説明

化合物

【課題】新規なアントラセン誘導体の提供、並びに、色純度の良い青色発光が得られる新規材料およびこれを用いた発光素子、発光装置、並びに電子機器の提供。
【解決手段】アントラセンの9位にのみカルバゾール誘導体官能基を結合した新規なアントラセン誘導体を用いることにより、発光効率の高いエレクトロルミネセンスを利用した発光素子を得ることができる。また当該アントラセン誘導体を用いることにより、色純度の高い青色の発光素子を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンスを利用した発光素子に適用可能な発光材料に関する。
また、該発光材料を用いた発光素子、該発光素子を用いた発光装置並びに電子機器に関す
る。
【背景技術】
【0002】
発光材料を用いた発光素子は、薄型軽量などの特徴を有しており、次世代のフラットパネ
ルディスプレイへの応用が期待されている。また、自発光型であるため、従来の液晶ディ
スプレイ(LCD)と比較して、視野角が広く視認性が優れる点に優位性があると言われ
ている。
【0003】
発光素子の発光機構は、一対の電極間に発光層を挟んで電圧を印加することにより、陽極
から注入される正孔および陰極から注入される電子が発光層の発光中心で再結合して分子
を励起し、励起した分子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出することによって発光す
ると言われている。なお、再結合により形成される励起状態には一重項励起状態と三重項
励起状態とがある。発光はどちらの励起状態を経ても可能であると考えられており、特に
一重項励起状態から直接基底状態まで戻る際の発光は蛍光、三重項励起状態から基底状態
まで戻る際の発光は燐光と呼ばれている。
【0004】
このような発光素子に関しては、その素子特性を向上させる上で、材料に依存した問題が
多く、これらを克服するために素子構造の改良や材料開発等が行われている。
【0005】
例えば特許文献1では緑色の発光を示すアントラセン誘導体について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0260442号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1ではアントラセン誘導体の発光スペクトルを示しているだけで
あり、発光素子に適用した場合に、どのような特性を示すかは記載されていない。商品化
を踏まえれば、さらにより良い特性を有する発光素子の開発が求められている。
【0008】
上記問題を鑑み、本発明は新規アントラセン誘導体を提供することを課題とする。
【0009】
また、本発明は、エレクトロルミネセンスを利用した発光素子若しくは発光装置に適用可
能なアントラセン誘導体であって、青色発光を可能とするものを提供することを目的の一
とする。また、該青色発光の色純度を向上させることをも目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアントラセン誘導体は、下記する一般式(1)と、一般式(5)の二つの態様の
化合物に大別することができる。すなわち、アントラセンの9位と10位の両位置にカル
バゾール誘導体官能基を結合した置換基αを結合した場合と、一方の位置にのみ前記置換
基αを結合した場合に大別することができる。
本発明の大別された一は、前記したとおり下記一般式(1)で表されるアントラセン誘導
体である。
【0011】
【化1】

【0012】
上記一般式(1)において、式中、A1は置換または無置換のフェニル基を表す。また、
1は炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換のフェニル基のいずれかを表す。ま
た、αは置換または無置換のフェニレン基、置換または無置換のビフェニル−4,4’−
ジイル基のいずれかを表す。また、R1〜R9はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水
素、炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換のフェニル基のいずれかを表す。
【0013】
また、本発明の一は、下記一般式(2)のアントラセン誘導体である。
【0014】
【化2】

【0015】
上記一般式(2)において、式中、A1は置換または無置換のフェニル基を表す。また、
αは置換または無置換のフェニレン基、置換または無置換のビフェニル−4,4’−ジイ
ル基のいずれかを表す。また、R1〜R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素
、炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換のフェニル基のいずれかを表す。
【0016】
上記一般式(2)において、αはフェニレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基のいず
れかであることが好ましい。
【0017】
また、本発明の一は、下記一般式(3)のアントラセン誘導体である。
【0018】
【化3】

【0019】
上記一般式(3)において、式中、R1〜R8およびR10〜R19はそれぞれ同一でも異なっ
ていてもよく、水素、炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換のフェニル基のいず
れかを表す。
【0020】
また、本発明の一は、下記一般式(4)のアントラセン誘導体である。
【0021】
【化4】

【0022】
上記一般式(4)において、式中、R1〜R8はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水
素、炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換のフェニル基のいずれかを表す。
【0023】
また、本発明の大別された残る一は、前記したとおり下記一般式(5)のアントラセン誘
導体である。
【0024】
【化5】

【0025】
上記一般式(5)において、式中、B1は炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換
のフェニル基のいずれかを表す。また、αは置換または無置換のフェニレン基、置換また
は無置換のビフェニル−4,4’−ジイル基のいずれかを表す。また、R1〜R9はそれぞ
れ同一でも異なっていてもよく、水素、炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換の
フェニル基のいずれかを表す。
【0026】
また、本発明の一は、下記一般式(6)のアントラセン誘導体である。
【0027】
【化6】

【0028】
上記一般式(6)において、式中、αは置換または無置換のフェニレン基、置換または無
置換のビフェニル−4,4’−ジイル基のいずれかを表す。また、R1〜R14はそれぞれ
同一でも異なっていてもよく、水素、炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換のフ
ェニル基のいずれかを表す。
【0029】
上記一般式(6)において、αはフェニレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基のいず
れかであることが好ましい。
【0030】
また、本発明の一は、下記一般式(7)のアントラセン誘導体である。
【0031】
【化7】

【0032】
上記一般式(7)において、式中、R1〜R8およびR10〜R14はそれぞれ同一でも異なっ
ていてもよく、水素、炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換のフェニル基のいず
れかを表す。
【0033】
また、本発明の一は、下記一般式(8)のアントラセン誘導体である。
【0034】
【化8】

【0035】
上記一般式(8)において、式中、R1〜R8はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水
素、炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換のフェニル基のいずれかを表す。
【0036】
また、本発明の一は、上記いずれかに記載のアントラセン誘導体を含む発光材料である。
【0037】
また、本発明の一は、上記いずれかに記載のアントラセン誘導体を含む発光素子である。
【0038】
また、本発明の一は、上記いずれかに記載のアントラセン誘導体および発光物質を含む発
光層を有することを特徴とする発光素子である。
【0039】
また、本発明の一は、上記した発光素子と、当該発光素子の発光を制御する制御回路を有
する発光装置である。
【0040】
また、本発明の一は、表示部を有し、当該表示部は上記した発光素子と当該発光素子を制
御する制御回路とを備えたことを特徴とする電子機器である。
【0041】
本発明の発光装置とは、発光素子を用いた画像表示デバイスもしくは発光デバイスを含む
。また、発光素子にコネクター、例えば異方導電性フィルムもしくはTAB(Tape Autom
ated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュ
ール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実
装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。さらに、照明機器等に用いられる
発光装置も含むものとする。
【発明の効果】
【0042】
本発明のアントラセン誘導体は、非常にバンドギャップが大きく、非常に短波長の発光が
可能であり、色純度の良い青色発光を得ることが出来るアントラセン誘導体である。した
がって、発光素子に好適に用いることができる。
【0043】
また、本発明のアントラセン誘導体は、発光素子における発光層のホスト材料として好適
である。すなわち、本発明のアントラセン誘導体で構成される層中に、本発明のアントラ
セン誘導体よりも小さなバンドギャップを有する発光材料(以下、ドーパントと記す)を
添加し、ドーパントからの発光を得ることができる。このとき、本発明のアントラセン誘
導体は非常に大きなバンドギャップを有するため、比較的短波長に発光を有するドーパン
トを用いても、本発明のアントラセン誘導体からの発光ではなく、ドーパントからの発光
が効率よく得られる。具体的には、450nmあたりに発光極大を有する発光材料が優れ
た青色の色純度を示すが、このような材料をドーパントとして用い、色純度の良い青色の
発光が可能な発光素子を得ることが可能である。
【0044】
また、本発明のアントラセン誘導体を、本発明のアントラセン誘導体よりも大きなバンド
ギャップを有する材料(以下、ホストと記す)よりなる層中に添加した発光素子を作製す
ることで、本発明のアントラセン誘導体からの発光を得ることができる。すなわち、本発
明のアントラセン誘導体はドーパントとしても機能する。このとき、本発明のアントラセ
ン誘導体は非常に大きなバンドギャップを有し、短波長に発光を示すため、色純度の良い
青色の発光が可能な発光素子を作製することが可能である。
【0045】
また、本発明のアントラセン誘導体は、効率よく発光する。さらに、本発明のアントラセ
ン誘導体を発光素子に用いることにより、発光効率の高い発光素子を得ることができる。
【0046】
また、本発明の発光素子を用いることにより、青色の色純度の良い発光装置および電子機
器を得ることができる。さらに、発光効率が高く、かつ消費電力の低減された発光装置お
よび電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の発光素子を説明する図。
【図2】本発明の発光素子を説明する図。
【図3】本発明の発光素子を説明する図。
【図4】本発明の発光装置を説明する図。
【図5】本発明の発光装置を説明する図。
【図6】本発明の電子機器を説明する図。
【図7】本発明の照明装置を説明する図。
【図8】本発明の照明装置を説明する図。
【図9】本発明の照明装置を説明する図。
【図10】PCzPAの1H NMRチャートを示す図。
【図11】PCzPAのトルエン溶液中における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図12】PCzPAの薄膜における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図13】PCzPAのCV(酸化反応)を示す図。
【図14】PCzPAのCV(還元反応)を示す図。
【図15】PCzBPAの1H NMRチャートを示す図。
【図16】PCzBPAのトルエン溶液中における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図17】PCzBPAの薄膜における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図18】実施例2の発光素子を説明する図。
【図19】実施例2で作製した発光素子の電流密度−輝度特性を示す図。
【図20】実施例2で作製した発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図21】実施例2で作製した発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図22】実施例2で作製した発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図23】実施例3で作製した発光素子の電流密度−輝度特性を示す図。
【図24】実施例3で作製した発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図25】実施例3で作製した発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図26】実施例3で作製した発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図27】実施例3で作製した発光素子の電流密度−輝度特性を示す図。
【図28】実施例3で作製した発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図29】実施例3で作製した発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図30】実施例3で作製した発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図31】実施例4の発光素子を説明する図。
【図32】実施例4で作製した発光素子の電流密度−輝度特性を示す図。
【図33】実施例4で作製した発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図34】実施例4で作製した発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図35】実施例4で作製した発光素子の発光スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。但し、
本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその
形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発
明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0049】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明のアントラセン誘導体について説明する。
【0050】
本発明のアントラセン誘導体は、下記一般式(9)で表されるアントラセン誘導体である

【0051】
【化9】

【0052】
一般式(9)において、式中、A1は置換または無置換のフェニル基を表す。また、B1
炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換のフェニル基のいずれかを表す。また、α
は置換または無置換のフェニレン基、置換または無置換のビフェニル−4,4’−ジイル
基のいずれかを表す。また、R1〜R9はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、炭
素数1〜4のアルキル基、置換または無置換のフェニル基のいずれかを表す。
【0053】
上記一般式(9)において、A1が置換基を有する場合、その置換基としては、炭素数1
〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基またはビフェニル基が好ま
しい。上記炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基
等が挙げられる。また、上記炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基
、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。A1で表される置換基としては、具体的には
構造式(10−1)〜構造式(10−6)で表される置換基が挙げられる。
【0054】
【化10】

