説明

化合物

本発明は、ジアニリノピリミジン誘導体、これを含有する組成物および医薬、並びにこうした化合物、組成物および医薬の調製方法および使用に関する。このようなジアニリノピリミジン誘導体は不適切なWee1キナーゼ活性と関連した疾患の治療において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Wee1キナーゼ活性を阻害するジアニリノピリミジン誘導体、およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質キナーゼは、リン酸化が最も一般的な翻訳後修飾であるため、薬剤による介入のための多くの機会を提供する(例えばManning等 (2002) Trends Biochem. Sci. 27(10):514-20を参照のこと)。タンパク質キナーゼは、シグナル伝達、転写制御、細胞移動、および細胞分裂を含む、多くの細胞プロセスの鍵となる調節物質である。これらのプロセスのキナーゼによる制御は、それぞれのキナーゼがそれ自体1種以上の他のキナーゼによって制御された、複雑で互いにからみ合ったキナーゼ経路によって達成されることが多い。異常な、または不適切なタンパク質キナーゼ活性は、癌、炎症、心血管系および中枢神経系の疾患等の、数多くの病理学的状態の一因となる(例えばWolf等 (2002) Isr. Med. Assoc. J. 4(8):641-7; Li等 (2002) J. Affect. Disord. 69(1-3):1-14; Srivastava (2002) Int. J. Mol. Med. 9(1):85-9;およびForce等 (2004) Circulation 109(10):1196-205を参照のこと)。その生理的重要性、多様性、および偏在性のため、タンパク質キナーゼは、生化学および医学研究において最も重要で広範な研究がなされている酵素ファミリーの一つとなっている。
【0003】
哺乳動物の細胞において、細胞周期にはいくつかのチェックポイントがある。細胞周期は、以前の事象(例えばDNA複製またはDNA修復)が完了していない場合には、これらのチェックポイントで停止する。細胞周期のチェックポイントを経る進行は、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)として知られる一群のキナーゼの一連の活性化および不活性化によって制御される。特定のCdkが対応する細胞周期のチェックポイントで活性化されない場合、細胞周期はこのチェックポイントで停止するであろう。細胞周期のチェックポイントが排除されると、制御されない細胞増殖が生じ得る。
【0004】
Wee1は、DNAの損傷に応答して細胞周期を調節する役割を果たすチロシンキナーゼである。DNAの損傷が生じると、Wee1はDNA修復が完了するまでG2から有糸分裂への進行を中断させる。Wee1は、サイクリン依存性キナーゼcdc2をリン酸化して不活性化することによって、細胞周期をG2にとどめる。例えば、Raleigh等、(2000) J. Cell Sci. 113: 1727-36を参照のこと。Wee1が阻害されると、G2/Mチェックポイントが排除され、早期の細胞分裂が誘導される。Wee1の阻害によって、おそらくはWee1の阻害の結果生じる制御されない細胞周期の進行が癌細胞を損傷させるために、癌細胞を殺すことが示された。例えばHashimoto等、(2006) BMC Cancer 6:292を参照のこと。従って、Wee1キナーゼは癌の治療のための分子標的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Manning等 (2002) Trends Biochem. Sci. 27(10):514-20
【非特許文献2】Wolf等 (2002) Isr. Med. Assoc. J. 4(8):641-7
【非特許文献3】Li等 (2002) J. Affect. Disord. 69(1-3):1-14
【非特許文献4】Srivastava (2002) Int. J. Mol. Med. 9(1):85-9
【非特許文献5】Force等 (2004) Circulation 109(10):1196-205
【非特許文献6】Raleigh等、(2000) J. Cell Sci. 113: 1727-36
【非特許文献7】Hashimoto等、(2006) BMC Cancer 6:292
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、Wee1キナーゼ活性を阻害する化合物が当分野においてまだ必要とされている。このような化合物は、異常なWee1発現または活性と関連する疾患の治療のために有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様において、式(I)の化合物、またはその塩が提供される。
【化1】

【0008】
[式中、
Jは以下から選択され;
【化2】

【0009】
mは0または1であり;
nは0、1、または2であり;
R1はハロ、-CN、-NH2、C1-C3アルコキシ、アリールオキシ、-C(O)N(H)R'、-C(O)OR''、または-(CH2)qXであり;
qは0または1であり;
Dは以下のものよりなる群から選択され;
【化3】

