説明

化合物、組成物および方法

【課題】うっ血性心不全などの収縮期心不全を治療するための化合物、医薬製剤および治療法の提供。
【解決手段】4-[4-クロロ-3-(5-フェニル-[1,3,4]チアジアゾール-2-イルカルバモイル)-ベンゼンスルホニル]-ピペラジン-1-カルボン酸エチルエステル、4-[4-クロロ-3-(1H-イミダゾール-2-イルカルバモイル)-ベンゼンスルホニル]-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル、2-クロロ-5-[4-(N-シクロペンチル-N’-シアノ-カルバミミドイル)-ピペラジン-1-スルホニル]-N-(1H-イミダゾール-2-イル)-ベンズアミド等の置換スルホンアミド誘導体は、心臓ミオシンを増強することで心臓筋節を選択的にモジュレートし、うっ血性心不全などの収縮期心不全の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は置換スルホンアミド誘導体に関し、詳細には心臓筋節を選択的にモジュレートする化合物、具体的にはうっ血性心不全などの収縮期心不全を治療するための化合物、医薬製剤および治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓筋節
「筋節」は、互いに入り込んだ細いフィラメントと太いフィラメントからできている心筋や骨格筋に見られる見事に組織化された細胞構造であり、心臓の細胞容積の60%近くを占める。太いフィラメントは「ミオシン」から成っており、ミオシンは化学エネルギー(ATP加水分解)を力や有向運動に変換する役割を担っているタンパク質である。ミオシンおよびその機能的に類似しているいとこ分子は、運動タンパク質と呼ばれる。細いフィラメントはタンパク質複合体からできている。このタンパク質の1つが「アクチン」(フィラメント状ポリマー)であり、ミオシンが力発生の際に引っ張る基体である。アクチンに結合しているのが1組の調節タンパク質「トロポニン複合体」と「トロポミオシン」であり、これらによってアクチン−ミオシン相互作用が細胞内Ca2+濃度の変化によって決まるようになっている。心臓の鼓動毎にCa2+濃度は上昇および下降をし、心筋収縮次いで心筋弛緩を開始させる(Robbins J and Leinwand LA. (1999) Molecular Basis of Cardiovascular Disease, Chapter 8. editor Chien, K.R., W.B. Saunders, Philadelphia)。筋節の各構成要素はその収縮応答に寄与している。
【0003】
全ての運動タンパク質の中でもミオシンは最も広く研究されている。ヒト細胞において明確に区別されるミオシンの13クラスの中でも、ミオシン-IIのクラスは、骨格筋、心筋、および平滑筋の収縮で役割を演じる。このクラスのミオシンは、他の12の明確に区別されるクラスのミオシンとは、アミノ酸組成および全体構造が大きく異なる(Goodson HV and Spudich JA. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:659-663)。ミオシン-IIは、長いα−ヘリカル・コイルド−コイルド・テイル(alpha-helical coiled-coiled tail)によって一緒に連結されている2つの球状ヘッドドメイン(globular head domains)から成り、他のミオシンIIと集まって筋節の太いフィラメントのコア部を形成している。球状ヘッド部は触媒ドメインをもっており、ここでミオシンのアクチン結合およびATP作用が起る。アクチンフィラメントに結合すると、リン酸の放出(参考:ATP→ADP)により触媒ドメインの構造的配置の変化が起り、これにより次いで球状ヘッド部から延びている軽鎖結合レバー・アーム・ドメイン(light-chain binding lever arm domain)の方向が変わる。この運動はパワーストロークと呼ばれる。このアクチンと関連したミオシンヘッド部の方向変化により、ミオシンが一部となっている太いフィラメントが、ミオシンが結合している細いアクチンフィラメントに対して動かされる(Spudich JA. (2001) Nat Rev Mol Cell Biol. 2(5):387-92)。触媒ドメインおよび軽鎖がその最初の配置/方向に戻ることと合わさった球状ヘッド部のアクチンフィラメントからの結合解除(これもCa2+によりモジュレートされている)により、収縮と拡張のサイクルが完結する。
【0004】
哺乳動物の心筋は心臓ミオシンの2つの形態アルファとベータからなり、これらは十分にキャラクタリゼーションされている(上記Robbins)。ベータ体が、成人ヒト心筋では圧倒的に多い形態である( > 90パーセント)。いずれもヒトの心不全状態では転写レベルと翻訳レベルの両方でレギュレート(調節)されていることが確認されており(Miyata、上記)、心不全ではアルファ体がダウンレギュレートされている。
【0005】
全てのヒト骨格筋、心筋、および平滑筋のミオシンの配列は決定されている。ヒト心筋アルファミオシンおよびベータミオシンは非常に似ている(93%同一)が、それらはいずれもヒト平滑筋とはかなり異なり(42%同一)、骨格ミオシンにより近く似ている(80%同一)。都合の良いことに心筋ミオシンは、哺乳動物の種を通して信じられないくらいに保存されている。例えば、アルファ心筋ミオシンとベータ心筋ミオシンは両方とも、ヒトとラット間で>96%保存されており、利用可能なブタ心筋ベータミオシンの250個残基配列は対応するヒト心筋ベータミオシン配列と比較した場合100%保存されている。このような配列保存は、心不全の動物系モデルでの、ミオシンベースの治療薬の研究の予測能に寄与する。
【0006】
この心筋節の構成要素は心不全の治療の標的を提供するもので、例えば収縮能を高めるか、または、完全弛緩を促進することによって、それぞれ収縮期機能および拡張期機能をモジュレートする。
【0007】
心不全
うっ血性心不全(「CHF」)は特定の疾患ではなく、むしろ、全て、心拍出量の増大による心臓の激しい動きに心臓が適切に応答できなくなったことで起る徴候および症状の総称である。CHFについての優勢な病態生理は、収縮期機能障害、すなわち心臓収縮能の損傷(その結果、各心臓鼓動毎に吐出される血液の量が減る)である。心室腔の代償性拡張を伴う収縮期機能障害の結果、心不全の最も一般的な病態である「拡張型心筋症」になり、これは多くの場合CHFと同じであると考えられている。収縮期機能障害の対照となるものは拡張期機能障害すなわち心室を血液で満たす能力の損傷であり、これもまた左心室機能が保存されていても心不全になることがある。うっ血性心不全は最終的には心臓筋細胞それ自体の機能不適切化を伴ない、収縮および弛緩能力の低下が起る。
【0008】
アテローム性動脈硬化症、高血圧症、ウイルス感染症、弁機能障害、遺伝子障害などの同じ基礎をなす症状の多くは、収縮期および/または拡張期の機能障害を引き起こし得る。これらの症状をもつ患者は、典型的に同様の古典的な症状、すなわち息切れ、浮腫および激しい疲労を示す。拡張型心筋症をもつ患者のおよそ半分では、その心臓機能障害の原因はアテローム性冠動脈硬化症による虚血性心疾患である。これらの患者は過去に1回かまたは複数回の心筋梗塞を起している。この場合結果として生じた瘢痕および再造形により、拡張された、低収縮性の心臓となる。時々、その原因因子を明らかにすることができず、その結果この疾患は「特発性拡張型心筋症」と呼ばれる。虚血性あるいはその他の原因に関係なく、拡張型心筋症をもつ患者は、最悪の予後、異常に高い合併症発生率、および高い死亡率を共有する。
【0009】
人口の高齢化につれて、かつ心臓病専門医が、最も一般的なCHFの前触れである虚血性心疾患の死亡率の減少に成功するようになったので、CHFの有病率は流行伝染病のような勢いにまで増大している。米国では大雑把に言って460万人がCHFと診断されており、そのような診断件数は、年齢65歳以上では、1000人あたり10人に近づきつつある。CHFによる入院は一般に、外来患者の不適切な治療の結果である。CHFの退院は、年齢65歳以上の人口では、377,000(1979年)から957,000(1997年)に上昇しており、CHFが最も一般的な退院診断となっている。CHFの5年後死亡率は50%に近づいている(Levy D.(2002)New Engl J Med. 347(18):1442-4)。それゆえ、ここ数年の間に心臓疾患の治療は大きく改善され、平均寿命も延びたが、特にCHFに対して新規でより良い治療が引き続き求められている。
【0010】
「急性」うっ血性心不全(急性「代謝障害型」心不全とも呼ばれる)は、色々な原因で起る心臓機能の急低下が関与する。例えば以前にうっ血型心不全を患った患者では、新たな心筋梗塞、投薬の中断、食あたりによって、安静状態でさえも水腫液体の蓄積や代謝不全が引き起こされる。このような急性発作の間に心臓機能を向上させる治療薬は、この代謝不全を軽減し、水腫除去を加速するのを助けることができ、その結果より安定な「代償型」うっ血性心不全状態に戻るのを促進するものであると考えられる。非常に進行したうっ血性心不全をもつ患者、特に該疾患の最終段階にある患者もまた、心臓機能を向上させる治療薬から、例えば心臓移殖を待っている間安定化させるのに恩恵を受けることができると考えられる。また、バイパスポンプを入れるのが終わった患者に、例えばその停止したまたは遅くなった心臓が正常機能を取り戻すのを助ける薬剤を投与することにより、他の恩恵の可能性も提供することができると考えられる。拡張期機能障害(心筋の不十分な弛緩)をもつ患者は、筋弛緩をモジュレートする治療薬から恩恵を受けることができると考えられる。
【0011】
治療用活性薬剤
強心薬(Inotropes)は、心臓の収縮能力を高める薬である。1つの群として、現在ある強心薬は全て、心不全治療の判断基準を満たしていない、すなわち患者の生存を引き延ばしていない。加えて、現在ある薬剤は心臓組織に対する選択性に乏しく、このことは一部確認されている副作用を引き起こすので、その使用には限りがある。この事実にも拘わらず、経静脈強心薬は急性心不全に広く使われ続けており(例えば、経口投薬を再開させるため、あるいは患者を心臓移植へ橋渡しするため)、一方慢性心不全では経口的に投与されるジゴキシンが強心薬として使われており、患者の症状を和らげ、クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)を改善し、入院を減らしている。
【0012】
現在出回っている薬剤の限界が示された今、うっ血性心不全における心臓機能を改善する新しい治療法が必要である。最も最近に認可された短期用経静脈薬剤ミルリノンが登場してから今ではほぼ15年経つ。利用可能な唯一の経口薬剤ジゴキシンが登場してから200年経つ。新しい作用機序を利用し、かつ、短期および長期の両方において症状の軽減、安全性、および、患者死亡率に関してより良い結果を生むことができる薬剤に対する大きなニーズが依然としてある。現在ある薬剤よりも改善された治療指数をもつ新規な薬剤は、上記した臨床結果を達成する手段を提供すると思われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Robbins J and Leinwand LA. (1999) Molecular Basis of Cardiovascular Disease, Chapter 8. editor Chien, K.R., W.B. Saunders, Philadelphia
【非特許文献2】Goodson HV and Spudich JA. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:659-663
【非特許文献3】Spudich JA. (2001) Nat Rev Mol Cell Biol. 2(5):387-92
【非特許文献4】Levy D.(2002)New Engl J Med. 347(18):1442-4
【発明の概要】
【0014】
心臓筋節を標的とする(例えば、心臓ベータミオシンを標的とすることによる)薬剤の選択性が、上記した改善された治療指数を達成する上での重要な手段であることが確認された。本発明はそのような薬剤(特に筋節活性化薬剤)およびその同定および使用方法を提供する。
【0015】
本発明は、CHF、特に収縮期心不全のような心不全を治療する化合物、医薬組成物および方法を提供する。この組成物は、心臓筋節の選択的モジュレーター、例えば心臓ミオシンを増強するためのモジュレーターである。
【0016】
1つの態様では、本発明は式I:
【化1】

