説明

化合物およびこれを用いた硬化性組成物

【課題】低粘度で低揮発性の新規化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)、下記一般式(2)、下記一般式(3)、下記一般式(4)、または下記一般式(5)で表される、分子量310以上の化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物およびこれを用いた硬化性組成物に関する。特に、インプリント用に適した硬化性組成物に関する。さらに、これらの硬化性組成物を用いた硬化物および該硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる場合(非特許文献1)と、光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物を用いる場合(非特許文献2)の2通りが提案されている。熱可塑性樹脂を用いる熱式ナノインプリントの場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写するものである。多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。例えば、特許文献1、特許文献2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成するナノインプリントの方法が開示されている。
【0003】
一方、透明モールドを通して光を照射し、ナノインプリント用硬化性組成物を光硬化させる光ナノインプリント方式では、室温でのインプリントが可能になる。最近では、この両者の長所を組み合わせたナノキャスティング法や3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント方法などの新しい展開も報告されている。
【0004】
このようなナノインプリント法においては、以下のような応用技術が提案されている。第一の技術としては、高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィに代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製等に適用しようとするものである。第二の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合であり、その例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。なお、さらにその他の技術としては、マイクロ構造とナノ構造の同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、μ−TASやバイオチップの作製に応用しようとするものもある。前述の技術を含め、これらの応用に関するナノインプリント法の実用化への取り組みが近年活発化している。
【0005】
まず、前記第一の技術における高密度半導体集積回路作成への応用例を説明する。近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進んでおり、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化が進められてきた。これに対し、微細なパターン形成を低コストで行うための技術として提案されたナノインプリントリソグラフィ技術(光ナノインプリント法)を用いることが検討された。例えば、シリコンウエハをスタンパとして用い、25nm以下の微細構造を転写により形成するナノインプリント技術が知られている。
【0006】
一方、前記第二の技術における液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットデイスプレイへのナノインプリントリソグラフィの応用例について説明する。LCD基板やPDP基板大型化や高精細化の動向に伴い、薄膜トランジスタ(TFT)や電極板の製造時に使用する従来のフォトリソグラフィ法に代わる安価なリソグラフィとして光ナノインプリントリソグラフィが、近年注目されている。そのため、従来のフォトリソグラフィ法で用いられるエッチングフォトレジストに代わる光硬化性レジストの開発が必要になってきている。また、LCDなどの構造部材として用いられる透明保護膜材料や液晶ディスプレイにおけるセルギャップを規定するスペーサーなどに対しても、光ナノインプリントリソグラフィの応用も検討され始めている。このような構造部材用のレジストは、前記エッチングレジストとは異なり、最終的にディスプレイ内に残るため、“永久レジスト”、あるいは“永久膜”と称されることがある。
【0007】
従来のフォトリソグラフィ技術を適用した永久膜としては、例えば、液晶パネルのTFT基板上に設けられる保護膜や、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)層間の段差を低減しITO膜のスパッタ製膜時の高温処理に対する耐性を付与するためにカラーフィルタ上に設けられる保護膜等が挙げられる。
また、液晶ディスプレイに用いられるスペーサーの分野では、従来のフォトリソグラフィ法においては、樹脂、光重合性モノマーおよび光重合開始剤からなる光硬化性組成物が一般的に広く用いられてきている。前記スペーサーは、一般には、カラーフィルタ形成後または前記カラーフィルタ用保護膜形成後に、カラーフィルタ基板上に光硬化性組成物を用いてフォオトリソグラフィによって10μm〜20μm程度の大きさのパターンを形成し、さらにポストベイクにより加熱硬化して形成される。
【0008】
ここで、インプリント用硬化性組成物に用いられる化合物には、低粘度と低揮発性が求められる。これは、組成物粘度が低いとパターン精度に優れる一方、揮発性が低いとインプリント用装置の汚染を低減できるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献2】米国特許第5,956,216号公報
【非特許文献1】S.Chou et al.:Appl.Phys.Lett.Vol.67,3114(1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al,:Proc.SPIE,Vol. 3676,379 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のとおり、インプリント用硬化性組成物に用いられる化合物には、低粘度と低揮発性の両立が求められるが、一般的に、低粘度の化合物は揮発し易く、揮発しにくい化合物は粘度が高い傾向にある。すなわち、低粘度と低揮発性は相反する特性とも言える。本願発明はかかる問題点を解決することを目的としたものであって、低粘度と低揮発性を両立可能な化合物を提供することを目的とする。さらに、かかる化合物を用いたインプリント用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる状況のもと、本願発明者は鋭意検討を行い、低粘度で、かつ、低揮発性の化合物を検討し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下の手段により、本願発明の課題は達成された。
(1)下記一般式(1)、下記一般式(2)、下記一般式(3)、下記一般式(4)または下記一般式(5)で表される、分子量310以上の化合物。
【化1】

(一般式(1)、(2)、(3)、(4)および(5)中、R1およびR2は、それぞれ、水素原子またはメチル基を表す。一般式(1)中、R3は炭素数4〜10の炭化水素基を表す。一般式(2)中、R4は炭素数8〜14のアルキル基を表す。一般式(3)中、R5は炭素数4〜15の、アルキル基または不飽和炭化水素基を表す。一般式(4)中、R6は炭素数2〜10の直鎖状アルキル基を表し、R7は炭素数2〜12の不飽和炭化水素基、あるいは(メタ)アクリロイルオキシエチル基を表す。一般式(5)中、R8は炭素数6〜15の炭化水素基を表す。)
(2)(1)において、一般式(1)で表される化合物であって、R3が炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基である化合物、一般式(2)で表される化合物であって、R4が炭素数8〜14のアルキル基である化合物、一般式(3−1)で表される化合物、一般式(3−2)で表される化合物、一般式(4−1)で表される化合物、一般式(4−2)で表される化合物、一般式(5)で表される化合物であって、R8が炭素数6〜15の脂肪族炭化水素基である化合物、または下記の化合物。
一般式(3−1)
【化2】

(一般式(3−1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R51は、炭素数4〜8のアルキル基を表す。)
一般式(3−2)
【化3】

(一般式(3−2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R52は、炭素数5〜9のアルキル基を表す。)
一般式(3−3)
【化4】

(一般式(3−3)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R53は、総炭素数5〜12の炭化水素基であって、−CH=CH−、−CH=C(CH3)−、−C(CH3)=C(CH3)−、−CH=CH2、−CH=CH(CH3)、−C(CH3)=CH2および−C(CH3)=CH(CH3)から選択される基の少なくとも1つと、アルキル基およびアルキレン基の少なくとも1つとの組み合わせからなる基である。)
一般式(4−1)
【化5】

(一般式(4−1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R61は、炭素数2〜8の直鎖のアルキル基を表す。)
一般式(4−2)
【化6】

(一般式(4−2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R71は、炭素数2〜12の不飽和炭化水素基または(メタ)アクリロイルオキシエチル基を表し、R72はメチル基またはエチル基を表す。)
【化7】

(3)(1)において、一般式(1)で表される化合物であって、R3が炭素数4〜8の直鎖のアルキル基である化合物、一般式(2)で表される化合物であって、R4が炭素数10〜12のアルキル基である化合物、一般式(3−1)で表される化合物、一般式(3−2)で表される化合物、一般式(3−3)で表される化合物、一般式(4−1)で表される化合物、一般式(5)で表される化合物であって、R8は炭素数6〜13の直鎖アルキル基である化合物、または下記のいずれかの化合物。
一般式(3−1)
【化8】

(一般式(3−1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R51は、炭素数4〜8のアルキル基を表す。)
一般式(3−2)
【化9】

(一般式(3−2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R52は、炭素数5〜9のアルキル基を表す。)
一般式(3−3)
【化10】

(一般式(3−3)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R53は、総炭素数5〜12の炭化水素基であって、−CH=CH−、−CH=C(CH3)−、−C(CH3)=C(CH3)−、−CH=CH2、−CH=CH(CH3)、−C(CH3)=CH2および−C(CH3)=CH(CH3)から選択される基の少なくとも1つと、アルキル基およびアルキレン基の少なくとも1つとの組み合わせからなる基である。)
一般式(4−1)
【化11】

(一般式(4−1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R61は、炭素数2〜8の直鎖のアルキル基を表す。)
【化12】

(4)下記のいずれかの化合物。
【化13】

(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の化合物と、光重合開始剤を含む、硬化性組成物。
(6)光照射により硬化することを特徴とする(5)に記載の硬化性組成物。
(7)加熱により硬化することを特徴とする(5)に記載の硬化性組成物。
(8)ナノインプリント用である、(5)〜(7)のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
(9)(5)〜(8)のいずれか1項に記載の組成物を硬化させた硬化物。
(10)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の化合物と、光重合開始剤を含むナノインプリント用硬化性組成物を基板上に適用して層状とする工程と、該層状に形成した層にモールドに押圧する工程と、前記層状に形成した層に光照射する工程を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
(11)さらに、前記形成された層に、光を照射後、加熱する工程を含むことを特徴とする(10)に記載の硬化物の製造方法。
(12)(9)に記載の硬化物を含む液晶表示装置用部材。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、低粘度かつ低揮発性な化合物を提供することが可能になった。また、本発明の化合物を用いた組成物は、硬化性に優れ、かつ、硬化時の装置内の汚染を抑制することが可能になった。さらに、本発明の化合物をナノインプリント用硬化性組成物に用いることにより、硬化後に高い転写パターン精度を有するパターンを提供することが可能になった。特に、低揮発性で真空耐性に優れるため、インプリント装置内部を汚染することなく、精度の高いパターンを形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0014】
以下において本発明を詳細に説明する。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリルおよびメタクリルを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、単量体とモノマーは同一である。本発明における単量体は、オリゴマー、ポリマーと区別し、質量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、官能基は重合に関与する基をいう。
なお、本発明でいう“インプリント”は、好ましくは、1nm〜10mmのサイズのパターン転写をいい、より好ましくは、およそ10nm〜100μmのサイズ(ナノインプリント)のパターン転写をいう。
【0015】
本願発明が開示する化合物は、下記一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、または一般式(5)で表される化合物であって、分子量310以上の化合物である。このような化合物は、低粘度と低揮発性を両立し、硬化性組成物、特に、インプリント用硬化性組成物に好ましく採用できる。
【化14】