【0010】
R2は-O(CH2)oNR'R''または-(CH2)oXであり;
pは1であり;
oは1または2であり;
R'は-H、C1-C4アルキルであり;
R''はC1-C4アルキルであり;そして
Xはヘテロシクリルまたはヘテロアリールである。]
本発明の第2の態様において、治療的有効量の式(I)の化合物、ならびに1種以上の製薬上許容される担体、希釈剤および賦形剤を含有する医薬組成物が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様において、不適切なWee1活性によって仲介される哺乳動物における障害の治療方法であって、治療的有効量の式(I)の化合物またはその塩を該哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。
【0012】
本発明の第4の態様において、哺乳動物における癌の治療方法であって、治療的有効量の式(I)の化合物またはその塩を該哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。
【0013】
本発明の第5の態様において、治療において使用するための、式(I)の化合物またはその塩が提供される。
【0014】
本発明の第6の態様において、不適切なWee1活性によって仲介される障害の治療において使用するための医薬の調製における、式(I)の化合物またはその塩の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において使用する用語「有効量」とは、例えば研究者または臨床医師が求めている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を引き起こすであろう薬剤もしくは医薬の量を意味する。更に、用語「治療的有効量」とは、そのような量を投与されていない対応被検体と比較して、疾患、障害、もしくは副作用の改善された治療、治癒、予防、または軽減、あるいは疾患もしくは障害の進行速度の低下を生じさせる任意の量を意味する。この用語はまた、正常な生理的機能を増大させるために効果的な量をその範囲内に包含する。
【0016】
本明細書において使用する用語「アルキル」は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価の炭化水素ラジカルをいう。本明細書において使用する「アルキル」の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル等が挙げられる。
【0017】
本明細書において使用する用語「C1-C3アルキル」および「C1-C6アルキル」は、少なくとも1個、そして3または6個までの炭素原子を含む上記のアルキル基をいう。本発明において有用なこのような分岐鎖または直鎖のアルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、およびn-ヘキシルが挙げられる。
【0018】
本明細書において使用する用語「アルキレン」は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素ラジカルをいう。本明細書において使用する「アルキレン」の例としては、限定するものではないが、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン等が挙げられる。
【0019】
本明細書において使用する用語「ハロゲン」はフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)をいい、用語「ハロ」はハロゲンラジカル:フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、およびヨード(-I)をいう。
【0020】
本明細書において使用する用語「ヘテロシクリル」は、1価の3から12員の非芳香族系複素環であって、飽和、または1以上の不飽和度を有し、S、S(O)、S(O)2、O、またはNから選択される1個以上のヘテロ原子の環置換基を含むものをいう。このような環は、場合によって1個以上の他の「ヘテロシクリル」環またはシクロアルキル環に融合していても良い。「ヘテロシクリル」部分の例としては、限定するものではないが、テトラヒドロフラニル、ピラニル、1,4-ジオキサニル、1,3-ジオキサニル、ピペリジニル、ピペラジニル、2,4-ピペラジンジオニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロチオフェニル等が挙げられる。
【0021】
本明細書において使用する用語「アリール」は、1価のベンゼン環、または1個以上のベンゼンもしくはヘテロシクリル環に融合して、例えばアントラセニル、フェナントレニル、ナフタレニル、またはベンゾジオキシニル環系を形成する1価のベンゼン環系をいう。「アリール」基の例としては、限定するものではないが、フェニル、2-ナフチル、1-ナフチル、ビフェニル、および1,4-ベンゾジオキシン-6-イルが挙げられる。
【0022】
本明細書において使用する用語「アラルキル」は、C1-C3アルキレンリンカー(C1-C3アルキレンは本明細書において定義したものである)を介して結合した上記のアリールまたはヘテロアリール基をいう。「アラルキル」の例としては、限定するものではないが、ベンジル、フェニルプロピル、2-ピリジルメチル、3-イソオキサゾリルメチル、5-メチル-3-イソオキサゾリルメチル、および2-イミダゾリルエチルが挙げられる。
【0023】
本明細書において使用する用語「ヘテロアリール」は、1価の5〜7員の単環式芳香族環、または1個、2個、または3個のこのような5〜7員の単環式芳香族環を含む、融合した二環もしくは三環式の芳香族環系をいう。これらのヘテロアリール環は1個以上の窒素、硫黄、および/または酸素のヘテロ原子を含み、ここでN-オキシドおよび硫黄オキシドおよびジオキシドが許容されるヘテロ原子置換である。本明細書において使用する「ヘテロアリール」基の例としては、フラニル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、オキソ-ピリジル、キノキサリニル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピラジニル、ピリミジル、キナゾリニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、ベンゾジオキソル、ピロロピリジル、ピロロピリミジル、およびインダゾリルが挙げられる。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、ヘテロアリール基はC2-C9ヘテロアリール基である。本明細書において使用する用語「C2-C9ヘテロアリール」は、少なくとも2個、そして9個までの炭素原子を含む上記のヘテロアリール基をいう。
【0025】
本明細書において使用する用語「アルコキシ」は、基RalkO-をいい(Ralkは上記で定義したアルキルである)、用語「C1-C3アルコキシ」は、アルキル部分が少なくとも1個、そして3個までの炭素原子を含む、本明細書において定義するアルコキシ基をいう。本発明において有用な「C1-C3アルコキシ」基の例としては、限定するものではないが、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、およびイソプロポキシが挙げられる。
【0026】
本明細書において使用する用語「アラルコキシ」は、基RbRaO-をいう(Raはアルキレンであり、Rbはアリールまたはヘテロアリールであり、いずれも上記で定義したものである)。いくつかの実施形態において、アラルコキシ基はアルコキシ部分に1〜3個の炭素原子を含む。一部の実施形態において、アラルコキシはアルコキシ部分に1個の炭素原子を含む。
【0027】
本明細書において使用する用語「アリールオキシ」は、基RaO-をいう(Raは上記で定義したアリールである)。
【0028】
本明細書において使用する用語「ヒドロキシアルキル」は、少なくとも1個の-OHで置換された上記のアルキル基をいう。本発明において有用な分岐鎖または直鎖のC1-C4ヒドロキシアルキル基の例としては、限定するものではないが、独立して1個以上の-OHで置換されたメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシプロピル、およびヒドロキシイソプロピル、ヒドロキシイソブチル、ヒドロキシル-n-ブチル、およびヒドロキシル-t-ブチルが挙げられる。
【0029】
本明細書において使用する用語「場合によって」は、続けて記載されている事象が生じても生じなくても良いことを意味し、生じる事象と生じない事象の双方を包含する。
【0030】
本明細書において使用する用語「置換された」は、挙げられた1個もしくは複数の置換基による置換をいい、他に記載のない限り、多重度の置換が許容される。
【0031】
本発明は、開示された化合物および塩の溶媒和物を包含する。本明細書において使用する用語「溶媒和物」とは、溶質(本発明において、式(I)の化合物またはその塩)および溶媒によって形成される種々の化学量論の複合体をいう。本発明の目的のためのこうした溶媒は、溶質の生物学的活性を妨害しないものであり得る。好適な溶媒の例としては、限定するものではないが、水、メタノール、エタノールおよび酢酸が挙げられる。一実施形態において、使用する溶媒は製薬上許容される溶媒である。好適な製薬上許容される溶媒の例としては、限定するものではないが、水、エタノールおよび酢酸が挙げられる。一実施形態において、使用する溶媒は水である。
【0032】
本明細書に記載する化合物のいくつかは、1個以上のキラル原子を含んでいても良く、あるいは2種のエナンチオマーとして存在し得るものであっても良い。本発明の化合物は、エナンチオマーの混合物、並びに精製したエナンチオマーもしくはエナンチオマーが濃縮された混合物を包含する。また、本発明の範囲内には、上記式(I)で示される化合物の個々の異性体、並びに任意の完全にもしくは部分的に平衡化されたその混合物が含まれる。本発明はまた、1以上のキラル中心が反転している異性体との混合物としての、上記式によって示される化合物の個々の異性体も包含する。また、式(I)の化合物の任意の互変異性体および互変異性体の混合物が式(I)の化合物の範囲内に包含されることは理解されたい。
【0033】
本発明の一態様において、式(I)の化合物またはその塩が提供される。
【化4】

