説明

化合物、重合体及びフォトレジスト組成物

【課題】感度等の基本性能に加えて、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性、MEEF(Mask Error Enhancement Factor)等に優れると共に、これらのバランスに優れるレジスト膜を形成するために用いられる化合物、それを用いて得られる重合体及びその重合体を含有するフォトレジスト組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、重合体及びフォトレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるレジストパターンの微細化が要求されている。代表的な短波長の光源としては、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー若しくはEUV(極紫外線)等の遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線等が挙げられ、これらを用いて線幅90nm程度の微細なレジストパターンを形成することができる。かかる短波長の光源に対応できる種々のレジスト用組成物が検討されており、これらのレジスト用組成物のうち、露光により酸を生成させ、この酸の触媒作用により露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度に差を生じさせることで基板上にレジストパターンを形成させるフォトレジスト組成物が広く用いられている(特開2002−201232号公報、特開2002−145955号公報及び特開2002−363123号公報参照)。
【0003】
しかし、今日では、半導体分野においてより高い集積度が求められるようになると、それに対応すべく感度等の基本性能に加えて、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性、MEEF(Mask Error Enhancement Factor)等により優れるレジスト膜が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−201232号公報
【特許文献2】特開2002−145955号公報
【特許文献3】特開2002−363123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、感度等の基本性能に加えて、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性、MEEF(Mask Error Enhancement Factor)等に優れるレジスト膜を形成するために用いられる化合物、それを用いて得られる重合体及びその重合体を含有するフォトレジスト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、
下記式(1)で表される化合物。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、単結合又は2価の連結基である。Rは、カルボニル基又はメチレン基である。Mは、1価のカチオンである。)
【0007】
本発明の化合物は、上記特定構造を有するイオン性の重合性化合物であり、露光により酸を発生する構造を含む。そのため、当該化合物から合成される重合体は、上記酸を発生する構造を重合体鎖中に均一に分布させることができる。また、上記重合体をフォトレジスト組成物に用いた場合には、露光部において発生した酸は、重合体構造に組み込まれているため、未露光部への拡散を制御することができる。その結果、上記フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜は、露光部において酸が均一かつ十分に作用するため、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性及びMEEFに優れる。
【0008】
上記Mの1価のカチオンは、下記式(2)で表されることが好ましい。
【化2】

(式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、−S−R、−SO−R又は−OSO−Rである。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基である。但し、R〜Rのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基及びアリール基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。a、b及びcは、それぞれ独立して0〜5の整数である。但し、a、b及びcがそれぞれ2以上である場合、複数のR〜Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0009】
当該化合物のカチオン部分が上記特定構造であることで、当該化合物から形成される重合体を含有するフォトレジスト組成物は、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性及びMEEFにより優れるレジスト膜を形成することができる。
【0010】
上記aが1以上であり、Rの少なくとも1つは、−SO−R又は−OSO−Rであることが好ましい。当該化合物のカチオン部分が上記極性の高い置換基を有することで、当該化合物を含有するフォトレジスト組成物は、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性及びMEEFにさらに優れるレジスト膜を形成することができる。
【0011】
本発明は、当該化合物に由来する構造単位(I)を有する重合体も含む。当該重合体を含有するフォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜は、露光部において酸が均一かつ十分に作用するため、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性及びMEEFに優れる。
【0012】
当該重合体は、酸解離性基を含む構造単位(II)をさらに有することが好ましい。当該重合体は、構造単位(II)をさらに有することで、フォトレジスト組成物の材料として用いた場合に、その感度を向上させることができる。
【0013】
本発明のフォトレジスト組成物は、
[A]本発明の重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)、及び
[B]溶媒
を含有する。
【0014】
当該フォトレジスト組成物は、当該重合体を含有するため、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性及びMEEFにより優れるレジスト膜を形成することができる。
【0015】
本発明のフォトレジスト組成物は、[C]酸解離性基を含む構造単位(II)を有し、かつ構造単位(I)を有さない重合体(以下、「[C]重合体」ともいう)をさらに含有することが好ましい。当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体に加えて[C]重合体をさらに含有することで、露光により発生する酸の強度を容易に制御でき、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性及びMEEFにより優れるレジスト膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化合物、重合体及びフォトレジスト組成物によると、感度等の基本性能に加えて、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性、MEEF等に優れるレジスト膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ラインパターンを上方から見た際の模式的な平面図である。
【図2】ラインパターン形状の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<新規化合物>
本発明の新規化合物は、上記式(1)で表されるイオン性の重合性化合物であり、露光により酸を発生する構造を含む。そのため、当該化合物から合成される重合体は、上記酸を発生する構造を重合体鎖中に均一に分布させることができる。また、上記重合体をフォトレジスト組成物に用いた場合には、露光部において発生した酸は、重合体構造に組み込まれているため、未露光部への拡散を制御することができる。その結果、上記フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜は、露光部において酸が均一かつ十分に作用するため、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性及びMEEFに優れる。
【0019】
上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、単結合又は2価の連結基である。Rは、カルボニル基又はメチレン基である。Mは、1価のカチオンである。
【0020】
上記Rで表される2価の連結基としては、例えば炭素数1〜30の2価の炭化水素基、−R−X−R’−で表される基(但し、Rは、炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり、Xは、−CO−、−CO−O−、−O−(CO)−、−O−(CO)−O−、−NHCO−、−CONH−、−NH−CO−O−、−O−CO−NH−、−NH−、−S−、−SO−、−SO−又は−SO−O−であり、R’は、単結合又は炭素数1〜30の炭化水素基である)、又はこれらの基を組み合わせてなる基等が挙げられる。
【0021】
上記炭素数1〜30の2価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状の炭化水素基、炭素数4〜30の脂環式基、炭素数6〜30の芳香族基等が挙げられる。
【0022】
上記炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状の炭化水素基としては、例えばメチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基、n−ブタンジイル基、i−ブタンジイル基、n−ペンタンジイル基、i−ペンタンジイル基、n−ヘキサンジイル基、i−ヘキサンジイル基、n−デカンジイル基、i−デカンジイル基等が挙げられる。これらのうち、メチレン基及びエチレン基が好ましい。
【0023】
上記炭素数4〜30の脂環式基としては、例えばシクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基、シクロデカンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等が挙げられる。
【0024】
上記炭素数6〜30の芳香族基としては、例えばフェニレン基、ナフタレニレン基等が挙げられる。
【0025】
上記のこれらの基を組み合わせてなる基としては、下記式(3)又は(4)で表される基が好ましい。
【0026】
【化3】

