説明

化合物、ヘイズ低下剤、液晶組成物、高分子材料およびフィルム

【課題】十分な溶解性を示し、使用可能な濃度範囲が広くて、優れたヘイズ低下性を示す化合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式で表される化合物。


[式中、L1〜L6は単結合、−O−、−CO−、−COO−等;Sp1〜Sp4は単結合または炭素数1〜10のアルキレン基;A1、A2は3価または4価の芳香族炭化水素基または複素環基;Tは


等;Hbは炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基;m、nは2または3;o、pは0以上の整数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性フィルム、遮熱フィルム等の種々の光学部材の材料をはじめとする、様々な用途に有用な化合物、ヘイズ低下剤とそれを含む液晶組成物、及び高分子材料、並びにこれらを利用したフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶は配向処理の施された膜(配向膜)上に塗布すれば、規則正しく配向する。また、液晶を二枚の配向膜に挟み込むことによって液晶の配向状態を制御することができる。従って、棒状液晶性分子とそれを封入するための二枚の基板からなる液晶セルと、棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層とからなる液晶表示装置においては、二枚の基板上に形成された配向膜の間隙に棒状液晶性分子が注入された状態になっているため、棒状液晶性分子の配向状態を比較的容易に制御することができる。
【0003】
他方で、液晶表示装置の視野角拡大あるいは着色の解消を目的として、液晶セルと偏光板との間に、光学補償シート(位相差板)を配置することが行われている。この場合、透明支持体上に液晶性分子から形成した光学異方性層を有する光学異方性素子を光学補償シートとして使用する。光学異方性層は、液晶性分子を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。この時、液晶性分子は、透明支持体と光学異方性層との間に設けられる一枚の配向膜によって配向させる。しかし、一枚の配向膜では、液晶性分子を配向膜界面から空気界面まで均一に配向(モノドメイン配向)させることが難しい。これは、配向処理の施されていない界面(空気界面)側では、配向規制力がないため、液晶の配向が乱れてしまうためである。液晶性分子が均一に配向していないと、ディスクリネーションによる光散乱が生じ、不透明な膜が形成される。このような膜は液晶表示装置の視認性向上の観点から好ましくない。
【0004】
このような必要性から、配向処理の施されていない界面(空気界面)側において、配向膜を有さずとも液晶に配向規制力を与え、均一に配向させる技術が開発されている(特許文献1および2)。ここでは、液晶配向促進剤を添加することにより、液晶性分子の配向を制御している。そして、液晶配向促進剤を用いることにより、液晶性分子が容易に均一に配向する液晶組成物を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−129162号公報
【特許文献2】特開2000−345164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1および2に記載される液晶配向促進剤の使用可能濃度範囲や溶解性は必ずしも十分ではなく、なお改善の余地があった。また、特許文献1および2に記載される液晶配向促進剤と同等以上の液晶配向促進作用を示し、その結果として得られるフィルムのヘイズを低下させることができる材料を提供することが望まれる。そこで本発明は、従来技術における当該課題を解決し、十分な溶解性を示し、使用可能な濃度範囲が広くて、優れたヘイズ低下性を示す化合物を提供することを目的とした。また、それによって液晶性分子が容易に均一に配向することなどによって、得られるフィルムのヘイズを低下させることができる新たな液晶組成物を提供することも目的とした。即ち本発明は、光学異方性フィルム、遮熱フィルム等の種々の光学部材の材料をはじめとする、種々の用途に有用な化合物とそれを含む液晶組成物、及び高分子材料、並びにこれらを利用したフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】

[式中、L1、L2、L3、L4、L5、L6はおのおの独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−(一般式(I)中におけるRはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数が1〜6のアルキル基を表す)を表し、またSp1、Sp2、Sp3、Sp4はそれぞれ独立して単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を表し、A1、A2は3価または4価の芳香族炭化水素を表し、Tは
【化2】

で表される二価の基または二価の芳香族複素環基を表す(Xは炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基または−COOR0(R0は水素原子、隣接するCH2がOまたはSで置換されていてもよいアルキル基もしくはフッ化アルキル基、または−Sp5−Pを表し、Sp5は単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を表し、Pは重合性基を表す)を表し、Ya、Yb、Yc、Ydはおのおの独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す)であり、Hbはそれぞれ独立に炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基を表す。m、nはそれぞれ独立に2または3であり、このとき複数存在する括弧内の構造は互いに同じでも異なっていてもよい。o、pはそれぞれ独立に0以上の整数であり、oおよびpが2以上であるとき複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
[2] [1]の化合物は、前記一般式(I)において、Tが
【化3】

[式中、oは0以上の整数を表し、oが2以上であるときXは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
であることが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の化合物は、前記一般式(I)において、L3が−COO−かつ、L4が−OCO−であり、A1およびA2がそれぞれ独立に
【化4】

のいずれかであり、L2およびL5が−O−であることが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の化合物は、前記一般式(I)において、Hbがそれぞれ独立に炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物を用いたヘイズ低下剤。
[6] 重合性液晶分子と下記一般式(I)で表される化合物を含む液晶組成物。
【化5】

[式中、L1、L2、L3、L4、L5、L6はおのおの独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−(一般式(I)中におけるRはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数が1〜6のアルキル基を表す)を表し、またSp1、Sp2、Sp3、Sp4はそれぞれ独立して単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を表し、A1、A2は3価または4価の芳香族炭化水素を表し、Tは
【化6】

で表される二価の基または二価の芳香族複素環基を表す(Xは炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基または−COOR0(R0は水素原子、隣接するCH2がOまたはSで置換されていてもよいアルキル基もしくはフッ化アルキル基、または−Sp5−Pを表し、Sp5は単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を表し、Pは重合性基を表す)を表し、Ya、Yb、Yc、Ydはおのおの独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す)であり、Hbはそれぞれ独立に炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基を表す。m、nはそれぞれ独立に2または3であり、このとき複数存在する括弧内の構造は互いに同じでも異なっていてもよい。o、pはそれぞれ独立に0以上の整数であり、oおよびpが2以上であるとき複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
[7] [6]に記載の液晶組成物は、前記重合性液晶分子が棒状液晶分子であることが好ましい。
[8] [6]または[7]に記載の液晶組成物は、少なくとも1種のキラル化合物を含有することが好ましい。
[9] [6]〜[8]のいずれか1項に記載の液晶組成物を重合させてなる高分子材料。
[10] [9]に記載の高分子材料の少なくとも1種を含有するフィルム。
[11] [6]〜[8]のいずれか1項に記載の液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなるフィルム。
[12] [10]または[11]に記載のフィルムは、光学異方性を示すことが好ましい。
[13] [10]〜[12]のいずれか1項に記載のフィルムは、選択反射特性を示すことが好ましい。
[14] [13]に記載のフィルムは、赤外線波長域に選択反射特性を示すことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用濃度範囲が広くて溶剤溶解性が高くヘイズ低下作用も高い一般式(I)で表される化合物を利用して、光学異方性フィルム、遮熱フィルム等の種々の光学部材の材料をはじめとする、種々の用途に有用な液晶組成物、及び高分子材料、並びにこれらを利用したフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例25においてヘイズ低下剤である化合物(2)を用いて製造したフィルムの透過スペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[一般式(I)で表される化合物、ヘイズ低下剤]
本発明の化合物は、下記一般式(I)で表されることを特徴とする。下記一般式(I)の化合物は二価の基を中心に有し、末端にアルキル基を有することを特徴とする。末端にフッ化アルキル基を有する化合物は配向促進剤として効果的であるが、従来知られている配向促進剤は、使用濃度範囲が狭いといった点や溶解性が低いといった点があり、用途が制限されていた。下記一般式(I)で表される化合物は同等以上の配向性能をより広い濃度範囲かつ良好な溶解性で示すことから、ヘイズ低下剤として好ましく用いることができる。また、液晶配向促進剤としても好ましく用いることができる。そのため、下記一般式(I)で表される化合物を含む組成物は製造において使用しやすいというメリットがある。また重合で硬化可能であることから、光学部材等の種々の用途に有用である。
【化7】

