説明

化合物、及び、アミロイドベータの調節におけるその使用

化合物、及び、アミロイドベータの調節におけるその使用。新規な化合物、組成物及びキットを提供する。Aβレベルを調節する方法、及び、Aβレベル異常に関連する疾患の治療方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年5月14日に出願の米国仮特許出願第60/470,884号、及び2003年12月22日に出願の米国仮特許出願第60/532,260号に基づく優先権を主張する。
【0002】
化合物、医薬組成物、及び化合物を使用する方法を提供する。一実施態様において、化合物は神経変性疾患の治療に有用である。
【背景技術】
【0003】
本明細書で提示する情報及び引用する参照文献は、読者による理解を助けるためにのみ示すものであって、上記参照文献や情報のいずれに対しても、本発明に対する先行技術であると自認するものではない。
【0004】
神経変性疾患は、選択的な神経細胞集団の破壊又は劣化によって特徴付けられる障害である。神経変性疾患としては、例えば、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン症候群(PDなど)、ハンチントン病(HD)、プリオン病、脳のアミロイドアンギオパチー(CAA)、及び軽度認知障害(MCI)などが挙げられる。神経変性疾患は、進行性の神経系機能障害を伴い、しばしば、罹患した中枢又は抹消神経系の構造の萎縮を導く。
【0005】
アルツハイマー病(AD)は進行性の神経変性疾患であり、65歳を超える人における認知症の主要因である。この病気の臨床的な兆候は、些細な、短期間の記憶障害から始まる。病気が進行するにつれて、記憶、言語能力及び見当識の障害が悪化し、患者が独立して過ごす能力を妨げる程度にまで至る。その他の兆候(可変のもの)として、筋クローヌス及び発作が挙げられる。最初の記憶損失兆候から死に至るまでの、ADの持続期間は、平均10年である。
【0006】
ADは、脳の特定領域の神経細胞が大量に失われること、及び、AD患者の脳内にタンパク性物質が沈着することによって特徴付けられる。これらの沈着物には、神経原線維濃縮体及びβ−アミロイド斑が含まれる。β−アミロイド斑の主なタンパク質成分はAβである。
【0007】
Aβ集積の増大は、ADの発病に顕著に寄与し、更に、様々な他のアミロイドーシス及び神経障害(例えば、パーキンソン病、ダウン症候群、びまん性レビ小体病、進行性の核上性麻痺、及び遺伝性アミロイド性脳出血−オランダ型(HCHWA−D)、脳のアミロイドアンギオパチー(CAA)や軽度認知障害(MCI)など)に関連すると仮定されている。また、ADにおけるAβの役割を支持する材料を、40歳以降にAD様の兆候及び病態を示すダウン症患者に見出すことができる。このような患者は、ADの他の兆候が始まる前にAD様アミロイド斑を呈し、このことから、増大したアミロイド集積が発症開始現象であると示唆される。ADにおけるAβペプチド集積を示すさらなる証拠が、特定のタイプの遺伝性AD(家族性AD、又はFAD)を説明する細胞により、Aβ形成の増加を生じる様々な変異体を同定することから得られる。FAD患者はADの全症例の10%を構成し、概して、この病気の兆候を、散発性AD患者よりもかなり早く呈する。
【0008】
Aβペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のプロセッシングによって発生する。第21染色体上のAPP遺伝子から発生したmRNAが、選択的スプライシングを経て、約10種類の可能なアイソフォームを与え、これらのうち3種類(APP695、751、及び770アミノ酸アイソフォーム)が脳内で優勢である。APP695は上記3種アイソフォームのうち最も短いものであり、主として神経中で産生される。APP751(Kunitz−プロテアーゼ阻害(KPI)ドメインを含有する)、及びAPP770(KPIドメインとMRC−OX2抗原ドメインとの両方を含有する)は、大部分が非神経性グリア細胞中に見出される。
【0009】
主要なAPPアイソフォームは、細胞外アミノ末端ドメイン(約590〜680アミノ酸)、及び細胞内輸送シグナルを含む細胞質内末端(約55アミノ酸)からなる、1回膜貫通型タンパク質である。APP内で、Aβペプチド配列は、一部は細胞膜に対して細胞外側に位置し、一部は膜貫通領域中まで伸びている。APPアイソフォーム695、751、及び770は、同一のAβドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを共有している。
【0010】
APPは恒常的な分泌経路によって輸送される。このときAPPは、2種類の経路(アミロイド形成性経路及びアミロイド非形成性経路)を介する切断を含む、転写後プロセッシングを受ける。アミロイド非形成性経路において、APPは、α−セクレターゼによりAβドメイン内で切断されて、分泌のための大きい方の可溶性N−末端断片(sAPPα)及びアミロイド非形成性C−末端断片(C83)を遊離する。切断がAβドメイン内で起こるので、アミロイド非形成性経路におけるα−セクレターゼによる切断は、Aβの形成を妨げる。α−セクレターゼ切断により生成した、APPのC−末端断片(C83)は引き続き、γ−セクレターゼにより、予想では膜貫通ドメイン内で切断され、p3と呼ばれるアミロイド非形成性のペプチド断片(22〜24残基)を生じる。
【0011】
アミロイド形成性の経路においては、APPはβ−セクレターゼ(BACE1又はBACE2酵素)により、Aβペプチドのアミノ末端を画定するAβドメイン先頭で切断される。BACE1又はBACE2による切断によって、短い方の可溶性N−末端であるsAPPβ、及びアミロイド形成性のC−末端断片(C99)が生成する。或いは、BACE1は、APPを、Aβドメインの先頭より10アミノ酸後ろで(アミノ酸10とアミノ酸11の間で)切断して、長い方のN−末端可溶性断片、及び、短い方のC−末端断片(C89)を生成させることもできる。更にプレセニリン依存性の酵素であるγ−セクレターゼにより、C89又はC99のいずれが切断されても、様々な長さのAβペプチドが生成する。
【0012】
ADの脳斑に見出されるAβの優勢な形態は、Aβ42及びAβ40という種である。Aβ42は、最初に脳斑に沈着し、in vitroで非常に凝集しやすい種である。従って、アミロイドペプチドのAβ42種は、とりわけ、Aβの凝集で特徴付けられる疾患又は障害を治療する方法の開発における、見込みのあるターゲットであろう。
【0013】
現在、ADに対する治癒的又は有効な治療法はなく、アリセプト(Aricept)、エクセロン(Exelon)、コグネックス(Cognex)及びレミニール(Reminyl)などのわずかな認可薬物も、せいぜい緩和程度である。Aβの蓄積、神経損失と、ADとの相互関係に基づけば、Aβレベルの調節、例えば病原性Aβ種のレベル削減が、斑形成を減らし、神経細胞死を最小限とするために見込みのある手段である。従って、Aβのレベルを調節する化合物が医療上必要とされる。実際、そのような化合物は、ADなどの神経変性疾患を治療するために有効であろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明により、様々な疾患の治療に有用な新規化合物が見出された。新規化合物を含む組成物及びキットもまた提示される。
【0015】
本発明の一態様は、アミロイド−ベータ(Aβ)のレベルを調節する点で活性を有する化合物を提供する。結果として、このような化合物は、Aβレベル異常に関連する疾患及び/又はAβレベルの調節が治療効果を付与する任意の状態を治療するために適用可能である。好ましくは、本発明の化合物はADなどの神経変性疾患疾患の治療に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
別途定義しない限り、本明細書中で使用する技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野における当業者が通常解するのと同じ意味を有する。特許、出願及びその他の刊行物は全て、それらの全体が参照として取り込まれる。
【0017】
I.本発明化合物
本発明は、式(I)の構造を有する新規の化合物、並びに医薬品として許容されるその塩及びそのプロドラッグを提供する。
(A)−L−(B)−L−(C)−L−(D) (I)
[式中、
Aは、
【化1】


(式中、
各Eは独立してN、NR、C、CR、S又はOであり、(但し4個以下のEがヘテロ原子である);
Rは水素原子、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換シクロアルキル、又は置換若しくは非置換アリールであり;
各Rは独立して水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換アミノ、置換若しくは非置換シクロアルキル、又は置換若しくは非置換アリールである)であり;或いは
Aは、
【化2】


(式中、各Mは独立してCR又はNより選択される。但し3個以下のMがNである)
であり;
Bは、
【化3】


(式中、
各Gは独立してCR又はNであり(但し、3個以下のGがNである);
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換アミノより選択される)であるか;或いは、
BはAと共に縮合環系を形成し;
Cは、
【化4】


(式中、
Jは、CR、O、S、N、及びNRからなる群より選択され;
各Kは独立してN、NR、C、又は、CRであり;
各Rは独立して水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、又は置換若しくは非置換アルコキシである。但しCが
【化5】


の場合はRは−NHでない)であり;或いは
Cは、
【化6】


(式中、各Mは独立してCR又はNから選択される。但し3個以下のMがNである)であり;
Dは、
【化7】


(式中、各Eは独立してN、NR、C、CR、S又はOである。但し4個以下のEがヘテロ原子である)であり;或いは
Dは、
【化8】


(式中、
各Mは独立してCR又はNから選択され(但し3個以下のMがNである);
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクリル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、置換若しくは非置換アミノ、又は置換若しくは非置換アルキルアミノより選択される)であり;
は任意選択であって、存在する場合は、共有結合、又は、


(式中、各R’は独立して水素原子、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、又は置換若しくは非置換シクロアルキルであり、zは1〜10である)からなる群より選択されるリンカーであり;
は独立して、共有結合、又は、


(式中、各R’は独立して水素原子、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、又は置換若しくは非置換シクロアルキルであり、zは1〜10である)からなる群より選択されるリンカーであり;
は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NR−、−C(O)−、−(C(R’)−、又は−C(S)−であり;
但し、Aが
【化9】


である場合は、Lは、−C(O)NH−、−CHNH−、−CH−O−、又は−C(O)N(CH)−でなく;
式(I)の化合物は
【化10】


でない]
【0018】
本明細書で用いる、水素原子又はHなどの特定の元素の記載は、その元素の同位体全てを包含すると意図するものである。例えば、ある基が水素原子又はHを含むと規定されている場合、その基は重水素及び/又は三重水素を含んでいてもよい。本明細書で提示される構造式において、窒素原子が二価であるように見える場合、該窒素原子は三価であって第三の置換基が水素原子であるとする。
【0019】
本発明の化合物は不斉中心を有していてもよく、特に指摘されていない限り、立体異性体の混合物として、又は、ジアステレオ異性体若しくは鏡像異性体の各々として存在していてもよく、これら異性体の全てが本発明に包含される。本発明の化合物は、配座異性体の全てを包含する。本発明の化合物は更に、1つ又は複数の互変異性体として存在してよく、例えば単一の互変異性体及び互変異性体の混合物のいずれとして存在してもよい。
【0020】
語句「ハイドロカルビル」は、本明細書で提示される任意の分子に対して直接結合可能な炭素原子を有する、任意の有機基を示す。語句「置換ハイドロカルビル」は、以下で示す定義に従って置換されたハイドロカルビル基を示す。ハイドロカルビル基には、飽和及び不飽和の炭化水素、直鎖及び分枝鎖の脂肪族炭化水素、環状炭化水素、並びに芳香族炭化水素が包含される。
【0021】
語句「置換」は、ある原子又は原子団が、別の置換基で置き換えられていることを示す。語句「置換」には、任意のレベルの置換、例えば、当該置換が化学的に許容される、一、二、三、四、又は五置換が包含される。置換は、化学的に利用可能な任意の位置及び任意の原子で起こってもよく、例えば、炭素原子又はヘテロ原子での置換などがある。例えば、置換化合物は、化合物に含まれる水素又は炭素原子(群)に対する1つ又は複数の結合が、非水素原子及び/又は非炭素原子に対する結合で置換されているものである。
【0022】
語句「アルキル」は、1から20個の炭素原子を含む炭化水素鎖を示す。語句「アルキル」には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの直鎖アルキル基が包含される。この語句には、例示として挙げる以下のもの:


を含むがこれらに限定はされないような、直鎖アルキル基の分枝鎖異性体もまた包含される。かくして、アルキル基には、第一級アルキル基、第二級アルキル基及び第三級アルキル基が包含される。好ましいアルキル基には、1から16個の炭素原子又は1から3個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、及び−CH(CHなど、が包含される。
【0023】
語句「置換アルキル」は、上記した定義に従って置換されているアルキル基を示す。「置換アルキル」の例には、ハロゲン原子(群)、例えばトリフルオロメチルなど;基中に酸素原子(群)を含むもの、例えばヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、及びエステル基など;基中に硫黄原子を含むもの、例えばチオール基、アルキルスルフィド基及びアリールスルフィド基、スルホン基、スルホニル基、並びにスルホキシド基など;基中に窒素原子を含むもの、例えばアミン、アミド、アルキルアミン、ジアルキルアミン、N−アルキルオキシド、イミド、及びエナミンなど;基中にケイ素原子を含むもの、例えばトリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、及びトリアリールシリル基など;及び、その他さまざまなヘテロ原子で、炭素又は水素原子(群)が置換されたものが包含されるが、これらに限定はされない。加えて、置換アルキル基は、1つ又は複数の炭素原子(群)に結合していてよい。
【0024】
語句「アルケニル」は、2から20個の炭素原子を含み、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合(−C=C−)を含む炭化水素基を示す。語句「アルケニル」には、直鎖アルケニル基、並びに、直鎖アルケニル基の分枝鎖異性体が包含される。好ましくは、アルケニル基は1から8個の二重結合を含む。語句「置換アルケニル」は、上記した定義に従って置換されているアルケニル基を示す。
【0025】
語句「アルキニル」は、2から20個の炭素原子を含み、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合(−C≡C−)を含む炭化水素基を示す。語句「アルキニル」には、直鎖アルキニル基、並びに、直鎖アルキニル基の分枝鎖異性体が包含される。好ましくは、アルキニル基は1から8個の三重結合を含む。語句「置換アルキニル」は、上記した定義に従って置換されているアルキニル基を示す。
【0026】
語句「シクロアルキル」は、3から20個の炭素原子を有し、化学的に許容される量の飽和又は不飽和結合を含む脂環式部分を示す。好ましくは、シクロアルキル基は4から7個の炭素原子を含む。シクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが包含されるが、これらに限定はされない。語句「置換シクロアルキル」は、上記した定義に従って置換されているシクロアルキル基を示す。置換シクロアルキル基は、直鎖又は分枝鎖アルキル基で置換された原子を1つ又は複数個有していてよく、縮合環などその他の環で置換されたシクロアルキル基が更に包含されてもよい。縮合環で置換されているシクロアルキル基の例は、アダマンチル、ノルボルニル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、デカリニル、テトラヒドロナフチル、及びインダニル、ボルニル、カンフェニリル、イソカンフェニリル、及びカレニル基を包含するが、これらに限定はされない。代表的な置換シクロアルキル基は、アルキル、アルコキシ、アミノ、チオ又はハロ基で置換されていてよい、一置換体又は複数回置換体(例えば、2,2−、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−二置換シクロヘキシル基や、一、二又は三置換のノルボルニル又はシクロヘプチル基など、但しこれらに限定はされない)であろう。
【0027】
語句「シクロアルキレン」は、3から20個の炭素原子を含む二価のシクロアルキル基を示し、「置換シクロアルキレン」は、上記で挙げたような置換基の1つ又は複数を更に有するシクロアルキレン基を示す。
【0028】
語句「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」、「ヘテロ環の(heterocyclic)」、又は「ヘテロ環(heterocycle)」は、環構成要素の少なくとも1つがヘテロ原子である、非芳香族環状炭化水素系化合物を示す。ヘテロ環基は、3から20個の環構成要素を含有し、その1つ又は複数個がヘテロ原子(例えば、N、O、及びSなど、但しこれらに限定されない)である、単環、二環、及び多環の環化合物を包含する。ヘテロ環基には、任意の飽和レベルのものが包含される。例えば、ヘテロ環基には、窒素原子1から4個を含有する不飽和3員から8員環;窒素原子1から4個を含有する飽和3員から8員環;窒素原子1から4個を含有する縮合不飽和ヘテロ環基;酸素原子1から2個及び窒素原子1から3個を含有する、不飽和3員から8員環;酸素原子1から2個及び窒素原子1から3個を含有する、飽和3員から8員環;酸素原子1から2個及び窒素原子1から3個を含有する、不飽和縮合ヘテロ環基;硫黄原子1から3個及び窒素原子1から3個を含有する、不飽和3員から8員環が包含される。好ましいヘテロシクリル基は、5員又は6員環種を含有する。ヘテロ環基の例は、モルホリン及びピペラジンを包含するが、これらに限定されない。語句「置換ヘテロシクリル」又は「置換へテロ環の」は、上記した定義に従って置換されているヘテロシクリル基を示す。
【0029】
語句「ヘテロサイクレン(heterocyclene)」又は「ヘテロシクリレン(heterocyclylene)」は、3から20個の炭素原子を含む二価ヘテロサイクリック(すなわち環含有)基を示し、「置換ヘテロシクロアルキレン」は、上記で挙げたような置換基の1つ又は複数を更に有するヘテロシクロアルキレン基を示す。
【0030】
語句「アリール」は、5から20個の炭素原子を含み得る、単環芳香族基を示す。アリール基は、フェニル、ビフェニル、アントラセニル、及びナフテニル(naphthenyl)を包含するが、これらに限定はされない。語句「置換アリール基」は、上記した定義に従って置換されているアリール基を示す。例えば、置換アリール基は、1つ又は複数個の炭素原子(群)、酸素原子(群)、窒素原子(群)、及び/又は硫黄原子(群)に結合していてもよく、当該アリール基のうち1つ又は複数個の芳香族炭素が置換及び/又は非置換アルキル、アルケニル、又はアルキニル基に結合しているアリール基をも包含する。これには、1つのアリール基の炭素原子2個が、アルキル、アルケニル、又はアルキニル各基の原子2個に結合して、縮合環系(例えば、ジヒドロナフチル又はテトラヒドロナフチル)を画定するような結合配置が包含される。従って語句「置換アリール」は、トリル、ヒドロキシフェニルなどを包含するが、これらに限定はされない。
【0031】
語句「アリーレン(arylene)」は、3から20個の炭素原子を含む二価アリール基を示し、「置換アリーレン」は、上記で挙げたような置換基の1つ又は複数を更に有するアリーレン基を示す。
【0032】
語句「ヘテロアリール」は、炭素原子と、N、S、及びOなどのヘテロ原子とからなる3員から20員の芳香族環、或いは、(ii)炭素原子とN、S、及びOなどのヘテロ原子とを含有する8員から10員の二環又は多環式の環系であって、二環式系の環のうち少なくとも1つが芳香族環であるもの、を示す。ヘテロアリール環は、どのヘテロ原子や炭素原子に結合していてもよい。代表的なヘテロアリール化合物には、例えば、イミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、チオフェニル、チアゾリル、フラニル、ピリドフラニル、ピリミドフラニル、ピリドチエニル、ピリダゾチエニル、ピリドオキサゾリル、ピリダゾオキサゾリル、ピリミドオキサゾリル、ピリドチアゾリル、ピリダゾチアゾリル、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ジヒドロピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル(例えば、4H−1,2,4−トリアゾリル、1H−1,2,3−トリアゾリル、及び2H−1,2,3−トリアゾリル)、テトラゾリル(例えば、1H−テトラゾリル及び2H テトラゾリル)、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル(例えば、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、及び1,2,5−オキサジアゾリル)、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンズオキサジニル(例えば、2H−1,4−ベンズオキサジニル)、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル(例えば、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、及び1,2,5−チアジアゾリル)が包含される。語句「置換ヘテロアリール」は、上記した定義に従って置換されているヘテロアリール基を示す。
【0033】
語句「ヘテロアリーレン」は、1つ又は複数のヘテロ原子(例えば、N、O、Sなど)を芳香族環の一部として含有し、典型的には3から20個までの範囲の炭素原子を有する、二価アリール基を示す。「置換ヘテロアリーレン」は、上記で挙げたような置換基の1つ又は複数を更に有するヘテロアリーレン基を示す。
【0034】
語句「アルコキシ」は、酸素を含有する上記定義のアルキル又はシクロアルキル基を示す。
【0035】
語句「アルキルアミド」は、−C(O)NR(式中、Rは独立して、水素原子、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールその他である)を含む、上記定義のアルキル基を示す。更に、アルキルアミドには、RがNと共に環状構造を形成している実施形態も包含される。
【0036】
語句「アミノ」は、−NR(式中、Rは独立して、水素原子、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールその他である)を示す。更に、アミノには、RがNと共に環状構造を形成している実施形態も包含される。
【0037】
語句「アルキルアミノ」は、上記定義のアミノ基を含む、上記定義のアルキル基を示す。
【0038】
語句「ハロゲン」は、F、Cl、Br、又はIを示す。
【0039】
語句「リンカー」は、炭化水素基、置換炭化水素基、ヘテロ原子含有置換炭化水素基、又は置換へテロ原子含有の炭化水素基の2種以上の基を連結(join)、接着(attach)、又は結合(connect)するために使用することができる、任意の化学成分を示す。代表的なリンカーには、


