説明

化合物

【課題】新規のフルオレン誘導体を提供することにより、発光効率の高い発光素子を提供する。
【解決手段】式(101)で表されるフルオレン誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン誘導体、発光素子、発光装置、電子機器、及び照明装置に関する

【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence)を利用
した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は、一対
の電極間に発光性の物質を含む層を挟んだものである。この素子に電圧を印加することに
より、発光性の物質からの発光を得ることができる。
【0003】
このような発光素子は自発光型であるため、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高
く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として
好適であると考えられている。また、このような発光素子は、薄型軽量に作製できること
も大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
そして、これらの発光素子は膜状に形成することが可能であるため、大面積の素子を形
成することにより、面状の発光を容易に得ることができる。このことは、白熱電球やLE
Dに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、
照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
そのエレクトロルミネッセンスを利用した発光素子は、発光性の物質が有機化合物であ
るか、無機化合物であるかによって大別できるが、発光性の物質に有機化合物を用いる有
機ELの場合、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子およびホール
(正孔)がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、電
子およびホールの両方が発光性の有機分子中で生成した状態である励起状態から、これら
キャリア(電子およびホール)が再結合して基底状態に戻ることで発光する。
【0006】
このようなメカニズムから、このような発光素子は電流励起型の発光素子と呼ばれる。
なお、有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態
が可能であり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐光と呼
ばれている。
【0007】
また、先程述べた、電流励起されたキャリアの再結合による発光の他に、これら励起エ
ネルギーが他の有機化合物に移動することで、この有機化合物が励起し発光する方法もあ
る。これは一般的に有機ELにおいては、発光層中に発光材料を分散(ドープ)させて用
いる素子構造である。分散される材料をホスト、分散している方をドーパントと言う。こ
れは、発光させたい有機分子が、高濃度だとスタッキング相互作用を起こし発光効率が悪
くなってしまう場合(濃度消光)に、これを解消するためにこの有機分子をホストにドー
プしスタックを抑制することで高効率化させるものである。この時、電流励起によって励
起したホストから、ドーパントへその励起エネルギーが移動することでドーパントが発光
する。
【0008】
この励起エネルギー移動は、高い励起エネルギーから低いエネルギーへの移動でないと
起こらない。そのため、ホスト材料は励起状態の高い材料が望ましい。
【0009】
また有機ELは複数の層で構成されているが、発光層と電極間にはキャリア輸送層を設
けるのが一般的である。その理由の一つとして、発光層中の励起エネルギーが電極へとエ
ネルギー移動して消光してしまうのを防ぐためであることが挙げられる。また発光層と隣
接するそのキャリア移動層も、発光層の励起エネルギーが移動してしまわない様に、その
キャリア移動層は発光層よりも励起エネルギーのより高い材料(励起子ブロック材料)が
望ましい。
【0010】
また有機ELにおいて、発光層と電極間にキャリア注入層、キャリア輸送層を設けるも
う一つの理由として、隣接する層間のキャリア注入障壁を調節するためであることが挙げ
られる。そのことでより発光層で効率よく再結合させることが出来る。
【0011】
このような発光素子に関しては、その素子特性を向上させる上で、物質に依存した問題
が多く、これらを克服するために素子構造の改良や物質開発等が行われている(例えば、
特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第08/062636号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一態様は、正孔輸送性の高い物質として、新規のフルオレン誘導体を提供する
ことを目的の一とする。また、新規のフルオレン誘導体を発光素子に適用することにより
、発光効率の高い発光素子を提供することを目的の一とする。本発明の一態様は、駆動電
圧が低く、消費電力が少ない発光装置、電子機器、及び照明装置を提供することを目的の
一とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、下記一般式(G1)で表されるフルオレン誘導体である。
【0015】
【化1】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換
又は無置換のフェニル基、または置換又は無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また
、α〜αは、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数6〜12のアリーレン基のい
ずれかを表す。また、Ar、Arは、それぞれ独立に、環を形成する炭素数が6〜1
3のアリール基のいずれかを表し、Arは、炭素数1〜6のアルキル基、または置換又
は無置換の炭素数6〜12のアリール基を表す。J、k、m、nは、それぞれ独立に0ま
たは1である。ただしJおよびkの少なくともいずれかは1である。)
【0016】
また、上記構成において、一般式(G1)中のR〜Rは、それぞれ独立に、下記構
造式(R−1)〜構造式(R−9)で表されるいずれか一であることを特徴とする。
【0017】
【化2】

【0018】
また、上記構成において、一般式(G1)中のα〜αは、それぞれ独立に、構造式
(α−1)〜構造式(α−3)で表されるいずれか一であることを特徴とする。
【0019】
【化3】

【0020】
また、上記構成において、一般式(G1)中のAr、Arは、それぞれ独立に、構
造式(Ar−1)〜構造式(Ar−6)で表されるいずれか一であり、Arは、構造式
(Ar3−1)〜構造式(Ar3−8)で表されるいずれか一であることを特徴とする。
【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
また、本発明の一態様は、下記構造式(101)、(151)、(118)で表される
いずれか一であることを特徴とする。
【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
また、本発明の一態様は、一対の電極間にEL層を有する発光素子であって、EL層は
、発光層と正孔輸送層を少なくとも有し、正孔輸送層は、上記記載のフルオレン誘導体を
含むことを特徴とする。
【0028】
さらに、本発明の一態様は、上記に記載の発光素子を用いて形成されたことを特徴とす
る発光装置である。また、上記に記載の発光装置を用いて形成されたことを特徴とする電
子機器である。また、上記に記載の発光装置を用いて形成された照明装置である。
【0029】
また、本発明の発光装置の一態様は、上記発光素子と、発光素子の発光を制御する制御
手段とを有する。なお、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバ
イス、もしくは光源(照明装置を含む)を含む。また、パネルにコネクター、例えばFP
C(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape
Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrie
r Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリン
ト配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glas
s)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むもの
とする。
【0030】
また、本発明の発光装置の一態様を表示部に用いた電子機器も本発明の範疇に含めるも
のとする。したがって、本発明の電子機器の一態様は、表示部を有し、表示部は、上述し
た発光装置を備えたことを特徴とする。
【0031】
また、本発明の発光装置の一態様を用いた照明装置も本発明の範疇に含めるものとする
。したがって、本発明の照明装置の一態様は上述した発光装置を備えたことを特徴とする

【発明の効果】
【0032】
本発明のフルオレン誘導体は、高い正孔輸送性を示すことから、主に発光素子のEL層
を構成する正孔輸送層に用いることができる。また、本発明のフルオレン誘導体を正孔輸
送層に用いて発光素子を形成することにより、発光効率の高い発光素子を形成することが
できる。
【0033】
さらにこの発光素子を用いることにより、消費電力が少なく、駆動電圧の低い発光装置
、電子機器、及び照明装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】発光素子を説明する図。
【図2】発光素子を説明する図。
【図3】発光素子を説明する図。
【図4】発光装置を説明する図。
【図5】発光装置を説明する図。
【図6】電子機器を説明する図。
【図7】電子機器を説明する図。
【図8】照明装置を説明する図。
【図9】照明装置を説明する図。
【図10】4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミンの1H NMRチャートを示す図。
【図11】4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミンの吸収スペクトルを示す図。
【図12】4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミンの発光スペクトルを示す図。
【図13】4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミンのCV測定結果を示す図。
【図14】4−フェニル−4’−[4−(9−フェニルフルオレン−9−イル)フェニル]トリフェニルアミンの1H NMRチャートを示す図。
【図15】4−フェニル−4’−[4−(9−フェニルフルオレン−9−イル)フェニル]トリフェニルアミンの吸収スペクトルを示す図。
【図16】4−フェニル−4’−[4−(9−フェニルフルオレン−9−イル)フェニル]トリフェニルアミンの発光スペクトルを示す図。
【図17】4−フェニル−4’−[4−(9−フェニルフルオレン−9−イル)フェニル]トリフェニルアミンのCV測定結果を示す図。
【図18】実施例の発光素子を説明する図。
【図19】比較発光素子1及び発光素子2の電流密度−輝度特性を示す図。
【図20】比較発光素子1及び発光素子2の電圧−輝度特性を示す図。
【図21】比較発光素子1及び発光素子2の輝度−電流効率特性を示す図。
【図22】発光素子3の電流密度−輝度特性を示す図。
【図23】発光素子3の電圧−輝度特性を示す図。
【図24】発光素子3の輝度−電流効率特性を示す図。
【図25】発光素子3の信頼性試験の結果を示す図。
【図26】発光素子4及び発光素子5の電流密度−輝度特性を示す図。
【図27】発光素子4及び発光素子5の電圧−輝度特性を示す図。
【図28】発光素子4及び発光素子5の輝度−電流効率特性を示す図。
【図29】発光素子4及び発光素子5の信頼性試験の結果を示す図。
【図30】発光素子6及び比較発光素子7の電流密度−輝度特性を示す図。
【図31】発光素子6及び比較発光素子7の電圧−輝度特性を示す図。
【図32】発光素子6及び比較発光素子7の輝度−電流効率特性を示す図。
【図33】発光素子6及び比較発光素子7の発光スペクトルを示す図。
【図34】発光素子8〜発光素子10の電流密度−輝度特性を示す図。
【図35】発光素子8〜発光素子10の電圧−輝度特性を示す図。
【図36】発光素子8〜発光素子10の輝度−電流効率特性を示す図。
【図37】発光素子8〜発光素子10の信頼性試験の結果を示す図。
【図38】発光素子11及び比較発光素子12の電流密度−輝度特性を示す図。
【図39】発光素子11及び比較発光素子12の電圧−輝度特性を示す図。
【図40】発光素子11及び比較発光素子12の輝度−電流効率特性を示す図。
【図41】発光素子11及び比較発光素子12の発光スペクトルを示す図。
【図42】発光素子13の電流密度−輝度特性を示す図。
【図43】発光素子13の電圧−輝度特性を示す図。
【図44】発光素子13の輝度−電流効率特性を示す図。
【図45】4−フェニル−3’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミンの1H NMRチャートを示す図。
【図46】4−フェニル−3’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミンの吸収スペクトルを示す図。
【図47】4−フェニル−3’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミンの発光スペクトルを示す図。
【図48】発光素子14及び比較発光素子15の電流密度−輝度特性を示す図。
【図49】発光素子14及び比較発光素子15の電圧−輝度特性を示す図。
【図50】発光素子14及び比較発光素子15の輝度−電流効率特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細
を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示
す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様であるフルオレン誘導体について説明する。
【0037】
本発明の一態様であるフルオレン誘導体は、一般式(G1)で表されるフルオレン誘導
体である。
【0038】
【化9】

【0039】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換
又は無置換のフェニル基、または置換又は無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また
、α〜αは、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数6〜12のアリーレン基のい
ずれかを表す。また、Ar、Arは、それぞれ独立に、環を形成する炭素数が6〜1
3のアリール基のいずれかを表し、Arは、炭素数1〜6のアルキル基、または置換又
は無置換の炭素数6〜12のアリール基を表す。J、k、m、nは、それぞれ独立に0ま
たは1である。ただしJおよびkの少なくともいずれかは1である。)
【0040】
なお、R〜R、α〜α、Ar、Ar、Arが置換基を有する場合、その置
換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基のようなアル
キル基や、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基のようなアリール基が挙げられる。ま
た置換基を複数有していても良い。例えば、メチルフェニル基やジメチルフェニル基、t
ert−ブチルフェニル基、ジ−tert−ブチルフェニル基などが挙げられる。また該
置換基同士は互いに連結し、環を形成していても良い(例えば、ビフェニル基がAr
たはArのフルオレニル基と環を形成して9,9’−スピロフルオレニル基となったも
のや、ヘキシル基が環を形成したシクロヘキシル基が挙げられる)。
【0041】
また、一般式(G1)において、アルキル基を用いると、有機溶剤への溶解性が向上す
ると考えられる。そのため、この材料を用いて湿式で素子を作成する場合、アルキル基の
ある材料を用いると素子の作成が容易となり、好ましい。
【0042】
一般式(G1)において、R〜Rは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基
、ペンチル基、ヘキシル基のようなアルキル基や、置換又は無置換のフェニル基、置換又
は無置換のビフェニル基のようなアリール基が挙げられる。具体的には、構造式(R−1
)〜(R−9)に示す基が挙げられる。
【0043】
【化10】

【0044】
一般式(G1)において、α〜αは、置換又は無置換のフェニレン基が挙げられる
。具体的には、構造式(α−1)〜(α−3)に示す基が挙げられる。
【0045】
【化11】

【0046】
一般式(G1)において、Ar、Arは、置換又は無置換のフェニル基、置換又は
無置換のビフェニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のフルオレニル基
、置換又は無置換のスピロフルオレニル基のようなアリール基が挙げられる。具体的には
、構造式(Ar−1)〜構造式(Ar−6)に示す基が挙げられる。下記(Ar−4)は
、ビフェニル基がArまたはArのフルオレニル基と環を形成して9,9’−スピロ
フルオレニル基となったものである。
【0047】
このとき(Ar−2)や(Ar−3)のように、縮合環基を用いると、キャリア輸送性が
より向上すると考えられ、好ましい。またこの時、これら縮合環基と窒素原子との間にあ
るαまたはαは1であると、分子のバンドギャプ(Bg)がより広く保て、好ましい
。また(Ar−5)のように、シグマ結合を介した結合を用いた構造は、窒素原子からの
共役が広がらりづらく、BgやT1準位が高い。そのため、この材料を、より短波長な発
光素子中での、発光層に隣接した層の材料、または、発光層へのドープ材料として用いる
ことができると考えられ、好ましい。また、(Ar−2)や(Ar−3)や(Ar−4)
の様な分子量が大きく剛直な縮合環基を用いると、ガラス転移点(Tg)等の熱物性が向
上し、好ましい
【0048】
【化12】

【0049】
一般式(G1)において、Arは、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、
ヘキシル基のようなアルキル基や、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のビフ
ェニル基のようなアリール基が挙げられる。具体的には、構造式(Ar3−1)〜構造式
(Ar3−8)に示す基が挙げられる。
【0050】
【化13】

【0051】
一般式(G1)に示されるフルオレン誘導体の具体例としては、構造式(100)〜構
造式(123)、構造式(150)〜構造式(173)に示されるフルオレン誘導体を挙
げることができる。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0052】
【化14】

【0053】
【化15】

【0054】
【化16】

【0055】
【化17】

【0056】
【化18】

【0057】
【化19】

【0058】
【化20】

【0059】
【化21】

【0060】
本発明の一態様であるフルオレン誘導体の合成方法としては、種々の反応を適用するこ
とができる。例えば、以下に示す合成反応を行うことによって、一般式(G1)で表され
る本発明の一態様であるフルオレン誘導体を合成することができる。なお、本発明の一態
様であるフルオレン誘導体の合成方法は、以下の合成方法に限定されない。
【0061】
<一般式(G1)で表されるフルオレン誘導体の合成方法1>
スキーム(A−1)に示すように、1−ハロゲン化ビフェニル誘導体(a1)をリチオ
化またはグリニア試薬化としたのち、ベンゾイル誘導体(a2)と反応させ、これを脱O
Hさせることで、ハロゲン化アリールフルオレン誘導体(a3)が得られる。
【0062】
【化22】

【0063】
また前記スキーム(A−1)での、ハロゲン基を有するアリール化合物を活性化させた
後、ベンゾイル誘導体と反応させ、フェノール誘導体とした後、酸を加えて脱OHさせる
ことで、フルオレン誘導体にすることができる。
【0064】
その活性化の一例としては、アルキルリチウム試薬でリチオ化する反応や、活性化マグ
ネシウムでグリニア試薬化する反応を用いることができる。アルキルリチウムとしてはn
−ブチルリチウムや、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム等が挙げられる。酸と
しては塩酸などを用いる事ができる。溶媒としてはジエチルエーテルなどのエーテル類や
テトラヒドロフラン(THF)を用いることができ、脱水溶媒を用いる。
【0065】
また、スキーム(A−2)に示すように、ハロゲン化アレーン誘導体(a4)とアリール
アミン誘導体(a5)とをカップリングさせることで、ジアリールアミン誘導体(a6)
が得られる。
【0066】
【化23】

【0067】
そして、スキーム(A−3)に示すように、ハロゲン化アリールフルオレン誘導体(a3
)とジアリールアミン誘導体(a6)とをカップリングさせることで、上記一般式(G1
)で表されるフルオレン誘導体が得られる。
【0068】
【化24】

