説明

化合物又はその塩

【課題】本発明の化合物又はその塩によれば、高い偏光度を示す偏光膜を製造することができる。
【解決手段】式(I)で表される化合物又はその塩。式(I)中、Dは、1〜3個のスルホ基を有するフェニル基又は1〜3個のスルホ基を有するナフチル基を表す。Xは、−CO−O−を表す。L及びLは、互いに独立に、炭素数1〜8のアルカンジイル基を表す。Rは、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。R2は、水素原子、シアノ基、又はカルバモイル基を表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基又はトリフルオロメチル基を表す。R4〜R7は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又はヒドロキシ基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光膜に用いられる染料として有用な化合物又はその塩に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクター等に用いられる偏光膜には、染料が用いられている。このような染料としては、例えば、下記式で表される化合物が知られている(特許文献1実施例2)。
【0003】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−13293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から知られる上記化合物を含む偏光膜は、偏光度について必ずしも十分に満足できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1]式(I)

[式(I)中、Dは、1〜3個のスルホ基を有するフェニル基、又は1〜3個のスルホ基を有するナフチル基を表し、該フェニル基及び該ナフチル基に含まれる水素原子は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されていてもよい。
は、−CO−O−を表す。
及びLは、互いに独立に、炭素数1〜8のアルカンジイル基を表す。
は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
2は、水素原子、シアノ基、又はカルバモイル基を表す。
は、炭素数1〜4のアルキル基又はトリフルオロメチル基を表す。
4〜R7は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又はヒドロキシ基を表す。]
で表される化合物又はその塩。
[2]Xが、*−O−CO−(*は、Lとの結合位置を表す。)である[1]記載の化合物又はその塩。
[3]R2が、シアノ基である[1]又は[2]記載の化合物又はその塩。
[4]Rが、炭素数3〜8の分枝鎖状アルキル基である[1]〜[3]のいずれか一項記載の化合物又はその塩。
[5][1]〜[4]のいずれか一項記載の化合物又はその塩を有効成分とする染料。
[6][5]記載の染料を偏光膜基材に含有してなる偏光膜。
[7]偏光膜基材が、ポリビニルアルコールフィルムである[6]記載の偏光膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明の化合物又はその塩によれば、偏光度の高い偏光膜を製造することできる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、式(I)で表される化合物(以下、化合物(I)ということがある。)又はその塩を提供するものである。
【0009】

【0010】
[式(I)中、Dは、1〜3個のスルホ基を有するフェニル基、又は1〜3個のスルホ基を有するナフチル基を表し、該フェニル基及び該ナフチル基に含まれる水素原子は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されていてもよい。
は、−CO−O−を表す。
及びLは、互いに独立に、炭素数1〜8のアルカンジイル基を表す。
は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
2は、水素原子、シアノ基、又はカルバモイル基を表す。
は、炭素数1〜4のアルキル基又はトリフルオロメチル基を表す。
4〜R7は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又はヒドロキシ基を表す。]
【0011】
炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の直鎖状アルキル基;
イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、イソペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、1−プロピルブチル基、1−(1−メチルエチル)ブチル基、1−(1−メチルエチル)−2−メチルプロピル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、6−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、1−n−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、1−(1−メチルエチル)ペンチル基、1−ブチルブチル基、1−ブチル−2−メチルブチル基、1−ブチル−3−メチルブチル基、1−(1,1−ジメチルエチル)ブチルブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、1−エチル−1−メチルブチル基、1−エチル−2−メチルブチル基、1−エチル−3−メチルブチル基、2−エチル−1−メチルブチル基、2−エチル−3−メチルブチル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1,2−ジメチルヘキシル基、1,3−ジメチルヘキシル基、1,4−ジメチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、2,3−ジメチルヘキシル基、2,4−ジメチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、3,4−ジメチルヘキシル基、3,5−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、4,5−ジメチルヘキシル基、1−エチル−2−メチルペンチル基、1−エチル−3−メチルペンチル基、1−エチル−4−メチルペンチル基、2−エチル−1−メチルペンチル基、2−エチル−2−メチルペンチル基、2−エチル−3−メチルペンチル基、2−エチル−4−メチルペンチル基、3−エチル−1−メチルペンチル基、3−エチル−2−メチルペンチル基、3−エチル−3−メチルペンチル基、3−エチル−4−メチルペンチル基、1−プロピル−1−メチルブチル基、1−プロピル−2−メチルブチル基、1−プロピル−3−メチルブチル基、1−(1−メチルエチル)−1−メチルブチル基、1−(1−メチルエチル)−2−メチルブチル基、1−(1−メチルエチル)−3−メチルブチル基、1,1−ジエチルブチル基、1,2−ジエチルブチル基等の分枝鎖状アルキル基が挙げられる。
【0012】
炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0013】
炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、2,3−ジメトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0014】
Dは、1〜3個のスルホ基を有するフェニル基、又は1〜3個のスルホ基を有するナフチル基を表し、該フェニル基及び該ナフチル基に含まれる水素原子は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されていてもよい。ただし、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換される水素原子として、スルホ基の水素原子は除く。
中でも、1又は2個のスルホ基を有するフェニル基、あるいは1又は2個のスルホ基を有するナフチル基が好ましい。
【0015】
Dとしては、例えば、式(g−1)〜式(g−8)で表される基等が挙げられる。式(g−1)〜式(g−8)中、*は、アゾ基との結合位置を表す。
【0016】