【0034】
[式中、
Jは以下から選択され;
【化5】

【0035】
mは0または1であり;
nは0、1、または2であり;
R1はハロ、-CN、-NH2、C1-C3 アルコキシ、アリールオキシ、-C(O)N(H)R'、-C(O)OR''、または-(CH2)qXであり;
qは0または1であり;
Dは以下のものよりなる群から選択され;
【化6】

【0036】
R2は-O(CH2)oNR'R''または-(CH2)oXであり;
pは1であり;
oは1または2であり;
R'は-HまたはC1-C4 アルキルであり;
R''はC1-C4 アルキルであり;そして
Xはヘテロシクリルまたはヘテロアリールである。]
以下、本明細書における上記式(I)の化合物への言及は、他に具体的に限定されない限り、D、J、R1、R2、R'、R''、およびXに関して上記式(I)の範囲内にある化合物をいうと理解されたい。
【0037】
原子価が満たされていない、置換基が結合する位置は以下のように示されることは理解されたい。
【化7】

【0038】
適切な結合は以下に列挙する実施例で更に説明する。
【0039】
Jは以下から選択される。
【化8】

【0040】
特定の実施形態において、Jは以下のものである。
【化9】

【0041】
mが1の場合、R1はハロ、-CN、-NH2、C1-C3 アルコキシ、アリールオキシ、-C(O)N(H)R'、-C(O)OR''、および-(CH2)qXから選択される。一実施形態において、R1はC1-C3 アルコキシである。特定の実施形態において、R1はメトキシである。別の実施形態において、R1は-C(O)N(H)R'である。更なる実施形態において、R1はハロである。特定の実施形態において、R1はフルオロである。
【0042】
Dは以下のものよりなる群から選択される。
【化10】