(一般式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)中のR1およびR2は、それぞれ、水素原子またはメチル基を表す。一般式(1)中、R3は炭素数4〜10の炭化水素基を表す。一般式(2)中、R4は炭素数8〜14のアルキル基を表す。一般式(3)中、R5は炭素数4〜15の直鎖状炭化水素基を表す。一般式(4)中、R6は炭素数2〜10の直鎖状アルキル基を表し、R7は炭素数2〜12の不飽和炭化水素基、あるいは(メタ)アクリロイルオキシエチル基を表す。一般式(5)中、R8は炭素数6〜15の炭化水素基を表す。)
【0016】
本発明の化合物の分子量は、低揮発性の観点から310以上が好ましく、320以上がより好ましく、330以上が特に好ましい。上限値としては、特に定めるものではないが、好ましくは、600以下である。
一般式(1)〜(5)中、R1およびR2は、それぞれ、水素原子が好ましい。
一般式(1)〜(5)中、R1〜R8は、それぞれ、置換基を有していてもよく、この場合の置換基としては、炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基がさらに好ましい。R1〜R8は、置換基を有していない方が好ましい。
【0017】
(一般式(1)で表される化合物)
一般式(1)中、R3は、炭素数4〜10の炭化水素基を表し、炭素数4〜9の炭化水素基が好ましく、炭素数4〜8の炭化水素基がさらに好ましい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。アルキル基は直鎖のアルキル基であることがさらに好ましい。
また、一般式(1)で表される化合物として、下記化合物も好ましい。
【化15】

【0018】
(一般式(2)で表される化合物)
一般式(2)中、R4は炭素数8〜14のアルキル基を表し、炭素数9〜14のアルキル基が好ましく、炭素数10〜12のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基は直鎖のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0019】
(一般式(3)で表される化合物)
一般式(3)中、R5は炭素数4〜15の直鎖状炭化水素基を表し、炭素数4〜14の直鎖状炭化水素基が好ましく、炭素数4〜13の直鎖状炭化水素基がより好ましい。一般式(3)は好ましくは、一般式(3−1)、一般式(3−2)または一般式(3−3)で表される。
一般式(3−1)
【化16】

(一般式(3−1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R51は、炭素数4〜8のアルキル基を表す。)
51は、直鎖のアルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(3−2)
【化17】

(一般式(3−2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R52は、炭素数5〜9のアルキル基を表す。)
52は、直鎖のアルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(3−3)
【化18】

(一般式(3−3)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R53は、総炭素数5〜12の炭化水素基であって、−CH=CH−、−CH=C(CH3)−、−C(CH3)=C(CH3)−、−CH=CH2、−CH=CH(CH3)、−C(CH3)=CH2および−C(CH3)=CH(CH3)から選択される基の少なくとも1つと、アルキル基およびアルキレン基の少なくとも1つとの組み合わせからなる基である。)
−CH=CH−、−CH=C(CH3)−、−C(CH3)=C(CH3)−、−CH=CH2、−CH=CH(CH3)、−C(CH3)=CH2および−C(CH3)=CH(CH3)から選択される基は1つでも2つ以上であってもよいが、好ましくは1つである。これらの基の中で、−CH=CH−または−CH=CH2であることが好ましく、少なくとも、−CH=CH2を含むことがより好ましい。
アルキル基およびアルキレン基の少なくとも1つは、少なくともアルキレン基を含むことが好ましい。
53の総炭素数は、6〜11が好ましく、7〜10がより好ましい。
53は、−アルキル基−CH=CH2であることが好ましく、この場合のアルキル基は、炭素数5〜8の直鎖のアルキル基であることがより好ましい。
【0020】
(一般式(4)で表される化合物)
一般式(4)中、R6は炭素数2〜10の直鎖状アルキル基を表し、炭素数2〜9の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数2〜8の直鎖状アルキル基がより好ましい。このような範囲とすることにより、化合物がより低揮発性となり好ましい。一方、R7は炭素数2〜12の不飽和炭化水素基、あるいは(メタ)アクリロイルオキシエチル基を表し、炭素数2〜12の炭化水素基が好ましく、炭素数2〜11の炭化水素基がさらに好ましい。一般式(4)は好ましくは、下記一般式(4−1)または(4−2)で表される化合物である。
一般式(4−1)
【化19】

(一般式(4−1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R61は、炭素数2〜8の直鎖のアルキル基を表す。)
一般式(4−2)
【化20】

(一般式(4−2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R71は、炭素数2〜12の不飽和炭化水素基または(メタ)アクリロイルオキシエチル基を表し、R72はメチル基またはエチル基を表す。)
炭素数2〜12の不飽和炭化水素基としては、炭素炭素二重結合を1つまたは2つ以上含む基が好ましい。一般式(4−2)で表される化合物としては、下記の化合物が例示される。
【化21】

【0021】
(一般式(5)で表される化合物)
一般式(5)中、R8は炭素数6〜15の炭化水素基を表し、炭素数6〜14の炭化水素基が好ましく、炭素数6〜13の炭化水素基がさらに好ましい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、直鎖アルキル基であることがさらに好ましい。
また、一般式(5)で表される化合物として、下記化合物も好ましい。
【化22】

【0022】
本発明の化合物は、公知の方法に従って合成することができる。例えば、特開2009−114091号公報に記載の方法を参酌することによって合成できる。
【0023】
以下に本発明の化合物の好ましい例を示す。
【化23】