【0017】
は、*−CO−O−又は*−O−CO−であり、好ましくは*−O−CO−である(*は、Lとの結合位置を表す。)。Xがエステル結合であると、化合物(1)は水性媒体への溶解性が高くなる傾向があるため好ましい。
【0018】
は、炭素数1〜8のアルカンジイル基である。
炭素数1〜8のアルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基等が挙げられる。
【0019】
における炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基及びエチル基が好ましい。Rにおける炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としては、原料が入手しやすい点で、フェニル基が好ましい。Rとしては、メチル基及びエチル基がより好ましい。
【0020】
−L−X−Rとしては、例えば、式(f−1)〜式(f−6)で表される基等が挙げられる。式(f−1)〜式(f−6)中、*は、ピリドン環上の窒素原子との結合位置を表す。
【0021】

【0022】
は、水素原子、シアノ基、又はカルバモイル基である。中でも、シアノ基が、原料を入手しやすいため、好ましい。
【0023】
は、炭素数1〜4のアルキル基又はトリフルオロメチル基である。
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0024】
4〜R7は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又はヒドロキシ基を表す。高偏光度の点から、炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基がより好ましく、メチル基及びメトキシ基がさらに好ましい。
【0025】
化合物(I)としては、例えば、化合物(I−1)〜化合物(I−54)等が挙げられる。Yは、−L−X−Rを表す。表1中、Dは、上記に例示した基の式の番号を表し、Y欄は、上記に例示した基の式の番号を記す。
【0026】

【0027】
【表1】

【0028】

【0029】
中でも、ポリビニルアルコールフィルムを基材とする偏光膜において、高い偏光度を示すため、化合物(I−1)が好ましい。
【0030】
化合物(I)は、特公平7−88633号公報記載の方法、ジアゾニウム塩とピリドン化合物とをジアゾカップリングすることにより製造できる。
式(a2)で表されるジアゾニウム塩は、例えば、式(a1)で表されるアミンを、亜硝酸、亜硝酸塩又は亜硝酸エステルによりジアゾ化することによって得ることができる。
【0031】

【0032】
[式(a1)及び式(a2)中、D及びR4〜R7は、上記と同じ意味を表す。Aは、無機アニオン又は有機アニオンを表す。]
【0033】
前記無機アニオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン等が挙げられる。前記有機アニオンとしては、例えば、CH−COO、C−COOなどが挙げられる。好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、CH−COOである。
【0034】
が−O−CO−である化合物(I)、すなわち式(I−a)で表される化合物(以下「化合物(I−a)」ということがある)の製造方法について説明する。
【0035】

【0036】
[式(I−a)中、D、R〜R7及びLは、上記と同じ意味を表す。]
【0037】
式(a2)で表されるジアゾニウム塩と、式(b1)で表される化合物とを、水性溶媒中でジアゾカップリングすることにより、式(II−a)で表される化合物(以下「化合物(II−a)」ということがある)を製造することができる。反応温度は、−5℃〜60℃が好ましく、0℃〜30℃がより好ましい。反応時間は、1時間〜12時間が好ましく、1時間〜4時間がより好ましい。前記水性溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0038】

【0039】
[式(b1)及び式(II−a)中、D、R〜R7及びLは、上記と同じ意味を表す。]
【0040】
次いで、化合物(II−a)と式(b2)で表される化合物(以下「化合物(b2)」ということがある)とを、有機溶媒の存在下で反応させることで、化合物(I−a)を得ることができる。反応温度は、30℃〜180℃が好ましく、50℃〜120℃がより好ましい。反応時間は、1時間〜12時間が好ましく、1時間〜4時間がより好ましい。
【0041】

