説明

化合物、組成物および方法

例えば、KSPの活性をモジュレートすることによって、細胞増殖性疾患および障害を治療するのに有用な化合物、組成物および方法を述べる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照文献
本出願は、2002年9月30日に出願されている同時係属中の仮米国出願第60/414,756号の利益を主張し、前記出願は参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0002】
本発明は、有系分裂キネシンKSPの阻害剤であり、癌、異常増殖、再狭窄、心臓肥大、免疫不全、炎症などの細胞増殖性疾患の治療に有用なキナゾリノン様誘導体に関する。
【背景技術】
【0003】
有糸分裂紡錘体は、細胞分裂により生じた2つの娘細胞の各々に、ゲノムの複製を分配する役割を果たす。有糸分裂紡錘体を破壊することにより、細胞分裂を阻害し、細胞死を誘導することができる。微小管は有糸分裂紡錘体の主要な構造要素である。微小管は、癌の治療に用いられている既存の特定の治療薬(タキサンおよびビンカアルカロイドなど)が作用する部位である。しかし一方、微小管は、他の種類の細胞組織(神経プロセスにおける細胞内輸送の経路を含む)の要素として存在する。従って、微小管の治療ターゲティングにより、細胞増殖以外に複数のプロセスがモジュレートされ、その結果、副作用が発生して、かかる医薬品の有用性が制限される可能性がある。
【0004】
癌の治療に用いられる薬剤の投与による副作用を軽減することができれば治療上の効果が実現され得るので、これらの薬剤の特異性を改善することに大きな関心が集まっている。癌治療における目覚しい進歩によって新しい機構を介して作用する治療薬が同定されてきている。この例としては、タキサンだけでなく、カンプトセシン類のトポイソメラーゼI阻害剤も挙げられる。
【0005】
ある種の新しい抗増殖性機構は、有系分裂キネシン酵素の選択的阻害が必須である。この酵素は、有糸分裂紡錘体の構築と機能に不可欠であるが、通常、神経プロセス等の他の微小管構造には不可欠ではない。例えば、Guidebook to the Cytoskeletal and Motor Proteins、KreisおよびVale編集、pp.389〜394、(Oxford University Press 1999)を参照されたい。有系分裂キネシンは、有糸分裂のすべての段階で本質的な役割を果たす。この酵素は、ATPの加水分解により放出されるエネルギーを、微小管に沿った細胞運搬の指向性移動を推進する物理的な力に変換する「分子モーター」である。この働きを満足する触媒領域は、約340個のアミノ酸からなる小さな構造体である。有糸分裂の間、キネシンは、微小管を構成化し、有糸分裂紡錘体である双極性構造を形成する。キネシンは、紡錘体微小管に沿った染色体の移動と、有糸分裂の所定の段階に伴う有糸分裂紡錘体における構造変化とを仲介する。有糸分裂キネシンの機能を実験的に混乱させると、有糸分裂紡錘体の奇形や機能障害が生じ、結果として一般に細胞周期の停止や細胞死が起こる。このため、有系分裂キネシンは、新しい抗有系分裂化学療法の発見と開発において魅力的なターゲットである。
【0006】
KSPは、同定されている有糸分裂キネシンの一種である。KSPは、逆行性ホモ二量体からなる双極性ホモ四量体を構成するプラス端指向性微小管モーターの進化保存キネシン亜属に属する。有糸分裂の間、KSPは、有糸分裂紡錘体の微小管に結合する。KSPに対する抗体をヒト細胞中にマイクロインジェクションすると、前中期における紡錘体の極分離が阻止される。その結果、単極性紡錘体が形成され、有糸分裂は停止し、プログラム細胞死が誘導される。KSPとヒト以外の生物中に存在する関連のキネシンは、逆行性微小管を束ね、互いに滑走させて、紡錘体の2つの極を分離させる。またKSPは、後期Bにおいて、紡錘体の伸長を仲介し、紡錘体極に微小管を集める役割を果たすと考えられる。
【0007】
ヒトKSP(HsEg5とも称する)は、[Blangyら、Cell、83:1159-69 (1995);Whiteheadら、Arthritis Rheum.、39:1635-42 (1996);Galgioら、J. Cell Biol.、135:339-414 (1996);Blangyら、J Biol. Chem.、272:19418-24 (1997);Blangyら、Cell Motil. Cytoskeleton、40:174-82 (1998);WhiteheadおよびRattner、J. Cell Sci.、111:2551-61 (1998);Kaiserら、JBC 274:18925-31 (1999);GenBankアクセッション番号:X85137、NM004523およびU37426]に、並びにKSP遺伝子(TRIP5)の断片は、[Leeら、Mol. Endocrinol.、9:243-54 (1995);GenBankアクセッション番号L40372]に記載されている。アフリカツメガエル(Xenopus)KSP同族体(Eg5)、並びにショウジョウバエ(Drosophila)KLP61 F/KRP1 30に関してもすでに報告されている。
【0008】
また近年、細胞増殖性疾患を治療するための有系分裂キネシン阻害剤として、ある種の置換キナゾリノン類が報告されている(WO 01/30768号およびWO 01/98278号)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、KSP(特にヒトKSP)等の有系分裂キネシンの新規阻害剤を提供することである。
【発明を解決するための手段】
【0010】
本発明は、有系分裂キネシン、特にKSP(より詳しくはヒトKSP)の阻害に有用な化合物、組成物および方法を提供する。本化合物は細胞増殖性疾患の治療に使用可能であり、特定のピロリジン置換キナゾリノン誘導体およびピペリジン置換キナゾリノン誘導体が含まれる。
【0011】
一態様では、本発明は、式I:
【化1】

【0012】
(式中、
U-Vは、-N(R6)-CReRf-、-CReRf-N(R6)-、-N(R6)-CReRf-CRgRh-、-CReRf-N(R6)-CRgRh、および-CReRf-CRgRh-N(R6)-から選択され;
Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhは、独立して、水素、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、置換アルキル、置換アリール、置換アラルキル、および置換ヘテロアリールから選択され;
R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノおよび置換アルキルから選択され;
R5は、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、置換アルキル、置換アリール、置換アラルキル、置換ヘテロアリール、および置換ヘテロアラルキルから選択され;
R6は、水素、アシル、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、置換アシル、置換アルキル、置換アリール、置換アラルキル、および置換ヘテロアリールから選択される)
で表される群から選択される1種または複数の化合物(単一の立体異性体、および立体異性体の混合物を含む)、ならびにその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、およびその製薬上許容可能な塩の溶媒和物に関する。式Iの化合物ならびにその製薬上許容可能な塩および溶媒和物は、治療法を実施する際の活性剤として、また本発明の医薬用製剤をはじめとする組成物の製造における活性剤として有用であり、さらに、かかる活性剤の合成における中間体として有用であり得る。
【0013】
別の態様では、本発明は、式II:
【化2】