【0024】
本発明の化合物は、粘度は、好ましくは、50mPa・s以下であり、より好ましくは30mPa・s以下である。下限は特に定めるものではないが、好ましくは、3mPa・s以上である。
【0025】
上記化合物を用いた本発明の硬化性組成物(以下、単に「本発明の組成物」ということがある)は、硬化前においては低粘度であり、微細凹凸パターン形成能に優れたものとすることができる。また、硬化後においては表面硬度、耐傷性に優れており、さらには、他の諸点において総合的に優れた塗膜物性とすることができる。そのため、本発明の組成物は、硬化性組成物としてはもちろん、光ナノインプリントリソグラフィに好ましく用いることができる。
【0026】
即ち、本発明の組成物は、光ナノインプリントリソグラフィに用いる場合、以下のような特徴を有するものとすることができる。
(1)室温での溶液流動性に優れるため、モールド凹部のキャビティ内に該組成物が流れ込みやすく、大気が取り込まれにくいためバブル欠陥を引き起こすことがなく、モールド凸部、凹部のいずれにおいても光硬化後に残渣が残りにくい。
(2)硬化後の硬化膜はパターン精度に優れ、表面硬度、耐傷性などの機械的性質に優れ、塗膜と基板の密着性に優れ、塗膜とモールドの剥離性に優れるため、モールドを引き剥がす際にパターン崩れや塗膜表面に糸引きが生じて表面荒れを引き起こすことがないため良好なパターンを形成できる。
(3)塗布均一性に優れるため、大型基板への塗布・微細加工分野などに適する。
【0027】
例えば、本発明の組成物は、これまで展開が難しかった半導体集積回路や液晶表示装置用部材(特に、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサ、その他の液晶表示装置用部材の微細加工用途等)に好適に適用でき、その他の用途、例えば、プラズマディスプレイパネル用隔壁材、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーデイスク等の磁気記録媒体、回折格子ヤレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、光学フィルムや偏光素子、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用リブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶等の作製にも幅広く適用できるようになる。
【0028】
(重合性単量体)
本発明の組成物は、硬化後の高硬度化、耐傷性の改良を目的に、重合性単量体として、上記化合物を含んでいる。本発明の組成物における、本発明の化合物の含量は、例えば、インプリント用硬化性組成物に用いる場合、好ましくは30〜95重量%であり、より好ましくは40〜90重量%である。
さらに、本発明の組成物には、上記化合物以外の、他の重合性単量体を含んでいてもよい。他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)を含めることが挙げられる。このような化合物を含むことにより、より組成物の低粘度化を図ることができる。エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては、特開2009−73078号公報の段落番号0046に記載のものを好ましく採用することができる。
【0029】
さらに他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個以上有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。 本発明で好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体としては、特開2009−73078号公報の段落番号0047に記載のものを好ましく採用することができる。
【0030】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0031】
本発明の組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、上記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーやポリマーを本発明の目的を達成する範囲で配合することができる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーまたは多官能ポリマーとしてはポリエステルアクリレート、エステルアクリレートオリゴマー、ポリウレタンアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレート、エーテルアクリレートオリゴマー、ポリエポキシアクリレート、エポキシアクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0032】
本発明で用いる他の重合性単量体として、オキシラン環を有する化合物も採用できる。オキシラン環を有する化合物としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0033】
本発明で用いるエポキシ化合物の例としては、特開2009−73078号公報の段落番号0053〜0055に記載のものが好ましく用いられ、より好ましい範囲も同様である。
【0034】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
【0035】
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。
ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、特開2009−73078号公報の段落番号0057に記載のものを好ましく採用することができる。
【0036】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
その他、本発明の1官能重合体と併用できるスチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができ、ビニルナフタレン誘導体としては、例えば、1−ビニルナフタレン、α−メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メトキシ−1−ビニルナフタレン等を挙げることができる。
【0038】
一方、本発明の組成物においてはスチレン誘導体を重合性単量体として用いないほうが好ましい。これはスチレン誘導体を本発明の組成物中に組み込むと、光硬化性が極端に悪化し、レジストパターンにタックネスが生じやすくなるためである。
【0039】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
【0040】
本発明で用いる他の重合性単量体として、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを配合できる。例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0041】
本発明の組成物中に、上記本発明の化合物以外の化合物の含量は、組成物中、通常、10〜80質量%であり、好ましくは、30〜75質量%である。
【0042】
(重合開始剤)
本発明の組成物には、通常、光重合開始剤が含まれる。本発明に用いられる光重合開始剤は、全組成物中、例えば、0.1〜15質量%含有し、好ましくは0.2〜12質量%であり、さらに好ましくは、0.3〜10質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
光重合開始剤の割合が0.1質量%以上とすることにより、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の割合を15質量%以下とすることにより、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0043】
本発明で用いる光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。また、光重合開始剤は1種類のみでも、2種類以上用いてもよい。
【0044】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0091に記載のものを好ましく採用することができる。
【0045】
本発明の重合開始のための光は、紫外光、近紫外光、遠紫外光、可視光、赤外光等の領域の波長の光または、電磁波だけでなく、放射線も含まれ、放射線には、例えば、マイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、さらに全面露光することも可能である。
【0046】
本発明で使用される光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、本発明のナノインプリント用硬化性組成物がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させたりするなどの問題を生じる。ガスを発生させないものは、モールドが汚染されにくく、モールドの洗浄頻度が減少したり、本発明のナノインプリント用硬化性組成物がモールド内で変形したりしにくいので転写パターン精度を劣化させにくい等の観点で好ましい。
【0047】
(酸化防止剤)
本発明の組成物には、公知の酸化防止剤を含めることができる。本発明に用いられる酸化防止剤は、全組成物中、例えば、0.01〜10質量%含有し、好ましくは0.2〜5質量%である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止できる、または分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中では、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0048】
酸化防止剤の市販品としては、Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業製)、アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0049】
(界面活性剤)
本発明の組成物には、界面活性剤を含めることができる。本発明に用いられる界面活性剤は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%含有し、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001未満では、塗布の均一性の効果が不十分であり、一方、5質量%を越えると、モールド転写特性を悪化させるため、好ましくない。
界面活性剤は、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤の両方または、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましく、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことが最も好ましい。
ここで、フッ素・シリコーン系界面活性剤とは、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
このような界面活性剤を用いることにより、本発明の組成物を、半導体素子製造用のシリコーンウェーハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成されるなど基板上の塗布時に起こるストリエーションや鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決する目的、およびモールド凹部のキャビティ内への組成物の流動性を良くし、モールドとレジスト間の剥離性を良くし、レジストと基板間の密着性を良くする、組成物の粘度を下げる等が可能になる。
【0050】
本発明で用いる非イオン性フッ素系界面活性剤の例としては、特開2009−73078号公報の段落番号0072に記載のものが好ましく用いられる。
本発明で用いる、フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも信越化学工業社製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
【0051】
本発明の組成物に用いられる界面活性剤としては、電圧保持率の観点から、非イオン性(ノニオン系)の界面活性剤が好ましい。
【0052】
その他の成分
本発明の組成物には前記成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0053】
剥離性をさらに向上する目的で、本発明の組成物には、離型剤を任意に配合することができる。具体的には、本発明の組成物の層に押し付けたモールドを、樹脂層の面荒れや版取られを起こさずにきれいに剥離できるようにする目的で添加される。離型剤としては従来公知の離型剤、例えば、シリコーン系離型剤、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー(テフロンは登録商標)等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系化合物等が何れも使用可能である。また、これらの離型剤をモールドに付着させておくこともできる。
【0054】
シリコーン系離型剤は、本発明で用いられる上記光硬化性樹脂と組み合わせた時にモールドからの剥離性が特に良好であり、版取られ現象が起こり難くなる。シリコーン系離型剤は、オルガノポリシロキサン構造を基本構造とする離型剤であり、例えば、未変性または変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等が該当し、一般的にハードコート用組成物で用いられているシリコーン系レベリング剤の適用も可能である。
【0055】
変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖および/または末端を変性したものであり、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性等が挙げられる。
一つのポリシロキサン分子に上記したような変性方法の2つ以上を行うこともできる。
【0056】
変性シリコーンオイルは組成物成分との適度な相溶性があることが好ましい。特に、組成物中に必要に応じて配合される他の塗膜形成成分に対して反応性がある反応性シリコーンオイルを用いる場合には、本発明の組成物を硬化した硬化膜中に化学結合よって固定されるので、当該硬化膜の密着性阻害、汚染、劣化等の問題が起き難い。特に、蒸着工程での蒸着層との密着性向上には有効である。また、(メタ)アクリロイル変性シリコーン、ビニル変性シリコーン等の、光硬化性を有する官能基で変性されたシリコーンの場合は、本発明の組成物と架橋するため、硬化後の特性に優れる。
【0057】
トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサンは表面にブリードアウトし易く剥離性に優れており、表面にブリードアウトしても密着性に優れ、金属蒸着やオーバーコート層との密着性にも優れている点で好ましい。
上記離型剤は1種類のみ或いは2種類以上を組み合わせて添加することができる。
【0058】
離型剤を本発明の組成物に添加する場合、組成物全量中に0.001〜10質量%の割合で配合することが好ましく、0.01〜5質量%の範囲で添加することがより好ましい。離型剤の割合が上記範囲未満では、モールドと光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物層の剥離性向上効果が不充分となりやすい。一方、離型剤の割合が上記範囲を超えると組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じたり、製品において基材自身および近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害したり、転写時に皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)を引き起こす等の点で好ましくない。
離型剤の割合が0.01質量%以上とすることにより、モールドと光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物層の剥離性向上効果が充分となる。一方、離型剤の割合が上記範囲を10質量%以内だと、組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じにくく、製品において基材自身および近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害しにくく、転写時に皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)を引き起こしにくい等の点で好ましい。
【0059】
本発明の組成物には、微細凹凸パターンを有する表面構造の耐熱性、強度、或いは、金属蒸着層との密着性を高めるために、有機金属カップリング剤を配合してもよい。また、有機金属カップリング剤は、熱硬化反応を促進させる効果も持つため有効である。有機金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、スズカップリング剤等の各種カップリング剤を使用できる。
【0060】
本発明におけるシランカップリング剤としては、例えば、特開2009−73078号公報の段落番号0083に記載のシランカップリング剤を好ましく用いることができる。
本発明におけるチタンカップリング剤としては、例えば、特開2009−73078号公報の段落番号0084に記載のチタンカップリング剤を好ましく用いることができる。
本発明におけるジルコニウムカップリング剤としては、例えば、特開2009−73078号公報の段落番号0085に記載のジルコニウムカップリング剤を好ましく用いることができる。
本発明におけるアルミニウムカップリング剤としては、例えば、特開2009−73078号公報の段落番号0086に記載のアルミニウムカップリング剤を好ましく用いることができる。
【0061】
上記有機金属カップリング剤は、光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物の固形分全量中に0.001〜10質量%の割合で任意に配合できる。有機金属カップリング剤の割合を0.001質量%以上とすることにより、耐熱性、強度、蒸着層との密着性の付与の向上についてより効果的な傾向にある。一方、有機金属カップリング剤の割合を10質量%以下とすることにより、組成物の安定性、成膜性の欠損を抑止できる傾向にあり好ましい。
【0062】
紫外線吸収剤の市販品としては、Tinuvin P、234、320、326、327、328、213(以上、チバガイギー(株)製)、Sumisorb110、130、140、220、250、300、320、340、350、400(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。紫外線吸収剤は、光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物の全量に対して任意に0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0063】
