説明

化合物

【課題】有機溶媒への溶解性に優れる化合物を提供する。
【解決手段】式(I)で表される化合物。式(I)中、Lは、炭素数1〜8のアルカンジイル基を表す。R2は、水素原子、シアノ基又はカルバモイル基を表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基又はトリフルオロメチル基を表す。R及びRは、互いに独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシ基又はシアノ基を表す。p及びqは、互いに独立に、0〜2の整数を表す。pが2である場合、複数のRは互いに同一であるか相異なり、qが2である場合、複数のRは互いに同一であるか相異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料として有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
染料は、例えば、繊維材料、液晶表示装置、インクジェットなどの分野で反射光又は透過光を利用して色表示するために使用されている。このような染料としては、例えば、下記式で表される化合物が知られている(特許文献1実施例1)。
【0003】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−153977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から知られる上記の化合物では、有機溶媒への溶解性が十分に満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]〜[4]を提供するものである。
[1]式(I)

[式(I)中、Lは、炭素数1〜8のアルカンジイル基を表す。
2は、水素原子、シアノ基又はカルバモイル基を表す。
は、炭素数1〜4のアルキル基又はトリフルオロメチル基を表す。
及びRは、互いに独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシ基又はシアノ基を表す。
p及びqは、互いに独立に、0〜2の整数を表す。pが2である場合、複数のRは互いに同一であるか相異なり、qが2である場合、複数のRは互いに同一であるか相異なる。]
で表される化合物。
[2]R2が、シアノ基である[1]記載の化合物。
[3][1]又は[2]記載の化合物を有効成分とする染料。
[4][3]記載の染料を含む着色組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の化合物は、有機溶媒への溶解性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の化合物は、式(I)で表される化合物(以下、化合物(I)ということがある。)である。本発明の化合物には、その互変異性体も含まれる。
【0009】

【0010】
[式(I)中、Lは、炭素数1〜8のアルカンジイル基を表す。
2は、水素原子、シアノ基又はカルバモイル基を表す。
は、炭素数1〜4のアルキル基又はトリフルオロメチル基を表す。
及びRは、互いに独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシ基又はシアノ基を表す。
p及びqは、互いに独立に、0〜2の整数を表す。pが2である場合、複数のRは互いに同一であるか相異なり、qが2である場合、複数のRは互いに同一であるか相異なる。]
【0011】
また、本発明の化合物は、式(II)で表される化合物が好ましい。式(II)で表される化合物であると、本発明の化合物は、有機溶媒への溶解性に優れる。

[式(II)中、L、R〜R、p及びqは、上記と同じ意味を表す。]
【0012】
は、水素原子、シアノ基、又はカルバモイル基である。中でも、シアノ基が、原料を入手しやすいため、好ましい。
【0013】
は、炭素数1〜4のアルキル基又はトリフルオロメチル基である。
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、好ましくはメチル基である。
【0014】
及びRにおける炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の直鎖状アルキル基;
イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、イソペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、1−プロピルブチル基、1−(1−メチルエチル)ブチル基、1−(1−メチルエチル)−2−メチルプロピル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、6−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、1−n−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、1−(1−メチルエチル)ペンチル基、1−ブチルブチル基、1−ブチル−2−メチルブチル基、1−ブチル−3−メチルブチル基、1−(1,1−ジメチルエチル)ブチルブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、1−エチル−1−メチルブチル基、1−エチル−2−メチルブチル基、1−エチル−3−メチルブチル基、2−エチル−1−メチルブチル基、2−エチル−3−メチルブチル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1,2−ジメチルヘキシル基、1,3−ジメチルヘキシル基、1,4−ジメチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、2,3−ジメチルヘキシル基、2,4−ジメチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、3,4−ジメチルヘキシル基、3,5−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、4,5−ジメチルヘキシル基、1−エチル−2−メチルペンチル基、1−エチル−3−メチルペンチル基、1−エチル−4−メチルペンチル基、2−エチル−1−メチルペンチル基、2−エチル−2−メチルペンチル基、2−エチル−3−メチルペンチル基、2−エチル−4−メチルペンチル基、3−エチル−1−メチルペンチル基、3−エチル−2−メチルペンチル基、3−エチル−3−メチルペンチル基、3−エチル−4−メチルペンチル基、1−プロピル−1−メチルブチル基、1−プロピル−2−メチルブチル基、1−プロピル−3−メチルブチル基、1−(1−メチルエチル)−1−メチルブチル基、1−(1−メチルエチル)−2−メチルブチル基、1−(1−メチルエチル)−3−メチルブチル基、1,1−ジエチルブチル基、1,2−ジエチルブチル基等の分枝鎖状アルキル基が挙げられる。
中でも、化合物(I)の有機溶媒への溶解性が高くなる傾向があるため、炭素数4〜8の分枝鎖状アルキル基が好ましい。
【0015】
炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0016】
における炭素数1〜8のアルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基等が挙げられる。
【0017】
p及びqは、互いに独立に、0〜2の整数である。pが2である場合、複数のRは互いに同一であるか相異なり、qが2である場合、複数のRは互いに同一であるか相異なる。中でも、化合物(I)の有機溶媒への溶解性が高くなる傾向があるため、p及びqは、互いに独立に、0又は1であることから好ましい。
【0018】