【0042】
[式(b2)中、Rは上記と同じ意味を表す。Zは塩素原子又は臭素原子を表す。]
【0043】
前記有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ニトロベンゼンなどのニトロ炭化水素系溶媒、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、1−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒が挙げられる。
【0044】
化合物(b2)の使用量は、化合物(II−a)1モルに対して、好ましくは1モル以上8モル以下であり、より好ましくは1モル以上4モル以下である。
【0045】
次に、Xが−CO−O−である化合物(I)、すなわち式(I−b)で表される化合物(以下「化合物(I−b)」ということがある)の製造方法について説明する。
【0046】

【0047】
[式(I−b)中、D、R〜R7、L及びは、上記と同じ意味を表す。]
【0048】
前記と同様にして、式(a2)で表されるジアゾニウム塩と式(b3)で表される化合物とを、水性溶媒中ジアゾカップリングすることにより、式(II−b)で表される化合物(以下「化合物(II−b)」ということがある)を製造できる。反応温度は、−5℃〜60℃が好ましく、0℃〜30℃がより好ましい。反応時間は、1時間〜12時間が好ましく、1時間〜4時間がより好ましい。前記水性溶媒としては、前記で挙げたものと同じ溶媒が挙げられる。
【0049】

【0050】
[式(b3)及び式(II−b)中、R〜R7及びLは、上記と同じ意味を表す。]
【0051】
次いで、化合物(II−b)と式(b4)で表される化合物(以下「化合物(b4)」ということがある)とを、有機溶媒の存在下、反応させることにより、化合物(I−b)を得ることができる。反応温度は、30℃〜180℃が好ましく、50℃〜120℃がより好ましい。反応時間は、1時間〜12時間が好ましく、1時間〜4時間がより好ましい。
−OH (b4)
[式(b4)中、Rは上記と同じ意味を表す。]
ここで用いられる有機溶媒としては、化合物(II−a)と化合物(b2)との反応で用いられるものと同じ溶媒が挙げられる。
【0052】
化合物(b4)の使用量は、化合物(II−b)1モルに対して、好ましくは1モル以上8モル以下であり、より好ましくは1モル以上4モル以下である。
【0053】
反応の際、反応をスムーズに進行させるために、酸性触媒を加えるとさらに好ましい。
酸性触媒としては、硫酸、塩酸などの鉱酸などが挙げられる。これらの触媒の使用量は任意であるが、化合物(b4)1モルに対して、好ましくは0.01モル以上4モル以下、さらに好ましくは、0.8〜2モルである。
【0054】
反応混合物から目的化合物である化合物(I)(すなわち、化合物(I−a)又は化合物(I−b))を取得する方法は特に限定されず、公知の種々の手法が採用できる。例えば、反応混合物を酸(例えば、酢酸等)及び水と共に混合し、析出した結晶を濾取することが好ましい。前記酸は、予め酸の水溶液を調製してから、反応混合物を前記水溶液に添加することが好ましい。反応混合物を添加するときの温度は、好ましくは10℃以上50℃以下、より好ましくは20℃以上50℃以下、さらに好ましくは20℃以上30℃以下である。また反応混合物を酸の水溶液に添加後は、上記温度で保持しながら0.5〜2時間程度攪拌することが好ましい。濾取した結晶は、水などで洗浄し、次いで乾燥することが好ましい。また必要に応じて、再結晶などの公知の手法によってさらに精製してもよい。
【0055】
化合物(I)の塩としては、リチウム塩やナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及びエタノールアミン塩やアルキルアミン塩のような有機アミン塩等が挙げられる。化合物(I)を偏光膜基材に含有させる場合は、ナトリウム塩の形で用いるのが好ましい。
【0056】
化合物(I)及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を偏光膜基材に含有させて偏光膜とする場合は、他の有機染料を併用してもよい。このことにより、色相を補正し、偏光性能を向上させることができる。この場合に用いられる他の有機染料としては、二色性の高いものであればいかなる染料でもよいが、特に耐光性に優れる染料を選択することにより、液晶プロジェクター用途に適した偏光膜とすることができる。
【0057】
かかる他の有機染料の具体例としては、カラー・インデックス・ジェネリック・ネーム(ColorIndex Generic Name)で表して、以下のものが例示される。
【0058】
シー・アイ・ダイレクト・イエロー 12
シー・アイ・ダイレクト・イエロー 28
シー・アイ・ダイレクト・イエロー 44
シー・アイ・ダイレクト・オレンジ 26
シー・アイ・ダイレクト・オレンジ 39