(式中、各R’は独立して水素原子、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、又は置換若しくは非置換シクロアルキルであり、zは1〜10である)
が包含される。ここで好ましい実施形態には、Lが−NH−である式(I)の化合物が包含される。
【0040】
ここで提示する実施形態には、AがBと共に、又はBがCと共に、縮合環系を形成している式(I)の化合物が包含される。例となる縮合系には、
【化11】


が包含される。
【0041】
語句「縮合環系」は、互いに縮合している二環又は三環、例えば二環式又は三環式環系を示す。代表的な縮合環系には、例えば、ナフチル、1−カルボリニルなど;並びに、置換環式系、例えばビフェニル、フェニルピリジル、ジフェニルピペラジニルなどが包含される。
【0042】
ここで好ましい実施形態には、Dが
【化12】


であり、dは0〜5である、式(I)の化合物が包含される。存在する場合、好ましい実施形態の各Rは、独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換C〜Cアルキル、置換若しくは非置換C〜Cアルコキシ、置換若しくは非置換の5員から6員ヘテロアリール、又はN(R”)(各R”は独立して、置換若しくは非置換のC〜Cアルキル又はC〜C10シクロアルキルである)から選択される。Dの実施形態には更に、DがRと共に縮合環系を形成する化合物も包含される。更に好ましい実施形態のDは、
【化13】


から選択される。
【0043】
ここで好ましい実施形態には、Cが
【化14】


である、式(I)の化合物が包含される。例えば、Cの実施形態は、
【化15】


から選択することができる。更に好ましい実施形態には、Cが
【化16】


である、式(I)の化合物が包含される。
【0044】
ここで好ましい実施形態には、Bが
【化17】


であり、bは0〜2である、式(I)の化合物が包含される。例えば、Bの実施形態は、
【化18】


から選択することができる。更に好ましい実施形態には、Bが
【化19】


(式中、各Rが独立して、ハロゲン又は置換若しくは非置換C〜Cアルキルから選択される)
から選択される、式(I)の化合物が包含される。
【0045】
ここで好ましい実施形態には、Aが
【化20】


(式中、FはCH又はNである)
である、式(I)の化合物が包含される。更に好ましいAの実施形態には、Rがハロゲン又は置換若しくは非置換C〜Cアルキルである化合物が包含される。
【0046】
ここで提示する好ましい実施形態には、式(II):
【化21】


の構造を有する化合物が包含される。
【0047】
別の好ましい実施形態には、式(III):
【化22】


の構造を有する化合物が包含される。
【0048】
さらなる好ましい実施形態には、式(IV):
【化23】


の構造を有する化合物が包含される。
【0049】
更に一層好ましい実施形態には、式(V):
【化24】


の構造を有する化合物が包含される。
【0050】
特に好ましい実施形態には、式(VI):
【化25】


の構造を有する化合物が包含される。
【0051】
提示する実施形態には、式(I)の化合物と医薬品として許容される担体とを含む組成物、並びに式(I)の化合物と使用上の手引きとを含むキット、が包含される。
【0052】
II.化合物の調製
下記に示すのは、本発明の化合物を調製するための例示的、一般的なスキームである。合成手法のさらなる詳細については、本明細書の実施例において示す。本明細書の化合物は、当業者に周知の手順によって容易に調製可能であるから、本明細書の化合物を調製するために、以下に示す合成スキームの代わりに又はこれらに加えて、様々な手法を採用して構わない。
【0053】
適当な出発材料(その選定は当業者にとって明白である)を用い、本明細書で示される手順を定法通り改変することで、現時点での開示範囲内の、誘導体、及び化学的に同様の化合物を調製することができる。
【0054】
A.一般的な縮合スキーム
アミノチアゾール部分又はアミノオキサゾール部分を含む、本明細書の化合物(3)は、α−ハロゲン化ケトン誘導体(1)を、適当なチオ尿素又は尿素化合物(2)と連結することによって調製することができる。例えば、2−アミノチアゾール化合物を調製する汎用スキームを、以下のスキーム1に図示する。本発明化合物を調製するために、例えば環A、B、及びDを変えてスキーム1を調整することができる。
【化26】

【0055】
或いは、NH−C(=S)−NHなどの単純なチオ尿素類を用い、α−ブロモケトン誘導体を変えて、縮合反応を実施してもよい。スキーム2の経路で例示されるように、得られるアミン(4)を、カップリング剤の存在下で、環Dを含むカルボン酸誘導体(5)と共役させて、アミドで架橋された化合物(6)を作製することができる。
【化27】

【0056】
B.α−ブロモケトン誘導体の調製
スキーム1で採用するのに好ましいハロゲン化ケトン誘導体としては、α−ブロモケトン誘導体が挙げられる。以下のスキーム3に示されるように、適当なアルキルケトンを臭素化した結果、α−ブロモケトン誘導体が生成する。
【化28】

【0057】
かくして、スキーム3において環A及び環B部分を変えることで、多数のα−ブロモケトン誘導体を調製することが可能である。例えば、環Aがイミダゾール誘導体であり、環Bがフェニル誘導体であるようなα−ブロモケトン誘導体(1a)は、スキーム4によって調製することができる。更に、スキーム4を採用して、例えば、環Aがトリアゾール誘導体又はチアゾール誘導体であるα−ブロモケトン誘導体を調製することも可能である。
【化29】

【0058】
環Aがピペラジンなど非芳香族の誘導体であり、環Bがフェニル誘導体であるα−ブロモケトン誘導体は、対応するケトンの臭素化によって容易に調製することができる。
【0059】
C.チオ尿素誘導体の調製
チオ尿素又は尿素誘導体(2)は、スキーム1で図示した一般的な縮合反応において用いられ、スキーム5によって調製することができる。一般的に尿素誘導体は、アニリン誘導体などの適当なアミンを、適切なイソチオシアネート化合物に付加することによって調製可能である。
【化30】

【0060】
チオ尿素誘導体7又は8は、α−ブロモケトン誘導体との縮合に適する。更に、7及び8に対応する各尿素誘導体もまた、本明細書に示される一般的な縮合において好適に採用される。
【0061】
D.置換アミノチアゾールを調製するための代替可能な合成経路
上記スキーム1及びスキーム2で図示した一般的な縮合経路に加えて、下記スキーム6に示す改変スズキ(Suzuki)カップリング反応を用いて、様々な置換チアゾール及びピリジン誘導体を調製することもできる。
【化31】

【0062】
アミノチアゾール誘導体は、下記スキーム7に示すように、スキーム6を改変して調製することができる。スキーム7における結合生成条件の全てはスキーム6におけるそれと同じであることに注意されたい。
【化32】

【0063】
III.Aβの調節方法、及びAβ関連疾患の治療方法
本発明の一態様は、Aβレベルを調節する方法、及びAβレベル異常に関連する疾患の治療方法であって、式(VII):
(A−LA10−1−(B)−LB1−(C)−LC1−(D) (VII)
[式中、
は任意選択であって、存在する場合は、5員又は6員、置換又は非置換の、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンであり;
は、5員又は6員、置換又は非置換の、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンであり;或いは、BがAと共に縮合環系を形成し;
は、5員又は6員、置換又は非置換のアリーレン又はヘテロアリーレンであり;
は、5員又は6員、置換又は非置換のアリール、ヘテロアリール、アリーレン、又はヘテロアリーレンであり;且つ、
A1は任意選択であって、存在する場合は共有結合又はリンカーであり;
B1及びLC1は各々独立して共有結合又はリンカーである]
に対応する構造を有する化合物、並びに医薬品として許容されるその塩及びそのプロドラッグを使用し、
式(VII)の化合物がAβレベルを調節する、前記方法である。
【0064】
本明細書における好ましい方法には、
が任意選択であり、存在する場合は
【化33】


(式中、各Eは独立してN、NR、C、CR、S又はOであり(但し4個以下のEがヘテロ原子である);
Rは水素原子、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換シクロアルキル、又は置換若しくは非置換アリールであり;
各Rは水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換アミノ、置換若しくは非置換シクロアルキル、又は置換若しくは非置換アリールである)であるか;
或いはAが、存在する場合、
【化34】


(式中、各Mは独立してCR又はNより選択され、ここで3個以下のMがNである)であり;
が、
【化35】


(式中、各Gは独立してCR又はNであり(但し3個以下のGがNである);
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換アミノより選択される)
であり;
が、
【化36】


(式中、Jは、CR、O、S、N、及びNRからなる群より選択され;
各Kは独立してN、NR、C、又はCRであり;
は、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、又は置換若しくは非置換アルコキシである)であるか;
或いはCが、
【化37】


(式中、各Mは独立してCR又はNより選択される。但し、3個以下のMがNである)であり;
が、
【化38】


(各Eは独立してN、NR、C、CR、S又はOである。但し4個以下のEがヘテロ原子である)であるか;
或いはDが、
【化39】


(式中、各Mは独立してCR又はNから選択され(但し3個以下のMがNである);
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクリル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、置換若しくは非置換アミノ、又は置換若しくは非置換アルキルアミノより選択される)であり;
A1(存在する場合)、及びLB1とLC1の各々が、独立して共有結合、又は、