【0017】
(式中、
R1およびR2は、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアラルキル、および置換されていてもよいヘテロアラルキルからなる群より独立に選択され;またはR1、R2およびそれらが結合している窒素は、置換されていてもよい5-、6-もしくは7-員ヘテロ環を形成しており;
R3は、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり;
R4は、ハロゲンであり;
R5は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、または置換されていてもよい低級アルキルであり;かつR6およびR7は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、および置換されていてもよい低級アルキルからなる群から独立に選択される)
で表わされる、その単一立体異性体、立体異性体混合物、ならびに医薬的に許容される塩、溶媒和物、および医薬的に許容される塩の溶媒和物も含めた1つ以上の化合物群に関する。式Iで表わされる化合物は、本発明の治療方法を実施する上において、また、本発明の医薬製剤を製造する上において活性薬剤として、またそのような活性薬剤を合成する上において中間体として有用である。
【0018】
本発明のなお別の態様は、医薬的に許容される賦形剤を含む医薬製剤、および、心臓疾患の治療方法に関するもので、それぞれ、式Iで表わされる化合物、異性体、塩、または溶媒和物の治療的に有効な量を必須とする。
【0019】
さらなる態様で、本発明は、ミオシン(特にミオシンIIまたはβミオシン)に結合する化合物、例えば式Iの化合物の結合と置き換わるかまたは競合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、標識化されていてもよい式Iの化合物、ミオシン、および少なくとも1種の候補薬剤を組み合わせること、およびその候補薬剤がミオシンに結合していることを測定することを含んでなる。
【0020】
さらなる態様で、本発明は、ミオシン活性のモジュレーターをスクリーニングする方法を提供する。その方法は、式Iの化合物、ミオシン、および少なくとも1種の候補薬剤を組み合わせること、およびその候補薬剤のミオシン活性への影響を測定することを含んでなる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
他の態様および実施形態は、以下の詳細な説明から、当業者には明らかであると思われる。
【0022】
詳細な説明
本発明は、例えば心臓ミオシンを増強することにより心臓筋節を選択的にモジュレートするのに有用な化合物を提供するものである。本化合物を用いて、CHF、特に収縮期心不全のような心不全を治療することができる。本発明はさらに、本発明の化合物を含む医薬製剤、および、そのような化合物または組成物を用いた治療方法に関する。本組成物は心臓筋節の選択的モジュレーターであり、例えば、心臓ミオシンを増強する。
【0023】
定義
本明細書で使用される場合、以下に示されている用語・表現は通常下記に記載されている意味をもつことが意図されるが、それらが使用されているところでそうでないと記載されている場合はこの限りではない。次の略号・記号は、全体を通して、記載されている意味をもつ:
Ac = アセチル
Boc = t-ブチルオキシカルボニル
c- = シクロ
CBZ = カルボベンゾキシ = ベンジルオキシカルボニル
DCM = ジクロロメタン = 塩化メチレン = CH2Cl2
DIEA = DIPEA = N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF = N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO = ジメチルスルホキシド
Et = エチル
EtOAc = 酢酸エチル
EtOH = エタノール
GC = ガスクロマトグラフィー
h = 時間
HATU = O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HBTU = 2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HOAt = 7-アザ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
HOBt = 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
Me = メチル
min = 分
mL = ミリリットル
Ph = フェニル
rt = 室温
s- = 第二級
t- = 第三級
TES = トリエチルシラン
TFA = トリフルオロ酢酸
THF = テトラヒドロフラン
TLC = 薄層クロマトグラフィー。
【0024】
用語「任意の」または「〜されていてもよい」とは、それに関して記載される事象または状況が起る場合もあるし起らない場合もあることを意味し、またその記載には、そのような事象または状況が起る場合と起らない場合が含まれることを意味する。例えば、「置換されていてもよいアルキル」は、後に定義する「アルキル」もしくは「置換アルキル」を意味する。当業者なら、1つ以上の置換基を含む基に関して、そのような基は、立体的に実現性のない、合成の点から可能でない、および/または固有的に不安定である置換または置換パターンを導入するものではないことは理解されると思われる。
【0025】
「アルキル」には線状、分岐状、または環状炭化水素構造およびそれらの組み合せが含まれるものとする。低級アルキルは、炭素原子1〜5個のアルキル基を意味する。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s-ブチル、t-ブチルなどが挙げられる。好ましいアルキル基はC20またはそれ以下のものである。より好ましいアルキル基はC13またはそれ以下のものである。さらにより好ましいアルキル基はC6またはそれ以下のものである。シクロアルキルはアルキルのサブセット(下位群)であり、炭素原子3〜13個の環状炭化水素基が含まれる。シクロアルキル基の例としては、c-プロピル、c-ブチル、c-ペンチル、ノルボルニル、アダマンチルなどが挙げられる。本出願では、アルキルは、アルカニル、アルケニルおよびアルキニル残基を意味する。それには、シクロヘキシルメチル、ビニル、アリル、イソプレニルなどが含まれるものとする。アルキレンはアルキルのもう1つのサブセットであり、アルキルと同じ残基を意味するが、2つの結合点をもっている。アルキレンの例としては、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、ジメチルプロピレン(-CH2C(CH3)2CH2-)およびシクロヘキシルプロピレン(-CH2CH2CH(C6H13)-)が挙げられる。ある特定の炭素数をもつアルキル残基が書かれている場合、その炭素数をもつ全ての幾何異性体も包含されるものとする。つまり、例えば「ブチル」には、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチルおよびt-ブチルが含まれることになり、「プロピル」にはn-プロピルおよびイソプロピルが含まれる。
【0026】
用語「アルコキシ」または「アルコキシル」は基 -O-アルキルを意味し、好ましくは親構造に酸素を介して結合している炭素数1〜8個の直鎖状、分岐状、環状構造およびこれらの組み合せが含まれる。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられる。低級アルコキシは、1〜4個の炭素を含む基を意味する。
【0027】
用語「置換アルコキシ」は、基 -O-(置換アルキル)を意味する。好ましい置換アルコキシ基の1つは「ポリアルコキシ」または-O-(置換されていてもよいアルキレン)(置換されていてもよいアルコキシ)であり、例えば-OCH2CH2OCH3のような基、および、ポリエチレングリコールおよび-O(CH2CH2O)xCH3[式中、xは、約2〜20、好ましくは約2〜10、より好ましくは約2〜5の整数である]のようなグリコールエーテルが挙げられる。もう1つの好ましい置換アルコキシ基はヒドロキシアルコキシまたは-OCH2(CH2)yOH[式中yは、約1〜10、好ましくは約1〜4の整数である]である。
【0028】
「アシル」は、親構造にカルボニル官能基を介して結合している飽和、不飽和および芳香族ならびにこれらの組み合せの1〜10個の炭素原子の直鎖状、分岐状、環状構造を有する基を意味する。アシル残基中の1つ以上の炭素は、親構造への結合点がカルボニル基に残っている限り、窒素、酸素または硫黄で置換されていてもよい。例としては、アセチル、ベンゾイル、プロピオニル、イソブチリル、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが挙げられる。「低級アシル」は1〜4個の炭素を含む基を意味し、また「アシルオキシ」は基 -O-アシルを意味する。
【0029】
用語「アミノ」は基 -NH2を意味する。用語「置換アミノ」は基 -NHRまたは-NRRを意味し、この場合各Rは次の群:置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、アシル、アルコキシカルボニル、スルファニル、スルフィニルおよびスルホニルから独立に選択され、例えばジエチルアミノ、メチルスルホニルアミノ、フラニル-オキシ-スルホンアミノである。
【0030】
「アリール」は、5-または6-員芳香族環系、二環式9-または10-員芳香族環系、または三環式12-〜14-員芳香族環系を意味する。例としては、シクロペンタ-1,3-ジエン、フェニル、ナフチル、インダン、テトラリン、フルオレン、シクロペンタ[b]ナフタレンおよびアントラセンが挙げられる。
【0031】
「アラルコキシ」は基 -O-アラルキルを意味する。同様に、「ヘテロアラルコキシ」は基 -O-ヘテロアラルキルを意味し;「アリールオキシ」は-O-アリールを意味し;「ヘテロアリールオキシ」は基 -O-ヘテロアリールを意味する。
【0032】
「アラルキル」は、アリール部分構造が親構造にアルキル残基を介して結合している残基を意味する。例としては、ベンジル、フェネチル、フェニルビニル、フェニルアリルなどが挙げられる。「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール部分構造が親構造にアルキル残基を介して結合している残基を意味する。例としては、フラニルメチル、ピリジニルメチル、ピリミジニルエチルなどが挙げられる。
【0033】
「ATPアーゼ」はATPを加水分解する酵素を意味する。ATPアーゼは、ミオシンのような分子モーターを含むタンパク質を含む。
【0034】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。フッ素、塩素および臭素が好ましい。ジハロアリール、ジハロアルキル、トリハロアリールなどは、複数のハロゲン(ただし必ずしも複数の同じハロゲンではない)で置換されたアリールおよびアルキルを意味する。従って4-クロロ-3-フルオロフェニルはジハロアリールの範囲内である。
【0035】
「ヘテロアリール」は、1〜4個のヘテロ原子を含む5-または6-員芳香族環、1〜4(またはそれ以上)個のヘテロ原子を含む二環式8-、9-または10-員芳香族環系、または1〜4(またはそれ以上)個のヘテロ原子を含む三環式11〜14-員芳香族環系を意味し;ヘテロ原子は、O、NおよびSから選択される。例としては、フラン、ピロール、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ジチオール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チオピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、キノリン、イソキノリンおよびキノキサリンが挙げられる。
【0036】
「ヘテロ環」または「ヘテロシクリル」は、その炭素の1〜4個が酸素、窒素または硫黄などのヘテロ原子で置換されたシクロアルキル残基を意味し、1〜4個のヘテロ原子を含む4-、5-、6-または7-員非芳香族環系、1〜4(またはそれ以上)個のヘテロ原子を含む二環式8-、9-または10-員非芳香族環系、または1〜4(またはそれ以上)個のヘテロ原子を含む三環式11-〜14-員非芳香族環系があり;そのヘテロ原子はO、NおよびSから選択される。例としては、ピロリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロ-チオフェン、チアゾリジン、ピペリジン、テトラヒドロ-ピラン、テトラヒドロ-チオピラン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリンおよびジオキサンが挙げられる。ヘテロ環には不飽和結合を含む環系も含まれるが、この場合不飽和の数と配置はその基を芳香族にしないものとする。例としては、イミダゾリン、オキサゾリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソールおよび3,5-ジヒドロベンゾキサジニルが挙げられる。置換ヘテロ環の例としては、4-メチル-1-ピペラジニルおよび4-ベンジル-1-ピペリジニルが挙げられる。
【0037】
「異性体」は、同じ分子式をもつが異なる化合物である。「立体異性体」は、原子が空間に配置される様式のみが異なる異性体である。「鏡像異性体」は、互いが重ね合わさることができない鏡像である立体異性体対である。1:1の鏡像異性体対混合物は「ラセミ」混合物である。記号「(.±.)」は適切な場合ラセミ混合物を表わすのに使用される。「ジアステレオマー」は、少なくとも2つの不斉原子をもつが、互いに鏡像ではない立体異性体である。絶対立体化学はカーン-インゴールド-プレログ(Cahn-Ingold-Prelog)R-S系により規定される。ある化合物が純粋な鏡像異性体である場合、各キラル炭素におけるその立体化学はRかSで規定することができる。絶対配置が分からない分割された化合物は、それらがナトリウムD線波長の面偏光を回転する方向(右旋性または左旋性)に応じて(+)または(-)と表わすことができる。本明細書に記載される化合物の一部は1つ以上の不斉中心を含むので、絶対立体化学で(R)-または(S)-と定義することができる鏡像異性体、ジアステレオマー、およびその他の立体異性形を生じることがある。本発明には、ラセミ混合物、光学純粋体および中間混合物を含めたそのような全ての考えられ得る異性体が含まれるものとする。光学的に活性な(R)-および(S)-異性体はキラルシントンまたはキラル試薬を用いて調製することができ、あるいは慣用の手法を用いて分割することができる。本明細書に記載される化合物がオレフィン性二重結合またはその他の幾何的不斉中心を含む場合で特に特定されない場合、その化合物にはEおよびZの幾何異性体の両方が含まれるものとする。同様に、全ての互変異性体も含まれるものとする。
【0038】
用語「医薬的に許容される担体」または「医薬的に許容される賦形剤」にはあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張遅延剤および吸収遅延剤などが含まれる。そのような媒体および試剤を医薬的に活性な物質に使用することは当技術分野では周知である。在来の媒体または試剤が本活性成分と相溶性がない場合を除いて、本治療用組成物中にそれを使用することが検討される。本組成物の中には補足的な活性成分を組み込むこともできる。
【0039】
用語「医薬的に許容される塩」は、生物学的にあるいはその他の意味において望ましくないものではない、本発明の化合物の生物学的な効能および特性を保持している塩を意味する。多くの場合、本発明の化合物は、アミノ基および/またはカルボキシル基またはそれらに似た基の存在によって酸塩および/または塩基塩を形成することが可能である。医薬的に許容される酸付加塩は無機酸および有機酸で生成させることができる。塩を誘導することができる無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。塩を誘導することができる有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、シナモン酸、マンデリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サルチル酸などが挙げられる。医薬的に許容される塩基付加塩は無機塩基および有機塩基で生成させることができる。塩を誘導することができる無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどが挙げられ;特に好ましいのはアンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩である。塩を誘導することができる有機塩基としては、例えば、第一級、第二級、および第三級アミンや、天然に存在する置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂などを含めた置換アミンが挙げられ、具体的にはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミンなどが挙げられる。
【0040】
用語「溶媒和物」は、医薬的に許容される溶媒の1個以上の分子と物理的会合状態にある化合物(例えば式Iで表わされる化合物またはその医薬的に許容される塩)を意味する。「式Iの化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物」のような表現には、その式Iの化合物、その化合物の医薬的に許容される塩、その化合物の溶媒和物、およびその化合物の医薬的に許容される塩の溶媒和物が包含されるものとすることは理解されると思われる。
【0041】
「置換」アルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルは、それぞれ1個以上(最大約5個、好ましくは最大約3個)の水素原子が、次の群:アシル、置換されていてもよいアルキル(例えば、フルオロアルキル)、置換されていてもよいアルコキシ、アルキレンジオキシ(例えば メチレンジオキシ)、置換されていてもよいアミノ(例えば、アルキルアミノおよびジアルキルアミノ)、置換されていてもよいアミジノ、置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)、置換されていてもよいアラルキル(例えば、ベンジル)、置換されていてもよいアリールオキシ(例えば、フェノキシ)、置換されていてもよいアラルコキシ(例えば、ベンジルオキシ)、カルボキシ(-COOH)、アシルオキシ(-OOCR)、アルコキシカルボニル(すなわち、エステルまたは-COOR)、アミノカルボニル、ベンジルオキシカルボニルアミノ(CBZ-アミノ)、シアノ、カルボニル、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロアラルキル、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロアラルコキシ、ニトロ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、およびチオから独立に選択される置換基で置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルを意味する。
【0042】
用語「スルファニル」は基:-S-(置換されていてもよいアルキル)、-S-(置換されていてもよいアリール)、-S-(置換されていてもよいヘテロアリール)、および-S-(置換されていてもよいヘテロシクリル)を意味する。
【0043】
用語「スルフィニル」は基:-S(O)-H、-S(O)-(置換されていてもよいアルキル)、-S(O)-(置換されていてもよいアミノ)、-S(O)-(置換されていてもよいアリール)、-S(O)-(置換されていてもよいヘテロアリール)、および-S(O)-(置換されていてもよいヘテロシクリル)を意味する。
【0044】
用語「スルホニル」は基:-S(O2)-H、-S(O2)-(置換されていてもよいアルキル)、-S(O2)-(置換されていてもよいアミノ)、-S(O2)-(置換されていてもよいアリール)、-S(O2)-(置換されていてもよいヘテロアリール)、-S(O2)-(置換されていてもよいヘテロシクリル)、-S(O2)-(置換されていてもよいアルコキシ)、-S(O2)置換されていてもよいアリールオキシ)、-S(O2)-(置換されていてもよいヘテロアリールオキシ)、および-S(O2)-(置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ)を意味する。
【0045】
用語「治療的に有効な量」または「有効量」は、治療を必要とする哺乳動物に投与した場合、後に定義するように、治療を行うのに十分な式Iの化合物の量を意味する。治療的に有効な量は、患者や治療を受けている疾患の状態、患者の体重や年齢、疾患状態の重症度、選んだ式Iの特定の化合物、後に続く投薬計画、投与のタイミング、投与の方法などに応じて変わるもので、これら全ては当業者なら容易に決めることができる。
【0046】
用語「治療」または「治療する」は、下記:
a)疾患の予防、すなわち、疾患の臨床症状を発症させないこと;
b)疾患の抑制、すなわち、臨床症状の発症を遅延または停止させること;および/または
c)疾患の軽減、すなわち、臨床症状の退行を引き起こすこと;
などの哺乳動物における疾患のあらゆる治療を意味する。
【0047】
本発明の化合物
本発明は、式I:
【化2】

