説明

化合物、生物学的化合物および爆発性化合物の検出のための、表面修飾された相変化材料を備える光学センサ

【課題】化合物、生物学的化合物または爆発性化合物の存在を、低濃度でさえも容易かつ正確に決定するセンサを提供すること。
【解決手段】光学制限構造体であって、約1500ナノメートル以下のサイズを有する少なくとも1つの金属粒子を含む金属層、および該金属層の少なくとも一部分に隣接して配置された相変化材料層を備え、該相変化材料層が相変化材料を含む、光学制限構造体;ならびに該光学制限構造体の該相変化材料層の少なくとも一部分を覆って配置された樹枝状金属層であって、金属構造体に付着した、分枝鎖アミノ酸基を含む有機化合物を含む、樹枝状金属層;を備え、該光学制限構造体は、該相変化材料が臨界温度より高温で加熱される場合に、第一の光学状態から第二の光学状態へと転移するように構成されており、該光学制限構造体を通る所定の波長の光の透過率が、該第一の光学状態よりも該第二の光学状態において低い、センサデバイス。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
実地(特に、軍事行動または他の関連する活動)において化学物質および生物学的物質を検出する能力は、次第に重要になっている。特に、特定の爆発性または危険な化学的剤および生物学的剤を、自動化され、好ましくは可搬型であり、そして最小のサンプル収集でリアルタイムでの検出処理が可能なデバイスを利用して、迅速に検出および同定することは、非常に望ましい。
【0002】
化合物(例示の目的で、オルガノホスフェート)の検出は、特に興味深いものである。なぜなら、多くの化学戦の神経剤および毒性が高い農薬が、このような化合物を含有するからである。例としては、サリン(O−イソプロピルメチルホスホノフルオリデート)、VX(O−エチルS−[2−(ジイソプロピルアミノ)エチル]メチルホスホノチオエート)、パラチオン(O,O−ジエチル−O−4−ニトロ−フェニルチオホスフェート)、およびクロルピリホス(O,O−ジエチルO−3,5,6−トリクロロ−2−ピリジルホスホロチオエート)が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、爆発性化合物(これらは優勢に、ニトロ芳香族化学物質である)および生物戦剤は、軍人および民間人の集団に対して、重大な危険を提示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
化合物、生物学的化合物または爆発性化合物(例えば、上で確認した化合物のうちのいずれか)の存在を、低濃度でさえも、民間人および軍人が存在する/存在しなければならないような環境において、容易かつ正確に決定するセンサを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
光学制限構造体であって、約1500ナノメートル以下のサイズを有する少なくとも1つの金属粒子を含む金属層、および該金属層の少なくとも一部分に隣接して配置された相変化材料層を備え、該相変化材料層が相変化材料を含む、光学制限構造体;ならびに
該光学制限構造体の該相変化材料層の少なくとも一部分を覆って配置された樹枝状金属層であって、該樹枝状金属層が、金属構造体に付着した、分枝鎖アミノ酸基を含む有機化合物を含む、樹枝状金属層;
を備え、
該光学制限構造体は、該相変化材料が臨界温度より高温で加熱される場合に、第一の光学状態から第二の光学状態へと転移するように構成されており、該光学制限構造体を通る所定の波長の光の透過率が、該光学制限構造体の該第一の光学状態よりも、該光学制限構造体の該第二の光学状態において低い、
センサデバイス。
(項目2)
上記相変化材料が酸化バナジウムを含む、上記項目に記載のセンサデバイス。
(項目3)
上記相変化材料が、タングステン、フッ素、チタンおよびクロムのうちの少なくとも1つをドープされたサーモクロミック材料を含む、上記項目のうちのいずれかに記載のセンサデバイス。
(項目4)
上記金属層の金属粒子が、金、白金、パラジウム、銀、銅およびアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む、上記項目のうちのいずれかに記載のセンサデバイス。
(項目5)
上記相変化材料層が、約10ナノメートル〜約50ナノメートルの範囲の厚さを有する、上記項目のうちのいずれかに記載のセンサデバイス。
(項目6)
上記光学制限構造体の上記金属層が、約20ナノメートル〜約250ナノメートルの範囲の断面寸法を有する金属粒子のアレイを備える、上記項目のうちのいずれかに記載のセンサデバイス。
(項目7)
上記分枝鎖アミノ酸基を含む有機化合物が、スルフィド基を介して金属構造体に付着している、上記項目のうちのいずれかに記載のセンサデバイス。
(項目8)
上記樹枝状金属層の上記分枝鎖アミノ酸基が、リジンおよびヒスチジンのうちの少なくとも1つを含む、上記項目のうちのいずれかに記載のセンサデバイス。
(項目9)
上記有機化合物の分枝鎖アミノ酸基間に空間が規定され、該空間は、標的リン含有化合物の捕捉および触媒分解を容易にし、そして上記相変化材料は、該標的リン含有化合物の触媒分解により発生する熱が、該相変化材料を上記臨界温度より高温で加熱するように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載のセンサデバイス。
(項目10)
上記有機化合物の分枝鎖アミノ酸基間に規定された上記空間が、金属イオンと錯化する、上記項目のうちのいずれかに記載のセンサデバイス。
(項目11)
上記金属イオンが、亜鉛イオンおよびコバルトイオンのうちの少なくとも1つを含む、上記項目のうちのいずれかに記載のセンサデバイス。
(項目12)
上記樹枝状金属層の上記金属構造体が、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、亜鉛およびチタンのうちの少なくとも1つを含む、上記項目のうちのいずれかに記載のセンサデバイス。
(項目13)
上記光学制限構造体の第一の面に関連して配向される光源であって、該光源は、所定の波長の光を該光学制限構造体に向けて投影する、光源;および
該光学制限構造体の、該第一の面とは反対側の第二の面に関連して配向される検出器、
をさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載のセンサデバイス。
(項目14)
光学センサデバイスを提供する方法であって、
互いに間隔を空けてアレイを形成している複数の金属粒子を備える金属層を提供する工程であって、該金属粒子が、約1500ナノメートル以下のサイズを有する、工程;
該金属層の少なくとも一部分を覆って相変化材料層を配置する工程であって、該相変化材料層は、第一の光学状態から第二の光学状態へと転移する相変化材料を含み、該相変化材料を通る1つ以上の波長の光の透過率が、該第一の光学状態よりも該第二の光学状態において低い、工程;および
該光学制限構造体の該相変化材料層の少なくとも一部分を覆って樹枝状金属層を塗布する工程であって、該樹枝状金属層は、金属構造体に付着した、分枝鎖アミノ酸基を含む有機化合物を含む、工程;
を包含し、
該光学制限構造体は、該相変化材料が臨界温度より高温で加熱される場合に、第一の光学状態から第二の光学状態へと転移するように構成されており、該光学制限構造体を通る所定の波長の光の透過率が、該光学制限構造体の該第一の光学状態よりも、該光学制限構造体の該第二の光学状態において低い、
方法。
(項目15)
リン含有有機化合物の存在を光学センサデバイスを用いて検出する方法であって、該センサデバイスは、光学制限構造体および樹枝状金属層を備え、該光学制限構造体は、約1500ナノメートル以下のサイズを有する少なくとも1つの金属粒子を含む金属層、および相変化材料を含んで該金属層の少なくとも一部分に隣接して配置される相変化材料層を備え、該樹枝状金属層は、該光学制限構造体の該相変化材料層の少なくとも一部分を覆って配置され、該樹枝状金属層は、金属構造体に付着した、分枝鎖アミノ酸基を含む有機化合物を含み、該方法は、