(式中、各R’は独立して水素原子、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、又は置換若しくは非置換シクロアルキルであり、zは1から10である)からなる群より選択されるリンカーである、
式(VII)の化合物の使用、が包含される。
【0065】
ここで好ましい方法には、LCが、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NR’−、−C(O)−、−(C(R’)−、又は−C(S)−である式(VII)の化合物の使用が包含される。
【0066】
更に好ましい実施形態には、LCが(II)、(III)、(IV)、(V)、又は(VI)である式(VII)の化合物を使用して、Aβレベルを調節する方法及びAβレベル異常に関連する疾患を治療する方法、が包含される。
【0067】
語句「アミロイド−ベータ」又は「Aβ」は、(a)APPのプロセッシング又は切断によって生じ、アミロイド形成性である、(b)β−アミロイド斑のペプチド成分の1つである、(c)Aβの43アミノ酸の配列(amino acid 672−714 of APP770;ジェンバンク(GenBank)受託番号P05067)である、(d)(a)、(b)若しくは(c)で挙げたペプチドの断片である、及び/又は、(e)(a)、(b)、(c)若しくは(d)に対する、1つ又は複数の付加、欠失又は置換を有する、ヒト又は他の生物種由来のペプチドを示す。Aβはまた、当業界において、βAP、AβP、又はβA4とも称される。APPのタンパク質分解に由来するAβペプチドは、一般に、〜4.2kDのタンパク質であり、典型的にはカルボキシ末端側の終末点に応じて長さが39から43アミノ酸長であり、これらは異種性を呈する。しかしながら、含有アミノ酸が39個未満であるAβペプチド、例えばAβ38、Aβ37、及びAβ34もまた存在し得る。
【0068】
Aβペプチドは、β−セクレターゼ(BACE)、及び1つ又は複数のγ−セクレターゼ活性によりAPPが切断される、アミロイド形成性のAPPプロセッシング経路において産生され得る。Aβペプチドには、APP770の672位から開始するもの、及び、APP770の682位から開始するものが包含される(例えば、ジェンバンク受託番号P05067を参照されたい)。一般に、本明細書で用いる「Aβ」には、アミノ酸残基が明示されていない限り、任意の全てのAβペプチドが包含され、例えば、1−43(Aβ43)、1−42(Aβ42)、1−40(Aβ40)、1−39(Aβ39)、1−38(Aβ38)、1−37(Aβ37)、1−34(Aβ34)、11−43、11−42、11−40、11−39、11−38、11−37、11−34その他が挙げられる。長さの異なる様々なAβペプチドを、本明細書では、Aβの「種」と称する。
【0069】
語句「アミロイド前駆体タンパク質」又は「APP」は、1つ又は複数のプロセッシング又は切断反応によりタンパク質分解性に処理又は切断されて、Aβを産生するようなタンパク質を示す。APPには、選択的スプライシングにより生成される全てのアイソフォームが包含され、典型的には、そのアイソフォームのアミノ酸の数によって識別することができる。例えば、APPは、APP695、APP751、及びAPP770を包含する。APPのその他アイソフォームとしては、例えば、APP714、L−APP752、L−APP733、L−APP696、L−APP677、APP563、及びAPP365などが挙げられる。
【0070】
APPには更に、AD及びその他アミロイドーシス状態を有する家族に見出されるような変異を含むアイソフォームの全ても包含される。例えば、これら変異には、スウェーデン型(Lys670Asn,Met671Leu)二重変異;ロンドン型変異(Val717Ile)、インディアナ型変異(Val717Leu)、Val717Phe、Val717Gly、Ala713Thr、Ala713Val、オーストリア型変異(Thr714Ile)、イラン型変異(Thr714Ala)、フランス型変異(Val715Met)、ドイツ型変異(Val715Ala)、フロリダ型変異(Ile716Val)、Ile716Thr、オーストラリア型変異(Leu723Pro)、フランドル型変異(Ala692Gly)、オランダ型変異(Glu693Gln)、北極型変異(Glu693Gly)、イタリア型変異(Glu693Lys)、及びアイオワ型変異(Asp694Asn)、及びアミロイドーシス−オランダ型変異(Glu693Gln)が包含される(ここでの番号付けは全て、APP770形態に対するものである)。
【0071】
用語「APP」は更に、上述したアイソフォームに対する付加、欠失又は置換を1つ又は複数含むタンパク質、及び、ヒト及びその他生物種に由来するAPPタンパク質も包含する。特定のアイソフォームが明示されていない限り、本明細書で用いる場合のAPPは、一般に、変異の有無、起源の種に関わらず、任意のアイソフォームのAPPを示す。
【0072】
語句「アミロイド前駆体タンパク質断片」は、1つ又は複数のプロセッシング又は切断反応によって処理又は切断されてAβとなり得る、APPの任意の一部分を示す。APPのアミロイド前駆体断片は、一般に、切断されるとそこでAβのN−末端を生じるベータ−セクレターゼ切断部位、切断されるとそこでAβのC−末端を生じるガンマ−セクレターゼ切断部位、又は、ベータ−セクレターゼ切断部位とガンマ−セクレターゼ切断部位との両方を含有する。アミロイド前駆体断片の例としては、C99及びC89と称されるAPP C−末端断片、並びに、細胞質中に通常存在するC−末端の一部又は全部を欠くようなそれらの一部が挙げられる。
【0073】
語句「アミロイド前駆体タンパク質(APP)若しくはそのアミロイド前駆体断片及び/又はAβの供給源」は、APP若しくはそのアミロイド前駆体断片及び/又はAβを含有する、in vivo、ex vivo又はin vitroの任意の物質をも示す。例えば、「供給源」は生きた生物体(ヒト患者、又は実験室動物若しくは家畜動物など)であっても、これに由来する試料(組織又は体液、或いはこれらの抽出物など)であっても、細胞(一次培養細胞又は細胞株、或いはこれらの抽出物など)であっても、細胞間質又は細胞外マトリックス又は細胞外環境、或いは単離タンパク質であってもよい。
【0074】
Aβレベルに関して、語句「調節する(modulate)」又は「調節すること(modulateing)」は、Aβペプチド種(例えば、Aβ43、Aβ42、Aβ40、Aβ39、Aβ38、Aβ37、Aβ34、11−43、11−42、11−40、11−39、11−38、11−37、11−34など)の少なくとも1種が、検出可能な量増加又は減少すること;Aβペプチドの異なる種が検出可能な相対量(Aβ42のAβ40に対する比など)増加又は減少すること;Aβの特定形態(モノマー、オリゴマー、又は線維の形態;溶液又は斑中での凝集;特定の立体配座;など)が検出可能な量又は相対量増加又は減少すること;及び/又は、特定の分布位置(細胞内、細胞膜随伴又は細胞外の分布位置、或いは、特定の組織又は体液中など)におけるAβが検出可能な量又は相対量増加又は減少することを示す。好ましい実施形態において、調節は、Aβ42又はAβ40のレベルの減少、或いは、Aβ37又はAβ38のレベルの増加として検出可能である。Aβレベルが調節されていることは、あるAβ種、Aβ全体、又はAβの特定形態の量又は相対量が、参照レベルに比して、例えば少なくとも5%、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%、90%以上、増加又は減少していることによって証明することができる。調節は参照レベルに比して統計学的に有意差のある増加又は減少とすることができる。
【0075】
語句「接触させる」は、2つ以上の物質を、直接又は間接的に会合させる(bringing into association)ことを示す。接触はin vivoでも、ex vivoでも、in vitroでも起こってよい。APP、そのアミロイド前駆体断片及び/又はAβの供給源、或いはBACE活性の供給源であって、ヒト又は動物であるものは、例えば、化合物を治療的又は予防的に投与することによって、化合物と接触させることができる。APP、そのアミロイド前駆体断片及び/又はAβの供給源であって、組織、組織抽出物又は細胞であるものは、例えば、化合物を培地中に導入することによって、化合物と接触させることができる。APP、そのアミロイド前駆体断片及び/又はAβの供給源であって液状のもの、例えば細胞間質などは、例えば、化合物をその液に混ぜることによって、化合物と接触させることができる。
【0076】
語句「治療すること(treating)」又は「治療(treatment)」は、本明細書における化合物又は組成物の投与に起因して又は関連して、疾患又は障害の1つ又は複数の症状が、永久的にしろ一時的にしろ、改善される又は快方に変化するような任意の手段を示す。この用語には、組成物の投与に起因して又は関連して、疾患又は障害の1つ又は複数の症状の進展が、永久的にしろ一時的にしろ、防止、遅延化又は低減されるような予防的使用を含む薬事上の任意の使用が包含される。本発明の一実施形態において、治療には、Aβの産生、代謝、プロセッシング及び/又はレベルの変化或いは異常により特徴付けられる疾患又は障害を治療するための、本明細書における化合物の医薬としての任意の使用が包含される。
【0077】
語句「Aβレベル異常に関連する疾患」は、Aβペプチド種(例えば、Aβ43、Aβ42、Aβ40、Aβ39、Aβ38、Aβ37、Aβ34、11−43、11−42、11−40、11−39、11−38、11−37、11−34など)の少なくとも1種の量異常;Aβペプチドの異なる種の相対量(Aβ42のAβ40に対する比など)の異常;Aβの特定形態(モノマー、オリゴマー、又は線維の形態;溶液又は斑中での凝集;特定の立体配座;など)の量又は相対量の異常;及び/又は、特定の分布位置(細胞内、細胞膜随伴又は細胞外の分布位置、或いは、特定の組織又は体液中など)におけるAβの量又は相対量の異常によって特徴付けられる任意の状態を示す。1つ又は複数のAβペプチド、Aβ形態及び/又はAβの量が異常であるかどうかは、正常な、罹患していない状態での状況に対する相対的なものであり得る。Aβレベルの変化によって特徴付けられる疾患及び障害は、当業界で知られており、且つ/又は本明細書に記載されており、例えば、ダウン症候群、パーキンソン病、びまん性レビ小体病、進行性の核上性麻痺、遺伝性アミロイド性脳出血−オランダ型(HCHWA−D)、脳のアミロイドアンギオパチー(CAA)や軽度認知障害(MCI)などが挙げられる。本発明の実施形態には、ADなど、Aβレベル異常に関連する任意の疾患を治療する方法も包含される。Aβの産生、線維形成/沈着、分解及び/又はクリアランスの変化、或いはAβアイソフォームの何らかの変化に関連する病態を治療(予防や改善を含む)するために、本発明の化合物を対象に投与することができる。
【0078】
好ましくは、本発明の化合物は、神経変性状態、及びその他の認知症又は外傷状態を包含するがこれらに限定されない神経疾患の治療に使用され得る。神経疾患の例としては、びまん性レビ小体病、ピック病、多システム変性(シャイ・ドレーガー症候群)、運動ニューロン疾患、例えば、筋萎縮性側索硬化症、変性性運動失調、皮質性基底変性、ALS−パーキンソン−認知症・グアム(Guam)複合、亜急性硬化性汎脳炎、ハンチントン病、サイヌクレイノパチー(synucleinopathies)、原発性進行性失語症、線状体黒質糸変性、マシャド・ジョセフ(Machado−Joseph)病/脊髄小脳変性症3型及びオリーブ橋小脳変性など、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット(Gilles De La Tourette)病、延髄性及び偽延髄性麻痺、球脊髄性筋萎縮症(ケネディー病)、原発性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、ウェルドニッヒ・ホフマン(Werdnig−Hoffmann)病、クーゲルベルク・ウェランダー(Kugelberg−Welander)病、テイ・ザックス(Tay−Sachs)病、サンドホフ(Sandhoff)病、家族性痙性疾患、Wohifart−Kugelberg−Welander病、痙性不全対麻痺、進行性多巣性白質脳症、プリオン病群(クロイツフェルト・ヤコブ(Creutzfeldt−Jakob)、Gerstmann−Straussler−Scheinker病、クールー、及び致死性家族性不眠症など)、加齢関連認知症、及び記憶喪失を伴うその他状態、例えば脳血管性認知症、びまん性白質症(ビンスワンガー(Binswanger)病)、内分泌又は代謝起源の認知症、頭部外傷及び広汎脳損傷での認知症など、ボクサー痴呆(認知症)、及び前頭葉性認知症、脳虚血又は脳梗塞、例えば塞栓性閉塞及び血栓性閉塞並びに任意のタイプの頭蓋内出血(硬膜外、硬膜下、くも膜下及び大脳内のものを含むがこれらに限定されない)など、並びに、頭蓋内及び脊椎内の損傷(挫傷、穿通、剪断、圧迫及び裂傷を含むがこれらに限定されない)、などを挙げることができる。
【0079】
IV.別の治療適用形態
本発明の化合物及び組成物を、様々な障害を治療又は改善するために使用することができる。治療的適用において使用可能な化合物及び組成物は、一実施形態において、標的とする組織(すなわち、神経変性疾患に関しては脳;その他のアミロイド形成性状態に関しては個々の末梢器官)における生物学的利用率がかなり高く、毒性が十分に低い。当業者は、定法を用いて、本明細書に記載の化合物の医薬としての許容性を評価することができる。
【0080】
例えば、本発明の化合物は、癌、又は細胞増殖異常により特徴付けられるその他疾患、炎症性疾患、細菌若しくはウイルス感染、自己免疫疾患、急性痛、筋肉痛、神経因性痛、アレルギー、神経疾患、皮膚科症状、心血管疾患、糖尿病、胃腸障害、鬱病、内分泌疾患又はホルモン代謝異常により特徴付けられるその他疾患、肥満、骨粗しょう症又はその他の骨障害、膵臓疾患、癲癇又は発作性障害、勃起若しくは性機能障害、眼科疾患又は眼の疾患、コレステロールのアンバランス、高血圧又は低血圧、偏頭痛又は頭痛、強迫性障害、パニック障害、不安障害、心的外傷後障害、化学物質依存若しくは嗜癖など、の治療に使用可能である。
【0081】
本発明で提供される化合物は更に、アミロイドーシスを予防又は治療するためにも使用することができる。アミロイドーシスには、脳又は末梢におけるアミロイド沈着を特徴とする状態の全てが包含され、リウマチ性疾患、特発性疾患、遺伝性病態、炎症性病態、感染症及び悪性腫瘍に随伴したアミロイドーシスなどがある。アミロイドーシス性障害には、例えば、上述したAβレベルの変化に関連した状態(例えばアルツハイマー病、ダウン症候群、HCHWA−D、脳のアミロイドアンギオパチー(CAA)や軽度認知障害(MCI)など)、更に、家族性アミロイド多発性神経障害、家族性アミロイド心筋症(デンマーク型)、孤立性心アミロイド症、アミロイドアンギオパチー、全身性老年性アミロイドーシス、家族性全身性アミロイドーシス、短鎖型アミロイドーシス(AL)、透析に伴うアミロイドーシス、腎アミロイドーシス、プリオン関連脳障害、糖尿病(肝臓又は膵臓にアミリンが沈着し得る)、心房性アミロイドーシス及び下垂体性アミロイドーシスなどが含まれる。
【0082】
当業者であれば、本明細書に記載の化合物又は組成物の投与が有益であろうその他の疾患及び障害を決定することが可能である。
【0083】
V.医薬組成物
語句「医薬品として許容される担体」は、特定の形態での投与に適することが当業者に知られているような、任意の担体を示す。更に、化合物は、組成物中で唯一の医薬活性成分として処方されてもよいし、他の活性成分と組み合わされてもよい。
【0084】
語句「医薬品として許容される塩」は、医薬品用途における使用に適当な、任意の塩調製物をも示す。医薬品として許容される塩には、アミン塩、例えばN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、アンモニア、ジエタノールアミン及びその他ヒドロキシアルキルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、1−パラ−クロロ−ベンジル−2−ピロリジン−1’−イルメチルベンズイミダゾール、ジエチルアミン及びその他のアルキルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなど;アルカリ金属塩、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウムなど;アルカリ土類金属塩、例えば、バリウム、カルシウム、マグネシウムなど;遷移金属塩、例えば亜鉛、アルミニウムなど;その他の金属塩、例えばリン酸水素ナトリウム、リン酸二ナトリウムなど;無機酸、例えば塩酸塩、硫酸塩など;及び、有機酸塩、例えばアセテート、ラクテート、マレエート、タートレート、シトレート、アスコルベート、サクシネート、ブチレート、バレレート、フマレートなどが包含される。
【0085】
語句「プロドラッグ」は、in vivoで投与された際に、1つ又は複数のステップ又はプロセスにより代謝されて、或いは変換されて、生物学的、医薬的又は治療的に活性な形態の化合物になるような化合物を示す。プロドラッグの調製は、修飾されたものが、所定の操作中に又はin vivoで切断されて本明細書に記載の化合物となるように、化合物に存在する官能基を修飾することによって行うことができる。例えば、プロドラッグは、本発明の化合物において、ヒドロキシ、アミノ、又はスルフィドリル基が、哺乳類対象に投与された際に切断されて、それぞれ遊離ヒドロキシル、遊離アミノ、又は遊離スルフィドリル基を生成することができるような何らかの基に結合されたものを包含する。代表的なプロドラッグとしては、例えば、本発明の化合物のアルコール官能基及びアミン官能基のエステル、エノールエーテル、エノールエステル、アセテート、フォルメート、ベンゾエート各誘導体その他が挙げられる。in vivoの薬物動態プロセス及び薬物代謝の知識に鑑みて、当業者は、薬剤として活性な化合物が分かれば、その化合物のプロドラッグを設計することができる(例えば、Nogrady(1985)、Medicinal Chemistry A Biochemical Approach,Oxford University Press,New York,388〜392頁を参照されたい)。
【0086】
本明細書における組成物は、本明細書に示されている化合物の1つ又は複数を含む。化合物は、一実施形態において、適当な医薬製剤、例えば、経口投与用として溶液、懸濁液、錠剤、散剤、丸剤、カプセル、粉剤、徐放製剤又はエリキシル剤、或いは非経口投与用として滅菌の溶液又は懸濁液、更に、経皮パッチ製剤及び乾燥粉末吸入器へと製剤される。一実施形態において、上述の化合物は、当業界で周知の技術及び手順を用いて医薬組成物に処方される(例えば、Ansel「医薬品投与形態の手引き、第4版(Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,Fourth Edition)」1985,126を参照されたい)。
【0087】
組成物においては、有効濃度の、1つ又は複数の化合物又は医薬品として許容されるその誘導体が、適当な医薬担体と混合されている。化合物は、上述のように、対応する塩、エステル、エノールエーテル若しくはエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物又はプロドラッグへと製剤前に誘導されていてもよい。組成物における化合物の濃度は、投与された場合に、治療しようとする疾患の1つ又は複数の症状又は障害を治療、予防、又は改善する量を送達するのに十分な濃度である。
【0088】
一実施形態において、組成物は、単回投与量での投与用に製剤される。組成物を製剤するためには、処置された状態が緩解され、予防され、或いは、1つ又は複数の兆候が改善されるような有効濃度で、選択した担体に化合物の重量部を溶解、懸濁、分散又は混合する。
【0089】
活性化合物は、医薬品として許容される担体中に、治療される患者に望ましくない副作用を及ぼすことなく治療上有益な作用を発揮するために十分な量で含有される。治療上有効濃度は、本明細書、及びPCT公開WO 04/018997に記載のin vitro及びin vivo系で化合物を試験した後、そこからヒトへの投与量へと外挿することにより、経験的に決定することができる。
【0090】
医薬組成物における活性化合物の濃度は、該活性成分の吸収、不活性化及び排出の速度、該化合物の物理化学的特性、投薬スケジュール、及び投与する量、並びに、当業者に知られているその他の因子に依存する。
【0091】
一実施形態においては、治療上有効な投与量が、活性成分の血清中濃度を約0.1ng/mlから約50〜100μg/mlとするものである。別の実施形態においては、医薬組成物が、約0.001mgから約2000mg化合物/キログラム体重/日という投与量を与えるものである。医薬品の単位投与形態は、単位投与形態当たり約0.01mg、0.1mg又は1mgから、約500mg、1000mg又は2000mgまでの、一実施形態においては約10mgから約500mgの、活性成分、又は必須成分の組み合わせを与えるように調製される。
【0092】
活性成分は1回で投与してもよいし、より少ない投与量の数個に分割して、時間間隔をおいて投与できるようにしてもよい。正確な投与量及び治療持続時間は、治療される疾患の関数であり、既知の試験プロトコルを用いて、又はin vivo 若しくはin vitro試験データの外挿から、経験的に決定することができると理解される。濃度及び投薬価もまた、緩和しようとする状態の重症度によって異なることに注意すべきである。更に、任意の特定の対象に対しても、個別の要望と組成物の投与を行う又は監督する専門家の判断とに従って、各投薬方法を常に調整してゆくべきであること、及び、本明細書で上げた濃度範囲はあくまで例示的なもので、特許請求する組成物の範囲又は実施を制限する意図のものではないことも理解されるべきである。
【0093】
化合物が不十分な溶解性しか示さない場合、化合物を可溶化する手法を用いて構わない。このような手法は当業者に知られており、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの共溶媒の使用、TWEEN(登録商標)などの界面活性剤の使用、炭酸水素ナトリウム水溶液への溶解、などが包含されるがこれらに限定はされない。当該化合物のプロドラッグなど、化合物の誘導体もまた、有効な医薬組成物の製剤に使用することができる。
【0094】
化合物(群)の混合又は添加に際しては、得られる混合物は溶液であっても、懸濁液であっても、エマルジョンなどであってもよい。得られる混合物の形態は、意図する投与方式や、選択した担体又は賦形剤への化合物の溶解度など、幾つかの因子に依存する。有効な濃度は、治療される疾患症状、障害又は状態を改善するのに十分な濃度であり、経験的に決定され得る。
【0095】
医薬組成物はヒト及び動物に対する投与のために、錠剤、カプセル、丸剤、粉剤、顆粒剤、腸管用の滅菌溶液又は滅菌懸濁液、及び経口溶液又は経口懸濁液、及び、化合物又は医薬品として許容されるその誘導体の適量を含有する油−水エマルジョンなどの、投与単位の形態で提供される。薬物治療的に活性な化合物及びその誘導体は、一実施形態において、単位投与形態又は多回投与形態で、製剤され投与される。ここで言う単位投与形態とは、ヒト及び動物対象への投与に適し、物理的に分離していて当業界で知られているように個別包装されているユニットを示す。各投与単位は、治療上活性な化合物の、所望の治療効果を与えるのに十分な所定量を、必要な医薬品担体、賦形剤又は希釈剤と共に含有する。1投与単位の例としては、アンプル及びシリンジ、並びに個別包装された錠剤又はカプセルが挙げられる。単位投与形態は、個々に又は複数個で投与してよい。多回投与形態は、単一容器に包装された同一投与単位の複数個であり、これを分離した投与単位として投与することができる。多回投与形態の例としては、バイアル、錠剤若しくはカプセルのボトル、又はパイント単位若しくはガロン単位のボトルが挙げられる。従って、多回投与形態は包装中で分離されていない複数の単位投与量である。
【0096】
医薬品として投与可能な液状の組成物は、例えば、上記で規定された活性化合物と、場合により医薬用アジュバントとを、例えば水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、グリコール、エタノールなどの担体に溶解、分散、又は混合して、溶液又は懸濁液を生成させることによって調製することができる。所望の場合は、投与する医薬組成物は更に、微量の非毒性の助剤、例えば、湿潤剤、乳化剤、安定剤、pH緩衝剤など(例えばアセテート、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、トリエタノールアミンオレエート、その他の剤)を含有していてもよい。
【0097】
このような投与単位を実際に調製する手法は知られており、又は当業者にとって明らかであろう。例えば、「レミントン製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,第15版(15th Edition),1975を参照されたい。
【0098】
0.005%から100%(重量%)の範囲の活性成分を含有し、残部が非毒性の担体からなる投与単位形態の組成物を調製することができる。これらの組成物の調製法は当業者に知られている。予想される組成物は、0.001%〜100%(重量%)、一実施形態では0.1〜95%(重量%)、別の実施形態では75〜85%(重量%)の活性成分を含有し得る。
【0099】
A.経口投与用組成物
経口用医薬品の投与形態は、固形、ゲル状又は液状のいずれであってもよい。固形の投与形態は錠剤、カプセル、顆粒剤、及び粉剤包である。経口錠剤としては、圧縮品、チュアブル錠、及び、腸溶コーティング錠、糖衣錠、又はフィルムコーティング錠が挙げられる。カプセルはハード又はソフトゼラチンカプセルであり、顆粒剤及び粉剤は、当業者に知られているその他成分と組み合わせて、非起沸又は起沸形態のいずれでも提供されてよい。
【0100】
1.経口投与用の固形組成物
ある実施形態において、製剤は固形の投与形態であり、一実施形態において、カプセル又は錠剤である。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、次の成分:結合剤;滑剤;希釈剤;潤滑剤(glidant);崩壊剤;着色剤;甘味料;香味料;湿潤剤;催吐コーティング;及びフィルムコーティング、又は性質が同様の化合物群のうち1つ又は複数を含有し得る。バインダーの例としては、ミクロクリスタリンセルロース、トラガカントガム、グルコース溶液、アラビアゴム漿、ゼラチン溶液、糖蜜、ポリビニルピロリドン、ポビドン、クロスポビドン、スクロース及び澱粉ペーストなどが挙げられる。滑剤としては、タルク、澱粉、マグネシウムステアレート又はカルシウムステアレート、石松子及びステアリン酸などが挙げられる。希釈剤としては、例えば、ラクトース、スクロース、澱粉、カオリン、塩、マンニトール及びリン酸二カルシウムなどが挙げられる。潤滑剤としては、コロイド状二酸化ケイ素などが挙げられるが、これに限定されない。崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、アルギン酸、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、ベントナイト、メチルセルロース、寒天及びカルボキシメチルセスロースなどが挙げられる。着色料としては、例えば、任意の、認可実証済みの水溶性FD及びC染料、その混合物;アルミナ水和物上に懸濁された水不溶性FD及びC染料などが挙げられる。甘味料としては、スクロース、ラクトース、マンニトール、及び、サッカリンなどの人口甘味料、及び、噴霧乾燥香味料の任意のもの、などが挙げられる。香味料としては、植物から抽出された天然香味料、例えばフルーツ香料、及び、心地よい感覚を生むような、化合物人工ブレンド品(例えばペパーミント、サリチル酸メチル、但しこれらに限定されない)などが挙げられる。湿潤剤としては、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ジエチレングリコールモノラウレート、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルなどが挙げられる。催吐コーティングとしては、脂肪酸、脂肪、ワックス、セラック、アンモニアセラック、及びセルロースアセテートフタレートなどが挙げられる。フィルムコーティングとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール4000、及びセルロースアセテートフタレートなどが挙げられる。
【0101】
化合物、又は医薬品として許容されるその誘導体は、胃の酸性環境からそれを保護する組成物中で提供されてもよいであろう。例えば、化合物は、胃の中では無傷のままであり腸内では活性化合物を放出するような腸溶コーティング中に処方されてもよい。化合物は更に、抗酸化成分又はその他成分と組み合わせて処方されてもよい。
【0102】
投与単位形態がカプセルである場合、これは、上記タイプの材料に加えて、脂肪油などの液状担体を含有していてもよい。更に、投与単位形態は、投与単位の物理的形状を改変するようなその他様々な材料(例えば、糖衣及びその他の腸溶剤)を含有し得る。化合物は更に、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ、オブラート剤、スプリンクル剤、チューイングガムなどの成分として投与されてもよい。シロップは、活性化合物に加えて、甘味料としてスクロース、及び特定の保存料、染料及び着色料並びに香味料を含有してもよい。
【0103】
活性材料はまた、望まれる作用を妨げないようなその他の活性材料、又は望まれる作用を補助するような材料、例えば抗酸化剤、H2ブロッカー、及び利尿剤などと混合されてもよい。活性成分は、本明細書に記載の化合物又は医薬品として許容されるその誘導体である。かなり高濃度の、約98重量%までの活性成分を含有させることができる。
【0104】
全ての実施形態において、錠剤及びカプセル製剤は、活性成分の溶解を改変又は維持する目的で、当業者に知られているようにコーティングされてもよい。従って、例えば、これらは、フェニルサリチレート、ワックス及びセルロースアセテートフタレートなどの従来の腸溶性コーティング材でコーティングされていてよい。
【0105】
2.経口投与用の液状組成物
経口用の液状投与形態としては、水性溶液、エマルジョン、非起沸性の顆粒から再構成した溶液及び/又は懸濁液、並びに、起沸性顆粒から再構成した起沸性製剤などが挙げられる。水溶液としては、例えば、エリキシル剤及びシロップなどが挙げられる。エマルジョンは、水中油型又は油中水型のいずれであってもよい。
【0106】
エリキシル剤は、透明で甘味のある水和アルコール系製剤である。エリキシル剤に用いられる、医薬品として許容される担体には、溶媒が包含される。シロップは、糖(例えばスクロース)の濃い水溶液であり、保存料を含有していてもよい。エマルジョンは、一方の液体が小球の形態でもう一方の液体全体に分散している2相系である。エマルジョンに用いられる、医薬品として許容される担体は、非水性液体、乳化剤及び保存料である。懸濁液では、医薬品として許容される懸濁剤及び保存料が用いられる。経口用液状投与形態に再構成される非起沸性顆粒に用いられる、医薬品として許容される物質には、希釈剤、甘味料及び湿潤剤が包含される。経口用液状投与形態に再構成される沸性顆粒に用いられる、医薬品として許容される物質には、有機酸と二酸化炭素源とが含まれる。着色料及び香味料は、以上の投与形態全てにおいて用いられる。
【0107】
溶媒としては、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール及びシロップが挙げられる。保存料の例としては、グリセリン、メチルパラベン及びプロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、及びアルコールなどが挙げられる。エマルジョンに利用される非水性液の例としては、ミネラルオイル及び綿実油などが挙げられる。乳化剤の例としては、ゼラチン、アラビアガム、トラガカントガム、ベントナイト、及び界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなど)、などが挙げられる。懸濁剤としては、などが挙げられる。ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ペクチン、トラガカントガム、Veegum及びアラビアガムなどが挙げられる。甘味料としては、スクロース、シロップ、グリセリン、及び、人工甘味料(サッカリンなど)などが挙げられる。湿潤剤としては、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ジエチレングリコールモノラウレート、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルなどが挙げられる。有機酸としては、クエン酸及び酒石酸などが挙げられる。二酸化炭素源としては、重炭酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムなどが挙げられる。着色料としては、任意の、認可実証済みの水溶性FD及びC染料、その混合物などが挙げられる。香味料としては、植物から抽出された天然香味料、例えばフルーツ香料、及び、心地よい感覚を生むような、合成の化合物ブレンドなどが挙げられる。
【0108】
固形投与形態に関して、例えばプロピレンカーボネート、植物油又はトリグリセリド中の溶液又は懸濁液は、一実施形態においては、ゼラチンカプセル中にカプセル封入される。このような溶液、並びにその調製及びカプセル封入については、米国特許第4,328,245号;米国特許第4,409,239号;及び米国特許第4,410,545号に開示がなされている。液状投与形態に関して、例えばポリエチレングリコール中の溶液は、投与用に計測するのが容易となるように、十分な量の、医薬品として許容される液体担体、例えば水で希釈されていてよい。
【0109】
また、液状又は半固形の経口製剤は、活性化合物又は塩を、植物油、グリコール、トリグリセリド、プロピレングリコールエステル(例えばプロピレンカーボネート)及びその他の担体に溶解又は分散させ、これらの溶液又は懸濁液を、ハード又はソフトゼラチンカプセル殻に封入することによって調製することができる。その他の有用な製剤としては、米国特許第RE28,819号及び第4,358,603号に挙げられているものがある。簡潔にいえば、このような製剤には、本明細書で示している化合物、例えば、1,2−ジメトキシメタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ポリエチレングリコール−350−ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール−550−ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール−750−ジメチルエーテル(ここで350、550及び750は、ポリエチレングリコールのおおよその平均分子量を示す)が包含されるがこれらに限定されないジアルキル化モノ−又はポリ−アルキレングリコール、及び1つ又は複数の抗酸化剤、例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、セファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、チオジプロピオン酸及びそのエステル、及びジチオカーバメートを含有するものが包含されるがこれらに限定はされない。
【0110】
その他の製剤としては、医薬品として許容されるアセタールを含む水性アルコール溶液などが挙げられるが、これらに限定はされない。これらの製剤に用いられるアルコールは、医薬品として許容される、1つ又は複数のヒドロキシル基を有する任意の水混和性溶媒でよく、プロピレングリコール及びエタノールなどが包含されるが、これらに限定されない。アセタールには、低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタール、例えばアセトアルデヒドジエチルアセタールが包含されるが、これらに限定はされない。
【0111】
B.注射剤、溶液及びエマルジョン
非経口投与(一実施形態では、皮下、筋肉内又は静脈内のいずれかの注射で特徴付けられる)もまた、本発明で企図される。注射剤は、従来の形態で、液体中の溶液又は懸濁液、注射する前に液体中に溶解又は懸濁するのに適した固形形態、又はエマルジョンのどの形態として調製してもよい。上記注射剤、溶液及びエマルジョンは更に、1つ又は複数の賦形剤を含有する。適当な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール又はエタノールである。更に、所望の場合は、投与される医薬組成物が更に、微量の非毒性助剤物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解促進剤、及びその他の助剤、例えば酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート及びシクロデキストリンなどを含有していてもよい。
【0112】
一定レベルの用量を維持するように徐放又は持続放出系を使用すること(例えば、米国特許第3710795号参照)も、本発明で企図されている。手短に言えば、本明細書で提供する化合物は、固体内部マトリックス、例えばポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、可塑化又は非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、親水性ポリマー、例えばアクリル酸及びメタクリル酸のエステルのヒドロゲル、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール及び架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニルに分散されており、この固体内部マトリックスは、体液に不溶性の外部高分子膜、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、塩化ポリビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレン、イオノマー型ポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー及びエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーで囲まれている。化合物は、放出速度制御ステップで外部高分子膜を介して拡散する。このような非経口組成物に含まれる活性化合物の百分率は、その特定の性質並びに化合物の活性及び対象の要求に大きく依存する。
【0113】
組成物の非経口投与には、静脈内、皮下及び筋肉内投与がある。非経口投与用製剤には、注射用無菌液、無菌乾燥可溶性製品、例えば使用の直前に溶媒と合わせることができる凍結乾燥粉末、例えば皮下用錠剤、注射用無菌懸濁液、使用の直前にビヒクルと合わせることができる無菌乾燥不溶性製品及び無菌エマルジョンがある。溶液は水性でも非水性でもよい。
【0114】
静脈内投与の場合、適切な担体としては、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、並びに濃化剤及び可溶化剤を含む溶液、例えばグルコース、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール、並びにそれらの混合物がある。
【0115】
非経口製剤で使用する医薬品として許容される担体には、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張化剤、緩衝液、酸化防止剤、局所麻酔剤、懸濁化及び分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖又はキレート剤、並びにその他の医薬品として許容される物質がある。
【0116】
水性ビヒクルの例には、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース及び乳酸リンゲル液が包含される。非水性非経口ビヒクルには、植物由来の固定油、綿実油、コーン油、ゴマ油及び落花生油が包含される。フェノール又はクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p−ヒドロキシ安息香酸メチル及びプロピルエステル、チメロサール、塩化ベンズアルコニウム及び塩化ベンゼトニウムを含む多回投与容器にパッケージされた非経口製剤に、静菌濃度又は静真菌濃度の抗菌剤を加えなければならない。等張化剤には、塩化ナトリウム及びデキストロースがある。緩衝液にはリン酸及びクエン酸がある。酸化防止剤には、硫酸水素ナトリウムがある。局所麻酔剤には、プロカイン塩酸塩がある。懸濁化及び分散剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンがある。乳化剤には、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)がある。金属イオンの金属イオン封鎖又はキレート剤には、EDTAがある。医薬品担体にはまた、水混和性ビヒクル用にエチルアルコール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコール;pH調節用に水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸又は乳酸がある。
【0117】
医薬活性化合物の濃度は、注射液が所望の薬理作用を生じる上で有効な量になるように調整される。当技術分野で公知のように、正確な用量は患者又は動物の年齢、体重及び状態に依存する。
【0118】
単位投与非経口製剤は、アンプル、バイアル又は針付きシリンジ中に封入される。当技術分野で知られ、実践されているように、非経口投与用製剤はすべて滅菌されていなければならない。
【0119】
例えば、活性化合物を含む滅菌水溶液剤の静脈内又は動脈内注入が、有効な投与方式である。別の実施形態は、必要に応じ注射されて所望の薬理作用を生じる、活性物質を含む滅菌水溶液剤、油溶液剤又は懸濁液剤である。
【0120】
注射液は局部及び全身投与用に設計されている。一実施形態では、治療有効製剤は、活性化合物を、治療される組織に対して約0.1重量%〜約90重量%、ある実施形態では1重量%を超える濃度で含むように製剤されている。
【0121】
化合物を、超微粉砕された形態又は他の適切な形態で懸濁するか、或いは誘導体化して、より溶解性の高い活性生成物を生成するか、又はプロドラッグを生成することができる。得られた混合物の形態は、企図される投与形式、及び選択された担体又はビヒクルに対する化合物の溶解性を含む、いくつかの要因に依存する。この有効濃度は、状態の症状を寛解させるのに十分であり、経験的に決定することができる。
【0122】
C.凍結乾燥粉末
本発明はまた、液剤、乳剤、及び他の混合物としての投与用に再構成できる凍結乾燥粉末も対象とする。凍結乾燥粉末はまた、固形剤又はゲル剤として再構成及び調剤してもよい。
【0123】
滅菌凍結乾燥粉末は、本明細書で提供される化合物又はその医薬品として許容される誘導体を適切な溶媒に溶解させることで調製される。溶媒は、粉末又は粉末から調製された再構成溶液の他の薬理成分の安定性を向上させる賦形剤を含んでいてもよい。使用できる賦形剤としては、デキストロース、ソルビタール、果糖、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、ブドウ糖、ショ糖、又は他の適切な物質が挙げられるが、それだけには限定されない。溶媒は、緩衝液、例えばクエン酸塩、リン酸ナトリウム又はカリウム、或いは他の当業者に公知の同種の緩衝液を、一実施形態では中性に近いpHで含んでいてもよい。引き続き溶液を滅菌濾過した後、当業者に公知の条件で凍結乾燥することで、所望の製剤が得られる。一実施形態では、得られた溶液は凍結乾燥用バイアルに均等に配分される。各バイアルは化合物の1回分の用量又は複数回分の用量を含む。凍結乾燥粉末は、約4℃から室温のような好適な条件下で保管できる。
【0124】
この凍結乾燥粉末を注射用水で再構成することで、非経口投与用製剤が得られる。再構成のために、凍結乾燥粉末を滅菌水又は他の適切な担体に加える。正確な量は選択された化合物に依存する。そのような量は経験的に決定することができる。
【0125】
D.局所投与
局所用混合物は局部及び全身投与用に記載されているように調製する。得られた混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョン等とすることができ、クリーム、ジェル、軟膏、乳剤、液剤、エリキシル剤、ローション、懸濁剤、チンキ剤、パスタ、フォーム、エアロゾール、洗浄剤、スプレー、坐剤、バンデージ、皮膚パッチ、又は局所投与に適した任意の他の製剤として製剤する。
【0126】
化合物又は医薬品として許容されるその誘導体は、吸入などにより局所適用するためのエアロゾールとして製剤することができる(例えば、炎症疾患特に喘息の治療に有用なステロイド送達用エアロゾールを記載している米国特許第4,004,126号、第4,414,209号及び第4,364,923号参照のこと)。気道に投与するためのこれらの製剤は、ネブライザー用のエアロゾール若しくは液剤の形態又は単独若しくはラクトースなどの不活性担体と組み合わせた吸入用の極微小粉剤としての形態とすることができる。このような場合、製剤の粒子は、一実施形態では、50ミクロン未満、一実施形態では、10ミクロン未満の直径を有する。
【0127】
化合物は、ジェル、クリーム及びローションの形態で、例えば皮膚及び眼などの粘膜に局所適用する局部若しくは局所適用用に、眼に適用するために、又は槽内若しくは髄腔内に適用するために製剤することができる。局所投与とは、経皮送達を企図し、眼や粘膜への投与又は吸入療法も企図する。活性化合物を単独又は他の医薬品として許容される賦形剤と共に含む経鼻用液剤も投与することができる。
【0128】
これらの液剤、特に眼科での使用を意図する液剤は、適当な塩を含む、pH約5〜7の0.01%〜10%(体積%)等張溶液として製剤することができる。
【0129】
E.他の投与経路用の組成物
本発明では、イオントフォレーシス及びエレクトロフォレーシスデバイスを含む経皮パッチ、並びに直腸投与などの他の投与経路も企図される。
【0130】
イオントフォレーシス及びエレクトロフォレーシスデバイスを含む経皮パッチは当業者にはよく知られている。例えば、このようなパッチは米国特許第6,267,983号、第6,261,595号、第6,256,533号、第6,167,301号、第6,024,975号、第6,010,715号、第5,985,317号、第5,983,134号、第5,948,433号及び第5,860,957号に開示されている。
【0131】
例えば、直腸投与のための医薬剤型は、全身作用用の直腸用坐剤、カプセル及び錠剤である。直腸坐剤とは本明細書では、直腸に挿入するための固形体であって、体温で溶融又は軟化して1種又は複数の薬理学的又は治療的に活性な成分を放出するものを意味するよう使用する。直腸坐剤に使用される医薬品として許容される物質はベース又はビヒクル及び融点を上昇させる作用剤である。ベースの例には、ココアバター(カカオ油)、グリセリン−ゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、及び脂肪酸のモノ、ジ、及びトリグリセリドの適当な混合物が包含される。種々のベースの組合せも使用することができる。坐剤の融点を上昇させるための作用剤には、鯨蝋及びワックスが包含される。直腸坐剤は、圧縮法又は成形のいずれかにより調製することができる。直腸坐剤の重量は、一実施形態では、約2〜3グラムである。
【0132】
直腸投与用の錠剤及びカプセルは、経口投与用の製剤の場合と同じ医薬品として許容される物質を使用し、同じ方法によって製造する。
【0133】
F.標的製剤
本発明で提供される化合物又は医薬品として許容されるその誘導体は、特定の組織、受容体又は治療する対象の体の他の部分を標的とするよう製剤することもできる。多くのこのようなターゲティング法が当業者によく知られている。本発明では、このようなターゲティング法はいずれも本発明組成物に使用することが企図される。ターゲティング法の非限定例としては、例えば、米国特許第6,316,652号、第6,274,552号、第6,271,359号、第6,253,872号、第6,139,865号、第6,131,570号、第6,120,751号、第6,071,495号、第6,060,082号、第6,048,736号、第6,039,975号、第6,004,534号、第5,985,307号、第5,972,366号、第5,900,252号、第5,840,674号、第5,759,542号及び第5,709,874号を参照されたい。
【0134】
一実施形態では、腫瘍標的リポソームなどの組織標的リポソームを含むリポソーム懸濁液も医薬品として許容される担体として好適である。これらは、当業者に公知の方法で調製することができる。例えば、リポソーム製剤は米国特許第4,522,811号に記載のように調製することができる。簡単に述べると、マルチラメラベシクル(MLV)などのリポソームは、フラスコの内面上で卵ホスファチジルコリン及び脳ホスファチジルセリン(モル比7:3)を乾燥させることによって形成することができる。本発明で提供される化合物を、二価陽イオンを含まないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させた溶液を加え、脂質フィルムが分散されるまでフラスコを振とうする。得られたベシクルを洗浄し、未封入化合物を除去し、遠心してペレット化させ、次いでPBSに再懸濁させる。
【0135】
G.併用療法
別の実施形態では、化合物を他の治療剤と組み合わせて、又は逐次的に投与することができる。このような他の治療剤には、アミロイドーシス並びに神経変性疾患及び障害の1つ又は複数の症状を治療、予防、又は改善することが知られている治療剤が包含される。このような治療剤には、ドネペジル塩酸塩(Aracept)、リバスチグミン酒石酸塩(Exelon)、タクリン塩酸塩(Cognex)及びガランタミン臭化水素酸塩(Reminyl)が包含されるが、これらに限定されるものではない。
【0136】
VI.キット
本発明の他の態様によれば、キットが提供される。本発明によるキットには、本発明の化合物又は組成物を含む包装容器が含まれる。
【0137】
「包装容器」という語句は、本明細書中に示した化合物又は組成物を含んだ任意の容器を意味する。好ましい実施形態では、包装容器は箱又は包装紙であってもよい。医薬用包装製品に使用する包装材料は、当業者に周知である。例えば、米国特許第5323907号、第5052558号及び第5033252号を参照されたい。医薬用包装材料の例には、それだけに限らないが、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入具、ポンプ、袋、バイアル、収納容器、シリンジ、瓶、並びに、選択した製剤と投与及び治療の意図する方式とに適切な任意の包装材料が含まれる。
【0138】
該キットは、包装容器の中に含めずに包装容器の外部に取り付ける個別品目、例えばピペットを含むことができる。
【0139】
場合により、治療を要する状態の対象に本発明の化合物又は組成物を投与するための指示書をキットに含めてもよい。更に、米国食品医薬品局などの規制機関による本化合物の使用承認に対する指示書をキットに含めてもよい。場合により、本化合物のために添付ラベル又は製品添付文書をキットに含めてもよい。包装容器及び/又は任意の製品添付文書自体が、規制機関の承認を受けることもある。該キットには、包装容器中に固相又は液相(用意する緩衝液など)内に化合物を含めることができる。更に、本方法を実施するための溶液調製用緩衝液、及び液体を収納容器間で移し替えるためのピペットを該キットに含めることもできる。
【0140】
更に、本明細書に記載の併用療法に使用するための他の化合物を1種又は複数種、場合によりキットに含めてもよい。ある一定の実施形態では、包装容器が静脈内投与用の収納容器である。他の実施形態では、化合物を吸入具中に入れる。更に他の実施形態では、ポリマーマトリックス中に、又はリポソーム形態で化合物を配置する。
【0141】
VII.Aβレベルの調節における化合物の活性の評価
本明細書中に記載の化合物には、Aβレベルを調節する化合物が含まれる。当分野で知られている且つ/又は本明細書中に記載されている様々なアッセイを用いて、Aβレベルを調節する活性について化合物を評価することができる。一般に、APP若しくはその断片及び/又はAβの供給源を化合物と適切な時間接触させ、以下に記載のようにAβのレベルを直接又は間接的に評価する。化合物の存在下におけるAβのレベルを適切な対照(ベヒクル対象や陽性対照など)中のレベルと比較して、化合物がAβレベルを調節するかどうかを決定する。
【0142】
A.APP、アミロイド前駆体断片及び/又はAβの供給源
Aβを調節することにおける化合物の活性を評価するために使用したAPP、アミロイド前駆体断片の供給供給源及び/又はAβは、検出する産物並びにアッセイの性質に依存する。例えば、γ−セクレターゼによるAPP又はアミロイド前駆体断片の切断を調節することにおける化合物の活性を評価するためには、C99などの、β−セクレターゼによる切断の産物に対応するAPPのC末端断片を用いることができる。APP産生のすべての段階における化合物の効果を評価する場合は、完全長のAPPが好ましいかもしれない。
【0143】
化合物の活性を評価するために使用したAPP、アミロイド前駆体断片及び/又はAβの適切な供給源には、生きた実験動物(例えば天然の動物及びトランスジェニック動物)、並びに組織(例えば脳)、組織抽出物、体液(例えば血液、血漿、脳脊髄液、尿など)及びヒト若しくは実験動物由来の初代細胞が含まれる。他の供給源には、組換え細胞系、それ由来の細胞溶解液(全細胞抽出物、膜画分など)及びそれ由来の細胞外培地が含まれる。特定の用途には、実質的に精製したAPP又はAβを代わりに用いてもよい。組織を単離する方法、初代細胞及び組換え細胞の産生及び維持、溶解物の調製、並びにAβアッセイに適合性のあるタンパク質精製は当分野で知られている。
【0144】
Aβペプチドの産生、分泌及び/又は分解に対する化合物の効果を直接若しくは間接的に評価するために、APP若しくはそのアミロイド前駆体断片を含み、それをタンパク質分解によりプロセッシングしてAβを産生する能力を有するin vivo又はin vitroの供給源を使用することができる。Aβの形態(例えば単量体、オリゴマー若しくは原線維状、又はコンホメーション)、原線維の沈着或いは原線維の分解に対する化合物の効果を評価するためには、Aβ単量体、オリゴマー若しくは原線維を含むin vitro又はin vivoの供給源を使用することができ、これは任意選択でAPP又はアミロイド前駆体断片を産生する細胞を同時に含んではならない。
【0145】
B.トランスジェニック動物
化合物の活性の評価に有用なトランスジェニック動物は、本明細書中に記載のように、任意の所望の野生型又は突然変異体APP、アミロイド前駆体断片若しくはAβアイソフォームを発現することができる。その結果もたらされる動物は、ヒトの疾患のモデル、特にアルツハイマー病並びに他の神経変性及びアミロイド関連疾患のモデルとして有利に役割を果たすことができる。トランスジェニック動物には、それだけには限定されないがマウス、ラット及びハムスターを含めたげっ歯類、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ブタ、ウシ、サル、霊長類並びに他のヒトでない哺乳動物が含まれる。
【0146】
任意選択で、動物は更に、野生型若しくは突然変異体プレセニリン(PS−1若しくはPS−2)、BACE、IDE及び/又はネプリリシンなどの、APPのプロセッシング又は分解経路に関与している1つ又は複数の他の遺伝子、並びに/或いはtauなどの病因に関与している1つ又は複数の他の遺伝子を外因的に発現することができる。
【0147】
外来遺伝子(若しくは複数の外来遺伝子)は、任意の若しくはすべての発生段階において、生理的レベル、それを超えたレベル若しくはそれを下回ったレベルで、制御要素の適切な選択によって、すべての組織又は選択された組織のみ(例えば神経組織)で発現されることができる。トランスジェニック動物は更に、外来遺伝子(若しくは複数の外来遺伝子)に対してホモ接合性、ヘミ接合性、ヘテロ接合性又はキメラであることができる。トランスジェニック動物は、外来遺伝子(若しくは複数の外来遺伝子)を、その内在性の対応物と共に、又はその代わりに(例えば「ノックイン」方法による)含むことができる。トランスジェニック動物を作製する方法は、例えばHogan他、(1994)、マウス胚の操作:実験の手引き(Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨークを含めた標準の実験手引きに記載されている。
【0148】
APPを発現するトランスジェニック動物は当分野で知られており、ハムスタープリオンタンパク質遺伝子プロモーターの制御下にあるスウェーデン(Swedish)(Lys670Asn、Met671Leu)二重変異を有するヒトAPP695を含むTg2576マウス(Hsiao他、(1996)、Science、274:99〜102;米国特許第5,877,399号);血小板由来成長因子(PDGF)鎖遺伝子プロモーターの制御下にあるヒトAPP695(Val717Phe)を含むV717F PDAPPマウス(Games他、(1995)、Nature、373:523〜527;米国特許第5,811,633号);及びジストロフィン神経プロモーターの制御下にある、APPの神経毒性があるC末端の100個のアミノ酸を含むC100マウス(Neve他、(1996)、Neurobiol.Aging、17:191〜203;米国特許第5,672,805号)が含まれる。APPを発現するさらなるトランスジェニック動物は、例えば米国特許第5,612,486号;第5,850,003号;第5,387,742号;第6,037,521号;第6,184,435号;第6,187,992号;第6,211,428号;及び第6,340,783号に記載されており、Emilien他、(2000)、Arch.Neuro.、57:176〜181に総説がある。
【0149】
C.細胞
化合物の活性の評価に有用な細胞は、本明細書中に記載のように、任意の所望の野生型又は突然変異体APP及び/若しくはAβアイソフォームを、内因的に又は組換えのどちらかによって発現することができる。細胞は、ヒト及び上述のトランスジェニック動物などの他の哺乳動物を含めた任意の動物由来の初代細胞又は細胞系であることができる。細胞は、神経系列(例えば皮質神経細胞、小グリア細胞、グリア細胞、アストロサイト)、線維芽細胞、リンパ球及び上皮細胞などの任意の分化した系列由来であるか、又は全能性若しくは多能性であることができる(Freshney,R.I.、(2000)、「動物細胞の培養:基本技術の手引き」(”Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique”)第4版、Wiley−Liss参照)。Aβを調節することにおける化合物の活性を評価するために適切な例示的な細胞系は、本明細書中の実施例部分に記載されているSH−SY5Y−APP751である。さらなる例示的な細胞系はHGBであり、これは内在APPを発現する。
【0150】
Aβを調節することにおける化合物の活性を評価するために適切な例示的な初代細胞は、Tg2576トランスジェニックマウス、又はAPPを発現する他のトランスジェニック動物由来の混合脳培養物である。混合脳培養物は、例えば、約17日齢のマウス胚から脳組織を切開し、パパインを用いて脳組織を解離し、初代神経培養の標準手順によって細胞を培養することによって調製することができる。
【0151】
適切な構成的又は誘導性制御要素の制御下にある、APP、アミロイド前駆体断片若しくはAβをコードしている核酸は、様々な周知の形質移入方法によって、初代細胞又は細胞系内に過渡的に若しくは安定に導入することができる(Sambrook及びRussell、(2000)、「分子クローニング:実験の手引き」(”Molecular Cloning:A Laboratory Manual”)、Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel他(編)(最新版)、「分子生物学の最新プロトコル(”Current Protocols in Molecular Biology”)、John Wiley&Sons)。
【0152】
D.Aβレベルを直接評価するアッセイ
Aβのレベルを直接評価するアッセイを用いて、Aβを調節する能力について化合物を評価することができる。従って、化合物がAβを調節する能力は、特定のAβペプチド(Aβ43、Aβ42、Aβ40、Aβ39、Aβ38、Aβ37、Aβ34、11−43、11−42、11−40、11−39、11−38、11−37、11−34など)の量を決定することによって、Aβペプチドの量を総合的に決定することによって、第2のAβペプチドの量に対する特定のAβペプチドの量(Aβ42対Aβ40の比など)を決定することによって、特定の形態のAβ(単量体、オリゴマー、若しくは原線維状;溶液中、若しくは溶菌班中に凝集して;特定のコンホメーションなど)の量又は相対的な量を決定することによって、且つ/或いは特定の位置のAβ(細胞内、膜関連若しくは細胞外、又は特定の組織若しくは体液中など)の量又は相対的な量を決定することによって、評価することができる。
【0153】
試料中の、特定のAβ種若しくは形態、又はAβペプチドの総合的な量又は相対的な量を決定するための数々の方法が当分野で知られている。このような方法では、任意選択で、内部標準及び/又は既知量の標準物質を用いたアッセイによって作成した検量線を使用してAβのレベルを定量することができる。
【0154】
例えば、Aβに特異的な抗体(例えばモノクローナル及びポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、二官能性抗体、ヒト化抗体、CDR移植抗体及びCDR移植代替骨格、並びにそれらの抗原結合断片)を用いる免疫検出方法を使用することができる。このような抗体は、任意選択で特定のAβ種又は形態に対して特異的であることができる。例えば、AβのN末端、C末端、若しくは中心部分で又はその付近でエピトープに結合する抗体は、Aβの複数のアイソフォームを同時に検出するために使用することができる。例示的な抗体には、それだけには限定されないが、6E10、B436、Aβ12−28に対して産生させた抗体、21F12、A387、クローンGB−10、及びAβ40に選択的な抗体が含まれる。更に、任意のAβ種の任意の所望のエピトープに対して選択的な抗体を、当分野で記載されている周知の方法によって容易に調製することができる。
【0155】
抗体若しくは結合剤は任意選択で検出可能に標識することができ、又は、二次抗体若しくは結合剤を用いる場合は、二次抗体若しくは結合剤を検出可能に標識することができる。例示的な検出可能な標識には、放射性標識、蛍光標識、生物発光標識、化学発光標識及び酵素標識が含まれる。このような標識を検出する方法、及びこのような検出に基づいて結合したペプチドの量を定量的に又は定性的に評価する方法は、当分野で周知である。
【0156】
Aβレベルを評価するために適合させることができる免疫検出方法は、当業者には周知である。代表的な方法には、それだけには限定されないが、免疫沈降(任意選択で電気泳動分離又は変性若しくは非変性ゲル、或いは質量分析と組み合わせて)、ウエスタンハイブリダイゼーション、免疫細胞化学、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づいた方法、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の様々な様式が含まれる。Aβの任意の形態(例えば、Aβが単量体、オリゴマー又は原線維状の形態、及びそのコンホメーションにかかわらず)を評価するためには、非変性分離条件(例えば非変性電気泳動又はクロマトグラフィー)を用いることができる。Abの特定の種のレベルを評価するためには、尿素−ビス−ビシン(bicine)−SDSに基づいた電気泳動を行うことができ、これにより、Aβ37、Aβ38、Aβ39、Aβ40、Aβ2−42、及びAβ3−42の種を分離することができる(Wiltfang他、(2001)、J.Biol.Chem.、276:42645〜42657)。
【0157】
上述のものなどの免疫検出方法は容易に、Aβ結合タンパク質、その断片、及び小分子化合物などのAβに結合する非抗体系薬剤と共に用いるために適合させることができる。Aβに結合するタンパク質及び化合物は当分野で知られており、又は日常的なスクリーニングアッセイによって同定することができる。
【0158】
多光子顕微鏡観察及びポジトロン放出断層撮影などのイメージング方法を含めた、生きた生物の組織に堆積されるAβの量を決定するための任意の方法を用いることができる。例えば、イメージング剤が血液脳関門を通過し、高い親和性で、チオフラビン−T類似体2−[4’−(メチルアミノ)フェニル]ベンゾチアゾールなどのアミロイド堆積物(Mathis他、(2002)、Bioorg.Med.Chem.Lett.、12:295〜298)及びコンゴレッド誘導体メトキシ−X04(Klunk他、(2002)、J.Neuropathol.Exp.Neurol.、61:797〜805)に結合する。
【0159】
E.Aβレベルを間接的に評価するアッセイ
或いは、Aβのレベルを間接的に評価するアッセイを用いて、Aβを調節する能力について化合物を評価することができる。当業者は、Aβレベルの調節を評価するための適切なアッセイを決定することができる。例えば、切断されていないAPPの量、又はAβ以外のAPPのプロセッシングの産物の量を評価することができる。
【0160】
従って、APP、並びに/又はα−セクレターゼの切断産物(sAPPα若しくはC83など)、並びに/又はα−セクレターゼ及びγ−セクレターゼの合わさった切断の産物(p3など)、並びに/又はβ−セクレターゼの切断産物(sAPPβ、C99、若しくはC89など)の量或いは相対的な量を調節する化合物の能力を評価することができる。APPの量又はAPPのプロセッシングの産物の量を決定する方法は当分野で知られており、適切な抗体を用いた、Aβについて上述したものと類似の免疫検出アッセイが含まれる。
【0161】
以下の実施例は、本発明の態様を更に例示するために提供する。これらの実施例は非限定的であり、本発明のいかなる態様をも限定するものとして解釈されるべきでない。
【実施例】
【0162】
全ての溶媒及び試薬は、他に示されていない場合は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee、WI)から入手した。
【0163】
構造的特徴付けは、H NMR分光法を用いて行った。プロトン核磁気共鳴(H NMR)スペクトルを、重クロロホルム(CDCl)又は重水(DO)中で、残余のH溶媒のピークを内部標準として用い、Varian 300MHz NMR spectrometerで記録した。
【0164】
精製した化合物について、Shimadzu HPLC systemと連結したApplied Biosystems AP150X mass spectrometerを用い、正確な質量及び純度を分析した。典型的なグラジエントに、4分間でアセトニトリル/水1〜99%の移動相を用いた。0.035から0.050%のトリフルオロ酢酸を、移動相に加えた。グラジエントを、7ml/分で、Chromalith(商標) SpeedRod RP−18e、4.6×50mmカラムに流した。化合物の構造は、(M+H)イオン(M+1)の観察により確認した。化合物の純度は、波長220nm及び254nmの紫外光吸収により評価した。純度割合は、クロマトグラムのピーク下面積の積分をベースにした。
【0165】
(実施例1)
代表的なα−ブロモケトン誘導体の調製
代表的なα−ブロモケトン誘導体を、代表的なチオ尿素との縮合用に調製した。代表的なα−ブロモケトン誘導体の合成に用いた典型的な手順を以下に示す。
【0166】
A. 2−ブロモ−1−[4−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−フェニル]−エタノン(10)
【化40】

