説明

化合物および液晶媒体

【課題】本発明は、モニターおよびTV用途のみならず、携帯電話およびナビゲーションシステムのためのMLCディスプレイを提供する
【解決手段】本発明は、式Iで表される化合物におよびネマチック相および負の誘電異方性を有する液晶媒体に関し、該媒体は、
a)式Iで表される1種または2種以上の化合物、
および
b)式IIで表される1種または2種以上の化合物、
および/または
c)式III−1〜III−4で表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を含み、
ここで、パラメータは、請求項1に示した意味を有し、電気光学ディスプレイにおける、特に、VA、ECB、PALC、FFSまたはIPS効果に基づくアクティブマトリックスディスプレイにおけるその使用に関し、このタイプの液晶媒体を含有するこのタイプのディスプレイに関し、および式IIで表される1種または2種以上の化合物および式III−1〜III−4で表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を含む液晶媒体の安定化のための、式Iで表される化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に液晶媒体において使用する新規化合物に関すると同時に、液晶ディスプレイにおけるこれらの液晶媒体の使用に関し、およびこれらの液晶ディスプレイに関し、特にホメオトロピック初期配向(alignment)での誘電的に負の液晶を用いたECB(electrically controlled birefringence;電気制御複屈折)効果を使用した液晶ディスプレイに関する。本発明の液晶媒体は、高電圧保持率(VHR、または単に短縮して、HRともいう)に加え、本発明のディスプレイにおける特に短い応答時間により区別される。
【背景技術】
【0002】
電気的に制御される複屈折の原理である、ECB効果またはDAP(配向相変形)効果は、1971年に初めて記述された(非特許文献1)。非特許文献2および非特許文献3による論文が続いた。
【0003】
非特許文献4〜6による論文により、ECB効果に基づいた高度情報ディスプレイ素子の使用に好適であるためには、液晶相は、高い比の弾性定数K/K、高い値の光学異方性Δnおよび≦−0.5の誘電異方性Δεを有しなければならないことが示された。ECB効果に基づいた電気光学ディスプレイ素子は、ホメオトロピック縁端(egde)配向(VA技術=vertically aligned;垂直に配向した)を有する。誘電的に負の液晶媒体もまた、いわゆるIPS(in-plane switching;平面内スイッチング)効果を使用したディスプレイにおいて使用することができる。
【0004】
電気光学ディスプレイ素子におけるこの効果の工業的な適用には、多様な要件を満たさなければならないLC相を必要とする。ここで特に重要なのは、湿度、外気、ならびに例えば熱、赤外、可視および紫外領域における光照射、および直流および交流電界などの物理的影響への化学的耐性である。
さらに、工業的に使用できるLC相は、好適な温度における液晶メソ相および低粘度を有することを必要とする。
【0005】
これまで開示された、液晶メソ相を有する一連の化合物は、これらすべての要件を満たす化合物を含むものは1つもない。したがって、LC相として使用できる物質を得るために、通常、2〜25種の、好ましくは、3〜18種の化合物の混合物を調製する。
【0006】
マトリックス液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)が既知である。個々のピクセルの個々のスイッチングに使用できる非線形素子は、例えば、能動素子(すなわち、トランジスタ)である。よって、用語「アクティブマトリックス」が使用され、ここで、通常、基板としてガラス上に配置される、一般的に薄膜トランジスタ(TFT)が利用される。
2種の技術は区別される:例えばCdSeなどの半導体を含むTFT、または多結晶シリコン、とりわけアモルファスシリコンをベースとするTFTである。後者の技術は、現在のところ世界規模で最大の商業的重要性を有する。
【0007】
TFTマトリックスをディスプレイの1つのガラス板の内側に塗布し、一方で、他のガラス板はその内側に透明対電極を担持する。ピクセル電極の大きさと比較して、TFTは極めて小さく、画像上における実質的な悪影響を有さない。この技術はまた、フルカラー表示可能な(fully color-capable)ディスプレイに拡大することができ、ここで、フィルタ素子がスイッチング可能なピクセルの反対側に位置するように、赤、緑および青フィルタのモザイクを配置する。
【0008】
これまで最も用いられてきたTFTディスプレイは、通常、透過における交差偏光子により操作され、逆光である。TV用途には、IPSセルまたはECB(またはVAN)セルが使用され、一方で、モニターには、IPSセルまたはTN(twisted nematic;ねじれネマチック性)セルを使用し、ノートブックパソコン、ラップトップパソコンおよびモバイル用途には、TNセルを使用する。
本明細書における用語「MLCディスプレイ」は、集積非線形素子を有するあらゆるマトリックスディスプレイを包含し、すなわち、アクティブマトリックスに加えて、例えばバリスタまたはダイオード(金属−絶縁体−金属)などの受動素子を備えたディスプレイも包含する。
【0009】
このタイプのMLCディスプレイは、特にTV用途、モニターおよびノートブックパソコンに好適であり、または例えば、自動車製造もしくは航空機構造などにおける高度情報密度を備えたディスプレイに好適である。コントラストの角度依存性および応答時間についての問題に加え、液晶混合物の不十分な高い比抵抗によるMLCディスプレイにおける困難も生じる[非特許文献7および8]。
【0010】
抵抗の減少に伴い、MLCディスプレイのコントラストは低下する。液晶混合物の比抵抗は、通常、ディスプレイ内部表面との相互作用により、MLCディスプレイの寿命を急降下させるため、長期の操作期間にわたって許容し得る抵抗値を有する必要のあるディスプレイには、高い(初期)抵抗は極めて重要である。
【0011】
ECB効果を使用するディスプレイは、IPSディスプレイ(例えば、非特許文献9など)および長い間知られているTNディスプレイに加え、いわゆるVAN(vertically aligned nematic;垂直配向ネマチック性)ディスプレイとして、現在のところ特にテレビジョン用途に最も重要な液晶ディスプレイのより最近の3つのタイプの1つとして確立されてきた。
【0012】
言及すべき最も重要なデザインは;MVA(multi-domain vertical alignment;マルチドメイン垂直配向、例えば:非特許文献10および11など)、PVA(patterned vertical alignment;パターン化垂直配向、例えば:非特許文献12など)およびASV(advanced super view;アドバンスト・スーパー・ビュー、例えば:非特許文献13など)である。
【0013】
一般的な形態において、例えば、非特許文献14および15において、技術が比較されている。現代のECBディスプレイの応答時間は、オーバードライブでのアドレス指定方式により既に著しく改善されてきたが(例えば、非特許文献16)、ビデオ互換性(video-compatible)応答時間、特にモノクロ階調の達成は、未だに満足のいく程度まで解決されていない問題である。
【0014】
ASVディスプレイのようなECBディスプレイは、負の誘電異方性(Δε)を有する液晶媒体を使用する一方で、TNおよび全ての今までの慣用IPSディスプレイは、正の誘電異方性を有する液晶媒体を使用する。
このタイプの液晶ディスプレイにおいて、液晶は誘電体として使用され、その光学特性は印加電圧によって可逆的に変化する。
【0015】
一般的にディスプレイにおいて、すなわち、言及したこれらの効果に従ったディスプレイにおいて、操作電圧は可能な限り低くなければならないため、通常、主に液晶化合物からできた液晶媒体を利用し、該液晶化合物の全ては同じ符号の誘電異方性を有し、可能な最大値の誘電異方性を有する。一般的に、最大でも比較的少量の中性化合物を用い、可能であれば、媒体の誘電異方性と反対の誘電異方性の符号を有する化合物は用いない。よって、負の誘電異方性を有する、ECBディスプレイ用の液晶媒体の場合には、主に負の誘電異方性を有する化合物を用いる。用いられる液晶媒体は、主におよび大抵は、また本質的に負の誘電異方性を有する液晶化合物からなる。
【0016】
一般的には、液晶ディスプレイは、可能な最低の印加電圧を有することを目的としているため、本願に従って使用される媒体において、典型的には、最大でも、相当量の誘電的に中性の液晶化合物および一般的には極めて少量のみの誘電的に正の化合物を用い、またはこれらを全く用いない。
【0017】
液晶ディスプレイにおける多くの実用的な用途には、既知の液晶媒体は十分に安定ではない。特に、UVでの照射および慣用のバックライトでの照射に対するそれらの安定性により、特に電気的特性の損傷をもたらす。よって、例えば、導電性が顕著に増加する。
いわゆる「ヒンダードアミン系光安定剤」、短縮して「HALS」の使用は、既に液晶混合物の安定化のために提案されてきた。
【0018】
少量の式
【化1】

で表される化合物である、TINUVIN(登録商標)770を安定剤として含む負の誘電異方性を有するネマチック液晶混合物が、例えば特許文献1などに提案されている。しかしながら、対応する液晶混合物は、実用的用途によっては十分な特性を有していない。とりわけ、それらは典型的なCCFL(冷陰極蛍光ランプ)バックライトを使用した照射に十分に安定ではない。
【0019】
類似の液晶混合物もまた、例えば特許文献2〜5などにより既知である。しかしながら、安定剤の使用はその中において意図されていない。
その中での開示によれば、これらの液晶混合物は、任意にまた、例えば、フェノールおよび立体障害アミン(hindered amine light stabilisers;ヒンダードアミン系光安定剤、短縮して「HALS」)などの種々のタイプの安定剤を含んでもよい。しかしながら、これらの液晶混合物は、比較的高い電圧閾値によりおよびせいぜい適度の安定剤により特徴付けられる。特に、それらの電圧保持比は、曝露後に急降下する。さらに、黄色の変色をしばしば生じる。
【0020】
液晶媒体における種々の安定剤の使用は、例えば、特許文献6〜9などに記載されている。

【化2】

で表される化合物である、TINUVIN(登録商標)123もまた、安定化の目的に提案されてきた。
【0021】
1種または2種以上のHALS単位を含有するメソゲン性化合物が、特許文献10に記載されている。
窒素原子上に種々の置換基を有するHALSが、それらのpK値について、非特許文献17において比較されている。以下のタイプの構造式をここで開示する。
【0022】
【化3】