【0043】
特定の実施形態において、Dは以下のものである。
【化11】

【0044】
R2は-O(CH2)oNR'R''および-(CH2)oXから選択される。特定の実施形態において、R2は-O(CH2)oNR'R''である。一部の実施形態において、R2は-O(CH2)2N(CH2CH3)2である。別の実施形態において、R2は-(CH2)oXである。
【0045】
R'は-HまたはC1-C4 アルキルである。いくつかの実施形態において、R'は-Hである。別の実施形態において、R'はC1-C4アルキルである。特定の実施形態において、R'はメチルである。別の実施形態において、R'はエチルである。更なる実施形態において、R'はn-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、およびt-ブチルから選択される。
【0046】
R''はC1-C4アルキルである。特定の実施形態において、R''はメチルである。別の実施形態において、R''はエチルである。更に別の実施形態において、R''はn-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、およびt-ブチルから選択される。
【0047】
Xはヘテロシクリルまたはヘテロアリールである。いくつかの実施形態において、Xはヘテロシクリルである。一部の実施形態において、Xは5-、6-、7-、8-、または9-員のヘテロシクリルである。特定の実施形態において、Xはモルホリニルである。別の実施形態において、Xはピペリジニルである。別の実施形態において、Xはヘテロアリールである。一部の実施形態において、XはC2-C9ヘテロアリールである。特定の実施形態において、Xはトリアゾリルである。
【0048】
本発明が、上記の実施形態における基の全ての組み合わせを包含するものであることは理解されたい。
【0049】
本発明の化合物の具体的な例としては以下のものが挙げられる:
5-ブロモ-N2-(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)-N4-[2-(メチルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン;
2-{[5-ブロモ-2-({3-[2-(4-モルホリニル)エチル]フェニル}アミノ)-4-ピリミジニル]アミノ}-N-(1-メチルプロピル)ベンズアミド;
2-[(5-ブロモ-2-{[4-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)フェニル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]-N-(1-メチルプロピル)ベンズアミド;
2-メチルプロピル2-({5-ブロモ-2-[(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)アミノ]-4-ピリミジニル}アミノ)ベンゾエート;
5-ブロモ-N4-[2-(メチルオキシ)フェニル]-N2-{3-[2-(4-モルホリニル)エチル]フェニル}-2,4-ピリミジンジアミン;
5-ブロモ-N4-[2-(メチルオキシ)フェニル]-N2-[4-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン;
2-メチルプロピル2-{[5-ブロモ-2-({3-[2-(4-モルホリニル)エチル]フェニル}アミノ)-4-ピリミジニル]アミノ}ベンゾエート;
5-ブロモ-N2-(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)-N4-[3-(1-ピペリジニルメチル)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン;
3-({5-ブロモ-2-[(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)アミノ]-4-ピリミジニル}アミノ)ベンゾニトリル;
5-ブロモ-N2-{3-[2-(4-モルホリニル)エチル]フェニル}-N4-[2-(フェニルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン;
5-ブロモ-N4-[3-(1-ピペリジニルメチル)フェニル]-N2-[4-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン;
3-[(5-ブロモ-2-{[4-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)フェニル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]ベンゾニトリル;
2-{[5-ブロモ-2-(4-メチル-1-ピペラジニル)-4-ピリミジニル]アミノ}-N-(1-メチルプロピル)ベンズアミド;
5-ブロモ-N4-[2-(3-フルオロフェニル)エチル]-N2-[4-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン;
5-ブロモ-N4-[2-(4-モルホリニル)エチル]-N2-{3-[2-(4-モルホリニル)エチル]フェニル}-2,4-ピリミジンジアミン;
5-ブロモ-N2-(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)-N4-[2-(3-フルオロフェニル)エチル]-2,4-ピリミジンジアミン;
5-ブロモ-N2-(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)-N4-{[2-(メチルオキシ)フェニル]メチル}-2,4-ピリミジンジアミン; および
5-ブロモ-N2-(3-{[2-(ジメチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)-N4-[2-(メチルオキシ)フェニル]-2,4- N4-[2-(メチルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン。
【0050】
式(I)の塩も包含される。典型的には、本発明の塩は製薬上許容される塩である。用語「製薬上許容される塩」に包含される塩は、本発明の化合物の非毒性の塩をいう。本発明の化合物の塩には、式(I)の化合物中の置換基上の窒素由来の酸付加塩を含めることができる。代表的な塩としては以下の塩が挙げられる:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩(camsylate)、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシレート(edisylate)、エストレート(estolate)、エシレート(esylate)、フマル酸塩、グルセプテート(gluceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート(glycollylarsanilate)、ヘキシルレゾルシン酸塩(hexylresorcinate)、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩(hydroxynaphthoate)、ヨウ化物、イセチオン酸塩(isethionate)、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、マレイン酸一カリウム、ムチン酸塩(mucate)、ナプシル酸塩(napsylate)、硝酸塩、N-メチルグルカミン、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボネート(embonate))、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩(polygalacturonate)、カリウム、サリチル酸塩、ナトリウム、ステアリン酸塩、スバセテート(subacetate)、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド(triethiodide)、トリメチルアンモニウムおよび吉草酸塩。製薬上許容されない他の塩は本発明の化合物の調製において有用である場合があり、これらは本発明の更なる態様を形成する。
【0051】
治療において使用するために、治療的有効量の式(I)の化合物、並びにその塩および溶媒和物を未加工の化学物質(raw chemical)として投与することも可能であるが、活性成分を医薬組成物として提供することも可能である。従って、本発明は更に、治療的有効量の式(I)の化合物およびその塩および溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含有する医薬組成物を提供する。式(I)の化合物およびその塩および溶媒和物は、先に記載した通りである。担体、希釈剤または賦形剤は、製剤の他の成分と適合し得るという意味で許容されるものでなければならず、受容者に有害なものであってはならない。本発明のもう一つの態様に従い、式(I)の化合物、もしくはその塩および溶媒和物を、1種以上の製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合することを含む、医薬製剤の調製方法も提供される。
【0052】
医薬製剤は、単位投与量あたり既定量の活性成分を含有する単位投与量形態で提供することができる。このような投与量は、治療されている症状、投与経路および患者の年齢、体重および症状に依存して変動して良く、あるいは医薬製剤は、単位投与量あたり既定量の活性成分を含有する単位投与量形態で提供することができる。好ましい単位投与量製剤は、本明細書中で上記した日用量もしくは分割量、またはその適切な一部の活性成分を含有するものである。更に、こうした医薬製剤は、製薬の分野において周知の方法のいずれかで調製することができる。
【0053】
医薬製剤は、任意の適切な経路、例えば経口(口腔または舌下を含む)、直腸、鼻内、局所(口腔、舌下または経皮を含む)、経膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内または皮内を含む)経路によって投与するために適合させることができる。このような製剤は、製薬分野において公知の任意の方法によって、例えば活性成分を担体または賦形剤と合わせることによって、調製することができる。
【0054】
経口投与のために適合した医薬製剤は、カプセルまたは錠剤等の個別の単位;粉末または顆粒;水性もしくは非水性の液体中の溶液または懸濁液;可食性フォームまたはホイップ;あるいは水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして提供することができる。
【0055】