【0167】
4−アセチルフェニルボロン酸(820mg、5mmol、2.0当量)及び4−メチル−1H−イミダゾール(205mg、2.5mmol、1.0当量)を、100mLの丸底フラスコ中のDMF/CHCl溶液(1:10)22mlに溶解させた。次いで、この反応混合物に、無水酢酸銅(681mg、3.75mmol、1.5当量)、4Åモレキュラーシーブ(1.875g)、及びピリジン(0.4ml、5mmol、2.0当量)を加えた。反応物を大気下、室温で16時間攪拌し、この時点で反応が完了したことをLC−MSで判断した。次いで、反応物をセライトでろ過し、メタノールで洗浄し、シリカゲルクロマトグラフィー(ISCO system、0〜5%メタノール/酢酸エチル)で精製して、化合物9(200mg、40%の収率)を得た。
【0168】
化合物9(200mg、1mmol)を、30重量%臭化水素の酢酸溶液(2mL)に溶解した。この溶液に、臭素(160mg、1mmol)を滴下して加えた。反応物を、室温で2時間攪拌した。反応混合物を、氷水(〜5g)に注いだ。所望の生成物が沈殿した。固形沈殿物をろ過し、氷冷水で洗浄し、次いで、真空ポンプで乾燥して、黄色固形生成物10(120mg、HOAc塩)を得た。これを、更に精製することなく、後のステップに用いた。
【0169】
B. 2−ブロモ−1−[4−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−フェニル]−プロパン−1−オン(40)
【化41】

