説明

化合物の製造方法

【課題】2種類以上の複素環式化合物同士を反応させて、ホウ酸エステル残基及び有機スズ残基を含まない化合物を製造する方法の提供。
【解決手段】下記式(1):


(式(1)中、Arは、ヘテロアリーレン基を表す。Hは、水素原子を表す。)で表される化合物と、下記式(2):


(式(2)中、Arは、ヘテロアリーレン基を表す。Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。2個あるXは、同一でも相異なってもよい。)で表される化合物とを、塩基性化合物またはホスフィン化合物の存在下で反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子という場合がある)、有機薄膜太陽電池、有機薄膜トランジスタなどの、機能層として有機層を含む電子素子の開発が盛んに行われている。特に、有機層の機能性材料として高分子化合物を用い、簡易な塗布法により塗布成膜して有機層を形成することにより、電子素子の作製が可能であるため、電子素子の大面積化が可能であり、大幅な製造コスト削減が期待されている。
高分子化合物の製造方法としては、高分子化合物の構造を制御し易く、比較的温和な条件でより分子量の大きい化合物を合成できるので、鈴木カップリング、Stilleカップリングを用いた高分子化合物の製造方法が広く採用されている。
【0003】
Suzukiカップリングを用いた高分子化合物の製造方法としては、下記式(A)で表される複素環式化合物と、下記式(B)で表される複素環式化合物とを反応させ、下記式(C)で表されるヘテロアリーレン基を残基として含むポリヘテロアリーレンを製造する方法が提案されている(非特許文献1参照)。
【0004】
【化1】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】アドバンスド ファンクショナル マテリアルズ(Adv. Funct. Mater.)、2009年、第19巻、p.3262−3270
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、鈴木カップリングを用いた高分子化合物の製造方法ではホウ酸エステル残基を含むモノマーが用いられ、又はStilleカップリングを用いた高分子化合物の製造方法では、有機スズ残基を含むモノマーが用いられるため、製造された高分子化合物中にホウ酸エステル残基又は有機スズ残基に由来する構造が含まれ、これらが電子素子の特性低下の要因となっていた。
【0007】
そこで、本発明は、ホウ酸エステル残基を含むモノマー及び有機スズ残基を含むモノマーを用いることなく、2種類以上の複素環式化合物同士を反応させて、ヘテロアリーレン基を残基として含む高分子化合物を製造し得る化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、下記[1]〜[10]を提供する。
[1] 下記式(1):
【化2】

(式(1)中、Arは、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基で置換されていてもよいヘテロアリーレン基を表す。Hは、水素原子を表す。)
で表される化合物と、
下記式(2):
【化3】

(式(2)中、Arは、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基で置換されていてもよいヘテロアリーレン基を表す。Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。2個あるXは、同一でも相異なってもよい。)
で表される化合物とを反応させる、
下記式(3):
【化4】

(式(3)中、Ar及びArは、前述と同じ意味を表す。nは、1以上の数を表す。)
で表される構造単位を含む化合物の製造方法。
[2] 式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを、遷移金属化合物の存在下で反応させる、[1]に記載の化合物の製造方法。
[3] 式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを、塩基性化合物の存在下で反応させる、[1]又は[2]に記載の化合物の製造方法。
[4] 式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを、ホスフィン化合物の存在下で反応させる、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の製造方法。
[5] Arが、1個〜3個の電子吸引性の置換基を有しているヘテロアリーレン基である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の化合物の製造方法。
[6] 電子吸引性の置換基が、フッ素原子である、[5]に記載の製造方法。
[7] Arが、下記式(5)で表される基である、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の製造方法。
【化5】

[式(5)中、Ar13及びAr14は、それぞれ独立に、芳香族複素環式化合物又は芳香族炭素環化合物から水素原子を3個取り除いた基を表し、該芳香族複素環式化合物及び芳香族炭素環化合物のうちの少なくとも一方は、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基若しくは1価の有機基で置換されていてもよい。ただし、Ar13及びAr14のうちの少なくとも一方は、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基若しくは1価の有機基で置換されていてもよい芳香族複素環式化合物から水素原子を3個取り除いた基である。Aは、下記式(4−1)〜式(4−12)で表される2価の基を表す。
【化6】

(式(4−1)〜式(4−12)中、R〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基を表す。)]
[8] Arが、チオフェン環構造を含むヘテロアリーレン基である、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の化合物の製造方法。
[9] [1]〜[8]のいずれか1つに記載の化合物の製造方法により、得ることができる化合物。
[10] 質量分析法で求めた化合物中のスズの含有量と化合物中のホウ素の含有量との和が、1重量ppm未満である、[9]に記載の化合物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法は、ホウ酸エステル残基を含むモノマー及び有機スズ残基を含むモノマーを用いることなく、光電変換素子などの電子素子の機能性材料として有用な高分子化合物を製造し得る。
上記製造方法により製造された本発明の化合物は、ホウ酸エステル残基を含むモノマー及び有機スズ残基を含むモノマーを用いることなく製造することができるため、化合物中のスズの含有量及び化合物中のホウ素の含有量を極めて微量とすることができる。よって本発明の化合物を電子素子の機能性材料として用いた場合に、電子素子の電気的特性のさらなる向上が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、下記式(1)で表される化合物と、
【0011】
【化7】

