置けるようにし、しかも、バリアフリー構造としたので、防除力を向上させながら、設置の自由度を高めて扱い易い容器1にすることができる。
【0097】
また、図4に示すように、設置用板部10と対向板部20との離間方向の寸法h2を、設置用板部10及び対向板部20の外形寸法W1よりも短くして容器1を扁平形状としたので、放り投げるようにして設置しても、設置用板部10と対向板部20のいずれかを設置面Gに接触させることができ、所期の防除力を得ることができる。
【0098】
また、設置用板部10の外周側に傾斜面10dを設けてアリを容器1の内側まで案内可能にしたので、アリの防除力をより一層向上できる。
【0099】
また、傾斜面10dに滑り止め加工を施したことで、アリが毒餌剤Aまで達し易くなり、防除力をより一層向上できる。
【0100】
また、複数の容器1を設置用板部10の連結部80により連結するようにしたので、複数の容器1の搬送時に取扱いを容易にできる。
【0101】
また、対向板部20に、載置面部10cよりも外側へ延出する第1〜第5延出部21〜25を設けたので、設置用板部10が設置面Gに接する姿勢で容器1が設置された際に、第1〜第5延出部21〜25を庇部として機能させることができる。これにより、アリが好んで出入りする環境を作り出すことができ、防除力をより一層向上できる。また、対向板部20が設置面Gに接する姿勢で設置された際には、設置用板部10の第1〜第5延出部11〜15が庇部として機能することになる。
【0102】
尚、上記実施形態1では、各容器1に柱状部を3本設けているが、柱状部の数はこれに限られるものではない。例えば、図14に示す変形例のように、各容器1に5本の柱状部35を設けるようにしてもよい。この変形例では、各柱状部35が設置用板部10の第1〜第5延出部11〜15と、対向板部20の第1〜第5延出部21〜25とを連結するように延びている。また、各柱状部35は容器1の周方向に長い略長円形の断面を有している。
【0103】
(実施形態2)
図15〜24は、実施形態2にかかる容器1を示すものである。この実施形態2の容器1は、実施形態1のものに対し、形状が異なっている。以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0104】
すなわち、図17に示すように、実施形態2の容器1の設置用板部50は、葉っぱをモチーフにした細長い形状であり、全体が例えば透光性を有する薄い緑色等に着色されている。設置用板部50の内面50aには、外周面56a及び内周面56bを有する突条部56が形成されている。図21に示すように、突条部56は、設置用板部50の長手方向中央部よりも一方側に偏位している。内面50aにおける突条部56の内側部分が毒餌剤載置面50cである。設置用板部50の内面50aの外周側には、害虫案内面となる傾斜面50dが形成されている。傾斜面50dは、設置用板部50の略全周に亘るように形成されており、平面視で湾曲している。
【0105】
設置用板部50は、バリアフリー構造とされており、図15に示すように、容器1の側部は開放されるようになっている。
【0106】
図17に示すように、設置用板部50の外面50bには、凹部50gが形成されている。凹部50gは葉の葉脈を形作るように延びている。
【0107】
図16に示すように、対向板部60は、設置用板部50と略同じ形状とされており、図19に示すように、対向板部60の内面60aには、外周面66a及び内周面66bを有する突条部66と、害虫案内面となる傾斜面60dとが形成されている。図15に示すように、対向板部60の外面60bには、凹部60gが形成されている。対向板部60もバリアフリー構造である。
【0108】
図16に示すように、この実施形態2の容器1は、第1〜第4柱状部71〜74を備えている。第1〜第4柱状部71〜74は、略長円断面を有している。図18に示すように、第1〜第4柱状部71〜74は、それぞれ、設置用板部50と一体成形される基端側部71a〜74aと、対向板部60と一体成形される先端側部71b〜74bとを備えている。
【0109】
第1柱状部71は、容器1の長手方向一端側(図17における下側)に位置している。また、第2柱状部72及び第3柱状部73は、容器1の長手方向中央部近傍に位置している。また、第4柱状部74は、容器1の長手方向他端側(図17における上側)に位置している。
【0110】
図21に示すように、先端側部71b〜74bは筒状とされている。図15に示すように、対向板部60には、先端側部71b〜74bの中空部分に連通する貫通孔60fが形成されている。
【0111】
基端側部71a〜74aの先端面と、先端側部71b〜74bの突出方向先端面とは溶着されている。
【0112】
また、この実施形態2の容器1も扁平形状となるように各部の寸法が設定されている。
【0113】
使用前の容器1は、図22及び図23に示すように、実施形態1と同様に、10個が連結された状態で一体化されている。設置用板部50は連結片80により連結され、対向板部60は連結片81により連結されている。
【0114】
容器1が、設置用板部50が設置場所に接する姿勢で置かれた場合には、設置用板部50の外周側に周壁部が無く開放されているので、実施形態1のものと同様に、アリが毒餌剤Aまで達し易くなる。この状態では、対向板部60の長手方向の両側が庇部として機能することになり、アリが好んで出入りする暗い環境を容器1内部に作り出すことが可能になる。
【0115】
また、対向板部20が設置場所に接する姿勢で設置された場合についても、同様に、アリが毒餌剤Aまで達し易くなる。
【0116】
以上説明したように、この実施形態2にかかる容器1によれば、設置用板部50の外周側をバリアフリー構造として開放したので、実施形態1と同様に、アリやゴキブリ等の防除力を向上させることができる。
【0117】
尚、上記実施形態2では、各容器1に柱状部を4本設けているが、柱状部の数はこれに限られるものではない。
【0118】
また、実施形態1、2では、10個の容器1を1つにして製品100を構成しているが、製品100を構成する容器1の個数はこれに限られるものではなく、任意の個数で構成すればよい。また、1つの容器1を単独で流通させるようにしてもよい。
【0119】
また、上記実施形態1、2では、各容器1を一体化する際、設置用板部10側の連結部80を全て連結するようにしているが、これに限らず、一部を非連結とするようにしてもよい。これにより、使用前に容器1を簡単に分離させることができる。
【0120】
また、容器1の材質は、樹脂以外にも、例えば、紙であってもよい。
【0121】