【0069】
なお上記スキーム(A−1)〜(A−3)中のX、Xは、ハロゲンを表し、反応性
の高さから、好ましくは臭素またはヨウ素、より好ましくはヨウ素を表す。
【0070】
また前記スキーム(A−2)、(A−3)において、ハロゲン基を有するアリール化合
物と、アミンを有するアリール化合物(1級アリールアミン化合物、2級アリールアミン
化合物)とのカップリング反応は様々な反応条件があるが、その一例として、塩基存在下
にて金属触媒を用いた合成方法を適用することができる。
【0071】
前記スキーム(A−2)、(A−3)において、ハートウィッグ・ブッフバルト反応を
用いる場合について示す。金属触媒としてはパラジウム触媒を用いることができ、前記パ
ラジウム触媒としてはパラジウム錯体とその配位子の混合物を用いることができる。前記
パラジウム錯体としては、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラ
ジウム(II)等が挙げられる。また前記配位子としては、トリ(tert−ブチル)ホ
スフィンや、トリ(n−ヘキシル)ホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィンや、1
,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(略称:DPPF)等が挙げられる。ま
た、塩基として用いることができる物質としては、ナトリウム tert−ブトキシド等
の有機塩基や、炭酸カリウム等の無機塩基等を挙げることができる。また、前記反応は溶
液中で行うことが好ましく、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、ベ
ンゼン等が挙げられる。ただし、前記用いることができる触媒およびその配位子、塩基、
溶媒はこれらに限られるものでは無い。また前記反応は窒素やアルゴンなど不活性雰囲気
下で行うことが好ましい。
【0072】
前記スキーム(A−2)、(A−3)において、ウルマン反応を用いる場合について示
す。金属触媒としては銅触媒を用いることができ、ヨウ化銅(I)、又は酢酸銅(II)
が挙げられる。また、塩基として用いることができる物質としては、炭酸カリウム等の無
機塩基が挙げられる。また、前記反応は溶液中で行うことが好ましく、用いることができ
る溶媒としては、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミ
ジノン(DMPU)、トルエン、キシレン、ベンゼン等が挙げられる。ただし、前記用い
ることができる触媒、塩基、溶媒はこれらに限られるものでは無い。また前記反応は窒素
やアルゴンなど不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0073】
なお、ウルマン反応では、反応温度が100℃以上の方がより短時間かつ高収率で目的
物が得られるため、DMPU、キシレンなど沸点の高い溶媒を用いることが好ましい。ま
た、反応温度は150℃以上より高い温度が更に好ましいため、より好ましくはDMPU
を用いる。
【0074】
<一般式(G1)で表されるフルオレン誘導体の合成方法2>
また例えば、スキーム(B−1)で示すように、ハロゲン化フルオレン誘導体(a3)
とアリールアミン誘導体(a5)とをカップリングさせることで、フルオレニルジアリー
ルアミン誘導体(b1)が得られる。
【0075】
【化25】

【0076】
そして、スキーム(B−2)で示すように、フルオレニルジアリールアミン誘導体(b
1)とハロゲン化アレーン誘導体(a4)とをカップリングさせることで、上記一般式(
G1)で表されるフルオレン誘導体が得られる。
【0077】
【化26】

【0078】
なお上記スキーム(B−1)、(B−2)中のX、Xは、ハロゲンを表し、反応性
の高さから、好ましくは臭素またはヨウ素、より好ましくはヨウ素を表す。
【0079】
前記スキーム(B−1)、(B−2)において、ハロゲン基を有するアリール化合物と
、アミンを有するアリール化合物(1級アリールアミン化合物、2級アリールアミン化合
物)とのカップリング反応は様々な反応条件があるが、その一例として、塩基存在下にて
金属触媒を用いた合成方法を適用することができる。
【0080】
また、前記スキーム(B−1)、(B−2)において、スキーム(A−2)、(A−3
)と同様に、ハートウィッグ・ブッフバルト反応、ウルマン反応を用いることができる。
【0081】
<一般式(G1)で表されるフルオレン誘導体の合成方法3>
また例えば、スキーム(C−1)に示すように、ハロゲン化アリールフルオレン誘導体
(c1)をリチオ化またはグリニア試薬化としたのち、有機ボロン酸と反応させることで
、フルオレニルアリールボロン酸誘導体(c2)が得られる(なお、Jは1を表す)。
【0082】
【化27】

【0083】
また、スキーム(C−2)に示すように、トリアリールアミン誘導体(c3)をハロゲン
化することで、ハロゲン化トリアリールアミン誘導体(c4)が得られる。
【0084】
【化28】

【0085】
そして、スキーム(C−3)に示すように、フルオレニルアリールボロン酸誘導体(c
2)とハロゲン化トリアリールアミン誘導体(c4)とをカップリングさせることで、上
記一般式(G1)で表されるフルオレン誘導体が得られる。
【0086】
【化29】

【0087】
なお、スキーム(C−2)および(C−3)でのkは1を表す。
【0088】
なお上記スキーム(C−1)〜(C−3)中のX、Xは、ハロゲンを表し、反応性
の高さから、好ましくは臭素またはヨウ素、より好ましくはヨウ素を表す。
【0089】
また前記スキーム(C−1)での、ハロゲン基を有するアリール化合物を、ボロン酸基
(または有機ホウ素基)を有するアリール化合物にする反応は様々な条件がある。なおス
キーム中R〜Rは水素またはアルキル基を示す。
【0090】
その一例としては、アルキルリチウム試薬でリチオ化した後、ホウ素試薬を加えてボロ
ン酸化、または有機ホウ素化することができる。アルキルリチウム試薬としてはn−ブチ
ルリチウム、メチルリチウム等を用いることができる。ホウ素試薬としてはホウ酸トリメ
チル、ホウ酸イソプロピルなどを用いることができる。溶媒としてはジエチルエーテルな
どのエーテル類やテトラヒドロフラン(THF)を用いることができ、脱水溶媒を用いる
。また、リチオ化した試薬の代わりに活性化マグネシウムでグリニア試薬とし、これを用
いることもできる。
【0091】
また前記スキーム(C−2)での、ハロゲン化反応は様々な反応条件があるが、極性溶
媒下でハロゲン化剤を用いた反応を用いることができる。前記ハロゲン化剤としては、N
−ブロモこはく酸イミド(NBS)やN−ヨードこはく酸イミド(NIS)、臭素、ヨウ
素、ヨウ化カリウム等を用いることができる。ハロゲン化剤として臭化物を用いると、よ
り安価に合成できるため好ましい。またハロゲン化剤としてヨウ化物を用いると、生じた
目的物を原料として用いた反応を次に行う場合(ヨウ素置換された部分がより活性が高い
ため)より反応が容易に進むため好ましい。なお、スキーム(C−2)でのkは1を表し
、ハロゲン化はアミンに対してパラ位に特異的に起こる。
【0092】
なお前記スキーム(C−3)での、ハロゲン基を有するアリール化合物と、ボロン酸を
有するアリール化合物(アリールボロン酸)とのカップリング反応は様々な反応条件があ
るが、その一例として、塩基存在下にて金属触媒を用いた合成方法を適用することができ
る。
【0093】
前記スキーム(C−3)において、鈴木・宮浦反応を用いる場合について示す。金属触
媒としてはパラジウム触媒を用いることができ、前記パラジウム触媒としてはパラジウム
錯体とその配位子の混合物を用いることができる。前記パラジウム錯体としては、酢酸パ
ラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(ト
リフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド等が挙げられる。また前記配位
子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシ
クロヘキシルホスフィン等が挙げられる。また前記塩基として用いることができる物質と
しては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム等の無機塩基
等が挙げられる。また、当該反応は溶液中で行うことが好ましく、用いる事ができる溶媒
としては、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶
媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベ
ンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、エチレン
グリコールジメチルエーテル等のエーテル類と水の混合溶媒等が挙げられる。ただし、前
記用いることができる触媒、塩基、溶媒はこれらに限られるものでは無い。また前記スキ
ームにおいて、アリールボロン酸の代わりに、アリール誘導体の有機ホウ素化合物や、ア
リールアルミニウム、アリールジルコニウム、アリール亜鉛、アリールスズ化合物等を用
いても良い。また前記反応は窒素やアルゴンなど不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0094】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した本発明の一態様であるフルオレン誘導体を
正孔輸送層に用いて形成した発光素子について説明する。
【0095】
本実施の形態における発光素子は、陽極として機能する第1の電極、陰極として機能す
る第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間に設けられたEL層とから構成され
ている。なお、本実施の形態における発光素子は、第1の電極の方が第2の電極よりも電
位が高くなるように、それぞれに電圧を印加したときに、発光が得られるものとする。
【0096】
また、本実施の形態における発光素子のEL層は、第1の電極側から第1の層(正孔注
入層)、第2の層(正孔輸送層)、第3の層(発光層)、第4の層(電子輸送層)、第5
の層(電子注入層)を含む構成とする。
【0097】
本実施の形態における発光素子の構造を、図1を用いて説明する。基板101は、発光
素子の支持体として用いられる。基板101としては、例えばガラス、石英、プラスチッ
クなどを用いることができる。
【0098】
なお、上記基板101は、本発明の一態様である発光素子を利用する製品である発光装
置あるいは電子機器中に残存させてもよいが、最終製品中に残存せず発光素子の作製工程
における支持体としての機能のみを有していてもよい。
【0099】
基板101上に形成される第1の電極102には、仕事関数の大きい(具体的には4.
0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが
好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium T
in Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化
インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングス
テン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。この他、金(Au)、白金
(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo
)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)
、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。但し、本発明におい
ては、第1の電極102と接して形成されるEL層103のうちの第1の層111は、第
1の電極102の仕事関数に関係なく正孔(ホール)注入が容易である複合材料を用いて
形成される為、電極材料として可能な材料(例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、お
よびこれらの混合物、その他、元素周期表の第1族または第2族に属する元素も含む)で
あれば、あらゆる公知の材料を用いることができる。
【0100】
これらの材料は、通常スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム−
酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲ
ットや、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに
対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲ
ットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。その他、真空蒸着
法、塗布法、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
【0101】
また、第1の電極102上に形成されるEL層103のうち、第1の電極102に接し
て形成される第1の層111に用いる材料として、後述する複合材料を含む層を用いた場
合には、第1の電極102に用いる材料は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合
金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。例えば、アル
ミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムを含む合金(AlSi)等も用いることが
できる。
【0102】
また、仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、
すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、マグネシウム(Mg)
、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、これらを含む合
金(MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類
金属、およびこれらを含む合金等を用いることもできる。
【0103】
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらを含む合金を用いて第1の電極
102を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。さら
に、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることがで
きる。
【0104】
第1の電極102上に形成されるEL層103には、公知の材料を用いることができ、
低分子系化合物および高分子系化合物のいずれを用いることもできる。なお、EL層10
3を形成する物質には、有機化合物のみから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含
む構成も含めるものとする。
【0105】
EL層103は、正孔注入性の高い物質を含んでなる正孔注入層、正孔輸送性の高い物
質を含んでなる正孔輸送層、発光性物質からなる発光層、電子輸送性の高い物質を含んで
なる電子輸送層、電子注入性の高い物質を含んでなる電子注入層などを適宜組み合わせて
積層することにより形成される。
【0106】
なお、図1(A)に示すEL層103は、第1の電極102側から第1の層(正孔注入
層)111、第2の層(正孔輸送層)112、第3の層(発光層)113、第4の層(電
子輸送層)114、および第5の層(電子注入層)115の順に積層されている。
【0107】
正孔注入層である第1の層111は、正孔注入性の高い物質を含む正孔注入層である。
正孔注入性の高い物質としては、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、
レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸
化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いること
ができる。この他、低分子の有機化合物としては、フタロシアニン(略称:HPc)、
銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOP
c)等のフタロシアニン系の化合物が挙げられる。なお、実施の形態1で示した本発明の
一態様であるフルオレン誘導体も同様に用いることができる。
【0108】
また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミ
ノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−
メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、
4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェ
ニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)
−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNT
PD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルア
ミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イ
ル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3
,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9
−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−
(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:
PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等も挙げられる。なお、実施の形態1で示した
本発明の一態様であるフルオレン誘導体も同様に用いることができる。
【0109】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもでき
る。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリ
フェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェ
ニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド
](略称:PTPDMA)ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビ
ス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられ
る。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)
(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PS
S)等の酸を添加した高分子化合物を用いることもできる。
【0110】
また、第1の層111として、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させ
た複合材料を用いることができる。なお、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を
含有させたものを用いることにより、電極の仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶ
ことができる。つまり、第1の電極102として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事
関数の小さい材料を用いることができる。これらの複合材料は、正孔輸送性の高い物質と
アクセプター物質とを共蒸着することにより形成することができる。なお、本明細書中に
おいて、複合とは、単に2つの材料を混合させるだけでなく、複数の材料を混合すること
によって材料間での電荷の授受が行われ得る状態になることを言う。
【0111】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳
香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化
合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の
高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移
動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であ
れば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機
化合物を具体的に列挙する。
【0112】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、MTDATA、TDAT
A、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPC
N1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称
:NPBまたはα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフ
ェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)等の芳香族ア
ミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3
,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−
[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA
)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェ
ニルベンゼン等のカルバゾール誘導体を挙げることができる。なお、実施の形態1で示し
た本発明の一態様であるフルオレン誘導体も複合材料に用いることができる。
【0113】
また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t
−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、
9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−
tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−
BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10
−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン
(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセ
ン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−ter
t−ブチル−アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラ
セン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン等の
芳香族炭化水素化合物を挙げることができる。
【0114】
さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン
、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10
,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビ
ス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、ア
ントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−
ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル
)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル
)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物も挙げること
ができる。
【0115】
また、アクセプター性物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6
−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や
、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に
属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、
酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レ
ニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定
であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0116】
なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合
物と、上述したアクセプター性物質を用いて複合材料を形成し、第1の層111に用いて
もよい。なお、実施の形態1で示した本発明の一態様であるフルオレン誘導体も上述した
アクセプター性物質と組み合わせて複合材料を形成し、第1の層111に用いることがで
きる。
【0117】
正孔輸送層である第2の層112は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。なお、本
実施の形態における第2の層112には、実施の形態1で説明した本発明の一態様である
フルオレン誘導体を用いることとする。上記本発明の一態様であるフルオレン誘導体は、
広いバンドギャップを持つため、このフルオレン誘導体で形成させた第2の層112は、
隣接した第3の層113(発光層)で生じた励起子エネルギーを吸収しづらく、励起子を
効率的に発光層に閉じこめることができる。そのため、高効率な発光素子が得られる。
【0118】
また、第1の層111と第2の層112の両方に、実施の形態1で説明した本発明の一
態様であるフルオレン誘導体を用いることもできる。この場合、素子の作製が簡便となり
、材料利用効率を向上させることができる。また、第1の層111と第2の層112のエ
ネルギーダイアグラムが同じか近い状態になる為、第1の層111と第2の層112との
間におけるキャリアの移動を容易にすることができる。
【0119】
第3の層113は、発光性の高い物質を含む発光層である。第3の層113には、次に
挙げる低分子の有機化合物を用いることができる。なお、実施の形態1で示した本発明の
一態様であるフルオレン誘導体も発光性を示し、発光材料としても用いることができる。
【0120】
発光物質としては、例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物
を用いることができる。
【0121】
発光層113に用いることができる蛍光性物質としては、例えば、青色系の発光物質
として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’
−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カル
バゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン
(略称:YGAPA)などが挙げられる。
【0122】
緑色系の発光物質としては、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9
−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,1
0−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル
−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフ
ェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミ
ン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)
−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略
称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[
4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−ア
ミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン
(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。
【0123】
黄色系の発光物質としては、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−
イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。さらに、
赤色系の発光物質として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テト
ラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N
,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオラン
テン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0124】
また、発光層113に用いることができる燐光性化合物としては、例えば、青色系の発
光材料として、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’
]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビ
ス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(I
II)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2−[3’,5’−ビス(トリフル
オロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(
略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェ
ニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:F
Ir(acac))などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、トリス(2−フ
ェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビ
ス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート
(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイ
ミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)(a
cac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナー
ト(略称:Ir(bzq)(acac))などが挙げられる。また、黄色系の発光材料
として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(
III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(
4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセ
トナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾ
チアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(b
t)(acac))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−
フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビ
ス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート
(略称:Ir(pq)(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料とし
て、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリ
ジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス
(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナー
ト(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビ
ス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fd
pq)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−2
1H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げ
られる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(I
II)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,
3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu
(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオ
ロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA
(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度
間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0125】
また、第3の層113は、上述した発光性の高い物質を他の物質に分散させる構成とし
てもよい。なお、分散させる場合には、分散させる物質(ドーパント)の濃度が、質量比
で全体の20%以下になるようにするのが好ましい。また、発光性の物質を分散させる物
質(ホスト)としては、公知の物質を用いることができるが、発光性の物質(ドーパント
)よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が浅く(絶対値が小さく)、最高被占有軌道準
位(HOMO準位)が深い(絶対値が大きい)物質を用いることが好ましい。またホスト
のバンドギャップ(Bg:HOMO準位とLUMO準位の差)が発光性のドーパントのB
gよりも大きいことが好ましい。またドーパントの発光が蛍光性の場合はS1準位が、燐
光性の場合はT1準位が、ドーパントよりもホストの方が高いことが好ましい。
【0126】
具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、
トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq
、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeB
)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウ
ム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Zn
q)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnP
BO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnB
TZ)などの金属錯体を用いることができる。
【0127】
また、2−(ビフェニル−4−イル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,
3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチ
ルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7
)、3−(ビフェニル−4−イル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニ
ル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’−(1,3,5−
ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPB
I)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)
などの複素環化合物を用いることができる。
【0128】
その他、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾ
ール(略称:CzPA)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アン
トリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3
,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフ
チル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフ
チル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称:BAN
T)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS
)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2
)、3,3’,3’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB
3)などの縮合芳香族化合物を用いることもできる。
【0129】
また、発光性の物質を分散させるための物質は複数種用いることができる。例えば、結
晶化を抑制するためにルブレン等の結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。さら
に、発光性の物質へのエネルギー移動をより効率良く行うためにNPB、あるいはAlq
等を添加してもよい。なお、実施の形態1で示した本発明の一態様であるフルオレン誘導
体も用いることができる。このように、発光性の高い物質を他の物質に分散させた構成と
することで、第3の層113の結晶化を抑制することができる。さらに、発光性の高い物
質の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0130】
また、上述した物質のうち、特に電子輸送性の物質を用いて発光性の物質を分散させて
第3の層113を形成することがより好ましい。具体的には、上述した金属錯体、複素環
化合物、縮合芳香族化合物のうちのCzPA、DNA、t−BuDNA、さらには、のち
に示す第4の層114に用いることのできる物質として挙げられる高分子化合物を用いる
こともできる。
【0131】
また、第3の層113には、次に挙げる高分子化合物を用いることもできる。
【0132】
青色系の発光物質としては、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)
(略称:PFO)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−
(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)](略称:PF−DMOP)、ポリ{
(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−[N,N’−ジ−(p−ブ
チルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]}(略称:TAB−PFH)などが挙げら
れる。
【0133】
緑色系の発光物質としては、ポリ(p−フェニレンビニレン)(略称:PPV)、ポリ
[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(ベンゾ[2,
1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル)](略称:PFBT)、ポリ[(9,9−ジ
オクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−alt−co−(2−メトキシ−5−
(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレン)]などが挙げられる。
【0134】
橙色〜赤色系の発光物質としては、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキ
シ)−1,4−フェニレンビニレン](略称:MEH−PPV)、ポリ(3−ブチルチオ
フェン−2,5−ジイル)(略称:R4−PAT)、ポリ{[9,9−ジヘキシル−2,
7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N
,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}、ポリ{[2−メトキシ−5−(
2−エチルヘキシロキシ)−1,4−ビス(1−シアノビニレンフェニレン)]−alt
−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}(略
称:CN−PPV−DPD)などが挙げられる。
【0135】
なお、発光層113は2層以上の複数層で形成することもできる。例えば、第1の発光
層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層113とする場合、第1の発光
層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層のホスト材料として
電子輸送性を有する物質を用いることができる。より好ましくは第1の発光層のホスト材
料は電子輸送性よりも正孔輸送性の高い材料を用い、第2の発光層のホスト材料は正孔輸
送性よりも電子輸送性の高い材料が好ましい。上記の構成とすることで第1の発光層と第
2の発光層との間が発光サイトとなり、より高効率な素子が得られる。
【0136】
以上のような構造を有する発光層は、複数の材料で構成されている場合、真空蒸着法で
の共蒸着又は混合溶液としてインクジェット法、スピンコート法、若しくはディップコー
ト法などを用いて作製することができる。
【0137】
第4の層114は、電子輸送性の高い物質を含む電子輸送層である。第4の層114に
は、例えば、低分子の有機化合物として、Alq、Almq、BeBq、BAlq、
Znq、ZnPBO、ZnBTZなどの金属錯体等を用いることができる。また、金属錯
体以外にも、PBD、OXD−7、TAZ、TPBI、BPhen、BCPなどの複素環
化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電
子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記
以外の物質を電子輸送層として用いてもよい。また、電子輸送層は、単層のものだけでな
く、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0138】
第4の層114には、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9−
ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略
称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−
(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などを用いるこ
とができる。
【0139】
また、第5の層115は、電子注入性の高い物質を含む電子注入層である。第5の層1
15には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(
CaF)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いる
ことができる。その他、電子輸送性を有する物質にアルカリ金属、アルカリ土類金属、ま
たはそれらの化合物を含有させたもの、具体的にはAlq中にマグネシウム(Mg)を含
有させたもの等を用いてもよい。なお、この場合には、第2の電極104からの電子注入
をより効率良く行うことができる。
【0140】
第2の電極104には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、
電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料
の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(
Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム
(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(M
gAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属お
よびこれらを含む合金等が挙げられる。
【0141】
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金を用いて第2の電極104
を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペ
ーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0142】
なお、第5の層115を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、
ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料
を用いて第2の電極104を形成することができる。これらの導電性材料は、スパッタリ
ング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することができる。
【0143】
また、第1の層(正孔注入層)111、第2の層(正孔輸送層)112、第3の層(発
光層)113、第4の層(電子輸送層)114、及び第5の層(電子注入層)115が順
次積層して形成されるEL層103の作製方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々
の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコー
ト法など用いることができる。なお、各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成してもよい