【0027】
上記式(3)及び(4)中、m及びnは、それぞれ独立して1〜6の整数である。*は、上記式(1)におけるRに隣接する酸素原子に結合する部位を示す。
【0028】
上記mとしては、1〜4の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
【0029】
上記nとしては、1〜3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0030】
上記Rとしては、単結合、上記式(3)で表される基及び式(4)で表される基が好ましい。
【0031】
上記Rとしては、メチレン基が好ましい。
【0032】
上記Mで表される1価のカチオンとしては、オニウムカチオンが好ましく、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンがより好ましく、下記式(5)で表されるスルホニウムカチオンがさらに好ましい。
【0033】
【化4】

【0034】
上記式(5)中、R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜30の炭化水素基である。但し、R及びRは、互いに結合して、それらが結合している硫黄原子と共に環状構造を形成していてもよい。上記炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0035】
上記R〜Rで表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等の1価の鎖状炭化水素基;
シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基等の1価の脂環式炭化水素基;
上記脂環構造を一部に有する1価の炭化水素基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等の1価の芳香族炭化水素基;
芳香環を一部に有する1価の炭化水素基等が挙げられる。
これらのうち、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等の1価の芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0036】
上記炭化水素基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン化炭化水素基、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基、チオール基、有機スルホニル基等が挙げられる。
【0037】
上記式(5)で表されるスルホニウムカチオンのうち、上記式(2)で表されるトリフェニルスルホニウムカチオンが好ましい。
【0038】
上記式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、−S−R、−SO−R又は−OSO−Rである。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基である。但し、R〜Rのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基及びアリール基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。a、b及びcは、それぞれ独立して0〜5の整数である。但し、a、b及びcがそれぞれ2以上である場合、複数のR〜Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0039】
上記R〜Rで表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−へキシル基、n−オクチル基等が挙げられる。上記R〜Rで表されるシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。上記R〜Rで表されるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。
【0040】
上記R〜Rとしては、アルキル基、アルコキシ基、−SO−R及び−OSO−Rが好ましく、−SO−R及び−OSO−Rがより好ましい。
【0041】
上記Rで表されるアルキル基、シクロアルキル基及びアルコキシ基としては、例えば上記R〜Rで表されるそれぞれの基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0042】
上記Rで表されるアリール基としては、例えばフェニル基、ナフタレニル基等が挙げられる。
【0043】
上記Rとしては、シクロアルキル基が好ましく、シクロへキシル基及びシクロペンチル基がより好ましく、シクロへキシル基がさらに好ましい。
【0044】
上記式(2)で表されるトリフェニルスルホニウムカチオンとしては、a〜cの全てが0であり、置換基を全く有さないこと、又は上記aが1以上であり、Rの少なくとも1つが、−SO−R若しくは−OSO−Rであることが好ましく、上記aが1以上であり、Rの少なくとも1つが、−SO−R若しくは−OSO−Rであることがより好ましい。
【0045】
上記式(2)で表されるトリフェニルスルホニウムカチオンとしては、例えば下記式(i−1)〜(i−27)で表されるカチオン等が挙げられる。
【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

【0048】
これらのうち、上記式(i−1)、(i−23)〜(i−27)で表されるスルホニウムカチオンが好ましく、上記式(i−1)及び(i−24)で表されるスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0049】
なお、上記式(1)中のMで表される1価のカチオンは、例えば、Advances in Polymer Science,Vol.62,p.1−48(1984)に記載されている一般的な方法に準じて製造することができる。
【0050】
上記式(1)で表される当該化合物としては、例えば下記式(1−1)〜(1−10)で表される化合物等が挙げられる。
【0051】
【化7】

【0052】
これらのうち、上記式(1−1)〜(1−3)、(1−5)、(1−7)、(1−9)及び(1−11)〜(1−14)で表される化合物が好ましく、式(1−1)、(1−2)及び(1−11)〜(1−14)で表される化合物がより好ましい。
【0053】
<当該化合物の合成方法>
上記式(1)で表される化合物の合成方法としては、特に限定されないが、例えば下記式の反応によって得ることができる。
【0054】
【化8】

【0055】
上記Mは例えば、スルホニウムカチオンを示す。
【0056】
<新規重合体>
本発明の重合体([A]重合体)は、上述した当該化合物に由来する構造単位(I)を有する重合体である。当該化合物は、露光により酸を発生する構造を含むイオン性の重合性化合物である。そのため、当該化合物から合成される当該重合体は、上記酸を発生する構造を重合体鎖中に均一に分布させることができる。また、露光部において発生した酸は、当該重合体構造に組み込まれているため、未露光部への拡散を制御することができる。その結果、上記フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜は、露光部において酸が均一かつ十分に作用するため、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性及びMEEFに優れる。また、当該重合体は、構造単位(I)に加えて、酸解離性基を含む構造単位(II)、ラクトン基、環状カーボネート基及びスルトン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む構造単位(III)、芳香族化合物に由来する構造単位(IV)を有することが好ましい。さらに、[A]重合体は、本発明の効果を損なわない限り、上記以外のその他の構造単位を有していてもよい。なお、[A]重合体は、各構造単位を1種単独で有していてもよいし、2種以上有していてもよい。以下、各構造単位について詳述する。
【0057】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、上記式(1)で表される化合物に由来する構造単位である。上記式(1)で表される化合物については、当該化合物としての説明を適用できる。
【0058】
構造単位(I)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0059】
【化9】