下記式(2)で表される化合物とを反応させる、
【0012】
【化8】

下記式(3)で表される構造単位を含む化合物の製造方法に関するものである。
【0013】
【化9】

【0014】
式(1)中、Arは、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基で置換されていてもよいヘテロアリーレン基を表す。Hは、水素原子を表す。
置換基を有していてもよいへテロアリーレン基は、置換基を有していてもよい芳香族複素環式化合物から水素原子を2個取り除いた基である。置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基としては、例えば、置換基を有していてもよい単環の芳香族複素環式化合物から水素原子を2個取り除いた基、置換基を有していてもよい単環の芳香族複素環式化合物2個以上が互いに縮合した、縮合多環式芳香族複素環式化合物から水素原子を2個取り除いた基、置換基を有していてもよい単環又は多環の2個以上の芳香族複素環式化合物同士を、直接結合、又はメチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の基を介して結合させた、芳香族複素環が連結した、置換基を有していてもよい芳香族複素環式化合物において、該芳香族複素環式化合物中の異なる2個の芳香環が有する水素原子をそれぞれ1個除いた基、置換基を有していてもよい単環又は多環の芳香族複素環式化合物同士を、直接結合、及び、メチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の基を介した結合からなる群から選ばれる2個以上の結合により結合させた、置換基を有していてもよい有橋多環式芳香族複素環式化合物から水素原子を2個取り除いた基が挙げられる。
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基である1価の有機基としては、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基、フッ素原子で置換されていてもよいアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、カルボキシル基が挙げられる。
【0015】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であって、さらにフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基であってもよい。フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基の炭素原子数は、通常1〜30であり、1〜20が好ましい。フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル墓、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0016】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であって、さらにフッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルコキシ基であってもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、通常1〜30程度であり、1〜20が好ましい。フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基が挙げられる。
【0017】
フッ素原子で置換されていてもよいアルキルチオ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルチオ基であってもよい。アルキルチオ基の炭素原子数は、通常1〜30程度であり、1〜20が好ましい。フッ素原子で置換されていてもよいアルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、トリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0018】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であるアリール基は、置換基を有していてもよい芳香族炭素環化合物から水素原子を1個取り除いた基である。アリール基としては、例えば、置換基を有していてもよい単環の芳香族炭素環化合物から水素原子を1個取り除いた基、置換基を有していてもよい単環の芳香族炭素環化合物から選ばれる2個以上が互いに縮合した、縮合多環式芳香族炭素環化合物から水素原子を1個取り除いた基、置換基を有していてもよい2個以上の芳香族炭素環化合物同士を、直接結合、又はメチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の基で橋かけした構造を有する、置換基を有していてもよい有橋多環式芳香族炭素環化合物から水素原子を1個取り除いた基が挙げられる。
芳香族炭素環化合物が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基、フッ素原子で置換されていてもよいアルキルチオ基が挙げられる。該フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基及びフッ素原子で置換されていてもよいアルキルチオ基の炭素原子数及び具体例は、上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基として例示した、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基及びフッ素原子で置換されていてもよいアルキルチオ基の炭素原子数及び具体例と同じである。
アリール基の炭素原子数は、通常6〜60程度であり、6〜20が好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルキルオキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
ここで「C」は、炭素原子を表し、付された数字は直後に記載された基中の炭素原子数を表す。即ち、上記「C1〜C12アルキルオキシフェニル基」とは、炭素原子数が1〜12のアルキル(オキシ)基を有する基であることを表し、以下も同様である。C1〜C12アルキル基、C1〜C8アルキル基及びC1〜C6アルキル基の具体例としては、上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であって、さらにフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基で説明し例示したものが挙げられる。
【0019】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であるアリールオキシ基は、その炭素原子数が通常6〜60程度であり、6〜20が好ましい。アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、C1〜C12アルキルオキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられる。
【0020】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であるアリールチオ基は、その炭素原子数が通常6〜60程度であり、6〜20が好ましい。アリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、C1〜C12アルキルオキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0021】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であるアリールアルキル基は、その炭素原子数が通常7〜60程度であり、7〜20が好ましい。アリールアルキル基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルオキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基が挙げられる。
【0022】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であるアリールアルキルオキシ基は、その炭素原子数が通常7〜60程度であり、7〜20が好ましい。アリールアルキルオキシ基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキルオキシ基、C1〜C12アルキルオキシフェニル−C1〜C12アルキルオキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルオキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルオキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルオキシ基が挙げられる。
【0023】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であるアリールアルキルチオ基は、その炭素原子数が通常7〜60程度であり、7〜20が好ましい。アリールアルキルチオ基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルオキシフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基が挙げられる。
【0024】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であるアシル基とは、カルボン酸のカルボキシル基(−COOH)中の水酸基を除いた基を意味し、その炭素原子数は通常2〜20である。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、トリフルオロアセチル基等の炭素原子数が2〜20である、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ペンタフルオロベンゾイル基等のハロゲンで置換されていてもよいフェニルカルボニル基が挙げられる。
【0025】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であるアシルオキシ基とは、カルボン酸のカルボキシル基(−COOH)中の水素原子を除いた基を意味し、その炭素原子数は通常2〜20である。アシルオキシ基の具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基及びペンタフルオロベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0026】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であるアミド基とは、アミドから窒素原子に結合した水素原子1個を除いた基を意味し、その炭素原子数は通常2〜20である。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0027】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基である酸イミド基とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる基をいう。酸イミド基の具体例としては、スクシンイミド基、フタル酸イミド基が挙げられる。
【0028】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基である置換アミノ基とは、アミノ基の水素原子のうちの1個又は2個が置換基により置換されたものであり、この置換基としては、例えば、アルキル基及びアリール基が挙げられる。アルキル基及びアリール基の具体例は、上述のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基及びアリール基の炭素原子数及び具体例と同じである。置換アミノ基の炭素原子数は通常1〜40である。置換アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルキルオキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルオキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルキルオキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルオキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基及び2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基が挙げられる。
【0029】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基である置換シリル基とは、シリル基の水素原子のうちの1個、2個又は3個が置換基により置換された基である。置換シリル基は、一般に、シリル基の3個の水素原子全てが置換基により置換されたものであり、この置換基は、例えば、アルキル基及びアリール基である。アルキル基及びアリール基の炭素原子数及び具体例は、上述のアルキル基及びアリール基の炭素原子数及び具体例と同じである。置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基及びジメチルフェニルシリル基が挙げられる。
【0030】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基である置換シリルオキシ基とは、上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基である置換シリル基に酸素原子が結合した基である。置換シリルオキシ基の具体例としては、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリプロピルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基及びジメチルフェニルシリルオキシ基が挙げられる。
【0031】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基である置換シリルチオ基とは、上記置換シリル基に硫黄原子が結合した基である。置換シリルチオ基の具体例としては、トリメチルシリルチオ基、トリエチルシリルチオ基、トリプロピルシリルチオ基、トリイソプロピルシリルチオ基、tert−ブチルジメチルシリルチオ基、トリフェニルシリルチオ基、トリ−p−キシリルシリルチオ基、トリベンジルシリルチオ基、ジフェニルメチルシリルチオ基、tert−ブチルジフェニルシリルチオ基及びジメチルフェニルシリルチオ基が挙げられる。
【0032】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基である置換シリルアミノ基とは、アミノ基の水素原子うちの1個又は2個が置換シリル基で置換された基であり、置換シリル基は上記置換シリル基と同じである。置換シリルアミノ基の具体例としては、トリメチルシリルアミノ基、トリエチルシリルアミノ基、トリプロピルシリルアミノ基、トリイソプロピルシリルアミノ基、tert−ブチルジメチルシリルアミノ基、トリフェニルシリルアミノ基、トリ−p−キシリルシリルアミノ基、トリベンジルシリルアミノ基、ジフェニルメチルシリルアミノ基、tert−ブチルジフェニルシリルアミノ基、ジメチルフェニルシリルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、ビス(トリエチルシリル)アミノ基、ビス(トリプロピルシリル)アミノ基、ビス(トリイソプロピルシリル)アミノ基、ビス(tert−ブチルジメチルシリル)アミノ基、ビス(トリフェニルシリル)アミノ基、ビス(トリ−p−キシリルシリル)アミノ基、ビス(トリベンジルシリル)アミノ基、ビス(ジフェニルメチルシリル)アミノ基、ビス(tert−ブチルジフェニルシリル)アミノ基及びビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ基が挙げられる。
【0033】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基である1価の複素環基としては、置換基を有していてもよいフラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、プラゾリジン、フラザン、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、チオピラン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、モルホリン、トリアジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、インドリン、イソインドリン、クロメン、クロマン、イソクロマン、ベンゾピラン、キノリン、イソキノリン、キノリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、キナゾリジン、シンノリン、フタラジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、キサンテン、フェナントリジン、アクリジン、β-カルボリン、ペリミジン、フェナントロリン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジン等の複素環式化合物から水素原子を1個除いた基が挙げられる。1価の複素環基としては、1価の芳香族複素環基が好ましい。
【0034】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基である複素環オキシ基としては、上記1価の複素環基に酸素原子が結合した、下記式(11)で表される基が挙げられる。複素環チオ基としては、上記1価の複素環基に硫黄原子が結合した、下記式(12)で表される基が挙げられる。
【0035】
【化10】