例えば、錠剤またはカプセルの形態で経口投与するためには、活性薬剤成分を、経口用の毒性のない製薬上許容される不活性の担体、例えばエタノール、グリセロール、水等と組み合わせることができる。粉末は、化合物を好適な微細な大きさに粉砕し、同様に粉砕した薬学的担体、例えば可食性の炭水化物(例えばデンプンまたはマンニトール等)と混合することによって調製する。香料、防腐剤、分散剤および着色剤が存在していても良い。
【0056】
カプセルは、上記の粉末混合物を調製し、形成したゼラチンシースに充填することによって製造する。コロイダルシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固形のポリエチレングリコール等の流動促進剤(glidant)および潤滑剤を、充填操作の前に粉末混合物に添加することができる。カプセルを服用した場合の医薬のアベイラビリティーを改善するために、寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム等の崩壊剤または可溶化剤を添加することもできる。
【0057】
更に、望ましい場合もしくは必要な場合は、混合物中に好適な結合剤、潤滑剤、崩壊剤および着色剤を配合することもできる。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然の糖類(例えばグルコースまたはβ-ラクトース)、トウモロコシ甘味料、天然および合成のゴム(例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス等が挙げられる。これらの投与形態において使用される潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては、限定するものではないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等が挙げられる。錠剤は、例えば粉末混合物を調製し、顆粒化またはスラッグ化し、潤滑剤および崩壊剤を添加し、そして錠剤に圧縮することによって製剤化される。粉末混合物は、化合物を、適切に粉砕し、上記の希釈剤または基材と共に、また場合によって結合剤(例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、またはポリビニルピロリドン)、溶解遅延剤(例えばパラフィン)、吸収促進剤(例えば第四級塩)および/または吸着剤(例えばベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウム)と混合することによって調製する。粉末混合物は、結合剤(例えばシロップ、デンプンペースト、アカディアゴム粘液またはセルロース性もしくはポリマー性の物質の溶液)と共に湿潤させ、スクリーンを通過させることによって顆粒化することができる。顆粒化の別法として、粉末混合物を錠剤製造装置に通すことができ、その結果、顆粒に破砕される不完全に形成したスラッグが得られる。錠剤形成金型への付着(sticking)を防止するために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱物油を添加して顆粒を滑らかにすることができる。次いで滑らかになった混合物を錠剤に圧縮する。本発明の化合物は、自由流動性の不活性担体と組み合わせ、顆粒化またはスラッグ化工程を経ずに直接錠剤に圧縮することもできる。シェラックの密閉コーティング、糖またはポリマー性物質のコーティングおよびワックスの光沢コーティングよりなる透明または不透明の保護コーティングを提供することができる。異なる単位投与量を識別するためにこれらのコーティングに染料を加えることができる。
【0058】
溶液、シロップおよびエリキシル等の経口用の液体は、所定の量が既定量の化合物を含有するように単位投与量形態に調製することができる。シロップは化合物を適切に味を付けた水溶液に溶解して調製することができ、一方エリキシルは毒性のないアルコール性ビヒクルを使用して調製する。懸濁液は化合物を毒性のないビヒクルに分散することによって製剤化することができる。エトキシル化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテル等の可溶化剤および乳化剤、防腐剤、ペパーミント油等の風味添加剤、または天然甘味料またはサッカリンまたは他の人工甘味料等も添加することができる。
【0059】
適切な場合には、経口投与のための単位投与量製剤をマイクロカプセル化することができる。製剤はまた、例えばポリマー、ワックス等で粒子状の物質を被覆または埋め込むことによってその放出を延長または持続させるように調製することもできる。
【0060】
式(I)の化合物、およびその塩および溶媒和物は、リポソーム送達系、例えば小さな単ラメラ小胞、大きな単ラメラ小胞および多重ラメラ小胞の形態で投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファジチルコリン等の種々のリン脂質から形成することができる。式(I)の化合物、およびその塩および溶媒和物はまた、化合物分子が連結した個々の担体としてモノクローナル抗体を使用して送達することもできる。化合物はまた、標的を定めることができる薬剤担体として可溶性ポリマーと連結することもできる。このようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換したポリエチレンオキシドポリリシンを挙げることができる。更に、化合物は、薬剤の制御放出を達成するために有用な一群の生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸、ポリイプシロン(polepsilon)カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよびヒドロゲルの架橋型もしくは両親媒性ブロックコポリマーに連結することができる。
【0061】
経皮投与のために適合した医薬製剤は、受容者の表皮と長期間密に接触したままであることが意図される分離型パッチとして提供することができる。例えば、活性成分は、Pharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)に概説されているイオン導入(iontophoresis)によってパッチから送達され得る。
【0062】
局所投与のために適合した医薬製剤は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾルまたは油として製剤化することができる。
【0063】
眼または他の外部組織、例えば口および皮膚の治療のためには、製剤は好ましくは局所用軟膏またはクリームとして適用される。軟膏に製剤化する場合、活性成分をパラフィン性または水混和性の軟膏基材と共に使用することができる。あるいはまた、活性成分を、水中油型のクリーム基材または油中水型の基材と共にクリームに製剤化することができる。
【0064】
眼への局所投与のために適合した医薬製剤としては、活性成分が好適な担体、特に水性溶媒中に溶解または懸濁した点眼剤が挙げられる。
【0065】
口内への局所投与のために適合した医薬製剤としては、ロゼンジ、トローチおよび洗口剤が挙げられる。
【0066】
直腸投与のために適合した医薬製剤は、座剤または浣腸剤として提供することができる。
【0067】
担体が固体である、鼻内投与のために適合した医薬製剤としては、例えば20〜500ミクロンの範囲の粒子サイズを有する粗い粉末が挙げられ、これは鼻から吸い込む方法で、すなわち、鼻の近くに保持した粉末容器から鼻腔を通して急速吸入することによって投与される。担体が液体である、鼻内スプレーまたは点鼻薬としての投与のために好適な製剤としては、活性成分の水性または油性の溶液が挙げられる。
【0068】
吸入によって投与するために適合した医薬製剤としては、微粒子のダストまたはミストが挙げられ、これは種々の型の計量式投与加圧エアロゾル、ネブライザーまたは吸入器によって生成させることができる。
【0069】
経膣投与のために適合した医薬製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤として提供することができる。
【0070】
非経口投与のために適合した医薬製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図される受容者の血液と等張にする溶質、を含み得る水性および非水性の無菌の注射用溶液;および懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は単位投与量または複数回投与量用の容器、例えば密閉したアンプルおよびバイアルで提供することができ、また使用直前に無菌の液体担体(例えば注射用の水)の添加のみを必要とする凍結乾燥 (lyophilized)状態で保存することができる。即時調製(extemporaneous)注射用溶液および懸濁液は、無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0071】
特に上記した成分に加えて、製剤は、当該製剤の型に関して当分野において慣用の他の薬剤を含んでいても良く、例えば、経口投与のために好適なものは香料を含んでいても良いことは理解されたい。
【0072】
本発明の化合物の治療的有効量は数多くの因子、例えば、ヒトまたは他の動物の年齢および体重、治療を必要とする正確な症状およびその重症度、製剤の性質、および投与経路に依存し、最終的には担当の医師または獣医の裁量であろう。その塩または溶媒和物の有効量は、式(I)の化合物自体の有効量の比率として決定することができる。同様の投与量が上記の他の症状の治療に適切であろうことは認識される。
【0073】
本発明の化合物は、標準的な化学を含む、種々の方法で製造することができる。先に定義した任意の変数は、他に示さない限り先に定義した意味を有する。説明のために一般的な合成方法を以下に示し、次いで本発明の特定の化合物を実施例において調製する。
【0074】
一般式(I)の化合物は、以下の合成スキームで一部を示すように、有機合成分野で公知の方法によって調製することができる。以下に記載するスキームにおいて、感受性もしくは反応性の基のための保護基は、化学の一般原理に従って必要な場合に使用されることが十分に理解されている。保護基は有機合成の標準的な方法に従って扱う(T.W. GreenおよびP.G.M. Wuts (1991) 「有機合成における保護基(Protecting Groups in Organic Synthesis)」 John Wiley & Sons)。これらの基は、当業者には容易にわかる方法を使用して、化合物の合成の都合の良い段階で除去される。プロセス並びに反応条件およびその実施順序の選択は、式(I)の化合物の調製と矛盾しないものとする。
【0075】
一般式(I)の化合物は、スキーム1に説明し、以下の実施例で更に詳細に記載する合成手順に従って調製することができる。
【化12】

