説明

化合物、組成物、位相差板、楕円偏光板および液晶表示装置

【課題】高い屈折率異方性と低い波長分散性を両立する化合物を提供する。
【解決手段】下記式で表される化合物。


11〜A16はメチンまたは窒素原子;X1はO、S、メチレンまたはイミノ;L11は−O−、−C(=O)−、−O−CO−等;L12は、−O−、−S−、−C(=O)−等;Q11は重合性基または水素原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位相差板などの作製に有用な化合物、該化合物を含む組成物に関する。また、該組成物から形成される光学異方性層を有する位相差板およびこれを用いた楕円偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスコティック液晶性化合物は、光学補償シートの用の素材として非常に重要な化合物であることが知られている。ディスコティック液晶性を発現する液晶性化合物としては、2,3,6,7,10,11−ヘキサ{4−(4−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ}トリフェニレンが開示されている(特許文献1)。
【0003】
また、光学補償シートのレターデーション(△nd)は、補償しようとする液晶セルの光学的性質に応じて決定する。レターデーション(△nd)は、光学的異方性層の屈折率異方性(△n)と光学的異方性層の厚さ(d)との積である。光学的異方性層の屈折率異方性(△n)が大きければ、層の厚さ(d)が薄くても液晶セルを補償できる。逆に屈折率異方性(Δn)が小さくなると、層の厚さ(d)を厚くする必要が生じ、その結果、液晶性化合物の配向に欠陥が生じやすくなる問題が生じてくる。高いΔnを有する化合物が求められている。
【0004】
また、本発明の液晶性化合物に近い分子構造を有する化合物(JD−2、比較例2参照)が非特許文献1で報告されている。しかし、この骨格では、実施例で後述するように、2,3,6,7,10,11−ヘキサ{4−アルキルオキシベンゾイルオキシ}トリフェニレンよりも低い波長分散性達成は容易でないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−306317号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Molecular Crystals and Liquid Crystals, 2001年, 370巻, 391頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような状況に鑑み、本発明の目的は、従来のディスコティック液晶性化合物では実現できなかった、高いΔnと低い波長分散性を両立できる化合物を提供することにある。また、このような化合物を含む液晶性組成物およびこのような化合物を用いた薄膜、位相差板および楕円偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段によって解決された。
(1)下記一般式(DI)で表される化合物。
一般式(DI)
【化1】

(一般式(DI)中、Y11、Y12およびY13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に下記一般式(DI−A)、下記一般式(DI−B)または下記一般式(DI−C)を表す。)
一般式(DI−A)
【化2】

(一般式(DI−A)中、A11、A12、A13、A14、A15およびA16は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X1は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、L11は−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、L12は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q11はそれぞれ独立に、重合性基または水素原子を表す。)
一般式(DI−B)
【化3】

(一般式(DI−B)中、A21、A22、A23、A24、A25およびA26は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X2は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、L21は−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、L22は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q21はそれぞれ独立に、重合性基または水素原子を表す。)
一般式(DI−C)
【化4】

(一般式(DI−C)中、A31、A32、A33、A34、A35およびA36は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X3は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、L31は−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、L32は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q31はそれぞれ独立に、重合性基または水素原子を表す。)
(2)前記A11、A12、A21、A22、A31およびA32が窒素原子である(1)記載の化合物。
(3)前記X1、X2およびX3が酸素原子である(1)または(2)記載の化合物。
(4)前記A13、A14、A15、A16、A23、A24、A25、A26、A33、A34、A35およびA36がメチンである(1)〜(3)のうちいずれかに記載の化合物。
(5)前記R11、R12およびR13が、一般式(DI−A)である(1)〜(4)のうちいずれかに記載の化合物。
(6)前記L11が、−O−、−CO−O−または−C≡C−である(5)記載の化合物。
(7)(1)〜(6)のうちいずれかに記載の化合物を含有する組成物。
(8)透明支持体の上に、少なくとも一層の光学異方性層を有する位相差板であって、該光学異方性層が下記一般式(DII)であらわされる化合物を含有する組成物から形成される層を有する位相差板。
一般式(DII)
【化5】

(一般式(DII)中、Y1、Y2およびY3は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に下記一般式(DII−H)を表す。)
【化6】

(一般式(DII−H)中、Hは二価の5員環環状基を表し、Z1およびZ2は、それぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、A3、A4、A5およびA6は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、L1は−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、L2は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q1はそれぞれ独立に、重合性基または水素原子を表す。)
(9)(8)に記載の位相差板と偏光膜とを有する、楕円偏光板。
(10)(8)に記載の位相差板板を有する液晶表示装置。
(11)(9)に記載の楕円偏光板を有する液晶表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来のディスコティック液晶性化合物では実現できなかった、高いΔnと低い波長分散性を両立する化合物、組成物及びその用途を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本明細書において、液晶性化合物とは、液晶性を示す化合物のことをいう。
【0011】
本発明の化合物は、下記一般式(DI)で表される。
一般式(DI)
【化7】

【0012】
一般式(DI)中、Y11、Y12およびY13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
【0013】
11、Y12およびY13がメチンの場合、メチンの水素原子は置換基で置き換わってもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子およびシアノ基を好ましい例として挙げることができる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がさらに好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がより好ましい。
11、Y12およびY13は、化合物の合成の容易さおよびコストの点において、いずれもメチンであることがより好ましく、メチンは無置換であることがさらに好ましい。
【0014】
11、R12およびR13は、それぞれ独立に下記一般式(DI−A)、下記一般式(DI−B)または下記一般式(DI−C)を表す。固有複屈折の波長分散性を小さくしようとする場合、一般式(DI−A)または一般式(DI−C)が好ましく、一般式(DI−A)がより好ましい。R11、R12およびR13は、R11=R12=R13であることが好ましい。
【0015】
一般式(DI−A)
【化8】

一般式(DI−A)中、A11、A12、A13、A14、A15およびA16は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
11およびA12は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
13、A14、A15およびA16は、それらのうち、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。さらに、メチンは無置換であることが好ましい。
11、A12、A13、A14、A15またはA16がメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
1は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0016】
一般式(DI−B)
【化9】

一般式(DI−B)中、A21、A22、A23、A24、A25およびA26は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
21およびA22は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
23、A24、A25およびA26は、それらのうち、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。
21、A22、A23、A24、A25またはA26がメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
2は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0017】
一般式(DI−C)
【化10】

一般式(DI−C)中、A31、A32、A33、A34、A35およびA36は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
31およびA32は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
33、A34、A35およびA36は、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。
31、A32、A33、A34、A35またはA36がメチンの場合、メチンは置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
3は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0018】
一般式(DI−A)中のL11、一般式(DI−B)中のL21、一般式(DI−C)中のL31はそれぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表す。好ましくは、−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−であり、より好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−C≡C−である。特に、小さい固有複屈折の波長分散性が期待できる、一般式(DI−A)中のL11は、−O−、−CO−O−、−C≡C−が特に好ましく、この中でも−CO−O−が、より高温でディスコティックネマチック相を発現できるため、好ましい。上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0019】
一般式(DI−A)中のL12、一般式(DI−B)中のL22、一般式(DI−C)中のL32はそれぞれ独立して、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、カルボキシル基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、特にハロゲン原子、メチル基、エチル基が好ましい。
【0020】
12、L22、L32はそれぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。
【0021】
12、L22、L32はそれぞれ独立して、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数2〜14であることがより好ましい。炭素数2〜14が好ましく、−CH2−を1〜16個有することがより好ましく、−CH2−を2〜12個有することがさらに好ましい。
【0022】
12、L22、L32を構成する炭素数は、液晶の相転移温度と化合物の溶媒への溶解性に影響を及ぼす。一般的に炭素数は多くなるほど、ディスコティックネマチック相(ND相)から等方性液体への転移温度が低下する傾向にある。また、溶媒への溶解性は、一般的に炭素数は多くなるほど向上する傾向にある。
【0023】
一般式(DI−A)中のQ11、一般式(DI−B)中のQ21、一般式(DI−C)中のQ31はそれぞれ独立して重合性基または水素原子を表す。本発明の化合物を光学補償フィルムのような位相差の大きさが熱により変化しないものが好ましい光学フィルム等に用いる場合には、Q11、Q21、Q31は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0024】
【化11】

