説明

化合物を質量分析によって検出する方法および装置

ここに記載されているのは、ガス流(2)における化合物を質量分析によって検出する方法である。この方法には、化合物のイオンを形成してガス流(2)における体積ユニットをイオン化することが含まれており、ここでこのイオン化は、ガス流と交わるビーム(9,10)を介して行われ、これらのビームは、電子パルスまたは電子パルス列および光子パルスまたは光子パルス列が交互に切り換わることによって形成される。またこの方法には、電場(13)によってイオンを進路変更して質量分析法を実施することならびに質量分析法によってイオンを検出することが含まれる。本発明の課題は、上記のような方法を提案して、測定範囲を拡げ、分解能を格段に改善することである。この課題は、上記の光子パルスまたは光子パルス列をエキシマランプ(11)によって形成し、電子パルスまたは電子パルス列と、光子パルスまたは光子パルス列との切り換えを50Hz以上の切換替え周波数で行うことによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1および11にそれぞれ記載されたガス流における化合物を質量分析によって検出する方法および装置に関する。
【0002】
ガス試料は、多数の原子、分子および化合物から構成されることがある。質量分析による検出の枠内において試料のイオン化は、光子ビームおよび/または電子ビームを介して行われ、ここではビームの種類および強度に応じて、種々異なる原子、分子または化合物の選択的なイオン化または分子および化合物のフラグメンテーションが行われ得る。形成されたイオンは電場によって進路変更されて質量分析による検出器に導かれるのである。
【0003】
UVレーザパルス(光子ソフトイオン化)を使用して例えば芳香族化合物を選択的にイオン化する共鳴多光子イオン化法(REMPI resonance- enhanced multiphoton ionization)は、質量分析法に対する選択的かつソフトなイオン化法として使用される。この選択性は、殊にソフトな紫外分光特性およびイオン化ポテンシャルの状態によって決定される。REMPI法における欠点は、これがいくつかの物質クラスに制限されることであり、または類似の化合物であってもイオン化断面積(Ionisationsquerschnitt)が部分的に大きく異なり得ることである。
【0004】
VUVレーザ光による単光子イオン化(SPI single photon ionization)によって部分選択的でソフトなイオン化を行うことも可能である。この選択性は、イオン化ポテンシャルの状態によって決まる。典型的な適用例は、REMPIで検出できない化合物の検出である。このSPI法における欠点は、ここでもやはりいくつかの物質クラスが検出できないことである。さらに上記の選択性は、REPMI法における選択性よりも小さいため、複合的な試料では干渉が大きく生じ得ることである。
【0005】
これに対して非選択性ではあるが、電子ビームによるフラグメンテーションを発生させる電子衝突イオン化法(EI)は、殊に揮発性の無機および有機化合物の質量分析法においてイオン化を行うための標準手法である。電子衝突イオン化は、すべての物質に作用し(すなわち非選択性であり)、多くの分子において極めて強いフラグメンテーションを発生させることが多い。この方法は、UVまたはVUVビーム(SPI,REMPI)による上記の光子イオン化によって検出が困難な化合物(例えばO2, N2, CO2, SO2, CO, C2H2など)の検出に殊に有利である。
【0006】
しかしながら多数の化合物からなるガス試料をSPI法でイオン化する際には、多数の化合物が同じ質量でイオン化され、したがって質量分析では分析できないことがあり得る。多数の化合物を有するガス試料をEIイオン化する際には、多数の化合物が同じ質量および/または類似のフラグメンテーションパターンでイオン化され、この手法でも個々の化合物が分析できないことがあり得る。ここまでの点においては、化合物を事前に選択するためにガスクロマトグラフキャピラリ(GCキャピラリ)によってガス試料を導いて、イオン化室に入れる前にガス流において化合物間に時間のずれを生じさせることが考えられる。ここでこの時間のずれは、逆にたどることができまた個々の化合物に対応付けることのできる時間のずれである。
【0007】
上記の複数の照射法から出発してDE 100 14 847 A1には、ガス流から化合物を検出するテクノロジが提案されており、ここでは上記のSPIおよびREMPIイオン化からなる組み合わせが利用される。ここではREMPIおよびSPIイオン化パルス(UVないしはVUVレーザパルス)によって連続的なガス流が交互に照射され、ここではパルス毎に、固有の閉じた体積要素(Volumenelement)がイオン化されて質量分析計に供給される。すべてのレーザパルスは、固体レーザと、部分的に変更も可能な多数の光学素子とを有する構造によって形成される。