[式中、R及びpは、上記と同じ意味を表す。]
で表される基としては、例えば、式(f−1)〜式(f−15)で表される基等が挙げられる。
【0019】

【0020】

【0021】

[式中、R及びqは、上記と同じ意味を表す。]
で表される基としては、例えば、式(g−1)〜式(g−15)で表される基等が挙げられる。
【0022】

【0023】

【0024】
化合物(I)の製造が容易であるため、



とは、同じ基であることが好ましい。
【0025】
化合物(I)としては、例えば、化合物(I−1)〜化合物(I−58)等が挙げられる。尚、Fは、

を表し、Gは、

を表す。表1中、F欄およびG欄は、上記に示した基の式の番号を表す。

【0026】
【表1】

【0027】

【0028】
中でも、有機溶媒への溶解性が高いため、化合物(I−1)が好ましい。
【0029】
化合物(I)は、例えば、特公平7−88633号公報記載の方法に従って、ジアゾニウム塩とピリドン化合物とをジアゾカップリングすることにより製造できる。
化合物(I)の製造に用いられる式(a2)で表されるジアゾニウム塩は、例えば、式(a1)で表されるアミンを、亜硝酸、亜硝酸塩又は亜硝酸エステルによりジアゾ化することによって得ることができる。
【0030】

【0031】
[式(a1)及び式(a2)中、Aは、無機アニオン又は有機アニオンを表す。]
【0032】
前記無機アニオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン等が挙げられる。前記有機アニオンとしては、例えば、CH−COO、C−COOなどが挙げられる。好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、CH−COOである。
【0033】
式(a2)で表されるジアゾニウム塩と、式(b)で表される化合物とを、水性溶媒中でジアゾカップリングすることにより、式(d1)で表される化合物(以下「化合物(d1)」という場合がある)を製造することができる。反応温度は、−5℃〜60℃が好ましく、0℃〜30℃がより好ましい。反応時間は、1時間〜12時間が好ましく、1時間〜4時間がより好ましい。前記水性溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0034】

【0035】
[式(b)及び式(d1)中、R、R及びLは、上記と同じ意味を表す。]
【0036】
次いで、化合物(d1)と式(c1)で表される化合物(以下「化合物(c1)」という場合がある)とを、有機溶媒の存在下で反応させることで、式(d2)で表される化合物(以下「化合物(d2)」という場合がある)を得ることができる。反応温度は、30℃〜80℃が好ましく、50℃〜70℃がより好ましい。反応時間は、1時間〜4時間が好ましく、1時間〜2時間がより好ましい。
【0037】

