説明

化合物、組成物および方法

KSPの活性を阻害することにより細胞増殖性疾患および障害を治療するのに有用である化合物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2003年5月7日付け出願の米国仮特許出願第60/468,744号(これを、あらゆる目的で、参照により本明細書に組み入れることとする)の利益を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、有糸分裂性キネシンKSPのインヒビターであり細胞増殖性疾患、例えば癌、過形成、再狭窄、心肥大、免疫障害、真菌性障害および炎症の治療に有用である化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
癌の治療に使用される治療剤としては、微小管に作用するタキサンおよびビンカアルカロイドが挙げられる。微小管は紡錘体の主要構造要素である。紡錘体は、細胞分裂により生じる2つの娘細胞のそれぞれへのゲノムの複製コピーの分配をもたらす。これらの薬物による紡錘体の破壊は癌細胞分裂の阻害および癌細胞死の誘導をもたらすと考えられる。しかし、微小管は、神経突起における細胞内輸送のための通路を含む他のタイプの細胞構造体を形成する。これらの治療剤は紡錘体を特異的には標的化しないため、それらは、それらの有用性を限定する副作用を有する。
【0004】
これらの物質の投与に伴う副作用が軽減されれば実現される治療利益のため、癌の治療に使用される物質の特異性の改善には多大な関心が持たれている。伝統的には、癌の治療における劇的な改善は、新規メカニズムによって作用する治療剤の同定に伴ったものである。この具体例には、タキサンだけでなく、カンプトテシンのクラスのトポイソメラーゼIインヒビターも含まれる。これらの観点の両方から、有糸分裂性キネシンは新規抗癌剤の魅力的な標的である。
【0005】
有糸分裂性キネシンは、紡錘体の構築および機能に必須の酵素であるが、一般には、神経突起におけるような他の微小管構造体の一部ではない。有糸分裂性キネシンは、有糸分裂の全段階において必須の役割を担う。これらの酵素は、ATPの加水分解により放出されたエネルギーを、微小管に沿った細胞運搬物の定方向運動を駆動する機械的力に変換する「分子モーター」である。この働きに十分な触媒ドメインは約340アミノ酸の小さな構造体である。有糸分裂中に、キネシンは微小管を、紡錘体である双極性構造体に組織化する。キネシンは紡錘体微小管に沿った染色体の運動を、および有糸分裂の特異的段階に関連した紡錘体における構造変化を媒介する。有糸分裂性キネシン機能の実験的阻害は紡錘体の形成不良または機能不全を引き起こして、しばしば、細胞周期停止および細胞死を招く。
【0006】
同定されている有糸分裂性キネシンとしては、KSPが挙げられる。KSPは、逆平行ホモ二量体よりなる双極性ホモ四量体に集合するプラス端指向性微小管モーターの進化的に保存されたキネシンサブファミリーに属する。有糸分裂中、KSPは紡錘体の微小管と会合する。ヒト細胞内へのKSPに対する抗体のマイクロインジェクションは前中期中の紡錘体極分離を妨げて単極性紡錘体を与え、有糸分裂停止およびプログラム細胞死の誘導をもたらす。他の非ヒト生物におけるKSPおよび関連キネシンは逆平行微小管を束ね、それらをお互いに対して滑らせて、それらの紡錘体極を引き離す。KSPは後期Bにおける紡錘体伸長および紡錘体極における微小管の集中を媒介しうる。
【0007】
ヒトKSP(HsEg5とも称される)は既に記載されており(Blangyら, Cell, 83:1159-69 (1995); Whiteheadら, Arthritis Rheum., 39:1635-42 (1996); Galgioら, J. Cell Biol., 135:339-414 (1996); Blangyら, J Biol. Chem., 272:19418-24 (1997); Blangyら, Cell Motil Cytoskeleton, 40:174-82 (1998); WhiteheadおよびRattner, J. Cell Sci., 111:2551-61 (1998); Kaiserら, JBC 274:18925-31 (1999); GenBankアクセッション番号X85137、NM004523およびU37426)、KSP遺伝子の断片(TRIP5)が既に記載されている(Leeら, Mol Endocrinol., 9:243-54 (1995); GenBankアクセッション番号L40372)。ツメガエル(Xenopus)KSPホモログ(Eg5)およびショウジョウバエ(Drosophila)KLP61 F/KRP1 30が報告されている。
【0008】
KSPを含む有糸分裂性キネシンは新規抗有糸分裂化学療法剤の発見および開発のための魅力的な標的である。したがって、本発明の目的は、KSPの阻害に有用な化合物、組成物および方法を提供することにある。
【発明の開示】
【0009】
前記の目的に従い、本発明は、細胞増殖性疾患を治療するために使用しうる化合物を提供する。該化合物はKSPインヒビターである。本発明はまた、細胞増殖性疾患を治療するために使用しうる、そのような化合物を含む組成物およびそのような化合物または組成物を使用する方法を提供する。
【0010】
1つの態様において、本発明は、細胞増殖性疾患を治療するための、およびKSPの活性を阻害することにより障害を治療するための方法に関する。該方法は、式I:
【化1】

【0011】
[式中、
TおよびT'は、独立して、共有結合であるか、または、場合により置換されていてもよい低級アルキレンであり;
Xは、Oまたは-NR4であり;
R1は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-であり;
R2およびR2'は、独立して、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、若しくは、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルであるか;または、R2とR2'は、一緒になって、場合により置換されていてもよい3員〜7員の環(ここで、該環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい)を形成しており;
R3は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-、-C(O)-R6、または、-S(O)2-R6aであり;
R5は、水素、ハロゲン、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、若しくは、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-であり;
R4は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、若しくは、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-であるか;または、R4とR5は、それぞれ、それらが結合している炭素および窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜7員の環を形成しており;
R6は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル、R9O-、または、R11-NH-であり;
R6aは、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアルキルアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいアルキルヘテロアリール、または、R11-NH-であり;
R7は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、若しくは、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルであるか;
または、R7は、R3およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成しているか;
または、R7は、R2と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成しており;
R9は、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルであり;
および、
R11は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルである]
で表される1以上の化合物;
(式Iは単一の立体異性体および立体異性体の混合物を含む)
式Iの化合物の医薬上許容される塩;
式Iの化合物の医薬上許容される溶媒和物;
または、
式Iの化合物の医薬上許容される塩の医薬上許容される溶媒和物
を使用する。
【0012】
1つの態様においては、本発明は、式Iの化合物、式Iの化合物の医薬上許容される塩、式Iの化合物の医薬上許容される溶媒和物、または式Iの化合物の医薬上許容される塩の医薬上許容される溶媒和物の治療的有効量を投与することによりKSPを阻害することにより治療されうる細胞増殖性疾患および他の障害の治療方法に関する。そのような疾患および障害には、癌、過形成、再狭窄、心肥大、免疫障害、真菌性障害および炎症が含まれる。
【0013】
もう1つの態様においては、本発明は、KSPキネシンの阻害に有用な化合物に関する。該化合物は、前記式Iに示す構造、式Iの化合物の医薬上許容される塩、式Iの化合物の医薬上許容される溶媒和物、または式Iの化合物の医薬上許容される塩の医薬上許容される溶媒和物の構造を有する。本発明はまた、式Iの化合物、式Iの化合物の医薬上許容される塩、式Iの化合物の医薬上許容される溶媒和物、または式Iの化合物の医薬上許容される塩の医薬上許容される溶媒和物の治療的有効量と、1以上の医薬賦形剤とを含む医薬組成物に関する。もう1つの態様においては、該組成物は更に、本発明の化合物以外の化学療法剤を含む。
【0014】
もう1つの態様においては、本発明は、KSPキネシンに結合する化合物、例えば、本発明の化合物と置換する又は本発明の化合物の結合と競合する化合物に関するスクリーニング方法を提供する。該方法は、本発明の標識化合物、KSPキネシン、および少なくとも1つの候補物質を一緒にし、KSPキネシンへの該候補物質の結合を測定することを含む。
【0015】
もう1つの態様においては、本発明は、KSPキネシン活性のモジュレーターに関するスクリーニング方法を提供する。該方法は、本発明の化合物、KSPキネシン、および少なくとも1つの候補物質を一緒にし、KSPキネシン活性に対する該候補物質の効果を測定することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
定義
本明細書中で用いる以下の用語および表現は、一般には、それらが用いられている文脈から例外であることが示される場合を除き、以下に記載する意義を有すると意図される。以下の略語および用語は、本明細書の全体を通して、示されている意義を有する:
Ac = アセチル、
Aq = 水性、
Bn = ベンジル、
Boc = t-ブチルオキシカルボニル、
Bu = ブチル、
c- = シクロ、
CBZ = カルボベンゾキシ = ベンジルオキシカルボニル、
DCM = ジクロロメタン = 塩化メチレン= CH2Cl2
DIEA = DIPEA = N,N-ジイソプロピルエチルアミン、
DMF = N,N-ジメチルホルムアミド、
DMSO = ジメチルスルホキシド、
Et = エチル、
hまたはhr = 時間、
HOAc = 酢酸、
Me = メチル、
min = 分、
Ms = メタンスルホニル = メシル、
Ph = フェニル、
Py = ピリジン、
rt = 室温、
sat’d = 飽和、
s- =第二級、
t- = 第三級、
TFA = トリフルオロ酢酸、
THF = テトラヒドロフラン、
Ts = トシラート。
【0017】
アルキルは、直鎖状、分枝状もしくは環状の脂肪族炭化水素構造またはそれらの組合せを含むと意図され、それらの構造は飽和または不飽和でありうる。低級アルキルは、1〜5個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原原子のアルキル基を意味する。低級アルキル基の具体例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s-およびt-ブチルなどが含まれる。好ましいアルキル基としては、C20以下のものが挙げられる。より好ましいアルキル基としては、C13以下のものが挙げられる。シクロアルキルはアルキルの下位概念であり、3〜13個の炭素原子の環状脂肪族炭化水素基を含む。シクロアルキル基の具体例には、c-プロピル、c-ブチル、c-ペンチル、ノルボルニル、アダマンチルなどが含まれる。シクロアルキル-アルキルはアルキルのもう1つの下位概念であり、非環状アルキルを介して親構造に結合したシクロアルキルを意味する。シクロアルキル-アルキルの具体例には、シクロヘキシルメチル、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルプロピルなどが含まれる。本出願においては、アルキルは、アルカニル、アルケニルおよびアルキニル残基を含み、ビニル、アリル、イソプレニルなどを含むと意図される。特定の数の炭素を有するアルキル残基が挙げられている場合には、すべての幾何異性体が含まれると意図され、したがって、例えば、「ブチル」はn-ブチル、sec-ブチル、イソブチルおよびt-ブチルを含むと意図され、「プロピル」はn-プロピル、イソプロピルおよびc-プロピルを含む。
【0018】
アルキレン、アルケニレンおよびアルキニレンはアルキルの他の下位概念であり、アルキルと同じ残基を含むが、化学構造内に2つの結合点を有する。アルキレンの具体例には、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、ジメチルプロピレン(-CH2C(CH3) 2CH2-)およびシクロヘキシルプロピレン(-CH2CH2CH(C6H13)-)が含まれる。同様に、アルケニレンの具体例には、エテニレン(-CH=CH-)、プロペニレン(-CH=CH-CH2-)およびシクロヘキシルプロペニレン(-CH=CHCH(C6H13)-)が含まれる。アルキニレンの具体例には、エチニレン(-C=C-)およびプロピニレン(-CH=CH-CH2-)が含まれる。
【0019】
シクロアルケニルはアルキルの下位概念であり、3〜13個の炭素原子の不飽和環状炭化水素基を含む。シクロアルケニル基の具体例には、c-ヘキセニル、c-ペンテニルなどが含まれる。
【0020】
アルコキシまたはアルコキシルは、酸素を介して親構造に結合した直鎖状、分枝状もしくは環状配置またはそれらの組合せの、好ましくは1〜8個の炭素原子を含むアルキル基(すなわち、基アルキル-O-)を意味する。具体例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが含まれる。低級アルコキシは、1〜4個の炭素を含有するアルコキシ基を意味する。
【0021】
アシルは、カルボニル官能基を介して親構造に結合した直鎖状、分枝状もしくは環状配置またはそれらの組合せの、1〜8個の炭素原子の基を意味する。そのような基は飽和または不飽和であることが可能であり、脂肪族または芳香族でありうる。親構造の結合点がカルボニルに位置したままである限り、アシル残基内の1以上の炭素は、酸素、窒素(例えば、カルボキサミドの場合)または硫黄により置換されうる。具体例には、アセチル、ベンゾイル、プロピオニル、イソブチリル、オキサリル、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、モルホリニルカルボニルなどが含まれる。低級アシルは、1〜4個の炭素を含有するアシル基を意味する。
【0022】
アミノは基-NH2を意味する。「置換アミノ」なる語は、基-NHRまたは-NRRを意味し、ここで、各Rは、独立して、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアルコキシ、場合により置換されていてもよいアミノカルボニル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいヘテロシクリル、アシル、アルコキシカルボニル、スルファニル、スルフィニルおよびスルホニル、例えばジエチルアミノ、メチルスルホニルアミノ、フラニル-オキシ-スルホンアミノの群から選ばれる。置換(された)アミノには、基-NRcCORb、-NRcCO2Ra および-NRcCONRbRcが含まれ、ここで、
Raは、場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキルまたはヘテロアリール-C1-C4アルキル基であり、
Rbは、Hまたは場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキルもしくはヘテロアリール-C1-C4アルキル基であり、
Rcは、水素またはC1-C4アルキルであり、ここで、
それぞれの場合により置換されていてもよいRb基は、独立して、置換されていないか、または独立して、C1-C4アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキル、ヘテロアリール-C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、-OC1-C4アルキル、-OC1-C4アルキルフェニル、-C1-C4アルキル-OH、-OC1-C4ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-NH2、-C1-C4アルキル-NH2、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-NH(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキルフェニル)、-NH(C1-C4アルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(ヘテロアリールの置換基として)、-CO2H、-C(O)OC1-C4アルキル、-CON(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-CONH(C1-C4アルキル)、-CONH2、NHC(O)(C1-C4アルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C1-C4アルキル、-C(O)C1-C4フェニル、-C(O)C1-C4ハロアルキル、-OC(O)C1-C4アルキル、-SO2(C1-C4アルキル)、-SO2(フェニル)、-SO2(C1-C4ハロアルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(C1-C4アルキル)、-SO2NH(フェニル)、-NHSO2(C1-C4アルキル)、-NHSO2(フェニル)および-NHSO2(C1-C4ハロアルキル)から選ばれる1以上の置換基により置換されている。
【0023】
抗有糸分裂剤は、例えば中期での停止を引き起こすことにより有糸分裂を阻害し又は妨げる薬物を意味する。いくつかの抗腫瘍薬は増殖を阻止し、抗有糸分裂剤とみなされる。
【0024】
アリールおよびヘテロアリールは、O、NまたはSから選ばれるそれぞれ0個または1〜4個のヘテロ原子を含有する5または6員芳香族またはヘテロ環式芳香族環、O、NまたはSから選ばれるそれぞれ0個または1〜4個(またはそれ以上)のヘテロ原子を含有する二環式9または10員芳香族またはヘテロ環式芳香族環系、あるいはO、NまたはSから選ばれるそれぞれ0個または1〜4個(またはそれ以上)のヘテロ原子を含有する三環式12〜14員芳香族またはヘテロ環式芳香族環系を意味する。該芳香族6〜14員炭素環には、例えばフェニル、ナフチル、インダニル、テトラリニルおよびフルオレニルが含まれ、5〜10員芳香族ヘテロ環には、例えばイミダゾリル、ピリジニル、インドリル、チエニル、ベンゾピラノニル、チアゾリル、フラニル、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、ピリミジニル、ピラジニル、テトラゾリルおよびピラゾリルが含まれる。
【0025】
アラルキルは、アリール部分がアルキル残基を介して親構造に結合した残基を意味する。具体例には、ベンジル、フェネチル、フェニルビニル、フェニルアリルなどが含まれる。ヘテロアラルキルは、ヘテロアリール部分がアルキル残基を介して親構造に結合した残基を意味する。具体例には、フラニルメチル、ピリジニルメチル、ピリミジニルエチルなどが含まれる。
【0026】
アラルコキシ(aralkoxy)は基-O-アラルキルを意味する。同様に、ヘテロアラルコキシは基-O-ヘテロアラルキルを意味し、アリールオキシは基-O-アリールを意味し、アシルオキシは基-O-アシルを意味し、ヘテロアリールオキシは基-O-ヘテロアリールを意味し、ヘテロシクリルオキシは基-O-ヘテロシクリルを意味する(すなわち、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリール、アシル、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールが酸素を介して親構造に結合している)。
【0027】
カルボキシアルキルは基-アルキル-COOHを意味する。
【0028】
アミノカルボニルは、基-CONRbRcを意味し、ここで、
Rbは、Hまたは場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキルもしくはヘテロアリール-C1-C4アルキル基であり、
Rcは、水素またはC1-C4アルキルであり、ここで、
それぞれの場合により置換されていてもよいRb基は、独立して、置換されていないか、または独立して、C1-C4アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキル、ヘテロアリール-C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、-OC1-C4アルキル、-OC1-C4アルキルフェニル、-C1-C4アルキル-OH、-OC1-C4ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-NH2、-C1-C4アルキル-NH2、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-NH(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキルフェニル)、-NH(C1-C4アルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(ヘテロアリールの置換基として)、-CO2H、-C(O)OC1-C4アルキル、-CON(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-CONH(C1-C4アルキル)、-CONH2、-NHC(O)(C1-C4アルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C1-C4アルキル、-C(O)C1-C4フェニル、-C(O)C1-C4ハロアルキル、-OC(O)C1-C4アルキル、-SO2(C1-C4アルキル)、-SO2(フェニル)、-SO2(C1-C4ハロアルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(C1-C4アルキル)、-SO2NH(フェニル)、-NHSO2(C1-C4アルキル)、-NHSO2(フェニル)および-NHSO2(C1-C4ハロアルキル)から選ばれる1以上の置換基により置換されている。アミノカルボニルは、カルバモイル、低級アルキルカルバモイル、ベンジルカルバモイル、フェニルカルバモイル、メトキシメチルカルバモイルなどを含むと意図される。
【0029】
ハロゲンまたはハロはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。フッ素、塩素および臭素が好ましい。ジハロアリール、ジハロアルキル、トリハロアリールなどは、示されている複数(この場合は、それぞれ2個、2個および3個)のハロゲンにより置換されたアリールおよびアルキルを意味するが、複数の同一ハロゲンにより置換されている必要はなく、例えば4-クロロ-3-フルオロフェニルはジハロアリールの範囲内である。
【0030】
ヘテロシクリルは、1〜4個の炭素がヘテロ原子(例えば、酸素、窒素または硫黄)により置換されたシクロアルキルまたはアリール残基を意味する。本発明の範囲内に含まれるヘテロシクリルの具体例には、アゼチジニル、イミダゾリニル、ピロリジニル、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキシル(置換基として存在する場合には、一般には、メチレンジオキシフェニルと称される)、テトラゾリル、モルホリニル、チアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピペリジニル、ピリミジニル、チエニル、フラニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、イソオキサゾリル、ジオキサニル、テトラヒドロフラニルなどが含まれる。「N-ヘテロシクリル」は窒素含有ヘテロ環を意味する。ヘテロシクリルなる語は、ヘテロシクリルの下位概念であるヘテロアリールを含む。N-ヘテロシクリル残基の具体例には、アゼチジニル、4-モルホリニル、4-チオモルホリニル、1-ピペリジニル、1-ピロリジニル、3-チアゾリジニル、ピペラジニルおよび4-(3,4-ジヒドロベンゾオキサジニル)が含まれる。置換ヘテロシクリルの具体例には、4-メチル-1-ピペラジニルおよび4-ベンジル-1-ピペリジニルが含まれる。
【0031】
脱離基または原子は、反応条件下で出発物質から切断されて特定部位での反応を促進する任意の基または原子である。特に示さない限り、そのような基の適当な具体例としては、ハロゲン原子、メシルオキシ、p-ニトロベンゼンスルホニルオキシおよびトシルオキシ基が挙げられる。
【0032】
「場合により」または「場合によっては」は、その後に記載されている事象または状況が生じても生じなくてもよいこと、ならびに該記載が、該事象または状況が生じる場合およびそれが生じない場合を含むことを意味する。例えば、「場合により置換されていてもよいアルキル」は、本明細書に定義されているとおりの「アルキル」および「置換アルキル」を含む。1以上の置換基を含有する任意の基に関して、そのような基に、立体的に実現不可能および/または合成上実施不可能および/または元々不安定ないずれの置換基または置換パターンも導入されることは意図されない、と当業者に理解される。
【0033】
置換アルコキシは、アルキル部分が置換されているアルコキシ(すなわち、-O-(置換アルキル))を意味する。1つの適当な置換されたアルコキシ基は「ポリアルコキシ」または-O-(場合により置換されていてもよいアルキレン)-(場合により置換されていてもよいアルコキシ)であり、-OCH2CH2OCH3のような基、およびグリコールエーテルの基、例えばポリエチレングリコール、および-O(CH2CH2O)xCH3(ここで、xは約2〜20、好ましくは約2〜10、より好ましくは約2〜5の整数)を含む。もう1つの適当な置換されたアルコキシ基はヒドロキシアルコキシまたは-OCH2(CH2)yOH(ここで、yは約1〜10、好ましくは約1〜4の整数である)である。
【0034】
置換されたアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、1以上(一実施形態では約5個まで、別の実施形態では約3個まで)の水素原子が、独立して、-Ra、-ORb、-O-(C1-C2アルキル)O-(例えば、エチレンジオキシまたはメチレンジオキシ)、-SRb、グアニジン、グアニジン水素の1以上が低級アルキル基により置換されたグアニジン、-NRbRc、ハロゲン、シアノ、ニトロ、-CORb、-CO2Rb、-CONRbRc、-OCORb、-OCO2Ra、-OCONRbRc、-NRcCORb、-NRcCO2Ra、-NRcCONRbRc、-CO2Rb、-CONRbRc、-NRcCORb、-SORa、-SO2Ra、-SO2NRbRcおよび-NRcSO2Raよりなる群から選ばれる置換基により置換されたそれぞれアルキル、アリールおよびヘテロアリールを意味し、ここで、
Raは、場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキルまたはヘテロアリール-C1-C4アルキル基であり、
Rbは、Hまたは場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキルもしくはヘテロアリール-C1-C4アルキル基であり、
Rcは、水素またはC1-C4アルキルであり、ここで、
それぞれの場合により置換されていてもよいRa基およびRb基は、独立して、置換されていないか、または独立して、C1-C4アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキル、ヘテロアリール-C1-C4アルキル、C1-C4ハロアルキル、-OC1-C4アルキル、-OC1-C4アルキルフェニル、-C1-C4アルキル-OH、-OC1-C4ハロアルキル、ハロゲン、-OH、-NH2、-C1-C4アルキル-NH2、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-NH(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキルフェニル)、-NH(C1-C4アルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(ヘテロアリールの置換基として)、-CO2H、-C(O)OC1-C4アルキル、-CON(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-CONH(C1-C4アルキル)、-CONH2、NHC(O)(C1-C4アルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C1-C4アルキル、-C(O)C1-C4フェニル、-C(O)C1-C4ハロアルキル、-OC(O)C1-C4アルキル、-SO2(C1-C4アルキル)、-SO2(フェニル)、-SO2(C1-C4ハロアルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(C1-C4アルキル)、-SO2NH(フェニル)、-NHSO2(C1-C4アルキル)、-NHSO2(フェニル)および-NHSO2(C1-C4ハロアルキル)から選ばれる1以上の置換基により置換されている。Tおよび/またはT'が、置換された低級アルキレンである式Iの化合物においては、「置換された」なる語は、1以上(特に1個または2個)の炭素原子が、独立して、O、NまたはSから選ばれるヘテロ原子により置換されたアルキレン基(例えば、-CH2-S-CH2-)をも意味する。
【0035】
スルファニルは、基-S-(場合により置換されていてもよいアルキル)、-S-(場合により置換されていてもよいアリール)、-S-(場合により置換されていてもよいヘテロアリール)および-S-(場合により置換されていてもよいヘテロシクリル)を意味する。
【0036】
スルフィニルは、基-S(O)-H、-S(O)-(場合により置換されていてもよいアルキル)、-S(O)-(場合により置換されていてもよいアリール)、-S(O)-(場合により置換されていてもよいヘテロアリール)、-S(O)-(場合により置換されていてもよいヘテロシクリル)および-S(O)-(場合により置換されていてもよいアミノ)を意味する。
【0037】
スルホニルは、基-S(O2)-H、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいアルキル)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいアリール)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいヘテロアリール)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいヘテロシクリル)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいアルコキシ)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいアリールオキシ)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいヘテロアリールオキシ)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ)および-S(O2)-(場合により置換されていてもよいアミノ)を意味する。
【0038】
医薬上許容される塩は、適当な酸または塩基と共に形成される、生物学的有用性を保有し医薬用途に生物学的に不十分または不適当ではない、該遊離化合物の塩を意味し、医薬上許容される酸付加塩および塩基付加塩を含む。医薬上許容される酸付加塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸から誘導されるもの、および酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などのような有機酸から誘導されるものが含まれる。
【0039】
医薬上許容される塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などのような無機塩基から誘導されるものが含まれる。特定の実施形態としては、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩が挙げられる。塩基付加塩には、第一級、第二級および第三級アミン、置換アミン、例えば天然に存在する置換アミン、環状アミンならびに塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびエタノールアミンの塩を含む、医薬上許容される無毒性有機塩基から誘導されるものが含まれる。
【0040】
保護基は、有機合成においてそれに通常関連した意義を有する。すなわち、それは、多官能性化合物中の1以上の反応部位を選択的に保護して、別の未保護反応部位上で選択的に化学反応が生じることを可能にし、該選択的反応が完了した後に容易に除去されうる基を意味する。種々の保護基が、例えば、T.H. GreeneおよびP. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, Third Edition, John Wiley & Sons, New York (1999)(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている。例えば、ヒドロキシ保護形態においては、化合物中に存在するヒドロキシ基の少なくとも1つがヒドロキシ保護基で保護される。同様に、アミンおよび他の反応性基も同様に保護されうる。
【0041】
溶媒和物は、溶媒と式Iの化合物またはその塩との相互作用により形成される化合物を意味する。式Iの化合物またはその塩の適当な溶媒和物は、水和物を含む医薬上許容される溶媒和物である。
【0042】
本明細書に記載の化合物の多くは、1以上の不斉中心(例えば、R2がR2’と異なる場合に、R2とR2’とが結合している炭素)を含有し、したがって、絶対立体化学において(R)-または(S)-として定められうるエナンチオマー、ジアステレオマーおよび他の立体異性体を与えうる。本発明は、ラセミ混合物、光学的に純粋な形態および中間混合物を含むすべてのそのような可能な異性体を含むと意図される。光学的に活性な(R)-および(S)-異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して製造することが可能であり、あるいは通常の技術を用いて分割することが可能である。本明細書に記載の化合物がオレフィン性二重結合または他の幾何不斉中心を含有する場合には、特に示さない限り、該化合物はEおよびZ幾何異性体を含むと意図される。同様に、すべての互変異性体および回転異性体も含まれると意図される。
【0043】
所望により、R-およびS-異性体を、当業者に公知の方法、例えば、例えば結晶化により分離されうるジアステレオ異性体塩または錯体の形成により;例えば結晶化、気-液または液体クロマトグラフィーにより分離されうるジアステレオ異性誘導体の形成により;エナンチオマー特異的試薬と1つのエナンチオマーとの選択的反応、例えば酵素的酸化または還元およびそれに続く修飾および未修飾エナンチオマーの分離により;キラル環境中、例えばキラル担体(例えば、結合キラルリガンドを伴うシリカ)上またはキラル溶媒の存在下での気-液または液体クロマトグラフィーにより分割することが可能である。所望のエナンチオマーが前記の分離方法の1つにより別の化学的実体に変換される場合には、所望のエナンチオマー形態を遊離させるために更なる工程が要求されうると理解される。あるいは、光学活性試薬、基質、触媒もしくは溶媒を使用する不斉合成により又は一方のエナンチオマーを不斉変換によりもう一方のエナンチオマーに変換することにより、特定のエナンチオマーを合成することが可能である。
【0044】
本発明の化合物
本発明は、1以上の有糸分裂性キネシンのインヒビターである新規化合物のクラスに関する。いずれの理論にも束縛されるものではないが、本発明は、有糸分裂性キネシン機能の摂動(perturbation)が紡錘体の形成不良または機能不全を引き起こして、しばしば、細胞周期停止および細胞死を招くという知見を利用するものである。本発明の1つの実施形態においては、本明細書に記載の化合物は有糸分裂性キネシンKSP、一実施形態ではヒトKSPを阻害する。もう1つの実施形態においては、該化合物は有糸分裂性キネシンKSPを阻害して、HSET(参照により本明細書に組み入れる米国特許第6,361,993号を参照されたい);MCAK(参照により本明細書に組み入れる米国特許第6,331,424号を参照されたい);CENP-E(参照により本明細書に組み入れるPCT公開番号WO 99/13061を参照されたい);Kif4(参照により本明細書に組み入れる米国特許第6,440,684号を参照されたい);MKLP1(参照により本明細書に組み入れる米国特許第6,448,025号を参照されたい);Kif15(参照により本明細書に組み入れる米国特許第6,355,466号を参照されたい);Kid(参照により本明細書に組み入れる米国特許第6,387,644号を参照されたい);Mpp1、CMKrp、KinI-3(参照により本明細書に組み入れる米国特許第6,461,855号を参照されたい);Kip3a(参照により本明細書に組み入れるPCT公開番号WO 01/96593を参照されたい);Kip3d(参照により本明細書に組み入れる米国特許第6,492,151号を参照されたい);およびRabK6から選ばれるヒト有糸分裂性キネシンの1以上をモジュレートする。
【0045】
有糸分裂性キネシンの阻害方法は、本発明のインヒビターをキネシン、特にヒトキネシン、より詳しくはヒトKSPまたはそれらの断片および変異体と接触させることを含む。該阻害はKSPキネシンのATP加水分解活性の阻害および/または紡錘体形成活性の阻害でありうるものであり、その結果、紡錘体が破壊される。また減数分裂紡錘体(meiotic spindles)も破壊されうる。
【0046】
本発明は、細胞増殖に関連した障害の治療のための、有糸分裂性キネシン、特にKSP、より詳しくはヒトKSPのインヒビターを提供する。本明細書に記載の化合物、組成物および方法は、それらの選択性において異なることが可能であり、癌、過形成、再狭窄、心肥大、免疫障害、真菌性障害および炎症を含む(これらに限定されるものではない)細胞増殖の疾患を治療するために使用される。
【0047】
したがって、本発明は、式I:
【化2】