【0025】
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基が好ましい。
【0026】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0027】
【化12】

【0028】
式(M−3)、(M−4)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、水素原子またはメチル基が好ましい。
上記式(M−1)〜(M−6)の中、(M−1)または(M−2)が好ましく、(M−1)がより好ましい。
【0029】
開環重合性基は、環状エーテル基が好ましく、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましい。
【0030】
以下に、一般式(DI)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
【化13】

【0032】
【化14】

【0033】
【化15】

【0034】
【化16】

【0035】
【化17】

【0036】
【化18】

【0037】
【化19】

【0038】
【化20】

【0039】
【化21】

【0040】
【化22】

【0041】
【化23】

【0042】
【化24】

【0043】
【化25】

【0044】
【化26】

【0045】
【化27】

【0046】
【化28】

【0047】
【化29】

【0048】
【化30】

【0049】
【化31】

【0050】
【化32】

【0051】
【化33】

【0052】
【化34】

【0053】
【化35】

【0054】
【化36】

【0055】
本発明の化合物は、すべて公知の合成法に従い合成できる。本発明の化合物の合成では、5員環環状基の構築が重要である。例えば、本発明の1,3,4−オキサジアゾ−ル骨格を有する化合物は、例えば下記のような方法で合成することができる。
【化37】

【0056】
例えば、本発明の1,2,4−オキサジアゾ−ルを有する化合物は、例えば下記のような方法で合成することができる。
【化38】

【0057】
原料に用いられる、カルボン酸類縁体化合物やニトリル化合物は、容易に入手できることが多いが、入手が困難な場合は、一般的な合成の手法により、前駆体から変換できる。例えば、下記のような前駆体から変換可能である。
【化39】

【0058】
また、その他の5員環環状基の構築や5員環環状基以外の官能基の合成は、例えば、RODD'S CHEMIDTRY OF CARBON COMPOUNDS SECOND EDITION; ELSEVIER SCIENTIFIC PUBLISHING COMPANY等を参考に合成することが可能である。
【0059】
本発明の化合物は、液晶性を発現することが好ましい。発現する液晶相としては、カラムナー相およびディスコティックネマチック相(ND相)を挙げることができる。これらの液晶相の中では、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック相(ND相)が好ましい。
【0060】
本発明の化合物の中でも、液晶相を20℃〜300℃の範囲で発現させるものが好ましい。より好ましくは40℃〜280℃であり、さらに好ましくは60℃〜250℃である。ここで20℃〜300℃で液晶相を発現するとは、液晶温度範囲が20℃をまたぐ場合(例えば、10℃〜22℃)や、300℃をまたぐ場合(例えば、298℃〜310℃)も含む。40℃〜280℃と60℃〜250℃に関しても同様である。
【0061】
(位相差板)
光学異方性層
本発明の位相差板に係る光学異方性層を形成する一般式(DII)で表される化合物について、詳細に説明する。
一般式(DII)
【化40】

【0062】
一般式(DII)中、Y1、Y2およびY3は、一般式(DI)中のY11、Y12およびY13と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0063】
1、R2およびR3は、それぞれ独立に下記一般式(DII−H)を表す。R1、R2およびR3は、R1=R2=R3であることが好ましい。
一般式(DII−H)
【化41】