【0170】
4−メチル−イミダゾール(1.72g、21mmol、1.05当量)及び1−(4−フルオロ−フェニル)−プロパン−1−オン(3.04g、20mmol、1.0当量)のDMSO(15ml)溶液を、90℃で一晩、無水炭酸カリウム(5.52g、40mmol、2.0当量)と共に攪拌した。この時点で反応が完了したことをLC−MSで判断した。冷えると直ぐに、反応混合物を氷水(〜50g)に注いだ。所望の生成物が沈殿し、この沈殿物をろ過し、冷水で洗浄し、真空ポンプで乾燥させて、淡黄色固形生成物11(2.14g、50%の収率)を得た。化合物11を、上述したものと同様の方法で臭素化し、化合物12を得た。
【0171】
上述したものと同様の手順で、1−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−プロパン−1−オンを、4−メチル−イミダゾールと反応させて、化合物13を得た。上述したような方法で13を臭素化することにより、{4−[3−フルオロ−4−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−フェニル]−チアゾール−2−イル}−(5−イソプロピル−4−メトキシ−2−メチル−フェニル)−アミン(14)を得た。
【化42】

【0172】
C.2−ブロモ−1−[4−(4−エチル−イミダゾール−イル)−フェニル]−エタノン(16)
【化43】

【0173】
1. 5−エチル−4−トシル−2−オキサゾリン(15)
乾燥エタノール60mL中にトシルメチルイソシアネート(TosMIC、3.90g、20mmol)及びプロピオンアルデヒド(1.5mL、20.4mmol)を含む攪拌している懸濁液に、微粉状シアン化ナトリウム(0.098g、2mmol)を加えた。反応混合物は透明になり、オキサゾリンの白色結晶は15分で沈殿し始めた。反応物を続けて、更に30分間攪拌した。この混合物をろ過し、結晶をエーテル−ヘキサン(1:1)で洗浄した後、乾燥した。化合物15を、収率81%で得た(4.1g)。構造は、CDCl中、H NMRで確認した。LC−MS:[M+1]=254。純度は、>98%であった。
【0174】
2. 4−エチルイミダゾール(16)
耐圧フラスコ中で、化合物15(1.1g、4.3mmol)を、アンモニアの乾燥メタノール(30mL)飽和溶液に溶解した。反応混合物を、100〜110℃で18時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、生成物をフラッシュクロマトグラフィーでCHCl−MeOHを用いて溶離して精製した。化合物16を、淡黄色油状物として単離した(収率72%、0.3g)。構造はCDCl中、H NMRにより、また、純度はCHCl−MeOH(9:1)中、TLCにより確認した。純度は、>95%であった。
【0175】
3. 1−[4−(4−エチル−イミダゾール−1−イル)−フェニル]−エタノン(17)
NaH(60%油分散液中0.068g、1.7mmol)を、室温で攪拌しながら、化合物16(0.180g、1.8mmol)のDMF(6mL)溶液に加えた。混合物を15分間攪拌し、4’−フルオロアセトフェノン(0.215g、1.56mmol)のDMF(2mL)溶液を加えた。反応混合物を80℃で1時間加熱し、次いで冷却し、水で希釈し、EtOAcで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、乾燥し、蒸発させて、黄色固体を得た。室温で静置すると直ぐに、化合物17は結晶化して、白色針状物を形成した。収量は、0.270g、67%であった。構造は、CDCl中、H NMRで確認した。LC−MS:[M+1]=215。純度は、>98%であった。
【0176】
4. 2−ブロモ−1−[4−(4−エチル−イミダゾール−イル)−フェニル]−エタノン(18)
ケトン17(0.160g、0.66mmol)を、30%酢酸/HBr(5mL)に溶解し、その後、臭素(0.104g、0.66mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌し、次いで、冷水(10mL)に注いだ。生成物を、酢酸エチル(20mL)で抽出した。合わせた有機層を水及びブラインで洗浄し、乾燥し、蒸発させて黄色固体を得て、酢酸エチル:ヘキサン(1:1)で結晶化し、0.170g(77%)の化合物18を得た。構造は、CDCl中、H NMRで確認した。LC−MS:[M+1]=294。純度は、>95%であった。
【0177】
D. 2−ブロモ−1−[6−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−ピリジン−3−イル]−エタノン(20)
【化44】