【0014】
(式中、
Tは共有結合、または任意に置換されていてもよい低級アルキレンであり;
W、XおよびYは、独立して、-N=、N、-C=、CH、CRi、OおよびSから選択され;
Zは、-N=、N、-C=、CH、CRiから選択されるか、あるいは不在であり、
ただし、W、X、YおよびZの2つ以下が-N=であり、Zが不在の場合に限り、W、XまたはYはOまたはSであってもよく;
Riは、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノおよび置換アルキルから選択され;
R1〜R6、UおよびVは、式Iに関して定義したとおりであり、ただし、W、X、YまたはZが、それぞれ、-N=、O、S、あるいは不在である場合、R1、R2、R3またはR4は不在である)
で表される群から選択される1種または複数の化合物(単一の立体異性体、および立体異性体の混合物を含む)、ならびにその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、およびその製薬上許容可能な塩の溶媒和物に関する。式IIにより包含される化合物、ならびにその製薬上許容可能な塩および溶媒和物は、式Iで表されるものが含まれることは明らかであろう。同様にこれらは、治療法を実施する際の活性剤として、また本発明の医薬用製剤をはじめとする組成物の製造における活性剤として有用であり、さらに、かかる活性剤の合成における中間体として有用であり得る。式IIの中の破線は、対応する結合が単結合(例えば、XがCHである場合)であっても、あるいは二重結合(例えば、Xが-C=である場合)であってもよいことを表している。
【0015】
この特定の態様の1つにおいては、本発明は、Ra〜Rh、R1〜R6、T、U、VまたはW、X、YおよびZに関する下記:
・U-Vは-N(R6)-CReRf-CRgRh-であり;
・Ra〜Rhは、水素、低級アルキル(特にメチル)、および置換低級アルキルから選択され;
・R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、ハロゲン(特にクロロおよびフルオロ)、低級アルキル(特にメチル)、置換低級アルキル、低級アルコキシ(特にメトキシ)、およびシアノから選択され;
・R5は、アラルキルまたは置換アラルキル(特にベンジルまたは置換ベンジル;そのうち特にベンジル)であり;
・R6は、アシル(特にベンゾイル)、アリール(特にフェニル)、置換アリール(特に低級アルキル置換フェニル、低級アルコキシ置換フェニル、および/またはハロゲン置換フェニル)、アラルキル(特にベンジルおよびフェニルビニル)、ヘテロアラルキル、オキサアラルキル(特にフェノキシ低級アルキル)、オキサヘテロアラルキル、置換アシル(特にp-トルオイル)、置換アラルキル(特に置換ベンジルおよび置換フェニルビニル)、置換ヘテロアラルキル、置換オキサアラルキル(特に置換フェノキシ低級アルキル)、あるいは置換オキサヘテロアラルキルであり;
・Tは、低級アルキレン、置換低級アルキレン、または共有結合(特に共有結合)であり;
・W、X、YおよびZは、-C=または-N=(特に-C=)である、
の1種または複数から選択される置換基を有する、式Iまたは式IIで表される化合物に関する。
【0016】
本発明の他の特定の態様は、かかる化合物を用いる方法および医薬用製剤に関する。
【0017】
一態様では、本発明は、治療上有効な量の式Iまたは式IIで表される化合物、またはかかる化合物の製薬上許容可能な塩もしくは溶媒和物を投与することにより、KSPキネシン活性をモジュレートすることによって治療可能な障害に関して、細胞増殖性疾患を治療する方法、およびKSPキネシンを阻害する方法に関する。本発明の化合物を用いた治療に応答する疾患および障害には、癌、異常増殖、再狭窄、心臓肥大、免疫不全および炎症が含まれる。
【0018】
別の態様では、本発明は、少なくとも1種の製薬上許容可能な賦形剤と混合されている、治療上有効な量の式Iまたは式IIの化合物、またはその製薬上許容可能な塩もしくは溶媒和物を含有する医薬組成物に関する。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、式Iまたは式IIの化合物、その製薬上許容可能な塩または溶媒和物、および有効量の前記化合物、塩または溶媒和物を投与することにより細胞増殖性疾患を治療する指示を含む添付文書または他の表示を含んでなるキットに関する。ある特定のかかる態様においては、式Iまたは式IIの化合物、その製薬上許容可能な塩または溶媒和物は、医薬組成物として提供される。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、KSPキネシンに結合する化合物、例えば、本発明の化合物の結合と置き換わる化合物、あるいは本発明の化合物の結合と競合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、標識した本発明の化合物と、KSPキネシンと、少なくとも1つの候補薬剤とを組み合わせるステップと、KSPキネシンに対する前記候補薬剤の結合を測定するステップとを含んでいる。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、KSPキネシン活性のモジュレーターをスクリーニングする方法を提供する。この方法は、本発明の化合物と、KSPキネシンと、少なくとも1つの候補薬剤とを組み合わせるステップと、KSPキネシン活性に対する前記候補薬剤の効果を測定するステップとを含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、有系分裂キネシン、特にKSP(より具体的にはヒトKSP)の阻害に有用な化合物、組成物および方法を提供する。本化合物は細胞増殖性疾患の治療に使用可能であり、特定のピロリジン置換キナゾリノン誘導体およびピペリジン置換キナゾリノン誘導体を含んでいる。さらに本発明は、本発明の化合物を含む医薬用製剤、およびかかる化合物または組成物を用いる治療方法に関する。
【0023】
定義
本明細書で用いる場合、以下の用語および句は、それらが用いられている文脈が特段の指示を示さない限り、一般に下記に述べた意味を有するものとする。下記の略語および用語は、本明細書全体において次に示した意味を有する:
Ac=アセチル
Boc=t-ブチルオキシカルボニル
c-=シクロ
CBZ=カルボベンゾキシ=ベンジルオキシカルボニル
DCM=ジクロロメタン=塩化メチレン=CH2Cl2
DMF=N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO=ジメチルスルホキシド
Et=エチル
PyBroP=ブロモ-トリス-ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
s-=第2級
t-=第3級
TFA=トリフルオロ酢酸
U、V、WおよびYとして特定されている置換基は、要約、この詳細な記載、および特許請求の範囲で記載されている意味を有するものとし、これらは原子のウラニウム、バナジウム、タングステンおよびイットリウムを表すものではない。
【0024】
「任意の」または「任意に」という用語は、後に記載されている事象または状況が起こっても、または起こらなくてもよいことを意味し、しかも、その記載には、前記事象または状況が起こった例、および起こらなかった例がそれぞれ含まれることを意味する。例えば、「任意に置換されていてもよいアルキル」には、以下に定義されている「アルキル」および「置換アルキル」が含まれている。1種または複数の置換基を含有するすべての基に関して、かかる基が、立体的にありえない、合成不可能な、かつ/または本質的に不安定な、いかなる置換または置換パターンをも導入することを意味するものではないことは、当業者には理解されよう。
【0025】
「アルキル」は、直鎖状、分枝状、または環状の脂肪族炭化水素構造、ならびにそれらの組み合わせを含むものとし、前記構造は、飽和であっても不飽和であってもよい(具体的には、20個以下の炭素原子の原子を有するもの、さら具体的にはC13以下のものである)。低級アルキルは、1〜5(特に1〜4)個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s-ブチルおよびt-ブチル等が挙げられる。シクロアルキル(またはカルボサイクリック基)はアルキルの一種であり、3〜13個の炭素原子を含む環状脂肪族炭化水素基が挙げられる。シクロアルキル基の例としては、c-プロピル、c-ブチル、c-ペンチル、ノルボルニル、アダマンチル等が挙げられる。本出願においては、アルキルは、アルカニル、アルケニルおよびアルキニル基を意味し、これには、シクロヘキシルメチル、ビニル、アリル、イソプレニル等が含まれるものとする。アルキレン、アルケニレンおよびアルキニレンはアルキルの別の一種であり、アルキレンはアルキルと同じ基を示すが、2つの結合点を持つ。アルキレンの例としては、エチレン(-CH2CH2-)、エテニレン(-CH=CH-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、ジメチルプロピレン(-CH2C(CH32CH2-)、シクロヘキシルプロピレン(-CH2CH2CH(C6H13)-)が挙げられる。所定数の炭素原子を有するアルキル基の名称を挙げた場合には、その所定数の炭素原子を有する前記残基の幾何異性体をすべて含むものとする。従って、例えば、「ブチル」には、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、t-ブチルが含まれ、「プロピル」には、n-プロピルおよびイソプロピルが含まれる。
【0026】
「アルコキシ」または「アルコキシル」という用語は、-O-アルキル基、具体的には、酸素を介して親構造に結合されている、1〜8個の炭素原子を含む直鎖、分岐、環状構造の基、あるいはそれらの組み合わせ含む基を意味する。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピロキシ、シクロヘキシルオキシ等が挙げられる。低級アルコキシは、1〜5個の炭素原子を含有する基を意味する。
【0027】
「置換アルコキシ」基という用語は、-O-(置換アルキル)基を意味する。ある特定の置換アルコキシ基は、「ポリアルコキシ」、または-O-(任意に置換されていてもよいアルキレン)-(任意に置換されていてもよいアルコキシ)であり、-OCH2CH2OCH3などの基、ならびにポリエチレングリコールおよび-O(CH2CH2O)xCH3(式中、xは約2〜20、具体的には約2〜10、より具体的には約2〜5の整数である)などのグリコールエーテル類が含まれる。別の特定の置換アルコキシ基は、ヒドロキシアルコキシまたは-OCH2(CH2yOH(式中、yは約1〜10、具体的には約1〜4の整数である)である。
【0028】
「アシル」は、カルボニル基を介して親構造に結合されている、1〜8個の炭素原子を含む直鎖、分岐、環状構造の基、またはそれらの組み合わせを意味する。かかる基は、飽和または不飽和、および脂肪族または芳香族であってよい。親構造に対する結合点がカルボニルのままである限り、アシル基中の1個または複数の炭素は、窒素、酸素、または硫黄により置換されていてもよい。例としては、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、プロピオニル、イソブチリル、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、アミノカルボニル等が挙げられる。低級アシルは、1〜5個の炭素原子を含有するアシル基である。「置換アシル」は、親成分に対する結合点がカルボニルのままである場合に、炭素、窒素または硫黄原子に異なって結合されている1個または複数の水素が置換されているアシル基を意味する。
【0029】
「アシルオキシ」という用語は、-O-アシル基を意味する。「置換アシルオキシ」は、-O-置換アシル基を意味する。
【0030】
「アミジノ」という用語は、-C(=NH)-NH2基を意味する。「置換アミジノ」という用語は、式:-C(=NR)-NRR(式中、各Rは、独立して、以下の基:水素、任意に置換されていてもよいアルキル、任意に置換されていてもよいアルコキシ、任意に置換されていてもよいアミノカルボニル、任意に置換されていてもよいアリール、任意に置換されていてもよいヘテロアリール、任意に置換されていてもよいヘテロシクリル、アシル、アルコキシカルボニル、スルファニル、スルフィニルおよびスルホニルから選択され、ただし、Rの少なくとも1つは水素以外である)を意味する。
【0031】
「アミノ」という用語は、-NH2基を意味する。「置換アミノ」という用語は、-NHR基または-NRR基(式中、各Rは、独立して、以下の基:任意に置換されていてもよいアシル、任意に置換されていてもよいアルキル、任意に置換されていてもよいアルコキシ、任意に置換されていてもよいアミノ、任意に置換されていてもよいアリール、任意に置換されていてもよいヘテロアリール、任意に置換されていてもよいヘテロシクリル、スルフィニルおよびスルホニルから選択される)、例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルスルホニルアミノ、フラニル-オキシ-スルホンアミノ、グアニジノを意味する。
【0032】
「アリール」および「ヘテロアリール」は、O、N、またはSから選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する、5員環または6員環の芳香族またはヘテロ芳香族環を意味する。あるいは、O、N、またはSから選択された1〜4(またはそれ以上)個のヘテロ原子を含有する、9員環または10員環の芳香族またはヘテロ芳香族環系を意味する。あるいは、O、N、またはSから選択された1〜4(またはそれ以上)個のヘテロ原子を含有する、トリサイクリック13員環または14員環の芳香族またはヘテロ芳香族環系を意味する。6員環から14員環の芳香族炭素環としては、ベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン、フルオレンが挙げられ、5員環から10員環の芳香族ヘテロ環としては、イミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンズイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾール、ピラゾール;特にイミダゾールおよびイミダゾリンが挙げられる。
【0033】
「アラルキル」は、アリール成分がアルキル基によって親構造に結合されている残基を意味する。例としては、ベンジル、フェネチル、フェニルビニル、フェニルアリル等が挙げられる。「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール成分がアルキル基によって親構造に結合されている残基を意味する。例としては、フラニルメチル、ピリジニルメチル、ピリミジニルエチル等が挙げられる。
【0034】
「アリールオキシ」という用語は、-O-アリール基を意味する。同様に「アラルコキシ」および「ヘテロアラルコキシ」は、それぞれ、アルコキシ基によって親構造に結合されているアリール成分またはヘテロアリール成分を意味する。
【0035】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素(特にフッ素、塩素および臭素)を意味する。ジハロアリール、ジハロアルキル、トリハロアリール等は、複数のハロゲン(必ずしも複数の同一ハロゲンでない)で置換されているアリールおよびアルキルを意味する。従って、4-クロロ-3-フルオロフェニルはジハロアリールの範囲に属する。
【0036】
「ヘテロ環」または「ヘテロシクリル」は、1〜4個の炭素が酸素、窒素または硫黄等のヘテロ原子により置換されているシクロアルキル基またはアリール基を意味する(すなわち、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールを包含する)。本発明の範囲内のヘテロ環基の例としては、イミダゾリル、イミダゾリニル、ピロリジニル、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル(一般に、置換基として存在する場合、メチレンジオキシフェニルと称する)、テトラゾリル、モルホリニル、チアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、チオフェニル、フラニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、イソオキサゾリル、ジオキサニル、テトラヒドロフラニル等が挙げられる。「N-ヘテロシクリル」は、置換基としての窒素含有ヘテロ環を意味する。N-ヘテロシクリル基の例としては、4-モルホニリル、4-チオモルホニリル、1-ピペリジニル、1-ピロリジニル、3-チアゾリジニル、ピペラジニル、4-(3,4-ジヒドロベンゾキサジニル)等が挙げられられる。また、置換ヘテロシクリルの例としては、4-メチル-1-ピペラジニルおよび4-ベンジル-1-ピペリジニルが挙げられる。
【0037】
「ヘテロアリールオキシ」および「ヘテロシクロオキシ」という用語は、それぞれ、-O-ヘテロアリール基および-O-ヘテロシクリル基を意味する。
【0038】
「溶媒和物」という用語は、製薬上許容可能な溶媒の1種または複数の分子と物理的に結合した化合物(例えば、式Iもしくは式IIで表される化合物、またはその製薬上許容可能な塩)を意味する。かかる「式Iもしくは式IIで表される化合物、またはその製薬上許容可能な塩もしくは溶媒和物」などの句は、式Iもしくは式IIで表される化合物、前記化合物の製薬上許容可能な塩、前記化合物の溶媒和物、および前記化合物の製薬上許容可能な塩の溶媒和物を包含するものとすることは理解されよう。
【0039】
アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルに関して用いられている「置換(されている)」という用語は、1個または複数の(約5個以下、特に約3個以下)の水素原子が、以下の基:任意に置換されていてもよいアシル(例えばアミノカルボニルおよびアルコキシカルボニル、または「エステル」)、任意に置換されていてもよいアシルオキシ(例えば、酸エステル、カルバミン酸エステル、炭酸エステルおよびチオ炭酸エステル)、任意に置換されていてもよいアルキル(例えばフルオロアルキル)、任意に置換されていてもよいアルコキシ(例えば、メトキシおよびメトキシメトキシ)、アルキレンジオキシ(例えばメチレンジオキシ)、任意に置換されていてもよいアミノ(例えばアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、または「CBZ-アミノ」、およびカルボキサミド)、任意に置換されていてもよいアミジノ、任意に置換されていてもよいアリール(例えば、フェニルおよび4-メチル-フェニル、または「トリル」)、任意に置換されていてもよいアラルキル(例えば、ベンジル)、任意に置換されていてもよいアリールオキシ(例えば、フェノキシ)、任意に置換されていてもよいアラルコキシ(例えば、ベンジルオキシ)、任意に置換されていてもよいヘテロアリール、任意に置換されていてもよいヘテロアラルキル、任意に置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、任意に置換されていてもよいヘテロアラルコキシ、カルボキシ(-COOH)、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、スルファニル、スルフィニル、スルホニルおよびチオ、から独立して選択される置換基により置換されているアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル成分を意味する。また、式II(式中、Tは置換アルキレンである)の化合物において、「置換(されている)」という用語は、1個または複数(約3個以下、特に1個)の炭素原子が、O、NまたはSから独立して選択されるヘテロ原子により置換されているアルキレン基(例えば、-CH2-S-CH2-)を意味する。
【0040】
「スルファニル」という用語は、以下:-S-(任意に置換されていてもよいアルキル)、-S-(任意に置換されていてもよいアリール)、-S-(任意に置換されていてもよいヘテロアリール)、および-S-(任意に置換されていてもよいヘテロシクリル)の基を意味する。
【0041】
「スルフィニル」という用語は、以下:-S(O)-H、-S(O)-(任意に置換されていてもよいアルキル)、-S(O)-(任意に置換されていてもよいアミノ)、-S(O)-(任意に置換されていてもよいアリール)、-S(O)-(任意に置換されていてもよいヘテロアリール)、および-S(O)-(任意に置換されていてもよいヘテロシクリル)の基を意味する。
【0042】
「スルホニル」という用語は、以下:-S(O2)-H、-S(O2)-(任意に置換されていてもよいアルキル)、-S(O2)-(任意に置換されていてもよいアミノ)、-S(O2)-(任意に置換されていてもよいアリール)、-S(O2)-(任意に置換されていてもよいヘテロアリール)、-S(O2)-(任意に置換されていてもよいヘテロシクリル)、-S(O2)-(任意に置換されていてもよいアルコキシ)、-S(O2)-(任意に置換されていてもよいアリールオキシ)、-S(O2)-(任意に置換されていてもよいヘテロアリールオキシ)、および-S(O2)-(任意に置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ)の基を意味する。
【0043】
「異性体」は、同じ分子式を有する異なる化合物である。「立体異性体」は、原子の空間配置の点においてのみ異なる異性体である。「鏡像異性体」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である1対の立体異性体である。1対の鏡像異性体の1:1混合物は「ラセミ」混合物である。「(.±.)」という用語は、必要に応じてラセミ混合物を表すために用いる。「ジアステレオアイソマー」は、少なくとも2つの不斉原子を有する立体異性体であるが、これらは互いに鏡像ではない。絶対立体化学は、Cahn-Ingold-Prelog R-S順位則に従って特定される。化合物が純粋な鏡像異性体である場合、各不斉炭素の立体化学は、RまたはSのいずれかにより特定することができる。絶対立体配置が未知である分離化合物は、ナトリウムD線の波長で平面偏光を回転させる方向(右旋性または左旋性)に基づいて、(+)または(-)として表される。「実質的に純粋な」という用語は、約1%を超える不純物を1つも含まず、少なくとも約95%の化学的純度を有することを意味する。「実質的に、光学的に純粋な」という用語、または「実質的に、鏡像異性学的に純粋な」という用語は、少なくとも約95%を超える鏡像異性体を有することを意味する。一般に、実質的に、光学的に純粋な鏡像異性体の使用が最も好適であるが、本発明は、純粋な鏡像異性体および鏡像異性体混合物(ラセミ混合物を含む)の使用を検討している。
【0044】
「有糸分裂紡錘体形成」とは、有系分裂キネシンによって微小管構造を双極性構造にすることを意味する。「有糸分裂紡錘体機能不全」は有糸分裂停止と、単極性紡錘体形成異常または有糸分裂紡錘体形成異常を意味する。本明細書では、「形成異常」とは、有糸分裂紡錘体極を外に広げること、あるいは有糸分裂紡錘体の形態学的混乱を引き起こすことを含んでいる。有糸分裂紡錘体形成に関して用いられている「阻害」という用語は、有糸分裂紡錘体形成を変化させること(紡錘体形成を減少させることを含む)、および紡錘体極分離を増加または減少させることを意味する。「抗有系分裂の」とは、例えば上述のような有糸分裂を阻害すること、あるいは阻害する可能性を有することを意味する。
【0045】
「製薬上許容可能な塩」とは、酸付加塩および塩基付加塩の両方を含むものとする。「製薬上許容可能な酸付加塩」とは、以下の無機酸または有機酸により形成されているものであって、遊離塩基の生物学的効果を維持し、生物学的な意味においても他の意味でも望ましくないものではない塩を意味する。かかる無機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等であり、かかる有機酸は、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、珪皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等である。「製薬上許容可能な塩基付加塩」としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩等の無機塩基由来の塩が挙げられる。特に好適であるのは、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、および、マグネシウム塩である。製薬上許容可能な無毒の有機塩基由来の塩には、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミン、天然置換アミン等の置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂の塩が含まれる。例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン等である。
【0046】
「治療的に有効な量」または「有効量」という用語は、かかる治療を必要とする患者に投与した場合、下記に定義されている、治療を達成するのに十分な式Iまたは式IIで表される化合物の量を意味する。有効量は、治療する患者および病状、患者の体重および年齢、病状の程度、選択した式Iまたは式IIで表される特定の化合物、製薬上許容可能な塩または溶媒和物、従う投薬計画、投与の時間、投与方法等により変わる。これらすべては、当業者により容易に決定され得る。本発明の特定の態様では、有効量は、治療する疾患に関係している細胞のKSPキネシン活性を阻害するのに十分な量である。
【0047】
「治療」または「治療する(こと)」という用語は、以下のa)〜c)を含む、患者の疾患の治療のすべてを意味する:
a)疾患を予防すること、すなわち、疾患の臨床症状を発病させないこと;
b)疾患を抑制すること、すなわち、臨床症状の進行を遅延させるか、あるいは妨げること;および/または、
c)疾患を治すこと、すなわち、臨床症状を回復させること。
【0048】
本発明の目的における「患者」には、ヒトおよび他の動物、特に哺乳動物、ならびに他の生物が含まれる。従って、本方法は、ヒトの治療と獣医学における両方で適用可能である。特定の実施形態では、患者は哺乳動物であり、最も具体的には患者はヒトである。
【0049】
本発明の化合物
本発明は、ある特定のキナゾリノン誘導体を提供する。本化合物は、1種または複数の有系分裂キネシンの阻害剤である。本発明は、有系分裂キネシン機能を混乱させると、有糸分裂紡錘体の形成異常または機能障害が生じ、結果として一般に細胞周期の停止や細胞死が起こるという知見に基づくものである。
【0050】
従って、本発明は、式I:
【化3】

【0051】
(式中、
U-Vは、-N(R6)-CReRf-、-CReRf-N(R6)-、-N(R6)-CReRf-CRgRh-、-CReRf-N(R6)-CRgRh、および-CReRf-CRgRh-N(R6)-から選択され;
Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhは、独立して、水素、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、置換アルキル、置換アリール、置換アラルキル、および置換ヘテロアリールから選択され;
R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノおよび置換アルキルから選択され;
R5は、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、置換アルキル、置換アリール、置換アラルキル、置換ヘテロアリール、および置換ヘテロアラルキルから選択され;
R6は、水素、アシル、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、置換アシル、置換アルキル、置換アリール、置換アラルキル、および置換ヘテロアリールから選択される)
で表される群から選択される1種または複数の化合物(単一の立体異性体、および立体異性体の混合物を含む)、ならびにその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、およびその製薬上許容可能な塩の溶媒和物に関する。
【0052】
別の態様においては、本発明は、式II:
【化4】