【0038】
[式(c1)及び式(d2)中、R〜R、L及びpは上記と同じ意味を表す。Zは塩素原子又は臭素原子を表す。]
【0039】
前記有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ニトロベンゼンなどのニトロ炭化水素系溶媒、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、1−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒が挙げられる。
【0040】
化合物(c1)の使用量は、化合物(d1)1モルに対して、好ましくは1モル以上1.5モル以下であり、より好ましくは1モル以上1.2モル以下である。
【0041】
反応の際、反応をスムーズに進行させるために、酸性触媒を加えるとさらに好ましい。
酸性触媒としては、硫酸、塩酸などの鉱酸などが挙げられる。
【0042】
これらの触媒の使用量は任意であるが、化合物(c1)1モルに対して、
好ましくは0.01モル以上4モル以下、さらに好ましくは、0.8〜2モルである。
【0043】
次いで、化合物(d2)と式(c2)で表される化合物(以下「化合物(c2)」という場合がある)とを、有機溶媒の存在下で反応させることで、化合物(I)を得ることができる。反応温度は、30℃〜180℃が好ましく、50℃〜120℃がより好ましい。反応時間は、1時間〜12時間が好ましく、1時間〜4時間がより好ましい。
【0044】

[式(c2)中、R及びqは上記と同じ意味を表す。Zは塩素原子又は臭素原子を表す。]
【0045】
前記有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ニトロベンゼンなどのニトロ炭化水素系溶媒、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、1−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒が挙げられる。
【0046】
化合物(c2)の使用量は、化合物(d2)1モルに対して、好ましくは1モル以上1.5モル以下であり、より好ましくは1モル以上1.2モル以下である。
【0047】
反応の際、反応をスムーズに進行させるために、酸性触媒を加えるとさらに好ましい。
酸性触媒としては、硫酸、塩酸などの鉱酸などが挙げられる。
これらの触媒の使用量は任意であるが、化合物(c2)1モルに対して、好ましくは0.01モル以上4モル以下、さらに好ましくは、0.8〜2モルである。
【0048】
反応混合物から目的化合物である化合物(I)を取得する方法は特に限定されず、公知の種々の手法が採用できる。例えば、反応混合物を酸(例えば、酢酸等)及び水と共に混合し、析出した結晶を濾取することが好ましい。前記酸は、予め酸の水溶液を調製してから、反応混合物を前記水溶液に添加することが好ましい。反応混合物を添加するときの温度は、好ましくは10℃以上50℃以下、より好ましくは20℃以上50℃以下、さらに好ましくは20℃以上30℃以下である。また反応混合物を酸の水溶液に添加後は、さらに上記の温度で0.5〜2時間程度攪拌することが好ましい。濾取した結晶は、水などで洗浄し、次いで乾燥することが好ましい。また必要に応じて、再結晶などの公知の手法によってさらに精製してもよい。
【0049】
かくして得られた本発明の化合物は、染料として有用である。また、本発明の化合物は、有機溶媒への溶解性が高いことから、特に、液晶表示装置などの表示装置のカラーフィルターに用いられる染料として有用である。
【0050】
本発明の染料は、本発明の化合物を有効成分とする染料である。
本発明の着色組成物は、着色剤(以下「着色剤(A)」という場合がある)として本発明の染料を含み、さらに樹脂(B)を含むことが好ましい。本発明の着色組成物は、さらに重合性化合物(C)、重合開始剤(D)及び溶剤(E)を含むことがより好ましい。
【0051】
着色剤(A)は、本発明の染料のほかに、さらに顔料及び/又は本発明の染料とは異なる染料を含んでいてもよい。
本発明の染料とは異なる染料としては、カラーインデックス(Colour Index)(The Society of Dyers and Colourists 出版)で、ソルベント(Solvent)、アシッド(Acid)、ベーシック(Basic)、リアクティブ(reactive)、ダイレクト(Direct)、ディスパース(Disperse)、又はバット(Vat)に分類されている染料等が挙げられる。より具体的には、以下のようなカラーインデックス(C.I.)番号の染料が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
C.I.ソルベントイエロー25,79,81,82、83,89;
C.I.アシッドイエロー7,23,25,42,65,76;
C.I.リアクティブイエロー2,76,116;
C.I.ダイレクトイエロー4,28,44,86,132;
C.I.ディスパースイエロー54,76;
C.I.ソルベントオレンジ41,54,56,99;
C.I.アシッドオレンジ56,74,95,108,149,162;
C.I.リアクティブオレンジ16;
C.I.ダイレクトオレンジ26;
C.I.ソルベントレッド24,49,90,91,118,119,122,124,125,127,130,132,160,218;