【0178】
1. 1−[6−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−ピリジン−3−イル]−エタノン(19)
1−(6−クロロ−ピリジン−3−イル)−エタノン(7.00g、45.16mmol)及び4−メチルイミダゾール(11.11g、135.50mmol)を、DMSO(35ml)中で混合し、その後、KCOを加えた。混合物を、高速で攪拌しながら、110℃で22時間加熱した。次いで、混合物を室温に冷却し、氷水(400ml)に注ぎ、15分間激しく攪拌した。得られた沈殿をろ過で回収し、水で穏やかに洗浄した。得られた物質を真空で乾燥して、19を黄褐色固体として得た(6.1g、67%)。

【0179】
2. 2−ブロモ−1−[6−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−ピリジン−3−イル]−エタノン(20)
化合物19(6.1g、30.30mmol)を、30%HBr/AcOH(75ml)に懸濁させた。臭素(4.82g、30.30mmol)を1時間かけて滴下して加えた。反応物を、室温で2時間攪拌した。反応混合物を氷水600mLに注ぎ、高速で15分間攪拌した。得られた沈殿をろ過で回収し、水で洗浄した。化合物を空気乾燥して、20を黄色固体として得た(10.6g、80%)。

【0180】
E.1−[4−(5−ブロモ−チアゾール−2−イル)−フェニル]−エタノン(1221)及び2−ブロモ−1−[4−(5−ブロモ−チアゾール−2−イル)−フェニル]−エタノン(1222)
【化45】

【0181】
1. 1−[4−(5−ブロモ−チアゾール−2−イル)−フェニル]−エタノン(1221)
2−ブロモチアゾール(1g、6.1mmol)をフラスコに入れ、トルエン:EtOH(4:1、80mL:20mL)を加え、更に4−アセチルフェニルボロン酸(1.2g、7.32mmol)、炭酸ナトリウム(2.16g、20.4mmol)、及び水(3mL)を加えた。反応混合物を、30分間、それに窒素をバブリングさせることで脱気した。続けて、Pd(PPhを加え、反応混合物を80℃で17時間加熱し、その後、室温まで冷やした。EtOAc(3×100mL)及び水(100mL)を加えた。有機抽出物を水(l00mL)、ブライン(l00mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、カラムクロマトグラフィー(120g ISCOカートリッジ)により精製した。化合物1219を、白色粉末として単離した(974mg、79%、C11NOSの質量、計算値:203.3、観測値:204.2[M+1])。化合物1219(204mg、1mmol)を、30%HBrの酢酸(3mL)溶液に溶解し、その後、臭素(160mg、1mmol)を滴下して加えた。反応混合物を、室温で6時間攪拌し、その後、それを氷水に注ぎ、10分間攪拌し、沈殿をろ過した。化合物1221を、黄色粉末として単離した(257mg、92%、C11BrNOSの質量、計算値:281.2、観測値:282.1[M+1])。
【0182】
2. 2−ブロモ−1−[4−(5−ブロモ−チアゾール−2−イル)−フェニル]−エタノン(1222)
上述したものと同様の手順で、化合物1220を2,5−ジブロモチアゾール(809mg、4.94mmol)から出発することにより調製した。1−[4−(5−ブロモ−チアゾール−2−イル)−フェニル]−エタノン1220を淡黄色粉末として単離した(500mg、43%、C11BrNOSの質量、計算値:283.2、観測値:284.1[M+1])。2−ブロモ−1−[4−(5−ブロモ−チアゾール−2−イル)−フェニル]−エタノン1222を、淡黄色粉末として単離した(436mg、77%、C11BrNOSの質量、計算値:360.1、観測値:361.6[M+1])。
【0183】
下記表1に記載の以下のα−ブロモケトン誘導体は、調製した全ブロモケトン化合物の典型的実例である。
【表1】

【0184】
(実施例2)
チオ尿素/尿素誘導体の調製
チオ尿素誘導体は、アニリン誘導体をイソチオシアン酸アリール誘導体と結合させることにより調製した。大半のアニリン化合物は市販されており、且つ/又はよく知られた方法を用いて合成された。
【0185】
典型的なアニリンである、5−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチル−アニリンを、以下の代表的な経路により調製した。この手順は、他の5−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチル−アニリン類似体を合成するためにも用いられた。
【化46】

【0186】
化合物29である、ジエチル−(4−メチル−3−ニトロフェニル)−アミンを、350mLのガラス製ボンベ中で、4−メチル−3−ニトロアニリン(25.0g、164.5mmol)及び臭化エチル(44.8g、411.2mmol)をDMFに溶解して調製した。大きなスターラーバー及びKCO(56.75g、411.2mmol)を加えた。ボンベをきつくキャップし、80℃の油浴に入れた。次いで、混合物を40時間、激しく攪拌した。次いで、反応物を冷却し、キャップを外し、この物質をEtOAc(400mL)と水(300mL)とに分配した。次いで、水層をEtOAc(150mL)で2回洗浄し、合わせたEtOAc層を水(500mL)で2回、ブライン(500mL)で1回洗浄した。次いで、EtOAc層をMgSOで乾燥し、ろ過し、濃縮して黒色に近い液体を得た。生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで、5%EtOAc/ヘキサンを用いて精製した。純粋な画分を濃縮して、化合物29を橙黄色の液体(20.8g、61%)として得た。

【0187】
化合物29(20.8g、100.0mmol)を、MeOH:CHClに溶解し、氷浴中で0℃に冷却した。NiCl・6HO(4.0g、16.8mmol)及びNaBH(11.0g、297.3mmol)を、1gの分量で90分かけて加えた。TLCにより、反応の完了を確認した。溶媒を減圧下で除去し、この物質をCHCl(500mL)及びシリカゲル中に再懸濁させた。次いで、減圧下で、この物質がぼろぼろの灰色粉末となるまで溶媒を除去した。粉末を漏斗に入れ、EtOAc(500mL)で穏やかに洗浄した。得られた溶液を濃縮して黄色液体を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで、30%EtOAc/ヘキサンを用いて溶離して精製した。純粋な画分を合わせ、減圧下で濃縮して、化合物30を薄紫色液体として得た(15.3g、85%)。

【0188】
以下の代表的なチオ尿素誘導体を、代表的なα−ブロモケトンとの縮合用に調製した。チオ尿素誘導体の調製に用いた典型的な手順を以下に示す。
【0189】
A. 2−メチル−5−ピロール−1−イル−フェニル−チオ尿素(32)
【化47】

【0190】
イソチオシアン酸ベンゾイル(6.4mmol、1.04g)を含む乾燥アセトン10mLに、2−メチル−5−ピロール−1−イル−フェニルアミンを攪拌しながら素早く加えた。反応物を40℃で2時間攪拌し、次いで、激しく攪拌しながら、過剰の砕いた氷に注いだ。得られた固体を回収し、冷水、次いでヘキサンで十分に洗浄し、次いで、空気乾燥した。生成物31(90%の収率)を、更に精製することなく、直接次のステップの反応に用いた。
【0191】
化合物31を、予め加熱した(〜80℃)攪拌している10%NaOH水溶液に、一度に加えた。一晩攪拌後、混合物を過剰の氷に注いだ。pH値を、濃HClで5〜6に調整した。得られた安息香酸と所望の生成物32との共沈物を回収し、冷水、次いでヘキサンで洗浄して安息香酸を除いた。生成物を空気乾燥し(80%の収率)、更に精製することなく後の反応に用いた。
【0192】
B. 4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−フェニル−チオ尿素(34)
【化48】

【0193】
イソチオシアン酸ベンゾイル(33mmol、5.38g)を含む乾燥アセトン30mLに、アニリンを攪拌しながら素早く加えた。反応物を40℃で1時間攪拌し、次いで、激しく攪拌しながら、過剰の砕いた氷に注いだ。得られた固体を回収し、冷水、次いでヘキサンで十分に洗浄し、次いで、空気乾燥した。生成物33(80%を越える収率)を、更に精製することなく、直接次のステップの反応に用いた。
【0194】
化合物33を、予め加熱した(約80℃)攪拌している10%NaOH水溶液に、一度に加えた。一晩攪拌後、混合物を過剰の氷に注いだ。pH値を、濃HClで5〜6に調整した。得られた安息香酸と所望の生成物34との共沈物を回収し、冷水、次いでヘキサンで洗浄して安息香酸を除いた。生成物を空気乾燥し(〜80%の収率)、更に精製することなく後の反応に用いた。
【0195】
C. (4−エトキシ−2,5−ジメチル−フェニル)−チオ尿素(39)
【化49】

【0196】
1. 4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−フェニル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(35)
THF40mL中に4−アミノ−2,5−ジメチル−フェノール(20mmol、2.74g)を含む溶液に、Boc無水物(22mmol、4.8g)及びTEA(30mmol、4.17mL)をそれぞれ加えた。室温で一晩攪拌後、反応混合物を濃縮してTHFを除き、残渣を水(50mL)及び酢酸エチル(80mL)に再溶解させた。水層を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥した。溶媒の除去後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して(ISCO system、5〜40% 酢酸エチル/ヘキサン)、表題化合物35を得た(90%の収率)。
【0197】
2. (4−エトキシ−2,5−ジメチル−フェニル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(36)
DMF5mL中に化合物35(4mmol、948mg)を含む溶液に、炭酸カリウム(KCO、8mmol、1.1g)及びブロモエタン(4.8mmol、523mg)を加えた。反応物を60℃で一晩攪拌した。水(2mL)を加えて、未反応の炭酸カリウムを溶解し、次いで、反応混合物を酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。有機層を合わせて、NaSOで乾燥させた。溶媒の除去後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(0〜30%酢酸エチル/ヘキサン)を用いることにより精製し、表題生成物36(90%の収率)を得た。
【0198】
3. 4−エトキシ−2,5−ジメチル−フェニルアミン(37)
ジクロロメタン10mL中に36(950mg、3.6mmol)を含む溶液に、トリフルオロ酢酸(5mL)を加えた。反応混合物を2時間攪拌した。この時点で、LC−MSは反応が完了したことを示した。反応フラスコを濃縮し、溶媒及びほとんどのTFAを除去した。次いで、残渣を高真空で24時間、更に乾燥させ、表題化合物37をTFA塩として得た。
【0199】
化合物38及び39を、化合物33及び34の調製として上述した合成手順を用いて合成した。
【0200】
D. N,N−ジエチル−2,5−ジメチル−ベンゼン−1,4−ジアミン−チオ尿素(44)
【化50】

【0201】
1. (4−アミノ−2,5−ジメチル−フェニル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(40)
THF40mL中に2,5−ジメチルベンゼン−1,4−ジアミン(30mmol、4.1g)を含む溶液に、Boc無水物(33mmol、7.2g)及びTEA(45mmol、6.26mL)をそれぞれ加えた。室温で一晩攪拌後、反応混合物を濃縮してTHFを除去し、残渣を水及び酢酸エチルに再溶解させた。水層を酢酸エチル(3×80mL)で抽出した。有機層を合わせて、NaSOで乾燥した。溶媒の除去後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(5〜50%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて精製し、表題化合物40(90%を越える収率)を得た。
【0202】
2. (4−ジエチルアミノ−2,5−ジメチル−フェニル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(41)
DMF3mL中に40(5mmol、1.18g)を含む溶液に、炭酸カリウム(KCO、15mmol、2.07g)及びブロモエタン(12.5mmol、1.36g、0.93mL)を加えた。反応物を70℃で一晩攪拌した。水(3mL)を加えて、未反応の炭酸カリウムを溶解させ、反応混合物を酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。有機層を合わせてNaSOで乾燥させた。溶媒の除去後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜30%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて精製し、表題化合物41を得た(75%の収率)。
【0203】
3.N,N−ジエチル−2,5−ジメチルベンゼン−1,4−ジアミン(42)
ジクロロメタン2mL中に41を含む溶液に、トリフルオロ酢酸(1mL)を加えた。反応混合物を2時間攪拌した。この時点で、LC−MSは反応が完了したことを示した。反応物を濃縮し、溶媒及びほとんどのTFAを除去した。次いで、残渣を高真空で24時間更に乾燥させ、表題化合物42をTFA塩として得た(100%の収率)。
【0204】
化合物43及び44を、化合物33及び34の調製として上述したものと同様の合成手順を用いて42から合成した。
【0205】
E. N,N−ジエチル−4,6−ジメチルベンゼン−1,3−ジアミンチオ尿素(49)
【化51】

【0206】
1. (5−アミノ−2,4−ジメチル−フェニル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(45)
THF40mL中に2,6−ジメチルベンゼン−1,3−ジアミン(30mmol、4.1g)を含む溶液に、Boc無水物(33mmol、7.2g)及びTEA(45mmol、6.26mL)をそれぞれ加えた。室温で一晩攪拌後、反応混合物を濃縮してTHFを除き、残渣を水及び酢酸エチルに再溶解させた。水層を酢酸エチル(3×80mL)で抽出した。有機層を合わせて、NaSOで乾燥した。溶媒を除去後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(5〜50%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて表題化合物45を得た(95%の収率)。
【0207】
2. (5−ジエチルアミノ−2,4−ジメチル−フェニル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(46)
DMF3mL中に45(5mmol、1.18g)を含む溶液に、炭酸カリウム(KCO、15mmol、2.07g)及びブロモエタン(12.5mmol、1.36g、0.93mL)を加えた。反応物を70℃で一晩攪拌した。水(3mL)を加えて、未反応の炭酸カリウムを溶解させ、次いで反応混合物を酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。有機層を合わせてNaSOで乾燥させた。溶媒の除去後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(0〜30%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて精製し、表題化合物46を得た(80%の収率)。
【0208】
3. N,N−ジエチル−4,6−ジメチルベンゼン−1,3−ジアミン(47)
ジクロロメタン10mL中に46(1.16g、4.0mmol)を含む溶液に、トリフルオロ酢酸(5mL)を加えた。反応混合物を2時間攪拌した。この時点で、LC−MSは反応が完了したことを示した。反応物を濃縮し、溶媒及びほとんどのTFAを除去した。次いで、残渣を高真空で24時間、更に乾燥させ、表題化合物46をTFA塩として得た(100%の収率)。
【0209】
化合物48及び49を、化合物33及び34の調製として上述したものと同様の合成手順を用いて47から合成した。
【0210】
F. 2−メチル−5−ブロモフェニルチオ尿素(50)
【化52】

【0211】
2−メチル−5−ブロモアニリン(10.8g、58.4mmol)及びイソチオシアン酸ベンゾイル(9.5g、58.4mmol)をアセトン中で混合して、30分間加熱還流した。反応物を冷却し、次いで、攪拌している氷水に注いだ。混合物を15分間攪拌し、その後、沈殿物を形成させ、これをろ過し、1時間、空気中、真空乾燥した。次いで、得られた黄色粉末を5%NaOH水溶液中に懸濁させ、80℃で18時間攪拌した。反応物を冷却させ、次いで、攪拌している氷水(400ml)に注いだ。氷上で1時間攪拌後、得られた白色固体を真空ろ過し、1時間、吸気ろ過乾燥して、化合物51を白色固体として得た(10.1g、71%)。

【0212】
下記表2に記載の以下のチオ尿素/尿素誘導体は、調製した全チオ尿素化合物の例示群である。
【表2】

【0213】
(実施例3)
代表的なα−ブロモケトンと典型的なチオ尿素との縮合
代表的なα−ブロモケトン誘導体(0.08mmol、下記表3の「ブロモケトン」欄参照)を、4−ジエチルアミノ−2−メチル−フェニル−チオ尿素67(0.08mmol)の1mL DMF溶液と混合した。反応物を、任意にボルテックスで攪拌しながら、70℃で4〜6時間攪拌した。室温に冷却後、反応混合物をアセトニトリル/水/TFAグラジエントを用いたC18カラムの逆相HPLC(Gilson 215)に直接注入し、表題生成物を単離した。表題生成物をTFA塩として真空で濃縮した。
【化53】


【表3−1】


【表3−2】

【0214】
以下の{4−[6−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−ピリジン−3−イル]−チアゾール−2−イル}−(2−メチル−5−ピロール−1−イル−フェニル)−アミン及びそれらの代表的な類似体を上述のものと同様の手順で調製した。通常、0.1mmolの32を、1mlのDMF溶液に様々なα−ブロモケトン誘導体と共に溶解させた(下記表4の「ブロモケトン」欄参照)。反応物を70℃で6時間攪拌した。室温に冷却後、反応混合物をアセトニトリル/水/TFAグラジエント及びC18固定相を用いた逆相HPLCで精製した。生成物を単離し、次いで濃縮して表題化合物をTFA塩として得た。
【化54】


【表4】

【0215】
様々な代表的N,N−ジエチル−2,5−ジメチル−N’−{4−[4−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−フェニル]−チアゾール−2−イル}−ベンゼン−1,4−ジアミン化合物及びそれらの典型的な類似体を上述したものと同様の手順により調製した。この反応で採用した代表的なブロモケトン及び結果として得られた表題化合物を以下の表5に記載する。
【化55】


【表5】

【0216】
様々な代表的N,N−ジエチル−4,6−ジメチル−N’−{4−[4−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−フェニル]−チアゾール−2−イル}−ベンゼン−1,3−ジアミン化合物及びそれらの典型的な類似体を、上述したものと同様の手順により調製した。この反応で採用した代表的なブロモケトン及び結果として得られた表題化合物を以下の表6に記載する。
【化56】


【表6】

【0217】
縮合生成物(0.1mmol、37.5mg)を続けてDMF0.5mLに溶解した以外は上述したものと同様の方法で、様々な代表的α−ブロモケトン誘導体をチオ尿素誘導体34と混合した。炭酸カリウム(KCO、0.2mmol、27.6mg)及びブロモエタン(0.12mmol、13mg)をこの溶液に加えた。反応物を室温で一晩攪拌した。未反応の炭酸カリウムを除去後、反応混合物をアセトニトリル/水/TFAグラジエント及びC18固定相を用いた逆相HPLCで精製して単離し、次いで表題化合物を濃縮した。この反応で採用した代表的なブロモケトン及び結果として得られた表題化合物を以下の表7に記載する。
【化57】


【表7】

【0218】
上述したものと同様の化学作用を用い、異なる臭化アルキルを用いて87を合成した(観測値[M+1]=431.4、計算値[M+1]=431.6)。
【化58】

【0219】
アミノチアゾール類似体を含む以下の代表的なピペラジニルの調製では、代表的なチオ尿素誘導体(表8の「チオ尿素」欄参照)を、2−ブロモ−1−(4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル)−エタン−1−オン88と混合した。以下の典型的な経路を用いて、表8に示した代表的な表題化合物を調製した。
【0220】
通常、0.1mmolの2−ブロモ−1−(4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル)−エタン−1−オンを、1.0mLの無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、0.1mmolのチオ尿素を加えた。混合物をボルテックスで攪拌しながら70℃で4時間加熱した。室温に冷却後、反応混合物を、10分で1〜99%アセトニトリル/水/0.05TFAのグラジエントを用いる逆相HPLCカラムに直接注入した。表題化合物を含む所望の画分をスピードバックで濃縮した。表題化合物の純度は、HPLCで測定したときに全て95%であった。
【化59】