シー・アイ・ダイレクト・オレンジ 107
シー・アイ・ダイレクト・レッド 2
シー・アイ・ダイレクト・レッド 31
シー・アイ・ダイレクト・レッド 79
シー・アイ・ダイレクト・レッド 81
シー・アイ・ダイレクト・レッド 117
シー・アイ・ダイレクト・レッド 247
【0059】
本発明の染料は、本発明の化合物又はその塩を有効成分とする染料である。
本発明の染料系偏光膜は、本発明の染料を、偏光膜基材である高分子フィルムに公知の方法で含有させることによって、製造することができる。本発明の染料とともに、上記の他の有機染料を併用してもよい。
この高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系の樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂等からなるものが利用される。ここでいうポリビニルアルコール系の樹脂には、ポリ酢酸ビニルの部分又は完全ケン化物であるポリビニルアルコール自体の他、ケン化EVA樹脂のような、酢酸ビニルと他の共重合可能な単量体、例えば、エチレンやプロピレンのようなオレフィン類、クロトン酸やアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、ビニルエーテル類等との共重合体のケン化物、さらにはポリビニルアルコールをアルデヒドで変性したポリビニルホルマールやポリビニルアセタール等も包含される。偏光膜基材としては、ポリビニルアルコール系のフィルム、特にポリビニルアルコールフィルムが、染料の吸着性及び配向性の点から好ましい。
【0060】
このような高分子フィルムに上記染料を含有させる方法としては、、高分子フィルムを染色する方法が挙げられる。染色は、例えば次のようにして行うことができる。先ず、前記染料を水に溶解して染浴を調製する。染浴中の染料濃度は特に制限されないが、0.0001〜10質量%であることが好ましい。又、必要により、染色助剤(例えば芒硝等)を用いてもよく、その使用量は、染料1質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。このようにして調製した染浴に高分子フィルムを浸漬し、染色を行う。染色温度は、好ましくは40〜80℃である。高分子フィルムの染色後、染料を配向させる。染料の配向は、高分子フィルムを延伸することによって行われる。延伸する方法としては、例えば湿式法や乾式法等のいずれの方法でもよい。高分子フィルムの延伸は、染色の前に行っても、染色の後に行ってもよい。
【0061】
染料を含有させ、配向させた高分子フィルムは、必要に応じて、公知の方法によりホウ酸処理等の後処理が施される。このような後処理は、偏光膜の光線透過率、偏光度及び耐久性を向上させる目的で行われる。ホウ酸処理は、用いる高分子フィルムの種類や用いる染料の種類によって異なるが、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは5〜10質量%の範囲の濃度のホウ酸水溶液を用いて、好ましくは30〜80℃、より好ましくは50〜80℃の温度範囲で行われる。更に必要に応じて、カチオン系高分子化合物を含む水溶液でフィックス処理を併せて行ってもよい。
【0062】
このようにして得られる染料系偏光膜は、その片面又は両面に、光学的透明性及び機械的強度に優れる保護膜を貼合して、偏光板とすることができる。保護膜を形成する材料は、例えば、セルロースアセテート系フィルムやアクリル系フィルムのほか、四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン共重合体のようなフッ素樹脂系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリアミド系フィルム等、公知のフィルムが用いられる。
【実施例】
【0063】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り、質量基準である。
【0064】
以下の実施例において、化合物の構造はNMR(JMM−ECA−500;日本電子(株)製)で確認した。極大吸収波長(λmax)および偏光度は、SHIMAZU製UV2450で測定した。
【0065】
〔実施例1〕
スルファニル酸17.3部に水60部を加えた後、水酸化ナトリウム0.4部を加え、溶解させた。氷冷下、35%亜硝酸ナトリウム水溶液19.7部を加え、ついで35%塩酸26.2部を少しずつ加えて溶解させ2時間撹拌し、ジアゾニウム塩を含む懸濁液を得た。
一方、2,5−ジメチルアニリン12.8部を水80部に懸濁させ、水酸化ナトリウムを用いて、pHを7.0に調整した。ここに、前記ジアゾニウム塩を含む懸濁液を60分かけてポンプで滴下した。滴下終了後、さらに60分間撹拌することで黄色の懸濁液を得た。1時間攪拌した。濾過して得た黄色固体を減圧下60℃で乾燥し、式(c−0)で表される化合物を24.4部得た。
【0066】