【0076】
5-ブロモ-2,4-ジクロロピリミジンの選択的4-クロロ置換を、アニリンおよびアミン塩基(限定するものではないがトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンの存在下、またはイソプロピルアルコールまたは2-プロパノール等の適切な溶媒中、80℃〜110℃において実施し、Aを得ることができる。4-アニリノ-ピリミジンAは、イソプロピルアルコールまたは2-プロパノール等の適切な溶媒中80℃〜110℃において、酸(濃HCLまたは3N HCl)の存在下でアニリンで処理することによってジアニリノ化合物Bに変換することができる。
【0077】
本発明の一部の実施形態を単なる例として以下に説明する。例示された化合物についての物理的データは、これらの化合物に割り当てられた構造と一致している。
【実施例】
【0078】
本明細書において使用する場合、これらのプロセス、スキームおよび実施例において使用する記号および慣例は、現代の科学文献、例えばthe Journal of the American Chemical Societyまたはthe Journal of Biological Chemistryで使用されるものと一致している。標準的な1文字または3文字の略号は、一般的にアミノ酸残基を示すために使用され、他に記載のない限り、これらはL-配置であることを前提とする。他に記載のない限り、全ての出発物質は業者から入手し、更に精製することなく使用した。具体的には、実施例および明細書を通じて以下の略号を使用する場合がある:
g(グラム); mg(ミリグラム);
L(リットル); mL(ミリリットル);
μL(マイクロリットル); psi(ポンド/平方インチ);
M(モル濃度); mM(ミリモル濃度);
i. v.(静脈注射); Hz(ヘルツ);
MHz(メガヘルツ); mol(モル);
mmol(ミリモル); rt(室温);
min(分); h(時間);
mp(融点); TLC(薄層クロマトグラフィー);
Tr(保持時間); RP(逆相);
MeOH(メタノール); i-PrOH(イソプロパノール);
TEA(トリエチルアミン); TFA(トリフルオロ酢酸);
TFAA(無水トリフルオロ酢酸); THF(テトラヒドロフラン);
DMSO(ジメチルスルホキシド); AcOEt(酢酸エチル);
DME(1,2-ジメトキシエタン); DCM(ジクロロメタン);
DCE(ジクロロエタン); DMF(N,N-ジメチルホルムアミド);
DMPU(N,N'-ジメチルプロピレン尿素); CDI(1,1’-カルボニルジイミダゾール);
IBCF(イソブチルクロロホルメート); HOAc(酢酸);
HOSu(N-ヒドロキシスクシンイミド); HOBT(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール);
mCPBA(メタ-クロロ過安息香酸);
EDC(1-[(3-ジメチルアミノ) プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩);
BOC(tert-ブチルオキシカルボニル); FMOC(9-フルオレニルメトキシカルボニル);
DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド); CBZ(ベンジルオキシカルボニル);
Ac(アセチル); atm(気圧);
TMSE(2-(トリメチルシリル)エチル); TMS(トリメチルシリル);
TIPS(トリイソプロピルシリル); TBS(t-ブチルジメチルシリル);
DMAP(4-ジメチルアミノピリジン); BSA(ウシ血清アルブミン);
ATP(アデノシン三リン酸); HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ);
DMEM(ダルベッコ修飾イーグル培地);
HPLC(高圧液体クロマトグラフィー);
BOP(ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロライド);
TBAF(テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオライド);
HBTU(O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート);
HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸);
DPPA(ジフェニルホスホリルアジド);
fHNO3(発煙HNO3);および
EDTA(エチレンジアミン四酢酸)。
【0079】
中間体実施例1:4位にアミンを導入するための一般的方法
5-ブロモ-2-クロロ-N-[2-(メチルオキシ)フェニル]-4-ピリミジンアミンの調製
【化13】

