化合物
本発明は、MMPタンパク質切断部位と結合している血管破壊剤(VDA)を含む血管破壊剤のプロドラッグ、およびがんの標的治療におけるこのようなプロドラッグの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管破壊剤のプロドラッグおよびこのような化合物のがんの標的治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
がん化学療法の分子的手法としての腫瘍脈管構造の標的化は、科学的最優先事項の1つとなりつつある。2つの薬物モデル、すなわち、腫瘍における新生血管の形成を防止するモデル(血管新生抑制モデル)および血管破壊を標的化するモデルが浮上している。
【0003】
単一の血管が、多くの腫瘍細胞の生残を支援する責任を負うので、わずかな割合でさえ腫瘍脈管構造が破壊すると、広範囲な腫瘍死および転移の遅延が誘導されることを実証した。脈管構造の主要成分をなす内皮細胞は、運動、侵入、結合、整列、および増殖のためのチューブリン細胞骨格に非常に依存している(Denekamp、J、Br J Cancer、45巻、136〜139頁(1982年))。したがって、この内皮微小管網を破壊する物質は、腫瘍血流の急速な崩壊および長期の血管遮断を引き起こし、広範な腫瘍細胞壊死で終わる(Tozerら、Nat Rev Cancer、5巻、423〜435頁(2005年);Lippert JW、Bioorg Med Chem、15巻、605〜615頁(2007年))。
【0004】
最も強力なクラスのがん治療薬の1つは、血管破壊剤(VDA)である。血管破壊剤は、インビトロでは優れた細胞毒性を特徴とするが、生体内では正常組織以上に腫瘍を死滅させる特異性が劣っている。さらに、チューブリン結合剤などの多くのVDAは、水に不溶であり、臨床評価の前に製剤化が必要である。本発明は、前記問題に対処することを目的とする。
【0005】
コルヒチンおよびその類似体は、腫瘍における出血およびその後の広範な壊死(Tozerら、Nat Rev Cancer、5巻、423〜435頁(2005年))をチューブリン結合および微小管脱重合の誘導の直接の結果(Chaudriら、J Mol Biol、303巻、679〜692頁(2000年))として引き起こす強力なVDAである。しかし、コルヒチンは、高い毒性レベルおよび結果として起こる非常に狭い治療係数のため、臨床応用可能な抗がん治療剤としての固有値を示さなかった(Tozerら、Nat Rev Cancer、5巻、423〜435頁(2005年);Quinnら、J Med Chem、24巻、636〜639頁(1981年))。したがって、コルヒチンなどのVDAを腫瘍に対して選択的に標的化することは望ましいはずである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、強力な抗がん剤、特に血管破壊剤の全身投与による毒性作用を克服する系を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも一部は、腫瘍脈管構造におけるコルヒチンなどの血管破壊剤の選択的放出を可能にするタンパク質切断部位の選択に基づく。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、MMPタンパク質切断部位と結合している血管破壊剤(VDA)を含む化合物またはその医薬として許容される塩を提供する。本発明の文脈における「と結合している」という用語は、化学的架橋またはペプチド結合が含まれるがこれらに限定されない結合、一般に共有結合の直接的および間接的手段をすべて包含するよう意図されている。
【0009】
本発明の化合物は、塩の形態であってもよい。詳細には、塩は医薬として許容される塩であることができる。本開示の医薬として許容される塩は、塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から、通常の化学的方法によって合成できる。一般に、このような塩は、遊離酸または塩基型のこれらの化合物と化学量論量の適切な塩基または酸とを、水もしくは有機溶媒またはそれらの混合物中で反応させることによって調製でき、一般にはエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水媒体が好ましい。適当な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company,Easton、Pa.、US、1985年、1418頁に見られ、その開示を参照することによって本明細書中に組み入れる。さらに、Stahlら編、「Handbook of Pharmaceutical Salts Properties Selection and Use」、Verlag Helvetica Chimica Acta and Wiley−VCH、2002年を参照のこと。
【0010】
したがって、本開示は、親化合物がその酸塩または塩基塩を生成させることによって改変された、開示された化合物の医薬として許容される塩を含む。例を挙げると、例えば無機または有機の酸または塩基から形成される通常の非毒性塩または第四級アンモニウム塩がある。このような酸付加塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩が挙げられる。塩基塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミンなどの有機塩基との塩、ならびにアルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩などが挙げられる。また、塩基性窒素含有基は、塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどのハロゲン化低級アルキル、硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミルなどの硫酸ジアルキル、塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルなどの長鎖ハロゲン化物、臭化ベンジルおよびフェネチルなどのハロゲン化アラルキルなどで四級化されていてもよい。
【0011】
好ましい態様において、本発明は、式(I)の化合物
X−Y (I)
[式中、
Xは血管破壊剤(VDA)であり、
Yはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)タンパク質切断部位である]
を提供する。
【0012】
本発明による化合物は、過剰発現したMMPによって腫瘍環境内において活性でかつ強力なVDAに変換されるプロドラッグを提供する。本発明のプロドラッグの腫瘍選択的活性化は、VDAおよび場合によっては追加の活性成分の腫瘍レベルを上昇させ、かつ全身レベルを低下させ、それによってそれらの治療係数および有効性が大幅に上昇する。
【0013】
VDAは、多環系、例えば縮合または非縮合した二環式または三環式環系を含む。したがって、Xは、腫瘍血管に結合し、破壊することができる任意の多環系のVDAを含む。
【0014】
VDAは、3つのクラスに分けることができる。
(i)チューブリン上のコルヒチン結合部位においてチューブリンと相互作用するそれらの化合物;
(ii)ニチニチソウ(Catharanthus)(ビンカ(Vinca))アルカロイドとチューブリン上の共通結合部位を共有するそれらの化合物;
(iii)パシフィックユー(Pacific yew)の樹皮から単離された新規タキサンジテルペノイドであるパクリタキセルに類似している方式で安定な微小管の形成を促進する化合物。
【0015】
本発明の好ましい態様において、VDAはチューブリン結合剤である。チューブリン結合剤は、i)コルヒチン結合部位においてチューブリンと相互作用するもの(コルヒチン(N−アセチルコルヒノール−O−ホスファート(ZD6126)およびABT−751などのコルヒチン類似体を含む)、コルヒチノイド、コンブレタスタチン、フェンスタチン、ポドフィロトキシン、ステガナシン、アンフェチニル、およびスチルベンが挙げられるが、これらに限定されるものではない)と;ii)チューブリンのビンカ(Vinca)結合部位と相互作用するもの(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンフルニン、マイタンシノイド、ホモプソンA、リゾキシン、アウリスタチン(その類似体を含む)、およびドラスタチンが挙げられるが、これらに限定されるものではない)とからなる群から選択することができる。
【0016】
本発明のさらに好ましい態様において、VDAは、チューブリン内においてコルヒチン結合部位と相互作用するチューブリン結合剤である。本発明の一実施形態において、VDAはコルヒチンまたはその類似体/誘導体である。コルヒチン類似体または誘導体としては、アザデメチルコルヒチン、アザコルヒチン、N−メチルデスアセチルコルヒチン、デスアセチルコルヒチンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明の一実施形態において、VDAは非ペプチドVDAである。例えば、本発明によるVDAは、アウリスタチンでもその類似体でもないチューブリン結合剤であってもよい。
【0018】
あるいは、VDAは、コンブレタスタチン(例えば、コンブレタスタチンA−4 3−O−ホスファート)、アウリスタチン(その類似体を含む)、ドラスタチン、およびフラベノイド(例えば、腫瘍壊死因子αおよび5,6−ジメチルキサンテノン−4−酢酸(DMXAA)、フラボン酢酸(FAA))からなる群から選択される(ただし、これらに限定されない)チューブリン結合剤であってもよい。したがって、本発明の代替実施形態において、VDAはコンブレタスタチンである。
【0019】
本発明は、MMPファミリーのいずれかのメンバーを含む。MMPによるMMP切断部位におけるタンパク質切断によって、MMP切断部位と結合しているVDAおよび他の何らかの活性剤が活性型で放出される。
【0020】
MMPファミリーは、8つの構造群に分けられる。そのうち5群は分泌型MMPであり、3群は膜型MMP(MT−MMP)である。MT−MMPは細胞表面に局在している。本発明には、分泌型MMPおよび膜型MMPが含まれる。
【0021】
本発明の好ましい態様において、MMPは膜型(MT−MMP)である。したがって、本発明は、式I[式中、YはMT−MMPによって選択的に切断されるペプチド配列を含む]の化合物を提供する。MT−MMPは、
(i)I型の膜貫通型MT−MMP、例えばMMP−14(MT1−MMP)、MMP−15(MT2−MMP)、MMP−16(MT3−MMP)、およびMMP−24(MT5−MMP)と、
(ii)グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型構造群のMT−MMP、例えばMMP−17(MT4−MMP)およびMMP−25(MT6−MMP)と、
(iii)II型の膜貫通型クラス、例えばMMP−23と
からなる群から選択することができる。
【0022】
MMP切断部位は、MMPによって切断可能なアミド結合、典型的にはペプチド結合を有するいずれのペプチド配列を含んでもよい。好ましくは、Yは、2個〜20個のアミノ酸、例えば6個〜10個のアミノ酸(例えば、6個、7個または8個のアミノ酸)を含むペプチド配列である。アミノ酸は、D−アミノ酸またはL−アミノ酸のいずれであってもよい。
【0023】
MMPタンパク質切断部位は、配列
(i)P3’−P2’−P1’−P1−P2−P3
[式中、P1’〜P3’およびP1〜P3は同じでも異なっていてもよいが、アミノ酸残基であり、タンパク質切断はP1とP1’の残基間の結合で起こる]
を含んでもよい。好ましくは、MMPタンパク質切断部位は、P1とP1’との間の切断がMT−MMP、例えば、MT−MMP14によって選択的に起こるような、MT−MMP特異的切断部位である。
【0024】
MMPタンパク質切断部位は、配列
(ii)P3’−P2’−P1’−P1−P2−P3−P4
[式中、P1’〜P3’およびP1〜P4は同じでも異なっていてもよいが、アミノ酸残基であり、タンパク質切断はP1’とP1の残基間で起こる]
を含んでもよい。
【0025】
MMPタンパク質切断部位は、配列
(iii)P4’−P3’−P2’−P1’−P1−P2−P3−P4
[式中、P1’〜P4’およびP1〜P4は同じでも異なっていてもよいが、アミノ酸残基であり、タンパク質切断はP1’とP1の残基間で起こる]
を含んでもよい。
【0026】
本発明の好ましい一態様において、P1とP1’とは異なる。
【0027】
好ましくは、MMP切断部位は、MT−MMPによって選択的に切断されるペプチド配列を含む。したがって、好ましい態様において、本発明は、式(I)[式中、Yは、P1’が疎水性アミノ酸である配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。本明細書中では「疎水性」という用語は、FauchereおよびPliska Eur.J.Med Chem.10:39(1983年)に記載されるように、−1.10またはそれ以上の疎水度および/または0またはそれ以上の正味電荷を有するアミノ酸を意味することができる。疎水性または無極性アミノ酸はまた、生理的pHにおいて非荷電であって極性のない側鎖を有し、一般に水溶液とは混じらないアミノ酸を意味することができる。疎水性アミノ酸は、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、アラニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン、メチオニン、チロシンおよびトレオニンからなる群からこと選択されることができる。P1’は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸であることができる。あるいは、P1’は、芳香族側鎖を有するアミノ酸であることができる。P1’としては、非天然疎水性アミノ酸、例えば、ホモフェニルアラニン(Hof)を挙げることもできる。
【0028】
本発明の好ましい一態様は、式(I)[式中、Yは、P1が極性アミノ酸、例えば、アスパラギン(N)、セリン(S)またはグリシン(G)からなる群から選択されるアミノ酸である配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。切断部位におけるMT−MMPの選択性を改善するためには、P1はプロリンでないことが好ましい。したがって、本発明の一実施形態において、P1は、プロリンを除いたアミノ酸である。本発明の別の実施形態において、P1はグリシンである。
【0029】
本発明の好ましい一態様は、式(I)[式中、Yは、P2’が、例えば、アルギニン(R)、アラニン(A)、ロイシン(L)、アルパラギン酸(D)、チロシン(Y)、トレオニン(T)、セリン(S)およびプロリン(P)を含む極性非荷電アミノ酸および/または塩基性アミノ酸からなる群から選択される配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。切断部位におけるMT−MMPの選択性を改善するためには、P2’は、メチル化アミノ酸、例えば、N−メチルチロシンであることができる。本発明者らは、P2’がチロシンである場合には、非MT−MMP、例えばMMP2による切断がP1’−P2’部位とP2’−P3’部位の両方で起こることを発見した。したがって、本発明の一実施形態において、P2’はチロシンではない。
【0030】
本明細書中では、P3’残基は、任意のアミノ酸を含むことができる。本発明の一実施形態において、P3’はロイシン(L)である。存在する場合には、P4’残基は、求核性側鎖を有するアミノ酸、例えば、リジン(L)、システイン(C)、セリン(S)、チロシン(Y)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)を含むことができる。
【0031】
本発明の好ましい一態様は、式(I)[式中、Yは、P2が酸性(例えば、グルタミン酸)、塩基性、疎水性または極性アミノ酸からなる群から選択される配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。P2としては、非天然疎水性アミノ酸、例えば、シトルリン(Cit)を挙げることもできる。切断部位におけるMT−MMPの選択性を改善するためには、P2はプロリンでないことが好ましい。したがって、本発明の一実施形態において、P2は、プロリンを除いたアミノ酸である。
【0032】
本発明の好ましい一態様は、式(I)[式中、Yは、P3が、例えば、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)およびトレオニン(T)からなる群から選択される極性アミノ酸である配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。P3はプロリンでないことが好ましい。したがって、本発明の一実施形態において、P3はプロリンではない。本発明の別の実施形態において、P3はセリンである。
【0033】
本発明の好ましい一態様は、式(I)[式中、Yは、P4が、実質的な側鎖を有するアミノ酸、例えば、アルギニン(R)およびリジン(K)からなる群から選択されるアミノ酸を含む、側鎖中に塩基性基を有するアミノ酸である配列(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。切断部位におけるMT−MMPの選択性を改善するためには、P4はアルギニンであるのが好ましい。したがって、本発明の一実施形態において、P4はアルギニンである。
【0034】
本発明の好ましい一態様は、式(I)[式中、Yは、残基はいずれもプロリンではなく、かつR4がアルギニンである配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。
【0035】
残基P1〜P3またはP4はいずれも異なっていてもよい。あるいは、またはさらに、残基P1’〜P3’またはP4’はいずれも異なっている。
【0036】
本発明の一実施形態は、式(I)[式中、Yは、P1および/またはP2および/またはP3がプロリン以外のアミノ酸残基である配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。さらに、この実施形態において、P4はアルギニンである。
【0037】
本発明の別の一実施形態においては、式(I)[式中、Yは、P1’が疎水性アミノ酸であり、P1および/またはP2および/またはP3がプロリン以外のアミノ酸残基である配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物が提供される。
【0038】
本発明のさらに別の一実施形態において、式(I)[式中、Yは、P1’が疎水性アミノ酸であり、P4がアルギニンである配列(ii)または(iii)を含む]の化合物が提供される。さらに、この実施形態において、P1および/またはP2および/またはP3は、プロリン以外のアミノ酸残基である。
【0039】
別の一実施形態において、P1’はホモフェニルアラニンである。さらに別の、または好ましい一実施形態において、P1はGlyである。
【0040】
MMPタンパク質切断部位Yは、アミノ酸配列(iv)
−Hof−Gly− (iv)
を含んでもよい。
【0041】
MMPタンパク質切断部位Yは、アミノ酸配列(v)
−P2’−Hof−Gly−P2− (v)
[式中、P2およびP2’は本明細書に定義する通りである]
を含んでもよい。
【0042】
MMPタンパク質切断部位Yは、アミノ酸配列(vi)
−P2’−Hof−Gly−P2−P3−P4− (vi)
[式中、P2’〜P4’およびP2は本明細書に定義する通りである]
を含んでもよい。好ましくは、P4はアルギニンである。好ましくは、P3はプロリンではない。
【0043】
一実施形態において、本発明は、式(I)[式中、Yは配列−Leu−Tyr−Hof−Gly−Cit−Ser−Arg−を含む]の化合物を提供する。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、式(I)[式中、YはLeu−Gly残基間で切断が起こる配列−Leu−Gly−Leu−Pro−を含まない]の化合物を提供する。
【0045】
本発明は、式(I)[式中、切断部位Yは、配列中の1種または複数のアミノ酸がグリコシル化されて親水性、ひいては溶解性が高められているアミノ酸の配列を含む]の化合物を提供できる。残基のグリコシル化は、次の通りであることができる:
セリン、トレオニン、チロシンの側鎖を介しての、配列中のアミノ酸のO−グリコシル化、
アスパラギン酸、グルタミン酸の側鎖を介しての、配列中のアミノ酸のN−グリコシル化、および/または
システインを介しての、配列中のアミノ酸のS−グリコシル化。
【0046】
本発明は、式(I)[式中、切断部位Yは、配列中の1種または複数のアミノ酸がホスホリル化されて親水性、ひいては溶解性が高められているアミノ酸の配列を含む]の化合物を提供できる。適切なアミノ酸としては、セリン、トレオニン、チロシンが挙げられる。本発明の一実施形態において、式(I)[式中、Yは、P2’、例えば、チロシンがホスホリル化されている配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物が提供される。本発明の別の一実施形態において、式(I)[式中、Yは、P3および場合によってはP2’がホスホリル化されているアミノ酸である配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物が提供される。
【0047】
本発明はまた、式(I)[式中、切断部位Yは、一例としてアミド結合がオレフィン結合で置換されているペプチド類似体、例えば、ペプチド模倣物、Nα−および/またはCα−メチル化アミノ酸、非天然アミノ酸、ならびに当技術分野で知られている他のアプローチを含む]の化合物を提供する。当技術分野では、このようなペプチド模倣物アプローチは、切断の特異性を高めるのに使用され、その結果、望ましくない酵素加水分解を減少させるように働く。本発明の一実施形態において、Yは、アミノ酸配列内の1つまたは複数のアミド結合が、Nα−および/またはCα−メチル化アミノ酸で置換されている類似体を含む。
【0048】
本発明の実施形態は、式(I)の化合物を含み、式中、YはC末端部位およびN末端部位を含み、前記C末端部位は、Xに直接的または間接的に結合しており、前記N末端部位は、別の部分、例えば以下に記載するcまたはZに直接的または間接的に結合している。
【0049】
本発明の代替実施形態は、式(I)の化合物を含み、式中、YはC末端部位およびN末端部位を含み、前記N末端部位は、Xに直接的または間接的に結合しており、前記C末端部位は、別の部分、例えば以下に記載するcまたはZに直接的または間接的に結合している。
【0050】
本発明の好ましい一実施形態において、式(I)の化合物[式中、Xはコルヒチンまたはその類似体であり、Yは、本明細書に定義するアミノ酸配列(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)を含むペプチドである]を提供する。
【0051】
好ましい態様において、本発明は、式(II)の化合物
X−Y−c (II)
[式中、XおよびYは本明細書に定義する通りであり、
cは末端基または「キャップ形成基」である]を提供する。例えば、MMP以外の酵素によるペプチドの非特異的分解を防止するために、キャップ形成基を使用して、医薬用途でペプチド鎖をキャップすることができる。cは、脂肪族化合物、芳香族化合物、多環式化合物、炭水化物(例えば、単糖)、アミノ酸(D−アミノ酸を含む)からなる群から選択された(ただし、これらに限定されない)、ブロック基として働くN末端またはC末端上の任意の適切な部分を含むことができる。溶解性を改善するために、cは親水基、例えば、さらなる極性官能基を有する任意の前記化合物(例えば、酸、アミン、アルコール、フェノール)の親水基であることができる。
【0052】
cは、式(c)n[式中、nは1〜5の整数である]で表すことができる。本発明の一実施形態において、cは、式(c)n[式中、cはアミノ酸(例えば、非天然アミノ酸)であり、nは3である]で表される。本発明の一実施形態において、nが3である場合、cはセリンではない。別の実施形態において、cはセリンでもキナ酸でもない。
【0053】
本発明は、さらに「リンカー」を提供することができる。リンカーは、YのC末端および/またはN末端に設けられていてもよい。好ましくは、リンカーは、YのC末端に設けられている。好ましくは、リンカーは、Yのアミノ酸配列と連続している。リンカーは、Yと結合している任意の部分を含むことができ、化学的、酵素的に除去し、または同時に分解することができる。リンカーは、単一アミノ酸(例えば、チロシン)からなることができ、またはアミノ酸配列を含むことができる。リンカーが一続きのアミノ酸を含む場合、配列は、YにおけるMMPによる切断を容易にすることができる親水性領域を提供することができる。配列中の適当なアミノ酸、すなわちセリン、トレオニン、およびチロシンのO−グリコシル化によって、親水性、およびしたがって溶解性を高めることができる。
【0054】
したがって、本発明の好ましい態様において、式(III)の化合物