【0048】
[式中、
TおよびT'は、独立して、共有結合であるか、または、場合により置換されていてもよい低級アルキレンであり;
Xは、Oまたは-NR4であり;
R1は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-であり;
R2およびR2'は、独立して、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、若しくは、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルであるか;または、R2とR2'は、一緒になって、場合により置換されていてもよい3員〜7員の環(ここで、該環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい)を形成しており;
R3は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-、-C(O)-R6、または、-S(O)2-R6aであり;
R4は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、若しくは、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-であり;且つ、R5は、水素、ハロゲン、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、若しくは、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-であるか;または、R4とR5は、それぞれ、それらが結合している炭素および窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜7員の環を形成しており;
R6は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル、R9O-、または、R11-NH-であり;
R6aは、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアルキルアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいアルキルヘテロアリール、または、R11-NH-であり;
R7は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、若しくは、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルであるか;
または、R7は、R3およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成しているか;
または、R7は、R2と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成しており;
R9は、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルであり;
および、
R11は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルである]
で表される群から選択される化合物;
(式Iは、単一の立体異性体および立体異性体の混合物を含む)
式Iの化合物の医薬上許容される塩;
式Iの化合物の医薬上許容される溶媒和物;
または、
式Iの化合物の医薬上許容される塩の医薬上許容される溶媒和物を使用する方法に関する。
【0049】
特定の実施形態においては、R2およびR2’が結合している立体中心(stereogenic center)はR配置のものである。
【0050】
命名法
式Iで表される化合物は、以下に記述されているように(例えば、ChemDrawまたはISIS-DRAWでAutoNom version 2.1を用いて)、命名および番号付けを行うことができる。
【化3】

【0051】
即ち、式I[式中、TおよびT'は共有結合であり;Xは-NR4であり;R1はベンジル-であり;R2はプロピル-(または、i-プロピル)であり;R2'は水素であり;R3はCOR6であり;R4はフェニル-であり;R5は水素であり;R7は3-アミノプロピル-であり;および、R6はp-トリル-である]で表される化合物は、「N-(3-アミノ-プロピル)-N-[1-(3-ベンジル-2-オキソ-1-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)-2-メチル-プロピル]-4-メチル-ベンズアミド」と命名することができる。
【0052】
同様に、構造:
【化4】

【0053】
を有する化合物、即ち、式I[式中、TおよびT'は共有結合であり;XはOであり;R1はベンジル-であり;R2はプロピル-(またはi-プロピル-)であり;R2'は水素であり;R3は-COR6であり;R5は水素であり;R7は3-アミノプロピル-であり;および、R6はp-トリル-である]で表される化合物は、「N-(3-アミノ-プロピル)-N-[1-(3-ベンジル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-オキサゾール-4-イル)-2-メチル-プロピル]-4-メチル-ベンズアミド」と命名することができる。
【0054】
合成反応パラメータ
式Iで表される化合物は、以下の反応スキームを参照して記述されている手順に従って調製することができる。
【0055】
式(101)で表される場合により置換されていてもよい化合物および他の反応物は、市販されている(例えば、Aldrich Chemical Company, Milwaukee, WI から市販されている)か、または、当業者は一般に使用される合成方法を用いて容易に調製することができる。
【0056】
特に別途示されていない限り、用語「溶媒」、「不活性有機溶媒」または「不活性溶媒」は、該用語と関連して記述されている反応条件下で不活性である溶媒[例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、クロロホルム、塩化メチレン(または、ジクロロメタン)、ジエチルエーテル、メタノールおよびピリジンなど]を意味する。特に別途示されていない限り、本発明の反応に使用される溶媒は、不活性有機溶媒である。
【0057】
一般に、カルボン酸のエステルは、慣習的なエステル化手順により調製することができる。例えば、アルキルエステルは、一般的には酸性条件下において、所要のカルボン酸を適切なアルカノールで処理することにより調製することができる。同様に、アミドは、慣習的なアミド化手順を用いて調製することができる。例えば、アミドは、活性化されたカルボン酸を適切なアミンで処理することにより調製することができる。あるいは、Tetrahedron Lett. 48, 4171-4173(1977)に記載されている手順に従い、場合によりトリメチルアルミニウムの存在下で、酸の低級アルキルエステル(例えば、メチルエステル)をアミンで処理することにより、所要のアミドを提供することができる。カルボキシル基は、アルキルエステル(例えば、メチルエステル)として保護することができる。このエステルは、慣習的な手順を用いて調製し、除去することができる。カルボメトキシをカルボキシルに変換する便利な方法の1つは、水性水酸化リチウムを用いる方法である。
【0058】
本明細書中で言及されている化合物の塩および溶媒和物は、必要に応じ、当技術分野における慣習的な方法により調製することができる。例えば、本発明の化合物が酸である場合、所望の塩基付加塩は、該遊離酸を、アミン(第一級、第二級または第三級);アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物などのような無機塩基または有機塩基で処理することにより調製することができる。適切な塩の例としては、アミノ酸、例えば、グリシンおよびアルギニン;アンモニア;第一級、第二級および第三級アミン、例えば、エチレンジアミン、および環状アミン、例えば、シクロヘキシルアミン、ピペリジン、モルホリンおよびピペラジンなどから誘導される有機塩;並びに、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムおよびリチウムから誘導される無機塩が挙げられる。
【0059】
化合物が塩基である場合、所望の酸付加塩は、当技術分野で既知の任意の適切な方法により調製することができる。例えば、そのような酸付加塩は、該遊離塩基を、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸などのような無機酸で処理することにより調製することができるか、または、酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸(pyranosidyl acid)、例えば、グルクロン酸若しくはガラクツロン酸、α-ヒドロキシ酸、例えば、クエン酸若しくは酒石酸、アミノ酸、例えば、アスパラギン酸若しくはグルタミン酸、芳香族酸、例えば、安息香酸若しくはケイ皮酸、または、スルホン酸、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸若しくはエタンスルホン酸などのような有機酸で処理することにより調製することができる。
【0060】
本明細書に記載されている化合物および中間体の単離および精製は、必要に応じ、例えば、濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー若しくは厚層クロマトグラフィーまたはこれらの手順の組合せなどのような、任意の適切な分離または精製手順により行うことができる。適切な分離および単離手順の具体的な例証については、以下の実施例を参照することにより知ることができる。しかしながら、もちろん、別の等価な分離または単離手順を使用することもできる。
【0061】
反応スキーム1
【化5】