【0048】
(式中、
R1およびR2は、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアラルキル、および置換されていてもよいヘテロアラルキルからなる群より独立に選択され;またはR1、R2およびそれらが結合している窒素は、置換されていてもよい5-、6-もしくは7-員ヘテロ環を形成しており;
R3は、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり;
R4は、ハロゲンであり;
R5は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、または置換されていてもよい低級アルキルであり;かつR6およびR7は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、および置換されていてもよい低級アルキルからなる群から独立に選択される)
により表される、心臓筋節の選択的モジュレーター(例えば、心臓ミオシンの活性を刺激するか、または増強することによる)である化合物、その単一の立体異性体、立体異性体の混合物、およびその医薬的に許容される塩に関する。式Iの化合物は、治療方法の実施における活性成分として、および本発明の医薬製剤の製造において、ならびにそのような活性成分の合成における中間体として有用である。
【0049】
命名法
式Iの化合物を、以下に記載のように命名し、番号付ける(例えば、AutoNomバージョン2.2を用いる)ことができる。例えば、化合物:
【化3】

【0050】
すなわち、R1およびR2が、それらが結合している窒素と一緒になって置換されたピペラジン環を形成し;R3が置換されたチアジアゾール環であり;R4がクロロであり;ならびにR5、R6およびR7が水素である式Iの化合物は、4-[4-クロロ-3-(5-フェニル-[1,3,4]チアジアゾール-2-イルカルバモイル)-ベンゼンスルホニル]-ピペラジン-1-カルボン酸エチルエステルと命名することができる。
【0051】
同様に、化合物:
【化4】

【0052】
すなわち、R1およびR2がそれらが結合している窒素と一緒になって置換されたピペラジン環を形成し;R3がイミダゾール環であり;R4がクロロであり;ならびにR5、R6およびR7が水素である式Iの化合物は、2-クロロ-5-[4-(N-シクロペンチル-N’-シアノ-カルバミミドイル)-ピペラジン-1-スルホニル]-N-(1H-イミダゾール-2-イル)-ベンズアミドと命名することができる。
【0053】
式Iの化合物の合成
本発明の化合物を、反応スキームを参照して、例えば、以下に例示するように、当業界で公知の技術を用いて合成することができる。
【0054】
合成反応パラメーター
別の指示がない限り、本明細書に記載の反応は大気圧下、一般的には-10℃〜110℃の温度範囲で行う。さらに、実施例での使用または別に特定した場合を除いて、反応時間および条件は、適当であると意図されるもの、例えば、約1〜約24時間に渡って、ほぼ大気圧下、約-10℃〜約110℃の温度範囲で行い、反応物を、一晩、平均約16時間放置する。
【0055】
用語「溶媒」、「有機溶媒」または「不活性溶媒」はそれぞれ、それに関連して記載される反応の条件下で不活性な溶媒を意味する(例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、クロロホルム、塩化メチレン(またはジクロロメタン)、ジエチルエーテル、メタノール、ピリジンなど)。逆に特定しない限り、本発明の反応において用いる溶媒は不活性な有機溶媒である。
【0056】
本明細書に記載の化合物および中間体の単離および精製を、必要に応じて、例えば、濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーもしくは厚層クロマトグラフィー、またはこれらの手順の組合せなどの任意の好適な分離または精製手順により行うことができる。好適な分離および単離手順の特定例は、以下に記載の実施例を参照して得ることができる。しかしながら、他の等価な分離または単離手順も、勿論用いることができる。
【0057】
必要に応じて、(R)-および(S)-異性体を、例えば、結晶化により分離することができるジアステレオ異性体塩もしくは複合体の形成;例えば、結晶化、気体-液体もしくは液体クロマトグラフィーにより分離することができるジアステレオ異性体誘導体の形成;一方のエナンチオマーと、エナンチオマー特異的試薬との選択的反応、例えば、酵素的酸化もしくは還元の後、改変された、および未改変のエナンチオマーの分離;または、例えば、結合したキラルリガンドを含むシリカなどのキラル支持体上、もしくはキラル溶媒の存在下などのキラル環境下での気体-液体もしくは液体クロマトグラフィーなどの、当業者には公知の方法により分割することができる。例えば、式Iの化合物を低級アルカノール中に溶解し、ヘキサン中の70% EtOAcで60分間コンディショニングしたChiralpak AD (205 x 20 mm)カラム(Chiral Technologies, Inc.)上に置くことができる。所望のエナンチオマーを、上記の分離手順の1つにより別の化学体に変換する場合、所望のエナンチオマー形態を遊離させるためのさらなる工程が必要になることが理解されるであろう。あるいは、特定のエナンチオマーを、光学的に活性な試薬、基質、触媒もしくは溶媒を用いる非対称合成により、または対称変換により一方のエナンチオマーを他方に変換することにより合成することができる。
【0058】
出発材料
式101の置換されていてもよい安息香酸は、例えば、Acros OrganicもしくはAldrich Chemical Company, Milwaukee, WIから市販されているか、または一般的に用いられる合成方法を用いて、当業者により容易に調製することができる。当業者であれば、市販の化合物はカルボキシル保護基PGを欠いているかもしれないことを理解できるであろう。他の反応体も同様に市販されているか、または一般的に用いられる合成方法を用いて、当業者により容易に調製することができる。
【化5】

【0059】
式103の化合物の調製
反応スキーム1の工程1を参照して、式101の化合物をバイアル中に入れる。バイアルを窒素でフラッシュし、陽圧を維持する。無水の非極性溶媒、例えば、ジクロロメタンを加えた後、過剰(好ましくは約1.2当量)の式R1R2NHの化合物およびエチルジイソプロピルアミンなどの塩基を加える。混合物を約1.5時間攪拌した後、さらなるアリコート(好ましくは、約0.8当量)の式R1R2NHのアミンを加える。約14時間後、混合物を、陰イオン化モードで逆相HPLC-MSにより分析する。フッ化スルホニル出発材料が存在する場合、さらなる量(好ましくは、約0.35当量)の式R1R2NHのアミンおよびエチルジイソプロピルアミンを加え、混合物を約4時間攪拌する。これを必要に応じて再度繰り返す。得られた生成物、式103の化合物を、クロマトグラフィー、濾過、蒸発、結晶化などの従来の方法により回収するか、または精製および/もしくは単離せずに次の工程で用いることができる。反応の開始時の過剰の求核アミンの添加が、有意なビス付加をもたらし、スルホンアミドおよびカルボキシアミド生成物が得られることに留意すべきである。必要に応じた求核アミンの段階的添加はこの副生成物の形成を抑制する。
【0060】
式105の化合物の調製
反応スキーム1の工程2を参照して、式103の化合物を、過剰(好ましくは、約1.2当量)の式R3NH2の化合物、過剰(好ましくは、約1.5当量)のHBTUおよび過剰(好ましくは、約1.5当量)のHoBt水和物と共にバイアル中に入れる。バイアルを窒素でフラッシュし、陽圧を維持する。無水溶媒、例えば、ジメチルホルムアミドを加えた後、エチルジイソプロピルアミンなどの塩基を加え、混合物を約14時間攪拌する。得られた生成物、式105の化合物を、クロマトグラフィー、濾過、蒸発、結晶化などの従来の方法により回収するか、または精製および/もしくは単離せずに次の工程で用いることができる。
【化6】