該樹枝状金属層によってリン含有有機化合物を捕捉して分解する工程であって、該樹枝状金属層により捕捉された該リン含有有機化合物の分解が、該光学制限構造体の第一の光学状態から第二の光学状態への転移を開始させる、工程;および
該光学制限構造体の該第一の光学状態から該第二の光学状態への転移を検出する工程、
を包含する、方法。
(項目16)
上記樹枝状金属層が、オルガノホスフェート化合物を捕捉して分解するように構成されている、上記項目に記載の方法。
(項目17)
上記オルガノホスフェート化合物が、VXおよびサリンのうちの少なくとも1つを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目18)
上記樹枝状金属層が、リン含有有機化合物を、リン−酸素結合、リン−硫黄結合、リン−シアノ結合およびリン−フッ素結合のうちの少なくとも1つによる分解によって捕捉および分解するように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目19)
上記樹枝状金属層の上記分枝鎖アミノ酸基が、リジンおよびヒスチジンのうちの少なくとも1つを含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目20)
上記光学制限構造体を通る所定の波長の光の透過率が、該光学制限構造体の上記第一の光学状態よりも該光学制限構造体の上記第二の光学状態において低く、そして該光学制限構造体の該第一の光学状態から該第二の光学状態への転移の検出が、
該所定の波長の光を該光学制限構造体に向けて投影すること;および
該光学制限構造体を透過する該所定の波長の光の量を決定すること、
を包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0005】
(摘要)
センサデバイスは、光学制限構造体および樹枝状金属層を備える。この光学制限構造体は、約1500ナノメートル以下のサイズを有する少なくとも1つの金属粒子を含む金属層、およびこの金属層の少なくとも一部分に隣接して配置された相変化材料層を備え、この相変化材料層は、相変化材料を含む。この樹枝状金属層は、この光学制限構造体の相変化材料層の少なくとも一部分を覆って配置され、この樹枝状金属層は、金属構造体に付着した、分枝鎖アミノ酸基を含む有機化合物を含む。この光学制限構造体は、この相変化材料が臨界温度より高温で加熱される場合に、第一の光学状態から第二の光学状態へと転移するように構成されており、この光学制限構造体を通る所定の波長の光の透過率は、この光学制限構造体の第一の光学状態よりも、この光学制限構造体の第二の光学状態において低い。
【0006】
(要旨)
本発明の1つの実施形態に従って、センサデバイスは、光学制限構造体および樹枝状金属層を備える。この光学制限構造体は、約1500ナノメートル以下のサイズを有する少なくとも1つの金属粒子を含む金属層、およびこの金属層の少なくとも一部分に隣接して配置された相変化材料層を備え、この相変化材料層は、相変化材料を含む。この樹枝状金属層は、この光学制限構造体の相変化材料層の少なくとも一部分を覆って配置され、この樹枝状金属層は、金属構造体に付着した、分枝鎖アミノ酸基を含む有機化合物を含む。この光学制限構造体は、この相変化材料が臨界温度より高温で加熱される場合に、第一の光学状態から第二の光学状態へと転移するように構成されており、この光学制限構造体を通る所定の波長の光の透過率は、この光学制限構造体の第一の光学状態よりも、この光学制限構造体の第二の光学状態において低い。
【0007】
本発明の別の実施形態に従って、化学物質、生物学的物質および爆発性物質の存在を、光学センサデバイスを用いて検出する方法が提供され、このセンサデバイスは、光学制限構造体および樹枝状金属層を備え、この光学制限構造体は、約1500ナノメートル以下のサイズを有する少なくとも1つの金属粒子を含む金属層、および相変化材料を含んでこの金属層の少なくとも一部分に隣接して配置される相変化材料層を備え、そしてこの樹枝状金属層は、この光学制限構造体の相変化材料層の少なくとも一部分を覆って配置されており、この樹枝状金属層は、金属構造体に付着した、分枝鎖アミノ酸基を含む有機化合物を含む。この方法は、リン含有有機化合物をこの樹枝状金属層によって捕捉して分解する工程であって、この樹枝状金属層により捕捉されたリン含有有機化合物の分解が、該光学制限構造体の第一の光学状態から第二の光学状態への転移を開始する、工程、およびこの光学制限構造体の第一の光学状態から第二の光学状態への転移を検出する工程を包含する。
【0008】
本発明は、デバイス(例えば、可搬デバイス)による、化学物質、生物学的物質および爆発性物質(例えば、危険なリン含有有機化合物(サリンおよびVXなどのオルガノホスフェート化合物が挙げられる))の、迅速かつ信頼性のある検出を容易にする。
【0009】
本発明の上記およびなおさらなる特徴および利点は、以下の本発明の特定の実施形態の詳細な説明を、特に添付の図面と組み合わせて考慮すると、明らかになる。図面において、種々の図における同じ参照番号は、同じ構成要素を表すために利用される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、化合物、生物学的化合物または爆発性化合物(例えば、上で確認した化合物のうちのいずれか)の存在を、低濃度でさえも、民間人および軍人が存在する/存在しなければならないような環境において、容易かつ正確に決定するセンサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1〜図7は、本発明に従う光学センサの形成を概略的に図示する。
【図2】図1〜図7は、本発明に従う光学センサの形成を概略的に図示する。
【図3】図1〜図7は、本発明に従う光学センサの形成を概略的に図示する。
【図4】図1〜図7は、本発明に従う光学センサの形成を概略的に図示する。
【図5】図1〜図7は、本発明に従う光学センサの形成を概略的に図示する。
【図6】図1〜図7は、本発明に従う光学センサの形成を概略的に図示する。
【図7】図1〜図7は、本発明に従う光学センサの形成を概略的に図示する。
【図8】図8は、本発明に従う光学センサ構造体の金属層を形成するために使用され得るナノサイズの金属粒子の例示的なアレイの走査型電子顕微鏡画像である。
【図9】図9は、光源および光検出器を備える、本発明に従う光学センサを概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ナノ構造のセンサ構造物を利用することに関する。このセンサ構造物において、爆発性化合物、化合物および/または生物学的化合物が、このセンサの表面位置において起こる分解反応に起因して放出される熱またはエンタルピー変化によって検出され、この放出された熱は、このセンサの検出可能な光学応答をもたらす。
【0013】
特定の相変化材料は、温度変化および/またはこれらの相変化材料により吸収される光に基づいて、色を変える能力、および/または異なる波長の光を反射させる能力、遮断する能力、もしくは透過を制限する能力を有することが公知である。このことは、光の遮断またはフィルタリングの用途などの用途において使用するための、特定の相変化材料の使用を容易にする。
【0014】
さらに、サーモクロミック特性および/またはフォトクロミック特性を有する、特定の相変化材料の組み合わせは、貴金属ナノ粒子のアレイを覆う薄膜として形成される場合に、表面プラズモン共鳴(SPR)の規定されたかまたは設計されたプロフィールを生じ得、その結果、組み合わせられた相変化材料/金属ナノ粒子層を通る吸光度(すなわち、1つ以上の波長の光の透過を実質的に制限または遮断する能力)が、何十ナノメートルもシフトし得ることが公知である。
【0015】
本発明に従って、光学センサは、金属粒子層の少なくとも一部分を覆って配置された相変化材料層、およびこの相変化材料層を覆って配置された分枝状または樹枝状の金属構造体層を備える。
【0016】