X−a−Y (III)
[式中、XおよびYは本明細書に定義する通りであり、
aはリンカーであり、リンカーは、Xと直接的または間接的に結合している]を提供する。
【0055】
実施形態において、本発明は、式(IV)の化合物
X−a−Y−c (IV)
[式中、X、a、Y、およびcは本明細書に定義する通りである]を提供する。
【0056】
本発明のさらに別の好ましい態様において、本明細書に記載するリンカーと同じでも異なっていてもよい「スペーサ」を提供する。スペーサは、YのC末端および/またはN末端に設けられてもよい。好ましくは、スペーサは、YのN末端に設けられ、合成時にcの望ましくない除去を防止するように働く。スペーサは、Yと直接的または間接的に結合してもよい。スペーサとしては、いずれの単一アミノ酸(例えば、β−アラニン)、アミノ酸配列、スクシニル基を挙げることができる。したがって、本発明は、好ましくは式(V)の化合物
X−Y−b−c (V)
[式中、X、Y、およびcは本明細書に定義する通りであり、
bは、本明細書に定義するスペーサである]を提供する。
【0057】
別の実施形態において、本発明は、式(VI)の化合物
X−a−Y−b−c (VI)
[式中、X、Y、a、b、およびcは本明細書に定義する通りである]を提供する。
【0058】
本発明の一実施形態において、式(VI)の化合物[式中、Xはコルヒチン(またはその類似体)であり、Yは、本明細書に定義するアミノ酸配列(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)を含むペプチドであり、aはチロシンであり、bはアラニンである]を提供する。
【0059】
本発明の第2の態様において、式(VII)の化合物、またはその医薬として許容される塩
X−Y−Z (VII)
[式中、XおよびYは本明細書に定義する通りであり、Zは抗がん剤である]を提供する。
【0060】
好ましくは、Zは、Xと同じでも異なっていてもよい血管破壊剤、代謝拮抗物質(例えば、5−フルオロウラシル)、細胞毒性または抗増殖性剤(例えば、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)、ビンカアルカロイド、タキサン、細胞毒性ヌクレオチド)、生体毒素・放射線治療・ホルモン剤、または細胞毒性、細胞静止、抗血管新生、もしくは血管破壊作用を誘導することが知られている任意の天然物もしくは物質からなる群から選択される抗がん剤である。
【0061】
本発明の好ましい態様において、式(VIII)の化合物
X−a−Y−Z (VIII)
[式中、X、a、Y、およびZは本明細書に定義する通りである]を提供する。
【0062】
本発明のさらに好ましい態様において、式(IX)の化合物
X−a−Y−b−Z (IX)
[式中、X、a、Y、b、およびZは本明細書に定義する通りである]を提供する。本発明のこの態様において、スペーサbの目的は、YのN末端アミンをカルボン酸に変換して、化合物Z(式中、Zは遊離アミンを有する(例えば、式中、Zはドキソルビシンである))の結合を可能にすることである。Zが遊離カルボン酸を有する場合、bは必要でない。
【0063】
本発明の好ましい一態様において、式(VII)[式中、Xはコルヒチンまたはその誘導体、例えば、アゼデメチルコルヒチンであり、Zは細胞毒性剤、例えば、ドキソルビシンである]の化合物が提供される。好ましくは、Yはやはり、本明細書中で定義したアミノ酸配列(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)を含むペプチドである。
【0064】
本発明のさらに好ましい一態様において、式(VII)[式中、XおよびZは、コルヒチンまたはその類似体もしくは誘導体から選択される]の化合物が提供される。また、XおよびZがいずれもコルヒチンであってもよい本発明の化合物も提供される。この態様において、Yは、本明細書中で定義したアミノ酸配列(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)を含むペプチドであることができる。
【0065】
本発明による化合物は、固相合成(例えば、ポリマー支持体に結合させる)もしくは溶液相合成(例えば、カップリング剤の存在下でもしくは収束合成を用いて行う)によって調製できる。
【0066】
したがって、本発明の別の態様は、本発明による化合物を調製する方法であって、
i)Xに結合している固体支持体を準備するステップと、
ii)場合によっては、リンカーaをXのC末端またはN末端に結合させるステップと、
iii)アミノ酸残基を段階的にXのC末端もしくはN末端、または(ii)でXに結合させたリンカーに結合させて、MMPタンパク質切断配列を含むペプチド配列Yをもたらすステップと、
iii)場合によってはキャップ形成基cをYのそれぞれのC末端またはN末端に結合させて、式(II)または(IV)の化合物をもたらすステップと
を含む方法を提供する。
【0067】
好ましい方法では、固体支持体は、任意のポリスチレン系またはPEG系樹脂などの任意のポリマー支持体、例えばトリチル系樹脂である。リンカーは、スクシナートまたはマロナート誘導体、例えば、無水コハク酸であってもよい。
【0068】
本発明のさらに別の一態様は、本発明による化合物を調製する方法であって、
i)ペプチド配列Yを調製するステップと、
ii)YのそれぞれのC末端またはN末端にキャップ形成基を結合させるステップと、
iii)カップリング剤の存在下でXおよびステップ(ii)で調製したキャップされたペプチドの溶液を調製し、所望の化合物を単離するステップと
を含む方法を提供する。
【0069】
好ましい方法では、Yは、アミノ酸を固体支持体に段階的に結合させて、ペプチド配列をもたらすことによって調製する。別法として、配列Yは、溶液中で合成してもよい。
【0070】
本発明の方法では、当技術分野で知られている任意のカップリング剤、例えば、EDAC、DCC、DiC、PyBOP、HCTUなどを適当な溶媒(例えば、DMF、THFなど)中で使用できる。
【0071】
別の溶液相合成においては、配列YのC末端の1種または複数のアミノ酸を溶液中でXに結合させて、ペプチド配列(前述のように固体支持体上で予備合成したもの)の残りを溶液中において収束合成で結合させることができる。
【0072】
本発明の好ましい方法は、YのC末端へのXの結合を可能にする。さらに、この方法は、YのN末端にZを結合させることを含むことができる。例えば、この方法は、
i)YのC末端に結合するために、Xにアミン基を導入するステップと、場合によっては、
ii)YのN末端に結合させるために、Zにカルボン酸基(またはイソチオシアナートまたはイソシアナート基)を導入するステップと
を含むことができる。
【0073】
さらに好ましい方法は、YのN末端へのXの結合を可能にする。さらに、この方法は、YのC末端へのZの結合を含むことができる。例えば、この方法は、
i)YのN末端に結合させるために、Xにカルボン酸基(またはイソチオシアナートまたはイソシアナート基)を導入するステップと、場合によっては、
ii)YのC末端に結合させるために、Zにアミン基を導入するステップと
を含むことができる。
【0074】
本発明の好ましい方法において、Xはコルヒチンまたはその類似体もしくは誘導体、例えば、アザデメチルコルヒチンであり、Zは細胞毒性剤、例えば、ドキソルビシンである。
【0075】
別の態様において、本発明は、VDAの部位特定的活性化における、MMPタンパク質切断部位、詳細には、本明細書中に定義するMT−MMP特異的切断部位の使用を提供する。本明細書では「部位特異的活性化」という用語は、概括的にMMPタンパク質切断部位における部位特異的切断によるVDAの活性化を意味し、これに限定されない。タンパク質切断部位における部位特異的切断は、VDAの遊離、したがって活性化と同時に起こるものと予想される。
【0076】
医薬組成物および使用
他の態様において、本発明は、医薬品で使用するための本明細書に上述した化合物、またはその医薬として許容される塩を提供する。別の態様において、本明細書に上述した化合物を含む医薬製剤を提供する。製剤は、少なくとも1種の追加の医薬として許容される成分、例えば添加剤、賦形剤、または担体を含有することができる。好ましくは、製剤は、非経口投与用である。
【0077】
本発明は、本発明による化合物を含む医薬製剤を提供する。好ましい実施形態において、化合物は、式(VII)を有する。
【0078】
本発明の好ましい態様において、前記組成物は、医薬として許容される担体または賦形剤を含む。
【0079】
本発明の組成物は、典型的には有効量で投与される。「有効量」は、単独でまたは別の用量と共に、所望の応答をもたらす組成物のその量である。投与するとき、本発明の医薬組成物は、医薬として許容される製剤として投与される。このような調製物は、医薬として許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、相溶性担体、および場合によっては他の治療剤(例えば、シスプラチン;カルボプラチン;シクロスホスファミド;メルファラン;カルムスリン;メトトレキサート;5−フルオロウラシル;シタラビン;メルカプトプリン;ダウノルビシン;ドキソルビシン;エピルビシン;ビンブラスチン;ビンクリスチン;ダクチノマイシン;マイトマイシンC;タキソール;L−アスパラギナーゼ;G−CSF;エトポシド;コルヒチン;デルフェロキサミンメシル酸塩;およびカンプトテシン)をルーチンで含有することができる。
【0080】
本発明の組成物は、注射を含めて任意の通常経路、または経時的漸次注入で投与することができる。投与は、例えば経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、または経皮とすることができる。がんなど特定の疾患を治療する場合は、所望の応答は、疾患の進行を抑制することである。これは、疾患の進行を永久に停止するものであることがより好ましいが、疾患の進行を一時的に遅らせるものでしかない場合がある。これは、当技術分野で知られているルーチンの方法で監視することができる。
【0081】
組成物を(例えば、試験目的または動物治療目的で)ヒト以外の哺乳類に投与することは、上述した条件と実質的に同じ条件下で実施される。対象は、本明細書では哺乳類、好ましくはヒトであり、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、またはげっ歯類が含まれる。
【0082】
投与するとき、本発明の医薬調製品は、医薬として許容される量で、医薬として許容される組成物で適用される。「医薬として許容される」という用語は、活性成分の生物活性の有効性に干渉しない非毒性材料を意味する。
【0083】
医薬組成物は、望むなら医薬として許容される担体と組み合わせてもよい。本明細書では「医薬として許容される担体」という用語は、ヒトへの投与に適している1種または複数の固体もしくは液体相溶性充填剤、賦形剤、またはカプセル化物質を意味する。「担体」という用語は、活性成分と組み合わせて適用を容易にする天然または合成の有機または無機材料を意味する。
【0084】
医薬組成物は、塩形態の酢酸;塩形態のクエン酸;塩形態のホウ酸;および塩形態のリン酸を含めて、適当な緩衝剤を含有することができる。
【0085】
医薬組成物は、塩化ベンザルコニウム;クロロブタノール;パラベン、およびチメロサールなど適当な保存剤を場合によっては含有することもできる。経口投与に適した組成物は、カプセル剤、錠剤、ロゼンジ剤などそれぞれ所定量の活性化合物を含有する別個の単位として提供することができる。他の組成物としては、シロップ剤、エリキシル剤、または乳剤など水性液体または非水性液体中の懸濁液が挙げられる。
【0086】
好都合なことに、非経口投与に適した組成物は、好ましくはレシピエントの血液と等張である化合物の水性または非水性無菌調製物を含む。この調製物は、知られている方法に従って適当な分散化剤または湿潤剤、および懸濁化剤を使用して製剤することができる。注射可能な無菌調製物は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液として、非経口的に許容できる非毒性賦形剤または溶媒中の注射可能な無菌溶液または懸濁液とすることもできる。使用することができる許容できるビヒクルおよび溶媒の中で、水、リンゲル液、および等張食塩水が有用である。さらに、通常は無菌の不揮発性油が溶媒または懸濁化媒体として使用される。このために、合成モノまたはジグリセリドを含めて、任意の無刺激不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射剤の調製で使用することができる。経口、皮下、静脈内、筋肉内投与などに適した担体製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PAで見ることができる。
【0087】
本発明による化合物を使用して、MMP、特にMT−MMPを過剰発現する組織に関連した疾患または病態を治療することができる。したがって、本発明は、有効量の本発明による化合物を投与することを含む、対象におけるがんを治療する方法を提供する。本発明の好ましい方法では、前記対象はヒトである。
【0088】
本明細書では、「がん(cancer)」という用語は、自律的増殖の能力を有する細胞、すなわち急速増殖性の細胞増殖を特徴とする異常状態または病態を指す。この用語は、病理組織学的タイプまたは侵襲性の段階にかかわりなく、すべてのタイプの癌性増殖もしくは腫瘍形成過程、転移性組織、または悪性形質転換細胞、組織もしくは臓器を包含するものである。「がん」という用語は、上皮、内皮、および間葉系由来の悪性腫瘍、特に癌腫および肉腫、具体的には呼吸器系(口、鼻、気管、肺)、胃腸管(舌、食道、胃、小腸、結腸、肝臓、膵臓、胆嚢、直腸)、内分泌系(甲状腺、下垂体、副腎)、生殖−尿路(膀胱、腎臓)、生殖系(乳房、卵巣、子宮、子宮頚部、前立腺、陰茎、陰嚢、精巣)、皮膚(メラノサイト、表皮、内皮)、神経系(脳、脊髄、グリア細胞、ニューロン)、およびリンパ系に影響を及ぼすものを包含する。
【0089】
「癌腫(carcinoma)」という用語は、当技術分野で認識されており、呼吸器系癌、胃腸系癌、内分泌系癌、生殖−尿路癌、皮膚癌、および生殖系癌を含めて、上皮由来の悪性腫瘍を指す。「癌腫」という用語は、腺組織に由来する癌腫を指す「腺癌」、扁平上皮由来の癌腫を指す「扁平上皮癌」、ならびに癌性および肉腫性組織から構成された腫瘍を指す「癌肉腫」も包含する。例示的な癌腫としては、子宮頚部、前立腺、乳房、鼻、頭頚部、口腔、食道、胃、肝臓、膵臓、結腸、卵巣、膀胱、および肺の上皮から形成するもの、特に非小肺癌が挙げられる。
【0090】
「肉腫」という用語は、当技術分野で認識されており、骨、軟骨、脂肪組織、平滑筋、骨格筋、神経鞘、血管、中皮、および胃腸間質を含めて、軟部組織または結合もしくは支持組織の悪性腫瘍を指す。別のタイプのがんとしては、白血球に由来する腫瘍を指す「白血病」およびリンパ系の腫瘍を指す「悪性リンパ腫」が挙げられる。
【0091】
本発明による化合物を含む医薬製剤は、代謝拮抗物質(例えば、5−フルオロウラシル)、細胞毒性または抗増殖性剤(例えば、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、タキサン、細胞毒性ヌクレオチド)、生体毒素、放射線治療薬、ホルモン剤、または細胞毒性、細胞静止、抗血管新生、もしくは血管破壊作用を誘導することが知られている任意の天然物または物質が含まれるがこれらに限定されない抗がん剤(化学療法剤)として、組み合わせて、順次に、または実質的に同様な時間に投与することができる。
【0092】
本明細書では、「治療(treatment)」は、治療される個体または細胞の自然経過を変更しようとする臨床的介入を指し、予防のため、または臨床病理の過程において行うことができる。
【0093】
別の態様において、本発明は、がんを治療するための医薬品の製造において本発明による化合物の使用を提供する。
【0094】
本発明の一態様において、本発明の化合物または組成物を使用して、炎症性障害および/または炎症応答を治療することができる。したがって、本発明の別の態様によれば、有効量の本発明による化合物を投与することを含む、対象における炎症性障害を治療する方法を提供する。
【0095】
炎症性障害は、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、骨関節炎、痛風、紅斑性狼瘡、強皮症、シェーグレン症候群、多発性筋炎および皮膚筋炎、血管炎、腱炎、滑膜炎、細菌性心内膜炎、歯周炎、骨髄炎、乾癬、肺炎、線維化性肺胞炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺気腫、珪肺症、塵肺症、結核、潰瘍性大腸炎、クローン病、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群および重症筋無力症、乳腺炎、蹄葉炎、喉頭炎、慢性胆嚢炎、橋本甲状腺炎、および炎症性乳房疾患からなる群から選択することができる。一実施形態において、炎症性障害は、移植後の組織または器官拒絶反応の結果とすることができる。特定の実施形態において、炎症性障害は、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、骨関節炎、敗血症、および多発性関節炎からなる群から選択される。
【0096】
本発明の化合物を使用して、心不全を治療することができる。また、心不全を治療するための医薬品を製造するための本明細書に記載された化合物の使用も提供される。
【0097】
本発明の一実施形態において、本発明の化合物は、創傷(例えば、潰瘍、皮膚切傷または熱傷を含めて病変)を治療するのに有用である場合がある。したがって、本発明は、有効量の本発明による化合物を投与することを含む、対象における創傷を治療する方法を提供する。本発明の好ましい方法では、前記対象はヒトである。
【0098】
本発明の化合物を使用して、月経を伴う病態および障害を治療することもできる。
【0099】
さらに、
(1)本明細書に記載する化合物または組成物と、
(2)化合物を本明細書に記載する方法または使用において使用するための指示書と
を共に含む、パーツのパッケージまたはキットを提供する。
【0100】
本明細書で定義するパッケージは、反復投与を行うために1つより多い投与単位を含んでもよい。1つより多い投与単位が存在する場合、このような単位は、化合物組成物の用量および/または物理的形態の点から同じでも異なっていてもよい。
【0101】
保護範囲には、実際にこのような化合物を含有しているかどうかにかかわりなく、かつ任意のこのような化合物が治療上有効量で含まれているかどうかにかかわりなく、本発明の化合物を含有するまたは含有すると称している偽のまたは不正な製品が含まれる。
【0102】
保護範囲には、パッケージが本発明の種または医薬製剤、およびこのような製剤または種である、もしくはそれを含む、またはそれであるもしくはそれを含むと称する製品を含むということを示す説明書または指示書を含むパッケージが含まれる。このようなパッケージは、必ずしも偽または不正ではないが、偽または不正である可能性がある。
【0103】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という言葉、ならびにその言葉の変形、例えば「含んでいる(comprising)」および「含む(comprises)」は、「〜を含むが、これらに限定されるものではない」を意味し、他の部分、添加物、成分、整数、またはステップを排除するものではない(かつ排除しない)。
【0104】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、単数には、文脈上からそうでないことが必要でない限り、複数が含まれる。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上からそうでないことが必要でない限り、複数および単数が考慮されていると理解されたい。
【0105】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載する特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、本明細書に記載する他のいかなる態様、実施形態、または実施例と不適合でない限り、それらに適用可能であると理解されたい。
【0106】
次に、以下の図を参照して、本発明を単に例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】生体外での腫瘍および非腫瘍組織におけるプロドラッグ−1の代謝対時間を示すグラフである。
【図2】腹腔内投与後の担腫瘍マウスにおけるプロドラッグ−1の蓄積およびレベルを示すグラフである。
【図3】担腫瘍マウスへのプロドラッグ−1の腹腔内投与後に蓄積するVDAレベルを示すグラフである。
【図4】高MT1−MMPレベルを示す腫瘍ホモジネート(HT1080)対低MT1−MMPレベルを示す腫瘍ホモジネート(MCF−7)におけるプロドラッグ−2の異なる代謝を示すグラフである。
【図5】腹腔内投与後のHT1080担腫瘍マウスにおけるプロドラッグ−2の蓄積およびレベルを示すグラフである。
【図6】HT1080担腫瘍マウスへのプロドラッグ−2の腹腔内投与後に蓄積するVDAのレベルを示すグラフである。
【図7】用量漸増試験におけるマウスの相対体重
【図8】ICT−2522(ウォーヘッド)での処理中の腫瘍増殖
【図9】ICT−2588(プロドラッグ)での処理中の腫瘍増殖
【図10a】a)ICT−2588、37.5mg/kgおよびICT−2552、7.5mg/kgのモル当量用量で投与された、ウォーヘッド(ICT−2522)と比較したプロドラッグ(ICT−2588)で処理されたマウスに関する腫瘍増殖曲線
【図10b】b)ICT−2588、50.0mg/kgおよびICT−2552、10.0mg/kgのモル当量用量で投与された、ウォーヘッド(ICT−2522)と比較したプロドラッグ(ICT−2588)で処理されたマウスに関する腫瘍増殖曲線
【図10c】c)ICT−2588、62.5mg/kgおよびICT−2552、12.5mg/kgのモル当量用量で投与された、ウォーヘッド(ICT−2522)と比較したプロドラッグ(ICT−2588)で処理されたマウスに関する腫瘍増殖曲線
【図10d】d)ICT−2588、75.0mg/kgおよびICT−2552、15.0mg/kgのモル当量用量で投与された、ウォーヘッド(ICT−2522)と比較したプロドラッグ(ICT−2588)で処理されたマウスに関する腫瘍増殖曲線
【図11】ホスホリル化されているアミノ酸残基、エンドキャップ、ウォーヘッドおよびP2’の代替を含む改変を示す、プロドラッグICT−2588
【図12】腫瘍(HT1080)および肝臓(マウス)ホモジネートの両者におけるICT3053(P2’=Ala)の安定性を示すグラフ。これは、この系の分子について得られるデータの一例であり、データの要約は表1に示す。
【図13】ホスファートがセリン(ICT3047)、チロシン(ICT3048)ならびにセリンおよびチロシンの両者(ICT3028)に結合された分子に関する安定性データ。データは、インキュベーション後に腫瘍(HT1080、黒丸)およびマウス肝臓(白丸)ホモジネートに残った親分子のパーセントを、表示された時間について示している。これは、複数の実験からの代表的なデータである。クロマトグラフ分離を確立して、各分子の脱リン酸化を監視した。
【発明を実施するための形態】
【0108】
材料および方法
【実施例1】
【0109】
固定化コルヒチン誘導体、アザデメチルコルヒチンの合成
【0110】
【化1】
1の合成:
アンモニア溶液(35%、15mL)をコルヒチン(750mg、1.88mmol、1.00当量)に添加し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。粗生成物をKHSO4(1M、水溶液)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。続いて、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離:CH2Cl2/メタノール 95:5→10:1)で精製して、黄色固体の1(427mg、1.11mmol、59%)を得た。
δH (600 MHz, CDCl3), 7.99 (1 H, 広幅 s, NH), 7.56 (1 H, d, J 2.1, C8-H), 7.32 (1H, d, J 10.7, C11-H), 6.88 (1 H, d, J 11.0, C10-H), 6.52 (1 H, s, C4-H), 6.03 (2 H, 広幅 s, NH2), 4.68 (1 H, ddd, J 12.6, 6.5および6.5, C7-H), 3.93 (3 H, s, OCH3), 3.88 (3 H, s, OCH3), 3.60 (3 H, s, OCH3), 2.47 (1 H, dd, J 13.4および6.2, C5-CH2), 2.35 (1 H, ddd, J 13.4, 12.7および6.9, C5-CH2), 2.29-2.23 (1 H, m, C6-CH2), 1.98 (3 H, s, CH3), 1.90-1.88 (1 H, m, C6-CH2); ES m/z (%) 385 [M++ H] (100).