【0012】
一般式(I)において、L1、L2、L3、L4、L5、L6はおのおの独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−(一般式(I)中におけるRは水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基を表す)を表し、−NRCO−、−CONR−は溶解性を減ずる効果があり、膜作成時にヘイズ値が上昇する傾向があることからより好ましくは−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−であり、化合物の安定性の観点からさらに好ましくは−O−、−CO−、−COO−、−OCO−である。上記のRがとりうるアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。炭素数は1〜3であることがより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基を例示することができる。
【0013】
Sp1、Sp2、Sp3、Sp4はそれぞれ独立して単結合または炭素数1〜10のアルキレン基を表し、より好ましくは単結合または炭素数1〜7のアルキレン基であり、さらに好ましくは単結合または炭素数1〜4のアルキレン基である。但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。アルキレン基には、分枝があっても無くてもよいが、好ましいのは分枝がない直鎖のアルキレン基である。合成上の観点からは、Sp1とSp4が同一であり、かつ、Sp2とSp3が同一であることが好ましい。
【0014】
1、A2は3価または4価の芳香族炭化水素である。3価または4価の芳香族炭化水素基の炭素数は6〜22であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましく、6であることがさらにより好ましい。A1、A2で表される3価または4価の芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。そのような置換基の例として、炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはエステル基を挙げることができる。これらの基の説明と好ましい範囲については、下記のTの対応する記載を参照することができる。A1、A2で表される3価または4価の芳香族炭化水素基に対する置換基としては、例えばメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、臭素原子、塩素原子、シアノ基などを挙げることができる。パーフルオロアルキル部分を分子内に多く有する分子は、少ない添加量で液晶を配向させることができ、ヘイズ低下につながることから、分子内にパーフルオロアルキル基を多く有するようにA1、A2は4価であることが好ましい。合成上の観点からは、A1とA2は同一であることが好ましい。
【0015】
Tは
【化8】

で表される二価の基または二価の芳香族複素環基を表す(Xは炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはR’COO−(R’は水素原子、隣接するCH2がOまたはSで置換されていてもよいアルキル基もしくはフッ化アルキル基、またはSp5−Pを表し、Sp5は単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を表し、Pは重合性基を表す)を表し、Ya、Yb、Yc、Ydはおのおの独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)であり、より好ましくは
【化9】

であり、さらに好ましくは
【化10】

であり、よりさらに好ましくは、
【化11】

である。
Xがとりうるアルキル基の炭素数は1〜8であり、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。アルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、直鎖状または分枝状であることが好ましい。好ましいアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などを例示することができ、その中でもメチル基が好ましい。Xがとりうるアルコキシ基のアルキル部分については、Xがとりうるアルキル基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
Xがとりうるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子が好ましい。
Xがとりうる−COOR0としては、R0が水素原子、隣接するCH2がOまたはSで置換されていてもよいアルキル基もしくはフッ化アルキル基、または−Sp5−Pを表す。
0が隣接するCH2がOまたはSで置換されていてもよいアルキル基もしくはフッ化アルキル基を表す場合、−Sp6−(L7−Sp7q−CH3で表される基または−Sp8−(L8−Sp9r−Hb0で表される基であることがより好ましい。
Sp6、Sp7、Sp8、Sp9はそれぞれ独立して単結合または炭素数1〜10のアルキレン基を表し、好ましくは単結合または炭素数1〜7のアルキレン基であり、より好ましくは単結合または炭素数1〜4のアルキレン基である。但し、Sp6、Sp7、Sp8、Sp9が表すアルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよいが置換されていないことが好ましく、該アルキレン基には分枝があっても無くてもよいが好ましいのは分枝がない直鎖のアルキレン基である。
7、L8はそれぞれ独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−(L7、L8中におけるRは水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基を表す)を表し、−NRCO−、−CONR−は溶解性を減ずる効果があり、膜作成時にヘイズ値が上昇する傾向があることからより好ましくは−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−であり、化合物の安定性の観点からさらに好ましくは−O−、−CO−、−COO−、−OCO−であり、よりさらに好ましくは−O−である。
qは1〜4の整数を表し、1〜3の整数であることが好ましく、2または3であることがより好ましく、3であることが特に好ましい。rは1〜4の整数を表し、1〜3の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。qおよびrが2以上の整数である場合、複数のL7、L8、Sp7、Sp9はそれぞれ独立であっても異なっていてもよい。
Hb0は炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基を表し、より好ましくは炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは3〜10のパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基である。パーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状または分枝状であるものが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。Hb0は炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基と炭素数2〜30のフルオロアルキル基の中では、炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
0が−Sp5−Pを表す場合、Sp5は単結合または炭素数1〜10のアルキレン基を表し、好ましくは単結合または炭素数1〜7のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基である。但し、Sp5が表すアルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、該アルキレン基には分枝があっても無くてもよいが好ましいのは分枝がない直鎖のアルキレン基である。
前記Pは重合性基を表し、該重合性基としては特に制限はないが、エチレン性不飽和二重結合基であることが好ましく、メタクリロイル基またはアクリロイル基であることがより好ましく、アクリロイル基であることが特に好ましい。
Ya、Yb、Yc、Ydがとりうる炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などを例示することができる。
前記二価の芳香族複素環基は、5員、6員または7員の複素環を有することが好ましい。5員環または6員環がさらに好ましく、6員環が最も好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましい。複素環は、芳香族性複素環であることが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和複素環である。最多二重結合を有する不飽和複素環がさらに好ましい。複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が含まれる。二価の複素環基は置換基を有していてもよい。そのような置換基の例の説明と好ましい範囲については、上記のA1とA2の3価または4価の芳香族炭化水素が取り得る置換基に関する説明と記載を参照することができる。
【0016】
Hbは炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基を表し、より好ましくは炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは3〜10のパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基である。パーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状または分枝状であるものが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
前記Hbが表すフルオロアルキル基は、末端が−CF2−Hであるフルオロアルキル基が好ましく、パーフルオロアルキレン基の一方の末端に−CF2−Hが連結したフルオロアルキル基であることがより好ましい。
Hbは炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基と炭素数2〜30のフルオロアルキル基の中では、炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0017】
m、nはそれぞれ独立に2または3であり、このとき複数存在する括弧内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよいが、互いに同一であることが好ましい。一般式(I)のm、nは、前記のA1、A2の価数によって定まり、好ましい範囲もA1、A2の価数の好ましい範囲によって定まる。従来知られていた及びnが1の化合物に比べ、本発明のmおよびnが2または3である化合物が、添加量が少なくても顕著にヘイズ低下性能が良いのは、いかなる理論に拘泥するものでもないが、化合物中のフッ素含有量に起因すると推測される。
o、pはそれぞれ独立に0以上の整数であり、oおよびpが2以上であるとき複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。oは1または2であることが好ましい。pは1〜4のいずれかの整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
【0018】
一般式(I)で表される化合物は、分子構造が対称性を有するものであってもよいし、対称性を有しないものであってもよい。なお、ここでいう対称性とは、点対称、線対称、回転対称のいずれかに該当するものを意味し、非対称とは点対称、線対称、回転対称のいずれにも該当しないものを意味する。
【0019】
一般式(I)で表される化合物は、以上述べたパーフルオロアルキル基(Hb)、連結基−(−Sp1−L1−Sp2−L2m−A1−L3−および−L4−A2−(L5−Sp3−L6−Sp4−)n−、ならびに好ましくは排除体積効果を持つ2価の基であるTを組み合わせた化合物である。分子内に2つ存在するパーフルオロアルキル基(Hb)は互いに同一であることが好ましく、分子内に存在する連結基−(−Sp1−L1−Sp2−L2m−A1−L3−および−L4−A2−(L5−Sp3−L6−Sp4−)n−も互いに同一であることが好ましい。末端のHb−Sp1−L1−Sp2−および−Sp3−L6−Sp4−Hbは、以下のいずれかの一般式で表される基であることが好ましい。
(Ca2a+1)−(Cb2b)−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−O−(Cr2r)−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−COO−(Cr2r)−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−OCO−(Cr2r)−
上式において、aは2〜30であることが好ましく、3〜20であることがより好ましく、3〜10であることがさらに好ましい。bは0〜20であることが好ましく、0〜10であることがより好ましく、0〜5であることがさらに好ましい。a+bは3〜30である。rは1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
また、一般式(I)の末端のHb−Sp1−L1−Sp2−L2−および−L5−Sp3−L6−Sp4−Hbは、以下のいずれかの一般式で表される基であることが好ましい。
(Ca2a+1)−(Cb2b)−O
(Ca2a+1)−(Cb2b)−COO−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−O−(Cr2r)−O−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−COO−(Cr2r)−COO−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−OCO−(Cr2r)−COO−
上式におけるa、bおよびrの定義は直上の定義と同じである。
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例を示す。ただし、本発明で採用することができる一般式(I)で表される化合物は、下記の具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0020】
【化12】