この樹枝状金属構造体層は、目的の標的物質を捕捉し、そしてこの標的物質を分解する、有機化合物を含む。例えば、この樹枝状金属構造体層は、有機リン加水分解酵素などの酵素を模倣するように設計されたアミン官能基を含み得、このアミン官能基において、樹枝状金属構造体層の中心位置またはコア位置から延びる分枝状または樹枝状のアミン官能基が、空の空間すなわち「ポケット」を規定し、この空の空間すなわち「ポケット」が、この樹枝状金属構造体層に近接するリン含有化合物またはホスホ−有機化合物(例えば、オルガノホスフェート)の捕捉、加水分解および分解を容易にする。この樹枝状金属構造体層により捕捉された標的物質(例えば、ホスホ−有機化合物)の分解から放出される熱またはエンタルピー変化は、結果として、下にある相変化材料/金属粒子相の光学特性の変化および表面プラズモン共鳴(SPR)シフトを引き起こし、これは、光学センサによる標的物質の検出および同定をもたらす。
【0017】
この相変化材料層は、1つ以上のサーモクロミック材料および/または1つ以上のフォトクロミック材料(すなわち、1つ以上のサーモクロミック材料、1つ以上のフォトクロミック材料、または1つ以上のサーモクロミック材料と1つ以上のフォトクロミック材料との組み合わせ)から形成され得る。
【0018】
1つの例示的な実施形態において、この相変化材料層を形成するために利用される相変化材料は、酸化バナジウムであり、酸化バナジウムは、サーモクロミック材料であり、そして酸化バナジウムの多数の異なる形態(VOおよびVが挙げられるが、これらに限定されない)をいう。しかし、本発明は、酸化バナジウムの使用に限定されず、その代わりに、温度変化または光変化に供される場合に光学特性変化を起こして、相変化材料層を通る1つ以上の選択された波長の光の透過を遮断するかまたは実質的に制限する、相変化材料のうちの任意の1つまたは組み合わせから形成され得る。
【0019】
サーモクロミック材料は、臨界温度より高温で加熱されると、相転移を起こす。例えば、二酸化バナジウム(VO)は、約68℃より高い温度まで加熱されると、半導体状態から金属状態への相転移を起こす。具体的には、二酸化バナジウム(VO)は、約68℃の臨界温度において、半導体相(この相において、VOは、単斜晶系の結晶構造を有する)から金属相(この相において、VOは、三角面体の結晶構造を有する)への可逆転移を起こす。この臨界温度における過渡的な相変化は、電気特性および光学特性の急激な変化を示すVOをもたらす。この温度により誘導される相転移において、VOは、光の透過を実質的に制限して、約1.2マイクロメートルの近赤外(近IR)波長の吸光を達成する、光学「ブロッカー」すなわち障壁として働く。
【0020】
相変化材料層を形成するために使用され得る他の適切なサーモクロミック材料の例としては、金属酸化物ベースの材料(例えば、Ti、NiS2−ySe、LaCoO、PrNiO、CdOs、NdNiO、TlRu、NiS、BaCo1−yNi、Ca1−ySrVO、PrRu12、BaVS、EuB、Fe、La1−yCaMnO、La2−2ySr1+2yMn、TiおよびLaNiO、ならびにこれらの化合物の任意の組み合わせ(ここでy≦1))が挙げられるが、これらに限定されない。相変化材料層を形成するために使用され得る他の適切なサーモクロミック材料は、ポリマー(アゾベンゼン含有ポリジアセチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルフェニレン、ポリスチレンスルホネート、およびポリアニリン(例えば、合成オパールナノ構造体にドープされたポリアニリン)が挙げられるが、これらに限定されない)である。なお他の適切な材料は、ナノ構造ポリマー(例えば、ジブロックコポリマー(ポリ[スチレン−b−イソプレン]またはPS−b−PI)およびトリブロックコポリマー(ロッド−コイルコポリマーであるポリ[ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)−b−ポリフルオレン−b−ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)]))であり得る。
【0021】
金属層は、少なくとも1つのナノサイズの粒子から形成され得る。好ましくは、金属層は、複数のナノサイズの金属粒子で形成され、ここでこれらの金属粒子は、およそ約1500ナノメートル(nm)以下、好ましくは、約1000nm以下、または約500nm以下、そしてより好ましくは、約300nm以下の断面寸法(例えば、長さ、幅、厚さ、および/または直径の寸法)を有する、ナノサイズの構造を含む。好ましい実施形態において、これらの金属粒子は、約20nm〜約250nmの範囲の断面寸法を有し得る。これらの金属粒子は、金属層を規定するパターンまたはアレイとして配置され、そして相変化材料のフィルムまたは薄膜が、以下に記載されるように、金属粒子のアレイを覆って形成される。この金属層を形成するために使用され得る適切な金属としては、貴金属(例えば、金、白金、パラジウムおよび銀)、卑金属(例えば、銅およびアルミニウム)ならびにこのような金属の任意の組み合わせ、合金(例えば、金/銀合金、金/銅合金など)ならびに/または酸化物(例えば、酸化銀)が挙げられるが、これらに限定されない。用語「金属粒子」とは、本明細書中で一般的に使用される場合、他に特定されない限り、金属、金属の酸化物および金属の合金のうちの少なくとも1つを含む構造体をいう。
【0022】
任意の適切なプロセスが、本発明のセンサデバイスの形成中に基板上に金属粒子の選択されたパターンまたはアレイを形成するために利用され得る。例えば、フォトリソグラフィー技術が、空隙のチャネル状パターンをレジスト内に形成し、続いて、この空隙のチャネル状パターン内に金属を堆積させ、そしてこのレジストを除去するために使用され得る。焦点イオンビーム(FIB)リソグラフィーおよび電子線(EB)リソグラフィーなどの技術が、特に有用である。なぜなら、このような技術は、高レベルな精度および確度での、任意の選択されたパターンの形成を容易にするからである。あるいは、他の任意の適切なプロセス(例えば、スタンピング、自己集合、コロイドマスクリソグラフィーまたはインプリンティングプロセス)もまた、ナノサイズの金属粒子のアレイを形成するために使用され得る。以下により詳細に記載されるように、ナノサイズの粒子の異なるアレイが提供され得、これらのアレイにおいて、これらのナノサイズの粒子は、種々の異なる幾何学的形状、寸法、間隔および/または配向を有して、種々の異なる波長範囲で、この構造体を通る光を遮断し得るか、反射し得るか、吸収し得るか、またはこの光の透過を実質的に制限し得る構造体を形成する。
【0023】
ナノサイズの金属粒子のアレイを含む金属層は、相変化材料の薄膜層によって少なくとも部分的に覆われる。この相変化材料は、任意の適切な様式(例えば、化学蒸着または物理蒸着(例えば、パルスレーザー蒸着))で、これらの金属粒子を覆って堆積され得る。好ましくは、この相変化材料の層またはフィルムは、約100nm以下の厚さを有するように形成される。例えば、この相変化材料の薄膜は、パルスレーザー蒸着(PLD)または他の類似のプロセスを使用して、これらの金属粒子のアレイを覆って形成され、約10nm〜約50nmの範囲の厚さを有し得る。
【0024】
センサデバイスの組み合わせた相変化材料および金属粒子層は、金属層および/または相変化材料層の任意の選択された組み合わせを用いて形成され得る。1つの例において、このセンサデバイスのための光学制限構造体は、金属ナノ粒子のアレイを含む金属層を覆って配置された相変化材料層を用いて形成され得る。別の例において、光学制限構造体は、相変化材料層を覆って配置された金属層を用いて形成され得る。さらなる例において、光学制限構造体は、相変化材料の2つのフィルムまたは層の間に配置された、すなわち「挟まれた」金属ナノ粒子のアレイを含む金属層を用いて形成され得、ここで、各相変化材料層は、同じ1つもしくは組み合わせの相変化材料、または異なる1つもしくは組み合わせの相変化材料(すなわち、サーモクロミック材料および/またはフォトクロミック材料)を含み得る。なお別の例において、この相変化材料は、ナノサイズの金属粒子の表面部分を覆って形成され得、ここで、金属粒子間の空間は、相変化材料によって覆われないままであり、その結果、一連の相変化材料層が、個々の粒子を覆って(これにより各金属粒子の一部分を覆う「帽子」すなわち部分的覆いを形成する)、または覆われた粒子もしくは覆われた粒子のセットの間に残っている覆われていない空間を有するように、粒子のセットを覆ってのいずれかで、形成される。