【0144】
第2の電極104についても、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式法だけでなく
、金属材料のペーストを用いてゾル−ゲル法等の湿式法により形成することができる。
【0145】
またそれぞれ第1の電極102、第1の層(正孔注入層)111、第2の層(正孔輸送
層)112、第3の層(発光層)113間は主に正孔を流すため、隣接する層間のキャリ
ア注入障壁を小さくするためにHOMO準位(金属の場合は仕事関数)が同じか同程度で
あることが望ましい。同様に、それぞれ第3の層(発光層)113、第4の層(電子輸送
層)114、第5の層(電子注入層)115、第2の電極104間は、主に電子を流すた
め、隣接する層間のキャリア注入障壁を小さくするためにLUMO準位(金属の場合は仕
事関数)が同じか同程度であることが望ましい。好ましくはその差は0.2eV以内、よ
り好ましくは0.1eV以内であることが好ましい。
【0146】
また、あえてそれぞれ第2の層(正孔輸送層)112、第3の層(発光層)113間の
HOMO準位、第3の層(発光層)113、第4の層(電子輸送層)114間のLUMO
準位の差を大きくすることで、発光層でのキャリアを閉じこめ、より効率の良い発光素子
となり好ましい。ただしこの場合、障壁が大きすぎると駆動電圧が高くなり、素子への負
担となるため、好ましくはその差は0.4eV以内、より好ましくは0.2eV以内であ
ることが好ましい。
【0147】
上述した本発明の一態様である発光素子は、第1の電極102と第2の電極104との
間に生じた電位差により電流が流れ、EL層103において正孔と電子とが再結合するこ
とにより発光する。そして、この発光は、第1の電極102または第2の電極104のい
ずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極102または第
2の電極104のいずれか一方、または両方が透光性を有する電極となる。
【0148】
なお、第1の電極102のみが透光性を有する電極である場合には、図2(A)に示す
ように、EL層103で生じた発光は第1の電極102を通って基板101側から取り出
される。また、第2の電極104のみが透光性を有する電極である場合には、図2(B)
に示すように、EL層103で生じた発光は第2の電極104を通って基板101と逆側
から取り出される。さらに、第1の電極102および第2の電極104がいずれも透光性
を有する電極である場合には、図2(C)に示すように、EL層103で生じた発光は第
1の電極102および第2の電極104を通って、基板101側および基板101と逆側
の両方から取り出される。
【0149】
なお、第1の電極102と第2の電極104との間に設けられる層の構成は、上記のも
のには限定されない。少なくとも正孔輸送層である第2の層112、および発光層である
第3の層113を有する構成であれば、上記以外のものでもよい。
【0150】
また、図1(B)に示すように、基板101上に陰極として機能する第2の電極104
、EL層103、陽極として機能する第1の電極102が順次積層された構造としてもよ
い。なお、この場合のEL層103は、第2の電極104上に第5の層115、第4の層
114、第3の層113、第2の層112、第1の層111、第1の電極102が順次積
層された構造となる。
【0151】
なお、本発明の発光素子を用いることで、パッシブマトリクス型の発光装置や、薄膜ト
ランジスタ(TFT)によって発光素子の駆動が制御されたアクティブマトリクス型の発
光装置を作製することができる。
【0152】
なお、アクティブマトリクス型の発光装置を作製する場合におけるTFTの構造は、特
に限定されない。例えば、スタガ型や逆スタガ型のTFTを適宜用いることができる。ま
た、TFT基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるも
のでもよいし、N型のTFTまたはP型のTFTのいずれか一方のみからなるものであっ
てもよい。さらに、TFTに用いられる半導体膜の結晶性についても特に限定されない。
非晶質半導体膜を用いてもよいし、結晶性半導体膜を用いてもよい。
【0153】
本実施の形態で示した発光素子では、第2の層(正孔輸送層)112は、本発明の一態
様であるフルオレン誘導体を用いて形成されることから、素子効率が向上するだけでなく
、消費電力を最小限に抑えることができる。
【0154】
(実施の形態3)
本実施の形態は、複数の発光ユニット(EL層とも記す)を積層した構成の発光素子(
以下、積層型素子という)の態様について、図3を参照して説明する。この発光素子は、
第1の電極と第2の電極との間に、複数の発光ユニットを有する積層型発光素子である。
各発光ユニットの構成としては、実施の形態2で示した構成と同様な構成を用いることが
できる。つまり、実施の形態2で示した発光素子は、1つの発光ユニットを有する発光素
子である。本実施の形態では、複数の発光ユニットを有する発光素子について説明する。
【0155】
図3(A)において、第1の電極521と第2の電極522との間には、第1の発光ユ
ニット511と第2の発光ユニット512が積層されている。第1の電極521と第2の
電極522は実施の形態2と同様なものを適用することができる。また、第1の発光ユニ
ット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構成であってもよく
、その構成は実施の形態2と同様なものを適用することができる。
【0156】
電荷発生層513は、第1の電極521と第2の電極522に電圧を印加したときに、
一方の側の発光ユニットに電子を注入し、他方の側の発光ユニットに正孔を注入する層で
あり、単層でも複数の層を積層した構成であってもよい。複数の層を積層した構成として
は、正孔を注入する層と電子を注入する層とを積層する構成であることが好ましい。
【0157】
正孔を注入する層としては、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化レニウム、酸化ル
テニウム等の半導体や絶縁体を用いることができる。あるいは、正孔輸送性の高い物質に
、アクセプター物質が添加された構成であってもよい。正孔輸送性の高い物質とアクセプ
ター性物質を含む層は、アクセプター物質として、7,7,8,8−テトラシアノ−2,
3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)や、酸化バナジウム
や酸化モリブデンや酸化タングステン等の金属酸化物を含む。正孔輸送性の高い物質とし
ては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物、オリ
ゴマー、デンドリマー、ポリマーなど、種々の化合物を用いることができる。なお、実施
の形態1で示した本発明の一態様であるフルオレン誘導体も同様に用いることができる。
なお、正孔輸送性の高い物質としては、正孔移動度が10−6cm/Vs以上であるも
のを適用することが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これ
ら以外のものを用いてもよい。正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む複合材
料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実
現することができる。
【0158】
電子を注入する層としては、酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸セシウム等の絶縁体
や半導体を用いることができる。あるいは、電子輸送性の高い物質に、ドナー性物質が添
加された構成であってもよい。ドナー性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類
金属または希土類金属または元素周期表における第13族に属する金属およびその酸化物
、炭酸塩を用いることができる。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マ
グネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、インジウム(In
)、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタ
センのような有機化合物をドナー性物質として用いてもよい。電子輸送性の高い物質とし
ては、実施の形態1で示した材料を用いることができる。なお、電子輸送性の高い物質と
しては、電子移動度が10−6cm/Vs以上であるものを適用することが好ましい。
但し、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
電子輸送性の高い物質とドナー性物質とを有する複合材料は、キャリア注入性、キャリア
輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。
【0159】
また、電荷発生層513として、実施の形態2で示した電極材料を用いることもできる
。例えば、正孔輸送性の高い物質と金属酸化物を含む層と透明導電膜とを組み合わせて形
成しても良い。なお、光取り出し効率の点から、電荷発生層513は透光性の高い層とす
ることが好ましい。
【0160】
いずれにしても、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512に挟まれる電
荷発生層513は、第1の電極521と第2の電極522に電圧を印加したときに、一方
の側の発光ユニットに電子を注入し、他方の側の発光ユニットに正孔を注入するものであ
れば良い。例えば、第1の電極の電位の方が第2の電極の電位よりも高くなるように電圧
を印加した場合、電荷発生層513は、第1の発光ユニット511に電子を注入し、第2
の発光ユニット512に正孔を注入するものであればいかなる構成でもよい。
【0161】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、同様に
、図3(B)に示すように、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同
様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に
複数の発光ユニットを電荷発生層513で仕切って配置することで、電流密度を低く保っ
たまま、高輝度領域での長寿命素子を実現できる。また、照明を応用例とした場合は、電
極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。ま
た、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現することができる。
【0162】
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光素子全体とし
て、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光素子
において、第1の発光ユニットの発光色と第2の発光ユニットの発光色を補色の関係にな
るようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である
。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係に
ある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また
、3つの発光ユニットを有する発光素子の場合でも同様であり、例えば、第1の発光ユニ
ットの発光色が赤色であり、第2の発光ユニットの発光色が緑色であり、第3の発光ユニ
ットの発光色が青色である場合、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
【0163】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0164】
(実施の形態4)
本実施の形態では、画素部に本発明の発光素子を有する発光装置について図4を用いて
説明する。なお、図4(A)は、発光装置を示す上面図、図4(B)は図4(A)をA−
A’およびB−B’で切断した断面図である。
【0165】
図4(A)において、点線で示された401は駆動回路部(ソース側駆動回路)、40
2は画素部、403は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、404は封止基板
、405はシール材であり、シール材405で囲まれた内側は、空間407になっている