【0021】
【化13】

【0022】
【化14】

【0023】
【化15】

【0024】
【化16】

【0025】
【化17】

【0026】
【化18】

【0027】
【化19】

【0028】
【化20】

【0029】
【化21】

【0030】
【化22】

【0031】
【化23】

【0032】
一般式(I)で表される化合物は、特開2002−129162号公報や特開2002−97170号や当該公報において引用されている文献に記載される合成法を適宜選択して組み合わせることにより合成することができる。また、その他の公知の合成法も必要に応じて組み合わせることにより合成することができる。
【0033】
[液晶組成物]
本発明の液晶組成物は、重合性液晶性分子と前記一般式(I)で表される化合物とを含む。本発明の液晶組成物では、1種類以上の重合性液晶性分子と1種類以上の非重合性液晶性分子を併用してもよい。また、一般式(I)で表される化合物を二種類以上使用してもよく、一般式(I)で表される化合物とそれ以外の化合物を併用してもよい。前記一般式(I)で表される化合物は、液晶性分子の量の0.01〜20質量%の量で使用することが好ましい。前記一般式(I)で表される化合物の使用量は、液晶性分子の量の0.1〜10質量%の量であることがより好ましい。重合性液晶性分子としては、ディスコティック液晶性分子または棒状液晶性分子を用いることが好ましい。
【0034】
ディスコティック液晶性分子は、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am.Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載されている。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶性分子は、下記式で表わされる化合物であることが好ましい。
D(−L−Q)d
上式中、Dは円盤状コアであり;Lは二価の連結基であり;Qは重合性基であり;dは4〜12の整数である。上記式の円盤状コア(D)の具体例を以下に示す。以下の各具体例において、LQ(またはQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。以下の具体例の中では、トリフェニレン(D4)が特に好ましい。
【0035】
【化24】

【0036】
【化25】

【0037】
【化26】

【0038】
連結基Lや重合性基Qの詳細や好ましい範囲については、特開2002−129162号公報の[0161]〜[0171]を参照することができる。
【0039】
前記棒状液晶分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
【0040】
前記棒状液晶分子の複屈折率は、0.001〜0.7であることが好ましい。重合性基の具体例については、特開2002−129162号公報の[0169]を参照することができる。棒状液晶性分子は、短軸方向に対してほぼ対称となる分子構造を有することが好ましい。そのためには、棒状分子構造の両端に重合性基を有することが好ましい。以下に、前記棒状液晶分子の具体例を示す。
【0041】
【化27】