式(11)及び式(12)中、Arは、1価の複素環基を表す。
【0036】
複素環オキシ基は、炭素原子数が通常4〜60程度である。複素環オキシ基の具体例としては、チエニルオキシ基、C1〜C12アルキルチエニルオキシ基、ピロリルオキシ基、フリルオキシ基、ピリジルオキシ基、C1〜C12アルキルピリジルオキシ基、イミダゾリルオキシ基、ピラゾリルオキシ基、トリアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、チアゾールオキシ基、チアジアゾールオキシ基が挙げられる。
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基である複素環チオ基は、炭素原子数が通常4〜60程度である。複素環チオ基の具体例としては、チエニルメルカプト基、C1〜C12アルキルチエニルメルカプト基、ピロリルメルカプト基、フリルメルカプト基、ピリジルメルカプト基、C1〜C12アルキルピリジルメルカプト基、イミダゾリルメルカプト基、ピラゾリルメルカプト基、トリアゾリルメルカプト基、オキサゾリルメルカプト基、チアゾールメルカプト基、チアジアゾールメルカプト基が挙げられる。
【0037】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であるアリールアルケニル基は、通常、その炭素原子数が8〜20であり、アリールアルケニル基の具体例としては、スチリル基が挙げられる。
【0038】
上記ヘテロアリーレン基が有し得る置換基であるアリールアルキニル基は、通常、その炭素原子数が8〜20であり、アリールアルキニル基の具体例としては、フェニルアセチレニル基が挙げられる。
【0039】
式(1)中、Arで表される基の例としては、下記式39〜式205で表される基が挙げられる。
【0040】
【化11】

【0041】
【化12】

【0042】
【化13】

【0043】
【化14】

【0044】
【化15】

【0045】
【化16】

【化17】

【0046】
【化18】

【0047】
【化19】

【0048】
【化20】

【0049】
【化21】

【0050】
【化22】

【0051】
【化23】

【0052】
【化24】

【0053】
【化25】

【0054】
【化26】

【0055】
【化27】

【0056】
【化28】

【0057】
【化29】

【0058】
【化30】

【0059】
【化31】

【0060】
【化32】

【0061】
式39〜式205中で表される基、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基を表す。
【0062】
Rで表される1価の有機基の定義及び具体例は、前述のヘテロアリーレン基が有していてもよい1価の有機基の定義及び具体例と同じである。
【0063】
式39〜式205で表される基中、Arで表される基としては、好ましくは式108〜式127で表される基、式131〜式138で表される基である。Arで表される基としては、より好ましくは式108〜式113で表される基、式116〜式119で表される基、式131〜式136で表される基であり、さらに好ましくは式109、式116、式131で表される基であり、特に好ましくは式116で表される基である。
【0064】
Arは、1個〜3個の電子吸引性の置換基で置換されているヘテロアリーレン基であることが好ましい。電子吸引性の置換基としては、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、カルボキシル基が挙げられ、好ましくはフッ素原子、シアノ基、ニトロ基であり、特に好ましくはフッ素原子である。
【0065】
式(2)中、Arは、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基で置換されていてもよいヘテロアリーレン基を表す。Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。2個あるXは、同一でも相異なってもよい。
ヘテロアリーレン基及び1価の有機基の定義及び具体例は、前述のArで表されるヘテロアリーレン基及び該ヘテロアリーレン基が有していてもよい1価の有機基の定義及び具体例と同じである。
【0066】
Arで表される、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基で置換されていてもよいヘテロアリーレン基の具体例としては、前述の式39〜式205で表される基が挙げられる。式39〜式205で表される基の中でも、好ましくは式94で表される基、式128〜式139で表される基、式142で表される基、式147で表される基、式152で表される基、式157で表される基、式162で表される基、式167〜式172で表される基であり、さらに好ましくは、式128で表される基、式142で表される基、式162で表される基であり、特に好ましくは式162で表される基である。
【0067】
反応性をより高めることができるので、Arは、下記式(5)で表される基であることが好ましい。
【0068】
【化33】

【0069】
式(5)中、Ar13及びAr14は、それぞれ独立に、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基で置換されていてもよい芳香族炭素環化合物から水素原子を3個取り除いた基、又はフッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基で置換されていてもよい芳香族複素環式化合物から水素原子を3個取り除いた基を表す。ただし、Ar13及びAr14のうちの少なくとも一方は、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基で置換されていてもよい芳香族複素環式化合物から水素原子を3個取り除いた基である。
【0070】
Ar13及びAr14であり得る芳香族炭素環化合物の炭素原子数は、通常、6〜60であり、好ましくは6〜20である。芳香族炭素環化合物は、置換基を有していてもよく、置換基としては、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基が挙げられる。1価の有機基の定義及び具体例は、前述のArで表されるヘテロアリーレン基が有していてもよい1価の有機基の定義及び具体例と同じである。
【0071】
この芳香族炭素環化合物から水素原子を3個取り除いた基としては、下記の基が例示される。
【0072】
【化34】

