説明

化合物

【課題】有機溶媒への溶解性が高いキサンテン系化合物の提供。
【解決手段】式(I)で表される化合物。


[式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素又はアルキル基を表す。Rは、−SOH、−SO、−COH又は−COを表す。Mは、(R11、Na又はKを表す。R11は、水素、アルキル基又はアラルキル基を表す。Rは、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基又はニトロ基を表す。mは、0〜2の整数を表す。nは、0〜3の整数を表す。pは、0〜3の整数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料として有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
染料は、例えば、繊維材料、液晶表示装置、インクジェット等の分野で反射光又は透過光を利用して色表示するために使用されている。このような染料としては、例えば、キサンテン骨格を有する、下記式(a)で表されるローダミンBが広く知られている(非特許文献1)。

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】細田豊著「新染料化学」、(株)技報堂、1版、1973年5月、274頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から知られる上記の化合物は、有機溶媒への溶解性が必ずしも十分に満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の[1]〜[10]記載の発明を含む。
[1]式(I)で表される化合物。

[式(I)中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、−SOH、−SO、−COH又は−COを表す。
は、(R11、Na又はKを表す。R11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を表し、4つのR11は、互いに同一であるか相異なる。
は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、水酸基、シアノ基又はニトロ基を表す。
mは、0〜2の整数を表す。mが2の場合、2つのRは互いに同一であるか相異なる。
nは、0〜3の整数を表す。
pは、0〜3の整数を表す。pが2以上の場合、同一環上に存在する複数のRは互いに同一であるか相異なる。]
[2]式(I’)で表される化合物。

[式(I)中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、−SOH、−SO、−COH又は−COを表す。
は、(R11、Na又はKを表す。R11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を表し、4つのR11は、互いに同一であるか相異なる。
は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基を表す。
mは、0〜2の整数を表す。mが2の場合、2つのRは互いに同一であるか相異なる。
nは、0〜3の整数を表す。
pは、0〜3の整数を表す。pが2以上の場合、同一環上に存在する複数のRは互いに同一であるか相異なる。]
[3]R及びRが、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である[1]又は[2]記載の化合物。
[4]Rが、−SOH又は−SOである[1]〜[3]のいずれか記載の化合物。
[5]mが、0又は1である[1]〜[4]のいずれか記載の化合物。
[6]nが、1である[1]〜[5]のいずれか記載の化合物。
[7]Rが、メチル基である[1]〜[6]のいずれか記載の化合物。
[8]pが、0又は1である[1]〜[7]のいずれか記載の化合物。
[9]式(II)

[式(I)中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、−SOH、−SO、−COH又は−COを表す。
は、(R11、Na又はKを表す。R11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を表し、4つのR11は、互いに同一であるか相異なる。
mは、0〜2の整数を表す。mが2の場合、2つのRは互いに同一であるか相異なる。]
で表される化合物と、式(III)

[式(III)中、
nは0〜3の整数を表す。
は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基を表す。
pは、0〜3の整数を表す。pが2以上の場合、複数のRは互いに同一であるか相異なる。]
で表される化合物とを反応させる工程を含む式(I’)

[式(I’)中、R、R、R、R、m及びnは、それぞれ上記と同じ意味を表す。]
で表される化合物の製造方法。
[10]式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物とを、実質的に溶媒を用いることなく反応させる[9]記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化合物は、有機溶媒への溶解性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の化合物は、式(I)で表される化合物(以下、化合物(I)ということがある。)である。本発明の化合物には、その互変異性体やそれらの塩も含まれる。かかる塩としては、例えば、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。

[式(I)中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、−SOH、−SO、−COH又は−COを表す。
は、(R11、Na又はKを表す。R11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を表し、4つのR11は、互いに同一であるか相異なる。
は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、水酸基、シアノ基又はニトロ基を表す。
mは、0〜2の整数を表す。mが2の場合、2つのRは互いに同一であるか相異なる。
nは、0〜3の整数を表す。
pは、0〜3の整数を表す。pが2以上の場合、同一環上に存在する複数のRは互いに同一であるか相異なる。]
【0008】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、原料の入手が容易なことから、水素原子又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0009】
は、−SOH、−SO、−COH又は−COである。ここで、Mは、N(R11、Na又はKであり、好ましくは+N(R11である。R11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基であり、N(R11の4つのR11のうち、少なくとも2つが炭素数5〜20のアルキル基であることが好ましい。
【0010】
における炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられ、中でも、原料の入手が容易なことから、メチル基であることが好ましい。
【0011】
における炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0012】
11における炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0013】
11における炭素数7〜10のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルブチル基等が挙げられる。
【0014】
mは、0〜2の整数を表す。なかでも原料の入手の観点から、mは0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0015】
nは、0〜3の整数を表す。なかでも原料の入手の観点から、nは1であることが好ましい。
【0016】
pは、0〜3の整数を表す。なかでも原料の入手の観点から、pは0又は1であることが好ましい。
【0017】
化合物(I)のうち、製造が容易であることから式(I’)で表される化合物(以下、化合物(I’)ということがある。)が好ましい。