【0166】
なお、引き回し配線408はソース側駆動回路401及びゲート側駆動回路403に入
力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプ
リントサーキット)409からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号
等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント
配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。また、本明細書における発光装置には
、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含む
ものとする。
【0167】
次に、断面構造について図4(B)を用いて説明する。素子基板410上には駆動回路
部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路401
と、画素部402中の一つの画素が示されている。なお、ソース側駆動回路401はNチ
ャネル型TFT423とPチャネル型TFT424とを組み合わせたCMOS回路が形成
される。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で
形成しても良い。本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示す
が、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0168】
また、画素部402はスイッチング用TFT411と、電流制御用TFT412とその
ドレインに電気的に接続された第1の電極413とを含む複数の画素により形成される。
なお、第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成される。
【0169】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物414の上端部または下端部に曲率を有
する曲面が形成されるようにするのが好ましい。例えば、絶縁物414の材料としてポジ
型の感光性アクリルを用いることで、絶縁物414の上端部のみに曲率半径(0.2μm
〜3μm)を有する曲面を持たせることができる。また、絶縁物414として、光の照射
によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに
溶解性となるポジ型の感光性材料を用いることができる。
【0170】
第1の電極413上には、EL層416、および第2の電極417がそれぞれ形成され
る。ここで、第1の電極413に用いる材料としては、さまざまな金属、合金、電気伝導
性化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。なお、具体的な材料としては、
実施の形態2において第1の電極に用いることができるとして示した材料を用いることが
できるものとする。
【0171】
また、EL層416は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート
法等の種々の方法によって形成される。EL層416は、実施の形態2で示した構成を有
している。また、EL層416を構成する他の材料としては、低分子化合物、または高分
子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。また、EL層に用いる材
料としては、有機化合物だけでなく、無機化合物を用いてもよい。
【0172】
また、第2の電極417に用いる材料としては、さまざまな金属、合金、電気伝導性化
合物、およびこれらの混合物を用いることができる。第2の電極417を陰極として用い
る場合には、その中でも、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)金属、合金、電
気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。例えば、元素周期
表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等
のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(
Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)等が挙げ
られる。
【0173】
なお、EL層416で生じた光が第2の電極417を透過する構成とする場合には、第
2の電極417として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(酸化インジウム−酸化
スズ(ITO)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化イン
ジウム−酸化亜鉛(IZO)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム
等)との積層を用いることも可能である。
【0174】
さらに、シール材405で封止基板404を素子基板410と貼り合わせることにより
、素子基板410、封止基板404、およびシール材405で囲まれた空間407に発光
素子418が備えられた構造になっている。なお、空間407には、充填材が充填されて
おり、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材405で充填さ
れる場合もある。
【0175】
なお、シール材405にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料
はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板404
に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Rei
nforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステル
またはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0176】
以上のようにして、本発明の発光素子を有するアクティブマトリクス型の発光装置を得
ることができる。
【0177】
また、本発明の発光素子は、上述したアクティブマトリクス型の発光装置のみならずパ
ッシブマトリクス型の発光装置に用いることもできる。図5に本発明の発光素子を用いた
パッシブマトリクス型の発光装置の斜視図および断面図を示す。なお、図5(A)は、発
光装置を示す斜視図、図5(B)は図5(A)をX−Yで切断した断面図である。
【0178】
図5において、基板501上の第1の電極502と第2の電極503との間にはEL層
504が設けられている。第1の電極502の端部は絶縁層505で覆われている。そし
て、絶縁層505上には隔壁層506が設けられている。隔壁層506の側壁は、基板面
に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなるような傾斜を有する。
つまり、隔壁層506の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層505の面方向
と同様の方向を向き、絶縁層505と接する辺)の方が上辺(絶縁層505の面方向と同
様の方向を向き、絶縁層505と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層506を
設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことができる。
【0179】
以上により、本発明の発光素子を有するパッシブマトリクス型の発光装置を得ることが
できる。
【0180】
なお、本実施の形態で示した発光装置(アクティブマトリクス型、パッシブマトリクス
型)は、いずれも本発明の発光効率の高い発光素子を用いて形成されることから、消費電
力が低減された発光装置を得ることができる。
【0181】
なお、本実施の形態4においては、実施の形態1〜3に示した構成を適宜組み合わせて
用いることができることとする。
【0182】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態4に示す本発明の発光装置をその一部に含む電子機器に
ついて説明する。電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグ
ル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディ
オコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯
電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的には
、Digital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、そ
の画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体
例を図6に示す。
【0183】
図6(A)は本発明の一態様に係るテレビ装置であり、筐体611、支持台612、表
示部613、スピーカー部614、ビデオ入力端子615等を含む。このテレビ装置にお
いて、表示部613には、本発明の発光装置を適用することができる。本発明の発光装置
は、高い発光効率が得られるという特徴を有していることから、本発明の発光装置を適用
することで消費電力の低減されたテレビ装置を得ることができる。
【0184】
図6(B)は本発明の一態様に係るコンピュータであり、本体621、筐体622、表
示部623、キーボード624、外部接続ポート625、ポインティングデバイス626
等を含む。このコンピュータにおいて、表示部623には、本発明の発光装置を適用する
ことができる。本発明の発光装置は、高い発光効率が得られるという特徴を有しているこ
とから、本発明の発光装置を適用することで消費電力の低減されたコンピュータを得るこ
とができる。
【0185】
図6(C)は本発明の一態様に係る携帯電話であり、本体631、筐体632、表示部
633、音声入力部634、音声出力部635、操作キー636、外部接続ポート637
、アンテナ638等を含む。この携帯電話において、表示部633には、本発明の発光装
置を適用することができる。本発明の発光装置は、高い発光効率が得られるという特徴を
有していることから、本発明の発光装置を適用することで消費電力の低減された携帯電話
を得ることができる。
【0186】
図6(D)は本発明の一態様に係るカメラであり、本体641、表示部642、筐体6
43、外部接続ポート644、リモコン受信部645、受像部646、バッテリー647
、音声入力部648、操作キー649、接眼部650等を含む。このカメラにおいて、表
示部642には、本発明の発光装置を適用することができる。本発明の発光装置は、高い
発光効率が得られるという特徴を有していることから、本発明の発光装置を適用すること
で消費電力の低減されたカメラを得ることができる。
【0187】
以上の様に、本発明の発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野
の電子機器に適用することが可能である。本発明の発光装置を用いることにより、消費電
力の低減された電子機器を得ることができる。
【0188】
また、本発明の発光装置は、照明装置として用いることもできる。図7は、本発明の発
光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図7に示した液晶表示装
置は、筐体701、液晶層702、バックライト703、筐体704を有し、液晶層70
2は、ドライバIC705と接続されている。また、バックライト703は、本発明の発
光装置が用いられおり、端子706により、電流が供給されている。
【0189】
このように本発明の発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることにより、
低消費電力のバックライトが得られる。また、本発明の発光装置は、面発光の照明装置で
あり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化も可能である。従って、低消費
電力であり、大面積化された液晶表示装置を得ることができる。
【0190】
図8は、本発明を適用した発光装置を、照明装置である電気スタンドとして用いた例で
ある。図8に示す電気スタンドは、筐体801と、光源802を有し、光源802として
、本発明の発光装置が用いられている。本発明の発光装置は発光効率の高い発光素子を有
しているため、低消費電力の電気スタンドとして用いることが可能となる。
【0191】
図9は、本発明を適用した発光装置を、室内の照明装置901として用いた例である。
本発明の発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることがで
きる。また、本発明の発光装置は、発光効率の高い発光素子を有しているため、低消費電
力の照明装置として用いることが可能となる。このように、本発明を適用した発光装置を
、室内の照明装置901として用いた部屋に、図6(A)で説明したような、本発明に係
るテレビ装置902を設置して公共放送や映画を鑑賞することができる。
【0192】
なお、本実施の形態5においては、実施の形態1〜4に示した構成を適宜組み合わせて
用いることができることとする。
【実施例1】
【0193】
≪合成例1≫
本実施例では、実施の形態1に一般式(G1)として示した本発明の一態様であるフル
オレン誘導体の合成例を示す。具体的には実施の形態1の構造式(101)で示した、4
−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:
BPAFLP)の合成方法について説明する。BPAFLPの構造を以下に示す。
【0194】
【化30】

【0195】
[ステップ1:9−(4−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレンの合成法]
100mL三口フラスコにて、マグネシウムを1.2g(50mmol)減圧下で30
分加熱撹拌し、マグネシウムを活性化させた。これを室温に冷まして窒素雰囲気にした後
、ジブロモエタン数滴を加えて発泡、発熱するのを確認した。ここに脱水ジエチルエーテ
ル10mL中に溶かした2−ブロモビフェニルを12g(50mmol)ゆっくり滴下し
た後、2.5時間加熱還流撹拌してグリニヤール試薬とした。
【0196】
4−ブロモベンゾフェノンを10g(40mmol)、脱水ジエチルエーテルを100
mL、を500mL三口フラスコに入れた。ここに先に合成したグリニヤール試薬をゆっ
くり滴下した後、9時間加熱還流撹拌した。
【0197】
反応後、この混合液をろ過して濾物を得た。得られた濾物を酢酸エチル150mLに溶
かし、ここに1N−塩酸水を酸性になるまで加えて2時間撹拌した。この液体の有機層の
部分を水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を取り除いた。この懸濁液をろ過し、
得られたろ液を濃縮しアメ状の物質を得た。
【0198】
つづけて、500mLナスフラスコに、このアメ状物質と、氷酢酸50mLと、塩酸1
.0mLとを入れ、窒素雰囲気下、130℃で1.5時間加熱撹拌し、反応させた。
【0199】
反応後、この反応混合液をろ過して濾物を得た。得られた濾物を水、水酸化ナトリウム
水、水、メタノールの順で洗浄したのち乾燥させ、目的物の白色粉末を収量11g、収率
69%で得た。また、上記合成法の反応スキームを下記(J−1)に示す。
【0200】
【化31】

【0201】
[ステップ2:4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニ
ルアミン(略称:BPAFLP)の合成法]
100mL三口フラスコへ、9−(4−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレンを
3.2g(8.0mmol)、4−フェニル−ジフェニルアミンを2.0g(8.0mm
ol)、ナトリウム tert−ブトキシドを1.0g(10mmol)、ビス(ジベン
ジリデンアセトン)パラジウム(0)を23mg(0.04mmol)加え、フラスコ内
の雰囲気を窒素置換した。この混合物へ、脱水キシレン20mLを加えた。この混合物を
、減圧下で攪拌しながら脱気した後、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(10wt%
ヘキサン溶液)0.2mL(0.1mmol)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、
110℃で2時間加熱撹拌し、反応させた。
【0202】
反応後、この反応混合液にトルエン200mLを加え、この懸濁液をフロリジール、セ
ライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)を通してろ過した
。得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:
ヘキサン=1:4)による精製を行った。得られたフラクションを濃縮し、アセトンとメ
タノールを加えて超音波をかけたのち、再結晶したところ、目的物の白色粉末を収量4.
1g、収率92%で得た。また、上記合成法の反応スキームを下記(J−2)に示す。
【0203】
【化32】

【0204】
シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)でのRf値(展開溶媒 酢酸エチル:ヘ
キサン=1:10)は、目的物は0.41、9−(4−ブロモフェニル)−9−フェニル
フルオレンは0.51、4−フェニル−ジフェニルアミンは0.27だった。
【0205】
上記ステップ2で得られた化合物を核磁気共鳴法(NMR)により測定した。以下に測
定データを示す。また、H NMRチャートを図10に示す。測定結果から、上述の構
造式(101)で表される本発明のフルオレン誘導体であるBPAFLP(略称)が得ら
れたことがわかった。
【0206】
H NMR(CDCl,300MHz):δ(ppm)=6.63−7.02(m
、3H)、7.06−7.11(m、6H)、7.19−7.45(m、18H)、7.
53−7.55(m、2H)、7.75(d、J=6.9、2H)。
【0207】
また以下のとおり、得られた目的物のBPAFLP(略称)について種々の物性を測定
した。
【0208】
吸収スペクトル(測定範囲200nm〜800nm)を、紫外可視分光光度計(日本分
光株式会社製、V550型)を用いて測定した。図11にトルエン溶液及び薄膜の吸収ス
ペクトルを示す。横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。トルエン溶
液は、石英セルに入れて測定し、石英とトルエンの吸収スペクトルを差し引いたスペクト
ルを図示した。また薄膜は、石英基板に蒸着したサンプルを測定し、石英の吸収スペクト
ルを差し引いたスペクトルを図示した。これらスペクトル図より、長波長側の吸収ピーク
は、トルエン溶液の場合では324nm付近に見られ、薄膜の場合では314nm付近に
見られることがわかった。
【0209】
発光スペクトルを蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用いて測定し
た。図12にトルエン溶液及び薄膜の発光スペクトルを示す。横軸は波長(nm)、縦軸
は発光強度(任意単位)を表す。トルエン溶液は石英セルに入れて測定し、薄膜は、石英
基板に蒸着したサンプルを測定した。これらスペクトル図より、最大発光波長はトルエン
溶液の場合では386nm(励起波長330nm)、薄膜の場合では400nm(励起波
長349nm)であることがわかった。
【0210】
薄膜を大気中にて光電子分光法(理研計器社製、AC−2)で測定した結果、HOMO
準位は−5.63eVであった。薄膜の吸収スペクトルのTaucプロットから吸収端は
3.34eVであった。従って、固体状態のエネルギーギャップは3.34eVと見積も
られ、このことはLUMO準位が−2.29eVであることを意味する。このことから、
BPAFLP(略称)は、比較的深めのHOMO準位をもち、広いバンドギャップ(Bg
)をもつことがわかった。
【0211】
酸化還元反応特性をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって調べた。測定に
は、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aま
たは600C)を用いた。
【0212】
酸化反応特性を、参照電極に対する作用電極の電位を−0.10Vから1.50Vまで
走査した後、1.50Vから−0.10Vまで走査し測定した。その結果、HOMO準位
は、−5.51[eV]であることがわかった。また、100サイクル後でも酸化ピーク
が同様の値となった。このことから、酸化状態と中性状態間の酸化還元の繰り返しに良好
な特性を示すことがわかった。
【0213】
なお、以下に測定方法について詳述する。
【0214】
(参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーの算出)
まず、本実施例で用いる参照電極(Ag/Ag電極)の真空準位に対するポテンシャ
ルエネルギー(eV)を算出した。つまり、Ag/Ag電極のフェルミ準位を算出した
。メタノール中におけるフェロセンの酸化還元電位は、標準水素電極に対して+0.61
0[V vs. SHE]であることが知られている(参考文献;Christian
R.Goldsmith et al., J.Am.Chem.Soc., Vol.
124, No.1,83−96, 2002)。一方、本実施例で用いる参照電極を用
いて、メタノール中におけるフェロセンの酸化還元電位を求めたところ、+0.11V[
vs.Ag/Ag]であった。したがって、この参照電極のポテンシャルエネルギーは
、標準水素電極に対して0.50[eV]低くなっていることがわかった。
【0215】
ここで、標準水素電極の真空準位からのポテンシャルエネルギーは−4.44eVであ
ることが知られている(参考文献;大西敏博・小山珠美著、高分子EL材料(共立出版)
、p.64−67)。以上のことから、用いた参照電極の真空準位に対するポテンシャル
エネルギーは、−4.44−0.50=−4.94[eV]であると算出できた。
【0216】
(目的物のCV測定条件)
CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)ア
ルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705−6)を用い、支持電解質である
過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−BuNClO)((株)東京化成製
カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに
測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極とし
ては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金
電極(ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照
電極としてはAg/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極
)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温(20〜25℃)で行った。また、CV測定時の
スキャン速度は、0.1V/secに統一した。
【0217】
次に、このCV測定からHOMO準位を算出した。酸化反応特性のCV測定結果を図1
3に示す。図13に示すように、酸化ピーク電位(中性側から酸化間)Epaは、0.6
2Vであった。また、還元ピーク電位(酸化側から中性間)Epcは0.52Vであった
。したがって、半波電位(EpaとEpcの中間の電位、Epa+Epc)/2[V])
は0.57Vと算出できる。このことは、0.57[V vs.Ag/Ag]の電気エ
ネルギーにより酸化されることを示している。ここで、上述した通り、用いた参照電極の
真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.94[eV]であるため、BPAF
LP(略称)のHOMO準位は、−4.94−0.57=−5.51[eV]であること
がわかった。
【0218】
ガラス転移温度を、示差走査熱量分析装置(DSC、パーキンエルマー社製 Pyri
s1)により測定した。測定結果から、ガラス転移温度は107℃であった。このように
、高いガラス転移温度を示し、良好な耐熱性を有することがわかった。また、結晶化を表
すピークは存在せず、結晶化し難い物質であることが分かった。
【実施例2】
【0219】
≪合成例2≫
本実施例では、実施の形態1に一般式(G1)として示した本発明の一態様であるフル
オレン誘導体の合成例を示す。具体的には実施の形態1の構造式(151)で示した、4
−フェニル−4’−[4−(9−フェニルフルオレン−9−イル)フェニル]トリフェニ
ルアミン(略称:BPAFLBi)の合成方法について説明する。BPAFLBiの構造
を以下に示す。
【0220】
【化33】

