説明

化合物及びフォトレジスト組成物

【課題】本発明の目的は、ELに優れると共に、得られるパターンのLWRを低減し、リソグラフィー特性を向上させることができるフォトレジスト組成物を与え得る感放射線性酸発生剤を提供することである。
【解決手段】本発明の化合物は、下記式(1)で表される。また、下記式(1)におけるRは、炭素数1〜20の鎖状炭化水素基であることが好ましい。さらに、本発明は、[A]本発明の化合物、及び[B]酸解離性基を含む構造単位(I)を有する重合体を含有するフォトレジスト組成物も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及びフォトレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子等を製造する微細加工の分野においては、より高い集積度を得るために、KrFエキシマレーザー(波長248nm)やArFエキシマレーザー(波長193nm)などに代表される短波長の露光光源を使用したリソグラフィー技術の開発が行われている。これらの露光光源に適応するレジスト材料には、高感度、高解像性等が求められ、通常、酸解離性基を有する成分と、放射線の照射により酸を発生する酸発生剤等とを含有した化学増幅型のフォトレジスト組成物が用いられている(特開昭59−45439号公報参照)。
【0003】
しかし、従来の酸発生剤を含有するフォトレジスト組成物を用いて、より微細なレジストパターンを形成しようとした場合、レジスト膜中における酸の拡散距離(以下、「拡散長」ともいう)が、ある程度短いことが適切であるとされるところ、この拡散長が不適切であることに起因してか、パターンのライン幅のラフネス(Line Width Roughness:LWR)が大きく、所望のパターンを得られないという不都合がある。また、従来のフォトレジスト組成物では、露光余裕度(Exposure Latitude:EL)を十分に満足することができないのが現状である。
【0004】
このような状況に鑑み、ELを十分に満足し、LWR等を指標としたリソグラフィー特性に優れるフォトレジスト組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−45439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、ELを十分に満足し、LWR等を指標としたリソグラフィー特性に優れるフォトレジスト組成物、及びこのフォトレジスト組成物に含まれる酸発生剤としての化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
下記式(1)で表される化合物である。
【化1】

(式(1)中、Rは、炭素数13〜30の有橋脂環式基である。但し、上記有橋脂環式基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基、−CO−、−O−又はこれらを組み合わせてなる2価の基である。nは、1〜4の整数である。R及びRは、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。但し、nが2以上の場合、複数のR及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Mは、オニウムカチオンである。)
【0008】
本発明の化合物は、上記式(1)で表されるように嵩高い有橋脂環式基を有し炭素含有率が高いため、感放射線性酸発生剤として用いた場合に、露光により生じる酸のレジスト膜における拡散を適度に制御することができ、未露光部における好ましくない化学反応を抑制することができる。その結果、当該化合物を感放射線性酸発生剤として含有するフォトレジスト組成物は、ELが増大し、LWRに優れるパターンを形成することができる。
【0009】
上記式(1)におけるRが、炭素数1〜20の鎖状炭化水素基であるとよい。上記式(1)におけるRが、炭素数1〜20の鎖状炭化水素基であると、当該化合物を感放射線性酸発生剤として含有するフォトレジスト組成物は、ELがより増大し、LWRに優れるパターンを形成することができる。
【0010】
上記式(1)におけるRは、ジアマンチル基であることが好ましい。上記Rがジアマンチル基のような嵩高い有橋脂環式基であると、当該化合物を感放射線性酸発生剤として用いた場合に、露光により生じる酸のレジスト膜における拡散をより適度に制御することができる。その結果、当該化合物を感放射線性酸発生剤として当該化合物を含有するフォトレジスト組成物は、ELがより増大し、LWRにさらに優れるパターンを形成することができる。
【0011】
本発明の化合物は、感放射線性酸発生剤として好適に用いられる。当該化合物は上述の特性を有するため、当該化合物を感放射線性酸発生剤として含有するフォトレジスト組成物は、ELが増大し、LWRに優れるパターンを形成することができる。
【0012】
本発明のフォトレジスト組成物は、
[A]本発明の化合物(以下、「[A]化合物」ともいう)、及び
[B]酸解離性基を含む構造単位(I)を有する重合体(以下、「[B]重合体」ともいう)を含有する。
【0013】
本発明のフォトレジスト組成物は、当該化合物を感放射線性酸発生剤として含有するため、ELを十分満足し、LWRに優れるパターンを形成することができる。
【0014】
構造単位(I)は、下記式(2)で表されることが好ましい。
【化2】