[式(I’)中、R、R、R、R、m及びnは、それぞれ上記と同じ意味を表す。]
【0018】
化合物(I’)としては、例えば、それぞれ式(I−1)〜式(I−32)で表される化合物等が挙げられる。式(I−1)、式(I−3)、式(I−5)、式(I−7)又は式(I−13)で表される化合物が好ましく、式(I−1)又は式(I−13)で表される化合物がより好ましい。

【0019】

【0020】

【0021】

【0022】

【0023】
次に、化合物(I)のうち化合物(I’)の製造方法について説明する。
【0024】
化合物(I’)の製造方法としては、式(II)

[式(II)中、R、R、R及びmは、それぞれ上記と同じ意味を表す。]
で表される化合物(以下、化合物(II)ということがある。)と、式(III)

[式(III)中、R、n及びpは、それぞれ上記と同じ意味を表す。]
で表される化合物(以下、化合物(III)ということがある。)とを反応させる工程を含む製造方法が挙げられる。
【0025】
かかる反応は、溶媒の存在下で実施することもできるが、収率の点から、実質的に溶媒を用いることなく実施することが好ましい。ここで「実質的に溶媒を用いることなく」とは、化合物(II)と化合物(III)とをともに溶解させて反応場を提供し得るのに十分な量の溶媒を用いないことを意味し、通常、化合物(II)と化合物(III)の使用量の合計に対して1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満の量であることを意味する。
【0026】
前記溶媒としては、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール溶媒;ニトロベンゼン等のニトロ炭化水素溶媒;メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;1−メチル−2−ピロリドン等のアミド溶媒;等が挙げられる。
【0027】
反応温度は、30℃〜180℃が好ましく、80℃〜130℃がより好ましい。反応時間は、1時間〜12時間が好ましく、3時間〜8時間がより好ましい。
【0028】
化合物(III)の使用量は、化合物(II)1モルに対して、好ましくは2モル以上16モル以下であり、より好ましくは2モル以上10モル以下である。
【0029】
反応混合物から目的化合物である化合物(I’)を取得する方法は特に限定されず、公知の種々の手法が採用できる。例えば、反応混合物を酸(例えば、酢酸等)と共に混合し、析出した結晶を濾取することができる。前記酸は、予め酸の水溶液を調製してから、反応混合物を前記水溶液に添加することが好ましい。反応混合物を添加するときの温度は、好ましくは10℃以上50℃以下、より好ましくは20℃以上50℃以下、さらに好ましくは20℃以上30℃以下である。また反応混合物を酸の水溶液に添加後は、同温度で0.5〜2時間程度攪拌することが好ましい。濾取した結晶は、水などで洗浄し、次いで乾燥することが好ましい。また必要に応じて、再結晶などの公知の手法によってさらに精製してもよい。
【0030】
かくして得られた本発明の化合物は、染料として有用である。また、本発明の化合物は、有機溶媒への溶解性が高いことから、特に、液晶表示装置などの表示装置のカラーフィルターに用いられる染料として有用である。
【0031】
本発明の染料は、本発明の化合物を有効成分とする染料である。
本発明の着色組成物は、着色剤(以下「着色剤(A)」という場合がある)として本発明の染料を含み、さらに樹脂(B)を含むことが好ましい。本発明の着色組成物は、さらに重合性化合物(C)、重合開始剤(D)及び溶剤(E)を含むことがより好ましい。
【0032】
着色剤(A)は、本発明の染料のほかに、さらに顔料及び/又は本発明の染料とは異なる染料を含んでいてもよい。
本発明の染料とは異なる染料としては、カラーインデックス(Colour Index)(The Society of Dyers and Colourists 出版)で、ソルベント(Solvent)、アシッド(Acid)、ベーシック(Basic)、リアクティブ(reactive)、ダイレクト(Direct)、ディスパース(Disperse)又はバット(Vat)に分類されている染料等が挙げられる。より具体的には、以下のようなカラーインデックス(C.I.)番号の染料が挙げられるが、これらに限定されない。
C.I.ソルベントイエロー25,79,81,82、83,89;
C.I.アシッドイエロー7,23,25,42,65,76;
C.I.リアクティブイエロー2,76,116;
C.I.ダイレクトイエロー4,28,44,86,132;
C.I.ディスパースイエロー54,76;
C.I.ソルベントオレンジ41,54,56,99;
C.I.アシッドオレンジ56,74,95,108,149,162;
C.I.リアクティブオレンジ16;
C.I.ダイレクトオレンジ26;
C.I.ソルベントレッド24,49,90,91,118,119,122,124,125,127,130,132,160,218;
C.I.アシッドレッド73,91,92,97,138,151,211,274,289;
C.I.アシッドバイオレット102;
C.I.ソルベントグリーン1,5;
C.I.アシッドグリーン3,5,9,25,28;
C.I.ベーシックグリーン1;
C.I.バットグリーン1等。
【0033】
顔料としては、顔料分散レジストに通常用いられる有機顔料又は無機顔料が挙げられる。無機顔料としては、金属酸化物や金属錯塩のような金属化合物が挙げられ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属の酸化物又は複合金属酸化物が挙げられる。また有機顔料及び無機顔料として具体的には、カラーインデックス(Colour Index)(The Society of Dyers and Colourists 出版)で、ピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられる。より具体的には、以下のようなカラーインデックス(C.I.)番号の顔料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
C.I.ピグメントイエロー20、24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173及び180;
C.I.ピグメントオレンジ13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65及び71;
C.I.ピグメントレッド9、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、215、216、224、242、254、255及び264;
C.I.ピグメントバイオレット14、19、23、29、32、33、36、37及び38;
C.I.ピグメントグリーン7、10、15、25、36、47及び58等。
【0035】
着色剤(A)の含有量は、着色組成物中の固形分に対して、好ましくは5〜60質量%である。ここで、固形分とは、着色組成物中の、溶剤を除く成分の合計をいう。
着色剤(A)中に含まれる本発明の染料の含有量は、好ましくは3〜100質量%である。
本発明の染料とは異なる染料、及び顔料は、それぞれ単独でも2種以上を組み合わせて本発明の染料と共に用いてもよい。
【0036】
樹脂(B)としては、特に限定されるものではなく、どのような樹脂を用いてもよい。樹脂(B)は、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸から導かれる構造単位を含む樹脂であることがより好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
