説明

化合物、並びに、それを用いた電荷輸送性膜、光電変換装置、電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】機械的強度が高く、かつ、電気特性に優れた硬化膜が得られる新規な化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で示される化合物。一般式(I)中、Fは電荷輸送性骨格を示し、Lは−(CH−O−基を含む2価の連結基を示し、mは1以上8以下の整数を示し、nは3以上6以下の整数を示す。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な反応性化合物、並びに、それを用いた電荷輸送性膜、光電変換装置、電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、一般的には、次の如き構成及びプロセスを有するものである。
即ち、電子写真感光体の表面を帯電手段で所定の極性及び電位に帯電させ、帯電後の電子写真感光体の表面を、像露光により選択的に除電することにより静電潜像を形成させた後、現像手段で該静電潜像にトナーを付着させることにより、潜像をトナー像として現像し、トナー像を転写手段で被転写媒体に転写させることにより、画像形成物として排出させるといったものである。
【0003】
電子写真感光体としては、従来からのセレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、硫化カドミウム等無機光導電材料を用いた電子写真感光体(無機感光体)が知られていたが、近年では、安価で製造性及び廃棄性の点で優れた利点を有する有機光導電材料を用いた有機感光体が主流を占めるようになり、電子写真感光体の表面に保護層を設けて強度を向上させることが提案されている。
【0004】
保護層を形成する材料系としては、以下のものが提案されている。
例えば、特許文献1には、導電粉をフェノール樹脂に分散したものが、特許文献2には、有機−無機ハイブリッド材料によるものが、特許文献3には、アルコール可溶性電荷輸送材料とフェノール樹脂によるものが、それぞれ開示されている。
また、特許文献4には、アルキルエーテル化ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂と、電子受容性カルボン酸、或いは、電子受容性ポリカルボン酸無水物の硬化膜が、特許文献5には、ベンゾグアナミン樹脂に、ヨウ素、有機スルホン酸化合物、或いは、塩化第二鉄などをドーピングした硬化膜が、特許文献6には、特定の添加剤と、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シロキサン樹脂、或いはウレタン樹脂との硬化膜が、保護層として開示されている。
【0005】
また、近年ではアクリル系材料による保護層が注目されている。例えば、特許文献7には、光硬化型アクリル系モノマーを含有する液を硬化した膜が、特許文献8には、炭素−炭素二重結合を有するモノマー、炭素−炭素二重結合を有する電荷移動材、及びバインダー樹脂の混合物を、熱或いは光のエネルギーによって前記モノマーの炭素−炭素二重結合と前記電荷移動材の炭素−炭素二重結合とを反応させることにより形成された膜が、特許文献9、10には、バインダー樹脂を硬化させる技術が開示され、特許文献11、12には、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合した化合物からなる膜が、保護層として開示されている。また、特許文献13には、スチリル基変性した正孔輸送性化合物を重合した化合物からなる膜を用いた電子写真感光体が開示されている。
これら連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物は、硬化条件、硬化雰囲気等の影響を強く受けることから、例えば、特許文献14には、真空中、或いは不活性ガス中で放射線照射後に加熱されることによって形成された膜が、特許文献15には、不活性ガス中で加熱硬化された膜がそれぞれ開示されている。
更に、例えば、特許文献8、16には、電荷輸送材料自身をアクリル変性し、架橋可能とすると共に、電荷輸送性を有さない反応性モノマーを添加し、膜強度を向上させることも開示されている。
【0006】
更に、反応物、硬化膜による保護層としては以下のようなものも提案されている。
例えば、特許文献17には、電荷輸送材料自身を3官能以上の多官能に変性し、これを重合した化合物を含有する保護層が開示されている。また、特許文献18,19には、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合物を保護層に使用する技術が開示されており、また、摩擦特性を向上させるために、潤滑剤としてフッ素原子含有化合物を保護層中に含有する技術が開示されている。加えて、特許文献20には、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送物質の濃度を最表面から内部に向かって傾斜を持たせることで、機械特性と電気特性を両立することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3287678号公報
【特許文献2】特開2000−019749号公報
【特許文献3】特開2002−82469号公報
【特許文献4】特開昭62−251757号公報
【特許文献5】特開平7−146564号公報
【特許文献6】特開2006−84711号公報
【特許文献7】特開平5−40360号公報
【特許文献8】特開平5−216249号公報
【特許文献9】特開平5−323630号公報
【特許文献10】特開平11−52603号公報
【特許文献11】特開2000−206715号公報
【特許文献12】特開2001−166509号公報
【特許文献13】特許第2852464号公報
【特許文献14】特開2004−12986号公報
【特許文献15】特開平7−72640号公報
【特許文献16】特開2004−302450号公報
【特許文献17】特開2000−206717号公報
【特許文献18】特開2001−175016号公報
【特許文献19】特開2001−166510号公報
【特許文献20】特開2007−86522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、機械的強度が高く、かつ、電気特性に優れた硬化膜が得られる新規な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段により解決される。
請求項1の発明は、下記一般式(I)で示される化合物。
【化1】



(一般式(I)中、Fは芳香環を有する電荷輸送性骨格を示し、Lは、Fの芳香環に直結した−(CH−O−基を含む2価の連結基を示し、mは1以上8以下の整数を示し、nは3以上6以下の整数を示す。)
請求項2の発明は、下記一般式(II)で示される請求項1に記載の化合物。
【化2】



(一般式(II)中、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、c1乃至c5はそれぞれ0以上2以下の整数を示し、全てのcが同時にゼロになることはない。kは0又は1を示す。Dは下記一般式(III)で示される基であり、一般式(III)中、Lは、Ar乃至Arのアリール基、Arのアリール基又はアリーレン基に直結した−(CH−O−基を含む2価の連結基を示し、nは3以上6以下の整数を示す。)
【化3】



請求項3の発明は、前記一般式(I)において、mが3以上8以下の整数である請求項1に記載の化合物。
請求項4の発明は、前記一般式(II)において、c1乃至c5の合計が3以上8以下の整数である請求項2に記載の化合物。
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の化合物又は該化合物に由来する構造を含む電荷輸送性膜。
請求項6の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物を含有する組成物を硬化させた電荷輸送性膜。
請求項7の発明は、請求項5又は請求項6に記載の電荷輸送性膜を有する光電変換装置。
請求項8の発明は、導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物又は該化合物に由来する構造を有する電子写真感光体。
請求項9の発明は、導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物を含有する組成物の硬化膜からなる請求項8に記載の電子写真感光体。
請求項10の発明は、前記組成物が、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物と反応し、かつ、電荷輸送性を有さないモノマー又はオリゴマーを更に含有する請求項9に記載の電子写真感光体。
請求項11の発明は、前記組成物が、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物と反応しないポリマーを更に含有する請求項9又は請求項10に記載の電子写真感光体。
請求項12の発明は、前記組成物が、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物と反応するポリマーを更に含有する請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
請求項13の発明は、前記組成物が、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物と反応し、かつ、電荷輸送性を有する電荷輸送性化合物を更に含有する請求項9〜請求項12のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
請求項14の発明は、前記硬化膜が、前記組成物を熱、光又は電子線により硬化させたものである請求項9〜請求項13のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
請求項15の発明は、前記最表面層が、粒子を更に含有する請求項8〜請求項14のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
請求項16の発明は、前記最表面層が保護層である請求項8〜請求項15のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
請求項17の発明は、前記導電性基体と前記最表面層との間に前記最表面層に隣接する隣接層を有し、該隣接層が、粘度平均分子量が50000以上の樹脂を含有する請求項8〜請求項16のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
請求項18の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物を含有する組成物を含む塗布液を、被塗布面に塗布して塗膜を形成した後、該塗膜を100℃以上170℃以下の条件で加熱硬化させて最表面層を得る工程を含む電子写真感光体の製造方法。
請求項19の発明は、請求項8〜請求項17のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、画像形成装置に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
請求項20の発明は、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーを含む液体現像剤により現像する現像手段を更に備える請求項19に記載のプロセスカートリッジ。
請求項21の発明は、請求項8〜請求項17のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像手段と、トナーを含む現像剤により前記電子写真感光体に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、前記トナー画像を被転写体に転写する転写手段と、を備える画像形成装置。
請求項22の発明は、前記現像剤が、液体現像剤である請求項21に記載の画像形成装置。
請求項23の発明は、請求項8〜請求項17のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、層状化する液体現像剤により前記電子写真感光体に形成された静電潜像を現像して液体現像剤による像を形成する現像手段と、前記電子写真感光体に形成された液体現像剤による像が転写される中間転写体と、前記電子写真感光体に形成された前記液体現像剤による像を、前記中間転写体に転写する一次転写手段と、前記中間転写体に転写された前記液体現像剤による像を層状化する層状化手段と、前記層状化された液体現像剤による像を、前記中間転写体から被転写体に転写する二次転写手段と、備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、前記一般式(I)で示される化合物を用いない場合に比べ、機械的強度が高く、かつ、電気特性に優れた硬化膜が得られる化合物が提供される。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、前記一般式(II)で示される化合物を用いない場合に比べ、電気特性に優れた硬化膜が得られる化合物が提供される。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、前記一般式(I)におけるmが前記範囲外である場合に比べ、溶解性に優れ、均一な膜を得ることができ、電気特性に優れた硬化膜が得られる化合物が提供される。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、前記一般式(II)におけるc1乃至c5の合計が前記範囲外である場合に比べ、機械的強度が高い硬化膜が得られる化合物が提供される。
【0014】
請求項5、6に係る発明によれば、前記一般式(I)で示される化合物を用いない場合に比べ、機械的強度が高く、かつ、電気特性に優れた電荷輸送性膜が提供される。
【0015】
請求項7に係る発明によれば、前記一般式(I)で示される化合物を用いない場合に比べ、機械的強度が高く、かつ、電気特性に優れた電荷輸送性膜を有する光電変換装置が提供される。
【0016】
請求項8、9に係る発明によれば、前記一般式(I)で示される化合物を用いない場合に比べ、最表面層の摩耗が抑制されるとともに、画像の濃度ムラの発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
【0017】
請求項10に係る発明によれば、前記一般式(I)で示される化合物と反応し、かつ、電荷輸送性を有さないモノマー又はオリゴマーを更に含有しない場合に比べ、機械的強度を高く、表面性状が優れた最表面層を有する電子写真感光体が提供される。
【0018】
請求項11に係る発明によれば、前記組成物が、前記一般式(I)で示される化合物と反応しないポリマーを更に含有しない場合に比べ、ガスバリア性に優れ、画像安定性の高い電子写真感光体が提供される。
【0019】
請求項12に係る発明によれば、前記組成物が、前記一般式(I)で示される化合物と反応するポリマーを更に含有しない場合に比べ、ガスバリア性、画像安定性に優れ、最表面層の機械的強度が調整された電子写真感光体が提供される。
【0020】
請求項13に係る発明によれば、前記組成物が、前記一般式(I)で示される化合物と反応し、かつ、電荷輸送性を有する電荷輸送性化合物を更に含有しない場合に比べ、表面性状に優れた電子写真感光体が提供される。
【0021】
請求項14に係る発明によれば、前記硬化膜が、前記組成物を熱、光又は電子線により硬化させたものでない場合に比べ、電気特性、機械的強度、安定性に優れた電子写真感光体が提供される。
【0022】
請求項15に係る発明によれば、前記最表面層が、粒子を更に含有しない場合に比べ、摩擦抵抗を低下させうる電子写真感光体が提供される。
【0023】
請求項16に係る発明によれば、前記最表面層が保護層でない場合に比べ、電気特性に優れた電子写真感光体が提供される。
【0024】
請求項17に係る発明によれば、前記導電性基体と前記最表面層との間に前記最表面層に隣接する隣接層を有し、該隣接層が、粘度平均分子量が50000以上の樹脂を含有しない場合に比べ、下層と最表面層との密着性に優れた電子写真感光体が提供される。
【0025】
請求項18に係る発明によれば、前記一般式(1)で示される化合物を含有する組成物を含む塗布液を、被塗布面に塗布して塗膜を形成した後、該塗膜を100℃以上170℃以下の条件で加熱硬化させて最表面層を得る工程を含まない場合に比べ、機械的強度が高く、表面性状に優れた最表面層を有し、長期に亘る繰り返し使用によっても電気特性及び画像特性が安定して維持される電子写真感光体の製造方法が提供される。
【0026】
請求項19に係る発明によれば、前記一般式(1)で示される化合物を用いて形成した最表面層を有する電子写真感光体を備えていない場合に比べ、電子写真感光体の最表面層の摩耗が抑制されるとともに、画像の濃度ムラの発生が抑制されるプロセスカートリッジが提供される。
【0027】
請求項20に係る発明によれば、液体現像剤を適用した場合であっても、長期に亘り安定した画像が得られるプロセスカートリッジが提供される。
【0028】
請求項21に係る発明によれば、前記一般式(1)で示される化合物を用いて形成した最表面層を有する電子写真感光体を備えていない場合に比べ、濃度ムラの発生が抑制された画像が得られる画像形成装置が提供される。
【0029】
請求項22に係る発明によれば、液体現像剤を適用した場合であっても、長期に亘り安定した画像が得られる画像形成装置が提供される。
【0030】
請求項23に係る発明によれば、前記一般式(1)で示される化合物を用いて形成した最表面層を有する電子写真感光体を備えていない場合に比べ、層状化する液体現像剤を用いた中間転写方式を採用した場合であっても、長期に亘り安定した画像が得られる画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図2】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図3】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図4】実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図5】他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図6】(A)乃至(C)はそれぞれ画像評価に用いた画像パターンを示す図である。
【図7】化合物(I)-44のIRスペクトルである。
【図8】化合物(I)-52のIRスペクトルである。
【図9】比較化合物EのIRスペクトルである。
【図10】他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図11】図10に示す画像形成装置における現像装置を示す概略構成図である。
【図12】他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図13】図12に示す画像形成装置において、現像装置の記録電極の周囲に形成される液体現像剤のメニスカス及び画像部への液体移行の状態を示す模式図である。
【図14】図10及び図12に示す画像形成装置における他の現像装置を示す概略構成図である。
【図15】化合物(I)-28のIRスペクトルである。
【図16】化合物(I)-61のIRスペクトルである。
【図17】化合物(I)-62のIRスペクトルである。
【図18】化合物(I)-63のIRスペクトルである。
【図19】化合物(I)-64のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付した図面を適宜参照しながら、本発明について説明する。
【0033】
〔反応性化合物〕
本実施形態に係る新規な化合物は、下記一般式(I)で示される化合物である。
【0034】
【化4】