光安定剤の市販品としては、Tinuvin 292、144、622LD(以上、チバガイギー(株)製)、サノールLS−770、765、292、2626、1114、744(以上、三共化成工業(株)製)等が挙げられる。光安定剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0064】
老化防止剤の市販品としては、Antigene W、S、P、3C、6C、RD−G、FR、AW(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。老化防止剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0065】
本発明の組成物には基板との接着性や膜の柔軟性、硬度等を調整するために可塑剤を加えることが可能である。好ましい可塑剤の具体例としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジ(n−ブチル)アジペート、ジメチルスベレート、ジエチルスベレート、ジ(n−ブチル)スベレート等があり、可塑剤は組成物中の30質量%以下で任意に添加することができる。好ましくは20質量%以下で、より好ましくは10質量%以下である。可塑剤の添加効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0066】
本発明の組成物には基板との接着性等を調整するために密着促進剤を添加しても良い。密着促進剤として、ベンズイミダゾール類やポリベンズイミダゾール類、低級ヒドロキシアルキル置換ピリジン誘導体、含窒素複素環化合物、ウレアまたはチオウレア、有機リン化合物、8−オキシキノリン、4−ヒドロキシプテリジン、1,10−フェナントロリン、2,2'−ビピリジン誘導体、ベンゾトリアゾール類、有機リン化合物とフェニレンジアミン化合物、2−アミノ−1−フェニルエタノール、N−フェニルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン,N−エチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンおよび誘導体、ベンゾチアゾール誘導体などを使用することができる。密着促進剤は、組成物中の好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。密着促進剤の添加は効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0067】
本発明の組成物を硬化させる場合、必要に応じて熱重合開始剤も添加することができる。好ましい熱重合開始剤としては、例えば過酸化物、アゾ化合物を挙げることができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0068】
本発明の組成物は、パターン形状、感度等を調整する目的で、必要に応じて光塩基発生剤を添加してもよい。例えば、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O−カルバモイルヒドロキシルアミド、O−カルバモイルオキシム、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6−ジアミン、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2'−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2',4'−ジニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン等が好ましいものとして挙げられる。
【0069】
本発明の組成物には、塗膜の視認性を向上するなどの目的で、着色剤を任意に添加してもよい。着色剤は、UVインクジェット組成物、カラーフィルタ用組成物およびCCDイメージセンサ用組成物等で用いられている顔料や染料を本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。本発明で用いることができる顔料としては、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0121に記載のものを好ましく採用することができる。
着色剤は組成物の全量に対し、0.001〜2質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0070】
また、本発明の組成物では、機械的強度、柔軟性等を向上するなどの目的で、任意成分としてエラストマー粒子を添加してもよい。
本発明の組成物に任意成分として添加できるエラストマー粒子は、平均粒子サイズが好ましくは10nm〜700nm、より好ましくは30〜300nmである。例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/α−オレフィン系共重合体、エチレン/α−オレフィン/ポリエン共重合体、アクリルゴム、ブタジエン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体などのエラストマーの粒子である。またこれらエラストマー粒子を、メチルメタアクリレートポリマー、メチルメタアクリレート/グリシジルメタアクリレート共重合体などで被覆したコア/シェル型の粒子を用いることができる。エラストマー粒子は架橋構造をとっていてもよい。
【0071】
エラストマー粒子の市販品としては、例えば、レジナスボンドRKB(レジナス化成(株)製)、テクノMBS−61、MBS−69(以上、テクノポリマー(株)製)等を挙げることができる。
【0072】
これらエラストマー粒子は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。本発明の組成物におけるエラストマー成分の含有割合は、好ましくは1〜35質量%であり、より好ましくは2〜30質量%、特に好ましくは3〜20質量%である。
【0073】
本発明の組成物には、硬化収縮の抑制、熱安定性を向上するなどの目的で、塩基性化合物を任意に添加してもよい。塩基性化合物としては、アミンならびに、キノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、光重合成モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0074】
本発明の組成物には、光硬化性向上のために、連鎖移動剤を添加しても良い。具体的には、4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)を挙げることができる。
【0075】
(有機溶剤)
本発明の組成物は、有機溶剤の含有量が、全組成物中、3質量%以下であることが好ましい。すなわち本発明の組成物は、好ましくは特定の1官能およびまたは2官能の単量体を反応性希釈剤として含むため、本発明の組成物の成分を溶解させるための有機溶剤は、必ずしも含有する必要がない。また、有機溶剤を含まなければ、溶剤の揮発を目的としたベーキング工程が不要となるため、プロセス簡略化に有効となるなどのメリットが大きい。従って、本発明の組成物では、有機溶剤の含有量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下であり、含有しないことが特に好ましい。このように、本発明の組成物は、必ずしも、有機溶剤を含むものではないが、反応性希釈剤では、溶解しない化合物などを、本発明の組成物として溶解させる場合や粘度を微調整する際など、任意に添加してもよい。本発明の組成物に好ましく使用できる有機溶剤の種類としては、ナノインプリント用硬化性組成物やフォトレジストで一般的に用いられている溶剤であり、本発明で用いる化合物を溶解および均一分散させるものであれば良く、かつこれらの成分と反応しないものであれば特に限定されない。
【0076】
本発明で用いることができる溶剤の例としては、特開2009−73078号公報の段落番号0066に記載のものが例示される。
さらに、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。これらは1種を単独使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
これらの中でも、メトキシプロピレングリコールアセテート、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノンなどが特に好ましい。
【0077】
(粘度)
本発明の組成物の粘度について説明する。本発明における粘度は特に述べない限り、25℃における粘度をいう。本発明の組成物は、溶剤を除く組成物の25℃における粘度が、通常、18mPa・s以下であり、好ましくは12mPa・s以下である。下限値については、特に定めるものでは無いが、好ましくは、3mPa・以上である。本発明の組成物の粘度を3mPa・s以上とすることにより、基板塗布適性の問題や膜の機械的強度の低下が生じにくい傾向にある。具体的には、粘度を3mPa・s以上とすることによって、組成物の塗布の際に面上ムラを生じたり、塗布時に基板から組成物が流れ出たりするのを抑止できる傾向にあり、好ましい。一方、本発明の組成物の粘度を18mPa・s以下とすることにより、微細な凹凸パターンを有するモールドを組成物に密着させた場合でも、モールドの凹部のキャビティ内にも組成物が流れ込み、大気が取り込まれにくくなるため、バブル欠陥を引き起こしにくくなり、モールド凸部において光硬化後に残渣が残りにくくなり好ましい。
【0078】
(表面張力)
本発明の組成物は、表面張力が、18〜30mN/mの範囲にあることが好ましく、20〜28mN/mの範囲にあることがより好ましい。このような範囲とすることにより、表面平滑性を向上させるという効果が得られる。
【0079】
(水分量)
なお、本発明の組成物は、調製時における水分量が好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調製時における水分量を2.0質量%以下とすることにより、本発明の組成物の保存性をより安定にすることができる。
【0080】
(調製)
本発明の組成物は、上記各成分を混合した後、例えば、孔径0.05μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することができる。前記ナノインプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用する材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されない。
【0081】
[硬化膜]
次に、本発明の組成物を用いた本発明の硬化膜(特に、微細凹凸パターン)について説明する。本発明では、本発明の組成物を適用して硬化して本発明の硬化膜を形成することができる。
【0082】
また、基板または、支持体上に本発明の組成物を適用し、該組成物からなる層を露光、硬化、必要に応じて乾燥(ベーク)させることにより、オーバーコート層や絶縁膜などの永久膜を作製することもできる。
【0083】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)においては、ディスプレイの動作を阻害しないようにするため、レジスト中の金属あるいは有機物のイオン性不純物の混入を極力避けることが好ましく、その濃度としては、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下にすることが必要である。
【0084】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性なチッソ、またはアルゴンなどで置換しておいても良い。また、輸送、保管に際しては、常温でも良いが、より永久膜の変質を防ぐため、−20℃から0℃の範囲に温度制御しても良い。勿論、反応が進行しないレベルで遮光する必要がある。
【0085】
[液晶表示装置用部材]
また、本発明の硬化物は、半導体集積回路、記録材料、あるいは液晶表示装置用部材として好ましく適用することができ、その中でも液晶表示装置部材であることがより好ましく、フラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することが特に好ましい。
【0086】
[硬化膜の製造方法]
以下において、本発明の組成物を用いた硬化膜の製造方法について述べる。
本発明の組成物は、光、または、光および熱により硬化させることが好ましい。具体的には、基板上に少なくとも本発明の組成物を適用し、溶剤を乾燥させて本発明の組成物からなる層を形成してパターン受容体を作製し、当該パターン受容体のパターン形成側の表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターンを光照射および加熱により硬化させる。通常、光照射および加熱は複数回に渡って行われる。本発明の硬化膜の製造方法によるナノインプリントリソグラフィは、積層化や多重パターニングもでき、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。
【0087】
本発明の組成物は、一般によく知られた方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、基板上に適用することができる。本発明の組成物からなる層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μmである。また、本発明の組成物は、多重塗布してもよい。
【0088】
本発明の組成物を塗布するための基板は、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。基板の形状は、板状でも良いし、ロール状でもよい。
【0089】
本発明の組成物を硬化させる光としては特に限定されないが、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えば、マイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いても良いし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でも良い。
【0090】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜50mW/cm2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm2以上とすることにより、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生しにくくなる。一方、1000mJ/cm2以下とすることにより、組成物の分解による永久膜の劣化が減少する傾向にあり好ましい。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御しても良い。
【0091】
本発明の組成物を硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分が好ましく、15〜45分がより好ましい。
【0092】
次に本発明で用いることのできるモールド材について説明する。本発明の組成物を用いた光ナノインプリントリソグラフィは、モールド材および/または基板の少なくとも一方は、光透過性の材料を選択する必要がある。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基板の上にナノインプリント用硬化性組成物を塗布し、光透過性モールドを押し当て、モールドの裏面から光を照射し、ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させる。また、光透過性基板上にナノインプリント用硬化性組成物を塗布し、モールドを押し当て、モールドの裏面から光を照射し、ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させることもできる。
光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
【0093】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。モールドは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであれば良い。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0094】
本発明の透明基板を用いた場合で使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板などが例示され、特に制約されない。形状は板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0095】
本発明で用いられるモールドは、本発明の組成物とモールドとの剥離性を向上するために離型処理を行ったものを用いてもよい。シリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業製、オプツールDSXや住友スリーエム製、Novec EGC−1720等の市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0096】
本発明の硬化膜の製造方法を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、通常、モールドの圧力が10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にあり、また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にあり好ましい。モールドの圧力は、モールド凸部の本発明の組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0097】
本発明において、光インプリントリソグラフィにおける光照射は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、ナノインプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドとナノインプリント用硬化性組成物の密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射しても良い。本発明において、好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲で行われる。
【実施例】
【0098】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0099】
1.光硬化性組成物の調製
下記重合性単量体M−1、下記光重合開始剤P−1(M−1に対して2質量%)、下記界面活性剤W−1(M−1に対して1質量%)を加えて実施例1の光硬化性組成物を調製した。
【0100】
[実施例2〜22]
実施例1において、上記化合物M−1をそれぞれ下記表1〜表5に記載の化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜22の組成物を調製した。
【0101】
以下に、光硬化性組成物の材料を示す。
<本発明の重合性単量体>
【化24】