【0060】
上記式中、R10は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0061】
[A]重合体における構造単位(I)の含有割合としては、0.1モル%以上50モル%以下が好ましく、0.5モル%以上30モル%以下がより好ましく、1モル%以上20モル%以下がさらに好ましい。構造単位(I)の含有率を上記特定の範囲とすることで、[A]重合体を含有するフォトレジスト組成物は、露光により適度な量の酸が発生し、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性及びMEEFに優れる。
【0062】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、酸解離性基を含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(I)に加えて、構造単位(II)をさらに含むことで、[A]重合体を含有するフォトレジスト組成物の感度を向上させることができる。構造単位(II)としては、下記式(6)で表される構造単位であることが好ましい。
【0063】
【化10】

【0064】
上記式(6)中、R11は、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基又は炭素数1〜3のアルキル基である。R12〜R14は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式炭化水素基である。但し、R12及びR13は、互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成してもよい。
【0065】
上記R12〜R14が表す炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0066】
上記R12〜R14が表す炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、又はR12とR13とが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に形成してもよい炭素数4〜20の脂環式炭化水素基としては、アダマンタン骨格、ノルボルナン骨格等の有橋式骨格を有する多環の脂環式基;シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン骨格を有する単環の脂環式基が挙げられる。また、これらの基は、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上で置換されていてもよい。
【0067】
構造単位(II)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0068】
【化11】

【0069】
上記式中、R11は、上記式(6)と同義である。R12は炭素数1〜4のアルキル基である。mは1〜6の整数である。
【0070】
これらのうち、下記式(2−1)〜(2−18)で表される構造単位が好ましく、(2−11)がより好ましい。
【0071】
【化12】

【0072】
上記式中、R11は上記式(6)と同義である。
【0073】
[A]重合体における構造単位(II)の含有率としては、10モル%以上80モル%以下が好ましく、20モル%以上70モル%以下がより好ましい。構造単位(II)の含有率を上記特定範囲とすることで、[A]重合体を含有するフォトレジスト組成物は、感度を十分満足する。
【0074】
構造単位(II)を与える単量体としては、1−アルキル−シクロアルキルエステル等の単環の脂環式基を有する酸解離性基を含む単量体、2−アルキル−2−ジシクロアルキルエステル等の多環の脂環式基を有する酸解離性基を含む単量体等が挙げられる。
【0075】
[構造単位(III)]
[A]重合体は、ラクトン基、環状カーボネート基及びスルトン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む構造単位(III)をさらに有することが好ましい。[A]重合体が、構造単位(III)を有することで、[A]重合体を含有するフォトレジスト組成物は、基板等に対する密着性に優れる。ここで、ラクトン基とは、−O−C(O)−で表される構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する基をいう。また、環状カーボネート基とは、−O−C(O)−O−で表される構造を含むひとつの環(環状カーボネート環)を含有する基をいう。スルトン基とは、−O−SO−で表される構造を含むひとつの環(スルトン環)を含有する基をいう。なお、ラクトン環、環状カーボネート環又はスルトン環を1つめの環として数え、ラクトン環、環状カーボネート環又はスルトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基という。
【0076】
構造単位(III)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0077】
【化13】

【0078】
【化14】

【0079】
上記式中、R15は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0080】
これらのうち、レジスト膜の密着性を向上させる観点から、上記式(3−1)で表される構造単位が好ましい。
【0081】
構造単位(III)を与える単量体化合物としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0082】
【化15】

【0083】
【化16】

【0084】
[A]重合体における構造単位(III)の含有率は、10モル%以上80モル%以下が好ましく、20モル%以上70モル%以下がより好ましい。構造単位(III)の含有率を上記範囲とすることで、[A]重合体を含有するフォトレジスト組成物から得られるレジスト膜は、基板等への密着性に優れる。
【0085】
[構造単位(IV)]
[A]重合体は、芳香族化合物に由来する構造単位(IV)をさらに含んでいることが好ましい。構造単位(IV)としては、例えば下記式で表される構造単位等を挙げることができる。
【0086】
【化17】