【0055】
また、上記一般式(9)において、αが置換基を有する場合、その置換基としては、炭素
数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。上記炭素数1〜
4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等が挙げられる。また
、上記炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキ
シ基等が挙げられる。αで表される置換基としては、具体的には構造式(11−1)〜構
造式(11−5)で表される置換基が好ましい。
【0056】
【化11】

【0057】
また、上記一般式(9)において、B1が置換基を有する場合、その置換基としては炭素
数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、またはフェニル基が好まし
い。上記炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等
が挙げられる。また、上記炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、
エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。B1で表される置換基としては、具体的には構
造式(12−1)〜構造式(12−10)で表される置換基が挙げられる。
【0058】
【化12】

【0059】
また、上記一般式(9)において、R1〜R9が置換基を有する場合、その置換基としては
炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、またはフェニル基が好
ましい。上記炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル
基等が挙げられる。また、上記炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ
基、エトキシ基、ブトキシ基等が好ましい。
【0060】
本発明のアントラセン誘導体として、以下構造式(101)〜構造式(443)で表され
るアントラセン誘導体を挙げることができる。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0061】
【化13】

【0062】
【化14】

【0063】
【化15】

【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
【化18】

【0067】
【化19】

【0068】
【化20】

【0069】
【化21】

【0070】
【化22】

【0071】
【化23】

【0072】
【化24】

【0073】
【化25】

【0074】
【化26】

【0075】
【化27】

【0076】
【化28】

【0077】
【化29】

【0078】
【化30】

【0079】
【化31】

【0080】
【化32】

【0081】
【化33】

【0082】
【化34】

【0083】
【化35】

【0084】
【化36】

【0085】
【化37】

【0086】
【化38】

【0087】
【化39】

【0088】
【化40】

【0089】
【化41】

【0090】
【化42】

【0091】
【化43】

【0092】
【化44】

【0093】
【化45】

【0094】
【化46】

【0095】
【化47】

【0096】
【化48】

【0097】
【化49】

【0098】
【化50】

【0099】
【化51】

【0100】
【化52】

【0101】
【化53】

【0102】
【化54】

【0103】
【化55】

【0104】
【化56】

【0105】
【化57】

【0106】
【化58】

【0107】
【化59】

【0108】
【化60】

【0109】
【化61】

【0110】
【化62】

【0111】
【化63】

【0112】
【化64】

【0113】
【化65】

【0114】
【化66】

【0115】
【化67】

【0116】
【化68】

【0117】
【化69】

【0118】
【化70】

【0119】
【化71】

【0120】
【化72】

【0121】
【化73】

【0122】
【化74】

【0123】
【化75】

【0124】
【化76】

【0125】
【化77】

【0126】
【化78】

【0127】
【化79】

【0128】
【化80】

【0129】
本発明のアントラセン誘導体は、アントラセン誘導体の9、10の両位置に置換基を有す
るαが結合している場合と、一方の位置にのみ結合している場合の2つに大別することが
できることは前記したとおりである。その合成法としては、種々の反応の適用が可能であ
る。例えば、下記合成スキーム(A−1)〜(A−8)に示す合成反応を行うことによっ
て合成することができる。具体的には合成スキームA−1)〜(A−6)に示す合成反応
を行うことによって一般式(1)に記載のアントラセン誘導体が合成でき、合成スキーム
(A−7)〜(A−8)に示す合成反応を行うことによって一般式(5)に記載のアント
ラセン誘導体が合成できる。なお、本発明のアントラセン誘導体の合成は、これらの方法
に限定されるものではなく、その他の合成方法によって合成されても構わない。
以下に、その合成スキームに関し具体的に説明する。
【0130】
<一般式(1)で表される化合物の合成>
【0131】
【化81】

【0132】
上記合成スキーム(A−1)において、式中、B1は炭素数1〜4のアルキル基、置換ま
たは無置換のフェニル基のいずれかを表す。R9は水素、炭素数1〜4のアルキル基、置
換または無置換のフェニル基のいずれかを表す。また、カルバゾール誘導体である化合物
AのXはハロゲンを表す。上記Xは特に限定されないが、臭素又はヨウ素が好ましい。臭
素化合物やヨウ素化合物(特にヨウ素)とすることで、この化合物Aを反応物とした次の
カップリング反応や置換反応などで、このXの部分がより速やかに反応する。カルバゾー
ル誘導体である化合物A1と、ハロゲン又はハロゲン化物とを反応させ、3−ハロゲン化
カルバゾール誘導体である化合物Aが得られる。このとき、上記ハロゲン又はハロゲン化
物としては特に限定はないが、ヨウ素化にはヨウ素(I2)、ヨウ化カリウム(KI)又
はN−ヨードこはく酸イミド(NIS)、臭素化には臭素(Br2)又はN−ブロモこは
く酸イミド(NBS)を用いることが好ましい。NBSを用いると、上記反応が酢酸エチ
ルなどの極性溶媒中にて室温で容易に合成することができ好ましい。臭素、ヨウ素又はヨ
ウ化カリウムを用いると安価に合成することができ好ましい。
【0133】
【化82】

【0134】
さらに上記合成スキーム(A−2)において、前記合成スキーム(A−1)で得た化合物
Aと、金属又は有機金属とを反応させた後、ホウ酸エステルを加えて反応させ、トランス
メタル化反応により、カルバゾール誘導体の3位がボロン酸である、化合物Bが得られる
。このとき、上記金属又は有機金属を用いたトランスメタル反応としては特に限定はない
が、マグネシウムを用いたグリニャール反応、ブチルリチウムなどアルキルリチウムを用
いたリチオ化反応を用いることが好ましい。また上記ホウ酸エステルは特に限定はないが
、ホウ酸トリメチル又はホウ酸トリエチル又はホウ酸トリイソプロピルが好ましい。
【0135】
【化83】

【0136】
上記合成スキーム(A−3)において、式中、A1は置換または無置換のフェニル基を表
す。R1〜R8はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、炭素数1〜4のアルキル基
、置換または無置換のフェニル基のいずれかを表す。αは置換または無置換のフェニレン
基、置換または無置換のビフェニル−4,4’−ジイル基のいずれかを表す。X1、X2
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、ハロゲンを表す。上記ハロゲンは特に限定
されないが、塩素臭素又はヨウ素が好ましい。また、上記化合物Cの合成方法は、まず
、9−ハロゲン化アントラセン誘導体である化合物C3とアリールボロン酸とのカップリ
ング反応によって上記化合物C2を合成する。上記カップリング反応では、特に限定はな
いが触媒として金属触媒を用いることが好ましい。また上記金属触媒としては、特に限定
はないが、酢酸パラジウム(略称:Pd(OAc)2)又はテトラキストリフェニルホス
フィンパラジウムなどのパラジウム触媒が好ましい。また、上記パラジウム触媒のリガン
ドとして特に限定はないが、トリス(2-メチルフェニル)ホスフィン等のリン化合物が
好ましい。また、上記カップリング反応においては反応が促進されるために塩基を加える
ことが好ましい。塩基としては特に限定はないが、炭酸カリウム(K2CO3)又は炭酸ナ
トリウム(Na2CO3)が好ましい。
【0137】
次に、アントラセン誘導体である化合物C2をハロゲン化し、10−ハロゲン化アントラ
セン誘導体である化合物C1を合成する。上記ハロゲン化反応に用いるハロゲン又はハロ
ゲン化物については特に限定はないが、ヨウ素化にはヨウ素(I2)、ヨウ化カリウム(
KI)又はN−ヨードこはく酸イミド(NIS)、臭素化には臭素(Br2)又はN−ブ
ロモこはく酸イミド(NBS)を用いることが好ましい。NBSを用いると、上記反応が
酢酸エチルなどの極性溶媒中にて室温で容易に合成することができ好ましい。臭素、ヨウ
素又はヨウ化カリウムを用いると安価に合成することができ好ましい。
【0138】
次に、10−ハロゲン化アントラセン誘導体である化合物C1と、ハロゲン化アリールボ
ロン酸をカップリングして化合物Cを合成する。
【0139】
その際には、上記化合物C1のX2をヨウ素、ハロゲン化アリールボロン酸のXを臭素と
することが特に好ましい。上記X2をヨウ素、Xを臭素とすることで、ヨウ素化合物とボ
ロン酸化合物とを選択的にカップリング反応させることができる。すなわち、上記ハロゲ
ン化アリールボロン酸のホモカップリング等の副反応を抑えることができるため、副生成
物の生成を抑制することができる。したがって、上記化合物Cの純度が高くなることで、
化合物Cの精製を簡便にすることができる。また、上記化合物C1におけるX2をヨウ素
、それとカップリングする上記ハロゲン化アリールボロン酸におけるX3を塩素とした場
合、化合物C1におけるX2を臭素、それとカップリングするハロゲン化アリールボロン
酸におけるX3を塩素とした場合も同じく選択的に反応させることができ好ましい。また
、上記カップリング反応では、特に限定はないが触媒として金属触媒を用いることが好ま
しい。上記金属触媒としては、特に限定はないが、酢酸パラジウム(略称:Pd(OAc
2)又はテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムなどのパラジウム触媒が好まし
い。また上記パラジウム触媒のリガンドとして特に限定はないが、トリス(2−メチルフ
ェニル)ホスフィン等のリン化合物が好ましい。また、上記カップリング反応においては
反応が促進されるために塩基を加えることが好ましい。また、特に限定はないが、炭酸カ
リウム(K2CO3)又は炭酸ナトリウム(Na2CO3)が好ましい。
【0140】
【化84】

【0141】
さらに上記合成スキーム(A−4)において、前記合成スキーム(A−3)で得た化合
物Cと前記合成スキーム(A−2)で得た化合物Bとのカップリング反応によって、前記
一般式(1)と同一の一般式で表される化合物P1が得られる。上記カップリング反応で
は、特に限定はないが触媒として金属触媒を用いることが好ましい。上記金属触媒として
は、特に限定はないが、酢酸パラジウム(略称:Pd(OAc)2)又はテトラキストリ
フェニルホスフィンパラジウムなどのパラジウム触媒が好ましい。また上記パラジウム触
媒のリガンドとして特に限定はないが、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン等のリ
ン化合物が好ましい。また、上記カップリング反応においては反応が促進されるために塩
基を加えることが好ましい。また塩基としては特に限定はないが、炭酸カリウム(K2
3)又は炭酸ナトリウム(Na2CO3)が好ましい。
【0142】
【化85】

【0143】
さらに、上記合成スキーム(A−5)において、前記合成スキーム(A−3)で得た化合
物Cと、金属又は有機金属とを反応させたのち、ホウ酸エステルを加えて反応させ、トラ
ンスメタル化反応により、アントラセン誘導体のボロン酸である、化合物Dが得られる。
このとき、上記金属又は有機金属を用いたトランスメタル反応としては特に限定はないが
、マグネシウムを用いたグリニャール反応、ブチルリチウムなどアルキルリチウムを用い
たリチオ化反応を用いることが好ましい。また上記ホウ酸エステルは特に限定はないが、
ホウ酸トリメチル又はホウ酸トリエチル又はホウ酸トリイソプロピルが好ましい。
【0144】
【化86】

