説明

化合物、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法

【課題】電子線やEUVを露光源とする光リソグラフィー技術により、優れたラインエッジラフネスを有するレジストパターンの製造できるレジスト組成物、及び該レジスト組成物に含有される新規な化合物を提供すること。
【解決手段】以下の〔1〕及び〔2〕の提供。
〔1〕式(I)で表される化合物。


[式中、
Xは、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。
、R及びRは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基などを表すが、R及びRが互いに結合して脂肪族炭化水素基を形成していると好ましい。]
〔2〕前記化合物と、酸発生剤とを含有するレジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細加工技術として、ArFエキシマレーザー(波長:193nm)などの短波長光を露光源とする光リソグラフィー技術が検討されている。このような光リソグラフィー技術に用いられるレジスト組成物は、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる樹脂(酸分解性基を有する樹脂)と、酸発生剤とが含有されている。光リソグラフィー技術におけるレジストパターン形成では、その加工寸法がより微細化することに伴い、当該レジストパターンのうねり、いわゆるラインエッジラフネスを一層低減することが求められる。しかしながら、前記レジスト組成物では、酸分解性基を有する樹脂が基材となるレジストパターンが形成されるため、当該樹脂の分子量分布に依存して、ラインエッジラフネスを低減するのが比較的困難であるという問題がある。かかる問題を解決する方法として近年、比較的分子量が小さく、酸分解性基を有する化合物(低分子化合物)、及び該低分子化合物を含有するレジスト組成物が注目されている。
【0003】
このような低分子化合物として例えば、特許文献1には式(X1)


で表される化合物が記載されている。また、同文献には当該化合物を含有するレジスト組成物も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−201762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体の微細加工技術の加工寸法がますます微細化していくこと対応し、電子線や軟X線(EUV)を露光源とする光リソグラフィー技術が、次世代或いは次々世代の技術として開発が活発化している。しかしながら、式(X1)で表される化合物を含有するレジスト組成物を、電子線や軟X線(EUV)を露光源とするリソグラフィー技術に用いたとき、得られるレジストパターンのラインエッジラフネス(LER)には、いまだ改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の発明を含む。
〔1〕式(I)で表される化合物。


[式(I)中、
Xは、m価の炭素数1〜36の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。
mは、2〜8の整数を表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基及び6〜16の芳香族炭化水素基を表し、R及びRは互いに結合して、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を形成してもよい。該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わってもよく、該脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルコキシ基に置換されてもよい。
mが2以上の場合、複数存在するRは互いの同一又は相異なり、複数存在するRは互いの同一又は相異なり、複数存在するRは互いの同一又は相異なる。]
〔2〕分子量が300〜3000の範囲である、前記〔1〕記載の化合物。
〔3〕前記〔1〕又〔2〕記載の化合物と、酸発生剤とを含有するレジスト組成物。
〔4〕アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる樹脂を、さらに含有する、前記〔3〕記載のレジスト組成物。
〔5〕前記樹脂が、
式(a1−1)で表される構造単位、又は式(a1−2)で表される構造単位を有する樹脂である、前記〔4〕記載のレジスト組成物。


[式(a1−1)及び式(a1−2)中、
a1及びLa2はそれぞれ独立に、酸素原子又は−O−(CH2k1−CO−O−で表される基(*は、カルボニル基との結合手である。)を表し、k1は1〜7の整数を表す。
a4及びRa5はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
a6及びRa7はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表す。
n1は0〜10の整数を表す。
n2は0〜3の整数を表す。]
〔6〕溶剤を、さらに含有する、前記〔3〕〜〔5〕のいずれか記載のレジスト組成物。
〔7〕(1)前記〔6〕記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物から溶剤を除去して組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の化合物によれば、例えば電子線やEUVを露光源とする光リソグラフィー技術に用いた場合に、優れたラインエッジラフネス(LER)を有するレジストパターンを製造し得るレジスト組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、前記式(I)で表される化合物(以下、場合により「化合物(I)」という。)、並びに該化合物(I)と、酸発生剤(以下、場合により「酸発生剤(B)」という。)を含有するレジスト組成物(以下、場合により「本レジスト組成物」という。)を提供する。
また、本レジスト組成物は当該化合物(I)のほかに、
アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂(以下、場合により「樹脂(A)」という。)を含有することもある。
さらに、本レジスト組成物は、必要に応じて塩基性化合物(以下、場合により「塩基性化合物(C)」という。)及び溶剤(以下、場合により「溶剤(D)」という。)を含有することもある。
以下、本レジスト組成物の構成成分を、化合物(I)、酸発生剤(B)、樹脂(A)、塩基性化合物(C)及び溶剤(D)の順に説明し、さらに、本レジスト組成物の調製方法及び本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法に関して説明する。
【0009】
本明細書では、特に断りのない限り、炭素数を適宜選択しながら、以下の置換基の例示は、同様の置換基を有するいずれの化学構造式においても適用される。脂肪族炭化水素基のうち、アルキル基のように直鎖状又は分岐状をとることができるものは、そのいずれをも含む。立体異性体が存在する場合は、全ての立体異性体を包含する。以下の置換基の例示において、「C」に付して記載した数値は、各々の基の炭素数を示すものである。
さらに、本明細書において、「(メタ)アクリル系モノマー」とは、「CH2=CH−CO−」又は「CH2=C(CH3)−CO−」の構造を有するモノマーの少なくとも1種を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種」並びに「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0010】
炭化水素基とは、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する。
脂肪族炭化水素基は、鎖式及び環式の双方を含み、特に定義しない限り、鎖式及び脂環式の脂肪族炭化水素基が組み合わせられたものをも包含する。また、これら脂肪族炭化水素基は、その一部に炭素−炭素二重結合を含んでいてもよいが、飽和の基(脂肪族飽和炭化水素基)が好ましい。
【0011】
鎖式の脂肪族炭化水素基のうち1価のものとしては、典型的にはアルキル基が挙げられる。該アルキル基の具体例は、メチル基(C)、エチル基(C)、プロピル基(C)、ブチル基(C)、ペンチル基(C)、ヘキシル基(C)、ヘプチル基(C)、オクチル基(C)、デシル基(C10)、ドデシル基(C12)、ヘキサデシル基(C14)、ペンタデシル基(C15)、ヘキシルデシル基(C16)、ヘプタデシル基(C17)及びオクタデシル基(C18)などである。
鎖式の脂肪族炭化水素基のうち2価のものとしては、アルキル基から水素原子を1個取り去ったアルカンジイル基が挙げられる。アルカンジイル基の具体例は、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、2−プロピリデン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基及び2−メチル−1,4−ブチレン基などである。
【0012】
環式の脂肪族炭化水素基(以下、場合により「脂環式炭化水素基」という。)は、典型的には、シクロアルキル基であり、以下に示す単環式及び多環式のいずれをも包含する。
【0013】
脂環式炭化水素基のうち1価のものとして、単環式の脂肪族炭化水素基は、以下の式(KA−1)〜(KA−7)で表されるシクロアルカンの水素原子を1個取り去った基である。

【0014】
多環式の脂肪族炭化水素基は、以下の式(KA−8)〜(KA−19)で表されるシクロアルカンの水素原子を1個取り去った基である。

【0015】
脂環式炭化水素基のうち2価のものとしては、式(KA−1)〜式(KA−19)の脂環式炭化水素から水素原子を2個取り去った基が挙げられる。
【0016】
脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。このような置換基としては、そのつど定義するが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、アラルキル基及びアリールオキシ基が挙げられる。
【0017】
アルコキシ基としては、メトキシ基(C)、エトキシ基(C)、プロポキシ基(C)、ブトキシ基(C)、ペンチルオキシ基(C)、ヘキシルオキシ基(C)、ヘプチルオキシ基(C7)、オクチルオキシ基(C8)、デシルオキシ基(C10)及びドデシルオキシ基(C12)などが挙げられる。
アシル基としては、アセチル基(C)、プロピオニル基(C)、ブチリル基(C)、バレイル基(C)、ヘキシルカルボニル基(C)、ヘプチルカルボニル基(C7)、オクチルカルボニル基(C8)、デシルカルボニル基(C10)及びドデシルカルボニル基(C12)などのアルキル基とカルボニル基とが結合したもの、並びにベンゾイル基(C7)などのアリール基とカルボニル基とが結合したものが挙げられる。
アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基及びイソブチリルオキシ基などが挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル基(C7)、フェネチル基(C8)、フェニルプロピル基(C9)、ナフチルメチル基(C11)及びナフチルエチル基(C12)などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基(C)、ナフチルオキシ基(C10)、アントニルオキシ基(C14)、ビフェニルオキシ基(C12)、フェナントリルオキシ基(C14)及びフルオレニルオキシ基(C13)などのアリール基と酸素原子とが結合したものが挙げられる。
【0018】
1価の芳香族炭化水素基としては、典型的には、アリール基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基(C)、ナフチル基(C10)、アントニル基(C14)、ビフェニル基(C12)、フェナントリル基(C14)及びフルオレニル基(C13)などが挙げられる。2価の芳香族炭化水素基は例えば、ここに例示したアリール基から、さらに水素原子1個と取り去ったアリーレン基を挙げることができる。
【0019】
芳香族炭化水素基も置換基を有することがある。このような置換基はそのつど定義するが、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基、アルキル基及びアリールオキシ基を挙げることができる。これらのうち、アルキル基は、鎖式脂肪族炭化水素基として例示したものと同じであり、芳香族炭化水素基に任意に有する置換基のうち、アルキル基以外のものは、脂肪族炭化水素基の置換基として例示したものと同じものを含む。
【0020】
<式(I)で表される化合物(以下「化合物(I)」という場合がある)>
化合物(I)は、前記式(I)で表される。繰り返しになるが、式(I)を以下に示す。


