説明

化合物、ヘイズ低下剤、液晶組成物、高分子材料およびフィルム

【課題】十分な溶解性を示し、使用可能な濃度範囲が広くて、優れたヘイズ低下性を示す材料を提供すること。
【解決手段】下記一般式で表される化合物を含むヘイズ低下剤。


[式中、Xは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基;Cyは環状構造を有する二価の基を表し、Lは単結合、−O−、−CO−、−S−、−NR−(Rは水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−SO2−、−C=N−、−C=C−、−C≡C−、アルキレン基またはフッ化アルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基;Hbは炭素数2〜30のフッ化アルキレン基を;nは1または2を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性フィルム、遮熱フィルム等の種々の光学部材の材料をはじめとする、様々な用途に有用な化合物、ヘイズ低下剤と該ヘイズ低下剤を含む液晶組成物及び高分子材料並びにこれらを利用したフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶は配向処理の施された膜(配向膜)上に塗布すれば、規則正しく配向する。また、液晶を二枚の配向膜に挟み込むことによって液晶の配向状態を制御することができる。従って、棒状液晶性分子とそれを封入するための二枚の基板からなる液晶セルと、棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層とからなる液晶表示装置においては、二枚の基板上に形成された配向膜の間隙に棒状液晶性分子が注入された状態になっているため、棒状液晶性分子の配向状態を比較的容易に制御することができる。
【0003】
他方で、液晶表示装置の視野角拡大あるいは着色の解消を目的として、液晶セルと偏光板との間に、光学補償シート(位相差板)を配置することが行われている。この場合、透明支持体上に液晶性分子から形成した光学異方性層を有する光学異方性素子を光学補償シートとして使用する。光学異方性層は、液晶性分子を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。この時、液晶性分子は、透明支持体と光学異方性層との間に設けられる一枚の配向膜によって配向させる。しかし、一枚の配向膜では、液晶性分子を配向膜界面から空気界面まで均一に配向(モノドメイン配向)させることが難しい。これは、配向処理の施されていない界面(空気界面)側では、配向規制力がないため、液晶の配向が乱れてしまうためである。液晶性分子が均一に配向していないと、ディスクリネーションによる光散乱が生じ、不透明な膜が形成される。このような膜は液晶表示装置の視認性向上の観点から好ましくない。
【0004】
このような必要性から、配向処理の施されていない界面(空気界面)側において、配向膜を有さずとも液晶に配向規制力を与え、均一に配向させる技術が開発されている(特許文献1)。ここでは、円盤状コアとその末端に長鎖フッ化アルキル基を有する液晶配向促進剤を添加することにより、液晶性分子の配向を制御している。そして、液晶配向促進剤を用いることにより、液晶性分子が容易に均一に配向する液晶組成物を提供している。
【0005】
一方、特許文献2には、一方の末端にフッ化アルキル基を有し、アジン骨格を有する液晶化合物が記載されている。同文献ではこのような液晶性化合物は熱や光などに対する化学的安定性と液晶性に優れると記載されており、配向処理の施されていない界面(空気界面)側での配向規制力については言及されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−129162号公報
【特許文献2】特開平10−147562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載される液晶配向促進剤の使用可能濃度範囲や溶解性は必ずしも十分ではなく、なお改善の余地があった。また、特許文献1に記載される液晶配向促進剤と同等以上の液晶配向促進作用を示し、その結果として得られるフィルムのヘイズを低下させることができるヘイズ低下剤を提供することが望まれる。そこで本発明は、従来技術における当該課題を解決し、十分な溶解性を示し、使用可能な濃度範囲が広くて、優れたヘイズ低下性を示す材料を提供することを目的とした。また、それによって液晶性分子が容易に均一に配向することなどによって、得られるフィルムのヘイズを低下させることができる新たな液晶組成物を提供することも目的とした。即ち本発明は、光学異方性フィルム、遮熱フィルム等の種々の光学部材の材料をはじめとする、種々の用途に有用な化合物やヘイズ低下剤とそれを含む液晶組成物、及び高分子材料、並びにこれらを利用したフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することを目的に本発明者が鋭意検討した結果、アジン骨格を有する配向促進剤は液晶に対する配向安定化能力が高いことを見出すに至った。そこで、特許文献2に記載の化合物について検討したものの、同文献に記載の化合物はヘイズ低下性などに不満が残ることがわかった。そこで、さらなる検討をすすめた結果、コアにアジン結合を有する特定の構造の棒状分子において、フッ化アルキル基を有する側鎖を適宜導入した化合物を用いると、液晶組成物に添加して作成したフィルムのヘイズを低下できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 下記一般式(1)で表されるヘイズ低下剤。
【化1】

(一般式(1)中、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Cyはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表し、Lはそれぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−S−、−NR−(Rは水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−SO2−、−C=N−、−C=C−、−C≡C−、アルキレン基またはフッ化アルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基を表し、Hbはそれぞれ独立に炭素数が2〜30のフッ化アルキレン基を表し、nはそれぞれ独立に1または2を表す。式中で複数回登場するHb、L、Cy、X、nはそれぞれ独立に同じであっても異なっていてもよい。ただし、以下の化合物を除く。)
【化2】