(式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基又は炭素数1〜3のアルキル基である。R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。但し、R及びRは、互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式基を形成してもよい。)
【0015】
[B]重合体が有する構造単位(I)が、上記式(2)で表される酸解離性基を有する構造単位であると、本発明のフォトレジスト組成物は、感度を十分満足し、ELに優れ、また、LWRにより優れるパターンを形成することができる。
【0016】
[B]重合体は、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む構造単位(II)をさらに有することが好ましい。[B]重合体がラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む構造単位(II)をさらに有することで、当該フォトレジスト組成物は、基板等への密着性を向上することができ、結果として、ELを十分満足し、LWRにさらに優れるパターンを形成することができる。
【0017】
なお、本明細書における放射線とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線、EUV等を含む概念である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化合物を感放射線性酸発生剤として含有するフォトレジスト組成物は、ELを十分満足すると共に、LWRを指標としたリソグラフィー特性に優れる。従って、本発明の化合物は、フォトレジスト組成物の感放射線性酸発生剤等として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<化合物>
本発明の化合物は、上記式(1)で表される。当該化合物は、嵩高い有橋脂環式基を有し、炭素含有率が高いため、感放射線性酸発生剤として用いた場合に、露光により生じる酸のレジスト膜における拡散を適度に制御することができ、未露光部における好ましくない化学反応を抑制することができる。その結果、当該化合物を感放射線性酸発生剤として含有するフォトレジスト組成物は、ELが増大し、LWRを指標としたリソグラフィー特性に優れる。
【0020】
上記式(1)中、Rは、炭素数13〜30の有橋脂環式基である。但し、上記有橋脂環式基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜20の鎖状炭化水素基、−CO−、−O−又はこれらを組み合わせてなる基である。nは、1〜4の整数である。R及びRは、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。但し、nが2以上の場合、複数のR及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Mは、オニウムカチオンである。
【0021】
上記Rで表される炭素数13〜30の有橋脂環式基としては、例えば
ジアマンチル基、トリアマンチル基、テトラアマンチル基、トリノルボルニル基、テトラノルボルニル基、ビシクロトリデシル基、トリシクロトリデシル基、ビシクロテトラデシル基、トリシクロテトラデシル基、ビシクロペンタデシル基、トリシクロペンタデシル基、ビシクロヘキサデシル基、トリシクロヘキサデシル基、ビシクロヘプタデシル基、トリシクロヘプタデシル基、ビシクロオクタデシル基、トリシクロオクタデシル基、ビシクロノナデシル基、トリシクロノナデシル基、ビシクロイコシル基、トリシクロイコシル基、ビシクロトリアコンチル基、トリシクロトリアコンチル基等が挙げられる。これらのうち、ジアマンチル基が好ましい。
【0022】
上記有橋脂環式基が有する水素原子の一部又は全部が置換されていてもよい置換基としては、例えばハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン化炭化水素基、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基、チオール基等が挙げられる。
【0023】
上記Rで表される炭素数1〜20の鎖状炭化水素基としては、例えばメチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、オクタンジイル基、デカンジイル基等が挙げられる。
【0024】
上記Rとしては、LWRをより優れた値とすることができる観点から、炭素数1〜20の鎖状炭化水素基が好ましく、これらのうち、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
【0025】
上記R及びRで表される炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基が挙げられる。
【0026】
上記R及びRとしては、フッ素原子が好ましい。
【0027】
上記nとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0028】
上記Mで表されるオニウムカチオンとしては、例えばスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン等が挙げられる。これらのうち、スルホニウムカチオンが好ましく、下記式(3)で表されるスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0029】
【化3】

【0030】
上記式(3)中、R〜R11は、それぞれ独立して、炭素数1〜30の炭化水素基である。但し、R及びR10は、互いに結合して、それらが結合している硫黄原子と共に環状構造を形成してもよい。上記炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されてもよい。
【0031】
上記式(3)中、R〜R11で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等の鎖状炭化水素基;
シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基等の脂環式炭化水素基;
上記脂環式炭化水素基を一部に有する炭化水素基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等の芳香族炭化水素基;
上記芳香族炭化水素基を一部に有する炭化水素基等が挙げられる。
これらのうち、芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0032】
上記炭化水素基が有してもよい置換基としては、例えばハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン化炭化水素基、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基、チオール基、有機スルホニル基(RSO−)等が挙げられる。上記Rは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。
【0033】
上記式(3)で表されるスルホニウムカチオンとしては、例えば下記式(i−1)〜(i−12)で表されるカチオン等が挙げられる。
【0034】
【化4】

【0035】
これらのうち、上記式(i−1)で表されるスルホニウムカチオンが好ましい。
【0036】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば下記式(1−1)〜(1−7)で表される化合物等が挙げられる。
【0037】
【化5】

【0038】
これらのうち、上記式(1−1)で表される化合物がより好ましい。
【0039】
本発明の化合物は、一般的な合成方法により合成することができ、例えば下記スキームに示すように、対応する前駆化合物(1a)を、無機塩基の共存下で、亜二チオン酸ナトリウムと反応させることにより、スルフィン酸塩(1b)に変換し、これを過酸化水素等の酸化剤にて酸化することにより、スルホン酸塩(1c)に変換した後、対イオン交換前駆体Mとのイオン交換反応を行う方法等により製造することができる。
【0040】
【化6】