【0053】
(式中、
Tは共有結合、または任意に置換されていてもよい低級アルキレンであり;
W、XおよびYは、独立して、-N=、N、-C=、CH、CRi、OおよびSから選択され;
Zは、-N=、N、-C=、CH、CRiから選択されるか、あるいは不在であり、
ただし、W、X、YおよびZの2つ以下が-N=であり、Zが不在の場合に限り、W、XまたはYはOまたはSであってもよく;
Riは、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノおよび置換アルキルから選択され;
R1〜R6、UおよびVは、式Iに関して定義したとおりであり、ただし、W、X、YまたはZが、それぞれ、-N=、O、S、あるいは不在である場合、R1、R2、R3またはR4は不在である)
で表される群から選択される1種または複数の化合物(単一の立体異性体、および立体異性体の混合物を含む)、ならびにその製薬上許容可能な塩、溶媒和物、およびその製薬上許容可能な塩の溶媒和物に関する。式IIにより包含されている化合物は、式Iで表される化合物を含んでいることは明らかであろう。同様にこれらの化合物は、治療方法の実施において、また本発明の医薬用製剤を含む組成物の製造において活性剤として有用であり、かつまた、かかる活性剤の合成における中間体としても有用であり得る。式IIの中の破線は、対応する結合が単結合(例えば、XがCHである場合)であっても、あるいは二重結合(例えば、Xが-C=である場合)であってもよいことを表している。以下の記載と特許請求の範囲において、便宜上、T、U、W、X、YおよびZの置換基を、式Iの範囲内にある特定の化合物と関連づけて論じることはない。
【0054】
本明細書に記載されている化合物の多くは、1種または複数の不斉中心を含有している。従って、鏡像異性体、ジアステレオマー、および(R)-または(S)-として絶対立体化学の点から定義可能な他の立体異性体が生じ得る。本明細書に記載されている化合物がオレフィン性二重結合または他の幾何不斉中心を有する場合、特に記載しない限り、かかる化合物には、E幾何異性体およびZ幾何異性体が含まれるものとする。またすべての互変異性型もこれに含まれるものとする。本発明は、ラセミ混合物、中間混合物、光学的な純粋な形態、実質的に、光学的に純粋な形態、鏡像異性学的に純粋な形態、ならびに実質的に、鏡像異性学的に純粋な形態をはじめとする、かかる可能な異性体すべてを含んでいるものとする。
【0055】
命名法
式Iおよび式IIで表される化合物は、下に記載されているように(例えば、ChemDrawまたはISIS-DRAWのAutoNom version 2.1を用いて)命名し、番号付与することができる。
【0056】
例えば、式IA:
【化5】

【0057】
[すなわち、式Iに記載の化合物である(式中、U-Vは-N(R6)-CReRf-であり;R1、R2、R4およびRa〜RfはHであり;R3はクロロであり;R5はベンジルであり;R6はp-メチル-ベンゾイルである)]で表される化合物は、3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オンと呼称することができる。
【0058】
式IB:
【化6】

【0059】
[すなわち、式Iに記載の化合物である(式中、U-Vは-N(R6)-CReRf-CRgRh-であり;R1、R2、R4およびRa〜RhはHであり;R3はクロロであり;R5はベンジルであり;R6はp-メチル-ベンゾイルである)]で表される化合物は、3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オンと呼称することができる。
【0060】
式IC:
【化7】

【0061】
[すなわち、式Iに記載の化合物である(式中、U-Vは-CReRf-N(R6)-CRgRhであり;R1、R4およびRa〜RhはHであり;R2およびR3はメトキシであり;R5はベンジルであり;R6はp-メチル-ベンジルである)]で表される化合物は、3-ベンジル-6,7-ジメトキシ-2-[1-(4-メチル-ベンジル)-ピペリジン-3-イル]-3H-キナゾリン-4-オンと呼称することができる。
【0062】
式ID:
【化8】

【0063】
[すなわち、式Iに記載の化合物である(式中、U-Vは-CReRf-CRgRh-N(R6)-であり;R1、R2、R4、RbおよびRd〜RhはHであり;R3はクロロであり;R5はメチルであり;Raはフェネチルであり;Rcはジエチルアミノ-エチルであり;R6はp-メチル-ベンゾイルである)]で表される化合物は、7-クロロ-2-[2-(2-ジエチルアミノ-エチル)-1-(4-メチル-ベンゾイル)-3-フェネチル-ピペリジン-4-イル]-3-メチル-3H-キナゾリン-4-オンと呼称することができる。
【0064】
式IIA:
【化9】

【0065】
[すなわち、式IIに記載の化合物である(式中、Tはメチレンであり;U-Vは-N(R6)-CReRf-であり;W、YおよびZは-C=であり;Xは-N=であり;R1、R4およびRa〜RfはHであり;R2は不在であり;R3はクロロであり;R5はベンジルであり;R6はp-メチル-ベンゾイルである)]で表される化合物は、3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イルメチル]-3H-ピリド[4,3-d]ピリミジン-4-オンと呼称することができる。
【0066】
式IIB:
【化10】

【0067】
[すなわち、式Iに記載の化合物である(式中、WとXの間の破線は単結合であり;Tは3-プロピオニルであり;U-Vは-N(R6)-CReRf-CRgRh-であり;WはNであり;XはCRi(式中、Riはメチルである)であり;YはCHであり;Zは=N-であり;R1、R4およびRa〜RhはHであり;R2はメチルであり;R3は不在であり;R5はベンジルであり;R6はp-メチル-ベンゾイルである)]で表される化合物は、3-ベンジル-6,6-ジメチル-2-{3-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-イル]-プロピオニル}-5,6-ジヒドロ-3H-プテリジン-4-オンと呼称することができる。
【0068】
式IIC:
【化11】

【0069】
[すなわち、式IIに記載の化合物である(式中、破線は単結合であり;Tは不在であり;U-Vは-CReRf-N(R6)-CRgRhであり;Z、R2およびR4は不在であり;WおよびYはCHであり;XはSであり;R1、R3、ならびにRa、RbおよびRd〜RhはHであり;Rcはイソプロピルであり;R5はベンジルであり;R6はp-メチル-ベンジルである)]で表される化合物は、3-ベンジル-2-[5-イソプロピル-1-(4-メチル-ベンジル)-ピペリジン-3-イル]-5,7-ジヒドロ-3H-チエノ[3,4-d]ピリミジン-4-オンと呼称することができる。
【0070】
式IID:
【化12】

【0071】
[すなわち、式IIに記載の化合物である(式中、Tはアミノメチレンであり;U-Vは-CReRf-CRgRh-N(R6)-であり;R1、R2、R4、RbおよびRd〜RhはHであり;R3はクロロであり;R5はメチルであり;Raはベンジルであり;Rcはジエチルアミノ-エチルであり;R6はp-メチル-ベンズアミドである)]で表される化合物は、4-[3-ベンジル-4-[(7-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-キナゾリン-2-イルメチル)-アミノ]-2-(2-ジエチルアミノ-エチル)-ピペリジン-1-カルボニル-ベンズアミドと呼称することができる。
【0072】
合成反応パラメーター
「溶媒」、「不活性有機溶媒」または「不活性溶媒」という用語は、それらを用いての記載の反応条件における不活性溶媒を意味し、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、クロロホルム、塩化メチレン(またはジクロロメタン)、ジエチルエーテル、メタノール、ピリジン等が挙げられる。別段の記載がない限り、本発明の反応で用いられる溶媒は不活性有機溶媒である。
【0073】
「q.s.」という用語は、定義した機能を達成するのに十分な量を添加すること、例えば、溶液を所望の体積(すなわち100%)にすること、を意味する。
【0074】
本明細書に記載されている化合物および中間体の単離および精製は、所望により、任意の好適な単離方法または精製方法によって達成することができる。例えば、濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフイー、薄層クロマトグラフィーまたは厚層クロマトグラフィー、あるいはこれらの方法の組み合わせが挙げられる。好適な分離方法および単離方法の具体例は下記の実施例を参照することにより確認することができる。しかし、当然、他の同等の分離方法または単離方法を使用することもできる。
【0075】
所望の場合、(R)-異性体および(S)-異性体は、当業者に周知の方法、例えば、ジアステレオ異性体塩または結晶化等により分離可能な複合体の形成によって;結晶化、ガス液体クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィー等によって分離可能なジアステレオ異性体誘導体の形成によって;1つの鏡像異性体の鏡像異性体特異試薬による選択的反応(例えば酵素的酸化または還元)後、変性鏡像異性体および非変性鏡像異性体の単離によって;あるいは、キラル環境、例えばキラル担体(例えば、キラル配位子が結合したシリカ)、またはキラル溶媒の存在下におけるガス液体クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーによって、分離することができる。例えば、式Iまたは式IIの化合物を低アルカノールに溶解させ、70%EtOAcヘキサン溶液、60分の条件下、Chiralpak AD(205×20mm)カラム(Chiral Technologies, Inc.)に入れることができる。所望の鏡像異性体を上述した分離方法の何れかにより別の化学構造体に変換した場合、所望の対掌体を遊離させるステップがさらに必要となり得ることは理解されよう。あるいは、特定の鏡像異性体は、光学活性試薬、基質、触媒もしくは溶媒を用いて不斉合成を行うことによって、または、不斉形質転換により1つの鏡像異性体を別の鏡像異性体に変換することによって、合成することができる。
【0076】
式Iおよび式IIの化合物の合成
反応スキームの簡潔な説明
式Iおよび式IIで表される化合物の合成については、反応スキーム1および2を参照して以下に説明する。
【0077】
反応スキーム1では、式Iおよび式IIで表される化合物[2-(ピペリジン-2-イル)-3H-キナゾリン-4-オンを除く]の合成を説明する。U-Vの窒素原子は環化まで保護し、その後、脱保護と誘導体化を行い、水素以外のR6置換基を提供する。
【0078】
反応スキーム2では、式Iおよび式IIで表される化合物[2-(ピペリジン-2-イル)-3H-キナゾリン-4-オンを含む]の合成を説明する。ここでは、R6がアシルである化合物の合成を説明している。
【0079】
反応スキーム1および2に関して記載されている1つまたは複数の反応、ステップおよび/または条件は、例えば、R1〜R6およびRa〜Rhで水素以外の置換基を結合させるには調整が必要となる可能性があることは、当業者には理解されよう。
【0080】
出発原料
式101のN-保護ピロリジンおよびピペリジンジカルボン酸(例えば、ピロリジン-1,2-ジカルボン酸1-tert-ブチルエステル)、式102のアントラニル酸(例えば、4-クロロ-アントラニル酸)、および他の反応剤は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee, WI)等から市販されている。あるいは、慣用の合成方法を用いて当業者により容易に調製することができる。
【0081】
反応スキーム1
【化13】

【0082】
反応スキーム1については、「U-V」のR6成分は詳しくは示していない。式102〜106において、R6'成分は保護基である。ステップ5の最終生成物(式Iまたは式II)において、R6は定義されたとおりである。U-Vの脱保護時には最初は水素であり、場合によりさらに誘導体化される。R6がアリールまたはヘテロアリールである生成物は、対応する式101のアリール化化合物から出発することによって、あるいは、R6が水素であるステップ5の脱保護生成物をパラジウム触媒アリール化(例えば、Wolfe, J.P.; Tomori, H; Sadighi, J.P.; Yin, J.;およびBuchwald, S.L, J. Org. Chem., 2000, 65, 1158-1174によって記載されている)することによって得ることができる。
【0083】
式103の調製
反応スキーム1のステップ1に関して、溶液は、式102の任意置換o-アミノ脂環式酸、複素環酸または(ヘテロ)アリール酸(アントラニル酸等)と、わずかに過剰モル数の式101のN-保護ピロリジンジカルボン酸またはピペリジンジカルボン酸[式中、U'-V'は-N(R6')-CReRf-、-CReRf-N(R6')-、-CReRf-N(R6')-CRgRh、または-CReRf-CRgRh-N(R6')-であり、R6'はFmocおよびBoc等のアミノ保護基である]と、わずかに過剰モル数の有機溶媒溶解PyBroP(例えば、ピリジンに溶解させたジイソプロピルエチルアミン)から調製されている。この溶液を室温にて12〜20時間撹拌し、対応する式103の化合物を得て、これを慣用の方法により単離、精製する。
【0084】
式104の調製
反応スキーム1のステップ2に関して、式103の化合物を有機溶媒(例えば、エタノール等の低級アルカノール)に溶解させ、水酸化物水溶液(NaOH水溶液等)で処理する。この混合物を室温にて12〜20時間撹拌し、次いで、真空下で濃縮する。残渣を(飽和NaClおよび濃リン酸等で)洗浄し、次いで、(ジクロロメタン等を用いて)抽出する。慣用の単離および精製法を行い、対応する式104の酸を得る。
【0085】
式105の調製
反応スキーム1のステップ3に関して、有機溶媒(例えばジクロロメタン)に溶解した式104の溶液に、大過剰モル数のEDCとジイソプロピルエチルアミンを添加する。1〜2時間、室温にて撹拌した後、大過剰モル数の式:H2N-R5で表されるアミン(ベンジルアミン等)を添加し、さらに24〜60時間、反応物を撹拌する。この混合物を洗浄、乾燥、単離し、対応する式105のジカルバモイル化合物を得る。これには、少量の対応する式106の環化化合物が含まれていても良い。これは、精製をさらに行なうことなく次工程に用いる。
【0086】
式106の調製
反応スキーム1のステップ4に関して、式105の化合物(場合により、式106の化合物の存在下のもの)を12〜20時間120℃にてエチレングリコール中K2CO3とともに撹拌し、室温まで冷却し、(ジクロロメタン等で)抽出する。有機画分を慣用の方法で単離、精製し、式106で表される純粋な環化化合物を得る。
【0087】
R6が水素である式Iまたは式IIの調製
反応スキーム1のステップ5に関して、U'-V'のR6がBoc基である式106の溶液を室温で30分〜2時間、TFA/ジクロロメタンの1:1混合物で処理する。この溶液を真空下で濃縮し、(例えば、ジクロロメタンと飽和NaHCO3の間で)分配する。水層を(ジクロロメタン等で)抽出し、まとめた有機層を慣用の方法で単離し、対応する式Iまたは式IIの脱保護ピロリジニル生成物またはピペリジニル生成物を得る。これは精製することもできるが、さらなる精製を行なうことなく次工程に用いることもできる。
【0088】
R6がアシルである式Iまたは式IIの調製
有機溶媒(ジクロロメタン等)に溶解したR6が水素である式Iまたは式IIの溶液に、大過剰モル数のハロゲン化アシル(塩化トルオイル等)およびジイソプロピルエチルアミンを添加する。この混合物を30分〜2時間撹拌し、次いで、(例えば、飽和NaHCO3と酢酸エチルの間に)分配する。有機相を慣用の方法で単離、精製し、対応するR6がアシルである式Iまたは式IIの化合物を得る。
【0089】
R6が任意置換アルキル、任意置換アラルキル、または任意置換ヘテロアラルキルである式Iの調製
有機溶媒(ジクロロメタン等)に溶解したR6が水素である式Iまたは式IIの溶液に、R6''を含むわずかに過剰モル数のアルデヒド(すなわち、式:R6''-CHOを有する化合物(式中、R6''-CH2-はR6に相当し、R6は上述のとおりである;例えばp-トルアルデヒド)と、大過剰モルモル数のNaHB(OAc)3を添加する。この混合物を室温で30分〜1時間撹拌する。反応物を飽和NaHCO3でクエンチングし、水相を(ジクロロメタン等で)抽出する。有機相を慣用の方法で単離、精製し、対応するR6が任意置換アルキル、任意置換アラルキルまたは任意置換ヘテロアラルキルである式Iまたは式IIを得る。
【0090】
反応スキーム2
【化14】