一般式(DII−H)中、Z1およびZ2は、それぞれ独立に単結合または二価の連結基である。Z1およびZ2が二価の連結基の場合、それぞれ独立に、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO−、−SO2−、−NR7−、−CH=CH−、−C≡C−、二価の環状基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数が1から7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1から4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0064】
1およびZ2で表される二価の環状基とは、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基である。二価の環状基中の環は5員環、6員環、または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることがもっとも好ましい。環状基中の環は、縮合環であっても良い。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環の例には、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環が含まれる。複素環の例には、ピリジン環およびピリミジン環が含まれる。環状基は、芳香族環、および複素環が好ましい。
【0065】
1およびZ2で表される二価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレンが好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイルおよびナフタレン−2,6−ジイルが好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレンであることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイルが好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイルが好ましい。
【0066】
1およびZ2で表される二価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数が1乃至16のアルキル基、炭素原子数が1乃至16のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数が1乃至16のアルコキシ基、炭素原子数が2乃至16のアシル基、炭素原子数が1乃至16のアルキルチオ基、炭素原子数が2乃至16のアシルオキシ基、炭素原子数が2乃至16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2乃至16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数が2乃至16のアシルアミノ基が含まれる。
【0067】
1およびZ2としては、単結合、−O−CO−、−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、−二価の環状基−、−O−CO−二価の環状基−、−CO−O−二価の環状基−、−CH=CH−二価の環状基−、−C≡C−二価の環状基−、−二価の環状基−O−CO−、−二価の環状基−CO−O−、−二価の環状基−CH=CH−、−二価の環状基−C≡C−が好ましい。特に、単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−二価の環状基−、−C≡C−二価の環状基−が好ましい。
【0068】
一般式(DII−H)中のHはそれぞれ独立に、二価の5員環環状基を表す。
二価の5員環環状基は、ヘテロ環が好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ホウ素原子、リン原子等を挙げることができる。特に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が好ましく、特に窒素原子と酸素原子を含むヘテロ環が好ましい。
二価の5員環環状基は、少なくとも1個のメチンを有していることが好ましく、2個のメチンを有していることが更に好ましい。特に、メチンの水素原子が、Z1もしくはZ2と置き換わっていることが好ましい。
二価の5員環環状基としては、例えば、チオフェン−2,5−ジイル、フラン−2,5−ジイル、オキサゾール−2,5−ジイル、イミダゾール2,5−ジイル、1,3,4−オキサジアゾ−ル−2,5−ジイル、1,2,4−オキサジアゾ−ル−3,5−ジイル、テトラヒドロフラン−2,4−ジイル等を挙げることができる。
二価の5員環環状基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、Y11、Y12、Y13と同様の置換基を挙げることができる。
【0069】
一般式(DII−H)中のA3、A4、A5およびA6は、一般式(DI−A)中のA11、A12、A13、A14、A15およびA16と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0070】
一般式(DII−H)中のL1は、一般式(DI−A)中のL11と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0071】
一般式(DII−H)中のL2は、一般式(DI−A)中のL12と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0072】
一般式(DII−H)中のQ1は、一般式(DI−A)中のQ11と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0073】
本発明の位相差板に係る光学異方性層を形成する一般式(DII)で表される化合物が、一般式(DI)で表される化合物であることがより好ましい。
【0074】
本発明の位相差板に係る光学異方性層は、一般式(DII)で表される化合物が均一に配向していることが好ましい。均一に配向した薄膜を得るためには、例えば、液晶性化合物に必要に応じて他の添加剤を加え液晶性組成物とした後に、該液晶性組成物を塗布し、液晶状態で均一に配向させることで得られる。液晶性化合物に加えることのできる添加剤の例としては、後述する空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等が挙げられる。
本発明の化合物を配向させる配向形態としては、ホメオトロピック配向、ハイブリッド配向、垂直配向が好ましい。
本発明の液晶性組成物が均一に配向した薄膜の厚さは、0.2〜10.0μmであることが好ましく、0.4〜4.0μmであることがさらに好ましい。
【0075】
均一に配向した状態を実現するためには、配向膜を設けることが好ましい。但し、ディスコティック液晶性化合物の光軸方向が薄膜面の法線方向と一致する場合(ホメオトロピック配向)においては必ずしも配向膜は必要ではない。
配向膜は、有機化合物(好ましくは、ポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、または、ラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与または光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
本発明の液晶性組成物に所望の配向を付与できるのであれば、配向膜としてはどのような層でもよいが、本発明においては、ラビング処理または光照射により形成される配向膜が好ましい。ポリマーのラビング処理により形成される配向膜がさらに好ましい。ラビング処理は、一般にはポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができるが、特に本発明では液晶便覧(丸善(株))に記載されている方法により行うことが好ましい。配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜3μmであることがより好ましい。
【0076】
本発明で配向状態が固定化された状態とは、その配向が保持された状態が最も典型的、かつ、好ましい態様ではあるが、それだけには限定されず、例えば、通常0℃から50℃、より過酷な条件下では−30℃から70℃の温度範囲において、該固定化された液晶性組成物に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を含む趣旨である。なお、配向状態が最終的に固定化され光学異方性層が形成された際に、本発明の液晶性組成物はもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶性化合物として重合性基を有する化合物を用いているので、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋反応が進行し、高分子量化して、液晶性を失ってもよい。
光学異方性層の形成にあたり本発明の液晶性組成物に加えることのできる添加剤の例としては、空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等が挙げられる。
【0077】
[空気界面配向制御剤]
空気界面に偏在する添加剤および、配向膜の種類を選択することにより、ホメオトロピック配向、ハイブリッド配向、垂直配向を実現することが可能となる。
【0078】
このような配向状態の実現には、電場や磁場のような外場を用いることや空気界面に偏在する添加剤を用いることができるが、添加剤を用いることが好ましい。このような添加剤としては、炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換脂肪族基または、炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換の脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を、分子内に1本以上有する化合物が好ましく、分子内に2本以上有する化合物がさらに好ましい。例えば、空気界面配向制御剤としては、特開平11−352328号公報や特開2002−20363号公報に記載のものを用いることができる。
【0079】
空気界面側の配向制御用添加剤の添加量としては、本発明の液晶性組成物に対して、0.001質量%〜20質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%が更に好ましく、0.1質量%〜5質量%が最も好ましい。
【0080】
[ハジキ防止剤]
本発明の液晶性組成物に添加し、該組成物の塗布時のハジキを防止するための材料としては、一般に高分子化合物を好適に用いることができる。
使用するポリマーとしては、本発明の液晶性組成物の傾斜角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。
ポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
本発明の液晶性組成物の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの添加量は、本発明の液晶性組成物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0081】
また、界面活性剤を用いることもできる。このような界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物、特開2005−179636号公報明細書中の段落番号[0100]〜[0118]記載の化合物が挙げられる。上記界面活性剤は、ディスコティック化合物に対して一般に0.005〜8質量%(好ましくは0.05〜2.5質量%)の量にて使用される。
【0082】
[重合開始剤]
本発明における配向状態を固定化する方法としては、液晶性組成物を一度液晶相形成温度まで加熱し、次にその配向状態を維持したまま冷却することにより、その液晶状態における配向形態を損なうことなく固定化することで形成できる。また、本発明の液晶性組成物に重合開始剤を添加した組成物を液晶相形成温度まで加熱した後、重合させ冷却することによって液晶状態の配向状態を固定化することで形成できる。本発明における配向状態の固定化は、後者の重合反応により行うことが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応と電子線照射による重合反応が含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応または電子線照射による重合反応が好ましい。
【0083】
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同第2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同第2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、光学異方性層の塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0084】
重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ〜50J/cm2であることが好ましく、50mJ〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。
【0085】
[重合性モノマー]
本発明の液晶性組成物には、重合性のモノマーを添加してもよい。本発明で使用できる重合性モノマーとしては、本発明の化合物と相溶性を有し、液晶性組成物の配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、液晶性化合物に対して0.5〜50質量%の範囲にあることが好ましく、1〜30質量%の範囲にあることがより好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
【0086】
[塗布溶剤]
本発明の液晶性組成物の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド、エステルおよびケトンが好ましい。これらは、2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0087】
[塗布方式]
本発明の薄膜は、上記溶媒を用いて本発明の液晶性組成物の塗布液を調製し配向膜上に塗布し、本発明の液晶性組成物を配向処理することで形成する。塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、スピンコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0088】
本発明の位相差板は、透明支持体の上に本発明の液晶性組成物から形成される光学異方性層を有する。
【0089】
本発明の位相差板は、偏光膜と組み合わせて楕円偏光板の用途に供することができる。さらに、透過型、反射型、及び半透過型液晶表示装置に、偏光膜と組み合わせて適用することにより、上記装置の視野角の拡大に寄与させることができる。
【0090】
[透明支持体]
本発明の位相差板の透明支持体としては、主に光学的等方性で、光透過率が80%以上であれば、特に材料の制限はないが、ポリマーフィルムやガラスが好ましい。
ポリマーの具体例として、セルロースアシレート類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、ノルボルネン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリレートエステル類のフィルムなどを挙げることができ、多くの市販のポリマーを好適に用いることが可能である。このうち、光学性能の観点からセルロースエステル類が好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下脂肪酸で、炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルローストリアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開WO00/26705号パンフレットに記載の分子の修飾により該発現性を低下させたものも使用できる。
【0091】
以下、透明支持体として好ましく使用されるセルロースアシレート(特に、セルローストリアセテート)について詳述する。
セルロースアシレートとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。特に酢化度が57.0〜62.0%であることが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。セルロースエステルの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、本発明に使用するセルロースエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることがさらに好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
【0092】
セルロースアシレートでは、セルロースの2位、3位、6位の水酸基が全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。セルロースの6位水酸基の置換度が、2位、3位に比べて多いほうが好ましい。全体の置換度に対して6位の水酸基が30〜40%のアシル基で置換されていることが好ましく、さらには31〜40%、特に32〜40%であることが好ましい。6位の置換度は、0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基(例えば、プロピオニル基、ブチリル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基)で置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求める事ができる。6位水酸基の置換度が高いセルロースエステルは、特開平11−5851号公報の段落番号0043〜0044に記載の合成例1、段落番号0048〜0049に記載の合成例2、段落番号0051〜0052に記載の合成例3の方法を参照して合成することができる。
【0093】
透明支持体として用いるポリマーフィルム、特にセルロースアシレートフィルムは、レターデーションを調整するために、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することも可能である。このようなレターデーション上昇剤を使用する場合、レターデーション上昇剤は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.05〜15質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0094】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがより好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
【0095】
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環および1,3,5−トリアジン環がさらに好ましい。芳香族化合物は、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有することが特に好ましい。
【0096】
前記芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
【0097】
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。このようなレターデーション上昇剤については国際公開WO01/88574A1パンフレット、国際公開WO00/2619A1パンフレット、特開2000−111914号公報、特開2000−275434号公報、特開2002−363343号公報等に記載されている。
【0098】
セルロースアシレートフィルムは、調製されたセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりを製造することが好ましい。ドープには、前記のレターデーション上昇剤を添加してもよい。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許第2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許第640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
【0099】
前記ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0100】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて、ドープを2層以上流延することによりフィルム化することもできる。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、支持体の進行方向に間隔をおいて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて、それらを積層させながらフィルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによりフィルム化してもよい。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、特開昭56−162617号公報に記載の、高粘度セルロースアセテート溶液の流れを低粘度のセルロースアセテート溶液で包み込み、高粘度および低粘度のセルロースアセテート溶液を同時に押出すセルロースアセテートフィルムの流延方法を用いてもよい。
【0101】
セルロースアシレートフィルムは、さらに延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、0〜100%の範囲にあることが好ましい。本発明に用いるセルロースアシレートフィルムを延伸する場合には、テンター延伸が好ましく使用され、遅相軸を高精度に制御するために、左右のテンタークリップ速度、離脱タイミング等の差をできる限り小さくすることが好ましい。
【0102】
セルロースアシレートフィルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)、ジフェニルビフェニルホスフェートおよびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
【0103】
セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−197073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量を1質量%以上とすることにより、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)をより効果的に抑止できる。
特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。紫外線防止剤については、特開平7−11056号公報に記載がある。
【0104】
セルロースアシレートフィルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましく利用される。
フィルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースアシレートフィルムの温度をガラス転移温度(Tg)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
【0105】
セルロースアシレートフィルムの表面処理は、配向膜などとの接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアシレートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。アルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。水酸化イオンの濃度は、0.1〜3.0 mol/Lの範囲にあることが好ましく、0.5〜2.0 mol/Lの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温(例えば、18℃)〜90℃の範囲にあることが好ましく、40〜70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
【0106】
また、セルロースアシレートフィルムの表面エネルギーは55mN/m以上であることが好ましく、60〜75mN/mの範囲にあることがさらに好ましい。
表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。本発明に用いるセルロースアシレートフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアシレートフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
【0107】
セルロースアシレートフィルムの厚さは、5〜500μmの範囲が好ましく、20〜250μmの範囲がより好ましく、30〜180μmの範囲がさらに好ましく、30〜110μmの範囲が特に好ましい。
【0108】
[楕円偏光板]
本発明の位相差板と偏光膜を積層することによって楕円偏光板を作製することができる。本発明の位相差板を利用することにより、液晶表示装置の視野角を拡大しうる楕円偏光板を提供することができる。
前記偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の偏光軸は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
【0109】
偏光膜は位相差板の光学異方性層側に積層する。偏光膜の位相差板を積層した側と反対側の面に透明保護膜を形成することが好ましい。透明保護膜は、光透過率が80%以上であるのが好ましい。透明保護膜としては、好ましくはセルロースエステルフィルム、より好ましくはトリアセチルセルロースフィルムが用いられる。セルロースエステルフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
【0110】
[液晶表示装置]
本発明の位相差板の利用により、視野角が拡大された液晶表示装置を提供することができる。TNモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平6−214116号公報、米国特許第5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモードまたはFLCモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用光学補償シートは、米国特許第5805253号明細書および国際公開WO96/37804号パンフレットに記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用光学補償シートは、特許登録第2866372号公報に記載がある。
【0111】
本発明において、前記記載の公報を参考にして各種のモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)を作製することができる。本発明の位相差板は、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)モードのような様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。
液晶表示装置は、液晶セル、偏光素子及び位相差板(光学補償シート)からなる。偏光素子は、一般に偏光膜と保護膜からなる。偏光膜と保護膜については、上記楕円偏光で説明したものを用いることができる。
【実施例】
【0112】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0113】
[実施例1]
[D−3の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【0114】
【化42】

