説明

化学タンクの腐食監視制御システム

【課題】従来の技術による諸問題を解決するため、製作工場またはタンク貨車に広範囲に利用される化学タンクの腐食監視制御システムを提供する。
【解決手段】腐食性液体化学薬品を保存する化学タンクの腐食監視システムは、導電外殻と絶縁ライニングからなって腐食性液体化学薬品を収容するタンク本体と、タンク本体に収容される腐食性液体化学薬品にひたる検知電極と、検知電極と電気的に接続される測定器とを含む。そのうち測定器は導電外殻と電気的に接続され、絶縁ライニングが腐食されてタンク本体内の腐食性液体化学薬品が導電外殻と接触すると対応する信号を受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は化学タンクの腐食監視制御システムに関し、特に半導体製作における腐食性液体化学薬品を保存するタンクの絶縁ライニングが腐食されたかどうかを腐食監視制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体化学薬品供給システムは半導体製作で重要な役割を果たしている。液体化学薬品はタンク貨車またはドラム缶詰で製作工場に搬送する。使用後の廃液は廃液タンクに詰め替えて保存するのが普通である。
当業者に周知されている通り、半導体製作に必要な液体化学薬品として、強酸、アルカリなどの腐食性液体を使用することが多い。更に、液体化学薬品の金属汚染を防止してウェハーの歩留まりに影響しないようにするため、液体化学薬品の純度を高いレベルに維持しなければならない。腐食性液体を保存するタンクは防食処理を施されているが、金属汚染を確認するため定期的に液体化学薬品をサンプリングして分析するのが必要である。金属汚染は普通、保存された液体化学薬品がタンクのライニングを侵食してタンク本体を構成した金属と接触することによって発生する。
前述のサンプリング検査は人力に頼って多大な時間とコストを要するのみならず、金属汚染が確認されると、その前に製作された製品を廃棄しなければならない。更に、腐食性液体を取り扱う人の人身事故も起こりやすい。そのため、化学タンクのライニング破損を早期に発見できる監視制御システムが必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は前述の問題を解決するため、製作工場またはタンク貨車に広範囲に利用される化学タンクの腐食監視制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明による腐食性液体化学薬品を保存する化学タンクの腐食監視システムは、導電外殻と絶縁ライニングからなって腐食性液体化学薬品を収容するタンク本体と、タンク本体に収容される腐食性液体化学薬品にひたる検知電極と、検知電極と電気的に接続される測定器とを含む。そのうち測定器は導電外殻と電気的に接続され、絶縁ライニングが腐食されてタンク本体内の腐食性液体化学薬品が導電外殻と接触すると対応する信号を受信する。
この発明は更に、液体化学薬品の品質を原位置かつ実時間に監視する半導体製作制御システムを提供する。同システムは、ウェット処理前の半導体ウエハーを1枚以上収容する反応容器と、半導体ウエハーを反応容器に搬入またはそれから搬出するためのウエハー搬送装置と、導電外殻と絶縁ライニングからなって液体化学薬品を収容し、パイプラインシステムで液体化学薬品を反応容器に輸送するタンク本体と、測定器と接続されて、測定器が対応する信号を受信すると、第一制御信号をウエハー搬送装置に出力する制御ユニットとを含む。そのうちタンク本体には、タンク本体に収容される液体化学薬品にひたる検知電極と、検知電極と電気的に接続される測定器とを含む監視システムが設けられる。測定器は導電外殻と電気的に接続され、絶縁ライニングが腐食されてタンク本体内の腐食性液体化学薬品が導電外殻と接触すると対応する信号を受信する。
【発明の効果】
【0005】
この発明による化学タンク腐食監視制御システムは人力に頼る従来の技術と異なって、検知電極で液体化学薬品の状態を実時間に検知して異常を知らせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
かかる装置の特徴を詳述するために、具体的な実施例を挙げ、図を参照して以下に説明する。
【実施例1】
【0007】
図1を参照する。図1は腐食性液体化学薬品を保存する化学タンクの腐食監視システム10を表す説明図である。図1によれば、腐食監視システム10は、導電性のある外殻14と絶縁ライニング16からなるタンク本体12を有する。タンク本体12は腐食性液体化学薬品18を保存する。外殻14はステンレス鋼、炭素鋼、被覆鋼またはアルミニウムとその合金などの金属からなる。
外殻14にはさまざまなパイプラインとバルブが設けられる。その数量、寸法と位置は要求に応じて決められ、ここではその説明を省略する。図1によれば、排液管22、排気管24、入口管26と出口管28などがある。
【0008】
タンク本体12のライニング16は、四弗化エチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシルアルカン(PFA)などのフルオロポリマー樹脂からなる。PFAは2枚のPTFEを結合する接着材料とされる。エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)とパーフルオロエチレンプロピレン(FEP)などその他のテフロン(登録商標)材料もライニングとして利用できる。
【0009】
腐食性液体化学薬品18は硫酸、硝酸、塩酸、弗化水素酸などの酸液、または過酸化水素、塩化鉄、有機ハロゲン化物などである。もっとも、腐食性液体化学薬品18の範囲はこの限りではない。
【0010】
この発明によるタンク本体12は、腐食性液体化学薬品18にひたる検知電極32を有する。検知電極32は白金などの防食材料からなる。検知電極32は導線34で測定器36と接続される。測定器36はオームメーターであり、その測定範囲は1MΩから40GΩであり、出力電圧は50Vから200Vである。測定器36は導線38で導電性のある外殻14と電気的に接続される。測定器36はコンピューターユニット42と接続され、測定器36からのデータを処理して記録する。コンピューターユニット42は更に監視用モニター44とアラーム装置52とに接続される。