[式(I)中、
Xは、m価の炭素数1〜36の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。
mは、2〜8の整数を表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基及び6〜16の芳香族炭化水素基を表し、R及びRは互いに結合して、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を形成してもよい。該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わってもよく、該脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルコキシ基に置換されてもよい。
mが2以上の場合、複数存在するRは互いの同一又は相異なり、複数存在するRは互いの同一又は相異なり、複数存在するRは互いの同一又は相異なる。]
【0021】
前記式(I)のXは、炭素数1〜36の脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であり、その価数は、以下の式(IG)


で示される基の数に応じる。なお、Xの脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基は、式(IG)で表される基のほかに置換基を有することもあるが、その置換基の置換数は、Xの価数に含まれない。該脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基は、その炭素数が各々の範囲において、すでに例示した1価の脂肪族炭化水素基及び1価の芳香族炭化水素基から水素原子を(m―1)個取り去った基が挙げられる。mは2〜8から選ばれるが、化合物(I)の製造上の容易さを考慮すると、mは2〜5の範囲が好ましく、2〜4の範囲がより好ましい。
【0022】
Xの具体例としては、以下の基が挙げられる。
【0023】
2価のXとしては、


などが挙げられる。なお、RX1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、*は式(IG)で表される基との結合手である。
【0024】
3価のXとしては、


などが挙げられる。*は、式(IG)で表される基との結合手である。
【0025】
4価以上のXとしては、


などが挙げられる。*は、式(IG)で表される基との結合手である。RX1は、前記と同義である。
【0026】
次に、式(IG)で表される基について説明する。R、R及びR(R〜R)のアルキル基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基は各々の炭素数の範囲ですでに例示したものを含む。また、R及びRが互いに結合して脂肪族炭化水素基を形成する場合とは、R及びRが互いに結合して、これらが結合する炭素原子とともに環(脂肪族環)を形成することを意味する。かかる環は、単環式の環であっても、多環式の環であってもよい。
【0027】
また、R〜Rのアルキル基、及び脂環式炭化水素基、並びには、R及びRが互いに結合して形成する脂肪族炭化水素基は、それを構成するメチレン基の一部が、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。例えば、脂環式炭化水素基を構成するメチレン基が酸素原子又はカルボニル基に置き換わった基としては、例えば、以下の基が挙げられる。


(なお、ここに示す式(w1)〜式(w14)で表される基は、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基などを置換基として有していてもよい。)
【0028】
以上の炭化水素基の中でも、R〜Rは炭素数1〜6のアルキル基、又は


で表される基であると好ましい。
【0029】
また、R及びRが結合して形成される脂肪族炭化水素基のうち、好ましいものは例えば、−C(R)(R)(R)で表される基が、


となるものである。この場合のRも炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0030】
以上、化合物(I)のR〜Rについて、その具体例を挙げつつ説明したが、これらの中でも、R及びRが結合して脂肪族炭化水素基を形成していると好ましく、−C(R)(R)(R)で表される基が、前記の式(I−g)、式(I−h)、式(I−i)及び式(I−j)でそれぞれ表される基であると一層好ましい。
【0031】
本発明の化合物(I)は、その分子量が300〜3000の範囲であると好ましく、400〜2500の範囲であるとさらに好ましく、500〜1500の範囲であると一層好ましい。分子量が上記範囲である化合物(I)は、当該化合物(I)を含有する本レジスト組成物から光リソグラフィー技術(好ましいレジストパターンの製造方法は後述する。)に用いたとき、より一層優れたラインエッジラフネスのレジストパターンを製造できるという効果がある。また、この本レジスト組成物が溶剤を含有しているとき、基板上への成膜性に優れるという利点がある。かかる分子量は化合物(I)の構造式から算出することもできるし、例えば質量スペクトルを測定し、その分子イオンピークの値から求めることもできる。
【0032】
ここで、化合物(I)の好適例を、例えばその分子量が上記範囲である場合で具体的に示すと、以下のとおりである。

【0033】

【0034】

【0035】

【0036】
以上の好適例の中でも、式(I−1)〜式(I−6)で表される化合物(I)がさらに好ましい。
【0037】
化合物(I)は例えば、以下の方法により製造できる。まず、式(IG)で表される基を誘導し得る化合物(式(I−S2)で表される化合物)を、式(IG−S1)で表される化合物と、1,1’−カルボニルジイミダゾールとを溶媒中で反応させることにより製造する。この反応を反応式の形式で示すと、以下のとおりである。


この反応で用いられる溶媒は例えば、クロロホルム及びアセトニトリルなどである。
式(IG−S1)で表される化合物は公知の方法により製造したり、市場から容易に入手できる市販品を用いたりすることで準備できる。式(IG−S1)で表される化合物としては例えば、以下の化合物が挙げられる。

【0038】
続いて、前記の方法で得られた式(I−S1)で表される化合物と、式(I−S2)で表される化合物とを、溶媒中、触媒の存在下で反応させることにより化合物(I)を得ることができる。この反応を反応式の形式で示すと、以下のとおりである。


なお、この反応式では式(I−S1)で表される化合物の当量数などは記載していないが、式(I−S1)で表される化合物の当量数は、式(I−S2)で表される化合物に含まれるヒドロキシ基の数(m)に応じて設定される。
この反応で用いられる溶媒は例えば、アセトンなどである。
触媒としては炭酸カリウムなどが用いられる。
式(I−S2)で表される化合物も公知の方法により製造したり、市場から容易に入手できる市販品を用いたりすることで準備できる。式(IG−S2)で表される化合物としては例えば、以下の化合物が挙げられる。

【0039】
<本レジスト組成物>
本レジスト組成物は、酸発生剤と、化合物(I)とを含む。まず、酸発生剤(B)について説明する。
【0040】
<酸発生剤(B)>
レジスト分野に用いられる酸発生剤は、非イオン系とイオン系とに分類される。本レジスト組成物に含有される酸発生剤(B)は、非イオン系又はイオン系のいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。非イオン系酸発生剤としては、有機ハロゲン化物、スルホネートエステル類(例えば2−ニトロベンジルエステル、芳香族スルホネート、オキシムスルホネート、N−スルホニルオキシイミド、N−スルホニルオキシイミド、スルホニルオキシケトン、ジアゾナフトキノン4−スルホネート)、及びスルホン類(例えばジスルホン、ケトスルホン、スルホニルジアゾメタン)などが挙げられる。イオン系酸発生剤としては、オニウムカチオンを含むオニウム塩(例えばジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩)などが挙げられる。オニウム塩のアニオンとしては、スルホン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、及びスルホニルメチドアニオンなどが挙げられる。
【0041】
また、酸発生剤(B)としては、レジスト分野で使用される酸発生剤(特に光酸発生剤)だけでなく、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤又は光変色剤等の放射線(光)によって酸を発生する公知化合物及びそれらの混合物も、適宜、使用できる。例えば特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号、米国特許第3,779,778号、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、欧州特許第126,712号等に記載の放射線によって酸を発生する化合物を使用できる。
【0042】
本レジスト組成物に含有される酸発生剤(B)は、好ましくはフッ素含有酸発生剤であり、より好ましくは、以下の式(B1)で表される酸発生剤(以下、場合により「酸発生剤(B1)」という。)である。なお、以下の説明において、この酸発生剤(B1)のうち、正電荷を有するZは「有機カチオン」といい、該有機カチオンを除去してなる負電荷を有するものを「スルホン酸アニオン」ということがある。


[式(B1)中、
1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
b1は、単結合又は炭素数1〜17の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表し、該2価の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
Yは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
+は、有機カチオンを表す。]
【0043】
1及びQ2のペルフルオロアルキル基の具体例は、すでに例示したアルキル基のうち、炭素数1〜6のアルキル基において、該アルキル基を構成する水素原子の全部がフッ素原子に置き換わったものが該当する。
本レジスト組成物に含有される酸発生剤(B)としては、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、トリフルオロメチル基又はフッ素原子の酸発生剤(B1)が好ましく、Q1及びQ2がともにフッ素原子である酸発生剤(B1)がさらに好ましい。
【0044】
b1の2価の脂肪族炭化水素基の具体例は、すでに例示したアルカンジイル基、及び、上述の式(KA−1)〜式(KA−19)の脂環式炭化水素から水素原子を2個取り去った基などである。
【0045】
b1の脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基が、酸素原子又はカルボニル基に置き換わったものとしては、例えば、以下の式(b1−1)、式(b1−2)、式(b1−3)、式(b1−4)、式(b1−5)及び式(b1−6)〔式(b1−1)〜式(b1−6)〕でそれぞれ示される基が挙げられる。なお、式(b1−1)〜式(b1−6)は、その左右を式(B1)に合わせて記載しており、左側の結合手は、C(Q1)(Q2)と結合し、右側の結合手はYと結合している。以下の式(b1−1)〜式(b1−6)の具体例も同様である。