【0111】
2の合成:
HCTU(642mg、1.55mmol、1.50当量)およびジイソプロピルエチルアミン(DiPEA、516μL、404mg、3.11mmol、3.00当量)を、Fmoc−tyr(tBu)−OH(714mg、1.55mmol、1.50当量)のDMF(10mL)溶液に添加した。室温で5分間撹拌した後、1(398mg、1.04mmol、1.00当量)を溶液に添加した。反応混合物を50℃で22時間撹拌した。DMFを真空で除去し、得られた油をCH2Cl2(20mL)に溶解した。有機相をKHSO4(水溶液、2回×20mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離:CH2Cl2/メタノール 100:0→99:1→98:2)で精製して、黄色固体の2(530mg、642μmol、67%)を得た。
δH (600 MHz, CDCl3), 10.42 (1 H, 広幅 s, NH), 9.02 (1 H, d J 10.7, C11-H), 7.75 (2 H, d, J 7.2, C23-H, C24-H), 7.54 (2 H, d, J 7.2, C20-H, C27-H), 7.45 (1 H, d, J 11.0, C10-H), 7.39 (2 H, dd, J 7.2および7.2, C22-H, C25-H), 7.29 (2 H, dd, J 6.6および6.6, C21-H, C26-H), 7.19 ( 1 H, 広幅 s, C8-H), 7.03 (2 H, d, J 7.9, C14-H, C17-H), 6.81 (2 H, d, J 7.9, C15-H, C16-H), 6.50 (1 H, s, C4-H), 5.88 (1 H, 広幅 s, NH), 5.25 (1 H, 広幅 s, C12-H), 4.73-4.67 (1 H, m, C7-H), 4.43 (1 H, dd, J 10.0および7.6, C18-CH2), 4.28 (1 H, dd, J 10.0および7.2, C18-CH2), 4.16 (1 H, dd, J 7.2および6.19, C19-H), 3.93 (3 H, s, OCH3), 3.88 (3 H, s, OCH3), 3.62 (3 H, s, OCH3), 3.21 (1 H, dd, J 13.1および4.8, C13-CH2), 3.11 (1 H, dd, J 13.1および5.5, C13-CH2), 2.53 (1 H, dd, J 13.4および6.2, C5-CH2), 2.40 (1 H, ddd, J 13.4, 12.7および6.9, C5-CH2), 2.22-2.15 (1 H, m, C6-CH2), 1.88 (3 H, s, CH3), 1.80 (1 H, ddd, J 11.5, 11.3および6.9, C6-CH2), 1.22 (9 H, s, C(CH3)3); ES m/z (%) 826 [ M+] (100).
【0112】
3の合成:
2の溶液(486mg、589μmol、1.00当量)にTFA(2mL)を添加し、反応混合物を20分間撹拌した。TLCは、生成物への定量的変換を示した。生成物をトルエンと同時蒸発させ、減圧濃縮して、定量的収率で3を得た。
δH (600 MHz, CDCl3), 10.08 (1 H, 広幅 s, NH), 8.99 (1 H, d J 10.7, C11-H), 7.71 (2 H, d, J 6.2, C23-H, C24-H), 7.55 ( 1 H, s, C8-H), 7.49 (2 H, dd, J 6.5および6.5, C20-H, C27-H), 7.41 (1 H, d, J 10.2, C10-H), 7.33 (2 H, dd, J 6.2および6.2, C22-H, C25-H), 7.26-7.21 (2 H, m, C21-H, C26-H), 6.91 (2 H, d, J 8.3, C14-H, C17-H), 6.56 (2 H, d, J 7.2, C15-H, C16-H), 6.45 (1 H, s, C4-H), 5.93 (1 H, 広幅 s, NH), 5.28 (1 H, s, NH), 4.95-4.90 (1 H, m, C12-H), 4.60 (1 H, ddd, J 11.7, 5.8および6.9, C7-H), 4.39 (1 H, dd, J 8.9および8.6, C18-CH2), 4.29-4.24 (1 H, m, C18-CH2), 4.12 (1 H, dd, J 6.9および6.9, C19-H), 3.90 (3 H, s, OCH3), 3.84 (3 H, s, OCH3), 3.54 (3 H, s, OCH3), 3.08 (2 H, d, J 5.2, C13-CH2), 2.44 (1 H, dd, J 13.4および6.2, C5-CH2), 2.33-2.26 (1 H, m, C5-CH2), 2.15-2.09 (1 H, m, C6-CH2), 1.82 (3 H, s, CH3), 1.75-1.69 (1 H, m, C6-CH2); ES m/z (%) 770 [M+] (100).
【0113】
4の調製:
2−クロロトリチルクロリド樹脂(Novabiochem、100〜200メッシュ、置換1.4mmolg−1、589mg、0.765mmol、1.00当量)を、3(589mg、0.765mmol、1.00当量)、ジメチルアミノピリジン(10mg、76.5μmol、0.01当量)、DiPEA(247mg、1.913mmol、333μL、2.50当量)、およびピリジン(241mg、3.061mmol、248μL、4.00当量)のTHF(10mL)溶液に懸濁し、50℃で6時間撹拌した。続いて、樹脂を濾過し、THFで完全に洗浄した。次いで、樹脂をメタノール(CH2Cl2:MeOH:DiPEA 17:2:1、100mL)で十分洗浄することによって、樹脂をキャップした。樹脂4をP2O5で終夜乾燥した。乾燥樹脂重量:593mg(負荷率56%)。
【0114】
エンドペプチダーゼ活性化プロドラッグの合成の一般手順
【0115】
【化2】
例として、Fmoc系ストラテジーを用いて、固定化コルヒチン誘導体4から、通常の固相ペプチド合成法を使用してペプチドコンジュゲート5を合成した。
【0116】
2−クロロトリチル誘導体化樹脂を使用して、Nα−Fmocストラテジー合成を手動で実現した。樹脂を、DMF中で完全に膨潤させ、続いてDMF中20%(v/v)ピペリジン(3回×3分)で処理することによって、N−Fmoc保護基を除去した。Nα−Fmocで保護された2.5倍モル過剰のアミノ酸(適切な側鎖保護基を有する)を使用して、すべてのカップリングをDMF中で行い、HCTU/HOBt/DiPEAを使用して活性化した。DMF中20%ピペリジン(3回×3分)を使用して、Nα−Fmoc脱保護を行った。ニンヒドリンをベースにしたカイザー試験を使用して、カップリングおよび脱保護の成功を監視した。不成功のカップリングを繰り返した。最終のNα−Fmoc脱保護を行った後、ペプチド鎖をフルオレセインイソチオシアナート(2.50当量、DiPEAの存在下で1.50当量)でエンドキャップした。この反応の成功もカイザー試験で監視した。
【0117】
追加のβ−アラニン残基を配列に組み込んで、チオ尿素結合と酸性の切断条件との非適合性を克服した(チオ尿素は転位することができ、直前のアミド結合のカルボニル炭素はこうして形成されたスルフヒドリル様官能基による求核攻撃を受ける可能性がある。これによって、アミド結合が切断され、同時に環状チアゾリノンが形成される。チアゾリノンは、酸水溶液の存在下で転位を受けて、チオヒダントインを形成することができる)。
【0118】
配列が完了すると、樹脂を洗浄し(DMF、CH2Cl2、CH2Cl2/MeOH)、KOHで恒量になるまで真空乾燥した。TFA−H2O−トリイソプロピルシラン(95:2.5:2.5)を室温で2時間使用した穏やかな酸分解で、ペプチドを樹脂から切断し、同時に側鎖を脱保護した。切断した後、TFAを減圧下で除去した。粗生成物を95%酢酸水溶液に抽出し、凍結乾燥した。続いて、逆相HPLCを使用して、粗ペプチドを分析し、分取HPLCを使用して、精製した(純度>97%)。純粋な分画を合わせ、凍結乾燥した。ペプチドコンジュゲートの精製には、C18分取カラム(Zorbax Eclipse、21.2×150mm XDB−C18、Agilent)を用いた。移動相については、移動相AはHPLCグレード水およびTFA0.045%とし、移動相Bは、HPLCグレード水10%、アセトニトリル90%およびTFA0.045%で構成した。移動相を、ニトロセルロース製0.45μmポアフィルター(Sartolon、Sartorius、UK)に通して真空濾過することによって脱気した。クロマトグラフィーは室温で行い、流速は21.2mL/分に保持した。移動相の勾配を最適化し、構造的に類似した化合物について組織内で既に設計されている勾配からスケールアップした。紫外吸光度の検出は255nmで最大であった。ES m/z (%)951.8[M+H]2+(100)。RP−HPLC(勾配:0分 30% B:5分 35% B;25分 80% B;26分 100% B;27分 100% B;30分 30% B)Rt=11.98分。
【0119】
コルヒチンとペプチド配列との、コルヒチンB−環を介したペプチドN−末端への結合
ペプチドN末端を介したコルヒチン部分の結合を可能にするために、次のストラテジーを使用する。公表されている方法を使用して、B環アミンを破蔽することができる。アスパラギン酸を用いたアシル化によって、カルボン酸が(アミノ酸側鎖から)分子に導入され、それによってペプチドN末端における遊離アミンへの結合が可能になる(下記を参照のこと)。
【0120】
【化3】
【0121】
MMP活性化、その後のエキソペプチダーゼ分解の後に親コルヒチンが遊離されたかどうかを評価するために、アミド結合のアセチル化を試験する。
【0122】
【化4】
【0123】
コルヒチン類似体とペプチド配列との、コルヒチンC−環を介したペプチドN末端への結合
そのN末端を介したコルヒチン類似体の結合を可能にするために、次のストラテジーを使用する。アザデメチルコルヒチンのアシル化は、既に記載したようにして実施できる。Boc保護基の破蔽後すぐに、無水コハク酸(またはモノ保護スクシナートもしくはマロナート(または同様な)類似体)によるアシル化を行う。次に、脱保護により、ペプチドN末端への結合に適したカルボン酸官能基を得られるであろう。
【0124】
【化5】
【0125】
ドキソルビシンのペプチド配列への結合のストラテジー:
N末端ドキソルビシン結合
(上記の固定化コルヒチン誘導体化樹脂を使用したペプチド合成に続いて)ペプチドN末端を介したドキソルビシンの結合を可能にするために、まずカルボン酸を導入するように改変しなければならない。例には、無水コハク酸を用いた反応(下記のストラテジー1)が含まれる。しかし、下記(ストラテジー2)に示すように、アスパラギン酸の側鎖(両方とも天然アミノ酸)を利用することによって、(異質な化学単位とは対照的に)天然アミノ酸が代謝で遊離する。
【0126】
ストラテジー1:(スクシニルスペーサ)
【0127】
【化6】
【0128】
ストラテジー2:(アミノ酸スペーサ)
【0129】
【化7】
【0130】
ストラテジー3
ストラテジー1および2に記載したのと同様にして、ドキソルビシン糖アミンをアミノ酸によってアシル化することができ、脱保護後すぐに、スクシナート(またはその他の)スペーサによってさらに誘導体化させて、ペプチドN末端に結合させることができる誘導体を得ることができる。
【0131】
【化8】
【0132】
2)C末端ドキソルビシン結合
ドキソルビシンのアミン基のDde(ペプチド化学において、かつ我々のグループによってよく使用される保護基)による保護によって、トリチル系(またはその他の)樹脂へのその物質の固定化が可能になるはずである。その後にDde基を除去することによって、アミンが破蔽され、ペプチド配列がこの地点から(すなわち、C末端を介して)構築することが可能になるはずである。標準的Fmoc系固相合成によって、ペプチド配列が生じるはずである。次いで、適切に誘導体化されたVDAは、N末端を介して結合することができるであろう。樹脂切断および精製は、上記の通りであるはずである。
【0133】
【化9】
【0134】
グリコシル化アミノ酸の組込み
適切な側鎖官能基を有するアミノ酸(例えば、セリン、チロシン、トレオニン)を(単糖、二糖、または三糖で)グリコシル化して、改善された水溶性を有するペプチドを生成することができる。このような炭水化物誘導体化部分を、例えばセリンの代わりに使用することができるであろう(下記のスキームを参照のこと)。
【0135】
【化10】
【0136】
結果
1)MMP活性化プロドラッグ
−全MMP標的化
構造:
【0137】
【化11】
a)生体外で正常マウス血漿、正常マウス肝臓ホモジネート、およびヒト腫瘍実験モデルホモジネート(HT1080異種移植片;MMPの大部分を発現することが知られている)を使用して、プロドラッグ−1をスクリーニングした。LC/MS/MSを使用して、プロドラッグ切断および代謝を検出した。
a.プロドラッグ−1は、血漿および肝臓において安定であり、これらの治療薬の全身安定性を裏付けた(図1)。
b.プロドラッグ−1は、腫瘍ホモジネートにおいて代謝され、MMPを発現する腫瘍におけるこれらの治療薬の活性化を裏付けた(図1)。
b)プロドラッグ−1は、少なくとも組換えMMP−2、MMP−9、MMP−10、およびMMP−14によってグリシン−ホモフェニルアラニン(Gly−Hot)において急速に切断される。LC/MS/MSおよび質量分析によって示す(データ示さず)。
c)皮下HT1080腫瘍モデルを有するマウスに、プロドラッグ−1を腹腔内経路で生体内投与した(MMPの大部分の発現)。投与後に、血漿、組織、および腫瘍を一定の間隔で回収した。プロドラッグおよびVDA2のレベルを、LC/MS/MSによって評価した。
a.プロドラッグ−1は蓄積し、分析した組織のすべてにおいて検出された(図2)。
b.腫瘍において、最高のプロドラッグ−1レベルが観察された(図2)。
c.投与してから24時間後に検出可能でないプロドラッグ−1(図2)。
d.プロドラッグ−1の投与後に、VDA2は、正常組織において低レベルで検出可能であった(図3)。
e.プロドラッグ−1の投与後に、VDA2レベルは、腫瘍組織において高レベルで検出された(図3)。
f.プロドラッグ−1を投与してから24時間後に、VDA2は、腫瘍においてやはり高レベルで検出可能であり、正常組織においては検出不可能であった(図3)。
【0138】
2)MMP活性化プロドラッグ(ICT−2588)
−膜型MMP(MT−MMP)に標的化
構造:
【0139】
【化12】
d)化合物1を、化合物のMMP標的化が全MMPから選択MT−MMPに変更するように改変した(プロドラッグ−2)。
a.アルギニンを、P4位においてグルタミン酸の代わりに組み込んだ。
b.プロリンを除去し、P3位においてセリンで置換した。
e)生体外で正常マウス血漿、正常マウス肝臓ホモジネート、ならびに高MT1−MMP(MMP−14)発現および活性(HT1080)と低MT1−MMP発現および活性(MCF−7)を示すヒト腫瘍実験モデルホモジネートを使用して、プロドラッグ−2をスクリーニングした。LC/MS/MSを使用して、プロドラッグ−2切断および代謝を検出した。
a.プロドラッグ−2は、血漿において未変化のままであり、この治療薬の全身安定性を裏付けた。
b.プロドラッグ−2は、マウス肝臓ホモジネートにおいて安定なままであった。
c.プロドラッグ−2は、低MT−MMPレベルを発現する腫瘍ホモジネート(MCF7)に比べて、高MT−MMPレベルを発現する腫瘍ホモジネート(HT1080)において急速に代謝された(図4)。
d.これらのデータは、このプロドラッグの全身安定性およびMT−MMPによる活性化の選択性を裏付ける。
f)LC/MS/MSおよび質量分析によって示されるように、プロドラッグ−2は、MMPによって切断が異なる(データ示さず)。:
a.グリシン−ホモフェニルアラニン(Gly−Hof)において、組換えMMP−14によって急速に切断。
b.ホモフェニルアラニン−チロシン(Hof−Tyr)において、組換えMMP−2によってゆっくりと切断。プロドラッグ−1で観察されたものと異なる切断を示す。
c.プロドラッグ−2は、プロドラッグ−1とは対照的に、組換えMMP−9によって切断されない。
d.これらのデータは、プロドラッグ−2のMMP選択的切断を裏付ける。
g)皮下HT1080腫瘍モデルを有するマウスに、プロドラッグ−2を腹腔内経路で生体内投与した(MT1−MMP陽性)。投与後に、血漿、組織、および腫瘍を一定の間隔で回収した。プロドラッグ−2およびVDA2のレベルを、LC/MS/MSによって評価した。
a.プロドラッグ−2は蓄積し、分析した組織のすべてにおいて検出された(図5)。
b.腫瘍において、最高のプロドラッグ−2レベルが観察された(図2)。
c.肝臓は、分析した正常組織のすべての代表であった(図5)。
d.プロドラッグ−2の投与後に、VDA2は、血漿において検出不可能であった(図6)。
e.プロドラッグ−2の投与後に、高濃度のVDA2が腫瘍において検出された(図6)。
f.プロドラッグ−2の投与後に、腫瘍におけるVDA2のレベルは、正常組織に検出されたものより10倍高い(図6)。
g.投与して48時間後に、高レベルのプロドラッグ−2およびVDA2が、やはり腫瘍において検出可能であった。
【0140】
3.不成功と判明した合成コンジュゲート(MT−MMTプロドラッグを基材とする)。以下のエンドキャップを含むプロドラッグは、血漿および/または肝臓中で安定性が不十分であった。
(1)3×D−セリン
(2)キナ酸+2×D−セリン
【0141】
【化13】
【実施例2】
【0142】
用量反応抗腫瘍試験
材料および方法
ICT−2588の合成−実施例1を参照のこと
【0143】
ICT−2552の合成: アンモニア溶液(35%、15mL)をコルヒチン(750mg、1.88mmol、1.00当量)に添加し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。粗生成物をKHSO4(1M、水溶液)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。続いて、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離:CH2Cl2/メタノール 95:5→10:1)で精製して、黄色固体のICT−2552(427mg、1.11mmol、59%)を得た。δH (600 MHz, CDCl3), 7.99 (1 H, 広幅 s, NH), 7.56 (1 H, d, J 2.1, C8-H), 7.32 (1H, d, J 10.7, C11-H), 6.88 (1 H, d, J 11.0, C10-H), 6.52 (1 H, s, C4-H), 6.03 (2 H, 広幅 s, NH2), 4.68 (1 H, ddd, J 12.6, 6.5および6.5, C7-H), 3.93 (3 H, s, OCH3), 3.88 (3 H, s, OCH3), 3.60 (3 H, s, OCH3), 2.47 (1 H, dd, J 13.4および6.2, C5-CH2), 2.35 (1 H, ddd, J 13.4, 12.7および6.9, C5-CH2), 2.29-2.23 (1 H, m, C6-CH2), 1.98 (3 H, s, CH3), 1.90-1.88 (1 H, m, C6-CH2); ES m/z (%) 385 [M+H]+ (100).