【0061】
式203の化合物の調製
反応スキーム2の工程1を参照して、過剰(好ましくは、約10当量)のジフェニルシアノカルボンイミダートを、nが1または2である式201の化合物に加える。バイアルを密閉し、窒素でフラッシュし、陽圧を維持する。無水の不活性溶媒、例えば、THFを加えた後、エチルジイソプロピルアミンなどの塩基を加える。混合物を約1時間攪拌する。得られた生成物、式203の化合物を、クロマトグラフィー、濾過、蒸発、結晶化などの従来の方法により回収するか、または精製および/もしくは単離せずに次の工程で用いることができる。
【0062】
式205の化合物の調製
反応スキーム2の工程2を参照して、式203の化合物をバイアル中に入れる。バイアルを窒素でフラッシュし、陽圧を維持する。THFなどの無水不活性溶媒を加えた後、過剰(特に、約5当量)の式R10NH2(式中、R10は置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、または置換されていてもよいヘテロアラルキルである)のアミンを加える。混合物を、反応が完了するまで攪拌する。得られた生成物、式205の化合物を、クロマトグラフィー、濾過、蒸発、結晶化などの従来の方法により回収するか、または精製および/もしくは単離せずに次の工程で用いることができる。
【0063】
本発明の上記プロセスにより調製された化合物を、例えば、検出可能な量の1種以上の出発材料または試薬の存在により同定することができる。医薬品は認可および/またはマーケティングの前に薬局方の標準を満たさなければならないこと、ならびに合成試薬(種々の置換アミンもしくはアルコールなど)および前駆体は薬局方の標準により規定された限界を超えるべきではないことが公知であるが、本発明の方法により調製された最終化合物は、少量であるが、検出可能な量のそのような物質が存在してもよく、例えば、1%未満の単一純度を有する95%の純度範囲のレベルで存在してもよい。これらのレベルは、例えば、放射分光分析により検出することができる。そのような物質の存在について、医薬化合物の純度をモニターすることが重要であり、その存在を本発明の合成方法の使用を検出する方法としてさらに開示する。
【0064】
特定のプロセスおよび最終工程
式Iの化合物の異性体のラセミ混合物を、クロマトグラフィーカラム上に入れ、(R)-および(S)-エナンチオマーに分離する。
【0065】
式Iの化合物を、医薬的に許容される酸と接触させて、対応する酸付加塩を形成させる。
【0066】
式Iの医薬的に許容される酸付加塩を、塩基と接触させて、式Iの対応する遊離塩基を形成させる。
【0067】
特定の化合物
本発明の化合物、医薬製剤、製造方法および使用には、式Iの置換基の以下に示す組合せおよび順列が提供される。本発明の特定の実施形態では、以下に示す置換基の組合せおよび順列を有する式Iの化合物が含まれるか、または用いられる。これらは、置換基の他の組合せおよび順列をサポートするための添付の特許請求の範囲のサポートに示されるもので、その置換基の他の組合せおよび順列は、簡潔を期すために詳細には特許請求しなかったが本開示の教示内に包含されると解すべきである。
【0068】
R1およびR2
式Iの化合物について言及する場合、特定の実施形態においては、R1およびR2は、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアラルキル、および置換されていてもよいヘテロアラルキルからなる群より独立に選択される。[Brad-非環式バージョンについての任意の下位優先?]。
【0069】
式Iの化合物について言及する場合、別の特定の実施形態においては、R1、R2およびそれらが結合した窒素は、置換されていてもよい5-、6-または7-員のヘテロ環を形成する。より具体的な実施形態においては、R1、R2およびそれらが結合した窒素は、以下の基:置換されていてもよいアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキレンジオキシ(例えば、メチレンジオキシ)、カルボキシ(-COOH)、置換されていてもよいアシルオキシ(RCOO-)、置換されていてもよいアルコキシカルボニル(-COOR)、置換されていてもよいアミノカルボニル、シアノ、置換されていてもよいアシル、オキソ、ニトロ、置換されていてもよいアミノ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、置換されていてもよいアミノスルホニル、アミジノ、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換されたヘテロシクリル、アリールオキシ、アラルコキシ、ヘテロアリールオキシ、およびヘテロアラルコキシのうちの1、2または3個で置換されていてもよい、ピペリジン-1-イル;ピペラジン-1-イル;モルホリン-4-イル;ピロリジン-1-イル;チオモルホリン-4-イルまたはジアゼパン-1-イルを形成する。
【0070】
R1、R2およびそれらが結合した窒素が置換されていてもよいジアゼパン-1-イル環を形成する場合、特定の実施形態においては、ジアゼパン窒素を、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいアルコキシカルボニル、または置換されていてもよいアミノスルホニルでさらに置換する。
【0071】
R1、R2およびそれらが結合した窒素が置換されていてもよいピペラジン-1-イル環を形成する場合、特定の実施形態においては、ピペラジン窒素を、水素、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいアルコキシカルボニル、置換されていてもよいアミノスルホニル、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいスルホニルでさらに置換する。
【0072】
R1、R2およびそれらが結合した窒素が置換されていてもよいピペラジン-1-イル環を形成する場合、特定の実施形態においては、ピペリジン環を、水素、置換されていてもよいアルコキシカルボニル、置換されていてもよいアミノカルボニル、置換されていてもよいアミノ、ヒドロキシ、置換されていてもよいアルコキシ、またはアルキレンジオキシでさらに置換する。
【0073】
R1、R2およびそれらが結合した窒素が置換されていてもよいピロリジン-1-イル環を形成する場合、特定の実施形態においては、ピロリジン環を、置換されていてもよいアミノでさらに置換する。
【0074】
R3
式Iの化合物について言及する場合、特定の実施形態においては、R3は置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールである。より具体的には、R3は、ハロゲン、低級アルコキシ、置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール基で置換されていてもよいフェニル、イソキサゾリル、オキサゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、テトラゾール-5-イル、チアゾリル、チアジアゾリルまたはイミダゾリルである。
【0075】
1つの特定の実施形態においては、R3はハロゲン(特にフルオロ)または低級アルコキシ(特にメトキシ)で置換されていてもよいフェニルである。別の特定の実施形態においては、R3は、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基で置換されていてもよいヘテロアリール基である。さらにより具体的には、R3は、置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい[1,3,4]チアジアゾール-2-イルであるか、またはR3は、1H-イミダゾール-2-イルである。最も特定の実施形態においては、R3はオキサゾール-2-イル、5-フェニル-[1,3,4]チアジアゾール-2-イルまたは1H-イミダゾール-2-イルである。
【0076】
R4
式Iの化合物について言及する場合、特定の実施形態においては、R4はハロゲンである。より具体的には、R4はクロロである。
【0077】
R5、R6およびR7
式Iの化合物について言及する場合、特定の実施形態においては、R5は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、または置換されていてもよい低級アルキルであり;R6およびR7は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、および置換されていてもよい低級アルキルからなる群より独立に選択される。別の実施形態においては、R5、R6およびR7は水素である。
【0078】
特定の亜属
式Iの化合物を考慮する場合、特定の実施形態においては、
R1、R2およびそれらが結合した窒素は、置換されていてもよい5-、6-、もしくは7-員のヘテロ環を形成し;
R3は置換されていてもよいアリールもしくは置換されていてもよいヘテロアリールであり;
R4はハロゲンであり;ならびに
R5、R6およびR7は水素である。
【0079】
別の特定の実施形態においては、
R1、R2およびそれらが結合した窒素は、置換されていてもよい5-、6-、もしくは7-員のヘテロ環を形成し;
R3は置換されていてもよいアリールもしくは置換されていてもよいヘテロアリールであり;
R4はクロロであり;ならびに
R5、R6およびR7は水素である。
【0080】
別の特定の実施形態においては、
R1、R2およびそれらが結合した窒素は、置換されていてもよい5-、6-、もしくは7-員のヘテロ環を形成し;
R3は置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい[1,3,4]チアジアゾール-2-イルであるか、もしくはR3は1H-イミダゾール-2-イル基であり;
R4はハロゲンであり;ならびに
R5、R6およびR7は水素である。
【0081】
別の特定の実施形態においては、
R1、R2およびそれらが結合した窒素は、置換されていてもよい5-、6-、もしくは7-員のヘテロ環を形成し;
R3は置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい[1,3,4]チアジアゾール-2-イルであるか、もしくはR3は1H-イミダゾール-2-イル基であり;
R4はクロロであり;ならびに
R5、R6およびR7は水素である。
【0082】
別の特定の実施形態においては、
R1、R2およびそれらが結合した窒素は、置換されていてもよい5-、6-、もしくは7-員のヘテロ環を形成し;
R3は5-フェニル-[1,3,4]チアジアゾール-2-イルもしくは1H-イミダゾール-2-イルであり;
R4はハロゲンであり;ならびに
R5、R6およびR7は水素である。
【0083】
別の特定の実施形態においては、
R1、R2およびそれらが結合した窒素は、置換されていてもよい5-、6-、もしくは7-員のヘテロ環を形成し;
R3は5-フェニル-[1,3,4]チアジアゾール-2-イルもしくは1H-イミダゾール-2-イルであり;
R4はクロロであり;ならびに
R5、R6およびR7は水素である。
【0084】
特定の化合物としては以下のものが挙げられる:
【化7】

【表1】








【化8】

【表2】


【0085】
より具体的には、本発明の化合物としては以下のものが挙げられる:
【化9】

【表3】



【0086】
用途、試験法、投与
用途
本発明の化合物は心臓筋節に対し選択的でありかつそれをモジュレートするので、心臓ミオシンに結合させるのに、および/または、心臓ミオシンの活性を増強するのに有用であり、ミオシンがATPを加水分解する速度を増大させる。本明細書で使用される場合、「モジュレートする」とは、ミオシン活性を増大させるか減少させることを意味し、一方「増強する」は活性を増大させることを意味する。また、本発明の代表的な化合物の試験において、該化合物を投与することにより心筋線維の収縮力を増大させることもできることが確認された。
【0087】
本発明の化合物、医薬製剤および医療方法は、限定するものではないが:急性(または代償不全性)うっ血性心不全、および慢性うっ血性心不全;特に収縮期心臓機能障害が関与する疾患;の心臓疾患を治療するのに使用される。さらなる治療用途としては、心臓移殖を待っている患者の心臓機能を安定化させるための投与、および、停止したまたは遅くなった心臓がバイパスポンプの使用の後、正常機能を取り戻すのを支援するための投与が挙げられる。
【0088】
試験
筋節中のミオシンはATP加水分解によって力をつくる。従って、ATP加水分解の増加は筋肉収縮の力または速度の増加に対応すると考えられる。アクチンの存在下では、ミオシンATPアーゼ活性は > 100倍刺激される。つまりATP加水分解により、ミオシンの酵素的活性のみならずそのアクチンフィラメントとの相互作用も測定される。心臓筋節をモジュレートする化合物は、ミオシンによるATP加水分解の速度が増加または減少することによって確定することができ、好ましくは10μM未満(より好ましくは、1μM未満)の濃度で1.4倍の増加を呈する。そのような活性の好ましいアッセイではヒトから採ったミオシンを使うが、他の生物から採ったミオシンを使うこともできる。ミオシン結合におけるカルシウムの調節的役割を模擬するシステムも好ましい。
【0089】
別の方法として、生化学的に機能する筋節プレパラートを用いて、インビトロATPアーゼ活性を測定することもでき、これは、例えば2000年3月29日に出願の米国特許出願第09/539,164号に記載されている。ATPアーゼ加水分解のカルシウム感受性も含めた、筋節の機能的生化学挙動は、その精製された個々の成分(好ましくはその調節成分およびミオシンも含んだ)を合わせることにより再生することができる。もう1つの機能するプレパラートは、インビトロ運動性アッセイである。これは、ミオシンを結合したスライドガラスに試験化合物を加え、ミオシンでカバーされたスライドガラス表面上をアクチンフィラメントが滑る速度を観測することにより行うことができる(Kron SJ.(1991)Methods Enzymol. 196:399-416)。
【0090】