【0037】
樹脂(B)としては、具体的には、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート共重合体、メタクリル酸/スチレン/ベンジルメタクリレート/N−フェニルマレイミド共重合体、メタクリル酸/スチレン/グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0038】
樹脂(B)のポリスチレン換算重量平均分子量は、5,000〜35,000が好ましく、より好ましくは6,000〜30,000である。
樹脂(B)の酸価は、50〜150が好ましく、より好ましくは60〜135である。
樹脂(B)の含有量は、着色組成物の固形分に対して、好ましくは7〜65質量%であり、より好ましくは13〜60質量%である。
【0039】
重合性化合物(C)は、重合開始剤(D)から発生した活性ラジカル、酸等によって重合しうる化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、重合性のエチレン性不飽和結合を有する化合物等が挙げられる。
【0040】
前記の重合性化合物(C)としては、重合性基を3個以上有する光重合性化合物であることが好ましい。重合性基を3以上有する光重合性化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。前記の重合性化合物(C)は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性化合物(C)の含有量は、着色組成物の固形分に対して、5〜65質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜60質量%である。
【0041】
前記の重合開始剤(D)としては、活性ラジカル発生剤、酸発生剤等が挙げられる。活性ラジカル発生剤は熱又は光の作用によって活性ラジカルを発生する。前記の活性ラジカル発生剤としては、アルキルフェノン化合物、チオキサントン化合物、トリアジン化合物、オキシム化合物等が挙げられる。
前記のアルキルフェノン化合物としては、例えば、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0042】
前記のチオキサントン化合物としては、例えば、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。
【0043】
前記のトリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0044】
前記のオキシム化合物としては、例えば、O−アシルオキシム化合物が挙げられ、その具体例としては、N−ベンゾイルオキシ−1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1−オン−2−イミン、N−ベンゾイルオキシ−1−(4−フェニルスルファニルフェニル)オクタン−1−オン−2−イミン、N−アセトキシ−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタン−1−イミン、N−アセトキシ−1−[9−エチル−6−{2−メチル−4−(3,3−ジメチル−2,4−ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}−9H−カルバゾール−3−イル]エタン−1−イミン等が挙げられる。
【0045】
また、活性ラジカル発生剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物等を用いてもよい。
【0046】
前記の酸発生剤としては、例えば、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムp−トルエンスルホナート、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムp−トルエンスルホナート、4−アセトキシフェニル・メチル・ベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のオニウム塩類や、ニトロベンジルトシレート類、ベンゾイントシレート類等を挙げることができる。
前記の重合開始剤(D)は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
重合開始剤(D)の含有量は、樹脂(B)及び重合性化合物(C)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは1〜20質量部である。重合開始剤の含有量が、前記の範囲にあると、高感度化して露光時間が短縮され生産性が向上することから好ましい。
【0048】
溶剤(E)としては、例えば、エーテル溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ケトン溶剤、アルコール溶剤、エステル溶剤、アミド溶剤等が挙げられる。
【0049】
前記のエーテル溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0050】
前記の芳香族炭化水素溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。
前記のケトン溶剤としては、例えば、アセトン、2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
前記のアルコール溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0051】
前記のエステル溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0052】
前記のアミド溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
着色組成物における溶剤(E)の含有量は、着色組成物に対して、好ましくは70〜95質量%であり、より好ましくは75〜90質量%である。
【0054】
本発明の着色組成物は、必要に応じて、界面活性剤、充填剤、他の高分子化合物、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、連鎖移動剤等の種々の添加剤を含んでもよい。
【0055】
本発明の化合物は、染料として有用である。モル吸光係数が高く、かつ有機溶媒への高い溶解性を示すことから、特に、液晶表示装置等の表示装置のカラーフィルタに用いられる染料として有用である。
また、本発明の化合物を含む着色組成物は、カラーフィルタをその構成部品の一部として備える表示装置(例えば、公知の液晶表示装置、有機EL装置等)、固体撮像素子等の種々の着色画像に関連する機器に、公知の態様で利用することができる。
【実施例】
【0056】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り、質量基準である。
【0057】
以下の実施例において、化合物の構造は質量分析(LC;Agilent製1200型、MASS;Agilent製LC/MSD型)で確認した。
【0058】
〔実施例1〕
下式(II−1)で表される化合物12.0部とN−メチル−2−ピロリドン60.0部とピペリジン(東京化成工業(株)製)12.6部とを混合し、得られた混合物を60℃で5時間攪拌した。上記の反応液を室温まで冷却後、水600部、35%塩酸100部の混合液中に添加し室温で1時間攪拌した。析出した結晶を吸引濾過の残渣として取得後乾燥し、式(I−1)で表される化合物12.4部を得た。収率は83%であった。