<比較例>
【化25】

<その他の化合物>
M−25:テトラエチレングリコールジアクリレート(東亞合成製:アロニックスM−240)
M−26:トリプロピレングリコールジアクリレート(東亞合成製:アロニックスM−220)
M−27:特許第3648636号公報に記載の下記(メタ)アクリレート
【化26】

M−28:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製:カヤラッドDPHA)
M−29:シクロヘキシルアクリレート(大阪有機製:ビスコート#155)
【0102】
<重合性単量体の合成例>
(M−1の合成)
3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート(Aldrich製)20.0gをアセトン100ml中に溶解させて氷浴中で冷却し、トリエチルアミン(和光純薬製)14.1gを加えた後、n−ヘキサン酸クロリド(和光純薬製)17.6gのアセトン(20mL)溶液を滴下した。滴下終了後室温で1時間攪拌した後、炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム5g+水250ml)を添加した。酢酸エチル250mlを加えて分液した後、さらに水層を酢酸エチル150mLで抽出した。得られた有機層を0.2規定塩酸水溶液200mlで洗浄し、硫酸マグネシウム15gで乾燥させた後、ろ液を濃縮してM−1の粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−1を17.3g得た(収率59%)。
【0103】
得られたM−1の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,1H)、δ6.2(dd,1H)、δ6.2(d,1H)、δ5.9(d,1H)、δ5.6(d,1H)、δ5.5−5.3(m,1H)、δ4.5−4.2(m,4H)、δ2.3(t,2H)、δ1.9(s,3H)、δ1.6(td,2H)、δ1.4−1.2(m,4H)、δ0.8(t,3H)
【0104】
(M−2の合成)
M−1と同様にして、3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート(Aldrich製)15.0gとn−オクタン酸クロリド(和光純薬製)20.5gを反応させ、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してM−2を15.5g得た。(収率65%)
【0105】
得られたM−2の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,1H)、δ6.2(dd,1H)、δ6.2(d,1H)、δ5.9(d,1H)、δ5.6(d,1H)、δ5.5−5.3(m,1H)、δ4.5−4.2(m,4H)、δ2.3(t,2H)、δ1.9(s,3H)、δ1.6(td,2H)、δ1.4−1.2(m,8H)、δ0.8(t,3H)
【0106】
(M−3の合成)
M−1と同様にして、3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルメタクリレート(Aldrich製)20.0gとベンジルクロリド(東京化成製)17.1gを反応させ、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してM−3を20.3g得た。(収率68%)
【0107】
得られたM−3の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ8.0(d,2H)、δ7.6(dd,2H)、δ7.4(dd,2H)、δ6.4(d,1H)、δ6.2−6.1(m,2H)、δ5.8(d,1H)、δ5.7−5.6(m,2H)、δ4.6−4.3(m,4H)、δ1.9(s,3H)
【0108】
(M−4の合成)
M−1と同様にして、1,2−ドデカンジオール(東京化成製)15.0gとアクリル酸クロリド(東京化成製)17.4gを反応させ、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してM−4を15.6g得た。(収率68%)
【0109】
得られたM−4の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.9(d,1H)、δ6.8(d,1H)、δ6.3(dd,1H)、δ6.2(dd,1H)、δ5.7(d,1H)、δ5.7(d,1H)、δ5.3(tdd,1H)、δ4.6(dd,1H)、δ4.3(dd,1H)、δ1.6(td,2H)、δ1.4−1.2(m,16H)、δ0.7(t,3H)
【0110】
(M−5の合成)
ヘプタン酸(東京化成製)23.8gをジメチルアセトアミド150mLに溶解させ、炭酸カリウム(和光純薬製)25.3g、エピクロロヒドリン(東京化成製)20.3gをそれぞれ添加して100℃まで加熱し、2時間攪拌した。放冷後、反応混合液に水200mL、酢酸エチル200mLを加えて分液し、有機層を0.2規定塩酸100mLで2回抽出した。有機層を硫酸マグネシウム15gで乾燥させ、ろ過液を濃縮して得た粗生成物をリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してM−5の中間体(M−5A)15.0gを得た。
続いて、M−5Aをトルエン25mLに溶解させ、アクリル酸(東京化成製)6.4g、テトラブチルアンモニウムブロミド(和光純薬製)1.3g、4−メトキシフェノール(東京化成製)少量を加えて90℃まで加熱し、7時間攪拌した。
放冷後、反応混合液をアセトン100mLに溶解させて氷浴中で冷却し、トリエチルアミン(和光純薬製)13.0gを加えた後アクリル酸クロリド(東京化成製)10.9gのアセトン(10mL)溶液を滴下した。滴下終了後室温で2時間攪拌した後、炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム5g+水150ml)を添加した。酢酸エチル200mlを加えて分液した後、さらに水層を酢酸エチル100mLで抽出した。得られた有機層を0.1規定塩酸水溶液100mlで洗浄し、硫酸マグネシウム20gで乾燥させた後、ろ液を濃縮してM−5の粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−5を18.5g得た(3工程収率32%)。
【0111】
得られたM−5の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,1H)、δ6.4(d,1H)、δ6.2−6.1(m,2H)、δ5.8(d,1H)、δ5.8(d,1H)δ5.4(dddd,1H)、δ4.5−4.2(m,4H)、δ2.3(t,2H)、δ1.6(t,2H)、δ1.4−1.2(m,8H)、δ0.8(t,3H)
【0112】
(M−6の合成)
M−5と同様にして、ノナン酸(東京化成製)16.1gから3工程で得られたM−6の粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−6を8.5g得た(3工程収率25%)。
【0113】
得られたM−6の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,1H)、δ6.4(d,1H)、δ6.2−6.1(m,2H)、δ5.8(d,1H)、δ5.8(d,1H)δ5.4(dddd,1H)、δ4.5−4.2(m,4H)、δ2.3(t,2H)、δ1.6(t,2H)、δ1.4−1.2(m,12H)、δ0.8(t,3H)
【0114】
(M−7の合成)
trans−2−オクテン酸(東京化成製)12.1gとグリシドール(東京化成製)6.0gをトルエン20mLに溶解させ、テトラブチルアンモニウムブロミド(和光純薬製)1.3g、4−メトキシフェノール(東京化成製)少量を加えて90℃まで加熱し、7時間攪拌した。
放冷後、反応混合液をアセトン170mLに溶解させて氷浴中で冷却し、トリエチルアミン(和光純薬製)24.6gを加えた後アクリル酸クロリド(東京化成製)20.5gのアセトン(20mL)溶液を滴下した。滴下終了後室温で2時間攪拌した後、炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム5g+水250ml)を添加した。酢酸エチル300mlを加えて分液した後、有機層を0.1規定塩酸水溶液150mlで洗浄し、硫酸マグネシウム20gで乾燥させた後、ろ液を濃縮してM−7の粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−7を19.3g得た(2工程収率70%)。
【0115】
得られたM−7の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ7.0(td,1H)、δ6.5(d,1H)、δ6.4(d,1H)、6.2(dd,1H)、δ6.1(dd,1H)、δ5.9(d,1H)、δ5.9(d,1H)、δ5.8(d,1H)δ5.5−5.3(m,1H)、δ4.5−4.2(m,4H)、δ2.2(td,2H)、δ1.5−1.4(m,2H)、δ1.3−1.1(m,4H)、δ0.8(t,3H)
【0116】
(M−8の合成)
M−7と同様にして、trans−2−ノネン酸(東京化成製)13.3gから2工程で得られたM−8の粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−8を19.5g得た(2工程収率68%)。
【0117】
得られたM−8の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ7.0(td,1H)、δ6.5(d,1H)、δ6.4(d,1H)、6.2(dd,1H)、δ6.1(dd,1H)、δ5.9(d,1H)、δ5.9(d,1H)、δ5.8(d,1H)δ5.5−5.3(m,1H)、δ4.5−4.2(m,4H)、δ2.2(td,2H)、δ1.5−1.4(m,2H)、δ1.3−1.1(m,6H)、δ0.8(t,3H)
【0118】
(M−9の合成)
M−7と同様にして、trans−2−デセン酸(東京化成製)14.5gから2工程で得られたM−9の粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−9を20.6g得た(2工程収率69%)。
【0119】
得られたM−9の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ7.0(td,1H)、δ6.4(d,1H)、δ6.4(d,1H)、6.2(dd,1H)、δ6.1(dd,1H)、δ5.9(d,1H)、δ5.9(d,1H)、δ5.8(d,1H)δ5.5−5.3(m,1H)、δ4.5−4.2(m,4H)、δ2.2(td,2H)、δ1.5−1.4(m,2H)、δ1.4−1.2(m,8H)、δ0.8(t,3H)
【0120】
(M−10の合成)
M−7と同様にして、10−ウンデセン酸(東京化成製)6.4gから2工程で得られたM−10の粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−10を9.2g得た(2工程収率75%)。
【0121】
得られたM−10の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.5(d,1H)、δ6.4(d,1H)、δ6.2(d,1H)、6.1(d,1H)、δ5.9(d,1H)、δ5.9(d,1H)、δ5.8−5.7(m,1H)、δ5.5−5.4(m,1H)δ5.0(d,1H)、δ4.9(d,1H)、δ4.5−4.2(m,4H)、δ2.4(t,2H)、δ2.0(t,2H)、δ1.6(t,2H)、δ1.4−1.2(m,10H)
【0122】
(M−11の合成)
1−ヘキサナール(和光純薬製)15.0gをホルムアルデヒド(36%)水溶液(和光純薬製)249.9gに加え、トリエチルアミン(和光純薬製)1.5を添加して40℃で8時間攪拌した。放冷後、ヘキサン155gで2回分液し、ヘキサン層を除去して得られた水槽に酢酸エチル200mLを加えて抽出後、有機層を硫酸マグネシウム15gで乾燥した後にろ過して、ろ液を濃縮した。濃縮後の液を再度蒸留水100mL、酢酸エチル100mLで分液し、有機層を硫酸マグネシウム15gで乾燥した後にろ過して、ろ液を濃縮した。
得られた中間体粗生成物(M−11A)に30%過酸化水素水22.6gを滴下し、60℃に加熱して5時間攪拌した。放冷後、反応混合液に蒸留水50mL、チオ硫酸ナトリウム3gで残存過酸化水素を除去した後、1規定塩酸30mL、酢酸エチル100mLをそれぞれ添加して分液し、水槽を酢酸エチル100mLで2回抽出した。有機層を硫酸マグネシウム30gで乾燥した後にろ過して、ろ液を濃縮した。
得られた中間体粗生成物(M−11B)をN−メチルピロリドン100mLに加え、炭酸水素ナトリウム(和光純薬製)10.1g、アリルブロミド(東京化成製)14.5gをそれぞれ添加して80℃に加熱し、2時間攪拌した。放冷後、反応混合液に3−クロロプロピオニルクロリド(東京化成製)30,5gを滴下した後、50℃で30分攪拌した。放冷後、氷浴中で反応混合液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300mLを添加し、酢酸エチル300mLを加えて分液した。有機層を0.1規定塩酸150mLで洗浄し、硫酸マグネシウム20gで乾燥した後にろ過して、ろ液を濃縮した。
得られた中間体粗生成物(M−11C)をアセトン100mLに溶解させて氷浴中で冷却し、トリエチルアミン(和光純薬製)25.3gを滴下した。40℃で2時間攪拌した後、蒸留水200mL、酢酸エチル250mLをそれぞれ加えて分液した後、有機層を0.1規定塩酸水溶液100mLで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム20gで乾燥させた後、ろ液を濃縮してM−11の粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−11を2.7g得た(5工程収率6%)。
【0123】
得られたM−11の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,2H)、δ6.1(dd,1H)、δ5.9(tdd,1H)、5.8(d,2H)、δ5.3(d,1H)、δ5.2(d,1H)、δ4.6(d,2H)、δ4.4(s,4H)δ1.6(q,2H)、δ1.9−1.6(m,4H)、δ0.9(t,3H)
【0124】
(M−12の合成)
M−11と同様にして、1−ヘプタナール(和光純薬製)15.0gから5工程で得られたM−12の粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−12を11.7g得た(5工程収率26%)。
【0125】
得られたM−12の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,2H)、δ6.1(dd,1H)、δ5.9(tdd,1H)、5.8(d,2H)、δ5.3(d,1H)、δ5.2(d,1H)、δ4.6(d,2H)、δ4.4(s,4H)δ1.6(q,2H)、δ1.9−1.6(m,6H)、δ0.9(t,3H)
【0126】
(M−13の合成)
M−11と同様にして、1−オクタナール(和光純薬製)15.6gから5工程で得られたM−13の粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−13を5.7g得た(5工程収率13%)。