【0025】
相変化材料層を形成するために使用されるサーモクロミック材料は、適切なドーパントのうちの任意の1つまたは組み合わせを提供され得る。特定のドーパントは、サーモクロミック材料内に、臨界温度(臨界温度において、このサーモクロミック材料が転位して、相変化材料層を通る1つ以上の選択された波長の光の透過を遮断または制限する)のシフトまたは変化を起こすように提供され得る。例えば、タングステンおよびクロムなどのドーパントは、二酸化バナジウムに添加されて、その臨界相転移温度を、室温(約27℃)程度の低温まで、またはより低温にさえ変化(例えば、低下)させ得、これは、二酸化バナジウムが特定の波長の光の光学「ブロッカー」すなわち障壁として使用され得る用途および環境を増強する。他のドーパントは、相変化材料の透過性および/または他の光学特性に影響を与え得る。適切なドーパントの例としては、タングステン、フッ素、チタン、クロム、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されず、ここでドーパントまたはドーパントの組み合わせは、約0.05原子%〜約5原子%の範囲の濃度でこのサーモクロミック材料内に提供される。
【0026】
ナノサイズの金属粒子のアレイを含む金属層を覆って形成された少なくとも1つの相変化材料層を含む2つ以上の連続した層の形成は、構造体が光を遮断し得るか、反射し得るか、吸収し得るか、または光の透過を実質的に制限し得る波長範囲を、相変化材料層が単独で光の透過を実質的に制限し得る波長(または波長範囲)に対して、シフトさせる構造体をもたらす。本明細書中で使用される場合、「相変化材料を含む構造体を通る光の透過を実質的に制限する」とは、その構造体が、その構造体を通る特定の波長の光の透過をおよそ百万のうちの一部(すなわち、少なくとも約6の光学密度)以下の値まで制限するような、(例えば、その構造体内の相変化材料の相転移に起因して)特定の光学特性を有する構造体をいう。透過率は、本明細書中で、以下のように定義される:(構造体から出る特定の波長の光の強度)/(構造体に指向された特定の波長の入射光の強度)。特定の波長または波長範囲の光の実質的な制限は、例えば、波長の関数として測定された吸光度スペクトル(その構造体を通る透過率からの吸光度を表す)により決定され得、ここで波長に対してプロットされた吸光度データのピークは、その構造体が光の透過を実質的に制限する波長範囲を表す。
【0027】
組み合わせた相変化材料と金属粒子との層状構造体が光を遮断し得るかまたは光の透過を実質的に制限し得る、波長または波長範囲は、約250nm〜約2500nmを範囲とするスペクトルの領域でシフトされ得る(例えば、ブルーシフトさせ得、これは、波長の短縮をいう)。
【0028】
例えば、上記のように、VOは、約68℃という臨界温度(これは、VOが半導体状態と金属状態との間で転位する温度である)より高温で加熱されると、VOのドーピングなしで、約1200nm(1.2μm)の範囲の波長の近IR光の透過を実質的に制限し得る。本発明に従って、このセンサデバイスのための光学制限構造体は、ナノサイズの金属粒子(例えば、金粒子または上記のような金属の任意の他の1つもしくは組み合わせ)のアレイを覆って配置されたVOの層の薄膜を備えて形成され得、ここでこの構造体は、VOが半導体状態から金属状態へと転位する場合に、1200nm未満のブルーシフトした波長の光の透過を実質的に制限し得、この制限は、可視範囲(例えば、約400nm〜約800nmの範囲の波長)、および近紫外範囲(例えば、約400nm未満の波長)でさえ光の透過の制限を含む。例えば、丸みを帯びた形状または円形の金粒子のアレイおよびこの金属層を覆って配置されたVO層を使用すると、結果として得られる構造体は、1200nmから少なくとも約150nmシフトした波長で、この構造体を通る光の透過を実質的に制限するものが形成され得る。
【0029】
表面プラズモン共鳴(ナノサイズの金属粒子から生成されて金属層を形成する)と、金属粒子層を覆ってこの金属粒子層に対して(約20nm以内に)隣接または接近している相変化材料層の物理特性との組み合わせは、この金属層と相変化材料層との組み合わせにより形成される光学制限構造体を通る光の透過が効果的に遮断されるかまたは実質的に制限される(すなわち、吸光)波長の「同調」をもたらす。従って、本発明のセンサデバイスのための光学制限構造体は、VO(これは代表的に、近IR範囲の光を実質的に遮断し得るか、反射し得るか、吸収し得るか、または光の透過を実質的に制限し得る)などの相変化材料を含むものが形成され得、ここでこの構造体の光遮断能力は、特定の用途に対する光遮断要件に基づいて、ブルーシフト(例えば、可視波長範囲および/またはUV波長範囲へ、例えば、緑色光スペクトルおよび/または青色光スペクトルへのシフト)である。
【0030】
多数の要因が、光学制限構造体による光の遮断、反射、吸収、または透過率の実質的な制限のための波長の「同調」を制御し得る。このような波長のシフト、および光学制限構造体の得られる能力を制御し得るような要因の例としては、層状構造体を形成するために使用される異なる相変化材料および/または1つ以上の異なる金属の1つ以上の組み合わせの選択、金属層を形成するアレイ内の金属粒子のサイズおよび配置、相変化材料層の厚さ、粒子のアレイ内のアレイの配置、アレイ内の様々な形状およびサイズを有する粒子の配置、ならびに層状構造体を形成するために使用される相変化層および/または金属層の数/多様性が挙げられるが、これらに限定されない。従って、本発明に従って、デバイスが使用されるべき要件および仕様に基づいて、異なる波長の光を遮断し、反射し、吸収し、またはその光の透過を実質的に制限するように調整された、光学制限デバイスが、形成され得る。
【0031】
相変化材料層と金属粒子層との複合体を形成する際に、分枝状または樹枝状の金属構造体層が、相変化材料層を覆って形成され得る。樹枝状金属構造体層は、標的物質または目的の化合物(例えば、リン含有有機(リン−有機)分子)を捕捉して分解する、センサのための表面を提供する。標的物質の分解の結果として、下にある相変化材料層がその臨界温度より高温で加熱され、これによって、このセンサデバイスの光学特性を変化させる。このセンサデバイスの光学特性の変化は、このセンサによって検出されて、このセンサが位置する周囲環境におけるその標的物質または化合物の存在の指標を提供し得る。
【0032】
樹枝状金属構造体層は、この樹枝状金属構造体層の中心位置またはコア位置から延びて空の空間すなわち「ポケット」を規定する分枝アミン官能基を有する、有機化合物を含む。これらの空の空間すなわち「ポケット」は、樹枝状金属構造体層に近接する標的物質(例えば、リン−有機化合物)の捕捉、加水分解および分解を容易にする。例えば、この樹枝状金属構造体層は、有機リン加水分解酵素(OPH)などの酵素の機能を模倣するように設計され得る。有機リン加水分解酵素は、触媒反応を介して、オルガノホスフェート(OP)化合物(多くの農薬ならびに神経剤(例えば、VX、サリンおよびクロルピリホス)が挙げられる)を加水分解して分解する、重要な酵素である。しかし、OP化合物の分解のためのOPHの使用は、短い貯蔵寿命およびこの酵素触媒の製造に付随する高い費用に起因して、望ましくない。代替のアプローチは、OPHの機能を模倣し得、そして充分な安定性を有する代用有機アミン化合物を、より費用効果的な様式で合成することである。
【0033】
樹枝状有機構造(デンドリマーまたは樹枝状分子(dendron)ともまた称される)は、ピリジニルジチオ官能基を構造の焦点部分に含んで金属ナノ粒子との付着を容易にするように、形成され得る。その焦点のピリジニルジチオ官能基を特徴とする例示的な樹枝状分子単位の合成は、以下に示されるスキーム1に記載される:
スキーム1:
【0034】
【化1】

ニトロトリエステル単量体1が、Raney−ニッケル触媒で水素化されて、アミントリエステル単量体2を形成する。樹枝状分子足場の合成は、ニトロトリ酸単量体3をモノマー2と反応させることにより開始され、結果として樹枝状分子4を形成する。樹枝状分子4は、Raneyニッケル触媒で水素化されて、その樹枝状分子のコアのニトロ基をアミン基に還元する。次いで、得られたアミン樹枝状分子5は、3−(2−ピリジニルジチオ)プロパン酸とアミドカップリング反応を介して反応し、そして得られる生成物のt−ブチルエステル基は、引き続いて、ギ酸で脱保護されて、樹枝状分子生成物7をもたらす。ジスルフィドリンカーが焦点に付着している、得られた樹枝状分子生成物7は、スルフヒドリル官能基を有するかご状分子(cargo molecule)とチオール−ジスルフィド交換を起こし得るか、またはこのジスルフィドは切断されて、スルフヒドリル官能基を露出させ得、このスルフヒドリル官能基は、自己集合化学吸着によって、金属表面または金属酸化物表面(例えば、金または他の貴金属、あるいは二酸化チタンなどの金属酸化物)と容易に反応して、本発明のセンサを形成するために相変化材料層と付着され得る樹枝状金属構造体を形成し得る。このアミド骨格は、異なるpH条件に対して非常に安定であり、そして金属イオン(例えば、銅および亜鉛)と錯化して目的の標的化合物との触媒反応のためのポケットを提供するために適切である。
【0035】
デンドリマー骨格をさらに成長させるために、遊離アミン基が、樹枝状分子の骨格と統合されて、金属イオンとの錯化を促進し得る。具体的には、リジン(Lys)単位および/またはヒスチジン(His)単位が、樹枝状分子に付加され得る。このリジンは、遊離アミン基を与え、一方で、ヒスチジンアミノ酸は、金属イオンとの増強された錯化のためのイミダゾール単位を提供する。以下に示される以下の2つのスキームは、アミノ酸単位を樹枝状分子に組み込む例を提供する。具体的には、スキーム2は、リジン単位を樹枝状分子構造(スキーム2における化合物13および化合物14)に組み込む例を示し、一方で、スキーム3は、スキーム2において形成された樹枝状分子構造8から出発してヒスチジン単位を含む樹枝状分子構造(スキーム3における化合物17および化合物18)を形成する例を示す。
【0036】
スキーム2:
【0037】
【化2】

スキーム3:
【0038】
【化3】

天然酵素の結合ポケットにきっちりと一致させる目的で、アミノ酸単位の他の組み合わせ(システイン(Cys)およびイソロイシン(Ile)が挙げられるが、これらに限定されない)を樹枝状分子構造に組み込むこともまた可能である。OPHについては、これらの結合ポケットドメインのうちの少なくともいくつかは、His−X−His−X−Cys、Cys−Ile−X−His−Ser、およびHis−Ile−X−His−Serを含むと考えられ、ここでXは、無関係(ランダム)なアミノ酸を表す。
【0039】
上記のように形成される樹枝状分子は、その構造の焦点にチオール基を含み、これらのチオール基は、この樹枝状分子構造を金属構造体(例えば、金属粒子、金属箔または金属層、あるいは他の任意の適切な形態および型の金属構造体)に付着させるために使用され得る。樹枝状分子構造と結合するために使用され得る適切な金属としては、貴金属(例えば、金、白金、パラジウムおよび銀)、または他の金属(例えば、チタン、銅、亜鉛およびアルミニウム)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、特定の金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化亜鉛、および二酸化チタンが挙げられるが、これらに限定されない)がまた使用され得る。例示的な実施形態において、金粒子などの金属粒子が、樹枝状分子構造と結合するために使用される。これらの金属粒子は、必要に応じて、寸法が異なる構造体(例えば、粒子、ディスク、棒、螺旋および/またはこのような構造体の組み合わせ)であり得る。
【0040】
1つの例示的な実施形態において、樹枝状分子構造(例えば、スキーム1に示される構造7)のジスルフィドリンカーは、DTT(ジチオトレイトール)で切断され得、MeOH/AcOHの6:1混合物中でHAuClと反応させられ得、そして-70℃で撹拌され得る。この反応混合物は、約-10℃〜約0℃まで温められ得、そしてNaBHで還元されて、樹枝状金属構造体の沈殿物を形成し得、この沈殿物は、粒子、フィルムまたは他の任意の適切な構造に形成され得る。
【0041】
この樹枝状金属構造体が形成された後に、触媒である金属構造体が樹枝状分子構造に近接して提供され、この金属構造体は、目的の標的化合物の分解を触媒する。
【0042】
例えば、樹枝状分子構造におけるペプチド空間すなわち「ポケット」は、金属イオンと錯化して、これらのポケット内に触媒活性部位を形成し得る。この樹枝状分子のペプチドポケット内の金属イオンの開いた配位部位は、水と配位してH−OH結合を活性化させ得、次いで、標的分子の結合に水を付加する加水分解酵素機能を行う。オルガノホスフェート(OP)分子については、OP分子の加水分解および分解中に破壊されるのは、しばしば、P−O(リン−酸素)結合である。しかし、この樹枝状金属構造体はまた、他のホスホ−有機化合物のP−F(リン−フッ素)結合、P−CN(リン−シアノ)結合およびP−S(リン−硫黄)結合を標的として、このような結合を含む化合物を加水分解および分解し得る。
【0043】
この樹枝状分子構造は、金属イオンと錯化して、適切な金属イオン(例えば、亜鉛またはコバルト)を含む二金属中心を形成し得る。例えば、樹枝状分子ポケット内のZnおよび/またはCoの金属中心は、水分子を活性化して、H−OH結合をリン結合(例えば、P−O、P−F、P−CNまたはP−S)の破壊のために準備することを補助する。上記のように、この結合の破壊は、熱の放出を伴うエンタルピー変化をもたらす。樹枝状分子ポケット内の特異的な部位位置に結合するべき特定の金属イオンの選択は、第一の型の金属イオン(例えば、Zn2+)を、最も強い結合部位に最初に反応するように滴定し、次いで第二の型の金属イオン(例えば、Co2+)を、そのポケット内の残りの配位部位を満たすように加えることによって、制御され得る。例えば、第二の金属は、ペプチドの第二級アミンと配位し得、これは、酵素ポケットにおいて必要な水素結合を形成することを補助する。OPHについては、Zn活性部位のためのこれらのペプチドドメインは、His−X−His−X−Cys、Cys−Ile−X−His−Ser、およびHis−Ile−X−His−Serを含み得、ここでXは、無関係(すなわち、ランダム)なアミノ酸である。野生型OPH活性部位を模倣する際に、樹枝状分子構造と錯化し得る金属イオンについての3つの適切な選択肢は、Zn2+、Co2+、およびCd2+である。
【0044】
あるいは、樹枝状分子構造が付着する金属層または金属酸化物層は、特定の目的の標的化合物に対する触媒として働き得る。例えば、この樹枝状金属構造体は、二酸化チタン(TiO)を含み得、この二酸化チタンは、樹枝状分子のための結合構造、および特定の標的化合物に対する触媒として働く。この実施形態において、樹枝状分子のポケットは、目的の標的化合物を捕捉し、そしてこれらの樹枝状分子構造が付着している二酸化チタンは、捕捉された標的化合物の分解を触媒して、熱の放出をもたらし、この熱が、下にある光学制限層によって検出される。
【0045】
樹枝状金属構造体のサイズが、内部金属コアのサイズを任意の数の公知の方法(例えば、金属コアサイズの合成反応制御)に従って制御することにより制御され得ることが、さらに留意される。従って、樹枝状金属粒子は、任意の適切な寸法(例えば、直径)で形成され得るか、または樹枝状金属層は、任意の適切な厚さで形成され得る。
【0046】
樹枝状金属構造体は、任意の適切な様式で、相変化材料層/金属粒子層(または下にある触媒金属層)に付着され得る。樹枝状金属構造体が相変化材料層に付着される実施形態について、組み合わせられた樹枝状金属構造体が最初に形成され得、次いで、相変化材料層に付けられ得るか、あるいは、ナノサイズの金属粒子が相変化材料層に付けられ得、続いて樹枝状分子構造がナノサイズの金属粒子に(例えば、上記のようなチオール結合を介して)結合され得る。