【0041】
上記スキーム中、Zは、脱離性の1価の基である。Mは、上記式(1)と同義である。Aは、1価のアニオンである。
【0042】
上記前駆化合物(1a)中、Zで表される脱離性の1価の基としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メタンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基等が挙げられる。これらのうち、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0043】
上記前駆化合物(1a)と亜二チオン酸ナトリウムとの反応において、亜二チオン酸ナトリウムの前駆化合物(1a)に対するモル比は、通常0.01〜100であり、1.0〜10が好ましい。
【0044】
反応時に使用される無機塩基としては、例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。これらのうち、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが好ましい。なお、これらの無機塩基は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、無機塩基の亜二チオン酸ナトリウムに対するモル比は、通常0.5〜10.0であり、1.0〜4.0が好ましい。
【0045】
この反応は、好ましくは有機溶媒と水との混合溶媒中で行われる。上記有機溶媒としては、例えば低級アルコール類、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらのうち、水との相溶性がよい溶媒が好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドがより好ましく、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドがさらに好ましい。なお、これらの有機溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、有機溶媒の使用割合は、有機溶媒と水との合計100質量部に対して、通常5質量部以上であり、10質量部以上が好ましく、20〜90質量部がより好ましい。上記混合溶媒の前駆化合物(1a)100質量部に対する使用量としては、通常500〜2,500質量部であり、1,000〜2,000質量部が好ましい。
【0046】
反応温度は、通常30℃〜200℃であり、50℃〜120℃が好ましい。反応時間は、通常0.5時間〜72時間であり、2時間〜24時間が好ましい。なお、反応温度が有機溶媒又は水の沸点より高い場合は、オートクレーブ等の耐圧容器を使用する。
【0047】
また、スルフィン酸塩(1b)の酸化反応に用いることができる酸化剤としては、例えば過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、t−ブチルヒドロペルオキシド、ペルオキシ硫酸カリウム、過マンガン酸カリウム、過ホウ素酸ナトリウム、メタヨウ素酸ナトリウム、クロム酸、二クロム酸ナトリウム、ハロゲン、ヨードベンゼンジクロリド、ヨードベンゼンジアセテート、酸化オスミウム(VII)、酸化ルテニウム(VII)、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、酸素ガス、オゾンガス等が挙げられる。これらのうち、過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、t−ブチルヒドロペルオキシドが好ましい。なお、これらの酸化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、酸化剤のスルフィン酸塩(1b)に対するモル比は、通常1.0〜10.0であり、1.5〜4.0が好ましい。
【0048】
また、上記酸化剤と共に遷移金属触媒を併用することもできる。上記遷移金属触媒としては、例えばタングステン酸二ナトリウム、塩化鉄(III)、塩化ルテニウム(III)、酸化セレン(IV)等が挙げられる。これらのうち、タングステン酸二ナトリウムが好ましい。なお、これらの遷移金属触媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、遷移金属触媒のスルフィン酸塩(1b)に対するモル比は、通常0.001〜2.0であり、0.01〜1.0が好ましく、0.03〜0.5がより好ましい。
【0049】
さらに、上記酸化剤及び遷移金属触媒に加え、反応液のpH調整の目的で、緩衝剤を併用することもできる。上記緩衝剤としては、例えばリン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。なお、これらの緩衝剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、緩衝剤のスルフィン酸塩(1b)に対するモル比は、通常0.01〜2.0であり、0.03〜1.0が好ましく、0.05〜0.5がより好ましい。
【0050】
この反応は、通常反応溶媒中で行われる。上記反応溶媒としては、例えば水、低級アルコール類、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機溶媒等が挙げられる。これらのうち、水、メタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドが好ましく、水及びアセトニトリルがより好ましい。なお、これらの有機溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、必要に応じて、有機溶媒と水とを併用することもでき、その場合の有機溶媒の使用割合は、有機溶媒と水との合計100質量部に対して、通常5質量部以上であり、10質量部以上が好ましく、20〜90質量部がより好ましい。反応溶媒のスルフィン酸塩(1b)100質量部に対する使用量は、通常5〜100質量部であり、10〜100質量部が好ましく、20〜50質量部がより好ましい。
【0051】
反応温度は、通常0℃〜100℃であり、5℃〜60℃が好ましく、5℃〜40℃がより好ましい。また、反応時間は、通常0.5時間〜72時間であり、2時間〜24時間が好ましい。
【0052】
スルホン酸塩(1c)のイオン交換反応は、例えばJ.Photopolym.Sci.Tech.,p.571−576(1998)に記載されている一般的な方法、イオン交換クロマトグラフィー等の方法、又は後述する各合成例に記載した方法に準じて行うことができる。
【0053】
上記スキームにおけるAの1価のアニオンとしては、例えばF、Cl、Br、I、過塩素酸イオン、硫酸水素イオン、リン酸二水素イオン、四フッ化ホウ酸イオン、脂肪族スルホン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、六フッ化リン酸イオン、六塩化アンチモン酸イオン等が挙げられる。これらのうち、Cl、Br、硫酸水素イオン、四フッ化ホウ酸イオン、脂肪族スルホン酸イオンが好ましく、Cl、Br、硫酸水素イオンがより好ましい。なお、対イオン交換前駆体のスルホン酸塩(1c)に対するモル比は、通常0.1〜10.0であり、0.3〜4.0が好ましく、0.7〜2.0がより好ましい。
【0054】
この反応は、通常、反応溶媒中で行われる。上記反応溶媒としては、例えば水、低級アルコール類、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン等が挙げられる。これらのうち、水、メタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタンが好ましく、水がより好ましい。なお、これらの反応溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また必要に応じて、水と有機溶媒とを併用することもでき、この場合の有機溶媒の使用割合は、水と有機溶媒との合計100質量部に対して、通常5質量部以上であり、10質量部以上が好ましく、20〜90質量部がより好ましい。なお、反応溶媒の対イオン交換前駆体100質量部に対する使用量は、通常5〜100質量部であり、10〜100質量部が好ましく、20〜50質量部がより好ましい。
【0055】
反応温度は、通常0〜80℃であり、5〜30℃が好ましい。また、反応時間は、通常10分〜6時間であり、30分〜2時間が好ましい。
【0056】
このようにして得たスルホン酸オニウム塩化合物(2)は、有機溶剤で抽出して精製することもできる。精製に際して使用される有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル類等の水と混合しない有機溶剤が挙げられる。なお、これらの有機溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0057】
<フォトレジスト組成物>
本発明のフォトレジスト組成物は、[A]化合物及び[B]重合体を含有する。当該フォトレジスト組成物は、当該化合物を感放射線性酸発生剤として含有するため、ELに優れ、得られるパターンはLWRに優れる。また、当該フォトレジスト組成物は、[A]化合物及び[B]重合体以外に、[C]フッ素原子を含有する重合体、[D]酸拡散制御剤、[E]溶媒を含むことが好ましい。さらに、当該フォトレジスト組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0058】
<[A]化合物>
[A]化合物は、上記式(1)で表されるように嵩高い脂環式基を有し、炭素含有率が高いため、感放射線性酸発生剤として用いた場合に、露光により生じる酸のレジスト膜における拡散を適度に制御することができ、未露光部における好ましくない化学反応を抑制することができる。その結果、当該化合物を感放射線性酸発生剤として含有するフォトレジスト組成物は、ELに優れ、得られるパターンはLWRに優れる。なお、[A]化合物の説明については、上述の本発明の化合物についての説明を適用することができる。
【0059】
当該フォトレジスト組成物における[A]化合物の含有率としては、後述する[B]重合体100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。上記フォトレジスト組成物における[A]化合物の含有率を上記範囲とすることで、得られるパターンのLWRをより優れた値とすることができる。
【0060】
<[B]重合体>
[B]重合体は、酸解離性基を含む構造単位(I)を有する。[B]重合体が有する上記酸解離性基が、露光により[A]化合物から発生した酸の作用により解離して、重合体の極性が増し、露光部における[B]重合体のアルカリ現像液に対する溶解性が増大する。この構造単位(I)は、上記式(2)で表される構造単位であることが好ましい。[B]重合体が有する構造単位(I)が、上記式(2)で表される構造単位であると、本発明のフォトレジスト組成物は、感度を十分満足し、ELに優れると共にLWRを指標としたリソグラフィー特性にも優れる。なお、[B]重合体は、構造単位(I)以外に、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む構造単位(II)をさらに有することが好ましい。また、[B]重合体は、本発明の効果を損なわない限り、極性基を含む構造単位(III)を有してもよい。以下、それぞれの構造単位について詳述する。なお、[B]重合体は、各構造単位をそれぞれ1種又は2種以上有してもよい。
【0061】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、酸解離性基を含む構造単位であり、上記式(2)で表される構造単位であることが好ましい。
【0062】
上記式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基又は炭素数1〜3のアルキル基である。R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。但し、R及びRは、互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式基を形成してもよい。
【0063】
上記R〜Rで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基等が挙げられる。
【0064】
上記R〜Rで表される炭素数4〜20の脂環式基、及びRとRとが互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に形成していてもよい脂環式基としては、例えばアダマンタン骨格、ノルボルナン骨格等の有橋式骨格を有する多環の脂環式基;シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン骨格を有する単環の脂環式基が挙げられる。また、これらの基は、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上で置換されていてもよい。
【0065】
構造単位(I)としては、下記式で表される構造単位が好ましい。
【0066】
【化7】