【0145】
さらに上記合成スキーム(A−6)において、前記合成スキーム(A−5)で得た化合物
Dと前記合成スキーム(A−1)で得た化合物Aとをカップリングさせることで、一般式
(1)で表される化合物P1が得られる。上記カップリング反応では、特に限定はないが
触媒として金属触媒を用いることが好ましい。上記金属触媒としては、特に限定はないが
、酢酸パラジウム(略称:Pd(OAc)2)又はテトラキストリフェニルホスフィンパ
ラジウムなどのパラジウム触媒が好ましい。また上記パラジウム触媒のリガンドとして特
に限定はないが、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン等のリン化合物が好ましい。
また、上記カップリング反応においては反応が促進されるために塩基を加えることが好ま
しい。また塩基としては特に限定はないが、炭酸カリウム(K2CO3)又は炭酸ナトリウ
ム(Na2CO3)が好ましい。
【0146】
<一般式(5)で表される化合物の合成>
【0147】
【化87】

【0148】
上記合成スキーム(A−7)において、式中、R1〜R8はそれぞれ同一でも異なっていて
もよく、水素、炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換のフェニル基のいずれかを
表す。αは置換または無置換のフェニレン基、置換または無置換のビフェニル−4,4’
−ジイル基のいずれかを表す。X1、X2はハロゲンを表す。ハロゲンは特に限定されない
が、塩素、臭素又はヨウ素が好ましい。特にX2は、臭素又はヨウ素が好ましい。まずジ
ハロゲン化アレーン誘導体である化合物E3を有機リチウム化合物でリチオ化し、さらに
アントラキノン誘導体の化合物E4を加えて反応させ、9,10−ジヒドロアントラセン
誘導体の化合物E2が得られる。上記有機リチウム化合物は特に限定はないが、ブチルリ
チウムが好ましい。つづけて、上記化合物E2を脱OHさせ、ハロゲン化アントラセン誘
導体の化合物Eを得る。このとき特に限定はないが、ヨウ化カリウム(KI)とホスフィ
ン酸ナトリウム・一水和物(NaPH22・H2O)を用いて上記反応を行う事が好まし
い。
【0149】
【化88】

【0150】
さらに上記合成スキーム(A−8)において、前記合成スキーム(A−7)で得た化合物
Eと前記合成スキーム(A−2)で得た化合物Bとをカップリングさせることで、一般式
(5)で表される化合物P2が得られる。上記カップリング反応では、特に限定はないが
触媒として金属触媒を用いることが好ましい。上記金属触媒としては、特に限定はないが
、酢酸パラジウム(略称:Pd(OAc)2)又はテトラキストリフェニルホスフィンパ
ラジウムなどのパラジウム触媒が好ましい。また上記パラジウム触媒のリガンドとして特
に限定はないが、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン等のリン化合物が好ましい。
また、上記カップリング反応においては反応が促進されるために塩基を加えることが好ま
しい。また塩基としては特に限定はないが、炭酸カリウム(K2CO3)又は炭酸ナトリウ
ム(Na2CO3)が好ましい。
【0151】
本発明のアントラセン誘導体は非常にバンドギャップが大きく、非常に短波長の発光が可
能である。よって、色純度の良い青色発光を得得ることができる。
【0152】
また、本発明のアントラセン誘導体は、電子輸送性及び正孔輸送性を有する。よって、発
光素子に好適に用いることができる。
【0153】
また、本発明のアントラセン誘導体は、発光素子における発光層のホスト材料として好適
である。すなわち、本発明のアントラセン誘導体で構成される層中に、本発明のアントラ
セン誘導体よりも小さなバンドギャップを有する発光材料(以下、ドーパントと記す)を
添加し、ドーパントからの発光を得ることができる。このとき、本発明のアントラセン誘
導体は非常に大きなバンドギャップを有するため、比較的短波長に発光を有するドーパン
トを用いても、本発明のアントラセン誘導体からの発光ではなく、ドーパントからの発光
が効率よく得られる。具体的には、450nmあたりに発光極大を有する発光材料が優れ
た青色の色純度を示すが、このような材料をドーパントとして用い、色純度の良い青色の
発光を得ることが可能な発光素子を得ることが可能である。また、本発明のアントラセン
誘導体を青色のホスト材料として用いる場合には、A1は縮合していないアリール基であ
る方が、バンドギャップが広くなるため好ましい。また、αも縮合していないアリーレン
基である方が好ましい。
【0154】
また、本発明のアントラセン誘導体を、本発明のアントラセン誘導体よりも大きなバンド
ギャップを有する材料(以下、ホストと記す)よりなる層中に添加した発光素子を作製す
ることで、本発明のアントラセン誘導体からの発光を得ることができる。すなわち、本発
明のアントラセン誘導体はドーパントとしても機能する。このとき、本発明のアントラセ
ン誘導体は非常に大きなバンドギャップを有し、短波長に発光を示すため、色純度の良い
青色の発光を得ることができる発光素子を作製することが可能である。
【0155】
また、本発明のアントラセン誘導体は、効率よく発光する。さらに、本発明のアントラセ
ン誘導体を発光素子に用いることにより、発光効率の高い発光素子を得ることができる。
【0156】
(実施の形態2)
本発明のアントラセン誘導体を用いた発光素子の一態様について図1を用いて以下に説明
する。
【0157】
本発明の発光素子は、一対の電極間に複数の層を有する。当該複数の層は、電極から離れ
た所に発光領域が形成されるように、つまり電極から離れた部分でのキャリアの再結合が
行われるように、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層を組
み合わせて蓄積されたものである。
【0158】
本実施の形態において、発光素子は、第1の電極101と、第2の電極103と、第1の
電極101と第2の電極103との間に設けられた有機化合物を含む層102とから構成
されている。なお、本形態では第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極103
は陰極として機能するものとして、以下を説明する。つまり、第1の電極101の方が第
2の電極103よりも電位が高くなるように、第1の電極101と第2の電極103に電
圧を印加したときに、発光が得られるものとして、下記に説明をする。
【0159】
基板100は発光素子の支持体として用いられる。基板100としては、例えばガラス、
またはプラスチックなどを用いることができる。なお、発光素子の作製工程において支持
体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0160】
第1の電極101としては仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、
導電性化合物、又はこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、
酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有
した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxid
e)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げら
れる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法
などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、
酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリ
ング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸
化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt
%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形
成することができる。ターゲットとしては、この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケ
ル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、
コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば
、窒化チタン)等が挙げられる。
【0161】
有機化合物を含む層102は、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高
い物質、正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポ
ーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等から成る層と、本実施の形態で示す
発光層とを適宜組み合わせて構成すればよい。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻
止層(ホールブロッキング層)、発光層、電子輸送層、電子注入層等を適宜組み合わせて
構成することができる。本実施の形態では、有機化合物を含む層102は、第1の電極1
01の上に順に積層した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送
層114、電子注入層115を有する構成について説明する。各層を構成する材料につい
て以下に具体的に示す。
【0162】
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層である。モリブデン酸化物やバナジ
ウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることが
できる。この他、フタロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(略称:CuP
C)等のフタロシアニン系の化合物、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェ
ニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{
4−[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルア
ミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或いはポリ(エチレン
ジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(略称:PEDOT/PSS)等の
高分子等によっても正孔注入層111を形成することができる。
【0163】
また、正孔注入層111として、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させ
た複合材料を用いることができる。なお、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を
含有させたものを用いることにより、電極の仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶ
ことができる。つまり、第1の電極101として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事
関数の小さい材料を用いることができる。アクセプター性物質としては、7,7,8,8
−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ
)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。
また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。
具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン
、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中
でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ま
しい。
【0164】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香
族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合
物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高
い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10-6cm2/Vs以上の正孔移動度
を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば
、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合
物を具体的に列挙する。
【0165】
例えば、芳香族アミン化合物としては、N,N’−ジ(p−トリル)−N,N’−ジフェ
ニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジ
フェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,
4’−ビス(N−{4−[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]フェニル
}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−
(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B
)等を挙げることができる。
【0166】
複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(
9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾ
ール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−
イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、
3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−
9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。また、4
,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4
−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(N−カル
バゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、1,4−ビス
[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を
用いることができる。
【0167】
また、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−
ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−t
ert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5
−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,
10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10
−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセ
ン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnt
h)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、
2−tert−ブチル−9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン
、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テ
トラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチ
ル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10
’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル
)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェ
ニル)フェニル]−9,9’−アントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリ
レン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、
この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10-6cm2
/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることが
より好ましい。
【0168】
なお、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい
。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジ
フェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジ
フェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0169】
また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニ
ルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルア
ミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略
称:PTPDMA)ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フ
ェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)等の高分子化合物を用いることもでき
る。
【0170】
正孔輸送層112は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質とし
ては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニ
ル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−
[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−
トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4
’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニル
アミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレ
ン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミ
ン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm2/Vs以上の
正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、こ
れら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだ
けでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0171】
また、正孔輸送層112として、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポ
リ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いるこ
ともできる。
【0172】
発光層113は、発光性の高い物質を含む層である。本実施の形態で示す発光素子の発光
層113は、実施の形態1で示した本発明のアントラセン誘導体を用いる。本発明のアン
トラセン誘導体は青色の発光を示すため、発光性の高い物質として発光素子に好適に用い
ることができる。
【0173】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を用いることができる。例えば、トリス(8
−キノリノラトアルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト
)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト
)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェ
ニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノ
リン骨格を有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキ
シフェニル)ベンゾオキゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒ
ドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾ
ール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属
錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1
,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−
ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD
−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニ
ル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BP
hen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた
物質は、主に10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔より
も電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わな
い。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層し
たものとしてもよい。
【0174】
また、電子輸送層114として、高分子化合物を用いることができる。例えば、ポリ[(
9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル
)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)
−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などを
用いることができる。
【0175】
電子注入層115は電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入性の高い物質として
は、例えば、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)、マグネシウム(
Mg)、カルシウム(Ca)等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、又はフッ化リ
チウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等のそれ
らの化合物を用いることができる。また、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカ
リ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたもの、例えばAlq中にマ
グネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いることができる。なお、電子注入層として
、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させ
たものを用いることにより、第2の電極103からの電子注入が効率良く行われるため、
より好ましい。
【0176】
第2の電極103を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以
下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。
なお、本実施の形態では、第2の電極は前記したとおり陰極であり、そのような陰極材料
の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(
Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム
(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(M
gAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属お
よびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、第2の電極103と電子輸送層と
の間に、電子注入を促す機能を有する層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず
、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様
々な導電性材料を第2の電極103として用いることができる。これら導電性材料は、ス
パッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能であ
る。
【0177】
また、有機化合物を含む層102の各層の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、
種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピン
コート法など用いても構わない。また各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形
成しても構わない。
【0178】
さらに、電極についても、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式法を用いて形成して
も良い。なお、ゾル−ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを
用いて湿式法で形成してもよい。
【0179】
例えば、本発明の発光素子を表示装置に適用し、大型基板を用いて作製する場合には、
発光層は湿式法により形成することが好ましい。発光層を、インクジェット法を用いて形
成することにより、大型基板を用いても発光層の塗り分けが容易となる。
【0180】
例えば、本実施の形態で示した構成において、第1の電極を乾式法であるスパッタリング
法、正孔注入層を湿式法であるインクジェット法やスピンコート法、正孔輸送層を乾式法
である真空蒸着法、発光層を湿式法であるインクジェット法、電子注入層を乾式法である
真空蒸着法、第2の電極を湿式法であるインクジェット法やスピンコート法を用いて形成
してもよい。また、第1の電極を湿式法であるインクジェット法、正孔注入層を乾式法で
ある真空蒸着法、正孔輸送層を湿式法であるインクジェット法やスピンコート法、発光層
を湿式法であるインクジェット法、電子注入層を湿式法であるインクジェット法やスピン
コート法、第2の電極を湿式法であるインクジェット法やスピンコート法を用いて形成し
てもよい。なお、上記の方法に限らず、湿式法と乾式法を適宜組み合わせればよい。
【0181】
また、例えば、第1の電極を乾式法であるスパッタリング法、正孔注入層および正孔輸送
層を湿式法であるインクジェット法やスピンコート法、発光層を湿式法であるインクジェ
ット法、電子注入層を乾式法である真空蒸着法、第2の電極を乾式法である真空蒸着法で
形成することができる。つまり、第1の電極が所望の形状で形成されている基板上に、正
孔注入層から発光層までを湿式法で形成し、電子注入層から第2の電極までを乾式法で形
成することができる。この方法では、正孔注入層から電子輸送層までを大気圧で形成する
ことができ、発光層の塗り分けも容易である。また、電子注入層から第2の電極までは、
真空一貫で形成することができる。よって、工程を簡略化し、生産性を向上させることが
できる。
【0182】
以上のような構成を有する本発明の発光素子は、第1の電極101と第2の電極103と
の間に生じた電位差により電流が流れ、発光性の高い物質を含む層である発光層113に
おいて正孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまり発光層113に発光領域が
形成されるような構成となっている。
【0183】
なお、第1の電極101と第2の電極103との間に設けられる層の構成は上記のものに
は限定されない。発光領域と金属とが近接することによって生じる消光を防ぐように、第
1の電極101および第2の電極103から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光
領域を設けた構成であれば、上記以外のものでもよい。
【0184】
つまり、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送
性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び
正孔の輸送性の高い物質)の物質、正孔ブロック材料等から成る層を、本発明のアントラ
セン誘導体と自由に組み合わせて構成すればよい。
【0185】
本発明のアントラセン誘導体は青色を示すため、本実施の形態に示すように他の発光物質
を含有させることなく発光層として用いることが可能である。
【0186】
本発明のアントラセン誘導体は非常に大きなバンドギャップを有し、短波長に発光を示す
ため、色純度の高い青色の発光を得ることができる発光素子を作製することができる。
【0187】
また、本発明のアントラセン誘導体は、効率よく発光するため、発光素子に用いることに
より発光効率の高い発光素子を得ることができる。
【0188】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2で示した構成と異なる構成の発光素子について説明する