【0127】
得られたM−13の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,2H)、δ6.1(dd,1H)、δ5.9(tdd,1H)、5.8(d,2H)、δ5.3(d,1H)、δ5.2(d,1H)、δ4.6(d,2H)、δ4.4(s,4H)δ1.6(q,2H)、δ1.9−1.6(m,8H)、δ0.9(t,3H)
【0128】
(M−14の合成)
M−11と同様にして、1−ノナナール(和光純薬製)20.0gから5工程で得られたM−14の粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−14を4.4g得た(5工程収率9%)。
【0129】
得られたM−14の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,2H)、δ6.1(dd,1H)、δ5.9(tdd,1H)、5.8(d,2H)、δ5.3(d,1H)、δ5.2(d,1H)、δ4.6(d,2H)、δ4.4(s,4H)δ1.6(q,2H)、δ1.9−1.6(m,10H)、δ0.9(t,3H)
【0130】
(M−15の合成)
2,7−オクタジエノール(東京化成製)12.6gをアセトン50mLに加え、ピリジン(和光純薬製)20gを添加した後、メタンスルホン酸クロリド(東京化成製)15gを氷冷しながら加え、還流下で5時間攪拌した。放冷後、反応混合液に0.2規定塩酸200mL、酢酸エチル300mLをそれぞれ加えて分液し、有機層を硫酸マグネシウム20gで乾燥させ、ろ過したろ液を濃縮して反応剤Aを得た。
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(東京化成製)11.8gをアセトン80mLに溶解させ、炭酸カリウム(和光純薬製)16.6g、先に調製した反応剤A全量、ヨウ化カリウム(東京化成製)0.5gを加えて還流下8時間攪拌した。放冷後、蒸留水150mL、酢酸エチル200mLをそれぞれ加えて分液し、有機層を硫酸マグネシウム15gで乾燥させ、ろ過したろ液を濃縮して反応中間体(M−15A)の粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製し、M−15Aを3.5g得た。
得られたM−15Aをアセトン30mLに溶解させて氷浴中で冷却し、トリエチルアミン(和光純薬製)3.5gを加えた後アクリル酸クロリド(東京化成製)2.7gを滴下した。滴下終了後室温で2時間攪拌した後、炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム3g+水100ml)を添加した。酢酸エチル120mlを加えて分液した後、有機層を0.1規定塩酸水溶液50mlで洗浄し、硫酸マグネシウム5gで乾燥させた後、ろ液を濃縮してM−15の粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−15を3.8g得た(2工程収率13%)。
【0131】
得られたM−15の1H NMRデータを示す。(E,Z−異性体混合)
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,2H)、δ6.1(dd,2H)、δ5.8(d,2H)、δ5.8−5.7(m,2H)、δ5.6−5.4(m,1H)、δ5.0(d,1H)、δ4.9(d,1H)、δ4,7(d,2H)、δ4.6(d,2H)、δ4.4(s,4H)、δ2.2−2.0(m,4H)、δ1.7(q,2H)、δ1.5(tt,2H)、δ0.9(t,3H)
【0132】
(M−16の合成)
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(東京化成製)12.2gをアセトン80mLに溶解させ、炭酸カリウム(和光純薬製)13.7g、臭化銅(東京化成製)0.5g、3−ブロモシクロヘキセン(東京化成製)13.3gをそれぞれ添加した後、還流下で6時間攪拌した。放冷後、蒸留水150mL、酢酸エチル200mLをそれぞれ加えて分液し、有機層を硫酸マグネシウム15gで乾燥させ、ろ過したろ液を濃縮して反応中間体(M−16A)の粗生成物を得た。
得られたM−16Aをアセトン100mLに溶解させて氷浴中で冷却し、トリエチルアミン(和光純薬製)20.2gを加えた後アクリル酸クロリド(東京化成製)16.5gのアセトン(15mL)溶液を滴下した。滴下終了後室温で2時間攪拌した後、炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム5g+水200ml)を添加した。酢酸エチル250mlを加えて分液した後、有機層を0.1規定塩酸水溶液150mlで洗浄し、硫酸マグネシウム15gで乾燥させた後、ろ液を濃縮してM−16の粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−16を11.6g得た(2工程収率42%)。
【0133】
得られたM−16の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,2H)、δ6.1(dd,2H)、δ5.9(dd,1H)、δ5.8(d,2H)、δ5.7(td,1H)、δ5.3(td,1H)、δ4.4(s,4H)、δ2.1−1.9(m,2H)、δ1.8−1.5(m,6H)、δ0.9(t,3H)
【0134】
(M−17の合成)
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(東京化成製)20.8gをN−メチルピロリドン200mLに加え、炭酸水素ナトリウム(和光純薬製)14.3g、2−ブロモエタノール(東京化成製)21.3gをそれぞれ添加して80℃に加熱し、8時間攪拌した。放冷後、反応混合液に3−クロロプロピオニルクロリド(東京化成製)82.7gを滴下した後、50℃で4時間攪拌した。放冷後、氷浴中で反応混合液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液400mLを添加し、酢酸エチル400mLを加えて分液した。有機層を0.1規定塩酸200mLで洗浄し、硫酸マグネシウム20gで乾燥した後にろ過して、ろ液を濃縮した。
得られた中間体粗生成物(M−17A)をアセトン150mLに溶解させて氷浴中で冷却し、トリエチルアミン(和光純薬製)65.9gを滴下した。40℃で2時間攪拌した後、蒸留水200mL、酢酸エチル300mLをそれぞれ加えて分液した後、有機層を0.1規定塩酸水溶液150mLで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム20gで乾燥させた後、ろ液を濃縮してM−17の粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−17を33.3g得た(3工程収率63%)。
【0135】
得られたM−17の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.5(d,2H)、δ6.4(d,1H)、δ6.2(dd,1H)、6.1(dd,2H)、δ5.8(d,1H)、δ5.8(d,2H)、δ4.4−4.3(m,8H)、δ1.3(s,3H)
【0136】
(M−18の合成)
n−オクタノール(東京化成製)10.1gとエピクロロヒドリン(東京化成製)14.4gを混合し、テトラブチルアンモニウムブロミド(和光純薬製)1.6g、水酸化ナトリウム(和光純薬製)4,7gをそれぞれ添加し、40℃で6時間攪拌した。放冷後、反応混合液に蒸留水100mL、酢酸エチル150mLを加えて分液し、有機層を硫酸マグネシウム15gで乾燥した後、ろ過してろ液を濃縮し、反応中間体(M−18A)の粗生成物を得た。
得られたM−18Aをトルエン20mLに溶解させ、アクリル酸(東京化成製)6.5g、テトラブチルアンモニウムブロミド(和光純薬製)1.2g、4−メトキシフェノール(東京化成製)少量をそれぞれ添加し、90℃に加熱して10時間攪拌した。
放冷後、反応混合液をアセトン50mLに溶解させて氷浴中で冷却し、トリエチルアミン(和光純薬製)7.6gを加えた後アクリル酸クロリド(東京化成製)6.8gを滴下した。滴下終了後室温で2時間攪拌した後、炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム2g+水100mL)を添加した。酢酸エチル150mlを加えて分液した後、有機層を0.1規定塩酸水溶液100mLで洗浄し、硫酸マグネシウム10gで乾燥させた後、ろ液を濃縮してM−18の粗生成物を得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−18を13.3g得た(3工程収率55%)。
【0137】
得られたM−18の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,1H)、δ6.3(d,1H)、δ6.2(dd,1H)、6.1(dd,1H)、δ5.8(d,1H)、δ5.8(d,1H)、δ5.3(dddd,1H)、δ4.4(dd,1H)δ4.3(dd,1H)、δ3.6(t,2H)、δ3.5−3.3(m,2H)、δ1.6−1.5(m,2H)、δ1.4−1.1(m,10H)、δ0.8(t,3H)
【0138】
(M−19の合成)
M−18と同様にして、n−デカノール(東京化成製)12.0gからM−18の粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−19を14.6g得た(3工程収率57%)。
【0139】
得られたM−19の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,1H)、δ6.3(d,1H)、δ6.2(dd,1H)、6.1(dd,1H)、δ5.8(d,1H)、δ5.8(d,1H)、δ5.3(dddd,1H)、δ4.4(dd,1H)δ4.3(dd,1H)、δ3.6(t,2H)、δ3.5−3.3(m,2H)、δ1.6−1.5(m,2H)、δ1.4−1.1(m,14H)、δ0.8(t,3H)
【0140】
(M−20の合成)
M−18と同様にして、ゲラニオール(東京化成製)12.0gからM−20の粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−20を13.4g得た(3工程収率51%)。
【0141】
得られたM−20の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.5(d,1H)、δ6.4(d,1H)、δ6.2(dd,1H)、6.1(dd,1H)、δ5.8(d,1H)、δ5.8(d,1H)、δ5.4−5.3(m,2H)、δ5.1−5.0(m,1H)δ4.4(dd,1H)、δ4.3(dd,1H)、δ4.0(dd,1H)、δ4.0(dd,1H)δ2.2−1.9(m,4H)、δ1.7(s,3H)、δ1.7(s,3H)、δ1.6(s,3H)
【0142】
(M−21の合成)
M−4と同様にして、1,2−テトラデカンジオール(東京化成製)15.0gから得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、M−21を15.4g得た。(収率70%)
【0143】
得られたM−21の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.9(d,1H)、δ6.8(d,1H)、δ6.3(dd,1H)、δ6.2(dd,1H)、δ5.7(d,1H)、δ5.7(d,1H)、δ5.3(tdd,1H)、δ4.6(dd,1H)、δ4.3(dd,1H)、δ1.6(td,2H)、δ1.4−1.2(m,20H)、δ0.7(t,3H)
【0144】
(M−22の合成)
M−7と同様にして、9−デセン酸(東京化成製)8.0gから2工程で得られたM−22の粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−22を11.4g得た(2工程収率69%)。
【0145】
得られたM−22の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.5(d,1H)、δ6.4(d,1H)、δ6.2(d,1H)、6.1(d,1H)、δ5.9(d,1H)、δ5.9(d,1H)、δ5.8−5.7(m,1H)、δ5.5−5.4(m,1H)δ5.0(d,1H)、δ4.9(d,1H)、δ4.5−4.2(m,4H)、δ2.4(t,2H)、δ2.0(t,2H)、δ1.6(t,2H)、δ1.4−1.2(m,8H)
【0146】
(M−23の合成)
M−18と同様にして、n−ヘプタノール(東京化成製)9.1gからM−23の粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−23を11.7g得た(3工程収率50%)。
【0147】
得られたM−23の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,1H)、δ6.3(d,1H)、δ6.2(dd,1H)、6.1(dd,1H)、δ5.8(d,1H)、δ5.8(d,1H)、δ5.3(dddd,1H)、δ4.4(dd,1H)δ4.3(dd,1H)、δ3.6(t,2H)、δ3.5−3.3(m,2H)、δ1.6−1.5(m,2H)、δ1.4−1.1(m,8H)、δ0.9(t,3H)
【0148】
(M−24の合成)
M−5と同様にして、n−ヘキサン酸(東京化成製)15.0gから3工程で得られたM−24の粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、M−24を9.2g得た(3工程収率24%)。
【0149】
得られたM−24の1H NMRデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ6.4(d,1H)、δ6.4(d,1H)、δ6.2−6.1(m,2H)、δ5.8(d,1H)、δ5.8(d,1H)δ5.4(dddd,1H)、δ4.5−4.2(m,4H)、δ2.3(t,2H)、δ1.6(t,2H)、δ1.4−1.2(m,6H)、δ0.8(t,3H)
【0150】
<光重合開始剤>
P−1:2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシフェニル−ホスフィンオキシド(Lucirin TPO−L:BASF社製)
【0151】
<非イオン性界面活性剤>
W−1:フッ素系界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製:メガファックF780F)
【0152】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0153】
[比較例1]
実施例1において、M−1をM−23に置き換えた以外は同様にして比較例1の組成物を調製した。
【0154】
[比較例2]
実施例1において、M−1をM−24に置き換えた以外は同様にして比較例2の組成物を調製した。
【0155】
[比較例3]
実施例1において、M−1をM−25に置き換えた以外は同様にして比較例3の組成物を調製した。
【0156】
[比較例4]
実施例1において、M−1をM−26に置き換えた以外は同様にして比較例4の組成物を調製した。
【0157】
[比較例5]
実施例1において、M−1をM−27に置き換えた以外は同様にして比較例5の組成物を調製した。
【0158】
[比較例6]
実施例1において、M−1をM−29に置き換えた以外は同様にして比較例6の組成物を調製した。
【0159】
【表6】