【0023】
以下の式:
【化4】

で表される化合物TEMPOLが既知である;例えば、非特許文献18などにおいて言及されている。種々の製造業者から商業的に入手可能であり、例えば、特にUV吸収体と組み合わせて重合開始剤として、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、コーティングおよびPVCの前駆体用処方物における光またはUV防護として用いられる。
【0024】
相応に低い印加電圧を有する、従来技術の液晶媒体は、比較的低い電気抵抗値または低いVHRを有し、しばしばディスプレイにおいて望ましくないちらつきおよび/または不十分な透過をもたらす。さらに、低い印加電圧には必要であるが、少なくとも相応して高い極性を有する場合、それらは熱および/またはUV曝露に十分に安定ではない。
他方で、特に、例えばモバイル用途のためのディスプレイなどの、電源ネットワークに直接接続していないか、または継続的に接続していないディスプレイには、高いVHRを有する従来技術のディスプレイの印加電圧は、しばしば高すぎる。
さらに、液晶混合物の相範囲は、ディスプレイの意図した用途のために十分に広範でなければならない。
【0025】
ディスプレイにおける液晶媒体の応答時間を改善しなければならない、すなわち、減少させなければならない。これは、テレビジョンまたはマルチメディア用途用のディスプレイには、特に重要である。応答時間を改善するために、液晶媒体の回転粘度(γ)を最適化すること、すなわち、可能な最低の回転粘度を有する媒体を達成することが、過去において繰り返し提案されてきた。しかしながら、ここで達成された結果は、多くの用途には不十分であり、したがって、さらなる最適化のアプローチを見出すことが望ましいことを明らかにする。
【0026】
極限負荷(extreme loads)への、特にUV曝露および加熱への媒体の十分な安定性は、極めて特に重要である。特に例えば携帯電話などのモバイル装置のディスプレイにおける用途の場合には、これは決定的であり得る。
これまで開示されてきたMLCディスプレイの欠点は、それらの不十分なVHRおよびそれらの不十分な寿命と同様に、それらの比較的低いコントラスト、相対的に高い視野角依存性およびこれらのディスプレイにおけるモノクロ階調の製造における困難性が原因である。
よって、依然として、種々のモノクロ階調の製造を可能にし、特に、良好で安定なVHRを有するMLCディスプレイであって、大きな使用温度範囲、短い応答時間および低い電圧閾値に加えて、極めて高い比抵抗を有する前記MLCディスプレイへの大きな需要を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】国際公開2009/129911号
【特許文献2】欧州特許出願公開第2 182 046号明細書
【特許文献3】国際公開2008/009417号
【特許文献4】国際公開2009/021671号
【特許文献5】国際公開2009/115186号
【特許文献6】特開昭55-023169号公報
【特許文献7】特開平05-117324号公報
【特許文献8】国際公開02/18515号
【特許文献9】特開平09-291282号公報
【特許文献10】欧州特許出願公開第1 1784 442号明細書
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】M.F. Schieckel and K. Fahrenschon, "Deformation of nematic liquid crystals with vertical orientation in electrical fields", Appl. Phys. Lett. 19 (1971), 3912
【非特許文献2】J.F. Kahn (Appl. Phys. Lett. 20 (1972), 1193)
【非特許文献3】G. Labrunie and J. Robert (J. Appl. Phys. 44 (1973), 4869)
【非特許文献4】J. Robert and F. Clerc (SID 80 Digest Techn. Papers (1980), 30)
【非特許文献5】J. Duchene (Displays 7 (1986), 3)
【非特許文献6】H. Schad (SID 82 Digest Techn. Papers (1982), 244)
【非特許文献7】TOGASHI, S., SEKIGUCHI, K., TANABE, H., YAMAMOTO, E., SORIMACHI, K., TAJIMA, E., WATANABE, H., SHIMIZU, H., Proc. Eurodisplay 84, Sept. 1984: A 210-288 Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings, pp. 141 ff., Paris
【非特許文献8】STROMER, M., Proc. Eurodisplay 84, Sept. 1984: Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays, pp. 145 ff., Paris
【非特許文献9】Yeo, S.D., Paper 15.3: “An LC Display for the TV Application“, SID 2004 International Symposium, Digest of Technical Papers, XXXV, Book II, pp. 758 and 759
【非特許文献10】Yoshide, H. et al., Paper 3.1: “MVA LCD for Notebook or Mobile PCs ...“, SID 2004 International Symposium, Digest of Technical Papers, XXXV, Book I, pp. 6 to 9
【非特許文献11】Liu, C.T. et al., Paper 15.1: “A 46-inch TFT-LCD HDTV Technology ...“, SID 2004 International Symposium, Digest of Technical Papers, XXXV, Book II, pp. 750 to 753
【非特許文献12】Kim, Sang Soo, Paper 15.4: “Super PVA Sets New State-of-the-Art for LCD-TV“, SID 2004 International Symposium, Digest of Technical Papers, XXXV, Book II, pp. 760 to 763
【非特許文献13】Shigeta, Mitzuhiro and Fukuoka, Hirofumi, Paper 15.2: “Development of High Quality LCDTV“, SID 2004 International Symposium, Digest of Technical Papers, XXXV, Book II, pp. 754 to 757
【非特許文献14】Souk, Jun, SID Seminar 2004, Seminar M 6: “Recent Advances in LCD Technology“, Seminar Lecture Notes, M 6/1 to M 6/26
【非特許文献15】Miller, Ian, SID Seminar 2004, Seminar M 7: “LCD-Television“, Seminar Lecture Notes, M 7/1 to M 7/32
【非特許文献16】Kim, Hyeon Kyeong et al., Paper 9.1: “A 57-in. Wide UXGA TFT-LCD for HDTV Application“, SID 2004 International Symposium, Digest of Technical Papers, XXXV, Book I, pp. 106 to 109
【非特許文献17】Ohkatsu, Y., J. of Japan Petroleum Institute, 51, 2008, pages 191-204
【非特許文献18】Mieville, P. et al., Angew. Chem. 2010, 122, pages 6318-6321
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は、モニターおよびTV用途のみならず、携帯電話およびナビゲーションシステムのためのMLCディスプレイを提供する目的を有し、前記MLCディスプレイは、ECBまたはIPS効果に基づき、上記に示した欠点を有しないか、またはより少ない程度のみであって、同時に極めて高い比抵抗値を有する。特に、極度な高温および極度な低温においても作動する携帯電話およびナビゲーションシステムを確保しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0030】
驚くべきことに、式Iで表される少なくとも1種の化合物、ならびに各場合において、式IIで表される少なくとも1種の化合物、好ましくは従属式II−1で表される少なくとも1種の化合物および/または式III−1〜III−4で表される、好ましくは式III−2で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むネマチック液晶混合物を、これらのディスプレイ素子において利用する場合には、特にECBディスプレイにおいて、十分に広範なネマチック相、有益で相対的に低い複屈折性(Δn)、加熱によるおよびUV曝露による分解への良好な安定性ならびに安定で高いVHRと同時に、低い電圧閾値を有し、応答時間が短い液晶ディスプレイを達成することが可能であることが見出された。
【発明の効果】
【0031】
このタイプの媒体は、特に、ECB効果に基づいたアクティブ−マトリックスアドレス指定を有する電気光学ディスプレイおよびIPS(in-plane switching;平面内スイッチング)ディスプレイに使用することができる。
よって、本発明は、式Iで表される少なくとも1種の化合物および式IIで表される1種または2種以上の化合物、ならびに好ましくはさらに式III−1〜III−4で表される化合物からなる群から選択される1種または2種以上の化合物を含む、極性化合物の混合物をベースとする液晶混合物に関する。
【0032】
本発明の混合物は、−20℃および−30℃での良好な低温安定性に加え、極めて低い回転粘度と同様に、透明点が≧70℃である極めて広範なネマチック相範囲、極めて有益な容量閾値、相対的に高い保持比を示す。本発明の混合物は、さらに、透明点および回転粘度の比により、および高い負の誘電異方性により区別される。
【0033】
驚くべきことに、従来技術の材料の欠点を有さないか、またはかなり減少した程度を有するのみである、好適な高いΔε、好適な相範囲およびΔnを有する液晶混合物を達成することが可能であることが見出された。
【0034】
驚くべきことに、式Iで表される化合物により、熱安定剤を添加せずに単独で使用された場合であっても、UV曝露にもまた加熱にも、液晶混合物の、かなりの、多くの場合においては十分な、安定化がもたらされることが見出された。これは、特に、多くの場合において、使用した式Iで表される化合物におけるパラメータR11がO(酸素ラジカル)を示す場合である。したがって、式中、R11がOを示す式Iで表される化合物が、特に好ましく、液晶混合物におけるこれらの化合物の精密な使用が、特に好ましい。
【0035】
しかしながら、特に、さらに1種または2種以上の化合物が、好ましくは、フェノール性安定剤が、式Iで表される1種の化合物または式Iで表される2種以上の化合物に加えて、液晶混合物中に存在する場合に、UV曝露に対しても、および加熱に対しても、液晶混合物の十分な安定化を達成することができる。これらのさらなる化合物は、熱安定剤として好適である。
【0036】
よって、本発明は、式Iで表される化合物に関し、ネマチック相および負の誘電異方性を有する液晶混合物に関し、前記液晶混合物は、
a)好ましくは1ppm〜1000ppmの範囲の、好ましくは、1ppm〜500ppmの範囲の、特に好ましくは、1ppm〜250ppmの範囲の濃度の式I
【化5】

【0037】
式中、
nは、1〜4の整数、好ましくは、1、2または3、特に好ましくは、1または2、および極めて特に好ましくは、2を示し、
mは、(4−n)を示し、
【0038】
【化5−1】

は、4個の結合部位を有する有機基を示し、好ましくは、1〜20個のC原子を有するアルカンテトライル(alkanetetrayl)単位であり、式中、分子中に存在するm個の基R12に加え、しかしそれとは独立して、さらなるH原子は、R12により置き換えられていてもよく、または複数のさらなるH原子は、R12により置き換えられていてもよく、好ましくは、2個の末端C原子の各々において1価を有する直鎖状アルカンテトライル単位であり、ここで、1個の−CH−基または複数の−CH−基は、−O−または−(C=O)−により、2個のO原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよく、あるいは、1〜4価を有する置換されたまたは非置換の芳香族または複素芳香族炭化水素基を示し、式中、分子中に存在するm個の基R12に加え、しかしそれとは独立して、さらなるH原子は、R12により置き換えられていてもよく、または複数のさらなるH原子は、R12により置き換えられていてもよく、
【0039】
11およびZ12は、互いに独立して、−O−、−(C=O)−、−(NR14)−または単結合を示すが、両方が同時に−O−を示さず、
rおよびsは、互いに独立して、0または1を示し、
11〜Y14は、各々互いに独立して、1〜4個のC原子を有するアルキル、好ましくは、メチルまたはエチルを示し、特に好ましくは、全てがメチルまたはエチル、極めて特に好ましくは、メチルを示し、
あるいは代替的に、互いに独立して、2個の対である(Y11およびY12)および(Y13およびY14)は、3〜6個のC原子、好ましくは5個のC原子を有する2価の基、最も好ましくは、1,5−ペンチレンを一緒に形成する結合により連結していてもよく、
【0040】
11は、O−R13、OまたはOH、好ましくは、O−R13またはO、特に好ましくは、O、イソプロポキシ、シクロヘキシルオキシ、アセトフェノキシまたはベンゾキシ、極めて特に好ましくは、Oを示し、
【0041】
12は、各々存在する場合には、互いに独立して、H、F、OR14、NR1415、1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖を示し、ここで、1個の−CH−基または複数の−CH−基は、−O−または−(C=O)−により置き換えられていてもよいが、隣接した2個の−CH−基は、−O−により置き換えられていてはならず、あるいは、シクロアルキルまたはアルキルシクロアルキル単位を含有する炭化水素基を示し、ここで、1個の−CH−基または複数の−CH−基は、−O−または−(C=O)−により置き換えられていてもよいが、隣接した2個の−CH−基は、−O−により置き換えられていてはならず、およびここで、1個のH原子または複数のH原子は、OR14、N(R14)(R15)またはR16により置き換えられていてもよく、あるいは、芳香族または複素芳香族炭化水素基を示し、ここで、1個のH原子または複数のH原子は、OR14、N(R14)(R15)またはR16により置き換えられていてもよく、
【0042】
13は、各々存在する場合には、互いに独立して、1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖を示し、ここで、1個の−CH−基または複数の−CH−基は、−O−または−(C=O)−により置き換えられていてもよいが、隣接した2個の−CH−基は、−O−により置き換えられていてはならず、あるいは、シクロアルキルまたはアルキルシクロアルキル単位を含有する炭化水素基を示し、およびここで、1個の−CH−基または複数の−CH−基は、−O−または−(C=O)−により置き換えられていてもよいが、隣接した2個の−CH−基は、−O−により置き換えられていてはならず、およびここで、1個のH原子または複数のH原子は、OR14、N(R14)(R15)またはR16により置き換えられていてもよく、あるいは、芳香族または複素芳香族炭化水素基を示し、ここで、1個のH原子または複数のH原子は、OR14、N(R14)(R15)またはR16により置き換えられていてもよく、あるいは、
【化6】