【0087】
上記式中、R16は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0088】
上記芳香族化合物に由来する構造単位(IV)を生じさせる好ましい単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、4−(2−t−ブトキシカルボニルエチルオキシ)スチレン2−ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、2−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、3−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、2−メチル−3−ヒドロキシスチレン、4−メチル−3−ヒドロキシスチレン、5−メチル−3−ヒドロキシスチレン、2−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3,4−ジヒドロキシスチレン、2,4,6−トリヒドロキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−t−ブトキシ−α−メチルスチレン、4−(2−エチル−2−プロポキシ)スチレン、4−(2−エチル−2−プロポキシ)−α−メチルスチレン、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン、4−(1−エトキシエトキシ)−α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、アセナフチレン、5−ヒドロキシアセナフチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−ビニルナフタレン、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、1−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、1−アントリル(メタ)アクリレート、2−アントリル(メタ)アクリレート、9−アントリル(メタ)アクリレート、9−アントリルメチル(メタ)アクリレート、1−ビニルピレン等が挙げられる。
【0089】
[A]重合体における構造単位(VI)の含有率としては、0モル%以上60モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましい。
【0090】
[A]重合体は、他の構造単位として、本発明の効果を損なわない限り、極性基を含む構造単位等をさらに有してもよい。ここでいう極性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、ケト基、スルホンアミド基、アミノ基、アミド基、シアノ基等が挙げられる。[A]重合体が極性基を含む構造単位をさらに有することで、[A]重合体と、他の成分との相溶性が向上する。
【0091】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。例えば、単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0092】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0093】
上記重合における反応温度は、ラジカル開始剤の種類に応じて適宜決定すればよいが、通常40℃〜150℃であり、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間であり、1時間〜24時間が好ましい。
【0094】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等が挙げられる。これらの開始剤は2種以上を混合して使用してもよい。
【0095】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の樹脂を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。
【0096】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)としては、1,000〜100,000が好ましく、2,000〜50,000がより好ましく、3,000〜30,000がさらに好ましい。[A]重合体のMwを上記特定範囲とすることで、膜減りを抑制し、得られるパターンのLWRを優れた値とすることができる。
【0097】
[A]重合体のMwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、通常1〜5であり、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。Mw/Mnをこのような特定範囲とすることで、膜減りを抑制し、得られるパターンのLWRを優れた値とすることができる。
【0098】
<フォトレジスト組成物>
当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体及び[B]溶媒を含有する。また、当該フォトレジスト組成物は、好適成分として[C]重合体を含有する。さらに、本発明の効果を損なわない限り、[D]酸拡散制御剤、その他の任意成分を含有できる。以下、各成分について詳述する。なお、[A]重合体は上記の通りであるから、ここでは説明を省略する。
【0099】
<[B]溶媒>
当該フォトレジスト組成物は、[B]溶媒を含有する。[B]溶媒は少なくとも[A]重合体、好適成分である[C]重合体、[D]酸拡散制御剤及び任意成分を溶解できれば特に限定されない。[B]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。
【0100】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0101】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0102】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0103】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0104】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0105】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0106】
これらのうち酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸エチル、γ−ブチロラクトンが好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0107】
<[C]重合体>
当該フォトレジスト組成物は、[C]重合体をさらに含有することが好ましい。[C]重合体は、酸解離性基を含む構造単位(II)を有し、かつ構造単位(I)を有さない重合体である。露光により[A]重合体から発生する酸の作用で、[C]重合体が有する上記酸解離性基が解離する。さらに[C]重合体は、本発明の効果を損なわない限り、ラクトン基、環状カーボネート基及びスルトン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する構造単位(III)、芳香族化合物に由来する構造単位(IV)、極性基を含む構造単位(V)等を有していてもよい。なお、構造単位(II)〜(V)については、[A]重合体が含む構造単位(II)〜(V)として、すでに詳述している内容と同様の説明をすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0108】
[C]重合体における構造単位(II)の含有率としては、5モル%以上80モル以下が好ましく、10モル以上〜40モル%以下がより好ましい。なお、[C]重合体は構造単位(II)を1種又は2種以上を有してもよい。
【0109】
[C]重合体における構造単位(III)の含有割合としては、0モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上60モル%以下がより好ましい。このような含有率とすることによって、当該フォトレジスト組成物の基板等への密着性を向上させることができる。[C]重合体における構造単位(IV)の含有率としては、0モル%以上70モル以下が好ましく、10モル以上〜40モル%以下がより好ましい。[C]重合体における構造単位(V)の含有率としては、0モル%以上70モル以下が好ましく、10モル以上〜40モル%以下がより好ましい。
【0110】
<[C]重合体の合成方法>
[C]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。
【0111】
上記重合に使用されるラジカル重合開始剤及び溶媒としては、例えば、[C]重合体の合成方法で挙げたものと同様の溶媒が挙げられる。
【0112】
[C]重合体のGPC法によるMwとしては、1,000〜100,000が好ましく、2,000〜50,000がより好ましく、3,000〜30,000が特に好ましい。[C]重合体のMwを上記範囲とすることで、これを含有する当該フォトレジスト組成物はリソグラフィー性能に優れる。
【0113】
[C]重合体のMwとMnとの比(Mw/Mn)としては、通常1〜3であり、好ましくは1〜2である。
【0114】
<[D]酸拡散制御体>
[D]酸拡散制御体は、露光により[A]重合体から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、未露光部における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する成分である。フォトレジスト組成物が[D]酸拡散制御体を含有することで、得られるフォトレジスト組成物の解像性がさらに向上する。また、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。なお、[D]酸拡散制御体の本発明におけるフォトレジスト組成物における含有形態としては、遊離の化合物の形態(以下、適宜「[D]酸拡散制御剤」ともいうこともある)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0115】
[D]酸拡散制御剤としては、例えばアミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0116】
アミン化合物としては、例えばへキシルアミン等のモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジメチルアミン等のジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ−n−オクチルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;置換アルキルアニリン又はその誘導体;エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0117】
アミド基含有化合物としては、例えばN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0118】
ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0119】
含窒素複素環化合物としては、例えばイミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類;ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、4−ヒドロキシ−N−アミロキシカルボニルピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
【0120】
また、[D]酸拡散制御剤として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基は、露光部においては酸を発生して[A]重合体の当該現像液に対する不溶性を高め、結果として現像後の露光部表面のラフネスを抑制する。一方、未露光部ではアニオンによる高い酸捕捉機能が発揮されクエンチャーとして機能し、露光部から拡散する酸を捕捉する。すなわち、未露光部のみにおいてクエンチャーとして機能するため、脱保護反応のコントラストが向上し、結果として解像性をより向上させることができる。光崩壊性塩基の一例として、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物がある。オニウム塩化合物としては、例えば下記式(D1)で示されるスルホニウム塩化合物、下記式(D2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0121】
【化18】