【0067】
上記式中、Rは、上記式(2)と同義である。Rは、炭素数1〜4のアルキル基である。mは、1〜6の整数である。
【0068】
これらのうち、下記式(2−1)〜(2−20)で表される構造単位がより好ましい。
【0069】
【化8】

【0070】
上記式中、Rは上記式(2)と同義である。
【0071】
これらのうち、上記式(2−2)、(2−3)、(2−9)、(2−11)及び(2−12)で表される構造単位がさらに好ましい。
【0072】
[B]重合体において、構造単位(I)の含有割合としては、[B]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜80モル%が好ましく、10モル%〜80モル%がより好ましく、20モル%〜70モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、得られるレジストパターンのリソグラフィー性能がより向上する。
【0073】
構造単位(I)を与える単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−7−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカ−2−イルエステル、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0074】
【化9】

【0075】
[構造単位(II)]
[B]重合体は、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む構造単位(II)をさらに有することが好ましい。構造単位(II)を有することで、レジスト膜の基板への密着性を向上できる。
【0076】
構造単位(II)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0077】
【化10】

【0078】
上記式中、R12は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R13は、水素原子又はメチル基である。R14は、水素原子又はメトキシ基である。Zは、単結合又はメチレン基である。Zは、メチレン基又は酸素原子である。a及びbは、0又は1である。
【0079】
これらのうち、構造単位(II)としては、下記式で表される構造単位が好ましい。
【0080】
【化11】

【0081】
上記式中、R15は、水素原子又はメチル基である。
【0082】
[B]重合体において、構造単位(II)の含有割合としては、[B]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜70モル%が好ましく、20モル%〜60モル%がより好ましい。構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、レジストと基板との密着性を向上させることができる。一方、70モル%を超えると、良好なパターンが得られないおそれがある。
【0083】
構造単位(II)を与える単量体としては、例えば国際公開2007/116664号パンフレットに記載の単量体等が挙げられる。
【0084】
[構造単位(III)]
[B]重合体は、極性基を有する構造単位(III)を含んでいてもよい。[B]重合体が構造単位(III)をさらに含むことで、レジストパターンのリソグラフィー性能をより向上できる。
【0085】
構造単位(III)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0086】
【化12】

【0087】
上記式中、R16は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0088】
[B]重合体における構造単位(III)の含有割合としては、[B]重合体を構成する全構造単位に対して0モル%〜30モル%が好ましく、5モル%〜20モル%がより好ましい。
【0089】
<[B]重合体の合成方法>
[B]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。例えば、単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0090】
これらの方法における反応温度は開始剤種によって適宜決定すればよい。通常30℃〜180℃であり、40℃〜160℃が好ましく、50℃〜140℃がより好ましい。滴下時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体等の条件によって異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜6時間が好ましく、1時間〜5時間がより好ましい。また、滴下時間を含む全反応時間も、滴下時間と同様に条件により異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜7時間が好ましく、1時間〜6時間がより好ましい。
【0091】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等が挙げられる。これらの開始剤は2種以上を混合して使用してもよい。
【0092】
重合溶媒としては、重合を阻害する溶媒(重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等)以外の溶媒であって、その単量体を溶解可能な溶媒であれば限定されない。重合溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル・ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独又は2種以上を併用できる。
【0093】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の重合体を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。
【0094】
[B]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1,000以上500,000以下が好ましく、2,000以上400,000以下がより好ましい。なお、[B]重合体のMwが1,000未満であると、レジストとしたときの耐熱性が低下する傾向がある。一方、[B]重合体のMwが500,000を超えると、レジストとしたときの現像性が低下する傾向がある。
【0095】
また、[B]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がより好ましい。Mw/Mnをこのような範囲とすることで、フォトレジスト膜が解像性能に優れたものとなる。
【0096】
なお、本明細書のMw及びMnは、GPCカラム(東ソー製、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値をいう。
【0097】
<[C]フッ素原子含有重合体>
当該フォトレジスト組成物は、[B]重合体よりもフッ素原子含有率が高い[C]重合体をさらに含有することが好ましい。当該フォトレジスト組成物が、[C]重合体をさらに含有することで、レジスト膜を形成した際に、膜中のフッ素原子含有重合体の撥水性的特徴により、その分布がレジスト膜表面近傍で偏在化する傾向があるので、液浸露光時における酸発生剤や酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。また、このフッ素原子含有重合体の撥水性的特徴により、レジスト膜と液浸媒体との前進接触角が所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が高くなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。このように当該フォトレジスト組成物がフッ素原子含有重合体を含有することにより、液浸露光法に好適なレジスト塗膜を形成することができる。
【0098】
[C]重合体としては、フッ素原子を有している限り、特に限定されないが、[B]重合体よりフッ素原子含有率(質量%)が高いことを必須とする。[B]重合体よりフッ素原子含有率が高いことで、上述の偏在化の度合いがより高くなり、得られるレジスト膜の撥水性及び溶出抑制性等の特性が向上する。
【0099】
本発明におけるフッ素原子含有重合体は、フッ素原子を構造中に含む単量体を1種類以上重合することにより形成される。
【0100】
フッ素原子含有重合体が有する構造単位としては、下記式で表される構造単位(以下、「構造単位(IV)」ともいう)が挙げられる。
【0101】
【化13】