【0144】
皮下HT1080異種移植片を有するBalb/Cマウスに、ICT−2552およびICT−2588(「プロドラッグ」)を腹腔内経路で単回投与した。9つの投与群は、1群当たり8匹のマウスを含んでいた。これらの化合物の抗腫瘍作用を、腫瘍体積の測定によって評価し、標的外毒性(off−target toxicity)の有無を、マウスの体重を監視することによって確認した。投与群は、ICT−2558(プロドラッグ)をICT−2552(ウォーヘッド)のモル当量用量と比較して評価し、次の通りとした。
10%DMSO/油(溶媒対照)
ICT−2588 37.5mg/kg、50.0mg/kg、62.5mg/kg、75.0mg/kg
ICT−2552 7.5mg/kg、10.0mg/kg、12.5mg/kg、15mg/kg。
【0145】
結果
試験期間を通して、有意な体重変化は観察されなかった(図7)。
【0146】
マウスの体重はすべて、15%の許容体重減少の範囲内であった。したがって、これらの化合物は全身系(whole body system)に毒性があるものには分類されない。
【実施例3】
【0147】
腫瘍反応試験
結果
試験の結果を、図8〜10および下記表に示す。ICT−2522およびICT−2588の全試験用量レベルで、腫瘍反応が観察された。
【0148】
【表1】
【0149】
ICT−2552(ウォーヘッド)およびICT−2588(プロドラッグ)の全評価用量で、腫瘍増殖の有意な遅延が観察された。
【0150】
いずれの化合物でも、化合物の用量と腫瘍増殖遅延度との相関が観察された。この作用は、ICT−2588(プロドラッグ)の方が大きかった。
【0151】
ICT−2588を用量62.5mg/kgで用いた場合、1匹の動物が腫瘍の完全寛解を示した。
【0152】
【表2】
【0153】
等モル用量を投与した場合、ICT−2588(プロドラッグ)は、ICT−2552(ウォーヘッド)に比較して有意に大きい抗腫瘍反応を誘発した。
【実施例4】
【0154】
ICT−2588の改変
i)ホスホリル化されているアミノ酸側鎖の導入によるプロドラッグ溶解性の改善
プロドラッグ溶解性を増加させるために、ホスホリル化されているアミノ酸側鎖をICT−2588のペプチド配列に導入する(血漿ホスファターゼによって加水分解可能)。ホスファート誘導体化アミノ酸はベンジル保護部分として市販されており、これを我々の合成法を用いてペプチドに組み込む。我々は、ペプチド配列内の2つの部位、P2’(Tyr)、P3(Ser)、およびP2’とP3の両者のホスホリル改変種を合成し、評価している(図11参照のこと)。さらに、我々は、MMP選択性をさらに増加させる可能性を検討するために、MT−MMP(P1―P1’での切断)およびMMP−2(P1’―P2’での切断)によるプロドラッグ活性化に対するP2’(Tyr)のホスホリル化の影響を検討している。
【0155】
ii)プロドラッグのエンドキャップ形成基の改変による溶解性の改善
我々は、改善された溶解性を有する代替プロドラッグとしての、より親水性の基によるフルオレセイン基の置換(図11参照のこと)を探索している。我々の目的は、MT−MMP選択性、腫瘍選択的活性化および抗腫瘍活性を保持しながら、プロドラッグの溶解性を改善することである。ICT2588にこれらの代替エンドキャップを組み込んでいるプロドラッグを、インビトロにおける親プロドラッグと比較した化合物溶解性、生体外での、HT1080腫瘍モデル、マウス血漿および肝臓ホモジネートにおけるプロドラッグの安定性および活性化、ならびにMT−MMP選択性の保持および潜在的改善の観点から評価している。
【0156】
iii)プロドラッグ内のP2’の改変
生体外での組織安定性、腫瘍切断およびMMP活性化に関連するプロドラッグのP2’部位(Tyr)の改変の影響を評価している。我々はP1’−P2’とP2’−P3’の両部位での他の非MT−MMPによる開裂は既に実証しているので、プロドラッグのP2’部位に的を絞る。我々は、主要な型のアミノ酸側鎖(Ala、Asp、Asn、Leu、Ser、Pro)を組み込んでいるプロドラッグ変形体を用いている。
【0157】
iv)ドキソルビシンを組み込んでいる、デュアルヘッドプロドラッグの開発
ICT2588での処理後に、腫瘍周辺部において、腫瘍細胞の生きている薄いリムを観察した。現時点では、腫瘍血管新生とは、生きているリムが、直接取り囲んでいる正常組織の血管新生によって維持されることと理解されている。この結果として、VDA放出性プロドラッグの投与は標準的化学療法と組み合わさって、観察される抗腫瘍作用をさらに増大させるはずである。我々は、我々のアザデメチルコルヒチンウォーヘッド(ICT2552)とドキソルビシンウォーヘッド(エンドキャップを置換)とを含む、デュアルヘッドプロドラッグを開発している(以下参照)。我々は、このデュアルヘッドプロドラッグを、生体外でのHT1080腫瘍モデル、マウス血漿および肝臓ホモジネートにおけるプロドラッグの安定性および活性化の観点から評価している。
【0158】
【化14】
【0159】
ペプチドへの結合はN末端を介するので、アミンにおける誘導体化が必要である。現在のストラテジーは、無水コハク酸によりアシル化を行って、アミド結合によってペプチドに連結できる遊離カルボン酸を有するスクシナート誘導体を生成させることである。評価すべき代替ストラテジーは、アルキル/アリールブロック基Rを有するアスパラギン酸の側鎖を用いることである。
【0160】
【化15】
【0161】
表3は、P2’位が変更された一連の分子の安定性データの要約である。半減期は、4回の独立した実験から取った平均値である。肝臓はマウス肝臓ホモジネートを、腫瘍はHT1080を表す。
【0162】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管破壊剤のプロドラッグおよびこのような化合物のがんの標的治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
がん化学療法の分子的手法としての腫瘍脈管構造の標的化は、科学的最優先事項の1つとなりつつある。2つの薬物モデル、すなわち、腫瘍における新生血管の形成を防止するモデル(血管新生抑制モデル)および血管破壊を標的化するモデルが浮上している。
【0003】
単一の血管が、多くの腫瘍細胞の生残を支援する責任を負うので、わずかな割合でさえ腫瘍脈管構造が破壊すると、広範囲な腫瘍死および転移の遅延が誘導されることを実証した。脈管構造の主要成分をなす内皮細胞は、運動、侵入、結合、整列、および増殖のためのチューブリン細胞骨格に非常に依存している(Denekamp、J、Br J Cancer、45巻、136〜139頁(1982年))。したがって、この内皮微小管網を破壊する物質は、腫瘍血流の急速な崩壊および長期の血管遮断を引き起こし、広範な腫瘍細胞壊死で終わる(Tozerら、Nat Rev Cancer、5巻、423〜435頁(2005年);Lippert JW、Bioorg Med Chem、15巻、605〜615頁(2007年))。
【0004】
最も強力なクラスのがん治療薬の1つは、血管破壊剤(VDA)である。血管破壊剤は、インビトロでは優れた細胞毒性を特徴とするが、生体内では正常組織以上に腫瘍を死滅させる特異性が劣っている。さらに、チューブリン結合剤などの多くのVDAは、水に不溶であり、臨床評価の前に製剤化が必要である。本発明は、前記問題に対処することを目的とする。
【0005】
コルヒチンおよびその類似体は、腫瘍における出血およびその後の広範な壊死(Tozerら、Nat Rev Cancer、5巻、423〜435頁(2005年))をチューブリン結合および微小管脱重合の誘導の直接の結果(Chaudriら、J Mol Biol、303巻、679〜692頁(2000年))として引き起こす強力なVDAである。しかし、コルヒチンは、高い毒性レベルおよび結果として起こる非常に狭い治療係数のため、臨床応用可能な抗がん治療剤としての固有値を示さなかった(Tozerら、Nat Rev Cancer、5巻、423〜435頁(2005年);Quinnら、J Med Chem、24巻、636〜639頁(1981年))。したがって、コルヒチンなどのVDAを腫瘍に対して選択的に標的化することは望ましいはずである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、強力な抗がん剤、特に血管破壊剤の全身投与による毒性作用を克服する系を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも一部は、腫瘍脈管構造におけるコルヒチンなどの血管破壊剤の選択的放出を可能にするタンパク質切断部位の選択に基づく。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、MMPタンパク質切断部位と結合している血管破壊剤(VDA)を含む化合物またはその医薬として許容される塩を提供する。本発明の文脈における「と結合している」という用語は、化学的架橋またはペプチド結合が含まれるがこれらに限定されない結合、一般に共有結合の直接的および間接的手段をすべて包含するよう意図されている。
【0009】
本発明の化合物は、塩の形態であってもよい。詳細には、塩は医薬として許容される塩であることができる。本開示の医薬として許容される塩は、塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から、通常の化学的方法によって合成できる。一般に、このような塩は、遊離酸または塩基型のこれらの化合物と化学量論量の適切な塩基または酸とを、水もしくは有機溶媒またはそれらの混合物中で反応させることによって調製でき、一般にはエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水媒体が好ましい。適当な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company,Easton、Pa.、US、1985年、1418頁に見られ、その開示を参照することによって本明細書中に組み入れる。さらに、Stahlら編、「Handbook of Pharmaceutical Salts Properties Selection and Use」、Verlag Helvetica Chimica Acta and Wiley−VCH、2002年を参照のこと。
【0010】
したがって、本開示は、親化合物がその酸塩または塩基塩を生成させることによって改変された、開示された化合物の医薬として許容される塩を含む。例を挙げると、例えば無機または有機の酸または塩基から形成される通常の非毒性塩または第四級アンモニウム塩がある。このような酸付加塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩が挙げられる。塩基塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミンなどの有機塩基との塩、ならびにアルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩などが挙げられる。また、塩基性窒素含有基は、塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどのハロゲン化低級アルキル、硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミルなどの硫酸ジアルキル、塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルなどの長鎖ハロゲン化物、臭化ベンジルおよびフェネチルなどのハロゲン化アラルキルなどで四級化されていてもよい。
【0011】
好ましい態様において、本発明は、式(I)の化合物
X−Y (I)
[式中、
Xは血管破壊剤(VDA)であり、
Yはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)タンパク質切断部位である]
を提供する。
【0012】
本発明による化合物は、過剰発現したMMPによって腫瘍環境内において活性でかつ強力なVDAに変換されるプロドラッグを提供する。本発明のプロドラッグの腫瘍選択的活性化は、VDAおよび場合によっては追加の活性成分の腫瘍レベルを上昇させ、かつ全身レベルを低下させ、それによってそれらの治療係数および有効性が大幅に上昇する。
【0013】
VDAは、多環系、例えば縮合または非縮合した二環式または三環式環系を含む。したがって、Xは、腫瘍血管に結合し、破壊することができる任意の多環系のVDAを含む。
【0014】
VDAは、3つのクラスに分けることができる。
(i)チューブリン上のコルヒチン結合部位においてチューブリンと相互作用するそれらの化合物;
(ii)ニチニチソウ(Catharanthus)(ビンカ(Vinca))アルカロイドとチューブリン上の共通結合部位を共有するそれらの化合物;
(iii)パシフィックユー(Pacific yew)の樹皮から単離された新規タキサンジテルペノイドであるパクリタキセルに類似している方式で安定な微小管の形成を促進する化合物。
【0015】
本発明の好ましい態様において、VDAはチューブリン結合剤である。チューブリン結合剤は、i)コルヒチン結合部位においてチューブリンと相互作用するもの(コルヒチン(N−アセチルコルヒノール−O−ホスファート(ZD6126)およびABT−751などのコルヒチン類似体を含む)、コルヒチノイド、コンブレタスタチン、フェンスタチン、ポドフィロトキシン、ステガナシン、アンフェチニル、およびスチルベンが挙げられるが、これらに限定されるものではない)と;ii)チューブリンのビンカ(Vinca)結合部位と相互作用するもの(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンフルニン、マイタンシノイド、ホモプソンA、リゾキシン、アウリスタチン(その類似体を含む)、およびドラスタチンが挙げられるが、これらに限定されるものではない)とからなる群から選択することができる。
【0016】
本発明のさらに好ましい態様において、VDAは、チューブリン内においてコルヒチン結合部位と相互作用するチューブリン結合剤である。本発明の一実施形態において、VDAはコルヒチンまたはその類似体/誘導体である。コルヒチン類似体または誘導体としては、アザデメチルコルヒチン、アザコルヒチン、N−メチルデスアセチルコルヒチン、デスアセチルコルヒチンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明の一実施形態において、VDAは非ペプチドVDAである。例えば、本発明によるVDAは、アウリスタチンでもその類似体でもないチューブリン結合剤であってもよい。
【0018】
あるいは、VDAは、コンブレタスタチン(例えば、コンブレタスタチンA−4 3−O−ホスファート)、アウリスタチン(その類似体を含む)、ドラスタチン、およびフラベノイド(例えば、腫瘍壊死因子αおよび5,6−ジメチルキサンテノン−4−酢酸(DMXAA)、フラボン酢酸(FAA))からなる群から選択される(ただし、これらに限定されない)チューブリン結合剤であってもよい。したがって、本発明の代替実施形態において、VDAはコンブレタスタチンである。
【0019】
本発明は、MMPファミリーのいずれかのメンバーを含む。MMPによるMMP切断部位におけるタンパク質切断によって、MMP切断部位と結合しているVDAおよび他の何らかの活性剤が活性型で放出される。
【0020】
MMPファミリーは、8つの構造群に分けられる。そのうち5群は分泌型MMPであり、3群は膜型MMP(MT−MMP)である。MT−MMPは細胞表面に局在している。本発明には、分泌型MMPおよび膜型MMPが含まれる。
【0021】
本発明の好ましい態様において、MMPは膜型(MT−MMP)である。したがって、本発明は、式I[式中、YはMT−MMPによって選択的に切断されるペプチド配列を含む]の化合物を提供する。MT−MMPは、
(i)I型の膜貫通型MT−MMP、例えばMMP−14(MT1−MMP)、MMP−15(MT2−MMP)、MMP−16(MT3−MMP)、およびMMP−24(MT5−MMP)と、
(ii)グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型構造群のMT−MMP、例えばMMP−17(MT4−MMP)およびMMP−25(MT6−MMP)と、
(iii)II型の膜貫通型クラス、例えばMMP−23と
からなる群から選択することができる。
【0022】
MMP切断部位は、MMPによって切断可能なアミド結合、典型的にはペプチド結合を有するいずれのペプチド配列を含んでもよい。好ましくは、Yは、2個〜20個のアミノ酸、例えば6個〜10個のアミノ酸(例えば、6個、7個または8個のアミノ酸)を含むペプチド配列である。アミノ酸は、D−アミノ酸またはL−アミノ酸のいずれであってもよい。
【0023】
MMPタンパク質切断部位は、配列
(i)P3’−P2’−P1’−P1−P2−P3
[式中、P1’〜P3’およびP1〜P3は同じでも異なっていてもよいが、アミノ酸残基であり、タンパク質切断はP1とP1’の残基間の結合で起こる]
を含んでもよい。好ましくは、MMPタンパク質切断部位は、P1とP1’との間の切断がMT−MMP、例えば、MT−MMP14によって選択的に起こるような、MT−MMP特異的切断部位である。
【0024】
MMPタンパク質切断部位は、配列
(ii)P3’−P2’−P1’−P1−P2−P3−P4
[式中、P1’〜P3’およびP1〜P4は同じでも異なっていてもよいが、アミノ酸残基であり、タンパク質切断はP1’とP1の残基間で起こる]
を含んでもよい。
【0025】
MMPタンパク質切断部位は、配列
(iii)P4’−P3’−P2’−P1’−P1−P2−P3−P4
[式中、P1’〜P4’およびP1〜P4は同じでも異なっていてもよいが、アミノ酸残基であり、タンパク質切断はP1’とP1の残基間で起こる]
を含んでもよい。
【0026】
本発明の好ましい一態様において、P1とP1’とは異なる。
【0027】
好ましくは、MMP切断部位は、MT−MMPによって選択的に切断されるペプチド配列を含む。したがって、好ましい態様において、本発明は、式(I)[式中、Yは、P1’が疎水性アミノ酸である配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。本明細書中では「疎水性」という用語は、FauchereおよびPliska Eur.J.Med Chem.10:39(1983年)に記載されるように、−1.10またはそれ以上の疎水度および/または0またはそれ以上の正味電荷を有するアミノ酸を意味することができる。疎水性または無極性アミノ酸はまた、生理的pHにおいて非荷電であって極性のない側鎖を有し、一般に水溶液とは混じらないアミノ酸を意味することができる。疎水性アミノ酸は、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、アラニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン、メチオニン、チロシンおよびトレオニンからなる群からこと選択されることができる。P1’は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸であることができる。あるいは、P1’は、芳香族側鎖を有するアミノ酸であることができる。P1’としては、非天然疎水性アミノ酸、例えば、ホモフェニルアラニン(Hof)を挙げることもできる。
【0028】
本発明の好ましい一態様は、式(I)[式中、Yは、P1が極性アミノ酸、例えば、アスパラギン(N)、セリン(S)またはグリシン(G)からなる群から選択されるアミノ酸である配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。切断部位におけるMT−MMPの選択性を改善するためには、P1はプロリンでないことが好ましい。したがって、本発明の一実施形態において、P1は、プロリンを除いたアミノ酸である。本発明の別の実施形態において、P1はグリシンである。
【0029】