【0062】

【0063】
式(103)で表される化合物の調製
反応スキーム1のステップ1参照。式(101)で表される化合物(好ましくは、アミンはフタルイミドとして保護されている)と過剰量(好ましくは、約1.1当量)の五塩化リンを無水非プロトン性非極性溶媒(例えば、ベンゼン)に懸濁させた懸濁液を、約55℃に約1時間加熱する。生成物である式(103)の化合物を単離し、精製することなく次のステップで使用する。
【0064】
式(105)で表される化合物の調製
反応スキーム1のステップ2参照。式(103)で表される化合物と過剰量(好ましくは、約2当量)の1,1,2-トリス(トリメチルシリルオキシ)エチレンの混合物を、約100℃で約4時間撹拌する。得られた溶液を室温まで冷却し、ジオキサン中の水性塩酸の溶液で処理する。得られた混合物を、次いで、約85℃に約30分間加熱し、室温まで冷却する。生成物である式(105)の化合物を単離し、精製することなく使用する。
【0065】
式(107)で表される化合物の調製
反応スキーム1のステップ3参照。式(105)で表される化合物と過剰量(好ましくは、約1.5当量)の式R4-HNCONH2で表される化合物を非極性非プロトン性溶媒(例えば、トルエン)に溶解させた室温の溶液に、トリフルオロ酢酸を添加する。得られた溶液を密封し、約110℃で約20時間撹拌する。生成物である式(107)の化合物を単離し、精製する。
【0066】
式(109)で表される化合物の調製
反応スキーム1のステップ4参照。式(107)で表される化合物を極性非プロトン性溶媒(例えば、ジオキサン)に溶解させた室温の溶液に、水素化リチウムと過剰量(好ましくは、約1.75当量)の式R1-X(式中、Xは、脱離基、好ましくは、トシラートである)で表される化合物を順次添加する。得られた溶液を約60℃に約24時間加熱する。生成物である式(109)の化合物を単離し、精製する。
【0067】
反応スキーム2
【化6】

【0068】
式(203)で表される化合物の調製
反応スキーム2のステップ1参照。式(105)で表される化合物のヒドロキシル基を脱離基Xに変換する。一実施形態では、該脱離基はメシル基である(だが、別の脱離基を有する化合物も、当業者に既知の方法を用いて容易に調製することができる)。式(105)で表される化合物と塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)を非極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタン)に溶解させた溶液に、約0℃で、過剰量(好ましくは、約1.1当量)のメタンスルホニルクロリドを非極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタン)に溶解させた溶液を添加する。得られた溶液を、ほぼ同じ温度で約1時間撹拌する。生成物である式(203)[式中、Xは-OMsである]の化合物を単離し、精製する。
【0069】
式(205)で表される化合物の調製
反応スキーム2のステップ2参照。式(203)で表される化合物を極性非プロトン性溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)に溶解させた室温の溶液に、過剰量(好ましくは、約1.2当量)の式R4NH2で表される化合物を添加する。得られた溶液を約100℃で約20時間撹拌する。生成物である式(205)の化合物を単離し、精製する。
【0070】
式(109)で表される化合物の調製
反応スキーム2のステップ2参照。式(205)で表される化合物を非極性非プロトン性溶媒(例えば、トルエン)に溶解させた室温の溶液に、過剰量(好ましくは、約2.5当量)の式R1NCOで表される化合物を添加する。得られた溶液を約110℃で約20時間撹拌し、室温まで冷却する。生成物である式(109)の化合物を単離し、精製する。
【0071】
反応スキーム3
【化7】

【0072】

【0073】
式(303)で表される化合物の調製
反応スキーム3のステップ1参照。式(105)で表される化合物を極性非プロトン性溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)に溶解させた室温の溶液に、過剰量(好ましくは、約1.4当量)の式R1NCOで表される化合物を添加する。得られた溶液を、窒素下、約100℃で約2時間撹拌した後、室温まで冷却する。所望の中間体を単離し、精製する。
【0074】
上記中間体を氷酢酸に溶解させた溶液を約8時間還流し、室温まで冷却する。生成物である式(303)の化合物を単離し、精製することなく次のステップで使用する。
【0075】
式(305)で表される化合物の調製
反応スキーム3のステップ2参照。式(303)で表される化合物をクロロホルムに溶解させた室温の溶液に、過剰量の臭素を添加する。放出された臭化水素を自由流動性の窒素流で連続的に置き換え、得られた溶液を同一温度で約1時間撹拌する。生成物である式(305)の化合物を単離し、精製する。
【0076】
式(307)で表される化合物の調製
反応スキーム3のステップ3参照。式(305)で表される化合物に、過剰量(好ましくは、約1.5当量)の式R5B(OH)2(好ましくは、式中、R5はフェニル-である)で表される化合物;酢酸パラジウム(II)(約1mol%);2-(ジシクロヘキシル)ホスフィノビフェニル(約2mol%);および、過剰量(好ましくは、約3当量)のフッ化カリウムを添加する。(当業者であれば、この反応が別の触媒および塩基を用いても実施可能であることを理解するであろう)。フラスコに窒素を3回流す。非極性非プロトン性溶媒(例えば、トルエン)を添加し、得られた混合物を、次いで、約110℃で約48時間撹拌し、室温まで冷却する。生成物である式(307)の化合物を単離し、精製する。
【0077】
反応スキーム4
【化8】

【0078】
反応スキーム4参照。式(305)で表される化合物、トリ-o-トリルホスフィン(好ましくは、約8mol%)、過剰量(好ましくは、約2当量)の式(R5)4Snで表される化合物(好ましくは、テトラメチルスズ)および酢酸パラジウム(II)(好ましくは、約2mol%)を含んでいる厚壁ガラス管に、N,N-ジメチルホルムアミドおよび塩基(例えば、トリエチルアミン)を添加する。(当業者であれば、この反応が別の触媒およびスズ試薬を用いても実施可能であることを理解するであろう)。得られた溶液を窒素でパージし、該ガラス管を素早く密封して、約115℃に約60時間加熱する。次いで、それを室温まで冷却する。生成物である式(307)の化合物を単離し、精製する。
【0079】
反応スキーム5
【化9】

【0080】
式(501)で表される化合物の調製
反応スキーム5のステップ1参照。アミノ保護基を除去する。アミノ保護基がフタルイミドである場合、これは、式(500)であらわされる化合物を極性プロトン性溶媒(例えば、エタノール)に溶解させた室温の溶液を、ヒドラジンを極性非プロトン性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)に溶解させた溶液(好ましくは、1M溶液)で処理することにより除去することができる。得られた溶液を約55℃で約20時間撹拌し、次いで、室温まで冷却する。生成物である式(501)の化合物を単離し、精製する。
【0081】
式(503)で表される化合物の調製
反応スキーム5のステップ2参照。式(501)で表される化合物を非極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタン)に溶解させた室温の溶液に、過剰量(好ましくは、約1.2当量)のトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムおよび過剰量(好ましくは、約1.3当量)のR7'含有アルデヒド(即ち、式R7'CHO[ここで、R7'CH2-はR7と等価であり、R7は、上記で記載されているとおりであるか、または、そのような置換基の保護されている前駆体、例えば、(3-オキソ-プロピル)-カルバミン酸t-ブチルエステルなどである]で表される化合物)を順次添加する。得られた混合物を、窒素下、同一の温度で約12時間撹拌する。生成物である式(503)の化合物を単離し、精製する。
【0082】
式(505)で表される化合物の調製
反応スキーム5のステップ3参照。式(503)で表される化合物を非極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタン)に溶解させた溶液に、約0℃で、塩基(例えば、DIEA)および過剰量(好ましくは、約1.1当量)の式R6-(CO)-Clで表される酸塩化物を添加する。得られた溶液を、窒素下、室温で一晩撹拌する。生成物である式(505)の化合物を単離し、精製する。
【0083】
R7が保護されているアミンをさらに含んでいる実施形態では、該保護基を除去し得る。例えば、アミノ保護基がBocである場合、これは、式(505)で表される化合物を非極性非プロトン性溶媒(例えば、CH2Cl2)に溶解させた溶液をトリフルオロ酢酸で処理することにより除去することができる。生成物である対応する遊離アミンを単離し、精製する。
【0084】
光学活性化合物の調製
本発明の特定の化合物では、R2が結合している立体中心において、特定の立体配置(例えば、(R)異性体)が好ましいことがあり得る。特定の実施形態では、光学活性化合物は、光学的に活性な出発物質から調製する。別の実施形態では、光学活性化合物は、当技術分野で知られている方法により調製することが可能である。例えば、式(501)のアミンを不活性有機溶媒(例えば、IPA)に溶解させ、60℃に昇温させる。別の容器内で、分割剤(例えば、ジベンゾイル-D-酒石酸)を、好ましくは、昇温させてある同一の溶媒に溶解させた後、素早く、昇温させてある該アミン溶液に(撹拌しながら)添加する。得られた反応混合物を連続的に撹拌しながら16時間にわたり室温に冷却することにより結晶化させる。所望の異性体を単離し、精製する。特定の実施形態では、所望の異性体は、キラルクロマトグラフィーにより単離する。
【0085】
式Iの化合物の合成についての残りの記載において、簡潔にすることを目的として、単一の異性体かまたは異性体混合物のいずれかを用いて、対応する生成物を得ることができるということは理解されるべきである。
【0086】
反応スキーム6
【化10】

【0087】
反応スキーム6参照。式(503)で表される化合物およびアミン塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)を非極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタン)に溶解させた溶液に、式Cl-S(O)2-R6aまたはO-(S(O)2-R6a)2[式中、R6aは上記で定義されているとおりである]で表される化合物を添加する。得られた溶液を、窒素下、室温で数時間撹拌する。生成物である式(603)の化合物を単離し、精製する。
【0088】
反応スキーム7
【化11】

【0089】
反応スキーム7参照。式(503)で表される化合物およびアミン塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)を非極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタン)に溶解させた溶液に、式X-R3[式中、R3は上記で記載されているとおりであり、Xは脱離基(例えば、ハロゲンまたはトシラート)である]で表される化合物を添加する。得られた溶液を、窒素下、室温でまたは加熱しながら、数時間撹拌する。生成物である式(703)の化合物を単離し、精製する。
【0090】
反応スキーム8
【化12】

【0091】

【0092】
式(803)の調製
反応スキーム8のステップ1参照。塩基(例えば、炭酸カリウム)の存在下、式(501)で表される場合により置換されていてもよい化合物を極性非プロトン性溶媒(例えば、DMF)に溶解させ、それに、1当量の場合により置換されていてもよい適切に保護されたアルデヒド(ここで、該アルデヒドは、さらに、脱離基、好ましくは、ハロゲン化物も含んでいる)(例えば、ブロモアセトアルデヒドジメチルアセタール)を添加する。この溶液を加熱還流し、反応が完結したことを、(例えば、TLCにより)モニタリングする。この反応混合物を冷却し、式(803)で表される場合により置換されていてもよい対応する化合物を単離し、精製する。
【0093】
式(805)の調製
反応スキーム8のステップ2参照。不活性溶媒(例えば、ジクロロメタン)の中に入れた式(803)で表される場合により置換されていてもよい化合物に、約1.5モル当量のアミン塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下、約1.5モル当量のR8酸塩化物(例えば、Cl-C(O)-R8[ここで、R8は本明細書中で記述されているとおりである])を添加する。室温で撹拌しながら、4〜24時間にわたり反応させる。反応が完結したことは、例えばTLCにより、モニタリングする。式(805)で表される対応する化合物を単離し、精製する。
【0094】
式(807)の調製
反応スキーム8のステップ3参照。式(805)で表される化合物および過剰量の酢酸アンモニウムを酢酸に溶解させた溶液を、1〜4時間加熱還流する。反応が完結したことは、例えばTLCにより、モニタリングする。式(807)で表される対応する化合物を単離し、精製する。
【0095】
反応スキーム9
【化13】

【0096】
式(903)の調製
反応スキーム9のステップ1参照。式(501)で表される化合物、式R12'(CO)CH2Y[式中、Yは脱離基(好ましくは、ハロゲン化物)であり、R12'は本明細書で記述されているとおりである]で表されるα−ハロケトン試薬および約1当量の塩基(例えば、炭酸カリウム)を極性非プロトン性溶媒(例えば、DMF)に懸濁させた懸濁液を、室温で撹拌する。この反応物を水で希釈し、生じた固体(式(903)で表される化合物)は、それ以上精製することなく次のステップで使用する。
【0097】
式(905)の調製
反応スキーム9のステップ2参照。式(903)で表される化合物、約1当量のアミン塩基(例えば、トリエチルアミン)および約1当量の酸塩化物(例えば、式R8-COClで表される化合物)を有機溶媒(例えば、塩化メチレン)に溶解させた溶液を、室温で数時間撹拌する。反応が完結したことは、例えばTLCにより、モニタリングする。式(905)で表される対応する化合物を単離し、精製する。
【0098】
式(907)の調製
反応スキーム9のステップ3参照。式(905)で表される化合物および過剰量の酢酸アンモニウムを酢酸に溶解させた溶液を、Dean-Starkトラップと凝縮器を用いて加熱還流する。反応が完結したことは、例えばTLCにより、モニタリングする。式(907)で表される対応する化合物を単離し、精製する。
【0099】
R12'が保護されているアミノアルキル基を含んでいる実施形態では、該アミノ保護基を除去し得る。例えば、該アミノ基が対応するイソインドール-1,3-ジオンとして保護されている場合、式(507)で表される化合物および過剰量の無水ヒドラジンを極性プロトン性溶媒(例えば、エタノール)に溶解させた溶液を加熱還流する。その反応物を約5℃に冷却し、沈澱物は全て濾過して除去する。濾液を減圧下に濃縮し、精製して、対応する遊離アミンを得る。
【0100】
反応スキーム10
【化14】


【0101】
式(1003)の調製
反応スキーム10のステップ1参照。式(501)で表されるアミンを、場合により置換されていてもよいアルデヒド含有カルバミン酸エステルで還元的にアミノ化することにより、ウレタン中間体を得る。より詳細には、式(501)で表される化合物および1当量の適切に保護されたアルデヒド(Sekiら, Chem. Pharm. Bull. 1996, 44, 2061)をジクロロメタンに溶解させた溶液に、僅かに過剰な量の還元剤(例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム)を添加する。得られた不透明な混合物を周囲温度に維持する。反応が完結したことは、例えばTLCにより、モニタリングする。式(1003)で表される対応する化合物を単離し、精製することなく次のステップで使用する。
【0102】
式(1005)の調製
反応スキーム10のステップ2参照。式(1003)で表される化合物を極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタン)に溶解させた溶液に、強酸(例えば、トリフルオロ酢酸)を添加する。得られた溶液を周囲温度に一晩維持し、減圧下に濃縮する。残渣を単離して、式(1005)で表される化合物を得る。この化合物は、精製することなく次のステップで使用する。
【0103】
式(1007)の調製
反応スキーム10のステップ3参照。式(1005)で表される化合物を極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタン)に溶解させた溶液に、過剰量(好ましくは、約2当量)のアミン塩基(例えば、トリエチルアミン)を添加した後、約1当量または僅かに過剰量の酸塩化物を添加する。得られた溶液を周囲温度で約3時間撹拌する。反応が完結したことは、例えばTLCにより、モニタリングする。式(1007)で表される対応する化合物を単離し、精製する。
【0104】
式(1009)の調製
反応スキーム10のステップ4参照。式(1007)で表される化合物を過剰量のオキシ塩化リンに溶解させた溶液を加熱還流する。8時間経過した後、その反応混合物を周囲温度まで冷却し、減圧下に濃縮する。式(1009)で表される対応する化合物を単離し、精製する。
【0105】
反応スキーム11
【化15】

【0106】
式(1009)の調製
反応スキーム10のステップ3およびステップ4の代替として、式(1005)で表される第一級アミンのアシル化と、その後の酢酸が介在する環化を、中間体のアミドを単離することなく続けて行うことが可能であり、それにより、式(1009)で表される目的の化合物を得る。この経路は反応スキーム11に示してある。
【0107】
より詳細には、式(1005)で表される化合物を非極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタン)に溶解させた溶液に、過剰量(好ましくは、約2当量)のアミン塩基(例えば、トリエチルアミン)を添加した後、約1当量の酸塩化物を添加する。得られた溶液を周囲温度で2時間撹拌し、次いで、減圧下で蒸発させる。得られた固体を氷酢酸で処理し、次いで、得られた懸濁液を約48時間加熱還流する。この反応物を周囲温度まで冷却した後、減圧下の蒸発させる。式(1009)で表される対応する化合物を単離し、精製する。
【0108】
反応スキーム12
【化16】

【0109】
反応スキーム12参照。式(503)で表される化合物を、非極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタン)の中で、塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下に、僅かに過剰量の式R9O(CO)Clで表される化合物と反応させる。生成物である式(1203)の化合物を単離し、精製する。
【0110】
反応スキーム13
【化17】

【0111】
反応スキーム13参照。式(503)で表される化合物を、非極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタン)の中で、塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下に、僅かに過剰量のイソシアネートR11-N=C=Oで処理する。生成物である式(1303)の化合物を単離し、精製する。
【0112】
反応スキーム14
【化18】

【0113】

【0114】
反応スキーム14参照。式(501)で表される化合物の第一級アミノ基を(2-オキソ-エチル)-カルバミン酸t-ブチルエステルで還元的にアミノ化することにより、対応する第二級アミンを得る。塩化アクリロイルでアシル化した後、第三級アミドを脱保護し、塩基が介在する環化に付すことにより、所望のジアゼパノンを得る。必要に応じ、当業者にはよく知られている条件下で、該塩基性アミンをさらに官能基化することができる。
【0115】
反応スキーム15
【化19】


【0116】
反応スキーム15参照。式(501)で表される化合物の第一級アミノ基を(2-オキソ-エチル)-カルバミン酸t-ブチルエステルで還元的にアミノ化することにより、対応する第二級アミンを得る。塩化クロロピバロイルでアシル化した後、第三級アミドを脱保護し、塩基が介在する環化に付すことにより、所望のジアゼパノンを得る。必要に応じ、当業者にはよく知られている条件下で、該塩基性アミンをさらに官能基化することができる。
【0117】
反応スキーム16
【化20】