【表7】

【0160】
<装置内汚染の評価>
上記で調製した組成物を、膜厚が3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2)を光源とするナノインプリント装置にセットした。次いで、装置内を真空とし(真空度1Torr、約133Pa)、30秒間保持した。
このとき、装置内のガラス基板から1mmの距離に別の対向ガラス基板を設置しておき、その表面の曇りを観察することで装置内の汚染レベルを以下のとおり評価した。
A:対向ガラス表面に全く曇りがなく、汚染は全く見られない
B:対向ガラス表面がかすかに曇るものの、汚染はほとんど見られない
C:対向ガラス表面が曇り、やや汚染が見られる
D:対向ガラス表面にはっきりと組成物が付着しており、汚染が見られる
E:対向ガラス表面にはっきりと大量の組成物が付着した後、付着物が見えなくなった。
【0161】
(光照射による硬化)
上記で調製した組成物を、膜厚が3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2)を光源とするナノインプリント装置にセットした。次いで、装置内を真空とした後(真空度10Torr、約1.33kPa)、窒素パージ(1.5気圧:モールド押し圧)を行い、装置内を窒素置換した。
これに照度10mW/cm2、露光量240mJ/cm2の条件で露光した。得られた硬化層の硬化性を以下のとおり評価した。
○:レジストパターンにタックが見られない。
×:レジストパターンにタックが見られる。
【0162】
【表8】

【0163】
実施例1〜22の組成物は、いずれも揮発性が低いため、装置内汚染をほとんど引き起こさないことが分かった。
【0164】
一方、比較例1〜5の組成物は、いずれも揮発性が高く、装置内汚染を引き起こすという結果であった。比較例6は対向ガラスが激しく汚染された後に汚染が消えた。これはM−28の揮発性が高すぎるためと推定され、問題の解決になっていない。
【0165】
2.光ナノインプリント用硬化性組成物の調製
上記(メタ)アクリレートM−1(70質量%)、下記低粘度重合性単量体R−1(10質量%)、下記シランカップリング剤C−1(20質量%)、上記光重合開始剤P−1(重合性単量体の全量に対して2質量%)、下記酸化防止剤A−1(重合性単量体の全量に対して0.5質量%)、下記離型剤S−1(重合性単量体の全量に対して1質量%)を加えて実施例23の光ナノインプリント用硬化性組成物を調製した。
【0166】
[実施例24〜32]
実施例23において、上記光ナノインプリント用硬化性組成物をそれぞれ下記表7、表8記載の化合物に変更した以外は実施例21と同様にして、実施例24〜32の組成物を調製した。
【0167】
<低粘度重合性単量体>
R−1:ノナンジオールジアクリレート
【0168】
<シランカップリング剤>
C−1:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学製)
C−2:3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903、信越化学製)
【0169】
<酸化防止剤>
A−1:スミライザーGA80(住友化学(株)製)
A−2:Irganox1035FF(Ciba社製)
【0170】
<離型剤>
S−1:変性シリコーンKF−410(信越化学製)
【表9】