[2] [1]に記載のヘイズ低下剤は、前記一般式(1)中、Hbが炭素数2〜6のフッ化アルキレン基を表すことが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載のヘイズ低下剤は、前記一般式(1)中、Cyが置換基を有してもよい二価の芳香族基であることが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載のヘイズ低下剤は、前記一般式(1)中、nが1であることが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載のヘイズ低下剤とさらに重合性液晶分子を含むことを特徴とする液晶組成物。
[6] [5]に記載の液晶組成物は、前記重合性液晶分子が棒状液晶分子であることが好ましい。
[7] [5]または[6]に記載の液晶組成物は、少なくとも1種のキラル化合物を含有することが好ましい。
[8] [5]〜[7]のいずれか1項に記載の液晶組成物を重合させてなる高分子材料。
[9] [8]に記載の高分子材料の少なくとも1種を含有するフィルム。
[10] [5]〜[7]のいずれか1項に記載の液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなるフィルム。
[11] [9]または[10]に記載のフィルムは光学異方性を示すことが好ましい。
[12] [9]〜[11]のいずれか1項に記載のフィルムは選択反射特性を示すことが好ましい。
[13] [12]に記載のフィルムは、赤外線波長域に選択反射特性を示すことが好ましい。
[14] 下記一般式(2)で表される化合物。
【化3】

(一般式(2)中、X’はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Cy’はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表し、L’はそれぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−S−、−NR’−(R’は水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−SO2−、−C=N−、−C=C−、−C≡C−、アルキレン基またはフッ化アルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基を表し、Hb’はそれぞれ独立に炭素数が2〜6のフッ化アルキレン基を表し、n’はそれぞれ独立に1または2を表す。式中で複数回登場するHb’、L’、Cy’、X’、n’はそれぞれ独立に同じであっても異なっていてもよい。)
【0010】
本発明によれば、使用濃度範囲が広くて溶剤溶解性が高く液晶配向促進作用も高い一般式(1)で表される配向促進剤を利用して、光学異方性フィルム、遮熱フィルム等の種々の光学部材の材料をはじめとする、種々の用途に有用な液晶組成物、及び高分子材料、並びにこれらを利用したフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例2における一般式(1)のヘイズ低下剤の、その他の棒状液晶化合物に対する濃度0.020%のフィルムの透過スペクトルを表す。
【図2】図2は、実施例5における一般式(1)のヘイズ低下剤の、その他の棒状液晶化合物に対する濃度0.020%のフィルムの透過スペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
[ヘイズ低下剤]
本発明のヘイズ低下剤は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。下記一般式(1)のヘイズ低下剤は二価のアジン骨格を中心に有し、末端にフッ化アルキル基を有することを特徴とする。末端にフッ化アルキル基を有する化合物は配向促進剤として効果的であるが、従来知られている配向促進剤は、使用濃度範囲が狭いといった点や溶解性が低いといった点があり、用途が制限されていた。下記一般式(1)のヘイズ低下剤は同等以上の配向性能をより広い濃度範囲かつ良好な溶解性で示すことから、ヘイズ低下剤として好ましく用いることができる。また、液晶配向促進剤としても好ましく用いることができる。そのため、それらを含む組成物は製造において使用しやすいというメリットがある。また重合で硬化可能であることから、光学部材等の種々の用途に有用である。いかなる理論に拘泥するものでもないが、下記一般式(1)で表される本発明のヘイズ低下剤は、分子の表面偏在性が高まり、液晶の配向を促進できるため、ヘイズを低下させると推定される。
【0014】
【化4】

一般式(1)中、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Cyはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表し、Lはそれぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−S−、−NR−(Rは水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−SO2−、−C=N−、−C=C−、−C≡C−、アルキレン基またはフッ化アルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基を表し、Hbはそれぞれ独立に炭素数が2〜30のフッ化アルキレン基を表し、nはそれぞれ独立に1または2を表す。式中で複数回登場するHb、L、Cy、X、nはそれぞれ独立に同じであっても異なっていてもよい。ただし、以下の化合物を除く。
【化5】

【0015】
上記の一般式(1)の説明中、ただし書きにて除く化合物は、炭素数が8のフッ化アルキレンを有しており、PFOA規制(パーフルオロオクタン酸)に抵触する可能性があり、利用が困難である。
そのため、本発明のヘイズ低下剤は前記一般式(1)中、Hbが炭素数2〜6のフッ化アルキレン基で表されることが、炭素数6以下のフッ化アルキレンは原理的にPFOAを生成しえないためにより安全性が高い観点から好ましい。
すなわち、本発明のヘイズ低減剤は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0016】
【化6】