【0221】
[ステップ1:9−(4’−ブロモ−4−ビフェニル)−9−フェニルフルオレンの合成
法]
500mL三口フラスコに、2−ブロモビフェニルを5.1g(22mmol)入れ、
フラスコ内の雰囲気を窒素置換したのち、脱水テトラヒドロフラン(略称:THF)20
0mLを加えて−78℃にした。この混合液に1.59mol/Lのn−ブチルリチウム
ヘキサン溶液14mL(22mmol)を滴下し、2.5時間撹拌した。この混合物に4
−ベンゾイル−4’−ブロモビフェニルを6.7g(20mmol)を加え、−78℃で
2時間、室温で85時間撹拌した。
【0222】
反応後、この反応溶液に1N−希塩酸を酸性になるまで加えて4時間撹拌した。これを
水で洗浄した。洗浄後、硫酸マグネシウムを加えて水分を取り除いた。この懸濁液をろ過
し、得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン
:ヘキサン=1:1)による精製を行った。得られたフラクションを濃縮し、メタノール
を加えて超音波をかけたのち、再結晶したところ、目的物の白色粉末を得た。
【0223】
つづけて、200mLナスフラスコに、この白色粉末と、氷酢酸50mLと、塩酸1.
0mLとを入れ、窒素雰囲気下、130℃で2.5時間加熱撹拌し、反応させた。
【0224】
反応後、この反応混合液をろ過してろ物を得た。得られたろ物を100mLのトルエン
に溶かし、水、水酸化ナトリウム水、水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を
取り除いた。この懸濁液をろ過し、得られたろ液を濃縮し、アセトン、メタノールを加え
て超音波をかけたのち、再結晶したところ、目的物の白色粉末を収量6.3g、収率67
%で得た。また、上記反応スキームを下記(J−3)に示す。
【0225】
【化34】

【0226】
[ステップ2:4−フェニル−4’−[4−(9−フェニルフルオレン−9−イル)フェ
ニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)の合成法]
100mL三口フラスコへ、9−(4’−ブロモ−4−ビフェニル)−9−フェニルフ
ルオレンを3.8g(8.0mmol)、4−フェニル−ジフェニルアミンを2.0g(
8.0mmol)、ナトリウム tert−ブトキシドを1.0g(10mmol)、ビ
ス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を23mg(0.04mmol)加え、
フラスコ内の雰囲気を窒素置換した。この混合物へ、脱水キシレン20mLを加えた。こ
の混合物を、減圧下で攪拌しながら脱気した後、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(
10wt%ヘキサン溶液)0.2mL(0.1mmol)を加えた。この混合物を、窒素
雰囲気下、110℃で2時間加熱撹拌し、反応させた。
【0227】
反応後、この反応混合液にトルエン200mLを加え、この懸濁液をフロリジール、セ
ライトを通してろ過した。得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー
(展開溶媒 トルエン:ヘキサン=1:4)による精製を行った。得られたフラクション
を濃縮し、アセトンとメタノールを加えて超音波をかけたのち、再結晶したところ、目的
物の白色粉末を収量4.4g、収率86%で得た。また、上記合成法の反応スキームを下
記(J−4)に示す。
【0228】
【化35】

【0229】
シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)でのRf値(展開溶媒 酢酸エチル:ヘ
キサン=1:10)は、目的物は0.51、9−(4’−ブロモ−4−ビフェニル)−9
−フェニルフルオレンは0.56、4−フェニル−ジフェニルアミンは0.28だった。
【0230】
上記ステップ2で得られた化合物を核磁気共鳴法(NMR)により測定した。以下に測
定データを示す。また、H NMRチャートを図14に示す。測定結果から、上述の構
造式(151)で表される本発明のフルオレン誘導体であるBPAFLBi(略称)が得
られたことがわかった。
【0231】
H NMR(CDCl,300MHz):δ(ppm)=7.04(t、J=6.
6、1H)、7.12−7.49(m、30H)、7.55−7.58(m、2H)、7
.77(d、J=7.8、2H)。
【0232】
また以下のとおり、得られた目的物のBPAFLBi(略称)について種々の物性を測
定した。
【0233】
吸収スペクトル(測定範囲200nm〜800nm)を紫外可視分光光度計(日本分光
株式会社製、V550型)を用いて測定した。図15にトルエン溶液及び薄膜の吸収スペ
クトルを示す。横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。トルエン溶液
は、石英セルに入れて測定し、石英とトルエンの吸収スペクトルを差し引いたスペクトル
を図示した。また薄膜は、石英基板に蒸着したサンプルを測定し、石英の吸収スペクトル
を差し引いたスペクトルを図示した。これらスペクトル図より、長波長側の吸収ピークは
、トルエン溶液の場合では340nm付近に見られ、薄膜の場合では341nm付近に見
られることがわかった。
【0234】
発光スペクトルを蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用いて測定し
た。図16にトルエン溶液及び薄膜の発光スペクトルを示す。横軸は波長(nm)、縦軸
は発光強度(任意単位)を表す。トルエン溶液は石英セルに入れて測定し、薄膜は、石英
基板に蒸着したサンプルを測定した。これらスペクトル図より、最大発光波長はトルエン
溶液の場合では386nm(励起波長345nm)、薄膜の場合では399、419nm
(励起波長348nmであることがわかった。
【0235】
薄膜を大気中にて光電子分光法(理研計器社製、AC−2)で測定した結果、HOMO
準位は−5.64eVであった。薄膜の吸収スペクトルのTaucプロットから吸収端は
3.28eVであった。従って、固体状態のエネルギーギャップは3.28eVと見積も
られ、このことはLUMO準位が−2.36eVであることを意味する。このことから、
BPAFLBi(略称)は、比較的深めのHOMO準位をもち、広いバンドギャップ(B
g)をもつことがわかった。
【0236】
酸化還元反応特性をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって調べた。測定に
は、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aま
たは600C)を用いた。測定方法は、実施例1と同様なので、説明を省略することとす
る。
【0237】
酸化反応特性を、参照電極に対する作用電極の電位を−0.10Vから1.50Vまで
走査した後、1.50Vから−0.10Vまで走査し測定した。その結果、HOMO準位
は、−5.49[eV]であることがわかった。また、100サイクル後でも酸化ピーク
が同様の値となった。このことから、酸化状態と中性状態間の酸化還元の繰り返しに良好
な特性を示すことがわかった。
【0238】
酸化反応特性のCV測定結果を図17に示す。
【0239】
ガラス転移温度を、示差走査熱量分析装置(DSC、パーキンエルマー社製 Pyri
s1)により測定した。測定結果から、ガラス転移温度は126℃であった。このように
、高いガラス転移温度を示し、良好な耐熱性を有することがわかった。また、結晶化を表
すピークは存在せず、結晶化し難い物質であることが分かった。
【実施例3】
【0240】
本実施例では、実施例1で合成したフルオレン誘導体である4−フェニル−4’−(9
−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を用いて
形成した発光素子の作製方法および素子特性の測定結果を示す。
【0241】
なお、本実施例における発光素子の素子構造は、図18に示す構造である。発光素子2
は、正孔輸送層1512に上述した本発明のフルオレン誘導体(略称:BPAFLP)を
用いて形成したものである。また、比較発光素子である発光素子1は、正孔輸送層151
2に4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:
NPB)を用いて形成し、比較条件をそろえるために発光素子2が形成された基板と同一
の基板上に比較発光素子1を形成し、発光素子2との比較を行った。本実施例で用いる有
機化合物の構造式を以下に示す。
【0242】
【化36】

【0243】
まず、ガラス基板である基板1501上に、酸化珪素を含む酸化インジウム−酸化スズ
をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1502を形成した。なお、その膜厚は、1
10nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0244】
次に、第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層1503を形成する。本実
施例5において、EL層1503は、正孔注入層である第1の層1511、正孔輸送層で
ある第2の層1512、発光層である第3の層1513、電子輸送層である第4の層15
14、電子注入層である第5の層1515が順次積層された構造を有する。
【0245】
第1の電極1502が形成された面が下方となるように、第1の電極1502が形成さ
れた基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減
圧した後、第1の電極1502上に、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェ
ニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着すること
により、正孔注入層である第1の層1511を形成した。その膜厚は50nmとし、NP
Bと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で4:1=(NPB:酸化モリブデン)と
なるように蒸着レートを調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で複数の材料を
同時に蒸着し成膜する蒸着法である。
【0246】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の層1511上に正孔輸送性材料を10n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層である第2の層1512を形成した。なお、比
較発光素子1を形成する場合には、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニ
ルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)を用い、発光素子2を形成する場合には、4−フ
ェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BP
AFLP)を用いてそれぞれ形成した。
【0247】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第2の層1512上に、発光層である第3の層
1513を形成した。9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H
−カルバゾール(略称:CzPA)と4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−
(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA
PA)とを共蒸着することにより第3の層1513を30nmの膜厚で形成した。ここで
、CzPAとPCBAPAとの重量比は、1:0.10=(CzPA:PCBAPA)と
なるように蒸着レートを調節した。
【0248】
さらに、第3の層1513上に抵抗加熱による蒸着法を用いて、トリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)を10nm、その上にバソフェナントロ
リン(略称:BPhen)を20nmの膜厚となるように成膜し、電子輸送層である第4
の層1514を形成した。
【0249】
第4の層1514上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚となるように成膜す
ることにより、電子注入層である第5の層1515を形成した。
【0250】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、アルミニウムを200nmの膜厚となるように
成膜することにより、第2の電極1504を形成し、比較発光素子1、発光素子2を作製
した。
【0251】
なお、比較発光素子1および発光素子2は、第2の層1512以外は同一工程で作成し
ている。
【0252】
以上により得られた比較発光素子1および発光素子2を、窒素雰囲気のグローブボック
ス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発
光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)
で行った。
【0253】
比較発光素子1および発光素子2の電流密度−輝度特性を図19に示す。また、電圧−
輝度特性を図20、輝度−電流効率特性を図21にそれぞれ示す。図19では、縦軸に輝
度(cd/m)、横軸に電流密度(mA/cm)を示し、図20では縦軸に輝度(c
d/m)、横軸に電圧(V)を示し、図21では、縦軸に電流効率(cd/A)、横軸
に輝度(cd/m)を示す。また、1000cd/cm付近における発光素子の電圧
、色度、電流効率を表1に示す。
【0254】
【表1】

【0255】
発光素子2は、駆動電圧が4.2Vのとき、輝度880cd/m、電流値は0.41
mAであった。第2の層1512にNPBを用いた比較発光素子1と比較しても、第2の
層1512にBPAFLP(略称)を用いた発光素子2は、電流効率が高いことがわかっ
た。これは、発光素子1と比較して、発光素子2のキャリアバランスが向上しているため
と考えられる。それは(NPBと比較して)BPAFLP(略称)の、HOMO準位が発
光層のホスト材料のCzPA(略称)のHOMO準位と近いために、正孔輸送層から発光
層へのホール注入性が向上したためと考えられる。またさらに、(NPBと比較して)B
PAFLP(略称)の、LUMO準位が高いために、発光層から正孔輸送層への電子ブロ
ック性が向上したためと考えられる。またさらに、(NPBと比較して)BPAFLP(
略称)のバンドギャップ(Bg)が広いために、第3の層1513(発光層)で生じた励
起子が、隣接する層である第2の層1512へ移動せずに(消光されずに)閉じこめられ
たためと考えられる。
【実施例4】
【0256】
本実施例では、実施例1で合成したフルオレン誘導体である4−フェニル−4’−(9
−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を用いて
形成した発光素子の作製方法および素子特性の測定結果を示す。
【0257】
なお、本実施例における発光素子3の素子構造は、図18に示す構造であり、正孔輸送
層1512に上述した本発明のフルオレン誘導体(略称:BPAFLP)を用いて形成し
たものである。本実施例で用いる有機化合物の構造式を以下に示す。
【0258】
【化37】

【0259】
まず、ガラス基板である基板1501上に、酸化珪素を含む酸化インジウム−酸化スズ
をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1502を形成した。なお、その膜厚は、1
10nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0260】
次に、第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層1503を形成する。本実
施例において、EL層1503は、正孔注入層である第1の層1511、正孔輸送層であ
る第2の層1512、発光層である第3の層1513、電子輸送層である第4の層151
4、電子注入層である第5の層1515が順次積層された構造を有する。
【0261】
第1の電極1502が形成された面が下方となるように、第1の電極1502が形成さ
れた基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減
圧した後、第1の電極1502上に、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フ
ェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)と酸化モリブデン(VI)と共蒸着す
ることにより、正孔注入層である第1の層1511を形成した。その膜厚は、50nmと
し、CzPAと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で4:1=(CzPA:酸化モ
リブデン)となるように蒸着レートを調節した。
【0262】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の層1511上に正孔輸送性材料を10n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層である第2の層1512を形成した。なお、発
光素子3を形成する場合には、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イ
ル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を用いて形成した。
【0263】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第2の層1512上に、発光層である第3の層
1513を形成した。9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H
−カルバゾール(略称:CzPA)と4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−
(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA
PA)とを共蒸着することにより第3の層1513を30nmの膜厚で形成した。ここで
、CzPAとPCBAPAとの重量比は、1:0.10=(CzPA:PCBAPA)と
なるように蒸着レートを調節した。
【0264】
その後、比較発光素子1と同様に電子輸送層である第4の層、電子注入層である第5の
層及び第2の電極を形成し、発光素子3を作製した。
【0265】
以上により得られた発光素子3を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素
子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子3の動作特性について測
定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0266】
発光素子3の電流密度−輝度特性を図22に示す。また、電圧−輝度特性を図23、輝
度−電流効率特性を図24にそれぞれ示す。図22では、縦軸に輝度(cd/m)、横
軸に電流密度(mA/cm)を示し、図23では縦軸に輝度(cd/m)、横軸に電
圧(V)を示し、図24では、縦軸に電流効率(cd/A)、横軸に輝度(cd/m
を示す。また、1000cd/m付近における発光素子の電圧、色度、電流効率を表2
に示す。
【0267】
【表2】

【0268】
本実施例により、本発明のフルオレン誘導体(略称:BPAFLP)を用いて形成した
発光素子が、発光素子として特性が得られ、十分機能することが確認できた。また信頼性
試験の結果から、発光素子を連続点灯させた場合であっても、膜の欠陥等に由来する短絡
が生じることがなく、信頼性の高い発光素子が得られたことがわかった。
【0269】
また、発光素子3に関し、初期輝度を1000cd/cmとして、低電流駆動による
連続点灯試験を行った結果を図25に示す(縦軸は、1000cd/cmを100%と
した時の相対輝度である)。図25の結果から、発光素子3は1000時間後でも初期輝
度の78%の輝度を保っており、長寿命であることがわかった。よって、本発明のBPA
FLP(略称)を適用することにより、長寿命な発光素子を得ることができることがわか
った。
【実施例5】
【0270】
本実施例では、実施例1および実施例2で合成した本発明のフルオレン誘導体である4
−フェニル−4’−[4−(9−フェニルフルオレン−9−イル)フェニル]トリフェニ
ルアミン(略称:BPAFLBi)を用いて形成した発光素子、4−フェニル−4’−(
9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を用い
て形成した発光素子の作製方法および素子特性の結果を示す。
【0271】
なお、本実施例における発光素子の素子構造は、図18に示す構造であり、正孔注入層
および正孔輸送層に上述した本発明のフルオレン誘導体を用いて形成したものである。本
実施例5で用いる有機化合物の構造式を以下に示す。
【0272】
【化38】

【0273】
まず、ガラス基板である基板1501上に、酸化珪素を含む酸化インジウム−酸化スズ
をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1502を形成した。なお、その膜厚は11
0nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0274】
次に、第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層1503を形成する。本実
施例において、EL層1503は、正孔注入層である第1の層1511、正孔輸送層であ
る第2の層1512、発光層である第3の層1513、電子輸送層である第4の層151
4、電子注入層である第5の層1515が順次積層された構造を有する。
【0275】
第1の電極1502が形成された面が下方となるように、第1の電極1502が形成さ
れた基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減
圧した後、第1の電極1502上に、本発明の一態様であるフルオレン誘導体と酸化モリ
ブデン(VI)と共蒸着することにより、正孔注入層である第1の層1511を形成した
。その膜厚は、50nmとし、前記フルオレン誘導体と酸化モリブデン(VI)の比率は
、重量比で4:1=(フルオレン誘導体:酸化モリブデン)となるように蒸着レートを調
節した。なお、前記フルオレン誘導体として、発光素子4を形成する場合には、4−フェ
ニル−4’−[4−(9−フェニルフルオレン−9−イル)フェニル]トリフェニルアミ
ン(略称:BPAFLBi)を用い、発光素子5を形成する場合には、4−フェニル−4
’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)
を用いてそれぞれ形成した。
【0276】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の層上に正孔輸送材料を10nmの膜厚と
なるように成膜し、正孔輸送層である第2の層1512を形成した。なお、発光素子4を
形成する場合には、BPAFLBiを用い、発光素子5を形成する場合には、BPAFL
Pを用いてそれぞれ形成した。
【0277】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第2の層1512上に、発光層である第3の層
1513を形成した。なお、本実施例において発光層は2層とした。9−[4−(10−
フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)と4−
(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3
−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)とを共蒸着することにより、第2の
層1512上に第1の発光層を15nmの膜厚で形成した。ここで、CzPAとPCBA
PAとの重量比は、1:0.10=(CzPA:PCBAPA)となるように蒸着レート
を調節した。
【0278】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の発光層上に第2の発光層を形成した。9
−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:
CzPA)と4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−
カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)とを共蒸着するこ
とにより、第2の層1512上に第1の発光層を15nmの膜厚で形成した。ここで、C
zPAとPCBAPAとの重量比は、1:0.05=(CzPA:PCBAPA)となる
ように蒸着レートを調節した。
【0279】
その後、比較発光素子1と同様に電子輸送層である第4の層、電子注入層である第5の
層及び第2の電極をそれぞれ形成し、発光素子4および発光素子5を作製した。
【0280】
なお、発光素子4および発光素子5は、第1の層1511および第2の層1512以外
は同一工程で作成している。
【0281】
以上により、得られた発光素子4および発光素子5を、窒素雰囲気のグローブボックス
内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光
素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で
行った。
【0282】
発光素子4および発光素子5の電流密度−輝度特性を図26に示す。また、電圧−輝度
特性を図27、輝度−電流効率特性を図28にそれぞれ示す。図26では、縦軸に輝度(
cd/m)、横軸に電流密度(mA/cm)を示し、図27では縦軸に輝度(cd/
)、横軸に電圧(V)を示し、図28では、縦軸に電流効率(cd/A)、横軸に輝
度(cd/m)を示す。また、1000cd/m付近における発光素子の電圧、色度
、電流効率、及び外部量子効率を表3に示す。
【0283】
【表3】