【0118】
反応スキーム16参照。式(1601)で表される化合物、0.5モル当量の場合により置換されていてもよいピペラジンまたはジアゼパム(上記で示されているとおりであり、R32は本明細書で記述されているとおりである)および過剰量の炭酸カリウムを有機溶媒(例えば、アセトニトリル)の中で混合する。反応は、窒素雰囲気下、昇温条件(例えば、100℃)下で8時間行った後、少し低い温度(例えば、60℃)で5日間行う。生成物である式(1603)の化合物を単離し、精製する。
【0119】
状況に応じ、R32がアミン保護基(例えば、Boc)である場合には、該保護基は、例えば、TFA/水の95/5混合物で処理した後、室温で1時間撹拌することにより、除去することができる。生成物である式(1603)[式中、R32は水素である]の化合物を単離および精製することができる。必要に応じ、当業者にはよく知られている条件下で、該塩基性アミンをさらに官能基化することができる。
【0120】
特定のプロセス
場合により、式Iの化合物を医薬上許容される酸または塩基と接触させて、対応する酸付加塩または塩基付加塩を形成させてもよい。
【0121】
場合により、式Iの化合物の医薬上許容される酸付加塩を塩基と接触させて、式Iで表される対応する遊離塩基を形成させてもよい。場合により、式Iの化合物の医薬上許容される塩基付加塩を酸と接触させて、式Iで表される対応する遊離酸を形成させてもよい。
【0122】
式Iで表される化合物の異性体のラセミ混合物は、クロマトグラフィーカラムに付して、(R)-エナンチオマーと(S)-エナンチオマーに分離する。
【0123】
化合物
T および T'
本発明の化合物について考察する場合、Tは、場合により置換されていてもよい低級アルキレンであるかまたは共有結合であり;および、T'は、場合により置換されていてもよい低級アルキレンであるかまたは共有結合である。一実施形態では、TおよびT'の内の一方は共有結合であり、他方は、場合により置換されていてもよい低級アルキレン(特に、場合により置換されていてもよいメチレン)である。別の実施形態では、両方とも共有結合である。
【0124】
R1
本発明の化合物について考察する場合、特定の実施形態では、R1は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルである。より特定の実施形態では、R1は、場合により置換されていてもよい低級アルキル、場合により置換されていてもよいアリール、または、場合により置換されていてもよいアラルキル(特に、場合により置換されていてもよいアラルキル)である。
【0125】
最も特定の実施形態では、R1は、エチル、プロピル、メトキシエチル、ナフチル、フェニル、ブロモフェニル、クロロフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、トリル、ジメチルフェニル、クロロフルオロフェニル、メチルクロロフェニル、エチルフェニル、フェネチル、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、ヒドロキシベンジル、ジクロロベンジル、ジメトキシベンジル、ナフチルメチル、または、(エトキシカルボニル)エチルである。より特定の実施形態では、R1は、エチル、プロピル、メトキシエチル、ナフチル、フェネチル、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、ヒドロキシベンジル、ジクロロベンジル、ジメトキシベンジル、ナフチルメチル、または、(エトキシカルボニル)エチルである。
【0126】
最も特定的には、R1は、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジルである。最も特定的には、R1はベンジルである。
【0127】
R2
本発明の化合物について考察する場合、当業者には理解されるように、本明細書中に記述されている化合物は、R2とR2'が結合している炭素において、潜在的に、キラル中心を有する。このR2基とR2'基は、同一であることもまたは異なっていることも可能であり;異なっている場合は、該化合物は、キラルである(即ち、立体中心を有する)。R2とR2'が異なっている場合、特定の実施形態では、R2'は水素であり、且つ、R2は水素以外のものである。本発明は、純粋なエナンチオマーおよびエナンチオマー混合物(ここで、エナンチオマー混合物はラセミ混合物を包含する)の使用を意図しているが、一般には、光学的に実質的に純粋なエナンチオマーを使用するのが好ましい。用語「光学的に実質的に純粋な(substantially optically pure)」または「エナンチオマー的に純粋な(enantiomerically pure)」は、少なくとも約95%の所望のエナンチオマーを有し、約1%を超える単一の不純物は含んでいないことを意味し、特には、少なくとも約97.5%のエナンチオマー過剰率を有することを意味する。特定の実施形態では、R2およびR2'が結合している立体中心はR配置である。
【0128】
一実施形態では、R2は、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキルであり、R2'は、水素、または、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキルである。より特定的には、R2'は水素であり、且つ、R2は場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキルである。最も特定の実施形態では、R2は、メチル、エチル、プロピル(特に、c-プロピルまたはi-プロピル)、ブチル(特に、t-ブチル)、メチルチオエチル、メチルチオメチル、アミノブチル、(CBZ)アミノブチル、シクロヘキシルメチル、ベンジルオキシメチル、メチルスルフィニルエチル、メチルスルフィニルメチルまたはヒドロキシメチルであり、且つ、R2'は水素である。R2'が水素であり且つR2がエチルまたはプロピル(特に、c-プロピルまたはi-プロピル)であるのが特に好ましい。より特定的には、R2はi-プロピルである。さらに好ましい実施形態では、R2とR2'が結合している立体中心はR配置である。
【0129】
別の実施形態では、R2およびR2'は、いずれも水素である。
【0130】
R4
式Iで表される化合物について考察する場合、特定の実施形態では、R4は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-(特に、場合により置換されていてもよいアリール-、または、場合により置換されていてもよいアリール-C1-C4-アルキル-)である。
【0131】
別の実施形態では、R4とR5は、それぞれ、それらが結合している炭素および窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜7員のヘテロ環を形成している。
【0132】
R2 が R7 と一緒になる場合
別の実施形態では、R2とR7は一緒になって5員〜12員の環を形成しており、ここで、該環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個または2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよく、また、該環は、場合により、以下の基の内の1つ以上で置換されていてもよい:ヒドロキシル、ハロゲン(特に、クロロまたはフルオロ)、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキル-(特に、メチル-)、C1-C4-アルコキシ(特に、メトキシ)、シアノ、アミノ、置換されているアミノ、オキソ、または、カルバミル。
【0133】
特定の実施形態では、R2とR7は一緒になって、式:
【化21】

【0134】
[式中、R41およびR41'は、独立して、水素、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、置換されているアルキル、置換されているアリール、置換されているアラルキルまたは置換されているヘテロアリールであり;mは、0、1、2または3であり;T、T'、R3およびR2'は、上記で定義されているとおりである]
で表される場合により置換されていてもよい環を形成している。より特定の実施形態では、R41は水素である。別の特定の実施形態では、R41およびR41'はいずれも水素である。例えば、国際特許出願第PCT/US03/30788号(出願2003年11月30日)を参照されたい。前記特許出願は、参照により、全ての目的に関して、本明細書に組み入れる。
【0135】
別の実施形態では、R2とR7は一緒になって、式:
【化22】

【0136】
[式中、R3、R2'、TおよびT'は、上記で定義されているとおりであり;R51およびR51'は、独立して、水素、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、置換されているアルキル、置換されているアリール、置換されているアラルキル、または、置換されているヘテロアリールであり;Uは、共有結合、CR'R''、または、NR'''であり;R'およびR''は、独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアルキルアミノ、場合により置換されていてもよいアルキル、または、場合により置換されていてもよいアルコキシであり;または、R'''は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルであるが、但し、UとT'が両方共に共有結合であることはない]
で表される場合により置換されていてもよい環を形成している。
【0137】
特定の実施形態では、R51は、水素、または、場合により置換されていてもよい低級アルキルであり;より特定的には、R51は水素である。別の実施形態では、R51'は、水素、または、場合により置換されていてもよい低級アルキルであり;より特定的には、R51'は水素である。
【0138】
一実施形態では、Uは、CR'R''であり、ここで、R'および/またはR''は水素である。別の実施形態では、Uは、NR'''であり、ここで、R'''は、水素、または、場合により置換されていてもよいアルキルである。より特定的には、R'''は、水素、または、場合により置換されていてもよいアミノ-低級アルキルである。例えば、USSN 10/626,012およびPCT/US03/22319を参照されたい。前記特許出願のそれぞれは、参照により、全ての目的に関して、本明細書に組み入れる。
【0139】
R3
本発明の化合物について考察する場合、R3は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-、-C(O)-R6、または、-S(O)2-R6aである。一実施形態では、R3は、場合により置換されていてもよいC1-C13-アルキル(特に、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキル);場合により置換されていてもよいアラルキル(特に、場合により置換されていてもよいベンジルまたはナフチルメチル-);または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルである。より特定的には、R3は、ベンジルであるかまたは以下の基の1つ以上で置換されているベンジルである:カルボキシ、アルコキシカルボニル シアノ、ハロ、C1-C4-アルキル-、C1-C4-アルコキシ、ニトロ、メチレンジオキシ、または、トリフルオロメチル。別の実施形態では、下記で記載されているように、R3は、-C(O)R6である。さらに別の実施形態では、下記で記載されているように、R3は、-SO2R6aである。
【0140】
R5
式Iで表される化合物について考察する場合、特定の実施形態では、R5は、水素、ハロゲン、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアルコキシ、ヒドロキシル-、ニトロ、シアノ、ジアルキルアミノ、アルキルスルホニル-、アルキルスルホンアミド、アルキルスルファニル-、カルボキシアルキル-、カルボキサミド、アミノカルボニル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-、または、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-である。特定の実施形態では、R5は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル-、低級-アルキル-(特に、メチル-)、低級-アルコキシ(特に、メトキシ)、」または、シアノである。
【0141】
R6
R3が-C(O)R6である本発明の化合物について考察する場合、特定の実施形態では、R6は、場合により置換されていてもよいC1-C8-アルキル、場合により置換されていてもよいアリール-C1-C4-アルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-C1-C4-アルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいアリール、R11O-、または、R12-NH-であり;R11は、場合により置換されていてもよいC1-C8-アルキル、または、場合により置換されていてもよいアリールであり;および、R12は、水素、場合により置換されていてもよいC1-C8-アルキル、または、場合により置換されていてもよいアリールである。
【0142】
特定のR6は、場合により置換されていてもよいC1-C8-アルキル、場合により置換されていてもよいアリール-C1-C4-アルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-C1-C4-アルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、または、場合により置換されていてもよいアリールである。より特定の実施形態では、R6は、
フェニル;
以下の置換基の内の1つ以上で置換されているフェニル:ハロ;C1-C4-アルキル;ヒドロキシで置換されているC1-C4-アルキル(例えば、ヒドロキシメチル);C1-C4-アルコキシ;C1-C4-アルコキシ、ハロ、ニトロ、ホルミル、カルボキシ、シアノ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アシル(例えば、アセチル)、-N-アシル(例えば、N-アセチル)若しくはトリフルオロメチルで置換されているC1-C4-アルキル;
ベンジル;
フェノキシメチル-;
ハロフェノキシメチル-;
フェニルビニル-;
ヘテロアリール-;
C1-C4-アルキルで置換されているか若しくはハロ置換C1-C4-アルキル(例えば、CF3)で置換されているヘテロアリール-;
C1-C4-アルコキシ-で置換されているC1-C4-アルキル;
または、
ベンジルオキシメチル-;
である。
【0143】
最も特定の実施形態では、R6は、フェニル、ハロフェニル、ジハロフェニル、シアノフェニル、ハロ(トリフルオロメチル)フェニル、ヒドロキシメチル-フェニル、メトキシメチルフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、カルボキシフェニル、ホルミルフェニル、エチルフェニル、トリル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル、メトキシクロロフェニル、メチルハロフェニル、トリフルオロメチルフェニル、フラニル、C1-C4-アルキルで置換されているフラニル、トリフルオロメチルフラニル、C1-C4-アルキルで置換されているトリフルオロメチルフラニル、ベンゾフラニル、チオフェニル、C1-C4-アルキルで置換されているチオフェニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアジアゾリル、ピリジニル、インドリル、メチルピリジニル、トリフルオロメチルピリジニル、ピロリル、キノリニル、ピコリニル、ピラゾリル、C1-C4-アルキルで置換されているピラゾリル、N-メチルピラゾリル、C1-C4-アルキルで置換されているN-メチルピラゾリル、C1-C4-アルキルで置換されているピラジニル、C1-C4-アルキルで置換されているイソオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、モルホリノメチル、メチルチオメチル、メトキシメチル、N-メチルイミダゾリル、または、イミダゾリルである。より特定的には、R6は、場合により置換されていてもよいフェニル(特に、トリル、ハロフェニル、メチルハロフェニル、ヒドロキシメチル-フェニル、ハロ(トリフルオロメチル)フェニル-、メチレンジオキシフェニル、ホルミルフェニルまたはシアノフェニル)である。
【0144】
より特定の実施形態では、R6がR11NH-である場合、R11は、水素、C1-C4-アルキル;シクロヘキシル;フェニル;または、ハロ、トリフルオロメチル、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ若しくはC1-C4-アルキルチオ-で置換されているフェニルである。
【0145】
最も特定の実施形態では、R6がR11NH-である場合、R11は、水素、イソプロピル、ブチル、シクロヘキシル、フェニル、ブロモフェニル、ジクロロフェニル、メトキシフェニル、エチルフェニル、トリル、トリフルオロメチルフェニル、または、メチルチオ-フェニルである。
【0146】
R6がR9O-である一実施形態では、R9は、場合により置換されていてもよいC1-C8-アルキル、または、場合により置換されていてもよいアリールである。
【0147】
R6a
一実施形態では、R3が-SO2R6aである場合、R6aは、C1-C13-アルキル;フェニル;ナフチル;ハロ、低級アルキル、低級アルコキシ、シアノ、ニトロ、メチレンジオキシ若しくはトリフルオロメチルで置換されているフェニル;ビフェニリル、または、ヘテロアリールである。より特定的には、R6aは、ハロ、低級アルキル、低級アルコキシ、シアノ、ニトロ、メチレンジオキシ若しくはトリフルオロメチルで置換されているフェニルであるか、または、ナフチルである。
【0148】
R3 が R7 と一緒になる場合
本発明の化合物について考察する場合、一実施形態では、R3は、R7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成している。
【0149】
特定の実施形態では、R3は、R7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、式:
【化23】

【0150】
[式中、
R8は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル、場合により置換されていてもよいアラルコキシ、場合により置換されていてもよいヘテロアラルコキシ、または、場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり;
および、
R12およびR12'は、独立して、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、または、場合により置換されていてもよいアラルキルである]
で表される場合により置換されていてもよいイミダゾリル環を形成している。
【0151】
より特定的には、R3がR7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよいイミダゾリル環を形成している場合、R8は、アリール(特に、フェニル)、置換されているアリール(特に、低級アルキル-、低級アルコキシ-および/またはハロで置換されているフェニル)、アラルキル(特に、ベンジルまたはフェニルビニル)、ヘテロアリール、置換されているヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アラルコキシ(特に、フェノキシ低級アルキル)、ヘテロアラルコキシ、置換されているアラルキル(特に、置換されているベンジルまたは置換されているスチレニル)、置換されているヘテロアラルキル、置換されているアラルコキシ(特に、置換されているフェノキシ低級アルキル)、または、置換されているヘテロアラルコキシである。例えば、USSN 10/435,069およびPCT/US03/14787を参照されたい。前記特許出願のそれぞれは、参照により、本明細書に組み入れる。
【0152】
別の特定の実施形態では、R3は、R7と一緒になって、式:
【化24】

【0153】
[式中、
R9は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル、場合により置換されていてもよいアラルコキシ、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルコキシであり;
および、
R10、R10'、R13およびR13'は、独立して、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、または、場合により置換されていてもよいアラルキルである]
で表される場合により置換されていてもよいイミダゾリニル環を形成している。
【0154】
R3がR7と一緒になって、場合により置換されていてもよいイミダゾリニル環を形成している場合、特定の実施形態では、R9は、アリール(特に、フェニル)、置換されているアリール(特に、低級アルキル-、低級アルコキシ-および/またはハロで置換されているフェニル)、アラルキル(特に、ベンジルまたはフェニルビニル)、ヘテロアリール、置換されているヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アラルコキシ(特に、フェノキシ低級アルキル)、ヘテロアラルコキシ、置換されているアラルキル(特に、置換されているベンジルまたは置換されているスチレニル)、置換されているヘテロアラルキル、置換されているアラルコキシ(特に、置換されているフェノキシ低級アルキル)、または、置換されているヘテロアラルコキシである。
【0155】
R3がR7と一緒になって、場合により置換されていてもよいイミダゾリニル環を形成している場合、より特定的には、R10は、水素または場合により置換されていてもよい低級アルキルであり、R10'は、水素または場合により置換されていてもよい低級アルキルである。
【0156】
別の実施形態では、R3は、R7と一緒になって、式:
【化25】

【0157】
[式中、AおよびBは、それぞれ独立して、C(R20)(R21)、N(R22)、O、または、Sであり、ここで、R20およびR21は、それぞれ独立して、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、または、場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり;R22は、H、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル、場合により置換されていてもよいアルキルカルボニル、場合により置換されていてもよいアリールカルボニル、場合により置換されていてもよいヘテロアリールカルボニル、場合により置換されていてもよいアラルキルカルボニル、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルカルボニル、場合により置換されていてもよいアルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、場合により置換されていてもよいヘテロアリールオキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルオキシカルボニルである]で表される場合により置換されていてもよいジアゼピノン環を形成している。より特定の実施形態では、該ジアゼピノン環は、以下の基の内の1つ以上でさらに置換されている:場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、および、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル。
【0158】
式Iで表される化合物のさらに別の実施形態では、AまたはBの一方は、C(R20)(R21)[ここで、R20およびR21は、それぞれ独立して、水素またはC1-C4-アルキルである]であり、AまたはBの他方は、N(R22)[ここで、R22は、H、C1-C4-アルキル、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル、C1-C6アルキルカルボニル、場合により置換されていてもよいアリールカルボニル、場合により置換されていてもよいヘテロアリールカルボニル、場合により置換されていてもよいアラルキルカルボニル、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルカルボニル、C1-C6アルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、場合により置換されていてもよいヘテロアリールオキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルオキシカルボニルであり、その際、該場合により置換されていてもよいアリール若しくはヘテロアリールの基または部分は、置換されていないか、または、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-ハロアルコキシ、アミノ、C1-C4-アルキルアミノ、ジ-C1-C4-アルキルアミノ、カルボキシ、C1-C4-アルキルカルボニルオキシ、C1-C4-アルコキシカルボニル、カルボキサミド、C1-C4-アルキルカルボキサミド、アミノカルボニル、C1-C4-アルキルアミノカルボニル、ジ-C1-C4-アルキルアミノカルボニル、シアノ、C1-C4-アルキルカルボニル、ハロゲン、ヒドロキシル、メルカプトおよびニトロから選択される1以上の置換基で置換されている]である。別の実施形態では、Aは、C(R20)(R21)[ここで、R20およびR21は、それぞれ、HまたはC1-C4-アルキルである]であり、Bは、N(R22)[ここで、R22は、H、C1-C4-アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、C1-C6アルキルカルボニル、アリールカルボニルまたはヘテロアリールカルボニルである]である。式Iで表される化合物の特定の実施形態では、AはCH2であり、Bは、N(R22)[ここで、R22は、H、メチル、ベンジルまたはアセチル(-
C(O)メチル)である]である。例えば、USSN 60/435,001を参照されたい。前記特許出願は、参照により、全ての目的に関して、本明細書に組み入れる。
【0159】
別の実施形態では、R3は、R7と一緒になって、式:
【化26】