一般式(2)中、X’はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Cy’はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表し、L’はそれぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−S−、−NR’−(R’は水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−SO2−、−C=N−、−C=C−、−C≡C−、アルキレン基またはフッ化アルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基を表し、Hb’はそれぞれ独立に炭素数が2〜6のフッ化アルキレン基を表し、n’はそれぞれ独立に1または2を表す。式中で複数回登場するHb’、L’、Cy’、X’、n’はそれぞれ独立に同じであっても異なっていてもよい。
【0017】
前記一般式(2)におけるL’、Cy’、X’、n’およびR’の好ましい範囲は、後述する一般式(1)におけるL、Cy、X、nおよびRの好ましい範囲と同様である。また、前記一般式(2)におけるHb’の好ましい範囲も、炭素数2〜6の範囲内である以外は後述する一般式(1)におけるHbの好ましい範囲と同様である。
以下、前記一般式(1)で表される本発明のヘイズ低減剤の好ましい構造の詳細について説明する。
【0018】
一般式(1)中、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xがとりうる炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などを例示することができる。その中でも、Xは水素原子、メチル基、エチル基、n−ブチル基が好ましく、水素原子、メチル基またはエチル基がより好ましく、エチル基もしくは水素原子がさらに好ましい。一般式(1)中の複数のXは同一であることが好ましい。
【0019】
一般式(1)中、Cyはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表し、好ましくは置換基を有してもよい二価の芳香族炭化水素基(以下、芳香族基とも言う)または二価の複素環基であり、より好ましくは置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素である。二価の芳香族炭化水素基の炭素数は6〜22であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましく、フェニレン基であることがさらにより好ましい。フェニレン基である場合は、メタ位またはパラ位に結合手を有することが好ましく、パラ位に結合手を有することが特に好ましい。二価の複素環基は、5員、6員または7員の複素環を有することが好ましい。5員環または6員環がさらに好ましく、6員環が最も好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましい。複素環は、芳香族性複素環であることが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和複素環である。最多二重結合を有する不飽和複素環がさらに好ましい。複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が含まれる。
Cyで表される環状構造(好ましくは二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基)は2つの結合手以外にも置換基を有していてもよい。置換基の置換位置としては、アジン結合と結合する位置のオルト位以外の位置が好ましい。n=1の場合、より好ましい置換位置はアジン結合と結合する位置のメタ位である。
置換基の例として、炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはエステル基や、一般式(1)におけるHb−L−で表されるものと同じ構造の置換基を挙げることができる。 前記Cyの置換基としてのアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状もしくは分岐状が好ましい。アルキル基の炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などを例示することができる。前記Cyの置換基としてのアルコキシ基のアルキル基部分については、前記のCyの置換基としてのアルキル基の説明と好ましい範囲を参照することができる。具体的にはメトキシ基、エトキシ基を例示することができる。前記Cyの置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、中でも塩素原子、フッ素原子が好ましい。前記Cyの置換基としてのエステル基としては、R0COO−もしくは−COOR0で表される基を例示することができる。R0としては炭素数1〜8のアルキル基を挙げることができる。R0がとりうるアルキル基の説明と好ましい範囲については、前記Cyの置換基としてのアルキル基の説明と好ましい範囲を参照することができる。前記Cyの置換基としてのエステルの具体例として、CH3COO−、C25COO−、−COOCH3を挙げることができる。前記Cyの置換基としての一般式(1)におけるHb−L−で表されるものと同じ構造の置換基の好ましい範囲は、後述のLおよびHbの好ましい範囲の組合せと同様である。なお、このときCyはHb−L−の2置換体または3置換体となることが好ましく、その場合の各Hb−L−は同一であっても異なっていてもよい。また、nが2の場合は、複数のCyが一般式(1)におけるHb−L−で表されるものと同じ構造の置換基をそれぞれ有していてもよい。
Cyで表される環状構造(好ましくは二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基)に対する置換基の具体例としてはメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、一般式(1)におけるHb−L−などを挙げることができる。一般式(1)中の複数のCyは同一であることが好ましい。中でも好ましくはメトキシ基、エトキシ基、一般式(1)におけるHb−L−であり、特に好ましくは一般式(1)におけるHb−L−である。
一般式(1)におけるHb−L−を置換基として有する場合、好ましくは1つ目の一般式(1)におけるHb−L−のオルト位に置換することが好ましい。また、一般式(1)におけるHb−L−を2つ置換基として設ける場合は、両方とも1つ目の一般式(1)におけるHb−L−のオルト位に置換することが好ましい。
【0020】
一般式(1)において、Lはそれぞれ独立して単結合、−O−、−CO−、−S−、−NR−(Rは水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−SO2−、−C=N−、−C=C−、−C≡C−、アルキレン基またはフッ化アルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基であり、−O−、−CO−、−C=C−、アルキレン基またはフッ化アルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基であることが好ましく、−O−、−CO−およびアルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基であることがより好ましい。
前記Lがとりうるアルキレン基およびフッ化アルキレン基の炭素数は1〜10であることが好ましく、1〜7であることがより好ましく、1〜4であることが特に好ましく、2または3であることがより特に好ましい。