【0080】
n-ブタノールに溶解させた固体の5-ブロモ-2,4-ジクロロピリミジン(2.0g、1.0当量)(0.4M)に2-(メチルオキシ)アニリン(0.99mL、1.0当量)およびジイソプロピルエチルアミン(2.3mL、1.5当量)を添加した。溶液を110℃で約5時間加熱した。50mLの冷水を添加し、混合物を周囲温度まで冷却させた。白色固体を濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し(2×10mL)、75%の収率で5-ブロモ-2-クロロ-N-[2-(メチルオキシ)フェニル]-4-ピリミジンアミンを得た。
【0081】
1H NMR (400 MHz, DMSO-D6) ppm 2.5 (dt, J=3.5, 1.7 Hz, 10 H) 3.3 (s, 15 H) 3.8 (s, 3 H) 7.0 (td, J=7.6, 1.3 Hz, 1 H) 7.1 (dd, J=8.3, 1.4 Hz, 1 H) 7.2 (m, 1 H) 7.7 (dd, J=8.0, 1.6 Hz, 1 H) 8.7 (s, 1 H). 13C NMR (400MHz, DMSO-D6) ppm 157.9, 157.8, 157.7, 151.8, 126.4, 126.1, 124.2, 120.4, 111.8, 103.4, 55.9. LC/MS: m/z 318 (M+1)+
実施例2:2位にアニリンを導入するための一般的方法
5-ブロモ-N2-(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)-N4-[2-(メチルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミンの調製
【化14】

【0082】
n-ブタノールに溶解させた固体の5-ブロモ-2-クロロ-N-[2-(メチルオキシ)フェニル]-4-ピリミジンアミン(1.0g、1.0当量)(0.4M)に4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}アニリン塩酸塩(780mg、1.0当量)および3N HCl(1mL)を添加した。110℃で5時間加熱した後、高温の反応混合物を冷水中に注ぎ、濾過した。濾液を回収し、真空下で溶媒を除去し、残った残渣を酢酸エチルに溶解した。飽和NaHCO3および食塩水で洗浄した(2×)。硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で溶媒を除去し、65%の収率で薄い褐色固体として5-ブロモ-N2-(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)-N4-[2-(メチルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミンを得た。
【0083】
1H NMR (400 MHz, DMSO-D6) d ppm 1.0 (t, J=7.1 Hz, 4 H) 2.5 (dt, J=3.7, 1.8 Hz, 12 H) 2.5 (t, J=7.0 Hz, 3 H) 2.7 (t, J=6.3 Hz, 2 H) 3.3 (s, 4 H) 3.8 (s, 2 H) 3.9 (t, J=6.3 Hz, 1 H) 6.8 (d, J=9.0 Hz, 1 H) 6.9 (ddd, J=8.2, 6.0, 2.5 Hz, 1 H) 7.1 (m, 2 H) 7.4 (d, J=8.8 Hz, 1 H) 8.1 (m, 1 H). LC/MS: m/z 245 (M+1)+
表1に記載の化合物を、本質的に上記実施例2に記載したようにして調製した。
【表1】



【0084】
Wee1阻害活性についてのin vitroアッセイ
Wee1キナーゼ活性の阻害は、アミノ酸1-13が欠失した組み換え発現ヒトWee1キナーゼを使用して決定した。アッセイの基質は、コード配列を改変してキナーゼ活性を除去し(K33R)、化学的にビオチン化した組み換え発現CDK1(cdc2/サイクリンB)であった。Wee1のキナーゼ活性を、ユーロピウム標識抗ホスホチロシン抗体およびストレプトアビジン標識アロフィコシアニンを用いて時間分解蛍光共鳴エネルギー転移技術で定量した。試験化合物を、典型的には3倍希釈した10μM〜0.2nMのアッセイ濃度で11点の希釈範囲にわたってアッセイした。このアッセイを使用して、実施例2-19に記載した化合物全てについてpIC50値を算出した。試験した化合物の全てが5.0以上のpIC50値を有していた。
【0085】
Wee1阻害活性についての細胞アッセイ
Wee1阻害活性は、細胞ベースのELISAアッセイを使用して測定することができる。細胞がS-期に入るのを遮断するアフィジコリンを使用してHela細胞を同調させる。次いで、およそ7-9時間のアフィジコリン処理から細胞を解放してG2-Mの移行期にある細胞を得る。続いて、抗cdc2抗体および抗ホスホcdc2(Tyr15)抗体を使用して、サンドイッチELISAでWee1の標的cdc2のリン酸化レベルを測定することができる。この細胞アッセイを使用して、実施例2、3、および19に記載の化合物についてpIC50値を算出した。3つ全ての化合物は、このアッセイにおいて5.0以上のpIC50値を有していた。
【0086】
当業者であれば、上記のin vitro HTRFアッセイおよび細胞アッセイ等の酵素活性の測定作業が変動しやすいことを認識するであろう。従って、上記のpIC50の値が単に例示的なものであることは理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物またはその塩。
【化1】