【0042】
【化28】

【0043】
【化29】

【0044】
【化30】

【0045】
【化31】

【0046】
【化32】

【0047】
【化33】

【0048】
【化34】

【0049】
【化35】

【0050】
【化36】

【0051】
【化37】

【0052】
【化38】

【0053】
【化39】

【0054】
【化40】

【0055】
【化41】

【0056】
【化42】

【0057】
【化43】

【0058】
【化44】

【0059】
液晶組成物は、重合性液晶性分子および前記一般式(I)で表される化合物に加えて、必要に応じて溶媒、不斉炭素原子を含む化合物、あるいは重合性開始剤(後述)や他の添加剤(例えば、セルロースエステル)を含むことができる。液晶組成物の溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0060】
[フィルム]
一般式(I)で表される化合物を含む液晶組成物を塗布等の方法により製膜することによりフィルムを形成することができる。液晶組成物を配向膜の上に塗布し、液晶層を形成することにより光学異方性素子を作製することもできる。
液晶組成物の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法)により実施できる。液晶性分子は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性分子に導入した重合性基(Q)の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)、オキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報記載)が含まれる。
【0061】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。ディスコィック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。液晶層の厚さは、0.1〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることがさらに好ましく、5〜20μmであることが最も好ましい。液晶層中の前記一般式(I)で表される化合物の塗布量は、0.005〜0.5g/m2であることが好ましく、0.01〜0.45g/m2であることがより好ましく、0.02〜0.4g/m2であることがさらに好ましく、0.03〜0.35g/m2であることが最も好ましい。
【0062】
[配向膜]
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。ポリマーのラビング処理により形成する配向膜が特に好ましい。ラビング処理は、ポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。配向膜に使用するポリマーの種類は、液晶性分子の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定する。液晶性分子を水平(平均傾斜角:0〜50゜)に配向させるためには、配向膜の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向膜用ポリマー)を用いる。液晶性分子を垂直(平均傾斜角:50〜90゜)に配向させるためには、配向膜の表面エネルギーを低下させるポリマーを用いる。配向膜の表面エネルギーを低下させるためには、ポリマーの側鎖に炭素数が10〜100の炭化水素基を導入することが好ましい。
【0063】
具体的なポリマーの種類については、様々な表示モードに対応する液晶性分子を用いた光学補償シートについての文献に記載がある。配向膜の厚さは、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。なお、配向膜を用いて、光学異方性層の液晶性分子を配向させてから、液晶層を透明支持体上に転写してもよい。配向状態で固定された液晶性分子は、配向膜がなくても配向状態を維持することができる。また、平均傾斜角が5゜未満の配向の場合は、ラビング処理をする必要はなく、配向膜も不要である。ただし、液晶性分子と透明支持体との密着性を改善する目的で、界面で液晶性分子と化学結合を形成する配向膜(特開平9−152509号公報記載)を用いてもよい。密着性改善の目的で配向膜を使用する場合は、ラビング処理を実施しなくてもよい。二種類の液晶層を透明支持体の同じ側に設ける場合、透明支持体上に形成した液晶層を、その上に設ける液晶層の配向膜として機能させることも可能である。
【0064】
[透明支持体]
本発明のフィルムや本発明のフィルムを有する光学異方性素子は、透明支持体を有していてもよい。透明支持体として、ガラス板またはポリマーフイルム、好ましくはポリマーフイルムが用いられる。支持体が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。透明支持体として、一般には、光学等方性のポリマーフイルムが用いられている。光学等方性とは、具体的には、面内レターデーション(Re)が10nm未満であることが好ましく、5nm未満であることがさらに好ましい。また、光学等方性透明支持体では、厚み方向のレターデーション(Rth)も、10nm未満であることが好ましく、5nm未満であることがさらに好ましい。透明支持体の面内レターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)は、それぞれ下記式で定義される。
Re=(nx−ny) d
Rth=[{(nx+ny)/2}−nz] d
式中、nxおよびnyは、透明支持体の面内屈折率であり、nzは透明支持体の厚み方向の屈折率であり、そしてdは透明支持体の厚さである。
【0065】
透明支持体として光学異方性のポリマーフイルムが用いられる場合もある。そのような場合、透明支持体は、光学的一軸性または光学的二軸性を有することが好ましい。光学的一軸性支持体の場合、光学的に正(光軸方向の屈折率が光軸に垂直な方向の屈折率よりも大)であっても負(光軸方向の屈折率が光軸に垂直な方向の屈折率よりも小)であってもよい。光学的二軸性支持体の場合、前記式の屈折率nx、nyおよびnzは、全て異なる値(nx≠ny≠nz)になる。光学異方性透明支持体の面内レターデーション(Re)は、10〜1000nmであることが好ましく、15〜300nmであることがさらに好ましく、20〜200nmであることが最も好ましい。光学異方性透明支持体の厚み方向のレターデーション(Rth)は、10〜1000nmであることが好ましく、15〜300nmであることがより好ましく、20〜200nmであることがさらに好ましい。
【0066】
透明支持体を形成する材料は、光学等方性支持体とするか、光学異方性支持体とするかに応じて決定する。光学等方性支持体の場合は、一般にガラスまたはセルロースエステルが用いられる。光学異方性支持体の場合は、一般に合成ポリマー(例、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ノルボルネン樹脂)が用いられる。ただし、欧州特許0911656A2号明細書に記載されている(1)レターデーション上昇剤の使用、(2)セルロースアセテートの酢化度の低下、あるいは(3)冷却溶解法によるフイルムの製造により、光学異方性の(レターデーションが高い)セルロースエステルフイルムを製造することもできる。ポリマーフイルムからなる透明支持体は、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。
【0067】
光学異方性透明支持体を得るためには、ポリマーフイルムに延伸処理を実施することが好ましい。光学的一軸性支持体を製造する場合は、通常の一軸延伸処理または二軸延伸処理を実施すればよい。光学的二軸性支持体を製造する場合は、アンバランス二軸延伸処理を実施することが好ましい。アンバランス二軸延伸では、ポリマーフイルムをある方向に一定倍率(例えば3〜100%、好ましくは5〜30%)延伸し、それと垂直な方向にそれ以上の倍率(例えば6〜200%、好ましくは10〜90%)延伸する。二方向の延伸処理は、同時に実施してもよい。延伸方向(アンバランス二軸延伸では延伸倍率の高い方向)と延伸後のフイルムの面内の遅相軸とは、実質的に同じ方向になることが好ましい。延伸方向と遅相軸との角度は、10゜未満であることが好ましく、5゜未満であることがさらに好ましく、3゜未満であることが最も好ましい。
【0068】
透明支持体の厚さは、10〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。透明支持体とその上に設けられる層(接着層、配向膜あるいは光学異方性層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。透明支持体に紫外線吸収剤を添加してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。接着層については、特開平7−333433号公報に記載がある。接着層の厚さは、0.1〜2μmであることが好ましく、0.2〜1μmであることがさらに好ましい。
【実施例】
【0069】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0070】
<合成例1>
【化45】

上記化合物(1)を下記ルートで合成した。
(1−1)エステル(1b)の合成
塩化メチレン100mlにアルコール(1a)(70.0g,200mmol)を加え、そこへトリエチルアミン(29.2ml,210mmol)を加えた。この溶液を氷水に浸し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(35.3ml,210mmol)を内温が20℃以下になるように滴下し、氷冷下で1時間反応させた。反応液を分液操作に施し、有機層をエバポレーターにより濃縮した。得られた液体を減圧蒸留し、対応するトリフルオロメタンスルホン酸エステル(1b)(85.0g,収率88%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ4.8(t,2H)
【0071】
(1−2)エステル(1c)の合成
エステル(1b)(22.4g,46.5mmol)と没食子酸メチルエステル(2.8g,15mmol)を炭酸カリウム(6.4g,46.5mmol)存在下、DMAc15ml中、90℃で2時間反応させた。分液処理の後、カラム精製を行い、エステル(1c)(15.0g, 85%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ3.9(s,3H), 4.4−4.6(m,6H), 7.4(s,2H)
【0072】
(1−3)カルボン酸(1d)の合成
エステル(1c)(11.8g, 10mmol)をエタノール30ml、水3ml中に加えた。この溶液に水酸化カリウム(0.84g, 15mmol)を添加し2時間加熱還流した。この反応液を塩酸水溶液に滴下し固体を析出させた。吸引ろ過をし、カルボン酸(1d)(9.8g, 84%)
を得た。
【0073】
(1−4)化合物(1)の合成
カルボン酸(1d)(2.3g,2.0mmol)をトルエン10mlと触媒量のDMF中で塩化チオニル(0.22ml,3.0mmol)と反応させて酸クロライドとし、過剰の塩化チオニル及びトルエン除去後、THF5ml、触媒量のDMAPを系中に添加した。そこへ、THF5ml及びジイソプロピルエチルアミン0.37mlに溶かしたメチルハイドロキノン(124mg,1.0mmol)を滴下し、室温で3時間反応させた。分液操作後、エバポレーターにて濃縮し、カラム精製を行い、メタノールで再結晶して化合物(1)(0.79g,収率33%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.3(s,3H), 4.5−4.7(m,12H), 7.0−7.2(s×3,3H), 7.6(s×2,4H)
【0074】
【化46】