前記Rがとりうるアルキル基は直鎖状であっても分枝状であってもよい。前記Rがとりうるアルキル基の炭素数は1〜3であることがより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基を例示することができる。
Lは上述の特定の基を組み合わせてなる基であってもよいが、L全体の原子連結鎖長は、1〜30原子であることが好ましく、1〜20原子であることがより好ましく、1〜10原子であることが特に好ましい。
【0021】
さらに前記Lは、*−L1−Sp−L2−#で表されることが好ましい(但し*がHbとの結合手を表し、#がCyとの連結手を表す)。前記L1およびL2はそれぞれ独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NR’’CO−、−CONR’’−(R’’は水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)を表すことが好ましく、より好ましくは−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−であり、特に好ましくは−O−、−CO−、−COO−、−OCO−である。その中でも前記L1としてより特に好ましくは−O−または−OCO−であり、一方、前記L2としてより特に好ましくは−COO−または−OCO−である。上記のR’’がとりうるアルキル基は、前記Rがとりうるアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0022】
前記Spは単結合、炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数1〜10のフッ化アルキレン基を表し、より好ましくは単結合、炭素数1〜7のアルキレン基または炭素数1〜7のフッ化アルキレン基であり、さらに好ましくは単結合、炭素数1〜4のアルキレン基または炭素数1〜4のフッ化アルキレン基であり、より特に好ましくは単結合または炭素数1〜4のアルキレン基であり、さらにより特に好ましくは単結合または炭素数2もしくは3のアルキレン基である。Spが表すアルキレン基またはフッ化アルキレン基には、分枝があっても無くてもよいが、好ましいのは分枝がない直鎖のアルキレン基または分枝があるフッ化アルキレン基であり、より好ましくは分枝がない直鎖のアルキレン基である。
【0023】
一般式(1)中、Hbは炭素数2〜30のフッ化アルキル基を表し、より好ましくは炭素数2〜20のフッ化アルキル基であり、さらに好ましくは2〜10のフッ化アルキル基であり、特に好ましくは2〜6のフッ化アルキル基である。ここで、フッ化アルキル基は、末端のトリフルオロメチル基のフッ素原子の多くとも2つや、フッ化アルキレン鎖の一方のフッ素原子が水素で置換されていても置換されていなくてもよい。フッ化アルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状または分枝状であるものが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。フッ化アルキル基としては、末端を含めてパーフルオロアルキル基であるものまたは末端がCHF2であり、末端以外がパーフルオロアルキレン基であるものを好ましく例示することができる。すなわち、以下の一般式で表される基であることが好ましい。
F−(Cp2p)−
H−(Cp2p)−
上式において、pは2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜6であることがより特に好ましい。
【0024】
一般式(1)中、nはそれぞれ独立に1または2を表す。また、nが2であるとき、複数存在する括弧内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよい。例えば、nが2であるとき、分子内に4つ存在する括弧内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよい。一般式(1)中のnは1であることが、配向剤の相溶性が高いという点から好ましい。
【0025】
一般式(1)で表される化合物は、分子構造が対称性を有するものであってもよいし、対称性を有しないものであってもよいが、対称性を有するものであることが好ましく、点対称であることがより好ましい。なお、ここでいう対称性とは、点対称、線対称、回転対称のいずれかに該当するものを意味し、非対称とは点対称、線対称、回転対称のいずれにも該当しないものを意味する。ここで、一般式(1)中で複数回登場するHb、L、Cy、X、nはそれぞれ独立に同じであっても異なっていてもよいが、一般式(1)で表されるヘイズ低下剤は上述のように点対称であることが好ましいため、−CR(X)=N−N=C(X)−で表されるコアの左右において各基が対称の構造であることが好ましい。すなわち、−CR(X)=N−N=C(X)−で表されるコアの左側のHb、L、Cy、X、nの組合せが、該コアの右側のHb、L、Cy、X、nの組合せと同じであることが好ましい。
【0026】
一般式(1)で表される化合物は、以上述べたフッ化アルキル基(Hb)、連結基(−L−Cy−および−Cy−L−)、置換基Xおよびコア部分の二価アジン骨格を組み合わせた化合物である。分子内に2つ存在するフッ化アルキル基(Hb)は互いに同一であることが好ましい。
、分子内に存在する連結基−L−Cy−および−Cy−L−も互いに同一であることが好ましい。但し、nが2の場合における各連結基−L−Cy−同士は異なることが好ましく、同様に−Cy−L−同士も異なることが好ましい。末端のHb−L−(好ましくはHb−L1−Sp−L2−)は、以下のいずれかの一般式で表される基であることが好ましい。
(Cp2p+1)−(Cq2q)−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−O
(Cp2p+1)−(Cq2q)−COO−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−O−(Cr2r)−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−O−(Cr2r)−O−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−COO−(Cr2r)−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−COO−(Cr2r)−COO−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−OCO−(Cr2r)−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−OCO−(Cr2r)−COO−
上式において、pは2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜6であることが特に好ましい。qは0〜20であることが好ましく、0〜10であることがより好ましく、0〜5であることがさらに好ましい。p+qは3〜30であることが好ましい。rは1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
【0027】
以下に、一般式(1)で表されるヘイズ低下剤の具体例を示す。ただし、本発明で採用することができる一般式(1)で表されるヘイズ低下剤は、下記の具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0028】
【化7】