【0122】
上記式(D1)及び式(D2)中、R17〜R21はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は−SO−Rである。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基である。Zは、OH、R22−COO、R−SO−N―R22、R22−SO又は下記式(D3)で示されるアニオンである。R22は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアルカリール基である。上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルカリール基の水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもいてもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基である。上記アルキル基及びシクロアルキル基の水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。但し、ZがR22−SOの場合、SOが結合する炭素原子にフッ素原子が結合する場合はない。
【0123】
【化19】

【0124】
上記式(D3)中、R23は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基である。uは0〜2の整数である。
【0125】
当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物における[D]酸拡散制御剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、10質量部未満が好ましい。合計使用量が10質量部未満であると、レジストとしての感度が維持され易い。これらの[D]酸拡散抑制剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0126】
<疎水性重合体>
当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体及び[C]重合体よりもフッ素原子含有率が高い疎水性重合体を含有していてもよい。当該フォトレジスト組成物が、疎水性重合体を含有することで、レジスト膜を形成した際に、膜中の疎水性重合体の撥水性的特徴により、その分布がレジスト膜表面近傍で偏在化する傾向があるので、液浸露光時に酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。また、この疎水性重合体の撥水性的特徴により、レジスト膜と液浸媒体との前進接触角が所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が高くなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。
【0127】
上記フォトレジスト組成物における疎水性重合体の含有割合としては、[A]重合体100質量部に対して、0〜50質量部が好ましく、0〜20質量部がより好ましく、0.5〜10質量部が特に好ましく、1〜8質量部が最も好ましい。上記フォトレジスト組成物における上記疎水性重合体の含有率を上記範囲とすることで、得られるレジスト膜表面の撥水性及び溶出抑制性をより高めることができる。
【0128】
<その他の任意成分>
当該フォトレジスト組成物は、その他の任意成分として、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等を含有できる。なお、上記フォトレジスト組成物は、上記その他の任意成分をそれぞれ1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0129】
[界面活性剤]
界面活性剤は、当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物の塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。
【0130】
[脂環式骨格含有化合物]
脂環式骨格含有化合物は、当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物のドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0131】
[増感剤]
増感剤は、[B]酸発生体からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0132】
<フォトレジスト組成物の調製方法>
当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物は、例えば[B]溶媒中で[A]重合体、[C]重合体、[D]酸拡散制御剤及び任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。また、当該組成物は、適当な[B]溶媒に溶解又は分散させた状態に調製され使用され得る。
【0133】
<レジストパターン形成方法>
当該フォトレジスト組成物は、レジストパターンの形成に好適に用いられる。上記レジストパターンの形成方法としては、例えば以下に示す方法等が挙げられる。
【0134】
(1)本発明のフォトレジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程(以下、「工程(1)」ともいう)、
(2)上記レジスト膜を露光する工程(以下、「工程(2)」ともいう)、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「工程(3)」ともいう)
を有する。
【0135】
上記レジストパターンの形成方法によると、当該フォトレジスト組成物を用いるため、ナノエッジラフネス、パターン倒れ耐性、MEEF等に優れる微細パターンを形成することができる。以下、各工程を詳述する。
【0136】
[工程(1)]
本工程では、当該フォトレジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって、シリコンウエハー、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウエハー等の基板上に所定の膜厚となるように塗布して、場合によっては通常70℃〜160℃程度の温度でプレベーク(PB)することにより塗膜中の溶媒を揮発させレジスト膜を形成する。
【0137】
[工程(2)]
本工程では、工程(1)で形成されたレジスト膜に放射線を照射し露光させる。なお、必要に応じて水等の液浸媒体を介した液浸露光を行ってもよい。この際所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線、EUV等から適宜選択して照射する。これらのうち、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、EUV(極紫外線、波長13.5nm)等のより微細なパターンを形成可能な光源であっても好適に使用できる。次いで、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことが好ましい。このPEBにより、[A]重合体、[C]重合体等が有する酸解離性基の脱離を円滑に進行させることが可能となる。PEBの加熱条件は、フォトレジスト組成物の配合組成によって適宜選定することができるが、通常50℃〜180℃程度である。
【0138】
[工程(3)]
本工程は、露光されたレジスト膜を、現像液で現像することによりレジストパターンを形成する工程である。現像後は、水で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が好ましい。
【実施例】
【0139】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0140】
重合体の分子量(Mw、Mn)の測定は、東ソー社製GPCカラム(TSKgel α−2500、TSKgel α−M)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒としてLiBrを30mmol/LとHPOを10mmol/L溶解させたジメチルホルムアミドを用い、カラム温度40℃の分析条件で、上記MALLS(Wyatt社製、DAWN DSP、セルタイプK5、レーザー波長632.8nm)を検出器として用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により行った。
【0141】
H−NMR分析及び13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社、JNM−EX270)を使用し測定した。
【0142】
<単量体化合物の合成>
[実施例1]
4−フルオロフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート267gをジクロロメタン2,000gに溶解して、窒素置換を行った。次いで、10重量%水酸化ナトリウム水溶液2,000g、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド58g、シクロヘキサンチオール72.1gを加え、室温で30分間攪拌した。その後、この混合溶液を分液漏斗に移して、静置したのち、水層を除去した。次いで、更に蒸留水3000mLを加え、有機層を洗浄後、水層を除去した。その後、得られたジクロロメタン溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、乾燥後の溶液からジクロロメタンを留去したのち、残留液体を減圧乾燥することにより、4−シクロヘキシルチオフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート192gを得た。次いで、反応フラスコ内で、得られた4−シクロヘキシルチオフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート192gをメタノール3,000mLに溶解し、30重量%過酸化水素水180g、タングステン酸ナトリウム2水和物105gを加え、室温で30分間攪拌した。その後、得られたメタノール溶液を減圧濃縮して、残渣をジクロロメタン3,000gに溶解し、この溶液を分液漏斗に移して、静置したのち、水層を除去した。次いで、更に蒸留水1,000mLを加え、有機層を洗浄後、水層を除去した。その後、得られたジクロロメタン溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、乾燥後の溶液からジクロロメタンを留去したのち、残留液体を減圧乾燥することにより、4−シクロヘキシルスルホニルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート145gを得た。次いで、得られた4−シクロヘキシルスルホニルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート145gをメタノール1,000gに溶解し、この溶液をイオン交換クロマトグラフィー(イオン交換樹脂:アルドリッチ(Aldrich)社製Shephadex QAE A−25、充填量600g)に通し、回収した有機層を減圧留去することで、下記式(X−1)で表される化合物を89g得た。
続いて、ナスフラスコに下記式(X−2)で表される化合物26.6g、下記式(X−1)で表される化合物44.5g、塩化メチレン1,000g、水1,000gを量り取り、室温で10時間撹拌した。反応終了後、塩化メチレン層を回収し、水500gで4回洗浄した。その後、塩化メチレン層を回収し、塩化メチレンを減圧留去することにより、目的とする下記式(P−1)で表される化合物を得た(収率52%)。
【0143】
【化20】