【0035】
上記一般式(I)において、Fは芳香環を有する電荷輸送性骨格を示し、Lは、Fの芳香環に直結した−(CH−O−基を含む2価の連結基を示し、mは1以上8以下の整数を示し、nは3以上6以下の整数を示す。この構造上の条件を満たしていれば如何なるものでもかまわないが、特にmが3以上のものが強度と電気特性に優れる。
以下、一般式(I)、あるいは、後述する一般式(II)で示される化合物を、適宜、特定の電荷輸送材料(a)と称して説明する。
【0036】
一般式(I)で示される構造を有する化合物を用いることで電気特性に優れ、強度が高い膜が得られる。その理由は必ずしも明らかではないが、以下の理由が考えられる。
即ち、かさ高い電荷輸送骨格と重合部位(スチリル基)が構造的に近く、リジッドであると重合部位同士が動きずらくなり、硬化反応による残留歪が残りやすく、電荷輸送骨格が歪むことによりキャリア輸送をになうHOMO(最高被占軌道)のレベルの変化が起こり、結果としてエネルギー分布が広がった状態(エネルギー的ディスオーダー:σが大きい)となりやすい。これに対し、メチレン基、エーテル基を介することで、分子構造に柔軟性が得られ、σが小さいものが得られやすく、さらに、メチレン基、エーテル基は、エステル基、アミド基などに比較し、ダイポールモーメントが小さく、この効果もσを小さくすることに寄与し、電気特性に優れるものと考えられる。また、分子構造に柔軟性が加わることで、反応サイトの動きの自由度が増し、反応率も向上することで強度の高い膜が得られると推測される。
これらのことから、電荷輸送骨格と重合部位との間に柔軟性に富む連結鎖を介在させる構造が望ましいものとなる。
このような望ましい態様の特定の電荷輸送材料(a)は、硬化反応により分子自身の分子量が増大し、重心は移動し難くなると共に、スチリル基の自由度が高いことから、例えば電子写真感光体の最表面層として、特定の電荷輸送材料(a)を用いて得られた最表面層は、電気特性に優れ、且つ、非常に高い強度を有するものとなる。
【0037】
本実施態様において、特定の電荷輸送材料(a)としては、下記一般式(II)で示される化合物であることが、電荷輸送性に優れることから、望ましい。
【0038】
【化5】



【0039】
一般式(II)中、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、c1乃至c5はそれぞれ0以上2以下の整数を示し、全てのcが同時にゼロになることはない。kは0又は1を示す。Dは下記一般式(III)で示される基であり、一般式(III)中、Lは、Ar乃至Arのアリール基、Arのアリール基又はアリーレン基に直結した−(CH−O−基を含む2価の連結基を示し、nは3以上6以下の整数を示す。なお、c1乃至c5の合計が3以上8以下の整数であることが望ましい。
【0040】
【化6】



【0041】
Ar乃至Arとしては、下記式(1)乃至(7)のうちのいずれかであることが望ましい。なお、下記式(1)乃至(7)は、Ar乃至Arの各々に連結され得る「−(D)C1」乃至「−(D)C4」を総括的に示した「−(D)」と共に示す。
【0042】
【化7】



【0043】
上記式(1)乃至(7)中、Rは、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、及び炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R乃至Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、Dは下記一般式(III)で示される基を示し、式(III)中、Lは、Ar乃至Arのアリール基、Arのアリール基又はアリーレン基に直結した−(CH−O−基を含む2価の連結基を示し、nは3以上6以下の整数を示す。
式(3)中、tは1以上3以下の整数を示す。
【0044】
【化8】



【0045】
ここで、式(7)中のArとしては、下記構造式(8)又は(9)で表されるものが望ましい。
【0046】
【化9】



【0047】
上記式(8)及び(9)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、t’はそれぞれ0以上3以下の整数を表す。
【0048】
また、前記式(7)中、Z’は2価の有機連結基を示すが、下記式(10)乃至(17)のうちのいずれかで表されるものが望ましい。また、sはそれぞれ0又は1を表す。
【0049】
【化10】



【0050】
上記式(10)乃至(17)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ独立に1以上10以下の整数を表し、t”はそれぞれ0以上3以下の整数を表す。
【0051】
前記式(16)乃至(17)中のWとしては、下記(18)乃至(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが望ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0052】
【化11】



【0053】
また、一般式(II)中、Arは、kが0の時は置換若しくは未置換のアリール基であり、このアリール基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基と同様のものが挙げられる。また、Arは、kが1の時は置換若しくは未置換のアリーレン基であり、このアリーレン基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基から所定の位置の水素原子を1つ除いたアリーレン基が挙げられる。
【0054】
以下に、電荷輸送性骨格Fの具体例、一般式(III)で示される構造の具体例、及び、一般式(I)で示される化合物の具体例を示す。なお、以下に例示する電荷輸送性骨格に記載されている*部分に一般式(III)の例示構造の*部分が連結していることを意味する。例えば、化合物(I)−1として、電荷輸送性骨格構造:(1)−1、一般式(III)構造:(III)−1と示した場合、以下の構造を示す。
【0055】
【化12】



【0056】
なお、一般式(I)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
【0057】
以下、電荷輸送性骨格Fの具体例を示す。1官能のものとしては以下のものが例示される。
【0058】
【化13】



【0059】
【化14】



【0060】
【化15】



【0061】
【化16】



【0062】
2官能のものとしては以下のものが例示される。
【0063】
【化17】

【0064】
【化18】

【0065】
【化19】

【0066】
【化20】

【0067】
【化21】

【0068】
3官能のものとしては以下のものが例示される。
【0069】
【化22】



【0070】
【化23】



【0071】
【化24】



【0072】
【化25】



【0073】
【化26】



【0074】
4官能以上のものとしては以下のものが例示される。
【0075】
【化27】



【0076】
【化28】



【0077】
【化29】



【0078】
【化30】



【0079】
【化31】



【0080】
【化32】



【0081】
一般式(III)の具体例を以下に示す。
【0082】
【化33】



【0083】
以下、一般式(I)で示される化合物の具体例を以下の表1、表2に示すが、これらに限定されるものではない。
【0084】
【表1】



【0085】
【表2】

【0086】
本実施形態に係る化合物の用途としては、前記一般式(I)で示される化合物又は該化合物に由来する構造を含む電荷輸送性膜が挙げられる。例えば、本実施形態に係る化合物を含有する組成物を硬化させることで電気特性及び強度が高い電荷輸送性膜が得られる。
また、本実施形態では、前記一般式(I)で示される化合物を用いて得られた電荷輸送性膜を備えた光電変換デバイスが提供される。本実施形態に係る化合物を用いて得られた電荷輸送性膜を備えた電子写真感光体を構成する電荷輸送層又は保護層、あるいは、有機電界発光素子の電荷輸送層として有用である。
【0087】
〔電子写真感光体〕
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、特定の電荷輸送材料(a)又は該電荷輸送材料(a)に由来する構造を有する電子写真感光体であり、該最表面層は、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物の硬化膜として形成される。
【0088】
本実施形態に係る電子写真感光体では、上記構成とすることで、最表面層の機械的強度が高く、且つ、長期に亘る繰り返し使用によっても電気特性及び画像特性が安定して得られる。
【0089】
また、特定の電荷輸送材料(a)は、その分子内にスチリル基を有することから、これを用いることで架橋密度の高い硬化膜が得られ、十分な機械的強度を有する最表面層を形成しうる。
更に、特定の電荷輸送材料(a)は、その構造から粘度が高い組成物を得られることから、この組成物を用いた硬化膜を得る際の体積収縮が起こり難く、表面性状に優れた最表面層が得られる。
加えて、特定の電荷輸送材料(a)を用いることで、上述のように架橋密度が高く、十分な機械的強度を有する最表面層を形成しうるため、電荷輸送性を有さない多官能モノマーを必ずしも添加する必要がなくなり、多官能モノマーの添加による電気特性の低下を起こさせることなく、最表面層の厚膜化が図れる。その結果として、この最表面層を有する電子写真用感光体は、寿命が延び、長期間の利用に耐え得るものとなる。
また、特に長期に渡って使用する場合、電子写真感光体の表面はコロナ放電などによる放電生成物と呼ばれるもの、あるいは、トナー、外添剤などの付着により汚染され、画像欠陥を生じる場合が多い。これを回避するためには、表面の汚染層を極わずかに削り取りながら使用することが有効であるが、必要以上に削り取ると寿命が短くなってしまう。従って、感光体表面層の強度を使用する条件に合わせて制御することが理想的である。この目的で、非反応性の電荷輸送材料、官能基数、種類の異なる反応性の電荷輸送材料、反応性/非反応性の樹脂、官能基数、種類の異なる反応性の電荷輸送性を有さないモノマー又はオリゴマーなどを添加し、強度が調整される。
具体的には、以下のような形態の硬化膜が挙げられる
(1)特定の電荷輸送材料(a)と反応し、かつ、電荷輸送性を有さないモノマー又はオリゴマーを更に含有する形態
(2)特定の電荷輸送材料(a)と反応しないポリマーを更に含有する形態
(3)特定の電荷輸送材料(a)と反応するポリマーを更に含有する形態
(4)特定の電荷輸送材料(a)と反応し、かつ、電荷輸送性を有する電荷輸送性化合物を更に含有する形態。
【0090】
本実施形態に係る電子写真感光体は、特定の電荷輸送材料(a)の少なくとも1種を含有する組成物、あるいはその硬化膜からなる最表面層を有するものであるが、当該最表面層は電子写真感光体自体の最上面を形成していればよく、保護層として機能する層、又は、電荷輸送層として機能する層として設けられる。
なお、最表面層が保護層として機能する層である場合、この保護層の下層には、電荷輸送層及び電荷発生層からなる感光層、又は、単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)を有することとなる。
【0091】
最表面層が保護層として機能する層の場合、導電性基体上に、感光層、及び最表面層として保護層を有し、該保護層が特定の電荷輸送材料(a)の少なくとも1種を含有する組成物、あるいはその硬化膜で構成される形態が挙げられる。
一方、最表面層が電荷輸送層として機能する層の場合、導電性基体上に、電荷発生層、及び最表面層として電荷輸送層を有し、該電荷輸送層が特定の電荷輸送材料(a)の少なくとも1種を含有する組成物、あるいはその硬化膜で構成される形態が挙げられる。
【0092】
以下、最表面層が保護層として機能する層の場合の、本実施形態に係る電子写真感光体について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
図1は、実施形態に係る電子写真用感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図2乃至図3はそれぞれ他の実施形態に係る電子写真感光体を示す模式断面図である。
【0093】
図1に示す電子写真感光体7Aは、いわゆる機能分離型感光体(又は積層型感光体)であり、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、電荷輸送層3、及び保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Aにおいては、電荷発生層2及び電荷輸送層3により感光層が構成されている。
【0094】
図2に示す電子写真感光体7Bは、図1に示す電子写真感光体7Aと同様に電荷発生層2と電荷輸送層3とに機能が分離された機能分離型感光体である。また、図3に示す電子写真感光体7Cは、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層))に含有するものである。
【0095】
図2に示す電子写真感光体7Bにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に、電荷輸送層3、電荷発生層2、及び保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Bにおいては、電荷輸送層3及び電荷発生層2により感光層が構成されている。
また、図3に示す電子写真感光体7Cにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に単層型感光層6、保護層5が順次形成された構造を有するものである。
【0096】
そして、上記図1乃至図3に示す電子写真感光体7A乃至7Cにおいて、保護層5が、導電性基体2から最も遠い側に配置される最表面層となっており、当該最表面層が、上記特定の電荷輸送性材料(a)又はそれに由来する構造を含んで構成されている。ここで、「特定の電荷輸送性材料(a)に由来する構造」とは、特定の電荷輸送性材料(a)の重合体、又は、特定の電荷輸送性材料(a)と、電荷輸送性を有する又は電荷輸送性を有さない他の化合物との共重体を意味する。
なお、図1乃至図3に示す電子写真感光体において、下引層1は設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0097】
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体7Aに基づいて、各要素について説明する。
【0098】
<保護層>
まず、電子写真感光体7Aにおける最表面層である保護層5について説明する。
保護層5は、電子写真感光体7Aにおける最表面層であり、特定の電荷輸送材料(a)の少なくとも1種を含有する組成物、あるいはその硬化膜からなる。特定の電荷輸送材料(a)については前述の通りである。
【0099】
一般式(I)で表される化合物は、以下のようにして合成される。
即ち、一般式(I)で表される化合物は、前駆体であるアルコールと、対応するクロロメチルスチレンなどでのエーテル化などにより合成される。
【0100】
本実施形態に係る化合物(I)-44の合成経路を一例として以下に示す。
【0101】
【化34】