【0102】
上記式(4)中、R17は水素、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Yは連結基である。R18は少なくとも一つ以上のフッ素原子を含有する炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体である。
【0103】
上記Yで表される連結基としては、例えば単結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、アミド基、スルホニルアミド基、ウレタン基等が挙げられる。
【0104】
フッ素原子含有重合体は、構造単位(IV)以外にも、例えば現像液に対する溶解速度を制御するために酸解離性基を有する構造単位、ラクトン基を含む構造単位、極性基を含む構造単位、基板からの反射による光の散乱を抑えるために芳香族化合物に由来する構造単位等の「他の構造単位」を1種類以上含有することができる。
【0105】
フッ素原子含有重合体のMwとしては、1,000〜50,000が好ましく、1,000〜30,000がより好ましく、1,000〜10,000がさらに好ましい。フッ素原子含有重合体のMwが1,000未満の場合、十分な前進接触角を得ることができない。一方、Mwが50,000を超えると、レジストとした際の現像性が低下する傾向にある。フッ素原子含有重合体のMwとMnとの比(Mw/Mn)としては、通常1〜3であり、好ましくは1〜2である。
【0106】
上記フォトレジスト組成物におけるフッ素原子含有重合体の含有率としては、[B]重合体100質量部に対して、0〜50質量部が好ましく、0〜20質量部がより好ましく、0.5〜10質量部がさらに好ましく、1〜8質量部が特に好ましい。上記フォトレジスト組成物における上記フッ素原子含有重合体の含有率を上記範囲とすることで、得られるレジスト膜表面の撥水性及び溶出抑制性をより高めることができる。
【0107】
<[D]酸拡散制御剤>
当該フォトレジスト組成物は、さらに[D]酸拡散制御剤を含有することが好ましい。[D]酸拡散制御剤は、露光により[A]化合物から生じる酸の、レジスト膜中における拡散現象を制御し、未露光部における好ましくない化学反応を抑制する作用を有するものである。従って、当該フォトレジスト組成物は[A]化合物、[B]重合体及び[C]重合体に加えて、[D]酸拡散制御剤を含有することで酸の拡散をより抑制できELを十分満足すると共に、得られるレジストパターンのリソグラフィー特性を向上させることができる。
【0108】
[D]酸拡散制御剤としては、例えばN−t−アルコキシカルボニル基を有する窒素含有化合物が好ましく用いられる。具体的には、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−アミロキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−アミロキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(S)−(−)−1−(t−アミロキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−アミロキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−アミロキシカルボニルピロリジン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−アミロキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−アミロキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−アミロキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−アミロキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−アミロキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−t−アミロキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−(n−ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン等が挙げられる。
【0109】
また、[D]酸拡散制御剤としては、上記化合物以外にも、例えば3級アミン化合物、4級アンモニウムヒドロキシド化合物、含窒素複素環化合物等の含窒素化合物、露光により分解して酸拡散制御性としての塩基性を失うオニウム塩化合物等が用いられる。
【0110】
3級アミン化合物としては、例えば
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;
アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、2,6−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類;
トリエタノールアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリン等のアルカノールアミン類;
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼンテトラメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル等が挙げられる。
【0111】
4級アンモニウムヒドロキシド化合物としては、例えばテトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0112】
オニウム塩化合物としては、下記式(5−1)で表されるスルホニウム塩化合物、及び下記式(5−2)で表されるヨードニウム塩化合物を挙げることができる。
【0113】
【化14】

【0114】
上記式(5−1)及び式(5−2)におけるR16〜R20は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、又はハロゲン原子である。
また、Anbは、OH、R21−COO、R21−SO(但し、R21は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、又はアルカノール基である。)、又は下記式(6)で表されるアニオンを表す。
【0115】
【化15】