【0284】
本実施例により、BPAFLBi(略称)およびBPAFLPを用いて形成した発光素
子が、発光素子として特性が得られ、十分機能することが確認できた。また信頼性試験の
結果から、発光素子を連続点灯させた場合であっても、膜の欠陥等に由来する短絡が生じ
ることがなく、信頼性の高い発光素子が得られたことがわかった。
【0285】
また、発光素子4および発光素子5に関し、初期輝度を1000cd/cmとして、
低電流駆動による連続点灯試験を行った結果を図29に示す(縦軸は、1000cd/c
を100%とした時の相対輝度である)。図29の結果から、発光素子4は850時
間後でも初期輝度の74%、発光素子5は850時間後でも初期輝度の75%の輝度を保
っており、長寿命であることがわかった。よって、本発明のBPAFLBi(略称)およ
びBPAFLP(略称)を適用することにより、長寿命な発光素子が得られることがわか
った。
【実施例6】
【0286】
本実施例では、実施例1で合成した本発明のフルオレン誘導体である4−フェニル−4
’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)
を用いて形成した発光素子の作製方法および素子特性の結果を示す。
【0287】
なお、本実施例における発光素子の素子構造は、図18に示す構造であり、発光素子6
は、正孔輸送層に上述した本発明のフルオレン誘導体を用いて形成したものである。本実
施例で用いる有機化合物の構造式を以下に示す。
【0288】
【化39】

【0289】
まず、ガラス基板である基板1501上に、酸化珪素を含む酸化インジウム−酸化スズ
をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1502を形成した。なお、その膜厚は、1
10nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0290】
次に、第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層1503を形成する。本実
施例5において、EL層1503は、正孔注入層である第1の層1511、正孔輸送層で
ある第2の層1512、発光層である第3の層1513、電子輸送層である第4の層15
14、電子注入層である第5の層1515が順次積層された構造を有する。
【0291】
第1の電極1502が形成された面が下方となるように、第1の電極1502が形成さ
れた基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減
圧した後、第1の電極1502上に、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェ
ニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着すること
により、正孔注入層である第1の層1511を形成した。その膜厚は50nmとし、NP
Bと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で4:2=(NPB:酸化モリブデン)と
なるように蒸着レートを調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で複数の蒸発源
から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0292】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の層1511上に正孔輸送性材料を10n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層である第2の層1512を形成した。なお、発
光素子6を形成する場合には、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イ
ル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を用い、比較発光素子7を形成する場合
には、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称
:NPB)を用いてそれぞれ形成した。
【0293】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第2の層1512上に、発光層である第3の層
1513を形成した。3−フェニル−9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジ
アゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11II)と(2−
フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:
Ir(ppy)acac)とを共蒸着することにより第3の層913を40nmの膜厚
で形成した。ここで、CO11IIとIr(ppy)acacとの重量比は、1:0.
08=(CO11II:Ir(ppy)acac)となるように蒸着レートを調節した

【0294】
さらに、第3の層1513上に抵抗加熱による蒸着法を用いて、ビス(2−メチル−8
−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq
)を10nm、その上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を20nmの膜厚と
なるように成膜し、電子輸送層である第4の層1514を形成した。
【0295】
その後、比較発光素子1と同様に電子輸送層である第4の層、電子注入層である第5の
層及び第2の電極を形成し、発光素子6および比較発光素子7を作製した。
【0296】
なお、発光素子6および比較発光素子7は、第2の層1512以外は同一工程で作成して
いる。
【0297】
以上により得られた発光素子6及び比較発光素子7を、窒素雰囲気のグローブボックス
内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光
素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で
行った。
【0298】
発光素子6及び比較発光素子7の電流密度−輝度特性を図30に示す。また、電圧−輝度
特性を図31、輝度−電流効率特性を図32にそれぞれ示す。図30では、縦軸に輝度(
cd/m)、横軸に電流密度(mA/cm)を示し、図31では縦軸に輝度(cd/
)、横軸に電圧(V)を示し、図32では、縦軸に電流効率(cd/A)、横軸に輝
度(cd/m)を示す。また、1000cd/m付近における発光素子の電圧、色度
、電流効率、及び外部量子効率を表4に示す。
【0299】
【表4】

【0300】
また、図33に発光素子6および比較発光素子7の発光スペクトルを示す。
【0301】
図33に示すように比較発光素子7では、ドーパント由来の発光の他に、正孔輸送層で
あるNPB由来の発光波長が観測された。このことは、NPBは電子をブロックする能力
が低く、内部量子効率の悪いNPBでも一部再結合が起きていることを示している。その
結果、電流効率、外部量子効率が低くなったと考えられる。さらに、NPBは三重項励起
エネルギーが低いため、発光層における三重項励起エネルギーがNPBにエネルギー移動
してしまい、電流効率、外部量子効率が低くなったと考えられる。一方発光素子6では、
発光層中のドーパント由来の発光のみが観測され、正孔輸送層中のBPAFLP(略称)
の発光は観測されなかった。したがって、BPAFLPは電子をブロックする能力が高い
上に、三重項励起エネルギーも大きいことが示唆される。その結果、生じた励起エネルギ
ーは発光層中の燐光材料であるドーパントで主に消費され光となり、高い電流効率が得ら
れたと言える。このように、本発明の一態様であるBPAFLP(略称)を正孔輸送層に
用いることで、高効率な素子が得られることがわかった。
【実施例7】
【0302】
本実施例7では、実施例1で合成したフルオレン誘導体である4−フェニル−4’−(
9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を用い
て形成した発光素子の作製方法および素子特性の測定結果を示す。
【0303】
なお、本実施例7における発光素子8〜10の素子構造は、図18に示す構造であり、
発光素子9は正孔輸送層に、発光素子10は正孔注入層および正孔輸送層に上述した本発
明のフルオレン誘導体を用いてそれぞれ形成したものである。本実施例7で用いる有機化
合物の構造式を以下に示す。
【0304】
【化40】

【0305】
まず、ガラス基板である基板1501上に、酸化珪素を含む酸化インジウム−酸化スズ
をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1502を形成した。なお、その膜厚は11
0nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0306】
次に、第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層1503を形成する。本実
施例において、EL層1503は、正孔注入層である第1の層1511、正孔輸送層であ
る第2の層1512、発光層である第3の層1513、電子輸送層である第4の層151
4、電子注入層である第5の層1515が順次積層された構造を有する。
【0307】
第1の電極1502が形成された面が下方となるように、第1の電極1502が形成さ
れた基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減
圧した後、第1の電極1502上に、正孔注入材料を50nmの膜厚となるように成膜し
、正孔注入層である第1の層1511を形成した。なお、発光素子8および発光素子9を
形成する場合には、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフ
ェニル(略称:NPB)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、正孔注入
層である第1の層1511を形成した。その膜厚は50nmとし、NPBと酸化モリブデ
ン(VI)の比率は、重量比で4:2=(NPB:酸化モリブデン)となるように蒸着レ
ートを調節した。また、発光素子10を形成する場合には、4−フェニル−4’−(9−
フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)と酸化モリ
ブデン(VI)とを共蒸着することにより、正孔注入層である第1の層1511を形成し
た。その膜厚は50nmとし、BPAFLPと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比
で4:1=(BPAFLP:酸化モリブデン)となるように蒸着レートを調節した。
【0308】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の層1511上に正孔輸送性材料を10n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層である第2の層1512を形成した。なお、発
光素子8を形成する場合には、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾー
ル−3−イル)トリフェニルアミン((略称:PCBA1BP)を用い、発光素子9およ
び発光素子10を形成する場合には、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−
9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を用いてそれぞれ形成した。
【0309】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第2の層上に、発光層である第3の層を形成し
た。本実施例では、3−フェニル−9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジア
ゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11II)と4−フェ
ニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略
称:PCBA1BP)とビス{2−(4−フルオロフェニル)−3,5−ジメチルピラジ
ナト}(ピコリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(dmFppr)pic)と
を共蒸着することにより第3の層を40nmの膜厚で形成した。ここで、CO11IIと
PCBA1BPとIr(dmFppr)picとの重量比は、1:0.15:0.1=
(CO11II:PCBA1BP:Ir(dmFppr)pic)となるように蒸着レ
ートを調節した。
【0310】
その後、比較発光素子1と同様に電子輸送層である第4の層、電子注入層である第5の
層及び第2の電極を形成し、発光素子8〜発光素子10を作製した。
【0311】
なお、発光素子8〜発光素子10は、第1の層1511および第2の層1512以外は
同一工程で作成している。
【0312】
以上により得られた発光素子8〜発光素子10を、窒素雰囲気のグローブボックス内に
おいて、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子
の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行っ
た。
【0313】
発光素子8〜発光素子10の電流密度−輝度特性を図34に示す。また、電圧−輝度特
性を図35、輝度−電流効率特性を図36にそれぞれ示す。図34では、縦軸に輝度(c
d/m)、横軸に電流密度(mA/cm)を示し、図35では縦軸に輝度(cd/m
)、横軸に電圧(V)を示し、図36では、縦軸に電流効率(cd/A)、横軸に輝度
(cd/m)を示す。また、1000cd/m付近における発光素子の電圧、色度、
電流効率、及び外部量子効率を表5に示す。
【0314】
【表5】

【0315】
いずれの素子からも高い発光効率が得られたが、発光素子8と発光素子9とを比較する
と、正孔輸送層にBPAFLPを用いた発光素子9の方が、電流効率が高いことがわかっ
た。さらに、発光素子9と発光素子10とを比較すると、正孔注入層および正孔輸送層の
どちらにもBPAFLPを用いた発光素子10の方が、電流効率が高いことがわかった。
【0316】
また、発光素子8〜発光素子10に関し、初期輝度を1000cd/cmとして、低
電流駆動による連続点灯試験を行った結果を図37に示す(縦軸は、1000cd/cm
を100%とした時の相対輝度である)。図37の結果から、発光素子8は650時間
後でも初期輝度の64%の輝度を保っていた。また、発光素子9は500時間後でも初期
輝度の71%の輝度を保っていた。また、発光素子10は500時間後でも初期輝度の7
2%の輝度を保っていた。よって、本発明の一態様に係るBPAFLP(略称)を適用す
ることにより、長寿命な発光素子が得られることがわかった。
【実施例8】
【0317】
ここで、本発明の一態様であるフルオレン誘導体が、正孔輸送性材料として適している
ことを示唆するシュミレーション結果を示す。
【0318】
シュミレーションに用いた有機化合物の構造式を以下に示す。
【0319】
【化41】

【0320】
まず、構造式(101)(略称:BPAFLP)、構造式(109)、構造式(114
)、(構造式151)(略称:BPAFLBi)、構造式(164)及びNPBの一重項
状態及び三重項状態における最安定構造を密度汎関数法で計算した。ここで、使用した量
子化学計算プログラムはGaussian03である。基底関数は、H、C、N原子には
、6−311G(d,p)を用いた。汎関数はB3LYPを用いた。
【0321】
次に、上記計算により得られた一重項状態及び三重項状態の最安定構造を用い、時間依
存密度汎関数法により、構造式(101)(略称:BPAFLP)、構造式(109)、
構造式(114)、構造式(151)(略称:BPAFLBi)、構造式(164)及び
NPBの励起エネルギーを計算した。基底関数、汎関数は上記と同じものを用いた。
【0322】
上記、計算により得られた一重項状態の最安定構造の最高占有軌道(High Occ
upied Molecular Orbital、略称HOMO)のエネルギー準位は
、表6に示す結果となった。
【0323】
【表6】

【0324】
表6の結果から、上記フルオレン誘導体は、NPBよりもHOMOのエネルギー準位が
低いことがわかった。よって、上記フルオレン誘導体を正孔輸送材料として用いた場合、
NPBと比較して、HOMOのより深い発光層への正孔注入性に優れていることがわかっ
た。
【0325】
また、TDDFTの計算で得られた一重項状態の最安定構造の第一励起エネルギー(一
重項)は、表7に示す結果となった。
【0326】
【表7】

【0327】
表7の結果から、上記フルオレン誘導体を正孔輸送材料として用いた場合、NPBと比
較して、発光層と正孔輸送層との境で、一重項励起子を正孔輸送層側に逃がしにくいこと
がわかった。
【0328】
次に、TDDFTの計算で得られた三重項状態の最安定構造の第一励起エネルギー(三重
項)は、表8に示す結果となった。
【0329】
【表8】

【0330】
表8の結果から、上記フルオレン誘導体は正孔輸送材料として用いた場合、NPBと比
較して、発光層と正孔輸送層との境で、三重項励起子を発光層から正孔輸送層側に逃がし
にくいことがわかった。また、上記フルオレン誘導体を燐光ホスト材料として用いた場合
、ゲスト材料を励起しやすいことがわかった。
【実施例9】
【0331】
本実施例9では、実施例1で合成したフルオレン誘導体である4−フェニル−4’−(
9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を用い
て形成した発光素子の作製方法および素子特性の測定結果を示す。
【0332】
なお、本実施例9における発光素子11および比較発光素子12の素子構造は、図18
に示す構造であり、発光素子11は正孔注入層および正孔輸送層に上述した本発明のフル
オレン誘導体を用いて形成したものである。
【0333】
まず、ガラス基板である基板1501上に、酸化珪素を含む酸化インジウム−酸化スズ
をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1502を形成した。なお、その膜厚は11
0nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0334】
次に、第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層1503を形成する。本実
施例において、EL層1503は、正孔注入層である第1の層1511、正孔輸送層であ
る第2の層1512、発光層である第3の層1513、電子輸送層である第4の層151
4、電子注入層である第5の層1515が順次積層された構造を有する。
【0335】
第1の電極1502が形成された面が下方となるように、第1の電極1502が形成さ
れた基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減
圧した後、第1の電極1502上に、正孔注入材料を50nmの膜厚となるように成膜し
、正孔注入層である第1の層1511を形成した。発光素子11を形成する場合には、4
−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:
BPAFLP)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、正孔注入層である
第1の層1511を形成した。その膜厚は50nmとし、BPAFLPと酸化モリブデン
(VI)の比率は、重量比で4:2=(BPAFLP:酸化モリブデン)となるように蒸
着レートを調節した。また、比較発光素子12を形成する場合には、)、4,4’,4’
’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)と酸化モ
リブデン(VI)とを共蒸着することにより、正孔注入層である第1の層1511を形成
した。その膜厚は50nmとし、TCTAと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で
4:2=(TCTA:酸化モリブデン)となるように蒸着レートを調節した。
【0336】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の層1511上に正孔輸送性材料を10n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層である第2の層1512を形成した。なお、発
光素子11を形成する場合には、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−
イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を用い、比較発光素子12を形成する
場合には、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(
略称:TCTA)を用いてそれぞれ形成した。
【0337】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第2の層上に、発光層である第3の層を形成し
た。本実施例では、9−[4−(4,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール
−3−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzTAZI)とビス[2−(4
’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリ
ナート(略称:FIrpic)とを共蒸着することにより第3の層を30nmの膜厚で形
成した。ここで、CzTAZIとFIrpicとの重量比は、1:0.06=(CzTA
ZI:FIrpic)となるように蒸着レートを調節した。
【0338】
さらに、第3の層1513上に抵抗加熱による蒸着法を用いて3−(4−ビフェニリル
)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール
(略称:TAZ01)を10nm、その上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)
を20nmの膜厚となるように成膜し、電子輸送層である第4の層1514を形成した。
【0339】
その後、比較発光素子1と同様に電子注入層である第5の層及び第2の電極を形成し、
発光素子11及び比較発光素子12を、それぞれ作製した。
【0340】
なお、発光素子11および比較発光素子12は、第1の層1511および第2の層151
2以外は同一工程で作成している。
【0341】
以上により得られた発光素子11および比較発光素子12を、窒素雰囲気のグローブボ
ックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これら
の発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲
気)で行った。
【0342】
発光素子11および比較発光素子12の電流密度−輝度特性を図38に示す。また、電
圧−輝度特性を図39、輝度−電流効率特性を図40にそれぞれ示す。図38では、縦軸
に輝度(cd/m)、横軸に電流密度(mA/cm)を示し、図39では縦軸に輝度
(cd/m)、横軸に電圧(V)を示し、図40では、縦軸に電流効率(cd/A)、
横軸に輝度(cd/m)を示す。また、1000cd/m付近における発光素子の電
圧、色度、電流効率、及び外部量子効率を表9に示す。
【0343】
【表9】