【0091】
反応スキーム2に関して、式201の「U-V」のR6成分は水素である。式202〜205、ならびに式Iおよび式IIでは、「N-アシル」成分は、「U-V」の-N(R6)-部分(式中、R6はアシルである)を表す。
【0092】
式202の調製
反応スキーム2のステップ1に関して、2MのNaOHに溶解した式201のピロリジンカルボン酸またはピペリジンカルボン酸の0℃溶液に、わずかに過剰モル数のハロゲン化アシル(p-塩化トルオイル等)を分けてゆっくりと添加する。この混合物を室温でさらに30分〜2時間撹拌し、0℃まで冷却し、(例えば、1N HClとジクロロメタンの間で)分配する。有機層を単離、精製し、対応する式202のN-アシル-ピロリジンカルボン酸またはN-アシル-ピペリジンカルボン酸を得る。
【0093】
式203の調製
反応スキーム2のステップ2に関して、式102の化合物をわずかに過剰モル数の式202の化合物を、DMFに溶解させたPyBroPおよびジイソプロピルエチルアミンの各1/5モル当量とあわせる。反応は12〜20時間、-15℃で撹拌しながら行い、その温度を室温まで上昇させる。生成物を単離、精製し、対応する式203の化合物を得る。
【0094】
式205の調製
反応スキーム2のステップ3およびステップ4に関して、混合溶媒(メタノールとジオキサン等)中の式203の化合物および1M NaOHの混合物を5〜10時間室温で撹拌する。溶媒を蒸発させ、残渣を(例えばジクロロメタン、飽和NaClおよび濃HClの間で)分配する。その層を単離し、有機層を真空下で乾燥、濃縮し、対応する式204の化合物を得る。この粗生成物はさらなる精製を行なうことなく次工程に用いる。この粗生成物を(ジクロロメタン等に)再溶解させた後、大過剰モル数のEDCとジイソプロピルエチルアミンで処理する。10〜30分間撹拌した後、式:H2N-R5のアミン(ベンジルアミン等)を大過剰モル数添加し、混合物を室温にて12〜20時間撹拌する。混合物を洗浄、乾燥、単離し、対応する式205の粗製ジカルバモイル化合物を得る。これは、それ以上精製を行なうことなく次工程に用いることができる。
【0095】
式Iまたは式IIの調製
反応スキーム2のステップ5に関して、式205の化合物と、適当な溶媒(エチレングリコール等)に溶解した大過剰モル数のK2CO3の混合物を12〜20時間120℃で撹拌する。この溶液を室温まで冷却し、水で希釈し、(ジクロロメタンおよび酢酸エチル等で)抽出する。まとめた有機層を洗浄、単離、精製し、対応する式Iまたは式IIの1-(アシル)-ピロリジニル生成物または1-(アシル)-ピペリジニル生成物を得る。
【0096】
本発明の上記方法により調製される化合物は、検出可能量の式105または式205、あるいは式106の保護前駆体の存在下により同定することができる。承認および/またはマーケティングの前に薬剤が薬局方基準に合致しなければならないこと、合成試薬(ベンジルアミン、エチレングリコールまたはNaOH等)および前駆体(式105、106および205等)が薬局方基準によって規定されている限度を越えてはならないことは十分に知られているが、本発明の方法により調製される最終化合物は、副次成分を有している可能性がある。しかし、検出可能なかかる物質の量は、例えば、1%を超える不純物は1つも含まず、95%純度の範囲中のレベルで存在する。これらのレベルは、発光分光法等により検出することができる。かかる物質の存在について医薬用化合物の純度をモニターすることは重要であり、またその存在は、本発明の方法の使用を見出す方法として記載されている。
【0097】
特定の任意の方法および最終ステップ
式205の化合物を塩基性条件下で環化して、対応する式Iの任意保護2-[1-(アシル)-ピロリジニル]-3H-キナゾリン-4-オン、または2-[1-(アシル)-ピペリジニル]-3H-キナゾリン-4-オンを得る。
【0098】
式Iまたは式IIの保護前駆体(例えば、R6'がNHBocである式106)は適当な溶媒に溶解したTFA中で脱保護し、対応する式Iまたは式IIの脱保護化合物を得る。
【0099】
R6が水素である式Iまたは式IIの化合物は適当な溶媒に溶解したアルキルまたはハロゲン化アリール、アルデヒドまたは酸塩化物と接触させ、対応するR6が水素以外の式Iまたは式IIの化合物を得る。
【0100】
式Iまたは式IIで表される化合物の異性体のラセミ混合物をクロマトグラフィーカラムに入れ、(R)-鏡像異性体と(S)-鏡像異性体に分ける。
【0101】
式Iまたは式IIの化合物を製薬上許容可能な酸と接触させ、対応する酸付加塩を形成させる。
【0102】
式Iまたは式IIの製薬上許容可能な酸付加塩を塩基と接触させ、対応する式Iまたは式IIの遊離塩基を形成させる。
【0103】
特定の化合物
本発明の特定の実施形態は、以下の置換基群の組み合わせと順列(優先順位をはっきりさせるために、それぞれ、字下げ/サブグループ化している)を有する式Iおよび式IIの化合物を含んでいるか、あるいは用いる。これらの実施形態は、添付の特許請求の範囲、並びに置換基の組み合わせと順列を支持して示されており、簡略のため、詳しくは説明されてはいないが、本明細書の開示により包含されているものとして理解すべきである。この点に関して、各置換基に関して記載されている下位集合(パラグラフ番号により参照する場合がある)は、その置換基に単独で、または他の置換基について記載されている下位集合の1種、数種もしくは全部との組み合わせで適用するものとする。
【0104】
W、X、YおよびZは、独立して、-C=および-N=から選択される。
【0105】
・W、X、YおよびZは-C=である。
【0106】
R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、ハロゲン、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから選択される。
【0107】
・R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、クロロ、フルオロ、メチル、メトキシ、シアノ、または置換低級アルキルである。
【0108】
・・R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、クロロ、フルオロ、メチル、メトキシまたはシアノである。
【0109】
・R1、R2、R3およびR4の3つまたは4つが水素である場合。
【0110】
・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである。
【0111】
・・・ハロゲンがクロロである場合。
【0112】
・・・・R3が水素またはクロロである場合。
【0113】
・・・・・R3がクロロである場合。
【0114】
・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0115】
R5は任意に置換されていてもよいアラルキルである。
【0116】
・R5はベンジルまたは置換ベンジルである。
【0117】
・・R5はベンジルである。
【0118】
Tは任意に置換されていてもよい低級アルキレンであるか、あるいは共有結合である(すなわち、不在である)。
【0119】
・Tは、共有結合、C1〜C4アルキレン、あるいはハロゲンまたはオキソで置換されているC1〜C4アルキレンである。
【0120】
・・Tは共有結合またはC1〜C4アルキレンである。
【0121】
・・・Tは共有結合である。
【0122】
・Tがヘテロ原子によって置換されている炭素を有するアルキレンである場合、ヘテロ原子は二環式構造に直接結合されていない。
【0123】
・・Tはアミノアルキレンまたはアミドアルキレンである。
【0124】
・Tはアルキレン、あるいはハロゲンまたはオキソで置換されているアルキレンである。
【0125】
Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhは、独立して、水素、低級アルキル(特にメチル)、および置換低級アルキルから選択される。
【0126】
・Ra〜Rhのうちの1つ以下が水素以外である場合。
【0127】
・・Ra〜Rhがすべて水素である場合。
【0128】
U-Vが-N(R6)-CReRf-CRgRh-、-CReRf-N(R6)-CRgRh、または-CReRf-CRgRh-N(R6)-である。
【0129】
・U-Vが-N(R6)-CReRf-CRgRh-または-CReRf-N(R6)-CRgRhである。
【0130】
・・R6が任意に置換されていてもよいアラルキルまたは任意に置換されていてもよいアシルである場合。
【0131】
・・・R6が任意に置換されていてもよいアシルである場合。
【0132】
・・・・R6がp-メチル-ベンゾイルである場合。
【0133】
・・U-Vは-N(R6)-CReRf-CRgRh-である。
【0134】
・・・R6が任意に置換されていてもよいアラルキルまたは任意に置換されていてもよいアシルである場合。
【0135】
・・・・R6が任意に置換されていてもよいアシルである場合。
【0136】
・・・・・R6がp-メチル-ベンゾイルである場合。
【0137】
特定の置換基の好適な組み合わせと順列の例は、Tが共有結合であり、U-Vが-N(R6)-CReRf-CRgRh-であり、W、X、YおよびZ、R1〜R6、およびRa〜Rhの1つ以上が上述のパラグラフ0104〜0136に記載されているとおりである化合物、製薬上許容可能な塩および溶媒和物である。例えば:
・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0138】
・・R3がクロロである場合。
【0139】
・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0140】
・R5が任意に置換されていてもよいベンジルである場合。
【0141】
・・R5はベンジルである。
【0142】
・Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhの1つ以外のすべてが水素であり、かつ残りのメンバーが水素、低級アルキル(特にメチル)および置換低級アルキルから選択される場合。
【0143】
・・Ra〜Rhはすべて水素である。
【0144】
・R6が任意に置換されていてもよいアシルである場合。
【0145】
・・R6はp-メチル-ベンゾイルである。
【0146】
・・・Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhの1つ以外のすべてが水素であり、かつ残りのメンバーが水素、低級アルキル(特にメチル)および置換低級アルキルから選択される場合。
【0147】
・・・・Ra〜Rhはすべて水素である。
【0148】
・・・・・R5が任意に置換されていてもよいベンジルである場合。
【0149】
・・・・・・R5はベンジルである。
【0150】
・・・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0151】
・・・・・・・・R3がクロロである場合
・・・・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0152】
・・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0153】
・・・・・・・R3がクロロである場合。
【0154】
・・・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0155】
・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0156】
・・・・・・R3がクロロである場合。
【0157】
・・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0158】
・・・・R5が任意に置換されていてもよいベンジルである場合。
【0159】
・・・・・R5はベンジルである。
【0160】
・・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0161】
・・・・・・・R3がクロロである場合。
【0162】
・・・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0163】
・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0164】
・・・・・・R3がクロロである場合。
【0165】
・・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0166】
・・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0167】
・・・・・R3がクロロである場合。
【0168】
・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0169】
・・・R5が任意に置換されていてもよいベンジルである場合。
【0170】
・・・・R5はベンジルである。
【0171】
・・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0172】
・・・・・R3がクロロである場合。
【0173】
・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0174】
・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0175】
・・・・R3がクロロである場合。
【0176】
・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0177】
・・Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhの1つ以外のすべてが水素であり、かつ残りのメンバーが水素、低級アルキル(特にメチル)および置換低級アルキルから選択される場合。
【0178】
・・・Ra〜Rhはすべて水素である。
【0179】
・・・・R5が任意に置換されていてもよいベンジルである場合。
【0180】
・・・・・R5はベンジルである。
【0181】
・・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0182】
・・・・・・・R3がクロロである場合。
【0183】
・・・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0184】
・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0185】
・・・・・・R3がクロロである場合。
【0186】
・・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0187】
・・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0188】
・・・・・R3がクロロである場合。
【0189】
・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0190】
・・・R5が任意に置換されていてもよいベンジルである場合。
【0191】
・・・・R5はベンジルである。
【0192】
・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0193】
・・・・・・R3がクロロである場合。
【0194】
・・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0195】
・・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0196】
・・・・・R3がクロロである場合。
【0197】
・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0198】
・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0199】
・・・・R3がクロロである場合。
【0200】
・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0201】
・・R5が任意に置換されていてもよいベンジルである場合。
【0202】
・・・R5はベンジルである。
【0203】
・・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0204】
・・・・・R3がクロロである場合。
【0205】
・・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0206】
・・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0207】
・・・・R3がクロロである場合。
【0208】
・・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0209】
・・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4の3つが水素であり、第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノである場合。
【0210】
・・・R3がクロロである場合。
【0211】
・・・R1、R2、R3およびR4が水素である場合。
【0212】
従って、Tが共有結合であり、U-Vが-N(R6)-CReRf-CRgRh-である化合物(個別に、かつ/または互いに組み合わせて、R6が任意に置換されていてもよいアシルであるこれらの化合物に関して、上述した置換基群のおよび下位群により説明されているものを含む)が本発明の実施に特に好適である。
【0213】
本発明の化合物、その製薬上許容可能な塩および溶媒和物、医薬用製剤を含む組成物、ならびに製造方法および使用に関する1つの群は、式Iまたは式IIの化合物が以下の化合物から選択されるものである:
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンジル)-ピロリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンジル)-ピペリジン-3-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-3-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンジル)-ピペリジン-4-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;および、
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-4-イル]-3H-キナゾリン-4-オン、
特にこれらの(R)-鏡像異性体。
【0214】
本発明の化合物、その製薬上許容可能な塩および溶媒和物、医薬用製剤を含む組成物、ならびに製造方法および使用に関する特定の群は、式Iまたは式IIの化合物が以下の化合物から選択されるものである:
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-3-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;および、
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-4-イル]-3H-キナゾリン-4-オン、
特にこれらの(R)-鏡像異性体。
【0215】
本発明の化合物、その製薬上許容可能な塩および溶媒和物、医薬用製剤を含む組成物、ならびに製造方法および使用に関する別の特定の群は、式Iまたは式IIの化合物が以下の化合物から選択されるものである:
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;および、
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-3-イル]-3H-キナゾリン-4-オン、
特にこれらの(R)-鏡像異性体。
【0216】
有用性、試験および投与
一般的有用性
本発明の化合物は、治療用活性剤をはじめとする種々の適用において、治療方法の実施において、組成物、特に医薬用製剤において、ならびに医薬用製剤の製造方法において、およびかかる治療用活性剤の合成における中間体としての製造方法において、用途が見出されている。
【0217】
当業者に明らかであるように、有糸分裂は種々の方法で変化させることができる。すなわち、有糸分裂経路における成分の活性を増加、減少または阻害させることにより、有糸分裂に影響を与えることができる。つまり、所定の有糸分裂成分を阻害または活性化することによって平衡を乱し、有糸分裂に影響を与える(崩壊させる)ことができる。同様な手法で、減数分裂を改変することもできる。
【0218】
本発明の化合物を用いて、有糸分裂紡錘体形成を阻害することができる。かかる阻害は、双極性構造への有系分裂キネシンによる微小管構成を低下させる、紡錘体極分離を増加または減少させる、および/または有糸分裂紡錘体機能不全を誘導するという形態を取り得る。特に、本発明の化合物は、有系分裂キネシンであるKSP(特にヒトKSP)に結合し、かつ/またはその活性を阻害するのに有用であるが、他の生物由来のKSPキネシンも利用可能である。さらに、これらの目的において、「KSP」という用語の定義には、KSPの変異体および/または断片も含まれている。米国特許第6,437,115号を参照されたい。本発明に他の有系分裂キネシンを用いることができるが、本発明の化合物は、KSPに対する特異性を有することが明らかにされている。本発明の化合物とKSPキネシン(特にヒトKSPキネシン)とを接触させることにより、KSPを介したATP加水分解活性の低下、および/またはKSPを介する有糸分裂紡錘体形成活性の低下を誘導することができる。同様に、減数分裂紡錘体を破壊することもできる。
【0219】
別の実施形態では、本発明の化合物は、KSPの阻害に加えて、HSET(米国特許第6,361,993号を参照);MCAK(米国特許第6,331,424号を参照);CENP-E(国際公開第WO 99/13061号を参照);Kif4(米国特許第6,440,684号を参照);MKLP1(米国特許第6,448,025号を参照);Kif15(米国特許第6,355,466号を参照);Kid(米国特許第6,387,644号を参照)Mpp1、CMKrp、Kinl-3(米国特許第6,461,855号を参照);Kip3a(国際公開第WO 01/96593号を参照);Kip3d(米国特許第6,492,151号を参照);およびRabK6をはじめとする、1種または複数の他のヒト有系分裂キネシンをモジュレートするために用いることができる。
【0220】
本発明の化合物の有系分裂キネシン阻害活性により促進される治療用途には、細胞増殖に随伴する障害の治療が含まれる。本明細書に開示されている方法、医薬用製剤および化合物により治療可能であることが明らかである特定の疾患には、これらに限定されるものではないが、癌(以下に詳しく説明する)、自己免疫性疾患、関節炎、移植片拒絶、炎症性腸疾患、医学的処置(これらに限定されるものではないが、外科手術、血管形成術等が挙げられる)後に誘発された増殖が含まれる。一実施形態では、本発明は、これらの障害または症状の何れかに陥っている、あるいは、陥る可能性のある細胞または個体に適用される。
【0221】
本明細書に開示されている化合物、医薬製剤および方法は、皮膚癌、乳癌、脳腫瘍、子宮頸癌、睾丸癌等の固形腫瘍をはじめとする癌の治療に特に有用であると考えられる。より具体的には、治療可能な癌としては、これらに限定されるものではないが、以下の癌:
心臓:腫瘍(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫、奇形腫;
:気管支原性肺癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;
胃腸:食道(扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(悪性腫瘍、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(腺管癌、インスリノーマ、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);
尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルム腫瘍[腎石灰沈着症]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(セミノーマ、奇形腫、胎生期癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);
肝臓:肝臓癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;
:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫、脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、巨細胞腫;
神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性膠芽腫、乏突起膠腫、シュワン鞘腫、網膜芽腫、先天性腫瘍)、脊髄(神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);
婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸管(子宮頸癌、前腫瘍子宮頸部形成異常)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、ムチン性嚢胞腺癌、未分類癌]、顆粒膜-包膜細胞腫、セルトリ-ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫[胎児性横紋筋肉腫]、ラッパ管(癌腫);
血液系:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、脊髄増殖症候群、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];
皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、奇胎形成異常母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;並びに、
副腎:神経芽細胞腫、が挙げられる。
【0222】
すなわち、本明細書では、癌治療には、上述で明らかにした病状のいずれかに冒されている細胞を含む、癌細胞の治療が含まれる。
【0223】
本発明の別の有用な態様は、式Iまたは式IIの化合物、その塩または溶媒和物と、有効量の前記化合物を投与することにより細胞増殖性疾患を治療する指示を含む添付文書または他の表示を含有するキットである。特に、本発明のキット中の式Iまたは式IIの化合物、その塩または溶媒和物は、細胞増殖性疾患の治療過程における1回または複数回の投与として提供される。各投与は、製薬上容認されている賦形剤と式Iまたは式IIの化合物、その塩または溶媒和物を含む医薬用製剤である。
【0224】
試験
一般に活性をアッセイするには、独立したサンプルの受容領域を有する不溶性支持体に、KSPまたは本発明による化合物を拡散させることなく結合させる。不溶性支持体は、本化合物が結合可能ないかなる材料から作製されていてもよく、可溶性物質から容易に分離され、全般的なスクリーニング法と適合可能なものである。かかる支持体の表面は固形であっても多孔性であってもよく、都合のよい任意の形状であってよい。好適な不溶性支持体の例としては、マイクロタイタープレート、アレイ、膜およびビーズが挙げられる。一般には、これらの支持体は、ガラス、プラスチック(例えばポリスチレン)、多糖類、ナイロンまたはニトロセルロース、テフロン(登録商標)製である。少量の試薬とサンプルを用いて、多数のアッセイを同時に行うことができることから、マイクロタイタープレートとアレイが特に便利である。本発明の薬剤と全体的な方法と適合可能であり、本化合物の活性を維持し、非拡散型である限りは、本化合物の結合方法は特に限定されない。具体的な結合方法としては、(タンパク質が支持体に結合する際に、リガンド結合部位または活性化シーケンスのいずれをも立体的に妨害しない)抗体を利用する方法、「粘着性」支持体またはイオン性支持体に直接結合させる方法、化学的架橋、並びに、表面上でタンパク質または薬剤を合成する方法が挙げられる。タンパク質または薬剤を結合させた後、過剰の未結合物質を洗浄により除去する。次に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、または他の無害なタンパク質もしくは他の成分を用いてインキュベーションすることにより、サンプル受容領域をブロック化することができる。
【0225】
本発明の化合物のみを用いて、有糸分裂キネシン、特にKSPの活性をモジュレートすることができる。この実施形態では、本発明の化合物をKSPに結合させて、KSP活性をアッセイする。測定可能なキネシン活性には、ATP加水分解への影響力、微小管結合;滑走および重合/解重合(微小管動力学への影響);紡錘体の他のタンパク質への結合;細胞周期調節に関与するタンパク質への結合;キナーゼまたはプロテアーゼなどの他の酵素に対する基質としての作用;ならびに、紡錘体極分離などの特定のキネシン細胞活性が含まれる。
【0226】
運動性アッセイを行なう方法は、当業者に周知である[例えば、Hallら、(1996), Biophys. J., 71: 3467-3476;Turnerら、1996, AnaL Biochem. 242 (1):20-5;Gittesら、1996, Biophys. J. 70(I): 418-29;Shirakawaら、1995, J. Exp. BioL 198: 1809-15;Winkelmannら、1995, Biophys. J. 68: 2444-53;Winkelmannら、1995, Biophys. J. 68: 72Sを参照されたい]。
【0227】
ATPase加水分解活性を測定する当業者に周知の方法を利用することもできる。溶液に基づくアッセイを行うことが望ましく(米国特許第6,410,254号を参照されたい);あるいは、慣用の方法も用いられる。例えば、キネシンから放出されるPiを定量することができる。一実施形態では、ATPase加水分解活性のアッセイには、0.3M PCA(過塩素酸)およびマラカイトグリーン試薬(8.27mM モリブデン酸ナトリウムII、0.33mM マラカイトグリーンシュウ酸塩、並びに、0.8mM Triton X-100)を用いる。アッセイを行うには、反応溶液10mLを0.3Mの冷PCA 90mL中で急冷する。リン酸標準溶液を用いて、データを無機リン酸放出量(mM)に変換することができる。PCAですべての反応溶液とリン酸標準溶液を急冷した後、マイクルタイタープレート等の対象ウェルにマラカイトグリーン試薬100mLを加える。10〜15分間その混合物を展開した後、650nmの吸光度でプレートを測定する。リン酸標準溶液を用いた場合には、吸光度の測定値をmM Pi値に変換し、時間に対してプロットすることができる。さらに、当業者に周知のATPase検定には、ルシフェラーゼアッセイも含まれる。
【0228】
また、キネシンモータードメインのATPase活性を用いて、モジュレーター剤の効果をモニターすることができる。一実施形態では、微小管の不在下でキネシンのATPaseアッセイを行うことができる。別の実施形態では、微小管の存在下でATPaseアッセイを行うことができる。上述のアッセイにおいては、様々な種類のモジュレーター剤を検出することができる。ある特定の実施形態では、モジュレーター剤の効果は微小管およびATPの濃度と無関係である。別の実施形態では、キネシンATPaseに対する薬剤の効果は、ATP濃度、微小管濃度、またはその両方の濃度を増加させることにより減少させることができる。さらに別の実施形態では、モジュレーター剤の効果は、ATP濃度、微小管濃度、またはその両方の濃度を増加させることにより増加させる。
【0229】
次いで、in vitroにおいてKSPの生化学活性をモジュレートする薬剤をin vivoでスクリーニングすることができる。かかる薬剤をin vivoで試験する方法としては、細胞周期分布、細胞生存率、または有糸分裂紡錘体の存在、形態、活性、分布もしくは量のアッセイが挙げられる。例えばフローサイトメトリーによって細胞群の細胞周期分布をモニターする方法は、細胞生存率を測定する方法として当業者に周知である。例えば、名称「Methods of Screening for Modulators of Cell Proliferation and Methods of Diagnosing Cell Proliferation States」の国際公開第WO 01/31335号を参照をされたい。
【0230】
上述のアッセイの他に、紡錘体形成と形成異常をモニターする微視的方法も当業者に周知である(例えば、WhiteheadおよびRattner、(1998), J. Cell Sci. 111:2551-61;Galgioら、(1996) J. Cell Biol., 135:399-414を参照されたい)。
【0231】
本発明の化合物はKSPキネシンを阻害する。阻害を表す指標の一つであるIC50値は、KSP活性を50%減少させる化合物濃度として定義される。特に好適な化合物のIC50値は約1mM未満であり、特により好適な化合物のIC50値は約100μM未満である。約10nM未満のIC50値は本発明の特定の化合物およびその製薬上許容可能な塩および溶媒和物により達成され得るが、一般的にはIC50値が低いほど有利であると考えられる。IC50値の測定は、ATPaseアッセイを用いて行う。
【0232】
阻害を表す別の指標は、Ki値である。IC50値が約1μM未満の化合物に対して、Ki値あるいはKd値は、試験化合物とKSPとの相互作用を示す解離定数として定義される。特に好適な化合物のKi値は約100μM未満であり、より特に好ましい化合物のKi値は約10μM未満である。約10nM未満のKi値は本発明の特定の化合物およびその製薬上許容可能な塩および溶媒和物により達成され得るが、一般的にはKi値が低いほど有利であると考えられる。化合物のKi値は、3つの仮定に基づいて、IC50値から求められる。第1の仮定は、その酵素にはただ1つ化合物分子が結合し、協同性はない。第2の仮定は、活性酵素と試験対象化合物の濃度が周知である(すなわち、調製物中に有意の量の不純物や不活性形態は含まない)。第3の仮定は、酵素-阻害剤複合体の酵素速度は0である。速度データ(すなわち、化合物濃度)は、以下の等式に適合する。
【数1】