【0008】
しかしながらこのテクノロジでは選択的な照射法だけが使用されるため、電子ビームを介してしかイオン化できない所定の物質は検出できない。さらにここではイオンはもっぱらレーザパルスだけによって飛行時間形質量分析計の軸上に形成される。ここでは連続的なイオン源は使用できないのである。
【0009】
またUVまたはVUVビームを形成するために使用される固体レーザは、極めて制限された50Hz程度の繰り返し速度しか有しない。しかしながらガス流の化合物を前もってCGキャピラリで事前に選択する場合には、ガス流組成の変化が、典型的には極めて短時間の濃度ピークが予想されるため、時間的な分解能を高めまた冗長な測定を高速で連続させなければならない。これに対して上記の繰り返し速度の高さはもはや不十分であり、測定誤りが生じてしまうのである。
【0010】
さらにふつうの固体レーザ、すなわち周波数可変でない固体レーザにより、1つの波長しか形成されないため、複数の光学素子を有し上記のようにコストのかかる構造が必要になってしまうのである。
【0011】
これらのことから出発して本発明が課題とするのは、ガス流から化合物を検出する方法および装置を提供して、測定範囲を広くしかつ時間的な分解能力を格段に高くすることである。
【0012】
この課題は、ガス流における化合物を質量分析によって検出する請求項1に記載した方法および請求項11に記載した装置によって解決される。従属請求項には本発明の有利な実施形態が記載されている。
【0013】
この方法には化合物のイオンを形成してガス流の体積ユニット(Volumeneinheiten)をイオン化することが含まれている。このイオン化は、ガス流と交差するビームを介して行われ、ここでこのビームは、電子パルスおよび光子パルスまたはこれらのパルス列(すなわち電子パルスまたは電子パルス列および光子パルスまたは光子パルス列)が交互に切り換わることによって形成される。上記の体積ユニットとは、閉じたガス流部分のことであり、このガス流部分は、ガス流および時間から決まる体積の広がりによって、このガス流に交差する都度アクティブなビームの浸透度を定める。このガス流は連続しており(すなわち流れに中断がない)、また供給管から、有利にはキャピラリからガス流とビームとの間の交差領域に導かれる。
【0014】
ここで重要であるのは、電子パルスおよび光子パルスまたはこれらパルス列の交互の切り換えに対してクロック周波数が高く50Hz以上、有利には100Hz以上になることである(光子パルスと電子パルスとの間の切り換えの切換周波数)。さらに、上記の切り換えの間にVUVビームまたは電子によって連続的に(パルスとして)または150kHzまでの周波数、有利には100kHzまでの周波数(パルス列として、繰り返し速度)でガス流を照射すると有利である。殊に、例えばエキシマレーザのようなレーザによる光子パルス列の形成は極めて制限される。すなわち、格段に低い周波数(最大で約4kHzまでのレーザ繰り返し速度)でしか可能にならないのである。確かにレーザは、UV領域(λ>193nm)までにおいて極めて高エネルギーでかつ良質に単色の光子ビームを形成するのには殊に適しているが、ガラスおよび結晶(Kristal)における透過特性が良好でないことに起因してVUV領域(λ<157nm)において光子を形成するのには適していない。したがって本発明の別の重要な特徴には、有利には電子ビームポンピング形のエキシマランプにより、真空UV光子パルス(VUV)を形成する手段が含まれる。電子ビームポンピング形エキシマランプは、極めて良好な光スポットを有している。すなわちこのエキシマランプは、点状でありひいては良好に集束可能な光子ビームを形成し、この点が放電形エキシマランプとは異なるのである。さらに電子ビームポンピング形エキシマランプにより、一層精度の高い単色の放射スペクトルが形成される。
【0015】
ガスが充填された空間では、加速された電子との衝突によって、エネルギー的に励起された希ガス原子または希ガス分子(例えばAr+,Kr+またはNeH2)が形成され、これらの電子は、ガスの充填圧に依存して希ガス原子またはハロゲン原子と反応してエキシマ(「励起された2量体(excited dimer)」)またはエキシプレクス(「励起された錯体(excited complex)」)になる。発光は、上記のエキシマが自然崩壊する際に150nm以下(例えばAr+,λmax = 126 nm,Kr+,λmax = 150nm)の所定の特徴的な波長で行われるか、ないしはエキシプレクスが自然崩壊する際に150nm以下(NeH2,λmax, = 121.6 nm)の所定の特徴的な波長で行われ、数ナノ秒程度のこれらの平均寿命が主因となって上記の最大の繰り返し速度が可能になるのである。