【0075】
<合成例2>
化合物(8)の合成
【化47】

化合物(1)の合成でメチルハイドロキノンの代わりにハイドロキノンを用いた以外は同様の操作により上記化合物(8)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ4.4−4.7(m,12H), 7.3(s,4H), 7.6(s,4H)
【0076】
<合成例3>
化合物(2)の合成
【化48】

上記化合物(2)は以下のルートに従って合成した。
(3−1)トシル誘導体(3b)の合成
アルコール(3a)(45.7ml,300mmol)とパラトルエンスルホニルクロライド(60.1g,315mmol)を120mlの塩化メチレン中、氷冷下で1時間反応させた。反応液を分液操作に施し、有機層をエバポレーターにより濃縮し、粗体として黄色液体のトシルエーテル体(3b)を得た。このまま精製せずに次工程の原料として使用した。
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ2.4(s,3H), 3.6(d,2H), 4.2(d,2H), 4.4(s,2H), 7.1−7.4(d×3,s×1,7H), 7.8(d,2H)
【0077】
(3−2)フッ化アルキルエーテル(3c)の合成
トシル誘導体(3b)(16.2g,50mmol)と2−(パーフルオロヘキシル)エタノール(12.1ml,55ml)をトルエン100mlに加え、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液105ml加えた。70℃に昇温して30分攪拌した後、水酸化カリウム水溶液(3.1g/水20ml)を添加した。その後、80℃に昇温し、5時間反応させた。酢酸エチルを100ml、水を50mlを加えて分液した後濃縮し、粗体としてエーテル(3c)を得た。このまま精製せずに次工程の原料として使用した。
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ2.5(m,2H), 3.8(d,2H), 4.0(d,2H), 4.4(s,2H), 7.1−7.4(m,5H)
【0078】
(3−3)アルコール(3d)の合成
エーテル(3c)(20.0g,40mmol)を酢酸エチル40ml中で、パラジウム触媒(1.2g,5%パラジウム/活性炭素、デグサタイプE 101 O/W 5%Pd,wako社製)存在下、水素と反応させた。反応終了後、セライトろ過によりパラジウム触媒を除去し、濃縮し、粗体のアルコール(2e)を得た。このまま精製せずに次工程の原料として使用した。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.4(m,2H), 3.6(d,2H), 3.7(d,2H), 3.8(d,2H)
【0079】
(3−4)メタンスルホン酸エステル(3e)の合成
アルコール(3d)(18.0g,45mmol)を酢酸エチル30ml中に添加し、氷冷した。反応系内の温度を20℃以下に保って、メタンスルホニルクロライド(3.8ml,49.5mmol)を滴下した。室温で3時間反応させ、酢酸エチルと水によって分液し、濃縮し、粗体のメタンスルホン酸エステル(3e)を得た。このまま精製せずに次工程の原料として使用した。
【0080】
(3−5)没食子酸エステル(3f)の合成
エステル(3e)(10.6g,21.6mmol)と没食子酸メチルエステル(1.28g,7.0mmol)を炭酸カリウム(3.0g,21.6mmol)存在下、DMAc40ml中、90℃で反応させた。酢酸エチル/水系で分液操作後、カラム精製により、オイル状の没食子酸エステル(3f)(8.0g, 84%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.3−2.6(m,6H), 3.7−4.0(m,15H), 4.2(m,6H), 7.4(s,2H)
【0081】
(3−6)カルボン酸(3g)の合成
エステル(3f)(7.8g, 5.8mmol)をエタノール40ml、水4ml中に加えた。この溶液に水酸化カリウム(0.48g, 8.6mmol)を添加し2時間加熱還流した。この反応液を酢酸エチル/水系で分液し、有機層を濃縮固化させ、カルボン酸(3g)(5.6g, 72%)
を得た。
【0082】
(3−7)化合物(2)の合成
カルボン酸(3g)(2.0g,1.5mmol)をトルエン10mlと触媒量のDMF中で塩化チオニル(0.16ml,2.2mmol)と反応させて酸クロライドとし、過剰の塩化チオニル及びトルエン除去後、THF5ml、触媒量のDMAPを系中に添加した。そこへ、THF5ml及びジイソプロピルエチルアミン0.28mlに溶かしたメチルハイドロキノン(93mg,0.76mmol)を滴下した。酢酸エチル/水系で分液操作後、エバポレーターにて濃縮し、カラム精製し、酢酸エチル/メタノール系で再結晶して化合物(2)(1.5g,71%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ2.2(s,3H), 2.3−2.5(m,12H), 3.7−3.9(m.24H), 4.2(m,12H), 7.1(m,3H), 7.4−7.5(s×2,4H)
【0083】
【化49】

【0084】
<合成例4>
化合物(11)の合成
【化50】

化合物(2)の合成でメチルハイドロキノンの代わりにハイドロキノンを用いた以外は同様の操作により上記化合物(11)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ2.2−2.5(m,12H), 3.7−3.9(m,24H), 4.2(m,12H), 7.2(s,4H), 7.5(s,4H)
【0085】
<合成例5>
化合物(6)の合成
【化51】

上記化合物(6)は以下のルートにより合成した。
(5−1)カルボン酸(5a)の合成
2−(パーフルオロヘキシル)エタノール(33.3g,46mmol)に無水コハク酸(9.7g,49mmol)とテトラヒドロフラン10mlとトリエチルアミン(0.2mL)を加え、攪拌しながら100℃に昇温して60分反応させた。その後、30℃まで冷却し、水100mLを加え、さらに15℃まで冷却して析出した結晶をろ過し、カルボン酸(5a)を得た。(39.7g、94%)。
(5−2)カルボン酸(5b)の合成
カルボン酸(5a)(15g,32mmol)をトルエン中、塩化チオニル(2.6mL,36mmol)と反応させ、4bの酸クロリドを調整した。次に、没食子酸一水和物(1.5g,8mmol)をトルエン(10mL)中で加熱還流し脱水を行い、室温に冷却後テトラヒドロフラン(12mL)を加えて溶解させ、さらに先ほど調整した4bの酸クロリドを添加した。反応系を氷冷した後、ピリジン(4mL)をゆっくりと滴下し、室温で1時間反応させた。次にピリジン2mLと水20mLを加え、50℃で1時間攪拌した後に、酢酸エチルを加え分液し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を濃縮し、酢酸エチル/メタノール(1/20)で再結晶を行い、カルボン酸(5b)を得た。(9.5g、84%)
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.4−2.6(m,6H), 2.7−2.8(m,6H),2.9−3.0(m,6H),4.4−4.5(m,6H),7.8(s,2H)
(5−3)化合物(6)の合成
化合物(1)の合成においてカルボン酸(1d)の代わりにカルボン酸(5b)を用いた以外は同様にして化合物(6)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ2.2(s,3H), 2.4−2.6(m,12H), 2.7−2.8(m.12H), 2.9−3.0(m, 12H), 4.4−4.5(m,12H), 7.0−7.2(m,3H), 7.9(s×2,4H)
【0086】
【化52】