【0067】
続いて、式(c−0)で表される化合物30.5部に水、180部を加えた後、水酸化ナトリウム0.4部を加えた。氷冷下、35%亜硝酸ナトリウム水溶液19.7部を加え、ついで35%塩酸26.2部を少しずつ加えて溶解させ2時間撹拌し、ジアゾニウム塩を含む懸濁液を得た。
【0068】
一方、アセト酢酸エチルエステル(東京化成工業(株)製)26.0部、シアノ酢酸メチル(東京化成製)20.8部及び2−アミノエタノール(和光純薬工業(株)製)24.4部を混合し、95℃で24時間攪拌した。上記の反応液を室温まで冷却後、水304部、35%塩酸35部の混合液中に添加し室温で1時間攪拌した。析出した結晶を吸引ろかの残渣として取得後乾燥し、式(c−1)で表される20.4部を得た。
【0069】

【0070】
次いで、式(c−1)で表される化合物20.4部を水100部に懸濁させ、水酸化ナトリウムを用いて、pHを9.0に調整した。ここに、前記ジアゾニウム塩を含む懸濁液を15分かけてポンプで滴下した。滴下終了後、さらに30分間撹拌することで黄色の懸濁液を得た。1時間攪拌した。濾過して得た黄色固体を減圧下60℃で乾燥し、式(d−1)で表される化合物を49.3部得た。
【0071】

【0072】
次に式(d−1)で表される化合物48.2部に、式(e-1)で表される酸クロライド(和光純薬工業(株)製)64.8部を加え、N−メチルピロリドン中、70℃で、3時間攪拌した。反応終了後、水にチャージし、式(I−1)で表される化合物を46.8g得た。得られた化合物は橙色を呈し、極大吸収波長(λmax)を水中で測定したところ、445nmを示した。また、1H-NMRにて構造を確認した。
1H-NMR : 0.70 (6H, m), 1.04 (2H, m), 1.07 (2H, m), 1.30 (2H, m), 1.43 (2H, m), 2.13 (1H, m), 2.50 (3H, s), 4.13 (2H, m), 4.24 (2H, m), 7.36 (1H, s), 7.73 (1H, s), 8.03 (1H, s), 13.85 (1H, s)。
【0073】

【0074】
〔実施例2〕
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム[クラレビニロン#7500、(株)クラレ製品]を縦一軸に5倍延伸して、偏光膜基材とした。このポリビニルアルコールフィルムを緊張状態に保ったまま、実施例1で得られた式(I−1)で表される化合物を0.025%、染色助剤である芒硝を2.0%の濃度とした70℃の水溶液に浸漬した。次に78℃の7.5%ホウ酸水溶液に5分間浸漬したのち取り出して、20℃の水で20秒間洗浄し、50℃で乾燥することにより、偏光膜を得た。得られた偏光膜のλmax(膜の延伸方向の透過率が最小となる波長)は460nmであり、単体透過率43% における偏光度は99.50%であり、高い偏光度を有した。
【0075】
〔比較例1〕
式(h−1)で表される化合物(特開2009−13293号公報記載の化合物)を、該公報記載の方法に従い合成した。得られた化合物は橙色を呈し、極大吸収波長(λmax)を水中で測定したところ、446nmを示した。
【0076】

【0077】
〔参考例1〕
実施例2において、実施例1で得られた式(I−1)で表される化合物の代わりに、式(h−1)で表される化合物に置き代える以外は、実施例2と同様にして、偏光膜を得た。得られた偏光膜のλmax(膜の延伸方向の透過率が最小となる波長)は460nmであり、単体透過率43%における偏光度は99.10%であり、低い偏光度にとどまった。
【0078】
上記の結果から、本発明の化合物又はその塩を含む偏光膜は、高い偏光度を示すことがわかる。このことから、液晶プロジェクター等に用いられる偏光膜として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の化合物又はその塩によれば、高い偏光度を示す偏光膜を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

[式(I)中、Dは、1〜3個のスルホ基を有するフェニル基、又は1〜3個のスルホ基を有するナフチル基を表し、該フェニル基及び該ナフチル基に含まれる水素原子は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されていてもよい。
は、−CO−O−を表す。
及びLは、互いに独立に、炭素数1〜8のアルカンジイル基を表す。
は、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
2は、水素原子、シアノ基、又はカルバモイル基を表す。
は、炭素数1〜4のアルキル基又はトリフルオロメチル基を表す。
4〜R7は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又はヒドロキシ基を表す。]
で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
が、*−O−CO−(*は、Lとの結合位置を表す。)である請求項1記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
2が、シアノ基である請求項1又は2記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
が、炭素数3〜8の分枝鎖状アルキル基である請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物又はその塩を有効成分とする染料。
【請求項6】
請求項5記載の染料を偏光膜基材に含有してなる偏光膜。
【請求項7】
偏光膜基材が、ポリビニルアルコールフィルムである請求項6記載の偏光膜。

【公開番号】特開2012−172095(P2012−172095A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36690(P2011−36690)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】