インビトロのATP加水分解速度はミオシンの増強化活性と相関しており、これはADPかまたはリン酸塩の生成を追跡することにより測定することができ、例えば1999年5月18日に出願の出願番号第09/314,464号に記載されている。ADPの産生は、ADP産生をNADH酸化にカップリングし(酵素ピルビン酸キナーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼを用いて)、吸光度かまたは蛍光発光によりNADHのレベルを追跡することにより追跡することもできる(Greengard, P., Nature 178(Part 4534): 632-634(1956);Mol Pharmacol 1970 Jan;6(1):31-40)。リン酸塩の産生は、プリンヌクレオシドホスホリラーゼを用いてリン酸塩産生をプリン類似体の開裂にカップリングさせることで追跡することができ、これは吸光度の変化を生じる(Proc Natl Acad Sci U S A 1992 Jun 1;89(11):4884-7)か、蛍光発光の変化を生じる(Biochem J 1990 Mar 1;266(2):611-4)。タンパク質活性の絶対速度を決定するためには、単一の測定で行うこともできるが、同一のサンプルの異なる時間における複数の測定を行うのが好ましい。そのような測定は、特に酵素についての読み出し値の吸光度特性または蛍光発光特性と似たものをもつ試験化合物の存在下ではより高い特異性をもっている。
【0091】
試験化合物は、マルチウェルプレートを用いた高度に並行的な方法で、化合物を個々にウェル中に配置するか、またはそれらを混合物で試験することによりアッセイすることができる。次に、標的タンパク質複合体、カップリング酵素と基質、およびATPを含むアッセイ成分をウェルに加えることができ、各プレートウェルの吸光度または蛍光発光をプレート読取機で測定することができる。
【0092】
好ましい方法では、384ウェル方式および25μL反応容量が用いられる。ピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロゲナーゼがカップリングされた酵素システム(Huang TG and Hackney DD.(1994)J Biol Chem 269(23): 16493-16501)を用いて、各ウェル中のATP加水分解速度が測定される。当業者なら解かるように、アッセイ成分は緩衝液および試薬に加えられる。ここで概要を記した方法によって反応速度の測定が可能になるので、バックグラウンド信号を越える適切な検出用信号を得るためのインキュベーション期間が最適化される。このアッセイはリアルタイムで行われのでATP加水分解の動態が得られ、これによりアッセイのシグナル対ノイズ比が大きくなる。
【0093】
例えば、Haikala H, et al(1995)J Cardiovasc Pharmacol 25(5):794-801に記載されているように、心筋線維収縮力のモジュレーションは、界面活性剤を浸透可能にした心筋線維(スキンド(除膜)心筋線維とも呼ばれる)を用いて測定することができる。スキンド心筋線維はその固有の筋節組織を保持しているが、細胞カルシウム周期の全側面は保持していないので、このモデルは2つの利点を提供する。第1に細胞膜が化合物の進入に対してバリアー(障壁)とならないことと、第2にカルシウム濃度が制御されていることである。それゆえ、収縮力の増加は筋節タンパク質に対する試験化合物の影響の直接の測定となる。張力測定は、筋線維の一方を固定柱に取り付け、もう一方を、力を計ることができるトランスデューサに取り付けることで行われる。線維を伸ばして弛みをとった後、線維が収縮を開始したときに力トランスデューサが張力の増加を記録する。この測定は、線維を縮めさせないので等尺性張力と呼ばれる。浸透可能筋肉線維の活性化は、それを緩衝化カルシウム溶液に入れ、その後試験化合物または対照化合物を加えることで行われる。このような方法で試験された場合、本発明の化合物は、生理的収縮活性を引き起こすカルシウム濃度において力の増大を引き起こしたが、低カルシウム濃度やカルシウムの不存在下の弛緩緩衝液中では力の増加はほとんどなかった(EGTAデータポイント)。
【0094】
心臓筋節および心臓ミオシンに対する選択性は、上記で説明したアッセイの1つまたは複数において非心臓筋節の成分およびミオシンを代りに使い、得られた結果を、心臓筋節成分および心臓ミオシンを用いて得られた結果と比較することにより測定することができる。
【0095】
インビトロ再生筋節アッセイで観測されるATPアーゼの速度を増大させる化合物の能力は、S1-ミオシンの代謝回転率の増加、あるいは修飾されたアクチンフィラメントのCa++-活性に対する感受性の増大から生じると考えられる。これら2つの考えられる作用モードを互いに区別するには、修飾されていないアクチンフィラメントをもつS1のATPアーゼ活性に対するその化合物の影響を最初に測定する。活性の増大が観測された場合は、Ca応答性調節機構に対するその化合物の影響はないことになると考えられる。第2の、より感度の高いアッセイを用いて、修飾されたアクチンの存在下ではS1-ミオシンに対する活性化作用が増強されている(純粋なアクチンフィラメントと比較して)化合物を確定することができる。この第2のアッセイでは、心臓-S1および骨格-S1の心臓調節アクチンフィラメントおよび骨格調節アクチンフィラメントに対する活性が(4つの並べ替え全てで)比較される。心臓-S1/心臓アクチンシステム、および、心臓-S1/骨格アクチンシステムに対してはその効果を示すが、骨格-S1/骨格アクチンシステム、および、骨格-S1/心臓アクチンシステムに対してはその効果を示さない化合物は、確信して心臓-S1アクチベーターと分類することができる。
【0096】
インビボ活性の最初の評価は筋細胞収縮能の細胞モデルで行うことができ、例えば、Popping S 他[(1996)Am. J. Physiol. 271: H357-H364]およびWolska BM 他[(1996)Am. J. Physiol. 39:H24-H32]が報告している。この筋細胞モデルの1つの優位点は、収縮能の変化を生じる成分システムを単離でき、また、その主な作用部位を決定することができることである。細胞活性をもつ化合物[例えば、次の特徴をもつ化合物を選択する:2μMで元の長さに対する短縮率が > 120%の増加、拡張期長さの限定的な変化( < 5%の変化)、および、収縮能または弛緩速度の有意な低下がないこと]は次に、心臓機能の全臓器モデル例えば摘出心臓(Langendorff)モデルで心エコー検査または侵襲性血行動態測定によりインビボで評価することができ、また、動物を使った心不全モデル例えばラット左冠動脈閉塞(Rat Left Coronary Artery Occlusion)モデルで評価することもできる。最終的には、心疾患を治療するための活性は、プラセボを対照としたヒトによるブラインド(盲検)臨床試験で立証する。
【0097】
投与
式Iの化合物は、治療的に有効な用量、例えば前に記載した疾患状態に対して治療を加えるのに十分な用量で投与される。本発明の化合物に対してはヒトに用いる用量レベルはなお最適化されなければならないが、一般には、1日あたりの投与は、約0.05〜100mg/kg-体重、好ましくは 約0.10〜10.0mg/kg-体重、最も好ましくは 約0.15〜1.0mg/kg-体重である。つまり、70kgの人についての投与に対しては、用量範囲は、約3.5〜7000mg/日、好ましくは 約7.0〜700.0mg/日、および最も好ましくは 約10.0〜100.0mg/日になると考えられる。投与される活性化合物の量は当然治療を受けている患者およびその疾患状態、疾患の重症度、投与の方法およびスケジュール、ならびに処方をだす医師の判断に依存するものである。例えば、経口投与のあり得る用量範囲は約70〜700mg/日であると考えられ、一方経静脈投与のあり得る用量範囲は約700〜7000mg/日であると考えられ、活性薬剤は、より長いあるいはより短い血漿半減期のものがそれぞれ選択される。
【0098】
本発明の化合物またはその医薬的に許容される塩の投与は、同様の用途に役に立つ薬剤の認められている投与方式のいずれにもよることができ、例えば限定するものではないが、経口的、皮下的、経静脈的、経鼻的、局所的、経皮的、腹腔内的、筋内的、肺内的、膣的、直腸的、あるいは眼内的が挙げられる。経口的投与および非経口的投与が、本発明の被対象課題である症状の治療では通例である。
【0099】
医薬的に許容される組成物の剤形としては固体、半固体、液体、エアロゾルが挙げられ、例えば錠剤、カプセル剤、粉剤、液体剤、懸濁液剤、坐剤などである。本化合物は持続放出型剤形あるいは制御放出型剤形で投与することもでき、予め決められた量での長期的および/または時限的パルス式投与用のデポー注射、浸透圧ポンプ、経皮(電気的移送も含める)パッチなどが挙げられる。好ましくは、本組成物はちょうどその薬量を1回で投与するのに適した単一の剤形で提供される。
【0100】
本組成物は、単独でか、または、より典型的には在来の医薬用担体や賦形剤(例えば、マンニトール、ラクトース、スターチ(デンプン)、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、タルカム[滑石紛]、セルロース、ナトリウムクロスカルメロース[sodium crosscarmellose;カルメロースナトリウムの架橋重合物(崩壊剤)]、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウム、他)と組み合せて投与することができる。望ましいなら、本医薬組成物には、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤、他(例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンアセテート、トリエタノールアミンオレエート、他)の少量の無毒補助的物質を入れることができる。意図する投与方式に依るが、本医薬製剤には通常本発明の化合物を約0.005%〜95%、好ましくは 約0.5%〜50%(重量)入れる。そのような剤形を調製する実際の方法は当業者には知られているか、または明らかであると思われ;例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照されたい。
【0101】
さらに、本発明の化合物は、他の医薬、医薬製剤、アジュバント(補助薬)などと並行投与することができ、本医薬製剤にはそれらを入れることができる。適した付加的に加える活性薬剤としては、例えば:心臓の神経ホルモンによる刺激を下方調節することで心不全の進行を遅らせ、心臓のリモデリング(再形成)を妨げようとする治療薬(例えば、ACE阻害薬またはβ-遮断薬);心臓が収縮するのを刺激することで心臓機能を改善する治療薬(例えば、陽性強心薬で、β-アドレナリン作動薬であるドブタミンやホスホジエステラーゼ阻害薬であるミルリノンなど);および、心臓前負荷を減らす治療薬(例えば、利尿薬で、フロセミドなど)が挙げられる。
【0102】
1つの好ましい実施形態では、本組成物はピル(丸薬)またはタブレット(錠剤)の形態をとることがあり、つまり本組成物は、本活性成分とともに、希釈剤例えばラクトース、スクロース、リン酸二カルシウムなど;潤滑剤例えばステアリン酸マグネシウムなど;および、結合剤例えばスターチ、ガムアカシア、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体など;を含むことになる。もう1つの固体剤形では、粉剤、粒剤(marume)、溶液剤または懸濁剤(例えば、プロピレンカーボネート、植物油またはトリグリセリド中の)がゼラチン製カプセルの中にカプセル化される。
【0103】
医薬として投与可能な液体組成物は、例えば、上記で定義した活性化合物、および、任意的な医薬アジュバントを担体(例えば、水、生理食塩水、水性のデキストロース、グリセロール、グリコール、エタノール他)中に溶解、分散等させて溶液または懸濁液をつくることで調製することができる。注射可能な薬剤は、液体の溶液または懸濁液として、乳液として、あるいは、注射する前に液体中に溶解または懸濁させるのに適した固体の形態で、慣用の剤形で調製することができる。このような非経口投与用組成物に入っている活性化合物のパーセントは、その特異的な特性ならびにその化合物の活性および患者のニーズによって大きく変わる。そうは言うものの、溶液中の活性成分のパーセントが0.01%〜10%であるものは採用可能で、その組成物が、後に上記パーセントに希釈されることになる固体剤である場合は、この値はもっと高くなる。好ましくは本組成物は、溶液で活性成分0.2〜2%を含むようにする。
【0104】
本活性化合物または塩の製剤は、単独で、あるいは、ラクトースのような不活性担体と組み合せて、呼吸器路にネブライザー用エアロゾルまたは溶液として、あるいは、通気法用微細粉末として投与することもできる。このような場合、製剤粒子直径は50ミクロン未満、好ましくは10ミクロン未満である。
【0105】
スクリーニングにおける使用
本発明の化合物をミオシン結合についてのスクリーニング法において用いるには通常、ミオシンを支持体に結合させ、本発明の化合物をアッセイに加える。別のやり方としては、本発明の化合物を支持体に結合させ、そうしておいてミオシンを加えることもできる。新規な結合性作用物質を捜し求めることができるかも知れない化合物の群としては、特異的抗体、ケミカルライブラリー、ペプチド類似体などのスクリーニングで明らかにされた非天然の結合性作用物質が挙げられる。特に興味を引くのは、ヒト細胞に対して低い毒性をもつ候補作用物質についてのスクリーニングアッセイである。各種のアッセイをこの目的のために用いることができ、例えば標識化インビトロタンパク質・タンパク質結合アッセイ、電気泳動度シフトアッセイ(electrophoretic mobility shift assay)、タンパク質結合の免疫学的アッセイ、機能性アッセイ(ホスホリル化アッセイ、他)が挙げられる。例えば、米国特許第6,495,337号を参照されたい(参照で本明細書に組み込む)。
【実施例】
【0106】
以下の実施例は、上記の本発明の使用様式をより完全に記述し、ならびに本発明の様々な態様を実施するために意図される最良の様式を説明するのに役立つ。これらの実施例はいずれも、本発明の真の範囲を限定するのではなく、むしろ例示目的で提供されるものであることが理解される。本明細書で引用される全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0107】
実施例1
【化10】