【0160】
[式中、R31およびR32は、独立して、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルであり;および、nは、1または2である]
で表される場合により置換されていてもよいピペラジンまたはジアゼパムを形成している。より特定的には、R31は、アリール(特に、フェニル)、置換されているアリール(特に、低級アルキル-、低級アルコキシ-および/またはハロで置換されているフェニル)、アラルキル(特に、ベンジルまたはフェニルビニル)、ヘテロアラルキル、置換されているアラルキル(特に、置換されているベンジルまたは置換されているフェニルビニル)、または、置換されているヘテロアラルキルであり;R32は水素であり;および、nは1である。例えば、USSN 10/644,244およびPCT/US03/26093を参照されたい。前記特許出願のそれぞれは、参照により本明細書に組み入れる。
【0161】
R7
本発明の化合物について考察する場合、特定の実施形態では、R7は、水素、場合により置換されていてもよいC1-C13-アルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアリール-C1-C4-アルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロシクリル、または、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-C1-C4-アルキル-(特に、水素、または、場合により置換されていてもよいC1-C13-アルキル)である。
【0162】
より特定的には、R7は、水素、C1-C4-アルキル;シクロヘキシル;ヒドロキシル、C1-C4-アルコキシ若しくはC1-C4-アルキルで置換されているフェニル;ベンジル;または、R16-アルキレン-(ここで、R16は、ヒドロキシル、カルボキシ、(C1-C4-アルコキシ)カルボニル-、ジ(C1-C4-アルキル)アミノ-、(C1-C4-アルキル)アミノ-、アミノ、(C1-C4-アルコキシ)カルボニルアミノ-、C1-C4-アルコキシ-、または、場合により置換されていてもよいN-ヘテロシクリル-(特に、アゼチジニル、モルホリニル、ピリジニル、インドリル、フラニル、ピロリジニル、ピペリジニルまたはイミダゾリルであり、これらのそれぞれは、場合により置換されていてもよい)である)である。
【0163】
特定の実施形態では、R7は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル、カルボキシエチル、カルボキシメチル、メトキシエチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジエチルアミノエチル、ジエチルアミノプロピル、アミノプロピル、メチルアミノプロピル、2,2-ジメチル-3-(ジメチルアミノ)プロピル、アミノエチル、アミノブチル、アミノペンチル、アミノヘキシル、イソプロピルアミノプロピル、ジイソプロピルアミノエチル、1-メチル-4-(ジエチルアミノ)ブチル、(t-Boc)アミノプロピル、ヒドロキシフェニル、ベンジル、メトキシフェニル、メチルメトキシフェニル、ジメチルフェニル、トリル、エチルフェニル、(オキソピロリジニル)プロピル、(メトキシカルボニル)エチル、ベンジルピペリジニル、ピリジニルエチル、ピリジニルメチル、モルホリニルエチル、モルホリニルプロピル、ピペリジニル、アゼチジニルメチル、アゼチジニルエチル、アゼチジニルプロピル ピロリジニルエチル、ピロリジニルプロピル、ピペリジニルメチル、ピペリジニルエチル、イミダゾリルプロピル、イミダゾリルエチル、(エチルピロリジニル)メチル、(メチルピロリジニル)エチル、(メチルピペリジニル)プロピル、(メチルピペラジニル)プロピル、フラニルメチル、または、インドリルエチルである。
【0164】
別の実施形態では、R7は、R16-アルキレン-であり、ここで、R16は、アミノ、C1-C4-アルキルアミノ-、ジ(C1-C4-アルキル)アミノ-、C1-C4-アルコキシ-、ヒドロキシル、または、N-ヘテロシクリルである。特定的には、R16は、アミノである。特定の実施形態では、R16-アルキレン-のアルキレン部分は、1〜6個の炭素原子を有する。
【0165】
より特定的には、R7は、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチル、アミノペンチル、アミノヘキシル、メチルアミノエチル、メチルアミノプロピル、メチルアミノブチル、メチルアミノペンチル、メチルアミノヘキシル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノブチル、ジメチルアミノペンチル、ジメチルアミノヘキシル、エチルアミノエチル、エチルアミノプロピル、エチルアミノブチル、エチルアミノペンチル、エチルアミノヘキシル、ジエチルアミノエチル、ジエチルアミノプロピル、ジエチルアミノブチル、ジエチルアミノペンチル、または、ジエチルアミノヘキシルであり、最も特定的には、アミノプロピルである。
【0166】
塩形態
本発明は、式Iで表される化合物の医薬上許容される酸付加塩を包含する。本発明化合物の酸付加塩は、適切な溶媒中で、親化合物と過剰量の酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、マレイン酸、コハク酸またはメタンスルホン酸)から、標準的な方法で調製する。
【0167】
式Iで表される化合物の医薬上許容されない塩および/若しくは溶媒和物は、式Iで表される化合物の医薬上許容される塩および/若しくは溶媒和物の調製において、または、式Iで表される化合物自体の調製において、中間体として有用であり得る。式Iで表される化合物の医薬上許容されない塩および/若しくは溶媒和物は、それ自体で、本発明の別の態様を構成する。
【0168】
特定の亜属
本発明の化合物について考察する場合、特定の実施形態では、
TおよびT'は、それぞれ、共有結合であり;
Xは、-NR4-であり;
R1は、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジル(特に、ベンジル)であり;
R2'は、水素であり;
R2は、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキル(特に、ここで、R2およびR2'が結合している立体中心はR配置である)であり;
R3は、-C(O)R6であり;
R4は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-(特に、場合により置換されていてもよいアリール-、または、場合により置換されていてもよいアリール-C1-C4-アルキル-)であり;
R5は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル-、低級-アルキル-(特に、メチル-)、低級-アルコキシ(特に、メトキシ)、または、シアノであり;
R6は、場合により置換されていてもよいフェニル(特に、トリル、ハロフェニル、メチルハロフェニル、ヒドロキシメチル-フェニル、ハロ(トリフルオロメチル)フェニル-、メチレンジオキシフェニル、ホルミルフェニルまたはシアノフェニル)であり;
R7は、R16-アルキレン-であり;
および、
R16は、アミノ、C1-C4-アルキルアミノ-、ジ(C1-C4-アルキル)アミノ-、C1-C4-アルコキシ-、ヒドロキシル、または、N-ヘテロシクリルである。
【0169】
本発明の化合物について考察する場合、特定の実施形態では、
TおよびT'は、それぞれ、共有結合であり;
Xは、-NR4-であり;
R1は、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジル(特に、ベンジル)であり;
R2'は、水素であり;
R2は、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキル(特に、ここで、R2およびR2'が結合している立体中心はR配置である)であり;
R3は、-C(O)R6であり;
R4とR5は、それぞれ、それらが結合している炭素および窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜7員のヘテロ環を形成しており;
R6は、場合により置換されていてもよいフェニル(特に、トリル、ハロフェニル、メチルハロフェニル、ヒドロキシメチル-フェニル、ハロ(トリフルオロメチル)フェニル-、メチレンジオキシフェニル、ホルミルフェニルまたはシアノフェニル)であり;
R7は、R16-アルキレン-であり;
および、
R16は、アミノ、C1-C4-アルキルアミノ-、ジ(C1-C4-アルキル)アミノ-、C1-C4-アルコキシ-、ヒドロキシル、または、N-ヘテロシクリルである。
【0170】
本発明の化合物について考察する場合、特定の実施形態では、
TおよびT'は、それぞれ、共有結合であり;
Xは、Oであり;
R1は、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジル(特に、ベンジル)であり;
R2'は、水素であり;
R2は、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキル(特に、ここで、R2およびR2'が結合している立体中心はR配置である)であり;
R3は、-C(O)R6であり;
R5は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル-、低級-アルキル-(特に、メチル-)、低級-アルコキシ(特に、メトキシ)、または、シアノであり;
R6は、場合により置換されていてもよいフェニル(特に、トリル、ハロフェニル、メチルハロフェニル、ヒドロキシメチル-フェニル、ハロ(トリフルオロメチル)フェニル-、メチレンジオキシフェニル、ホルミルフェニルまたはシアノフェニル)であり;
R7は、R16-アルキレン-であり;
および、
R16は、アミノ、C1-C4-アルキルアミノ-、ジ(C1-C4-アルキル)アミノ-、C1-C4-アルコキシ-;ヒドロキシル、または、N-ヘテロシクリルである。
【0171】
本発明の化合物について考察する場合、特定の実施形態では、
TおよびT'は、それぞれ、共有結合であり;
Xは、-NR4-であり;
R1は、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジル(特に、ベンジル)であり;
R2'は、水素であり;
R2は、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキル(特に、ここで、R2およびR2'が結合している立体中心はR配置である)であり;
R3は、R7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成しており;
R4は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-(特に、場合により置換されていてもよいアリール-、または、場合により置換されていてもよいアリール-C1-C4-アルキル-)であり;
および、
R5は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル-、低級-アルキル-(特に、メチル-)、低級-アルコキシ(特に、メトキシ)、または、シアノである。
【0172】
本発明の化合物について考察する場合、特定の実施形態では、
TおよびT'は、それぞれ、共有結合であり;
Xは、-NR4-であり;
R1は、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジル(特に、ベンジル)であり;
R2'は、水素であり;
R2は、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキル(特に、ここで、R2およびR2'が結合している立体中心はR配置である)であり;
R3は、R7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成しており;
および、
R4とR5は、それぞれ、それらが結合している炭素および窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜7員のヘテロ環を形成している。
【0173】
本発明の化合物について考察する場合、特定の実施形態では、
TおよびT'は、それぞれ、共有結合であり;
Xは、Oであり;
R1は、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジル(特に、ベンジル)であり;
R2'は、水素であり;
R2は、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキル(特に、ここで、R2およびR2'が結合している立体中心はR配置である)であり;
R3は、R7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成しており;
および、
R5は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル-、低級-アルキル-(特に、メチル-)、低級-アルコキシ(特に、メトキシ)、または、シアノである。
【0174】
本発明の特定の化合物は、
N-(3-アミノ-プロピル)-N-[1-(3-ベンジル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-オキサゾール-4-イル)-2-メチル-プロピル]-4-メチル-ベンズアミド;
N-(3-アミノ-プロピル)-N-[1-(3-ベンジル-5-ブロモ-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-オキサゾール-4-イル)-2-メチル-プロピル]-4-メチル-ベンズアミド;
N-(3-アミノ-プロピル)-N-[1-(3-ベンジル-2-オキソ-1-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)-2-メチル-プロピル]-4-メチル-ベンズアミド;
N-(3-アミノ-プロピル)-N-[1-(3-ベンジル-2-オキソ-5-フェニル-2,3-ジヒドロ-オキサゾール-4-イル)-2-メチル-プロピル]-4-メチル-ベンズアミド;
および、
N-(3-アミノ-プロピル)-N-[1-(3-ベンジル-5-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-オキサゾール-4-イル)-2-メチル-プロピル]-4-メチル-ベンズアミド;
である。
【0175】
有用性、試験および投与
一般的有用性
本発明の化合物は、製造されると、有糸分裂の改変を含む種々の用途に有用である。当業者に理解されるとおり、有糸分裂は種々の方法で改変されうる。すなわち、有糸分裂経路における成分の活性を増加または減少させることにより、有糸分裂に影響を及ぼすことが可能である。言い換えれば、ある成分を阻害または活性化することにより平衡を妨げることにより、有糸分裂に影響を及ぼす(例えば、破壊する)ことが可能である。有糸分裂を改変するために、同様のアプローチを用いることが可能である。
【0176】
特定の実施形態においては、本発明の化合物は、紡錘体形成を阻害して有糸分裂における細胞周期停止の延長をもたらすために使用する。この場合の「阻害」は、紡錘体形成の軽減もしくは妨害または紡錘体の機能不全を引き起こすことを意味する。本明細書における「紡錘体形成」は、有糸分裂性キネシンによる双極性構造への微小管の組織化を意味する。本明細書における「紡錘体の機能不全」は、有糸分裂の停止および単極性紡錘体形成を意味する。
【0177】
本発明の化合物は、有糸分裂性キネシンKSPに結合させるのに、および/またはKSPの活性を阻害するのに有用である。1つの実施形態においては、KSPはヒトKSPであるが、他の生物からのKSPキネシンに結合させるために又はその活性を阻害するために該化合物を使用することが可能である。この場合、「阻害」は、紡錘体極の分離を増強または減弱して、紡錘体極の形成不良、すなわち、スプレーイング(splaying)を引き起こすこと、あるいは紡錘体の形態学的変化を引き起こすことを意味する。また、この目的において、KSPの変異体および/または断片もKSPの定義に含まれる。米国特許第6,437,115号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。本発明の化合物はKSPに対する特異性を有することが示されている。しかし、本発明は、他の有糸分裂性キネシンに結合する又はそれをモジュレートする化合物の使用を含む。
【0178】
本発明の化合物は、細胞増殖疾患を治療するために使用される。本発明において提供される化合物、組成物および方法により治療されうるそのような病態には、癌(後記で更に詳しく説明する)、自己免疫疾患、真菌性障害、関節炎、移植片拒絶、炎症性腸疾患、医学的処置(手術、血管形成術などを含むが、これらに限定されるものではない)の後で誘発される細胞増殖が含まれるが、これらに限定されるものではない。治療は細胞増殖の阻害を含む。場合によっては、細胞が異常状態でなくても治療を要することがあると理解される。1つの実施形態においては、本発明は、これらの障害または状態のいずれか1つによる切迫した異常に侵された又はさらされた細胞または個体への適用を含む。
【0179】
本発明において提供される化合物、医薬製剤および方法は、固形腫瘍、例えば皮膚癌、乳癌、脳腫瘍、子宮頚癌、精巣癌などを含む癌の治療に特に有用であると考えられる。より詳しくは、治療されうる癌には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:
心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫および奇形腫;
:気管支癌(扁平細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(肺胞細胞)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫様過誤腫、中皮腫;
胃腸:食道(小細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(管性腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、類癌腫、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、類癌腫、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);
尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルムス腫[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(小細胞癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胎生期癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);
肝臓:ヘパトーマ(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;
:骨原性肉腫(骨肉種)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫瘍軟骨腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨症)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫および巨細胞腫瘍;
神経系:頭蓋(骨腫瘍、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性膠芽腫、乏突起膠腫、シュワン細胞腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);
婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頚(子宮頚癌、腫瘍前頚部異形成)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘素性嚢胞腺癌、分類不能癌]、顆粒卵胞膜細胞腫瘍、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰(扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ぶどう状肉腫(胎児性横紋筋肉腫))、卵管(癌腫);
血液学:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄形成異常症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];
皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、異形成性母斑奇胎(moles dysplastic nevi)、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;および
副腎:神経芽細胞腫。
【0180】
本明細書中で用いる「癌の治療」は、前記状態のいずれか1つに侵された細胞を含む癌性細胞の治療を含む。したがって、本明細書に記載の「癌性細胞」なる語は、前記状態のいずれか1つに侵された細胞を含む。
【0181】
本発明のもう1つの有用な態様は、式Iの化合物、塩または溶媒和物と、該化合物、塩または溶媒和物の有効量を投与することにより細胞増殖性疾患を治療するための説明を含む添付文書または他の表示とを含有するキットである。本発明のキット中の化合物、塩または溶媒和物は、特に、細胞増殖性疾患の治療経過にわたる1以上の用量として提供され、各用量は、医薬賦形剤と式Iの化合物、塩または溶媒和とを含む医薬製剤である。
【0182】
試験
KSPモジュレーション活性のアッセイには、一般には、KSPまたは本発明化合物を、分離されたサンプル収容領域(例えば、マイクロタイタープレート、アレイなど)を有する不溶性支持体に非拡散的に結合させる。該不溶性支持体は、サンプルが結合しうる任意の組成物から構成されうるものであり、可溶性物質から容易に分離され、その他の点で、スクリーニング方法の全体に適合しうるものである。そのような支持体の表面は連続的または多孔性であることが可能であり、任意の簡便な形状を有しうる。適当な不溶性支持体の具体例には、マイクロタイタープレート、アレイ、メンブランおよびビーズが含まれる。これらは、典型的には、ガラス、プラスチック(例えば、ポリスチレン)、多糖、ナイロンまたはニトロセルロース、Teflon(商標)などから構成される。マイクロタイタープレートおよびアレイが特に簡便である。なぜなら、少量の試薬およびサンプルを使用して、多数のアッセイを同時に行いうるからである。サンプルの個々の結合方法は、それが本発明の試薬および全体的方法に適合し、サンプルの活性を維持し、非拡散性である限り、決定的には重要でない。個々の結合方法には、抗体(これは、該タンパク質が支持体に結合する際に、リガンド結合部位または活性化配列を立体的に遮断しない)の使用、「粘着性」またはイオン性支持体への直接的結合、化学的架橋、該表面上での該タンパク質または物質の合成などが含まれる。該サンプルの結合の後、過剰の未結合物質を洗浄により除去する。ついで、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインまたは他の無害なタンパク質もしくは他の部分とのインキュベーションにより、サンプル収容領域をブロッキングすることが可能である。
【0183】
本発明の化合物自体を、有糸分裂性キネシン、特にKSPの活性を阻害するために使用することが可能である。1つの実施形態においては、本発明の化合物をKSPと一緒にし、KSPの活性をアッセイする。キネシン(KSPを含む)活性は当技術分野で公知であり、1以上のキネシン活性を含む。キネシン活性は、ATP加水分解に影響を及ぼす能力、微小管結合、滑り(gliding)および重合/脱重合(微小管の動力学に影響を及ぼす)、紡錘体の他のタンパク質への結合、細胞周期制御に関与するタンパク質への結合、キナーゼまたはプロテアーゼのような他の酵素の基質としての機能、ならびに特異的キネシン細胞活性、例えば紡錘体極分離を含む。
【0184】
運動性アッセイを行うための方法は当業者に良く知られている(例えば、Hallら, (1996), Biophys. J., 71: 3467-3476, Turnerら, 1996, AnaL Biochem. 242 (1):20-5; Gittesら, 1996, Biophys. J. 70(l): 418-29; Shirakawaら, 1995, J. Exp. BioL 198: 1809-15; Winkelmannら, 1995, Biophys. J. 68: 2444-53; Winkelmannら, 1995, Biophys. J. 68: 72Sを参照されたい)。
【0185】
また、ATPアーゼ加水分解活性を測定するための当技術分野で公知の方法を用いることも可能である。適切には、溶液に基づくアッセイを用いる。米国特許第6,410,254号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)はそのようなアッセイを記載している。あるいは、通常の方法を用いる。例えば、キネシンからのPiの遊離を定量することが可能である。1つの実施形態においては、ATPアーゼ加水分解活性のアッセイは0.3M PCA(過塩素酸)およびマラカイトグリーン試薬(8.27mM モリブデン酸(II)ナトリウム、0.33mM マラカイトグリーンオキサラートおよび0.8mM Triton X-100)を使用する。該アッセイを行うためには、10μLの該反応混合物を90μLの冷0.3M PCA中でクエンチする。データがmMの遊離無機リン酸塩に変換されうるよう、リン酸標準体を使用する。すべての反応および標準体がPCA中でクエンチされたら、100μLのマラカイトグリーン試薬を例えばマイクロタイタープレート中の関連ウェルに加える。該混合物を10〜15分間現像し、該プレートを650nmの吸光度で読み取る。リン酸標準体を使用した場合には、吸光度測定値をmM Piに変換し、時間の経過と共にプロットすることが可能である。また、当技術分野において公知のATPアーゼアッセイはルシフェラーゼアッセイを含む。
【0186】
また、キネシンモータードメインのATPアーゼ活性も、物質の効果をモニターするために利用可能であり、当業者に良く知られている。1つの実施形態においては、微小管の非存在下でキネシンのATPアーゼアッセイを行う。もう1つの実施形態においては、微小管の存在下でATPアーゼアッセイを行う。前記アッセイにおいては、種々のタイプの物質を検出することが可能である。1つの実施形態においては、物質の効果は微小管およびATPの濃度に無関係である。もう1つの実施形態においては、ATP、微小管または両方の濃度を増加させることにより、キネシンATPアーゼに対する物質の効果を減少させることが可能である。さらにもう1つの実施形態においては、ATP、微小管または両方の濃度を増加させることにより、物質の効果を増加させる。
【0187】
ついで、in vitroでKSPの生化学的活性を阻害する化合物をin vivoでスクリーニングすることが可能である。in vivoスクリーニング法は、細胞周期分布、細胞生存性または紡錘体の存在、形態学、活性、分布または数のアッセイを含む。例えばフローサイトメトリーにより細胞集団の細胞周期分布をモニターするための方法が、細胞生存性を測定するための方法と同様に、当業者に良く知られている。例えば、米国特許第6,437,115号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。紡錘体形成および形成不良をモニターするための顕微鏡的方法が当業者に良く知られている。例えば、WhiteheadおよびRattner (1998), J. Cell Sci. 111:2551-61; Galgioら, (1996) J. Cell Biol., 135:399-414(それらのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。
【0188】
本発明の化合物はKSPキネシンを阻害する。阻害の尺度の1つはIC50であり、これは、対照と比較してKSPの活性を50%減少させる該化合物の濃度として定義される。好ましい化合物は約1mM未満のIC50を有し、好ましい実施形態は約100μM未満のIC50を有し、より好ましい実施形態は約10μM未満のIC50を有し、とりわけ好ましい実施形態は約1μM未満のIC50を有し、特に好ましい実施形態は約100nM未満のIC50を有し、最も好ましい実施形態は約10nM未満のIC50を有する。IC50の測定は、本明細書に記載されているようなATPアーゼアッセイを用いて行う。
【0189】
阻害のもう1つの尺度はKiである。1μM未満のIC50を有する化合物については、KiまたはKdは、本明細書に記載の化合物の、KSPとの相互作用に関する解離速度定数として定義される。好ましい化合物は約100μM未満のKiを有し、好ましい実施形態は約10μM未満のKiを有し、とりわけ好ましい実施形態は約1μM未満のKiを有し、特に好ましい実施形態は約100nM未満のKiを有し、最も好ましい実施形態は約10nM未満のKiを有する。
【0190】
化合物のKiは、以下の3つの前提およびミカエリス・メンテンの式に基づいてIC50から求められる。第1に、ただ1つの化合物分子が酵素に結合し、協同作用が存在しない。第2に、活性酵素および被検化合物の濃度が既知である(すなわち、調製物中に、有意な量の不純物も不活性形態も存在しない)。第3に、酵素-インヒビター複合体の酵素速度がゼロである。速度(すなわち、化合物濃度)データを以下の式に当てはめる:
【数1】