【0102】
特定の電荷輸送材料(a)の総含有量は、保護層(最表面層)5を形成する際に用いられる組成物(全固形分量)に対して30質量%以上100質量%以下が望ましく、より望ましくは35質量%以上100質量%以下、更に望ましくは40質量%以上100質量%以下である。
この範囲とすることで、硬化膜(最表面層)の電気特性に優れ、硬化膜の厚膜化が実現される。
【0103】
(その他の電荷輸送材料)
また、保護層(最表面層)5を構成する硬化膜は、前述した特定の電荷輸送材料(a)の他に、反応性基を有さない公知の電荷輸送材料、反応性基の数/種類が異なる複数の電荷輸送材料を、必要に応じて用いた硬化膜であってもよい。ここで、反応性基とは、ビニル基、アリル基、スチリル基、アクリル基、或いは、メタクリル基など、ラジカル重合性の官能基を意味する。
反応性基を有さない公知の電荷輸送材料は、電荷輸送を担わない反応性基を有さないため、例えば、この公知の電荷輸送材料を併用すると、実質的に電荷輸送成分の濃度を高め、硬化膜(最表面層)の電気特性を更に改善しうる。また、反応性基を有さない公知の電荷輸送材料は、硬化膜(最表面層)の強度の調整に寄与しうる。更に、特定の電荷輸送材料(a)は、電荷輸送骨格を有することから、反応性基を持たない公知の電荷輸送材料との相溶性に優れるため、反応性基を持たない従来の電荷輸送材料のドーピングが行われ、より一層の電気特性の向上が図られる。
一方、反応性基の数/種類が異なる複数の電荷輸送材料を併用する場合には、電荷輸送骨格の存在量を低下させることなく、架橋密度が調整されることから、電気特性を維持しつつ、硬化膜(最表面層)の強度の調整が行われる。
以下、特定の電荷輸送材料(a)と併用しうる電荷輸送材料について説明する。
【0104】
反応性基を有さない公知の電荷輸送材料としては、例えば、後述の電荷輸送層3を構成する電荷輸送材料として挙げるものが用いられる。中でも、移動度、相溶性などの点から、トリフェニルアミン骨格を有するものが望ましい。
【0105】
また、反応性基の数/種類が異なる電荷輸送材料としては、電荷輸送材料にビニル基、アリル基、スチリル基、アクリル基、或いは、メタクリル基など、ラジカル重合性の官能基を導入した公知のものが挙げられるが、中でも、移動度、相溶性などの点から、同一分子内にトリフェニルアミン骨格とスチリル基、アクリル基、或いは、メタクリル基を有する化合物が望ましい。
【0106】
以上説明した、その他の電荷輸送材料は、特定の電荷輸送材料(a)に対して0質量%以上70質量%以下で用いられることが望ましく、より望ましくは0質量%以上65質量%以下であり、更に望ましくは0質量%以上60質量%以下である。
【0107】
(触媒)
前述した特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物は、光、電子線、又は熱により重合して硬化する。この重合及び硬化反応には、硬化触媒(重合開始剤)を使用しなくてもよいが、以下に例示するような硬化触媒を用いることで反応が効率的に進行する。
【0108】
光硬化触媒としては、分子内開列型、水素引抜型の硬化触媒などが挙げられる。
分子内開列型の硬化触媒としては、ベンジルケタール系、アルキルフェノン系、アミノアルキルフェノン系、ホスフィンオキサイド系、チタノセン系、及びオキシム系の硬化触媒が挙げられる。
【0109】
具体的には、ベンジルケタール系の硬化触媒としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが挙げられる。
アルキルフェノン系の光硬化触媒としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、アセトフェノン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノンが挙げられる。
【0110】
アミノアルキルフェノン系の硬化触媒としては、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。
【0111】
ホスフィンオキサイド系の硬化触媒としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
チタノセン系としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
【0112】
オキシム系の硬化触媒としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(0−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)などが挙げられる。
【0113】
水素引抜型の硬化触媒としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンジル系、ミヒラーケトン系などが挙げられる。
水素引抜型の硬化触媒として具体的には、ベンゾフェノン系としては、2−ベンゾイル安息香酸、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル 4’−メチルジフェニル スルフィド、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
チオキサントン系としては、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
ベンジル系としては、ベンジル、(±)−カンファーキノン、p−アニシルなどが挙げられる。
【0114】
また、熱硬化に用いられる硬化触媒としては、公知の熱重合開始剤を用いることができ、具体的には、下記に示すような市販の硬化触媒(熱重合開始剤)を用いることが望ましい。
即ち、熱重合開始剤の市販品としては、例えば、V−30、V−40、V−59、V601、V65、V−70、VF−096、Vam−110、Vam−111(和光純薬製)、OTAZO−15、OTAZO−30、AIBN、AMBN、ADVN、ACVA(大塚化学)等のアゾ系開始剤が挙げられる。
また、パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH,パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイル IB、パーロイル 355、パーロイル L、パーロイル SA、ナイパー BW、ナイパー BMT−K40/M、パーロイル IPP、パーロイル NPP、パーロイル TCP、パーロイル OPP、パーロイル SBP、パークミル ND、パーオクタ ND、パーヘキシル ND、パーブチル ND、パーブチル NHP、パーヘキシル PV、パーブチル PV、パーヘキサ 250、パーオクタ O、パーヘキシル O、パーブチル O、パーブチル L、パーブチル 355、パーヘキシル I、パーブチル I、パーブチル E、パーヘキサ 25Z、パーブチル A、パーへヘキシル Z、パーブチル ZT、パーブチル Z(以上、日油化学社製)、
【0115】
カヤケタール AM−C55、トリゴノックス 36−C75、ラウロックス、パーカドックス L−W75、パーカドックス CH−50L、トリゴノックス TMBH、カヤクメン H、カヤブチル H−70、ペルカドックス BC−FF、カヤヘキサ AD、パーカドックス 14、カヤブチル C、カヤブチル D、カヤヘキサ YD−E85、パーカドックス 12−XL25、パーカドックス 12−EB20、トリゴノックス 22−N70、トリゴノックス 22−70E、トリゴノックス D−T50、トリゴノックス 423−C70、カヤエステル CND−C70、カヤエステル CND−W50、トリゴノックス 23−C70、トリゴノックス 23−W50N、トリゴノックス 257−C70、カヤエステル P−70、カヤエステル TMPO−70、トリゴノックス 121、カヤエステル O、カヤエステル HTP−65W、カヤエステル AN、トリゴノックス 42、トリゴノックス F−C50、カヤブチル B、カヤカルボン EH−C70、カヤカルボン EH−W60、カヤカルボン I−20、カヤカルボン BIC−75、トリゴノックス 117、カヤレン 6−70(以上、化薬アクゾ社製)、
【0116】
ルペロックス610、ルペロックス188、ルペロックス844、ルペロックス259、ルペロックス10、ルペロックス701、ルペロックス11、ルペロックス26、ルペロックス80、ルペロックス7、ルペロックス270、ルペロックスP、ルペロックス546、ルペロックス554、ルペロックス575、ルペロックスTANPO、ルペロックス555、ルペロックス570、ルペロックスTAP、ルペロックスTBIC、ルペロックスTBEC、ルペロックスJW、ルペロックスTAIC、ルペロックスTAEC、ルペロックスDC、ルペロックス101、ルペロックスF、ルペロックスDI、ルペロックス130、ルペロックス220、ルペロックス230、ルペロックス233、ルペロックス531(以上、アルケマ吉富社製)などが挙げられる。
【0117】
これら硬化触媒は、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物中の固形分全量に対して、望ましくは0.2質量%以上10質量%以下、より望ましく0.5質量%以上8質量%以下、更に望ましくは0.7質量%以上5質量%以下の範囲で添加される。
【0118】
本実施形態に係る特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物は、電荷輸送性を有さない反応性化合物(b)を含んでいてもよい。特定の電荷輸送材料(a)を用いることで、電気特性と機械的強度が十分に確保された保護層5(最表面層)が得られることから、この電荷輸送性を有さない反応性化合物(b)を併用することで、保護層5(最表面層)の機械的強度を調整してもよい。
ここで、「電荷輸送性を有さない」とは、Time of Flight法によりキャリア輸送が観測されないことを意味する。
かかる反応性化合物としては、1官能若しくは多官能の、重合性モノマー、オリゴマー、及びポリマーが挙げられ、例えば、アクリレート若しくはメタクリレートのモノマー、オリゴマー、及びポリマーが挙げられる。
【0119】
具体的には、1官能のモノマーとしては、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノールアクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート、などが挙げられる。
【0120】
2官能のモノマー、オリゴマー、及びポリマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0121】
3官能のモノマー、オリゴマー、及びポリマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0122】
4官能のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0123】
また、5官能以上のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の他、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、フォスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0124】
上述したモノマー、オリゴマー、及びポリマーは、単独又は2種以上の混合物として使用される。
また、上述したモノマー、オリゴマー、及びポリマーは、特定の電荷輸送材料を含有する組成物中の電荷輸送性を持つ化合物(前述の特定の電荷輸送材料とその他の電荷輸送材料)の全量に対し、50質量%以下、望ましくは40質量%以下、より望ましくは30質量%以下で用いられる。
【0125】
また、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物には、粒子分散性、粘度コントロールの目的で、また、硬化膜(最表面層)の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的で、特定の電荷輸送材料(a)と反応しないポリマー(c)、或いは、反応するポリマー(d)を混合してもよい。
【0126】
特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物の硬化膜からなる保護層5(最表面層)は、電気特性と機械的強度が十分に確保されていることから、バインダー樹脂として各種のポリマーを併用してもよい。これらポリマーを用いることで、組成物の粘度が向上し、表面性状に優れた保護層5(最表面層)が形成されると共に、最表面中のガスの混入を防止するガスバリア性の向上が図られ、また、下層との接着性の向上にも寄与しうる。
【0127】
特定の電荷輸送材料(a)と反応しないポリマー(c)としては、ラジカル重合性の不飽和結合を有さないポリマーであればよく、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂など公知のものが挙げられる。
これらポリマーは、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物中の電荷輸送性を持つ化合物(前述の特定の電荷輸送材料(a)とその他の電荷輸送材料)の全量に対し、50質量%以下、望ましくは40質量%以下、より望ましくは30質量%以下で用いられる。
特定の電荷輸送材料(a)と反応するポリマー(d)としては、反応性基としてラジカル重合性の不飽和結合を有するポリマーであればよく、上述のアクリレート若しくはメタクリレートのポリマーに加え、例えば、特開平5−216249号公報の段落〔0026〕乃至〔0059〕、特開平5−323630号公報の段落〔0027〕乃至〔0029〕、特開平11−52603号公報の段落〔0089〕乃至〔0100〕、特開2000−264961号公報の段落〔0107〕乃至〔0128〕などに開示されたものが挙げられる。
【0128】
また、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物には、更に、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、カップリング剤、ハードコート剤、含フッ素化合物を添加してもよい。これらの添加剤として具体的には、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が用いられる。
また、市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越シリコーン社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等が用いられる。
更に、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の含フッ素化合物を加えてもよい。更に、特開2001−166510号公報などに開示されている反応性の含フッ素化合物などを混合してもよい。
シランカップリング剤は任意の量で使用されるが、含フッ素化合物の量は、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが望ましい。この使用量を超えると、架橋膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
【0129】
また、保護層(最表面層)5には、該保護層の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などや、粒子分散性、粘度コントロールの目的で、樹脂を加えてもよい。
【0130】
保護層(最表面層)5には、該保護層の帯電装置で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、酸化防止剤を添加することが望ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来より強い酸化耐性が要求される。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系又はヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては、保護層形成のための塗布液(組成物)中の全固形分に対して、20質量%以下が望ましく、10質量%以下がより望ましい。
【0131】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」、「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」等が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」が挙げられ、チオエーテル系として「スミライザ−TPS」、「スミライザーTP−D」が挙げられ、ホスファイト系として「マーク2112」、「マークPEP−8」、「マークPEP−24G」、「マークPEP−36」、「マーク329K」、「マークHP−10」等が挙げられる。
【0132】
更に、保護層(最表面層)5には、該保護層の残留電位を下げる目的、又は強度を向上させる目的で、各種粒子を添加してもよい。
粒子の一例として、ケイ素含有粒子が挙げられる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒径1nm以上100nm以下、望ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、アルコール、ケトン、又はエステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用してもよい。
保護層5中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から、保護層5の全固形分全量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
【0133】
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものが使用される。これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は望ましくは1nm以上500nm以下、より望ましくは10nm以上100nm以下である。シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、更に十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状が改善される。すなわち、強固な架橋構造中にバラツキが生じることなくに取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性が維持される。
保護層5中のシリコーン粒子の含有量は、保護層5の全固形分全量を基準として、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より望ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0134】
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示される如く、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al、SnO−Sb、In−SnO、ZnO−TiO、ZnO−TiO、MgO−Al、FeO−TiO、TiO、SnO、In、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。
その他の粒子の添加量は、保護層5の全固形分全量を基準として、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より望ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
【0135】
また、同様な目的で、保護層(最表面層)5には、シリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
【0136】
また、保護層(最表面層)5には、金属、金属酸化物、カーボンブラック等を添加してもよい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層の透明性の点で0.3μm以下、特に0.1μm以下が望ましい。
【0137】
保護層5を形成するために用いる、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物は、保護層形成用塗布液として調製されることが望ましい。
この保護層形成用塗布液は、無溶媒であってもよいし、必要に応じて、トルエン、キシレンなどの芳香族、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのセロソルブ系、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系等の溶媒などの単独又は混合溶媒を用いて調製される。
【0138】
また、前述の成分を反応させて塗布液を得るときには、各成分を単純に混合、溶解させるだけでもよいが、望ましくは室温以上100℃以下、より望ましくは30℃以上80℃以下で、望ましくは10分以上100時間以下、より望ましくは1時間以上50時間以下の条件で加温してもよい。また、この際に超音波を照射することも望ましい。
これにより、塗布液中で恐らく部分的な反応が進行し、塗布液の均一性が高まり、塗膜欠陥のない均一な膜が得られやすくなる。
【0139】
特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物からなる保護層形成用塗布液は、被塗布面を形成する電荷輸送層3の上に、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法により塗布される。
その後、得られた塗膜に対して、光、電子線、又は熱などを付与して、該塗膜を重合、硬化させる。
ここで、光により塗膜を重合、硬化させる際には、水銀灯、メタルハライドなどの公知の光源が用いられる。
また、熱により塗膜を重合、硬化させる際、加熱条件は50℃以上であることが望ましい。この温度以下であると硬化膜の寿命が短くなる可能性がある。特に、加熱温度としては、100℃以上170℃以下が、反応率、強度と製造した感光体の電気特性の点から望ましい。