(シクロへキシル)であり得、ここで、1個または2個以上の−CH−基は、−O−、−CO−または−NR14−により置き換えられていてもよく、あるいは、アセトフェニル、イソプロピルまたは3−ヘプチル基であり、
【0043】
14は、各々存在する場合には、互いに独立して、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキルあるいはアシル基、好ましくは、n−アルキル、あるいは6〜12個のC原子を有する芳香族炭化水素またはカルボキシル基を示し、好ましくは、R14が、N(R14)(R15)(R14は、Nに結合している)の部分である場合には、少なくとも1個のアシル基が存在するという条件であり、
【0044】
15は、各々存在する場合には、互いに独立して、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキルあるいはアシル基、好ましくは、n−アルキル、あるいは6〜12個のC原子を有する芳香族炭化水素またはカルボキシル基を示し、好ましくは、R15が、N(R14)(R15)(R15は、Nに結合している)の部分である場合には、少なくとも1個のアシル基が存在するという条件であり、
【0045】
16は、各々存在する場合には、互いに独立して、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を示し、ここで、1個の−CH−基または複数の−CH−基は、−O−または−(C=O)−により置き換えられていてもよいが、隣接した2個の−CH−基は、−O−により置き換えられていてはならず、
【0046】
以下の条件、
n=1、R11=Oおよび−[Z11−]−[Z12−=−O−、−(CO)−O−、−O−(CO)−、−O−(CO)−O−、−NR14−または−NR14−(CO)−である場合には、
【化7】

は、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、またシクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたはアルキルシクロアルキルを示さず、ここで、これら全ての基における1個または2個以上の−CH−基は、分子中の2個のO原子が互いに直接結合しないように、−O−により置き換えられていてもよく、
【0047】
n=2およびR11=Oである場合には、
【化8】


【化9】

を示さず、および
n=2およびR11=O−R13である場合には、
13は、n−C1〜9−アルキルを示さない、
である、
で表される1種または2種以上の化合物、
【0048】
および
b)式II
【化10】

式中、
21は、1〜7個のC原子を有する非置換のアルキル基または2〜7個のC原子を有する非置換のアルケニル基、好ましくは、n−アルキル基を示し、特に好ましくは、3、4または5個のC原子を有する、好ましくは、n−アルキル基を示し、
22は、2〜7個のC原子を有する、好ましくは、2、3または4個のC原子を有する非置換のアルケニル基、より好ましくは、ビニル基または1−プロペニル基および特にビニル基を示す、
で表される1種または2種以上の化合物、
【0049】
および/または
c)式III−1〜III−4、好ましくは、式III−2
【化11】

【0050】
式中、
31は、1〜7個のC原子を有する非置換のアルキル基、特に好ましくは、2〜5個のC原子を有する、好ましくは、n−アルキル基を示し、
32は、1〜7個のC原子を有する、好ましくは、2〜5個のC原子を有する非置換のアルキル基、または1〜6個のC原子を有する、好ましくは、2、3または4個のC原子を有する非置換のアルコキシ基を示し、
m、nおよびoは、各々互いに独立して、0または1を示す、
で表される群から選択される1種または2種以上の化合物を含む。
好ましいのは、以下の態様
【化12−1】

は、
【化12−2】

(ベンゼン−1,2,4,5−テトライル)、または−CH−(CH−)−[CH−CH−もしくは>CH−[CH−CH<(式中、p∈{0,1,2,3,4,5〜18}および
q∈{0,1,2,3〜16}である)を示し、または
【化12−3】

は、
>CH−[CH−CH−(式中、p∈{0,1,2,3,4,5〜18})を示し、または
【化12−4】

は、
−CH−[CH−CH−(式中、p∈{0,1,2,3,4,5〜18})、プロパン−1,2−ジイル、ブタン−1,2−ジイル、エタン−1,2−ジイル、
【化12−5】

である。
【0051】
本願において、元素は全てそれらの個別の同位体を含む。特に、化合物中の1個または2個以上のH原子は、Dにより置き換えられていてもよく、これはまた、態様によっては特に好ましい。対応する化合物の対応した高度の重水素化は、例えば化合物の検知および認識を可能にする。これは、場合によっては、特に式Iで表される化合物の場合には極めて有益である。
【0052】
本願において、
alkylは、特に好ましくは、直鎖状アルキル、特に、CH−、C−、n−C−、n−C−またはn−C11−を示し、
alkenylは、特に好ましくは、CH=CH−、E−CH−CH=CH−、CH=CH−CH−CH−、E−CH−CH=CH−CH−CH−またはE−(n−C)−CH=CH−を示す。
【0053】
本発明に従い、液晶媒体は、好ましくは、全体で1ppm〜1000ppmの、好ましくは、1ppm〜500ppmの、より一層好ましくは、1ppm〜200ppmの、極めて特に好ましくは、1ppm〜100ppmの式Iで表される化合物を含む。
【0054】
本発明の媒体における式Iで表される化合物の濃度は、好ましくは、90ppm以下、特に好ましくは、50ppm以下である。本発明の媒体における式Iで表される化合物の濃度は、極めて特に好ましくは、10ppm〜80ppm以下である。
【0055】
本発明の好ましい態様において、式Iで表される化合物において、
【化13】

を示し、および/または
【0056】
−[Z11−]−[Z12−]は、各々存在する場合には、互いに独立して、−O−、−(C=O)−O−もしくは−O−(C=O)−、−(N−R14)−または単結合、好ましくは、−O−または−(C=O)−O−もしくは−O−(C=O)−および/または
11は、−O、OHまたはO−R13、好ましくは:
【化14】

を示し、および/または
【0057】
12は、存在する場合には、アルキルまたはアルコキシを示し、および/または
13は、イソプロピルまたは3−ヘプチル、アセトフェニルまたはシクロヘキシルを示す。
【0058】
本発明の好ましい態様において、式Iで表される化合物における基
【化15】

【0059】
は、各々存在する場合には、互いに独立して、
【化16】

を示す。
【0060】
本発明の特に好ましい態様において、式Iで表される化合物において存在する全ての基
【化17】

は同一の意味を有する。
【0061】
これらの化合物は、液晶混合物中における安定剤として高度に好適である。特に、それらは、UV曝露に対する混合物のVHRを安定化させる。
【0062】
本発明の特に好ましい態様において、各場合における本発明の媒体は、式I−1〜I−9で表される化合物の群から選択される、好ましくは式I−1〜I−4で表される化合物の群から選択される、
【化18】

【0063】
【化19】

【0064】
【化20】

【0065】
式中、パラメータは、上記に示した式Iに従った意味を有し、
tは、1〜12の整数を示し、
【0066】
17は、1〜12個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖を示し、ここで、1個の−CH−基または複数の−CH−基は、−O−または−(C=O)−により置き換えられていてもよいが、隣接した2個の−CH−基は、−O−により置き換えられていてはならず、あるいは、芳香族または複素芳香族炭化水素基を示し、ここで、1個のH原子または複数のH原子は、OR14、N(R14)(R15)またはR16により置き換えられていてもよい、
式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0067】
本発明のより一層好ましい態様において、各場合における本発明の媒体は、式I−1a−1〜I−8a−1で表される以下の化合物:
【0068】
【化21】

【0069】
【化22】

【0070】
【化23】

の群から選択される、式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0071】
本発明のより一層好ましい態様において、各場合における本発明の媒体は、式I−2a−1およびI−2a−2で表される以下の化合物:
【化24】

【0072】
本発明の代替的な、好ましい態様において、各場合における本発明の媒体は、式I−1b−1およびI−1b−2で表される以下の化合物:
【化25】

の群から選択される、式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0073】
本発明の代替的な、好ましい態様において、各場合における本発明の媒体は、式I−1c−1およびI−1c−2で表される以下の化合物:
【化26】

の群から選択される、式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0074】
本発明のさらに代替的な、好ましい態様において、各場合における本発明の媒体は、式I−1d−1〜I−1d−4で表される以下の化合物:
【化27】

の群から選択される、式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0075】
本発明のさらに代替的な、好ましい態様において、各場合における本発明の媒体は、式I−3d−1〜I−3d−8で表される以下の化合物、
【0076】
【化28】

の群から選択される、式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0077】
本発明のさらに代替的な、好ましい態様において、各場合における本発明の媒体は、式I−4d−1およびI−4d−2で表される以下の化合物、
【化29】

の群から選択される、式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0078】
本発明のさらに代替的な、好ましい態様において、各場合における本発明の媒体は、式I−1e−1およびI−1e−2で表される以下の化合物、
【化30】

の群から選択される、式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0079】
本発明のさらに代替的な、好ましい態様において、各場合における本発明の媒体は、式I−5e−1〜I−8e−1で表される以下の化合物、
【化31】

の群から選択される、式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0080】
式Iおよびそれらの好ましい従属式で表される化合物に加え、本発明に従い、媒体は、好ましくは、全濃度における式IIで表される1種または2種以上の誘電的に中性の化合物を、5%〜90%、好ましくは、10%〜80%、特に好ましくは、20%〜70%の範囲で含む。
【0081】
本発明の媒体は、好ましくは、全濃度における式III−1〜III−4からなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、10%〜80%、好ましくは、15%〜70%、特に好ましくは、20%〜60%の範囲で含む。
【0082】
本発明の媒体は、特に好ましくは、
全濃度における式III−1で表される1種または2種以上の化合物を、5%〜30%の範囲で、
全濃度における式III−2で表される1種または2種以上の化合物を、3%〜30%の範囲で、
【0083】
全濃度における式III−3で表される1種または2種以上の化合物を、5%〜30%の範囲で、
全濃度における式III−4で表される1種または2種以上の化合物を、1%〜30%の範囲で、
を含む。
【0084】
式IIで表される好ましい化合物は、式II−1および式II−2で表される化合物からなる群から選択される化合物であり、好ましくは、式II−1で表される化合物から選択され、
【化32】

【0085】
式中、
alkylは、1〜7個のC原子を有する、好ましくは、2〜5個のC原子を有するアルキル基を示し、
alkenylは、2〜5個のC原子を有する、好ましくは、2〜4個のC原子を有する、特に好ましくは、2個のC原子を有するアルケニル基を示し、
alkenyl’’は、2〜5個のC原子を有する、好ましくは、2〜4個のC原子を有する、特に好ましくは、2〜3個のC原子を有するアルケニル基を示す。
【0086】
本発明の媒体は、好ましくは、式III−1で表される1種または2種以上の化合物を、好ましくは、式III−1−1および式III−1−2で表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を含み、
【化33】

【0087】
式中、パラメータは、式III−1について与えた意味を有し、好ましくは、
31は、2〜5個のC原子を有する、好ましくは、3〜5個のC原子を有するアルキル基を示し、および
32は、2〜5個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を、好ましくは、2〜4個のC原子を有するアルコキシ基を、あるいは、2〜4個のC原子を有するアルケニルオキシ基を示す。
【0088】
本発明の媒体は、好ましくは、式III−2で表される1種または2種以上の化合物を、好ましくは、式III−2−1および式III−2−2で表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を含み、
【化34】

【0089】
式中、パラメータは、式III−2について与えた意味を有し、好ましくは、
31は、2〜5個のC原子を有する、好ましくは、3〜5個のC原子を有するアルキル基を示し、および
32は、2〜5個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を、好ましくは、2〜4個のC原子を有するアルコキシ基を、あるいは、2〜4個のC原子を有するアルケニルオキシ基を示す。
【0090】
本発明の媒体は、好ましくは、式III−3で表される1種または2種以上の化合物を、好ましくは、式III−3−1および式III−3−2で表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を含み、
【化35】