本発明の好ましい一態様は、式(I)[式中、Yは、P2’が、例えば、アルギニン(R)、アラニン(A)、ロイシン(L)、アルパラギン酸(D)、チロシン(Y)、トレオニン(T)、セリン(S)およびプロリン(P)を含む極性非荷電アミノ酸および/または塩基性アミノ酸からなる群から選択される配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。切断部位におけるMT−MMPの選択性を改善するためには、P2’は、メチル化アミノ酸、例えば、N−メチルチロシンであることができる。本発明者らは、P2’がチロシンである場合には、非MT−MMP、例えばMMP2による切断がP1’−P2’部位とP2’−P3’部位の両方で起こることを発見した。したがって、本発明の一実施形態において、P2’はチロシンではない。
【0030】
本明細書中では、P3’残基は、任意のアミノ酸を含むことができる。本発明の一実施形態において、P3’はロイシン(L)である。存在する場合には、P4’残基は、求核性側鎖を有するアミノ酸、例えば、リジン(L)、システイン(C)、セリン(S)、チロシン(Y)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)を含むことができる。
【0031】
本発明の好ましい一態様は、式(I)[式中、Yは、P2が酸性(例えば、グルタミン酸)、塩基性、疎水性または極性アミノ酸からなる群から選択される配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。P2としては、非天然疎水性アミノ酸、例えば、シトルリン(Cit)を挙げることもできる。切断部位におけるMT−MMPの選択性を改善するためには、P2はプロリンでないことが好ましい。したがって、本発明の一実施形態において、P2は、プロリンを除いたアミノ酸である。
【0032】
本発明の好ましい一態様は、式(I)[式中、Yは、P3が、例えば、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)およびトレオニン(T)からなる群から選択される極性アミノ酸である配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。P3はプロリンでないことが好ましい。したがって、本発明の一実施形態において、P3はプロリンではない。本発明の別の実施形態において、P3はセリンである。
【0033】
本発明の好ましい一態様は、式(I)[式中、Yは、P4が、実質的な側鎖を有するアミノ酸、例えば、アルギニン(R)およびリジン(K)からなる群から選択されるアミノ酸を含む、側鎖中に塩基性基を有するアミノ酸である配列(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。切断部位におけるMT−MMPの選択性を改善するためには、P4はアルギニンであるのが好ましい。したがって、本発明の一実施形態において、P4はアルギニンである。
【0034】
本発明の好ましい一態様は、式(I)[式中、Yは、残基はいずれもプロリンではなく、かつR4がアルギニンである配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。
【0035】
残基P1〜P3またはP4はいずれも異なっていてもよい。あるいは、またはさらに、残基P1’〜P3’またはP4’はいずれも異なっている。
【0036】
本発明の一実施形態は、式(I)[式中、Yは、P1および/またはP2および/またはP3がプロリン以外のアミノ酸残基である配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物を提供する。さらに、この実施形態において、P4はアルギニンである。
【0037】
本発明の別の一実施形態においては、式(I)[式中、Yは、P1’が疎水性アミノ酸であり、P1および/またはP2および/またはP3がプロリン以外のアミノ酸残基である配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物が提供される。
【0038】
本発明のさらに別の一実施形態において、式(I)[式中、Yは、P1’が疎水性アミノ酸であり、P4がアルギニンである配列(ii)または(iii)を含む]の化合物が提供される。さらに、この実施形態において、P1および/またはP2および/またはP3は、プロリン以外のアミノ酸残基である。
【0039】
別の一実施形態において、P1’はホモフェニルアラニンである。さらに別の、または好ましい一実施形態において、P1はGlyである。
【0040】
MMPタンパク質切断部位Yは、アミノ酸配列(iv)
−Hof−Gly− (iv)
を含んでもよい。
【0041】
MMPタンパク質切断部位Yは、アミノ酸配列(v)
−P2’−Hof−Gly−P2− (v)
[式中、P2およびP2’は本明細書に定義する通りである]
を含んでもよい。
【0042】
MMPタンパク質切断部位Yは、アミノ酸配列(vi)
−P2’−Hof−Gly−P2−P3−P4− (vi)
[式中、P2’〜P4’およびP2は本明細書に定義する通りである]
を含んでもよい。好ましくは、P4はアルギニンである。好ましくは、P3はプロリンではない。
【0043】
一実施形態において、本発明は、式(I)[式中、Yは配列−Leu−Tyr−Hof−Gly−Cit−Ser−Arg−を含む]の化合物を提供する。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、式(I)[式中、YはLeu−Gly残基間で切断が起こる配列−Leu−Gly−Leu−Pro−を含まない]の化合物を提供する。
【0045】
本発明は、式(I)[式中、切断部位Yは、配列中の1種または複数のアミノ酸がグリコシル化されて親水性、ひいては溶解性が高められているアミノ酸の配列を含む]の化合物を提供できる。残基のグリコシル化は、次の通りであることができる:
セリン、トレオニン、チロシンの側鎖を介しての、配列中のアミノ酸のO−グリコシル化、
アスパラギン酸、グルタミン酸の側鎖を介しての、配列中のアミノ酸のN−グリコシル化、および/または
システインを介しての、配列中のアミノ酸のS−グリコシル化。
【0046】
本発明は、式(I)[式中、切断部位Yは、配列中の1種または複数のアミノ酸がホスホリル化されて親水性、ひいては溶解性が高められているアミノ酸の配列を含む]の化合物を提供できる。適切なアミノ酸としては、セリン、トレオニン、チロシンが挙げられる。本発明の一実施形態において、式(I)[式中、Yは、P2’、例えば、チロシンがホスホリル化されている配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物が提供される。本発明の別の一実施形態において、式(I)[式中、Yは、P3および場合によってはP2’がホスホリル化されているアミノ酸である配列(i)、(ii)または(iii)を含む]の化合物が提供される。
【0047】
本発明はまた、式(I)[式中、切断部位Yは、一例としてアミド結合がオレフィン結合で置換されているペプチド類似体、例えば、ペプチド模倣物、Nα−および/またはCα−メチル化アミノ酸、非天然アミノ酸、ならびに当技術分野で知られている他のアプローチを含む]の化合物を提供する。当技術分野では、このようなペプチド模倣物アプローチは、切断の特異性を高めるのに使用され、その結果、望ましくない酵素加水分解を減少させるように働く。本発明の一実施形態において、Yは、アミノ酸配列内の1つまたは複数のアミド結合が、Nα−および/またはCα−メチル化アミノ酸で置換されている類似体を含む。
【0048】
本発明の実施形態は、式(I)の化合物を含み、式中、YはC末端部位およびN末端部位を含み、前記C末端部位は、Xに直接的または間接的に結合しており、前記N末端部位は、別の部分、例えば以下に記載するcまたはZに直接的または間接的に結合している。
【0049】
本発明の代替実施形態は、式(I)の化合物を含み、式中、YはC末端部位およびN末端部位を含み、前記N末端部位は、Xに直接的または間接的に結合しており、前記C末端部位は、別の部分、例えば以下に記載するcまたはZに直接的または間接的に結合している。
【0050】
本発明の好ましい一実施形態において、式(I)の化合物[式中、Xはコルヒチンまたはその類似体であり、Yは、本明細書に定義するアミノ酸配列(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)を含むペプチドである]を提供する。
【0051】
好ましい態様において、本発明は、式(II)の化合物
X−Y−c (II)
[式中、XおよびYは本明細書に定義する通りであり、
cは末端基または「キャップ形成基」である]を提供する。例えば、MMP以外の酵素によるペプチドの非特異的分解を防止するために、キャップ形成基を使用して、医薬用途でペプチド鎖をキャップすることができる。cは、脂肪族化合物、芳香族化合物、多環式化合物、炭水化物(例えば、単糖)、アミノ酸(D−アミノ酸を含む)からなる群から選択された(ただし、これらに限定されない)、ブロック基として働くN末端またはC末端上の任意の適切な部分を含むことができる。溶解性を改善するために、cは親水基、例えば、さらなる極性官能基を有する任意の前記化合物(例えば、酸、アミン、アルコール、フェノール)の親水基であることができる。
【0052】
cは、式(c)n[式中、nは1〜5の整数である]で表すことができる。本発明の一実施形態において、cは、式(c)n[式中、cはアミノ酸(例えば、非天然アミノ酸)であり、nは3である]で表される。本発明の一実施形態において、nが3である場合、cはセリンではない。別の実施形態において、cはセリンでもキナ酸でもない。
【0053】
本発明は、さらに「リンカー」を提供することができる。リンカーは、YのC末端および/またはN末端に設けられていてもよい。好ましくは、リンカーは、YのC末端に設けられている。好ましくは、リンカーは、Yのアミノ酸配列と連続している。リンカーは、Yと結合している任意の部分を含むことができ、化学的、酵素的に除去し、または同時に分解することができる。リンカーは、単一アミノ酸(例えば、チロシン)からなることができ、またはアミノ酸配列を含むことができる。リンカーが一続きのアミノ酸を含む場合、配列は、YにおけるMMPによる切断を容易にすることができる親水性領域を提供することができる。配列中の適当なアミノ酸、すなわちセリン、トレオニン、およびチロシンのO−グリコシル化によって、親水性、およびしたがって溶解性を高めることができる。
【0054】
したがって、本発明の好ましい態様において、式(III)の化合物
X−a−Y (III)
[式中、XおよびYは本明細書に定義する通りであり、
aはリンカーであり、リンカーは、Xと直接的または間接的に結合している]を提供する。
【0055】
実施形態において、本発明は、式(IV)の化合物
X−a−Y−c (IV)
[式中、X、a、Y、およびcは本明細書に定義する通りである]を提供する。
【0056】
本発明のさらに別の好ましい態様において、本明細書に記載するリンカーと同じでも異なっていてもよい「スペーサ」を提供する。スペーサは、YのC末端および/またはN末端に設けられてもよい。好ましくは、スペーサは、YのN末端に設けられ、合成時にcの望ましくない除去を防止するように働く。スペーサは、Yと直接的または間接的に結合してもよい。スペーサとしては、いずれの単一アミノ酸(例えば、β−アラニン)、アミノ酸配列、スクシニル基を挙げることができる。したがって、本発明は、好ましくは式(V)の化合物
X−Y−b−c (V)
[式中、X、Y、およびcは本明細書に定義する通りであり、
bは、本明細書に定義するスペーサである]を提供する。
【0057】
別の実施形態において、本発明は、式(VI)の化合物
X−a−Y−b−c (VI)
[式中、X、Y、a、b、およびcは本明細書に定義する通りである]を提供する。
【0058】
本発明の一実施形態において、式(VI)の化合物[式中、Xはコルヒチン(またはその類似体)であり、Yは、本明細書に定義するアミノ酸配列(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)を含むペプチドであり、aはチロシンであり、bはアラニンである]を提供する。
【0059】
本発明の第2の態様において、式(VII)の化合物、またはその医薬として許容される塩
X−Y−Z (VII)
[式中、XおよびYは本明細書に定義する通りであり、Zは抗がん剤である]を提供する。
【0060】
好ましくは、Zは、Xと同じでも異なっていてもよい血管破壊剤、代謝拮抗物質(例えば、5−フルオロウラシル)、細胞毒性または抗増殖性剤(例えば、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)、ビンカアルカロイド、タキサン、細胞毒性ヌクレオチド)、生体毒素・放射線治療・ホルモン剤、または細胞毒性、細胞静止、抗血管新生、もしくは血管破壊作用を誘導することが知られている任意の天然物もしくは物質からなる群から選択される抗がん剤である。
【0061】
本発明の好ましい態様において、式(VIII)の化合物
X−a−Y−Z (VIII)
[式中、X、a、Y、およびZは本明細書に定義する通りである]を提供する。
【0062】
本発明のさらに好ましい態様において、式(IX)の化合物
X−a−Y−b−Z (IX)
[式中、X、a、Y、b、およびZは本明細書に定義する通りである]を提供する。本発明のこの態様において、スペーサbの目的は、YのN末端アミンをカルボン酸に変換して、化合物Z(式中、Zは遊離アミンを有する(例えば、式中、Zはドキソルビシンである))の結合を可能にすることである。Zが遊離カルボン酸を有する場合、bは必要でない。
【0063】
本発明の好ましい一態様において、式(VII)[式中、Xはコルヒチンまたはその誘導体、例えば、アゼデメチルコルヒチンであり、Zは細胞毒性剤、例えば、ドキソルビシンである]の化合物が提供される。好ましくは、Yはやはり、本明細書中で定義したアミノ酸配列(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)を含むペプチドである。
【0064】
本発明のさらに好ましい一態様において、式(VII)[式中、XおよびZは、コルヒチンまたはその類似体もしくは誘導体から選択される]の化合物が提供される。また、XおよびZがいずれもコルヒチンであってもよい本発明の化合物も提供される。この態様において、Yは、本明細書中で定義したアミノ酸配列(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)または(vi)を含むペプチドであることができる。
【0065】
本発明による化合物は、固相合成(例えば、ポリマー支持体に結合させる)もしくは溶液相合成(例えば、カップリング剤の存在下でもしくは収束合成を用いて行う)によって調製できる。
【0066】
したがって、本発明の別の態様は、本発明による化合物を調製する方法であって、
i)Xに結合している固体支持体を準備するステップと、
ii)場合によっては、リンカーaをXのC末端またはN末端に結合させるステップと、
iii)アミノ酸残基を段階的にXのC末端もしくはN末端、または(ii)でXに結合させたリンカーに結合させて、MMPタンパク質切断配列を含むペプチド配列Yをもたらすステップと、
iii)場合によってはキャップ形成基cをYのそれぞれのC末端またはN末端に結合させて、式(II)または(IV)の化合物をもたらすステップと
を含む方法を提供する。
【0067】
好ましい方法では、固体支持体は、任意のポリスチレン系またはPEG系樹脂などの任意のポリマー支持体、例えばトリチル系樹脂である。リンカーは、スクシナートまたはマロナート誘導体、例えば、無水コハク酸であってもよい。
【0068】
本発明のさらに別の一態様は、本発明による化合物を調製する方法であって、
i)ペプチド配列Yを調製するステップと、
ii)YのそれぞれのC末端またはN末端にキャップ形成基を結合させるステップと、
iii)カップリング剤の存在下でXおよびステップ(ii)で調製したキャップされたペプチドの溶液を調製し、所望の化合物を単離するステップと
を含む方法を提供する。
【0069】
好ましい方法では、Yは、アミノ酸を固体支持体に段階的に結合させて、ペプチド配列をもたらすことによって調製する。別法として、配列Yは、溶液中で合成してもよい。
【0070】
本発明の方法では、当技術分野で知られている任意のカップリング剤、例えば、EDAC、DCC、DiC、PyBOP、HCTUなどを適当な溶媒(例えば、DMF、THFなど)中で使用できる。
【0071】
別の溶液相合成においては、配列YのC末端の1種または複数のアミノ酸を溶液中でXに結合させて、ペプチド配列(前述のように固体支持体上で予備合成したもの)の残りを溶液中において収束合成で結合させることができる。
【0072】
本発明の好ましい方法は、YのC末端へのXの結合を可能にする。さらに、この方法は、YのN末端にZを結合させることを含むことができる。例えば、この方法は、
i)YのC末端に結合するために、Xにアミン基を導入するステップと、場合によっては、
ii)YのN末端に結合させるために、Zにカルボン酸基(またはイソチオシアナートまたはイソシアナート基)を導入するステップと
を含むことができる。
【0073】
さらに好ましい方法は、YのN末端へのXの結合を可能にする。さらに、この方法は、YのC末端へのZの結合を含むことができる。例えば、この方法は、
i)YのN末端に結合させるために、Xにカルボン酸基(またはイソチオシアナートまたはイソシアナート基)を導入するステップと、場合によっては、
ii)YのC末端に結合させるために、Zにアミン基を導入するステップと
を含むことができる。
【0074】
本発明の好ましい方法において、Xはコルヒチンまたはその類似体もしくは誘導体、例えば、アザデメチルコルヒチンであり、Zは細胞毒性剤、例えば、ドキソルビシンである。
【0075】
別の態様において、本発明は、VDAの部位特定的活性化における、MMPタンパク質切断部位、詳細には、本明細書中に定義するMT−MMP特異的切断部位の使用を提供する。本明細書では「部位特異的活性化」という用語は、概括的にMMPタンパク質切断部位における部位特異的切断によるVDAの活性化を意味し、これに限定されない。タンパク質切断部位における部位特異的切断は、VDAの遊離、したがって活性化と同時に起こるものと予想される。
【0076】
医薬組成物および使用
他の態様において、本発明は、医薬品で使用するための本明細書に上述した化合物、またはその医薬として許容される塩を提供する。別の態様において、本明細書に上述した化合物を含む医薬製剤を提供する。製剤は、少なくとも1種の追加の医薬として許容される成分、例えば添加剤、賦形剤、または担体を含有することができる。好ましくは、製剤は、非経口投与用である。
【0077】
本発明は、本発明による化合物を含む医薬製剤を提供する。好ましい実施形態において、化合物は、式(VII)を有する。
【0078】
本発明の好ましい態様において、前記組成物は、医薬として許容される担体または賦形剤を含む。
【0079】
本発明の組成物は、典型的には有効量で投与される。「有効量」は、単独でまたは別の用量と共に、所望の応答をもたらす組成物のその量である。投与するとき、本発明の医薬組成物は、医薬として許容される製剤として投与される。このような調製物は、医薬として許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、相溶性担体、および場合によっては他の治療剤(例えば、シスプラチン;カルボプラチン;シクロスホスファミド;メルファラン;カルムスリン;メトトレキサート;5−フルオロウラシル;シタラビン;メルカプトプリン;ダウノルビシン;ドキソルビシン;エピルビシン;ビンブラスチン;ビンクリスチン;ダクチノマイシン;マイトマイシンC;タキソール;L−アスパラギナーゼ;G−CSF;エトポシド;コルヒチン;デルフェロキサミンメシル酸塩;およびカンプトテシン)をルーチンで含有することができる。
【0080】
本発明の組成物は、注射を含めて任意の通常経路、または経時的漸次注入で投与することができる。投与は、例えば経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、または経皮とすることができる。がんなど特定の疾患を治療する場合は、所望の応答は、疾患の進行を抑制することである。これは、疾患の進行を永久に停止するものであることがより好ましいが、疾患の進行を一時的に遅らせるものでしかない場合がある。これは、当技術分野で知られているルーチンの方法で監視することができる。
【0081】