【表8−1】


【表8−2】

【0221】
アミノチアゾール類似体を含む以下の代表的なイミダゾリルの調製では、代表的なチオ尿素誘導体(表9の「チオ尿素」欄参照)を、2−ブロモ−1−(4−イミダゾール−1−イル−フェニル)エタン−1−オン22と混合した。上述したものと同様の典型的手順を用いて、表9に示した代表的な表題化合物を調製した。
【化60】


【表9】

【0222】
類似体を含むピロリジニルも、上述したものと同様の手順を用いて調製した。典型的なピロリジニル類似体である、化合物1201を、0.1mmolの2−ブロモ−1−(4−ピロリジン−1−イル−フェニル)エタン−1−オンを1.0mLの無水DMFに溶解し、0.1mmolの(3−メチルスルファニル−フェニル)−チオ尿素を加えることにより調製した。混合物を、ボルテックスで攪拌しながら、70℃で4時間加熱した。室温に冷却後、反応混合物を、10分で1〜99%アセトニトリル/水/0.05TFAのグラジエントを用いる逆相HPLCカラムに直接注入した。所望の画分を高速真空で濃縮したところ、化合物1201の純度はHPLCで測定したときに95%であった。
【化61】

【0223】
類似体を含むチアゾールに加えて、類似体を含むオキサゾリドンも上述したものと同様の方法で、アリール尿素誘導体をブロモケトン誘導体と縮合することにより調製した。典型的なオキサゾリドン類似体である、[4−(4−イミダゾール−1−イル−フェニル)−オキサゾール−2−イル]−(4−メトキシ−フェニル)−アミン1202、及びそれらの典型的な類似体を、以下に図示した典型的な経路で調製した。
【化62】

【0224】
この代表的な手順では、ブロモケトン(0.2g、0.75mmol)及び尿素(0.375g、2.26mmol)の混合物を、密封したガラス管内で、DMF1.5mLに溶解した。この混合物を、85〜90℃で攪拌しながら24時間加熱した。反応物を室温に冷却した後、反応混合物をDMFで希釈し、10分で1〜99%CHCN/水/0.05%TFAのグラジエントを用いる逆相HPLCカラムに直接注入した。生成物を含む所望の画分を高速真空で濃縮し、更にヘキサン/EtOAc(1:1)で沈殿させて精製して、0.140g(56%)の化合物1202を白色固体として得た。構造をDMSO中、H NMR及びLC−MS[M+1]=333で確認した。HPLCで測定したときに、純度は>95%であった。
【0225】
(実施例4)
代表的なチアゾールの調製
A. 環状部の付加及びN−置換
様々な代表的N−置換チアゾール含有化合物を以下に示す代表的な経路により調製した。更に、この経路は代表的なチアゾール化合物に環状部を付加する他の手順を示す。
【0226】
下記に示した典型的な経路では、実施例3に記載したものと同様の手順で、ブロモケトン22を4−ブロモ−フェニルチオ尿素と縮合して1203を得た。続くN−アシル化により1204を調製し、他方で続くN−アルキル化により1205を得た。或いは、ヘテロ環を更に1203又は1205に加えて、それぞれ1209又は、1206及び1207を調製した。
【化63】

【0227】
1.(4−ブロモフェニル)−(4−(4−イミダゾール−1−イルフェニル)−チアゾール−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1204)
化合物1203(400mg、1.0mmol)を、窒素雰囲気下で無水ピリジン(5mL)に懸濁させ、その後、ジ−tert−ブチルジカルボネート(262mg、1.2mmol)を加えた。反応混合物を室温で16時間攪拌し(5分後、反応物が透明になった)、その後、それを氷水に注いだ。10分間の攪拌後、混合物をろ過し、沈殿物を2時間吸引して乾燥させた。化合物1204を、灰白色の粉末として単離した(460mg)。質量分析の期待値=497、観測値=498[M+1]。
【0228】
2. 4−ブロモフェニル−(4−(4−イミダゾール−1−イルフェニル)−チアゾール−2−イル)−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−アミン(1208)
化合物1204(500mg、1.26mmol)を、窒素雰囲気下で無水DMF(7mL)に入れ、その後、NaHに加えた(95%粉末35mg、1.38mmol)。室温で10分間攪拌後、2−(トリメチルシリル)エトキシメチルクロリド(0.25mL、1.38mmol)を加えた。反応混合物を、室温で3時間攪拌し、その後、水(50mL)及びEtOAc(3×50mL)を注意深く加えた。有機抽出物を、水(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過した。真空で溶媒を除去することにより、化合物25を黄色油状物として得たが、これは静置すると固化した(530mg)。

【0229】
3. (4−(4−イミダゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イル)−(4−ピペリジン−1−イル−フェニル)−アミン(1209)
ヒートガンで乾燥し、窒素をパージしたバイアル中で、(+/−)−BINAP(l0mg、0.015mmol)を無水トルエン(1mL)に溶解した。2分後、Pd(dba)(3mg、0.0025mmol)、化合物1208(53mg、0.1mmol)、及びピペリジン(11mg、0.12mmol)を反応フラスコに加えた。室温で5分間攪拌後、NaOtBu(14mg、0.14mmol)を加え、反応混合物を90℃で18時間加熱し、その後0.45μmのフィルターを通し、次いでHPLC精製した。化合物1209を茶色油状物として単離した(1.3mg)。質量分析の期待値=401、観測値=402[M+1]。
【0230】
4. (4−ブロモフェニル)−エチル−(4−(イミダゾール−1−イルフェニル)−チアゾール−2−イル)−アミン(1205)
化合物1203(200mg、0.5mmol)を、窒素雰囲気下、無水DMF(7mL)に入れ、その後、NaHを加えた(95%粉末17mg、0.65mmol)。室温で10分間攪拌後、ブロモエタン(0.05mL、0.65mmol)を加え、反応混合物を90℃で2時間攪拌し、その後、水(50mL)及びEtOAc(3×50mL)を注意深く加えた。有機抽出物を水(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過した。真空で溶媒を除去し、化合物1205を淡黄色固体として得た(200mg)。質量分析の期待値=425、観測値=426[M+1]。
【0231】
5. N−エチル−(4−(4−イミダゾール−1−イルフェニル)−チアゾール−2−イル)−(4−ピペリジン−1−イルフェニル)−アミン(1206)
ヒートガンで乾燥し、窒素をパージしたバイアル中で、(+/−)−BINAP(10mg、0.015mmol)を無水トルエン(1mL)に溶解した。2分後、Pd(dba)(3mg、0.0025mmol)、化合物1205(43mg、0.1mmol)、及びピペリジン(11mg、0.12mmol)を加えた。室温で5分間攪拌後、NaOtBu(14mg、0.14mmol)を加え、反応混合物を90℃で23時間加熱し、その後0.45μmのフィルターを通し、次いでHPLC精製した。化合物1206を茶色油状物として単離した(12mg)。質量分析の期待値=429、観測値=430[M+1]。
【0232】
6. N−エチル−(4−(4−イミダゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イル)−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−アミン(1207)
ヒートガンで乾燥し、窒素をパージしたバイアル中で、(+/−)−BINAP(l0mg、0.015mmol)を無水トルエン(1mL)に溶解した。2分後、Pd(dba)(3mg、0.0025mmol)、化合物1205(43mg、0.1mmol)、及びモルホリン(11mg、0.12mmol)を反応フラスコに加えた。室温で5分間攪拌後、NaOtBu(14mg、0.14mmol)を加え、反応混合物を90℃で23時間加熱し、その後0.45μmのフィルターを通し、次いでHPLCで精製した。化合物1207を茶色油状物として単離した(21mg)。質量分析の期待値=431、観測値=432[M+1]。
【0233】
B. 非環状基の付加
ブロモケトン誘導体とチオ尿素誘導体との縮合後、環状基に加えて、非環状官能基を代表的なチアゾール化合物に付加した。以下の典型的な経路に示すように、チアゾール1208をN−アルキル化して1209を調製した。N,N,ジエチルアミンを加えることにより1210を生じ、次いで、N−脱保護により1211を得た。
【化64】

【0234】
1. N1,N1−ジエチル−4−メチル−N−3−{4−[4−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−フェニル]−チアゾール−2−イル}−N−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−ベンゼン−1,3−ジアミン(1210)
スターラーバーを含む乾燥したねじ蓋付きバイアルに、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(0.066g、0.146mmol)、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(ヘキサン中10%溶液0.44ml、0.146mmol)、化合物1209の乾燥トルエン溶液(トルエン15ml中1.62、2.92mmol)、ジエチルアミン(0.90ml、8.76mmol)、及びナトリウムtert−ブトキシド(0.420g、4.38mmol)を共に加えた。バイアルを窒素でフラッシュし、きつくキャップした。次いで、混合物を90℃の油浴中で1時間攪拌した。次いで、トルエンを減圧下で除去した。次いで、物質をCHCl及びシリカゲルに再懸濁させた。次いで、CHClを減圧下で除去し、化合物をシリカゲルに吸収させた。次いで、物質をカラムクロマトグラフィーにより、EtOAc/ヘキサンを用いて溶離して精製し、生成物1210を淡黄色半固体として得た(0.842g、52%)。LC/MS:[M+1]=548.4。C3041OSSi=547.8。
【0235】
2. N1,N1−ジエチル−4−メチル−N−3−{4−[4−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−フェニル]−チアゾール−2−イル}−N−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−ベンゼン−1,3−ジアミン(1211)
化合物1210を、DMF(5ml)及び2M HCl水溶液(5ml)に溶解し、室温で1.5時間攪拌した。次いで、生成物を逆相HPLCにより精製した。純粋な画分を合わせて、減圧下で濃縮して乾燥した。得られた物質をCHCl(250ml)に溶解し、2×飽和NaHCO(100mL)及び1×ブライン(100mL)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮して1211を白色固体として得た(遊離塩基)(0.610g、51%)。LC/MS:[M+H]=418.5。C2427S=417.5。
【0236】
3. N1,N1−ジエチル−4−メチル−N−3−{4−[4−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−フェニル]−チアゾール−2−イル}−N−(2−トリメチルシラニル−エトキシメチル)−ベンゼン−1,3−ジアミンの二塩酸塩
化合物1211(遊離塩基)(0.610g、1.46mmol)を、MeOH(2ml)にある程度溶解させた。次いで、2M HCl/EtO(1.46ml、2.92mmol)を加え、溶液を澄ませた。この溶液を窒素ガス流を用いて最小容量に濃縮した。次いで、EtO(5ml)を加え、化合物を粉砕して白色固体とし、これを2×EtO(5ml)で洗浄し、窒素気流で乾燥させた。次いで、物質を穏やかに加熱しながら乾燥EtOH(1.5ml)に再溶解させた。混合物を冷却し、化合物を結晶化させた。結晶をろ過で回収し、2×EtO(1ml)で洗浄し、真空で乾燥させて二塩酸塩を灰白色固体として得た(0.320g、26%)。

【0237】
様々なブロモケトン誘導体及びチオ尿素誘導体と同様の手順を用いることにより、下記の代表的化合物1212を含む、一群の環状、非環状、及びN−アルキル化チアゾール含有化合物、及びその二塩酸塩を合成した(0.032g、97%)。


【化65】

【0238】
C. 代表的なC−結合チアゾール
N−結合チアゾールに加えて、様々なC−結合チアゾールを、下記に示した典型的な経路により調製した。
【化66】

【0239】
1. 2−(3,4−ジクロロ−フェニル)−チオアセトアミド(1213)
硫化水素(ガス)を、(3,4−ジクロロ−フェニル)−アセトニトリル(1.86g、10mmol、1.0当量))及びトリエチルアミン(10mmol、1当量)のエタノール(10ml)溶液中で約1時間バブリングさせた。1時間後、反応混合物をキャップし、室温で一晩攪拌した。TLCは、大半のニトリルがチオアセトアミドに変換されたことを示した。過剰のHSを、反応混合物中に30分間、窒素をバブリングさせることにより除去した。次いで、反応混合物を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(ISCO system、30〜60%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して表題化合物(1213)を得た(55%の収率)。
【0240】
2. 2−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−4−[4−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−フェニル]−チアゾール(1214)
チオアセトアミド1213(0.08mmol)及び2−ブロモ−1−[4−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−フェニル]−エタノン(0.08mmol)10を、DMF1mlに溶解した。反応物を70℃で6時間攪拌した。室温に冷却後、反応混合物をアセトニトリル/水/TFAグラジエント及びC18固定相を用いて逆相HPLC(Gilson 215)に直接注入して単離し、次いで濃縮して表題生成物1214をTFA塩として得た。
【0241】
(実施例5)
代表的なトリアゾリル及びフラニルアミノチアゾール化合物の調製
トリアゾリル及びフラニル含有化合物の調製では、以下の典型的な一般経路を採用した。
【化67】

【0242】
以下の経路を用いて、代表的なトリアゾリルアミノチアゾール化合物を調製した。
【化68】

【0243】
1. N−[4−(4−アジド−フェニル)−チアゾール−2−イル]−N,N4−ジエチル−2−メチル−ベンゼン−1,4−ジアミン(1216a)
4−アジド−ブロモアセトフェノン28(0.300g、1.24mmol)及び(4−ジエチルアミノ−2−メチル−フェニル)−チオ尿素75(0.293g、1.24mmol)を、スターラーバーを含む20mLのシンチレーションバイアルで混合した。無水EtOH(5ml)を加え、混合物を65℃の油浴で攪拌しながら2.5時間加熱した。黒色に近い、透明な溶液が得られた。この溶液を冷却し、減圧下でEtOHを除去して紫色油状物を得たが、これは室温で2日間、静置すると結晶化し、1216aが紫色固体として得られた(0.465g、99%)。%)。LC/MS:[M+1]=379.0。C2022S=378.5。
【0244】
2. 1−(1−{4−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチル−フェニルアミノ)−チアゾール−4−イル]−フェニル}−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル)−エタノール(1218a)
スターラーバーを含むねじ蓋付きバイアルに、化合物1216a(0.100g、0.26mmol)、アスコルビン酸ナトリウム(0.005g、0.026mmol)、硫酸銅(II)五水和物(0.001g、0.0026mmol)、及びブト−3−イン−2−オール(0.018g、0.26mmol)を加えた。Tert−ブチルアルコール(1ml)及び水(1ml)をバイアルに加え、バイアルをキャップした。混合物を、室温で16時間、激しく攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残渣をDMF(1.5ml)に再溶解させた。次いで、生成物を逆相HPLCで単離した。純粋な画分を減圧下で濃縮して1218aをトリフルオロ酢酸塩(ditrflouroacetatesalt)として得た(0.038g、21%)。LC/MS:[M+1]=449.1。C2428OS=448.5。
【0245】
以下の手順を用いて、代表的なフラニルアミノチアゾール化合物である、N,N−ジエチル−N−[4−(4−フラン−3−イル−フェニル)−チアゾール−2−イル]−4−メチル−ベンゼン−1,3−ジアミン(1217a)を調製した。
【0246】
−[4−(4−ブロモ−フェニル)−チアゾール−2−イル]−N,N−ジエチル−4−メチル−ベンゼン−1,3−ジアミン(104mg、0.25mmol)(1215a)を、フラスコに入れ、トルエン:EtOH(4:1、12mL:3mL)を加え、その後、3−フリルボロン酸(34mg、0.30mmol)、炭酸ナトリウム(80mg、0.75mmol)及び水(1mL)を加えた。反応混合物を、窒素を30分間、それにバブリングさせることにより脱気した。次いで、Pd(PPh(29mg、0.025mmol)を加え、反応混合物を80℃に17時間加熱し、その後、室温に冷却した。EtOAc(3×100mL)及び水(100mL)を加えた。有機抽出物を、水(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、カラムクロマトグラフィー(40g ISCOカートリッジ)により精製した。表題化合物を、黄色粉末として単離した(40mg、40%、C2425Sの質量、計算値:403.5、観測値:404.1[M+1])。
【0247】
(実施例6)
代表的な発明の化合物
実施例1〜5に上述した典型的な経路を用いて合成した代表的な化合物を下記表10に示す。
【表10−1】