【0091】
式中、パラメータは、式III−3について与えた意味を有し、好ましくは、
31は、2〜5個のC原子を有する、好ましくは、3〜5個のC原子を有するアルキル基を示し、および
32は、2〜5個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を、好ましくは、2〜4個のC原子を有するアルコキシ基を、あるいは、2〜4個のC原子を有するアルケニルオキシ基を示す。
【0092】
好ましい態様において、本発明の媒体は、式II−1および式II−2で表される化合物の群から選択される、式IIで表される1種または2種以上の化合物を含む。
異なった好ましい態様において、本発明の媒体は、式IIで表される化合物を含まない。
【0093】
本発明の媒体は、好ましくは、全濃度における以下に規定する化合物:
10〜60重量%の式III−1〜III−4の群から選択される1種または2種以上の化合物および/または
30〜80重量%の式IVおよび/またはVで表される1種または2種以上の化合物、
ここで、媒体における全ての化合物の全容量は、100%である、
を含む。
【0094】
特に好ましい態様において、本発明の媒体は、式OH−1〜OH−6、
【化36】

で表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を含む。
【0095】
これらの化合物は、媒体の熱安定化に高度に好適である。
本発明の他の好ましい態様において、ここで、本発明の媒体が、特に、式中、R11または少なくとも1個のR11が、Oを示す式Iで表される1種または2種以上の化合物を含み、それらが、特に式OH−1〜OH−6で表される化合物の群から選択されるフェノール化合物を含まない場合に、これらはまた、十分な安定性を有する。
【0096】
本発明のさらなる好ましい態様において、本発明の媒体は、少なくとも式Iで表される1種の化合物の基R11が、式Iで表される他の化合物における異なる意味を有する、式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0097】
本発明はまた、本発明の液晶媒体を含有する電気光学ディスプレイまたは電気光学部品に関する。好ましいのは、VAまたはECB効果に基づいた電気光学ディスプレイであり、特にアクティブマトリックスアドレス方式デバイスにより印加されるものである。
【0098】
したがって、本発明は同様に、電気光学ディスプレイにおけるまたは電気光学部品における本発明の液晶媒体の使用に関し、式Iで表される1種または2種以上の化合物を、式IIで表される1種または2種以上の化合物と、好ましくは、従属式II−1で表される1種または2種以上の化合物、および好ましくは、式III−1〜III−4およびIVおよび/またはVで表される化合物の群から選択される、1種または2種以上のさらなる化合物と混合することを特徴とする、本発明の液晶媒体の調製方法に関する。
【0099】
さらに、本発明は、式IIで表される1種または2種以上の化合物および式III−1〜III−4で表される化合物の群から選択される、1種または2種以上の化合物を含み、式Iで表される1種または2種以上の化合物を媒体に添加することを特徴とする、液晶媒体の安定化方法に関する。
【0100】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式IVで表される1種または2種以上の化合物を含み、
【化37】

【0101】
式中、
41は、1〜7個のC原子を有する、好ましくは、2〜5個のC原子を有するアルキル基を示し、および
42は、1〜7個のC原子を有するアルキルまたは1〜6個のC原子を有するアルコキシを示し、好ましくは、2〜5個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを示す。
【0102】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式IVで表される1種または2種以上の化合物を含み、式IV−1およびIV−2で表される化合物の群から選択され、
【化38】

【0103】
式中、
alkylおよびalkyl’は、互いに独立して、1〜7個のC原子を有する、好ましくは、2〜5個のC原子を有するアルキルを示し、
alkoxyは、1〜5個のC原子を有する、好ましくは、2〜4個のC原子を有するアルコキシを示す。
【0104】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式Vで表される1種または2種以上の化合物を含み、
【化39】

【0105】
式中、
51およびR52は、互いに独立して、R21およびR22に与えた意味の一つを有し、好ましくは、1〜7個のC原子を有するアルキル、好ましくは、n−アルキル、特に好ましくは、1〜5個のC原子を有するn−アルキル、1〜7個のC原子を有するアルコキシ、好ましくは、n−アルコキシ、特に好ましくは、2〜5個のC原子を有するn−アルコキシ、2〜7個のC原子を有するアルコキシアルキル、アルケニル、またはアルケニルオキシ、好ましくは、アルケニルオキシを示し、
【0106】
【化40】

は、存在する場合には、各々互いに独立して、
【化41】

好ましくは、
【化42】

を示し、
好ましくは、
【化43】

を示し、
【0107】
および、存在する場合には、
【化44】

51〜Z53は、各々互いに独立して、−CH−CH−、−CH−O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−または単結合を、好ましくは、−CH−CH−、−CH−O−または単結合を、特に好ましくは、単結合を示し、
pおよびqは、各々互いに独立して、0または1を示し、
(p+q)は、好ましくは、0または1を示す。
【0108】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式V−1〜V−10で表される化合物の群から選択される、式Vで表される1種または2種以上の化合物を含み、好ましくは、式V−1〜V−5で表される化合物の群から選択され、
【化45】

【0109】
【化46】

【0110】
式中、パラメータは、式Vについて与えた意味を有し、および
は、HまたはFを示し、および好ましくは、
51は、1〜7個のC原子を有するアルキルまたは2〜7個のC原子を有するアルケニルを示し、および
【0111】
52は、1〜7個のC原子を有するアルキル、2〜7個のC原子を有するアルケニルまたは1〜6個のC原子を有するアルコキシ、好ましくは、アルキルまたはアルケニル、特に好ましくはアルケニルを示す。
【0112】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式V−1aおよびV−1bで表される、好ましくは、式V−1bで表される化合物の群から選択される、式V−1で表される1種または2種以上の化合物を含み、
【化47】

【0113】
式中、
alkylおよびalkyl’は、互いに独立して、1〜7個のC原子を有する、好ましくは、2〜5個のC原子を有するアルキルを示し、
alkoxyは、1〜5個のC原子を有する、好ましくは、2〜4個のC原子を有するアルコキシを示す。
【0114】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式V−3aおよびV−3bで表される化合物の群から選択される、式V−3で表される1種または2種以上の化合物を含み、
【化48】

【0115】
式中、
alkylおよびalkyl’は、互いに独立して、1〜7個のC原子を有する、好ましくは、2〜5個のC原子を有するアルキルを示し、および
alkenylは、2〜7個のC原子を有する、好ましくは、2〜5個のC原子を有するアルケニルを示す。
【0116】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式V−4aおよびV−4bで表される化合物の群から選択される、式V−4で表される1種または2種以上の化合物を含み、
【化49】

【0117】
式中、
alkylおよびalkyl’は、互いに独立して、1〜7個のC原子を有する、好ましくは、2〜5個のC原子を有するアルキルを示す。
【0118】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式III−4で表される、好ましくは、式III−4−aで表される1種または2種以上の化合物を含み、
【化50】

【0119】
式中、
alkylおよびalkyl’は、互いに独立して、1〜7個のC原子を有する、好ましくは、2〜5個のC原子を有するアルキルを示す。
本発明に従い、液晶媒体は、1種または2種以上のキラル化合物を含んでもよい。
【0120】
本発明の特に好ましい態様は、以下の条件を満たし、
ここで、頭字語(略号)は、表AおよびDにおいて説明され、表Dにおける例により例示される。
【0121】
i.液晶媒体は、0.060以上、特に好ましくは、0.070以上の複屈折を有する。
ii.液晶媒体は、0.130以下、特に好ましくは、0.120以下の複屈折を有する。
【0122】
iii.液晶媒体は、0.090〜0.120の範囲での複屈折を有する。
iv.液晶媒体は、2.0以上、特に好ましくは、3.0以上の値を有する負の誘電異方性を有する。
【0123】
v.液晶媒体は、5.5以下、特に好ましくは、4.0以下の値を有する負の誘電異方性を有する。
vi.液晶媒体は、2.5〜3.8の範囲での値を有する負の誘電異方性を有する。
【0124】
vii.液晶媒体は、以下の従属式から選択される式IIで表される1種または2種以上の特に好ましい化合物を含む:
【化51】