【0047】
例えば、ナノサイズの金属粒子は、相変化材料層上に、リソグラフィーにより(例えば、電子線リソグラフィーを使用して)パターン付けされ得る。あるいは、予め形成されたナノサイズの金属粒子が、相変化材料層に(例えば、樹枝状分子構造を金属粒子に結合させることに関して上に記載されたものと類似の、チオール集合化学を使用して)結合され得る。ナノサイズの金属粒子は、溶液中で予め形成され、次いで相変化材料層に付けられる場合、約1nm〜約5nmの範囲のサイズで形成され得る。ナノサイズの金属粒子はまた、電子線リソグラフィーを使用して粒子を相変化材料層上に直接形成する場合、約10nm〜約300nmの範囲のサイズで形成され得る。樹枝状金属構造体は、リソグラフィーにより形成された裸のナノサイズの金属粒子が相変化材料層を覆って付けられる場合、ナノサイズの金属粒子の溶液を用いて形成され得るか、または別のチオール官能基化(硫黄リンカー)層として付けられ得る。
【0048】
全体的なセンサの厚さは、1nm〜1000nmの厚さの相変化材料層を含む光学層、および1nm〜1000nmの樹枝状金属構造体を含む金属層を含み得る。
【0049】
光学センサデバイスを形成する例示的な実施形態が、ここで図1〜図7を参照しながら記載される。この例において、光学制限構造体が最初に形成され、この光学制限構造体において、VO層が、ナノサイズの金粒子のアレイを含む金属層を覆う。しかし、本明細書中に記載される形成技術はまた、異なる相変化材料および/または異なる金属、ならびに異なる樹枝状金属構造体層を使用して、他の光学制限構造体を形成するのに適用可能であることが留意される。
【0050】
図1を参照すると、ガラス層102を覆って形成されたインジウムスズ酸化物(ITO)層104を有するガラス層102を備える基板が提供される。あるいは、他の任意の適切な基板層がまた、金属粒子アレイを形成するために提供され得ることが留意される。このITO層は、約10nm〜約20nmの厚さであり得、そしてリソグラフィープロセスのための薄い伝導層を提供する。焦点イオンビーム(FIB)リソグラフィープロセスが、ナノサイズの金粒子のアレイをこの基板上に形成するために使用される。具体的には、FIBリソグラフィーは、FEI/Philips FIB200焦点イオンビーム(FIB)ライターを使用して、30kVで作動する液体Gaイオン源に基づいて実施される。FIBのソフトウェアインターフェースは、種々の異なるリソグラフィーパターンの入力、および画素ごとの基礎でのイオンビーム電流の制御を容易にする。
【0051】
ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA;標準分子量950K)のアニソール(1.7重量%)中の溶液が、ガラス層102およびITO層104を備える基板上に、連続する2段階で(第一段階が500rpmで約5秒間、次いで4000rpmで約45秒間)スピン(コーティング)され、そしてホットプレート上で約180℃で1分間加熱されて、約50nm〜約60nmの均一な厚さを有するPMMA層106を与える(図2)。好ましくは、このPMMA層の厚さは、金属層の形成後のPMMA層の高品質な除去を達成する目的で、ナノサイズの金属粒子層の所望の厚さの少なくとも3倍になるように選択される。Ga線が、8nmの公称ビーム径に集束されて、画素ドットアレイのパターンをこのPMMA上に作製する(例えば、ビーム電流は1pAに設定され得、そして1ドットあたりの休止時間は80μsであり得る)。
【0052】
この露光されたPMMAを1:3のメチルイソブチルケトンおよびイソプロピルアルコールの混合物中で現像し、次いで、PMMA層106の照射された部分を除去して、PMMAのパターン付けされたレジスト構造106を基板上に残す(図3)。次いで、金層108が(例えば、従来の技術または他の適切な物理蒸着技術を使用して)PMMAのパターン付けされた構造106を覆って堆積させられる(図4)。この金層は、約20nmの均一な厚さで堆積させられ得る。金層108の堆積後、PMMAレジスト構造106が、任意の従来の手順または他の適切な「除去」手順を使用して、市販の溶媒を使用して除去される。その結果、ナノサイズの金粒子を含む、残りの金属層108が、所望のアレイに配置され、そして適切な間隔、寸法および幾何学的形状を有する(図5)。
【0053】
焦点イオンビーム(FIB:30−keV Ga)リソグラフィーをPMMAマスク(例えば、60nmの厚さ)において使用し、続いて金の蒸着(例えば、約20nmの厚さ)および従来の技術または他の適切な除去技術を使用して、種々のサイズおよび形状の金のナノサイズの粒子のアレイ(円形および/または楕円形(例えば、3:1のアスペクト比)の柱状ディスク構造、多切子面構造(例えば、正方形、矩形構造、または他の多角形の構造)、螺旋形状の構造、不規則および/または非対称な形状の構造などが挙げられるが、これらに限定されない)が形成され得る。従って、様々なサイズおよび形状を有する金属粒子の様々なアレイが、このプロセスを使用して形成され得る。上記のように、金属粒子は、約20nm〜約250nmの範囲の断面寸法を有するように形成され得る。
【0054】
PMMAマスクを使用してナノサイズの金属粒子アレイを形成するための類似のプロセスは、電子線リソグラフィーを用いて達成され得るが、電子とフォトレジスト(PMMA)との相互作用が異なる。電子は、FIBリソグラフィープロセスにおいてGaイオンが侵入するよりも深くPMMAレジストに侵入し得、従って、FIBリソグラフィーと比較して、適切な露光を達成するためにより多くの電子を必要とするが、解像度がかなり増加する。従って、粒子の形状およびサイズは、電子線リソグラフィーを使用するとより再現性があり、そしてよりよく制御され得、層状の光学制限構造体の光学特性のより正確かつ精密な同調を可能にする。電子線リソグラフィーのために使用されるレジストのパラメータ(例えば、PMMAの厚さおよび現像時間)は、FIBリソグラフィーのものと実質的に類似である。電子線リソグラフィーのために使用され得るビーム電流の例は、およそ11pAであり、面線量は、10kVにおいて100μC/cmである。線量および加速電圧の要件は、レジストの厚さおよび所望の解像度に依存する。さらに、大量生産のために、マスクは電子線リソグラフィーによって作製され得、次いで、他のテンプレートベースのスキーム(例えば、ナノインプリントリソグラフィー)において使用されて、任意の特定の設計の基板の迅速な大量生産を可能にし得る。
【0055】
VO層110が、ナノサイズの金粒子のアレイを含む金属層108を覆って、パルスレーザー蒸着、続いて堆積された層の熱酸化によって形成される(図6)。最初に、KrFエキシマレーザーからのビーム(λ=248nm)が、バナジウムターゲットに約4J/cmの流束量で集束されて、化学量論量未満の酸化バナジウム(VO〜1.7)を堆積させる。次いで、このサンプルが450℃で、250mTorrの酸素ガス下で約40分間アニーリングされて、非晶質フィルムを、化学量論的な結晶性VOに転換する。この形成されたVO層110は、約50nmの厚さを有する。しかし、パルスレーザー蒸着プロセスは、任意の所望の厚さ(好ましくは、約10nm〜約50nmの範囲内)を有するVO層を形成するように制御され得る。さらに、VO層は、先に記載されたドーパントのうちの任意の1つまたは組み合わせをドーピングされて、VO層が異なる光学特性を有するように可逆的に転移する臨界温度を低下させ得る。図6に示されるVO層は、金属層の実質的に全体を覆って配置されているが、VO層は代替的に、金属層の一部分のみを覆って、またはアレイ内の個々の金属粒子を覆ってさえ(例えば、個々の金属粒子を覆う「帽子」すなわち部分的な覆いを形成するように)形成され得、同時に、そのアレイの一部分を露出したまま(すなわち、VO層で覆われずに)残し得ることが留意される。
【0056】