式(b1−1)〜式(b1−6)中、
b2は、単結合又は炭素数1〜15の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b3は、単結合又は炭素数1〜12の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b4は、炭素数1〜13の脂肪族飽和炭化水素基を表す。但しLb3及びLb4の合計炭素数の上限は13である。
b5は、炭素数1〜15のの脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b6及びLb7は、それぞれ独立に、炭素数1〜15の脂肪族飽和炭化水素基を表す。但しLb6及びLb7の合計炭素数の上限は16である。
b8は、炭素数1〜14の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b9及びLb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜11の脂肪族飽和炭化水素基を表す。但しLb9及びLb10の合計炭素数の上限は12である。
本レジスト組成物に含有される酸発生剤(B)としては、これらの中でも、式(b1−1)で表される2価の基をLb1として有する酸発生剤(B1)が好ましく、Lb2が単結合又はメチレン基である式(b1−1)で表される2価の基を、Lb1として有する酸発生剤(B1)がより好ましい。
【0046】
式(b1−1)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0047】
式(b1−2)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0048】
式(b1−3)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0049】
式(b1−4)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0050】
式(b1−5)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0051】
式(b1−6)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0052】
Yのアルキル基は、炭素数1〜18の範囲ですでに例示したものを含むが、中でも炭素数1〜6のアルキル基が好ましい
Yの脂環式炭化水素基も、炭素数1〜18の範囲ですでに例示したものを含むが、以下の式(Y1)〜式(Y11)で表される基が好ましい。
なお、上述のとおり、該アルキル基及び脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。例えば、脂環式炭化水素基を構成するメチレン基が、酸素原子又はカルボニル基に置き換わった基としては、以下の式(Y12)〜式(Y26)で表される基などである。

【0053】
Yが脂環式炭化水素基である場合、上記例示のなかでも、好ましくは式(Y1)〜式(Y19)のいずれかで表される基であり、より好ましくは式(Y11)、式(Y14)、式(Y15)又は式(Y19)で表される基であり、さらに好ましくは式(Y11)又は式(Y14)で表される基である。
【0054】
Yのアルキル基及び脂環式炭化水素基は置換基を有することもある。該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜16の脂環式炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、炭素数2〜4のアシル基、グリシジルオキシ基又は−(CH2j2−O−CO−Rb1基(式中、Rb1は、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数3〜16の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。j2は、0〜4の整数を表す。)などが挙げられる。ここに示す置換基のうち、アルキル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びアラルキル基等は、さらに置換基を有していてもよい。
【0055】
ハロゲン原子としては、すでに例示したもののいずれでもよい。
アルキル基、脂環式炭化水素基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、アラルキル基及びアシル基の具体例は、各々の炭素数の範囲ですでに例示したものを含む。なお、ヒドロキシ基を有するアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、及びヒドロキシエチル基などが挙げられる。
【0056】
好ましいYである脂環式炭化水素基において、置換基を有する脂環式炭化水素基としては例えば以下のものが挙げられる。

【0057】
Yは、好ましくは置換基を有していてもよいアダマンチル基であり、より好ましくはアダマンチル基又はオキソアダマンチル基である。
【0058】
酸発生剤(B1)を構成するスルホン酸アニオンとしては、好ましくは、式(b1−1−1)〜式(b1−1−1−9)でそれぞれ表されるアニオンが挙げられる。以下の式においては、なお、Lb2は前記と同義であり、前記式(b1−1)で表される基であると好ましい。Rb2及びRb3は、それぞれ独立に、Yの脂肪族炭化水素基に任意に有することもある置換基として定義したものであり、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。

【0059】
式(b1−1−1)〜式(b1−1−9)で表されるスルホン酸アニオンの具体例は例えば、特開2010−204646号公報に記載されているスルホン酸アニオンを挙げることができる。
【0060】
酸発生剤(B1)を構成する有機カチオン(Z)は、オニウムカチオン、例えば、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン、及びホスホニウムカチオンなどが挙げられ、好ましくは、スルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンであり、より好ましくは、アリールスルホニウムカチオンである。
【0061】
該有機カチオン(Z+)は、好ましくは式(b2−1)〜式(b2−4)でそれぞれ表されるカチオンである。

【0062】
式(b2−1)〜式(b2−4)において、
b4、Rb5及びRb6は、それぞれ独立に、炭素数1〜30の炭化水素基を表し、この炭化水素基のうちでは、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基及び炭素数6〜18の芳香族炭化水素基が好ましい。前記アルキル基は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を有していてもよく、前記脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基を有していてもよく、前記芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の飽和環状炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を有していてもよい。
b7及びRb8は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
m2及びn2は、それぞれ独立に0〜5の整数を表す。
b9及びRb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表す。
b11は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。
b9、Rb10及びRb11(Rb9〜Rb11)は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基であり、この脂肪族炭化水素基がアルキル基である場合、その炭素数は1〜12であると好ましく、この脂肪族炭化水素基が脂環式炭化水素基である場合、その炭素数は3〜18であると好ましく、4〜12であるとさらに好ましい。
b12は、炭素数1〜18の炭化水素基を表す。この炭化水素基のうち、芳香族炭化水素基は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基を有していてもよい。
b9とRb10との組み合わせ、及び/又は、Rb11とRb12との組み合わせは、それぞれ独立に、互いに結合して3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)を形成していてもよく、これらの3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)は脂肪族環又は、該脂肪族環を構成するメチレン基が、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基に置き換わっている環である。
【0063】
b13、Rb14、Rb15、Rb16、Rb17及びRb18(Rb13〜Rb18)は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
b11は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
o2、p2、s2及びt2は、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
q2及びr2は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
u2は0又は1を表す。
o2が2以上であるとき、複数のRb13は互いに同一又は相異なり、p2が2以上であるとき、複数のRb14は互いに同一又は相異なり、s2が2以上であるとき、複数のRb15は互いに同一又は相異なり、t2が2以上であるとき、複数のRb18は互いに同一又は相異なる。
【0064】
b12のアルキルカルボニルオキシ基としては、すでに例示したアシル基と酸素原子とが結合したものである。
【0065】
b9〜Rb12のアルキル基の好適例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基などである。
b9〜Rb11の脂環式炭化水素基の好適例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基、2−アルキル−2−アダマンチル基、1−(1−アダマンチル)−1−アルキル基及びイソボルニル基などである。
b12の芳香族炭化水素基の好適例は、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロへキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基、ビフェニリル基及びナフチル基などである。
b12の芳香族炭化水素基とアルキル基が結合したものは、典型的にはアラルキル基である。
b9とRb10との組み合わせが結合して形成する環としては例えば、チオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環及び1,4−オキサチアン−4−イウム環などが挙げられる。
b11とRb12との組み合わせが結合して形成する環としては例えば、オキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環及びオキソアダマンタン環などが挙げられる。
【0066】
式(b2−1)〜式(b2−4)で表される有機カチオンの具体例は、特開2010−204646号公報に記載されたものを挙げることができる。
【0067】
例示した有機カチオンの中でも、カチオン(b2−1)が好ましく、以下の式(b2−1−1)で表される有機カチオン〔以下、「カチオン(b2−1−1)」という。〕がより好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=0である。)又はトリトリルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=1であり、R19、R20及びR21がいずれもメチル基である。)がさらに好ましい。


式(b2−1−1)中、
b19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
この脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜12であると好ましく、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数4〜18の脂環式炭化水素基がより好ましく、さらには置換基として、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基を有していてもよい。
v2、w2及びx2は、それぞれ独立に0〜5の整数(好ましくは0又は1)を表す。
v2が2以上のとき、複数のRb19は互いに同一又は相異なり、w2が2以上のとき、複数のRb20は互いに同一又は相異なり、x2が2以上のとき、複数のRb21は互いに同一又は相異なる。
なかでも、Rb19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0068】
以上、酸発生剤(B1)を、それを構成するスルホン酸アニオンと有機カチオンとに分けて説明したが、当該酸発生剤(B1)は、該スルホン酸アニオン及び有機カチオンの組合せである。該スルホン酸アニオン及び有機カチオンとは任意に組み合わせることができ、好ましくは、アニオン(b1−1−1)〜アニオン(b1−1−9)のいずれかとカチオン(b2−1−1)との組合せ、並びにアニオン(b1−1−3)〜(b1−1−5)のいずれかとカチオン(b2−3)との組合せが挙げられる。
【0069】
酸発生剤(B1)としては、好ましくは、式(B1−1)〜式(B1−20)でそれぞれ表される塩が挙げられ、より好ましくは、トリアリールスルホニウムカチオンを含む、式(B1−1)、式(B1−2)、式(B1−3)、式(B1−6)、式(B1−11)、式(B1−12)、式(B1−13)、式(B1−14)、式(B1−18)、式(B1−19)及び(B1−20)でそれぞれ表される酸発生剤(B1)である。

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】
以上、本レジスト組成物が含有する化合物(I)及び酸発生剤(B)について説明してきたが、上述のとおり、本レジスト組成物は、化合物(I)及び酸発生剤(B)以外に、任意に、樹脂(A)、塩基性化合物(C)及び溶剤(D)を含有する。以下、これら樹脂(A)、塩基性化合物(C)及び溶剤(D)の各々について具体例を示しつつ説明する。
【0074】
<樹脂(A)>
樹脂(A)は上述のとおり、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる特性(以下、場合により「酸作用特性」という。)を有するものである。なお、「酸の作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る」とは、「酸との接触前ではアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸との接触後にはアルカリ水溶液に可溶となる」ことを意味する。
【0075】
酸作用特性を有する樹脂(A)は、その分子内に酸により分解する基(以下、場合により「酸分解性基」という。)を有する。このような樹脂(A)は、酸分解性基を有するモノマー(以下、このモノマーを場合により「モノマー(a1)」といい、該モノマー(a1)由来の構造単位を「構造単位(a1)」という。)を重合することによって製造できる。酸作用特性を有する樹脂(A)を製造する際には、モノマー(a1)を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
<酸分解性基>
「酸分解性基」とは、酸と接触すると分解(脱離基が脱離)して、親水性基(例えば、ヒドロキシ基又はカルボキシ基)を形成する基を意味する。酸分解性基としては、例えば、式(1)で表される基(酸分解性基(1))、式(2)で表される基(酸分解性基(2))などが挙げられる。