【0125】
式中、アルキルは、上記に与えた意味を有し、好ましくは、各場合において、互いに独立して、1〜6個の、好ましくは、2〜5個のC原子を有するアルキル、および特に好ましくは、n−アルキルを示す。
【0126】
viii.全体としての混合物における式IIで表される化合物の全濃度は、25%以上、好ましくは、30%以上であり、好ましくは、25〜49%の範囲、特に好ましくは、29〜47%の範囲、および極めて特に好ましくは、37〜44%の範囲である。
【0127】
ix.液晶媒体は、以下の式で表される化合物の群から選択される式IIで表される1種または2種以上の化合物を含む:CC−n−Vおよび/またはCC−n−Vm、特に好ましくは、CC−3−Vであり、好ましくは、50%以下までの濃度で、特に好ましくは、42%以下までの濃度であり、任意に、さらに、好ましくは、15%以下までの濃度でCC−3−V1、および/または好ましくは、20%以下までの濃度で、特に好ましくは、10%以下までの濃度でCC−4−V1である。
【0128】
x.全体としての混合物における式CC−3−Vで表される化合物の全濃度は、20%以上、好ましくは、25%以上である。
xi.全体としての混合物における式III−1〜III−4で表される化合物の割合は、50%以上であり、好ましくは、75%以下である。
【0129】
xii.液晶媒体は、本質的には、式I、II、III−1〜III−4、IVおよびVで表される化合物から、好ましくは、式I、IIおよびIII−1〜III−4で表される化合物からなる。
xiii.液晶媒体は、好ましくは、全濃度における5%以上、特に10%以上、および極めて特に好ましくは、15%〜40%で、式IVで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0130】
本発明は、さらに、VAまたはECB効果に基づいたアクティブマトリックスアドレス方式を有する電気光学ディスプレイに関し、本発明に従い、誘電材料として、液晶媒体を含有することを特徴とする。
液晶混合物は、好ましくは、少なくとも80度の幅および20℃で最大30mm・s−1の流動粘度(flow viscosity)ν20を有するネマチック相領域を有する。
【0131】
本発明の液晶混合物は、−0.5〜−8.0の、特に、−1.5〜−6.0の、極めて特に好ましくは、−2.0〜−5.0のΔεを有し、ここで、Δεは、誘電異方性を示す。
回転粘度γは、好ましくは、120mPa・s以下、特に、100mPa・s以下である。
【0132】
本発明の混合物は、例えば、VAN、MVA、(S)−PVAおよびASVなどの全てのVA−TFT用途に好適である。それらはさらに、負のΔεを有する、IPS(in-plane switching;平面内スイッチング)、FFS(fringe-field switching;フリンジ領域スイッチング)およびPALC用途に好適である。
本発明のディスプレイにおけるネマチック液晶混合物は、通常、2種の構成成分AおよびBを含み、それらは、それら自身が1種または2種以上の個々の化合物からなる。
【0133】
本発明の液晶媒体は、好ましくは、4〜15種の、特に、5〜12種の、特に好ましくは10種以下の化合物を含む。これらは、好ましくは、式I、IIおよびIII−1〜III−4、および/またはIVおよび/またはVで表される化合物の群から選択される。
本発明の液晶媒体は、任意にまた、18種以上の化合物を含む。この場合において、それらは、好ましくは、18〜25種の化合物を含む。
【0134】
式I〜Vで表される化合物の他に、例えば、全体としての混合物における45%までであるが、好ましくは、35%まで、特には10%までの量で、他の成分もまた存在してもよい。
本発明の媒体はまた、任意に、全濃度が媒体全体に基づいて好ましくは10%以下の誘電的に正の構成成分を含んでいてもよい。
【0135】
好ましい態様において、本発明の液晶媒体は、全体としての混合物に基づき、全体で、
10ppm〜1000ppm、好ましくは、50ppm〜500ppm、より一層好ましくは、100〜400ppmおよび極めて特に好ましくは、150ppm〜300ppmの式Iで表される化合物、
【0136】
20%〜60%、好ましくは、25%〜50%、特に好ましくは、30%〜45%の式IIで表される化合物、および
50%〜70%の式III−1〜III−4で表される化合物
を含む。
【0137】
より好ましい態様において、本発明の液晶媒体は、式I、II、III−1〜III−4、IVおよびVで表される化合物の群から選択される、好ましくは、式I、IIおよびIII−1〜III−4で表される化合物の群から選択される化合物を含む;それらは、好ましくは、主に、特に好ましくは、本質的に、および極めて特に好ましくは、実質的に完全に、かかる式で表される化合物からなる。
【0138】
本発明の液晶媒体は、好ましくは、各場合において、−20℃以下〜70℃以上、特に好ましくは、−30℃以下〜80℃以上、極めて特に好ましくは、−40℃以下〜85℃以上、および最も好ましくは、−40℃以下〜90℃以上でネマチック相を有する。
【0139】
本明細書での表現「ネマチック相を有する」とは、一方で、スメクチック相および結晶化が、低温において対応する温度において観察されないことを意味し、他方で、ネマチック相外での加熱の際に透明化が起こらないことを意味する。低温における実験を、対応する温度において流動粘度計(flow viscometer)中で行い、電気光学用途に対応するセル厚みを有するテストセル中での少なくとも100時間の貯蔵によりチェックする。
【0140】
対応するテストセルにおける−20℃での貯蔵安定性が1000時間以上である場合には、媒体がこの温度において安定であると見なす。−30℃および−40℃においては、対応時間は、それぞれ500時間および250時間である。高温において、透明点を、毛細管中で従来の手法により測定する。
【0141】
好ましい態様において、本発明の液晶媒体は、中程度から低い領域における光学異方性値により特徴付けられる。複屈折値は、好ましくは、0.065〜0.130の範囲、特に好ましくは、0.080〜0.120の範囲、および極めて特に好ましくは、0.085〜0.110の範囲である。
【0142】
この態様において、本発明の液晶媒体は、負の誘電異方性を有し、好ましくは、2.7〜5.3、好ましくは、4.5以下、好ましくは、2.9〜4.5、特に好ましくは、3.0〜4.0および極めて特に好ましくは、3.5〜3.9の範囲の相対的に高い誘電異方性の絶対値(|Δε|)を有する。
【0143】
本発明の液晶媒体は、1.7V〜2.5V、好ましくは、1.8V〜2.4V、特に好ましくは、1.9V〜2.3Vおよび極めて特に好ましくは、1.95V〜2.1Vの相対的に低い電圧閾値(V)の値を有する。
【0144】
さらなる好ましい態様において、本発明の液晶媒体は、好ましくは、5.0〜7.0、好ましくは、5.5〜6.5、なおより好ましくは、5.7〜6.4、特に好ましくは、5.8〜6.2および極めて特に好ましくは、5.9〜6.1の範囲の相対的に低い平均誘電異方性値(εav.≡(ε||+2ε)/3)を、好ましくは有する。
【0145】
さらに、本発明の液晶媒体は、液晶セルにおける高いVHR値を有する。
セル中の20℃で新たに充填したセルにおいて、これらは、95%以上、好ましくは、97%以上、特に好ましくは、98%以上、および極めて特に好ましくは、99%以上であり、100℃のオーブンで5分後のセル中では、90%、好ましくは、93%以上、特に好ましくは、96%以上、および極めて特に好ましくは、98%以上である。
【0146】
一般的に、本明細書中において低いアドレス電圧または電圧閾値を有する液晶媒体は、より高いアドレス電圧または電圧閾値を有するものより低いVHRを有し、その逆のこともある。
これらの好ましい個々の物理的特性値はまた、好ましくは、各場合において、互いを組み合わせた本発明の媒体により維持される。
【0147】
本願において、「化合物」(compound(s))とも書かれる用語「化合物」(compounds)は、他に具体的に示されない限り、1種または複数の化合物の両方を意味する。
他に示されない限り、個々の化合物は、通常、混合物中において、各場合において1%〜30%、好ましくは、2%〜30%および特に好ましくは、3%〜16%の濃度で用いられる。
【0148】
好ましい態様において、本発明の液晶媒体は、
式Iで表される化合物、
式IIで表される1種または2種以上の化合物、好ましくは、CC−n−VおよびCC−n−Vmで表される化合物の群から選択され、好ましくは、CC−3−V、CC−3−V1、CC−4−VおよびCC−5−Vであり、特に好ましくは、CC−3−V、CC−3−V1およびCC−4−Vで表される化合物の群から好ましくは選択され、極めて特に好ましくは、CC−3−Vであり、任意に、さらに、化合物CC−4−Vおよび/またはCC−3−V1であり、
【0149】
式III−1−1で表される1種または2種以上の化合物、好ましくは、式CY−n−Omで表され、式CY−3−O2、CY−3−O4、CY−5−O2およびCY−5−O4で表される化合物の群から選択され、
式III−1−2で表される1種または2種以上の化合物、好ましくは、式CCY−n−mおよびCCY−n−Omであり、好ましくは、式CCY−n−Omで表され、好ましくは、式CCY−3−O2、CCY−2−O2、CCY−3−O1、CCY−3−O3、CCY−4−O2、CCY−3−O2およびCCY−5−O2で表される化合物の群から選択され、
【0150】
任意に、好ましくは義務的に、式III−2−2で表される1種または2種以上の化合物、好ましくは、式CLY−n−Omで表され、好ましくは、式CLY−2−O4、CLY−3−O2、CLY−3−O3で表される化合物の群から選択され、
式III−3−2で表される1種または2種以上の化合物、好ましくは、CPY−n−Omで表され、好ましくは、式CPY−2−O2およびCPY−3−O2、CPY−4−O2およびCPY−5−O2で表される化合物の群から選択され、
【0151】
式III−4で表される1種または2種以上の化合物、好ましくは、式PYP−n−mで表され、好ましくは、式PYP−2−3およびPYP−2−4で表される化合物の群から選択される、
を含む。
【0152】
本発明について、個々の場合において他に示さない限り、組成物の成分の明細書に関連して、以下の定義を適用する:
【0153】
− 「含む」:組成物中の当該成分の濃度が、好ましくは、5%以上、特に好ましくは、10%以上、極めて特に好ましくは、20%以上であり、
− 「主に〜からなる」:組成物中の当該成分の濃度が、好ましくは、50%以上、特に好ましくは、55%以上、および極めて特に好ましくは、60%以上であり、
【0154】
− 「本質的に〜からなる」:組成物中の当該成分の濃度が、好ましくは、80%以上、特に好ましくは、90%以上、および極めて特に好ましくは、95%以上であり、
− 「実質的に〜からなる」:組成物中の当該成分の濃度が、好ましくは、98%以上、特に好ましくは、99%以上、および極めて特に好ましくは、100.0%である。
【0155】
これは、組成物として、構成成分および化合物であり得る成分に関する(with their constituents)媒体にも、成分、化合物に関する構成成分にも適用される。混合物全体に関連する個々の化合物の濃度の関係のみにおいて、用語「含む」は:当該化合物の濃度は、好ましくは、1%以上、特に好ましくは、2%以上、極めて特に好ましくは、4%以上である、を意味する。
【0156】
本発明について、「≦」は、「以下」を、好ましくは、「より少なく」を意味し、「≧」は、「以上」を、好ましくは、「より多く」を意味する。
本発明について、
【化52】

は、
trans−1,4−シクロへキシレンを示し、
【化53】

は、
1,4−フェニレンを示す。
【0157】
本発明について、表現「誘電的に正の化合物」は、Δε>1.5を有する化合物を意味し、表現「誘電的に中性の化合物」は、−1.5≦Δε≦1.5であるものを意味し、表現「誘電的に負の化合物」は、Δε<−1.5であるものを意味する。本明細書における化合物の誘電異方性を、液晶ホスト中で10%の化合物を溶解し、各場合において、1kHzでのホメオトロピックおよびホモジニアス表面配向を有し、20μmのセル厚みを有する、少なくとも1個のテストセル中において、得られた混合物のキャパシタンスを決定することにより決定する。測定電圧は、典型的には、0.5V〜1.0Vであるが、常に実験する個々の液晶混合物の容量閾値より低い。
【0158】
誘電的に正のおよび誘電的に中性の化合物に使用されるホスト混合物は、ZLI−4792であり、誘電的に負の化合物に使用されるものは、ZLI−2857であり、両方ともMerck KGaA、ドイツ国からのものである。実験する個々の化合物の値は、実験する化合物を添加した後のホスト混合物の誘電定数における変化および用いた化合物の100%への外挿から得られる。実験する化合物を、10%の量でホスト混合物中に溶解する。物質の溶解性が、この目的のために低すぎる場合には、実験が所望の温度において行えるまで、段階的に半減させる。
【0159】
本発明の液晶媒体はまた、必要であれば、例えば、通常量の安定剤および/または多色性色素および/またはキラルドーパントなどの添加剤を、さらに含んでもよい。用いるこれらの添加剤は、混合物全体の量に基づき、好ましくは、全体で、0%〜10%、特に好ましくは、0.1%〜6%である。用いる個々の化合物の濃度は、好ましくは、0.1〜3%である。これらおよび同様の添加剤の濃度は、液晶媒体における液晶化合物の濃度および濃度範囲を特定する場合には、通常考慮しない。
【0160】
好ましい態様において、本発明の液晶媒体は、1種または2種以上の反応性化合物、好ましくは、反応性メソゲンを含むポリマー前駆体を含み、必要であれば、例えば、通常量の重合開始剤および/または重合調節剤などの、さらなる添加剤を含む。用いるこれらの添加剤の量は、全体で、0%〜10%、混合物全体の量に基づき、好ましくは、0.1%〜2%である。これらおよび同様の添加剤の濃度は、液晶媒体における液晶化合物の濃度および濃度範囲を特定する場合には、考慮しない。
【0161】
組成物は、複数の化合物からなり、好ましくは、3〜30種、特に好ましくは、6〜20種、および極めて特に好ましくは、10〜16種であり、従来の方式で混合される。一般的に、より少量で使用される所望量の構成成分を、構成成分中で溶解し、混合物の第一成分とする。これは、高温で有利に行われる。選択された温度が第一成分の透明点より高い場合には、溶解操作の完了は、特に観察しやすい。しかしながら、例えば、プレミックスの使用またはいわゆる「マルチボトルシステム」からなどの、他の従来の方法において液晶混合物を調製することも可能である。
【0162】
本発明の混合物は、65℃以上の透明点を有する極めて広範なネマチック相範囲、極めて有益な容量閾値の値、比較的高い保持比の値および同時に−30℃および−40℃で極めて良好な低温安定性を示す。さらに、本発明の混合物は、低い回転粘度γにより区別される。
【0163】
当業者には言うまでもないが、VA、IPS、FFSまたはPALCディスプレイに使用のための本発明の媒体はまた、例えば、H、N、O、Cl、Fが対応する同位体で置き換えられた化合物を含む。
本発明の液晶ディスプレイの構造は、例えば、EP A 0 240 379などに記載されるように、普通の形状に対応する。
【0164】
今まで開示されたあらゆるタイプのディスプレイ、例えば、ECB、VAN、IPS、GHまたはASM−VA LCDディスプレイなどにおいて用いることができるように、本発明の液晶相を、好適な添加剤を用いることにより改変することができる。
以下の表Eは、本発明の混合物に添加することができるドーパントを示す。混合物が1種または2種以上のドーパントを含む場合には、それは(それらは)、0.01〜4%、好ましくは、0.1〜1.0%の量で用いる。
【0165】
例えば、好ましくは、0.01〜6%、特に、0.1〜3%の量で本発明の混合物に添加できる安定剤を、表Fにおいて以下に示す。
本発明の目的のために、全ての濃度は、他に具体的に断りのない限り、重量パーセントにて示し、他に具体的に断りのない限り、対応する混合物または混合物構成成分に関する。
【0166】
他に具体的に断りのない限り、本願において示す、例えば、融点 T(C,N)、スメクチック(S)からネマチック(N)相転移 T(S,N)および透明点 T(N,I)などの全ての温度の値は、セルシウス温度(℃)にて示し、全ての温度差は、相応して度鎖(°または度)にて示す。
他に具体的に断りのない限り、本発明について、用語「電圧閾値」は、フレデリクス閾値としても既知の容量閾値(V)に関する。
【0167】
他に具体的に断りのない限り、各場合において、全ての物理的特性を、"Merck Liquid Crystals, Physical Properties of Liquid Crystals", status Nov. 1997, Merck KGaA, ドイツ国、に従い、決定するおよび決定した(are and have been determined)、および20℃の温度において適用し、ならびにΔnを589nmにおいておよびΔεを1kHzにおいて決定する。
【0168】
例えば、電圧閾値(V)などの電気光学特性を、スイッチング挙動のとおりに、メルクジャパンで製造されたテストセル中において決定する。測定セルは、ソーダ石灰ガラス基板を有し、互いに垂直にラビングし、液晶のホメオトロピック配向が生じたポリイミド配向層(希釈剤**26とのSE-1211(混合比 1:1)、共に日産化学工業株式会社からのもの、日本国)を用いてECBまたはVA配置に構成される。透明で、実質的に四角形のITO電極の表面積は、1cmである。
【0169】
他に示さない限り、キラルドーパントは、使用する液晶媒体に添加しないが、後者はまた、このタイプのドープが必要な用途には特に好適である。
VHRを、メルクジャパンで製造されたテストセル中において決定する。測定セルは、ソーダ石灰ガラス基板を有し、互いに垂直にラビングされた、層厚み50nmのポリイミド配向層(AL-3046、JSR株式会社からのもの、日本国)を用いて構成される。層厚みは、均一な6.0μmである。透明ITO電極の表面積は、1cmである。
【0170】
VHRを、20℃にて(VHR20)、5分後に、Autronic Melchers社、ドイツ国から商業的に入手可能な装置中で、オーブン中で100℃にて(VHR100)決定する。使用する電圧は、60Hzの周波数を有する。
VHR測定値の精度は、それぞれのVHR値に依存する。精度は値の減少に伴って、減少する。種々の大きさの範囲における値の場合に通常観測される偏差は、以下の表における大きさのそれらの順に従う。
【0171】
【表1】