【0108】
4-(3-カルボキシ-4-クロロ-ベンゼンスルホニル)-ピペラジン-1-カルボン酸エチルエステルの調製
2-クロロ-5-フルオロスルホニル安息香酸(Acos Organics, 105 mg, 440μmol, 1.0当量)をバイアルに入れ、このバイアルを窒素でフラッシュし、陽圧を維持した。無水ジクロロメタン(1.4 mL)を加えた後、エチル1-ピペラジンカルボキシレート(80μL, 528μmol, 1.2当量)およびエチルジイソプロピルアミン(再蒸留、80μL、440μmol, 1.0当量)を加えた。混合物を1.5時間攪拌した後、さらにピペラジンを加えた(60μL, 352μmol, 0.8当量)。14時間後、混合物を、陰イオンモードの逆相HPLC-MSにより分析した。出発材料フッ化スルホニル、ならびに(M-1)イオンを示す極性の低い化合物が約35:65の比で存在した。さらに0.35当量のピペラジンおよびエチルジイソプロピルアミンをそれぞれ加え(154μmol, 30μl)、混合物を4時間攪拌した。この時点でのHPLC-MSはわずかな進行を示し、さらに0.25当量のピペラジン(100μmol, 20μL)を加えた。14時間攪拌した後、HPLC-MSは反応が完了したことを示した。反応混合物を2 mLの酢酸エチルで希釈し、1M HCl溶液で洗浄し(2 x 1 mL)、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶液を濾過し、溶媒を回転式エバポレーターおよび減圧ポンプ上で除去したところ、134 mgの白色固体(81%)が得られた。注記:反応開始時での過剰の求核アミンの添加は有意なビス付加をもたらし、スルホンアミドおよびカルボキシアミド生成物が得られる。必要に応じた求核アミンの段階的添加はこの副生成物の形成を抑制する。
【0109】
4-[4-クロロ-3-(5-フェニル-[1,3,4]チアジアゾール-2-イルカルバモイル)-ベンゼンスルホニル]-ピペラジン-1-カルボン酸エチルエステルの調製
上記の安息香酸ピペラジンエチルエステル(131 mg, 348μmol, 1.0当量)を、2-アミノ-5-フェニル-1,3,4-チアジアゾールサルフェート(115 mg, 417μmol, 1.2当量)、HBTU (Advanced Chem Tech, 198 mg, 521μmol, 1.5当量)およびHOBt水和物(80 mg, 521μmol, 1.5当量)と共にバイアルに入れた。バイアルを窒素でフラッシュし、陽圧を維持した。無水ジメチルホルムアミド(1.7 mL)を加えた後、エチルジイソプロピルアミン(再蒸留、120μL, 695μmol, 2.0当量)を加え、混合物を14時間攪拌した。ポジティブモードでの逆相HPLC-MSによる分析により、酸出発材料が消費され、所望の(M+1)を示すより極性の低い化合物と置換されたことが示された。反応混合物を4 mLの水で希釈し、得られた沈殿物を濾過により回収し、以下のもの:水 x 2、1M HCl溶液 x 2、飽和炭酸水素ナトリウム溶液 x 2、水 x 2およびヘキサン x 1で洗浄し、吸引下で乾燥した。119 mgの灰白色固体(収率64%)が得られた。
【0110】
実施例2
4-(3-カルボキシ-4-クロロ-ベンゼンスルホニル)-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステルの調製
以下の改変を加えて上記の化合物と同様に調製した:1日目に総計2.0当量のtert-ブチル1-ピペラジンカルボキシレートの添加後、HPLC-MS分析により反応が1/3だけ完了したことが示された。さらに1.4当量のピペラジンを加え、反応物を24時間攪拌した。この時間の後、反応が完了したことが判明し、反応をエチルの場合と同様に実施した。1M HCl溶液で洗浄する代わりに、0.3M硫酸水素カリウム溶液を用い、飽和塩化ナトリウム溶液での洗浄も加えた後、乾燥、濃縮した。所望の収量の生成物が得られた。
【0111】
4-[4-クロロ-3-(1H-イミダゾール-2-イルカルバモイル)-ベンゼンスルホニル]-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステルの調製
上記の安息香酸ピペラジンtert-ブチルエステル(1.57 g, 3.88 mmol, 1.0当量)を、2-アミノイミダゾールサルフェート(Aldrich, 615 mg, 4.65 mmol, 1.2当量)、HATU (PE Biosystems, 2.21 g, 5.82 mmol, 1.5当量)およびHOAt (Avocado, 792 mg, 5.82 mmol, 1.5当量)と共に100 mLの丸底フラスコに入れた。フラスコを隔壁でキャップし、窒素でフラッシュし、陽圧を維持した。無水ジメチルホルムアミド(17 mL)を加えた後、エチルジイソプロピルアミン(再蒸留、1.4 mL, 7.76 mmol, 2.0当量)を加え、混合物を14時間攪拌した。ポジティブモードでの逆相HPLC-MSによる分析により、酸出発材料が消費され、所望の(M+1)を示すより極性の低い化合物と置換されたことが示された。反応混合物を80 mLの水で希釈し、得られた沈殿物を濾過により回収し、以下のもの:水 x 3、ヘキサン x 2で洗浄し、吸引下で乾燥したところ、1.46 gの灰白色固体が得られた。粗物質を、EtOAc-ヘキサン-トリエチルアミン(89:10:1 v/v)、次いでEtOAcで溶出して精製(シリカゲルフラッシュカラム、5.1 cm x 15 cm)したところ、896 mgの灰白色(収率49%)が得られた。TLC EtOAc-トリエチルアミン(99:1 v/v) Rf=0.27。
【0112】
2-クロロ-5-[4-(2-シクロヘキシル-アセチル)-ピペラジン-1-スルホニル]-N-(1H-イミダゾール-2-イル)-ベンズアミドの調製
上記のBoc-ピペラジンイミダゾール化合物(109 mg, 232μmol, 1.0当量)をバイアルに入れ、2.6 mLのトリフルオロ酢酸/ジクロロメタン/トリエチルシラン(50:49:1)で処理した。15分後、逆相HPLC-MSにより示されたように、Boc除去が完了し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をクロロホルムで3回共沸させ、減圧下に1時間置いた。1-エチル-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(EDC)(Advaned Chem Tech, 67 mg, 348μmol, 1.5当量)、HOBt水和物(57 mg, 371μmol, 1.6当量)をバイアルに加え、バイアルを密閉し、窒素でフラッシュし、陽圧を維持した。無水ジクロロメタン(1.7 mL)を加えた後、エチルジイソプロピルアミン(再蒸留、250μL, 1.39 mmol, 6.0当量)およびシクロヘキシル酢酸(TCl, 40μL, 278μmol, 1.2当量)を加え、混合物を14時間攪拌した。ポジティブモードでの逆相HPLC-MSによる分析により、出発材料ピペラジンが消費され、所望の(M+1)を示すより極性の低い化合物と置換されたことが示された。反応混合物を4 mLのEtOAcで希釈し、有機相をそれぞれ2 mLの以下のもの:水 x 3、飽和炭酸水素ナトリウム溶液 x 1、飽和塩化ナトリウム x 1で洗浄した。有機抽出物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮したところ、61 mgの灰白色固体(収率78%)が得られた。
【0113】
4-[4-クロロ-3-(1H-イミダゾール-2-イルカルバモイル)-ベンゼンスルホニル]-ピペラジン-1-カルボン酸(R)-sec-ブチルエステルの調製
上記のBoc-ピペラジンイミダゾール化合物(148 mg, 315μmol, 1.0当量)をバイアルに入れ、シクロヘキシルアセトアミド化合物について上記したように3.6 mLのトリフルオロ酢酸/ジクロロメタン/トリエチルシラン(50:49:1)で処理した。(R)-カルボン酸sec-ブチルエステル4-ニトロ-フェニルエステル、93重量%(89 mg, 346μmol, 1.1当量)および3 mgのDMAPをバイアルに加え、バイアルを密閉し、窒素でフラッシュし、陽圧を維持した。無水DMF(2.1 mL)を加えた後、エチルジイソプロピルアミン(再蒸留、170μL, 945μmol, 3.0当量)を加え、混合物を40℃で14時間攪拌した。ポジティブモードでの逆相HPLC-MSによる分析により、非常に極性の高い未保護ピペラジン出発材料が消費され、所望の(M+1)を示すより極性の低い化合物、ならびに少量のさらに極性の低いビスアシル化された材料と置換されたことが示された。熱を除去し、反応混合物を4 mLの2N NaOH溶液で希釈し、10分間攪拌した。混合物をEtOAc(3 x 2 mL)で抽出し、有機相をそれぞれ2 mLの以下のもの:2N NaOH x 5(黄色が消失するまで)、水 x 1、10% HOAc溶液 x 1、水 x 1、飽和炭酸水素ナトリウム溶液 x 1、飽和塩化ナトリウム x 1で洗浄した。有機抽出物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮したところ、121 mgの灰白色固体(収率82%)が得られた。
【0114】
4-[4-クロロ-3-(1H-イミダゾール-2-イルカルバモイル)-ベンゼンスルホニル]-ピペラジン-1-カルボン酸イソプロピルエステルの調製
上記のBoc-ピペラジンイミダゾール化合物(86 mg, 183μmol, 1.0当量)をバイアルに入れ、シクロヘキシルアセトアミド化合物について上記したように1.8 mLのトリフルオロ酢酸/ジクロロメタン/トリエチルシラン(50:49:1)で処理した。DMAP(2 mg)をバイアルに加え、バイアルを密閉し、窒素でフラッシュし、陽圧を維持した。無水DCM(2.1 mL)を加えた後、エチルジイソプロピルアミン(再蒸留、120μL, 640μmol, 3.5当量)およびトルエン中のイソプロピルクロロホルマートの1.0M溶液(220μL, 220μmol, 1.2当量)を加え、混合物を14時間攪拌した。ポジティブモードでの逆相HPLC-MSによる分析により、非常に極性の高い未保護のピペラジン出発材料が消費され、所望の(M+1)を示すより極性の低い化合物と置換されたことが示された。固体が沈殿した。溶媒を減圧下で除去し、固体を1 mLのDMF中に取り、4 mLの水で再沈降させ、濾過により単離し、水 x 3、ヘキサン x 2で洗浄し、吸引下で乾燥した。白色の固体(50 mg(収率60%))が得られた。
【0115】
実施例3
【化11】