【0059】
式(I−1)で表される化合物の同定
(質量分析)イオン化モード=ESI+: m/z= [M+H] 503.4
Exact Mass: 502.2
【0060】
〔実施例2〕
式(II−1)で表される化合物12.0部とN−メチル−2−ピロリドン60.0部と1−メチルピペリジン(東京化成工業(株)製)14.7部とを混合し、得られた混合物を60℃で5時間攪拌した。上記の反応液を室温まで冷却後、水600部、35%塩酸100部の混合液中に添加し室温で1時間攪拌した。析出した結晶を吸引濾過の残渣として取得後乾燥し、式(I−13)で表される化合物13.8部を得た。収率は88%であった。

【0061】
式(I−13)で表される化合物の同定
(質量分析)イオン化モード=ESI+: m/z= [M+H] 531.2
Exact Mass: 530.2
【0062】
〈溶解度の測定〉
実施例1及び2でそれぞれ得られた化合物とローダミンB(東京化成工業(株)製)のプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGMEと略す)、エチルラクテート(以下、ELと略す)への溶解度を、以下のようにして求めた。
50mLサンプル管中、下記の割合で化合物と上記溶媒とを混合し、その後、サンプル管を密栓し、30℃で3分間超音波振動機にて振動させた。ついで室温で30分間放置後、吸引濾過し、その残渣を目視で観察した。不溶物が確認できなかった場合、溶解性は良好であると判断して表1に○と記し、不溶物が確認できた場合は、溶解性は不良であると判断して表1に×と記した。
5% 化合物0.1g、 溶媒2g
1% 化合物0.01g、溶媒1g
【0063】
【表1】