【0116】
上記スルホニウム塩化合物及びヨードニウム塩化合物の具体例としては、トリフェニルスルホニウムハイドロオキサイド、トリフェニルスルホニウムアセテート、トリフェニルスルホニウムサリチレート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムハイドロオキサイド、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムアセテート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムサリチレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロオキサイド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロオキサイド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムサリチレート、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムハイドロオキサイド、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムアセテート、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムサリチレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、4−t−ブトキシフェニル・ジフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート等を挙げることができる。
【0117】
当該フォトレジスト組成物において、[D]酸拡散制御剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。酸拡散制御剤の使用量としては、[B]重合体100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、0.1質量部以上5質量部以下がより好ましい。使用量が10質量部を超えると、レジストとしての感度が低下する傾向にある。
【0118】
<[E]溶媒>
当該フォトレジスト組成物は通常、溶媒を含有する。溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0119】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0120】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0121】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0122】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0123】
その他の溶媒としては、例えば
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒等が挙げられる。
【0124】
これらの溶媒のうち、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノンが好ましい。
【0125】
<その他の任意成分>
当該フォトレジスト組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、[A]化合物以外の酸発生剤、脂環式骨格化合物、界面活性剤、増感剤等のその他の任意成分を含有できる。以下、これらの任意成分について詳述する。かかるその他の任意成分は、それぞれを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、その他の任意成分の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0126】
[[A]化合物以外の酸発生剤]
当該フォトレジスト組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で[A]化合物以外の酸発生剤を含有してもよい。このような酸発生剤としては、例えば[A]化合物以外のオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。これらのうち、[A]化合物以外のオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物が好ましい。
【0127】
上記[A]化合物以外のオニウム塩化合物としては、例えば上記[A]化合物以外のスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0128】
[A]化合物以外のスルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0129】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート等が挙げられる。これらのテトラヒドロチオフェニウム塩のうち、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート及び1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0130】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート等が挙げられる。これらのうちビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0131】
上記スルホンイミド化合物としては、例えばN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。これらのうち、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドが好ましい。
【0132】
[脂環式骨格化合物]
脂環式骨格化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等をさらに改善する作用を示す成分である。脂環式骨格化合物としては、例えば1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル]テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン等が挙げられる。
【0133】
[界面活性剤]
界面活性剤は塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名として、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子製)等が挙げられる。
【0134】
[増感剤]
増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを[A]化合物に伝達しそれにより酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該フォトレジスト組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を有する。増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。
【0135】
<フォトレジスト組成物の調製方法>
当該フォトレジスト組成物は、例えば[E]溶媒中で[A]化合物、[B]重合体、[C]重合体、[D]酸拡散制御剤及びその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。当該フォトレジスト組成物は全固形分濃度が通常1質量%〜30質量%であり、1.5質量%〜25質量%が好ましい。当該フォトレジスト組成物は、上記混合液を、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することによって調製される。
【0136】
<レジストパターンの形成方法>
当該フォトレジスト組成物を用いて、例えば下記工程によりLWRに優れるレジストパターンを形成することができる。
(1)当該フォトレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程(以下、「工程(1)」ともいう)、
(2)上記レジスト膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程(以下、「工程(2)」ともいう)、及び
(3)上記放射線が照射されたレジスト膜を現像する工程(以下、「工程(3)」ともいう)
を有する。以下、各工程を詳述する。
【0137】
上記レジストパターン形成方法は、当該化合物を含有するフォトレジスト組成物を用いることで、LWRに優れるレジストパターンを形成でき、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用に好適に用いることができる。
【0138】
[工程(1)]
本工程では、当該フォトレジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって、シリコンウエハー、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウエハー等の基板上に所定の膜厚となるように塗布し、場合によっては通常70°〜160℃程度の温度でプレベーク(PB)することにより塗膜中の溶媒を揮発させレジスト膜を形成する。
【0139】
[工程(2)]
本工程では、工程(1)で形成されたレジスト膜に(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し露光させる。なお、この際所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線、EUV等から適宜選択して照射する。これらのうち、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、EUV(極紫外線、波長13.5nm)等のより微細なパターンを形成可能な光源であっても好適に使用できる。次いで、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことが好ましい。このPEBにより、[B]重合体の酸解離性基の脱離を円滑に進行させることが可能となる。PEBの加熱条件は、フォトレジスト組成物の配合組成によって適宜選定することができるが、通常50℃〜180℃程度である。
【0140】
[工程(3)]
本工程は、露光されたレジスト膜を、現像液で現像することによりレジストパターンを形成する。現像後は、水で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が好ましい。
【0141】
なお、液浸露光を行う場合は、工程(2)の前に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液不溶性の液浸用保護膜をレジスト膜上に設けてもよい。液浸用保護膜としては、工程(3)の前に溶媒により剥離する溶媒剥離型保護膜(例えば、特開2006−227632号公報等参照)、工程(3)の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005−069076号公報、WO2006−035790号公報等参照)のいずれを用いてもよい。
【実施例】
【0142】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0143】
<[A]化合物の合成>
[実施例1]
【0144】
反応フラスコ内に、亜二チオン酸ナトリウム97.5g、炭酸ナトリウム70.6g及びイオン交換水660mLを入れ、30分攪拌した。次いで、この混合溶液にアセトニトリル660mLに予め溶解しておいた1−(ジアマンタン−1−イル)−2,2−ジフルオロ−2−ヨードエタン132.0gを15分かけて滴下した後、攪拌しながら3.5時間加熱(内温60℃)した。得られた反応溶液を濃縮乾固することにより2−(ジアマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルフィン酸ナトリウムの白色固体280.3gを得た。純度は、35.3質量%であった。
【0145】
反応フラスコへ上記2−(ジアマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルフィン酸ナトリウム280.3g、ジクロロメタン1.5Lを入れ0℃で攪拌した後、そのままの温度で4N硫酸1.5Lを20分かけて滴下し、0度で1時間攪拌した。次いでジクロロメタン層を分離して溶媒除去することにより、精製した2−(ジアマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルフィン酸ナトリウムの淡赤褐色固体88.3gを得た。この淡赤褐色固体に、イオン交換水5.5L、炭酸ナトリウム30.0g、タングステン酸二ナトリウム1.00gを入れ30分攪拌した。次いでこの反応混合溶液に30質量%過酸化水素水30mLを30分かけて滴下した後、60℃で3時間攪拌した。次いで反応溶媒を減圧除去することにより、下記式で表される2−(ジアマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホン酸ナトリウムの白色固体90.2gを得た。純度は92質量%であった。
【0146】
【化16】