C.I.アシッドレッド73,91,92,97,138,151,211,274,289;
C.I.アシッドバイオレット102;
C.I.ソルベントグリーン1,5;
C.I.アシッドグリーン3,5,9,25,28;
C.I.ベーシックグリーン1;
C.I.バットグリーン1等。
【0052】
顔料としては、顔料分散レジストに通常用いられる有機顔料又は無機顔料が挙げられる。無機顔料としては、金属酸化物や金属錯塩のような金属化合物が挙げられ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属の酸化物又は複合金属酸化物が挙げられる。また有機顔料及び無機顔料として具体的には、カラーインデックス(Colour Index)(The Society of Dyers and Colourists 出版)で、ピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられる。より具体的には、以下のようなカラーインデックス(C.I.)番号の顔料が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0053】
C.I.ピグメントイエロー20、24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173及び180;
C.I.ピグメントオレンジ13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65及び71;
C.I.ピグメントレッド9、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、215、216、224、242、254、255及び、264;
C.I.ピグメントバイオレット14、19、23、29、32、33、36、37及び38;
C.I.ピグメントグリーン7、10、15、25、36、47及び58等。
【0054】
着色剤(A)の含有量は、着色組成物中の固形分に対して、好ましくは5〜60質量%である。ここで、固形分とは、着色組成物中の、溶剤を除く成分の合計をいう。
着色剤(A)中に含まれる本発明の染料の含有量は、好ましくは3〜100質量%である。
本発明の染料とは異なる染料、及び顔料は、それぞれ単独でも2種以上を組み合わせて本発明の染料と共に用いてもよい。
【0055】
樹脂(B)としては、特に限定されるものではなく、どのような樹脂を用いてもよい。樹脂(B)は、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸から導かれる構造単位を含む樹脂であることがより好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
【0056】
樹脂(B)としては、具体的には、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート共重合体、メタクリル酸/スチレン/ベンジルメタクリレート/N−フェニルマレイミド共重合体、メタクリル酸/スチレン/グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0057】
樹脂(B)のポリスチレン換算重量平均分子量は、5,000〜35,000が好ましく、より好ましくは6,000〜30,000である。
樹脂(B)の酸価は、50〜150が好ましく、より好ましくは60〜135である。
樹脂(B)の含有量は、着色組成物の固形分に対して、好ましくは7〜65質量%であり、より好ましくは13〜60質量%である。
【0058】
重合性化合物(C)は、重合開始剤(D)から発生した活性ラジカル、酸等によって重合しうる化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、重合性のエチレン性不飽和結合を有する化合物等が挙げられる。
【0059】
前記の重合性化合物(C)としては、重合性基を3個以上有する光重合性化合物であることが好ましい。重合性基を3以上有する光重合性化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。前記の光重合性化合物(C)は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性化合物(C)の含有量は、着色組成物の固形分に対して、5〜65質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜60質量%である。
【0060】
前記の重合開始剤(D)としては、活性ラジカル発生剤、酸発生剤等が挙げられる。活性ラジカル発生剤は熱又は光の作用によって活性ラジカルを発生する。前記の活性ラジカル発生剤としては、アルキルフェノン化合物、チオキサントン化合物、トリアジン化合物、オキシム化合物等が挙げられる。
前記のアルキルフェノン化合物としては、例えば、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0061】
前記のチオキサントン化合物としては、例えば、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。
【0062】
前記のトリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0063】