【0115】
(D−3Aの合成)
3−シアノフェノール15.5gをジメチルホルムアミド300mlに溶解させ、炭酸カリウム21.2g、1−ブロモヘキサン19.0mlを添加後、窒素雰囲気下、110℃で5時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水で洗浄した。有機層を減圧濃縮後、カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D−3Aを25.2g得た。
【0116】
(D−3Bの合成)
D−3A 25.2gをエタノール200mlに溶解させ、50%ヒドロキシルアミン溶液26.0mlを添加後、90℃で3時間撹拌した。冷却後、反応液にメタノールを加え、析出した結晶を濾別し乾燥しD−3Bの結晶を28.8g得た。
【0117】
(D−3の合成)
D−3B28.8gを1,4−ジオキサン300mlに溶解させ、トリメシン酸クロライド10.2g、ピリジン11.0mlを添加後、90℃で7時間撹拌した。冷却後、メタノールを添加し、析出した結晶を濾取した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D−3を24.0g得た。得られたD−3のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0118】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
0.95(9H、t)
1.30−1.40(12H、m)
1.50−1.60(6H、m)
1.80−1.90(6H、m)
4.05(6H、t)
7.05(3H、d)
7.45(3H、dd)
7.75(3H、s)
7.85(3H、d)
9.20(3H、s)
【0119】
得られたD−3の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き100℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、140℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−3は100℃から140℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0120】
[実施例2]
[D−7の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【0121】
【化43】

【0122】
D−3 11.5gをCH2Cl2100mlに溶解させ、三臭化ホウ素(1.0MCH2Cl2溶液)140mlを添加した。40℃で8時間撹拌後、反応液に水を加え、析出した結晶をろ過により濾取した。この結晶を乾燥することで、トリヒドロキシ体を7.6g得た。
2−ブロモエタノール0.34gをジメチルアセトアミド5mlに溶解後、アクリル酸クロライド0.26mlを滴下し、室温で1時間攪拌後、水20ml、ヘキサン20mlを加え、有機層を洗浄した。分液後、ヘキサン層を留去し、上記トリヒドロキシ体0.3g、炭酸カリウム0.44gおよびジメチルホルムアミド30mlを加え、90℃で5時間攪拌した。反応液に水を加え、CH2Cl2で抽出後、有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィーを用いて精製を行うことで、D−7の結晶0.35gを得た。得られたD−7のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0123】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
4.33(6H、t)
4.60(6H、t)
5.89(3H、dd)
6.20(3H、dd)
6.50(3H、dd)
7.15(3H、d)
7.50(3H、dd)
7.80(3H、s)
7.90(3H、d)
9.23(3H、s)
【0124】
得られたD−7の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き128℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、131℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−7は128℃から131℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0125】
[実施例3]
[D−8の合成]
下記スキームにしたがって、合成した。
【0126】
【化44】

【0127】
原料を上記のように変えた他は、実施例2と同様の方法で合成を行い、D−8を0.8g得た。得られたD−8のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0128】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.20−2.30(6H、m)
4.20(6H、t)
4.40(6H、t)
5.85(3H、dd)
6.25(3H、dd)
6.45(3H、dd)
7.15(3H、d)
7.45(3H、dd)
7.75(3H、s)
7.85(3H、d)
9.30(3H、s)
【0129】
得られたD−8の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き115℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、129℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−8は115℃から129℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0130】
[実施例4]
[D−9の合成]
下記スキームにしたがって、合成した。
【0131】
【化45】