【0073】
【化35】

【0074】
Ar13及びAr14であり得る芳香族複素環式化合物の炭素原子数は、通常、2〜60であり、好ましくは4〜20である。芳香族複素環式化合物は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基が挙げられる。1価の有機基の定義及び具体例は、前述のArで表されるヘテロアリーレン基が有していてもよい1価の有機基の定義及び具体例と同じである。
【0075】
この芳香族複素環式化合物から水素原子を3個取り除いた基としては、例えば、下記式(206)〜式(289)で表される基が挙げられる。
【0076】
【化36】

【0077】
【化37】

【0078】
【化38】

【0079】
【化39】

【0080】
【化40】

【0081】
【化41】

【0082】
【化42】

【0083】
【化43】

【0084】
【化44】

【0085】
【化45】

【0086】
【化46】

【0087】
式(206)〜式(289)で表される基中、R’は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、置換アミノ基、アシルオキシ基、アミド基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基又はシアノ基を表す。
R’’は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、置換シリル基、アシル基又は1価の複素環基を表す。
【0088】
R’で表される、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、置換アミノ基、アシルオキシ基、アミド基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基の定義及び具体例は、前述のRで表されるハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、置換アミノ基、アシルオキシ基、アミド基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基の定義及び具体例と同じである。
【0089】
R’’で表される、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、置換シリル基、1価の複素環基の定義及び具体例は、前述のRで表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、置換シリル基、1価の複素環基の定義及び具体例と同じである。
【0090】
式(5)中、Aは、下記式(4−1)〜式(4−12)で表される2価の基を表す。
【0091】
【化47】

【0092】
式(4−1)〜式(4−12)中、R〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基のいずれか表す。1価の有機基の定義及び具体例は、前述のArで表されるヘテロアリーレン基が有していてもよい1価の有機基の定義及び具体例と同じである。
【0093】
本発明は式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを反応させることによって、下記式(3)で表される構造単位を含む化合物を製造する。
【0094】
【化48】