【0016】
エキシマランプによって確かにVUVビームが連続的に形成されるか、または繰り返し速度を有するパルス列が形成されるが、共鳴多光子イオン化法(REMPI)用にはUV領域における強度が弱すぎるため、上記の方法の極めて大きな制限(すなわちSPI-EIの組み合わせに対して)が予想され得るのである。多数の同じ個別パルスと、これによって得られる多数の冗長な個別測定値とを用いる上記の光子パルス列により、統計的な手段によって、検出感度を格段に改善することができる。
【0017】
上記の質力分析計に対する電場のトリガと、パルスおよびパルス列のクロック周波数と、パルス列の繰り返し速度とを得るため、上記の装置には切換装置(トリガ回路)が含まれており、これは有利には高速のプロセスコンピュータベースである。
【0018】
切り換えの間に連続してイオン化する際に重要であるのは、質量分析計(飛行時間形質量分析計)のイオン排出領域を通してイオン流を連続して導いて、ここで高い頻度でイオンパケットを質量分析計に抽出することである。
【0019】
イオン化に続き、イオン(イオン化された化合物および化合物のフラグメンテーション)を電場(イオン排出場)によって質量分析システムの方に向かって進行方向変更して、これらのイオンを質量分析方法によって検出する。このイオン化は有利には電場において直接行われる。
【0020】
しかしながらここで重要であるのは、殊に使用するエキシマランプの光子パルス強度が比較的弱くまた上述のようにクロック周波数を高くした状態で、光子パルスおよび電子パルスに対して時間をずらして上述のクロック周波数でクロック制御して上記の電場を起動することである。
【0021】
短いパルスおよびビームからのイオンの所定の排出によって、有利にも質量分析計(飛行時間質力分析計)において格段に改善された質量分析が得られる。これに対し、高いクロック周波数により、質量分析を時間的に改善することができる。本発明では、例えば、複数の個別測定値の傾向を表すこと、複数の個別スペクトルの個別データを平均化することならびに時間について個別測定値を積分することの可能性、すなわち格段に拡張した形で個別に評価することの可能性も示されている。
【0022】
上記の電子パルスまたは光子パルスによってイオン化されないガス流成分は、電場において中性的に振る舞って進路も変更されない。これらのガス流成分は、上記の電場における排出の後、別のエネルギー密度または波長の第2の電子パルスまたは光子パルス(第2ビーム)が加えられて新たにイオン化される。ここで発生したイオンは、第2の電場(イオン排出場)において質量分析システムの方に向かって進路変更することができ、質量分析法によってイオンが検出される。この方法ステップは、続けて2回以上適用することができる。ここでは有利にも相応する制御またはパルストリガを介して保証されるのは、第2ビームにより、上記の体積ユニットの体積領域だけが検出されることである。
【0023】
ガス流の組成が決まっている分析に対してはさらに、イオン化の前に化合物をあらかじめ選択することおよびキャピラリをGCキャピラリとして構成するのが有利である。
【0024】
別の有利な実施形態では、小さな半径で曲げられた(engradig)ガス流迂回管路を介し、例えばガス流分岐路を有するキャピラリにおいて、比較的軽い化合物と、比較的重い化合物とが重量によって2つのガス流部分流(分離ノズル)に分離される。各ガス部分流は、上記の方法によって別個に分析可能である。
【0025】
垂直方向にイオンを形成する質量分析計(TOF)に関連する方法および装置の相応する関連事項も本発明の枠内にある。ここでは上記の方式においてガス流のイオンは、光子および電子パルスまたはこれらのパルス列によって形成されるが、パルス制御されたイオン排出場において直接行われるのではなく、イオン排出場の前のガス流において行われる。このイオン排出場に入る前、イオンは静電式イオンレンズによって導かれてイオンが集束される。この集束の利点は、電気的な排出場に到達した際にイオンの密度が高くまた位置が精確であり、ひいては分離が精確に行われるないしは質量分析が良好に行われることである。これは殊に連続して照明を行うエキシマランプを使用する際には大きな改善になる。
【0026】
以下ではつぎの図を用い、実施例に即して本発明を詳しく説明する。ここで、
図1は、本発明の1実施形態(GC−EI−SPI−装置)の基本構造を示しており、また
図2は、切換装置(トリガ回路)のトリガ信号および質量分析によって検出した信号の時間的な経過を示している。
【0027】