【0144】
【化21】

【0145】
[実施例2]
ナスフラスコに上記式(X−2)で表される化合物26.6g、下記式(X−3)で表される化合物29.9g、塩化メチレン1,000g、水1,000gを量り取り、室温で10時間撹拌した。反応終了後、塩化メチレン層を回収し、水500gで4回洗浄した。その後、塩化メチレン層を回収し、塩化メチレンを減圧留去することにより、目的とする下記式(P−2)で表される化合物を得た(収率58%)。
【0146】
【化22】

【0147】
【化23】

【0148】
<[A]重合体の合成>
[A]重合体の合成に用いた単量体を下記に示す。
【0149】
【化24】

【0150】
[実施例3]
化合物(M−1)48.55g(47モル%)、化合物(M−2)42.35g(50モル%)、上記合成例1で得られた化合物(P−1)9.10g(3モル%)、AIBN4.58gを、2−ブタノン200gに溶解し、単量体溶液を調製した。一方、100gの2−ブタノンを投入した500mLの3つ口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後、反応釜を撹拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を反応釜に滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液を水冷により30℃以下に冷却し、冷却後、2,000gの2−プロパノールへ投入し、析出した白色固体をろ別した。次いで、ろ別された白色粉末を100gの2−プロパノールにてスラリー状で2回洗浄した。その後、ろ別し、50℃にて12時間乾燥し、白色粉末の重合体(A−1)を得た(55g、収率55%)。重合体(A−1)はMwが7,300、Mw/Mnが2.1であり、13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の構造単位:化合物(M−2)由来の構造単位:化合物(P−1)由来の構造単位の含有比率(モル%)が49:48:3であった。
【0151】
[実施例4]
化合物(M−3)39.08g(37モル%)、化合物(M−4)54.97g(60モル%)、上記実施例2で得られた化合物(P−2)5.94g(3モル%)、AIBN3.88gを、2−ブタノン200gに溶解し、単量体溶液を調製した。一方、100gの2−ブタノンを投入した500mLの3つ口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後、反応釜を撹拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した前記単量体溶液を反応釜に滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液を水冷により30℃以下に冷却し、冷却後、2,000gのn−ヘキサンへ投入し、析出した白色固体をろ別した。次いで、ろ別された白色粉末を100gのn−ヘキサンにてスラリー状で2回洗浄した。その後、ろ別し、50℃にて12時間乾燥し、白色粉末の重合体(A−2)を得た(45g、収率45)%)。
重合体(A−2)はMwが7,300、Mw/Mn=2.0であり、13C−NMR分析の結果、化合物(M−3)由来の構造単位:化合物(M−4)由来の構造単位:化合物(P−2)由来の構造単位の含有比率(モル比%)が35:62:3であった。
【0152】
[合成例1]
化合物(M−1)59.59g(50モル%)、化合物(M−2)45.06g(50モル%)、AIBN4.87gを、2−ブタノン200gに溶解し、単量体溶液を調製した。一方、100gの2−ブタノンを投入した500mLの3つ口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージの後、反応釜を撹拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を反応釜に滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液を水冷により30℃以下に冷却し、冷却後、2,000gの2−プロパノールへ投入し、析出した白色固体をろ別した。次いで、ろ別された白色粉末を100gの2−プロパノールにてスラリー状で2回洗浄した。その後、ろ別し、50℃にて12時間乾燥し、白色粉末の重合体(a−1)を得た(62g、収率62%)。重合体(a−1)はMwが6,600、Mw/Mnが2.2であり、13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の構造単位:化合物(M−2)由来の構造単位の含有比率(モル%比)が52:48であった。
【0153】
<フォトレジスト組成物の調製>
フォトレジスト組成物の調製に用いた[B]溶媒、[D]酸拡散制御剤、酸発生剤について以下に示す。
【0154】
([B]溶媒)
B−1:乳酸エチル
B−2:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
B−3:シクロヘキサノン
【0155】
([D]酸拡散制御剤)
D−1:トリ−n−オクチルアミン
D−2:トリフェニルスルホニウムサリチレート
【0156】
(酸発生剤)
E−1:下記式で表される化合物
【0157】
【化25】