【0189】
実施の形態2で示した発光層113を、本発明のアントラセン誘導体を他の物質に分散さ
せた構成とすることで、本発明のアントラセン誘導体からの発光を得ることができる。本
発明のアントラセン誘導体は青色を示すため、青色の発光を示す発光素子を得ることがで
きる。
【0190】
ここで、本発明のアントラセン誘導体を分散させる物質としては、種々の材料を用いるこ
とができ、実施の形態2で述べた正孔輸送の高い物質又は電子輸送性の高い物質の他、4
,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、2,2’,2”−(1
,3,5−ベンゼントリイル)トリス[1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール](略
称:TPBI)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−t
ert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)
、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:C
zPA)などが挙げられる。また、本発明のアントラセン誘導体を分散させる物質として
高分子材料を用いることができる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:P
VK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4
−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ
}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−
ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD
)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3
,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,
7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−B
Py)などを用いることができる。
【0191】
本発明のアントラセン誘導体は、非常に大きなバンドギャップを有し短波長に発光を示す
ため、色純度の高い青色の発光を得ることができる発光素子を作製することができる。
【0192】
なお、発光層113以外は、実施の形態2で示した構成を適宜用いることができる。
【0193】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態2および実施の形態3で示した構成と異なる構成の発光素
子について説明する。
【0194】
実施の形態2で示した発光層113を、本発明のアントラセン誘導体に発光性の物質を分
散させた構成とすることで、本実施の形態の発光素子を形成することができ、その素子の
発光性の物質からの発光を得ることができる。
【0195】
本発明のアントラセン誘導体を他の発光性物質を分散させる材料として用いる場合、発光
性物質に起因した発光色を得ることができる。また、本発明のアントラセン誘導体に起因
した発光色と、アントラセン誘導体中に分散されている発光性物質に起因した発光色との
混色の発光色を得ることもできる。
【0196】
ここで、本発明のアントラセン誘導体に分散させる発光性物質としては、種々の材料を用
いることができる。具体的には、N,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)
、クマリン6、クマリン545T、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−
ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(略称:DCM1)、4−(ジシアノメチレン
)−2−メチル−6−(ジュロリジン−4−イル−ビニル)−4H−ピラン(略称:DC
M2)、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、{2−(1,1−ジメチ
ルエチル)−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチ
ル−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4
−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、5,12−ジフェニルテトラセ
ン(略称:DPT)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル
−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4,4’−(2−ter
t−ブチルアントラセン−9,10−ジイル)ビス{N−[4−(9H−カルバゾール−
9−イル)フェニル]−N−フェニルアニリン}(略称:YGABPA)、N,9−ジフ
ェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾー
ル−3−アミン(略称:PCAPA)、N,N’−(2−tert−ブチルアントラセン
−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1
,4−フェニレンジアミン(略称:DPABPA)、N,N’−ビス[4−(9H−カル
バゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミ
ン(略称:YGA2S)、N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N
−フェニルスチルベン−4−アミン(略称:YGAS)、N,N’−ジフェニル−N,N
’−ビス(9−フェニルカルバゾール−3−イル)スチルベン−4,4’−ジアミン(略
称:PCA2S)、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:D
PVBi)、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン(略称:TBP)
、ペリレン、ルブレン、1,3,6,8−テトラフェニルピレンなどの蛍光を発光する蛍
光発光性物質を用いることができる。また、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス
(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq
2(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H
,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)などの燐光を発光する燐光発光
性物質を用いることができる。
【0197】
また、本発明のアントラセン誘導体は非常に大きなバンドギャップを有するため、比較的
短波長に発光を有するドーパントを用いても、本発明のアントラセン誘導体からの発光で
はなく、ドーパントからの発光が効率よく得られる。具体的には、450nmあたりに発
光極大を有する発光材料が優れた青色の色純度を示すが、このような材料をドーパントと
して用い、色純度の良い青色の発光を得ることが可能な発光素子を得ることが可能である
。また、青色だけでなく、青色〜赤色の発光を示すドーパントを用いた場合のホスト材料
としても本発明のアントラセン誘導体を用いることができる。よって、本発明のアントラ
セン誘導体は、発光素子における発光層のホスト材料として好適である。
【0198】
なお、発光層113以外は、実施の形態2に示した構成を適宜用いることができる。
【0199】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態2〜実施の形態4で示した構成と異なる構成の発光素子に
ついて図2を用いて説明する。
【0200】
本実施の形態で示す発光素子は、実施の形態2で示した発光素子における発光層113に
第1の層121と第2の層122を設けたものである。
【0201】
発光層113は、発光性の高い層を含む層であり、本発明の発光素子において、発光層1
13は、第1の層121と第2の層122を有する。第1の層121は、第1の有機化合
物と正孔輸送性の有機化合物とを有し、第2の層122は、第2の有機化合物と電子輸送
性の有機化合物を有する。第1の層121は、第1の電極側、つまり陽極側に接して設け
られている。
【0202】
第1の有機化合物および第2の有機化合物は、発光性の高い物質であり、種々の材料を用
いることができる。具体的には、N,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)
、クマリン6、クマリン545T、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−
ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(略称:DCM1)、4−(ジシアノメチレン
)−2−メチル−6−(ジュロリジン−4−イル−ビニル)−4H−ピラン(略称:DC
M2)、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、{2−(1,1−ジメチ
ルエチル)−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチ
ル−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4
−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、5,12−ジフェニルテトラセ
ン(略称:DPT)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル
−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4,4’−(2−ter
t−ブチルアントラセン−9,10−ジイル)ビス{N−[4−(9H−カルバゾール−
9−イル)フェニル]−N−フェニルアニリン}(略称:YGABPA)、N,9−ジフ
ェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾー
ル−3−アミン(略称:PCAPA)、N,N’−(2−tert−ブチルアントラセン
−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1
,4−フェニレンジアミン(略称:DPABPA)、N,N’−ビス[4−(9H−カル
バゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミ
ン(略称:YGA2S)、N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N
−フェニルスチルベン−4−アミン(略称:YGAS)、N,N’−ジフェニル−N,N
’−ビス(9−フェニルカルバゾール−3−イル)スチルベン−4,4’−ジアミン(略
称:PCA2S)、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:D
PVBi)、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン(略称:TBP)
、ペリレン、ルブレン、1,3,6,8−テトラフェニルピレンなどの蛍光を発光する蛍
光発光性物質を用いることができる。また、第1の有機化合物と第2の有機化合物は、同
一でも異なっていてもよい。
【0203】
第1の層121に含まれる正孔輸送性の有機化合物は、電子輸送性よりも正孔輸送性の方
が高い物質である。また、第2の層122に含まれる電子輸送性の有機化合物は、正孔輸
送性よりも電子輸送性の方が高い物質である。本発明のアントラセン誘導体は電子輸送性
を有するため、第2の層122に好適に用いることができる。また、本発明のアントラセ
ン誘導体は正孔輸送性も有するため、第1の層121に用いることも可能である。
【0204】
以上のような構成を有する発光素子に関し、図2を用い説明する。
【0205】
図2において、第1の電極101から注入された正孔は、正孔注入層111等を介して第
1の層121に注入される。第1の層121に注入された正孔は、第1の層121に輸送
されるが、さらに第2の層122にも注入される。ここで、第2の層122に含まれる電
子輸送性の有機化合物は正孔輸送性よりも電子輸送性の方が高い物質であるため、第2の
層122に注入された正孔は移動しにくくなる。その結果、正孔は第1の層121と第2
の層122の界面付近に多く存在するようになる。また、正孔が電子と再結合することな
く電子輸送層114にまで達してしまう現象が抑制される。
【0206】
一方、第2の電極103から注入された電子は、電子注入層115等を介して第2の層1
22に注入される。第2の層122に注入された電子は、第2の層122に輸送されるが
、さらに第1の層121にも注入される。ここで、第1の層121に含まれる正孔輸送性
の有機化合物は、電子輸送性よりも正孔輸送性の方が高い物質であるため、第1の層12
1に注入された電子は移動しにくくなる。その結果、電子が正孔と再結合することなく正
孔輸送層112にまで達してしまう現象が抑制される。
【0207】
以上のことから、第1の層121と第2の層122の界面付近の領域に正孔と電子が多く
存在するようになり、その界面付近における再結合の確率が高くなる。すなわち、発光層
113の中央付近に発光領域が形成される。またその結果、正孔が再結合することなく電
子輸送層114に達してしまうことや、あるいは電子が再結合することなく正孔輸送層1
12に達してしまうことが抑制されるため、再結合の確率の低下を防ぐことが出来る。こ
れにより、経時的なキャリアバランスの低下が防げるため、信頼性の向上に繋がる。
【0208】
また、図2を用いて先に説明した通り、本実施の形態で示した発光素子においては、第1
の層121から第2の層122に正孔が注入されるように素子を構成するため、正孔輸送
性の有機化合物に用いる本発明のアントラセン誘導体のHOMO準位と電子輸送性の有機
化合物のHOMO準位との差は小さい方が好ましい。また、第2の層122から第1の層
121に電子が注入されるように素子を構成するため、正孔輸送性の有機化合物に用いる
本発明のアントラセン誘導体のLUMO準位と電子輸送性の有機化合物のLUMO準位と
の差は小さい方が好ましい。正孔輸送性の有機化合物のHOMO準位と電子輸送性の有機
化合物のHOMO準位との差が大きいと、発光領域が第1の層もしくは第2の層のどちら
かに偏ってしまう。同様に、正孔輸送性の有機化合物のLUMO準位と電子輸送性の有機
化合物のLUMO準位との差が大きい場合も、発光領域が第1の層もしくは第2の層のど
ちらかに偏ってしまう。よって、正孔輸送性の有機化合物に用いる本発明のアントラセン
誘導体のHOMO準位と電子輸送性の有機化合物のHOMO準位との差は、0.3eV以
下であることが好ましい。より好ましくは、0.1eVであることが望ましい。また、正
孔輸送性の有機化合物に用いる本発明のアントラセン誘導体のLUMO準位と電子輸送性
の有機化合物のLUMO準位との差は、0.3eV以下であることが好ましい。より好ま
しくは、0.1eV以下であることが好ましい。
【0209】
また、発光素子は電子と正孔が再結合することにより発光が得られるため、発光層113
に用いられる有機化合物は、酸化反応および還元反応を繰り返しても安定であることが好
ましい。つまり、酸化反応および還元反応に対して可逆的であることが好ましい。特に、
正孔輸送性の有機化合物および電子輸送性の有機化合物は、それぞれ酸化反応および還元
反応を繰り返しても安定であることが好ましい。本発明のアントラセン誘導体は酸化反応
および還元反応を繰り返しても安定であり、そのことはサイクリックボルタンメトリー(
CV)測定によって確認することができる。したがって、本発明のアントラセン誘導体は
発光層113に好適に用いることができる。なお、本実施の形態においては、発光層11
3等のいずらかの層に本発明のアントラセン誘導体を用いることが必要である。
【0210】
具体的には、有機化合物の酸化反応の酸化ピーク電位(Epa)の値や還元反応の還元ピー
ク電位(Epc)の値の変化、ピークの形状の変化等を測定することにより、酸化反応およ
び還元反応を繰り返しても安定であるかどうか確認することができる。発光層113に用
いる正孔輸送性の有機化合物および電子輸送性の有機化合物は、酸化ピーク電位の強度お
よび還元ピーク電位の強度の変化が50%よりも小さいことが好ましい。より好ましくは
、30%よりも小さいことが好ましい。つまり、例えば、酸化ピークが減少しても50%
以上のピークの強度を保っていることが好ましい。より好ましくは、70%以上のピーク
の強度を保っていることが好ましい。また、酸化ピーク電位および還元ピーク電位の値の
変化は、0.05V以下であることが好ましい。より好ましくは、0.02V以下である
ことが好ましい。
【0211】
第1の層に含まれる発光性の高い物質と第2の層に含まれる発光性の高い物質とを同じ物
質とすることにより、発光層の中央付近で発光させることが可能となる。また、第1の層
と第2の層とで異なる発光性の高い物質を含む構成とすると、どちらか一方の層でのみ発
光してしまう可能性がある。よって、第1の層に含まれる発光性の高い物質と第2の層に
含まれる発光性の高い物質とを同じ物質とすることが好ましい。
【0212】
本発明のアントラセン誘導体は、青色〜青緑色の発光を示す発光性の高い物質を好適に励
起するため、本実施の形態で示す素子構造は、青色系の発光素子および青緑色系の発光素
子に対して特に有効である。無論、緑や赤の発光素子に用いてもよい。また、本実施の形
態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることも可能である。
【0213】
(実施の形態6)
本実施の形態は、本発明に係る複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(以下、積
層型素子という)であり、その態様について、図3を参照して説明する。この発光素子は
、第1の電極と第2の電極との間に、複数の発光ユニットを有する発光素子である。発光
ユニットとしては、実施の形態2〜実施の形態5で示した有機化合物を含む層102と同
様な構成を用いることができる。つまり、実施の形態2〜実施の形態5で示した発光素子
は、1つの発光ユニットを有する発光素子であり、本実施の形態では、複数の発光ユニッ
トを有する発光素子について説明する。
【0214】
図3において、第1の電極501と第2の電極502との間には、第1の発光ユニット5
11と第2の発光ユニット512が積層されている。第1の電極501と第2の電極50
2は実施の形態2と同様なものを適用することができる。また、第1の発光ユニット51
1と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構成であってもよく、その構
成は実施の形態2〜実施の形態4に記載の有機化合物を含む層と同様なものを適用するこ
とができる。
【0215】
電荷発生層513には、有機化合物と金属酸化物の複合材料が含まれている。この有機化
合物と金属酸化物の複合材料は、実施の形態2で示した複合材料であり、有機化合物とバ
ナジウム酸化物やモリブデン酸化物やタングステン酸化物等の金属酸化物を含む。有機化
合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合
物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる
。なお、有機化合物としては、正孔輸送性有機化合物として正孔移動度が10-6cm2
Vs以上であるものを適用することが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物
質であれば、これら以外のものを用いてもよい。有機化合物と金属酸化物の複合材料は、
キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現する
ことができる。
【0216】
なお、電荷発生層513は、有機化合物と金属酸化物の複合材料と他の材料とを組み合わ
せて形成してもよい。例えば、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、電子供与
性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせ
て形成してもよい。また、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、透明導電膜と
を組み合わせて形成してもよい。
【0217】
いずれにしても、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512に挟まれる電荷
発生層513は、第1の電極501と第2の電極502に電圧を印加したときに、一方の
側の発光ユニットに電子を注入し、他方の側の発光ユニットに正孔を注入するものであれ
ば良い。
【0218】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、3つ以上
の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実
施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕
切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での長寿命素子を実現で
きる。また、照明を応用例とした場合は、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできる
ので、大面積での均一発光が可能となる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光
装置を実現することができる。
【0219】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0220】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明のアントラセン誘導体を用いて作製された発光装置について説
明する。
【0221】
本実施の形態では、本発明のアントラセン誘導体を用いて作製された発光装置については
図4を用いて説明する。なお、図4(A)は、発光装置を示す上面図、図4(B)は図4
(A)をA−A’で切断した断面図である。この発光装置は、発光素子の発光を制御する
ものとして、点線で示した駆動回路(ソース側駆動回路)401、画素部402、駆動回
路部(ゲート側駆動回路)403を含んでいる。また、404は封止基板、405はシー
ル材であり、シール材405で囲まれた内側は、空間407になっている。
【0222】
なお、引き回し配線408はソース側駆動回路401およびゲート側駆動回路403に入
力される信号を伝達するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプ
リントサーキット)409からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号
等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント
配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光
装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものと
する。
【0223】
次に、断面構造について図4(B)を用いて説明する。素子基板410上には駆動回路部
及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路401と
、画素部402中の一つの画素が示されている。
【0224】
なお、ソース側駆動回路401はnチャネル型TFT423とpチャネル型TFT424
とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、
PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、画素部
と同一基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、
駆動回路を画素部と同一の基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0225】
また、画素部402はスイッチング用TFT411と、電流制御用TFT412とそのド
レインに電気的に接続された第1の電極413とを含む複数の画素により形成される。な
お、第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成されている。ここでは、ポジ型
の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0226】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物414の上端部または下端部に曲率を有す
る曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物414の材料としてポジ型の感光性アク
リルを用いた場合、絶縁物414の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有す
る曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物414として、光の照射によってエッチ
ャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポ
ジ型のいずれも使用することができる。
【0227】
第1の電極413上には、有機化合物を含む層416、および第2の電極417がそれぞ
れ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極413に用いる材料としては
、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、または珪素を含有
したインジウム錫酸化物膜、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チ
タン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタン膜と
アルミニウムを主成分とする膜との積層膜、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする
膜と窒化チタン膜との3層積層膜構造等を用いることができる。なお、積層膜構造とする
と、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機
能させることができる。
【0228】
また、有機化合物を含む層416は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、ス
ピンコート法等の種々の方法によって形成される。有機化合物を含む層416は、実施の
形態1で示した本発明のアントラセン誘導体を含んでいる。また、有機化合物を含む層4
16を構成する他の材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デ
ンドリマーを含む)が挙げられる。
【0229】
さらに、有機化合物を含む層416上に形成され、陰極として機能する第2の電極417
に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれら
の合金もしくは化合物である、MgAg、MgIn、AlLi、LiF、CaF2等)を
用いることが好ましい。なお、有機化合物を含む層416で生じた光を第2の電極417
を透過させる場合には、第2の電極417としては、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導
電膜(ITO、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、珪素若しくは酸化珪素
を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良
い。
【0230】
さらに、シール材405で封止基板404を素子基板410と貼り合わせることにより、
素子基板410、封止基板404、およびシール材405で囲まれた空間407に発光素
子418が備えられた構造になっている。なお、空間407には、充填材が充填されてお
り、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材405で充填され
る場合もある。
【0231】
なお、シール材405にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料は
できるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板404に
用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass-Reinforced Plastics
)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチ
ック基板を用いることができる。
【0232】
以上のようにして、本発明のアントラセン誘導体を用いて作製された発光装置を得ること
ができる。
【0233】
また、本発明のアントラセン誘導体は、効率よく発光するため、発光素子に用いることに
より、発光効率の高い発光素子を得ることができる。
【0234】
本発明のアントラセン誘導体は非常に大きなバンドギャップを有するため、色純度の高い
青色の発光を得ることができる発光素子を得ることができる。
【0235】
また、本発明のアントラセン誘導体を用いた発光素子は、発光効率が高いため、低消費電
力の発光装置を得ることができる。
【0236】
また、本発明のアントラセン誘導体を用いた発光素子は、色純度の高い青色発光が可能で
あるため、色再現性に優れた発光装置を得ることができる。
【0237】
以上のように、本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアク
ティブマトリクス型の発光装置について説明したが、この他、パッシブマトリクス型の発
光装置であってもよい。図5には本発明を適用して作製したパッシブマトリクス型の発光
装置の斜視図を示す。なお、図5(A)は、発光装置を示す斜視図、図5(B)は図5(
A)をX−Yで切断した断面図である。図5において、基板951上には、電極952と
電極956との間には有機化合物を含む層955が設けられている。電極952の端部は
絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられてい
る。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間
隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台
形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺
)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)
よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の
不良を防ぐことが出来る。パッシブマトリクス型の発光装置においても、本発明の発光素
子を含むことによって、低消費電力の発光装置を得ることができる。
【0238】
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施の形態7に示す発光装置をその一部に含む本発明の電子機器につ
いて説明する。本発明の電子機器は、実施の形態1に示したアントラセン誘導体を含み、
消費電力の低減された表示部を有する。
【0239】
本発明のアントラセン誘導体を用いて作製された発光素子を有する電子機器として、ビデ
オカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再
生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報
端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体
を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再
生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機
器の具体例を図6に示す。
【0240】
図6(A)は本発明に係るテレビ装置であり、筐体9101、支持台9102、表示部
9103、スピーカー部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。このテレビ装置に
おいて、表示部9103は、実施の形態2〜実施の形態6で説明したものと同様の発光素
子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高いという特
徴を有している。その発光素子で構成される表示部9103も同様の特徴を有するため、
このテレビ装置は低消費電力化が図られている。このような特徴により、テレビ装置にお
いて、電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、筐体9101や支持
台9102の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るテレビ装置は、低消費電
力、高画質及び小型軽量化が図られているので、それにより住環境に適合した製品を提供
することができる。また、実施の形態1で示したアントラセン誘導体を用いた発光素子は
、色純度が高い発光が可能であるため、色再現性に優れた表示部を有するテレビ装置を得
ることができる。
【0241】
図6(B)は本発明に係るコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9
203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス920
6等を含む。このコンピュータにおいて、表示部9203は、実施の形態2〜実施の形態
6で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光
素子は、発光効率が高いという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部92
03も同様の特徴を有するため、このコンピュータは低消費電力化が図られている。この
ような特徴により、コンピュータにおいて、電源回路を大幅に削減、若しくは縮小するこ
とができるので、本体9201や筐体9202の小型軽量化を図ることが可能である。本
発明に係るコンピュータは、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、環
境に適合した製品を提供することができる。また、実施の形態1で示したアントラセン誘
導体を用いた発光素子は、色純度が高い発光が可能であるため、色再現性に優れた表示部
を有するコンピュータを得ることができる。
【0242】
図6(C)は本発明に係る携帯電話であり、本体9401、筐体9402、表示部940
3、音声入力部9404、音声出力部9405、操作キー9406、外部接続ポート94
07、アンテナ9408等を含む。この携帯電話において、表示部9403は、実施の形
態2〜実施の形態6で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成され
ている。当該発光素子は、発光効率が高いという特徴を有している。その発光素子で構成
される表示部9403も同様の特徴を有するため、この携帯電話は、低消費電力化が図ら
れている。このような特徴により、携帯電話において、電源回路を大幅に削減、若しくは
縮小することができるので、本体9401や筐体9402の小型軽量化を図ることが可能
である。本発明に係る携帯電話は、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているの
で、携帯に適した製品を提供することができる。また、実施の形態1で示したアントラセ
ン誘導体を用いた発光素子は、色純度が高い発光が可能であるため、色再現性に優れた表
示部を有する携帯電話を得ることができる。
【0243】
図6(D)は本発明の係るカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体9503
、外部接続ポート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー95
07、音声入力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。このカメラに
おいて、表示部9502は、実施の形態2〜実施の形態6で説明したものと同様の発光素
子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高いという特
徴を有している。その発光素子で構成される表示部9502も同様の特徴を有するため、
このカメラは、低消費電力化が図られている。このような特徴により、カメラにおいて、
電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9501の小型軽量化
を図ることが可能である。本発明に係るカメラは、低消費電力、高画質及び小型軽量化が
図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。また、実施の形態1で示
したアントラセン誘導体を用いた発光素子は、色純度が高い発光が可能であるため、色再
現性に優れた表示部を有するカメラを得ることができる。
【0244】
以上の様に、本発明の発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の
電子機器に適用することが可能である。本発明のアントラセン誘導体を用いることにより
、発光効率が高い表示部を有する電子機器を提供することが可能となる。また、色再現性
に優れた表示を有する電子機器を得ることができる。
【0245】
また、本発明の発光装置は、照明装置として用いることもできる。本発明の発光素子を照
明装置として用いる一態様を、図7を用いて説明する。
【0246】
図7は、本発明の発光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図7
に示した液晶表示装置は、筐体901、液晶層902、バックライト903、筐体904
を有し、液晶層902は、ドライバIC905と接続されている。また、バックライト9
03は、本発明の発光装置が用いられおり、端子906により、電流が供給されている。
【0247】
本発明の発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることにより、発光効率が高
く、消費電力の低減されたバックライトが得られる。また、本発明の発光装置は、面発光
の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化が可能であり、液
晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、本発明の発光装置は薄型で低消費電力であ
るため、表示装置の薄型化、低消費電力化も可能となる。
【0248】
図8は、本発明を適用した発光装置を、照明装置である電気スタンドとして用いた例であ
る。図8に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源2002と
して、本発明の発光装置が用いられている。本発明の発光装置は、発光効率が高いため、
電気スタンドも発光効率が高い。
【0249】
図9は、本発明を適用した発光装置を、室内の照明装置3001として用いた例である。
本発明の発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることがで
きる。また、本発明の発光装置は、薄型で低消費電力であるため、薄型化、低消費電力化
の照明装置として用いることが可能となる。このように、本発明を適用した発光装置を、
室内の照明装置3001として用いた部屋に、図6(A)で説明したような、本発明に係
るテレビ装置3002を設置して公共放送や映画を鑑賞することができる。このような場
合、両装置は低消費電力であるので、電気料金を心配せずに、明るい部屋で迫力のある映
像を鑑賞することができる。
【実施例1】
【0250】
(合成例1)
本合成例では、下記構造式(88)で表される本発明のアントラセン誘導体である9−フ
ェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾー
ル(略称:PCzPA)の合成法を具体的に説明する。
【0251】
【化89】