図1に示した実施例による、ガス流から化合物を検出する装置には、ガス排出開口部4にアース3を有する、ガス流2に対する供給管1が含まれている。この供給管1にはガスクロマトグラフキャピラリ(GCキャピラリ5)と、ガスインレット6と、ガスアウトレット7とが含まれている。ガス排出部を出た後、ガス流はイオン化領域8に流れる。このイオン化領域8は、イオン化方式に応じて、ガス流2ならびに光子パルスビーム9または電子パルスビーム10が通過する体積体(Durchdringungsvolumen)にわたって延在している。これらのイオン化領域において体積ユニットのそれぞれのイオン化が行われる。ここではガス流、光子パルスビームおよび電子パルスビームが有利にはただ1つの交点で交わり、上記の2つのイオン化方式に対するイオン化領域が、技術的に可能な限りに一致するようにする。
【0028】
さらに上記の装置は、光子パルスないしは電子パルスまたはパルス列を形成するための手段としてのエキシマランプ11および電子銃12(光子ビーム源ないしは電子ビーム源)を有しており、これらの手段によってガス流の体積ユニットがイオン化されて化合物のイオンが形成される。ここで上記のパルスまたはパルス列は、上で述べたように光子パルスビームないしは電子パルスビーム9ないしは10としてイオン化領域8においてガス流2と交わる。
【0029】
イオン化領域8は、2つの加速電極の間のパルス毎にアクティブ化およびデアクティブ化可能な電場の作用領域13にあり、これらの電極は、イオンを検出する質量分析システムの(正に帯電された)リペラ電極14および(負に帯電された)抽出電極15である。これらのイオンは、上記の電場により抽出電極の方向に加速され、抽出電極の中央に配置された抽出電極開口部17を通ってガス流2から進路変更されるのである。この質量分析システムは、有利には飛行時間質量分析計から構成されており、この質量分析計によって検出されるのは、電場に対するスイッチオンパルスの高さ(Einschaltimpulshoehe)およびスイッチオンパルス時間を介して定められてこの電場において加速されたイオンが、イオン検出器18に至るまでの移動時間である。ここではイオンの排出された電荷の検出は、後置接続されかつふつうはPCに支援されたデータ評価ユニット19を介して行われる。検出されるイオンの質量はふつう飛行時間が異なることによって決定され(小さな質量体はより速く加速され)、また典型的には5〜100マイクロ秒の範囲で運動する。本発明の場合、これは20KHzまでの繰り返し率によって可能になる。
【0030】
光子パルスおよび電子パルスまたはパルス列を交互に切り換える図1に示していない切換装置は、50Hz以上、有利には約200Hzの切換周波数を有する。有利には上記のデータ評価ユニットも含んでいるPCまたはプロセス計算機をベースとするこの切換装置は、有利には個別パルスを制御するのにも使用され、ここでこれらの個別パルスは、上記のパルス列の枠内で繰り返されかつ有利には同じパルスである。さらにこの切換装置は、電場のアクティブ化するために使用される。このアクティブ化は、ビーム切換(光子ビームから中性子ビームまたはこの逆)の後の最初のパルスに対して所定の時間だけずらして開始され、またこのパルスの後に切換周波数の周期が経過する前に終了する。すなわち、光子パルスまたは電子パルスまたはパルス列の最初のパルスで開始されるのである。
【0031】
切換装置(トリガ回路)のトリガ信号および質量分析法によって検出した信号の時間的な経過は、図2に例示されている。時間軸20は、連続する複数のシーケンス21〜25によって分割されている。各シーケンスは、電子パルスおよび光子パルスまたはそのパルス列の交互の切換に対するクロック周波数(切換周波数)の周期長を定性的に表している。垂直軸はトリガパスの高さ26を表しており、図示のトリガパルス経過A〜Eの各々に対する複数の時間軸20は、定性的にプロットしたトリガ信号(トリガ信号における「ハイ」)ないしはイオン検出器における検出器信号の各ゼロレベルを表している。
【0032】
トリガ信号経過Aは、電子銃に対するトリガパルスを表している。「ハイ」の位置では試料ガスに電子パルスまたは複数の電子パルス列が照射される。有利にはシーケンス(21,23,25)の間、この試料ガスに複数の電子ビームパルスが照射される。
【0033】
トリガ信号経過Bは、光子源に対するトリガパルス、すなわちVUVランプ(エキシマランプ)のトリガパルスを表している。「ハイ」の位置では試料ガスに光子パルス(VUV)または有利には複数の光子パルス列(VUV)が照射される。有利にはシーケンス(22,24)の間、この試料ガスに複数の光子パルスが照射される。
【0034】