【表10−2】


【表10−3】


【表10−4】


【表10−5】


【表10−6】


【表10−7】


【表10−8】


【表10−9】


【表10−10】


【表10−11】


【表10−12】


【表10−13】


【表10−14】


【表10−15】


【表10−16】


【表10−17】


【表10−18】


【表10−19】


【表10−20】


【表10−21】


【表10−22】


【表10−23】


【表10−24】


【表10−25】


【表10−26】


【表10−27】


【表10−28】


【表10−29】


【表10−30】


【表10−31】


【表10−32】


【表10−33】


【表10−34】


【表10−35】


【表10−36】


【表10−37】


【表10−38】


【表10−39】


【表10−40】


【表10−41】

【0248】
(実施例7)
Aβ調節を評価するためのELISAアッセイ
化合物について、細胞間質でAβ42及びAβ40レベルを調節する活性を、後述のサンドイッチELISAアッセイを用いて評価した。
【0249】
A. 細胞の調製
APP発現神経芽腫細胞系は、ATCCから入手したヒトSH−SY5Y細胞(accession no.CRL−2266)に、ベクターpcDNA.1に含まれるヒトAPP751をコードするDNAを安定的に導入することにより生成した。細胞を384ウェルプレートに蒔き(SH−SY5Y−APPが形質移入された細胞約20,000個/ウェル)、少なくとも18時間付着させた。次いで、細胞を培地(DMEM、10% FBS、100ユニット/ml ペニシリン、0.1mg/ml ストレプトマイシン)中で洗浄し、適当な濃度の化合物を含む培地30μlを加えた。
【0250】
B. 化合物の効力の算定
化合物を、DMSO(溶媒)に懸濁させた。化合物が細胞間質(extracellular medium)のAβ42レベルを低下させる活性を有するか否かを決定するための最初のアッセイを、単一濃度、すなわち、30μMの化合物を用いて行った。化合物を細胞に加え、化合物の存在下で細胞を18〜22時間インキュベートした。この濃度の化合物と接触した細胞の細胞間質のAβ42レベル(後述のサンドイッチELISAアッセイで評価される)が、溶媒単独と接触した細胞(陰性対照)の細胞間質のレベルの約60%未満であったときには、その後、化合物を一連の濃度範囲で評価して、Aβ42レベル及びAβ40レベルを低下させるその能力(potency)(すなわち、そのIC50値)を決定した。
【0251】
細胞間質のAβ42レベルを低下させる化合物の能力を決定するために、細胞を6種の濃度(1/2対数希釈だけ異なる)の化合物で処理し、Aβ42レベルの低下量がAβ42レベルの最大低下量の半分であったときの濃度を算定した。
【0252】
同様に、細胞間質のAβ40レベルを低下させる化合物の能力を決定するために、細胞を様々な濃度の化合物で処理し、Aβ40レベルの低下量がAβ40レベルの最大低下量の半分であったときの濃度を算定した。
【0253】
細胞間質のAβ40レベルの低下と比較して細胞間質のAβ42レベルの低下についての化合物の選択性の程度を、決定するために、Aβ42レベルを低下させる化合物の能力をAβ40レベルを低下させる化合物の能力と比較して、選択倍率として表した。細胞間質のAβ40レベルが50%以下しか低下しなかったときには、試験した最大濃度の化合物(例:30μM)を算定に用いた。
【0254】
C. Aβレベルを評価するためのELISA法
細胞間質のAβレベルを、捕獲抗体として、Aβ42−又はAβ40−選択的抗体を用いた組織培養皿のウェルから得た上清のサンドイッチELISAアッセイにより評価した。免疫測定を実行する前に、白色のマイクロタイター384ウェルプレートを、一晩、〜5μl/mlのAβ42−又はAβ40−選択的モノクローナル抗体のTBS溶液25μlでコーティングした。
【0255】
試料の上清のAβ42レベルを評価するために、Aβのアミノ酸35〜42(WO04/018997号参照)に対するAβ42−選択的モノクローナル抗体A387をサンドイッチアッセイの最初の反応で用いた(一次抗体又は捕獲抗体)。細胞の上清のAβ40レベルを評価するために、Aβのアミノ酸30〜40(WO04/018997号参照)を認識するAβ40−選択的モノクローナル抗体B113を、サンドイッチアッセイの最初の反応で用いた。
【0256】
Aβのアミノ酸1〜12(WO 04/018997号参照)に対して産生された、サンドイッチアッセイで用いた二次抗体であるB436は、Aβ40及びAβ42ペプチドの両方と反応する。検出抗体として用いられた二次抗体は、アルカリホスファターゼと結合し、抗体結合の有無が、アルカリホスファターゼ、すなわち、CDP−Star化学発光基質(Applied Biosciences)の存在下で光を放つ基質の蛍光により決定された。
【0257】
4℃で一晩、捕獲抗体でコーティングした後、アッセイプレートを50μlの1%BSA/TBS、Fraction V(Sigma、St.Louis、MO)で遮断した。細胞を含むアッセイプレートを、50μlのTBS/0.1%Tween−20で3回洗浄し、次いで、組織培養プレートのウェルから採った上清を、抗体をコーティングしたプレートに移した(20μlの上清をAβ42−選択的抗体でコーティングしたプレートに加え、10μlの上清をAβ40−選択的抗体でコーティングしたプレートに加えた)。アッセイプレートを、細胞の上清と共に室温で2時間インキュベートした。次いで、プレートを50μlのTBS/0.1%Tween−20で3回洗浄した。洗浄後、ウェルをアルカリホスファターゼ(1%TBS中〜0.5μg/ml)と結合させた抗−Aβ1−1225μlと共に、室温で2.5時間インキュベートした。ウェルを50μlのTBS/0.1%Tween−20で3回洗浄し、25μlのCDP−Star化学発光基質(Tropix、Inc.)を加え、室温で20分間インキュベートした。蛍光をAnalyst HT(Molecular Devices Corp.)で定量した。
【0258】
データは、溶媒対照と明確に区別可能な正の対照ウェルでバックグラウンドに対し、許容範囲のシグナルを示した(〜7から20倍)。Aβ42ペプチドのアッセイは、約75〜2000pg/ウェルの広範なリニアレンジ、リニアレンジでバックグラウンドの約3〜30倍(シグナル:バックグラウンド)である高いダイナミックレンジ、約20pg/ウェル未満の低い検出限界、及びAβ42の選択性、即ち他のAβペプチドに対して少なくとも約1000倍のAβ42選択性を有し、Aβ42レベルを調節する化合物の高処理スクリーニングに非常に適した方法とされた。
【0259】
下記表11に、Aβ42−及び/又はAβ40の低減活性として、上述したin vitroアッセイでの活性を示す、本明細書に規定された代表的な化合物を示す。代表的な化合物の能力のデータは、次のように示す:A=<0.2μM、B=0.2μM〜1.0μM、C=1.1μM〜5.0μM、D=5.1μM〜10μM、E=10.1μM〜30μM、F=約30μMの濃度で検出可能なAβ40−低減活性。
【0260】
表12は、約30μMの濃度でAβ42−及び/又はAβ40−低減活性を示す、本明細書に規定された代表的な化合物を更に示す。
【表11−1】


【表11−2】


【表11−3】


【表11−4】


【表11−5】


【表11−6】


【表11−7】


【表11−8】


【表11−9】


【表11−10】


【表11−11】


【表11−12】


【表11−13】


【表11−14】


【表11−15】


【表11−16】


【表11−17】


【表11−18】


【表11−19】


【表11−20】


【表11−21】


【表11−22】


【表12−1】


【表12−2】


【表12−3】

【0261】
(実施例8)
化合物の細胞毒性の評価
化合物の細胞毒性を評価するために、上記実施例7に記載した化合物で処理した細胞の上清を除去し、10体積%の細胞生存度指示色素AlamarBlue(商標)(Biosource、San Diego)を含む溶液を加えた。細胞を37℃で3時間インキュベートし、その後、CytoFluor(Applied Biosystems)分光光度計で、530−nmの励起フィルター及び580−nmの発光フィルターを用いて、蛍光を判定した。表11に示した化合物で処理した細胞は、対照細胞に比べてAlamarBlueの蛍光で40%未満の減少を示した。
【0262】
(実施例9)
Aβ調節を評価するためのFRETアッセイ
化合物について、細胞間質中のAβ42及びAβ40レベルを調節する活性を、以下のような均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイを用いて評価した。
【0263】
SH−SY5Y−APP細胞を蒔き、化合物の効力を決定するために、細胞を対数間隔の1/4の11種の濃度、典型的には1、3又は10μMの最高濃度の化合物で処理した以外は、上記実施例で記載したように、化合物で処理した。HTRFアッセイでは、処理細胞から得た5又は10μlのいずれかの上清を、10又は15μlの標識した一組の抗体、全量20μlで加え、4℃で20〜24時間インキュベートした。標識した一組の抗体は、Aβ40レベル評価用としては8000pgのB436−XL665及び400pgのB113Europium、又はAβ42レベル評価用としては8000pgのB436−XL665及び400pg A387Europiumのいずれかを、50mM NaPO4、0.2% BSA、0.5M KF、pH7で希釈したものであった。蛍光を、BMG Rubystarを用い、620nm及び665nmで判定した。濃度応答曲線を作成するために、各濃度ごとに665/620nmでの読み取り値の割合を決定し、未処理細胞の読み取り値の割合に対してプロットし、Aβ42レベル又はAβ40レベルの低下量が最大低下量の半分であったときの濃度を化合物の能力として算定した。
【0264】
本明細書で説明的に記載された発明は、本明細書で特に開示されていない任意の要素又は要素群、限定又は限定群がなくても実施し得る。採用された用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として用いられたものであり、示され、記載された特徴の等価物又はそれらの一部を排除するこのような用語及び表現を使用することを意図するものではないが、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内であれば様々な変形が可能であることは認められる。従って、本発明は好ましい実施態様及び任意の特徴により詳細に開示されてきたが、本明細書で開示された概念の変形及び改変は当業者によりなされてもよく、このような変形及び改変は、添付の特許請求の範囲により規定されるように、本発明の範囲内にあると考えられることを理解すべきである。
【0265】
本明細書に記載又は引用された、論文、特許及び特許出願、及びその他の全ての書類、並びに電子的に利用可能な情報の内容は、個々の刊行物が参照することにより組み込まれることを詳細且つ個別に示された場合と同一の範囲で、参照することにより本明細書に完全に組み込まれる。出願人は、論文、特許、特許出願、又は他の書類といったものから得たありとあらゆる材料及び情報を本出願に物理的に組み込む権利を保有する。
【0266】
本明細書に説明的に記載された発明は、本明細書に特に開示されていない任意の要素又は要素群、限定又は限定群がなくても最適に実施し得る。従って、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などは、限定することなく広く解釈されるものとする。更に、本明細書で採用された用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として用いられたものであり、示され、記載された特徴の等価物又はそれらの一部を排除するこのような用語及び表現を使用することを意図するものではないが、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内であれば様々な変形が可能であることは認められる。従って、本発明は好ましい実施態様及び任意の特徴により詳細に開示されてきたが、本明細書に記載され、その中で具現化された本発明の変形及び改変は当業者によりなされてもよく、このような変形及び改変は、本発明の範囲内にあると考えられることを理解すべきである。
【0267】
本発明は、本明細書に広く、一般的に記載されてきた。一般的記載の中に含まれるそれぞれのより狭い種及び亜族種の分類もまた、本発明の一部を形成する。削除された材料が本明細書に特に列挙されているか否かにかかわらず、これには、属から任意の内容を除く条件又は消極的な限定を伴う発明の一般的な記載が含まれる。
【0268】
更に、本発明の特徴又は性状がマーカッシュグループの観点から記載されている場合には、当業者は本発明がマーカッシュグループの任意の各要素又は要素群の下位群の観点からも本明細書において記載されていることが認められるであろう。
【0269】
その他の実施態様は、以下の特許請求の範囲内で説明される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有する化合物、並びに医薬品として許容されるその塩及びそのプロドラッグ。
(A)−L−(B)−L−(C)−L−(D) (I)
[式中、
Aは、
【化1】


(式中、
各Eは独立してN、NR、C、CR、S又はOであり(但し4個以下のEがヘテロ原子である);
Rは水素原子、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換シクロアルキル、又は置換若しくは非置換アリールであり;
各Rは水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換アミノ、置換若しくは非置換シクロアルキル、又は置換若しくは非置換アリールである)であり;或いは
Aは、
【化2】


(式中、各Mは独立してCR又はNより選択される。但し3個以下のMがNである)であり;
Bは、
【化3】


(式中、
各Gは独立してCR又はNであり(但し3個以下のGがNである);
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換アミノより選択される)であり;或いは、
BはAと共に縮合環系を形成し;
Cは、
【化4】


(式中、
Jは、CR、O、S、N、及びNRからなる群より選択され;
各Kは独立してN、NR、C、又は、CRであり;
各Rは、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、又は置換若しくは非置換アルコキシであり、但し、Cが
【化5】


の場合はRは−NHでない)であり;或いは
Cは、
【化6】


(式中、各Mは独立してCR又はNから選択される。但し3個以下のMがNである)であり;
Dは、
【化7】


(式中、各Eは独立してN、NR、C、CR、S又はOである。但し4個以下のEがヘテロ原子である)であり;或いは
Dは、
【化8】


(式中、
各Mは独立してCR又はNから選択され(但し3個以下のMがNである);
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクリル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、置換若しくは非置換アミノ、又は置換若しくは非置換アルキルアミノより選択される)であり;
は任意選択であって、存在する場合は、共有結合、又は、


(式中、各R’は独立して水素原子、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、又は置換若しくは非置換シクロアルキルであり、zは1〜10である)からなる群より選択されるリンカーであり;
は、共有結合、又は、


(式中、各R’は独立して水素原子、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、又は置換若しくは非置換シクロアルキルであり、zは1〜10である)から選択されるリンカーであり;
は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NR−、−C(O)−、−(C(R’)−、又は−C(S)−であり;
但しAが
【化9】


である場合は、Lは、−C(O)NH−、−CHNH−、−CH−O−、及び−C(O)N(CH)−でなく;
式(I)の前記化合物は
【化10】


でない]
【請求項2】
AがBと共に縮合環系を形成する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
BがCと共に縮合環系を形成する請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Dが
【化11】


であり、dは0〜5である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
各Rが独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換C〜Cアルキル、置換若しくは非置換C〜Cアルコキシ、置換若しくは非置換の5員から6員ヘテロアリール、置換若しくは非置換アミノ、及び−N(R”)(各R”は独立して、置換若しくは非置換のC〜Cアルキル又はC〜C10シクロアルキルである)からなる群より選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
DがRと共に縮合環系を形成する請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Dが
【化12】


である、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
各Rが独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換C〜Cアルキル、置換若しくは非置換C〜Cアルコキシ、置換若しくは非置換の5員から6員ヘテロアリール、及び−N(R”)(各R”は独立して、置換若しくは非置換のC〜Cアルキル又はC〜C10シクロアルキルである)からなる群より選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
が−NH−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Cが
【化13】


である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
Cが
【化14】


である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
Cが
【化15】


である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Cが
【化16】


から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
Bが
【化17】


であり、bは0〜2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
Bが
【化18】


から選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
Bが
【化19】


から選択される、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
各Rが独立して、ハロゲン又は置換若しくは非置換C〜Cアルキルから選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
Aが
【化20】


(式中、FはCH又はNである)
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
が、ハロゲン又は置換若しくは非置換C〜Cアルキルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
式(II):
【化21】


に対応する構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
式(III):
【化22】


に対応する構造を有する、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
式(IV):
【化23】


に対応する構造を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
式(V):
【化24】


に対応する構造を有する、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
式(VI):
【化25】


に対応する構造を有する、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
請求項1に記載の化合物と、医薬品として許容される担体とを含む組成物。
【請求項26】
請求項1に記載の化合物と、使用上の手引きとを含むキット。
【請求項27】
アミロイド−β(Aβ)レベルの調節方法であって、
アミロイド前駆体タンパク質(APP)若しくはその断片及び/又はAβの供給源と、式(VII):
(A−LA10−1−(B)−LB1−(C)−LC1−(D) (VII)
[式中、
は任意選択であって、存在する場合は、5員又は6員、置換又は非置換の、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンであり;
は、5員又は6員、置換又は非置換の、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンであるか;或いは、BがAと共に縮合環系を形成し;
は、5員又は6員、置換又は非置換のアリーレン又はヘテロアリーレンであり;
は、5員又は6員、置換又は非置換のアリール、ヘテロアリール、アリーレン、又はヘテロアリーレンであり;
A1は任意選択であって、存在する場合は共有結合又はリンカーであり;
B1及びLC1は各々独立して共有結合又はリンカーである]
に対応する構造を有する化合物、並びに医薬品として許容されるその塩及びそのプロドラッグの有効量とを接触させるステップを含み、
式(VII)の化合物がAβレベルを調節する、前記調節方法。
【請求項28】
が任意選択であり、存在する場合は
【化26】


(式中、
各Eは独立してN、NR、C、CR、S又はOであり(但し4個以下のEがヘテロ原子である);
Rは水素原子、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換シクロアルキル、又は置換若しくは非置換アリールであり;
各Rは水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換アミノ、置換若しくは非置換シクロアルキル、又は置換若しくは非置換アリールである)であるか;或いは
が、存在する場合、
【化27】


(式中、各Mは独立してCR又はNより選択される。但し3個以下のMがNである)であり;
が、
【化28】


(式中、
各Gは独立してCR又はNであり(但し3個以下のGがNである);
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換アミノより選択される)
であり;
が、
【化29】


(式中、
Jは、CR、O、S、N、及びNRからなる群より選択され;
各Kは独立してN、NR、C、又はCRであり;
は、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、又は置換若しくは非置換アルコキシである)であるか;或いは
が、
【化30】


(式中、各Mは独立してCR又はNより選択される。但し3個以下のMがNである)であり;
が、
【化31】


(各Eは独立してN、NR、C、CR、S又はOである。但し4個以下のEがヘテロ原子である)であるか;或いは
が、
【化32】


(式中、
各Mは独立してCR又はNから選択され(但し3個以下のMがNである);
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換ヘテロシクリル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、置換若しくは非置換アミノ、又は置換若しくは非置換アルキルアミノより選択される)であり;
A1(存在する場合)、及びLB1とLC1の各々が独立して共有結合、又は、


(式中、各R’は独立して水素原子、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、又は置換若しくは非置換シクロアルキルであり、zは1〜10である)からなる群より選択されるリンカーである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
C1が、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NR−、−C(O)−、−(C(R’)−、又は−C(S)−である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物が、式(II):
【化33】


に対応する構造を有する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物が、式(III):
【化34】


に対応する構造を有する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物が、式(IV):
【化35】


に対応する構造を有する請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記化合物が、式(V):
【化36】


に対応する構造を有する請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記化合物が、式(VI):
【化37】


に対応する構造を有する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
Aβレベル異常に関連する疾患の治療方法であって、
治療を必要とする対象に、式(VII):
(A−LA10−1−(B)−LB1−(C)−LC1−(D) (VII)
[式中、
は任意選択であって、存在する場合は、5員又は6員、置換又は非置換の、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンであり;
は、5員又は6員、置換又は非置換の、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンであり;或いは、BはAと共に縮合環系を形成し;
は、5員又は6員、置換又は非置換のアリーレン又はヘテロアリーレンであり;
は、5員又は6員、置換又は非置換のアリール、ヘテロアリール、アリーレン、又はヘテロアリーレンであり;且つ、
A1は任意選択であって、存在する場合は共有結合又はリンカーであり;
B1及びLC1は各々独立して共有結合又はリンカーである]
に対応する構造を有する化合物、並びに医薬品として許容されるその塩及びそのプロドラッグの有効量を投与するステップを含み、
式(VII)の前記化合物がAβレベルを調節する、前記治療方法。
【請求項36】
が任意選択であり、存在する場合は
【化38】


(式中、
各Eは独立してN、NR、C、CR、S又はOであり(但し4個以下のEがヘテロ原子である);
Rは水素原子、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換シクロアルキル、又は置換若しくは非置換アリールであり;
各Rは水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換アミノ、置換若しくは非置換シクロアルキル、又は置換若しくは非置換アリールである)であるか;或いは
が、存在する場合、
【化39】


(式中、各Mは独立してCR又はNより選択される。但し3個以下のMがNである)であり;
が、
【化40】


(式中、
各Gは独立してCR又はNであり(但し3個以下のGがNである);
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アルキルアミド、置換若しくは非置換アルキルアミノ、置換若しくは非置換アミノより選択される)
であり;
が、
【化41】


(式中、Jは、CR、O、S、N、及びNRからなる群より選択され;
各Kは独立してN、NR、C、又はCRであり;
各Rは、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、又は置換若しくは非置換アルコキシである)であるか;或いは
が、
【化42】


(式中、各Mは独立してCR又はNより選択される。但し3個以下のMがNである)であり;
が、
【化43】


(各Eは独立してN、NR、C、CR、S又はOである。但し4個以下のEがヘテロ原子である)であるか;或いは
が、
【化44】


(式中、
各Mは独立してCR又はNから選択され(但し3個以下のMがNである);
各Rは独立して、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクリル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、置換若しくは非置換アミノ、又は置換若しくは非置換アルキルアミノより選択される)であり;
A1(存在する場合)、及びLB1とLC1の各々が独立して共有結合、又は、


(式中、各R’は独立して水素原子、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、又は置換若しくは非置換シクロアルキルであり、zは1〜10である)からなる群より選択されるリンカーである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
LCが、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NR−、−C(O)−、−(C(R’)−、又は−C(S)−である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物が、式(II):
【化45】


に対応する構造を有する請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記化合物が、式(III):
【化46】


に対応する構造を有する請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記化合物が、式(IV):
【化47】


に対応する構造を有する請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記化合物が、式(V):
【化48】


に対応する構造を有する請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記化合物が、式(VI):
【化49】


に対応する構造を有する請求項41に記載の方法。

【公表番号】特表2007−504282(P2007−504282A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533094(P2006−533094)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/015239
【国際公開番号】WO2004/110350
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505318765)トリーパインズ セラピューティクス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】