【0095】
式(3)中、Ar及びArは前述と同じ意味を表す。nは、1以上の整数を表す。
nは好ましくは2以上の整数、さらに好ましくは3以上の整数、特に好ましくは5以上の整数を表す。
【0096】
式(3)で表される構造単位を含む化合物の分子量は、500以上が好ましく、さらに好ましくは1000以上であり、特に好ましくは3000以上である。式(3)で表される構造単位を含む化合物が分子量分布を有する場合、式(3)で表される構造単位を含む化合物の数平均分子量は500以上が好ましく、さらに好ましくは1000以上であり、特に好ましくは3000以上である。
【0097】
本発明の化合物の製造方法において、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを、触媒である遷移金属化合物の存在下で反応させることが好ましい。遷移金属化合物としては、パラジウム化合物、ルテニウム化合物、ロジウム化合物、ニッケル化合物、鉄化合物、銅化合物などが挙げられ、好ましくはパラジウム化合物、ロジウム化合物であり、特に好ましくはパラジウム化合物である。
パラジウム化合物としては、例えば、Pd(0)化合物、Pd(II)化合物が挙げられる。具体的には、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムが挙げられ、反応(重合)操作の容易さ、反応(重合)速度の観点からは、パラジウムアセテートが好ましい。
【0098】
触媒の添加量は、特に限定されず、触媒としての有効量であればよい。例えばパラジウム化合物の添加量は、式(1)で表される化合物1モルに対して、通常、0.0001モル〜0.5モル、好ましくは0.0003モル〜0.2モルである。
【0099】
本発明の化合物の製造方法において、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを、塩基性化合物の存在下で反応させることが好ましい。
【0100】
塩基性化合物の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、tert−ブトキシカリウムなどが挙げられる。塩基性化合物の中でも、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウムであり、さらに好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウムであり、特に好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウムである。
塩基性化合物の添加量は、式(1)で表される化合物1モルに対して、通常、0.5モル〜100モル、好ましくは0.9モル〜20モル、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0101】
本発明の化合物の製造方法において、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを、配位子の存在下で反応させてもよい。配位子の例としては、ホスフィン化合物、アミン化合物、ピリジン類などが挙げられる。
ホスフィン化合物の例としては、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアリールモノアルキルホスフィン、モノアリールジアルキルホスフィンなどが挙げられる。トリアリールホスフィンの例としては、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(o−メトキシフェニル)ホスフィンが挙げられる。トリアルキルホスフィンの例としては、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、ビス(tert−ブチル)メチルホスフィンが挙げられる。モノアリールジアルキルホスフィンとしては、ビス(シクロヘキシル)ビフェニルホスフィン、ビス(tert−ブチル)ビフェニルホスフィンが挙げられる。
アミン化合物としては、トリアリールアミン、トリアルキルアミン、ジアリールモノアルキルアミン、モノアリールジアルキルアミンなどが挙げられる。ピリジン類としては、ピリジン、ビピリジンなどが挙げられる。配位子の中でも好ましくはホスフィン化合物であり、より好ましくは、トリアルキルホスフィンであり、さらに好ましくは、トリシクロヘキシルホスフィンである。
【0102】
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFという場合がある)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcという場合がある)、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランが挙げられる。
式(3)で表される構造単位を含む化合物の溶解性の観点から、溶媒は、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。
また、塩基性化合物の水溶液をさらに加え、水相と有機相との2相からなる溶媒中で反応させてもよい。塩基性化合物として無機塩を用いる場合には、無機塩の溶解性の観点から、通常、無機塩の水溶液として加え、反応させる。
なお、塩基性化合物の水溶液として加えて水相と有機相の2相からなる溶媒中で反応させる場合には、必要に応じて、第4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を加えてもよい。
【0103】
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との反応の温度は、前記溶媒にもよるが、通常、50℃〜160℃程度であり、式(3)で表される構造単位を含む化合物の分子量をより大きくする観点からは、60℃〜120℃が好ましい。また、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は、目的の重合度に達したときを終点としてもよいが、通常、0.1時間〜200時間程度である。1時間〜30時間程度が効率的で好ましい。
【0104】
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との反応を触媒の存在下で行う場合、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下など、触媒が失活しない反応系で行う。例えば、アルゴンガス、窒素ガス等で、十分脱気された系で反応を行う。具体的には、重合容器(反応系)内の気体を窒素ガスで十分置換し、この重合容器に、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、パラジウム化合物を仕込み、さらに、重合容器内の気体を窒素ガスで十分置換し、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより、脱気した溶媒、例えば、DMAcを加えた後、得られた溶液に、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した塩基性化合物、例えば、炭酸カリウムを添加した後、加熱、昇温し、例えば、100℃で24時間、不活性雰囲気を保持しながら反応させる。
【0105】
本発明の化合物の製造方法で製造される、式(3)で表される構造単位を含む化合物を電子素子の機能性材料として用いる場合、電子素子の特性を高める観点からは、該化合物中に含まれる金属元素及びホウ素元素の量が少ないことが好ましい。中でも、式(3)で表される構造単位を含む化合物に含まれる遷移金属元素、典型金属元素及びホウ素元素の量が少ないことが好ましい。遷移金属元素としては、パラジウム、鉄、スズ、ニッケル、銅が挙げられる。中でも、パラジウム、鉄、スズの量が少ないことが好ましく、特に好ましくはスズの量が少ないことが好ましい。本発明の製造方法で製造される式(3)で表される構造単位を含む化合物に含まれる不純物元素の量は、元素分析で測定されるが、スズの含有量とホウ素の含有量の合計量が、好ましくは50ppm以下であり、より好ましくは10ppm以下であり、さらに好ましくは1ppm以下であり、特に好ましくは0.5ppm以下である。
元素分析の方法の例としては、原子吸光分析法、発光分光分析法、プラズマ発光分析法、蛍光X線分析法、プラズマ質量分析法、グロー放電質量分析法、イオンクロマトグラフ分析法などが挙げられる。
【0106】
本発明の製造方法で製造される式(3)で表される構造単位を含む化合物は、高い電子及び/又は正孔(ホール)輸送性を発揮し得ることから、該化合物を含む有機薄膜を素子に用いた場合、電極から注入された電子、正孔、或いは、光吸収によって発生した電荷を輸送することができる。これらの特性を活かして光電変換素子、有機薄膜トランジスタ、有機EL素子等の種々の素子に好適に用いることができる。以下、これらの素子について個々に説明する。
【0107】
<光電変換素子>
本発明の化合物の製造方法で製造される、式(3)で表される構造単位を含む化合物を機能性材料として含む光電変換素子は、第1の電極と第2の電極との間に、本発明の化合物の製造方法で製造される式(3)で表される構造単位を含む化合物を含む1層以上の活性層を有する。
光電変換素子の好ましい形態としては、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極(第1の電極、第2の電極)と、電子供与性化合物と電子受容性化合物とを含む有機組成物から形成される活性層を有する。本発明の製造方法で製造される式(3)で表される構造単位を含む化合物は、電子供与性化合物として用いることが好ましい。
【0108】
光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機組成物の層を形成する際に化学的に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。不透明な基板を用いる場合には、基板とは反対側の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0109】
本発明の化合物の製造方法で製造される、式(3)で表される構造単位を含む化合物を有する光電変換素子の他の態様は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極間に、本発明の化合物の製造方法で製造される、式(3)で表される構造単位を含む化合物を含む第1の活性層と、該第1の活性層に隣接して、フラーレン誘導体等の電子受容性化合物を含む第2の活性層を含む光電変換素子である。
【0110】
上記の光電変換素子に用いる式(3)で表される化合物は、高分子化合物であることが好ましい。
【0111】
前記の透明又は半透明の電極材料の例としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウムスズオキサイド(ITO)、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)等からなる導電性材料を用いて形成された膜、NESA、金、白金、銀、銅の膜等が用いられ、ITO、IZO、酸化スズが好ましい。電極の形成方法の例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0112】
一方の電極が透明又は半透明である場合、他方の電極は透明でなくてもよく、不透明な電極の電極材料としては、金属、導電性高分子等を用いることができる。電極材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又は、1種以上の前記金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。合金としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0113】
光電変換効率を向上させるために、活性層以外の付加的な中間層を使用してもよい。中間層の材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化チタン等の酸化物、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)などが挙げられる。
【0114】
<活性層>
活性層は、本発明の化合物の製造方法で製造される、式(3)で表される構造単位を含む化合物を1種単独で含んでいても2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。また、活性層の正孔輸送性を高めるため、活性層中に電子供与性化合物及び/又は電子受容性化合物として、本発明の化合物の製造方法で製造される、式(3)で表される構造単位を含む化合物以外の化合物を混合して用いることもできる。なお、電子供与性化合物、電子受容性化合物は、これらの化合物のエネルギー準位から相対的に決定される。
【0115】
電子供与性化合物としては、本発明の化合物の製造方法で製造される、式(3)で表される構造単位を含む化合物のほか、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン残基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられる。
【0116】
電子受容性化合物としては、本発明の化合物の製造方法で製造される、式(3)で表される構造単位を含む化合物のほか、例えば、炭素材料、酸化チタン等の金属酸化物、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン)等のフェナントロリン誘導体、フラーレン、フラーレン誘導体が挙げられ、好ましくは、酸化チタン、カーボンナノチューブ、フラーレン、フラーレン誘導体であり、特に好ましくはフラーレン、フラーレン誘導体である。
フラーレンとしては、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、C84フラーレン、フラーレン誘導体としてはC60フラーレンの誘導体、C70フラーレンの誘導体、C76フラーレンの誘導体、C78フラーレンの誘導体、C84フラーレンの誘導体が挙げられる。ここで「C」は、炭素原子を表し、下付で付された数字は炭素原子数を表す。
フラーレン誘導体は、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物を表す。
【0117】
フラーレン誘導体としては、例えば、下記式(I)で表される化合物、下記式(II)で表される化合物、下記式(III)で表される化合物、式(IV)で表される化合物が挙げられる。
【0118】
【化49】

【0119】
式(I)〜(IV)中、Rは、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はエステル構造を有する基である。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。Rはフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基又はアリール基を表す。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。
【0120】
で表されるフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の炭素原子数及び具体例は、前述のArで表されるヘテロアリーレン基が有していてもよいフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の炭素原子数及び具体例と同じである。
で表される、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基及びアリール基の炭素原子数及び具体例は、前述のArで表されるヘテロアリーレン基が有していてもよい、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基及びアリール基の炭素原子数及び具体例と同じである。
【0121】
で表されるエステル構造を有する基は、例えば、下記式(V)で表される基が挙げられる。
【0122】
【化50】

【0123】
式(V)中、u1は、1〜6の整数を表す、u2は、0〜6の整数を表す、Rは、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【0124】
で表されるフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の炭素原子数及び具体例は、前述のArで表されるヘテロアリーレン基が有していてもよい、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の炭素原子数及び具体例と同じである。
【0125】
60フラーレンの誘導体の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0126】
【化51】