ここで、Vは実測速度であり、Vmaxは遊離酵素の速度であり、I0はインヒビター濃度であり、E0は酵素濃度であり、Kdは酵素-インヒビター複合体の解離定数である。
【0191】
阻害のもう1つの尺度はGI50であり、これは、細胞増殖の速度における50%の減少を引き起こす該化合物の濃度として定義される。好ましい化合物は約1mM未満のGI50を有し、約20μM未満のGI50を有する化合物がより好ましく、約10μM未満のGI50を有する化合物がより好ましく、約1μM未満のGI50を有する化合物がより好ましく、約100nM未満のGI50を有する化合物がより好ましく、約10nM未満のGI50を有する化合物がより好ましい。GI50の測定は、本明細書に記載されているような細胞増殖アッセイを用いて行う。このクラスの化合物は細胞増殖を阻害することが判明した。
【0192】
小分子インヒビターのin vitro効力は、例えば、9点希釈系列の化合物への72時間の曝露の後、生存性に関してヒト卵巣癌細胞(SKOV3)をアッセイすることにより測定する。商業的に入手可能なMTS/PMSの生物還元により形成される産物であるホルマゾンの吸光度を測定することにより、細胞生存性を測定する。用量-反応曲線上の各点を、バックグラウンド吸収(完全な殺細胞)を差し引いた72時間の時点での未処理対照細胞に対する割合(%)として算出する。
【0193】
臨床において癌の治療に成功裏に適用されている抗増殖性化合物(癌化学療法剤)は、非常に様々なGI50を有する。例えば、A549細胞において、GI50は、パクリタクセルでは4nMであり、ドキソルビシンでは63nMであり、5-フルオロウラシルでは1μMであり、ヒドロキシ尿素では500μMである(National Cancer Institute, Developmental Therapeutic Programにより提供されたデータ;http://dtp.nci.nih.gov/)。したがって、阻害を示す濃度とは無関係に細胞増殖を阻害する化合物は、潜在的な臨床的有用性を有する。
【0194】
KSPキネシンに結合する化合物に関するスクリーニング方法において本発明の化合物を使用するためには、KSPを支持体に結合させ、本発明の化合物を該アッセイに加える。あるいは、本発明の化合物を支持体に結合させ、KSPを加える。新規結合物質が探索されうる化合物のクラスには、特異的抗体、化学ライブラリーのスクリーニングにおいて同定される非天然結合物質、ペプチド類似体などが含まれる。特に関心が持たれるのは、ヒト細胞に対して低い毒性を有する候補物質に関するスクリーニングアッセイである。この目的には、標識in vitroタンパク質-タンパク質結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、タンパク質結合に関するイムノアッセイ、機能アッセイ(リン酸化アッセイなど)などを含む多種多様なアッセイを用いることが可能である。
【0195】
KSPに対する本発明の化合物の結合の測定は、多数の方法により行うことが可能である。1つの実施形態においては、該化合物を例えば蛍光または放射性部分で標識し、結合を直接的に測定する。例えば、これは、KSPの全部または一部を固体支持体に結合させ、標識試験化合物(例えば、少なくとも1つの原子が、検出可能な同位体により置換された本発明の化合物)を加え、過剰な試薬を洗い落とし、該標識の量が、該固体支持体上に存在するものであるかどうかを判定することにより行うことが可能である。
【0196】
本明細書における「標識」は、該化合物が、検出可能なシグナルを与える標識(例えば、放射性同位体、蛍光性タグ、酵素、抗体、粒子、例えば磁性粒子、化学発光性タグまたは特異的結合分子など)で直接的または間接的に標識されていることを意味する。特異的結合分子には、ビオチンとストレプトアビジン、ジゴキシンと抗ジゴキシンなどのようなペアが含まれる。特異的結合メンバーの場合には、通常、前記で概説したとおり公知方法に従い、相補的メンバーを、検出をもたらす分子で標識することになろう。該標識は、検出可能なシグナルを直接的または間接的に与えうる。
【0197】
いくつかの実施形態においては、それらの成分の1つだけを標識する。例えば、125Iを使用して又は発蛍光団で、キネシンタンパク質をチロシンの位置において標識することが可能である。あるいは、異なる標識で2以上の成分を標識する(例えば、該タンパク質には125Iを、該抗有糸分裂物質には発蛍光団を使用する)ことが可能である。
【0198】
また、本発明の化合物は、追加的な薬物候補に関してスクリーニングするための競合体として使用することも可能である。本明細書中で用いる「候補物質」または「薬物候補」または文法上同等の用語は、生物活性に関して試験される任意の分子、例えばタンパク質、オリゴペプチド、小有機分子、多糖、ポリヌクレオチドなどを意味する。それらは、細胞増殖表現型を又は細胞増殖配列(核酸配列およびタンパク質配列の両方を含む)の発現を直接的または間接的に改変する能力を有しうる。他の場合には、細胞増殖性タンパク質の結合および/または活性の改変をスクリーニングする。このタイプのスクリーニングは、微小管の存在下または非存在下で行うことが可能である。タンパク質の結合または活性をスクリーニングする場合には、特定の実施形態は、その特定のタンパク質に結合することが既知の分子(例えば、微小管のような重合構造体およびATPのようなエネルギー源)を含まない。この場合のアッセイの特定の実施形態は、内因性天然状態では細胞増殖性タンパク質に結合しない候補物質(本明細書中では「外因性」物質と称される)を含む。もう1つの実施形態においては、外因性物質は更に、KSPに対する抗体を含まない。
【0199】
候補物質は多数の化学クラスを含みうるが、典型的には、それらは、分子量100以上で約2,5000ダルトン未満を有する小有機化合物である。候補物質は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合および親油性結合に必要な官能基を含み、典型的には、少なくとも1つのアミン、カルボニル、ヒドロキシル、エーテルまたはカルボキシル基、一般には、該官能化学基の少なくとも2つを含む。該候補物質は、しばしば、前記官能基の1以上により置換された環状炭素もしくはヘテロ環構造および/または芳香族もしくはポリ芳香族構造を含む。候補物質は、ペプチド、糖、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体またはそれらの組合せを含む生体分子のなかにも見出される。
【0200】
候補物質は、合成または天然化合物のライブラリーを含む多種多様な起源から得られる。例えば、多種多様な有機化合物および生体分子のランダム合成および特異的合成のための多数の手段(ランダムオリゴヌクレオチドの発現を含む)が利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが入手可能であるか又は容易に製造される。あるいは、天然の又は合成的に製造されたライブラリーおよび化合物は、通常の化学的、物理的および生化学的手段により容易に修飾される。構造類似体を得るために、公知の薬理学的物質を特異的またはランダムな化学的修飾、例えばアシル化、アルキル化、エステル化および/またはアミド化に付すことが可能である。
【0201】
競合的スクリーニングアッセイは、第1サンプル中でKSPと薬物候補とを一緒にすることにより行うことが可能である。第2サンプルは、本発明の化合物、KSPおよび薬物候補を含む。これは、微小管の存在下または非存在下で行うことが可能である。両方のサンプルについて、薬物候補の結合を測定する。それらの2つのサンプル間の、結合における変化または相違は、KSPに結合しその活性を潜在的に阻害しうる薬物候補の存在を示す。すなわち、第2サンプルにおける薬物候補の結合が第1サンプルの場合と異なる場合には、該薬物候補はKSPに結合しうる。
【0202】
特定の実施形態においては、KSPへの候補物質の結合を、競合結合アッセイを用いて測定する。この実施形態においては、該競合体は、KSPに結合することが既知の結合部分(例えば、抗体、ペプチド、結合相手、リガンドなど)である。ある条件下、候補物質と該結合部分との間の競合的結合が生じて、該結合部分が該薬物候補に取って代わりうる。
【0203】
1つの実施形態においては、候補物質を標識する。まず、候補物質または競合体または両方を、生じうる結合を可能にするのに十分な時間にわたりKSPに加える。最適な活性を促進する任意の温度(典型的には4〜40℃)でインキュベーションを行うことが可能である。
【0204】
インキュベーション時間は、最適な活性が得られるよう選択されるが、迅速なハイスループットスクリーニングが促進されるよう最適化されうる。典型的には0.1〜1時間で十分であろう。一般には、過剰な試薬を除去し又は洗い落とす。ついで第2の成分を加え、該標識成分の存在または非存在を追跡して、結合の指標とする。
【0205】
もう1つの実施形態においては、まず、競合体を加え、ついで候補物質を加える。競合体の置換は、候補物質がKSPに結合しており従ってKSPへの結合能を有しKSPの活性を潜在的に阻害しうることを示す。この実施形態においては、いずれかの化合物が標識されうる。したがって、例えば、競合体を標識した場合には、洗浄溶液中の標識の存在は該物質による置換を示す。あるいは、候補物質を標識した場合には、支持体上の標識の存在が置換を示す。
【0206】
もう1つの実施形態においては、まず、インキュベーションおよび洗浄を行いながら候補物質を加え、ついで競合体を加える。競合体による結合の非存在は、候補物質が、より高いアフィニティーでKSPに結合することを示しうる。したがって、候補物質を標識した場合には、支持体上の標識の存在および競合体の結合の非存在は、候補物質がKSPに結合しうることを示しうる。
【0207】
前記のとおり候補物質をKSPと一緒にし、KSPの生物活性の変化を測定する工程を含む、KSPの活性を阻害しうる候補物質に関するスクリーニングにより、阻害を試験する。したがって、この実施形態においては、候補物質はKSPに結合し(ただし、これは必ずしも必要でないかもしれない)、その生物学的または生化学的活性を変化させるはずである。該方法は、前記において全般的に概説した、細胞周期分布、細胞生存性の変化に関する又は紡錘体の存在、形態学、活性、分布または量に関する細胞のin vitroスクリーニング法およびin vivoスクリーニングの両方を含む。
【0208】
あるいは、天然KSPには結合するが修飾KSPには結合し得ない薬物候補を同定するために、示差的(differential)スクリーニングを用いることが可能である。
【0209】
該アッセイにおいては、陽性対照および陰性対照を用いることが可能である。適切には、統計的に有意な結果を得るために、すべての対照および試験サンプルを少なくとも三重に試験する。すべてのサンプルのインキュベーションは、該タンパク質への該物質の結合に十分な時間にわたって行う。インキュベーション後、すべてのサンプルを洗浄して非特異的結合物質を除去し、結合しており一般的には標識された物質の量を測定する。例えば、放射能標識を使用した場合には、結合化合物の量を測定するために、シンチレーションカウンターでサンプルを計数することが可能である。
【0210】
該スクリーニングアッセイには、種々の他の試薬が含まれうる。これらには、塩、中性タンパク質、例えばアルブミン、界面活性剤などのような試薬が含まれ、これらを用いて、最適なタンパク質-タンパク質結合を促進し、および/または非特異的もしくはバックグラウンド相互作用を減少させることが可能である。また、その他の点で該アッセイの効率を改善する試薬、例えばプロテアーゼインヒビター、ヌクレアーゼインヒビター、抗微生物剤などを使用することも可能である。成分の混合物は、必要な結合をもたらす任意の順序で加えることが可能である。
【0211】
投与
したがって、本発明の化合物は細胞に投与される。本明細書における「投与」は、細胞培養内の細胞または患者における細胞への本発明の化合物の治療的有効量の投与を意味する。本明細書における「治療的有効量」は、その投与の目的である効果をもたらす用量を意味する。厳密な用量は治療の目的に左右され、公知の技術を用いて当業者により確認されうる。当技術分野で公知のとおり、全身対局所運搬、年齢、体重、全身的健康状態、性別、食事、投与時間、薬物相互作用および状態の重症度に関する調節が必要かもしれないが、通常の実験で当業者により確認されうる。本明細書における「細胞」は、有糸分裂または減数分裂が改変されうる任意の細胞を意味する。
【0212】
本発明の目的における「患者」は、ヒトならびに他の動物、特に哺乳動物および他の生物の両方を含む。したがって、該方法はヒトに対する治療および獣医学的用途の両方に適用されうる。特定の実施形態においては、患者は哺乳動物であり、より詳しくは、患者はヒトである。
【0213】
所望の薬理学的活性を有する本発明の化合物を、本明細書に記載のとおりに、特に、医薬賦形剤を含む医薬上許容される組成物として患者に投与することが可能である。投与方法に応じて、該化合物は、後記の種々の方法で製剤化することが可能である。該製剤中の治療的に活性な化合物の濃度は約0.1〜100重量%の様々な値をとりうる。
【0214】
該物質は、単独で又は他の治療(すなわち、放射線または他の化学療法剤、例えば、微小管形成に対して作用するらしいタキサンのクラスの物質、もしくはカンプトテシンのクラスのトポイソメラーゼIインンヒビター)と組合せて投与することが可能である。他の化学療法剤を使用する場合には、それを本発明の化合物の投与の前、同時または後に投与することが可能である。本発明の1つの態様においては、本発明の化合物を1以上の他の化学療法剤と共投与する。「共投与」は、本化合物および共投与化合物が患者の血流中に同時に見出されうるよう、本化合物を患者に投与することを意味し、それらの化合物が実際に投与された時点(同時を含む)には無関係である。
【0215】
本発明の化合物および組成物の投与は、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、膣内、直腸内または眼内を含む(これらに限定されるものではない)種々の方法で行うことが可能である。いくつかの場合には、例えば、創傷および炎症の治療においては、該化合物または組成物を溶液または噴霧剤として直接的に適用することが可能である。
【0216】
医薬剤形(製剤)は、式Iの化合物またはその医薬上許容される塩、溶媒和物、またはその塩の溶媒和物と、1以上の医薬賦形剤とを含む。当技術分野において公知のとおり、医薬賦形剤は、種々の剤形(例えば、錠剤、カプセル剤および液剤のような経口形態;皮膚用製剤、軟膏剤および耳用形態のような局所形態;坐剤;注射剤;呼吸用形態など)中の薬物または医薬の運搬を可能にする又は促進するように機能する副次的成分である。医薬賦形剤は、不活性成分、相乗剤または化合物(有効成分の医学的効果に実質的に寄与するもの)を含む。例えば、医薬賦形剤は、流動特性、製品均一性、安定性、風味もしくは外観を改善するよう、または用量の取扱い及び投与を容易にするよう、または使用を簡便にするよう、またはバイオアベイラビリティを制御するよう機能しうる。医薬賦形剤は一般には不活性であると記載されているが、医薬賦形剤とそれを含有する剤形との間には何らかの関係があると当技術分野においては理解されている。
【0217】
担体または希釈剤としての使用に適した医薬賦形剤は当技術分野において良く知られており、種々の製剤において使用されうる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, A. R. Gennaro編, Mack Publishing Company (1990); Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, A. R. Gennaro編, Lippincott Williams & Wilkins (2000); Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd Edition, A. H. Kibbe編, American Pharmaceutical Association, and Pharmaceutical Press (2000); およびHandbook of Pharmaceutical Additives, MichaelおよびIrene Ash,Gower編 (1995)(それらのそれぞれを、あらゆる目的で参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。
【0218】
錠剤のような経口固形剤形は、典型的には、1以上の医薬賦形剤を含み、これは、例えば、満足しうる加工および圧縮特性が得られるのを補助したり、追加的な望ましい物理的特性を錠剤に付与しうる。そのような医薬賦形剤は、希釈剤、結合剤、流動促進剤(glidant)、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、甘味剤、重合体、ろう又は他の溶解遅延物質から選ばれうる。
【0219】
静脈内投与用組成物は、一般には、静脈内用流体、すなわち、循環系により容易に運搬され同化されうる、糖、アミノ酸または電解質のような単純な化合物の無菌溶液を含む。そのような流体は注射用水USPで調製される。
【0220】
非経口投与用の剤形は、一般には、流体、特に静脈内流体、すなわち、循環系により容易に運搬され同化されうる、糖、アミノ酸または電解質のような単純な化合物の無菌溶液を含む。そのような流体は、典型的には、注射用水USPで調製される。静脈内(IV)での使用に一般に使用される流体はRemington, The Science and Practice of Pharmacy(完全な引用は既に示されている)に開示されており、以下のものが含まれる:
・アルコール、例えば5% アルコール(例えば、デキストロースおよび水(「D/W」)中のもの又は正常食塩水(「NSS」)中のD/W中のもの、例えば、5% デキストロースおよび水(「D5/W」)中のもの又はNSS中のD5/W中のもの);
・合成アミノ酸、例えばアミノシン(Aminosyn)、フレアミン(FreAmine)、トラバソール(Travasol)、例えばそれぞれ3.5または7;8.5;3.5、5.5または8.5%;
・塩化アンモニウム、例えば2.14%;
・NSS(例えば、10%)中またはD5/W(例えば、10%)中のデキストラン40;
・NSS(例えば、6%)中またはD5/W(例えば、6%)中のデキストラン70;
・デキストロース(グルコース、D5/W)、例えば2.5〜50%;
・デキストロースおよび塩化ナトリウム、例えば5〜20% デキストロースおよび0.22〜0.9% NaCl;
・乳酸化(lactated)リンゲル液(Hartmann's)、例えばNaCl 0.6%、KCl 0.03%、CaCl2 0.02%;
・ラクタート0.3%;
・マンニトール、例えば5%;これは場合により、デキストロース(例えば、10%)またはNaCl(例えば、15または20%)と組合されうる;
・種々の組合せの電解質、デキストロース、フルクトース、転化糖リンゲル液(例えば、NaCl 0.86%、KCl 0.03%、CaCl2 0.033%)を含有する多電解質溶液;
・炭酸水素ナトリウム、例えば5%;
・塩化ナトリウム、例えば0.45、0.9、3または5%;
・乳酸ナトリウム、例えば1/6M;および
・注射用の無菌水。
【0221】
当技術分野において公知のとおり、そのようなIV流体のpHは様々な値をとることが可能であり、典型的には3.5〜8である。
【0222】
本発明の化合物、医薬上許容される塩および溶媒和物は、単独で又は他の治療(すなわち、放射線または他の化学療法剤、例えば、微小管形成に対して作用するらしいタキサンのクラスの物質、もしくはカンプトテシンのクラスのトポイソメラーゼIインンヒビター)組合せて投与することが可能である。他の化学療法剤は、そのように使用される場合には、本発明の活性物質の投与の前、同時(別々の剤形によるか、一緒になった剤形によるかには無関係である)または後に投与することが可能である。
【0223】
以下の実施例は、前記の発明を使用する様態をより完全に説明するためのものである。これらの実施例は本発明の真の範囲を何ら限定するものではなく、単に例示の目的で記載されているに過ぎないと理解される。本明細書中に引用されている特許および特許出願を含む(これらに限定されるものではない)すべての刊行物を、各個の刊行物が参照により本明細書に組み入れられると具体的かつ個別に示されているのと同様に、参照により本明細書に組み入れることとする。
【実施例】
【0224】
実施例1
化合物の合成
【化27】