[式(1)中、
a1、Ra2及びRa3(Ra1〜Ra3)は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、Ra1及びRa2は互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成する。*は結合手を表す。]
【0077】


[式(2)中、
a1’及びRa2’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、Ra3’は、炭素数1〜20の炭化水素基を表すか、Ra2’及びRa3’は互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成する。該1価の炭化水素基及び該2価の炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わってもよい。*は結合手を表す。]
【0078】
酸分解性基(1)のRa1〜Ra3のアルキル基及び脂環式炭化水素基は、各々の炭素数の範囲において、すでに例示したものを含む。ただし、該脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは3〜16の範囲である。
【0079】
a1及びRa2が互いに結合して2価の炭化水素基を形成する場合とは、−C(Ra1)(Ra2)(Ra3)で表される基が、以下のいずれかの基となる場合である。該2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは3〜12の範囲である。

【0080】
酸分解性基(1)としては例えば、1,1−ジアルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1〜Ra3がアルキル基である基、好ましくはtert−ブチル基)、2−アルキルアダマンタン−2−イルオキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2が結合することで、アダマンチル環を形成し、Ra3がアルキル基である基)及び1−(アダマンタン−1−イル)−1−アルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2がアルキル基であり、Ra3がアダマンチル基である基)などが挙げられる。
【0081】
酸分解性基(2)のRa1’及びRa2’の炭化水素基は例えば、アルキル基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基などである。これらの基もすでに例示したもののうち、炭素数20以下の範囲で同じものを含む。ただし、Ra1'及びRa2'のうち少なくとも1つは水素原子であると好ましい。
【0082】
酸分解性基(2)の具体例としては、以下の基が挙げられる。

【0083】
モノマー(a1)は、酸分解性基と炭素−炭素二重結合とを有するモノマーが好ましく、酸分解性基を有する(メタ)アクリル系モノマーがさらに好ましい。
【0084】
なかでも、酸分解性基(1)及び/又は酸分解性基(2)を有するモノマー(a1)が好ましく、酸分解性基(1)及び/又は酸分解性基(2)を有するを有する(メタ)アクリル系モノマーが特に好ましい。
【0085】
酸分解性基を有する(メタ)アクリル系モノマーのうち、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基を有するモノマー(a1)が好ましい。このようなモノマー(a1)を用いて得られる樹脂(A)は、脂環式炭化水素基のような嵩高い構造を有するものとなるので、該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物の解像度が一層良好となる傾向がある。
【0086】
<好適な構造単位(a1)>
かかる脂環式炭化水素基を有するモノマー(a1)を用いて得られる好適な構造単位(a1)、及び該構造単位(a1)を有する樹脂(A)について、さらに詳述する。該樹脂(A)の中でも、式(a1−1)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位(a1−1)」という。)又は式(a1−2)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位(a1−2)」という。)を有する樹脂(A)が好ましい。かかる樹脂(A)には、構造単位(a1−1)を単独種で有していてもよく、複数種有していてもよく、構造単位(a1−2)を単独種で有していてもよく、複数種有していてもよく、構造単位(a1−1)と構造単位(a1−2)とを合わせて有していてもよい。


[式(a1−1)中、
a1は、酸素原子又は−O−(CH2k1−CO−O−(k1は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基との結合手を表す。)で表される基を表す。
a4は、水素原子又はメチル基を表す。
a6は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表す。
式(a1−2)中、
a2は、酸素原子又は−O−(CH2k1−CO−O−(k1は前記と同義である。)で表される基を表す。
a5は、水素原子又はメチル基を表す。
a7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
n1は0〜10の整数を表す。]
【0087】
a1及びLa2は、好ましくは、酸素原子又は、k1が1〜4の整数である*−O−(CH2k1−CO−O−で表される基であり、より好ましくは酸素原子又は*−O−CH2−CO−O−であり、さらに好ましくは酸素原子である。
a4及びRa5は、好ましくはメチル基である。
a6及びRa7の脂肪族炭化水素基のうち、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基であり、この炭素数の上限以下の範囲で、すでに例示したものと同じものを含む。Ra6及びRa7の脂肪族炭化水素基はそれぞれ独立に、好ましくは炭素数8以下のアルキル基又は炭素数8以下の脂環式炭化水素基であり、より好ましくは炭素数6以下のアルキル基又は炭素数6以下の脂環式炭化水素基である。
m1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0088】
構造単位(a1−1)としては、以下の式(a1−1−1)、式(a1−1−2)、式(a1−1−3)、式(a1−1−4)、式(a1−1−5)、式(a1−1−6)、式(a1−1−7)及び式(a1−1−8)[式(a1−1−1)〜式(a1−1−8)]でそれぞれ表される構造単位(a1−1)が好ましく、式(a1−1−1)〜(a1−1−4)のいずれかで表される構造単位(a1−1)がより好ましい。

【0089】

【0090】
これらの構造単位(a1−1)を誘導し得るモノマー(a1)としては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたものなどが挙げられる。
【0091】
一方、構造単位(a1−2)としては、以下の式(a1−2−1)、式(a1−2−2)式(a1−2−3)、式(a1−2−4)、式(a1−2−5)及び式(a1−2−6)[式(a1−2−1)〜式(a1−2−6)]でそれぞれ表されるものが好ましい。これらのなかでも、式(a1−2−3)又は(a1−2−4)で表される構造単位(a1−2)がより好ましく、式(a1−2−3)で表される構造単位(a1−2)がさらに好ましい。

【0092】
構造単位(a1−2)を誘導し得るモノマー(a1)としては、例えば、1−エチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキサン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘプタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート及び1−イソプロピルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0093】
樹脂(A)が構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)を有する場合、これらの合計含有割合は、該樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲が一層好ましく、20〜60モル%の範囲が特に好ましい。また、構造単位(a1)として、アダマンチル基を有する構造単位(a1)(特に好ましくは、構造単位(a1−1))を有する場合には、樹脂(A)中の構造単位(a1)の合計(100モル%)に対して、アダマンチル基を有する構造単位(a1)が15モル%以上であることが好ましい。このような含有割合で、アダマンチル基を有する構造単位(a1)を有する樹脂(A)は、該樹脂(A)を含有するレジスト組成物から製造されるレジストパターンのドライエッチング耐性が良好となる傾向がある。なお、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)の合計含有割合を、上述の範囲にするためには、樹脂(A)を製造する際に、全モノマーの使用量に対する、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)を誘導するモノマー(a1)の使用量を調整すればよい。
【0094】
樹脂(A)が有する構造単位のうち、該樹脂(A)が酸作用特性を有するうえで好ましい構造単位(a1−1)及び構造単位(a1−2)について詳述したが、これらの中でも構造単位(a1−1)を樹脂(A)が有していると特に好ましい。
【0095】
樹脂(A)は、好適な構造単位(a1)である構造単位(a1−1)及び構造単位(a1−2)以外の構造単位(a1)を有していてもよい。以下、構造単位(a1−1)及び構造単位(a1−2)以外の構造単位(a1)を、当該構造単位(a1)を誘導するモノマー(a1)を示すことで説明する。
【0096】
樹脂(A)は、以下の式(a1−3)で表されるモノマー(以下、場合により「モノマー(a1−3)」という。)に由来する構造単位(a1)を有していてもよい。該モノマー(a1−3)に由来する構造単位(a1)を有する樹脂(A)は、その主鎖に剛直なノルボルナン環を含むものとなるので、このような樹脂(A)を含有する本レジスト組成物は、ドライエッチング耐性に優れたレジストパターンを製造できる傾向がある。


式(a1−3)中、
a9は、水素原子、置換基(例えばヒドロキシ基)を有していてもよい炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基、シアノ基、又は−COORa13で表される基を表し、Ra13は、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子はヒドロキシ基などに置換されていてもよく、該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。Ra10、Ra11及びRa12は、それぞれ独立に、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基を表すか、或いはRa10及びRa11は互いに結合して環を形成している。該脂肪族炭化水素基及に含まれる水素原子はヒドロキシ基などで置換されていてもよく、該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
【0097】
a9の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基は典型的には、置換基を有していてもよいアルキル基であり、かかるアルキル基のうち、置換基を有さないアルキル基は、その炭素数が1〜8の範囲ですでに例示したものを含む。置換基、特にヒドロキシ基を有する脂肪族炭化水素基(アルキル基)としては例えば、ヒドロキシメチル基及び2−ヒドロキシエチル基などである。Ra13としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、2−オキソ−オキソラン−3−イル基及び2−オキソ−オキソラン−4−イル基などが挙げられる。
【0098】
a10〜Ra12の脂肪族炭化水素基も典型的には、アルキル基であり、その具体例はRa9の場合と同じである。Ra10とRa11とが結合し、これらが結合する炭素原子とともに形成される環は、シクロへキサン環及びアダマンタン環などである。
【0099】
モノマー(a1−3)としては例えば、特開2010−204646号公報に記載されたものが用いられる。これらの中でも、以下の式(a1−3−1)、式(a1−3−2)、式(a1−3−3)及び式(a1−3−4)でそれぞれ表されるモノマー(a1−3)が好ましく、式(a1−3−2)又は(a1−3−4)で表されるモノマー(a1−3)がより好ましく、式(a1−3−2)で表されるモノマー(a1−3)がさらに好ましい。