【0132】
原料を上記のように変えた他は、実施例2と同様の方法で合成を行い、D−9を5.8g得た。得られたD−9のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0133】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.90−2.00(12H、m)
4.15(6H、t)
4.30(6H、t)
5.85(3H、dd)
6.15(3H、dd)
6.45(3H、dd)
7.15(3H、d)
7.45(3H、dd)
7.75(3H、s)
7.85(3H、d)
9.30(3H、s)
【0134】
得られたD−9の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き55℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、116℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−9は55℃から116℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0135】
[実施例5]
[D−10の合成]
下記スキームにしたがって、合成した。
【0136】
【化46】

【0137】
原料を上記のように変えた他は、実施例2と同様の方法で合成を行い、D−10を5.8g得た。得られたD−10のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0138】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.60−1.70(6H、m)
1.75−1.85(6H、m)
1.85−1.95(6H、m)
4.15(6H、t)
4.25(6H、t)
5.85(3H、dd)
6.15(3H、dd)
6.45(3H、dd)
7.15(3H、d)
7.45(3H、dd)
7.75(3H、s)
7.85(3H、d)
9.30(3H、s)
【0139】
得られたD−10の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き57℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、100℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−10は57℃から100℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0140】
[実施例6]
[D−11の合成]
下記スキームにしたがって、合成した。
【0141】
【化47】

【0142】
原料を上記のように変えた他は、実施例2と同様の方法で合成を行い、D−11を1.2g得た。得られたD−11のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0143】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.45−1.65(12H、m)
1.70−1.80(6H、m)
1.85−1.95(6H、m)
4.15(6H、t)
4.20(6H、t)
5.85(3H、dd)
6.15(3H、dd)
6.40(3H、dd)
7.10(3H、d)
7.45(3H、dd)
7.75(3H、s)
7.85(3H、d)
9.30(3H、s)
【0144】
得られたD−11の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き83℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、86℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−11は83℃から86℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0145】
[実施例7]
[D−14の合成]
下記スキームにしたがって、合成した。
【0146】
【化48】

【0147】
1−メチル1,3−プロパンジオール180mlをトリエチルアミン150mlに溶解させ、アセトン200mlに溶解させたトシルクロライド191gを室温で滴下した。40℃で4時間撹拌した後反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。その後、この濃縮液に水を加え、トルエンで抽出し有機層を減圧濃縮することで、D-14Aを161g得た。トリヒドロキシル体10gをジメチルアセトアミド100mlに溶解させ、炭酸カリウム15g、ヨウ化ナトリウム16gD−14A 20gを加え、80℃で6時間撹拌した。冷却後、反応液に水を加え、析出した結晶を濾別し、D−14Bを得た。D−14B 2.5gをジメチルアセトアミド(DMAc)25mlに溶解させ、アクリロイルクロライド3mlを滴下した。40℃で3時間撹拌した後、冷却しメタノールを加え析出した結晶を濾別する。得られた結晶をジメチルアセトアミド10mlに溶解させ、トリエチルアミン3mlを加えた。60℃で4時間撹拌し、冷却後メタノールを加え析出した結晶を濾別する。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D−14を2.3g得た。得られたD−14のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0148】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.40(9H、d)
2.10−2.25(6H、m)
4.20(6H、t)
5.20−5.30(3H、m)
5.85(3H、dd)
6.15(3H、dd)
6.45(3H、dd)
7.10(3H、d)
7.45(3H、dd)
7.75(3H、s)
7.85(3H、d)
9.30(3H、s)
【0149】
得られたD−14の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き93℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、109℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−14は93℃から109℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0150】
[実施例8]
[D−38の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【0151】
【化49】

【0152】
2−ヒドロキシエチルアクリレート0.73gをテトラヒドロフラン10mlに溶解後、氷冷下ジメチルアニリン0.84mlを滴下し、トリホスゲン0.62gを加えた。室温に戻し2時間撹拌後、氷冷下トリヒドロキシ体0.35gを加え、ピリジン0.30mlを滴下し、室温で2時間撹拌した。反応後、メタノールを添加し、析出した結晶を濾取した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D−38を0.37g得た。得られたD−38のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0153】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
4.50(6H、t)
4.60(6H、t)
5.95(3H、dd)
6.20(3H、dd)
6.50(3H、dd)
7.40(3H、d)
7.60(3H、dd)
8.10(3H、s)
8.20(3H、d)
9.30(3H、s)
【0154】
得られたD−38の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き104℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、109℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−38は104℃から109℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0155】
[実施例9]
[D−40の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【0156】
【化50】

【0157】
4−ヒドロキシブチルアクリレートを原料に用い、実施例7と同様の方法で合成を行い、D−40を1.5g得た。得られたD−40のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0158】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.80−2.00(12H、m)
4.25(6H、t)
4.35(6H、t)
5.85(3H、dd)
6.15(3H、dd)
6.45(3H、dd)
7.40(3H、d)
7.60(3H、dd)
8.10(3H、s)
8.15(3H、d)
9.30(3H、s)
【0159】
得られたD−40の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、室温でディスコティックネマチック液晶相であり、53℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−40は室温から53℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0160】
[実施例10]
[D−9を均一に配向させた薄膜の作製]
ガラス基板上に、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−203)の水溶液を塗布し、100℃で3分乾燥させた。ポリビニルアルコールの厚みは、0.5μmであった。このポリビニルアルコールの薄膜を設けた基板上に下記塗布液をスピンコートし、80℃の恒温槽中に入れ、5分後に600mJの紫外線を照射して配向状態を固定した。室温まで放冷後、偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、ディスコティック液晶性化合物が欠陥なくホメオトロピック配向していることが分かった。液晶性化合物の層の厚みは、3.2μmであった。
【0161】
(塗布液)
・前記液晶性化合物 D−9 100質量部
・下記空気界面配向制御剤 V−(1) 0.2質量部
・イルガキュア907(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・メチルエチルケトン 250質量部
【0162】
【化51】

【0163】
[実施例11]
[D−225の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【化52】

【0164】
(D−225Aの合成)
3−シアノ安息香酸クロライド2.5gをテトラヒドロフラン(THF)20mlに溶解させ、3−クロロ−1−プロパノール1.3ml、ジイソプロピルエチルアミン3.0mlを添加後、室温で1時間撹拌した。反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を減圧濃縮した。残渣をメタノール100mlに溶解させ、50%ヒドロキシルアミン溶液2.8mlを添加後、40℃で1時間撹拌した。冷却後、反応液に水を加え、析出した結晶を濾別、乾燥し、D−225Aを3.4g得た。
【0165】
(D−225Bの合成)
D−225A3.4gをジメチルアセトアミド10mlに溶解させ、ピリジン1.2ml、トリメシン酸クロライド1.2gを添加後、120℃で1時間撹拌した。冷却後、メタノールを添加し、析出した結晶を濾取、乾燥し、D−225Bを3.9g得た。
【0166】
(D−225の合成)
D−225B3.9gをジメチルアセトアミド50mlに溶解させ、炭酸カリウム3.7g、ヨウ化ナトリウム2.0g、アクリル酸1.9mlを添加後、100℃で3時間撹拌した。反応液に水を加え、析出した結晶をろ過により濾取した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D−225を3.0g得た。得られたD−225のNMRスペクトルは以下の通りである。
【0167】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.30(6H、quint)
4.40(6H、t)
4.55(6H、t)
5.85(3H、dd)
6.15(3H、dd)
6.45(3H、dd)
7.65(3H、t)
8.25(3H、d)
8.45(3H、d)
8.90(3H、s)
9.30(3H、s)
【0168】
得られたD−225の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き115℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、178℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−225は115℃から178℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0169】
[実施例12]
[D−226の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【化53】