図7を参照すると、樹枝状金属構造体(例えば、分枝ペプチド鎖のポケット内で錯化した触媒金属イオンを含むか、あるいは、目的の標的化合物に対する触媒として働く金属または金属酸化物を構造体内に含む)が、上記様式で形成され、そしてこの樹枝状金属構造体はさらに、VO層110を覆う層112を形成するように塗布されて、光学センサ120を与える。上記のように、樹枝状金属構造体は、最初にナノサイズの金属粒子を相変化材料層にリソグラフィーによって付け、続いて樹枝状分子構造を金属ナノ粒子に付着させることによって、形成され得る。あるいは、樹枝状金属構造体は、一緒に形成され得、次いで相変化材料層に付けられ得る。
【0057】
光学制限構造体アレイにおけるナノサイズの金属粒子の配置、サイズおよび幾何学的形状は、光学センサのための光学制限構造体の波長の「同調」(すなわち、相変化材料の相転移に起因して吸光が起こる波長範囲の同調)に対して影響を有する。光学センサのための光学制限構造体を形成する際に使用され得る金ナノ粒子の例示的なアレイが、図8の走査型電子顕微鏡写真(SEM)に示されており、この写真において、このアレイの金粒子は、丸く、そしてサイズが実質的に均一であり(例えば、約188nmの直径を有する)、そして隣の粒子から実質的に均一な間隔を空けている(例えば、隣接粒子間の距離は約267nmである)。
【0058】
ナノサイズの金属粒子の広範な種々の異なるアレイもまた形成され得る。金属粒子のこのような異なるアレイの例は、同時係属中の米国特許出願番号12/479,311に記載されており、その開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0059】
このセンサデバイスは、相変化材料がその臨界温度より高温で加熱される場合に、光学制限構造体の異なる光学状態間での転移を検出し得る、任意の適切な構造体または機構を提供され得る。図9に示される1つの例において、センサデバイス120は、センサデバイスの両側に配置された光源122および検出器124(例えば、電化結合素子)を備え、ここで光源122は、1つ以上の選択された波長の光をこのセンサデバイスに向けて投影し、そして検出器124は、光源122からこのセンサデバイスを通る光の透過を検出するために、このセンサデバイスのほぼ反対側に配置される。例えば、検出器124は、センサデバイスの光学制限構造体を透過する1つ以上の選択された波長の光を検出してこの光の量または強度測定するように、構成され得る。
【0060】
センサデバイス120の作動中に、目的の標的化合物(例えば、リン含有有機化合物(例えば、VXまたはサリン))が光学センサ120と接触する場合、この標的化合物の分子が樹枝状金属構造体層112のポケット内に捕捉され、そして(例えば、リン含有有機化合物についてはリンの結合での加水分解により)分解される。この分解反応は熱を放出し、これが、下にあるVO層110の臨界温度より高い温度への温度変化をもたらし、VO層の相転移、および光学制限構造体についての波長吸光範囲の対応するシフトをもたらす。光源122により投影される光は、組み合わせられた相変化材料と金属粒子層とのシフトした吸光範囲内の波長で投影され得、その結果、標的化合物の分解反応により引き起こされるVO層の相シフトは、光源122から生じる光の、センサデバイス120を透過することに由来する遮断または実質的な制限をもたらす。検出器124が、光源122からの充分な強度の光を検出しないことにより、標的リン化合物の検出および存在についての指標が提供される。
【0061】
任意の適切なインジケータ機構が、特定の標的種が検出されたことの指標を実地の使用者に提供するために、このセンサデバイスに提供され得る。例えば、任意の適切な型の可聴指標および/または視覚指標(例えば、ビープ音、表示スクリーン、フラッシュ光など)が、センサデバイスの近隣での標的化合物の存在をこのセンサデバイスの検出器が検出する場合に(すなわち、目的の標的化合物の分解反応により引き起こされる光学制限層の移相の検出により)起動されるように、センサデバイスに統合され得る。
【0062】
本発明の光学センサは、1つまたは多数の異なる標的化合物(例えば、1つ以上の異なるリン含有有機種(例えば、化学的および生物学的な神経剤(サリンおよびVXなど)ならびに他の危険なリン含有有機化合物))の迅速な検出および同定を容易にするように設計され得る。この光学センサデバイスは、自動化され得、そしてさらに、操作者による実地での容易な搬送および使用のために、可搬型であるように設計され得、同時にこのセンサデバイスによる検出および同定のために必要とされるサンプル収集を最小にする。
【0063】
樹枝状金属層の樹枝状分子構造は、加水分解反応には関与せず、その代わりに、この樹枝状分子構造のポケット内に、標的分子を捕捉して分解するための部位を提供する。触媒構造体(例えば、樹枝状分子構造のポケット内の金属イオン、または樹枝状分子構造が結合している金属構造体もしくは金属酸化物構造体)は、さらに、標的分子と反応せず、その代わりに、その分解を触媒する。従って、樹枝状金属層は、このセンサデバイスの使用中に改変されないので、再生の必要がない。樹枝状金属層はまた、標的分子が分解後に樹枝状分子のポケットから放出される点で、「自己洗浄性」である。樹枝状金属層が「自己洗浄性」であることと、相変化材料の光学状態間での転移の可逆性との組み合わせは、センサデバイスが、標的分子の捕捉前の以前の状態または元の状態に回復することを容易にする。樹枝状分子構造はさらに、樹枝状金属層を形成するために使用される樹枝状分子構造および/または触媒金属材料もしくは金属酸化物材料の改変によって、特定の目的の標的化合物に対して高い選択性を有するように設計され得る。
【0064】
さらに、樹枝状金属層は、光学制限構造体を覆って配置された、異なる目的の有機化合物を標的とする異なる樹枝状分子のアレイを備えるように設計され得、その結果、このセンサデバイスは、このセンサデバイスのために提供された異なる樹枝状分子に基づいて、各異なる化合物に対する選択性を有して、多数の異なる有機化合物を特異的に標的化し得る。例示的な実施形態において、この樹枝状金属層は、複数の化合物を、代謝プロセスまたはプロテオームプロセスを模倣するような様式で検出/分解する異なる樹枝状分子のアレイを有するように設計され得、その結果、構造アレイからの組み合わせ応答が、特定の生物学的種を識別するために使用され得る。
【0065】
下にある光学制限構造体はまた、異なるドーパントを含む異なる相変化材料および/または相変化材料を含むセクションを備えるように設計され得、その結果、この光学制限構造体の光透過状態は、この光学制限構造体に沿った様々な位置において(臨界温度および/または吸光が起こる波長範囲に関して)異なり、ここでこの光学制限構造体のこれらの異なるセクションは、異なる有機化合物を標的とする異なる樹枝状分子を含む樹枝状金属層の位置に対応する。従って、このセンサデバイスは、2つ以上の異なる有機化合物に関する選択性を有するように設計され得、そしてまた、対応する検出システムが、特定の標的化合物の存在を検出し、そしてまた、センサデバイスの操作者に確認させる。
【0066】
本発明のセンサデバイスは、種々の用途において有用な、薄いナノサイズの構造体として形成され得る。例えば、このセンサデバイスは、ナノ構造表面および/または他の多機能表面を組み込む種々の異なるセンサシステム(表面増強ラマン分光法(SERS)デバイス、SPR機能を有する細孔導波管、放射線材料または核材料のためのセンサが挙げられるが、これらに限定されない)に統合され得る。
【0067】
光学センサデバイスおよび光学センサデバイスを形成する方法の例示的な実施形態を記載したが、バリエーションおよび変更が、本明細書中に記載される教示を考慮して、当業者に示唆される。従って、全てのこのようなバリエーション、改変および変更は、添付の特許請求の範囲により規定されるような本発明の範囲内に入ると考えられることが、理解されるべきである。
【符号の説明】
【0068】
102 ガラス層
104 ITO層
106 PMMA層
108 金属層
110 VO
120 センサデバイス
122 光源