【0100】
樹脂(A)が、モノマー(a1−3)に由来する構造単位を有する場合、その含有割合は、樹脂(A)の全構造単位に対して、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0101】
樹脂(A)は以下の式(a1−4)で表されるモノマー(以下「モノマー(a1−4)」という場合がある。)に由来する構造単位(a1)を有していてもよい。


式(a1−4)中、
10は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
は0〜4の整数を表す。
11は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、lが2以上である場合、複数のR11は互いに同一であっても異なってもよい。
12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。
a2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜17の脂肪族炭化水素基又は単結合を表し、該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又は−N(R)−(ただし、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す)で表される基に置き換わっていてもよい。
a3は、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を表す。
【0102】
「ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基」のうち、アルキル基としては、炭素数が1〜6の範囲ですでに例示したものを含む。ハロゲン原子を有するアルキル基としては、フッ素原子を有するアルキル基が好ましい。その具体例としては、例えば、塩(I)を構成する有機アニオンのQ及びQで説明したペルフルオロアルキル基などである。これらの中でも、R10としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
11のアルコキシ基は、炭素数1〜6の範囲において、すでに例示したものを含むが、中でも、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
11のアシル基及びアシルオキシ基も、その炭素数が2〜4の範囲において、すでに例示したものを含む。
12及びR13の炭化水素基は、その炭素数が1〜12の範囲において、Ya3の炭化水素基は、その炭素数が1〜18の範囲において、すでに例示した脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれかを含む。
a2の脂肪族炭化水素基は2価の鎖式炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基又は、鎖式炭化水素基と脂環式炭化水素基とが組み合わさった2価の基であり、炭素数1〜17の範囲ですでに例示した基を適宜組み合わせた基を挙げることができる。
【0103】
モノマー(a1−4)としては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。中でも、以下の式(a1−4−1)、式(a1−4−2)、式(a1−4−3)、式(a1−4−4)、式(a1−4−5)、式(a1−4−6)、及び式(a1−4−7)[式(a1−4−1)〜式(a1−4−7)]でそれぞれ表されるモノマーが好ましく、式(a1−4−1)〜式(a1−4−5)で表されるモノマーがより好ましい。

【0104】
樹脂(A)がモノマー(a1−4)に由来する構造単位を有する場合、その含有割合は、樹脂(A)の全構造単位に対して、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲が特に好ましい。
【0105】
樹脂(A)は、以下の式(a1−5)で表されるモノマー(以下、場合により「モノマー(a1−5)」という。)に由来する構造単位(a1)を有していてもよい。


式(a1−3)中、
a8は、水素原子又はメチル基を表す。
は、単結合、酸素原子又はカルボニル基を表す。
は炭素数1〜6のアルカンジイル基を表す。
a1〜Ra3は、前記と同義である。
【0106】
構造単位(a1−5)のRa1〜Ra3はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基及びヘキシル基であるか、R及びRが互いに結合して、それらが結合する炭素原子とともに、炭素数3〜12の環を形成していることが好ましく、Ra2及びRa3が互いに結合して環を形成する場合、当該環は、アダマンタン環又はシクロヘキサン環などが好ましい。
のアルカンジイル基の具体例は、炭素数が1〜6の範囲で、すでに例示したものを含む。
【0107】
構造単位(a1−5)の具体例は例えば、以下に示すものである。

【0108】
樹脂(A)が、構造単位(a1−5)を有する場合、その含有割合は、樹脂(A)の全構造単位に対して、3〜80モル%の範囲が好ましく、5〜70モル%の範囲がより好ましく、5〜60モル%の範囲が特に好ましい。
【0109】
<酸安定構造単位>
樹脂(A)は、酸不安定基を含む構造単位(a1)に加え、酸不安定基を有さない構造単位(以下、場合により「酸安定構造単位」といい、該酸安定構造単位を誘導し得るモノマーを、「酸安定モノマー」という。)を有していると好ましい。該樹脂(A)中、酸安定構造単位は1種のみを有していてもよく、複数種を有していてもよい。
【0110】
樹脂(A)が酸安定構造単位を有する場合、構造単位(a1)の含有割合を基準にして、酸安定性構造単位の含有割合を定めるとよい。構造単位(a1)の含有割合と酸安定性構造単位の含有割合との比は、〔構造単位(a1)〕/〔酸安定構造単位〕で表して、好ましくは10〜80モル%/90〜20モル%であり、より好ましくは20〜60モル%/80〜40モル%である。このようにすると、樹脂(A)を含有する本レジスト組成物から得られるレジストパターンのドライエッチング耐性がより一層良好になる傾向がある。
【0111】
次に、酸安定構造単位のうち、好ましいものを説明する。
酸安定構造単位は、ヒドロキシ基又はラクトン環を有する構造単位が好ましい。ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位(以下、場合により「酸安定構造単位(a2)」という。)及び/又はラクトン環を有する酸安定構造単位(以下、場合により「酸安定構造単位(a3)」という。)を有する樹脂(A)は、当該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物を基板に塗布したとき、基板上に形成される塗布膜、又は塗布膜から得られる組成物層が基板との間に優れた密着性を発現し易くなり、この本レジスト組成物は良好な解像度で、レジストパターンを製造することができる。なお、ここでいう本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法に関しては後述する。まず、酸安定構造単位として好適な、酸安定構造単位(a2)及び酸安定構造単位(a3)に関して具体例を挙げつつ説明する。
【0112】
<酸安定構造単位(a2)>
酸安定構造単位(a2)を樹脂(A)に導入する場合、当該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物からレジストパターンを製造する際の露光源の種類によって、各々、好適な酸安定構造単位(a2)を選択することができる。すなわち、本レジスト組成物を、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)を露光源とする露光、電子線あるいはEUV光などの高エネルギー線を露光源とする露光に用いる場合には、酸安定構造単位(a2)として、フェノール性水酸基を有する酸安定構造単位(a2−0)を樹脂(A)に導入することが好ましい。短波長のArFエキシマレーザ(波長:193nm)を露光源とする露光を用いる場合は、酸安定構造単位(a2)として、後述の式(a2−1)で表される酸安定構造単位を樹脂(A)に導入することが好ましい。このように、樹脂(A)が有する酸安定構造単位(a2)は各々、レジストパターンを製造する際の露光源によって好ましいものを選ぶことができるが、樹脂(A)が有する酸安定構造単位(a2)は、露光源の種類に応じて好適な酸安定構造単位(a2)1種のみを有していてもよく、露光源の種類に応じて好適な酸安定構造単位(a2)2種以上を有していてもよく、或いは、露光源の種類に応じて好適な酸安定構造単位(a2)と、それ以外の酸安定構造単位(a2)とを組み合わせて有していてもよい。
【0113】
酸安定構造単位(a2)の具体例の1つは、以下の式(a2−1)で表されるもの(以下、場合により「酸安定構造単位(a2−1)」という。)である。


式(a2−1)中、
a3は、酸素原子又は−O−(CH2k2−CO−O−(k2は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手を表す。)で表される基を表す。
a14は、水素原子又はメチル基を表す。
a15及びRa16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基を表す。
o1は、0〜10の整数を表す。
【0114】
a3は、好ましくは、酸素原子又は、k2が1〜4の整数である−O−(CH2k2−CO−O−で表される基であり、より好ましくは、酸素原子又は、−O−CH2−CO−O−であり、さらに好ましくは酸素原子である。
a14は、好ましくはメチル基である。
a15は、好ましくは水素原子である。
a16は、好ましくは水素原子又はヒドロキシ基である。
o1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0115】
酸安定構造単位(a2−1)としては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0116】
以上、例示した酸安定構造単位(a2−1)は、例えば、特開2010−204646号公報に記載された酸安定モノマーから誘導される。これらの中でも、式(a2−1−1)、式(a2−1−2)、式(a2−1−3)及び式(a2−1−4)でそれぞれ表される酸安定構造単位(a2−1)がより好ましく、式(a2−1−1)又は(a2−1−3)で表される酸安定構造単位(a2−1)がさらに好ましい。
【0117】
樹脂(A)が酸安定構造単位(a2−1)を有する場合、その含有割合は、樹脂(A)の全構造単位に対して、3〜45モル%の範囲が好ましく、5〜40モル%の範囲がより好ましく、5〜35モル%の範囲がさらに好ましい。
【0118】
次に、ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位のうち、フェノール性水酸基を有する酸安定構造単位について説明する。該酸安定構造単位は、以下の式(a2−0)で表されるもの(以下、場合により「酸安定構造単位(a2−0)」という。)が好ましい。


式(a2−0)中、
a30は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
a31は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表す。
maは0〜4の整数を表す。maが2以上の整数である場合、複数のRa31は同一でも異なっていてもよい。
【0119】
a30の「ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基」における「炭素数1〜6のアルキル基」の具体例は、炭素数がこの範囲において、すでに例示したものを含む。「ハロゲン原子を有する炭素数1〜6のアルキル基」とは、該炭素数1〜6のアルキル基に含まれる水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換されたものである。なお、ハロゲン原子の具体例もすでに説明したとおりである。これらのうち、Ra30は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
a31のアルコキシ基の具体例は、炭素数1〜6の範囲で、すでに例示したものを含む。これらのうち、Ra31は、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
maは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0が特に好ましい。
maは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0が特に好ましい。
【0120】
酸安定構造単位(a2−0)の中でも、以下の式(a2−0−1)、式(a2−0−2)、式(a2−0−3)及び式(a2−0−4)でそれぞれ表されるものが好ましい。かかる構造単位を誘導し得る酸安定モノマーは、例えば、特開2010−204634号公報に記載されている。