組成物を(例えば、試験目的または動物治療目的で)ヒト以外の哺乳類に投与することは、上述した条件と実質的に同じ条件下で実施される。対象は、本明細書では哺乳類、好ましくはヒトであり、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、またはげっ歯類が含まれる。
【0082】
投与するとき、本発明の医薬調製品は、医薬として許容される量で、医薬として許容される組成物で適用される。「医薬として許容される」という用語は、活性成分の生物活性の有効性に干渉しない非毒性材料を意味する。
【0083】
医薬組成物は、望むなら医薬として許容される担体と組み合わせてもよい。本明細書では「医薬として許容される担体」という用語は、ヒトへの投与に適している1種または複数の固体もしくは液体相溶性充填剤、賦形剤、またはカプセル化物質を意味する。「担体」という用語は、活性成分と組み合わせて適用を容易にする天然または合成の有機または無機材料を意味する。
【0084】
医薬組成物は、塩形態の酢酸;塩形態のクエン酸;塩形態のホウ酸;および塩形態のリン酸を含めて、適当な緩衝剤を含有することができる。
【0085】
医薬組成物は、塩化ベンザルコニウム;クロロブタノール;パラベン、およびチメロサールなど適当な保存剤を場合によっては含有することもできる。経口投与に適した組成物は、カプセル剤、錠剤、ロゼンジ剤などそれぞれ所定量の活性化合物を含有する別個の単位として提供することができる。他の組成物としては、シロップ剤、エリキシル剤、または乳剤など水性液体または非水性液体中の懸濁液が挙げられる。
【0086】
好都合なことに、非経口投与に適した組成物は、好ましくはレシピエントの血液と等張である化合物の水性または非水性無菌調製物を含む。この調製物は、知られている方法に従って適当な分散化剤または湿潤剤、および懸濁化剤を使用して製剤することができる。注射可能な無菌調製物は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液として、非経口的に許容できる非毒性賦形剤または溶媒中の注射可能な無菌溶液または懸濁液とすることもできる。使用することができる許容できるビヒクルおよび溶媒の中で、水、リンゲル液、および等張食塩水が有用である。さらに、通常は無菌の不揮発性油が溶媒または懸濁化媒体として使用される。このために、合成モノまたはジグリセリドを含めて、任意の無刺激不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射剤の調製で使用することができる。経口、皮下、静脈内、筋肉内投与などに適した担体製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PAで見ることができる。
【0087】
本発明による化合物を使用して、MMP、特にMT−MMPを過剰発現する組織に関連した疾患または病態を治療することができる。したがって、本発明は、有効量の本発明による化合物を投与することを含む、対象におけるがんを治療する方法を提供する。本発明の好ましい方法では、前記対象はヒトである。
【0088】
本明細書では、「がん(cancer)」という用語は、自律的増殖の能力を有する細胞、すなわち急速増殖性の細胞増殖を特徴とする異常状態または病態を指す。この用語は、病理組織学的タイプまたは侵襲性の段階にかかわりなく、すべてのタイプの癌性増殖もしくは腫瘍形成過程、転移性組織、または悪性形質転換細胞、組織もしくは臓器を包含するものである。「がん」という用語は、上皮、内皮、および間葉系由来の悪性腫瘍、特に癌腫および肉腫、具体的には呼吸器系(口、鼻、気管、肺)、胃腸管(舌、食道、胃、小腸、結腸、肝臓、膵臓、胆嚢、直腸)、内分泌系(甲状腺、下垂体、副腎)、生殖−尿路(膀胱、腎臓)、生殖系(乳房、卵巣、子宮、子宮頚部、前立腺、陰茎、陰嚢、精巣)、皮膚(メラノサイト、表皮、内皮)、神経系(脳、脊髄、グリア細胞、ニューロン)、およびリンパ系に影響を及ぼすものを包含する。
【0089】
「癌腫(carcinoma)」という用語は、当技術分野で認識されており、呼吸器系癌、胃腸系癌、内分泌系癌、生殖−尿路癌、皮膚癌、および生殖系癌を含めて、上皮由来の悪性腫瘍を指す。「癌腫」という用語は、腺組織に由来する癌腫を指す「腺癌」、扁平上皮由来の癌腫を指す「扁平上皮癌」、ならびに癌性および肉腫性組織から構成された腫瘍を指す「癌肉腫」も包含する。例示的な癌腫としては、子宮頚部、前立腺、乳房、鼻、頭頚部、口腔、食道、胃、肝臓、膵臓、結腸、卵巣、膀胱、および肺の上皮から形成するもの、特に非小肺癌が挙げられる。
【0090】
「肉腫」という用語は、当技術分野で認識されており、骨、軟骨、脂肪組織、平滑筋、骨格筋、神経鞘、血管、中皮、および胃腸間質を含めて、軟部組織または結合もしくは支持組織の悪性腫瘍を指す。別のタイプのがんとしては、白血球に由来する腫瘍を指す「白血病」およびリンパ系の腫瘍を指す「悪性リンパ腫」が挙げられる。
【0091】
本発明による化合物を含む医薬製剤は、代謝拮抗物質(例えば、5−フルオロウラシル)、細胞毒性または抗増殖性剤(例えば、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、タキサン、細胞毒性ヌクレオチド)、生体毒素、放射線治療薬、ホルモン剤、または細胞毒性、細胞静止、抗血管新生、もしくは血管破壊作用を誘導することが知られている任意の天然物または物質が含まれるがこれらに限定されない抗がん剤(化学療法剤)として、組み合わせて、順次に、または実質的に同様な時間に投与することができる。
【0092】
本明細書では、「治療(treatment)」は、治療される個体または細胞の自然経過を変更しようとする臨床的介入を指し、予防のため、または臨床病理の過程において行うことができる。
【0093】
別の態様において、本発明は、がんを治療するための医薬品の製造において本発明による化合物の使用を提供する。
【0094】
本発明の一態様において、本発明の化合物または組成物を使用して、炎症性障害および/または炎症応答を治療することができる。したがって、本発明の別の態様によれば、有効量の本発明による化合物を投与することを含む、対象における炎症性障害を治療する方法を提供する。
【0095】
炎症性障害は、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、骨関節炎、痛風、紅斑性狼瘡、強皮症、シェーグレン症候群、多発性筋炎および皮膚筋炎、血管炎、腱炎、滑膜炎、細菌性心内膜炎、歯周炎、骨髄炎、乾癬、肺炎、線維化性肺胞炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺気腫、珪肺症、塵肺症、結核、潰瘍性大腸炎、クローン病、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群および重症筋無力症、乳腺炎、蹄葉炎、喉頭炎、慢性胆嚢炎、橋本甲状腺炎、および炎症性乳房疾患からなる群から選択することができる。一実施形態において、炎症性障害は、移植後の組織または器官拒絶反応の結果とすることができる。特定の実施形態において、炎症性障害は、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、骨関節炎、敗血症、および多発性関節炎からなる群から選択される。
【0096】
本発明の化合物を使用して、心不全を治療することができる。また、心不全を治療するための医薬品を製造するための本明細書に記載された化合物の使用も提供される。
【0097】
本発明の一実施形態において、本発明の化合物は、創傷(例えば、潰瘍、皮膚切傷または熱傷を含めて病変)を治療するのに有用である場合がある。したがって、本発明は、有効量の本発明による化合物を投与することを含む、対象における創傷を治療する方法を提供する。本発明の好ましい方法では、前記対象はヒトである。
【0098】
本発明の化合物を使用して、月経を伴う病態および障害を治療することもできる。
【0099】
さらに、
(1)本明細書に記載する化合物または組成物と、
(2)化合物を本明細書に記載する方法または使用において使用するための指示書と
を共に含む、パーツのパッケージまたはキットを提供する。
【0100】
本明細書で定義するパッケージは、反復投与を行うために1つより多い投与単位を含んでもよい。1つより多い投与単位が存在する場合、このような単位は、化合物組成物の用量および/または物理的形態の点から同じでも異なっていてもよい。
【0101】
保護範囲には、実際にこのような化合物を含有しているかどうかにかかわりなく、かつ任意のこのような化合物が治療上有効量で含まれているかどうかにかかわりなく、本発明の化合物を含有するまたは含有すると称している偽のまたは不正な製品が含まれる。
【0102】
保護範囲には、パッケージが本発明の種または医薬製剤、およびこのような製剤または種である、もしくはそれを含む、またはそれであるもしくはそれを含むと称する製品を含むということを示す説明書または指示書を含むパッケージが含まれる。このようなパッケージは、必ずしも偽または不正ではないが、偽または不正である可能性がある。
【0103】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という言葉、ならびにその言葉の変形、例えば「含んでいる(comprising)」および「含む(comprises)」は、「〜を含むが、これらに限定されるものではない」を意味し、他の部分、添加物、成分、整数、またはステップを排除するものではない(かつ排除しない)。
【0104】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、単数には、文脈上からそうでないことが必要でない限り、複数が含まれる。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上からそうでないことが必要でない限り、複数および単数が考慮されていると理解されたい。
【0105】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載する特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、本明細書に記載する他のいかなる態様、実施形態、または実施例と不適合でない限り、それらに適用可能であると理解されたい。
【0106】
次に、以下の図を参照して、本発明を単に例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】生体外での腫瘍および非腫瘍組織におけるプロドラッグ−1の代謝対時間を示すグラフである。
【図2】腹腔内投与後の担腫瘍マウスにおけるプロドラッグ−1の蓄積およびレベルを示すグラフである。
【図3】担腫瘍マウスへのプロドラッグ−1の腹腔内投与後に蓄積するVDAレベルを示すグラフである。
【図4】高MT1−MMPレベルを示す腫瘍ホモジネート(HT1080)対低MT1−MMPレベルを示す腫瘍ホモジネート(MCF−7)におけるプロドラッグ−2の異なる代謝を示すグラフである。
【図5】腹腔内投与後のHT1080担腫瘍マウスにおけるプロドラッグ−2の蓄積およびレベルを示すグラフである。
【図6】HT1080担腫瘍マウスへのプロドラッグ−2の腹腔内投与後に蓄積するVDAのレベルを示すグラフである。
【図7】用量漸増試験におけるマウスの相対体重
【図8】ICT−2522(ウォーヘッド)での処理中の腫瘍増殖
【図9】ICT−2588(プロドラッグ)での処理中の腫瘍増殖
【図10a】a)ICT−2588、37.5mg/kgおよびICT−2552、7.5mg/kgのモル当量用量で投与された、ウォーヘッド(ICT−2522)と比較したプロドラッグ(ICT−2588)で処理されたマウスに関する腫瘍増殖曲線
【図10b】b)ICT−2588、50.0mg/kgおよびICT−2552、10.0mg/kgのモル当量用量で投与された、ウォーヘッド(ICT−2522)と比較したプロドラッグ(ICT−2588)で処理されたマウスに関する腫瘍増殖曲線
【図10c】c)ICT−2588、62.5mg/kgおよびICT−2552、12.5mg/kgのモル当量用量で投与された、ウォーヘッド(ICT−2522)と比較したプロドラッグ(ICT−2588)で処理されたマウスに関する腫瘍増殖曲線
【図10d】d)ICT−2588、75.0mg/kgおよびICT−2552、15.0mg/kgのモル当量用量で投与された、ウォーヘッド(ICT−2522)と比較したプロドラッグ(ICT−2588)で処理されたマウスに関する腫瘍増殖曲線
【図11】ホスホリル化されているアミノ酸残基、エンドキャップ、ウォーヘッドおよびP2’の代替を含む改変を示す、プロドラッグICT−2588
【図12】腫瘍(HT1080)および肝臓(マウス)ホモジネートの両者におけるICT3053(P2’=Ala)の安定性を示すグラフ。これは、この系の分子について得られるデータの一例であり、データの要約は表1に示す。
【図13】ホスファートがセリン(ICT3047)、チロシン(ICT3048)ならびにセリンおよびチロシンの両者(ICT3028)に結合された分子に関する安定性データ。データは、インキュベーション後に腫瘍(HT1080、黒丸)およびマウス肝臓(白丸)ホモジネートに残った親分子のパーセントを、表示された時間について示している。これは、複数の実験からの代表的なデータである。クロマトグラフ分離を確立して、各分子の脱リン酸化を監視した。
【発明を実施するための形態】
【0108】
材料および方法
【実施例1】
【0109】
固定化コルヒチン誘導体、アザデメチルコルヒチンの合成
【0110】
【化1】
1の合成:
アンモニア溶液(35%、15mL)をコルヒチン(750mg、1.88mmol、1.00当量)に添加し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。粗生成物をKHSO4(1M、水溶液)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。続いて、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離:CH2Cl2/メタノール 95:5→10:1)で精製して、黄色固体の1(427mg、1.11mmol、59%)を得た。
δH (600 MHz, CDCl3), 7.99 (1 H, 広幅 s, NH), 7.56 (1 H, d, J 2.1, C8-H), 7.32 (1H, d, J 10.7, C11-H), 6.88 (1 H, d, J 11.0, C10-H), 6.52 (1 H, s, C4-H), 6.03 (2 H, 広幅 s, NH2), 4.68 (1 H, ddd, J 12.6, 6.5および6.5, C7-H), 3.93 (3 H, s, OCH3), 3.88 (3 H, s, OCH3), 3.60 (3 H, s, OCH3), 2.47 (1 H, dd, J 13.4および6.2, C5-CH2), 2.35 (1 H, ddd, J 13.4, 12.7および6.9, C5-CH2), 2.29-2.23 (1 H, m, C6-CH2), 1.98 (3 H, s, CH3), 1.90-1.88 (1 H, m, C6-CH2); ES m/z (%) 385 [M++ H] (100).
【0111】
2の合成:
HCTU(642mg、1.55mmol、1.50当量)およびジイソプロピルエチルアミン(DiPEA、516μL、404mg、3.11mmol、3.00当量)を、Fmoc−tyr(tBu)−OH(714mg、1.55mmol、1.50当量)のDMF(10mL)溶液に添加した。室温で5分間撹拌した後、1(398mg、1.04mmol、1.00当量)を溶液に添加した。反応混合物を50℃で22時間撹拌した。DMFを真空で除去し、得られた油をCH2Cl2(20mL)に溶解した。有機相をKHSO4(水溶液、2回×20mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離:CH2Cl2/メタノール 100:0→99:1→98:2)で精製して、黄色固体の2(530mg、642μmol、67%)を得た。
δH (600 MHz, CDCl3), 10.42 (1 H, 広幅 s, NH), 9.02 (1 H, d J 10.7, C11-H), 7.75 (2 H, d, J 7.2, C23-H, C24-H), 7.54 (2 H, d, J 7.2, C20-H, C27-H), 7.45 (1 H, d, J 11.0, C10-H), 7.39 (2 H, dd, J 7.2および7.2, C22-H, C25-H), 7.29 (2 H, dd, J 6.6および6.6, C21-H, C26-H), 7.19 ( 1 H, 広幅 s, C8-H), 7.03 (2 H, d, J 7.9, C14-H, C17-H), 6.81 (2 H, d, J 7.9, C15-H, C16-H), 6.50 (1 H, s, C4-H), 5.88 (1 H, 広幅 s, NH), 5.25 (1 H, 広幅 s, C12-H), 4.73-4.67 (1 H, m, C7-H), 4.43 (1 H, dd, J 10.0および7.6, C18-CH2), 4.28 (1 H, dd, J 10.0および7.2, C18-CH2), 4.16 (1 H, dd, J 7.2および6.19, C19-H), 3.93 (3 H, s, OCH3), 3.88 (3 H, s, OCH3), 3.62 (3 H, s, OCH3), 3.21 (1 H, dd, J 13.1および4.8, C13-CH2), 3.11 (1 H, dd, J 13.1および5.5, C13-CH2), 2.53 (1 H, dd, J 13.4および6.2, C5-CH2), 2.40 (1 H, ddd, J 13.4, 12.7および6.9, C5-CH2), 2.22-2.15 (1 H, m, C6-CH2), 1.88 (3 H, s, CH3), 1.80 (1 H, ddd, J 11.5, 11.3および6.9, C6-CH2), 1.22 (9 H, s, C(CH3)3); ES m/z (%) 826 [ M+] (100).
【0112】
3の合成:
2の溶液(486mg、589μmol、1.00当量)にTFA(2mL)を添加し、反応混合物を20分間撹拌した。TLCは、生成物への定量的変換を示した。生成物をトルエンと同時蒸発させ、減圧濃縮して、定量的収率で3を得た。
δH (600 MHz, CDCl3), 10.08 (1 H, 広幅 s, NH), 8.99 (1 H, d J 10.7, C11-H), 7.71 (2 H, d, J 6.2, C23-H, C24-H), 7.55 ( 1 H, s, C8-H), 7.49 (2 H, dd, J 6.5および6.5, C20-H, C27-H), 7.41 (1 H, d, J 10.2, C10-H), 7.33 (2 H, dd, J 6.2および6.2, C22-H, C25-H), 7.26-7.21 (2 H, m, C21-H, C26-H), 6.91 (2 H, d, J 8.3, C14-H, C17-H), 6.56 (2 H, d, J 7.2, C15-H, C16-H), 6.45 (1 H, s, C4-H), 5.93 (1 H, 広幅 s, NH), 5.28 (1 H, s, NH), 4.95-4.90 (1 H, m, C12-H), 4.60 (1 H, ddd, J 11.7, 5.8および6.9, C7-H), 4.39 (1 H, dd, J 8.9および8.6, C18-CH2), 4.29-4.24 (1 H, m, C18-CH2), 4.12 (1 H, dd, J 6.9および6.9, C19-H), 3.90 (3 H, s, OCH3), 3.84 (3 H, s, OCH3), 3.54 (3 H, s, OCH3), 3.08 (2 H, d, J 5.2, C13-CH2), 2.44 (1 H, dd, J 13.4および6.2, C5-CH2), 2.33-2.26 (1 H, m, C5-CH2), 2.15-2.09 (1 H, m, C6-CH2), 1.82 (3 H, s, CH3), 1.75-1.69 (1 H, m, C6-CH2); ES m/z (%) 770 [M+] (100).