【0127】
70フラーレンの誘導体の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0128】
【化52】

【0129】
また、フラーレン誘導体の例としては、[6,6]フェニル−C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]-Phenyl C71 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]-Phenyl C85 butyric acid methyl ester)、[6,6]チエニル−C61酪酸メチルエステル([6,6]-Thienyl C61 butyric acid methyl ester)が挙げられる。
【0130】
活性層中に本発明の化合物の製造方法で得られる式(3)で表される構造単位を含む化合物とフラーレン誘導体とを含む場合、フラーレン誘導体の割合が、本発明の化合物の製造方法で得られる式(3)で表される構造単位を含む化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、20重量部〜500重量部であることがより好ましい。
【0131】
活性層の厚さは、通常、1nm〜100μmが好ましく、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、特に好ましくは20nm〜200nmである。
【0132】
活性層の製造方法は、如何なる方法で製造してもよく、例えば、高分子化合物と溶媒とを含む溶液用いる成膜方法、真空蒸着法による成膜方法が挙げられる。
【0133】
<光電変換素子の製造方法>
光電変換素子の好ましい製造方法は、第1の電極と第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に活性層を有する素子の製造方法であって、該第1の電極上に本発明の化合物の製造方法で得られる、式(3)で表される構造単位を含む化合物と溶媒とを含む溶液(インキ)を塗布する塗布法により塗布成膜して活性層を形成する工程、該活性層上に第2の電極を形成する工程を有する素子の製造方法である。
【0134】
溶液を用いる塗布法に用いられる溶媒は、本発明の化合物の製造方法で得られる、式(3)で表される構造単位を含む化合物を溶解させるものであればよい。該溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒が挙げられる。本発明の化合物の製造方法で得られる、式(3)で表される構造単位を含む化合物は、通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0135】
溶液を用いて成膜する場合、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットコート法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スリットコート法、キャピラリーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ノズルコート法、インクジェットコート法、スピンコート法が好ましい。
成膜性の観点からは、25℃における溶媒の表面張力が15mN/mより大きいことが好ましく、15mN/mより大きく100mN/mよりも小さいことがより好ましく、25mN/mより大きく60mN/mよりも小さいことがさらに好ましい。
【0136】
<有機薄膜トランジスタ>
本発明の化合物の製造方法で得られる、式(3)で表される構造単位を含む化合物は、有機薄膜トランジスタにも用いることができる。有機薄膜トランジスタとしては、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となる有機薄膜として形成される有機半導体層(活性層)と、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを備えた構成を有するものが挙げられる。このような有機薄膜トランジスタとしては、電界効果型有機薄膜トランジスタ、静電誘導型等有機薄膜トランジスタが挙げられる。
【0137】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。
特に、ソース電極及びドレイン電極が、有機半導体層(活性層)に接して設けられており、さらに有機半導体層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられている構造を有することが好ましい。電界効果型有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層が、本発明の化合物の製造方法で得られる、式(3)で表される構造単位を含む化合物を含む有機薄膜によって構成される。
【0138】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機薄膜として形成される有機半導体層(活性層)、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、このゲート電極が有機半導体層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層中に設けられたゲート電極が、有機半導体層に接して設けられていることが好ましい。ここで、ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、且つゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。静電誘導型有機薄膜トランジスタにおいても、有機半導体層が、本発明の化合物の製造方法で得られる、式(3)で表される構造単位を含む化合物を含む有機薄膜によって構成される。
【0139】
上記の有機薄膜トランジスタに用いられる式(3)で表される構造単位を含む化合物は、高分子化合物であることが好ましい。
【0140】
<素子の用途>
本発明の方法で得られる式(3)で表される構造単位を含む化合物を用いた光電変換素子は、透明又は半透明の電極側から太陽光等の光を入射させることにより、電極間に光起電力を発生させ、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0141】
また、電極間に電圧を印加した状態、あるいは無印加の状態で、透明又は半透明の電極側から光を入射させ、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
上述の有機薄膜トランジスタは、例えば電気泳動ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の画素の制御、画面輝度の均一性、画面書き換え速度の制御のために用いられる画素駆動素子等として用いることができる。
【0142】
<太陽電池モジュール>
有機薄膜太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとり得る。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂、保護ガラス等で覆い、支持基板側とは反対側から光を入射させる構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を入射させる構造とすることもできる。太陽電池モジュールのモジュール構造としては、具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基板一体型モジュール構造等が知られている。本発明の化合物の製造方法で得られる、式(3)で表される構造単位を含む化合物を用いて製造される有機薄膜太陽電池も使用目的、使用場所及び環境により、適宜これらのモジュール構造を選択できる。
【0143】
代表的なスーパーストレートタイプあるいはサブストレートタイプの太陽電池モジュールは、片側又は両側が透明で反射防止処理を施された支持基板の間に一定間隔にセルが配置され、隣り合うセル同士が金属リード又はフレキシブル配線等によって接続され、外縁部に集電電極が配置されており、発生した電力を外部に取り出される構造となっている。基板とセルの間には、セルの保護性向上、集電効率向上のため、目的に応じエチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフィルム状又は充填樹脂の形で用いてもよい。また、太陽電池モジュールを外部からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必要のない場所において使用する場合には、表面保護層を透明プラスチックフィルムで構成し、又は上記充填樹脂を硬化させることによって保護機能を付与し、片側の支持基板をなくしてもよい。
【0144】
支持基板の周囲は、内部の密封及びモジュールの剛性を確保するため金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームとの間は封止材料で密封シールする。また、セル自体、支持基板、充填材料及び封止材料に可撓性の素材を用いれば、曲面上に太陽電池を構成することもできる。
【0145】
ポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いた太陽電池の場合、ロール状の支持体を送り出しながら順次セルを形成し、所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより電池本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells, 48,p383-391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。更に、フレキシブル支持体を用いた柔軟性を有する太陽電池は曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
【0146】
<有機EL素子>
本発明の化合物の製造方法で得られる、式(3)で表される構造単位を含む化合物は、有機EL素子に用いることもできる。有機EL素子は、第1の電極と第2の電極との間に発光層を有する。有機EL素子は、発光層の他の機能層として、正孔輸送層、電子輸送層を含んでいてもよい。該発光層、正孔輸送層、電子輸送層のうちのいずれの層中に含み得る機能性材料としても本発明の化合物の製造方法で得られる、式(3)で表される構造単位を含む化合物を用いることができる。発光層中には、本発明の方法で得られる式(3)で表される構造単位を含む化合物の他にも、電子輸送材料及び正孔輸送材料(これらを総称して電荷輸送材料と称する場合がある)を含んでいてもよい。有機EL素子の構成例としては、陽極と発光層と陰極とを有する素子、さらに陰極と発光層との間に、該発光層に隣接して電子輸送材料を含有する電子輸送層を有する陽極と発光層と電子輸送層と陰極とを有する構成、陽極と発光層との間に、該発光層に隣接して正孔輸送材料を含む正孔輸送層を有する、陽極と正孔輸送層と発光層と陰極とを有する構成、さらには陽極と正孔輸送層と発光層と電子輸送層と陰極とを有する構成等が挙げられる。第1の電極と第2の電極とのうちの少なくとも一方は、透明又は半透明であることが好ましい。
【0147】
上記の有機EL素子に用いられる式(3)で表される構造単位を含む化合物は、高分子化合物であることが好ましい。
【実施例】
【0148】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示す。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0149】
(NMR測定)
NMR測定は、化合物を重クロロホルムに溶解させ、NMR装置(Varian社製、INOVA300)を用いて行った。
【0150】
(数平均分子量及び重量平均分子量の測定)
数平均分子量及び重量平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(島津製作所製、商品名:LC−10Avp)によりポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。測定される高分子化合物は、約0.5重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに30μL注入した。GPCの移動相はテトラヒドロフランを用い、0.6mL/分の流速で流した。カラムは、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本を直列に繋げた。検出器には示差屈折率検出器(島津製作所製、商品名:RID−10A)を用いた。
【0151】
参考例1
(化合物1の合成)
下記のスキームにしたがって、化合物1を合成した。
【0152】
【化53】