【0116】
4-[4-クロロ-3-(1H-イミダゾール-2-イルカルバモイル)-ベンゼンスルホニル]-N-シアノ-ピペラジン-1-カルボキシイミジン酸フェニルエステルの調製
上記のBoc-ピペラジンイミダゾール化合物(2.04 g, 4.33 mmol, 1.0当量)をシクロヘキシルアセトアミド化合物について上記したように1.8 mLのトリフルオロ酢酸/ジクロロメタン/トリエチルシラン(50:49:1)で処理した。残渣を、pH>8になるまで飽和炭酸水素ナトリウムで処理した後、溶液をEtOAcで抽出し、減圧下で濃縮したところ、1.6 gの遊離アミンが得られた。ジフェニルシアノカルボンイミダート(1.08 g, 4.54 mmol, 10.5当量)をフラスコに加え、それを密閉し、窒素でフラッシュし、陽圧を維持した。無水THF(30 mL)を加えた後、エチルジイソプロピルアミン(再蒸留、830μL, 4.76 mmol, 1.1当量)を加え、混合物を1時間攪拌した。ポジティブモードでの逆相HPLC-MSによる分析により、非常に極性の高い未保護のピペラジン出発材料が消費され、所望の(M+1)を示す化合物と置換されたことが示された。溶媒を減圧下で除去した。
【0117】
2-クロロ-5-[4-(N-シクロペンチル-N’-シアノ-カルバミミドイル)-ピペラジン-1-スルホニル]-N-(1H-イミダゾール-2-イル)-ベンズアミドの調製
上記のフェニルイミダート(100 mg, 195μmol, 1.0当量)をバイアルにいれ、密閉し、窒素でフラッシュし、陽圧を維持した。無水THF(5 mL)を加えた後、シクロペンチルアミン(100μL, 973μmol, 5.0当量)を加え、混合物を48時間攪拌した後、溶媒を減圧下で除去した。残渣を逆相HPLCにより精製したところ、27 mgの生成物(収率27%)が得られた。
【0118】
実施例4
2-クロロ-5-(4-メチル-ピペラジン-1-スルホニル)-安息香酸の調製
2-クロロ-5-フルオロスルホニル安息香酸(Acros Organics, 195 mg, 813μmol, 1.0当量)をバイアルに入れ、バイアルを窒素でフラッシュし、陽圧を維持した。無水ジクロロメタン(2.7 mL)を加えた後、1-メチルピペラジン(110μL, 976μmol, 1.2当量)を加えた。混合物を2時間攪拌した後、さらに1.2当量を加えた。14時間後、混合物を陽イオンモードの逆相HPLC-MSにより分析した。極性の低いフッ化スルホニル出発材料が消費され、所望の(M+1)を有する非常に極性の高い化合物と置換された。溶媒を減圧下で除去したところ、407 mgの淡黄色固体が得られた。1H-NMRにより、メチルピペラジンと夾雑した所望の化合物が存在した。
【0119】
2-クロロ-5-(4-メチル-ピペラジン-1-スルホニル)-安息香酸メチルエステルの調製
上記の粗メチルピペラジン安息香酸(259 mg, 813μmol, 1.0当量)を4 mLのベンゼン中の30% MeOHに溶解した。ヘキサン溶液中の2.0 M トリメチルシリルジアゾメタン(410μL, 813μmol, 1.0当量)を滴下しながら加えた。15分後、混合物をポジティブモードの逆相HPLC-MSにより分析した。出発材料、ならびに極性の低い生成物が存在した。別の1.0当量のジアゾメタン化合物を加え、15分後、反応を再びモニターした。さらに0.2当量のジアゾメタンを加え(90μL, 178μmol)、15分後、反応が完了したことをHPLC-MSにより判定した。数滴の氷HOAcを黄色が消失するまで加え、溶媒を減圧下で除去したところ、491 mgの黄色のガラスが得られた。これを2 mLの50%飽和炭酸水素ナトリウム溶液(pH>8)中に取り、ジクロロメタンで抽出した(3 x 1 mL)。抽出物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮したところ、224 mgの黄色の油(83%)が得られた。
【0120】
2-クロロ-5-(4-メチル-ピペラジン-1-スルホニル)-安息香酸リチウムの調製
上記のメチルピペラジンメチルエステル(197 mg, 592μmol, 1.0当量)をバイアルに入れ、1.5 mLのMeOHおよび30μLの水に溶解した。LiOH水和物(26 mg, 622μmol, 1.05当量)を加え、バイアルを密閉し、窒素でフラッシュし、陽圧を維持した。混合物を60℃で4時間加熱し、逆相HPLC-MSにより反応が完了したことを判定した。溶媒を減圧下で除去したところ、197 mgの白色固体が得られた。
【0121】
2-クロロ-5-(4-メチル-ピペラジン-1-スルホニル)-N-(5-フェニル-[1,3,4]チアジアゾール-2-イル)-ベンズアミドの調製
上記のメチルピペラジン酸塩(93 mg, 286μmol, 1.0当量)を、酸塩を中和し、溶解を行うために、反応開始の1時間後にエチルジイソプロピルアミンを加えたこと以外は上記と同様のHBTUプロトコルを用いて、2-アミノ-5-フェニル-1,3,4-チアジアゾールサルフェートとカップリングさせた。合計3時間後、ポジティブモードの逆相HPLC-MS分析により反応が完了した。反応混合物を3 mLの水で希釈し、飽和炭酸水素塩溶液の添加によりpH=8にした。得られた沈殿物を濾過により回収し、以下のもの:水 x 2およびヘキサン x 1で洗浄した。生成物を109 mgの灰白色固体(収率80%)として単離した。
【0122】
実施例5
出発材料の合成
2-アミノ-4-フェニルイミダゾール(式Iの化合物の合成における試薬)を、Little, T.L.; Webber, S.E. “A Simple and Practical Synthesis of 2-Aminoimidazoles” J. Org. Chem. 1994, 59, 7299-7305(参照により本明細書に組み入れられるものとする)の手順から合成した。
【0123】
2-アミノ-5-フェニルピリミジンを、Gong, Y.; Pauls, H. W. “A Convenient Synthesis of Heteroarylbenzoic Acids via Suzuki Reaction” Synlett, 2000, 6, 829-831(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載の手順と類似の様式で合成した。
【0124】
2-アミノオキサゾールを、Cockerill, A.F.; Deacon, A.; Harrison, R.G.; Osborne, D.J.; Prime, D. M.; Ross, W.J.; Todd, A.; Verge, J.P. “An Improved Synthesis of 2-Amino-1,3-Oxazoles Under Basic Conditions” Synthesis, 1976, 591-593(参照により本明細書に組み入れられるものとする)の手順から調製した。
【0125】
2-アミノ-4-メチルイミダゾールを、Little, T.L.; Webber, S.E. “A Simple and Practical Synthesis of 2-Aminoimidazoles” J. Org. Chem. 1994, 59, 7299-7305(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載の手順に従って調製した。
【0126】
実施例6
(R)-カルボン酸sec-ブチルエステル4-ニトロ-フェニルエステルの調製
4-ニトロフェニルクロロホルマート(1.91 g, 9.50 mmol, 1.1当量)をバイアルに入れ、バイアルを窒素でフラッシュし、陽圧を維持した。無水ジクロロメタン(10 mL)を加えた後、(R)-sec-ブチルアルコール(Acros Organics, 800μL, 8.63 mmol, 1.0当量)および無水ピリジン(770μL, 9.50 mmol, 1.1当量)を加えた。15時間後、1種類の非極性化合物がHPLC-MSにより観察されたが、ポジティブモードでもネガティブモードでもイオン化しなかった。反応混合物を10 mLの酢酸エチルで希釈し、それぞれ7 mLの以下のもの:0.5 M NaOH溶液 x 2、水 x 1、1 M HCl溶液 x 1、水 x 1、飽和塩化ナトリウム x 1で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶液を濾過し、溶媒を回転式エバポレーター上で除去し、減圧したところ、2.11 gの淡黄色固体が得られた。これは、1H-NMRにより11 mol%の4-ニトロフェノールを含むことが示され、93重量%の純度であると判定された。従って、合計収率は95%であった。
【0127】
実施例7
標的同定アッセイ
特異性アッセイ:心臓ミオシンに対する化合物の特異性は、単一の50μMの化合物濃度におけるミオシンアイソフォームのパネル(一団)、すなわち心筋、骨格筋および平滑筋、のアクチン刺激によるATPアーゼに対する化合物の影響を比べることで評価する。
【0128】
筋原線維アッセイ:天然筋節での全長心臓ミオシンのATPアーゼ活性に対する化合物の影響を評価するのにスキンド筋原線維アッセイを行った。界面活性剤の存在下にラット心臓組織をホモジネートすることでラット心臓筋原線維を得た。このような処理は膜および可溶性細胞質タンパク質の大部分を除去するが、心臓筋節のアクトミオシン器官はそのまま残す。筋原線維プレパラートは、ATPをCa++制御方式で加水分解する能力を維持している。化合物の存在下および不存在下におけるそのような筋原線維調製物のATPアーゼ活性は、最大速度の50%および100%を示すCa++濃度においてアッセイした。
【0129】
実施例8
用量依存性心臓ミオシンATPアーゼモジュレーションのインビトロモデル
用量応答は、以下の試薬(記載されている濃度は最終アッセイ濃度である):カリウムPIPES(12mM)、MgCl2(2mM)、ATP(1mM)、DTT(1mM)、BSA(0.1mg/mL)、NADH(0.5mM)、PEP(1.5mM)、ピルビン酸キナーゼ(4 U/mL)、乳酸デヒドロゲナーゼ(8 U/mL)、および消泡剤(90 ppm)を含む、カルシウム緩衝の、ピルビン酸キナーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼ結合ATPアーゼアッセイを用いて測定する。pH は、水酸化カリウムを加えることで22℃にて6.8に調整する。カルシウム濃度は、0.6mM EGTAおよび様々な濃度のカルシウムを含有する緩衝システムにより制御して、1x10-4 M〜1x10-8 Mの遊離カルシウム濃度を達成する。
【0130】
このアッセイに特異的なタンパク質成分は、ウシ心臓ミオシンサブフラグメント-1(典型的には0.5μM)、ウシ心臓アクチン(14μM)、ウシ心臓トロポミオシン(典型的には3μM)、およびウシ心臓トロポニン(典型的には3〜8μM)である。1mM EGTAの存在下で測定した場合のATPアーゼ活性と、0.2mM CaCl2の存在下で測定した場合のATPアーゼ活性との間に最大差を達成するトロポミオシンおよびトロポニンの正確な濃度は、滴定により経験的に決定される。アッセイにおいて、所望のATP加水分解速度を達成するミオシンの正確な濃度も滴定により経験的に決定される。これは、各タンパク質プレパラートにおける活性分子の割合がばらついていることからプレパラート間で変わる。
【0131】
化合物用量応答は、典型的には最大ATPアーゼ活性の50%に対応するカルシウム濃度(pCa50)において測定するので、予備的な実験を行って、1x10-4 M〜1x10-8 Mの遊離カルシウム濃度に対するATPアーゼ活性の応答を試験する。その後、アッセイ混合物をpCa50(典型的には3x10-7 M)に調整する。アッセイは、最初に試験化合物の希釈シリーズを調製することで行い、各々には、カリウムPipes、MgCl2、BSA、DTT、ピルビン酸キナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、ミオシンサブフラグメント-1、泡消剤、EGTA、CaCl2、および水を含むアッセイ混合物が入っている。このアッセイは、カリウムPipes、MgCl2、BSA、DTT、ATP、NADH、PEP、アクチン、トロポミオシン、トロポニン、泡消剤、および水を含む溶液の等容量を加えることで開始する。ATP加水分解は340nmにおける吸光度で追跡する。得られた用量応答曲線は、4パラメーター方程式 y = Bottom +((Top - Bottom)/(1+((EC50/X)^Hill)))で近似する。AC1.4 は、ATPアーゼ活性が用量曲線のBottom(底)よりも1.4倍高い濃度と定義される。
【0132】
実施例9
筋細胞アッセイ
ラット成体心臓心室筋細胞の調製
成体雄性Sprague-Dawleyラットをイソフルランガス・酸素混合物で麻酔する。心臓を素早く切除し、リンスし、その上行大動脈にカニューレを挿入する。心臓に対し灌流圧力60cm H20で連続的逆行灌流を開始する。心臓を、以下の成分:110mM NaCl、2.6mM KCL、1.2mM KH2PO4 7H20、1.2m MmgSO4、2.1mM NaHCO3、11mM グルコースおよび4mM Hepes(全てSigma社)の、名目上Ca2+が入っていない変性Krebs溶液で最初に灌流を行う。この培地は循環させず、絶えずO2をガス供給する。約3分後、心臓が十分に白化、軟化するまで、3.3%コラゲナーゼ(169 μ/mg活性、Class II、Worthington Biochemical Corp., Freehold, NJ)および25 μM最終カルシウム濃度が補足された変性Krebs緩衝液で心臓を灌流した。心臓をカニューレから取り外し、心房と血管を捨て、心室を小片にカットする。心室組織をコラゲナーゼ含有新鮮Krebs中に穏やかに掻き混ぜることで筋細胞を分散させ、その後50ccの管の中にある200μMナイロンメッシュを穏やかに通過させる。得られた筋細胞を、25 μmカルシウム含有変性Krebs溶液中に再懸濁させる。カルシウム溶液(100mMストック液)を10分間隔で100 μMカルシウムが達成されるまで加えることで、筋細胞をカルシウム耐性にする。30分後、上澄み液を捨て、Tyrode緩衝液(137mM NaCL、3.7mM KCL、0.5mM MgCL、11mM グルコース、4mM Hepes、および1.2mM CaCl2、pH 7.4)30〜50mLを細胞に加える。細胞を37℃に60分間保持してから実験を開始し、単離して5時間以内に使用した。細胞が標準(ベース[基準]の >150%)およびイソプロテレノール(イソ;ベースの > 250%)にこたえることでQC判定基準をパスした場合のみ、細胞のプレパラートは用いる。さらに、ベース収縮能が3〜8%である細胞のみを以下の実験に用いた。
【0133】
成体心室筋細胞収縮能の実験
筋細胞が入っているTyrode緩衝液のアリコートを、加熱台を備えた灌流チャンバー(RC-27NE シリーズ20; Warner Instruments)に入れた。筋細胞をくっ付かせ、チャンバーを37℃に加熱し、細胞をこの後37℃のTyrode緩衝液で灌流した。筋細胞を白金電極間の中で1 Hzで場励起する(閾値の20%上で)。はっきりとした条線をもちかつペーシング(pacing)の前に無活動である細胞のみを収縮能実験に使用する。ベース収縮能を測定するため、可変フレーム速度(60〜240 Hz)式電荷結合型デバイスカメラを用いて、筋細胞を40x対物レンズで撮像し、その画像をデジタル化し、サンプリングスピード240 Hzでコンピュータースクリーン上に表示する。[フレームグラッバー(Framegrabber)、ミオペーサー(myopacer)、収集(acquisition)、および細胞収縮能についての分析ソフトウエアは、IonOptix(Milton, MA)から入手可能である。]最低5分のベース収縮期間の後、試験化合物(0.01〜15 μM)を筋細胞に5分間灌流する。この時点以降、新鮮なTyrode緩衝液を灌流して、化合物のウォッシュアウト(washout)特性を評価する。端部検出法を用いて、筋細胞の収縮能ならびに収縮速度および弛緩速度を連続的に記録する。
【0134】
収縮能の分析:2つまたはそれ以上の異なる筋細胞プレパラートを用いて、化合物1つあたり3つまたはそれ以上の個別の筋細胞を試験した。各細胞について、ベースにおける(化合物インフュージョン(注入)の前1分と定義する)、および、化合物を加えたあとの収縮能トランジエントの20個またはそれ以上を平均し、比べる。これらの平均トランジエントを分析して拡張期長さの変化を決定し、Ionwizard分析プログラム(IonOptix)を用いて短縮率(拡張期長さの減少%)、ならびに最大収縮速度および弛緩速度(um/秒)を決定する。個々の細胞の分析データを合わせる。ベースに対する短縮率の増加は、筋細胞収縮能の増強を意味する。
【0135】
カルシウムトランジエント分析
Fura負荷:細胞透過性Fura-2(Molecular Probes社)をプルロニック(Mol Probes社)およびFBSの等量中にRT(室温)にて10分間溶解させる。1 μMのFuraストック溶液を、500mMのプロベネシド(Sigma社)を含有するTyrode緩衝液でつくる。細胞を負荷するため、この溶液をRTにて筋細胞に加えた。10分後緩衝液を除去し、細胞をプロベネシド含有Tyrodeで洗い、RTにて10分間インキュベートする。洗浄とインキュベートを繰り返す。収縮能とカルシウムの同時測定を負荷の40分内に行う。
【0136】
撮像:試験化合物を細胞に灌流する。同時の収縮能とカルシウムトランジエント比をベースライン(baseline)および化合物を加えた後において測定する。蛍光発光によるカルシウム測定との干渉を避けるため光路中に赤色フィルターを使用して、細胞をデジタル的に撮像し、収縮能を上記したようにして測定する。カルシウムトランジエント分析についての収集、分析用ソフトウエアおよびハードウエアはIonOptixから得られる。この蛍光発光測定用機器中にはキセノンアークランプ、および、ガルバノ駆動ミラー(galvo-driven mirror)により波長340と380との間で交互するHyperswitchデュアル励起光源が入っている。液体充満ライト(光)ガイドによりこのデュアル励起光が顕微鏡まで送達され、発光蛍光が光電子増倍管[photomultiplier tube(PMT)]を用いて測定される。蛍光発光システムインターフェイス(fluorescence system interface)がこのPMT信号の配信路を決め、その比がIonWizard収集プログラムを用いて記録される。
【0137】
分析:各細胞について、ベースにおける、および化合物を加えた後における10またはそれ以上の収縮能/カルシウム比トランジエントを平均し、比較した。収縮能平均過渡データをIonwizard分析プログラムを用いて分析して、拡張期長さにおける変化、および、短縮率(拡張期長さの低下%)を決定する。平均カルシウム比トランジエントをIonwizard分析プログラムを用いて分析して、拡張期比および収縮期比における変化、および、ベースライン(基準線)の75%時間(T75)を決定する。
【0138】
持続性:応答の持続性を評価するため、筋細胞を、試験化合物に25分間曝露し、その後2分間ウォッシュアウト(washout;洗い出し)を行った。収縮能応答を、化合物インフュージョン後5分および25分において比較する。
【0139】
閾値電圧:筋細胞は閾値より約20%高い電圧で場励起する。これらの実験では閾値電圧(細胞をペース運動させる最低電圧)は経験的に決められ、細胞をこの閾値においてペース運動させ、そうして試験化合物をインフュージョンする。化合物活性が定常状態になった後、電圧を20秒間下げ、その後再スタートさせる。イオンチャネルの交互変化は、閾値作用電圧を上げることまたは下げることに相当する。
【0140】
HZ 周波数:筋細胞の収縮性は3 Hzで以下のようにして測定される:1分のベース時間点の後試験化合物を5分間灌流、その後2分間のウォッシュアウト。細胞の収縮が完全にベースラインに戻った後Hz周波数を1に下げる。初期の順化期間の後、細胞を同じ化合物に曝露する。この種(ラット)は1 Hzにおいて負の力収縮頻度(force frequency)を示すので、3 Hzにおいてはその細胞のFS(fractional shortening;左室内径短縮率)はもっと小さいと考えられるが、細胞は、本化合物の存在下ではその短縮率を大きくすることでなお応答すると考えられる。