更に、電子線により塗膜を重合、硬化させる際には、電子線照射装置が用いられる。また、反応を加速させるために、あわせて加熱を行ってもよい。
【0140】
上記のような、重合、硬化反応の際には、光、電子線、又は熱によって発生したラジカルが失活することなく連鎖反応を行えるよう、真空、或いは、不活性ガス雰囲気下など酸素濃度が望ましくは10%以下、より望ましくは5%以下、更に望ましくは2%以下、最も望ましくは500ppm以下の低酸素濃度で行われる。
【0141】
本実施態様では、前述のように、塗膜の硬化方法としては、熱、光、放射線などを付与してラジカル重合を生起させる方法が用いられるが、反応が早く進行しすぎると架橋により塗膜の構造緩和ができ難くなり、膜のムラやシワを発生しやすくなるため、ラジカルの発生が比較的ゆっくりと起こる熱による硬化を用いることが望ましい。特に、特定の電荷輸送材料(a)は、スチリルメチレン基を有しており、このスチリルメチレン基と熱による硬化とを組み合わせることで、塗膜の構造緩和の促進が図られ、表面性状に優れ、均一性の高い保護層5(最表面層)が得られる。
一方、光や電子線にて塗膜を硬化させた場合には、反応速度が速いため、分子運動が短時間で凍結されやすく、官能基が残留しやすい。また、構造緩和が起こる前に架橋反応が生じるため、残留ひずみの多い膜となり、表面の塗膜均一性、及び、内部の組成均一性に不十分な膜となりやすい。
保護層(最表面層)5の膜厚は、1μm以上25μm以下とすることが望ましく、3μm以上20μm以下とすることがさらに望ましい
【0142】
以上、図1に示される電子写真感光体7Aを参照し、機能分離型の感光層の例を説明したが、図3に示される電子写真感光体7Cの単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層)の場合、以下の態様であることが望ましい。
即ち、単層型感光層6中の電荷発生材料の含有量は10質量%以上85質量%以下程度、望ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、電荷輸送材料の含有量は5質量%以上50質量%以下とすることが望ましい。単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層)の形成方法は、電荷発生層2や電荷輸送層3の形成方法と同様である。単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)6の膜厚は5μm以上50μm以下程度が望ましく、10μm以上40μm以下とするのが更に望ましい。
【0143】
また、上述の実施形態では、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物の硬化膜からなる最表面層が保護層5である形態を説明したが、保護層5がない層構成の場合には、その層構成において最表面に位置する電荷輸送層が該最表面層となる。
最表面層が電荷輸送層である場合、この層の厚みは、7μm以上60μm以下が望ましく、8μm以上55μm以下がより望ましい。
【0144】
<導電性基体>
導電性基体4としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、及び金属ベルトが挙げられる。また、導電性基体4としては、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等も挙げられる。
ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0145】
電子写真感光体7Aがレーザープリンターに使用される場合、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、導電性基体4の表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが望ましい。Raが0.04μm未満であると、鏡面に近くなるので干渉防止効果が不十分となる傾向があり、Raが0.5μmを越えると、被膜を形成しても画質が粗くなる傾向がある。なお、非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、導電性基体4表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
【0146】
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、又は回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が望ましい。
【0147】
また、他の粗面化の方法としては、導電性基体4表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も望ましく用いられる。
【0148】
ここで、陽極酸化による粗面化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが望ましい。
【0149】
陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が望ましい。この膜厚が0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向にある。
【0150】
また、導電性基体4には、酸性水溶液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調整する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が望ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が望ましいが、処理温度を高く保つことにより、当該処理温度の範囲よりも低い場合に比べ一層速く、かつ厚い被膜が形成される。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が望ましい。0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0151】
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分間以上60分間以下浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分間以上60分間以下接触させることにより行われる。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が望ましい。これを更にアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の他種に比べ被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0152】
<下引層>
下引層1は、例えば、結着樹脂に無機粒子を含有して構成される。
無機粒子としては、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ω・cm以上1011Ω・cm以下のものが望ましく用いられる。これは、下引層1はリーク耐性、キャリアブロック性獲得のために適切な抵抗を得ることが必要であるためである。なお、上記範囲の下限よりも無機粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られず、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こしてしまう懸念がある。
【0153】
中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の無機粒子(導電性金属酸化物)を用いるのが望ましく、特に、酸化亜鉛は望ましく用いられる。
【0154】
また、無機粒子は表面処理を行ったものでもよく、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものなど2種以上混合して用いてもよい。
無機粒子の体積平均粒径は50nm以上2000nm以下(望ましくは60nm以上1000nm以下)の範囲であることが望ましい。
【0155】
また、無機粒子としては、BET法による比表面積が10m/g以上のものが望ましく用いられる。比表面積値が10m/g未満のものは帯電性低下を招きやすく、良好な電子写真特性を得にくい傾向がある。
【0156】
更に、無機粒子と共にアクセプター性化合物を含有させることで電気特性の長期安定性、キャリアブロック性に優れた下引層が得られる。
アクセプター性化合物としては、所望の特性が得られるものならばいかなるものでも使用されるが、クロールニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが望ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が望ましい。更に、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等、アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が望ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン、及び、それらの誘導体等が挙げられる。
【0157】
これらのアクセプター性化合物の含有量は所望の特性が得られる範囲であれば任意に設定してもよいが、望ましくは、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下の範囲で含有される。更に、電荷蓄積防止と無機粒子凝集の防止との観点から、無機粒子に対して0.05質量%以上10質量%以下で含有されることが望ましい。無機粒子の凝集は、導電路形成にバラツキが生じやすくなり、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招きやすくなるだけでなく、黒点などの画質欠陥も引き起こしやすくなる。
【0158】
アクセプター化合物は、下引層形成用塗布液に添加するだけでもよいし、無機粒子表面にあらかじめ付着させておいてもよい。
無機粒子表面にアクセプター化合物を付与させる方法としては、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0159】
乾式法にて表面処理を施す場合には、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させたアクセプター化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによってバラツキが抑制されて処理される。添加又は噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが望ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、バラツキが生じることなく攪拌される前に溶剤が蒸発し、アクセプター化合物が局部的にかたまってしまいバラツキのない処理ができにくい欠点があり、望ましくない。添加又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。
【0160】
また、湿式法としては、無機粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、アクセプター化合物を添加し攪拌又は分散した後、溶剤除去することでバラツキが生じることなく処理される。溶剤除去方法はろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。湿式法においては表面処理剤を添加する前に無機粒子含有水分が除去され、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いてもよい。
【0161】
また、無機粒子にはアクセプター化合物を付与する前に表面処理を施してもよい。表面処理剤としては、所望の特性が得られるものであればよく、公知の材料から選択される。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤は良好な電子写真特性を与えるため望ましく用いられる。更にアミノ基を有するシランカップリング剤は下引層1に良好なブロッキング性を与えるため望ましく用いられる。
【0162】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、所望の電子写真感光体特性を得られるものであればいかなるものを用いてもよいが、具体的例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0163】
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用してもよい。前記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いてもよいシランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0164】
また、これらの表面処理剤を用いた表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用されるが、乾式法又は湿式法を用いることがよい。また、アクセプター化合物の付与と、カップリング剤等の表面処理剤による表面処理と、を同時に行ってもよい。
【0165】
下引層1中の無機粒子に対するシランカップリング剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であれば任意に設定されるが、分散性向上の観点から、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が望ましい。
【0166】
また、下引層1には結着樹脂が含有されてもよい。
下引層1に含有される結着樹脂としては、良好な膜が形成されるもので、かつ、所望の特性が得られるものであれば公知のいかなるものでも使用されるが、例えば、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等が用いられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が望ましく用いられる。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0167】
下引層形成用塗布液中の、表面にアクセプター化合物を付与させた無機粒子(アクセプター性を付与した金属酸化物)と結着樹脂、又は、無機粒子と結着樹脂との比率は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定される。
【0168】
また、下引層1中には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いてもよい。
添加物としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が用いられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層形成用塗布液に添加してもよい。
【0169】
添加剤としてのシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、ジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0170】
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0171】
アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0172】
これらの化合物は単独に若しくは複数の化合物の混合物又は重縮合物として用いてもよい。
【0173】
下引層形成用塗布液を調製するための溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択される。
溶媒として、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、Iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロールイド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が用いられる。
【0174】
また、これらの溶剤は単独又は2種以上混合して用いてもよい。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かし得る溶剤であれば、いかなるものでも使用される。
【0175】
下引層形成用塗布液を調製する際の無機粒子の分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法が用いられる。
更に、下引層1を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0176】
このようにして得られた下引層形成用塗布液を用い、導電性基体上に下引層1が成膜される。
【0177】
また、下引層1は、ビッカース硬度が35以上とされていることが望ましい。
更に、下引層1は、所望の特性が得られるのであれば、いかなる厚さに設定されるが、厚さ15μm以上が望ましく、更に望ましくは15μm以上50μm以下とされていることが望ましい。
下引層1の厚さが15μm未満であるときには、充分な耐リーク性能が得られない場合があり、また50μm以上であるときには長期使用した場合に残留電位が残りやすくなるため画像濃度異常を招きやすい。
【0178】
また、下引層1の表面粗さ(十点平均粗さ)はモアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整される。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂などの粒子を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が用いられる。
また、表面粗さ調整のために下引層表面を研磨してもよい。
研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が用いられる。
【0179】
下引層1は、導電性基体4上に塗布した前述の下引層形成用塗布液を乾燥させることで得られるが、通常、乾燥は、溶剤を蒸発させて製膜が実現される温度で行われる。
【0180】
<電荷発生層>
電荷発生層2は、電荷発生材料及び結着樹脂を含有する層である。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域のレーザー露光に対応させるためには、電荷発生材料として、金属フタロシアニン顔料、及び無金属フタロシアニン顔料を用いることが望ましく、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより望ましい。また、近紫外域のレーザー露光に対応させるためには、電荷発生材料として、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン、特開2004−78147号公報、特開2005−181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等を用いることがより望ましい。
【0181】
電荷発生層2に使用される結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。望ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが望ましい。ここで、「絶縁性」とは体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1から1:10の範囲内であることが望ましい。
【0182】
電荷発生層2は、上述の電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散した電荷発生層形成用塗布液を用いて形成される。
【0183】
分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロールイド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0184】
また、電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法が用いられる。これらの分散方法により、分散による電荷発生材料の結晶型の変化が防止される。
更にこの分散の際、電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、望ましくは0.3μm以下、更に望ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0185】
また、電荷発生層2を形成する際には、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0186】
このようにして得られる電荷発生層2の膜厚は、望ましくは0.1μm以上5.0μm以下、更に望ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
【0187】
<電荷輸送層>
電荷輸送層3は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して、又は高分子電荷輸送材を含有して形成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロールニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物や、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物が挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0188】
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体が望ましい。
【0189】
【化35】