【0172】
UV照射への安定性を、Heraeus、ドイツ国からの市販の装置である「Suntest CPS」中で実験する。密閉されたテストセルに、さらなる加熱をせずに2.0時間照射する。波長領域300nm〜800nmにおける照射出力は、765W/mVである。いわゆる窓ガラスモード(window glass mode)をシミュレートするために、端波長(edge wavelength)310nmを有するUV「遮断」フィルタを用いる。各一連の実験において、少なくとも4個のテストセルを各条件について実験し、対応する個々の測定の平均としてそれぞれの結果を示す。
【0173】
例えば、LCDバックライトのUV照射などによる曝露により大低引き起こされる電圧保持比(ΔVHR)の減少を、以下の方程式(1):
【数1】

に従って決定する。
【0174】
時間tに対する負荷へのLC混合物の相対的安定性(Srel)を、以下の方程式(2):
【数2】

ここで、「rel」は、対応する安定化されていない混合物を表す、
に従って決定する。
【0175】
VHRに加えて液晶混合物の導電性を特徴付けることができる、さらなる特性量は、イオン密度である。イオン密度の高い値は、頻繁に残像およびちらつきなどのディスプレイ障害の発生をもたらす。イオン密度を、好ましくは、メルクジャパン株式会社で製造されたテストセル中において決定する。テストセルは、ソーダ石灰ガラスを有し、ポリイミド層厚み40nmを有するポリイミド配向層(AL-3046、JSR株式会社からのもの、日本国)を用いて設計される。
【0176】
液晶混合物の層厚みは、均一な5.8μmである。さらにガードリングに適合した円形の透明ITO電極の面積は、1cmである。測定手法の精度は、約±15%である。これらのセルを、関連の液晶混合物で充填する前に、オーブン中で120℃において一晩乾燥する。
【0177】
イオン密度を、株式会社東陽テクニカ、日本国から商業的に入手可能な装置を使用して決定する。測定手法は、M. Inoue, "Recent Measurement of Liquid Crystal Material Characteristics", Proceedings IDW 2006, LCT-7-1,647に記載されるように、サイクリック・ボルタンメトリーと類似の本質的な測定手法である。この手法において、印加する直流電圧を、事前指定した三角波プロファイル(triangular profile)に従って、正および負の最大値間を変化させる。
【0178】
よって、プロファイルを全て通過させることで、1つの測定サイクルを形成する。印加した電圧が、場のイオンがそれぞれの電極に移動できる程度に十分である場合には、イオンの放出によりイオン電流が形成される。ここでの電荷移動量は、典型的には、数pC〜数nCの範囲である。これにより、上述の装置により保証される、極めて高感度の検出を必要とする。結果を、電流/電圧曲線に図示する。
【0179】
ここでのイオン電流は、液晶混合物の電圧閾値より小さい電圧のピークの発生から明白である。ピーク領域の積分により、実験する混合物のイオン密度の値を与える。混合物毎に4個のテストセルを測定する。三角波電圧の繰り返し周波数は、0.033Hzであり、測定温度は、60℃であり、最大電圧は、±3V〜±10Vであり、関連する混合物の誘電異方性の大きさに依存する。
【0180】
回転粘度を、回転永久磁石法(rotating permanent magnet method)および改変したウベローデ粘度計中での流動粘度を使用して決定する。液晶混合物ZLI-2293、ZLI-4792およびMLC-6608について、全ての製品は、Merck KGaA, Darmstadt,ドイツ国からのものであり、20℃において決定される回転粘度値は、それぞれ161mPa・s、133mPa・sおよび186mPa・sであり、流動粘度値(ν)は、それぞれ21mm・s−1、14mm・s−1および27mm・s−1である。
【0181】
他に具体的に示されない限り、以下の記号を使用する:
【表1−2】

【0182】
【表1−3】

【0183】
以下の例により、本発明を説明するが、これに限定するものではない。しかしながら、それらは当業者に、好ましく用いられる化合物との好ましい混合物の概念ならびにそれぞれその濃度およびその互いの組み合わせを示す。さらに、例は、利用しやすい特性および特性の組み合わせを例示する。
【0184】
本発明についておよび以下の例において、液晶化合物の構造を、以下の表A〜Cに従って生じる化学式への変換を伴う頭字語により示す。全ての基C2n+1、C2m+1およびC2l+1またはC2n、C2mおよびC2lは、直鎖状アルキル基またはアルキレン基であり、各場合において、それぞれn、mおよびl個のC原子を有する。
【0185】
表Aは、化合物の中心部の環要素についてのコードを示し、表Bは、架橋単位を一覧にし、表Cは、分子の左側および右側の末端基についての記号の意味を一覧にしている。頭字語は、任意の連結基との環要素についてのコードを構成し、第1のハイフンおよび左側の末端基についてのコードならびに第2のハイフンおよび右側の末端基についてのコードが続く。表Dは、それらのそれぞれの略号と共に化合物の例示的な構造を示す。
【0186】
表A:環要素
【表2】

【0187】
【表3】

【0188】
【表4】

【0189】
【表5】

【0190】
【表5−1】

【表5−2】

【0191】
式中、nおよびmは、各々整数であり、3個の点「...」は、この表からの他の略号のためのプレースホルダーである。
【0192】
式Iで表される化合物の他に、本発明の混合物は、好ましくは、以下に言及する1種または2種以上の化合物を含む。
【0193】
以下の略号を使用する:
(n、mおよびzは、互いに独立して、各々整数であり、好ましくは、1〜6である。)
【0194】
【化54】

【0195】
【化55】

【0196】
【化56】

【0197】
【化57】

【0198】
【化58】

【0199】
【化59】

【0200】
表Eは、本発明の混合物中で好ましく用いられるキラルドーパントを示す。
【0201】
【化60】

【0202】
【化61】

【0203】
本発明の好ましい態様において、本発明の媒体は、表Eからの化合物の群から選択される、1種または2種以上の化合物を含む。
【0204】
表Fは、式Iで表される化合物に加え、本発明の混合物中で好ましく用いることができる安定剤を示す。パラメータnは、ここで、1〜12の範囲の整数を示す。特に、示したフェノール誘導体は、それらが抗酸化剤の役割を果たすため、追加の安定剤として用いることができる。
【0205】
【化62】

【0206】
【化63】

【0207】
【化64】

【0208】
【化65】

【0209】
本発明の好ましい態様において、本発明の媒体は、表Fからの化合物の群から選択される、特に2つの式で表される化合物の群から選択される、1種または2種以上の化合物を含む。
【化66】

【発明を実施するための形態】
【0210】

以下の例は、本発明を説明するが、あらゆる点においてこれを制限するものではない。しかしながら、物理的特性により、当業者には、どの特性が達成され得、どの範囲においてそれらが改変され得るかは明らかである。よって、特に、好ましく達成され得る種々の特性の組み合わせは、当業者には明確に定義される。
【0211】
物質例
以下の物質は、本願に従って式Iで表される好ましい物質または本願に従って好ましく用いられる式Iで表される物質である。
【化67】

【0212】
【化68】

【0213】
【化69】

【0214】
【化70】

【0215】
【化71】

【0216】
【化72】

【0217】
【化73】

【0218】
【化74】

【0219】
合成例1:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジオキシルスクシナートの合成(物質例1)
【化75】

【0220】
2.15g(12.26mmol)の4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、40mg(0.33mmol)の4−(ジメチルアミノ)ピリジンおよび1ml(12.4mmol)の乾燥ピリジンを、初めに20mlのジクロロメタン中に導入する。4オングストロームの活性分子ふるいを続いて加え、混合物を室温(短縮してRT;約22℃)で90分間撹拌する。反応溶液を7〜10℃の範囲の温度まで冷却し0.71ml(6.13mmol)の二塩化スクシニルをゆっくりと添加し、混合物をRTで18時間撹拌する。
【0221】
十分な飽和NaHCO溶液およびジクロロメタンを、反応溶液に加え、有機相を分離し、水および飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、留去する。粗生成物を、シリカゲル上でジクロロメタン/メチルt−ブチルエーテル(95:5)で精製し、>99.5%の純度を有する白色固体として生成物を得る。
【0222】
合成例2:ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル)デカンジオアートの合成(物質例4)
【化76】

【0223】
28.5g(166mmol)の4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(フリーラジカル)および250mg(2.05mmol)の4−(ジメチルアミノ)ピリジンを、300mlの脱気したジクロロメタン中に溶解し、50.0ml(361mmol)のトリエチルアミンを加える。混合物を、続いて脱気し、0℃まで冷却し、100mlの脱気したジクロロメタン中に溶解した10g(41.1mmol)塩化セバコイルを、0〜5℃で滴加し、混合物を室温で18時間撹拌する。反応が完了したところで、水およびHCl(pH=4〜5)を氷冷しながら加え、混合物をさらに30分間撹拌する。
【0224】
有機相を分離し、水相を続いてジクロロメタンで抽出し、合わせた相を飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、留去し、ジクロロメタン/メチルtert−ブチルエーテル(95/5)とのフリット上の100gの塩基性Alおよび500gのシリカゲルを一緒に通過する24.4gの赤色液体を得て、50℃で脱気したアセトニトリルに溶解し、−25℃で結晶化する橙色結晶を得て、HPLC純度99.9%を有する橙色結晶として生成物を得る。
【0225】
合成例3:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジオキシルブタンジオールの合成(物質例7)
【化77】