【0087】
<合成例6>
化合物(7)の合成
【化53】

上記化合物(7)は化合物(6)で用いたメチルハイドロキノンの代わりにハイドロキノンを用いた以外は同様の操作により、化合物(7)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ2.4−2.6(m,12H), 2.7−2.8(m.12H), 2.9−3.0(m, 12H), 4.4−4.5(m,12H), 7.2(s,4H), 7.9(s,4H)
【0088】
<合成例7>
化合物(9)の合成
【化54】

上記化合物(9)は以下のルートにより合成した。
(7−1)エステル(7b)の合成
2−(パーフルオロヘキシル)エタノール(18.2g, 50mmol)をトルエン中に加え、水酸化カリウム3.5g/水3.5mlを加えた。氷冷下、アクリル酸ターシャリーブチルエステル(10.3ml, 70mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(1.61g, 5mmol)を加え、室温下で3時間攪拌した。希塩酸を加えてクエンチし、酢酸エチル/水系で分液しロータリーエバポレーターで濃縮した。カラムにより精製エステル(7b)(19.0g, 収率77%)を得た。
(7−2)アルコール(7c)の合成
ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムハイドライドトルエン溶液(アルドリッチ社製)(13.2g, 42.5mmol)をTHF100mlに加え氷冷した。この溶液に、THF30mlに溶解させたエステル(7b)(19.0g, 38.6mmol)を滴下した。滴下後、室温で1時間攪拌させた。酢酸エチルを加えてクエンチし、希塩酸水を加えて分液、濃縮した。カラムにより精製し、アルコール(7c)(9.0g, 収率55%)を得た。
(7−3)化合物(9)の合成
アルコール(7c)以降については、化合物(2)の合成においてアルコール(3d)を用いる代わりに、アルコール(7c)を用いた以外は同様の合成法により、化合物(9)を合成した。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ1.9−2.1(m,12H), 2.2(s, 3H), 2.3−2.5(m.12H), 3.6−3.8(m, 24H), 4.1−4.2(t,12H), 7.0−7.2(m,3H), 7.4−7.5(s×2,4H)
【0089】
【化55】

【0090】
<合成例8>
化合物(10)の合成
【化56】

化合物(9)の合成においてメチルハイドロキノンの代わりにハイドロキノンを用いた以外は同様にして上記化合物(10)を合成した。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ1.9−2.2(m,12H), 2.3−2.5(m.12H), 3.6−3.8(m, 24H), 4.1−4.2(t,12H), 7.2(s,4H), 7.4(s,4H)
【0091】
<合成例9>
化合物(5)の合成
【化57】

上記化合物(5)は、以下のルートにより合成した。すなわち、化合物(2)の合成においてアルコール(3d)を用いる代わりに、市販試薬3−(パーフルオロヘキシル)プロパノールを用いる以外は同様にして、化合物(5)を合成した。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ2.0−2.5(m,27H), 4.0−4.2(m, 12H), 7.0−7.2(m,3H), 7.4(s×2,4H)
【0092】
【化58】

【0093】
<合成例10>
化合物(14)の合成
【化59】

上記化合物(14)を、化合物(5)の合成において、市販試薬3−(パーフルオロヘキシル)プロパノールの代わりに市販試薬3−(パーフルオロブチル)プロパノールを用いた以外は同様の方法で合成した。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ2.0−2.5(m,27H), 4.0−4.2(m, 12H), 7.0−7.2(m,3H), 7.4−7.5(s×2,4H)
【0094】
<合成例11>
化合物(13)の合成
【化60】

上記化合物(13)を、化合物(14)の合成において、メチルハイドロキノンを用いる代わりにハイドロキノンを用いた以外は同様の方法で合成した。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ2.0−2.5(m,24H), 4.0−4.2(m,12H), 7.2(s,4H), 7.4(s,4H)
【0095】
<合成例12>
化合物(4)の合成
【化61】

上記化合物(4)を、化合物(11)の合成において、2−(パーフルオロヘキシル)エタノールの代わりに2−(パーフルオロブチル)エタノールを用いた以外は同様の方法で合成した。
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ2.2−2.5(m,12H)), 3.7−3.9(m,24H), 4.2(m,12H), 7.2(s,4H), 7.5(s,4H)
【0096】
<合成例13>
化合物(50)の合成
【化62】

上記化合物(50)は以下のルートに従って合成した。
(13−1)アルデヒド(13a)の合成
3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(2.1g, 15mmol)と炭酸カリウム(4.3g, 30.8mmol)をDMAc10mlに加え、窒素雰囲気下で90℃まで加熱した。合成例1で記載したエステル(1b)(14.8g, 30.8mmol)を滴下し、90℃で2時間攪拌した。室温まで冷却した後、酢酸エチル/水系で分液し、濃縮した後、カラムで精製しアルデヒド(13a)(10.8g, 収率90%)を得た。
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ4.4−4.7(q,4H), 7.1(d,1H), 7.5(s,1H) , 7.6(d,1H), 9.9(s,1H)
(13−2)カルボン酸(13b)の合成
アルデヒド(13a)(10.8g,13.5mmol)を特開2002−97170号公報の10頁[0085]〜[0087]に記載の方法でカルボン酸(13b)に誘導した(6.9g、収率78%)。
1HNMR(300MHz、DMSO−d6)δ4.8−5.0(q,4H), 7.2(d,1H), 7.6(s,d,2H) , 12.8−13.0 (brs,1H)
(13−3)化合物(50)の合成
カルボン酸(13b)(2.45g,3.0mmol)をトルエン10mlと触媒量のDMF中で塩化チオニル(0.33ml,4.5mmol)と反応させて酸クロライドとし、過剰の塩化チオニル及びトルエン除去後、THF5ml、触媒量のDMAPを系中に添加した。そこへ、THF5ml及びジイソプロピルエチルアミン0.57mlに溶かしたメチルハイドロキノン(186mg,1.5mmol)を滴下し、室温で3時間反応させた。分液操作後、エバポレーターにて濃縮し、カラム精製を行い、メタノールで再結晶して化合物(50)(1.8g,収率69%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.3(s,3H), 4.5−4.7(m,8H), 7.0−7.2(s×3,d×2,5H), 7.8(s×2,2H), 8.0(d×2,2H)
【0097】
【化63】