【0190】
上記構造式(a−1)中、Ar、Ar、Arは各々独立に置換若しくは未置換のアリール基、−C−C(R10)=C(R11)(R12)、又は−C−CH=CH−CH=C(R13)(R14)を示し、R10乃至R14は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。
ここで、上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。
【0191】
【化36】



【0192】
上記構造式(a−2)中、R15及びR15’は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。R16、R16’、R17、及びR17’は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R18)=C(R19)(R20)、又は−CH=CH−CH=C(R21)(R22)を示し、R18乃至R22は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。m及びnは各々独立に0以上2以下の整数を示す。
【0193】
ここで、前記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C−CH=CH−CH=C(R13)(R14)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「−CH=CH−CH=C(R21)(R22)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度、保護層との接着性、前画像の履歴が残ることで生じる残像(以下「ゴースト」と言う場合がある)などの観点で優れ望ましい。
【0194】
電荷輸送層3に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらのうち、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が電荷輸送性、電荷輸送材料との相溶性に優れるため望ましい。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は質量比で10:1から1:5までが望ましい。
【0195】
特に、電荷輸送層3上には、特定の電荷輸送材料(a)を含有する組成物の硬化膜からなる保護層(最表面層)を備えるため、電荷輸送層3に用いる結着樹脂としては、粘度平均分子量40000以上のものが望ましく、50000以上のものがより望ましく、55000以上のものがさらに望ましい。保護層の隣接層となる電荷輸送層に、このような分子量の結着樹脂を用いることで、接着性、保護層(最表面層)形成時の耐クラック性などに優れるため、望ましい。
なお、電荷輸送層3に用いる結着樹脂の粘度平均分子量の上限値としては、塗布膜の均一性(液ダレ)の点から、100000が望ましい。
ここで、本実施形態における結着樹脂の粘度平均分子量は、毛細管粘度計によって測定した値である。
なお、同様の理由から、最表面層が電荷輸送層である場合には、その下層中に含まれる結着樹脂の粘度平均分子量が上記の範囲であることが望ましい。
【0196】
また、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材を用いてもよい。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、他種に比べ高い電荷輸送性を有しており、特に望ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも成膜し得るが、前述の結着樹脂と混合して成膜してもよい。
【0197】
電荷輸送層3は、上記構成材料を含有する電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。
電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状若しくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独又は2種以上混合して用いられる。また、上記各構成材料の分散方法としては、公知の方法が使用される。
【0198】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層2の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0199】
電荷輸送層3の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上30μm以下である。
【0200】
〔画像形成装置/プロセスカートリッジ〕
図4は、第1実施形態に係る画像形成装置100を示す概略構成図である。
図4に示される画像形成装置100は、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置(静電潜像形成手段)9と、転写装置(転写手段)40と、中間転写体50と、を備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7を露光する位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。
【0201】
図4におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置(帯電手段)8、現像装置(現像手段)11、及びクリーニング装置13を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材)を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性或いは絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、或いは、ブレードと併用してもよい。
【0202】
また、図4では、クリーニング装置13として、潤滑材14を感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)を備え、また、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を用いた例を示してあるが、これらは必要に応じて使用される。
【0203】
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のロール帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0204】
なお、図示しないが、画像の安定性を高める目的で、電子写真感光体7の周囲には、電子写真感光体7の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための感光体加熱部材を設けてもよい。
【0205】
露光装置9としては、例えば、感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、所望の像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下近傍に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビーム出力が実現されるタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0206】
現像装置11としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行ってもよい。その現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、上記一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ロール等を用いて感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ロールを用いるものが望ましい。
【0207】
以下、現像装置11に使用されるトナーについて説明する。
かかるトナーとしては、平均形状係数(ML/A×π/4×100、ここでMLはトナー粒子の最大長を表し、Aはトナー粒子の投影面積を表す)が100以上150以下であることが望ましく、100以上140以下であることがより望ましい。更に、トナーとしては、体積平均粒子径が2μm以上12μm以下であることが望ましく、3μm以上12μm以下であることがより望ましく、3μm以上9μm以下であることが更に望ましい。この如く平均形状係数及び体積平均粒子径を満たすトナーを用いることにより、他のトナーと比べ、高い現像、転写性、及び高画質の画像が得られる。
【0208】
トナーは、上記平均形状係数及び体積平均粒子径を満足する範囲のものであれば特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
【0209】
また、上記方法で得られたトナーをコアにして、更に凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法を使用してもよい。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
【0210】
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤及び離型剤からなり、必要であれば、シリカや帯電制御剤を含有して構成される。
【0211】
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0212】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等が挙げられる。更に、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0213】
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示される。
【0214】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示される。
【0215】
また、帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤が用いられ得る。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用することが望ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0216】
現像装置11に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造される。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0217】
現像装置11に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の如く脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の如く植物系ワックス、ミツロウの如く動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の如く鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用される。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用して使用される。但し、体積平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が望ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は望ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0218】
現像装置11に用いるトナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えてもよい。
【0219】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0220】
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも望ましく使用される。
【0221】
有機粒子としては、黒鉛やグラファイトにフッ素が結合したフッ化炭素、ポリ四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、パーフルオロアルコキシ・フッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)等の粒子が用いられる。
【0222】
粒子径としては、体積平均粒子径で望ましくは5nm以上1000nm以下、より望ましくは5nm以上800nm以下、更に望ましくは5nm以上700nm以下のものが使用される。体積平均粒子径が、上記下限値未満であると、研磨能力に欠ける傾向があり、他方、上記上限値を超えると、電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなる傾向がある。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが望ましい。
【0223】
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等のため、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更に付着力低減や帯電制御のため、それより大径の無機酸化物を添加することが望ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものを使用してもよいが、精密な帯電制御を行なうためにはシリカと酸化チタンを併用することが望ましい。また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなる。更に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも放電生成物を除去するために望ましい。
【0224】
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉、又はそれらの表面に樹脂コーティングを施したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、任意に設定される。
【0225】
転写装置40としては、例えば、ベルト、ロール、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0226】
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものが用いられる。
【0227】
画像形成装置100は、上述した各装置の他に、例えば、感光体7に対して光除電を行う光除電装置を備えていてもよい。
【0228】
図5は、他の実施形態に係る画像形成装置120を示す概略断面図である。
図5に示される画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。
画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0229】
タンデム型の画像形成装置に本発明の電子写真感光体を用いた場合、4本の感光体の電気特性が安定することから、より長期に渡ってカラーバランスの優れた画質が得られる。
【0230】
また、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)において、現像装置(現像手段)は、電子写真感光体の移動方向(回転方向)に対して逆方向に移動(回転)する現像剤保持体である現像ロールを有することが望ましい。ここで、現像ロールは表面に現像剤を保持する円筒状の現像スリーブを有しており、また、現像装置はこの現像スリーブに供給する現像剤の量を規制する規制部材を有する構成のものが挙げられる。現像装置の現像ロールを電子写真感光体の回転方向に対して逆方向に移動(回転)させることで、現像ロールと電子写真感光体との間に留まるトナーで電子写真感光体表面が摺擦される。また、電子写真感光体上に残留したトナーをクリーニングする際に、例えば、球形に近い形状のトナーのクリーニング性を高めるためにブレード等の押し当て圧を高めることなどによって、電子写真感光体表面が強く摺擦される。
【0231】
これらの摺擦により、従来知られていた電子写真感光体は強くダメージを受け、磨耗、傷、或いは、トナーのフィルミングなどが発生しやすく、画像劣化を発生していたが、本発明の特定の電荷輸送性材料(特に、反応性官能基の数を増やし、高濃度に含有させた架橋密度の高い硬化膜が得られる材料)の架橋物によって高められ、且つ、電気特性に優れるため厚膜化した電子写真感光体表面を形成することで、長期に渡って高画質を維持し得る。かかる放電生成物の堆積が極めて長期間抑制されると考えられる。
また、本実施形態の画像形成装置においては、放電生成物の堆積をより長期に亘って抑制する観点から、現像スリーブと感光体との間隔を200μm以上600μm以下とすることが望ましく、300μm以上500μm以下とすることがより望ましい。また、同様の観点から、現像スリーブと上述の現像剤量を規制する規制部材である規制ブレードとの間隔を300μm以上1000μm以下とすることが望ましく、400μm以上750μm以下とすることがより望ましい。
更に、放電生成物の堆積をより長期に亘って抑制する観点から、現像ロール表面の移動速度の絶対値を、感光体表面の移動速度の絶対値(プロセススピード)の1.5倍以上2.5倍以下とすることが望ましく、1.7倍以上2.0倍以下とすることがより望ましい。
【0232】
また、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)において、現像装置(現像手段)は、磁性体を有する現像剤保持体を備え、磁性キャリア及びトナーを含む2成分系現像剤で静電潜像を現像するものであることが望ましい。この構成では、一成分系現像剤、特に非磁性一成分現像剤の場合に比べ、カラー画像でよりきれいな画質が得られ、更に高水準で高画質化及び高寿命化が実現される。
【0233】
上記本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)では、乾式の現像剤を適用する画像形成装置について説明したが、液体現像剤を適用した画像形成装置(プロセスカートリッジ)であってもよい。特に、液体現像剤を適用する画像形成装置(プロセスカートリッジ)では、当該液体現像剤の液体成分によって、電子写真感光体の最表面層が膨潤したりして割れ(クラック)や、クリーニングによるクリーニング傷が生じ易いが、上記本実施形態に係る電子写真感光体を適用することで、これらが改善され、結果、長期に亘り安定した画像が得られる。
【0234】
図10は、他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。図11は、図10に示す画像形成装置における画像形成ユニットを示す概略構成図である。
図10に示す画像形成装置130は、主に、ベルト状中間転写体401と、各色画像形成ユニット481,482,483,484と、加熱部450(層状化手段の一例)と、転写定着部460と、から構成されている。
【0235】
画像形成ユニット481は、図11に示すように、電子写真感光体410と、電子写真感光体410を帯電させる帯電装置411と、帯電した電子写真感光体410表面に画像情報に従って静電潜像を形成するために画像露光を行うLEDアレイヘッド412(静電潜像形成手段の一例)と、電子写真感光体410上に形成された静電潜像を液体現像剤を用いて現像する現像装置414と、感光体面をクリーニングするクリーナ415と、除電器416と、ベルト状中間転写体401を介して電子写真感光体410と対向配置され電子写真感光体410上に形成された液体現像剤による現像画像をベルト状中間転写体401に転写する転写バイアスが印加される転写ロール417(一次転写手段の一例)と、から構成されている。
【0236】
現像装置414には、図11に示すように、現像ロール4141と、液切りロール4142と、現像剤クリーニングロール4143と、現像剤クリーニングブレード4144と、現像剤クリーニングブラシ4145と、循環ポンプ(図示せず)と、液体現像剤供給路4146と、現像剤カートリッジ4147と、が配設されている。
【0237】
ここで用いられる液体現像剤としては、ポリエステル、ポリスチレン等の加熱溶融定着型樹脂を主成分とする粒子が分散した液体現像剤や、余剰な分散媒(キャリア液)を除去し液体現像剤中の固形分比率を上げることで層状化(以下、フィルムフォーム化と称する)する液体現像剤が用いられる。具体的なフィルムフォーム化する材料については、USP5,650,253号公報(Column 10 Line 8〜Column 13 Line 14)およびUSP5,698,616号公報にその詳細が示されている。
フィルムフォーム化する現像剤とは、室温より低いガラス転移点(温度)を有する微小物質(微小トナーのようなもの)がキャリア液中に分散されている液体現像剤であり、通常は互いに接触凝集することはないが、キャリア液を除去するとその物質だけになり、膜状に付着されると室温で結合しフィルム化するものをいう。この物質は、エチルアルコールとメチルメタアクリレートとを配合することにより得られ、その配合比によってガラス転移温度が設定されるものである。
【0238】
なお、他の画像形成ユニット482,483,484も同様の構成である。各画像形成ユニットの現像装置には、異なる色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の液体現像剤が入っている。また、各画像形成ユニット481,482,483,484においては、電子写真感光体や現像装置などがカートリッジ化されている。
【0239】
以上の構成において、ベルト状中間転写体401の材料としては、例えば、シリコンラバーコートあるいはフッ素樹脂コートしたPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。
【0240】
電子写真感光体410は、その上方表面でベルト状中間転写体401と接触し、ベルト状中間転写体401と同速移動する。
【0241】
帯電装置411としては、例えば、コロナ帯電器が用いられている。画像形成ユニット481,482,483,484における電子写真感光体410には、同一周長の電子写真感光体410が用いられ、さらに、各転写ロール417の互いの配設間隔は、電子写真感光体410の周長と同じ、またはその周長の整数倍となるよう構成されている。
【0242】
加熱部450は、ベルト状中間転写体401の内面と接触回転するように配設された加熱ロール451と、加熱ロール451と対向しベルト状中間転写体401の外面を囲うように配設された貯留槽452と、貯留槽452からのキャリア液蒸気およびキャリア液を回収するキャリア液回収部453と、から構成されている。キャリア液回収部453には、貯留槽452内キャリア液蒸気を吸引する吸引羽根454と、キャリア液蒸気を液状とする凝縮部455と、凝縮部455からのキャリア液を回収する回収カートリッジ456と、が装着されている。
【0243】
転写定着部460(二次転写手段の一例)は、ベルト状中間転写体401を回転支持する転写支持ロール461と、転写定着部460を通過する記録媒体をベルト状中間転写体401側へ押し付けながら回転する転写定着ロール462と、から構成され、共に内部に発熱体を有している。
【0244】
これ以外には、ベルト状中間転写体401上へのカラー画像形成に先立って、ベルト状中間転写体401上をクリーニングするクリーニングロール470およびクリーニングウェッブ471と、ベルト状中間転写体401の回転駆動を支持する支持ロール441乃至444と、支持シュー445乃至447と、が設けられている。
【0245】
ベルト状中間転写体401は、各色画像形成ユニットの転写ロール417と、加熱ロール451と、転写支持ロール461と、支持ロール441乃至444と、支持シュー445乃至447と、クリーニングロール470およびクリーニングウェッブ471とで中間体ユニット402を構成し、加熱ロール451付近を支点に、一体的に支持ロール441付近が上下するようになっている。
【0246】
以下、図10に示す液体現像剤を用いた画像形成装置の動作を説明する。
まず、画像形成ユニット481では、帯電装置411によりその表面を帯電された電子写真感光体410は、LEDアレイヘッド412によりイエロー画像情報に従った画像露光がなされて静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置414にてイエロー液体現像剤で現像される。
【0247】
ここでの現像は、次のようなステップで行われる。現像剤カートリッジ4147から循環ポンプによりイエロー液体現像剤が液体現像剤供給路4146を通って、現像ロール4141と電子写真感光体410が接近する付近に供給される。電子写真感光体410上の静電潜像と現像ロール4141間で形成される現像電界により、供給された液体現像剤中の電荷を有した着色固形分が電子写真感光体410上の画像分となる静電潜像部側に移行する。
【0248】
続いて、液切りロール4142により、次なる転写工程において必要とされるキャリア液比率となるよう電子写真感光体410上からキャリア液が除去される。こうして現像装置414を通過した電子写真感光体410面にはイエロー液体現像剤によるイエロー画像が形成される。
【0249】
現像装置414内では、現像剤クリーニングロール4143が、現像動作後の現像ロール4141上の液体現像剤とスクイズ動作によりスクイズロール上に付着した液体現像剤の除去を行い、現像剤クリーニングブレード4144および現像剤クリーニングブラシ4145が、現像剤クリーニングロール4143のクリーニングを行って、常に安定した現像動作がなされる。この現像装置の構成および動作などについては、特開平11−249444号公報に詳細に説明されている。
【0250】
なお、現像ロール4141に対しては、一定固形分比率の液体現像剤が供給されるように現像装置414および現像剤カートリッジ4147の少なくとも一方にて液体現像剤中の固形分比率濃度の自動制御が行われている。
【0251】
電子写真感光体410上に形成されたイエロー現像画像は、電子写真感光体410の回転により、その上方表面でベルト状中間転写体401と接触し、ベルト状中間転写体401を介して電子写真感光体410に圧接対向配置され転写バイアスが印加された転写ロール417により、ベルト状中間転写体401に接触静電転写される。
【0252】
接触静電転写を終えた電子写真感光体410は、クリーナ415により転写残の液体現像剤が除去され、除電器416により除電されて、次なる画像形成に使用される。
【0253】
他の画像形成ユニット482,483,484においても同様の動作が行われる。各画像形成ユニットにおける電子写真感光体としては、同一周長の電子写真感光体410が使用されており、かつ、各感光体上に形成された各色現像画像は、感光体の周長と同じ、またはその整数倍間隔で配設された転写ロールによって、ベルト状中間転写体401上に順次静電転写されていくため、ベルト状中間転写体401上での重なり位置を考慮して各電子写真感光体410上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各現像画像は、電子写真感光体410の偏芯があっても、ベルト状中間転写体401上に、順次高精度に位置ズレなく重なり合いながら接触静電転写されて行き、画像形成ユニット484を通過したベルト状中間転写体401上には、各色液体現像剤による現像画像が形成される。
【0254】
ベルト状中間転写体401上に形成された現像画像は、加熱部450にて、ベルト状中間転写体401の裏面から加熱ロール451により加熱され、分散媒であるキャリア液がほとんど蒸発され、フィルムフォーム化された画像となる。これは液体現像剤が、加熱溶融定着型樹脂を主成分とする粒子が分散した液体現像剤では、余剰な分散媒の除去と加熱ロール451による加熱で分散粒子が溶融されフィルムフォーム化するからである。又は、余剰な分散媒(キャリア液)を除去し液体現像剤中の固形分比率を上げることでフィルムフォーム化する液体現像剤であるからである。
【0255】
加熱部450においては、加熱ロール451により加熱蒸発させられ発生した貯留槽452内のキャリア液蒸気がキャリア液回収部453内の吸引羽根454により凝縮部455に導入され液化され、再液化したキャリア液は、回収カートリッジ456へと導かれ回収される。
【0256】
加熱部450を通過しその上にフィルム状(層状)の画像が形成されたベルト状中間転写体401は、転写定着部460において、装置下部の用紙収納部490からタイミングを合わせて搬送されてきた被転写体(例えば、普通紙)に対して、回転支持ロール461と転写定着ロール462により加熱加圧転写され、被転写体上に画像が形成され、排出ロール491,492により装置外へ出力排出される。ここでの転写においては、ベルト状中間転写体401上に形成されたフィルムフォーム化された画像のベルト状中間転写体401に対する付着力は、フィルムフォーム化された画像の被転写体に対する付着力より弱く、この付着力の差により被転写体に転写が行われるもので、転写時には静電気力は付与されない。なお、フィルムフォーム化した画像のフィルムとしての結合力は、被転写体への付着力より大きい。
【0257】
転写定着部460を通過したベルト状中間転写体401は、内部に発熱源を配したクリーニングロール470とクリーニングウェッブ471により、転写残の固形分や固形分に含まれベルト状中間転写体401の機能を阻害する物質が回収除去される。その後、ベルト状中間転写体401は、次なる画像形成に使用される。
【0258】
以上のような画像形成が行われた後、中間体ユニット402は加熱ロール451付近を支点に、一体的に支持ロール441付近が上方に移動し、ベルト状中間転写体401は、各画像形成ユニットの電子写真感光体410から離れる。また、転写定着ロール462も同じく、ベルト状中間転写体401から離される。
【0259】
再び画像形成要求があった場合には、ベルト状中間転写体401が、各画像形成ユニットの電子写真感光体410に接触するように中間体ユニット402が動作し、転写定着ロール462も同じくベルト状中間転写体401と接触するように動作する。転写定着ロール462のこの動作については、記録媒体への画像転写タイミングに合わせて行ってもよい。
【0260】
一方、液体現像剤を用いた画像形成装置は、上記図10に示す画像形成装置130に限られるわけではなく、例えば、図12に示す画像形成装置であってもよい。
図12は、他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0261】
図12に示す画像形成装置140は、図10示す画像形成装置130の構成と同じように、主に、ベルト状中間転写体401と、各色画像形成ユニット485,486,487,488と、加熱部450と、転写定着部460と、から構成される。
【0262】
図12に示す画像形成装置140は、図10示す画像形成装置130に対して、ベルト状中間転写体401を略三角形で走行するようにした点と、各色画像形成ユニット485,486,487,488における現像装置420の構成が異なる。加熱部450および転写定着部460は、図10に示す画像形成装置130と同様である。なお、クリーニングロール470およびクリーニングウェッブ471は図示を省略した。
【0263】
ベルト状中間転写体401の回転走行に伴いベルト状中間転写体401が屈曲動作することになるが、この屈曲動作がベルト状中間転写体401の安定走行と寿命に影響を与えることから、極力屈曲動作が少ない略三角形の走行形態としてある。
【0264】
現像装置420には、現像ロールや液切りロール等はなく、電子写真感光体410上に形成された静電潜像に対して選択的に液体現像剤を飛翔付着する記録ヘッド421が複数列配列されている。
【0265】
また、記録ヘッド421のそれぞれの列には、記録電極422が電子写真感光体410の長手方向に多数個均等に配設されており、電子写真感光体410上に形成された静電潜像電位と記録電極422に印加された飛翔バイアス電位との間で飛翔電界が形成され、記録電極422に供給された液体現像剤中の電荷を有した着色固形分が電子写真感光体410上の画像部となる静電潜像部側に移行し現像するようになっている。
【0266】
記録電極422の周囲には、液体現像剤のメニスカス(液体の粘性、表面張力、接触部材表面の表面エネルギーによって、液体が接触した部材上や部材間で形成される液体保持形態)424が形成される。図13はその状態を示す図である。液体現像剤の液粒423の飛翔先である電子写真感光体410A上には画像部となる静電潜像が形成されている。このとき、画像部410Bは約50〜100Vの静電潜像電位が印加された状態であり、非画像部410Cは約500〜600Vの電位が印加された状態である。ここで、バイアス電圧供給部425を介して記録電極422に約1000Vの飛翔バイアス電位が印加されると、電界集中により記録電極422の先端に供給液体現像剤中の固形分比率よりその比率が高い、即ち、高濃度の液体現像剤が供給され、電子写真感光体410A上の画像部410Cの静電潜像電位と記録電極422の飛翔バイアス電位との電位差(約700〜800Vが飛翔のための電位差のしきい値)により、この高濃度の液体現像剤による液粒23が電子写真感光体410A上の静電潜像部(画像部)に飛翔付着する。また、この現像装置420では、現像装置そのものが現像剤カートリッジの役割を有している。
【0267】
図12に示す画像形成装置140の動作については、ベルト状中間転写体401の走行形態と現像装置420の動作が図10に示す画像形成装置130と異なるのみであり、他の動作は同じであるので、説明は省略する。
【0268】
ここで、液体現像剤を用いた画像形成装置において、現像装置は上記構成に限られず、例えば、図14に示す現像装置であってもよい。
図14は、図10又は図12に示す画像形成装置における他の現像装置を示す概略構成図である。
【0269】
図14示す現像装置4150は、図10又は図12に示す画像形成装置130,140において、電子写真感光体410上に形成された静電潜像を現像ロール4151にて現像するにあたり、現像剤カートリッジ4155から供給される液体現像剤中の固形分比率より高固形分比率を有する液体現像剤層を現像ロール4151上に形成し、この高濃度化された液体現像剤層により現像するものである。
【0270】
現像ロール4151上への固形分比率を高くした液体現像剤層形成は、供給ロール4152と現像ロール4151間に電位差を設けて電界形成することで、現像ロール4151上に現像剤カートリッジ4155からの液体現像剤の固形分比率より高めの固形分比率の液体現像剤層が形成される。現像ロール4151および供給ロール4152に対しては、それぞれのロール表面をクリーニングするクリーニングブレード4153および4154が配設されている。
【0271】
なお、以上説明した実施形態では、電子写真感光体の最表面層に、本実施形態に係る新規な反応性化合物を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、本実施形態に係る化合物を用いて硬化させた硬化膜は、例えば、有機電界発光(エレクトロルミネッセンス)素子、有機太陽電池、メモリー素子、波長変換素子等の光電変換装置に適用される。
【実施例】
【0272】
以下実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0273】
(合成例1:化合物(I)-44の合成)
【0274】
【化37】