【0225】
N-フタロイル-DL-Val-OH(25.0g, 100mmol)および五塩化リン(22.8g, 110mmol)を無水ベンゼン(150mL)に懸濁させた懸濁液を、55℃に1時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却し、濾過により固体を除去した。有機層を減圧下に濃縮し、乾燥トルエンで2回洗浄した。残渣は、精製することなく次のステップで使用した。
【0226】
N-フタロイル-DL-バリニルクロリド(22.5g, 85mmol)と1,1,2-トリス(トリメチルシリルオキシ)エチレン(41.2g, 170mmol)の混合物を100℃で4時間撹拌した。得られた溶液を室温まで冷却し、ジオキサン(85mL)中の水性塩酸(34mL, 0.6M)の溶液で処理した。得られた混合物を、次いで、85℃に30分間加熱し、室温まで冷却した。これを、次いで、塩化ナトリウム(30g)で飽和させ、ジエチルエーテル(3×100mL)で抽出した。有機層を合して飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下に濃縮した。残渣(16g)が精製しなくても次の変換を行うのに充分なほど純水であることを確認した(1H-NMRおよびLC/MS(LRMS(MH)m/z:261.27))。
【0227】
化合物(2.61g, 10.0mmol)およびフェニル尿素(4.1g, 15.0mmol)をトルエン(30mL)に溶解させた室温の溶液に、トリフルオロ酢酸(10mL)を添加した。得られた溶液を密封し、110℃で20時間撹拌した後、室温まで冷却し、減圧下に濃縮した。残渣を酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。水相を酢酸エチル(3×80mL)で抽出した。有機層を合して硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下に濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル, ヘキサンおよび酢酸エチル)で精製して、所望の生成物(300mg)を単離し、1H-NMRおよびLC/MS(LRMS(MH)m/z:361.39)でキャラクタリゼーションを行った。
【0228】
中間体(300mg, 0.8mmol)をジオキサン(10mL)に溶解させた室温の溶液に、水素化リチウム(40mg)およびp-トルエンスルホン酸ベンジル(400mg, 1.5mmol)を順次添加した。得られた溶液を60℃に24時間加熱した。次いで、それを室温まで冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチし、水相を酢酸エチル(3×60mL)で抽出した。有機層を合して硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下に濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル, ヘキサンおよび酢酸エチル)で精製して、所望の生成物(235mg)を単離し、1H-NMRおよびLC/MS(LRMS(MH)m/z:451.52)でキャラクタリゼーションを行った。
【0229】
実施例2
イミダゾロン類を調製するための別法
【化28】

【0230】
α-ヒドロキシケトン(2.61g, 10.0mmol)とジイソプロピルエチルアミン(2.1mL, 12.0mmol)をジクロロメタン(100mL)に溶解させた溶液に、0℃で、塩化メタンスルホニル(1.26g、11.0mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解させた溶液を添加した。得られた溶液を、同一の温度で、1時間撹拌した。次いで、それを、飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチし、水相をジクロロメタン(3×60mL)で抽出した。有機層を合して硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下に濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル, ヘキサンおよび酢酸エチル+2%トリエチルアミン)で精製して、α-メシルオキシケトン(2.7g)を単離し、1H-NMRおよびLC/MS(LRMS(MH)m/z 339.36)でキャラクタリゼーションを行った。
【0231】
α-メシルオキシケトン(3.39g, 10.0mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(50mL)に溶解させた室温の溶液に、アニリン(1.2mL, 12.0mmol)を添加した。得られた溶液を100℃で20時間撹拌した。それを室温まで冷却し、減圧下に溶媒を除去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル, ジクロロメタンおよびメタノール)で精製して、所望の生成物(1.5g)を単離し、1H-NMRおよびLC/MS(LRMS(MH)m/z 336.38)でキャラクタリゼーションを行った。
【0232】
化合物(620mg, 1.8mmol)をトルエン(20mL)に溶解させた室温の溶液に、ベンジルイソシアネート(0.62mL, 4.6mmol)を添加した。得られた溶液を110℃で20時間撹拌し、室温まで冷却した。それを酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。水相を酢酸エチル(3×60mL)で抽出し、有機層を合して硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下に濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル, ヘキサンおよび酢酸エチル)で精製して、所望の生成物(500mg)を単離し、1H-NMRおよびLC/MS(LRMS(MH)m/z:451.52)でキャラクタリゼーションを行った。
【0233】
実施例3
オキサゾロン類の調製
【化29】

【0234】
アルコール(584mg, 2.34mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(2mL)に溶解させた室温の溶液に、ベンジルイソシアネート(414μL, 3.36mmol)を添加した。得られた溶液を、窒素下、100℃で2時間撹拌し、次いで、室温まで冷却した。それを酢酸エチル(50mL)で希釈し、水(4×50mL)およびブライン(50mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下に濃縮した。残留した油状物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ヘキサンおよび酢酸エチル)で精製して、所望の中間体(560mg)を単離し、1H-NMRおよびLC/MS(LRMS(MH)m/z:394.1)でキャラクタリゼーションを行った。
【0235】
上記中間体(507mg, 1.29mmol)を氷酢酸(20mL)に溶解させた溶液を8時間還流し、室温まで冷却した。得られた溶液を減圧下に濃縮して、化合物(393mg)を得た。この化合物1H-NMRおよびLC/MS(LRMS(MH)m/z:377.1)のキャラクタリゼーションに付し、精製することなく次のステップで使用した。
【0236】
オキサゾロン(413mg, 1.10mmol)をクロロホルム(5mL)に溶解させた室温の溶液に、臭素(210mg, 1.32mmol)を添加した。放出された臭化水素を自由流動性の窒素流で連続的に置き換え、得られた溶液を同一温度で1時間撹拌した。次いで、それを、ジクロロメタン(40mL)で希釈し、水(10mL)および亜硫酸水素ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下に濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ヘキサンおよび酢酸エチル)で精製して、所望の生成物(452mg)を単離し、1H-NMRおよびLC/MS(LRMS(MH)m/z:457.0)でキャラクタリゼーションを行った。
【0237】
実施例4
【化30】

【0238】
100mL容の丸底フラスコに、オキサゾロン(1.41g, 3.09mmol)、フェニルボロン酸(565mg, 4.64mmol)、酢酸パラジウム(II)(14mg, 1mol%)、2-(ジシクロヘキシル)ホスフィノビフェニル(40mg, 2mol%)およびフッ化カリウム(539mg, 9.27mmol)を添加した。そのフラスコに窒素を3回流した。トルエン(15mL)を添加し、次いで、得られた混合物を110℃で48時間撹拌し、室温まで冷却した。それを、次いで、ジエチルエーテル(30mL)で希釈し、水酸化カリウム水溶液(20mL, 1.0M)で洗浄した。水相をさらにジエチルエーテル(3×15mL)で抽出した。有機層を合して硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下に濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ヘキサンおよび酢酸エチル)で精製して、所望の生成物10(334mg)を単離し、1H-NMRおよびLC/MS(LRMS(MH)m/z:453.1)でキャラクタリゼーションを行った。
【0239】
実施例5
【化31】

【0240】
オキサゾロン(1.18g, 2.56mmol)、トリ-o-トリルホスフィン(126mg, 8mol%)、テトラメチルスズ(716μL, 5.17mmol)および酢酸パラジウム(II)(12mg, 2mol%)を含んでいる厚壁ガラス管に、N,N-ジメチルホルムアミド(5mL)およびトリエチルアミン(1.1mL, 7.76mmol)を添加した。得られた溶液を窒素でパージした。該ガラス管を素早く密封し、115℃に18時間加熱した。それを、次いで、室温まで冷却し、酢酸エチル(75mL)で希釈し、水(5×50mL)およびブライン(50mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下に濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ヘキサンおよび酢酸エチル)で精製して、所望の生成物11(653mg)を単離し、1H-NMRおよびLC/MS(LRMS(MH)m/z:391.1)でキャラクタリゼーションを行った。
【0241】
実施例6
イミダゾロン誘導体の調製
【化32】

【0242】
化合物(520mg, 1.0mmol)をエタノール(6mL)に溶解させた室温の溶液に、ヒドラジンをテトラヒドロフランに溶解させた溶液(10mL, 1M)を添加した。得られた溶液を55℃で20時間撹拌し、次いで、室温まで冷却した。減圧下に溶媒を除去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル, ジクロロメタンおよびメタノール)で精製して、所望の遊離アミン12(140mg)を単離し、1H-NMRおよびLC/MS(LRMS(MH)m/z:321.42)でキャラクタリゼーションを行った。
【0243】
遊離アミン12(400mg, 1.23mmol)をジクロロメタン(15mL)に溶解させた室温の溶液に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(313mg, 1.48mmol)およびアルデヒド13(277mg, 1.60mmol)を順次添加した。得られた混合物を、窒素下、同一温度で12時間撹拌した。それを、次いで、飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチし、水相をジクロロメタン(3×60mL)で抽出した。有機層を合して硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下に濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル, ジクロロメタン/メタノール)で精製して、所望の生成物14(452mg)を単離し、LC/MS(LRMS(MH)m/z 478.63)でキャラクタリゼーションを行った。
【0244】
イミダゾロン14(452mg, 0.95mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解させた溶液に、0℃で、ジイソプロピルエチルアミン(1.0mL)および塩化p-トルオイル(156mg, 1.0mmol)を順次添加した。得られた溶液を、窒素下、室温で一晩撹拌した。それを飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチし、水相を酢酸エチル(4×50mL)で抽出した。有機層を合して硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下に濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ジクロロメタンおよびメタノール)で精製して、所望の生成物15(306mg)を単離し、1H-NMRおよびLC/MS(LRMS(MH)m/z:596.76)でキャラクタリゼーションを行った。
【0245】
イミダゾロン15(306mg, 0.51mmol)をジクロロメタン(12mL)に溶解させた溶液に、0℃で、トリフルオロ酢酸(4mL)を添加した。得られた溶液を室温で2時間撹拌し、減圧下に濃縮した。残渣を高真空下で1時間乾燥させ、酢酸エチル(25mL)に溶解させた。得られた溶液を、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水相を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。有機層を合して硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下に濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, メタノール/ジクロロメタン)で精製して、所望の生成物16(208mg)を単離し、1H-NMRおよびLC/MS分析(LRMS(MH)m/z: 496.64)でキャラクタリゼーションを行った。
【0246】
実施例7
上記の手順にしたがって、下記の化合物を調製した。
【表1】



【0247】
実施例8:
KSPインヒビターの適用後の単極性紡錘体形成
ヒト腫瘍細胞Skov-3(卵巣)を96ウェルプレート内で4,000細胞/ウェルの密度でプレーティングし、24時間付着させ、種々の濃度の本発明の化合物で24時間処理した。細胞を4% ホルムアルデヒド中で固定し、抗チューブリン抗体(後に蛍光標識二次抗体を使用して認識される)およびヘキスト(Hoechst)染料(これはDNAを染色する)で染色した。
【0248】
目視検査は、該化合物が有糸分裂の前中期において細胞周期停止を引き起こすことを示した。DNAは凝縮しており、紡錘体形成が開始していたが、停止細胞は一様に単極性紡錘体を示した。このことは、紡錘極体の分離の阻害が生じたことを示している。また、抗KSP抗体のマイクロインジェクションは有糸分裂の停止を引き起こし、停止細胞は単極性紡錘体を示す。
【0249】
実施例9:
腫瘍細胞系における細胞増殖の阻害
細胞を96ウェルプレートの1ウェル当たり1000〜2500細胞の密度で96ウェルプレート内でプレーティングし、24時間付着/成長させた。ついでそれを種々の濃度の薬物で48時間処理した。化合物を加えた時点をToとした。試薬3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム (MTS)を使用する、テトラゾリウムに基づくアッセイ(I.S> Patent No. 5,185,450)(Promega製品カタログ#G3580, CeIlTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay)を用いて、Toにおける生細胞の数および48時間の化合物の曝露の後に残存する細胞の数を測定した。48時間後に残存する細胞の数を薬物添加時の生細胞の数と比較して、成長阻害を評価した。
【0250】
ビヒクル(0.25% DMSO)のみで処理された対照ウェルにおける細胞の48時間にわたる成長を成長率100%とし、化合物を含有するウェルにおける細胞の成長をこれと比較する。KSPインヒビターはヒト卵巣腫瘍細胞系(SKOV-3)における細胞増殖を阻害した。
【0251】
処理ウェルにおける細胞成長の細胞成長率(%)に対してμM単位の化合物濃度をプロットすることにより、Gi50を求めた。該化合物に関して求めるGi50は、対照と比較して成長が50%阻害される推定濃度、すなわち、
100×[(処理48 - T0) / (対照48 - T0)] = 50
となる濃度である。
【0252】
化合物の全濃度を二重に試験し、対照を12ウェルにわたり平均する。非常に類似した96ウェルプレートのレイアウトおよびGi50計算スキームがNational Cancer Instituteにより用いられている(Monksら, J. NatI. Cancer Inst. 83:757-766 (1991)を参照されたい)。しかし、National Cancer Instituteが細胞数を定量するために用いている方法はMTSを使用せずに別の方法を用いるものである。
【0253】
実施例10:
IC50の計算:
KSP活性に関する化合物のIC50の測定においてはATPアーゼアッセイを用いる。以下の溶液を使用する。溶液1は3 mM ホスホエノールピルビン酸カリウム塩(Sigma P-7127)、2 mM ATP(Sigma A-3377)、1 mM IDTT(Sigma D-9779)、5μM パクリタクセル(Sigma T-7402)、10 ppm 消泡剤289(Sigma A-8436)、25 mM Pipes/KOH pH 6.8(Sigma P6757)、2 mM MgC12(VWR JT400301)および1 mM EGTA(Sigma E3889)よりなる。溶液2は1 mM NADH(Sigma N8129)、0.2 mg/ml BSA(Sigma A7906)、ピルビン酸キナーゼ 7U/ml、L-乳酸デヒドロゲナーゼ 10 U/ml(Sigma P0294)、100 nM KSPモータードメイン、50μg/ml 微小管、1 mM DTT(Sigma D9779)、5μM パクリタクセル(Sigma T-7402)、10 ppm 消泡剤289(Sigma A-8436)、25 mM Pipes/KOH pH 6.8(Sigma P6757)、2 mM MgC12(VWR JT4003-01)および1 mM EGTA(Sigma E3889)よりなる。溶液1を使用して該組成物の系列希釈(8〜12回の2倍希釈)を96ウェルマイクロタイタープレート(Corning Costar 3695)内で行う。系列希釈後、各ウェルは50μlの溶液1を含有する。50μlの溶液2を各ウェルに加えることにより、該反応を開始させる。これは、手動によりマルチチャンネルピペッターで又は自動液体取扱い装置で行うことが可能である。ついで該マイクロタイタープレートをマイクロプレート吸光度測定器に移し、340nmでの複数の吸光度測定を各ウェルについて動的(kinetic)モードで行う。ついで実測変化率(これはATPアーゼ率に比例する)を該化合物濃度の関数としてプロットする。標準IC50の測定のために、非線形フィッティングプログラム(例えば、Grafit 4)を使用して、得られたデータを以下の4パラメーター式にフィットさせる:
【数2】