【0233】
式中、Vは測定された速度、Vmaxは遊離酵素の速度、I0は阻害剤濃度、E0は酵素濃度、Kdは酵素-阻害剤複合体の解離定数である。
【0234】
阻害を表す別の指標であるGI50値は、細胞成長率を50%減少させる化合物濃度として定義される。病院で癌の治療(癌化学療法)に好結果にて用いられている抗増殖性化合物のGI50値は、大きく異なっている。例えば、A549細胞においては、パクリタキセルのGI50値は4nMであり、ドキソルビシンの値は63nMであり、5-フルオロウラシルの値は1μMであり、ヒドロキシ尿素の値は500μMである(National Cancer Institute, Developmental Therapeutic Program, http://dtp.nci.nih.gov/による提供データ)。従って、実質的にいかなる濃度でも細胞増殖を阻害する化合物が有用となり得る。特に好適な化合物のGI50値は約1mM未満であり、より特に好適な化合物のGI50値は約10μM未満である。約10nM未満のGI50値は本発明の特定の化合物およびその製薬上許容可能な塩および溶媒和物により達成され得るが、一般的にはGI50値が低いほど有利であると考えられる。GI50値の測定は、細胞増殖アッセイにより行う。
【0235】
パシリタキセルなどの他の化学療法薬に対する耐性を付与するP-糖タンパク質を発現する(多重薬剤抵抗性、すなわちMDR+としても知られる)細胞系(MCF-7/ADR-RESおよびHCT1 5等)を用いて増殖阻害の試験を行うことにより、細胞増殖を阻害し、かつ薬剤耐性腫瘍細胞系によるMDR+の過剰発現の耐性対象とはならない、抗有系分裂薬剤を同定することができる。
【0236】
小分子阻害剤のin vitro効力は、ヒト卵巣癌細胞(SKOV3)を化合物の9ポイント希釈系列に72時間曝露させた後、生存率についてアッセイすることにより測定することができる。細胞生存率は、MTS/PMS(市販試薬)のバイオ還元によって形成された生成物のホルマゾン(formazon)の吸光度を測定することにより決定することができる。用量応答曲線の各ポイントは、バックグラウンド吸収(完全死滅細胞)を差し引いた、72時間における未処理のコントロール細胞のパーセントとして算出される。
【0237】
KSPキネシンに結合する化合物のスクリーニングする方法に本発明の化合物を用いるには、KSPを支持体に結合させ、本発明の化合物または組成物を添加してアッセイを行う。あるいは、固相支持体に結合させた本発明の化合物の組成物を調製した後、KSPを加えてアッセイを行うことができる。新規な結合剤として利用可能な化合物の種類には、特定の抗体、ケミカルライブラリーのスクリーニングで同定された人工結合剤、ペプチド類似体等がある。ヒト細胞に対する毒性の低い候補薬剤のスクリーニングアッセイに大きな関心が寄せられている。この目的では、標識in vitroタンパク質-タンパク質結合アッセイ、電気泳動度測定、タンパク質結合の免疫検査、機能アッセイ(リン酸化アッセイ等)をはじめとする多様なアッセイを用いることができる。
【0238】
KSPへの有糸分裂剤の結合は、種々の方法で測定可能である。特定の実施形態では、本発明の化合物を蛍光物質または放射性物質で標識し、直接結合を測定する。それは例えば、KSPの全部または一部を固相支持体に結合させ、標識した化合物(例えば、少なくとも1つの原子を検出可能な同位体で置換した本発明の化合物)を加え、過剰の試薬を洗浄し、固相支持体上に残っている標識化合物の量を測定することによって行う。ブロッキングステップおよび洗浄ステップは、当業者に周知の種々のステップを用いることができる。
【0239】
本明細書の「標識」とは、放射性同位体、蛍光タグ、酵素、抗体、磁性粒子等の粒子、化学発光タグ、または所定の結合分子等の検出可能なシグナルを提供する標識で、直接または間接的に化合物を標識することを意味する。所定の結合分子としては、ビオチンおよびストレプトアビジンなどのペア、ジゴキシンおよびアンチジゴキシンのペア等が挙げられる。所定の結合メンバーの場合、通常は、相補的メンバーを、周知の手法に従って、上述した検出可能な分子で標識する。標識は、直接的または間接的に検出可能なシグナルを提供するものであればよい。
【0240】
ある実施形態では、1成分のみを標識する。例えば、キネシンタンパク質の場合、125Iを用いてチロシン部位を標識してもよいし、発蛍光団で標識することもできる。あるいは、異なった標識を用いて、複数の成分を標識することができる。例えば、タンパク質に125Iを用いたり、有糸分裂剤に発蛍光団を用いることができる。
【0241】
また本発明の化合物は、競争剤として、さらなる候補薬剤のスクリーニングに用いることができる。「候補薬剤」または「薬剤候補」並びに本明細書で用いられているそれに類する用語は、タンパク質、オリゴペプチド、小有機分子、多糖類、ポリヌクレオチド等、生体活性が試験対象となるすべての分子を意味する。これらの薬剤は、細胞増殖表現型または細胞増殖配列(核酸配列およびタンパク質配列の両方を含む)の発現を直接的または間接的に変更し得る。別の場合では、細胞増殖タンパク結合および/または活性の変化をスクリーニングする。このようなスクリーニングは、微小管の存在下または不在下で行われる。タンパク質結合または活性をスクリーニングする場合、特定の実施形態では、そのタンパク質に結合することが既に知られている分子、例えば、微小管等の高分子構造やATP等のエネルギー源は除かれる。本明細書のアッセイの特定の実施形態では、内因性の自然な状態で細胞増殖タンパク質に結合しない候補薬剤(本明細書では、「外因性」薬剤と呼称する)が含まれる。別の特定の実施形態では、外因性薬剤はKSPに対する抗体をさらに除いている。
【0242】
多数の化学種が候補薬剤になり得るが、一般的には、有機分子、具体的には、分子量が100ダルトンより大きく、約2,500ダルトンより小さい小型有機化合物が候補薬剤である。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用に必要な官能基、特に、水素結合並びに親油性結合を有し、また一般的に、少なくとも1つのアミン、カルボニル、ヒドロキシル、エーテルまたはカルボキシル基、特に少なくとも2個の官能基を含んでいる。候補薬剤は、環式炭素または複素環式構造体および/または上記の官能基の1つまたは複数で置換されている芳香族構造体または多環芳香族構造体を含んでいる場合が多い。また、候補薬剤は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン誘導体、構造類似体、またはそれらの組み合わせをはじめとする生体分子においても見出される。
【0243】
候補薬剤は、合成化合物または天然化合物のライブラリーを含む、様々な起源から得られる。ランダム化オリゴヌクレオチド発現をはじめとする、様々な有機化合物および生体分子のランダム合成および定方向合成に多数の手段が利用可能である。あるいは、細菌、菌類、植物および動物からの抽出物形態の天然化合物のライブラリーが利用可能であり、容易に得ることができる。さらに、天然から得られた、または合成的に得られたライブラリーおよび化合物は、慣用の化学的手段、物理的手段、および生化学的手段を用いて容易に変えることができる。周知の薬剤に、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの定方向性化学的修またはランダムな化学的修飾を施し、構造類似体を得るようにしてもよい。
【0244】
競合的スクリーニングアッセイは、第1サンプルにおいてKSPを候補薬剤と組み合わせることにより行うことができる。第2サンプルは、本発明の化合物、KSPおよび候補薬剤と組み合わせることにより調製することができる。このスクリーニングは、微小管の存在下で行ってもよいし、不在下で行ってもよい。両サンプルにおいて、候補薬剤の結合を測定する。2つのサンプル間の結合における変化または相違は、KSPに結合可能であって、その活性をモジュレートし得る薬剤の存在を示している。したがって、第2サンプルにおける候補薬剤の結合が第1サンプルと異なっている場合、その候補薬剤はKSPに結合可能である。
【0245】
特に好適な実施形態では、競合結合アッセイを用いることによって、候補薬剤の結合を測定する。この実施形態では、抗体、ペプチド、結合剤、リガンド等のKSPに結合することが知られている結合分子を競合剤として用いる。ある状況下では、候補薬剤と結合分子との間に競合的結合が起こり、結合分子が候補薬剤で置換されることがあり得る。
【0246】
一実施形態では、候補薬剤は標識化されているものである。まず、候補薬剤または競合剤のいずれか、あるいはその両方をKSPに加え、結合させるのに十分な時間放置する。インキュベーションは、最適な活性を促進する任意の温度、通常、4〜40℃の温度で行うことができる。インキュベーションの時間は、最適な活性が得られるように選択するが、迅速なハイスループットスクリーニングが容易になるように最適化することもできる。通常は、0.1〜1時間で十分である。一般に、過剰の試薬は除去するか洗い流す。次いで、第2の成分を加え、標識成分の存在または不在により結合を測定する。
【0247】
特に好適な実施形態では、最初に競合剤を加え、続いて、候補薬剤を加える。競合剤の置換は、候補薬剤がKSPに結合している、すなわち、候補薬剤が、KSP活性に結合し、これをモジュレートし得ることを示している。この実施形態では、どちらの成分を標識してもよい。従って、競合剤が標識されている場合には、洗浄溶液中の標識の存在は、候補薬剤により置換されたことを示している。逆に、候補薬剤が標識されている場合、支持体上の標識の存在により置換されていることがわかる。
【0248】
代替の実施形態では、最初に候補薬剤を加え、インキュベーションと洗浄を行った後、競合剤を加える。競合剤による結合が存在しなければ、候補薬剤は高い親和性をもってKSPに結合していると判断することができる。従って、候補薬剤が標識されている場合、支持体上の標識の存在と、競合剤の結合の不在とから、候補薬剤がKSP結合能力を有していると判定することができる。
【0249】
KSPの結合部位を特定することも望まれる。結合部位は、様々な方法で特定することができる。一実施形態では、一度KSPが本化合物に結合することにより特定された後、KSPを切断または修飾する。このアッセイを繰り返して、結合に必要な成分を特定する。
【0250】
モジュレーションは、上述のように候補薬剤をKSPに結合させるステップと、KSPの生物学的活性の変化を測定するというステップとを含む、KSP活性をモジュレートし得る候補薬剤をスクリーニングすることにより試験することができる。したがって、この実施形態では、候補薬剤は、KSPに結合し(これは不要であってもよい場合もあるが)、本明細に定義されている生物学的活性あるいは生化学的活性を変化させるものでなければならない。方法には、一般に上述したように、細胞周期分布、細胞生存率、あるいは有糸分裂紡錘体の存在、形態、活性、分布または量における変化に基づく、細胞のin vitroスクリーニング法およびin vivoスクリーニング法の両方法が含まれる。
【0251】
あるいは、分別スクリーニングを用いて、天然KSPには結合するが、修飾されたKSPには結合できない候補薬剤を同定することができる。
【0252】
正のコントロール群と負のコントロール群をアッセイに用いることができる。統計的に有意な結果を得るには、すべてのコントロール群と試験サンプルで測定を少なくとも3回行うことが好ましい。サンプルのインキュベーションは、薬剤がタンパク質に結合するのに十分な時間行う。インキュベーション終了後、すべてのサンプルを洗浄して、非特異的に結合している物質を除去し、結合している(通常、標識されている)薬剤の量を測定する。たとえば、放射標識した場合には、サンプルをシンチレーションカウンターでカウントし、結合化合物の量を測定することができる。
【0253】
種々の他の試薬をスクリーニングアッセイに用いることができる。これらの試薬には、最適なタンパク質-タンパク質結合を促進し、かつ/または非特異的相互作用もしくはバックグラウンド相互作用を低下させるのに用いられ得る、塩、中性タンパク質(アルブミン等)、界面活性剤等が挙げられる。また、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤等のアッセイの効率を高めるような試薬も用いることができる。複数の成分の混合物は、必要な結合が形成されるような任意の順番で各成分を加えることができる。
【0254】
製剤および投与
式Iおよび式IIの化合物、その製薬上許容可能な塩および溶媒和物は、治療上有効な量、例えば、上述の疾患症状に対する治療を提供するのに十分な量で投与される。一般に、ヒトにおける用量レベルは、現行の臨床試験の実施に関する基準、FDAガイドラインおよび各所のガイドラインに従って行なわれた研究における用量を高めることにより測定される。もちろん、投与する活性化合物の量は、治療を受けている患者と疾患状態、疾患の程度、投与の方法と計画、ならびに処方する医師の判断によって決まる。
【0255】
本発明の化合物および医薬用製剤の投与は様々な方法で行われるが、例としては、これらに限定されるものではないが、経口投与、皮下投与、静脈内投与、鼻腔内投与、経皮投与、腹腔内投与、筋肉内投与、肺内投与、膣内投与、直腸投与、眼内投与が挙げられる。創傷や炎症の治療の場合には、本化合物または組成物を溶液またはスプレーとして直接適用することができる。
【0256】
医薬用製剤は、式Iまたは式IIの化合物、その製薬上許容可能な塩または溶媒和物、および1種または複数の製薬上許容可能な賦形剤を含んでいる。当業者に明らかなように、医薬用賦形剤は、種々の剤形中の薬剤または薬の送達を可能にする、あるいは促進するように機能する第2の成分である。かかる剤形の例としては、経口用剤形、例えば、錠剤、カプセル、および液体など;局所用剤形、例えば皮膚用剤形、眼科用剤形および耳科用剤形;坐剤;注射剤;呼吸器系用剤形等がある。医薬用賦形剤には、実質的に有効成分の医薬上の効果に寄与する、不活性成分または非活性成分、シネルギスト、または化学物質が含まれる。例えば、医薬用賦形剤は、流動特性、製品均一性、安定性、味または外観を改良するために、取り扱いの利便性において取り扱いと投与を容易にするために、あるいバイオアベイラビリティを調節するために機能し得る。医薬用賦形剤は不活性または非活性であると一般に述べられているが、医薬用賦形剤の特性と、それらを含有する剤形の間に関係があることは当業者には理解されよう。
【0257】
担体または希釈剤としての使用に好適な医薬用賦形剤は当技術分野で周知であり、種々の製剤で用いることができる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版, A. R. Gennaro編集、Mack Publishing Company (1990);Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版、A. R. Gennaro編集、Lippincott Williams & Wilkins (2000);Handbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、A. H. Kibbe編集、American Pharmaceutical Association, and Pharmaceutical Press (2000);および、Handbook of Pharmaceutical Additives、Michael and Irene Ash, Gower 編集(1995)を参照されたい。製剤中の治療上活性な薬剤の濃度は、製剤の性質によって決まるが、約0.1〜99.9重量%まで広く変えることができる。
【0258】
錠剤などの経口固形剤形は、一般に1種または複数の医薬用賦形剤を含んでおり、例えばそれは、満足のいく加工と圧縮特性を付与するか、あるいは錠剤に新たな望ましい物理的特性を提供するのに役立ち得る。かかる医薬用賦形剤は、希釈剤、結合剤、流動促進剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、フレーバー剤、甘味料、ポリマー、ワックスまたは他の溶解性調節物質から選択することができる。
【0259】
非経口投与用剤形は、一般に、液体、特に静脈内輸液を含む、(すなわち、糖、アミノ酸または電解質などの単一の化学物質の殺菌液)を含む。これらは、循環系により容易に送達され、かつ吸収され得る。かかる液体は、一般に、注射の薬局方で水を用いて調製される。一般に静脈内注射(IV)用途に用いられている液体は、Remington, The Science and Practice of Pharmacyに[これまでに記載されている引用に十分に]記載されているが、以下のもの:
・アルコール、例えば5%アルコール(デキストロースおよび水「D/W」)に溶解)、または通常の食塩溶液(「NSS」)に溶解したD/W(5%デキストロースおよび水(「D5/N」)に溶解したもの、もしくはNSSに溶解したものを含む);
・Aminosyn, FreAmine, Travasolなどの合成アミノ酸、例えば、それぞれ、3.5または7;8.5;3.5、5.5または8.5%;
・塩化アンモニウム、例えば2.14%;
・デキストラン40、NSS溶液中、例えば10%、またはD5/W中、例えば10%;
・デキストラン70、NSS溶液中、例えば6%、またはD5/W中、例えば6%;
・デキストロース(グルコース(D5/W))、例えば2.5〜50%;
・デキストロースおよび塩化ナトリウム、例えば5〜20%のデキストロース、0.22〜0.9%のNaCl);
・乳酸添加リンガー(ハルトマン液)、例えばNaCl 0.6%、KCl 0.03%、CaCl2 0.02%;
・乳酸 0.3%;
・マンニトール、例えば5%、場合によりデキストロース(例えば10%)またはNaCl(例えば15もしくは20%)との組み合わせ;
・電解質、デキストロース、フルクトース、転化糖リンガーの組み合わせを変えた複数の電解質溶液、例えばNaCl 0.86%、KCl 0.03%、CaCl2 0.033%;
・重炭酸ナトリウム、例えば5%;
・塩化ナトリウム、例えば0.45、0.9、3、または5%;
・乳酸ナトリウム、例えば1/6M;ならびに、
・注射用蒸留水、を含む。
【0260】
かかるIV液体のpH値は変えることができるが、当技術分野で周知のように、一般には3.5〜8である。
【0261】
本発明の化合物、製薬上許容可能な塩および溶媒和物は、単独で、あるいは他の治療(すなわち照射線等)または他の治療薬(微小管形成またはカンプトテシンクラスのトポイソメラーゼI阻害剤に作用すると考えられるタキサンクラスの薬剤等)と組み合わせて投与することができる。かかる使用の場合、他の治療薬は、本発明の活性剤の投与前に、同時に(異なる剤形、または組み合わせた剤形のいずれかで投与)、あるいは投与後に投与することができる。
【0262】
以下の実施例は、上記の本発明を用いる方法をより詳しく記載するものであり、また本発明の種々の態様を実施するために検討された最高の方法について記載するものである。これらの実施例は、本発明の真の特許請求の範囲を限定するものでは全くなく、例示する目的で開示されているものと理解されたい。
【実施例】
【0263】
実施例1
3-ベンジル-7-クロロ-1-ピロリジン-2-イル-2,3-ジヒドロ-1H-キナゾリン-4-オン
1A. Tが共有結合であり;W、X、YおよびZが-C=であり;U'-V'が-N(R6')-CReRf-であり;R1、R2、R4、およびRa〜RfがHであり;R3がクロロであり;R6'がBocである、式103:
ピリジン(60mL)に溶解したピロリジン-1,2-ジカルボン酸1-tert-ブチルエステル(6.0g、28mmol)、2-アミノ-4-クロロ-安息香酸メチルエステル(4.6g、25mmol)、PyBroP(14.4g、31mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(6mL)の溶液を室温で一晩撹拌した。この後、HPLC/MSは出発原料が完全に変換されていることを示した。真空下で溶媒を除去し、残渣を酢酸エチル(100mL)と水(50mL)の間で分配した。1MのHCl(50mL)と飽和NaHCO3(50mL)で有機層を洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。溶離液として30%酢酸エチル/ヘキサンを用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより、黄色泡状物質として所望の式103の生成物:2-(5-クロロ-2-メトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-ピロリジン-1-カルボン酸-tert-ブチルエステル9.3g(収率87%)を得た。LRMS(MH+)m/z 383。
【0264】
1B. Tが共有結合であり;W、X、YおよびZが-C=であり;U'-V'が-N(R6')-CReRf-であり;R1、R2、R4、およびRa〜RfがHであり;R3がクロロであり;R6'がBocである、式104:
エタノール125mLに溶解した式103の純粋な化合物(9.3g、24mmol)の溶液をNaOH溶液(H2O16mL中3.1g)で処理した。この混合物を室温で一晩撹拌し、次いで、真空下で濃縮した。残渣を飽和NaCl(200mL)および濃リン酸(5mL)の溶液で数分間処理し、次いで、ジクロロメタン(2×200mL)で抽出した。有機画分をまとめ、MgSO4で乾燥させ、濾過、濃縮し、オレンジ色の泡状物質として所望の式104のクリーンな生成物:2-(5-クロロ-2-カルボキシ-フェニルカルバモイル)-ピロリジン-1-カルボン酸-tert-ブチルエステル8.7g(収率97%)を得た。LRMS(M)m/z 368。
【0265】
1C. Tが共有結合であり;W、X、YおよびZが-C=であり;U'-V'が-N(R6')-CReRf-であり;R1、R2、R4、およびRa〜RfがHであり;R3がクロロであり;R5がベンジルであり;R6'がBocである、式105:
ジクロロメタン(250mL)に溶解した式104の化合物(8.7g、24mmol)の溶液にEDC(14.85g、77mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(14.1mL、81mmol)を添加した。室温で1.5時間撹拌した後、ベンジルアミン(8.4mL、77mmol)を添加し、その反応物をさらに48時間撹拌した。混合物を水(2×50mL)、10%リン酸(2×50mL)、および飽和NaHCO3(50mL)で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、淡黄色泡状物質として所望の式105の生成物:2-(2-ベンジルカルバモイル-5-クロロ-フェニルカルバモイル)-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステルと少量の2-(3-ベンジル-7-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-キナゾリン-1-イル)-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(式106)の混合物9.4g(収率88%)を得た。これはそれ以上精製を行なうことなく次工程に用いた。LRMS(MH+)m/z 458。
【0266】
1D. Tが共有結合であり;W、X、YおよびZが-C=であり;U'-V'が-N(R6')-CReRf-であり;R1、R2、R4、およびRa〜RfがHであり;R3がクロロであり;R5がベンジルであり、R6'がBocである、式106:
式105と式106の混合物(5.4g、12mmol)を120℃にてK2CO3(27g)とともにエチレングリコール(32mL)中で一晩撹拌した後、溶液を室温まで冷却させ、ジクロロメタン(3×200mL)で抽出した。有機画分をまとめ、MgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣を溶離液として20%酢酸エチル/ヘキサンを用いたシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、所望の純粋な式106の生成物:2-(3-ベンジル-7-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-キナゾリン-1-イル)-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル1.4g(収率27%)を得た。LRMS(MH+)m/z 439。
【0267】
1E. U-Vが-N(R6)-CReRf-であり;R1、R2、R4、およびRa〜RfがHであり;R3がクロロであり;R5がベンジルである、式I:
式106(446mg、1.0mmol)の純粋な化合物をTFA/ジクロロメタン1:1混合物20mLで室温にて1時間処理した。真空下でこの溶液を濃縮し、ジクロロメタン(20mL)と飽和NaHCO3(10mL)の間に分配した。ジクロロメタン(10mL)で水溶性層を抽出し、有機層をまとめ、K2CO3で乾燥させ、濾過した後濃縮し、所望の式Iの生成物:3-ベンジル-7-クロロ-1-ピロリジン-2-イル-2,3-ジヒドロ-1H-キナゾリン-4-オン344mg(収率100%)を得た。これはそれ以上の精製を行なうことなく取得した。LRMS(MH+)m/z 340。
【0268】
実施例2
3-ベンジル-7-クロロ-2-{1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン
U-Vが-N(R6)-CReRf-であり;R1、R2、R4、およびRa〜RfがHであり;R3がクロロであり;R5がベンジルであり、R6がp-メチル-ベンゾイルである、式I:
ジクロロメタン(4.5mL)に溶解した粗製3-ベンジル-7-クロロ-1-(ピロリジン-2-カルボニル)-2,3-ジヒドロ-1H-キナゾリン-4-オン(250mg、0.73mmol)の溶液にp-塩化トルオイル(0.29mL、2.2mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(0.77mL、4.4mmol)を添加した。この混合物を1時間撹拌し、次いで、飽和NaHCO3(10mL)と酢酸エチル(20mL)の間に分配した。有機相を飽和NaHCO3(3×4mL)および飽和NaCl(2×4mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。粗製残渣を分取逆相C18 HPLC(10〜98%アセトニトリル/水)により精製し、所望の純粋な式Iの生成物:3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン223mg(収率66%)を得た。LRMS(MH+)m/z 459。
【0269】
実施例3
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンジル)-ピロリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン
U-Vが-N(R6)-CReRf-であり;R1、R2、R4、およびRa〜RfがHであり;R3がクロロであり;R5がベンジルであり、R6がp-メチル-ベンジルである、式I:
ジクロロメタン(5mL)に溶解した粗製3-ベンジル-7-クロロ-1-(ピロリジン-2-カルボニル)-2,3-ジヒドロ-1H-キナゾリン-4-オン(170mg、0.50mmol)をp-トルアルデヒド(80μL、0.7mmol)およびNaHB(OAc)3(350mg、1.65mmol)で処理し、この混合物を室温にて40分間撹拌した。反応を飽和NaHCO3(2.2mL)でクエンチングし、水相をジクロロメタン(25mL)で抽出した。有機層をまとめてNa2SO3で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。溶離液として20%酢酸エチル/ヘキサン〜50%メタノール/酢酸エチルの段階的勾配を用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより粗製残渣を精製し、所望の式Iの生成物:3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンジル)-ピロリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン52.5mg(収率24%)を得た。LRMS(MH+)m/z 445。
【0270】
実施例4
式Iおよび式IIの他の化合物
4A. U-Vが-CReRf-CRgRh-N(R6)-であり;R1、R2、R4、RbおよびRc〜RhがHであり;R3がクロロであり;R5がメチルであり;Raがフェネチルであり;R6がp-メチル-ベンゾイルである、式I:
実施例1に記載した方法に従うとともに、(実施例1Aにおいて)ピロリジン-1,2-ジカルボン酸1-tert-ブチルエステルを3-フェネチル-ピペリジン-1,4-ジカルボン酸tert-ブチルエステルに置き換え、また(実施例1Cにおいて)ベンジルアミンをメチルアミンに置き換え、7-クロロ-2-[3-フェネチル-ピペリジン-4-イル]-3-メチル-3H-キナゾリン-4-オンを得る。
【0271】
4B. U-Vが-CReRf-CRgRh-N(R6)-であり;R1、R2、R4、Rb、およびRc〜RhがHであり;R3がクロロであり;R5がメチルであり;Raがフェネチルであり;R6がp-メチル-ベンゾイルである、式I:
実施例2に記載した方法に従うとともに、3-ベンジル-7-クロロ-1-(ピロリジン-2-カルボニル)-2,3-ジヒドロ-1H-キナゾリン-4-オンを7-クロロ-2-[3-フェネチル-ピペリジン-4-イル]-3-メチル-3H-キナゾリン-4-オンに置き換え、7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-3-フェネチル-ピペリジン-4-イル]-3-メチル-3H-キナゾリン-4-オンを得る。
【0272】
4C. U-Vが-CReRf-CRgRh-N(R6)-であり;R1、R4、Rb、およびRc〜RhがHであり;R2およびR3がメトキシであり;R5がメチルであり;Raがフェネチルであり;R6がベンジルである、式I:
実施例3に記載した方法に従うとともに、3-ベンジル-7-クロロ-1-(ピロリジン-2-カルボニル)-2,3-ジヒドロ-1H-キナゾリン-4-オンを6,7-ジメトキシ-2-[3-フェネチル-ピペリジン-4-イル]-3-メチル-3H-キナゾリン-4-オンに置き換え、また、p-トルアルデヒドをベンズアルデヒドに置き換え、6,7-ジメトキシ-2-[1-ベンジル-3-フェネチル-ピペリジン-4-イル]-3-メチル-3H-キナゾリン-4-オンを得る。
【0273】
4D. Tを変更した式IIの化合物
実施例1に記載した方法に従うとともに、ピロリジン-1,2-ジカルボン酸1-tert-ブチルエステルを以下の物質:
・2-カルボキシメチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル;
・2-(2-カルボキシ-アセチル)-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル;および、
・2-(2-カルボキシ-エチル)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル、
と置き換えて、それぞれ次の化合物:
・3-ベンジル-7-クロロ-2-ピロリジン-2-イルメチル-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-7-クロロ-2-(2-オキソ-2-ピロリジン-2-イル-エチル)-3H-キナゾリン-4-オン;および、
・3-ベンジル-7-クロロ-2-ピペリジン-2-イルエチル-3H-キナゾリン-4-オン、
を得る。
【0274】
4E. W、X、YおよびZを変更した式IIの化合物
実施例1に記載した方法に従うとともに、2-アミノ-4-クロロ安息香酸メチルエステルを以下の物質:
・4-アミノ-6-クロロ-ニコチン酸メチルエステル;
・3-アミノ-ピラジン-2-カルボン酸;
・3-アミノ-1,4-ジヒドロ-ピリジン-2-カルボン酸;
・2-アミノ-シクロペンタ-1-エン-カルボン酸;
・4-アミノ-2,5-ジヒドロ-フラン-3-カルボン酸;および、
・3-アミノ-1H-ピロール-2-カルボン酸
と置き換えて、それぞれ次の化合物:
・3-ベンジル-7-クロロ-1-ピロリジン-2-イル-2,3-ジヒドロ-1H-ピリド[4,3-d]ピリミジン-4-オン;
・3-ベンジル-1-ピロリジン-2-イル-1H-プテリジン-4-オン;
・3-ベンジル-1-ピロリジン-2-イル-2,3,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-オン;
・3-ベンジル-1-ピロリジン-2-イル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-シクロペンタピリミジン-4-オン;
・3-ベンジル-1-ピロリジン-2-イル-2,3,5,7-テトラヒドロ-1H-フロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン;および、
・3-ベンジル-1-ピロリジン-2-イル-1,2,3,5-テトラヒドロ-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-4-オン
を得る。
【0275】
実施例5
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン
5A. Tが共有結合であり;U-Vが-N(R6)-CReRf-CRgRh-であり;Ra〜RhがHであり;R3がクロロであり;R6がp-メチル-ベンゾイルである、式202:
0℃の2M NaOH(70mL)に溶解したピペリジン-2-カルボン酸(3.5g、15mmol)の溶液に、1時間かけてp-塩化トルオイル(2.2mL、17mmol)を10等分して添加した。次いで、この混合物を室温にてさらに1時間撹拌した。反応物を0℃まで冷却し、1N HClとジクロロメタンの間に分配した。有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して油状物4.7gを得た。この物質の2.0gを95%エタノール(2.5mL)から再結晶させ、所望の純粋な式202の結晶生成物:1-(4-メチル-ベンゾイル-ピペリジン-2-カルボン酸0.86gを得た。LRMS(MH+)m/z 248。
【0276】
5B. Tが共有結合であり;W、X、YおよびZが-C=であり;U-Vが-N(R6)-CReRf-CRgRh-であり;R1、R2、R4およびRa〜RhがHであり;R3がクロロであり;R6がp-メチル-ベンゾイルである、式203:
-15℃の氷浴で、式202の純粋な化合物(7.2g、29mmol)をDMF(30mL)に溶解した2-アミノ-4-クロロ-安息香酸メチルエステル(4.5g、24mmol)、PyBroP(2.3g、4.9mmol)、およびジイソプロピルエチルアミン(0.95mL、5.4mmol)と混合した。得られた混合物を一晩撹拌し、水浴にてその温度を室温まで上昇させた。真空下でその溶液を濃縮し、残渣を酢酸エチル(200mL)と水(200mL)の間に分配した。水(3×100mL)で有機層を洗浄し、真空下で濃縮した。溶離液として40%酢酸エチル/ヘキサンを用いたシリカゲルクロマトグラフィーにて得られた残渣を精製し、結晶固形物として、所望の式203の生成物:4-クロロ-2-{[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-カルボニル]アミノ}-安息香酸メチルエステル2.66g(収率21%)を得た。LRMS(MH+)m/z 472。
【0277】
5C. Tが共有結合であり;W、X、YおよびZが-C=であり;U-Vが-N(R6)-CReRf-CRgRh-であり;R1、R2、R4およびRa〜RhがHであり;R3がクロロであり;R5がベンジルであり;R6がp-メチル-ベンゾイルである、式205:
式203の化合物(2.66g、6.7mmol)、1M NaOH(27mL)、メタノール(54mL)、およびジオキサン(36mL)の混合物を室温にて7時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をジクロロメタン(75mL)、飽和NaCl(50mL)、および濃縮HCl(3mL)の間に分配させた。その層を単離し、有機層をMgSO4で乾燥させ、真空下で濃縮し、対応する式204の化合物:4-クロロ-2-{[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-カルボニル]アミノ}-安息香酸を得た。これはそれ以上の精製を行なうことなく次工程に用いた。この粗生成物をジクロロメタン中に再溶解し、EDC(3.84g、20mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(3.50mL、20mmol)で処理した。20分間撹拌した後、ベンジルアミン(2.20mL、20mmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。その混合物を水(2×50mL)と1M HClで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、所望の式205の生成物:1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-カルボン酸(2-ベンジルカルバモイル-5-クロロ-フェニル-アミド1.5g(収率47%)を得た。粗生成物は逆相HPLCにより純度80%であることが分かった。この生成物はそれ以上精製を行なうことなく取得した。LRMS(MH+)m/z 491。
【0278】
5D. U-Vが-N(R6)-CReRf-CRgRh-であり;R1、R2、R4およびRa〜RhがHであり;R3がクロロであり;R5がベンジルであり;R6がp-メチル-ベンゾイルである、式I:
エチレングリコール(4mL)に溶解させた式205の粗生成物(170mg、0.35mmol)とK2CO3(0.8g、5.8mmol)の混合物を120℃で一晩撹拌した。室温まで冷却した後、その溶液を水(30mL)で希釈し、ジクロロメタン(30mL)および酢酸エチル(30mL)で抽出した。有機層をまとめ、水(2×5mL)および飽和NaCl(5mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮し、混濁した黄色油状物を得た。この粗製品を逆相C18 HPLC(10〜98%アセトニトリル/水)で精製し、所望の式Iの生成物:3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン19mg(収率12%)を得た。LRMS(MH+)m/z 473。
【0279】
実施例6
他の式Iおよび式IIの化合物
6A. R6を変更した式I:
実施例5に記載した方法に従うとともに、p-塩化トルオイルを以下:
・塩化ベンジル;
・塩化ベンゾイル;および、
・p-クロロトルエン、
と置き換え、以下のそれぞれの化合物:
・3-ベンジル-7-クロロ-2-(1-ベンジル-ピペリジン-2-イル)-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-7-クロロ-2-(1-ベンゾイル-ピペリジン-2-イル)-3H-キナゾリン-4-オン;および、
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンジル)-ピペリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン
を得る。
【0280】
6B. Tを変更した式IIの化合物
実施例5に記載した方法に従うとともに、ピペリジン-1,2-ジカルボン酸を下記:
・2-カルボキシメチル-ピロリジン-1-カルボン酸;
・2-(2-カルボキシ-アセチル)-ピロリジン-1-カルボン酸;および、
・2-(2-カルボキシ-エチル)-ピペリジン-1-カルボン酸
と置き換え、以下のそれぞれの化合物:
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イルメチル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-7-クロロ-2-{2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル]-2-オキソ-エチル}-3H-キナゾリン-4-オン;および、
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-イルエチル]-3H-キナゾリン-4-オン
を得る。
【0281】
6C. W、X、YおよびZを変更した式IIの化合物
実施例5に記載した方法に従うとともに、2-アミノ-4-クロロ-安息香酸メチルエステルを下記:
・4-アミノ-6-クロロ-ニコチン酸メチルエステル;
・3-アミノ-ピラジン-2-カルボン酸;
・3-アミノ-1,4-ジヒドロ-ピリジン-2-カルボン酸;
・2-アミノ-クロロペンタ-1-エンカルボン酸;
・4-アミノ-2,5-ジヒドロ-フラン-3-カルボン酸;および、
・3-アミノ-1H-ピロール-2-カルボン酸
と置き換え、以下のそれぞれの化合物:
・3-ベンジル-7-クロロ-1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル-2,3-ジヒドロ-1H-ピリド[4,3-d]ピリミジン-4-オン;
・3-ベンジル-1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル-1H-プテリジン-4-オン;
・3-ベンジル-1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル-2,3,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-オン;
・3-ベンジル-1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-シクロペンタピリミジン-4-オン;
・3-ベンジル-1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル-2,3,5,7-テトラヒドロ-1H-フロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン;および、
・3-ベンジル-1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル-1,2,3,5-テトラヒドロ-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-4-オン
を得る。
【0282】
実施例7
KSP阻害剤で処理した細胞群における有糸分裂停止の誘導
DNA含有量を測定することにより細胞周期のステージを求めるFACS解析は、以下のようにして行った。10cmの皿にSkov-3細胞(ヒト卵巣癌)を1:10に分けてプレーティングし、5%ウシ胎仔血清(FBS)を含むRPMI 1640培地により低細胞密度まで増殖させた。次いで、10nMパクリタキセル、400nMの試験化合物、200nMの試験化合物、または0.25%DMSO(化合物のビヒクル)のいずれかで24時間細胞を処理した。正のコントロールとしては、周知の抗有系分裂剤(パクリタキセルなど)を用いる。次に、5mM EDTAを含むPBSで細胞をプレートから洗い流した後、ペレットにし、1% FCSを含むPBSで1回洗浄し、4℃の85%エタノール中で一晩固定化した。分析の前に、細胞をペレット化し、1回洗浄し、1ミリリットル当たり10μgのヨウ化プロピジウムと250μgのリボヌクレアーゼ(RNAse)Aとを含む溶液で30分間37℃にて染色した。Becton-Dickinson FACScanを用いてフローサイトメトリー分析を行い、1サンプル当たり10,000個の細胞のデータをModfitプログラムで分析した。
【0283】
キナゾリノンKSP阻害剤適用後の単極性紡錘体形成
G2/M累積の性質を調べるために、ヒト腫瘍細胞系Skov-3(卵巣)、HeLa(子宮頸部)、および、A549(肺)を1ウェル当たり4,000個(SKOV-3およびHeLa)または1ウェル当たり8,000個(A549)の細胞密度で、96ウェルのプレートに播種し、24時間固着させ、種々の濃度の試験化合物で24時間処理した。細胞を4%ホルムアルデヒドで固定化し、(蛍光標識した二次抗体を用いて後で認識される)抗チューブリン抗体および(DNAを染色する)Hoechst色素で染色した。細胞を目視検査し、試験化合物の効果を評価することができる。例えば、抗KSP抗体のマイクロインジェクションにより、有糸分裂の停止が生じ、停止細胞では単極性紡錘体が観察される。
【0284】
実施例8
KSP阻害剤で処理された腫瘍細胞系の細胞増殖の阻害
96ウェルプレートの1ウェル当たり1000〜2500個の細胞密度で(細胞系によって異なる)96ウェルプレートに細胞を播種し、24時間、固着、増殖させた。次いで、種々の濃度の試験化合物で48時間処理した。各化合物を添加した時間をT0とする。薬剤3-(4,5-ジメチルチアゾル-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム(MTS)(米国特許第5,185,450号)(Promega製品カタログ#G3580を参照。CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay)を用いたテトラゾリウム検定を行い、T0における生細胞数と化合物暴露の48時間後に残っている細胞数とを数えた。48時間後に残っている細胞数を試験化合物添加時の生細胞数と比較し、増殖阻害を算出した。ビヒクルのみ(0.25% DMSO)で処理したコントロール群の48時間後の細胞増殖を100%とし、各化合物で処理したウェル中の細胞増殖をこれと比較した。活性KSP阻害剤は、以下の腫瘍型:肺癌(NCI-H460、A549)、乳癌(MDA-MB-231、MCF-7、MCF-7/ADR-RES)、結腸癌(HT29、HCT15)、卵巣癌(SKOV-3、OVCAR-3)、白血病(HL-60(TB)、K-562)、中枢神経系腫瘍(SF-268)、腎臓癌(A498)、骨肉腫(U2-OS)、および子宮頸癌(HeLa)の1種または複数のヒト腫瘍細胞系、ならびにマウス腫瘍細胞系(B16、黒色腫)における細胞増殖を阻害した。
【0285】
GI50の算出:
化合物濃度(μM)に対して処理ウェル中の細胞増殖率をプロットすることにより、GI50値を算出した。各化合物に関して算出されたGI50値は、コントロール群と比較して50%まで増殖が阻害された場合の概算濃度を示す。すなわち、濃度は、次式:
100×[(処理群48−T0)/(コントロール群48−T0)]=50
で表される。
【0286】
すべての化合物の濃度を2回ずつ試験し、コントロール群は12ウェルの平均を取る。同様のレイアウトの96ウェルプレートとGI50算出式が、米国立がん研究所(Monksら、J. NatI. Cancer Inst. 83:757-766 (1991)を参照)で用いられている。ただし、国立がん研究所での細胞計量の方法ではMTSは用いられておらず、代わりに別の方法で計量が行われている。
【0287】
IC50の算出:
KSP活性に関する各化合物のIC50値を測定するためにATPaseアッセイを用いる。以下の溶液を用いる。溶液1は、3mM ホスホエノールピルビン酸カリウム(Sigma P-7127)、2mM ATP (Sigma A-3377)、1mM IDTT (Sigma D-9779)、5μM パクリタキセル(Sigma T-7402)、10ppm 消泡剤289(Sigma A-8436)、25mM Pipes/KOH pH6.8(Sigma P6757)、2mM MgC12(VWR JT400301)、および1mM EGTA(Sigma E3889)からなる。溶液2は、1mM NADH(Sigma N8129)、0.2mg/ml BSA(Sigma A7906)、ピルビン酸キナーゼ 7U/ml、L-乳酸デヒドロゲナーゼ 10U/ml(Sigma P0294)、100nM KSPモータードメイン、50μg/ml 微小管、1mM DTT(Sigma D9779)、5μM パクリタキセル(Sigma T-7402)、10ppm 消泡剤289(Sigma A-8436)、25mM Pipes/KOH pH6.8(Sigma P6757)、2mM MgC12(VWR JT4003-01)、および、1mM EGTA(Sigma E3889)からなる。溶液1を用いて、96ウェルマイクロタイタープレート(Corning Costar 3695)で、本化合物の連続希釈(8〜12倍希釈)を行う。連続希釈後、各ウェルの溶液1は50μlになる。各ウェルに溶液2を50μl添加し、反応を開始させる。この処理には、マルチチャンネルピペッターを用い手動操作で行ってもよいし、自動液体処理装置を用いて実施することができる。次に、マイクロタイタープレートをマイクロプレート吸光度測定装置に移し、動態モードで、各ウェルについて340nmの吸光度を複数回測定した。測定された変化速度(ATPaseの速度に比例する)を化合物濃度の関数としてプロットする。非線形適合プログラム(例えば、Grafit 4)を用いて、下記の4パラメータ式で得られたデータを適合させて、標準IC50値を求める。
【数2】