【0098】
<合成例14>
化合物(51)の合成
【化64】

上記化合物(51)は以下のルートに従って合成した。
(14−1)エステル(14a)の合成
3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチルエステル(2.5g, 15mmol)と炭酸カリウム(4.3g, 30.8mmol)をDMAc10mlに加え、窒素雰囲気下で90℃まで加熱した。合成例1で記載したエステル(1b)(14.8g, 30.8mmol)を滴下し、90℃で2時間
攪拌した。室温まで冷却した後、酢酸エチル/水系で分液し、濃縮した後、カラムで精製しアルデヒド(14a)(11.6g, 収率93%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ4.0(s, 3H), 4.4−4.7(t,4H), 6.8(s,1H), 7.3(s,2H)
(14−2)カルボン酸(14b)の合成
エステル(14a)(11.6g,13.9mmol)をエタノール30mlと水3mlに加え、さらに水酸化カリウム(1.2g, 20.9mmol)を加えて2時間加熱還流した。室温まで降温し塩酸水溶液へ滴下した。得られた固体を吸引ろ過し、カルボン酸(14b)を得た(8.6g、収率76%)。
(14−3)化合物(51)の合成
カルボン酸(14b)(2.45g,3.0mmol)をトルエン10mlと触媒量のDMF中で塩化チオニル(0.33ml,4.5mmol)と反応させて酸クロライドとし、過剰の塩化チオニル及びトルエン除去後、THF5ml、触媒量のDMAPを系中に添加した。そこへ、THF5ml及びジイソプロピルエチルアミン0.57mlに溶かしたメチルハイドロキノン(186mg,1.5mmol)を滴下し、室温で3時間反応させた。分液操作後、エバポレーターにて濃縮し、カラム精製を行い、メタノールで再結晶して化合物(51)(1.8g,収率69%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ2.3(s,3H), 4.5−4.7(t,8H), 6.9(m, 2H), 7.0−7.2(s×3, 3H), 7.5(dd×2,4H)
【0099】
【化65】

【0100】
<合成例15>
化合物(53)の合成
【化66】

化合物(50)においてメチルハイドロキノンの代わりに4−アミノメタクレゾールを用いた以外は同様にして上記化合物(53)を合成した。
1H NMR(300MHz、THF−d8)δ2.5(s,3H), 4.8−5.0(m,8H), 7.1 (d,1H), 7.2(s,1H), 7.3−7.4(d×2,2H), 7.6(d,1H), 7.8(d,1H), 7.9(s,1H), 8.0(s,1H), 8.1(d,1H), 9.0(s,1H)
【0101】
<合成例16>
化合物(35)の合成
【化67】

上記化合物(35)は以下のルートに従って合成した。
【化68】

(16−1)化合物(16a)の合成
DMAc(8ml)へ2,5−ジヒドロキシ安息香酸(800mg、5.19mmol)とトリエチルアミン(731μl、5.20mmol)、合成例3で記載した(3e)を添加し、外温90℃へ上昇させて5時間攪拌した。室温まで冷却してから酢酸エチルを添加し、1mol/lの塩酸を加えて分液した。水層を除去した後、飽和食塩水を加え再度分液操作を行った後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。ヘキサンを添加して加熱還流した後、吸引ろ過により化合物(16a)を得た(1.5g、収率53%)。
(16−2)化合物(35)の合成
合成例3で記載したカルボン酸(3g)(1.0g、0.75mmol)を触媒量のDMFを添加したTHF中(1ml)に溶解させ、塩化チオニル(97.4μl、1.35mmol)を滴下した。室温で一時間攪拌した後、50℃に加熱して塩化チオニルを除去した後、THF(1ml)を添加し、溶液(*)とした。別途、化合物(16a)(194.3mg、0.36mmol)のTHF(1ml)溶液を氷冷し、内温を10℃以下に保ちながら、上記の溶液(*)、ジイソプロピルエチルアミン(141.5μl、0.821mmol)、触媒量のN−メチルイミダゾールを順番に加えた。室温で1時間反応させ、酢酸エチル、水で分液した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターで濃縮、カラム精製を行い、化合物(35)を得た(0.85g、収率75%)
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ2.3−2.6(m,14H), 3.5(t,2H),
3.6(t,2H), 3.8−4.0(m,24H), 4.2−4.4(m,14H), 7.3(s,1H), 7.4−7.5(m,5H), 7.9(s,1H)
【0102】
<合成例17>
化合物(39)の合成
【化69】

上記化合物(39)は下記に示したルートに従い、化合物(35)の合成法において(3e)の代わりにスルホン酸エステル(17a)を用いる以外は同様にして合成した。スルホン酸エステル(17a)は4−ヒドロキシブチルアクリレートを原料として既知の方法で合成できる。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ1.6−1.7(brs,4H), 2.3−2.6(m,12H),3.7−3.9(m,24H), 4.1(t,2H), 4.2−4.3(m,14H), 5.8(d,1H), 6.0−6.1(dd,1H), 6.3−6.4(d,1H), 7.3(1H)、 7.4(1H)、7.5(s,2,4H)、 7.9(1H)
【化70】

【0103】
<合成例18>
化合物(37)の合成
【化71】

上記化合物(37)は化合物(39)の合成法においてカルボン酸(3g)の代わりに、合成例1で記載したカルボン酸(1d)を用いる以外は同様にして合成した。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ1.7−1.8(brs,4H), 4.1(t,3H)4.3(t,2H), 4.5−4.7(m、12H), 5.8(d,1H), 6.0−6.1(dd,1H), 6.3−6.4(d,1H), 7.3(1H)、 7.4(1H)、7.5(s×2,4H)、 7.9(1H)
【0104】
<合成例19>
化合物(40)の合成
【化72】

上記化合物(40)は下記に示したルートに従い、化合物(35)の合成法において(3e)の代わりにスルホン酸エステル(19a)を用いる以外は同様にして合成した。スルホン酸エステル(19a)はトリエチレングリコールモノメチルエーテルを原料として既知の方法で合成できる。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ2.3−2.6(m,12H), 3.3(s,3H ),
3.5−3.7(m、10H), 3.8−4.0(m,24H), 4.2(m,12H),
4.3(t,2H), 7.3(2H)、 7.5(s×2,4H)、 7.9(1H)
【化73】

【0105】
<合成例20>
化合物(48)の合成
【化74】

上記化合物(48)は化合物(1)の合成法においてアルコール(1a)の代わりに1H,1H,7H−ドデカフルオロ−1−ヘプタノールを用いる以外は同様にして合成した。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ4.5−4.7(m,12H), 5.8−6.2( m,6H), 7.3(s,2H), 7.6(s,4H)
【0106】
<合成例21>
化合物(33)の合成
【化75】

上記化合物(33)は以下のルートに従って合成した。
【化76】

(21−1)化合物(21b)の合成
化合物(21b)は化合物(35)の合成において(3e)の代わりにベンジルブロミドを用いた以外は同様にして合成した。
(21−2)化合物(33)の合成
化合物(21b)(457mg,0.158mmol)とパラジウムカーボン(33.5mg,0.0158mmol)を酢酸エチルへ添加し、脱気・水素充填操作を行った。室温で二時間攪拌した後、セライトろ過を行いロータリーエバポレーターで濃縮した。ヘキサンで加熱還流して洗浄し、化合物(33)を得た(260mg、収率59%)。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ2.3−2.6(m,12H), 3.7−3.9(m,24H), 4.2−4.3(m,12H), 7.3(s,1H), 7.4−7.5(m,5H), 7.9(s,1H)
【0107】
<実施例1〜34および比較例1〜6>
下記表1に記載される化合物を用いて、光学異方性フィルムを形成して評価した。まず、下記組成の塗布液を調製した。化合物の濃度は、棒状液晶化合物に対して0.01質量部、0.02質量%、0.03質量部、0.05質量%、0.10質量部、0.20質量部となるように調製した。
・下記の棒状液晶化合物1 100質量部
・下記のキラル剤(A) 2.8質量部
・IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
・表1および表2に記載される化合物 上記の量
・表1および表2に記載される溶媒 溶質濃度が25質量%となる量
【0108】
【化77】