【0226】
十分なペンタンを、15.0g(鉱油中で60%、375mmol)のNaHに、保護ガス下で加え、混合物を沈殿させる。ペンタン上澄み液をピペットで除き(pipetted off)、注意深くイソプロパノールで冷却しながらクエンチする。100mlのTHFを、次いで注意深く洗浄したNaHに加える。反応混合物を、55℃まで加熱し、400mlのTHF中の50.0g(284mmol)の4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル溶液を、注意深く滴加する。生成した水素を直接排出する。溶液の添加が完了したところで、撹拌を60℃で一晩続ける(16時間)。
【0227】
反応混合物を、続いて5℃まで冷却し、1,4−ブタンジオールジメチルスルホナートを分割して加える。混合物を、次いで、ゆっくりと60℃まで加熱し、混合物をRTまで冷却し、200mlの6%アンモニア水溶液を冷却しながら加え、混合物を1時間撹拌する。有機相を、次いで、分離し、水相をメチルtert−ブチルエーテルで洗い流し、合わせた有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、乾燥し、留去する。粗生成物をシリカゲル上でジクロロメタン/メチルtert−ブチルエーテル(8:2)で精製し、−20℃でアセトニトリルから結晶化させ、>99.5%の純度を有するピンク色結晶性固体として生成物を得る。
【0228】
合成例4:ビス[2,2,6,6−テトラメチル−1−(1−フェニル−エトキシ)ピペリジン−4−イル]スクシナートの合成(物質例24)
【化78】

【0229】
工程4.1:2,2,6,6−テトラメチル−1−(1−フェニルエトキシ)ピペリジン−4−オールの合成
【化79】

【0230】
5.0g(29.03mmol)の4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、7.80g(58.1mmol)の2−フェニルプロピオンアルデヒドおよび100.6mg(1.02mmol)の塩化銅(I)を、始めに20mlのtert−ブタノール中に導入する。6.45ml(58.06mmol)の35%過酸化水素溶液を、次いで、内部温度が30℃を超えない速度で注意深くゆっくりと滴加する。したがって、混合物を、滴加の間氷冷により冷却する。添加が速すぎて温度が高すぎる場合には、反応中で酸素が生成し、自発的に大量に放出される。
【0231】
添加が完了したところで、反応溶液をRTでさらに16時間撹拌し、十分な水/メチルtert−ブチルエーテルを、次いで加え、有機相を分離する。有機相を10%のアスコルビン酸で、過酸化物がなくなるまで洗浄し、過酸化物含有量をチェックする。混合物を、次いで10%NaOH溶液、水および飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、留去する。得られた粗生成物を、シリカゲル上でヘプタン/メチルtert−ブチルエーテル(1:1)で精製し、無色結晶として生成物を得る。
【0232】
工程4.2:ビス[2,2,6,6−テトラメチル−1−(1−フェニルエトキシ)ピペリジン−4−イル]スクシナートの合成
1.52g(5.5mmol)の上記工程からの生成物、化合物2,2,6,6−テトラメチル−1−(1−フェニルエトキシ)ピペリジン−4−オール、15.3mg(0.125mmol)のジメチルアミノピリジンおよび1.02ml(12.6mmol)の乾燥ピリジンを、始めに10mlのジクロロメタン中に導入し、7〜10℃の範囲の温度まで冷却する。0.255ml(2.199mmol)の二塩化スクシノイルを、次いで、ヒドロキシル化合物がまだ存在する場合に必要であれば注ぎ足して、滴加する。
【0233】
反応が完了したところで、反応混合物をジクロロメタンで直接シリカゲルに通じてろ過し、続いてヘプタン/メチルtert−ブチルエーテル(1:1)および純粋なメチルtert−ブチルエーテルで溶離する。得られた生成物を、アセトニトリルに溶解し、分取HPLC(50ml/分のアセトニトリルを用いた2本のクロモリスカラム)により精製し、>99.9%の純度を有する黄色油状の生成物を得る。
【0234】
合成例5:2,2,6,6−テトラメチル−1−(1−フェニル−エトキシ)ピペリジン−4−イルペンタノアートの合成(物質例31)
【化80】

【0235】
2.5g(9.01mmol)の工程4.1からの化合物2,2,6,6−テトラメチル−1−(1−フェニル−エトキシ)ピペリジン−4−オールおよび55.1mg(0.45mmol)の(4−ジメチルアミノピリジン)を、50.0mlの乾燥ジクロロメタン中に溶解し、3℃まで冷却する。5.47ml(27.03mmol)の吉草酸無水物を、この温度で加え、混合物を室温で14時間撹拌する。反応が完了したところで、混合物を氷水中に注意深く注ぎ、2N HClを使用してpH 6に調節し、有機相を分離する。
【0236】
水相をジクロロメタンで抽出し、合わせた有機相を飽和NaCl溶液、水およびトリエチルアミン(300:50ml)で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、留去する。シリカゲル上でヘプタン/メチルtert−ブチルエーテル(9:1)での精製により、無色油として生成物を得る。
【0237】
合成例6:1,4−ビス(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ブタンジオアートの合成(物質例49)
【化81】

【0238】
40mlの水および80mlのジオキサンを混合し、注意深くアルゴン流を用いて脱気する。2.0g(4.7mmol)の物質例1(合成例1)からのフリーラジカルを溶媒混合物中に溶解し、4.95g(28.1mmol)のアスコルビン酸を分割して加える。反応混合物は、この添加の間に無色となり、40℃で18時間、保護ガス雰囲気下で撹拌する。
【0239】
混合物を室温まで冷却し、100mlの水を加え、混合物を簡単に撹拌し、生成した結晶を吸引ろ過する。結晶を、脱気した熱THF中に溶解し、不溶性成分をろ別し、ろ過物を−25℃で結晶化させる。淡ピンク色結晶と、次いで、アセトニトリル中で室温にて18時間撹拌しながら洗浄し、HPLC純度100%を有する淡ピンク色結晶として生成物を得る。
【0240】
合成例8:1,10−ビス(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)デカンジオアートの合成(物質例50)
【化82】

【0241】
使用する全ての溶媒を、予めアルゴン流を用いて十分に脱気する。ワークアップ(work-up)の間、褐色ガラス器具を用いなければならない。1.70g(3.32mmol)の物質例4(合成例2)からのフリーラジカルを60mlのジオキサン中に溶解する。30mlの水に溶解した3.6g(20mmol)のアスコルビン酸を、続いて室温にて溶液に滴加する。
【0242】
反応溶液は、この滴加の間に無色になり始め、反応は、室温で1時間撹拌した後に完了する。混合物を100mlのジクロロメタンで抽出し、有機相を水で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、留去する。黄色結晶は、160℃および10−2mbarで5分間乾燥し、粘性を有し、油状のものをゆっくり結晶化して得られる。
【0243】
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物を調製し、実験する。
【0244】
例1.1および1.2ならびに比較例1.0および1.1:
アルケニル末端基を含有する40%をわずかに超える化合物およびシクロヘキセニレン単位を含有する8%の化合物を全体で含む、以下の混合物(M−1)を調製し、実験する。
【0245】
【表7】

混合物M−1を、4分割し、以下に記載するように実験する。
【0246】
比較例1.0および1.1
最初に、混合物(M−1)の、および250ppmの化合物TINUVIN(登録商標)770がこの混合物に加えられた別のサンプルの電圧保持比そのものの安定性を決定する。得られた混合物(CM−1−1)を、混合物M−1そのものと同様に、ホメオトロピック配向のための配向材料および平面ITO電極を有するテストセル中で冷陰極(CCFL)−LCDバックライトを用いた照明へのその安定性について実験する。
【0247】
この目的を達成するために、対応するテストセルを、光に750時間曝露する。電圧保持比を、次いで、各場合において100℃の温度で決定する。結果を、表1にまとめる。ここで、以下のように、6個のテストセルを、各々個々の混合物について充填して実験する。示した値は、6個の個々の値の平均値およびその標準偏差(σ)であり、標準偏差が、上記に示した測定値精度をより小さい場合を含む。
【0248】
例1.1および1.2
次に、63ppmまたは代替的に250ppmの合成例1からの化合物
【化83】

を、混合物M−1に加え、得られた混合物(それぞれM−1−1およびM−1−2)を、上述のようにそれらの安定性について実験する。結果を以下の表である表1に示す。
【0249】
異なる一連の測定における電圧保持比の値の相対偏差は、典型的には、3〜4%の範囲である。
大抵曝露により引き起こされる電圧保持比(ΔVHR)の急降下を、上記の本文において記載したように決定する。よって、相対的安定性Srel(750時間)=1.9を、例1について、基準混合物(比較例1.0)と比較して得る。
【0250】
【表8】

注記: I: 合成例1からの化合物
T770: TINUVIN(登録商標)770
【0251】
さらに、4種の混合物のイオン密度を決定する。結果を以下の表(表2)にまとめる。
【表9】

注記: I: 合成例1からの化合物
T770: TINUVIN(登録商標)770
【0252】
合成例1からの化合物は、相対的に低濃度であっても、出発混合物および比較混合物の両方の安定化特性よりもはっきりと優れている安定化特性を、はっきりと示すことは、ここで直ちに明らかである。加えて、イオン密度は、実質的にドープしていない基準と比較して変化していない。TINUVIN(登録商標)770は、一方、4倍高いイオン密度を示し、これはポリアミドとのより強い相互作用を示唆する。よって、TINUVIN(登録商標)770は、配向材料との著しくより強い相互作用を示す。合成例1からの化合物についての挙動は、著しく有益であると考えられる。
【0253】
63ppmの濃度での合成例1からの化合物は、ここで実験された他の全ての化合物より優れた安定化活性(stabilisation activity)を有する。これにより、バックライトに曝露する間、残像の恐れの減少をもたらす。
【0254】
例2.1および2.2ならびに比較例2.0および2.1:
アルケニル末端基を含有する37%の化合物を含む、以下の混合物(M−2)を調製し、実験する。
【0255】
【表10】

注記: t.b.d.: 未決定
【0256】
混合物M−2を、例1において記載したように、4分割し、本明細書中において記載したように、合成例1からの化合物の2種の異なる濃度またはTINUVIN(登録商標)770を代替的に加え、対応する混合物を、テストセル中でLCDバックライトを用いた照明へのそれらの安定性について実験する。合成例1からの化合物を含む混合物については、例1におけるものと同等に有益な結果がまたここで達成される。
【0257】
例3.1および3.2ならびに比較例3.0および3.1:
アルケニル末端基を含有する40%の化合物を含む、以下の混合物(M−3)を調製し、実験する。
【0258】
【表11】

注記: t.b.d.: 未決定
【0259】
混合物M−3を、例1において記載したように、4分割し、本明細書中において記載したように、合成例1からの化合物の2種の異なる濃度またはTINUVIN(登録商標)770を代替的に加え、対応する混合物を、テストセル中でLCDバックライトを用いた照明へのそれらの安定性について実験する。合成例1からの化合物を含む混合物については、例1におけるものと同等に有益な結果がまたここで達成される。これらを、以下の2つの表にまとめる。
【0260】
【表12】

注記: I: 合成例1からの化合物
T770: TINUVIN(登録商標)770
t.b.d.: 未決定
【0261】
【表13】

注記: I: 合成例1からの化合物
T770: TINUVIN(登録商標)770
t.b.d.: 未決定
【0262】
例4.1〜4.3ならびに比較例4.0および4.1:
アルケニル末端基を含有する38%をわずかに超える化合物を全体で含む、以下の混合物(M−4)を調製し、実験する。
【0263】
【表14】