【0170】
実施例11の3−クロロ−1−プロパノールを4−クロロ−1−ブタノールに変え、後は実施例11と同様の方法で合成を行い、D−226を2.8g得た。得られたD−226のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0171】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.85−2.00(12H、m)
4.30(6H、t)
4.45(6H、t)
5.85(3H、dd)
6.15(3H、dd)
6.40(3H、dd)
7.70(3H、t)
8.25(3H、d)
8.45(3H、d)
8.90(3H、s)
9.30(3H、s)
【0172】
得られたD−226の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き113℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、165℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−226は13℃から165℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0173】
[実施例13]
[D−227の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【化54】

【0174】
実施例11の3−クロロ−1−プロパノールを5−クロロ−1−ペンタノールに変え、後は実施例11と同様の方法で合成を行い、D−227を3.5g得た。得られたD−227のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0175】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.60(6H、m)
1.80−1.90(12H、m)
4.25(6H、t)
4.45(6H、t)
5.80(3H、dd)
6.15(3H、dd)
6.40(3H、dd)
7.65(3H、t)
8.25(3H、d)
8.45(3H、d)
8.90(3H、s)
9.30(3H、s)
【0176】
得られたD−227の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き86℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、142℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−227は86℃から142℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0177】
[実施例14]
[D−228の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【化55】

【0178】
実施例11の3−クロロ−1−プロパノールを6−クロロ−1−ヘキサノールに変え、後は実施例11と同様の方法で合成を行い、D−228を1.2g得た。得られたD−228のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0179】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.55(12H、m)
1.75−1.90(12H、m)
4.20(6H、t)
4.40(6H、t)
5.80(3H、dd)
6.10(3H、dd)
6.40(3H、dd)
7.65(3H、t)
8.25(3H、d)
8.45(3H、d)
8.90(3H、s)
9.30(3H、s)
【0180】
得られたD−228の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き83℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、130℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−228は83℃から130℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0181】
[実施例15]
[D−231の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【化56】

【0182】
実施例11の3−クロロ−1−プロパノールを2−(2−クロロエトキシ)エタノールに変え、後は実施例11と同様の方法で合成を行い、D−231を3.1g得た。得られたD−231のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0183】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
3.85(6H、t)
3.95(6H、t)
4.40(6H、t)
4.60(6H、t)
5.80(3H、dd)
6.15(3H、dd)
6.40(3H、dd)
7.65(3H、t)
8.25(3H、d)
8.45(3H、d)
8.90(3H、s)
9.30(3H、s)
【0184】
得られたD−231の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き91℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、143℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−231は91℃から143℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0185】
[実施例16]
[D−238の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【化57】

【0186】
実施例13のアクリル酸をメタクリル酸に変え、後は実施例13と同様の方法で合成を行い、D−238を1.5g得た。得られたD−238のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0187】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.60(6H、m)
1.80−1.90(12H、m)
1.95(9H、s)
4.20(6H、t)
4.45(6H、t)
5.50(3H、s)
6.10(3H、s)
7.70(3H、t)
8.25(3H、d)
8.45(3H、d)
8.90(3H、s)
9.30(3H、s)
【0188】
得られたD−238の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き83℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、126℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−238は83℃から126℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0189】
[実施例17]
[D−268の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【化58】

【0190】
(D−268Aの合成)
イソフタロイルクロライド10.0gと6−クロロ−1−ヘキサノール7.4gをTHF70mlに溶解させて−10℃に冷却後、トリエチルアミン11.3mlを添加し、室温で1時間撹拌した。別のフラスコにヒドラジン1水和物49.3gをTHF140mlに溶解させ、−40℃に冷却した後、前記反応液を滴下した。室温で1時間攪拌し、反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D−268Aを6.0g得た。
【0191】
(D−268Bの合成)
D−268A5.6gをTHF50mlに溶解させ、トリエチルアミン2.9ml、トリメシン酸クロライド1.7gを添加後、室温で1時間撹拌した。反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を減圧濃縮し、D−268Bを6.6g得た。
【0192】
(D−268Cの合成)
D−268B6.6gとトリフェニルホスフィン6.4gを塩化メチレン110mlに溶解させ、四臭化炭素8.1g、トリエチルアミン6.7mlを添加後、40℃で1時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D−268Cを3.8g得た。
【0193】
(D−268の合成)
D−268C3.6gをジメチルアセトアミド50mlに溶解させ、炭酸カリウム6.0g、ヨウ化カリウム3.6g、アクリル酸1.5mlを添加後、90℃で3時間撹拌した。反応液に水を加え、析出した結晶をろ過により濾取した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D−268を2.8g得た。得られたD−268のNMRスペクトルは以下の通りである。
【0194】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.50(12H、m)
1.75−1.90(12H、m)
4.20(6H、t)
4.45(6H、t)
5.80(3H、dd)
6.10(3H、dd)
6.40(3H、dd)
7.70(3H、t)
8.30(3H、d)
8.45(3H、d)
8.90(3H、s)
9.10(3H、s)
【0195】
得られたD−268の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き124℃付近でカラムナー相から等方性液体相に変わった。次に124℃から徐々に温度を下げていくと120℃付近でディスコティックネマチック相に変化した。すなわち、D−268は、降温時にディスコティックネマチック相を呈することが分かった。
【0196】
[実施例18]
[D−286の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【化59】

【0197】
3−ブロモベンゾニトリルと5−クロロ−1−ペンチンから、定法に従い、D−286Aを合成した。その後、実施例11と同様の方法で合成を行い、D−286を2.3g得た。得られたD−286のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0198】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.00−2.15(6H、m)
2.62(6H、t)
4.38(6H、t)
5.85(3H、dd)
6.18(3H、dd)
6.45(3H、dd)
7.50(3H、t)
7.60(3H、d)
8.15(3H、d)
8.27(3H、s)
9.24(3H、s)
【0199】
得られたD−286の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き63℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、113℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−286は63℃から113℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0200】
[実施例19]
[D−291の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【0201】
【化60】

【0202】
実施例18の3−ブロモベンゾニトリルを3−ブロモ−4−フルオロベンゾニトリルに変え、後は実施例18と同様の方法で合成を行い、D−291を1.1g得た。得られたD−291のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0203】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.00−2.15(6H、m)
2.62(6H、t)
4.38(6H、t)
5.85(3H、dd)
6.18(3H、dd)
6.45(3H、dd)
7.20−7.30(3H、m)
8.10−8.20(3H、m)
8.25−8.30(3H、m)
9.24(3H、s)
【0204】
得られたD−291の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き112℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、182℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−291は112℃から182℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0205】
[実施例20]
[D−141の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【0206】
【化61】