[式中、
Jは以下から選択され;
【化2】

mは0または1であり;
nは0、1、または2であり;
R1はハロ、-CN、-NH2、C1-C3アルコキシ、アリールオキシ、-C(O)N(H)R'、-C(O)OR''、または-(CH2)qXであり;
qは0または1であり;
Dは以下のものよりなる群から選択され;
【化3】

R2は-O(CH2)oNR'R''または-(CH2)oXであり;
pは1であり;
oは1または2であり;
R'は-HまたはC1-C4 アルキルであり;
R''はC1-C4アルキルであり;そして
Xはヘテロシクリルまたはヘテロアリールである。]
【請求項2】
Jが以下のものである、請求項1または2記載の化合物。
【化4】

[式中、
mは0または1であり;
nは0、1、または2であり;
R1はハロ、-CN、-NH2、C1-C3アルコキシ、アリールオキシ、-C(O)N(H)R'、-C(O)OR''、場合により少なくとも1個のC1-C3アルキルで置換されているヘテロアリール、および-(CH2)qXから選択され;そして
R'は-HまたはC1-C4アルキルである。]
【請求項3】
mが1であり、nが0であり、R1がC1-C3アルコキシであり、そしてR'が-Hである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
Dが以下のものであり、
【化5】

R2が-O(CH2)oNR'R''または-(CH2)oXであり;
pが1であり;
oが1または2であり;
R'が-HまたはC1-C4 アルキルであり;そして
R''がC1-C4アルキルである、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
R2が-(CH2)oXである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
以下よりなる群から選択される、請求項1記載の化合物、およびその塩:
5-ブロモ-N2-(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)-N4-[2-(メチルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン;
2-{[5-ブロモ-2-({3-[2-(4-モルホリニル)エチル]フェニル}アミノ)-4-ピリミジニル]アミノ}-N-(1-メチルプロピル)ベンズアミド;
2-[(5-ブロモ-2-{[4-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)フェニル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]-N-(1-メチルプロピル)ベンズアミド;
2-メチルプロピル2-({5-ブロモ-2-[(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)アミノ]-4-ピリミジニル}アミノ)ベンゾエート;
5-ブロモ-N4-[2-(メチルオキシ)フェニル]-N2-{3-[2-(4-モルホリニル)エチル]フェニル}-2,4-ピリミジンジアミン;
5-ブロモ-N4-[2-(メチルオキシ)フェニル]-N2-[4-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン;
2-メチルプロピル2-{[5-ブロモ-2-({3-[2-(4-モルホリニル)エチル]フェニル}アミノ)-4-ピリミジニル]アミノ}ベンゾエート;
5-ブロモ-N2-(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)-N4-[3-(1-ピペリジニルメチル)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン;
3-({5-ブロモ-2-[(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)アミノ]-4-ピリミジニル}アミノ)ベンゾニトリル;
5-ブロモ-N2-{3-[2-(4-モルホリニル)エチル]フェニル}-N4-[2-(フェニルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン;
5-ブロモ-N4-[3-(1-ピペリジニルメチル)フェニル]-N2-[4-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン;
3-[(5-ブロモ-2-{[4-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)フェニル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]ベンゾニトリル;
2-{[5-ブロモ-2-(4-メチル-1-ピペラジニル)-4-ピリミジニル]アミノ}-N-(1-メチルプロピル)ベンズアミド;
5-ブロモ-N4-[2-(3-フルオロフェニル)エチル]-N2-[4-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン;
5-ブロモ-N4-[2-(4-モルホリニル)エチル]-N2-{3-[2-(4-モルホリニル)エチル]フェニル}-2,4-ピリミジンジアミン;
5-ブロモ-N2-(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)-N4-[2-(3-フルオロフェニル)エチル]-2,4-ピリミジンジアミン;
5-ブロモ-N2-(4-{[2-(ジエチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)-N4-{[2-(メチルオキシ)フェニル]メチル}-2,4-ピリミジンジアミン;
5-ブロモ-N2-(3-{[2-(ジメチルアミノ)エチル]オキシ}フェニル)-N4-[2-(メチルオキシ)フェニル]-2,4- N4-[2-(メチルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン。
【請求項7】
治療的有効量の請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物と、1種以上の製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含有する医薬組成物。
【請求項8】
不適切なWee1活性によって仲介される哺乳動物における障害の治療方法であって、治療的有効量の請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物を該哺乳動物に投与することを含む、上記方法。
【請求項9】
哺乳動物における癌の治療方法であって、治療的有効量の請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物を該哺乳動物に投与することを含む、上記方法。
【請求項10】
治療において使用するための、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
不適切なWee1活性によって仲介される障害の治療において使用するための医薬の調製における、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項12】
癌の治療において使用するための医薬の調製における、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2010−522186(P2010−522186A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554639(P2009−554639)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/056591
【国際公開番号】WO2008/115738
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(597173680)スミスクライン ビーチャム コーポレーション (157)
【Fターム(参考)】