トリガ信号経過Cは、電場(イオン排出場)に対するトリガパルスを表している。「ハイ」の位置では抽出電極とリペラ電極との間に1kVまでの範囲の、しかしながら有利には200〜1000Vのパルス状または連続した高電圧が加えられ、イオンが上述のように質量分析計(TOF)に排出される。このイオン排出場は、時間的にずらされて、ここでは光子または電子パルスまたはパルス列が終了してはじめてアクティブ化されると有利であるが、必ずしもこのようにする必要はない。
【0035】
トリガ信号経過Dは、データ検出に対するトリガパルスを表している。切換の位置に応じて、信号切換装置は、各パルス形式(例えばEIまたはSPI)に対してデータ検出を行うため、検出した検出器信号(信号経過Eによる質量スペクトル)を、例えば2つのデータ検出記憶装置および評価ユニット(例えば、殊にパルス列の場合は平均値形成のため)に導く。この信号経過は、個別のパルスから得られる検出器信号を表す。
【0036】
電子パルスおよび光子パルスからないしはこれらのパルス列によってイオンを質量分析によって決定するため、オプションとして、1つずつの個別の質量分析計において、イオン化された化合物の質量分析を行うことができる。ここでは上記の切換回路(信号経過D)は、電場の制御に使用され、上記の抽出電極および電極としてのリペラには、順番に符号が変わる高圧の電極が加えられ、またこれらの2つの電極には、それぞれイオン排出開口部(それぞれ抽出電極開口部として作用する)が設けられる。複数の質量分析計のうちの1つへのイオンの進路変更は、上記の電場の配向だけで行われる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の1実施形態(GC−EI−SPI−装置)の基本構造を示す図である。
【図2】切換装置(トリガ回路)のトリガ信号および質量分析によって検出した信号の時間的な経過を示す線図である。
【符号の説明】
【0038】
1 供給管、 2 ガス流、 3 アース、 4 ガス排出開口部、 5 GCキャピラリ、 6 ガスインレット、 7 ガスアウトレット、 8 イオン化領域、 9 光子パルスビーム、 10 電子パルスビーム、 11 エキシマランプ、 12 電子銃、 13 作用領域、 14 リペラ、 15 抽出電極、 16 質量分析システム、 17 抽出電極開口部、 18 イオン検出器、 19 データ評価ユニット、 20 時間軸、 第1シーケンス、 第2シーケンス、 第3シーケンス、 第4シーケンス、 第5シーケンス、 26 トリガパルスの高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流(2)における化合物を質量分析によって検出する方法において、
該方法は、
a) 前記の化合物のイオンを形成してガス流(2)の体積ユニットをイオン化するステップを有しており、ここで当該のイオン化は、イオン化領域(8)にて前記のガス流に交わるビーム(9,10)を介して行われ、該ビームは、電子パルスまたは電子パルス列および光子パルスまたは光子パルス列が交互に切り換わることによって形成され、
上記の方法はさらに
b)電場の作用領域(13)にてイオンの進路を変更して質量分析器に向かわせるステップと、
c) 質量分析法によってイオンを検出するステップを有しており、
c) 前記の光子パルスまたは光子パルス列をエキシマランプ(11)によって形成し、
e) 前記の電子パルスまたは電子パルス列と、光子パルスまたは光子パルス列との切り換えを50Hz以上の切換波数で行うことを特徴とする、
ガス流(2)における化合物を質量分析によって検出する方法。
【請求項2】
前記のイオン化を作用領域にて行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の作用領域に入る前にイオンをビームフォーマ電極によって集束する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記のイオン化の前にガス流を、ガスクロマトグラフィキャピラリ(5)を通して案内し、当該ガス量の種々異なる化合物を分離する、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記の光子パルスおよび電子パルスまたは各パルス列に対して時間をずらしかつクロック制御して前記の電場をアクティブ化し、
光子パルスおよび/また電子パルスまたはパルス列で始めて、切換周波数の周期が経過する前に当該のアクティブ化を終了する、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