【0252】
[ステップ1:9−(4−ブロモフェニル)−10−フェニルアントラセン(略称:PA
)の合成]
(1)9−フェニルアントラセンの合成。
9−ブロモアントラセン5.4g(21mmol)、フェニルボロン酸2.6g(21m
mol)、酢酸パラジウム(II)(略称:Pd(OAc)2)60mg(0.2mmol
)、炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)10mL(20mmol)、トリス(オル
ト−トリル)ホスフィン(略称:P(o−tolyl)3)260mg(0.8mmol
)、1,2−ジメトキシエタン(略称:DME)20mLを200mL三口フラスコに入
れ、窒素雰囲気下にて80℃で、9時間撹拌した。反応後、析出した固体を吸引ろ過で回
収してから、トルエンに溶かしフロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:5
40−00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−168
55)、アルミナを通してろ過をした。得られたろ液を水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マ
グネシウムで水分を取り除いた。この懸濁液を自然ろ過し、得られたろ液を濃縮したとこ
ろ目的物である9−フェニルアントラセンの淡褐色固体を22g、収率85%で得た。(
合成スキーム(a−1))
【0253】
【化90】

【0254】
(2)9−ブロモ−10−フェニルアントラセンの合成。
上記ステップ1(1)で得られた9−フェニルアントラセン6.0g(24mmol)を
四塩化炭素80mLに溶かし、ここへ滴下ロートにて臭素3.8g(21mmol)を四
塩化炭素10mLで溶かしたものを滴下撹拌した。滴下終了後、室温でさらに1時間撹拌
した。反応後、ここにチオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて撹拌してから、有機層を水酸化
ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を取り除い
た。この懸濁液を自然ろ過し、ろ液を濃縮しトルエンに溶かしフロリジール(和光純薬工
業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、
カタログ番号:531−16855)、アルミナを通してろ過を行なった。得られたろ液
を濃縮し、ジクロロメタン、ヘキサンの混合溶液により再結晶を行なったところ、目的物
である9−ブロモ−10−フェニルアントラセンの淡黄色固体を7.0g、収率89%で
得た。(合成スキーム(a−2))
【0255】
【化91】

【0256】
(3)9−ヨード−10−フェニルアントラセンの合成。
窒素雰囲気下にて、上記ステップ1(2)で得られた9−ブロモ−10−フェニルアント
ラセン3.3g(10mmol)をテトラヒドロフラン(略称:THF)80mLに溶か
し、−78℃にした。ここへ滴下ロートにて、n−ブチルリチウム(略称:n−BuLi
)(1.6mol/L ヘキサン溶液)7.5mL(12mmol)を滴下し、1時間撹
拌した。ヨウ素5.0g(20mmol)をTHF20mLに溶かした溶液を混合液に滴
下し、−78℃でさらに2時間撹拌した。反応後、ここにチオ硫酸ナトリウム水溶液を加
えて撹拌してから、有機層をチオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸
マグネシウムを加えて水分を取り除いた。この懸濁液を濾過し、ろ液を濃縮し、得られた
固体をエタノールにより再結晶したところ目的物である9−ヨード−10−フェニルアン
トラセンの淡黄色固体を3.1g、収率83%で得た。(合成スキーム(a−3))
【0257】
【化92】

【0258】
(4)9−(4−ブロモフェニル)−10−フェニルアントラセン(略称:PA)の合成

上記ステップ1(3)で得られた9−ヨード−10−フェニルアントラセン1.0g(2
.6mmol)、p−ブロモフェニルボロン酸540mg(2.7mmol)、テトラキ
ス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(略称:Pd(PPh34)46mg(
30μmol)、2.0mol/L 炭酸カリウム水溶液3.0mL(6.0mmol)
、トルエン10mLの混合物を80℃、9時間撹拌した。反応後、トルエンを加えてから
フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト
(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナを通してろ過
をした。得られたろ液を水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで水分を取り除いた
。この懸濁液を自然ろ過し、ろ液を濃縮し、得られた固体をクロロホルム、ヘキサンの混
合溶液により再結晶したところ目的物である9−(4−ブロモフェニル)−10−フェニ
ルアントラセン(略称;PA)の淡褐色固体を560mg、収率45%で得た。(合成ス
キーム(a−4))
【0259】
【化93】

【0260】
[ステップ2:4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニルボロン酸の合成]
500mL三口フラスコ中にて、上記ステップ1(1)〜(4)で得られた9−(4−ブ
ロモフェニル)−10−フェニルアントラセン20g(49mmol)、テトラヒドロフ
ラン(略称:THF)300mLを、窒素雰囲気下、−78℃にて撹拌した。ここに、n
−ブチルリチウム(1.6mol/Lヘキサン溶液)34mL(54mmol)を滴下し
、同温度で2時間攪拌した。その後、ここにホウ酸トリメチル13mL(110mmol
)を加え、室温にて24時間撹拌した。反応終了後、ここに1.0mol/L塩酸200
mLを加え、室温で1時間撹拌した。この混合物の有機層を水で洗浄して、有機層と水層
とに分け、得られた水層を酢酸エチルでさらに抽出した。この抽出溶液を先の有機層と合
わせて飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムを加えて水分を取り除いた。これを吸引ろ
過し、得られたろ液を濃縮して残渣を得た。得られた残渣をクロロホルムとヘキサンの混
合溶媒により再結晶したところ、目的物である4−(10−フェニル−9−アントリル)
フェニルボロン酸の白色粉末状固体を15g、収率84%で得た。(合成スキーム(a−
5))
【0261】
【化94】

【0262】
[ステップ3:3−ブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾールの合成]
1000mL三角フラスコ中にて、9−フェニルカルバゾールを24g(100mmol
)、N−ブロモこはく酸イミドを18g(100mmol)、トルエン450mL、酢酸
エチル200mLを加えて、室温にて45時間撹拌した。この懸濁液を、水で洗浄した後
、硫酸マグネシウムを加えて水分を取り除いた。この懸濁液をろ過し、得られたろ液を濃
縮、乾燥させた。キャラメル状の目的物である3−ブロモ−9−フェニル−9H−カルバ
ゾールを32g、収率99%で得た。(合成スキーム(a−6))
【0263】
【化95】