【表10】

【0171】
[比較例7]
実施例23において、M−1をM−24に置き換えた以外は同様にして比較例7の組成物を調製した。
【0172】
[比較例8]
実施例25において、M−4をM−26に置き換えた以外は同様にして比較例8の組成物を調製した。
【0173】
[比較例9]
実施例28において、M−10をM−28に置き換えた以外は同様にして比較例9の組成物を調製した。
【0174】
[比較例10]
上記(メタ)アクリレートM−28(10質量%)、上記低粘度重合性単量体R−1(80質量%)、上記シランカップリング剤C−1(10質量%)、上記光重合開始剤P−1(重合性単量体の全量に対して2質量%)、上記酸化防止剤A−1(重合性単量体の全量に対して0.2質量%)、上記酸化防止剤A−2(重合性単量体の全量に対して0.2質量%)上記離型剤S−1(重合性単量体の全量に対して1質量%)を加えて比較例10の組成物を調製した。
【0175】
[比較例11]
上記(メタ)アクリレートM−28(15質量%)、上記(メタ)アクリレートM−29(75質量%)、上記シランカップリング剤C−1(10質量%)、上記光重合開始剤P−1(重合性単量体の全量に対して2質量%)、上記酸化防止剤A−1(重合性単量体の全量に対して0.2質量%)、上記酸化防止剤A−2(重合性単量体の全量に対して0.2質量%)上記離型剤S−1(重合性単量体の全量に対して1質量%)を加えて比較例11の組成物を調製した。
【0176】
【表11】

【0177】
<組成物粘度の評価>
組成物(硬化前)の粘度の測定は、東機産業(株)社製のRE−80L型回転粘度計を用い、25±0.2℃で測定した。
測定時の回転速度は、0.5mPa・s以上5mPa・s未満は100rpm、5mPa・s以上10mPa・s未満は50rpm、10mPa・s以上30mPa・s未満は20rpm、30mPa・s以上60mPa・s未満は10rpmで、それぞれ行い、その粘度範囲に応じて次のように分類し、評価した。
A:12mPa・s未満
B:12mPa・s以上18mPa・s未満
C:18mPa・s以上30mPa・s未満
D:30mPa・s以上
【0178】
<装置内汚染の評価>
上記で調製した組成物を、膜厚が3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2)を光源とするナノインプリント装置にセットした。次いで、装置内を真空とし(真空度1Torr、約133Pa)、30秒間保持した。
このとき、装置内のガラス基板から1mmの距離に別の対向ガラス基板を設置しておき、その表面の曇りを観察することで装置内の汚染レベルを以下のとおり評価した。
A:対向ガラス表面に全く曇りがなく、汚染は全く見られない
B:対向ガラス表面がかすかに曇るものの、汚染はほとんど見られない
C:対向ガラス表面が曇り、やや汚染が見られる
D:対向ガラス表面にはっきりと組成物が付着しており、汚染が見られる
E:対向ガラス表面にはっきりと大量の組成物が付着した後、付着物が見えなくなった。
【0179】
<パターン精度の観察>
各組成物を、膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2)を光源とするナノインプリント装置にセットし、モールド加圧力0.8kN、露光中の真空度は5Torrで、10μmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが4.0μmのポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング社製、SILPOT184を80℃60分で硬化させたもの)を材質とするモールドの表面から240mJ/cm2の条件で露光し、露光後、モールドを離し、レジストパターンを得た。得られたレジストパターンをオーブンで230℃、30分間加熱することにより完全に硬化させた。
転写後のパターン形状を走査型電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡にて観察し、パターン形状を以下のように評価した。
A:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンとほぼ同一である
B:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と一部異なる部分(原版のパターンと5%未満の範囲)がある
C:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と一部異なる部分(原版のパターンと5%以上10%未満の範囲)がある
D:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と異なる部分(原版のパターンと10%以上20%未満の範囲)がある
E:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンとはっきりと異なる、あるいはパターンの膜厚が原版のパターンと20%以上異なる
【0180】
【表12】

【0181】
実施例23〜32の光ナノインプリント用硬化性組成物はいずれも低粘度であり、硬化後にパターン精度の高いパターンを作成することができた。加えて、揮発性が低いため、装置内の汚染を生じることなくパターン形成でき、ナノインプリント適性に優れた組成物であることが分かった。
【0182】
比較例7、8は低粘度であり、硬化後にパターン精度の高いパターンを作成することができたが、装置内に汚染を生じた。
【0183】
比較例9は装置内の汚染を生じることなくパターン形成できたが、高粘度であり、硬化後のパターン精度が低かった。
【0184】
比較例10は粘度も高めであり、硬化後のパターン精度も低く、また装置内に汚染を生じた。
【0185】
比較例11は低粘度であったが、パターン精度が低かった。装置内汚染の評価結果では対向ガラスに大量に組成物が付着した後に消えたことから、非常に揮発性の高いM−27が真空下で揮発して組成物の構成が変化したためと推定された。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明により、低粘度で低揮発性の化合物を提供することが可能になった。この結果、硬化性組成物として用いた場合、硬化性に優れ、かつ、装置内を汚染しない硬化性組成物を提供可能になった。さらに、ナノインプリント用硬化性組成物として用いた場合、パターン精度に優れ、装置内を汚染しないナノインプリント用硬化性組成物を提供可能になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、下記一般式(2)、下記一般式(3)、下記一般式(4)または下記一般式(5)で表される、分子量310以上の化合物。
【化1】

(一般式(1)、(2)、(3)、(4)および(5)中、R1およびR2は、それぞれ、水素原子またはメチル基を表す。一般式(1)中、R3は炭素数4〜10の炭化水素基を表す。一般式(2)中、R4は炭素数8〜14のアルキル基を表す。一般式(3)中、R5は炭素数4〜15の、アルキル基または不飽和炭化水素基を表す。一般式(4)中、R6は炭素数2〜10の直鎖状アルキル基を表し、R7は炭素数2〜12の不飽和炭化水素基、あるいは(メタ)アクリロイルオキシエチル基を表す。一般式(5)中、R8は炭素数6〜15の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
請求項1において、一般式(1)で表される化合物であって、R3が炭素数4〜10の脂肪族炭化水素基である化合物、一般式(2)で表される化合物であって、R4が炭素数8〜14のアルキル基である化合物、一般式(3−1)で表される化合物、一般式(3−2)で表される化合物、一般式(4−1)で表される化合物、一般式(4−2)で表される化合物、一般式(5)で表される化合物であって、R8が炭素数6〜15の脂肪族炭化水素基である化合物、または下記の化合物。
一般式(3−1)
【化2】

(一般式(3−1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R51は、炭素数4〜8のアルキル基を表す。)
一般式(3−2)
【化3】

(一般式(3−2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R52は、炭素数5〜9のアルキル基を表す。)
一般式(3−3)
【化4】

(一般式(3−3)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R53は、総炭素数5〜12の炭化水素基であって、−CH=CH−、−CH=C(CH3)−、−C(CH3)=C(CH3)−、−CH=CH2、−CH=CH(CH3)、−C(CH3)=CH2および−C(CH3)=CH(CH3)から選択される基の少なくとも1つと、アルキル基およびアルキレン基の少なくとも1つとの組み合わせからなる基である。)
一般式(4−1)
【化5】

(一般式(4−1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R61は、炭素数2〜8の直鎖のアルキル基を表す。)
一般式(4−2)
【化6】

(一般式(4−2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R71は、炭素数2〜12の不飽和炭化水素基または(メタ)アクリロイルオキシエチル基を表し、R72はメチル基またはエチル基を表す。)
【化7】

【請求項3】
請求項1において、一般式(1)で表される化合物であって、R3が炭素数4〜8の直鎖のアルキル基である化合物、一般式(2)で表される化合物であって、R4が炭素数10〜12のアルキル基である化合物、一般式(3−1)で表される化合物、一般式(3−2)で表される化合物、一般式(3−3)で表される化合物、一般式(4−1)で表される化合物、一般式(5)で表される化合物であって、R8は炭素数6〜13の直鎖アルキル基である化合物、または下記のいずれかの化合物。
一般式(3−1)
【化8】

(一般式(3−1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R51は、炭素数4〜8のアルキル基を表す。)
一般式(3−2)
【化9】

(一般式(3−2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R52は、炭素数5〜9のアルキル基を表す。)
一般式(3−3)
【化10】

(一般式(3−3)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R53は、総炭素数5〜12の炭化水素基であって、−CH=CH−、−CH=C(CH3)−、−C(CH3)=C(CH3)−、−CH=CH2、−CH=CH(CH3)、−C(CH3)=CH2および−C(CH3)=CH(CH3)から選択される基の少なくとも1つと、アルキル基およびアルキレン基の少なくとも1つとの組み合わせからなる基である。)
一般式(4−1)
【化11】

(一般式(4−1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。R61は、炭素数2〜8の直鎖のアルキル基を表す。)
【化12】

【請求項4】
下記のいずれかの化合物。
【化13】

【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物と、光重合開始剤を含む、硬化性組成物。
【請求項6】
光照射により硬化することを特徴とする請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
加熱により硬化することを特徴とする請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
ナノインプリント用である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の組成物を硬化させた硬化物。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物と、光重合開始剤を含むナノインプリント用硬化性組成物を基板上に適用して層状とする工程と、該層状に形成した層にモールドに押圧する工程と、前記層状に形成した層に光照射する工程を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項11】
さらに、前記形成された層に、光を照射後、加熱する工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の硬化物の製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載の硬化物を含む液晶表示装置用部材。

【公開番号】特開2011−57565(P2011−57565A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205712(P2009−205712)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】