【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
一般式(1)で表される化合物は、特開2002−129162号公報や特開2002−97170号や当該公報において引用されている文献に記載される合成法を適宜選択して組み合わせることにより合成することができる。また、その他の公知の合成法も必要に応じて組み合わせることにより合成することができる。
【0032】
[液晶組成物]
本発明の液晶組成物は、重合性液晶性分子と前記一般式(1)で表されるヘイズ低下剤とを含む。本発明の液晶組成物では、1種類以上の重合性液晶性分子と1種類以上の非重合性液晶性分子を併用してもよい。また、前記一般式(1)で表されるヘイズ低下剤を二種類以上使用してもよく、前記一般式(1)で表されるヘイズ低下剤とそれ以外のヘイズ低下剤や液晶配向促進剤を併用してもよい。本発明の液晶組成物中、前記ヘイズ低下剤は、液晶性分子の量の0.01〜20質量%の量で使用することが好ましく、0.01〜5質量%の量であることがより好ましく、0.02〜2.5質量%の量であることが特に好ましく、0.03〜1.0質量%の量であることがより特に好ましい。
前記重合性液晶性分子としては、ディスコティック液晶性分子または棒状液晶性分子を用いることが好ましい。
【0033】
ディスコティック液晶性分子は、様々な文献C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am.Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載されている。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶性分子は、下記式で表わされる化合物であることが好ましい。
D(−LD−Q)d
上式中、Dは円盤状コアであり;LDは二価の連結基であり;Qは重合性基であり;dは4〜12の整数である。上記式の円盤状コア(D)の具体例を以下に示す。以下の各具体例において、LQ(またはQL)は、二価の連結基(LD)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。以下の具体例の中では、トリフェニレン(D4)が特に好ましい。
【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
連結基LDや重合性基Qの詳細や好ましい範囲については、特開2002−129162号公報の[0161]〜[0171]を参照することができる。
【0038】
前記重合性棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
【0039】
前記重合性棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7であることが好ましい。重合性基の具体例については、特開2002−129162号公報の[0169]を参照することができる。棒状液晶性分子は、短軸方向に対してほぼ対称となる分子構造を有することが好ましい。そのためには、棒状分子構造の両端に重合性基を有することが好ましい。以下に、棒状液晶性分子の具体例を示す。
【0040】
【化13】