【0264】
[ステップ4:9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル
]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)の合成]
100mL三口フラスコ中にて、上記ステップ2で得られた4−(10−フェニル−9−
アントリル)フェニルボロン酸を2.6g(7.0mmol)、上記ステップ3で得られ
た3−ブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾールを2.3g(7.0mmol)、酢酸
パラジウム(II)(略称:Pd(OAc)2)を2.0mg(10μmol)、トリス(
オルト−トリル)ホスフィン(略称:P(o−tolyl)3)を6.0mg(20μm
ol)、炭酸カリウム水溶液(2mol/L)を5mL(10mmol)、1,2−ジメ
トキシエタン(略称:DME)を20mL、窒素雰囲気下で90℃にて6.5時間加熱撹
拌を行った。この懸濁液を室温まで冷ました後、トルエン200mLを加えながらフロリ
ジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、アルミナ、セラ
イト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)を通してろ過を行っ
た。得られたろ液を濃縮し、これにアセトンとメタノールを加えて超音波をかけた後、再
結晶を行った。淡黄色粉末の目的物である9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−
9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)を3.8g、収
率95%で得た。(合成スキーム(a−7))
【0265】
【化96】

【0266】
(合成例2)
本合成例では、合成例1とは異なる合成法による9−フェニル−3−[4−(10−フェ
ニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)の合成法
を具体的に説明する。
【0267】
[ステップ1:9−フェニル−9H−カルバゾール−3−ボロン酸の合成]
500mL三口フラスコ中にて、合成例1で記載のステップ3で得られた3−ブロモ−9
−フェニルカルバゾールを29g(90mmol)、テトラヒドロフラン(略称:THF
)を200mL、−78℃にて撹拌し溶液とした後、ここにn−ブチルリチウムを(1.
6mol/Lヘキサン溶液)110ml(69mmol)滴下し、同温度で2時間撹拌し
た。さらに、ここにホウ酸トリメチルを13mL(140mmoL)を加え、室温にて、
24時間撹拌した。反応終了後、ここに1.0mol/L塩酸200mLを加え、室温で
1時間撹拌した。これを水、水酸化ナトリウム水溶液、水の順で洗浄し、硫酸マグネシウ
ムを加えて水分を取り除いた。この懸濁液を濾過し、得られた濾液を濃縮し、クロロホル
ムとヘキサンを加えて超音波をかけた後、再結晶を行った。白色粉末の目的物である9−
フェニル−9H−カルバゾール−3−イルボロン酸を21g、収率80%で得た。(合成
スキーム(b−1))
【0268】
【化97】

【0269】
[ステップ2:9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル
]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)の合成]
200mL三口フラスコ中にて、合成例1で記載のステップ1(1)〜(4)で得られ
た9−(4−ブロモフェニル)−10−フェニルアントラセン(略称:PA)を1.9g
(4.7mmol)、合成例2で記載のステップ1で得られた9−フェニル−9H−カル
バゾール−3−ボロン酸を1.4g(4.7mmol)、酢酸パラジウム(II)(略称:
Pd(OAc)2)を5.6mg(25μmol)、トリス(オルト−トリル)ホスフィ
ン(略称:P(o−tolyl)3)を52mg(170μmol)、炭酸カリウム水溶
液(2.0mol/L)を7mL(15mmol)、1,2−ジメトキシエタン(略称:
DME)を40mL、窒素雰囲気下で90℃にて7時間加熱撹拌を行った。この懸濁液を
室温まで冷ました後、ろ過して濾物を得た。この得られたろ物を温トルエン50mLに溶
かした後、トルエン400mLを加えながらフロリジール(和光純薬工業株式会社、カタ
ログ番号:540−00135)、アルミナ、セライト(和光純薬工業株式会社、カタロ
グ番号:531−16855)を通してろ過を行った。得られたろ液を濃縮し、これにヘ
キサンを加えて超音波をかけた後、再結晶を行った。淡黄色粉末の目的物である9−フェ
ニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール
(略称:PCzPA)を2.0g、収率75%で得た。(合成スキーム(b−2))
【0270】
【化98】

【0271】
なお、合成例1に記載のステップ4及び合成例2に記載のステップ2で得られた固体の1
H NMRを測定した。以下に測定データを示す。また、1H NMRチャートを図10
に示す。なお、図10(B)は、図10(A)における7.0ppm〜8.5ppmの範
囲を拡大して表したチャートである。
【0272】
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=7.32−7.98(m、2
7H)、8.25(d、J=7.8Hz、1H)、8.55(d、J=1.5Hz、1H
)。
【0273】
次に、PCzPAの吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定は紫外可視分光光
度計((株)日本分光製 V−550DS)を用い、トルエン溶液を用いて、室温にて測
定を行った。また、PCzPAの発光スペクトルを測定した。発光スペクトルの測定は蛍
光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、トルエン溶液を用いて、室温
にて測定を行った。測定結果を図11に示す。また、PCzPAを蒸着法にて成膜し、薄
膜状態にて同様な測定を行った。測定結果を図12に示す。図11および図12において
、横軸は波長、縦軸は吸収強度(任意単位)および発光強度(任意単位)を表す。
【0274】
図11および図12より、PCzPAからの発光は、薄膜状態において448nmにピー
クを有し、トルエン溶液中において440nmにピークを有することが分かる。このよう
にPCzPAは、特に青色系の発光を呈する発光物質にも適することが分かる。
【0275】
また、CV測定により、PCzPAの酸化還元反応特性を測定した。CV測定は、電気化
学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製 ALS600a)を用いた。また、溶媒に
ジメチルホルムアミド(DMF)、支持電解質に過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウ
ム(n−Bu4NCIO4)を用い10mmol/Lとなるように調整した。さらに、電解
溶質にPCzPAを1mmol/Lとなるように調整した。また、作用電極に白金電極(
ビー・エー・エス(株)製 PTE白金電極)、補助電極に白金電極(ビー・エー・エス
(株)製 VC−3用Ptカウンター電極)、参照電極にAg/Ag+電極(ビー・エー
・エス(株)製RE5非水溶媒系参照電極)を用いた。なお、CV走査速度は、0.1V
/sとし、100サイクル測定を行った。酸化測定結果を図13に示す。また、還元反応
測定結果を図14に示す。また、横軸は参照電極に対する作用電極(V)、縦軸は作用電
極と補助電極間の電流値(A)を示す。
【0276】
図13より、PCzPAの酸化電位は0.88V(vs.Ag/Ag+電極)であった。
また、図14より、PCzPAの還元電位は−2.24v(vs.Ag/Ag+電極)で
あった。また、100サイクル走査結果より、CV曲線に酸化還元反応のピークが明確に
観測され、これより、本発明のアントラセン誘導体は酸化還元反応に対して優れた可逆性
を示す物質であることが分かった。
【0277】
(合成例3)
本実施例では、下記構造式(98)で表される本発明のアントラセン誘導体である3,3
’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)
ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)(略称:PCzBPA)の合成法を具体的に
説明する。
【0278】
【化99】

【0279】
[ステップ1:9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラ
セン(略称:BPA)の合成]
(1)9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチル−9,10−ジヒ
ドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセンの合成。
1,4−ジブロモベンゼン(5.0g)の脱水エーテル溶液(200mL)に−78℃に
おいて1.6mol/Lのブチルリチウムヘキサン溶液(13mL)を窒素気流下にて滴
下した。滴下終了後、同温度にて1時間攪拌した。ここに、−78℃にて2−tert−
ブチルアントラキノン2.8g(11mmol)の脱水エーテル溶液(40mL)を滴下
し、その後反応溶液をゆっくり室温まで昇温した。24時間室温で攪拌した後、水を加え
、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、
濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒、ヘキサン−酢酸エチル)によ
って精製し、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチル−9,10
−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセンを5.5g、収率は90%で得た。(
合成スキーム(c−1))
【0280】
【化100】

【0281】
なお、合成例3で記載の上記ステップ1(1)で得られた固体の1H NMRを測定した
。以下に測定データを示す。
【0282】
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=1.31(s、9H)、2.
81(s、1H)、2.86(s、1H)、6.82−6.86(m、4H)、7.13
−7.16(m、4H)、7.36−7.43(m、3H)、7.53−7.70(m、
4H)。
【0283】
(2)9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセン(略
称:BPA)の合成。
合成例3で記載のステップ1(1)で得られた9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−
2−tert−ブチル−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセン98
7mg(1.6mmol)、ヨウ化カリウム664mg(4.0mmol)、ホスフィン
酸ナトリウム一水和物を1.48g(14mmol)を、氷酢酸12mlにて懸濁し、大
気下にて2時間還流加熱撹拌した。室温まで冷ましたのち、生じた析出物を濾過し、得ら
れた固体をメタノール約50mlで洗浄した。得られた固体を乾燥させてクリーム色粉末
の9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:
BPA)を700mg、収率は82%で得た。(合成スキーム(c−2))
【0284】
【化101】

【0285】
なお、合成例3で記載の上記ステップ1(2)で得られた固体の1H NMRと13C N
MRとを測定した。以下に測定データを示す。
【0286】
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=1.28(s、9H)、7.
25−7.37(m、6H)、7.44−7.48(m、1H)7.56−7.65(m
、4H)、7.71−7.76(m、4H)。13C NMR(74MHz、CDCl3
:δ(ppm)=30.8、35.0、120.8、121.7、121.7、124.
9、125.0、125.2、126.4、126.6、126.6、128.3、12
9.4、129.7、129.9、131.6、131.6、133.0、133.0、
135.5、135.7、138.0、138.1、147.8。
【0287】
[ステップ2:3,3’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−
4,1−フェニレン)ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)(略称:PCzBPA
)の合成]
200mL三口フラスコ中にて、合成例3で記載のステップ1(1)〜(2)で得られた
9,10−ジ(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:BP
A)を1.6g(3.0mmol)、合成例2で記載のステップ1(1)で得られた9−
フェニル−9H−カルバゾール−3−ボロン酸を1.7g(6.0mmol)、酢酸パラ
ジウム(II)(略称:Pd(OAc)2)を13mg(60μmol)、トリス(オルト
−トリル)ホスフィン(略称:P(o−tolyl)3)を36mg(120μmol)
、炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)を5mL(10mmol)、トルエンを20
mL、エタノールを5ml、窒素雰囲気下で90℃にて5.5時間加熱撹拌を行った。こ
の懸濁液を室温まで冷ました後、トルエン200mLを加えながらフロリジール(和光純
薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、シリカゲル、セライト(和光純
薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)を通して濾過を行った。得られた
濾液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を取り除いた。この懸濁液を、フロリ
ジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、シリカゲル、ア
ルミナ、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)を通し
て濾過し、得られたろ液を濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トル
エン:ヘキサン=1:1)にて目的物を分取した。これに酢酸エチル、メタノールを加え
て超音波をかけた後、再結晶を行った。淡黄色粉末の目的物である3,3’−(2−te
rt−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス(9−フェ
ニル−9H−カルバゾール)(略称:PCzBPA)を1.8g、収率67%で得た。(
合成スキーム(c−3))
【0288】
【化102】

【0289】
なお、合成例3で記載のステップ3で得られた固体の1H NMRを測定した。以下に測
定データを示す。また、1H NMRチャートを図15に示す。なお、図15(B)は、
図15(A)における7.0ppm〜8.5ppmの範囲を拡大して表したチャートであ
る。
【0290】
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=1.31(s、9H)、7.
32−7.90(m、31H)、7.99(t、J=7.8、4H)、8.25−8.2
9(m、2H)、8.57(d、J=8.1、2H)。
【0291】
次に、PCzBPAの吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定は紫外可視分光
光度計((株)日本分光製 V−550DS)を用い、トルエン溶液を用いて、室温にて
測定を行った。また、PCzBPAの発光スペクトルを測定した。発光スペクトルの測定
は蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、トルエン溶液を用いて、
室温にて測定を行った。測定結果を図16に示す。また、PCzBPAを蒸着法にて成膜
し、薄膜状態にて同様な測定を行った。測定結果を図17に示す。図16および図17に
おいて、横軸は波長、縦軸は吸収強度(任意単位)および発光強度(任意単位)を表す。
【0292】
図16および図17より、PCzBPAからの発光は、薄膜状態において457nmにピ
ークを有し、トルエン溶液中において445nmにピークを有することが分かる。このよ
うにPCzBPAは、特に青色系の発光を呈する発光物質にも適することが分かる。
【実施例2】
【0293】
本実施例では、PCzPAを発光層の発光材料として用いた発光素子の作製方法とその特
性について図18を用いて説明する。本実施例で用いた有機化合物の化学式は以下に示す