(式中、yは実測率であり、xは化合物濃度である)。
【0254】
このクラスの他の化合物は、GI50値は多様ではあるが、細胞増殖を阻害することが見いだされた。被験化合物のGI50値は、200nMから試験した最高濃度を超える値までの範囲に及んだ。これは、KSP活性を阻害する化合物の大部分が、一部については試験を行った最高濃度(一般に、約20μM)で細胞の増殖を生化学的に阻害したが、細胞成長の阻害は50%未満であったことを意味している。該化合物の多くは、10μM未満のGI50値を示し、一部の化合物は、1μM未満のGI50値を示す。癌を治療するために臨床で使用されて成功を収めてきた抗増殖性化合物(癌化学療法薬)は、極めて様々なGI50値を示す。例えば、A549細胞においては、パクリタキセルのGI50は4nMであり、ドキソルビシンのGI50は63nMであり、5-フルオロウラシルのGI50は1μMであり、ヒドロキシ尿素のGI50は500μMである(これらのデータの提供元は以下のとおりである:National Cancer Institute, Developmental Therapeutic Program, http://dtp.nci.nih.gov/)。従って、実質的にどのような濃度で細胞の増殖を阻害する化合物であっても、有用であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
TおよびT'は、独立して、共有結合であるか、または、場合により置換されていてもよい低級アルキレンであり;
Xは、Oまたは-NR4であり;
R1は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-であり;
R2およびR2'は、独立して、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、若しくは、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルであるか;または、R2とR2'は、一緒になって、場合により置換されていてもよい3員〜7員の環(ここで、該環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい)を形成しており;
R3は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-、-C(O)-R6、または、-S(O)2-R6aであり;
R4は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、若しくは、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-であり;且つ、R5は、水素、ハロゲン、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、若しくは、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-であるか;または、R4とR5は、それぞれ、それらが結合している炭素および窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜7員の環を形成しており;
R6は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル、R9O-、または、R11-NH-であり;
R6aは、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアルキルアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいアルキルヘテロアリール、または、R11-NH-であり;
R7は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、若しくは、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルであるか;
または、R7は、R3およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成しているか;
または、R7は、R2と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成しており;
R9は、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルであり;
R11は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキルである]
で表される群から選択される化合物;
式Iの化合物の医薬上許容される塩;
式Iの化合物の医薬上許容される溶媒和物;
または、
式Iの化合物の医薬上許容される塩の医薬上許容される溶媒和物。
【請求項2】
以下の1つ以上を満足する、請求項1に記載の化合物:
TおよびT'の内の一方は共有結合であり、他方は、共有結合または場合により置換されていてもよい低級アルキレンである;
R1は、場合により置換されていてもよい低級アルキル、場合により置換されていてもよいアリール、または、場合により置換されていてもよいアラルキルである;
R2は、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキルである;
R2'は、水素、または、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキルである;
R3は、-C(O)R6である;
R4は、場合により置換されていてもよいアリール-、または、場合により置換されていてもよいアリール-C1-C4-アルキル-である;
R5は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル-、低級-アルキル-、低級-アルコキシ、または、シアノである;
R6は、場合により置換されていてもよいC1-C8-アルキル、場合により置換されていてもよいアリール-C1-C4-アルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-C1-C4-アルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいアリール、R11O-、または、R12-NH-である;
R11は、場合により置換されていてもよいC1-C8-アルキル、または、場合により置換されていてもよいアリールである;
R12は、水素、場合により置換されていてもよいC1-C8-アルキル、または、場合により置換されていてもよいアリールである;
および、
R7は、水素、場合により置換されていてもよいC1-C13-アルキル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアリール-C1-C4-アルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロシクリル、または、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-C1-C4-アルキル-である。
【請求項3】
以下の1つ以上を満足する、請求項2に記載の化合物:
TおよびT'は、それぞれ、共有結合である;
R1は、エチル、プロピル、メトキシエチル、ナフチル、フェニル、ブロモフェニル、クロロフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、トリル、ジメチルフェニル、クロロフルオロフェニル、メチルクロロフェニル、エチルフェニル、フェネチル、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、ヒドロキシベンジル、ジクロロベンジル、ジメトキシベンジル、ナフチルメチル、または、(エトキシカルボニル)エチルである;
R2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メチルチオエチル、メチルチオメチル、アミノブチル、(CBZ)アミノブチル、シクロヘキシルメチル、ベンジルオキシメチル、メチルスルフィニルエチル、メチルスルフィニルメチル、または、ヒドロキシメチルである;
R2'は、水素である;
R6は、場合により置換されていてもよいC1-C8-アルキル、場合により置換されていてもよいアリール-C1-C4-アルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-C1-C4-アルキル-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、または、場合により置換されていてもよいアリールである;
および、
R7は、水素、C1-C4-アルキル;シクロヘキシル;ヒドロキシル、C1-C4-アルコキシ若しくはC1-C4-アルキルで置換されているフェニル;ベンジル;または、R16-アルキレン-(ここで、R16は、ヒドロキシル、カルボキシ、(C1-C4-アルコキシ)カルボニル-、ジ(C1-C4-アルキル)アミノ-、(C1-C4-アルキル)アミノ-、アミノ、(C1-C4-アルコキシ)カルボニルアミノ-、C1-C4-アルコキシ-若しくは場合により置換されていてもよいN-ヘテロシクリル-である)である。
【請求項4】
以下の1つ以上を満足する、請求項3に記載の化合物:
R1は、エチル、プロピル、メトキシエチル、ナフチル、フェネチル、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、ヒドロキシベンジル、ジクロロベンジル、ジメトキシベンジル、ナフチルメチル、または、(エトキシカルボニル)エチルである;
R2は、エチルまたはプロピルである;
R6は、場合により置換されていてもよいフェニルである;
および、
R7は、R16-アルキレン-(ここで、R16は、アミノ、C1-C4-アルキルアミノ-、ジ(C1-C4-アルキル)アミノ-、C1-C4-アルコキシ-、ヒドロキシル若しくはN-ヘテロシクリルである)である。
【請求項5】
以下の1つ以上を満足する、請求項4に記載の化合物:
R1は、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジルである;
R2は、i-プロピルである;
および、
R7は、R16-アルキレン-(ここで、R16はアミノである)である。
【請求項6】
R1がベンジルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
以下の1つ以上を満足する、請求項1に記載の化合物:
TおよびT'の内の一方は共有結合であり、他方は、共有結合または場合により置換されていてもよい低級アルキレンである;
R1は、場合により置換されていてもよい低級アルキル、場合により置換されていてもよいアリール、または、場合により置換されていてもよいアラルキルである;
R2は、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキルである;
R2'は、水素、または、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキルである;
R3は、R7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成している;
および、
R5は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル-、低級-アルキル-、低級-アルコキシ、または、シアノである。
【請求項8】
以下の1つ以上を満足する、請求項7に記載の化合物:
TおよびT'は、それぞれ、共有結合である;
R1は、エチル、プロピル、メトキシエチル、ナフチル、フェニル、ブロモフェニル、クロロフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、トリル、ジメチルフェニル、クロロフルオロフェニル、メチルクロロフェニル、エチルフェニル、フェネチル、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、ヒドロキシベンジル、ジクロロベンジル、ジメトキシベンジル、ナフチルメチル、または、(エトキシカルボニル)エチルである;
R2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メチルチオエチル、メチルチオメチル、アミノブチル、(CBZ)アミノブチル、シクロヘキシルメチル、ベンジルオキシメチル、メチルスルフィニルエチル、メチルスルフィニルメチル、または、ヒドロキシメチルである;
R2'は、水素である;
および、
R3は、R7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよいイミダゾリル環を形成している。
【請求項9】
以下の1つ以上を満足する、請求項7に記載の化合物:
TおよびT'は、それぞれ、共有結合である;
R1は、エチル、プロピル、メトキシエチル、ナフチル、フェニル、ブロモフェニル、クロロフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、トリル、ジメチルフェニル、クロロフルオロフェニル、メチルクロロフェニル、エチルフェニル、フェネチル、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、ヒドロキシベンジル、ジクロロベンジル、ジメトキシベンジル、ナフチルメチル、または、(エトキシカルボニル)エチルである;
R2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メチルチオエチル、メチルチオメチル、アミノブチル、(CBZ)アミノブチル、シクロヘキシルメチル、ベンジルオキシメチル、メチルスルフィニルエチル、メチルスルフィニルメチル、または、ヒドロキシメチルである;
R2'は、水素である;
および、
R3は、R7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよいイミダゾリニル環を形成している。
【請求項10】
以下の1つ以上を満足する、請求項7に記載の化合物:
TおよびT'は、それぞれ、共有結合である;
R1は、エチル、プロピル、メトキシエチル、ナフチル、フェニル、ブロモフェニル、クロロフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、トリル、ジメチルフェニル、クロロフルオロフェニル、メチルクロロフェニル、エチルフェニル、フェネチル、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、ヒドロキシベンジル、ジクロロベンジル、ジメトキシベンジル、ナフチルメチル、または、(エトキシカルボニル)エチルである;
R2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メチルチオエチル、メチルチオメチル、アミノブチル、(CBZ)アミノブチル、シクロヘキシルメチル、ベンジルオキシメチル、メチルスルフィニルエチル、メチルスルフィニルメチル、または、ヒドロキシメチルである;
R2'は、水素である;
および、
R3は、R7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよいジアゼピノン環を形成している。
【請求項11】
以下の1つ以上を満足する、請求項7に記載の化合物:
TおよびT'は、それぞれ、共有結合である;
R1は、エチル、プロピル、メトキシエチル、ナフチル、フェニル、ブロモフェニル、クロロフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、トリル、ジメチルフェニル、クロロフルオロフェニル、メチルクロロフェニル、エチルフェニル、フェネチル、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、ヒドロキシベンジル、ジクロロベンジル、ジメトキシベンジル、ナフチルメチル、または、(エトキシカルボニル)エチルである;
R2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メチルチオエチル、メチルチオメチル、アミノブチル、(CBZ)アミノブチル、シクロヘキシルメチル、ベンジルオキシメチル、メチルスルフィニルエチル、メチルスルフィニルメチル、または、ヒドロキシメチルである;
R2'は、水素である;
および、
R3は、R7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよいピペラジン環またはジアゼパム環を形成している。
【請求項12】
以下の1つ以上を満足する、請求項7〜11のいずれか1項に記載の化合物:
R1は、エチル、プロピル、メトキシエチル、ナフチル、フェネチル、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、ヒドロキシベンジル、ジクロロベンジル、ジメトキシベンジル、ナフチルメチル、または、(エトキシカルボニル)エチルである;
および、
R2は、エチルまたはプロピルである。
【請求項13】
以下の1つ以上を満足する、請求項12に記載の化合物:
R1は、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジルである;
および、
R2は、i-プロピルである。
【請求項14】
R1がベンジルである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
TおよびT'が、それぞれ、共有結合であり;
Xが、-NR4-であり;
R1が、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジルであり;
R2'が、水素であり;
R2が、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキルであり;
R3が、-C(O)R6であり;
R4が、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-であり;
R5が、水素、ハロゲン、ヒドロキシル-、低級-アルキル-、低級-アルコキシ、または、シアノであり;
R6が、場合により置換されていてもよいフェニルであり;
R7が、R16-アルキレン-であり;
R16が、アミノ、C1-C4-アルキルアミノ-、ジ(C1-C4-アルキル)アミノ-、C1-C4-アルコキシ-、ヒドロキシル、または、N-ヘテロシクリルである;
請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
TおよびT'が、それぞれ、共有結合であり;
Xが、-NR4-であり;
R1が、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジルであり;
R2'が、水素であり;
R2が、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキルであり;
R3が、-C(O)R6であり;
R4とR5が、それぞれ、それらが結合している炭素および窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜7員のヘテロ環を形成しており;
R6が、場合により置換されていてもよいフェニルであり;
R7が、R16-アルキレン-であり;
R16が、アミノ、C1-C4-アルキルアミノ-、ジ(C1-C4-アルキル)アミノ-、C1-C4-アルコキシ-、ヒドロキシル、または、N-ヘテロシクリルである;
請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
TおよびT'が、それぞれ、共有結合であり;
Xが、Oであり;
R1が、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジルであり;
R2'が、水素であり;
R2が、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキルであり;
R3が、-C(O)R6であり;
R5が、水素、ハロゲン、ヒドロキシル-、低級-アルキル-、低級-アルコキシ、または、シアノであり;
R6が、場合により置換されていてもよいフェニルであり;
R7が、R16-アルキレン-であり;
R16が、アミノ、C1-C4-アルキルアミノ-、ジ(C1-C4-アルキル)アミノ-、C1-C4-アルコキシ-、ヒドロキシル、または、N-ヘテロシクリルである;
請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
TおよびT'が、それぞれ、共有結合であり;
Xが、-NR4-であり;
R1が、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジルであり;
R2'が、水素であり;
R2が、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキルであり;
R3が、R7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成しており;
R4は、水素、場合により置換されていてもよいアルキル-、場合により置換されていてもよいアリール-、場合により置換されていてもよいヘテロアリール-、場合により置換されていてもよいアラルキル-、または、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル-であり;
R5は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル-、低級-アルキル-、低級-アルコキシ、または、シアノである;
請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
TおよびT'が、それぞれ、共有結合であり;
Xが、-NR4-であり;
R1が、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジルであり;
R2'が、水素であり;
R2が、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキルであり;
R3が、R7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成しており;
R4とR5が、それぞれ、それらが結合している炭素および窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜7員のヘテロ環を形成している;
請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
TおよびT'が、それぞれ、共有結合であり;
Xが、Oであり;
R1が、ベンジル、クロロベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、シアノベンジル、または、ヒドロキシベンジルであり;
R2'が、水素であり;
R2が、場合により置換されていてもよいC1-C4-アルキルであり;
R3が、R7およびそれらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5員〜12員の窒素含有ヘテロ環(ここで、該ヘテロ環は、場合により、N、OおよびSから選択される1個若しくは2個の付加的なヘテロ原子をヘテロ環中に含んでいてもよい)を形成しており;
R5が、水素、ハロゲン、ヒドロキシル-、低級-アルキル-、低級-アルコキシ、または、シアノである;
請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
N-(3-アミノ-プロピル)-N-[1-(3-ベンジル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-オキサゾール-4-イル)-2-メチル-プロピル]-4-メチル-ベンズアミド;
N-(3-アミノ-プロピル)-N-[1-(3-ベンジル-5-ブロモ-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-オキサゾール-4-イル)-2-メチル-プロピル]-4-メチル-ベンズアミド;
N-(3-アミノ-プロピル)-N-[1-(3-ベンジル-2-オキソ-1-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)-2-メチル-プロピル]-4-メチル-ベンズアミド;
N-(3-アミノ-プロピル)-N-[1-(3-ベンジル-2-オキソ-5-フェニル-2,3-ジヒドロ-オキサゾール-4-イル)-2-メチル-プロピル]-4-メチル-ベンズアミド;
または、
N-(3-アミノ-プロピル)-N-[1-(3-ベンジル-5-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-オキサゾール-4-イル)-2-メチル-プロピル]-4-メチル-ベンズアミド;
である、請求項1に記載の化合物、または、その医薬上許容される塩、その医薬上許容される溶媒和物若しくはその医薬上許容される塩の医薬上許容される溶媒和物。
【請求項22】
R2およびR2'が結合している立体中心がR配置を有する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
医薬賦形剤および請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物またはその塩若しくは溶媒和物を含む組成物。
【請求項24】
式Iの化合物またはその医薬塩若しくは溶媒和物以外の化学療法薬をさらに含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記化学療法薬が、タキサン、ビンカアルカロイドまたはトポイソメラーゼI阻害薬である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
KSPキネシン活性をモジュレートする方法であって、該キネシンを、有効量の請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項27】
KSPを阻害する方法であって、該キネシンを、有効量の請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項28】
細胞増殖性疾患を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項29】
細胞増殖性疾患を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、請求項23〜25のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項30】
前記疾患が、癌、過形成、再狭窄、心肥大、免疫障害および炎症から選択される、請求項28または請求項29に記載の方法。
【請求項31】
細胞増殖性疾患を治療するための医薬の製造における、請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩若しくは溶媒和物の使用。
【請求項32】
KSPキネシン活性に関連する障害を治療するための医薬を製造するための、請求項31に記載の使用。

【公表番号】特表2007−500213(P2007−500213A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532551(P2006−532551)
【出願日】平成16年5月5日(2004.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/013761
【国際公開番号】WO2004/100873
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(501327514)サイトキネティクス・インコーポレーテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】Cytokinetics Incorporated
【Fターム(参考)】