【0275】
500mlフラスコに、上記化合物(1)を10g、t−ブトキシカリウム7.2g、テトラヒドロフラン200ml、ニトロベンゼン0.2gを加え、窒素気流下で攪拌しながら、4−クロロメチルスチレン10gをテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、4時間加熱還流した後、冷却し、水中に注ぎ、トルエンで抽出した。トルエン層を十分に水洗した後、濃縮し、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトにより精製して、油状の(I)-44を12g得た。得られた化合物(I)-44のIRスペクトルを図7に示す。
【0276】
(合成例2:化合物(I)-52の合成)
【0277】
【化38】



【0278】
500mlフラスコに、上記化合物(2)を22g、t−ブトキシカリウム33g、テトラヒドロフラン300ml、ニトロベンゼン0.2gを加え、窒素気流下で攪拌しながら、4−クロロメチルスチレン25gをテトラヒドロフラン150mlに溶解した溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、4時間加熱還流した後、冷却し、水中に注ぎ、トルエンで抽出した。トルエン層を十分に水洗した後、濃縮し、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトにより精製して、油状の(I)-52を29g得た。得られた化合物(I)-52のIRスペクトルを図8に示す。
【0279】
(合成例3:化合物(I)-28の合成)
【0280】
【化39】

【0281】
1000mlフラスコに、上記化合物(3)を120g、t−ブトキシカリウム48g、テトラヒドロフラン500ml、ニトロベンゼン0.2gを加え、窒素気流下で攪拌しながら、4−クロロメチルスチレン100gをテトラヒドロフラン150mlに溶解した溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、4時間加熱還流した後、冷却し、水中に注ぎ、トルエンで抽出した。トルエン層を十分に水洗した後、濃縮し、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトにより精製した後、酢酸エチルで再結晶して、無色結晶の(I)-28を45g得た。得られた化合物(I)-28のIRスペクトルを図15に示す。
【0282】
(合成例4:化合物(I)-61の合成)
【0283】
【化40】