【0344】
本発明のフルオレン誘導体であるBPAFLP(略称)を、第1の層1511と第2の
層1512に用いた発光素子11は、駆動電圧が5.2Vのとき、輝度910cd/m
、電流値は0.18mAであった。BPAFLP(略称)の代わりにTCTA(略称)を
用いた比較発光素子12は、駆動電圧が5.2Vのとき、輝度850cd/m、電流値
は0.19mAであった。このことから、第1の層1511と第2の層1512にBPA
FLP(略称)を用いた発光素子11は、比較発光素子12と比較して、電流効率が高い
ことがわかった。よって本発明の一態様に係るBPAFLP(略称)をホール注入層およ
びホール輸送層として適用することにより、高効率な発光素子を得ることができることが
わかった。
【0345】
また、図41に発光素子11および比較発光素子12の発光スペクトルを示す。
【0346】
発光素子11、比較発光素子12のどちらの素子もリン光性ドーパント材料であるFIr
pic(略称)由来の発光スペクトルが観測され、第3の層1513と隣接する層由来の
発光は観測されなかった。このことから、どちらの素子も第3の層1513でのキャリア
の再結合が良好であり、良好なキャリアバランスで発光させることができた。またこのと
き、発光素子11が比較発光素子12よりも高い電流効率を示していることから、BPA
FLP(略称)の方がよりキャリアバランスが良好(第3の層1513からの電子をブロ
ックし、第3の層1513へのホールをより流す)であることと、三重項励起エネルギー
も大きいことが示唆される。(このとき、本発明の一態様に係るBPAFLP(略称)の
LUMO準位は、TCTA(略称)のそれ(−2.30eV)とほぼ同様であり、バンド
ギャップ(Bg)はTCTA(略称)のそれ(3.40eV)よりも狭いことから、本発
明の一態様に係るBPAFLP(略称)がホール輸送性のより高い材料であるため、発光
層でのキャリアの再結合が効率よく行われていたことにより、より高効率が得られたと考
えられる。)
【実施例10】
【0347】
本実施例では、実施例1で合成したフルオレン誘導体である4−フェニル−4’−(9
−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を用いて
形成した発光素子の作製方法および素子特性の測定結果を示す。
【0348】
なお、本実施例における発光素子13の素子構造は、図18に示す構造であり、正孔注
入層および正孔輸送層に上述した本発明のフルオレン誘導体(略称:BPAFLP)を用
いて形成したものである。本実施例で用いる有機化合物の構造式を以下に示す。
【0349】
まず、ガラス基板である基板1501上に、酸化珪素を含む酸化インジウム−酸化スズ
をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1502を形成した。なお、その膜厚は、1
10nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0350】
次に、第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層1503を形成する。本実
施例において、EL層1503は、正孔注入層である第1の層1511、正孔輸送層であ
る第2の層1512、発光層である第3の層1513、電子輸送層である第4の層151
4、電子注入層である第5の層1515が順次積層された構造を有する。
【0351】
第1の電極1502が形成された面が下方となるように、第1の電極1502が形成さ
れた基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減
圧した後、第1の電極1502上に、正孔注入材料を50nmの膜厚となるように成膜し
、正孔注入層である第1の層1511を形成した。発光素子13を形成する場合には、4
−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:
BPAFLP)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、正孔注入層である
第1の層1511を形成した。その膜厚は50nmとし、BPAFLPと酸化モリブデン
(VI)の比率は、重量比で4:2=(BPAFLP:酸化モリブデン)となるように蒸
着レートを調節した。
【0352】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の層1511上に正孔輸送性材料を10n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層である第2の層1512を形成した。なお、発
光素子13を形成する場合には、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−
イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を用いて形成した。
【0353】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第2の層1512上に、発光層である第3の層
1513を形成した。4−[3−(トリフェニレン−2−イル)フェニル]ジベンゾチオ
フェン(略称:mDBTPTp−II)とトリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’
)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、とを共蒸着することにより第3の
層1513を40nmの膜厚で形成した。ここで、mDBTPTp−IIとIr(ppy
との重量比は、1:0.08=(mDBTPTp−II:Ir(ppy))となる
ように蒸着レートを調節した。
【0354】
さらに、第3の層1513上に抵抗加熱による蒸着法を用いてmDBTPTp−IIを
10nm、その上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を20nmの膜厚となる
ように成膜し、電子輸送層である第4の層1514を形成した。
【0355】
その後、比較発光素子1と同様に電子注入層である第5の層及び第2の電極を形成し、
発光素子13を作製した。
【0356】
以上により得られた発光素子13を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光
素子13が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子13の動作特性に
ついて測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0357】
発光素子13の電流密度−輝度特性を図42に示す。また、電圧−輝度特性を図43、
輝度−電流効率特性を図44にそれぞれ示す。図42では、縦軸に輝度(cd/m)、
横軸に電流密度(mA/cm)を示し、図43では縦軸に輝度(cd/m)、横軸に
電圧(V)を示し、図44では、縦軸に電流効率(cd/A)、横軸に輝度(cd/m
)を示す。また、1000cd/m付近における発光素子の電圧、色度、電流効率を表
7に示す。
【0358】
【表10】

【0359】
本実施例により、本発明のフルオレン誘導体(略称:BPAFLP)を用いて形成し
た発光素子13が、発光素子として特性が得られ、十分機能することが確認できた。また
信頼性試験の結果から、発光素子を連続点灯させた場合であっても、膜の欠陥等に由来す
る短絡が生じることがなく、信頼性の高い発光素子が得られたことがわかった。
【0360】
また、発光素子13に関し、初期輝度を1000cd/cmとして、低電流駆動によ
る連続点灯試験を行った。その結果から、発光素子13は1900時間後でも初期輝度の
86%の輝度を保っており、長寿命であることがわかった。よって、本発明の一態様に係
るBPAFLP(略称)をホール輸送層として適用することにより、長寿命な発光素子を
得ることができることがわかった。
【実施例11】
【0361】
≪合成例3≫
本実施例では、実施の形態1に一般式(G1)として示した本発明の一態様であるフル
オレン誘導体の合成例を示す。具体的には実施の形態1の構造式(118)で示した、4
−フェニル−3’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:
mBPAFLP)の合成方法について説明する。mBPAFLPの構造を以下に示す。
【0362】
【化42】

【0363】
[ステップ1:9−(3−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレンの合成法]
200mL三口フラスコに、2−ブロモビフェニル4.2g(18mmol)の脱水T
HF溶液30mLを加えて−78℃にて撹拌した。ここに、1.57Mのn−BuLiの
ヘキサン溶液を11mL(18mmol)を滴下し、2.5時間撹拌した。ここに、3−
ブロモベンゾフェノン3.9g(15mmol)の脱水THF溶液40mLを滴下し、2
時間撹拌した後、室温にて16時間撹拌した。
【0364】
反応後、この混合液に1N−塩酸水溶液を加え、1時間撹拌した。これを水で洗浄した
。得られた有機相を濃縮し、アメ状の物質を得た。
【0365】
200mLナスフラスコに、このアメ状物質と、氷酢酸20mLと、塩酸1.0mLと
を入れ、窒素雰囲気下、130℃で2時間加熱撹拌し、反応させた。
【0366】
反応後、この反応混合液を氷冷した150mLの水に滴下した。キャラメル状の固体が
析出した。この上清をデカンテーションで除いた。このキャラメル状の固体をトルエン1
00mLに溶かし、これを撹拌しながら飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を泡が出なくなる
まで加えた。この有機層を水で洗浄したのち、シリカゲルを加えて水分を吸着させた。こ
れをろ過して得られたろ液を濃縮し、メタノールを加えて氷冷しながら超音波をかけ、生
じた固体をろ取した。目的物の白色粉末を収量4.9g、収率83%で得た。また、上記
合成法の反応スキームを下記(J−5)に示す。
【0367】
【化43】

【0368】
[ステップ2:4−フェニル−3’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニ
ルアミン(略称:mBPAFLP)の合成法]
200mL三口フラスコへ、9−(3−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレンを
2.4g(6.0mmol)、4−フェニル−ジフェニルアミンを1.5g(6.0mm
ol)、ナトリウム tert−ブトキシドを1.0g(10mmol)、ビス(ジベン
ジリデンアセトン)パラジウム(0)を3.0mg(0.005mmol)加え、フラス
コ内の雰囲気を窒素置換した。この混合物へ、脱水キシレン25mLを加えた。この混合
物を、減圧下で攪拌しながら脱気した後、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(10w
t%ヘキサン溶液)0.2mL(0.1mmol)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気
下、130℃で2.5時間加熱撹拌し、反応させた。
【0369】
反応後、この反応混合液にトルエン200mLを加え、この懸濁液をフロリジール、ア
ルミナ、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)を通し
てろ過した。得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒
トルエン:ヘキサン=1:4)による精製を行った。得られたフラクションを濃縮し、ア
セトンとメタノールを加えて超音波をかけたのち、再結晶したところ、目的物の白色粉末
を収量3.2g、収率97%で得た。また、上記合成法の反応スキームを下記(J−6)
に示す。
【0370】
【化44】

【0371】
シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)でのRf値(展開溶媒 酢酸エチル:ヘ
キサン=1:10)は、目的物は0.5、1、9−(3−ブロモフェニル)−9−フェニ
ルフルオレンは0.62、4−フェニル−ジフェニルアミンは0.39だった。
【0372】
上記ステップ2で得られた化合物を核磁気共鳴法(NMR)により測定した。以下に測
定データを示す。また、H NMRチャートを図45に示す。測定結果から、上述の構
造式(118)で表される本発明のフルオレン誘導体であるmBPAFLP(略称)が得
られたことがわかった。
【0373】
H NMR(CDCl,300MHz):δ(ppm)=6.72(d、J=8.
4、1H)、6.92−7.36(m、22H)、7.40−7.44(m、4H)、7
.54−7.57(m、2H)、7.72−7.75(m、2H)。
【0374】
また上記ステップ2で得られた化合物の分子量を、GC/MS検出器(Thermo
Fisher製、ITQ1100イオントラップ型GCMSシステム)により測定した。
これにより、分子量561.3(モードはEI+)をメインとするピークを検出し、目的
物のmBPAFLP(略称)が得られたことを確認した。
【0375】
また以下のとおり、得られた目的物のmBPAFLP(略称)について種々の物性を測
定した。
【0376】
吸収スペクトル(測定範囲200nm〜800nm)を、紫外可視分光光度計(日本分
光株式会社製、V550型)を用いて測定した。図46にトルエン溶液及び薄膜の吸収ス
ペクトルを示す。横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。トルエン溶
液は、石英セルに入れて測定し、石英とトルエンの吸収スペクトルを差し引いたスペクト
ルを図示した。また薄膜は、石英基板に蒸着したサンプルを測定し、石英の吸収スペクト
ルを差し引いたスペクトルを図示した。これらスペクトル図より、長波長側の吸収ピーク
は、トルエン溶液の場合では310nmと325nm付近に見られ、薄膜の場合では31
2nmと329nm付近に見られることがわかった。
【0377】
発光スペクトルを蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用いて測定し
た。図47にトルエン溶液及び薄膜の発光スペクトルを示す。横軸は波長(nm)、縦軸
は発光強度(任意単位)を表す。トルエン溶液は石英セルに入れて測定し、薄膜は、石英
基板に蒸着したサンプルを測定した。これらスペクトル図より、最大発光波長はトルエン
溶液の場合では382nm(励起波長340nm)、薄膜の場合では393nm(励起波
長343nm)であることがわかった。
【0378】
薄膜を大気中にて光電子分光法(理研計器社製、AC−2)で測定した結果、HOMO
準位は−5.73eVであった。薄膜の吸収スペクトルのTaucプロットから吸収端は
3.34eVであった。従って、固体状態のエネルギーギャップは3.34eVと見積も
られ、このことはLUMO準位が−2.39eVであることを意味する。このことから、
mBPAFLP(略称)は、比較的深めのHOMO準位をもち、広いバンドギャップ(B
g)をもつことがわかった。
【0379】
酸化還元反応特性をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって調べた。測定に
は、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aま
たは600C)を用いた。
【0380】
酸化反応特性を、参照電極に対する作用電極の電位を0.38Vから0.69Vまで走
査した後、0.69Vから0.38Vまで走査し測定した。その結果、HOMO準位は、
−5.53[eV]であることがわかった。また、100サイクル後でも酸化ピークが同
様の値となった。このことから、酸化状態と中性状態間の酸化還元の繰り返しに良好な特
性を示すことがわかった。
【0381】
また融点を測定した。融点は211−212℃であった。
【実施例12】
【0382】
本実施例では、実施例1で合成したフルオレン誘導体である4−フェニル−3’−(9
−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)を用い
て形成した発光素子の作製方法および素子特性の測定結果を示す。
【0383】
なお、本実施例における発光素子の素子構造は、図18に示す構造である。発光素子1
4は、正孔注入層および正孔輸送層に上述した本発明の一態様であるフルオレン誘導体(
略称:mBPAFLP)を用いて形成したものである。
【0384】
まず、ガラス基板である基板1501上に、酸化珪素を含む酸化インジウム−酸化スズ
をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1502を形成した。なお、その膜厚は、1
10nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0385】
次に、第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層1503を形成する。本実
施例5において、EL層1503は、正孔注入層である第1の層1511、正孔輸送層で
ある第2の層1512、発光層である第3の層1513、電子輸送層である第4の層15
14、電子注入層である第5の層1515が順次積層された構造を有する。
【0386】
第1の電極1502が形成された面が下方となるように、第1の電極1502が形成さ
れた基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減
圧した後、第1の電極1502上に、正孔注入材料を50nmの膜厚となるように成膜し
、正孔注入層である第1の層1511を形成した。発光素子14を形成する場合には、4
−フェニル−3’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:
mBPAFLP)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、正孔注入層であ
る第1の層1511を形成した。その膜厚は50nmとし、mBPAFLP(略称)と酸
化モリブデン(VI)の比率は、重量比で4:2=(mBPAFLP:酸化モリブデン)
となるように蒸着レートを調節した。また、比較発光素子15を形成する場合には、)、
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NP
B)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、正孔注入層である第1の層1
511を形成した。その膜厚は50nmとし、NPBと酸化モリブデン(VI)の比率は
、重量比で4:2=(NPB:酸化モリブデン)となるように蒸着レートを調節した。
【0387】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の層1511上に正孔輸送性材料を10n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層である第2の層1512を形成した。なお、発
光素子14を形成する場合には、4−フェニル−3’−(9−フェニルフルオレン−9−
イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)を用い、比較発光素子15を形成す
る場合には、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
(略称:NPB)を用いてそれぞれ形成した。
【0388】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第2の層1512上に、発光層である第3の層
1513を形成した。9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H
−カルバゾール(略称:CzPA)と4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−
(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA
PA)とを共蒸着することにより第3の層1513を30nmの膜厚で形成した。ここで
、CzPAとPCBAPAとの重量比は、1:0.075=(CzPA:PCBAPA)
となるように蒸着レートを調節した。
【0389】
さらに、第3の層1513上に抵抗加熱による蒸着法を用いて、トリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)を10nm、その上にバソフェナントロ
リン(略称:BPhen)を20nmの膜厚となるように成膜し、電子輸送層である第4
の層1514を形成した。
【0390】
第4の層1514上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚となるように成膜す
ることにより、電子注入層である第5の層1515を形成した。
【0391】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、アルミニウムを200nmの膜厚となるように
成膜することにより、第2の電極1504を形成し、発光素子14、比較発光素子15を
作製した。
【0392】
なお、発光素子14および比較発光素子15は、第1の層1511および第2の層15
12以外は同一工程で作成している。
【0393】
以上により得られた発光素子14および比較発光素子15を、窒素雰囲気のグローブボ
ックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これら
の発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲
気)で行った。
【0394】
発光素子14および比較発光素子15の電流密度−輝度特性を図48に示す。また、電
圧−輝度特性を図49、輝度−電流効率特性を図50にそれぞれ示す。図48では、縦軸
に輝度(cd/m)、横軸に電流密度(mA/cm)を示し、図49では縦軸に輝度
(cd/m)、横軸に電圧(V)を示し、図50では、縦軸に電流効率(cd/A)、
横軸に輝度(cd/m)を示す。また、1000cd/cm付近における発光素子の
電圧、色度、電流効率を表11に示す。
【0395】
【表11】