前記のオキシム化合物としては、例えば、O−アシルオキシム化合物が挙げられ、その具体例としては、N−ベンゾイルオキシ−1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1−オン−2−イミン、N−ベンゾイルオキシ−1−(4−フェニルスルファニルフェニル)オクタン−1−オン−2−イミン、N−アセトキシ−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタン−1−イミン、N−アセトキシ−1−[9−エチル−6−{2−メチル−4−(3,3−ジメチル−2,4−ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}−9H−カルバゾール−3−イル]エタン−1−イミン等が挙げられる。
【0064】
また、活性ラジカル発生剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物等を用いてもよい。
【0065】
前記の酸発生剤としては、例えば、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムp−トルエンスルホナート、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムp−トルエンスルホナート、4−アセトキシフェニル・メチル・ベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のオニウム塩類や、ニトロベンジルトシレート類、ベンゾイントシレート類等を挙げることができる。
前記の重合開始剤(D)は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
重合開始剤(D)の含有量は、樹脂(B)及び重合性化合物(C)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは1〜20質量部である。重合開始剤の含有量が、前記の範囲にあると、高感度化して露光時間が短縮され生産性が向上することから好ましい。
【0067】
溶剤(E)としては、例えば、エーテル類、芳香族炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エステル類、アミド類等が挙げられる。
【0068】
前記のエーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0069】
前記の芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。
前記のケトン類としては、例えば、アセトン、2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
前記のアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0070】
前記のエステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0071】
前記のアミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
着色組成物における溶剤(E)の含有量は、着色組成物に対して、好ましくは70〜95質量%であり、より好ましくは75〜90質量%である。
【0073】
本発明の着色組成物は、必要に応じて、界面活性剤、充填剤、他の高分子化合物、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、連鎖移動剤等の種々の添加剤を含んでもよい。
【0074】
本発明の化合物は、染料として有用である。モル吸光係数が高く、かつ有機溶媒への高い溶解性を示すことから、特に、液晶表示装置等の表示装置のカラーフィルタに用いられる染料として有用である。
また、本発明の化合物を含む着色組成物は、カラーフィルタをその構成部品の一部として備える表示装置(例えば、公知の液晶表示装置、有機EL装置等)、固体撮像素子等の種々の着色画像に関連する機器に、公知の態様で利用することができる。
【実施例】
【0075】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り、質量基準である。
【0076】
以下の実施例において、化合物の構造はNMR(JMM−ECA−500;日本電子(株)製)で確認した。
【0077】
〔実施例1〕
1,4−フェニレンジアミン−2−スルホン酸(東京化成工業(株)製)18.8部に水80部を加えた後、水酸化ナトリウム0.4部を加え、溶解させた。氷冷下、35%亜硝酸ナトリウム水溶液19.7部を加え、ついで35%塩酸26.2部を少しずつ加えて溶解させ2時間撹拌し、ジアゾニウム塩を含む懸濁液を得た。
【0078】
一方、アセト酢酸エチルエステル(東京化成工業(株)製)26.0部、シアノ酢酸メチル(東京化成製)20.8部及び2−アミノエタノール(和光純薬工業(株)製)24.4部を混合し、95℃で24時間攪拌した。上記の反応液を室温まで冷却後、水304部、35%塩酸35部の混合液中に添加し室温で1時間攪拌した。析出した結晶を吸引ろかの残渣として取得後乾燥し、式(b−1)で表される化合物20.4部を得た。
【0079】