【0153】
内部の雰囲気をアルゴン置換した容量1000mLの4つ口フラスコに、3−ブロモチオフェンを13.0g(80.0mmol)と、ジエチルエーテルを80mL入れて均一な溶液とした。該溶液を−78℃に保ったまま2.6Mのn−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液を31mL(80.6mmol)滴下した。−78℃で2時間反応させた後、反応液に3−チオフェンアルデヒド8.96g(80.0mmol)とジエチルエーテル20mLとに溶解させた溶液を滴下した。滴下後、反応液を−78℃で30分間攪拌し、さらに室温(25℃)で30分間攪拌した。反応溶液を再度−78℃に冷却し、2.6Mのn−BuLiのヘキサン溶液62mL(161mmol)を15分間かけて滴下した。滴下後、反応液を−25℃で2時間攪拌し、さらに室温(25℃)で1時間攪拌した。その後、反応液を−25℃に冷却し、ヨウ素60g(236mmol)をジエチルエーテル1000mLに溶解させた溶液を30分間かけて滴下した。滴下後、室温(25℃)で2時間攪拌し、1規定のチオ硫酸ナトリウム水溶液50mLを加えて反応を停止させた。ジエチルエーテルで反応生成物を抽出した後、硫酸マグネシウムで反応生成物を乾燥させ、ろ過後、ろ液を濃縮して35gの粗生成物を得た。クロロホルムを用いて粗生成物を再結晶することにより精製し、化合物1を28g得た。
【0154】
参考例2
(化合物2の合成)
下記のスキームにしたがって、化合物1から化合物2を合成した。
【0155】
【化54】

【0156】
容量300mLの4つ口フラスコに、上記参考例1で合成された化合物1:ビスヨードチエニルメタノールを10.5g(23.4mmol)と、塩化メチレンを150mLとを加えて均一な溶液とした。該溶液にクロロクロム酸ピリジニウムを7.50g(34.8mmol)加えて室温(25℃)で10時間攪拌した。反応液をろ過して不溶物を除去後、ろ液を濃縮し、化合物2を10.0g(22.4mmol)得た。
【0157】
参考例3
(化合物3の合成)
下記のスキームにしたがって、化合物2から化合物3を合成した。
【0158】
【化55】

【0159】
内部の雰囲気をアルゴン置換した容量300mLのフラスコに、参考例2で合成された化合物2を10.0g(22.4mmol)と、銅粉末を6.0g(94.5mmol)と、脱水DMFを120mLと加えて、120℃で4時間攪拌した。反応後、フラスコを室温(25℃)まで冷却し、反応液をシリカゲルカラムに通して不溶成分を除去した。その後、反応液に水を500mL加え、クロロホルムで反応生成物を抽出した。クロロホルム溶液である油層を硫酸マグネシウムで乾燥し、油層をろ過し、ろ液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(展開液:クロロホルム)で精製し、化合物3を3.26g得た。化合物2から化合物3を得るまでの操作を複数回繰り返し行った。
【0160】
参考例4
(化合物4の合成)
下記のスキームにしたがって、化合物3から化合物4を合成した。
【0161】
【化56】

【0162】
メカニカルスターラーを備え、フラスコ内の気体をアルゴンで置換した300mL4つ口フラスコに、参考例3で合成した化合物3を3.85g(20.0mmol)、クロロホルムを50mL、トリフルオロ酢酸を50mL入れて均一な溶液とした。該溶液に過ホウ酸ナトリウム1水和物を5.99g(60mmol)加え、室温(25℃)で45分間攪拌した。その後、反応液に水200mLを加え、さらにクロロホルムを加え、反応生成物を含む有機層を抽出した。クロロホルム溶液である有機層をシリカゲルカラムに通し、エバポレーターでろ液の溶媒を留去した。メタノールを用いて残渣を再結晶し、化合物4を534mg得た。
【0163】
H NMR in CDCl(ppm):7.64(d、1H)、7.43(d、1H)、7.27(d、1H)、7.10(d、1H)
【0164】
参考例5
(化合物5の合成)
下記のスキームにしたがって、化合物4から化合物5を合成した。
【0165】
【化57】

【0166】
フラスコ内の雰囲気をアルゴンで置換した容量100mLの四つ口フラスコに、化合物4を1.00g(4.80mmol)と、脱水THFを30mLとを入れて均一な溶液とした。溶液を−20℃に保ちながら、1Mの3,7−ジメチルオクチルマグネシウムブロミドのエーテル溶液を12.7mL加えた。その後、30分間かけて温度を−5℃まで上げ、そのまま30分間攪拌した。その後、10分間かけて温度を0℃に上げ、そのまま1.5時間攪拌を行った。その後、反応液に水を加えて反応を停止させ、酢酸エチルを加えて反応生成物を含む有機層を抽出した。酢酸エチル溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、酢酸エチル溶液をシリカゲルカラムに通し、ろ液の溶媒を留去し、化合物5を1.50g得た。
【0167】
H NMR in CDCl(ppm):8.42(b、1H)、7.25(d、1H)、7.20(d、1H)、6.99(d、1H)、6.76(d、1H)、2.73(b、1H)、1.90(m、4H)、1.58‐1.02(b、20H)、0.92(s、6H)、0.88(s、12H)
【0168】
参考例6
(化合物6の合成)
下記のスキームにしたがって、化合物5から化合物6を合成した。
【0169】
【化58】