【0284】
500mlフラスコに、上記化合物(4)を70g、t−ブトキシカリウム26g、テトラヒドロフラン300ml、ニトロベンゼン0.2gを加え、窒素気流下で攪拌しながら、4−クロロメチルスチレン50gをテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、4時間加熱還流した後、冷却し、水中に注ぎ、トルエンで抽出した。トルエン層を十分に水洗した後、濃縮し、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトにより精製した後、ヘキサンから再結晶して、無色結晶の(I)-61を51g得た。得られた化合物(I)-61のIRスペクトルを図16に示す。
【0285】
(合成例5:化合物(I)-62の合成)
【0286】
【化41】

【0287】
500mlフラスコに、上記化合物(5)を50g、t−ブトキシカリウム19g、テトラヒドロフラン300ml、ニトロベンゼン0.2gを加え、窒素気流下で攪拌しながら、4−クロロメチルスチレン33gをテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、4時間加熱還流した後、冷却し、水中に注ぎ、トルエンで抽出した。トルエン層を十分に水洗した後、濃縮し、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトにより精製した後、ヘキサンから再結晶して、無色結晶の(I)-62を40g得た。得られた化合物(I)-62のIRスペクトルを図17に示す。
【0288】
(合成例6:化合物(I)-63の合成)
【0289】
【化42】

【0290】
500mlフラスコに、上記化合物(6)を50g、t−ブトキシカリウム30g、テトラヒドロフラン250ml、ニトロベンゼン0.2gを加え、窒素気流下で攪拌しながら、4−ヨードメチルスチレン62gをテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、4時間加熱還流した後、冷却し、水中に注ぎ、トルエンで抽出した。トルエン層を十分に水洗した後、濃縮し、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトにより精製して、油状の(I)-63を55g得た。得られた化合物(I)-63のIRスペクトルを図18に示す。
【0291】
(合成例7:化合物(I)-64の合成)
【0292】
【化43】

【0293】
500mlフラスコに、上記化合物(7)を50g、t−ブトキシカリウム20g、テトラヒドロフラン300ml、ニトロベンゼン0.2gを加え、窒素気流下で攪拌しながら、3−クロロメチルスチレンと4−クロロメチルスチレンの約1:1混合物(AGCセイミケミカル社製:CMS−P)45gをテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、4時間加熱還流した後、冷却し、水中に注ぎ、トルエンで抽出した。トルエン層を十分に水洗した後、濃縮し、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトにより精製して、油状の(I)-64を43g得た。得られた化合物(I)−64のIRスペクトルを図19に示す。
【0294】
なお、m−体、あるいは、m−/p−混合体を用いることで結晶化が抑制され、溶剤への溶解性に優れ、均一な膜が得られやすい。
【0295】
(比較合成例−1:特許第2546739号公報記載の化合物:化合物Eの合成)
【0296】
【化44】

【0297】
500mlフラスコに、上記化合物(8)を14g、N,N−ジメチルホルミアミド150ml、水素化ナトリウム(約60%)6.9g、ニトロベンゼン0.2gを加え、窒素気流下で攪拌しながら、4−クロロメチルスチレン18.5gをN,N−ジメチルホルミアミド100mlに溶解した溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間室温で反応した後、水中に注ぎ、トルエンで抽出した。トルエン層を十分に水洗した後、濃縮し、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトにより精製した。さらにトルエン/ヘキサン混合溶剤から再結晶して無色結晶の化合物Eを22g得た。得られた化合物EのIRスペクトルを図9に示す。
【0298】
以下、実施例及び比較例に用いる材料を示す。
<粒子>
・コロイダルシリカ(商品名:PL−1、扶桑化学工業社製)
・酸化チタン(tItone R−1T、堺化学(株)製)
・PTFE(商品名:ルブロンL−2、ダイキン化学工業社製)
【0299】
<ポリマー(c)及び(d)>
・ビスフェノール(Z)ポリカーボネート((PC(Z)、分子量4万、三菱瓦斯化学工業社製):特定の電荷輸送材料(a)と反応しないポリマー(c)
・ポリメチルメタクリレート(PMMA、分子量2万):特定の電荷輸送材料(a)と反応しないポリマー(c)
・特開平5−323630号公報記載の炭素−炭素2重結合を有するポリカーボネート(R−レジン、分子量2万):特定の電荷輸送材料(a)と反応するポリマー(d)
【0300】
<硬化触媒>
・アゾイソブチロニトリル(AIBN、大塚化学製)
・パーブチルC(PBC、日油化学社製)
・OTAZO−15(OTA、大塚化学製)
【0301】
<特定の電荷輸送材料(a)と反応する電荷輸送性を有さないモノマー:硬化剤>
・イソブチルアクリレート(IBA、和光純薬製)
・エトキシ化ビスフェノールジアクリレート(ABE−300、新中村化学社製)
・トリメチロールプロパントリアクリレート(THE330、日本化薬社製)
【0302】
[実施例1]
(下引層の形成)
酸化亜鉛:(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m/g)100質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学社製)1.3質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面処理を施した酸化亜鉛を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛110質量部を500質量部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、プルプリン誘導体1.0質量部を50質量部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてプルプリン誘導体を付与させた酸化亜鉛をろ別し、更に60℃で減圧乾燥を行い、プルプリン誘導体を付与させた酸化亜鉛を得た。
【0303】
このプルプリン誘導体を付与させた酸化亜鉛:60質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製):15質量部と、をメチルエチルケトン85質量部に混合した液38質量部とメチルエチルケトン:25質量部とを混合し、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。
【0304】
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部、及びシリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製):40質量部を添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ18μmの下引層を得た。
【0305】
(電荷発生層の形成)
電荷発生物質としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、及びn−酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn−酢酸ブチル175質量部、及びメチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用塗布液を得た。この電荷発生層形成用塗布液を下引層上に浸漬塗布し、常温(25℃)で乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0306】
(電荷輸送層の形成)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン45質量部、及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5万)55質量部をクロルベンゼン800質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、130℃、45分の乾燥を行って膜厚が15μmの電荷輸送層(電荷輸送層1)を形成した。
【0307】
(保護層の形成)
電荷輸送材料((I)-48)30質量部、コロイダルシリカ(商品名:PL−1、扶桑化学工業社製)0.2質量部、シクロペンタンール15質量部、シクロペンチルメチルエーテル15質量部、並びに3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.1質量部、アゾイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を加えて保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層の上にスプレー塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、酸素濃度200ppm以下の窒素雰囲気下で室温から150℃まで30分かけて加熱し、更に150℃で30分加熱処理して硬化させ、膜厚が5μmの保護層を形成した。保護層の塗布、及び、乾燥、硬化中も電荷輸送層の溶解、及び、保護層形成材料の分離を生じず、均一な保護膜が得られた。
以上のような方法で、電子写真感光体を得た。この感光体を感光体1とする。
【0308】
実施例、比較例で作製した感光体の表面層構成をまとめて表3に示した。
【0309】
【表3】

【0310】
[評価]
−画質評価−
上述のようにして作製した電子写真感光体を富士ゼロックス社製、DocuCentre Color 400CPに装着し、低温低湿(8℃、20%RH)及び高温高湿(28℃、85%RH)において、以下の評価を連続して行なった。
即ち、まず、低温低湿(8℃、20%RH)の環境下にて3000枚の画像形成テストを行ない、その3000枚目の画像の画質、及び、3000枚画像形成テストを実施した後、低温低湿(8℃、20%RH)環境下で、画像形成装置を24時間放置した後の最初の画像の画質について、以下の画質均一性、カブリ、スジ、及び画像流れを評価した。
評価結果を表4に示した。
【0311】
その後、この低温低湿環境下での画像形成テスト及び画質評価に続いて、高温高湿(28℃、85%RH)の環境下にて3000枚の画像形成テストを行い、その3000枚目の画像の画質、及び、3000枚画像形成テストを実施した後、画像形成装置を高温高湿(28℃、85%RH)環境下で24時間放置した後の最初の画像の画質について、以下の画質均一性、カブリ、スジ、及び画像流れを評価した。
評価結果を表5に示した。
なお、画像形成テストには、富士ゼロックス社製P紙(A4サイズ、短手方向送り)を用い、3000枚の画像形成テストには、A4用紙の短手方向をシアン、マゼンタ、イエロー、黒に4分割した画像を用いた。
【0312】
<画質均一性の評価>
画質均一性は、図6(A)に示した文字と黒領域(画像濃度30%)を有するパターンのチャートをプリントし、濃度30%の黒領域部分の濃度ムラを目視にて評価した。
A:濃度ムラは良好又は軽微である。
B:濃度ムラは若干目立つ程度である。
C:濃度ムラがはっきり確認される。
【0313】
<カブリの評価>
カブリは、上述の画質均一性の評価と同じサンプルを用いて白地部のトナー付着程度を目視にて観察し判断した。
A:良好。
B:うっすらとカブリあり。
C:画質上問題となるカブリあり。
【0314】
<スジの評価>
スジは、上述の画質均一性の評価と同じサンプルを用いて目視にて判断した。
A:良好。
B:部分的にスジの発生あり。
C:画質上問題となるスジ発生。
【0315】
<画像流れの評価>
画像流れは、上述の画質均一性評価と同じサンプルを用いて濃度30%の黒領域の万線のボケを目視にて判断した。
A:良好。
B:連続的にプリントテストしている時は問題ないが、1日(24時間)放置後にボケ発生。
C:連続的にプリントテストしている時にもボケ発生。
【0316】
<ゴースト評価>
ゴーストは、図6(A)に示した文字(G)と黒領域(画像濃度50%)を有するパターンのチャートをプリントし、50%の黒領域部分に文字(G)の文字の現れ具合を目視にて評価した。
A:図6(A)のように良好又は軽微である。
B:図6(B)のように若干目立つ程度である
C:図6(C)のようにはっきり確認される。
【0317】
−保護層(最表面層)の評価−
以下のようにして保護層(最表面層)の接着性及び磨耗量について評価した。
【0318】
<保護層の接着性の評価>
保護層の接着性は、前述のような低温低湿、高温高湿で合計約6000枚画像形成テストを実施した後の感光体に、2mm角で5個×5個の切れ目をカッターナイフで付け、3M社製メンディングテープを貼り付け、剥離した時の残存数で評価した。
残存数が多いほど、下層である電荷輸送層との密着性に優れることが分かる。
A:21個以上残存。
B:11個以上20個以下残存。
C:10個以下残存。
評価結果を表4に示す。
【0319】
<最表面層の磨耗量の測定>
最表面層の磨耗量は、低温低湿、高温高湿で合計約6000枚画像形成テストを実施した後の感光体の磨耗量を測定した。
磨耗量が小さいほど、最表面層の機械的強度が高いことが分かる。
評価結果を表4に示す。
【0320】
[実施例2乃至16]
表3に従って、特定の電荷輸送材料(a)、その他の電荷輸送材料、及び各種の添加剤(粒子、ポリマー、硬化剤、酸化防止剤、及び硬化触媒)の種類、更には、これらの配合量を変えた以外は、[実施例1]と同様にして感光体2乃至16を作製し、その評価を行った。なお、保護層の膜厚は、DocuCentre Color 400CPで適正な電位が得られる膜厚に調整した。
評価結果は表4乃至5に示す。
【0321】
[実施例17乃至25]
電荷輸送層の形成に用いた結着樹脂を、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5.5万)に代えた(電荷輸送層2)以外は、[実施例1]乃至[実施例9]とそれぞれ同様にして感光体17乃至25を作製し、[実施例1]と同様にして評価を行った。なお、保護層の膜厚は、DocuCentre Color 400CPで適正な電位が得られる膜厚に調整した。
評価結果は表4乃至5に示す。
【0322】
[実施例26]
電荷輸送層の形成を以下のように変えた以外は、[実施例1]と同様にして感光体26を作製し、その評価を行った。評価結果は表4乃至5に示す。
【0323】
(電荷輸送層の形成)
下記構造の化合物(a)45質量部、及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:4万)55質量部をクロルベンゼン800質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、130℃、45分の乾燥を行って膜厚が17μmの電荷輸送層(電荷輸送層3)を形成した。
【0324】
【化45】



【0325】
[実施例27]
電荷輸送層の形成を以下のように変えた以外は、[実施例1]と同様にして感光体27を作製し、その評価を行った。評価結果は表4に示す。
【0326】
(電荷輸送層の形成)
下記構造の化合物(b)50質量部、及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5万)50質量部をクロルベンゼン800質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、130℃、45分の乾燥を行って膜厚が15μmの電荷輸送層(電荷輸送層4)を形成した。
【0327】
【化46】



【0328】
<実施例28>
電荷輸送層の形成を以下のように変えた以外は、[実施例1]と同様にして感光体28を作製し、その評価を行った。評価結果は表4乃至5に示す。
【0329】
(電荷輸送層の形成)
下記構造の化合物(c)50質量部、及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:8万)50質量部をクロルベンゼン800質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、130℃、45分の乾燥を行って膜厚が15μmの電荷輸送層(電荷輸送層5)を形成した。
【0330】
【化47】