注記: t.b.d.: 未決定
混合物M−4を、複数の部分に分割し、以下に記載するように実験する。
【0264】
次に、250ppmのTINUVIN(登録商標)770または各場合において代替的に50ppmの物質例47からの化合物
【化84】

50ppmの物質例48からの化合物
【化85】

250ppmの物質例49(合成例6)からの化合物
【化86】

を混合物M−4の種々の部分に加え、得られた混合物(CM−4.1およびM−4−1〜M−4−3)を、上記に記載したように、それらの安定性について実験する。結果を以下の2つの表に示す。
【0265】
【表15】

注記: 47: 物質例47からの化合物
48: 物質例48からの化合物
49: 物質例49からの化合物
T770: TINUVIN(登録商標)770
t.b.d.: 未決定
【0266】
CCFLバックライトへの曝露において、例えば、物質例47からの化合物は、実質的にTINUVIN(登録商標)770と同一の安定化作用を有することが見出される。
【0267】
【表16】

注記: 47: 物質例47からの化合物
48: 物質例48からの化合物
49: 物質例49からの化合物
T770: TINUVIN(登録商標)770
t.b.d.: 未決定
【0268】
ここで実験された全ての新規の化合物は、TINUVIN(登録商標)770より著しく低いイオン密度値を示す。よって、安定剤により引き起こされた、著しくより少数のイオンが期待される。
【0269】
例5.1〜5.3および比較例5.0:
アルケニル末端基を含有する36%をわずかに超える化合物を全体で含む、以下の混合物(M−5)を調製し、実験する。
【0270】
【表17】

【0271】
混合物M−5を、複数の部分に分割し、以下に記載するように実験する。次に、各場合において、代替的に25ppm、50ppmまたは100ppmの、例1においても使用された物質例1からの化合物を、混合物M−5の種々の部分に加える。
【0272】
【表18】

注記: I: 合成例1からの化合物
【0273】
【表19】

注記: I: 合成例1からの化合物
t.b.d.: 未決定
【0274】
混合物M−5を再び調製し、複数の部分に再び分割し、以下に記載するように実験する。次に、各場合において、代替的に250ppmのTINUVIN(登録商標)770、50ppmの合成例2(物質例4)からの化合物
【化87】

または、50ppmもしくは250ppmの合成例8(物質例50)からの化合物
【化88】

を混合物M−5の種々の部分に加える。
【0275】
【表20】

注記: II: 合成例2からの化合物
VIII: 合成例8からの化合物
T770: TINUVIN(登録商標)770
t.b.d.: 未決定
【0276】
【表21】

注記: II: 合成例2からの化合物
VIII: 合成例8からの化合物
T770: TINUVIN(登録商標)770
t.b.d.: 未決定
【0277】
例6.1〜6.3ならびに比較例6.0および6.1:
アルケニル末端基を含有する35.5%の化合物を全体で含む、以下の混合物(M−6)を調製し、実験する。
【0278】
【表22】

注記: t.b.d.: 未決定
【0279】
混合物M−6を、複数の部分に分割し、各場合において、250ppmの異なる化合物、すなわち、TINUVIN(登録商標)770、合成例1からの化合物、合成例2(物質例4)からの化合物または合成例8(物質例50)からの化合物を、混合物M−6の種々の部分に加え、それぞれの混合物を、テストセル中でLCDバックライトを用いた照明へのそれらの安定性について実験する。
【0280】
【表23】

注記: I: 合成例1からの化合物
II: 合成例2からの化合物
VIII: 合成例8からの化合物
T770: TINUVIN(登録商標)770
t.b.d.: 未決定
【0281】
【表24】

注記: I: 合成例1からの化合物
II: 合成例2からの化合物
VIII: 合成例8からの化合物
T770: TINUVIN(登録商標)770
t.b.d.: 未決定

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

式中、
nは、1〜4の整数を示し、
mは、(4−n)を示し、
【化2】

は、4個の結合部位を有する有機基を示し、
11およびZ12は、互いに独立して、−O−、−(C=O)−、−(NR14)−または単結合を示すが、両方が同時に−O−を示さず、
rおよびsは、互いに独立して、0または1を示し、
11〜Y14は、各々互いに独立して、1〜4個のC原子を有するアルキルを示し、あるいは代替的に、互いに独立して、2個の対である(Y11およびY12)および(Y13およびY14)は、3〜6個のC原子を有する2価の基を一緒に形成する結合により連結していてもよく、
11は、O−R13、OまたはOH、好ましくは、O−R13またはO、特に好ましくは、O、イソプロポキシ、シクロヘキシルオキシ、アセトフェノキシまたはベンゾキシ、極めて特に好ましくは、Oを示し、
12は、各々存在する場合には、互いに独立して、H、F、OR14、NR1415、1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖を示し、ここで、1個の−CH−基または複数の−CH−基は、−O−または−(C=O)−により置き換えられていてもよいが、隣接した2個の−CH−基は、−O−により置き換えられていてはならず、あるいは、シクロアルキルまたはアルキルシクロアルキル単位を含有する炭化水素基を示し、ここで、1個の−CH−基または複数の−CH−基は、−O−または−(C=O)−により置き換えられていてもよいが、隣接した2個の−CH−基は、−O−により置き換えられていてはならず、およびここで、1個のH原子または複数のH原子は、OR14、N(R14)(R15)またはR16により置き換えられていてもよく、あるいは、芳香族または複素芳香族炭化水素基を示し、ここで、1個のH原子または複数のH原子は、OR14、N(R14)(R15)またはR16により置き換えられていてもよく、
13は、各々存在する場合には、互いに独立して、1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖を示し、ここで、1個の−CH−基または複数の−CH−基は、−O−または−(C=O)−により置き換えられていてもよいが、隣接した2個の−CH−基は、−O−により置き換えられていてはならず、あるいは、シクロアルキルまたはアルキルシクロアルキル単位を含有する炭化水素基を示し、およびここで、1個の−CH−基または複数の−CH−基は、−O−または−(C=O)−により置き換えられていてもよいが、隣接した2個の−CH−基は、−O−により置き換えられていてはならず、およびここで、1個のH原子または複数のH原子は、OR14、N(R14)(R15)またはR16により置き換えられていてもよく、あるいは、芳香族または複素芳香族炭化水素基を示し、ここで、1個のH原子または複数のH原子は、OR14、N(R14)(R15)またはR16により置き換えられていてもよく、あるいは、
【化3】

(1,4−シクロへキシレン)であり得、ここで、1個または2個以上の−CH−基は、−O−、−CO−または−NR14−により置き換えられていてもよく、あるいは、アセトフェニル、イソプロピルまたは3−ヘプチル基であり、
14は、各々存在する場合には、互いに独立して、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキルあるいはアシル基、あるいは6〜12個のC原子を有する芳香族炭化水素またはカルボキシル基を示し、
15は、各々存在する場合には、互いに独立して、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキルあるいはアシル基、あるいは6〜12個のC原子を有する芳香族炭化水素またはカルボキシル基を示し、
16は、各々存在する場合には、互いに独立して、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を示し、ここで、1個の−CH−基または複数の−CH−基は、−O−または−(C=O)−により置き換えられていてもよいが、隣接した2個の−CH−基は、−O−により置き換えられていてはならず、
以下の条件、
n=1、R11=Oおよび−[Z11−]−[Z12−=−O−、−(CO)−O−、−O−(CO)−、−O−(CO)−O−、−NR14−または−NR14−(CO)−である場合には、
【化4】

は、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、またシクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたはアルキルシクロアルキルを示さず、ここで、これら全ての基における1個または2個以上の−CH−基は、分子中の2個のO原子が互いに直接結合しないように、−O−により置き換えられていてもよく、
n=2およびR11=Oである場合には、
【化5】


【化6】

を示さず、および
n=2およびR11=O−R13である場合には、
13は、n−C1〜9−アルキルを示さない、
である、
で表される化合物。
【請求項2】
式I−1〜I−9
【化7】

【化8】

【化9】

式中、パラメータは請求項1において示した意味を有し、
tは、1〜12の整数を示し、
17は、1〜12個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル鎖を示し、ここで、1個の−CH−基または複数の−CH−基は、−O−または−(C=O)−により置き換えられていてもよいが、隣接した2個の−CH−基は、−O−により置き換えられていてはならず、あるいは、芳香族または複素芳香族炭化水素基を示し、ここで、1個のH原子または複数のH原子は、OR14、N(R14)(R15)またはR16により置き換えられていてもよい、
で表される化合物の群から選択される、式Iで表される化合物。
【請求項3】
式I−1a−1〜I−8a−1
【化10】

【化11】

【化12】

で表される化合物の群から選択される、式Iで表される化合物。
【請求項4】
a)請求項1〜3のいずれか一項に定義された、式Iで表される1種または2種以上の化合物、
および
b)式II
【化13】

式中、
21は、1〜7個のC原子を有する非置換のアルキル基または2〜7個のC原子を有する非置換のアルケニル基を示し、および
22は、2〜7個のC原子を有する非置換のアルケニル基を示す、
で表される1種または2種以上の化合物、
および/または
c)式III−1〜III−4
【化14】

式中、
31は、1〜7個のC原子を有する非置換のアルキル基を示し、
32は、1〜7個のC原子を有する非置換のアルキル基または1〜6個のC原子を有する非置換のアルコキシ基を示し、および
m、nおよびoは、各々互いに独立して、0または1を示す、
で表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物、
を含むことを特徴とする、液晶媒体。
【請求項5】
媒体全体中の式Iで表される化合物の全濃度が、1ppm〜1,000ppmであることを特徴とする、請求項4に記載の媒体。
【請求項6】
請求項4に示した、式IIで表される化合物を含み、式中、R21が、n−プロピルを示し、R22が、ビニルを示すことを特徴とする、請求項4または5に記載の媒体。
【請求項7】
媒体全体中の式IIで表される化合物の全濃度が、25%〜45%であることを特徴とする、請求項6に記載の媒体。
【請求項8】
式III−2−2
【化15】

式中、
31およびR32が、請求項4における式III−2に従って与えられるそれぞれの意味を有する、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項9】
請求項4に示した、式III−4で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項4〜8のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項10】
さらに、1種または2種以上のキラル化合物を含むことを特徴とする、請求項4〜9のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項11】
請求項4〜10のいずれか一項に記載の液晶媒体を含有することを特徴とする、電気光学ディスプレイまたは電気光学部品。
【請求項12】
VAまたはECB効果に基づくことを特徴とする、請求項11に記載のディスプレイ。
【請求項13】
アクティブマトリックスアドレス方式デバイスを含むことを特徴とする、請求項11または12に記載のディスプレイ。
【請求項14】
液晶媒体中における、請求項1〜3のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物の使用。
【請求項15】
電気光学ディスプレイにおけるまたは電気光学部品における、請求項4〜10のいずれか一項に記載の液晶媒体の使用。
【請求項16】
液晶媒体の調製方法であって、請求項1〜3のいずれか一項に記載の式Iで表される1種または2種以上の化合物を、請求項4に記載の式IIで表される1種または2種以上の化合物および/または請求項4に記載の式III−1〜III−4で表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物と混合することを特徴とする、前記方法。
【請求項17】
液晶媒体の安定化方法であって、式Iで表される1種または2種以上の化合物および任意に式OH−1〜OH−6
【化16】

で表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を媒体に添加することを特徴とする、前記方法。
【請求項18】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物の調製方法であって、用いる出発物質が、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルであることを特徴とする、前記方法。

【公開番号】特開2012−224632(P2012−224632A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97145(P2012−97145)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】