【0396】
発光素子14は、駆動電圧が3.4Vのとき、輝度1100cd/m、電流値は0.
72mAであった。第2の層1512にNPBを用いた比較発光素子15と比較しても、
第2の層1512にBPAFLP(略称)を用いた発光素子14は、電流効率が高いこと
がわかった。これは、比較発光素子15と比較して、発光素子14のキャリアバランスが
向上しているためと考えられる。それは(NPBと比較して)BPAFLP(略称)の、
HOMO準位が発光層のホスト材料のCzPA(略称)のHOMO準位と近いために、正
孔輸送層から発光層へのホール注入性が向上したためと考えられる。またさらに、(PB
と比較して)BPAFLP(略称)の、LUMO準位が高いために、発光層から正孔輸送
層への電子ブロック性が向上したためと考えられる。またさらに、(NPBと比較して)
BPAFLP(略称)のバンドギャップ(Bg)が広いために、第3の層1513(発光
層)で生じた励起子が、隣接する層である第2の層1512へ移動せずに(消光されずに
)閉じこめられたためと考えられる。
【0397】
また、発光素子14および比較発光素子15に関し、初期輝度を1000cd/cm
を100%として、低電流駆動による連続点灯試験を行った。結果から、280時間後に
は、発光素子14は初期輝度の80%、比較発光素子15は初期輝度の72%の輝度を保
っており、長寿命であることがわかった。よって、本発明のmBPAFLP(略称)を適
用することにより、長寿命な発光素子が得られることがわかった。
【0398】
(参考例1)
上記実施例3〜実施例5で用いた4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(
9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAP
A)の合成方法について具体的に説明する。
【0399】
【化45】

【0400】
4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾー
ル−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)の合成PCBAPAの合成ス
キームを下記(X−1)に示す。
【0401】
【化46】

【0402】
9−(4−ブロモフェニル)−10−フェニルアントラセン7.8g(12mmol)
、4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)ジフェニルアミン(略称:PC
BA)4.8g(12mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド5.2g(52m
mol)を300mL三口フラスコへ入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物へ、
トルエン60mL、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(10wt%ヘキサン溶液)0
.30mLを加えた。この混合物を、減圧下で攪拌しながら脱気し、脱気後、ビス(ジベ
ンジリデンアセトン)パラジウム(0)136mg(0.24mmol)を加えた。この
混合物を、100℃で3時間攪拌した。攪拌後、この混合物に約50mLのトルエンを加
え、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ
、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して
吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し、黄色固体を得た。この固体をトルエン/ヘキサン
にて再結晶し、目的物であるPCBAPAの淡黄色固体を6.6g、収率75%で得た。
【0403】
得られた淡黄色粉末状固体3.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した
。昇華精製条件は、圧力8.7Pa、アルゴンガスを流量3.0mL/minで流しなが
ら、350℃でPCBAPAを加熱した。昇華精製後、PCBAPAの淡黄色固体を2.
7g、回収率90%で得た。
【0404】
得られた化合物を核磁気共鳴法(H NMR)により測定した。以下に測定データを
示す。
【0405】
H NMR(CDCl,300MHz):δ=7.09−7.14(m,1H),
7.28−7.72(m,33H),7.88(d,J=8.4Hz,2H),8.19
(d,J=7.2Hz,1H),8.37(d,J=1.5Hz,1H)。
【0406】
測定結果から、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9
H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)が得られたこ
とがわかった。
【0407】
上述の4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カル
バゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)を用いることで、先の
実施例で示した発光素子1〜発光素子5を形成することができる。
【0408】
(参考例2)
上記実施例6及び実施例7で用いた3−フェニル−9−[4−(5−フェニル−1,3
,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11
II)の合成方法について具体的に説明する。
【0409】
【化47】

【0410】
3−フェニル−9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル
)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11II)の合成スキームを(Y−1)
に示す。
【0411】
【化48】

【0412】
2−(4−ヨードフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール2.3g
(6.6mmol)、3−フェニル−9H−カルバゾール1.6g(6.6mmol)、
ナトリウム tert−ブトキシド1.4g(15mmol)を100mL三口フラスコ
に入れ、当該フラスコ内を窒素置換した。この混合物へトルエン30mL、トリ(ter
t−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えて、当該フラスコ内をア
スピレータにより減圧することで、この混合物を脱気したのち、フラスコ内を窒素置換し
た。この混合物にビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.058g(0.
10mmol)を加え、窒素気流下、80℃で15時間攪拌した。撹拌後、この混合物に
トルエンを加え、この懸濁液を飽和炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄した。
洗浄後、有機層に硫酸マグネシウムを加えて水分を吸着させた。その後、この混合物を吸
引ろ過してろ液を得た。得られたろ液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号
:540−16855)を通して吸引ろ過し、ろ液を得た。得られたろ液を濃縮して得た
化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。カラムクロマトグラフィ
ーはまずトルエンを展開溶媒として用い、次いでトルエン:酢酸エチル=4:1の混合溶
媒を展開溶媒として用いることにより行った。得られたフラクションを濃縮して得た固体
にアセトンを加え、超音波を照射して洗浄した。この混合物を吸引ろ過して固体を回収し
た。回収した固体をクロロホルムとヘキサンの混合溶媒で再結晶したところ、粉末状白色
固体を収量2.0g、収率64%で得た。
【0413】
得られた白色固体1.1gの昇華精製をトレインサブリメーション法により行った。昇
華精製は3.0Paの減圧下、アルゴンの流量を5mL/minとして240℃で16時
間行った。収量0.98gで収率は89%であった。
【0414】
得られた化合物を核磁気共鳴法(1H NMR)により測定した。以下に測定データを
示す。
【0415】
H NMR(CDCl,300MHz):δ=7.30−7.76(m,13H)
、7.79(d,J=8.3Hz,2H)、8.14−8.24(m,3H)、8.35
(sd,J=1.5Hz,1H)、8.39(d,J=8.8Hz,2H)。
【0416】
測定結果から3−フェニル−9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾー
ル−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11II)が得られたこと
がわかる。
【0417】
上述の3−フェニル−9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2
−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11II)を用いることで、先の
実施例で示した発光素子6〜発光素子10を形成することができる。
【0418】
(参考例3)
上記実施例7で用いた4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3
−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)の合成方法について具体的に説明
する。
【0419】
【化49】

【0420】
4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニル
アミン(略称:PCBA1BP)の合成スキームを(Z−1)に示す。
【0421】
【化50】

【0422】
4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)ジフェニルアミン2.0g(4
.9mmol)、4−ブロモビフェニル1.1g(4.9mmol)、ナトリウム te
rt−ブトキシド2.0g(20mmol)を100mL三口フラスコへ入れ、フラスコ
内を窒素置換した。この混合物へ、トルエン50mL、トリ(tert−ブチル)ホスフ
ィン(10wt%ヘキサン溶液)0.30mLを加えた。
【0423】
この混合物を、減圧下で攪拌しながら脱気し、脱気後、ビス(ジベンジリデンアセトン
)パラジウム(0)0.10gを加えた。次に、この混合物を、80℃で5時間加熱撹拌
し、反応させた。反応後、反応混合物にトルエンを加え、この懸濁液をこの懸濁液をセラ
イト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリ
ジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引ろ過
し、ろ液を得た。得られたろ液を飽和炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄した
。有機層に硫酸マグネシウムを加えて水分を吸着させた。乾燥後、この混合物を吸引ろ過
し、硫酸マグネシウムを除去してろ液を得た。
【0424】
得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行った。シ
リカゲルカラムクロマトグラフィーはまずトルエン:ヘキサン=1:9の混合溶媒を展開
溶媒として用い、ついでトルエン:ヘキサン=3:7の混合溶媒を展開溶媒として用いる
ことにより行った。得られたフラクションを濃縮して得た固体をクロロホルムとヘキサン
の混合溶媒により再結晶したところ、白色粉末状固体の収量は2.3g、収率は84%で
あった。
【0425】
得られた白色固体1.2gの昇華精製をトレインサブリメーション法により行った。昇
華精製は7.0Paの減圧下、アルゴンの流量を3mL/minとして280℃で20時
間行った。収量は1.1g、収率は89%であった。
【0426】
得られた化合物を核磁気共鳴法(H NMR)により測定した。以下に測定データを
示す。
【0427】
H NMR(DMSO−d,300MHz):δ(ppm)=7.05−7.20
(m,7H),7.28−7.78(m,21H),8.34(d,J=7.8Hz,1
H),8.57(s,1H)
【0428】
測定結果から、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル
)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)が得られたことがわかる。
【0429】
上述の4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフ
ェニルアミン(略称:PCBA1BP)を用いることで、先の実施例で示した発光素子8
〜発光素子10を形成することができる。
【0430】
(参考例4)
参考例3で説明した4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−
イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)の別の合成方法について具体的に説
明する。この合成法は、より高純度の目的物が収率良く簡便であり、好ましい。
【0431】
【化51】

【0432】
[ステップ1:3−(4−ブロモフェニル)−9−フェニル−9H−カルバゾールの合成
法]
3−(4−ブロモフェニル)−9−フェニル−9H−カルバゾールの合成スキームを(Z
−2)に示す。
【0433】
【化52】

【0434】
300mL三口フラスコにて、4−ブロモヨードベンゼン14g(50mmol)、9
−フェニル−9H−カルバゾール−3−ボロン酸14g(50mmol)、酢酸パラジウ
ム(II)110mg(0.5mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン300mg(
1.0mmol)、トルエン50mL、エタノール10mL、2mol/L炭酸カリウム
水溶液25mLの混合物を、減圧下で攪拌しながら脱気した後、窒素雰囲気下、80℃で
6時間加熱撹拌し、反応させた。
【0435】
反応後、この反応混合液にトルエン200mLを加え、この懸濁液をフロリジール(和
光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト(和光純薬工業株
式会社、カタログ番号:531−16855)を通してろ過した。得られたろ液を水で洗
浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を吸着させた。この懸濁液をろ過してろ液を得た。
得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行った。この
とき、クロマトグラフィーの展開溶媒として、トルエンとヘキサンの混合溶媒(トルエン
:ヘキサン=1:4)を用いた。得られたフラクションを濃縮し、ヘキサンを加えて超音
波をかけたのち、再結晶したところ、目的物の白色粉末を収量15g、収率75%で得た

【0436】
シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)でのRf値(展開溶媒 酢酸エチル:ヘ
キサン=1:10)は、目的物は0.32、4−ブロモヨードベンゼンは0.74だった

【0437】
また、副生成物の、1,4−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)ベ
ンゼンのRf値(展開溶媒 酢酸エチル:ヘキサン=1:10)は0.23だったが、反
応懸濁液中のTLC上ではかすかにスポットがみられただけだった。これにより、原料と
して用いた、ジハロゲン化物である4−ブロモヨードベンゼンの、ヨウ素の部分がブロモ
の部分よりも反応性が高いため、選択的(優先的)にホウ素化合物である、9−フェニル
−9H−カルバゾール−3−ボロン酸と反応したことが分かった(つまり、ジハロゲン化
物とホウ素化合物をほぼ1:1で反応させることができた)。また、目的物のRf値と副
生成物のRf値とは十分に離れているため、上述のカラム精製において、目的物と副生成
物とを容易に分離することができた。
【0438】
上記ステップ1で得られた化合物を核磁気共鳴法(NMR)により測定した。以下に測
定データを示す。
【0439】
H NMR(CDCl3,300MHz):δ(ppm)=7.24−7.32(m
,1H)、7.40−7.64(m,13H)、8.17(d,J=7.2,1H)、8
.29(s,1H)。
【0440】
測定結果から、目的物である3−(4−ブロモフェニル)−9−フェニル−9H−カル
バゾールが得られたことを確認した。
【0441】
上記化合物の分子量を、GC−MS検出器(Thermo Fisher製、ITQ1
100イオントラップ型GCMSシステム)により測定した。分子量397.13(モー
ドはEI+)をメインとするピークを検出し、測定結果から、目的物である3−(4−ブ
ロモフェニル)−9−フェニル−9H−カルバゾールが得られたことを確認した。
【0442】
また、このGC−MS検出では、副生成物の、1,4−ビス(9−フェニル−9H−カ
ルバゾール−3−イル)ベンゼン(分子量560.2)由来のピークは検出されなかった
。よってステップ1の反応を行うことで、非常に収率よく、簡便に、純度の高い目的物が
得られたことがわかる。
【0443】
[ステップ2:4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)
トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)の合成法]
4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルア
ミン(略称:PCBA1BP)の合成スキームを(Z−3)に示す。
【0444】
【化53】

4−フェニル−ジフェニルアミンと、3−(4−ブロモフェニル)−9−フェニル−9
H−カルバゾールとを、パラジウム触媒、パラジウム触媒の配位子、及び塩基を用いて、
有機溶媒中にて加熱撹拌し、反応させた。
【0445】
反応後、この反応混合液を精製し、目的物の白色粉末を得た。
【0446】
得られた化合物を核磁気共鳴法(H NMR)により測定した。測定結果から、参考
例3と同じく、目的物の4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3
−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)が得られたことがわかった。
【0447】
以上のことから、参考例4で示した合成法は、高純度の目的物が収率良く簡便に得られ
ることがわかった。
【符号の説明】
【0448】
101 基板
102 第1の電極
103 EL層
104 第2の電極
111 層
112 層
113 層
114 層
115 層
301 電極
302 電極
303 EL層
304 EL層
305 電荷発生層
401 ソース側駆動回路
402 画素部
403 ゲート側駆動回路
404 封止基板
405 シール材
407 空間
408 配線
409 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
410 素子基板
411 スイッチング用TFT
412 電流制御用TFT
413 第1の電極
414 絶縁物
416 EL層
417 第2の電極
418 発光素子
423 Nチャネル型TFT
424 Pチャネル型TFT
501 基板
502 第1の電極
503 第2の電極
504 EL層
505 絶縁層
506 隔壁層
511 第1の発光ユニット
512 第2の発光ユニット
513 電荷発生層
521 第1の電極
522 第2の電極
611 筐体
612 支持台
613 表示部
614 スピーカー部
615 ビデオ入力端子
621 本体
622 筐体
623 表示部
624 キーボード
625 外部接続ポート
626 ポインティングデバイス
631 本体
632 筐体
633 表示部
634 音声入力部
635 音声出力部
636 操作キー
637 外部接続ポート
638 アンテナ
641 本体
642 表示部
643 筐体
644 外部接続ポート
645 リモコン受信部
646 受像部
647 バッテリー
648 音声入力部
649 操作キー
650 接眼部
701 筐体
702 液晶層
703 バックライト
704 筐体
705 ドライバIC
706 端子
801 筐体
802 光源
901 照明装置
902 テレビ装置
913 層
1501 基板
1502 第1の電極
1503 EL層
1504 第2の電極
1511 層
1512 層
1513 層
1514 層
1515 層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(101)で表される化合物。
【化1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【公開番号】特開2013−67641(P2013−67641A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−265232(P2012−265232)
【出願日】平成24年12月4日(2012.12.4)
【分割の表示】特願2010−122344(P2010−122344)の分割
【原出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】