電子パルスおよび光子パルスないしは当該パルスのパルス列によってイオン化された化合物に対して、前記の質量分析法を1つずつの個別の質量分析計にて行う、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記の複数の質量分析計のうちの1つ質量分析計へのイオンの進路変更を、前記の電場の配向によって行う、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記の質量分析法には、複数の個別スペクトルから個々の化合物を定量的に決定することが含まれている、
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記の定量的な決定には、化合物毎の個別測定値を時間について積分することが含まれている、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記の定量的な決定には、複数の個別スペクトルから平均値を形成することが含まれている、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ガス流における化合物を質力分析法によって検出する装置において、
該装置は、
a) 前記のガス流(2)に対する管路(1)と、
b) 前記の化合物のイオンを形成するためにガス流の体積ユニットをイオン化する光子パルスおよび電子パルスまたは光子パルス列または電子パルス列を形成する手段(11,12)とを有しており、
前記のパルスまたはパルス列は、ビーム(9,10)としてイオン化領域(8)にて前記のガス流と交わり、
上記の装置はさらに
c) 光子パルスおよび電子パルスまたは光子パルス列または電子パルス列を切換周波数で交互に切り換えてアクティブ化するための切換装置と、
d) イオンを検出するために質量分析システム(16)にイオンを進路変更する作用領域(13)を有する電場を有しており、ここで
e) 光子ビーム源はエキシマランプであり、
f) 前記の光子パルスおよび電子パルスまたは光子パルス列または電子パルス列に対して時間をずらして前記切換装置によってパルス毎に前記の電場をアクティブ化し、
g) 前記の切換周波数が50Hz以上であることを特徴とする、
ガス流における化合物を質力分析法によって検出する装置。
【請求項12】
前記のイオン化領域は、前記の電場の作用領域(13)にある、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記のイオン化領域(8)の間で前記の作用領域(13)外に当該作用領域によってガス流(2)が導かれ、また
イオン化領域と作用領域との間に少なくとも1つのビームフォーマ電極が配置されている、
請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記の管路(1)にはガスクロマトグラフキャピラリ(5)が含まれている、
請求項11から13までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記の光子パルスおよび/または電子パルスまたはパルス列で始めて、前記の切換周波数の周期が経過する前にパルスまたはパルス列毎の電場のアクティブ化を終了する、
請求項11から14までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記の質量分析システムには、電子パルスおよび光子パルスによってイオン化される化合物に対する個別の1つずつの質量分析計が含まれている、
請求項11から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記の切換装置は、前記の複数の質量分析計のうちの1つの質量分析計へのイオンの進路変更に応じて前記の電場を配向する制御部を有する、
請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−505082(P2009−505082A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526407(P2008−526407)
【出願日】平成18年8月5日(2006.8.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007773
【国際公開番号】WO2007/019982
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(596185130)ゲーエスエフ−フォルシュングスツェントルム フュア ウムヴェルト ウント ゲズントハイト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【住所又は居所原語表記】Ingolstaedter Landstrasse 1,D−85764 Neuherberg,Germany
【Fターム(参考)】