【0207】
(D−141Aの合成)
定法により合成した1,3,5−トリシアノベンゼン11.5gにメタノール100mlを加えた後、50%ヒドロキシルアミン溶液26.0mlを添加し、60℃で3時間撹拌した。冷却後、反応液に水を加え、析出した結晶を濾別し乾燥しD−141Aの結晶を8.0g得た。
【0208】
(D−141の合成)
D−141A1.0gをジメチルアセトアミド10mlに溶解させ、定法より合成したクロロ 3−ヘキシルオキシベンゾエート3.2gおよびピリジン1.1mlを添加後、125℃で3時間撹拌した。冷却後、メタノールを添加し、析出した結晶を濾取した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D−141を0.2g得た。得られたD−141のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0209】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
0.95(9H、t)
1.30−1.40(12H、m)
1.50−1.60(6H、m)
1.80−1.90(6H、m)
4.12(6H、t)
7.15(3H、d)
7.48(3H、dd)
7.80(3H、s)
7.87(3H、d)
9.15(3H、s)
【0210】
得られたD−141の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、温度を上げて行き143℃付近でカラムナー相から等方性液体相に変わった。次に145℃から徐々に温度を下げていくと128℃付近でディスコティックネマチック相に変化した。すなわち、D−141は、降温時にディスコティックネマチック相を呈することが分かった。
【0211】
[実施例21]
[D−325の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【化62】

J. Org. Chem., 1956年, 21巻, 1392頁に記載の方法でs−トリアジン−2,4,6−トリカルボン酸クロライドを合成し、実施例11のトリメシン酸クロライドの代わりに用いた以外は実施例11と同様の方法で合成を行い、D−325を1.5g得た。得られたD−325のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0212】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.60(6H、m)
1.80−1.90(12H、m)
4.25(6H、t)
4.45(6H、t)
5.80(3H、dd)
6.15(3H、dd)
6.40(3H、dd)
7.70(3H、t)
8.30(3H、d)
8.50(3H、d)
8.95(3H、s)
【0213】
得られたD−325の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって求めたところ、室温でディスコティックネマチック液晶相であり、温度を上げて行き116℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D−325は室温から116℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分かった。
【0214】
[実施例22]
[D−227を均一に配向させた薄膜の作製]
ガラス基板上に、PVA−203(クラレ(株)製)の水溶液を塗布し、100℃で3分乾燥させた。PVA−203の厚みは、0.5μmであった。このPVA−203の薄膜を設けた基板上に下記塗布液をスピンコートし、110℃の恒温槽中に入れ、1分後に600mJの紫外線を照射して配向状態を固定した。室温まで放冷後、偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、ディスコティック液晶性化合物が欠陥なくホメオトロピック配向していることが分かった。液晶性化合物の層の厚みは、3.7μmであった。
【0215】
(塗布液)
・前記液晶性化合物 D−227 100質量部
・下記空気界面配向制御剤 V−(2) 0.2質量部
・イルガキュア907(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・メチルエチルケトン 250質量部
【0216】
【化63】

【0217】
[比較例1]
[従来のディスコティック液晶性化合物を均一に配向させた薄膜の作製]
上記実施例10に記載のポリビニルアルコールの薄膜を設けた基板上に下記塗布液をスピンコートし、190℃の恒温槽中に入れ、5分後に600mJの紫外線を照射して配向状態を固定した。室温まで放冷後、偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、ディスコティック液晶性化合物が欠陥なくホメオトロピック配向していることが分かった。液晶性化合物の層の厚みは、3.0μmであった。
【0218】
(塗布液)
・下記液晶性化合物 JD−1 100質量部
・上記空気界面配向制御剤 V−(1) 0.2質量部
・イルガキュア907(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・メチルエチルケトン 250質量部
【0219】
【化64】

【0220】
[Δnと波長分散性の比較]
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRAにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRAが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
実施例10、実施例22および比較例1で得られた薄膜の波長分散値(Re(478)/Re(748)は、KOBRA(王子計測機器(株)製)を用いて、斜め40°から478nmおよび748nmのレターデーションを測定することで求めた。
また、ΔnはKOBRA(王子計測機器(株)製)を用いて、上記手法にてRth(589)を測定し、別途求めた膜厚(d)で割ることで求めた。結果を第1表に示す。
【0221】
【表1】

【0222】
上記表1に示した結果から、本発明の液晶性化合物は、従来の液晶性化合物と比較して、高いΔn(例えば、0.10以上)と低い波長分散性(例えば、1.15以下)を有することが認められた。
【0223】
上記表1に示した結果から、本発明の液晶性化合物は、従来の液晶性化合物と比較して、高いΔnと低い波長分散性有することが認められた。
【0224】
[比較例2]
文献記載の方法(Kim, Bong Giらの報告、Molecular Crystals and Liquid Crystals, 2001年, 370巻, 391頁)に従い合成した下記化合物JD−2を10μmのセルギャップの水平配向セル((株)EHC製;KSRP-10/A107M1NSS(ZZ))に150℃で注入し、130℃でホメオトロピック配向させた。その後、上記の方法で波長分散値を求めたところ、1.19であった。
【0225】
【化65】

【0226】
[比較例3]
下記化合物JD−3を10μmのセルギャップの水平配向セル((株)EHC製;KSRP-10/A107M1NSS(ZZ))に200℃で注入し、190℃でホメオトロピック配向させた。その後、上記の方法で波長分散値を求めたところ1.18であった。
【0227】
【化66】

【0228】
本発明の化合物は、比較例2および比較例3の比較から、従来の液晶性化合物の非重合性タイプであるJD−3はもちろん、本発明に近い骨格を有するJD−2よりも小さい波長分散値を有することが明らかとなった。
【0229】
[実施例23]
[位相差板の作製]
(支持体の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0230】
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 45質量部
染料(住化ファインケム(株)製 360FP) 0.0009質量部
【0231】
別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤16質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
上記組成のセルロースアセテート溶液464質量部にレターデーション上昇剤溶液36質量部、およびシリカ微粒子(アイロジル製、R972)1.1質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、5.0質量部であった。また、シリカ微粒子の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.15質量部であった。
【0232】
【化67】

【0233】
得られたドープを、幅2mで長さ65mの長さのバンドを有する流延機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、1分乾燥し、剥ぎ取った後、140℃の乾燥風で、テンターを用いて幅方向に28%延伸した。この後、135℃の乾燥風で20分間乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%の支持体(PK−1)を製造した。
得られた支持体(PK−1)の幅は1340mmであり、厚さは92μmであった。エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長590nmにおけるレターデーション値(Re)を測定したところ、38nmであった。また、波長590nmにおけるレターデーション値(Rth)を測定したところ、175nmであった。
作製した支持体(PK−1)のバンド面側に、1.0mol/Lの水酸化カリウム溶液(溶媒:水/イソプロピルアルコール/プロピレングリコール=69.2質量部/15質量部/15.8質量部)を10ml/m2塗布し、約40℃の状態で30秒間保持した後、アルカリ液を掻き取り、純水で水洗し、エアーナイフで水滴を削除した。その後、100℃で15秒間乾燥した。このPK−1の純水に対する接触角を求めたところ、42°であった。
【0234】
(配向膜の作製)
このPK−1上(アルカリ処理面)に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥し、配向膜を作製した。
【0235】
(配向膜塗布液組成)
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
クエン酸エステル(三協化学製 AS3) 0.35質量部
【化68】