124 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学制限構造体であって、約1500ナノメートル以下のサイズを有する少なくとも1つの金属粒子を含む金属層、および該金属層の少なくとも一部分に隣接して配置された相変化材料層を備え、該相変化材料層が相変化材料を含む、光学制限構造体;ならびに
該光学制限構造体の該相変化材料層の少なくとも一部分を覆って配置された樹枝状金属層であって、該樹枝状金属層が、金属構造体に付着した、分枝鎖アミノ酸基を含む有機化合物を含む、樹枝状金属層;
を備え、
該光学制限構造体は、該相変化材料が臨界温度より高温で加熱される場合に、第一の光学状態から第二の光学状態へと転移するように構成されており、該光学制限構造体を通る所定の波長の光の透過率が、該光学制限構造体の該第一の光学状態よりも、該光学制限構造体の該第二の光学状態において低い、
センサデバイス。
【請求項2】
前記相変化材料が酸化バナジウムを含む、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項3】
前記相変化材料が、タングステン、フッ素、チタンおよびクロムのうちの少なくとも1つをドープされたサーモクロミック材料を含む、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項4】
前記金属層の金属粒子が、金、白金、パラジウム、銀、銅およびアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項5】
前記相変化材料層が、約10ナノメートル〜約50ナノメートルの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項6】
前記光学制限構造体の前記金属層が、約20ナノメートル〜約250ナノメートルの範囲の断面寸法を有する金属粒子のアレイを備える、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項7】
前記分枝鎖アミノ酸基を含む有機化合物が、スルフィド基を介して金属構造体に付着している、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項8】
前記樹枝状金属層の前記分枝鎖アミノ酸基が、リジンおよびヒスチジンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項9】
前記有機化合物の分枝鎖アミノ酸基間に空間が規定され、該空間は、標的リン含有化合物の捕捉および触媒分解を容易にし、そして前記相変化材料は、該標的リン含有化合物の触媒分解により発生する熱が、該相変化材料を前記臨界温度より高温で加熱するように構成されている、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項10】
前記有機化合物の分枝鎖アミノ酸基間に規定された前記空間が、金属イオンと錯化する、請求項9に記載のセンサデバイス。
【請求項11】
前記金属イオンが、亜鉛イオンおよびコバルトイオンのうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載のセンサデバイス。
【請求項12】
前記樹枝状金属層の前記金属構造体が、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、亜鉛およびチタンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項13】
前記光学制限構造体の第一の面に関連して配向される光源であって、該光源は、所定の波長の光を該光学制限構造体に向けて投影する、光源;および
該光学制限構造体の、該第一の面とは反対側の第二の面に関連して配向される検出器、
をさらに備える、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項14】
光学センサデバイスを提供する方法であって、
互いに間隔を空けてアレイを形成している複数の金属粒子を備える金属層を提供する工程であって、該金属粒子が、約1500ナノメートル以下のサイズを有する、工程;
該金属層の少なくとも一部分を覆って相変化材料層を配置する工程であって、該相変化材料層は、第一の光学状態から第二の光学状態へと転移する相変化材料を含み、該相変化材料を通る1つ以上の波長の光の透過率が、該第一の光学状態よりも該第二の光学状態において低い、工程;および
該光学制限構造体の該相変化材料層の少なくとも一部分を覆って樹枝状金属層を塗布する工程であって、該樹枝状金属層は、金属構造体に付着した、分枝鎖アミノ酸基を含む有機化合物を含む、工程;
を包含し、
該光学制限構造体は、該相変化材料が臨界温度より高温で加熱される場合に、第一の光学状態から第二の光学状態へと転移するように構成されており、該光学制限構造体を通る所定の波長の光の透過率が、該光学制限構造体の該第一の光学状態よりも、該光学制限構造体の該第二の光学状態において低い、
方法。
【請求項15】
リン含有有機化合物の存在を光学センサデバイスを用いて検出する方法であって、該センサデバイスは、光学制限構造体および樹枝状金属層を備え、該光学制限構造体は、約1500ナノメートル以下のサイズを有する少なくとも1つの金属粒子を含む金属層、および相変化材料を含んで該金属層の少なくとも一部分に隣接して配置される相変化材料層を備え、該樹枝状金属層は、該光学制限構造体の該相変化材料層の少なくとも一部分を覆って配置され、該樹枝状金属層は、金属構造体に付着した、分枝鎖アミノ酸基を含む有機化合物を含み、該方法は、
該樹枝状金属層によってリン含有有機化合物を捕捉して分解する工程であって、該樹枝状金属層により捕捉された該リン含有有機化合物の分解が、該光学制限構造体の第一の光学状態から第二の光学状態への転移を開始させる、工程;および
該光学制限構造体の該第一の光学状態から該第二の光学状態への転移を検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項16】
前記樹枝状金属層が、オルガノホスフェート化合物を捕捉して分解するように構成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記オルガノホスフェート化合物が、VXおよびサリンのうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記樹枝状金属層が、リン含有有機化合物を、リン−酸素結合、リン−硫黄結合、リン−シアノ結合およびリン−フッ素結合のうちの少なくとも1つによる分解によって捕捉および分解するように構成されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記樹枝状金属層の前記分枝鎖アミノ酸基が、リジンおよびヒスチジンのうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記光学制限構造体を通る所定の波長の光の透過率が、該光学制限構造体の前記第一の光学状態よりも該光学制限構造体の前記第二の光学状態において低く、そして該光学制限構造体の該第一の光学状態から該第二の光学状態への転移の検出が、
該所定の波長の光を該光学制限構造体に向けて投影すること;および
該光学制限構造体を透過する該所定の波長の光の量を決定すること、
を包含する、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−174928(P2011−174928A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38665(P2011−38665)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(505194077)アイティーティー マニュファクチャリング エンタープライジーズ, インコーポレイテッド (114)
【出願人】(500167881)バンダービルト ユニバーシティ (11)
【Fターム(参考)】