【0147】
なお、得られた2−(ジアマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホン酸ナトリウムの、H−NMR、19F−NMR分析結果を以下に示す。なお、各化合物のH−NMR分析及び19F−NMR分析は、核磁気共鳴装置(JNM−ECX400、日本電子製)を用いて行った。
H−NMR[σppm(DO):1.64−1.76(19H,m)、1.92−2.10(2H,m)];
19F−NMR[σppm(DMSO):58.71(m)]
【0148】
反応フラスコに、2−(ジアマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホン酸ナトリウム90g、トリフェニルスルホニウムブロミド70g、イオン交換水500mL、及びジクロロメタン500mLを入れ、室温で1時間攪拌した。有機層を分離した後、この有機層をイオン交換水500mLで5回洗浄した。その後、溶媒を除去することにより下記式(A−1)で表されるトリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホナート85.9gを得た。純度は99質量%以上であった。なお、得られたトリフェニルスルホニウム 2−(ジアマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホナートのH−NMR、19F−NMR分析結果を以下に示す。
H−NMR[σppm(DO):1.64−1.76(19H,m)、1.92−2.10(2H,m)、7.76−7.89(15H,m)]
19F−NMR[σppm(DMSO−d):58.71(m)]
【0149】
【化17】

【0150】
[合成例1]
1−(ジアマンタン−1−イル)−2,2−ジフルオロ−2−ヨードエタンを用いる替わりに1−(アダマンタン−1−イル)−2,2−ジフルオロ−2−ヨードエタンを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、下記式(a−1)で表されるトリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホナート78.1gを得た。純度は99質量%以上であった。なお、得られたトリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホナートのH−NMR、19F−NMR分析結果を以下に示す。
H−NMR[σppm(DO):1.64−1.76(12H,m)、1.92−2.10(5H,m)、7.76−7.89(15H,m)]
19F−NMR[σppm(DMSO−d):58.82(m)]
【0151】
【化18】

【0152】
[合成例2]
1−(ジアマンタン−1−イル)−2,2−ジフルオロ−2−ヨードエタンを用いる替わりに1−ビシクロ(2,2,1)ヘプタ−2−イル−1,1−ジフルオロ−2−ヨードエタンを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、下記式(a−2)で表されるトリフェニルスルホニウム 2−ビシクロ(2,2,1)ヘプタ−2−イル−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホナート67.9gを得た。純度は99質量%以上であった。なお、得られたトリフェニルスルホニウム 2−ビシクロ(2,2,1)ヘプタ−2−イル−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホナートのH−NMR、19F−NMR分析結果を以下に示す。
H−NMR[σppm(DO):1.64−1.76(8H,m)、1.92−2.10(5H,m)、7.76−7.89(15H,m)]
19F−NMR[σppm(DMSO−d):58.82(m)]
【0153】
【化19】

【0154】
[合成例3]
特開2007−161707の段落0100〜0103に記載の酸発生剤合成例3のようにトリフェニルスルホニウム 1−アダマンチルオキシカルボニル ジフルオロメタンスルホナートを合成した。
【0155】
【化20】

【0156】
<[B]重合体の合成>
[B]重合体及び後述する[C]重合体の合成に用いた単量体の構造を下記に示す。
【0157】
【化21】

【0158】
[合成例4]
構造単位(I)を与える上記化合物(M−1)32.9g(40モル%)、(M−5)12.1g(10モル%)構造単位(II)を与える上記化合物(M−9)43.4g(40モル%)構造単位(III)を与える上記化合物(M−11)11.6g(10モル%)を200gの2−ブタノンに溶解し、AIBN4.0gを添加して単量体溶液を調製した。100gの2−ブタノンを入れた1000mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、撹拌しながら80℃に加熱し、調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。2000gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を400gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(B−1)を得た(78g、収率78%)。得られた重合体(B−1)のMwは6700であり、Mw/Mnは1.34であり、低分子量成分の残存割合は0.2%であった。また、13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の構造単位:化合物(M−5)由来の構造単位:化合物(M−9)由来の構造単位:化合物(M−11)由来の構造単位の含有率39.3:8.7:42.1:9.9(モル%)の共重合体であった。なお、各重合体の13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(JNM−ECX400、日本電子製)を用いて行った。
【0159】
[合成例5〜7]
表1に記載の単量体を所定量配合した以外は、合成例1と同様に操作して重合体(B−2)〜(B−4)を得た。また、得られた各重合体のMw、Mw/Mn、収率(%)及び各重合体における各単量体に由来する構造単位の含有率を合わせて表1に示す。
【0160】
<[C]フッ素原子含有重合体の合成>
[合成例8]
化合物(M−2)7.2g(70モル%)と化合物(M−16)2.8g(30モル%)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.46gを300mLの反応フラスコに入れ、20gの2−ブタノンを入れた。窒素パージ下で、撹拌しながら80℃に加熱した。加熱開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を5時間実施した。重合反応終了後、溶剤量/モノマー仕込み量が0.5になるように溶剤を留去し、メタノール/蒸留水=2/1の混合溶剤150g中に濃縮した重合溶剤を投入した。生じた粘性固体がこぼれないように、白濁した上澄み液のみをデカンテーションで取り除いた。その後、残渣にメタノール/蒸留水=4/1の混合溶剤20gを加え、粘性固体を洗浄し、再び上澄み液のみをデカンテーションで取り除いた。同様の方法による粘性固体の洗浄を二回繰り返し行った。最後に粘性固体を50℃で17時間乾燥させることにより、無色透明の固体として重合体(C−1)を得た(6.7g、収率67%)。得られた重合体(C−1)のMwは9,400であり、Mw/Mnは1.42であった。また、13C−NMR分析の結果、化合物(M−2)由来の構造単位:化合物(M−16)由来の構造単位の含有率は69.2:30.8(モル%)であった。
【0161】
[合成例9〜10]
表1に記載の単量体を所定量配合した以外は、合成例8と同様に操作して重合体(C−2)〜(C−3)を得た。また、得られた各重合体のMw、Mw/Mn、収率(%)及び各重合体における各単量体に由来する構造単位の含有率を合わせて表1に示す。
【0162】
【表1】