【0113】
4の調製:
2−クロロトリチルクロリド樹脂(Novabiochem、100〜200メッシュ、置換1.4mmolg−1、589mg、0.765mmol、1.00当量)を、3(589mg、0.765mmol、1.00当量)、ジメチルアミノピリジン(10mg、76.5μmol、0.01当量)、DiPEA(247mg、1.913mmol、333μL、2.50当量)、およびピリジン(241mg、3.061mmol、248μL、4.00当量)のTHF(10mL)溶液に懸濁し、50℃で6時間撹拌した。続いて、樹脂を濾過し、THFで完全に洗浄した。次いで、樹脂をメタノール(CH2Cl2:MeOH:DiPEA 17:2:1、100mL)で十分洗浄することによって、樹脂をキャップした。樹脂4をP2O5で終夜乾燥した。乾燥樹脂重量:593mg(負荷率56%)。
【0114】
エンドペプチダーゼ活性化プロドラッグの合成の一般手順
【0115】
【化2】
例として、Fmoc系ストラテジーを用いて、固定化コルヒチン誘導体4から、通常の固相ペプチド合成法を使用してペプチドコンジュゲート5を合成した。
【0116】
2−クロロトリチル誘導体化樹脂を使用して、Nα−Fmocストラテジー合成を手動で実現した。樹脂を、DMF中で完全に膨潤させ、続いてDMF中20%(v/v)ピペリジン(3回×3分)で処理することによって、N−Fmoc保護基を除去した。Nα−Fmocで保護された2.5倍モル過剰のアミノ酸(適切な側鎖保護基を有する)を使用して、すべてのカップリングをDMF中で行い、HCTU/HOBt/DiPEAを使用して活性化した。DMF中20%ピペリジン(3回×3分)を使用して、Nα−Fmoc脱保護を行った。ニンヒドリンをベースにしたカイザー試験を使用して、カップリングおよび脱保護の成功を監視した。不成功のカップリングを繰り返した。最終のNα−Fmoc脱保護を行った後、ペプチド鎖をフルオレセインイソチオシアナート(2.50当量、DiPEAの存在下で1.50当量)でエンドキャップした。この反応の成功もカイザー試験で監視した。
【0117】
追加のβ−アラニン残基を配列に組み込んで、チオ尿素結合と酸性の切断条件との非適合性を克服した(チオ尿素は転位することができ、直前のアミド結合のカルボニル炭素はこうして形成されたスルフヒドリル様官能基による求核攻撃を受ける可能性がある。これによって、アミド結合が切断され、同時に環状チアゾリノンが形成される。チアゾリノンは、酸水溶液の存在下で転位を受けて、チオヒダントインを形成することができる)。
【0118】
配列が完了すると、樹脂を洗浄し(DMF、CH2Cl2、CH2Cl2/MeOH)、KOHで恒量になるまで真空乾燥した。TFA−H2O−トリイソプロピルシラン(95:2.5:2.5)を室温で2時間使用した穏やかな酸分解で、ペプチドを樹脂から切断し、同時に側鎖を脱保護した。切断した後、TFAを減圧下で除去した。粗生成物を95%酢酸水溶液に抽出し、凍結乾燥した。続いて、逆相HPLCを使用して、粗ペプチドを分析し、分取HPLCを使用して、精製した(純度>97%)。純粋な分画を合わせ、凍結乾燥した。ペプチドコンジュゲートの精製には、C18分取カラム(Zorbax Eclipse、21.2×150mm XDB−C18、Agilent)を用いた。移動相については、移動相AはHPLCグレード水およびTFA0.045%とし、移動相Bは、HPLCグレード水10%、アセトニトリル90%およびTFA0.045%で構成した。移動相を、ニトロセルロース製0.45μmポアフィルター(Sartolon、Sartorius、UK)に通して真空濾過することによって脱気した。クロマトグラフィーは室温で行い、流速は21.2mL/分に保持した。移動相の勾配を最適化し、構造的に類似した化合物について組織内で既に設計されている勾配からスケールアップした。紫外吸光度の検出は255nmで最大であった。ES m/z (%)951.8[M+H]2+(100)。RP−HPLC(勾配:0分 30% B:5分 35% B;25分 80% B;26分 100% B;27分 100% B;30分 30% B)Rt=11.98分。
【0119】
コルヒチンとペプチド配列との、コルヒチンB−環を介したペプチドN−末端への結合
ペプチドN末端を介したコルヒチン部分の結合を可能にするために、次のストラテジーを使用する。公表されている方法を使用して、B環アミンを破蔽することができる。アスパラギン酸を用いたアシル化によって、カルボン酸が(アミノ酸側鎖から)分子に導入され、それによってペプチドN末端における遊離アミンへの結合が可能になる(下記を参照のこと)。
【0120】
【化3】
【0121】
MMP活性化、その後のエキソペプチダーゼ分解の後に親コルヒチンが遊離されたかどうかを評価するために、アミド結合のアセチル化を試験する。
【0122】
【化4】
【0123】
コルヒチン類似体とペプチド配列との、コルヒチンC−環を介したペプチドN末端への結合
そのN末端を介したコルヒチン類似体の結合を可能にするために、次のストラテジーを使用する。アザデメチルコルヒチンのアシル化は、既に記載したようにして実施できる。Boc保護基の破蔽後すぐに、無水コハク酸(またはモノ保護スクシナートもしくはマロナート(または同様な)類似体)によるアシル化を行う。次に、脱保護により、ペプチドN末端への結合に適したカルボン酸官能基を得られるであろう。
【0124】
【化5】
【0125】
ドキソルビシンのペプチド配列への結合のストラテジー:
N末端ドキソルビシン結合
(上記の固定化コルヒチン誘導体化樹脂を使用したペプチド合成に続いて)ペプチドN末端を介したドキソルビシンの結合を可能にするために、まずカルボン酸を導入するように改変しなければならない。例には、無水コハク酸を用いた反応(下記のストラテジー1)が含まれる。しかし、下記(ストラテジー2)に示すように、アスパラギン酸の側鎖(両方とも天然アミノ酸)を利用することによって、(異質な化学単位とは対照的に)天然アミノ酸が代謝で遊離する。
【0126】
ストラテジー1:(スクシニルスペーサ)
【0127】
【化6】
【0128】
ストラテジー2:(アミノ酸スペーサ)
【0129】
【化7】
【0130】
ストラテジー3
ストラテジー1および2に記載したのと同様にして、ドキソルビシン糖アミンをアミノ酸によってアシル化することができ、脱保護後すぐに、スクシナート(またはその他の)スペーサによってさらに誘導体化させて、ペプチドN末端に結合させることができる誘導体を得ることができる。
【0131】
【化8】
【0132】
2)C末端ドキソルビシン結合
ドキソルビシンのアミン基のDde(ペプチド化学において、かつ我々のグループによってよく使用される保護基)による保護によって、トリチル系(またはその他の)樹脂へのその物質の固定化が可能になるはずである。その後にDde基を除去することによって、アミンが破蔽され、ペプチド配列がこの地点から(すなわち、C末端を介して)構築することが可能になるはずである。標準的Fmoc系固相合成によって、ペプチド配列が生じるはずである。次いで、適切に誘導体化されたVDAは、N末端を介して結合することができるであろう。樹脂切断および精製は、上記の通りであるはずである。
【0133】
【化9】
【0134】
グリコシル化アミノ酸の組込み
適切な側鎖官能基を有するアミノ酸(例えば、セリン、チロシン、トレオニン)を(単糖、二糖、または三糖で)グリコシル化して、改善された水溶性を有するペプチドを生成することができる。このような炭水化物誘導体化部分を、例えばセリンの代わりに使用することができるであろう(下記のスキームを参照のこと)。
【0135】
【化10】
【0136】
結果
1)MMP活性化プロドラッグ
−全MMP標的化
構造:
【0137】
【化11】
a)生体外で正常マウス血漿、正常マウス肝臓ホモジネート、およびヒト腫瘍実験モデルホモジネート(HT1080異種移植片;MMPの大部分を発現することが知られている)を使用して、プロドラッグ−1をスクリーニングした。LC/MS/MSを使用して、プロドラッグ切断および代謝を検出した。
a.プロドラッグ−1は、血漿および肝臓において安定であり、これらの治療薬の全身安定性を裏付けた(図1)。
b.プロドラッグ−1は、腫瘍ホモジネートにおいて代謝され、MMPを発現する腫瘍におけるこれらの治療薬の活性化を裏付けた(図1)。
b)プロドラッグ−1は、少なくとも組換えMMP−2、MMP−9、MMP−10、およびMMP−14によってグリシン−ホモフェニルアラニン(Gly−Hot)において急速に切断される。LC/MS/MSおよび質量分析によって示す(データ示さず)。
c)皮下HT1080腫瘍モデルを有するマウスに、プロドラッグ−1を腹腔内経路で生体内投与した(MMPの大部分の発現)。投与後に、血漿、組織、および腫瘍を一定の間隔で回収した。プロドラッグおよびVDA2のレベルを、LC/MS/MSによって評価した。
a.プロドラッグ−1は蓄積し、分析した組織のすべてにおいて検出された(図2)。
b.腫瘍において、最高のプロドラッグ−1レベルが観察された(図2)。
c.投与してから24時間後に検出可能でないプロドラッグ−1(図2)。
d.プロドラッグ−1の投与後に、VDA2は、正常組織において低レベルで検出可能であった(図3)。
e.プロドラッグ−1の投与後に、VDA2レベルは、腫瘍組織において高レベルで検出された(図3)。
f.プロドラッグ−1を投与してから24時間後に、VDA2は、腫瘍においてやはり高レベルで検出可能であり、正常組織においては検出不可能であった(図3)。
【0138】
2)MMP活性化プロドラッグ(ICT−2588)
−膜型MMP(MT−MMP)に標的化
構造:
【0139】
【化12】
d)化合物1を、化合物のMMP標的化が全MMPから選択MT−MMPに変更するように改変した(プロドラッグ−2)。
a.アルギニンを、P4位においてグルタミン酸の代わりに組み込んだ。
b.プロリンを除去し、P3位においてセリンで置換した。
e)生体外で正常マウス血漿、正常マウス肝臓ホモジネート、ならびに高MT1−MMP(MMP−14)発現および活性(HT1080)と低MT1−MMP発現および活性(MCF−7)を示すヒト腫瘍実験モデルホモジネートを使用して、プロドラッグ−2をスクリーニングした。LC/MS/MSを使用して、プロドラッグ−2切断および代謝を検出した。
a.プロドラッグ−2は、血漿において未変化のままであり、この治療薬の全身安定性を裏付けた。
b.プロドラッグ−2は、マウス肝臓ホモジネートにおいて安定なままであった。
c.プロドラッグ−2は、低MT−MMPレベルを発現する腫瘍ホモジネート(MCF7)に比べて、高MT−MMPレベルを発現する腫瘍ホモジネート(HT1080)において急速に代謝された(図4)。
d.これらのデータは、このプロドラッグの全身安定性およびMT−MMPによる活性化の選択性を裏付ける。
f)LC/MS/MSおよび質量分析によって示されるように、プロドラッグ−2は、MMPによって切断が異なる(データ示さず)。:
a.グリシン−ホモフェニルアラニン(Gly−Hof)において、組換えMMP−14によって急速に切断。
b.ホモフェニルアラニン−チロシン(Hof−Tyr)において、組換えMMP−2によってゆっくりと切断。プロドラッグ−1で観察されたものと異なる切断を示す。
c.プロドラッグ−2は、プロドラッグ−1とは対照的に、組換えMMP−9によって切断されない。
d.これらのデータは、プロドラッグ−2のMMP選択的切断を裏付ける。
g)皮下HT1080腫瘍モデルを有するマウスに、プロドラッグ−2を腹腔内経路で生体内投与した(MT1−MMP陽性)。投与後に、血漿、組織、および腫瘍を一定の間隔で回収した。プロドラッグ−2およびVDA2のレベルを、LC/MS/MSによって評価した。
a.プロドラッグ−2は蓄積し、分析した組織のすべてにおいて検出された(図5)。
b.腫瘍において、最高のプロドラッグ−2レベルが観察された(図2)。
c.肝臓は、分析した正常組織のすべての代表であった(図5)。
d.プロドラッグ−2の投与後に、VDA2は、血漿において検出不可能であった(図6)。
e.プロドラッグ−2の投与後に、高濃度のVDA2が腫瘍において検出された(図6)。
f.プロドラッグ−2の投与後に、腫瘍におけるVDA2のレベルは、正常組織に検出されたものより10倍高い(図6)。
g.投与して48時間後に、高レベルのプロドラッグ−2およびVDA2が、やはり腫瘍において検出可能であった。
【0140】
3.不成功と判明した合成コンジュゲート(MT−MMTプロドラッグを基材とする)。以下のエンドキャップを含むプロドラッグは、血漿および/または肝臓中で安定性が不十分であった。
(1)3×D−セリン
(2)キナ酸+2×D−セリン
【0141】
【化13】
【実施例2】
【0142】
用量反応抗腫瘍試験
材料および方法
ICT−2588の合成−実施例1を参照のこと
【0143】
ICT−2552の合成: アンモニア溶液(35%、15mL)をコルヒチン(750mg、1.88mmol、1.00当量)に添加し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。粗生成物をKHSO4(1M、水溶液)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。続いて、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離:CH2Cl2/メタノール 95:5→10:1)で精製して、黄色固体のICT−2552(427mg、1.11mmol、59%)を得た。δH (600 MHz, CDCl3), 7.99 (1 H, 広幅 s, NH), 7.56 (1 H, d, J 2.1, C8-H), 7.32 (1H, d, J 10.7, C11-H), 6.88 (1 H, d, J 11.0, C10-H), 6.52 (1 H, s, C4-H), 6.03 (2 H, 広幅 s, NH2), 4.68 (1 H, ddd, J 12.6, 6.5および6.5, C7-H), 3.93 (3 H, s, OCH3), 3.88 (3 H, s, OCH3), 3.60 (3 H, s, OCH3), 2.47 (1 H, dd, J 13.4および6.2, C5-CH2), 2.35 (1 H, ddd, J 13.4, 12.7および6.9, C5-CH2), 2.29-2.23 (1 H, m, C6-CH2), 1.98 (3 H, s, CH3), 1.90-1.88 (1 H, m, C6-CH2); ES m/z (%) 385 [M+H]+ (100).