【0288】
なお、式中、yは測定された速度を、xは化合物の濃度を示す。
【0289】
実施例9
KSP阻害剤で処理された腫瘍細胞系の細胞生存率の阻害
材料および溶液
・細胞:SKOV3、卵巣癌(ヒト)
・培地:フェノールレッド非含有RPMI+5%ウシ胎児血清+2mM L-グルタミン
・細胞生存率測定用の比色定量剤:Promega MTSテトラゾリウム化合物
・最大細胞死滅に関するコントロール化合物:トポテカン(Topotecan)、1μM
方法:第1日−細胞播種
付着しているSKOV3細胞をPBS 10mLで洗浄した後、0.25%トリプシン2mLを添加し、37℃にて5分間インキュベーションを行った。8mLの培地(フェノールレッド非含有RPMI+5%FBS)を用いて、これらの細胞をフラスコからすすぎ出し、新しいフラスコに移した。コールターカウンターを用いて細胞濃度を測定し、1000細胞/100μLとなる細胞の適当な容量を算出する。培地細胞懸濁液(1000細胞/100μLに調節したもの)100μLを96ウェルプレートのすべてのウェルに添加した後、37℃、湿度100%、5%CO2で18〜24時間インキュベーションし、細胞をプレートに付着させた。
【0290】
方法:第2日−化合物添加
オートクレーブしたアッセイブロックのウェルの1つのカラムに400×所望の最高濃度で試験化合物の最初の2.5μLを添加する。別のウェルに400×(400μM)トプテカン1.25μLを添加する(死滅細胞とビヒクルのバックグラウンド吸光度を差し引きするために、これらのウェルのODを用いる)。試験化合物を含むウェルにDMSO非含有の培地500μLを添加し、トプテカンウェルに250μLを添加する。培地+0.5%DMSO 250μLを試験化合物が連続的に希釈されて入っているすべての残りのウェルに添加する。列によって、化合物含有培地は、対応する細胞プレートの妨げとなるアッセイからプレートされたレプリカである(複製による)。細胞プレートは、37℃、湿度100%、および5%CO2で72時間インキュベートする。
【0291】
方法:第4日−MTSの添加とOD測定
プレートをインキュベーターから取り出し、各ウェルに40μlのMTS/PMSを添加する。次いで、120分間、37℃、湿度100%、5%CO2でプレートをインキュベートし、96ウェル分光光度計で5秒間の振盪サイクル後、490nmでOD値を測定する。
【0292】
データ分析
コントロール(バックグラウンド吸光度)の標準化(%)を計算し、XLfitを用いて、50%まで生存率を阻害するのに必要とされる化合物の濃度を測定する用量応答曲線を作成する。
【0293】
本発明の化合物を実施例7、8および9に記載した1つの方法および複数の方法で試験した場合、活性が明らかである。
【0294】
本発明は特定の実施形態に関して記載されているが、当業者には、種々の変更を行ってもよく、また、本発明の本来の趣旨および範囲から逸脱することなく同等のものと置き換えることができることが理解されよう。さらに、特定の状態、材料、物質の混合物、方法、方法の1ステップまたは複数のステップを本発明の目的、趣旨および範囲に適応させるように多数の変更を行うことができる。かかる変更は、本明細書に添付されている特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。上記で引用されているすべての特許および刊行物は、参照により本明細書に組み入れるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、
U-Vは、-N(R6)-CReRf-、-CReRf-N(R6)-、-N(R6)-CReRf-CRgRh-、-CReRf-N(R6)-CRgRh、または-CReRf-CRgRh-N(R6)-であり;
Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhは、独立して、水素、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、置換アルキル、置換アリール、置換アラルキル、または置換ヘテロアリールであり;
R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノまたは置換アルキルであり;
R5は、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、置換アルキル、置換アリール、置換アラルキル、置換ヘテロアリール、または置換ヘテロアラルキルであり;
R6は、水素、アシル、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、置換アシル、置換アルキル、置換アリール、置換アラルキル、または置換ヘテロアリールである)
で表される群から選択される化合物、あるいはその製薬上許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項2】
下記:
R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、クロロ、フルオロ、メチル、メトキシ、シアノまたは置換低級アルキルであり;
R5はアラルキルまたは置換アラルキルであり;
Ra〜Rhは、独立して、水素、低級アルキルまたは置換低級アルキルであり;
U-Vは、-N(R6)-CReRf-CRgRh-、-CReRf-N(R6)-CRgRh、または-CReRf-CRgRh-N(R6)-であり;
R6は、置換されてもよいアラルキルまたは置換されていてもよいアシルである、
を1つまたは複数含んでなり、かつ(R)-鏡像異性体である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記:
R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、クロロ、フルオロ、メチル、メトキシまたはシアノであり;
R5はベンジルまたは置換ベンジルであり;
Ra〜Rhのうちの1つ以下は水素以外であり;
U-Vは、-N(R6)-CReRf-CRgRh-または-CReRf-N(R6)-CRgRh-であり;
R6は置換されていてもよいアシルである、
を1つまたは複数含んでなる、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
下記:
R1、R2、R3およびR4が水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、かつ第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノであり;
R5はベンジルであり;
Ra〜Rhは水素であり;
U-Vは-N(R6)-CReRf-CRgRh-であり;
R6はp-メチル-ベンゾイルである、
を1つまたは複数含んでなる、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
R1、R2およびR4が水素であり、かつR3が水素またはクロロである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R5がベンジルであり;
U-Vが-N(R6)-CH2-CH2-であり;
R6がp-メチル-ベンゾイルである、
請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンジル)-ピロリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンジル)-ピペリジン-3-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-3-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンジル)-ピペリジン-4-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;および、
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-4-イル]-3H-キナゾリン-4-オン、
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
(R)-鏡像異性体である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピロリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-3-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;および、
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-4-イル]-3H-キナゾリン-4-オン、
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
(R)-鏡像異性体である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-2-イル]-3H-キナゾリン-4-オン;および、
3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(4-メチル-ベンゾイル)-ピペリジン-3-イル]-3H-キナゾリン-4-オン、
特にこれらの(R)-鏡像異性体、
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
(R)-鏡像異性体である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
製薬上許容可能な賦形剤、および有効量の請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物を含む、医薬用製剤。
【請求項14】
細胞増殖性疾患に罹患している患者に有効量の請求項1〜12のいずれ1項に記載の化合物を投与することを含む、治療方法。
【請求項15】
細胞増殖性疾患が、癌、異常増殖、再狭窄、心臓肥大、免疫不全または炎症である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
細胞増殖性疾患にかかっている細胞のKSPキネシン活性をモジュレートするのに十分な量の請求項1に記載の化合物を、前記疾患に罹患している患者に投与することを含む、細胞増殖性疾患の治療方法。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物、および有効量の前記化合物を投与することにより細胞増殖性疾患を治療する指示を含む添付文書または他の表示を含んでなるキット。
【請求項18】
式II:
【化2】