【0080】
ついで、式(b−1)で表される化合物20.6部を水100部に懸濁させ、水酸化ナトリウムを用いて、pHを9.0に調整した。ここに、前記ジアゾニウム塩を含む懸濁液を15分かけてポンプで滴下した。滴下終了後、さらに30分間撹拌することで黄色の懸濁液を得た。1時間攪拌した。濾過して得た橙色固体を減圧下60℃で乾燥し、式(d−1)で表される化合物を38.4部得た。
【0081】

【0082】
次に、式(d−1)で表される化合物を40.5部に、N−メチルピロリドン(以下、NMPと略す)100部に加え、次いで塩化ベンゾイル(東京化成工業(株)製)14.0部を加え、70度で、1時間攪拌した。反応終了後、水100部に加え、生じる沈殿物をろ過し、式(d−2)で表される化合物を30.3部得た。
【0083】

【0084】
次に、式(d−2)で表される化合物を49.7部に、N−メチルピロリドン(以下、NMPと略す)100部に加え、次いで塩化ベンゾイル(東京化成工業(株)製)14.0部を加え、80度で、3時間攪拌した。反応終了後、水100部に加え、生じる沈殿物をろ過し、式(I−1)で表される化合物を43.2部得た。
この化合物は、1H-NMRにて構造を確認した。
1H-NMR(500MHz、δ値(ppm、TMS基準)、DMSO−d):2.55(3H,s),4.3(2H,s),4.46(2H,s),7.49〜7.60(4H,m),7.84〜8.20(4H,m),8.28(1H,s),10.52(1H,s),15.26(1H,s)
【0085】

【0086】
〔比較例1〕
実施例1において、1,4−フェニレンジアミン−2−スルホン酸の代わりに2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸を用い、前記式(b−1)で表される化合物の代わりに式(b−3)で表される化合物を用い、実施例1の化合物(I−1)と同様に合成し、式(x)で表される化合物を得た。
【0087】

【0088】
〈溶解性の評価〉
上記で得られた化合物のジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す)、N−メチルピロリドン(以下、NMPと略す)への溶解度を、以下のようにして求めた。
50mLサンプル管中、下記の割合で化合物と上記溶媒とを混合し、その後、サンプル管を密栓し、30℃で3分間超音波振動機にて振動させた。ついで室温で30分間放置後、吸引濾過し、その残渣を目視で観察した。不溶物が確認できなかった場合、溶解性は良好であると判断して表2に○と記し、不溶物が確認できた場合は、溶解性は不良であると判断して表2に×と記した。結果を、表2に示す。
1% 化合物0.1g、溶媒10g
3% 化合物0.3g、溶媒10g
5% 化合物0.1g、溶媒2g
10% 化合物0.1g、溶媒1g
【0089】
【表2】

【0090】
〔実施例2〕
〈着色組成物の調製〉
(A)着色剤:化合物(I−1):実施例1で合成した化合物 20部
(B−1)樹脂:メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(モル比;30/70;重量平均分子量10700、酸価70mgKOH/g) 70部
(C−1)重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製) 30部
(D−1)光重合開始剤:ベンジルジメチルケタール(イルガキュア651;BASFジャパン社製) 15部
(E−1)溶剤:ジメチルホルムアミド 680部
を混合して着色組成物を得る。
【0091】
〈カラーフィルタの作製〉
ガラス上に、上記で得た着色組成物をスピンコート法で塗布し、揮発成分を揮発させる。冷却後、パターンを有する石英ガラス製フォトマスク及び露光機を用いて光照射する。光照射後に、水酸化カリウム水溶液で現像し、オーブンで200℃に加熱してカラーフィルタを得る。
【0092】
上記の結果によれば、本発明の化合物は有機溶媒に対して高い溶解度を示すことがわかる。また、当該化合物を含む着色組成物は、異物の発生が少なく、高品質なカラーフィルタを作製することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の化合物は、有機溶媒への溶解性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

[式(I)中、Lは、炭素数1〜8のアルカンジイル基を表す。
2は、水素原子、シアノ基又はカルバモイル基を表す。
は、炭素数1〜4のアルキル基又はトリフルオロメチル基を表す。
及びRは、互いに独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシ基又はシアノ基を表す。
p及びqは、互いに独立に、0〜2の整数を表す。pが2である場合、複数のRは互いに同一であるか相異なり、qが2である場合、複数のRは互いに同一であるか相異なる。]
で表される化合物。
【請求項2】
2が、シアノ基である請求項1又は2記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の化合物を有効成分とする染料。
【請求項4】
請求項3記載の染料を含む着色組成物。

【公開番号】特開2012−224662(P2012−224662A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90791(P2011−90791)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】