【0121】
p−ヒドロキシスチレンやp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンといった酸安定構造単位(a2−0)を誘導し得る酸安定モノマー[以下、場合により「酸安定モノマー(a2)」という。]を、樹脂(A)製造に用いることにより、式(a2−0−1)又は式(a2−0−2)で表される酸安定構造単位(a2−0)を、樹脂(A)に導入することができるが、該酸安定モノマー(a2)にあるフェノール性水酸基を例えば、アセチル基のような保護基で保護し、保護化酸安定モノマー(a2)とした後、この保護化酸安定モノマー(a2)を用いて樹脂(A)を製造することもできる。保護化酸安定モノマー(a2)に由来する構造単位を有する樹脂を脱保護処理して、保護基を脱離することにより、酸安定構造単位(a2−0)を有する樹脂(A)を製造できる。ただし、脱保護処理を実施する際には、他の構造単位(a1)を著しく損なわないようにして、該脱保護処理を実施する必要がある。
【0122】
樹脂(A)が酸安定構造単位(a2−0)を有する場合、その含有割合は、樹脂(A)の全構造単位に対して、5〜90モル%の範囲が好ましく、10〜85モル%の範囲がより好ましく、15〜80モル%の範囲がさらに好ましい。
【0123】
<酸安定構造単位(a3)>
酸安定構造単位(a3)が有するラクトン環は例えば、β−プロピオラクトン環、γ−ブチロラクトン環及びδ−バレロラクトン環のような単環式でもよく、単環式のラクトン環と他の環との縮合環でもよい。これらラクトン環の中で、γ−ブチロラクトン環及びγ−ブチロラクトン環と他の環との縮合環が好ましい。
【0124】
酸安定構造単位(a3)は好ましくは、以下の式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表されるものである。樹脂(A)は、これらのうち1種のみを有していてもよく、2種以上を有していてもよい。なお、以下の説明においては、式(a3−1)で示されるものを「酸安定構造単位(a3−1)」といい、式(a3−2)で示されるものを「酸安定構造単位(a3−2)」といい、式(a3−3)で示されるものを「酸安定構造単位(a3−3)」という。


[式(a3−1)中、
a4は、酸素原子又は−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)で表される基を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a18は、水素原子又はメチル基を表す。
p1は0〜5の整数を表す。
a21は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、p1が2以上の場合、複数のRa21は互いに同一又は相異なる。
式(a3−2)中、
a5は、酸素原子又は−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)で表される基を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
q1は、0〜3の整数を表す。
a22は、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、q1が2以上の場合、複数のRa22は互いに同一又は相異なる。
式(a3−3)中、
a6は、酸素原子又は−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)で表される基を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a20は、水素原子又はメチル基を表す。
r1は、0〜3の整数を表す。
a23は、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、r1が2以上の場合、複数のRa23は互いに同一又は相異なる。]
【0125】
式(a3−1)〜式(a3−3)において、La4〜La6は、式(a2−1)のLa3で説明したものと同じものが挙げられる。
a4〜La6は、それぞれ独立に、酸素原子又は、k3が1〜4の整数である*−O−(CH2k3−CO−O−で表される基が好ましく、酸素原子及び、*−O−CH2−CO−O−がより好ましく、さらに好ましくは酸素原子である。
a18〜Ra21は、好ましくはメチル基である。
a22及びRa23は、それぞれ独立に、好ましくはカルボキシ基、シアノ基又はメチル基である。
p1、q1及びr1は、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0又は1である。なお、p1が2である場合、2つのRa21は互いに同一又は相異なり、q1が2である場合、2つのRa22は互いに同一又は相異なり、r1が2である場合、2つのRa23は互いに同一又は相異なる。
【0126】
以下、酸安定構造単位(a3−1)、酸安定構造単位(a3−2)及び酸安定構造単位(a3−3)の各々の好適例を示す。
【0127】
酸安定構造単位(a3−1)の好適例は、以下の式(a3−1−1)、式(a3−1−2)、式(a3−1−3)及び式(a3−1−4)でそれぞれ表されるものである。

【0128】
酸安定構造単位(a3−2)の好適例は、以下の式(a3−2−1)、式(a3−2−2)、式(a3−2−3)及び式(a3−2−4)でそれぞれ表されるものである。

【0129】
酸安定構造単位(a3−3)の好適例は、以下の式(a3−3−1)、式(a3−3−2)、式(a3−3−3)及び式(a3−3−4)でそれぞれ表されるものである。

【0130】
酸安定構造単位(a3−1)、酸安定構造単位(a3−2)及び酸安定構造単位(a3−3)は、特開2010−204646号公報に記載された酸安定モノマーにより誘導できる。上記の酸安定構造単位(a3)の具体例の中でも、式(a3−1−1)〜式(a3−1−2)、式(a3−2−3)〜式(a3−2−4)で表される酸安定構造単位(a3)がより好ましく、式(a3−1−1)又は式(a3−2−3)で表される酸安定構造単位(a3)がさらに好ましい。
【0131】
樹脂(A)が、酸安定構造単位(a3)を有する場合、その含有割合は、該樹脂(A)の全構造単位に対して、5〜70モル%の範囲が好ましく、10〜65モル%の範囲がより好ましく、10〜60モル%の範囲がさらに好ましい。
【0132】
<樹脂(A)の製造方法>
樹脂(A)は、構造単位(a1)を誘導するモノマー(a1)を、さらに好ましくは、該モノマー(a1)と、酸安定構造単位を誘導する酸安定モノマーとを共重合させたものであり、より好ましくは、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)を誘導するモノマー(a1)、酸安定構造単位(a2)及び/又は酸安定構造単位(a3)を誘導する酸安定モノマーとを共重合させたものである。
樹脂(A)は、構造単位(a1)として、アダマンチル基を有する構造単位(a1−1)を有することがさらに好ましい。酸安定構造単位(a2)としては、ヒドロキシアダマンチル基を有する構造単位(a2−1)を用いることが好ましい。酸安定構造単位(a3)としては、γ−ブチロラクトン環を有する酸安定構造単位(a3−1)及びγ−ブチロラクトン環とノルボルナン環との縮合環を有する酸安定構造単位(a3−2)の少なくとも1種を有することが好ましい。樹脂(A)は、上述したようなモノマーを公知の重合法(例えばラジカル重合法)に供し、重合(共重合)することにより製造できる。
【0133】
樹脂(A)のより好ましい具体例を構造単位の組み合わせで例示すると、下記(A−1)〜(A-14)の樹脂が挙げられる。

【0134】

【0135】

【0136】
以上、樹脂(A)が有する構造単位(a1)及び酸安定構造単位、並びにこれらの組み合わせについて説明したが、これら以外の構造単位を当該樹脂(A)は有していてもよく、かかる構造単位としては、レジスト分野で周知の構造単位を挙げることができる。
【0137】
樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは、2,500以上50,000以下であり、より好ましくは3,000以上30,000以下である。なお、ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー分析により、標準ポリスチレン基準の換算値として求められるものである。この分析の詳細な分析条件は、本願の実施例に記載する。
【0138】
<塩基性化合物(C)>
本レジスト組成物が任意に含有することもある塩基性化合物とは、レジスト分野でクエンチャーと呼ばれるものである。塩基性化合物(C)は、好ましくは塩基性の含窒素有機化合物であり、例えばアミン及びアンモニウム塩が挙げられる。アミンとしては、脂肪族アミン及び芳香族アミンが挙げられる。脂肪族アミンとしては、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンが挙げられる。塩基性化合物(C)として、好ましくは、式(C1)で表される化合物〜式(C8)で表される化合物が挙げられ、より好ましくは式(C1−1)で表される化合物が挙げられる。
【0139】


[式(C1)中、
c1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]
【0140】


[式(C1−1)中、
c2及びRc3は、前記と同義である。
c4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
m3は0〜3の整数を表し、m3が2以上のとき、複数のRc4は、互いに同一又は相異なる。]
【0141】


[式(C2)、式(C3)及び式(C4)中、
c5、Rc6、Rc7及びRc8は、それぞれ独立に、Rc1と同義である。
c9は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基又は炭素数2〜6のアルカノイル基を表す。
n3は0〜8の整数を表し、n3が2以上のとき、複数のRc9は、互いに同一又は相異なる。]
【0142】


[式(C5)及び式(C6)中、
c10、Rc11、Rc12、Rc13及びRc16は、それぞれ独立に、Rc1と同義である。
c14、Rc15及びRc17は、それぞれ独立に、Rc4と同義である。
o3及びp3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、o3が2以上であるとき、複数のRc14は互いに同一又は相異なる。p3が2以上であるとき、複数のRc15は互いに同一又は相異なる。
c1は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0143】