【0064】
〔実施例3〕
〈着色組成物の調製〉
(A)着色剤:化合物(I−1):実施例1で得られた化合物 20部
(B−1)樹脂:メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(モル比;30/70;重量平均分子量10700、酸価70mgKOH/g) 70部
(C−1)重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製) 30部
(D−1)光重合開始剤:ベンジルジメチルケタール(イルガキュア(登録商標)651;BASFジャパン社製) 15部
(E−1)溶剤:ジメチルホルムアミド 680部
を混合して着色組成物を得る。
〔実施例4〕
〈着色組成物の調製〉
(A)着色剤:化合物(I−13):実施例2で得られた化合物 20部
(B−1)樹脂:メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(モル比;30/70;重量平均分子量10700、酸価70mgKOH/g) 70部
(C−1)重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製) 30部
(D−1)光重合開始剤:ベンジルジメチルケタール(イルガキュア(登録商標)651;BASFジャパン社製) 15部
(E−1)溶剤:ジメチルホルムアミド 680部
を混合して着色組成物を得る。
【0065】
〔カラーフィルタの作製〕
ガラス上に、上記で得た着色組成物をスピンコート法で塗布し、揮発成分を揮発させる。冷却後、パターンを有する石英ガラス製フォトマスク及び露光機を用いて光照射する。光照射後に、水酸化カリウム水溶液で現像し、オーブンで200℃に加熱してカラーフィルタを得る。
【0066】
〔実施例4〕
実施例3において、(A)着色剤として実施例2で得られた化合物(I−13)を用いる以外は実施例3と同様にして、着色組成物及びカラーフィルタを得る。
【0067】
上記の結果によれば、本発明の化合物は有機溶媒に対して高い溶解度を示すことがわかる。また、当該化合物を含む着色組成物を用いれば、異物の発生が少なく、高品質なカラーフィルタを作製することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の化合物は、有機溶媒への溶解性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物。

[式(I)中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、−SOH、−SO、−COH又は−COを表す。
は、(R11、Na又はKを表す。R11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を表し、4つのR11は、互いに同一であるか相異なる。
は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、水酸基、シアノ基又はニトロ基を表す。
mは、0〜2の整数を表す。mが2の場合、2つのRは互いに同一であるか相異なる。
nは、0〜3の整数を表す。
pは、0〜3の整数を表す。pが2以上の場合、同一環上に存在する複数のRは互いに同一であるか相異なる。]
【請求項2】
式(I’)で表される化合物。

[式(I)中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、−SOH、−SO、−COH又は−COを表す。
は、(R11、Na又はKを表す。R11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を表し、4つのR11は、互いに同一であるか相異なる。
は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基を表す。
mは、0〜2の整数を表す。mが2の場合、2つのRは互いに同一であるか相異なる。
nは、0〜3の整数を表す。
pは、0〜3の整数を表す。pが2以上の場合、同一環上に存在する複数のRは互いに同一であるか相異なる。]
【請求項3】
及びRが、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
が、−SOH又は−SOである請求項1〜3のいずれか記載の化合物。
【請求項5】
mが、0又は1である請求項1〜4のいずれか記載の化合物。
【請求項6】
nが、1である請求項1〜5のいずれか記載の化合物。
【請求項7】
が、メチル基である請求項1〜6のいずれか記載の化合物。
【請求項8】
pが、0又は1である請求項1〜7のいずれか記載の化合物。
【請求項9】
式(II)

[式(I)中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、−SOH、−SO、−COH又は−COを表す。
は、(R11、Na又はKを表す。R11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を表し、4つのR11は、互いに同一であるか相異なる。
mは、0〜2の整数を表す。mが2の場合、2つのRは互いに同一であるか相異なる。]
で表される化合物と、式(III)

[式(III)中、
nは0〜3の整数を表す。
は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基を表す。
pは、0〜3の整数を表す。pが2以上の場合、複数のRは互いに同一であるか相異なる。]
で表される化合物とを反応させる工程を含む式(I’)

[式(I’)中、R、R、R、R、m及びnは、それぞれ上記と同じ意味を表す。]
で表される化合物の製造方法。
【請求項10】
式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物とを、実質的に溶媒を用いることなく反応させる請求項9記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−53099(P2013−53099A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192481(P2011−192481)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】