【0041】
【化14】

【0042】
【化15】

【0043】
【化16】

【0044】
【化17】

【0045】
【化18】

【0046】
【化19】

【0047】
【化20】

【0048】
【化21】

【0049】
【化22】

【0050】
【化23】

【0051】
【化24】

【0052】
【化25】

【0053】
【化26】

【0054】
【化27】

【0055】
【化28】

【0056】
【化29】

【0057】
【化30】

【0058】
液晶組成物は、重合性液晶性分子および前記一般式(1)で表されるヘイズ低下剤に加えて、必要に応じて溶媒、不斉炭素原子を含む化合物、あるいは重合性開始剤(後述)や他の添加剤(例えば、セルロースエステル)を含むことができる。液晶組成物の溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0059】
光学活性化合物(キラル剤):
前記液晶組成物は、コレステリック液晶相を示すものであることが好ましく、そのためには、光学活性化合物を含有しているのが好ましい。但し、上記棒状液晶化合物が不正炭素原子を有する分子である場合には、光学活性化合物を添加しなくても、コレステリック液晶相を安定的に形成可能である場合もある。前記光学活性化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第一42委員会編、1989に記載)から選択することができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。光学活性化合物(キラル剤)は、重合性基を有していてもよい。光学活性化合物が重合性基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性基を有する場合は、重合性光学活性化合物と重合性棒状液晶合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、光学活性化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性光学活性化合物が有する重合性基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、光学活性化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、光学活性化合物は、液晶化合物であってもよい。
【0060】
前記液晶組成物中の光学活性化合物は、併用される液晶化合物に対して、1〜30モル%であることが好ましい。光学活性化合物の使用量は、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、キラル剤として用いられる光学活性化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。この様な、強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623公報に記載のキラル剤が挙げられ、本発明に好ましく用いることができる。
【0061】
[フィルム]
前記一般式(1)で表されるヘイズ低下剤を含む液晶組成物を塗布等の方法により製膜することによりフィルムを形成することができる。液晶組成物を配向膜の上に塗布し、液晶層を形成することにより光学異方性素子を作製することもできる。本発明のフィルムは、光学異方性を示すことが好ましい。
液晶組成物の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法)により実施できる。液晶性分子は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性分子に導入した重合性基(Q)の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)、オキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報記載)が含まれる。
【0062】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.02〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。液晶層の厚さは、0.1〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることがさらに好ましく、2〜20μmであることが最も好ましい。液晶層中の前記一般式(1)で表されるヘイズ低下剤の塗布量は、0.1〜500mg/m2であることが好ましく、0.5〜450mg/m2であることがより好ましく、0.75〜400mg/m2であることがさらに好ましく、1.0〜350mg/m2であることが最も好ましい。
【0063】
(選択反射特性)
本発明のフィルムは、前記一般式(1)で表されるヘイズ低下剤を含む液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなる層であることも好ましく、その場合は選択反射特性を示すことがより好ましく、赤外線波長領域に選択反射特性を示すことが特に好ましい。コレステリック液晶相を固定してなる光反射層については、特開2011−107178号公報および特開2011−018037号公報に記載の方法に詳細が記載されており、本発明でも好ましく用いることができる。なお、本発明のフィルムは、前記一般式(1)で表されるヘイズ低下剤を含む液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなる層を複数積層してなることも好ましい。
【0064】
[配向膜]
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。ポリマーのラビング処理により形成する配向膜が特に好ましい。ラビング処理は、ポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。配向膜に使用するポリマーの種類は、液晶性分子の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定する。液晶性分子を水平(平均傾斜角:0〜50゜)に配向させるためには、配向膜の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向膜用ポリマー)を用いる。液晶性分子を垂直(平均傾斜角:50〜90゜)に配向させるためには、配向膜の表面エネルギーを低下させるポリマーを用いる。配向膜の表面エネルギーを低下させるためには、ポリマーの側鎖に炭素数が10〜100の炭化水素基を導入することが好ましい。
【0065】
具体的なポリマーの種類については、様々な表示モードに対応する液晶性分子を用いた光学補償シートについての文献に記載がある。配向膜の厚さは、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。なお、配向膜を用いて、光学異方性層の液晶性分子を配向させてから、液晶層を透明支持体上に転写してもよい。配向状態で固定された液晶性分子は、配向膜がなくても配向状態を維持することができる。また、平均傾斜角が5°未満の配向の場合は、ラビング処理をする必要はなく、配向膜も不要である。ただし、液晶性分子と透明支持体との密着性を改善する目的で、界面で液晶性分子と化学結合を形成する配向膜(特開平9−152509号公報記載)を用いてもよい。密着性改善の目的で配向膜を使用する場合は、ラビング処理を実施しなくてもよい。二種類の液晶層を透明支持体の同じ側に設ける場合、透明支持体上
に形成した液晶層を、その上に設ける液晶層の配向膜として機能させることも可能である。
【0066】
[透明支持体]
本発明のフィルムや本発明のフィルムを有する光学異方性素子は、透明支持体を有していてもよい。透明支持体として、ガラス板またはポリマーフィルム、好ましくはポリマーフィルムが用いられる。支持体が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。透明支持体として、一般には、光学等方性のポリマーフィルムが用いられている。光学等方性とは、具体的には、面内レターデーション(Re)が10nm未満であることが好ましく、5nm未満であることがさらに好ましい。また、光学等方性透明支持体では、厚み方向のレターデーション(Rth)も、10nm未満であることが好ましく、5nm未満であることがさらに好ましい。透明支持体の面内レターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)は、それぞれ下記式で定義される。
Re=(nx−ny)×d
Rth=[{(nx+ny)/2}−nz]×d
式中、nxおよびnyは、透明支持体の面内屈折率であり、nzは透明支持体の厚み方向の屈折率であり、そしてdは透明支持体の厚さである。
【0067】
透明支持体として光学異方性のポリマーフィルムが用いられる場合もある。そのような場合、透明支持体は、光学的一軸性または光学的二軸性を有することが好ましい。光学的一軸性支持体の場合、光学的に正(光軸方向の屈折率が光軸に垂直な方向の屈折率よりも大)であっても負(光軸方向の屈折率が光軸に垂直な方向の屈折率よりも小)であってもよい。光学的二軸性支持体の場合、前記式の屈折率nx、nyおよびnzは、全て異なる値(nx≠ny≠nz)になる。光学異方性透明支持体の面内レターデーション(Re)は、10〜1000nmであることが好ましく、15〜300nmであることがさらに好ましく、20〜200nmであることが最も好ましい。光学異方性透明支持体の厚み方向のレターデーション(Rth)は、10〜1000nmであることが好ましく、15〜300nmであることがより好ましく、20〜200nmであることがさらに好ましい。
【0068】
透明支持体を形成する材料は、光学等方性支持体とするか、光学異方性支持体とするかに応じて決定する。光学等方性支持体の場合は、一般にガラスまたはセルロースエステルが用いられる。光学異方性支持体の場合は、一般に合成ポリマー(例、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ノルボルネン樹脂)が用いられる。ただし、欧州特許0911656A2号明細書に記載されている(1)レターデーション上昇剤の使用、(2)セルロースアセテートの酢化度の低下、あるいは(3)冷却溶解法によるフィルムの製造により、光学異方性の(レターデーションが高い)セルロースエステルフィルムを製造することもできる。ポリマーフィルムからなる透明支持体は、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。
【0069】
光学異方性透明支持体を得るためには、ポリマーフィルムに延伸処理を実施することが好ましい。光学的一軸性支持体を製造する場合は、通常の一軸延伸処理または二軸延伸処理を実施すればよい。光学的二軸性支持体を製造する場合は、アンバランス二軸延伸処理を実施することが好ましい。アンバランス二軸延伸では、ポリマーフィルムをある方向に一定倍率(例えば3〜100%、好ましくは5〜30%)延伸し、それと垂直な方向にそれ以上の倍率(例えば6〜200%、好ましくは10〜90%)延伸する。二方向の延伸処理は、同時に実施してもよい。延伸方向(アンバランス二軸延伸では延伸倍率の高い方向)と延伸後のフィルムの面内の遅相軸とは、実質的に同じ方向になることが好ましい。延伸方向と遅相軸との角度は、10°未満であることが好ましく、5°未満であることがさらに好ましく、3°未満であることが最も好ましい。
【0070】
透明支持体の厚さは、10〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。透明支持体とその上に設けられる層(接着層、配向膜あるいは光学異方性層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。透明支持体に紫外線吸収剤を添加してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。接着層については、特開平7−333433号公報に記載がある。接着層の厚さは、0.1〜2μmであることが好ましく、0.2〜1μmであることがさらに好ましい。
【実施例】
【0071】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0072】
[実施例1]
化合物(18)の合成
化合物(18)を下記ルートで合成した。
【0073】
(1−1)A2の合成:
【化31】