【0144】
皮下HT1080異種移植片を有するBalb/Cマウスに、ICT−2552およびICT−2588(「プロドラッグ」)を腹腔内経路で単回投与した。9つの投与群は、1群当たり8匹のマウスを含んでいた。これらの化合物の抗腫瘍作用を、腫瘍体積の測定によって評価し、標的外毒性(off−target toxicity)の有無を、マウスの体重を監視することによって確認した。投与群は、ICT−2558(プロドラッグ)をICT−2552(ウォーヘッド)のモル当量用量と比較して評価し、次の通りとした。
10%DMSO/油(溶媒対照)
ICT−2588 37.5mg/kg、50.0mg/kg、62.5mg/kg、75.0mg/kg
ICT−2552 7.5mg/kg、10.0mg/kg、12.5mg/kg、15mg/kg。
【0145】
結果
試験期間を通して、有意な体重変化は観察されなかった(図7)。
【0146】
マウスの体重はすべて、15%の許容体重減少の範囲内であった。したがって、これらの化合物は全身系(whole body system)に毒性があるものには分類されない。
【実施例3】
【0147】
腫瘍反応試験
結果
試験の結果を、図8〜10および下記表に示す。ICT−2522およびICT−2588の全試験用量レベルで、腫瘍反応が観察された。
【0148】
【表1】
【0149】
ICT−2552(ウォーヘッド)およびICT−2588(プロドラッグ)の全評価用量で、腫瘍増殖の有意な遅延が観察された。
【0150】
いずれの化合物でも、化合物の用量と腫瘍増殖遅延度との相関が観察された。この作用は、ICT−2588(プロドラッグ)の方が大きかった。
【0151】
ICT−2588を用量62.5mg/kgで用いた場合、1匹の動物が腫瘍の完全寛解を示した。
【0152】
【表2】
【0153】
等モル用量を投与した場合、ICT−2588(プロドラッグ)は、ICT−2552(ウォーヘッド)に比較して有意に大きい抗腫瘍反応を誘発した。
【実施例4】
【0154】
ICT−2588の改変
i)ホスホリル化されているアミノ酸側鎖の導入によるプロドラッグ溶解性の改善
プロドラッグ溶解性を増加させるために、ホスホリル化されているアミノ酸側鎖をICT−2588のペプチド配列に導入する(血漿ホスファターゼによって加水分解可能)。ホスファート誘導体化アミノ酸はベンジル保護部分として市販されており、これを我々の合成法を用いてペプチドに組み込む。我々は、ペプチド配列内の2つの部位、P2’(Tyr)、P3(Ser)、およびP2’とP3の両者のホスホリル改変種を合成し、評価している(図11参照のこと)。さらに、我々は、MMP選択性をさらに増加させる可能性を検討するために、MT−MMP(P1―P1’での切断)およびMMP−2(P1’―P2’での切断)によるプロドラッグ活性化に対するP2’(Tyr)のホスホリル化の影響を検討している。
【0155】
ii)プロドラッグのエンドキャップ形成基の改変による溶解性の改善
我々は、改善された溶解性を有する代替プロドラッグとしての、より親水性の基によるフルオレセイン基の置換(図11参照のこと)を探索している。我々の目的は、MT−MMP選択性、腫瘍選択的活性化および抗腫瘍活性を保持しながら、プロドラッグの溶解性を改善することである。ICT2588にこれらの代替エンドキャップを組み込んでいるプロドラッグを、インビトロにおける親プロドラッグと比較した化合物溶解性、生体外での、HT1080腫瘍モデル、マウス血漿および肝臓ホモジネートにおけるプロドラッグの安定性および活性化、ならびにMT−MMP選択性の保持および潜在的改善の観点から評価している。
【0156】
iii)プロドラッグ内のP2’の改変
生体外での組織安定性、腫瘍切断およびMMP活性化に関連するプロドラッグのP2’部位(Tyr)の改変の影響を評価している。我々はP1’−P2’とP2’−P3’の両部位での他の非MT−MMPによる開裂は既に実証しているので、プロドラッグのP2’部位に的を絞る。我々は、主要な型のアミノ酸側鎖(Ala、Asp、Asn、Leu、Ser、Pro)を組み込んでいるプロドラッグ変形体を用いている。
【0157】
iv)ドキソルビシンを組み込んでいる、デュアルヘッドプロドラッグの開発
ICT2588での処理後に、腫瘍周辺部において、腫瘍細胞の生きている薄いリムを観察した。現時点では、腫瘍血管新生とは、生きているリムが、直接取り囲んでいる正常組織の血管新生によって維持されることと理解されている。この結果として、VDA放出性プロドラッグの投与は標準的化学療法と組み合わさって、観察される抗腫瘍作用をさらに増大させるはずである。我々は、我々のアザデメチルコルヒチンウォーヘッド(ICT2552)とドキソルビシンウォーヘッド(エンドキャップを置換)とを含む、デュアルヘッドプロドラッグを開発している(以下参照)。我々は、このデュアルヘッドプロドラッグを、生体外でのHT1080腫瘍モデル、マウス血漿および肝臓ホモジネートにおけるプロドラッグの安定性および活性化の観点から評価している。
【0158】
【化14】
【0159】
ペプチドへの結合はN末端を介するので、アミンにおける誘導体化が必要である。現在のストラテジーは、無水コハク酸によりアシル化を行って、アミド結合によってペプチドに連結できる遊離カルボン酸を有するスクシナート誘導体を生成させることである。評価すべき代替ストラテジーは、アルキル/アリールブロック基Rを有するアスパラギン酸の側鎖を用いることである。
【0160】
【化15】
【0161】
表3は、P2’位が変更された一連の分子の安定性データの要約である。半減期は、4回の独立した実験から取った平均値である。肝臓はマウス肝臓ホモジネートを、腫瘍はHT1080を表す。
【0162】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MMPタンパク質切断部位と結合している血管破壊剤(VDA)を含む化合物、またはその医薬として許容される塩。
【請求項2】
化合物が式(I)
X−Y (I)
を有し、
式中、
Xは血管破壊剤(VDA)であり、
Yはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)タンパク質切断部位である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
VDAがチューブリン結合剤である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
チューブリン結合剤が、チューブリンのコルヒチン結合部位と相互作用する、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
チューブリン結合剤が、コルヒチン、またはその類似体もしくは誘導体である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
MMPが膜型MMP(MT−MMP)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
MT−MMPがI型の膜貫通型MT−MMPである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
MT−MMPが、MMP−14(MT1−MMP)、MMP−15(MT2−MMP)、MMP−16(MT3−MMP)、およびMMP−24(MT5−MMP)から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
MT−MMPが、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型MT−MMPである、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
MT−MMPが、MMP−17(MT4−MMP)およびMMP−25(MT6−MMP)から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
MT−MMPがII型の膜貫通型MMPである、請求項6に記載の化合物。
【請求項12】
MT−MMPがMMP−23である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Yが6個〜10個のアミノ酸のペプチド配列である、請求項2から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Yが、配列
(i)P3’−P2’−P1’−P1−P2−P3
[式中、P1’〜P3’およびP1〜P3は同じでも異なっていてもよいが、アミノ酸残基であり、タンパク質切断はP1とP1’の残基間の結合で起こる]
を含む、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Yが、配列
(ii)−P3’−P2’−P1’−P1−P2−P3−P4
[式中、P1’〜P3’およびP1〜P4は同じでも異なっていてもよいが、アミノ酸残基であり、タンパク質切断はP1’とP1の残基間で起こる]
を含む、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
Yが、配列
(iii)P4’−P3’−P2’−P1’−P1−P2−P3−P4
[式中、P1’〜P4’およびP1〜P4は同じでも異なっていてもよいが、アミノ酸残基であり、タンパク質切断はP1’とP1の残基間で起こる]
を含む、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
P1’とP1とが異なっている、請求項14から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
P1’が、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンからなる群から選択された疎水性アミノ酸である、請求項14から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
P1’がホモフェニルアラニンである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
P1が、アスパラギン、セリンおよびグリシンからなる群から選択された極性アミノ酸である、請求項14から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
P1がグリシンである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
P1がプロリンでない、請求項14から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
P2’が、アルギニン、アラニン、ロイシン、アスパラギン酸、チロシン、トレオニン、セリンおよびプロリンからなる群から選択された極性非荷電アミノ酸または塩基性アミノ酸である、請求項14から22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
P2’がメチル化アミノ酸である、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
P2’がチロシンでない、請求項14から22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
P3’がロイシンである、請求項14から25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
P4’が、リジン、システイン、セリン、チロシン、トレオニン、グルタミン酸またはアスパラギン酸からなる群から選択された求核性側鎖を有するアミノ酸である、請求項16から26のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
P2が、酸性、塩基性、疎水性および極性アミノ酸からなる群から選択される、請求項14から27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項29】
P2がプロリンでない、請求項14から27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
P3が、グリシン、アラニン、セリン、ロイシン、イソロイシンおよびトレオニンからなる群から選択された非荷電アミノ酸である、請求項14から29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
P3がプロリンでない、請求項14から29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
P3がセリンである、請求項14から31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
P4が、アルギニンおよびリジンからなる群から選択された塩基性側鎖を含むアミノ酸である、請求項15から32のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
P4がアルギニンである、請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
残基P1〜P3のそれぞれが異なっている、請求項14から34のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項36】
残基P1’〜P3’のそれぞれが異なっている、請求項14から35のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項37】
P1および/またはP2および/またはP3が、プロリン以外のアミノ酸残基である、請求項14から36のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項38】
P4がアルギニンである、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
P1’が疎水性アミノ酸である、請求項37または38に記載の化合物。
【請求項40】
P1’が疎水性アミノ酸である、請求項34に記載の化合物。
【請求項41】
P1および/またはP2および/またはP3が、プロリン以外のアミノ酸残基である、請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
P1’がホモフェニルアラニンであり、P1がGlyである、請求項14から41のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項43】
Yが、配列(vi)
−P2’−Hof−Gly−P2−P3−P4− (vi)
[式中、P4はアルギニンであり、P3はプロリンではない]
を含む、請求項15から42のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項44】
Yが配列−Leu−Tyr−Hof−Gly−Cit−Ser−Arg−を含む、請求項2から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項45】
Yが配列−Leu−Gly−Leu−Pro−を含まない、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項46】
Yが、配列中の1種または複数のアミノ酸がグリコシル化されているアミノ酸の配列を含む、請求項2から45のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項47】
Yが、配列中の1種または複数のアミノ酸がホスホリル化されているアミノ酸の配列を含む、請求項2から46のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項48】
P2’がホスホリル化されているアミノ酸である、請求項14から47のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項49】
P2’がチロシンである、請求項48に記載の化合物。
【請求項50】
P3がホスホリル化されているアミノ酸である、請求項14から49のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項51】
化合物が式(II)
X−Y−c (II)
を有し、
式中、cはキャップ形成基である、
請求項2から50のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項52】
cが、脂肪族化合物、芳香族化合物、多環式化合物、炭水化物およびアミノ酸からなる群から選択される、請求項51に記載の化合物。
【請求項53】
cが親水基である、請求項51または52に記載の化合物。
【請求項54】
cが、式(c)n[式中、nは1〜5の整数である]で表される、請求項51から53項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項55】
cが非天然アミノ酸であり、nが3である、請求項54に記載の化合物。
【請求項56】
化合物が式(III)
X−a−Y (III)
を有し、
式中、aは、Xと直接的または間接的に結合しているリンカーである、
請求項2から55のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項57】
リンカーが、単一アミノ酸またはアミノ酸配列である、請求項56に記載の化合物。
【請求項58】
化合物が式(IV)
X−a−Y−c (IV)
を有し、
式中、cは請求項51に定義する通りである、
請求項56に記載の化合物。
【請求項59】
化合物が式(V)
X−Y−b−c (V)
を有し、
式中、bは、Yに直接的または間接的に結合しているスペーサ基である、
請求項51に記載の化合物。
【請求項60】
スペーサが、単一アミノ酸、アミノ酸配列、およびスクシニル基からなる群から選択される、請求項59に記載の化合物。
【請求項61】
化合物が、式(VI)
X−a−Y−b−c (VI)
[式中、bは、Yに直接的または間接的に結合しているスペーサ基である]
を有する、請求項58に記載の化合物。
【請求項62】
化合物が、式(VII)
X−Y−Z (VII)
[式中、Zが抗癌剤である]
を有する、請求項2から61項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項63】
Zが、血管破壊剤、代謝拮抗物質、細胞毒性剤、生体毒素、放射線治療およびホルモン剤からなる群から選択される、請求項62に記載の化合物。
【請求項64】
Zが細胞毒性剤である、請求項63に記載の化合物。
【請求項65】
細胞毒性剤がドキソルビシンである、請求項64に記載の化合物。
【請求項66】
Xがコルヒチンまたはその誘導体である、請求項62から65のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項67】
XおよびZがコルヒチンまたはその類似体もしくは誘導体から選択される、請求項62に記載の化合物。
【請求項68】
請求項2から67のいずれか一項に記載の化合物を調製する方法であって、
i)Xに結合している固体支持体を準備するステップと、
ii)場合によっては、リンカーaをXのC末端またはN末端に結合させるステップと、
iii)アミノ酸残基を段階的にXのC末端もしくはN末端、または(ii)でXに結合させたリンカーに結合させて、MMPタンパク質切断配列を含むペプチド配列Yをもたらすステップと、
iii)場合によってはキャップ形成基cをYのそれぞれのC末端またはN末端に結合させるステップと
を含む方法。
【請求項69】
請求項2から67のいずれか一項に記載の化合物を調製する方法であって、
i)ペプチド配列Yを調製するステップと、
ii)YのそれぞれのC末端またはN末端にキャップ形成基cを結合させるステップと、
iii)カップリング剤の存在下でXおよびステップ(ii)で調製されたキャップされたペプチドの溶液を調製し、所望の化合物を単離するステップと
を含む方法。
【請求項70】
配列YのC末端の1種または複数のアミノ酸を溶液中でXに結合させ、その後に、ペプチド配列の残りを溶液中において収束合成で結合させるステップを含む、請求項2から67のいずれか一項に記載の化合物の調製方法。
【請求項71】
VDAの部位特異的活性化におけるMMPタンパク質切断部位の使用。
【請求項72】
医薬品で使用するための請求項1から67のいずれか一項に記載の化合物、またはその医薬として許容される塩。
【請求項73】
請求項1から67のいずれかに記載の化合物、および少なくとも1種の追加の医薬として許容される添加剤、賦形剤、または担体を含む医薬製剤。
【請求項74】
MT−MMPを過剰発現する組織に関連した疾患または病態を治療するための医薬品の製造における請求項1から67のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項75】
前記疾患または病態が、がん、炎症性障害、心不全および創傷から選択される、請求項74に記載の使用。
【請求項76】
前記疾患ががんである、請求項75に記載の使用。
【請求項77】
有効量の請求項1から67のいずれか一項に記載の化合物または請求項73に記載の製剤を投与することを含む、対象においてMT−MMPを過剰発現する組織に関連した疾患または病態を治療する方法。
【請求項78】
疾患または病態ががんである、請求項77に記載の方法。
【請求項1】
MMPタンパク質切断部位と結合している血管破壊剤(VDA)を含む化合物、またはその医薬として許容される塩。
【請求項2】
化合物が式(I)
X−Y (I)
を有し、
式中、
Xは血管破壊剤(VDA)であり、
Yはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)タンパク質切断部位である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
VDAがチューブリン結合剤である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
チューブリン結合剤が、チューブリンのコルヒチン結合部位と相互作用する、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
チューブリン結合剤が、コルヒチン、またはその類似体もしくは誘導体である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
MMPが膜型MMP(MT−MMP)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
MT−MMPがI型の膜貫通型MT−MMPである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
MT−MMPが、MMP−14(MT1−MMP)、MMP−15(MT2−MMP)、MMP−16(MT3−MMP)、およびMMP−24(MT5−MMP)から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
MT−MMPが、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型MT−MMPである、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
MT−MMPが、MMP−17(MT4−MMP)およびMMP−25(MT6−MMP)から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
MT−MMPがII型の膜貫通型MMPである、請求項6に記載の化合物。
【請求項12】
MT−MMPがMMP−23である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Yが6個〜10個のアミノ酸のペプチド配列である、請求項2から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Yが、配列
(i)P3’−P2’−P1’−P1−P2−P3
[式中、P1’〜P3’およびP1〜P3は同じでも異なっていてもよいが、アミノ酸残基であり、タンパク質切断はP1とP1’の残基間の結合で起こる]
を含む、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Yが、配列
(ii)−P3’−P2’−P1’−P1−P2−P3−P4
[式中、P1’〜P3’およびP1〜P4は同じでも異なっていてもよいが、アミノ酸残基であり、タンパク質切断はP1’とP1の残基間で起こる]
を含む、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
Yが、配列
(iii)P4’−P3’−P2’−P1’−P1−P2−P3−P4
[式中、P1’〜P4’およびP1〜P4は同じでも異なっていてもよいが、アミノ酸残基であり、タンパク質切断はP1’とP1の残基間で起こる]
を含む、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
P1’とP1とが異なっている、請求項14から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
P1’が、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンからなる群から選択された疎水性アミノ酸である、請求項14から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
P1’がホモフェニルアラニンである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
P1が、アスパラギン、セリンおよびグリシンからなる群から選択された極性アミノ酸である、請求項14から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
P1がグリシンである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
P1がプロリンでない、請求項14から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
P2’が、アルギニン、アラニン、ロイシン、アスパラギン酸、チロシン、トレオニン、セリンおよびプロリンからなる群から選択された極性非荷電アミノ酸または塩基性アミノ酸である、請求項14から22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
P2’がメチル化アミノ酸である、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
P2’がチロシンでない、請求項14から22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
P3’がロイシンである、請求項14から25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
P4’が、リジン、システイン、セリン、チロシン、トレオニン、グルタミン酸またはアスパラギン酸からなる群から選択された求核性側鎖を有するアミノ酸である、請求項16から26のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
P2が、酸性、塩基性、疎水性および極性アミノ酸からなる群から選択される、請求項14から27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項29】
P2がプロリンでない、請求項14から27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
P3が、グリシン、アラニン、セリン、ロイシン、イソロイシンおよびトレオニンからなる群から選択された非荷電アミノ酸である、請求項14から29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
P3がプロリンでない、請求項14から29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
P3がセリンである、請求項14から31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
P4が、アルギニンおよびリジンからなる群から選択された塩基性側鎖を含むアミノ酸である、請求項15から32のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
P4がアルギニンである、請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
残基P1〜P3のそれぞれが異なっている、請求項14から34のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項36】
残基P1’〜P3’のそれぞれが異なっている、請求項14から35のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項37】
P1および/またはP2および/またはP3が、プロリン以外のアミノ酸残基である、請求項14から36のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項38】
P4がアルギニンである、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
P1’が疎水性アミノ酸である、請求項37または38に記載の化合物。
【請求項40】
P1’が疎水性アミノ酸である、請求項34に記載の化合物。
【請求項41】
P1および/またはP2および/またはP3が、プロリン以外のアミノ酸残基である、請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
P1’がホモフェニルアラニンであり、P1がGlyである、請求項14から41のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項43】
Yが、配列(vi)
−P2’−Hof−Gly−P2−P3−P4− (vi)
[式中、P4はアルギニンであり、P3はプロリンではない]
を含む、請求項15から42のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項44】
Yが配列−Leu−Tyr−Hof−Gly−Cit−Ser−Arg−を含む、請求項2から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項45】
Yが配列−Leu−Gly−Leu−Pro−を含まない、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項46】
Yが、配列中の1種または複数のアミノ酸がグリコシル化されているアミノ酸の配列を含む、請求項2から45のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項47】
Yが、配列中の1種または複数のアミノ酸がホスホリル化されているアミノ酸の配列を含む、請求項2から46のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項48】
P2’がホスホリル化されているアミノ酸である、請求項14から47のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項49】
P2’がチロシンである、請求項48に記載の化合物。
【請求項50】
P3がホスホリル化されているアミノ酸である、請求項14から49のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項51】
化合物が式(II)
X−Y−c (II)
を有し、
式中、cはキャップ形成基である、
請求項2から50のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項52】
cが、脂肪族化合物、芳香族化合物、多環式化合物、炭水化物およびアミノ酸からなる群から選択される、請求項51に記載の化合物。
【請求項53】
cが親水基である、請求項51または52に記載の化合物。
【請求項54】
cが、式(c)n[式中、nは1〜5の整数である]で表される、請求項51から53項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項55】
cが非天然アミノ酸であり、nが3である、請求項54に記載の化合物。
【請求項56】
化合物が式(III)
X−a−Y (III)
を有し、
式中、aは、Xと直接的または間接的に結合しているリンカーである、
請求項2から55のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項57】
リンカーが、単一アミノ酸またはアミノ酸配列である、請求項56に記載の化合物。
【請求項58】
化合物が式(IV)
X−a−Y−c (IV)
を有し、
式中、cは請求項51に定義する通りである、
請求項56に記載の化合物。
【請求項59】
化合物が式(V)
X−Y−b−c (V)
を有し、
式中、bは、Yに直接的または間接的に結合しているスペーサ基である、
請求項51に記載の化合物。
【請求項60】
スペーサが、単一アミノ酸、アミノ酸配列、およびスクシニル基からなる群から選択される、請求項59に記載の化合物。
【請求項61】
化合物が、式(VI)
X−a−Y−b−c (VI)
[式中、bは、Yに直接的または間接的に結合しているスペーサ基である]
を有する、請求項58に記載の化合物。
【請求項62】
化合物が、式(VII)
X−Y−Z (VII)
[式中、Zが抗癌剤である]
を有する、請求項2から61項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項63】
Zが、血管破壊剤、代謝拮抗物質、細胞毒性剤、生体毒素、放射線治療およびホルモン剤からなる群から選択される、請求項62に記載の化合物。
【請求項64】
Zが細胞毒性剤である、請求項63に記載の化合物。
【請求項65】
細胞毒性剤がドキソルビシンである、請求項64に記載の化合物。
【請求項66】
Xがコルヒチンまたはその誘導体である、請求項62から65のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項67】
XおよびZがコルヒチンまたはその類似体もしくは誘導体から選択される、請求項62に記載の化合物。
【請求項68】
請求項2から67のいずれか一項に記載の化合物を調製する方法であって、
i)Xに結合している固体支持体を準備するステップと、
ii)場合によっては、リンカーaをXのC末端またはN末端に結合させるステップと、
iii)アミノ酸残基を段階的にXのC末端もしくはN末端、または(ii)でXに結合させたリンカーに結合させて、MMPタンパク質切断配列を含むペプチド配列Yをもたらすステップと、
iii)場合によってはキャップ形成基cをYのそれぞれのC末端またはN末端に結合させるステップと
を含む方法。
【請求項69】
請求項2から67のいずれか一項に記載の化合物を調製する方法であって、
i)ペプチド配列Yを調製するステップと、
ii)YのそれぞれのC末端またはN末端にキャップ形成基cを結合させるステップと、
iii)カップリング剤の存在下でXおよびステップ(ii)で調製されたキャップされたペプチドの溶液を調製し、所望の化合物を単離するステップと
を含む方法。
【請求項70】
配列YのC末端の1種または複数のアミノ酸を溶液中でXに結合させ、その後に、ペプチド配列の残りを溶液中において収束合成で結合させるステップを含む、請求項2から67のいずれか一項に記載の化合物の調製方法。
【請求項71】
VDAの部位特異的活性化におけるMMPタンパク質切断部位の使用。
【請求項72】
医薬品で使用するための請求項1から67のいずれか一項に記載の化合物、またはその医薬として許容される塩。
【請求項73】
請求項1から67のいずれかに記載の化合物、および少なくとも1種の追加の医薬として許容される添加剤、賦形剤、または担体を含む医薬製剤。
【請求項74】
MT−MMPを過剰発現する組織に関連した疾患または病態を治療するための医薬品の製造における請求項1から67のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項75】
前記疾患または病態が、がん、炎症性障害、心不全および創傷から選択される、請求項74に記載の使用。
【請求項76】
前記疾患ががんである、請求項75に記載の使用。
【請求項77】
有効量の請求項1から67のいずれか一項に記載の化合物または請求項73に記載の製剤を投与することを含む、対象においてMT−MMPを過剰発現する組織に関連した疾患または病態を治療する方法。
【請求項78】
疾患または病態ががんである、請求項77に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−506408(P2012−506408A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532704(P2011−532704)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002484
【国際公開番号】WO2010/046628
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(399016835)ユニバーシティ・オブ・ブラッドフォード (7)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF BRADFORD
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002484
【国際公開番号】WO2010/046628
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(399016835)ユニバーシティ・オブ・ブラッドフォード (7)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF BRADFORD
【Fターム(参考)】
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