【0170】
フラスコ内の雰囲気をアルゴンで置換した容量200mLのフラスコに、化合物5を1.50gと、トルエンを30mLとを入れ、均一な溶液とした。該溶液にp−トルエンスルホン酸ナトリウム1水和物を100mg入れ、100℃で1.5時間攪拌を行った。反応液を室温(25℃)まで冷却後、水を50mL加え、さらにトルエンを加え、反応生成物を含む有機層を抽出した。トルエン溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた粗生成物を溶媒がヘキサンであるシリカゲルカラムで精製し、化合物6を1.33g得た。化合物5から化合物6を得るまでの操作を複数回繰り返し行った。
【0171】
H NMR in CDCl(ppm):6.98(d、1H)、6.93(d、1H)、6.68(d、1H)、6.59(d、1H)、1.89(m、4H)、1.58‐1.00(b、20H)、0.87(s、6H)、0.86(s、12H)
【0172】
参考例7
(化合物7の合成)
下記のスキームにしたがって、化合物6から化合物7を合成した。
【0173】
【化59】

【0174】
フラスコ内の雰囲気をアルゴンで置換した容量200mLのフラスコに、化合物6を1.33g(2.80mmol)と、脱水DMFを20mLとを入れて均一な溶液とした。該溶液を−30℃に保ち、コハク酸イミド(NBS)を1040mg(5.84mmol)加え、30分間かけて温度を−30℃から−10℃に上昇させた。液体クロマトグラフィー(LC)で化合物6の消失を確認後、反応液に1Mチオ硫酸ナトリウム水溶液50mlを加えて反応を停止させた。反応液にエーテルを加え、反応生成物を含む有機層を抽出した。エーテル溶液である有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。その後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後、溶媒を留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物を溶媒がヘキサンであるシリカゲルカラムで精製し、化合物7を1.65g(93%)得た。
【0175】
H NMR in CDCl(ppm):6.66(1H)、6.63(1H)、1.90(m、4H)、1.56‐1.02(b、20H)、0.87(s、6H)、0.85(s、12H)
【0176】
実施例1
【0177】
【化60】

【0178】
フラスコ内の雰囲気をアルゴン置換した四つ口フラスコに、参考例7で合成した化合物7を434mg(0.686mmol)と、化合物8(CHEMSTEP社製)を105mg(0.673mmol)と、DMFを10mLとを加え、得られたDMF溶液をアルゴンで30分間バブリングした。その後、トルエン溶液にトランス−ビス(アセテート)ビス[o−(ジ−o−トルイルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)(trans-Bis(acetato)bis[o-(di-o-tolylphosphino)benzyl]dipalladium(II))を9.66mgと、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(Tris(2−methoxyphenyl)phosphine)を12.5mgと、炭酸セシウムを512mgとを加え、100℃で16時間攪拌を行った。反応後、高速液体クロマトグラフィで反応液を分析したところ、原料がすべて消費されていることを確認した。反応後、反応液を25℃に冷却し、水を50mL加えた。得られた混合液にクロロホルム20mLを加えてクロロホルム層を抽出した。このクロロホルム層の抽出操作は2回繰り返して行った。その後、クロロホルム層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。その後、ろ液を濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラム(溶出液はヘキサン:クロロホルム=2:1(vol/vol))で精製し、反応生成物を320mg得た。シリカゲルカラムの溶出液には、ヘキサンとクロロホルムとをクロロホルムの容積に対するヘキサンの容積比が2となるように混合した混合溶液を用いた。得られた反応生成物をGPCで測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量は2240であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3290であった。
【0179】
19F NMR in CDCl(ppm):−117.5
H NMR in CDCl(ppm):7.53(b)、7.02(b)、2.27(b)、1.57(b)、1.23(b)、0.872(b)
【0180】
NMRの測定結果から、得られた反応生成物は下記の構造を分子中に有していることがわかった。
【0181】
【化61】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

(式(1)中、Arは、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基で置換されていてもよいヘテロアリーレン基を表す。Hは、水素原子を表す。)
で表される化合物と、
下記式(2):
【化2】

(式(2)中、Arは、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基で置換されていてもよいヘテロアリーレン基を表す。Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。2個あるXは、同一でも相異なってもよい。)
で表される化合物とを反応させる、
下記式(3):
【化3】

(式(3)中、Ar及びArは、前述と同じ意味を表す。nは、1以上の数を表す。)
で表される構造単位を含む化合物の製造方法。
【請求項2】
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを、遷移金属化合物の存在下で反応させる、請求項1に記載の化合物の製造方法。
【請求項3】
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを、塩基性化合物の存在下で反応させる、請求項1又は2に記載の化合物の製造方法。
【請求項4】
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを、ホスフィン化合物の存在下で反応させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
Arが、1個〜3個の電子吸引性の置換基を有しているヘテロアリーレン基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物の製造方法。
【請求項6】
電子吸引性の置換基が、フッ素原子である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
Arが、下記式(5)で表される基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【化4】

[式(5)中、Ar13及びAr14は、それぞれ独立に、芳香族複素環式化合物又は芳香族炭素環化合物から水素原子を3個取り除いた基を表し、該芳香族複素環式化合物及び芳香族炭素環化合物のうちの少なくとも一方は、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基若しくは1価の有機基で置換されていてもよい。ただし、Ar13及びAr14のうちの少なくとも一方は、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基若しくは1価の有機基で置換されていてもよい芳香族複素環式化合物から水素原子を3個取り除いた基である。Aは、下記式(4−1)〜式(4−12)で表される2価の基を表す。
【化5】

(式(4−1)〜式(4−12)中、R〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は1価の有機基を表す。)]
【請求項8】
Arが、チオフェン環構造を含むヘテロアリーレン基である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物の製造方法により、得ることができる化合物。
【請求項10】
質量分析法で求めた化合物中のスズの含有量と化合物中のホウ素の含有量との和が、1重量ppm未満である、請求項9に記載の化合物。

【公開番号】特開2012−232947(P2012−232947A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103575(P2011−103575)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】