【0158】
[実施例5]
重合体(A−1)100質量部、酸拡散制御剤(D−1)2質量部、溶媒(B−1)1,400質量部及び(B−2)3,300質量部を混合し、得られた混合溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、フォトレジスト組成物を調製した。
【0159】
[実施例6〜7及び比較例1]
表1に示す種類、量の[A]重合体、[B]溶媒、[D]酸核酸制御剤を使用した以外は実施例5と同様に操作して、実施例6及び7のフォトレジスト組成物を調製した。また、比較例1のフォトレジスト組成物は、表1に示す種類、量の[A]重合体、[B]溶媒、[D]酸核酸制御剤に加えて酸発生剤(E−1)も合わせて混合し、実施例5と同様に操作して調製した。なお、表1中の「−」は該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0160】
【表1】

【0161】
<上層膜形成用組成物の調製>
後述するArf露光を行うパターン形成において用いられる上層膜形成用組成物の調製方法を以下に示す。
【0162】
(重合体の合成)
[合成例2]
メタクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステル46.95g(85モル%)、と開始剤2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオン酸メチル)6.91gをイソプロパノール100gに溶解させた単量体溶液を準備した。一方、温度計及び滴下漏斗を備えた500mLの三つ口フラスコにイソプロパノール50gを投入し、30分間窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら、80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間反応を行い、ビニルスルホン酸3.05g(15モル%)のイソプロパノール溶液10gを30分かけて滴下し、その後、更に1時間反応を行った。30℃以下に冷却して、共重合液を得た。次いで、得られた上記共重合液を150gに濃縮した後、分液漏斗に移した。この分液漏斗にメタノール50gとn−ヘキサン600gを投入し、分離精製を実施した。分離後、下層液を回収した。この下層液をイソプロパノールで希釈して100gとし、再度、分液漏斗に移した。メタノール50gとn−ヘキサン600gを上記分液漏斗に投入して、分離精製を実施し、分離後、下層液を回収した。回収した下層液を4−メチル−2−ペンタノールに置換し、全量を250gに調整した。調整後、水250gを加えて分離精製を実施し、分離後、上層液を回収した。回収した上層液は、4−メチル−2−ペンタノールに置換して重合体(T−1)溶液とした。
重合体(T−1)の、Mwは9,760、Mw/Mnは1.51であり、収率は65%であった。また、この共重合体に含有される、メタクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステルに由来する構造単位、及びビニルスルホン酸に由来する構造単位の含有比率(モル%)は、95:5(モル%)であった。
【0163】
[合成例3]
メタクリル酸(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)エステル22.26gと2,2−アゾビス(2−メチルイソプロピオン酸メチル)4.64gをメチルエチルケトン25gに予め溶解させた単量体溶液(i)、及びメタクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステル27.74gをメチルエチルケトン25gに予め溶解させた単量体溶液(ii)をそれぞれ準備した。一方、温度計及び滴下漏斗を備えた500mLの三口フラスコにメチルエチルケトン100gを投入し、30分間窒素パージした。窒素パージ後、フラスコ内をマグネティックスターラーで撹拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を使用し、予め準備しておいた単量体溶液(i)を20分かけて滴下し、20分間熟成させた後、続いて単量体溶液(ii)を20分かけて滴下した。その後、更に1時間反応を行い、30℃以下に冷却して共重合液を得た。次いで、得られた共重合液を150gに濃縮した後、分液漏斗に移した。この分液漏斗にメタノール50g、及びn−ヘキサン400gを投入し、分離精製を実施した。分離後、下層液を回収した。回収した下層液を4−メチル−2−ペンタノールに置換して重合体(T−2)溶液とした。
重合体(T−2)の、Mwは5,730、Mw/Mnは1.23であり、収率は26%であった。また、この共重合体に含有されるメタクリル酸(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)エステルに由来する構造単位及びメタクリル酸(1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシ−4−ペンチル)エステルに由来する構造単位の含有比率(モル%)は、50.3:49.7(モル%)であった。
【0164】
[上層膜形成用組成物の調製]
重合体(T−1)100質量部、重合体(T−2)10質量部、溶媒として4−メチル−2−ペンタノール1,680質量部、ジイソアミルエーテル1,120質量部を混合し、2時間撹拌した後、孔径200nmのフィルターでろ過することにより、固形分濃度4%の上層膜形成組成物を調製した。
【0165】
<レジストパターンの形成方法(EB露光)>
クリーントラックACT−8(東京エレクトロン社製)内で、シリコンウエハー上に各フォトレジスト組成物をスピンコートした後、表2に示す条件でPB(加熱処理)を行い、膜厚60nmのレジスト膜を形成した。その後、簡易型の電子線描画装置(日立製作所社製、型式「HL800D」、出力;50KeV、電流密度;5.0アンペア/cm)を用いてレジスト膜に電子線を照射した。電子線の照射後、表2に示す条件でPEBを行った。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23℃で1分間、パドル法により現像した後、純水で水洗し、乾燥して、レジストパターンを形成した。このようにして形成したレジストについて下記項目の評価を行った(実施例8〜10及び比較例2)。評価結果を表2に合わせて示す。
【0166】
[感度(μC/cm)]
線幅150nmのライン部と、隣り合うライン部によって形成される間隔が150nmのスペース部とからなるライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量(μC/cm)とし、この最適露光量を感度(μC/cm)とした。感度が60(μC/cm)以下であれば、良好であると判断した。
【0167】
[ナノエッジラフネス(nm)]
上記ライン・アンド・スペースパターン(1L1S)のラインパターンを、半導体用走査電子顕微鏡(高分解能FEB測長装置S−9220、日立社製)を用いて観察した。観察された形状について、図1及び図2に示すように、シリコンウエハー1上に形成したレジスト膜のライン部2の横側面2aに沿って生じた凹凸の最も著しい箇所における線幅と、設計線幅150nmとの差「ΔCD」を、上記半導体用走査電子顕微鏡にて測定し、ナノエッジラフネス(nm)とした。ナノエッジラフネス(nm)が12(nm)以下である場合、「良好」と判断し、12(nm)を超える場合、「不良」と判断した。なお、図2及び図3で示す凹凸は、実際より誇張して記載している。
【0168】
[解像度]
上記ライン・アンド・スペースパターン(1L1S)について、上記最適露光量により解像されるラインパターンの最小線幅(nm)を解像度(nm)とした。解像度が80(nm)以下の場合、良好であると判断した。
【0169】
【表2】