(式中、
破線は、対応する結合が単結合または二重結合であってもよいことを示し;
Tは共有結合、または置換されていてもよい低級アルキレンであり;
U-Vは、-N(R6)-CReRf-、-CReRf-N(R6)-、-N(R6)-CReRf-CRgRh-、-CReRf-N(R6)-CRgRh、および-CReRf-CRgRh-N(R6)-から選択され;
W、XおよびYは、独立して、-N=、N、-C=、CH、CRi、OまたはSであり;
Zは、-N=、N、-C=、CH、CRiであるか、あるいは不在であり、ただし、W、X、YおよびZの2つ以下が-N=であり、Zが不在の場合に限り、W、XまたはYはOまたはSであってもよく;
Riは、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノまたは置換アルキルであり;
Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhは、独立して、水素、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、置換アルキル、置換アリール、置換アラルキル、および置換ヘテロアリールから選択され;
R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノおよび置換アルキルであり;
R5は、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、置換アルキル、置換アリール、置換アラルキル、置換ヘテロアリール、または置換ヘテロアラルキルであり;
R6は、水素、アシル、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、置換アシル、置換アルキル、置換アリール、置換アラルキル、および置換ヘテロアリールから選択され;
ただし、W、X、YまたはZは、それぞれ、-N=、O、S、あるいは不在である場合、R1、R2、R3またはR4は不在である)
で表される群の化合物、あるいはその製薬上許容可能な塩または溶媒和物。
【請求項19】
以下:
Tは、共有結合、C1〜C4アルキレン、あるいはハロゲンまたはオキソで置換されているC1〜C4アルキレンであり;
W、X、YおよびZは、独立して、-C=または-N=であり;
R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、クロロ、フルオロ、メチル、メトキシ、シアノまたは置換低級アルキルであり;
R5はアラルキルまたは置換アラルキルであり;
Ra〜Rhは、独立して、水素、低級アルキルまたは置換低級アルキルであり;
U-Vは、-N(R6)-CReRf-CRgRh-、-CReRf-N(R6)-CRgRh、または-CReRf-CRgRh-N(R6)-であり;
R6は、置換されていてもよいアラルキルまたは置換されていてもよいアシルである、
を1つまたは複数含んでなり、かつ(R)-鏡像異性体である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
以下:
Tは、共有結合またはC1〜C4アルキレンであり;
R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、クロロ、フルオロ、メチル、メトキシまたはシアノであり;
R5はベンジルまたは置換ベンジルであり;
Ra〜Rhの1つ以下が水素以外であり;
U-Vは、-N(R6)-CReRf-CRgRh-または-CReRf-N(R6)-CRgRhであり;
R6は、置換されていてもよいアシルである、
を1つまたは複数含んでなる、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
以下:
Tは共有結合であり;
R1、R2、R3およびR4は水素であるか、あるいはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、かつ第四の基がハロゲン、メトキシ、メチルまたはシアノであり;
R5はベンジルであり;
Ra〜Rhは水素であり;
U-Vは-N(R6)-CReRf-CRgRh-であり;
R6はp-メチル-ベンゾイルである、
を1つまたは複数含んでなる、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
Tは共有結合であり;
R1、R2およびR4は水素であり、かつR3は水素またはクロロであり;
R5はベンジルであり;
U-Vは-N(R6)-CH2-CH2-であり;
R6はp-メチル-ベンゾイルである、
請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
製薬上許容可能な賦形剤、および有効量の請求項18〜22のいずれか1項に記載の化合物を含む、医薬用製剤。
【請求項24】
細胞増殖性疾患に罹患している患者に有効量の請求項18〜22のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、治療方法。
【請求項25】
細胞増殖性疾患が、癌、異常増殖、再狭窄、心臓肥大、免疫不全または炎症である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
細胞増殖性疾患にかかっている細胞のKSPキネシン活性をモジュレートするのに十分な量の請求項18に記載の化合物を、前記疾患に罹患している患者に投与することを含む、細胞増殖性疾患の治療方法。
【請求項27】
請求項18〜22のいずれか1項に記載の化合物、および有効量の前記化合物を投与することにより細胞増殖性疾患を治療する指示を含む添付文書または他の表示を含んでなるキット。

【公表番号】特表2006−501306(P2006−501306A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544787(P2004−544787)
【出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/030788
【国際公開番号】WO2004/034972
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(501327514)サイトキネティクス・インコーポレーテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】Cytokinetics Incorporated
【Fターム(参考)】