[式(C7)及び式(C8)中、
c18、Rc19及びRc20は、それぞれ独立に、Rc4と同義である。
q3、r3及びs3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、q3が2以上であるとき、複数のRc18は互いに同一又は相異なる。r3が2以上であるとき、複数のRc19は互いに同一又は相異なる。s3が2以上であるとき、複数のRc20は互いに同一又は相異なる。
c2は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0144】
式(C1)〜式(C8)においては、アルキル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基及びアルカンジイル基の具体例は、各々の炭素数の範囲ですでに例示したものを含む。
アルカノイル基としては、アセチル基、2−メチルアセチル基、2,2−ジメチルアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基及び2,2−ジメチルプロピオニル基などが挙げられる。
【0145】
式(C1)で表される化合物としては、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、アニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミンエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン及び4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタンなどが挙げられ、好ましくはジイソプロピルアニリンが挙げられ、特に好ましくは2,6−ジイソプロピルアニリンが挙げられる。
【0146】
式(C2)で表される化合物としては、ピペラジンなどが挙げられる。
式(C3)で表される化合物としては、モルホリンなどが挙げられる。
式(C4)で表される化合物としては、ピペリジン及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物などが挙げられる。
式(C5)で表される化合物としては、2,2’−メチレンビスアニリンなどが挙げられる。
式(C6)で表される化合物としては、イミダゾール及び4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
式(C7)で表される化合物としては、ピリジン及び4−メチルピリジンなどが挙げられる。
式(C8)で表される化合物としては、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(2−ピリジル)エテン、1,2−ジ(4−ピリジル)エテン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ジ(4−ピリジルオキシ)エタン、ジ(2−ピリジル)ケトン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルアミン、2,2’−ジピコリルアミン及びビピリジンなどが挙げられる。
【0147】
アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムサリチラート及びコリンなどが挙げられる。
【0148】
<溶剤(D)>
本レジスト組成物が溶剤(D)を含有する場合、当該溶剤(D)は、化合物(I)や樹脂(A)などの種類及びその量に応じ、さらに後述するレジストパターンの製造において、基板上に本レジスト組成物を塗布する際の塗布性が良好となるという点から適宜、最適なものを選ぶことができる。
【0149】
溶剤(D)としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;γ−ブチロラクトンのような環状エステル類などを挙げることができる。溶剤(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0150】
<その他の成分>
以上、本レジスト組成物が任意に含有する、樹脂(A)、塩基性化合物(C)及び溶剤(D)について説明したが、本レジスト組成物はさらにレジスト分野で慣用の成分を含有することもできる。この構成成分を「成分(F)」という。かかる成分(F)に特に限定はなく、レジスト分野で慣用の添加剤、例えば、増感剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤及び染料などが挙げられる。
【0151】
<本レジスト組成物の調製方法>
続いて、本レジスト組成物のうち、好ましいものの調製方法を説明する。
このような本レジスト組成物は例えば、化合物(I)、酸発生剤(B1)及び溶剤(D)を混合することで、
又は、
化合物(I)、樹脂(A)、酸発生剤(B1)及び溶剤(D)を混合することで調製することができる。また、必要に応じて塩基性化合物(C)や成分(F)などの添加剤を含有させることもある。かかる混合において、その混合順は任意であり、特に限定されるものではない。混合する際の温度は、10〜40℃の範囲から、化合物(I)などの種類や化合物(I)などの溶剤(D)に対する溶解度などに応じて適切な温度範囲を選ぶことができる。混合時間は、混合温度に応じて、0.5〜24時間の中から適切な時間を選ぶことができる。なお、混合手段も特に制限はなく、攪拌混合などを用いることができる。
本レジスト組成物を調製する際に用いる各成分の含有割合は、それらの使用量により調節することができる。
【0152】
溶剤(D)の含有量は、化合物(I)の種類などに応じて適宜調節できるが、本レジスト組成物総質量に対して90質量%以上があると好ましく、92質量%以上であるとより好ましく、94質量%以上であるとさらに好ましい。また、該含有量は、99.9質量%以下が好ましく、より好ましくは99質量%以下である。ここで、溶剤(D)の含有量が90質量%であるレジスト組成物では、組成物中の固形分の含有量は10質量%に相当する。
溶剤(D)の含有量が上記範囲内であると、例えば後述するレジストパターンの製造方法において、厚み30〜300nm程度の組成物層を形成しやすいという利点がある。なお、この溶剤(D)の含有量は、本レジスト組成物を調製する際の溶剤(D)の使用量により制御可能である。
【0153】
なお、本明細書において「固形分」とは、本レジスト組成物から溶剤(D)を除いた成分の合計を意味する。該固形分の質量及び本レジスト組成物に含まれる各成分の含有量は、例えば、液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段で測定することができる。
【0154】
本レジスト組成物中の化合物(I)の含有量は、本レジスト組成物の固形分の総質量に対して、好ましくは、3〜99質量%であり、より好ましく5〜80質量%であり、さらに好ましく10〜70質量%である。
【0155】
酸発生剤(B)の含有量は、化合物(I)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上35質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上30質量部以下である。
【0156】
本レジスト組成物に樹脂(A)を含有させる場合、その含有割合は、レジスト組成物の固形分の総質量に対して、10質量%以上80質量%以下が好ましい。
また、本レジスト組成物に樹脂(A)を含有させる場合には、酸発生剤(B)の含有量は、化合物(I)と樹脂(A)の総質量100質量部に対して、1質量部以上35質量部以下であると好ましく、3質量部以上30質量部以下であるとさらに好ましい。
【0157】
本レジスト組成物に塩基性化合物(C)を含有させる場合、その含有割合は、本レジスト組成物の固形分の総質量に対して、0.01〜3質量%程度が好ましい。
【0158】
なお、成分(F)を本レジスト組成物に用いる場合には、当該成分(F)の種類に応じて、適切な含有量を調節することもできる。
【0159】
このように、化合物(I)及び酸発生剤(B)、及び、並びに必要に応じて用いられる、樹脂(A)、塩基性化合物(C)、溶剤(D)又は成分(F)の各々を好ましい含有量で混合した後は、孔径0.01〜0.2μm程度のフィルターを用いてろ過などすることにより、本レジスト組成物は調製できる。
【0160】
<レジストパターンの製造方法>
本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法を具体的に示すと、
(1)本レジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を、現像する工程
を含む方法を挙げることができる。以下、ここに示す工程の各々を、「工程(1)」〜「工程(5)」のようにいう。
【0161】
工程(1)における本レジスト組成物の基板上への塗布は、スピンコーターなど、半導体の微細加工のレジスト材料塗布用として広く用いられている塗布装置によって行うことができる。かくして基板上にレジスト組成物からなる塗布膜が形成される。当該塗布装置の条件(塗布条件)を種々調節することで、該塗布膜の膜厚は調整可能であり、適切な予備実験等を行うことにより、所望の膜厚の塗布膜になるように塗布条件を選ぶことができる。本レジスト組成物を塗布する前の基板は、微細加工を実施しようとする種々のものを選ぶことができる。なお、本レジスト組成物を塗布する前に、基板を洗浄したり、反射防止膜を形成したりしてもよい。この反射防止膜の形成には例えば、市販の有機反射防止膜用組成物を用いることができる。
【0162】
工程(2)においては、基板上に塗布された本レジスト組成物、すなわち塗布膜から溶剤〔溶剤(D)〕を除去する。このような溶剤除去は、例えば、ホットプレート等の加熱装置を用いた加熱手段(いわゆるプリベーク)、又は減圧装置を用いた減圧手段により、或いはこれらの手段を組み合わせて、該塗布膜から溶剤を蒸発させることにより行われる。加熱手段や減圧手段の条件は、本レジスト組成物に含まれる溶剤(D)の種類等に応じて選択でき、例えばホットプレートの場合、該ホットプレートの表面温度を50〜200℃程度の範囲にすることが好ましい。また、減圧手段では、適当な減圧機の中に、塗布膜が形成された基板を封入した後、該減圧機の内部圧力を1〜1.0×10Pa程度にすればよい。かくして塗布膜から溶剤を除去することにより、該基板上には組成物層が形成される。
【0163】
工程(3)は該組成物層を露光する工程であり、好ましくは、露光機を用いて該組成物層を露光するものである。この際には、微細加工を実施しようとする所望のパターンが形成されたマスク(フォトマスク)を介して露光が行われる。露光機の露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2エキシマレーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを用いることができる。また、該露光機は液浸露光機であってもよい。また、露光機は、電子線、超紫外光(EUV)を照射するものであってもよい。
上述のとおり、マスクを介して露光することにより、該組成物層には露光された部分(露光部)及び露光されていない部分(未露光部)が生じる。露光部の組成物層では該組成物層に含まれる酸発生剤(B)が露光エネルギーを受けて酸を発生し、さらに発生した酸との作用により、化合物(I)又は樹脂(A)にある酸分解性基が脱保護反応により親水性基を生じ、結果として露光部の組成物層にある上記化合物(I)などはアルカリ水溶液に可溶なものとなる。一方、未露光部では露光エネルギーを受けていないため、上記化合物(I)などはアルカリ水溶液に対して不溶又は難溶のままとなる。かくして、露光部にある組成物層と未露光部にある組成物層とは、アルカリ水溶液に対する溶解性が著しく相違するため、アルカリ水溶液による現像によりレジストパターンを形成することができる。
【0164】
工程(5)は、加熱後の組成物層を現像する工程であり、好ましくは、加熱後の組成物層を現像装置により現像するものである。ここでいう現像とは、加熱後の組成物層をアルカリ水溶液と接触させることにより、露光部の組成物層を該アルカリ水溶液に溶解させて除去することである。未露光部は、上述のとおりアルカリ水溶液に対して不溶又は難溶であるため、基板に残り、当該基板上にレジストパターンが製造される。
前記アルカリ水溶液としては、「アルカリ現像液」と称される本技術分野で公知のものを用いることができる。該アルカリ水溶液としては例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液や(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液などが挙げられる。
【0165】
現像後、好ましくは超純水などでリンス処理を行い、さらに基板及びレジストパターン上に残存している水分を除去することが好ましい。
【0166】
<用途>
本レジスト組成物は、KrFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、ArFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、電子線(EB)照射用のレジスト組成物又はEUV露光用のレジスト組成物などに有用である。特に、電子線又はEUVを露光源とする光リスグラフィーに用いると、極めて良好なラインエッジラフネスのレジストパターンを製造できる。
【実施例】
【0167】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
実施例及び比較例中、含有量及び使用量を表す「%」及び「部」は、特記ないかぎり質量基準である。
以下の実施例において、化合物の構造は、質量分析(LC;Agilent製1100型、MASS;Agilent製LC/MSD型)で確認した。
重量平均分子量は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製HLC−8120GPC型、カラムは”TSKgel Multipore HXL−M”3本、溶媒はテトラヒドロフラン)により求めた値である。
カラム:TSKgel Multipore HXL-M x 3 + guardcolumn(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μl
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0168】
実施例1:式(I−2)の化合物(I)の合成