【0170】
<レジストパターン形成方法(ArF液浸露光)>
下層反射防止膜(ARC66、日産化学社製)を形成した12インチシリコンウェハ上に、各フォトレジスト組成物によって、膜厚75nmのレジスト膜を形成し、表3に示す温度で60秒間PBを行った。次に、形成したレジスト膜上に、上記上層膜形成用組成物をスピンコートし、90℃で60秒間PBを行うことにより膜厚90nmの上層膜を形成した。この後、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NSR S610C、NIKON社製)を用い、NA=1.3、ratio=0.800、Annularの条件により、マスクパターンを介して露光した。露光後、表3に示す温度で60秒間PEBを行った。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このようにして形成されたレジストパターンについて下記項目の評価を行った(実施例11及び比較例3)。評価結果を表3に合わせて示す。
【0171】
[MEEF]
上記レジストパターン形成方法にてターゲットサイズが50nm1L/1Sのマスクパターンを介して露光することによって線幅が50nmのラインアンドスペース(LS)パターンが形成される露光量(mJ/m)を最適露光量とした。次いで、最適露光量にてライン幅のターゲットサイズを46nm、48nm、50nm、52nm、54nmのとするマスクパターンをそれぞれ用い、ピッチ100nmのLSパターンを形成し、レジスト膜に形成されたライン幅を測長SEM(CG4000、日立社製)にて測定した。このとき、ターゲットサイズ(nm)を横軸に、各マスクパターンを用いてレジスト膜に形成されたライン幅(nm)を縦軸にプロットしたときの直線の傾きをMEEFとして算出した。なお、MEEFの値が1に近い程、優れていると評価される。
【0172】
[ナノエッジラフネス(nm)]
上記EB露光によるレジストパターン形成方法における評価として記載したナノエッジラフネスと同様の方法により評価した。なお、設計線幅は50nmであるため、ΔCDは設計線幅50nmとの差で表される。ナノエッジラフネス(nm)が5.0(nm)以下である場合、「良好」と判断し、5.0(nm)を超える場合、「不良」と判断した。
【0173】
[最小倒壊寸法(nm)]
上記レジストパターン形成方法にて、ターゲットサイズが50nm1L/1.8Sのマスクパターンを介して、1mJずつ露光量を変化させながら露光した。ラインの倒れが発生した露光量よりも1mJ小さい露光量にて形成されたパターンのライン幅(nm)を測長SEM(CG4000、日立社製)により測定し、最小倒壊寸法(nm)とした。なお、この値が小さいほどパターン倒れ耐性が高いことを示す。
【0174】
【表3】

【0175】
表2に示す通り、電子線を用いたレジストパターン形成において、実施例のフォトレジスト組成物は感度を十分満足し、比較例と比べてナノエッジラフネス、解像度に優れることがわかった。また、表3に示す通り、Arfを用いたレジストパターン形成においても、実施例のフォトレジスト組成物は比較例に比べてMEEF、ナノエッジラフネス、パターン倒れ耐性に優れることがわかった。本発明の化合物、重合体及びフォトレジスト組成物を用いると、微細パターンを高精度に且つ安定して形成することが可能な化学増幅型ポジ型レジスト膜を形成できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の化合物、重合体及びフォトレジスト組成物によると、感度等の基本性能に加えて、ナノエッジラフネス、解像度、パターン倒れ耐性、MEEF(Mask Error Enhancement Factor)等に優れるレジスト膜を形成することができる。従って、本発明の化合物は、今後更なる微細化が要求される半導体デバイス製造用の化学増幅型のフォトレジスト組成物として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、単結合又は2価の連結基である。Rは、カルボニル基又はメチレン基である。Mは、1価のカチオンである。)
【請求項2】
上記式(1)におけるMの1価のカチオンが、下記式(2)で表される請求項1に記載の化合物。
【化2】

(式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、−S−R、−SO−R又は−OSO−Rである。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基である。但し、R〜Rのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基及びアリール基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。a、b及びcは、それぞれ独立して0〜5の整数である。但し、a、b及びcがそれぞれ2以上である場合、複数のR〜Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
上記式(2)におけるaが1以上であり、Rの少なくとも1つが、−SO−R又は−OSO−Rである請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の化合物に由来する構造単位(I)を有する重合体。
【請求項5】
酸解離性基を含む構造単位(II)をさらに有する請求項4に記載の重合体。
【請求項6】
[A]請求項4又は請求項5に記載の重合体、及び
[B]溶媒
を含有するフォトレジスト組成物。
【請求項7】
[C]酸解離性基を含む構造単位(II)を有し、かつ構造単位(I)を有さない重合体
をさらに含有する請求項6に記載のフォトレジスト組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−75963(P2013−75963A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215741(P2011−215741)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】