上記スキームにしたがって、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(化合物A1、3g)をメタノール(20mL)に溶解し、室温で攪拌しながらヒドラジン1水和物(0.51mL)を滴下した。2時間後、水5mLとメタノール10mLを加えてさらに30分攪拌し、生じた結晶をろ過することでアジン(化合物A2)を2.6g得た。化合物A2のNMRスペクトルを下記に示す。
1H−NMR(400MHz、DMSO−d6):δ6.8(d、2H)、δ7.1(d、2H)、δ7.3(s、2H)、δ8.45(s、2H)、δ9.3(bd、2H)、δ9.55(bd、2H)。
【0074】
(1−2)A4の合成:
【化32】

上記スキームにしたがって、2−(パーフルオロヘキシル)エタノール(化合物A3、36.4g)に、無水コハク酸(10.5g)を加え、テトラヒドロフラン(5mL)とトリエチルアミン(0.1mL)を加えた後、100℃で2時間過熱攪拌を行った。反応液を攪拌しながら冷却し、室温付近で水(50mL)を加えて、さらに攪拌しながら氷冷水によって冷却し、生じた結晶をろ過することでカルボン酸(化合物A4)を44.1g得た。合成した化合物の同定は、1H−NMRを用いて行った。化合物A4のNMRスペクトルを下記に示す。
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ2.35−2.55(m、2H)、δ2.6−2.75(m、4H)、δ4.45(t、2H)。
【0075】
(1−3)化合物(18)の合成:
【化33】

上記スキームにしたがって、カルボン酸(上記(1−2)にて合成した化合物A4、3.9g)をテトラヒドロフラン(3.9mL)と混合し、触媒量のDMFを加えた後、塩化チオニル(1.0mL)を加え、40℃で2時間攪拌した。溶媒および過剰量の塩化チオニルを留去し、テトラヒドロフラン(10mL)を加えた。反応液を攪拌し、温度を10℃以下に保った状態で上記(1−1)にて合成した化合物A2(0.53g)を加え、さらにジイソプロピルエチルアミン(1.6mL)を滴下し、さらに室温で2時間攪拌した。水と酢酸エチルによって分液操作をし、有機層の溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/メタノールで再結晶することで、化合物(18)を3.0g得た。合成した化合物の同定は、1H−NMRを用いて行った。化合物(18)のNMRスペクトルを下記に示す。
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ2.4−2.6(m、8H)、δ2.75(t、8H)、δ2.95(t、8H)、δ4.45(t、8H)、δ7.3(s、2H)、δ7.3(s、2H)、δ7.32(s、2H)、8.55(s、2H)。
【0076】
[実施例2]
化合物(5)の合成
化合物(5)を下記ルートで合成した。
【0077】
(2−1)A6の合成:
【化34】

上記スキームにしたがって、4−ヒドロキシプロピオフェノン(化合物A5,18g)のメタノ−ル(100mL)溶液に、ヒドラジン1水和物(2.8mL)を加え、さらに触媒として酢酸(0.4mL)を加え、3時間加熱還流を行った。反応液を室温まで冷却し、生じた結晶をろ過することで、アジン化合物(A6)を14.4g得た。合成した化合物の同定は、1H−NMRを用いて行った。合成した化合物の同定は、1H−NMRを用いて行った。化合物(A6)のNMRスペクトルを下記に示す。
1H−NMR(400MHz、DMSO−d6):δ1.0(t、6H)、δ2.8(q、4H)、δ6.85(d、4H)、δ7.8(d、4H)、δ9.85(bd、2H)。
【0078】
(2−2)
化合物(5)の合成:
【化35】

上記スキームにしたがって、ルボン酸(上記(1−2)にて合成した化合物A4、3.9g)をテトラヒドロフラン(3.9mL)と混合し、触媒量のDMFを加えた後、塩化チオニル(1.0mL)を加え、40℃で2時間攪拌した。溶媒および過剰量の塩化チオニルを留去し、テトラヒドロフラン(10mL)を加えた。反応液を攪拌し、温度を10℃以下に保った状態で上記(2−1)にて合成した化合物A6(1.15g)を加え、さらにジイソプロピルエチルアミン(1.6mL)を滴下し、さらに室温で2時間攪拌した。水と酢酸エチルによって分液操作をし、有機層の溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/へキサンで再結晶することで、化合物(5)を2.5g得た。合成した化合物の同定は、1H−NMRを用いて行った。化合物(5)のNMRスペクトルを下記に示す。
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ1.15(t、6H)、δ2.45−2.65(m、4H)、δ2.80−3.05(m、4H+8H)、δ4.45(t、4H)、δ7.15(d、4H)、δ7.95(d、4H)
【0079】
[実施例3〜5]
実施例1および2と類似の方法により、化合物(6)、化合物(12)および化合物(13)を合成した。
【0080】
[実施例11〜15および比較例1]
(液晶ヘイズ低下試験)
上記にて合成した化合物を表1に記載されるように実施例11〜15にて液晶ヘイズ低下剤として用いて、フィルム(光学異方性フィルム)を形成して評価した。比較例1では特開2002−129162号公報の化合物(30)である下記構造の化合物を、本発明のヘイズ低下剤の代わりに化合物(A)として用いた。
【化36】