2−ヒドロキシ−2−メチルアダマンタン30部、クロロホルム210部、1,1’−カルボニルジイミダゾール32部を反応器に仕込み、この混合物を60℃程度まで昇温し、同温度で20時間攪拌した。室温まで冷却した反応溶液に、イオン交換水80部を加え攪拌、静置し、さらに分液して有機層を回収した。回収した有機層を濃縮し、濃縮液にアセトニトリル150部を加え、溶解後、再び、濃縮することで減圧乾燥し、式(I−a)で表される化合物45部(純度98%)を得た。
【0169】


1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン2部、アセトン40部及び式(I−a)で表される化合物16部を反応器に仕込み、さらに、炭酸カリウム0.2部を添加した。その後、60℃まで昇温し、同温度で20時間攪拌した。室温まで冷却した反応溶液に、クロロホルム100部及びイオン交換水30部を加え、攪拌、静置し、分液して有機層を回収した。回収した有機層に、1%シュウ酸水溶液30部を加えて、攪拌、静置し、分液して有機層を回収した。更に回収した有機層にイオン交換水を30部加えて、分液し、有機層を水洗した。水洗後の有機層を濃縮後、アセトニトリル100部を加えて、溶解後、更に濃縮した。濃縮物にメタノール60部を加えて攪拌後、析出した固体を濾過した。次いで、濾別した固体をメタノールで洗浄した。最後に、減圧乾燥して、式(I−2)で表される化合物8.7部を得た。これを化合物(I−2)とする。
MS(ESI(+)Spectrum):M 696.4
【0170】
実施例2:式(I−6)の化合物(I)の合成


2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール2部、アセトン40部及び式(I−a)で表される化合物15.3部を反応器に仕込み、さらに、炭酸カリウム2部を添加した。その後、室温下で20時間攪拌した。反応溶液に、シュウ酸1.85部及びイオン交換水48部を加え、攪拌した。さらに、アセトン及び水の混合溶媒(アセトン:イオン交換水=1:1(重量比))を100部加え、攪拌後、析出した固体を濾過した。次いで、濾別した固体をイオン交換水で洗浄し、減圧乾燥して、式(I−6)で表される化合物12部得た。これを化合物(I−6)とする。
MS(ESI(+)Spectrum):M 904.5
【0171】
樹脂(A)の合成
樹脂(A)の合成に使用した化合物(モノマー)を下記に示す。



以下、これらの化合物(モノマー)をその式符号に応じて、「モノマーA」などという。
【0172】
合成例1〔樹脂A1の合成〕
モノマーB11.18部、p−アセトキシスチレン14.60部、及びモノマーC3.55部に、1,4−ジオキサン28.82部を加えて溶液とし、この溶液を87℃まで昇温した。開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル2.96部を添加し、87℃で6時間保温した。冷却後、反応溶液をメタノール291.41部とイオン交換水124.89部の混合溶媒に注いで、樹脂を沈殿させ、これをろ過した。得られた樹脂及び4−ジメチルアミノピリジン2.93部を、当該樹脂と同量のメタノールに加えて15時間加熱還流した。冷却後、得られた反応溶液に、氷酢酸2.16部を加え中和した後、大量の水に注いで沈殿させた。析出した樹脂をろ別した。ろ過した樹脂をアセトンに溶解させた後、大量の水に注いで沈殿させるという再沈殿操作を3回繰り返して精製し、重量平均分子量が約3.4×10の樹脂27.71部を得た。この樹脂を樹脂A1とする。なお、樹脂A1は以下の構造単位を有するものである。

【0173】
合成例2〔樹脂A2の合成〕
冷却管、攪拌機を備えた四つ口フラスコに、1,4−ジオキサンを13.9部仕込み、85℃まで昇温した。そこへp−(1−エトキシエトキシ)スチレン9.60部、モノマーD4.3部、モノマーA7.00部、モノマーC2.40部及びアゾビスイソブチロニトリル2.0部を1,4−ジオキサン20.9部に溶解した溶液を、1時間かけて滴下した。その後85℃を保ったまま6時間攪拌を継続した。冷却したメタノール211部及び水90部の混合溶液を十分冷却し、ここに反応溶液を注ぐことにより、樹脂を析出させた。得られた樹脂をメチルイソブチルケトンに溶解し、p−トルエンスルホン酸0.7部及び水70部を加え6時間攪拌した。静置・分液して回収された有機層を、4回程度水洗した後、水洗後の有機層をn−ヘプタン300部に注ぎ樹脂を析出させた。析出した樹脂を濾取し減圧乾燥して、重量平均分子量4.3×10の樹脂を20.3部得た。この樹脂を樹脂A2とする。この樹脂A2は、以下の構造単位を有するものである。

【0174】
実施例3〜6、比較例1〜2
(レジスト組成物の調製)
表1に示す各成分を混合して溶解し、さらに後述の溶剤に溶解した後、孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターでろ過して、レジスト組成物を調製した。
【0175】
<酸発生剤(B)>
B1−2:


B1−11:


<樹脂>
A1:樹脂A1
A2:樹脂A2
<塩基性化合物(C):クエンチャー>
塩基性化合物C1:

<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 400.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 100.0部
γ−ブチロラクトン 5.0部
<比較例化合物>
X1:


この化合物は、特許文献1記載の方法に従って、製造した。
【0176】
【表1】

【0177】
(電子線用レジスト組成物としての評価)
シリコンウェハを、ダイレクトホットプレート上にて、ヘキサメチルジシラザンを用いて90℃で60秒処理した。このシリコンウェハに、レジスト組成物を、組成物層の膜厚が0.04μmとなるようにスピンコートした。その後、ダイレクトホットプレート上にて、表1の「PB」欄に示す温度で60秒間プリベークした。組成物層を形成したそれぞれのウェハに、電子線描画機〔(株)日立製作所製の「HL−800D 50keV」を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。
露光後、ホットプレート上にて表1の「PEB」欄に示す温度で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。
シリコン基板上のもので現像後のパターンを走査型電子顕微鏡で観察した。
【0178】
ラインエッジラフネス評価(LER):80nmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量で露光して製造されたレジストパターンの壁面を走査型電子顕微鏡で観察し、ラインエッジラフネスを求めた。その結果を表2に示す。
【0179】
【表2】

【0180】
実施例10
実施例1で調製したレジスト組成物と同じものを用い、EUV用レジスト組成物としての評価を行った。
【0181】
(EUV用レジスト組成物としての評価)
シリコンウェハを、ダイレクトホットプレート上にて、ヘキサメチルジシラザンを用いて90℃で60秒処理した。このシリコンウェハに、実施例1のレジスト組成物を組成物層の膜厚が0.05μmとなるようにスピンコートした。
その後、ダイレクトホットプレート上にて、表1の「PB」欄に示す温度で60秒間プリベークした。組成物層を形成したウェハに、EUV露光機を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。
露光後、ホットプレート上にて表1の「PEB」欄に示す温度で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。
【0182】
ラインエッジラフネス評価(LER):50nmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量で露光したリソグラフィプロセス後のレジストパターンの壁面を走査型電子顕微鏡で観察し、ラインエッジラフネスを求めた。その結果を表3に示す。
【0183】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0184】
化合物(I)を含有する本レジスト組成物を用いれば、優れたラインエッジラフネス(LER)を有するレジストパターンを製造することができる。このような本レジスト組成物を実現できる化合物(I)は、半導体の微細加工などに極めて有用であり、産業上の価値は高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物。


[式(I)中、
Xは、m価の炭素数1〜36の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。
mは、2〜8の整数を表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基及び6〜16の芳香族炭化水素基を表し、R及びRは互いに結合して、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を形成してもよい。該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わってもよく、該脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルコキシ基に置換されてもよい。
mが2以上の場合、複数存在するRは互いの同一又は相異なり、複数存在するRは互いの同一又は相異なり、複数存在するRは互いの同一又は相異なる。]
【請求項2】
分子量が300〜3000の範囲である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の化合物と、酸発生剤とを含有するレジスト組成物。
【請求項4】
アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる樹脂を、さらに含有する請求項3記載のレジスト組成物。
【請求項5】
前記樹脂が、
式(a1−1)で表される構造単位、又は式(a1−2)で表される構造単位を有する樹脂である請求項4記載のレジスト組成物。


[式(a1−1)及び式(a1−2)中、
a1及びLa2はそれぞれ独立に、酸素原子又は−O−(CH2k1−CO−O−で表される基(*は、カルボニル基との結合手である。)を表し、k1は1〜7の整数を表す。
a4及びRa5はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
a6及びRa7はそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表す。
n1は0〜10の整数を表す。
n2は0〜3の整数を表す。]
【請求項6】
溶剤を、さらに含有する請求項3〜5のいずれか記載のレジスト組成物。
【請求項7】
(1)請求項6記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物から溶剤を除去して組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。

【公開番号】特開2013−35764(P2013−35764A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171721(P2011−171721)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】