【0109】
調製した塗布液をマイクロピペッターを用いて50μl量り取り、配向膜付ガラス上(SE―130)に滴下して2000rpmの回転速度でスピンコートした。85℃で2分間加熱し、1分間放冷したのち、窒素雰囲気下で紫外線照射(紫外線強度:500mJ/m2)することで、光学異方性フィルムを形成した。光学異方性フィルムの膜厚は約5μmであった。
【0110】
製造した各光学異方性フィルムの配向性を目視及びヘイズで評価した。ヘイズは、日本電飾社製ヘイズメータNDH2000を用いて測定した。
配向促進試験では、化合物の濃度が0.01質量%である光学異方性フィルムのヘイズ値の大きさにより、化合物の配向促進作用を下記の4段階で評価した。0.01質量%濃度では化合物は溶媒に完全に溶解しており、測定されたヘイズ値が小さいほど液晶配向促進作用が大きいことを示している。
◎ 5.5未満
○ 5.5以上8.5未満
△ 8.5以上10.0未満
× 10.0以上
溶解・配向促進試験では、化合物の濃度が0.02質量%と、0.03質量%と、0.05質量%と、0.10質量%と、0.20質量%である光学異方性フィルムのヘイズ値により下記の4段階で溶解・配向促進作用を評価した。評価が高いものは、溶解性が良好で配向促進作用も大きいことを示している。評価が低いものは、主として溶解性が低いことを示している。
◎ 0.15未満
○ 0.15以上、0.35未満
△ 0.35以上、0.90未満
× 0.90以上
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【0113】
【化78】

【0114】
上記表1に示すように、本発明の化合物はヘイズ低下作用が大きくて、濃度が高くなっても溶媒に対する溶解性が高いことが確認された。いかなる理論に拘泥するものでもないが、このようなヘイズ低下は本発明の化合物の液晶配向作用が大きいために、液晶の配向が空気界面側でも良好となったためと考えられ、すなわち本発明の化合物は液晶配向促進剤と考えられる。また、溶媒の種類を変えても同じ傾向を示しており、本発明の化合物が塗布溶媒の適用範囲が広くて、使用適性が高いことが確認された。
また、上記表2に示したように、同じフッ化アルキル側鎖を有する骨格同士で比べた場合、すなわち実施例31、32と比較例4を比べた場合、フッ化アルキル側鎖の数が1本の時(一般式(I)においてm=n=1のとき)より2本または3本の時(一般式(I)においてm=n=2またはm=n=3のとき)の方がより低濃度でヘイズが低下していることが分かる。実施例33と比較例5、実施例34と比較例6を比べた場合も、フッ化アルキル側鎖の数が1本のとき(一般式(I)においてm=n=1のとき)よりも3本の時(一般式(I)においてm=n=3のとき)の方が、低濃度でヘイズが低下していることが分かる。このことから、フッ化アルキル側鎖の本数が多いと液晶配向作用が大きく低濃度領域でもヘイズを低下させられ、使用適性が広いことが分かる。
【0115】
[実施例35]
「赤外線反射フィルムの作製」
下記の組成に従って組成液を調整した。
・ 棒状液晶化合物1 100質量部
・キラル剤(A) 5.0質量部
・IRGACURE819(チバジャパン社製) 3.0質量部
・表1に記載される化合物(2) 0.03質量部
・クロロホルム 溶質濃度が25質量%となる量
得られた組成液をマイクロピペッターを用いて50μl量り取り、配向膜付ガラス上(SE―130)に滴下して2000rpmの回転速度でスピンコートした。85℃で2分間加熱し、1分間放冷したのち、窒素雰囲気下で紫外線照射(紫外線強度:500mJ/m2)することで、光学異方性フィルムを形成した。光学異方性フィルムの膜厚は約5μmであった。得られた光学異方性フィルムの透過スペクトルを、SHIMADZU社製分光光度計UV−3100PCを用いて測定した。その結果をそれぞれ図1に示した。
図1に示すように、実施例35で作成したフィルムは900nm付近の近赤外領域に中心波長を有する選択反射膜であり、光学異方性を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】

[式中、L1、L2、L3、L4、L5、L6はおのおの独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−(一般式(I)中におけるRはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数が1〜6のアルキル基を表す)を表し、またSp1、Sp2、Sp3、Sp4はそれぞれ独立して単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を表し、A1、A2は3価または4価の芳香族炭化水素を表し、Tは
【化2】

で表される二価の基または二価の芳香族複素環基を表す(Xは炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基または−COOR0(R0は水素原子、隣接するCH2がOまたはSで置換されていてもよいアルキル基もしくはフッ化アルキル基、または−Sp5−Pを表し、Sp5は単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を表し、Pは重合性基を表す)を表し、Ya、Yb、Yc、Ydはおのおの独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す)であり、Hbはそれぞれ独立に炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基を表す。m、nはそれぞれ独立に2または3であり、このとき複数存在する括弧内の構造は互いに同じでも異なっていてもよい。o、pはそれぞれ独立に0以上の整数であり、oおよびpが2以上であるとき複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記一般式(I)において、Tが
【化3】

[式中、oは0以上の整数を表し、oが2以上であるときXは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記一般式(I)において、L3が−COO−かつ、L4が−OCO−であり、A1およびA2がそれぞれ独立に
【化4】

のいずれかであり、L2およびL5が−O−である請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記一般式(I)において、Hbがそれぞれ独立に炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物を用いたヘイズ低下剤。
【請求項6】
重合性液晶分子と下記一般式(I)で表される化合物を含む液晶組成物。
【化5】

[式中、L1、L2、L3、L4、L5、L6はおのおの独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−(一般式(I)中におけるRはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数が1〜6のアルキル基を表す)を表し、またSp1、Sp2、Sp3、Sp4はそれぞれ独立して単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を表し、A1、A2は3価または4価の芳香族炭化水素を表し、Tは
【化6】

で表される二価の基または二価の芳香族複素環基を表す(Xは炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基または−COOR0(R0は水素原子、隣接するCH2がOまたはSで置換されていてもよいアルキル基もしくはフッ化アルキル基、または−Sp5−Pを表し、Sp5は単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を表し、Pは重合性基を表す)を表し、Ya、Yb、Yc、Ydはおのおの独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す)であり、Hbはそれぞれ独立に炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基を表す。m、nはそれぞれ独立に2または3であり、このとき複数存在する括弧内の構造は互いに同じでも異なっていてもよい。o、pはそれぞれ独立に0以上の整数であり、oおよびpが2以上であるとき複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項7】
前記重合性液晶分子が棒状液晶分子である請求項6に記載の液晶組成物。
【請求項8】
少なくとも1種のキラル化合物を含有する請求項6または7に記載の液晶組成物。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の液晶組成物を重合させてなる高分子材料。
【請求項10】
請求項9に記載の高分子材料の少なくとも1種を含有するフィルム。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなるフィルム。
【請求項12】
光学異方性を示す請求項10または11に記載のフィルム。
【請求項13】
選択反射特性を示す請求項10〜12のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項14】
赤外線波長域に選択反射特性を示す請求項13に記載のフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−47204(P2013−47204A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−36512(P2012−36512)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】