【0081】
まず、下記組成の塗布液を調製した。液晶ヘイズ低下剤の濃度は、棒状液晶化合物に対して0.03質量部、0.10質量部、0.20質量部となるように調製した。
・下記の棒状液晶化合物1 100質量部
・下記のキラル剤(A) 2.8質量部
・IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
・下記表1に記載される液晶ヘイズ低下剤 上記の量
・下記表1に記載される溶媒 溶質濃度が25質量%となる量
【0082】
【化37】

【0083】
上記にて調製した塗布液を、マイクロピペッターを用いて50μl量り取り、配向膜付ガラス上(SE−130、日産化学(株)製)に滴下して2000rpmの回転速度でスピンコートした。85℃で2分間加熱し、1分間放冷したのち、窒素雰囲気下で紫外線照射(紫外線強度:500mJ/m2)することで、各実施例および比較例の光学異方性フィルムを形成した。光学異方性フィルムの膜厚は約5μmであった。
【0084】
(評価方法)
製造した各実施例および比較例の光学異方性フィルムの配向性を目視及びヘイズで評価した。ヘイズは、日本電飾社製ヘイズメータNDH2000を用いて測定した。
配向試験では、液晶ヘイズ低下剤の濃度が0.03質量%〜0.20質量%である光学異方性フィルムのヘイズ値により、下記の4段階の評価基準にしたがってヘイズ低下作用を評価した。評価が良好であるものは、ヘイズ低下作用が大きいことを示している。
◎ 0.25未満
○ 0.25以上0.60未満
△ 0.60以上1.00未満
× 1.00以上
各実施例および比較例のヘイズ低下剤を上記の各濃度に調整したときに得られた光学異方性フィルムについての評価結果を下記表1に記載した。
【0085】
【表1】

【0086】
上記表1に示すように、本発明の化合物はヘイズ低下作用が大きくて、濃度が高くなっても溶媒に対する溶解性が高いことが確認された。いかなる理論に拘泥するものでもないが、このようなヘイズ低下は本発明の化合物の液晶配向作用が大きいために、液晶の配向が空気界面側でも良好となったためと考えられ、すなわち本発明の化合物はヘイズ低下剤であり、また、液晶配向促進剤と考えられる。
なお、溶媒の種類をメチルエチルケトンに代え、溶質濃度を33%に変更した以外は実施例11〜15と同様にしてフィルムを製膜し、同様に液晶ヘイズ低下試験を行った場合も同じ傾向を示しており、本発明の化合物が塗布溶媒の適用範囲が広くて、使用適性が高いことが確認された。
【0087】
(透過スペクトルの測定および評価)
実施例12および実施例15で製造した光学異方性フィルムの透過スペクトル測定を行った。なお、透過スペクトル測定は島津社製の分光光度計UV−3100PCを用いた。それらの結果をそれぞれ図1および図2に示した。
図1および図2に示すように、実施例2および実施例5で作成したフィルムはいずれも900nm付近の近赤外領域に中心波長を有する選択反射膜であり、光学異方性を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるヘイズ低下剤。
【化1】

(一般式(1)中、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Cyはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表し、Lはそれぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−S−、−NR−(Rは水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−SO2−、−C=N−、−C=C−、−C≡C−、アルキレン基またはフッ化アルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基を表し、Hbはそれぞれ独立に炭素数が2〜30のフッ化アルキレン基を表し、nはそれぞれ独立に1または2を表す。式中で複数回登場するHb、L、Cy、X、nはそれぞれ独立に同じであっても異なっていてもよい。ただし、以下の化合物を除く。)
【化2】

【請求項2】
前記一般式(1)中、Hbが炭素数2〜6のフッ化アルキレン基を表すことを特徴とする請求項1に記載のヘイズ低下剤。
【請求項3】
前記一般式(1)中、Cyが置換基を有してもよい二価の芳香族基であることを特徴とする請求項1または2に記載のヘイズ低下剤。
【請求項4】
前記一般式(1)中、nが1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のヘイズ低下剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のヘイズ低下剤とさらに重合性液晶分子を含むことを特徴とする液晶組成物。
【請求項6】
前記重合性液晶分子が棒状液晶分子であることを特徴とする請求項5に記載の液晶組成物。
【請求項7】
少なくとも1種のキラル化合物を含有する請求項5または6に記載の液晶組成物。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の液晶組成物を重合させてなる高分子材料。
【請求項9】
請求項8に記載の高分子材料の少なくとも1種を含有するフィルム。
【請求項10】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなるフィルム。
【請求項11】
光学異方性を示す請求項9または10に記載のフィルム。
【請求項12】
選択反射特性を示す請求項9〜11のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項13】
赤外線波長域に選択反射特性を示す請求項12に記載のフィルム。
【請求項14】
下記一般式(2)で表される化合物。
【化3】

(一般式(2)中、X’はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Cy’はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい環状構造を有する二価の基を表し、L’はそれぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−S−、−NR’−(R’は水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)、−SO2−、−C=N−、−C=C−、−C≡C−、アルキレン基またはフッ化アルキレン基あるいはそれらを組み合わせてなる基を表し、Hb’はそれぞれ独立に炭素数が2〜6のフッ化アルキレン基を表し、n’はそれぞれ独立に1または2を表す。式中で複数回登場するHb’、L’、Cy’、X’、n’はそれぞれ独立に同じであっても異なっていてもよい。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−23569(P2013−23569A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159261(P2011−159261)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】