【0163】
<フォトレジスト組成物の調製>
各実施例及び比較例の調製に用いた[D]酸拡散制御剤及び[E]溶媒は以下の通りである。
【0164】
<[D]酸拡散制御剤>
下記式(D−1)〜(D−3)で表される化合物
D−1:2,6−ジイソプロピルアニリン
D−2:t−アミル−4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート
D−3:トリフェニルスルホニウム カンファースルホン酸
【0165】
【化22】

【0166】
<[E]溶媒>
E−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
E−2:シクロヘキサノン
E−3:γ−ブチロラクトン
【0167】
[実施例2]
[B]重合体としての重合体(B−1)100質量部、[A]化合物としての(A−1)12質量部、[C]重合体としての(C−1)3質量部、[D]酸拡散制御剤としての(D−1)1質量部、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(E−1)1,980質量部、シクロヘキサノン(E−2)848質量部及びγ−ブチロラクトン(E−3)200質量部を添加し、各成分を混合して均一溶液とした。その後、孔径200nmのメンブランフィルターを用いてろ過することにより、フォトレジスト組成物を調製した。
【0168】
[実施例3〜5及び比較例1〜12]
表2に示す種類、量の各成分を使用した以外は実施例2と同様に操作して、各フォトレジスト組成物を調製した。
【0169】
<評価>
下記のようにレジストパターンを形成し、各種物性を評価した。結果を表2に合わせて示す。
【0170】
[レジストパターンの形成]
基板として、ウェハ表面に膜厚105nmの下層反射防止膜(ARC66、日産化学社)を形成した12インチシリコンウェハを用いた。各フォトレジスト組成物を基板上にスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて100℃で60秒間プレベーク(PB)を行って、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NSR S610C、NIKON社)を用い、NA=1.3、ratio=0.800、Dipoleの条件により、40nmライン80nmピッチのパターン形成用のマスクパターンを介して露光した。露光後、各フォトレジスト組成物について90℃で60秒間ポストベーク(PEB)を行った。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このときのパターン形成用のマスクパターンを介して露光した部分が線幅40nmのライン・アンド・スペースパターン(1L/1S)を1:1の線幅に形成する露光量を最適露光量(Eop)とした。
【0171】
[LWR(nm)]
上記Eopにて形成された線幅40nmライン・アンド・スペースパターンを、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社、CG4000)を用い、パターン上部から観察し、任意の10点において線幅を測定した。線幅の測定値の3シグマ値(ばらつき)をLWR(nm)とした。このLWRの値が小さいほど、パターンの線幅のばらつきが少なく、デバイス作成時の歩留まりに好影響を与える。なお、LWRの値が3.9nm未満である場合を「良好」、3.9nm以上4.3nm未満である場合を「やや良好」、4.3nm以上である場合を「不良」であると評価した。
【0172】
[EL]
最適露光量前後で1mJごとに露光量の違うショットを作製しそれぞれ線幅を測定する。得られた線幅と露光量の関係から線幅が44nm、36nmとなる露光量E(44)、E(36)を計算する。EL=(E(36)−E(44))/(最適露光量)×100としてELを計算した。この値が大きいほど露光量がずれた際のCD変動が小さく、デバイス作成時の歩留まりに好影響を与える。なお、ELの値が18以上の場合を「良好」、15以上18未満である場合を「やや良好」、15未満である場合を「不良」であると評価した。
【0173】
【表2】

【0174】
表2に示される結果から明らかなように、当該フォトレジスト組成物はEL及びLWRに優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の化合物を感放射線性酸発生剤として含有するフォトレジスト組成物は、ELを十分満足すると共に、LWRを指標としたリソグラフィー特性に優れる。従って、本発明の化合物は、フォトレジスト組成物の感放射線性酸発生剤等として好適に用いられる。そのため、本発明の化合物及び本発明の化合物を含有するフォトレジスト組成物は、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】

(式(1)中、Rは、炭素数13〜30の有橋脂環式基である。但し、上記有橋脂環式基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基、−CO−、−O−又はこれらを組み合わせてなる2価の基である。nは、1〜4の整数である。R及びRは、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。但し、nが2以上の場合、複数のR及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Mは、オニウムカチオンである。)
【請求項2】
上記式(1)におけるRが、炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
上記式(1)におけるRが、ジアマンチル基である請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
感放射線性酸発生剤である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
[A]請求項4に記載の化合物、及び
[B]酸解離性基を含む構造単位(I)を有する重合体
を含有するフォトレジスト組成物。
【請求項6】
構造単位(I)が、下記式(2)で表される請求項5に記載のフォトレジスト組成物。
【化2】

(式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基又は炭素数1〜3のアルキル基である。R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。但し、R及びRは、互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式基を形成してもよい。)
【請求項7】
[B]重合体が、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む構造単位(II)をさらに有する請求項5又は請求項6に記載のフォトレジスト組成物。

【公開番号】特開2013−40131(P2013−40131A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178149(P2011−178149)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】