【0294】
【化103】

【0295】
(発光素子1)
まず、ガラス基板2100に酸化珪素を含むインジウムスズ酸化物をスパッタリング法に
て成膜し、第1の電極2101を形成した。なお、その膜は110nmとし、電極面積は
2mm×2mmとした。
【0296】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極が形成された基板を真
空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10-4Pa程度になるまで減圧した後
、第1の電極2101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、4,4’−ビス[N−(1
−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)と酸化モリブデン(VI
)を共蒸着することにより、有機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を含む層
2102を形成した。その膜厚は50nmとし、NPBと酸化モリブデンの比率は、重量
比で4:1(=NPB:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、
一つの処理室内で複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0297】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、複合材料を含む層2102上にNPBを10nm
の膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2103を形成した。
【0298】
さらに、実施例1の合成例1にて合成した本発明のアントラセン誘導体であるPCzPA
を蒸着することにより、正孔輸送層2103上に40nmの膜厚の発光層2111を形成
した。
【0299】
その後、抵抗加熱による蒸着法を用いて、発光層2111上にトリス(8−キノリノラト
)アルミニウム(略称:Alq)を10nmの膜厚となるように成膜し、電子輸送層21
04を形成した。
【0300】
さらに、電子輸送層2104上にAlqとリチウムを膜厚10nmとなるように共蒸着し
、電子注入層2105を形成した。ここで、AlqとLiの重量比は1:0.01(=A
lq:Li)となるように調節した。
【0301】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、電子注入層2105の上にアルミニウムを200
nmの膜厚となるように成膜することにより、第2の電極2106を形成することで、発
光素子1を形成した。
【0302】
発光素子1の電流密度−輝度特性を図19に示す。また、電圧−輝度特性を図20に示す
。また、輝度−電流効率特性を図21に示す。また、1mAの電流を流した時の発光スペ
クトルを図22に示す。図22より、本発明のアントラセン誘導体であるPCzPAに由
来する発光が得られたことがわかった。また、発光素子1のCIE色度座標は1000c
d/m2の輝度の時(x,y)=(0.15,0.12)であり、非常の色純度の良い青
色発光が得られることがわかった。図21より、輝度1000cd/m2における電流効
率は、1.6cd/Aであり、効率よく発光していることがわかった。また、図20より
、発光開始電圧が4V未満であり、駆動電圧が低いことがわかる。
なお、前記CIE色度座標の数値は、輝度計(トプコン社製、色彩輝度計(BM−5A)
を用いて実測したものであり、これ以後の他のCIE色度座標の数値も同様である。
【0303】
よって、本発明のアントラセン誘導体を発光素子に好適に用いることができることがわか
った。
【実施例3】
【0304】
本実施例では、PCzPAを発光層のホスト材料として用いた発光素子の作製方法とその
特性について図18を用いて説明する。本実施例で用いた有機材料の化学式は以下に示す

【0305】
【化104】

【0306】
(発光素子2)
本発光素子2では、実施例2で説明した発光素子1の発光層2111における、PCzP
AをPCzPAと4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9
−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)との共蒸着に換え、正孔輸送層
2103上に40nmの膜厚の発光層2111を形成した以外は、発光素子1と同様に作
製した。なお、PCzPAとYGAPAの重量比は1:0.04(=PCzPA:YGA
PA)となるように調節した。
【0307】
発光素子2の電流密度−輝度特性を図23に示す。また、電圧−輝度特性を図24に示す
。また、輝度−電流効率特性を図25に示す。また、1mAの電流を流した時の発光スペ
クトルを図26に示す。図26より、YGAPAに由来する発光が得られたことがわかっ
た。また、発光素子2のCIE色度座標は1000cd/m2の輝度の時(x,y)=(
0.16,0.16)であり、非常の色純度の良い青色発光が得られることがわかった。
図25より、輝度1000cd/m2における電流効率は、2.2cd/Aであり、効率
よく発光していることがわかった。また、図24より、発光開始電圧が4V未満であり、
駆動電圧が低いことがわかる。
【0308】
よって、本発明のアントラセン誘導体を発光層のホスト材料として好適に用いることがで
きることがわかった。特に、青色の発光を示すドーパントのホスト材料として好適に用い
ることができることがわかった。
【0309】
(発光素子3)
本発光素子3では、実施例2で説明した発光素子1の発光層2111におけるPCzPA
を、PCzPAとN,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−
N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)との共蒸着
に換え、正孔輸送層2103上に30nmの膜厚の発光層2111を形成した。ここで、
PCzPAとYGA2Sの重量比は1:0.05(=PCzPA:YGA2S)となるよ
うに調節した。また、電子注入層2105の膜厚を20nmとなるようにAlqとリチウ
ムを共蒸着した。上記以外は発光素子1と同様に作製した。
【0310】
発光素子3の電流密度−輝度特性を図27に示す。また、電圧−輝度特性を図28に示す
。また、輝度−電流効率特性を図29に示す。また、1mAの電流を流した時の発光スペ
クトルを図30に示す。図30より、YGA2Sに由来する発光が得られたことがわかっ
た。また、発光素子3のCIE色度座標は1000cd/m2の輝度の時(x,y)=(
0.18,0.20)であり、非常の色純度の良い青色発光が得られることがわかった。
図29より、輝度1000cd/m2における電流効率は、5.1cd/Aであり、効率
よく発光していることがわかった。また、図28より、発光開始電圧が4V未満であり、
駆動電圧が低いことがわかる。
【0311】
よって、本発明のアントラセン誘導体を発光層のホスト材料として好適に用いることがで
きることがわかった。特に、青色の発光を示すドーパントのホスト材料として好適に用い
ることができることがわかった。
【実施例4】
【0312】
本実施例では、PCzPAを発光層のホスト材料として用いた2層構造素子の発光素子と
その特性について図31を用いて説明する。本実施例で用いた有機材料の化学式は以下に
示す。
【0313】
【化105】

【0314】
(発光素子4)
まず、ガラス基板3100に酸化珪素を含むインジウムスズ酸化物をスパッタリング法に
て成膜し、第1の電極3101を形成した。なお、その膜は110nmとし、電極面積は
2mm×2mmとした。
【0315】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極が形成された基板を真
空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10-4Pa程度になるまで減圧した後
、第1の電極3101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、NPBと酸化モリブデン(
VI)を共蒸着することにより、有機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を含む
層3102を形成した。その膜厚は50nmとし、NPBと酸化モリブデンの比率は、重
量比で4:1(=NPB:酸化モリブデン)となるように調節した。
【0316】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、複合材料を含む層3102上にNPBを10nm
の膜厚となるように成膜し、正孔輸送層3103を形成した。
【0317】
さらに、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)とYGA2Sとを共
蒸着することにより、正孔輸送層3103上に30nmの膜厚の第1の層3111を形成
した。ここで、DPAnthとYGA2Sの重量比は1:0.1(=DPAnth:YG
A2S)となるように調節した。
【0318】
さらに、PCzPAとYGA2Sとを共蒸着することにより、第1の層3111の上に3
0nmの膜厚の第2の層3112を形成した。ここで、PCzPAとYGA2Sの重量比
は1:0.05(=PCzPA:YGA2S)となるように調節した。
【0319】
その後、抵抗加熱による蒸着法を用いて、第2の層3112上にAlqを10nmの膜厚
となるように成膜し、電子輸送層3104を形成した。
【0320】
さらに、電子輸送層3104上にAlqとリチウムを膜厚20nmとなるように共蒸着し
、電子注入層3105を形成した。ここで、AlqとLiの重量比は1:0.01(=A
lq:Li)となるように調節した。
【0321】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、電子注入層3105の上にアルミニウムを200
nmの膜厚となるように成膜することにより、第2の電極3106を形成することで、発
光素子4を形成した。
【0322】
発光素子4の電流密度−輝度特性を図32に示す。また、電圧−輝度特性を図33に示す
。また、輝度−電流効率特性を図34に示す。また、1mAの電流を流した時の発光スペ
クトルを図35に示す。図35より、YGA2Sに由来する発光が得られたことがわかっ
た。また、発光素子4のCIE色度座標は1000cd/m2の輝度の時(x,y)=(
0.18,0.17)であり、非常の色純度の良い青色発光が得られることがわかった。
図34より、輝度1000cd/m2における電流効率は、3.3cd/Aであり、効率
よく発光していることがわかった。また、図33より、発光開始電圧が4V未満であり、
駆動電圧が低いことがわかる。
【0323】
よって、本発明のアントラセン誘導体を発光層のホスト材料として好適に用いることがで
きることがわかった。特に、青色の発光を示すドーパントのホスト材料として好適に用い
ることができることがわかった。
【0324】
以上のことから、本発明のアントラセン誘導体を用いて発光素子を作製することにより、
発光効率が良く、色純度の良い青色発光が得られる発光素子、発光装置、電子機器が得ら
れることがわかった。
【符号の説明】
【0325】
100 基板
101 第1の電極
102 有機化合物を含む層
103 第2の電極
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
121 第1の層
122 第2の層
401 駆動回路(ソース側駆動回路)
402 画素部
403 駆動回路(ゲート側駆動回路)
404 封止基板
405 シール材
407 空間
408 配線
409 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
410 素子基板
411 スイッチング用TFT
412 電流制御用TFT
413 第1の電極
414 絶縁物
416 有機化合物を含む層
417 第2の電極
418 発光素子
423 nチャネル型TFT
424 pチャネル型TFT
501 第1の電極
502 第2の電極
511 第1の発光ユニット
512 第2の発光ユニット
513 電荷発生層
901 筐体
902 液晶層
903 バックライト
904 筐体
905 ドライバIC
906 端子
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 有機化合物を含む層
956 電極
2001 筐体
2002 光源
2100 ガラス基板
2101 第1の電極
2102 複合材料を含む層
2103 正孔輸送層
2104 電子輸送層
2105 電子注入層
2106 第2の電極
2111 発光層
3001 照明装置
3002 テレビ装置
3100 ガラス基板
3101 第1の電極
3102 複合材料を含む層
3103 正孔輸送層
3104 電子輸送層
3105 電子注入層
3106 第2の電極
3111 第1の層
3112 第2の層
9101 筐体
9102 支持台
9103 表示部
9104 スピーカー部
9105 ビデオ入力端子
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングデバイス
9401 本体
9402 筐体
9403 表示部
9404 音声入力部
9405 音声出力部
9406 操作キー
9407 外部接続ポート
9408 アンテナ
9501 本体
9502 表示部
9503 筐体
9504 外部接続ポート
9505 リモコン受信部
9506 受像部
9507 バッテリー
9508 音声入力部
9509 操作キー
9510 接眼部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(88)で表される化合物。
【化1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2013−100290(P2013−100290A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−259317(P2012−259317)
【出願日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【分割の表示】特願2008−319547(P2008−319547)の分割
【原出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】