【0141】
イソプロテレノールによる添加物:化合物がアドレナリン刺激薬イソプロテレノールとは異なるメカニズムで作用することを実証するため、細胞にfura-2を負荷し、収縮/カルシウム比の同時測定を行う。筋細胞を、5 μmの試験化合物、緩衝液、2nMのイソプロテレノール、緩衝液、および、試験化合物とイソプロテレノールの組み合せに順次曝露する。
【0142】
実施例10
用量依存性心臓ミオシンATPアーゼモジュレーションのインビトロモデル
ウシおよびラットの心臓ミオシンをそれぞれの心臓組織から精製する。特異性試験に使用する骨格筋ミオシンおよび平滑筋ミオシンはウサギ骨格筋およびニワトリ砂嚢からそれぞれ精製する。アッセイに使用するミオシンを全て、キモトリプシンによる限定的タンパク分解により単頭型可溶形(single-headed soluble form;S1)に変換する。その他の筋節構成要素:トロポニン複合体、トロポミオシンおよびアクチンは、ウシ心臓(心臓筋節)またはニワトリ胸筋(骨格筋節)から精製した。
【0143】
ミオシンの活性は、ATPの加水分解速度を測定することで追跡する。ミオシンATPアーゼはアクチンフィラメントにより極めて顕著に活性化される。ATPターンオーバーは、ピルビン酸キナーゼ(PK)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を用いる結合酵素的アッセイで検出する。このアッセイでは、ATP加水分解の結果として生成したADPのそれぞれは、LDHによるNADH分子の同時酸化でPKによりATPに再生される。NADH酸化は、340nmの波長における吸光度の減少により都合よく追跡することができる。
【0144】
用量応答は、以下の試薬(記載されている濃度は最終アッセイ濃度である):カリウムPIPES(12mM)、MgCl2(2mM)、ATP(1mM)、DTT(1mM)、BSA(0.1mg/mL)、NADH(0.5mM)、PEP(1.5mM)、ピルビン酸キナーゼ(4 U/mL)、乳酸デヒドロゲナーゼ(8 U/mL)、および消泡剤(90 ppm)を含む、カルシウム緩衝の、ピルビン酸キナーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼ結合ATPアーゼアッセイを用いて測定する。pH は、水酸化カリウムを加えることで22℃にて6.8に調整する。カルシウム濃度は、0.6mM EGTAおよび様々な濃度のカルシウムを含有する緩衝システムにより制御して、1x10-4 M〜1x10-8 Mの遊離カルシウム濃度を達成する。
【0145】
このアッセイに特異的なタンパク質成分は、ウシ心臓ミオシンサブフラグメント-1(典型的には0.5μM)、ウシ心臓アクチン(14μM)、ウシ心臓トロポミオシン(典型的には3μM)、およびウシ心臓トロポニン(典型的には3〜8μM)である。1mM EGTAの存在下で測定した場合のATPアーゼ活性と、0.2mM CaCl2の存在下で測定した場合のATPアーゼ活性との間に最大差を達成するトロポミオシンおよびトロポニンの正確な濃度は、滴定により経験的に決定される。アッセイにおいて、所望のATP加水分解速度を達成するミオシンの正確な濃度も滴定により経験的に決定される。これは、各タンパク質プレパラートにおける活性分子の割合がばらついていることからプレパラート間で変わる。
【0146】
化合物用量応答は、典型的には最大ATPアーゼ活性の50%に対応するカルシウム濃度(pCa50)において測定するので、予備的な実験を行って、1x10-4 M〜1x10-8 Mの遊離カルシウム濃度に対するATPアーゼ活性の応答を試験する。その後、アッセイ混合物をpCa50(典型的には3x10-7 M)に調整する。アッセイは、最初に試験化合物の希釈シリーズを調製することで行い、各々には、カリウムPipes、MgCl2、BSA、DTT、ピルビン酸キナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、ミオシンサブフラグメント-1、泡消剤、EGTA、CaCl2、および水を含むアッセイ混合物が入っている。このアッセイは、カリウムPipes、MgCl2、BSA、DTT、ATP、NADH、PEP、アクチン、トロポミオシン、トロポニン、泡消剤、および水を含む溶液の等容量を加えることで開始する。ATP加水分解は340nmにおける吸光度で追跡する。得られた用量応答曲線は、4パラメーター方程式 y = Bottom +((Top - Bottom)/(1+((EC50/X)^Hill)))で近似する。AC1.4 は、ATPアーゼ活性が用量曲線のBottom(底)よりも1.4倍高い濃度と定義される。
【0147】
化合物が心臓ミオシンを活性化する化合物の能力は、S1サブフラグメントのアクチン刺激によるATPアーゼに対する化合物の効果により評価する。アッセイにおけるアクチンフィラメントはトロポニンおよびトロポミオシンで修飾し、Ca++濃度は、最大活性の50%を生じると考えられる値に調整する。S1 ATPアーゼを、化合物の希釈系の存在下で測定する。コントロール(等容量のDMSO)の存在下で測定されたATPアーゼ速度よりも40%高い活性化に必要な化合物濃度をAC40として報告する。
【0148】
実施例11
インビトロ短縮率アッセイ
動物
Charles River Laboratoriesの雄Sprague Dawleyラット(275〜350g)をボーラス効果およびインフュージョン実験に使用する。心不全動物は後に述べる。ラットは1ケージあたり2匹入れ、エサおよび水に自由にアクセスできるようにしておく。実験の前に最低3日の順化期間を置く。
【0149】
心エコー検査
動物をイソフルランで麻酔し、手術の間、手術平面内に保持する。中心体温を、加熱パッドを使って37℃に維持する。麻酔をしたら、動物の毛を剃り、脱毛器(hair remover)をあてて、胸部から残っている全ての柔皮毛を除去する。胸部をさらに70% ETOHで下準備し、超音波ジェルをつける。GE System Vingmed超音波システム(General Electric Medical Systems)を使用して、10 MHzプローブを胸壁上に置き、乳頭筋のレベルにおいて短軸ビューで画像を得る。左心室の2-D(二次元)M-モードの画像を、化合物ボーラスのインジェクション(注射)またはインフュージョンの前および後に撮る。インビボ短縮率[(拡張末期径−収縮末期径)/拡張末期径×100]を、GE EchoPakソフトウエアプログラムを用いたM-モード画像分析により決定する。
【0150】
ボーラスおよびインフュージョンの効果
ボーラスおよびインフュージョンのプロトコルについては、短縮率は上述した心エコー検査により測定する。ボーラスおよびインフュージョンのプロトコルに対しては、5つの投薬前M-Mode画像を化合物のボーラスインジェクションまたはインフュージョンの前に30秒間隔で撮る。インジェクションの後は、M-モード画像を1分間隔および5分間隔で、その後は最大30分間隔で撮る。ボーラスインジェクション(0.5〜5mg/kg)またはインフュージョンは、尾静脈カテーテルによる。インフュージョンパラメーターは化合物の薬物速度論プロファイルから決定する。インフュージョンについては、動物に尾静脈カテーテルから1分の負荷用量、その後直ちに29分のインフュージョン用量を入れる。負荷用量は、目標濃度×定常状態分布容量を決めることで計算される。維持用量濃度は、目標濃度×クリアランス(clearance)を計算することで決める。化合物を25%キャビトロン賦形剤(cavitron vehicle)中に調剤してボーラスおよびインフュージョンのプロトコルを行う。血液サンプルを採って化合物の血漿濃度を測定する。
【0151】
実施例12
正常動物および心不全動物の血流力学
動物をイソフルランで麻酔し、手術平面内に維持して、カテーテル挿入に備えて毛を剃る。首部を切開し、右頸動脈を除去分離する。この右頸動脈の中に2本組French Millar Micro-tip Pressure Catheter(Millar Instruments, Houston, TX)をカニューレ挿入し、大動脈を過ぎて左心室の中まで通す。化合物または賦形剤がインフュージョンされる間、拡張末期圧、最大 + / - dp/dt、収縮期圧および心拍数を連続測定する。PowerLab機とそのChart 4ソフトウエアプログラム(Adinstruments, Mountain View, CA)を用いて測定を記録・分析する。血流力学測定を選択インフュージョン濃度において行う。血液サンプルを採取して化合物の血漿濃度を測る。
【0152】
実施例13
うっ血性心不全の左冠動脈閉塞モデル
動物
雄Sprague-Dawley CD(220〜225g;Charles River)ラットをこの実験に使用した。動物は、標準的な実験室条件下に置いて水と市販のげっ歯類用餌に自由にアクセスできるようにしておいた。部屋の温度を20〜23℃に維持し、部屋の灯かりを12/12時間・明/暗の周期においた。動物は実験の前に5〜7日この実験室環境に順応させた。動物は手術の前一晩絶食させた。
【0153】
閉塞手術
動物をケタミン/キシラジン(95mg/kgおよび5mg/kg)で麻酔し、14〜16ゲージ改良型静脈内カテーテルを挿管した。麻酔レベルを足指をピンチすることでチェックした。中心体温を加熱ブランケットを用いて37℃に維持した。手術部域をクリップ留めし、スクラブした。ラットを右側面横臥に置き、初めにピーク吸息圧10〜15cm H2Oおよび呼吸速度60〜110呼吸/分の人工呼吸器上に置いた。動物には人工呼吸器により100% O2を送達した。手術部位を手術用スクラブとアルコールでスクラブした。胸郭を4本目の肋骨と5本目の肋骨の肋間腔で切開した。下に在る筋肉を、外側胸静脈を避けるように注意しながら切り裂いて、肋間筋を露出させた。胸腔に4本目と5本目の肋骨の肋間腔から進入し、切開部を広げて心臓を目視できるようにした。心膜を開口して心臓を露出させた。テーパー状ニードル(taper needle)を用いて6-0 絹縫合糸を、左心耳の挿入部から約1mmのところに肺動脈円錐左縁と接触して存在する、左冠動脈の起点近傍のその左冠動脈の周りに通した。縫合糸を動脈の周りに縛ることで左冠動脈を閉塞させた(「LCO」)。偽(sham)ラットを、縫合糸を縛らない以外は同じに処置した。切開部を3層に閉鎖した。ラットは、自分で呼吸できるまで人工呼吸に付された。ラットから抜管し、加熱パッド上で回復させた。手術後鎮痛のためにブプレノルフィン(0.01-0.05mg/kg SQ)をラットに投与した。覚醒したら、ラットをそのケージに戻した。感染または苦痛の徴候についてラットを毎日追跡調査した。感染したまたは瀕死のラットは安楽死させた。ラットの体重を1週間に1度計った。
【0154】
薬効分析
梗塞形成術の約8週間後に、心エコー検査によって心筋梗塞の徴候についてラットを調べた。偽ラットに比べて短縮率が減っているラットだけをさらに薬効実験に利用した。全ての実験において、4つのグループ、すなわち偽+賦形剤、偽+化合物、LCL+賦形剤、およびLCL+化合物が存在した。LCLの10〜12週間後に、ラットに選択インフュージョン濃度でインフュージョンした。前と同じように、化合物をインフュージョンする前に5つの投与前M-Mode画像を30秒間隔で撮り、その後M-モード画像を30秒間隔で10分まで、その後毎分または5分間隔で撮った。このM-モード画像から短縮率を決定した。投与前短縮率と化合物処理短縮率間の比較は、ANOVAとポスドク学生Newman・Keulsによって行われた。ラットを回復させ、7〜10日内にラットに化合物を血流力学プロトコルにより再びインフュージョンして、心不全ラットにおける化合物の血流力学的変化を測った。インフュージョンの終了とともに、ラットを殺し、心臓の重量を測定した。
【0155】
上述のようにして試験したら、式Iの化合物は所望の作用をもっていることが示された。
【0156】
本発明をその特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、当業者なら、本発明の真の精神および範囲を逸脱することなく様々な変形体をつくることができること、また等価体で置き換えることができることを理解すべきである。加えて、本発明の目的、精神および範囲に、特定の状況、物質、物質の組成物、製法、製法工程を適応させて多くの改良をなすこともできる。そのような改良の全ては本明細書に添付の特許請求の範囲の中にあるものとみなす。これまでに引用した全ての特許および文献は本明細書に参照で組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、
R1およびR2は、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアラルキル、および置換されていてもよいヘテロアラルキルからなる群より独立に選択され;またはR1、R2およびそれらが結合している窒素は、置換されていてもよい5-、6-もしくは7-員ヘテロ環を形成しており;
R3は、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり;
R4は、ハロゲンであり;
R5は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、または置換されていてもよい低級アルキルであり;かつR6およびR7は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、および置換されていてもよい低級アルキルからなる群から独立に選択される)
により表される化合物、その単一の立体異性体、立体異性体の混合物、ならびにその医薬的に許容される塩、溶媒和物、および医薬的に許容される塩の溶媒和物。
【請求項2】
次の条件の1つ以上を満たしている請求項1に記載の化合物:
R1、R2およびそれらが結合している窒素が、置換されていてもよい5-、6-もしくは7-員ヘテロ環を形成している;
R3が、ハロゲン、低級アルコキシ、置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール基で置換されていてもよい、フェニル、イソキサゾリル、オキサゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、テトラゾール-5-イル、チアゾリル、チアジアゾリルまたはイミダゾリル基である;
R4がクロロである;ならびに
R5、R6およびR7が水素である。
【請求項3】
次の条件の1つ以上を満たしている請求項2に記載の化合物:
R1、R2およびそれらが結合している窒素が、ピペリジン-1-イル;ピペラジン-1-イル;モルホリン-4-イル;ピロリジン-1-イル;チオモルホリン-4-イルまたはジアゼパン-1-イルを形成しており、これらは以下の基:置換されていてもよいアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキレンジオキシ(例えば、メチレンジオキシ)、カルボキシ(-COOH)、置換されていてもよいアシルオキシ(RCOO-)、置換されていてもよいアルコキシカルボニル(-COOR)、置換されていてもよいアミノカルボニル、シアノ、置換されていてもよいアシル、オキソ、ニトロ、置換されていてもよいアミノ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、置換されていてもよいアミノスルホニル、アミジノ、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換されたヘテロシクリル、アリールオキシ、アラルコキシ、ヘテロアリールオキシ、およびヘテロアラルコキシのうちの1、2または3個で置換されていてもよい;ならびに
R3が置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい[1,3,4]チアジアゾール-2-イル基であるか、またはR3が1H-イミダゾール-2-イル基である。
【請求項4】
R1、R2およびそれらが結合している窒素が置換されていてもよいジアゼパン-1-イル環を形成している、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
R1、R2およびそれらが結合している窒素が置換されていてもよいピペラジン-1-イル環を形成している、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
R1、R2およびそれらが結合している窒素が置換されていてもよいピペリジン-1-イル環を形成している、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
R1、R2およびそれらが結合している窒素が置換されていてもよいピロリジン-1-イル環を形成している、請求項3に記載の化合物。
【請求項8】
R3がオキサゾール-2-イル、5-フェニル-[1,3,4]チアジアゾール-2-イルまたは1H-イミダゾール-2-イルである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R1、R2およびそれらが結合している窒素が、置換されていてもよい5-、6-もしくは7-員ヘテロ環を形成しており;
R3が置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールであり;
R4がハロゲンであり;ならびに
R5、R6およびR7が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
R4がクロロである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R1、R2およびそれらが結合している窒素が、置換されていてもよい5-、6-もしくは7-員ヘテロ環を形成しており;
R3が置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい[1,3,4]チアジアゾール-2-イル基であるか、またはR3が1H-イミダゾール-2-イル基であり;
R4がハロゲンであり;ならびに
R5、R6およびR7が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
R1、R2およびそれらが結合している窒素が、置換されていてもよい5-、6-もしくは7-員ヘテロ環を形成しており;
R3が5-フェニル-[1,3,4]チアジアゾール-2-イルまたは1H-イミダゾール-2-イルであり;
R4がハロゲンであり;ならびに
R5、R6およびR7が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
哺乳動物の心臓病治療用医薬の製造のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物、単一の立体異性体、立体異性体の混合物、医薬的に許容される塩、溶媒和物、または医薬的に許容される塩の溶媒和物の使用。
【請求項14】
医薬的に許容される賦形剤と、治療的に有効な量の請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物、単一の立体異性体、立体異性体の混合物、医薬的に許容される塩、溶媒和物、または医薬的に許容される塩の溶媒和物とを含む、医薬製剤。

【公開番号】特開2012−92135(P2012−92135A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284586(P2011−284586)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【分割の表示】特願2006−509380(P2006−509380)の分割
【原出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(501327514)サイトキネティクス・インコーポレーテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】Cytokinetics Incorporated
【Fターム(参考)】