【0331】
[実施例29]
電荷発生層までの形成は[実施例1]と同様に行った。その後、最表面層として、以下のようにして電荷輸送層を形成して感光体29を作製し、[実施例1]と同様の評価を行った。評価結果は表4乃至5に示す。
【0332】
(電荷輸送層の形成)
電荷輸送材料((I)−52)30質量部、前記化合物(b)10質量部、トルエン30質量部、並びに3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.1質量部、OTA0.2質量部を加えて電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この塗布液を電荷発生層の上に浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、室温から150℃まで30分かけて加熱し、更に150℃で30分加熱処理して硬化させ、膜厚20μmの電荷輸送層を形成して実施例29の感光体を作製した。
なお、電荷輸送層が最表面層となる感光体については、表3において電荷輸送層の構成は、電荷輸送層の欄ではなく表面層の欄に記載した。
【0333】
[実施例30]
電荷発生層までの形成は[実施例1]と同様に行った。その後、最表面層として、以下のようにして電荷輸送層を形成して感光体30を作製し、[実施例1]と同様の評価を行った。評価結果は表4乃至5に示す。
【0334】
(電荷輸送層の形成)
特定の電荷輸送材料((I)−52)30質量部、前記化合物(c)10質量部、PC(Z)5質量部、トルエン30質量部、並びに3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.1質量部、アゾイソブチロニトリル0.2質量部を加えて電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この塗布液を電荷発生層の上に浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、酸素濃度200ppm以下の窒素雰囲気下で室温から150℃まで30分かけて加熱し、更に150℃で30分加熱処理して硬化させ、膜厚20μmの電荷輸送層を形成して実施例30の感光体を作製した。
【0335】
[実施例31]
電荷輸送層までの形成は[実施例1]と同様に行った。その後、以下のようにして保護層を形成して感光体31を作製し、[実施例1]と同様の評価を行った。評価結果は表4乃至5に示す。
【0336】
(保護層の形成)
電荷輸送材料((I)−52)30質量部、コロイダルシリカ(商品名:PL−1、扶桑化学工業社製)0.2質量部、トルエン30質量部、並びに3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.1質量部、イルガキュア184(光硬化触媒)0.2質量部を加えて保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層の上にスプレー塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、メタルハライドランプにより、酸素濃度100ppm以下の窒素雰囲気下で照射強度:500mW/cm、照射時間:300秒の条件で光照射を行ない、光重合硬化させ、膜厚4μmの保護層を形成して実施例31の感光体を作製した。
【0337】
[実施例32]
電荷輸送層までの形成は[実施例1]と同様に行った。その後、以下のようにして保護層を形成して感光体32を作製し、[実施例1]と同様の評価を行った。評価結果は表4乃至5に示す。
【0338】
(保護層の形成)
電荷輸送材料((I)−52)30質量部、コロイダルシリカ(商品名:PL−1、扶桑化学工業社製)0.2質量部、トルエン30質量部、並びに3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.1質量部を加えて保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層の上にスプレー塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、酸素濃度20ppm以下の窒素雰囲気下で電子線照射装置を用いて電子線硬化させ、膜厚4μmの保護層を形成して実施例32の感光体を作製した。
【0339】
[実施例33−36]
電荷輸送層までの形成は[実施例1]と同様に行った。その後、以下のようにして保護層を形成して感光体33−36を作製し、[実施例1]と同様の評価を行った。評価結果は表4乃至5に示す。
【0340】
(保護層の形成)
保護層形成用塗布液の組成を表3のように変更した以外は実施例32と同様にして電子線照射装置を用いて電子線硬化させ、膜厚4μmの保護層を形成して実施例33−36の感光体を作製した。
【0341】
[実施例37−40]
電荷輸送層までの形成は[実施例1]と同様に行った。その後、表3の組成で保護層を形成して感光体37−40を作製し、[実施例1]と同様の評価を行った。評価結果は表4乃至5に示す。
【0342】
[比較例1]
保護層に用いる電荷輸送性材料((I)-48)に代えて比較合成例1の化合物(E)を30質量部、シクロペンタンール15質量部及びシクロペンチルメチルエーテル15質量部に代えてテトラヒドロフラン30質量部、を用いた以外は、[実施例1]と同様にして比較感光体1を作製したが、化合物(E)が結晶化し、均一な保護層は得られなかった。なお、化合物(E)はシクロペンタンール15質量部、シクロペンチルメチルエーテル15質量部には溶解できなかった。
【0343】
[比較例2乃至3]
保護層に用いる電荷輸送性材料として化合物(E)に代えて下記化合物(F)30質量部、又は、化合物(G)30質量部、をそれぞれ用いた以外は比較例1と同様に保護層を形成し比較感光体2,3を作製した。両者とも電荷輸送層の一部溶解が見られたが、表面は均一で大きな凹凸は見られなかった。得られた感光体を[実施例1]と同様に評価した。なお、化合物(F)、化合物(G)ともシクロペンタンール15質量部、シクロペンチルメチルエーテル15質量部には溶解性が不十分で乾燥、硬化中に分離を生じたため、テトラヒドロフランを溶剤とした。
評価結果は表4乃至5に示す。
【0344】
【化48】



【0345】
[比較例4乃至6]
電荷輸送材料((I)−52)に代え、化合物(E)、(F)、(G)を用い、溶剤をテトラヒドロフランに代えた以外は実施例29と同様にして比較例7乃至9の比較感光体4乃至6を得た。得られた比較感光体4乃至6を[実施例1]と同様に評価した。評価結果は表4乃至5に示す。
【0346】
[比較例7]
実施例1の電荷輸送層まで形成したものを比較例7の比較感光体7として得た。得られた比較感光体7を[実施例1]と同様に評価した。評価結果は表4乃至5に示す。
【0347】
[比較例8乃至9]
保護層に用いる電荷輸送性材料((I)-48)に代え、下記化合物(H)30質量部、又は、化合物(I)30質量部、をそれぞれ用いた以外は比較例1と同様に保護層を形成し比較感光体8乃至9を作製した。両者とも電荷輸送層の一部溶解が見られたが、表面は均一で大きな凹凸は見られなかった。得られた感光体を[実施例1]と同様に評価した。なお、化合物(F)、化合物(G)ともシクロペンタンール15質量部、シクロペンチルメチルエーテル15質量部には溶解性が不十分であったため、シクロペンタンール15質量部、テトラヒドロフラン15質量部を溶剤とした。
評価結果は表4乃至5に示す。
【0348】
【化49】



【0349】
【表4】

【0350】
【表5】

【0351】
表4及び表5に示すように、実施例では、比較例に比べ、耐摩耗性が高く、画像均一性、カブリ、スジ、及び画像流れのいずれもが良好である。
なお、比較例の電子写真感光体を用いた場合、高温高湿下での画像形成テストにおける評価が、低温低湿下での画像形成テストにおける評価よりも劣る。これは、感光体表面が空気中の水分吸着し、静電潜像が横方向に流れ、乱れるためであり、構成材料によってその影響の受け方が異なるためであると推測される。
【0352】
[実施例1A乃至10A、比較例1A乃至5A]
表3に従って、上記実施例、及び比較例で作製した感光体及び比較感光体を、図10と同様な構成の液体現像剤を適用した画像形成装置(富士ゼロックス社内試作機)に装着し、以下の評価を行った。結果を表6に示す。
【0353】
<画像形成装置>
図10,11の構成の装置を用いた。
【0354】
<液体現像剤>
ホスファチジルセリンを90質量%含有するレシチン:20質量部、アイソパーM:80部を混合して電荷調整剤とした。カーボンブラック:1質量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体:20質量部、アイソパーM:75質量部をサンドミルを用いて10時間分散後、固形分比が3質量部になるようアイソパーMで希釈して、トナー液とした。トナー液:100質量部と電荷調整剤:1質量部を混合して液体現像剤とした。
カーボンブラックの代わりにフタロシアニン顔料(シアントナー)、イエロ−アゾ顔料(イエロートナー)、キナクリドン顔料(マゼンタトナー)を用いてシアン、イエロー、マゼンタの液体現像剤とした。
【0355】
[比較例6A]
実施例1の電荷輸送層まで形成したものを比較感光体7として図10と同様な構成の液体現像剤を適用した画像形成装置(富士ゼロックス社内試作機)に装着し、以下の評価を行った。結果を表6に示す。
【0356】
<感光体表面の割れ(クラック)の評価>
この評価は、以下のように行った。10000プリント後の感光体のクラックの有無を目視にて行った。評価基準は以下の通りである。
A: 感光体表面にクラック発生なし
B: 感光体表面に微細なクラックが見られるが、画質上の欠陥なし
C: 感光体表面のクラックが画像として現れる
D: 感光体表面の劣化が著しく、プリントテスト中にテスト継続ができなくなる
【0357】
<感光体表面のクリーニング傷の評価>
この評価は、プリントテスト後の感光体表面を目視観察し行った。評価基準は以下の通りである。
A: 感光体表面に傷発生なし
B: 感光体表面に微細な傷が見られるが、画質上の欠陥なし
C: 感光体表面の傷が確認され、画像として現れる
D: 感光体表面の劣化が著しく、プリントテスト中にテスト継続ができなくなる
【0358】
<感光体の電気特性の評価>
この評価は、以下のように行った。実施例1と同様なチャートを用いA4用紙(富士ゼロックス社製、P紙)、短手方向送りにて10000プリント実施、その前後の黒の40%濃度画像のプリント濃度の変化をサカタインクスエンジニアリング社製 SpectroEyeLTを用い電気特性の指標として評価を行った。評価基準は以下の通りである。
A: |プリント前後の画像濃度差|<1
B: 1≦|プリント前後の画像濃度差|<1.5
C: 1.5≦|プリント前後の画像濃度差|<2
D: 2≦|プリント前後の画像濃度差|
【0359】
【表6】



【0360】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、液体現像剤を適用した画像形成装置においも、感光体表面の割れ(クラック)、クリーニング傷、電気特性のいずれの結果も良好な結果が得られたことがわかる。
【符号の説明】
【0361】
1 下引層、2 電荷発生層、3 電荷輸送層、4 導電性基体、5 保護層、6 単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)、7A、7B、7C、7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑材、40 転写装置、50 中間転写体、100、120、130、140 画像形成装置、300 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される化合物。
【化1】



(一般式(I)中、Fは電荷輸送性骨格を示し、Lは−(CH−O−基を含む2価の連結基を示し、mは1以上8以下の整数を示し、nは3以上6以下の整数を示す。)
【請求項2】
下記一般式(II)で示される請求項1に記載の化合物。
【化2】




(一般式(II)中、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、c1乃至c5はそれぞれ0以上2以下の整数を示し、全てのcが同時にゼロになることはない。kは0又は1を示す。Dは下記一般式(III)で示される基を示し、一般式(III)中、Lは、Ar乃至Arのアリール基、Arのアリール基又はアリーレン基に直結した−(CH−O−基を含む2価の連結基を示し、nは3以上6以下の整数を示す。)
【化3】



【請求項3】
前記一般式(I)において、mが3以上8以下の整数である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記一般式(II)において、c1乃至c5の合計が3以上8以下の整数である請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物又は該化合物に由来する構造を含む電荷輸送性膜。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物を含有する組成物を硬化させた電荷輸送性膜。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の電荷輸送性膜を有する光電変換装置。
【請求項8】
導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物又は該化合物に由来する構造を有する電子写真感光体。
【請求項9】
導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物を含有する組成物の硬化膜からなる請求項8に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記組成物が、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物と反応し、かつ、電荷輸送性を有さないモノマー又はオリゴマーを更に含有する請求項9に記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記組成物が、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物と反応しないポリマーを更に含有する請求項9又は請求項10に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
前記組成物が、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物と反応するポリマーを更に含有する請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項13】
前記組成物が、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物と反応し、かつ、電荷輸送性を有する電荷輸送性化合物を更に含有する請求項9〜請求項12のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項14】
前記硬化膜が、前記組成物を熱、光又は電子線により硬化させたものである請求項9〜請求項13のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項15】
前記最表面層が、粒子を更に含有する請求項8〜請求項14のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項16】
前記最表面層が保護層である請求項8〜請求項15のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項17】
前記導電性基体と前記最表面層との間に前記最表面層に隣接する隣接層を有し、該隣接層が、粘度平均分子量が50000以上の樹脂を含有する請求項8〜請求項16のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項18】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物を含有する組成物を含む塗布液を、被塗布面に塗布して塗膜を形成した後、該塗膜を100℃以上170℃以下の条件で加熱硬化させて最表面層を得る工程を含む電子写真感光体の製造方法。
【請求項19】
請求項8〜請求項17のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、画像形成装置に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
【請求項20】
前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーを含む液体現像剤により現像する現像手段を更に備える請求項19に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項21】
請求項8〜請求項17のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像手段と、
トナーを含む現像剤により前記電子写真感光体に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、
前記トナー画像を被転写体に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項22】
前記現像剤が、液体現像剤である請求項21に記載の画像形成装置。
【請求項23】
請求項8〜請求項17のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
層状化する液体現像剤により前記電子写真感光体に形成された静電潜像を現像して液体現像剤による像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体に形成された液体現像剤による像が転写される中間転写体と、
前記電子写真感光体に形成された前記液体現像剤による像を、前記中間転写体に転写する一次転写手段と、
前記中間転写体に転写された前記液体現像剤による像を層状化する層状化手段と、
前記層状化された液体現像剤による像を、前記中間転写体から被転写体に転写する二次転写手段と、
備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−60572(P2013−60572A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−70238(P2012−70238)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】