【0236】
(ラビング処理)
PK−1を速度20m/分で搬送し、長手方向に対して45°にラビング処理されるようにラビングロール(300mm直径)を設定し、650rpmで回転させて、PK−1の配向膜設置表面にラビング処理を施した。
【0237】
(光学異方性層の形成)
配向膜上に、下記の組成の光学異方性層塗布液を、#3.0のワイヤーバーを470回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されているPK−1の配向膜面に連続的に塗布した。
【0238】
(光学異方性層塗布液)
ディスコティック液晶性化合物(D−227) 100.00質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3.00質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1.00質量部
フルオロ脂肪族基含有共重合体 0.40質量部
(メガファックF780 大日本インキ(株)製)
メチルエチルケトン 500.00質量部
【0239】
室温から100℃に連続的に加温する工程で溶媒を乾燥させ、その後120℃の乾燥ゾーンで、約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が90℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させて、ディスコティック液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。このようにして、ロール状光学補償フィルム(KH−1)を作製した。
【0240】
作製したロール状光学補償フィルム(KH−1)の一部を切り取り、サンプルとして用いて、光学特性を測定した。波長546nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は30nmであった。また、光学異方性層中のディスコティック液晶化合物の円盤面と支持体面との角度(傾斜角)は、層の深さ方向で連続的に変化し、平均で33°であった。さらに、サンプルから光学異方性層のみを剥離し、光学異方性層の分子対称軸の平均方向を測定したところ、光学補償フィルム(KH−1)の長手方向に対して、45°であった。
更に、偏光板をクロスニコル配置とし、得られた光学補償フィルムのムラを観察したところ、正面、および法線から60°まで傾けた方向から見ても、ムラは検出されなかった。
【0241】
[比較例4]
PK−1を速度20m/分で搬送し、長手方向に対して、ラビング方向が45°になるように設定したラビングロール(300mm直径)を650rpmで回転させて、PK−1の配向膜設置表面にラビング処理を施した。
【0242】
光学異方性層塗布液として下記塗布液を用いたこと以外は実施例23と同様にし、光学補償フィルム(KH−H1)を作製した。
(塗布液)
上記ディスコティック液晶性化合物(JD−1) 91.00質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9.00質量部
セルロースアセテートブチレート 1.00質量部
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3.00質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1.00質量部
フルオロ脂肪族基含有共重合体 0.22質量部
(メガファックF780 大日本インキ(株)製)
メチルエチルケトン 226.34質量部
【0243】
得られたロール状光学補償フィルムの一部を切り取ってサンプルとして、光学特性を測定した。波長546nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は31nmであった。また、光学異方性層中のディスコティック液晶化合物の円盤面と透明支持体面との角度(傾斜角)は平均で29°であった。
また、光学異方性層をPK−1から剥離し、光学異方性層の分子対称軸の平均方向を測定したところ、光学補償フィルム(KH−H1)の長手方向に対して、45.2°であった。
【0244】
[実施例24]
(偏光板の作製)
平均重合度1700、ケン化度99.5mol%のPVAフィルム(厚み80μm、幅2500mm)を40℃の温水中で8倍に縦一軸延伸し、そのままヨウ素0.2g/l、ヨウ化カリウム60g/lの水溶液中に30℃にて5分間浸漬し、次いでホウ酸100g/l、ヨウ化カリウム30g/lの水溶液中に浸漬した。このときフィルム幅1300mm、厚みは17μmであった。
さらにこのフィルムを水洗層にて20℃、10秒間浸漬した後、ヨウ素0.1g/l、ヨウ化カリウム20g/lの水溶液中に30℃にて15秒間浸漬し、このフィルムを室温にて24時間乾燥してヨウ素系偏光子(HF−1)を得た。
【0245】
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例23で作製した光学補償フィルム(KH−1)を支持体(PK−1)面で偏光子(HF−1)の片側に貼り付けた。また、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD−80U:富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。
偏光子の長手方向と支持体(PK−1)の長手方向、更には、市販のトリアセチルセルロースフィルムの長手方向とが全て平行になるように配置した。このようにして偏光板(HB−1BR)を作製した。
【0246】
また、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例23で作製した光学補償フィルム(KH−1)を支持体(PK−1)面で偏光子(HF−1)の片側に貼り付けた。また、反射防止機能付きフィルム(富士フィルム CV−UA:富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。
偏光子の長手方向と支持体(PK−1)の長手方向、更には、市販の反射防止機能付きフィルムの長手方向とが全て平行になるように配置した。このようにして偏光板(HB−1BF)を作製した。
【0247】
[比較例5]
(偏光板の作製)
比較例4で作製したKH−H1(光学補償フィルム)を用いた以外は、実施例24と同様にして、偏光板(HB−H1R、HB−H1F)を作製した。
【0248】
[実施例25]
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを4.5μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。液晶セルの大きさは5インチであった。
作製したベンド配向セルを挟むように、実施例24で作製した偏光板(HB−1BF)を視認側に、偏光板(HB−1BR)をバックライト側に各々貼り付けた。楕円偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
【0249】
液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示2V、黒表示5Vのノーマリーホワイトモードとした。透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比として、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角を測定し、さらに色味の角度依存性を目視にて行った。また、正面コントラスト(CR:白表示の輝度/黒表示の輝度)を求めた。結果を表2に示す。
【0250】
[比較例6]
視認側の偏光板としてHB−H1Fを、バックライト側の偏光板としてHB−H1Rを用いること以外は実施例25と同様にしてパネルを作製し、評価を行った結果を表2に示す。
【0251】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(DI)で表される化合物。
一般式(DI)
【化1】

(一般式(DI)中、Y11、Y12およびY13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に下記一般式(DI−A)、下記一般式(DI−B)または下記一般式(DI−C)を表す。)
一般式(DI−A)
【化2】

(一般式(DI−A)中、A11およびA12は、窒素原子であり、A13、A14、A15およびA16は、メチンを表し、X1は、酸素原子を表し、L11は−O−、−CO−O−または−C≡C−を表し、L12は、−O−、−C(=O)−および−CH2−、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子はメチル基で置き換わってもよい。Q11はそれぞれ独立に、−CH=CH2、−C(CH3)=CH2または水素原子を表す。)
一般式(DI−B)
【化3】

(一般式(DI−B)中、A21およびA22は、窒素原子であり、A23、A24、A25およびA26は、メチンを表し、X2は、酸素原子を表し、L21は−O−、−CO−O−または−C≡C−を表し、L22は、−O−、−C(=O)−および−CH2−、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子はメチル基で置き換わってもよい。Q21はそれぞれ独立に、−CH=CH2、−C(CH3)=CH2または水素原子を表す。)
一般式(DI−C)
【化4】

(一般式(DI−C)中、A31およびA32は、窒素原子であり、A33、A34、A35およびA36は、メチンを表し、X3は、酸素原子を表し、L31は−O−、−CO−O−または−C≡C−を表し、L32は、−O−、−C(=O)−および−CH2−、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子はメチル基で置き換わってもよい。Q31はそれぞれ独立に、−CH=CH2、−C(CH3)=CH2または水素原子を表す。)
【請求項2】
前記R11、R12およびR13が、一般式(DI−A)である請求項1記載の化合物。

【公開番号】特開2011−195588(P2011−195588A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93927(P2011−93927)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【分割の表示】特願2006−68609(P2006−68609)の分割
【原出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】