また、実施形態1、2の容器1の形状は一例を示すものであり、花や葉以外の形状であってもよいのはもちろんのことである。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上説明したように、本発明にかかる匍匐害虫用の毒餌剤容器は、例えば、アリやゴキブリを防除するのに適している。
【符号の説明】
【0123】
1 容器
10、50 設置用板部
10c、50c 毒餌剤載置面
10d、50d 傾斜面(害虫案内面)
11〜15 第1〜第5延出部(庇部)
20、60 対向板部
31〜33 柱状部
80 連結部
A 毒餌剤
G 地面、床面(設置面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
匍匐害虫を防除するための毒餌剤を収容する匍匐害虫用の毒餌剤容器であって、
当該容器の設置場所に置かれる設置用板部を備え、
上記設置用板部の中央寄りの部位には、毒餌剤が載置される載置面部が設けられ、
上記設置用板部の外周側は、バリアフリー構造とされて開放されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項2】
請求項1の発明において、
設置用板部と対向するように配置される対向板部と、
上記対向板部を上記設置用板部に対し間隔をあけた状態で連結する柱状部とを備え、
上記対向板部は、当該容器の設置場所に置くことが可能に形成されるとともに、バリアフリー構造とされていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項3】
請求項2の発明において、
設置用板部と対向板部との離間方向の寸法は、設置用板部及び対向板部の外形寸法よりも短く設定されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項4】
請求項3の発明において、
対向板部には、載置面部よりも外側へ延出する庇部が設けられていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つの発明において、
設置用板部の外周側には、周縁に行くほど設置場所における設置面に接近するように下降傾斜し、匍匐害虫を該設置用板部の中央側へと案内するための害虫案内面が形成されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項6】
請求項5の発明において、
害虫案内面の傾斜角度は、20゜以下に設定されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項7】
請求項5または6の発明において、
害虫案内面の下縁部から上縁部までの長さは、5mm以下に設定されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1つの発明において、
害虫案内面には滑り止め加工が施されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項9】
請求項8の発明において、
滑り止め加工は、害虫案内面に施したシボ加工であり、
シボの深さは13μm以上に設定されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つの発明において、
複数の容器を連結するための連結部を備え、
上記連結部は、隣り合う容器を分離可能に構成されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項1】
匍匐害虫を防除するための毒餌剤を収容する匍匐害虫用の毒餌剤容器であって、
当該容器の設置場所に置かれる設置用板部を備え、
上記設置用板部の中央寄りの部位には、毒餌剤が載置される載置面部が設けられ、
上記設置用板部の外周側は、バリアフリー構造とされて開放されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項2】
請求項1の発明において、
設置用板部と対向するように配置される対向板部と、
上記対向板部を上記設置用板部に対し間隔をあけた状態で連結する柱状部とを備え、
上記対向板部は、当該容器の設置場所に置くことが可能に形成されるとともに、バリアフリー構造とされていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項3】
請求項2の発明において、
設置用板部と対向板部との離間方向の寸法は、設置用板部及び対向板部の外形寸法よりも短く設定されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項4】
請求項3の発明において、
対向板部には、載置面部よりも外側へ延出する庇部が設けられていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つの発明において、
設置用板部の外周側には、周縁に行くほど設置場所における設置面に接近するように下降傾斜し、匍匐害虫を該設置用板部の中央側へと案内するための害虫案内面が形成されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項6】
請求項5の発明において、
害虫案内面の傾斜角度は、20゜以下に設定されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項7】
請求項5または6の発明において、
害虫案内面の下縁部から上縁部までの長さは、5mm以下に設定されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1つの発明において、
害虫案内面には滑り止め加工が施されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項9】
請求項8の発明において、
滑り止め加工は、害虫案内面に施したシボ加工であり、
シボの深さは13μm以上に設定されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つの発明において、
複数の容器を連結するための連結部を備え、
上記連結部は、隣り合う容器を分離可能に構成されていることを特徴とする匍匐害虫用の毒餌剤容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−115143(P2011−115143A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6964(P2010−6964)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]