【0011】
図2を参照する。図2はこの発明による腐食監視システム10による測定データを表す説明図である。タンク本体12ではPTFEライニングが絶縁体であるため、正常状態において、測定器36で測定された抵抗値は高抵抗Rである。絶縁ライニング16が腐食されると、腐食性液体化学薬品18は外殻14と接触し、測定器36は低抵抗信号Rを受信する。この場合、コンピューターユニット42が信号をアラーム装置52に発することによって異常を知らせる。
【実施例2】
【0012】
図3を参照する。図3はこの発明の実施例2による液体化学薬品の品質を原位置かつ実時間に監視できる半導体製作制御システム100を表す説明図であり、そのうち同一または類似しているものは前述と同じ番号がつけられている。この発明による半導体製作制御システム100はウェット処理前の半導体ウエハー70を収容する反応容器60を有する。反応容器60は気密型または開放型のシングルウエハーまたはマルチウエハーである。ウェット処理では反応容器60内の液体化学薬品68を一括交換するかまたは液体化学薬品68を補充することによってその量を維持することが可能である。半導体製作制御システム100は更に、ウエハー70を反応容器60に搬入またはそれから搬出するためのウエハー搬送装置80を有する。反応容器60内の液体化学薬品68はパイプラインシステム90でタンク本体12から導入される。
【0013】
半導体製作制御システム100は腐食監視システム10を含み、腐食監視システム10は腐食性液体化学薬品を保存するタンク本体12を含む。タンク本体12は導電性のある外殻14と絶縁ライニング16からなり、外殻14には排液管22、排気管24、入口管26と出口管28などさまざまなパイプラインとバルブが設けられる。
【0014】
外殻14はステンレス鋼、炭素鋼、被覆鋼またはアルミニウムとその合金などの金属からなる。タンク本体12のライニング16は、PTFE、PFA、ETFE、FEPなどのフルオロポリマー樹脂からなる。
【0015】
タンク本体12は、腐食性液体化学薬品18にひたる検知電極32を有する。腐食性液体化学薬品18は硫酸、硝酸、塩酸、弗化水素酸などの酸液、または過酸化水素、塩化鉄、有機ハロゲン化物などである。検知電極32は導線34で測定器36と接続される。測定器36はオームメーターであり、その測定範囲は1MΩから40GΩであり、出力電圧は50Vから200Vである。測定器36は導線38で導電性のある外殻14と電気的に接続される。測定器36はコンピューターユニット42と接続され、コンピュータユニット42は測定器36からのデータを処理して記録する。コンピューターユニット42は更に監視用モニター44とアラーム装置52とに接続される。
【0016】
半導体製作制御システム100のコンピューターユニット42は、タンク本体12と反応容器60との間のパイプラインシステム90の自動制御スイッチバルブ92と、ウエハー搬送装置80とに接続される。タンク本体12の絶縁ライニング16が腐食されると、腐食性液体化学薬品18は外殻14と接触し、測定器36はそれに応じて信号を受信する。この場合コンピューターユニット42が信号をアラーム装置52に発することによって異常を知らせる。それと同時に、コンピューターユニット42は制御信号を発してウエハー搬送装置80によるウエハー70の搬入を停止させる。そのほか、コンピューターユニット42はパイプラインシステム90の自動制御スイッチバルブ92に制御信号を発し、タンク本体12と反応容器60との間の通路を遮断して汚染された液体化学薬品18の反応容器60への流入を阻止する。
【実施例3】
【0017】
図4を参照する。図4はこの発明の実施例3を表す説明図である。半導体製作工場以外、この発明は非固定型のタンク貨車にも利用できる。図4によれば、監視システム200は内部が絶縁ライニング116で被覆されてトラックに固定されたタンク本体112を含む。タンク本体112は硫酸、硝酸、塩酸、弗化水素酸などの酸液、または過酸化水素、塩化鉄、有機ハロゲン化物などの腐食性液体化学薬品を収容する。
【0018】
タンク本体112は、腐食性液体化学薬品にひたる検知電極32を有する。検知電極32は導線34で測定器36と接続される。測定器36はオームメーターであり、その測定範囲は1MΩから40GΩであり、出力電圧は50Vから200Vである。測定器36は導線38で導電性のある外殻14と電気的に接続される。測定器36はコンピューターユニットと接続され、コンピューターユニットは測定器36からのデータを処理して記録する。コンピューターユニットは更に監視用モニターと接続されて異常を知らせる。
【0019】
以上はこの発明に好ましい実施例であって、この発明の実施の範囲を限定するものではない。よって、当業者のなし得る修正、もしくは変更であって、この発明の精神の下においてなされ、この発明に対して均等の効果を有するものは、いずれもこの発明の特許請求の範囲に属するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明による化学タンク腐食監視制御システムは人力に頼る従来の技術と異なって、検知電極で液体化学薬品の状態を実時間に検知して異常を知らせる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】腐食性液体化学薬品を保存する化学タンクの腐食監視システムを表す説明図である。
【図2】この発明による腐食監視システムによる測定データを表す説明図である。
【図3】この発明の実施例2による液体化学薬品の品質を原位置かつ実時間に監視できる半導体製作制御システムを表す説明図である。
【図4】この発明の実施例3を表す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
10、200 腐食監視システム
12、112 タンク本体
14 外殻
16、116 ライニング
18、68 液体化学薬品
22 排液管
24 排気管
26 入口管
28 出口管
32 検知電極
34、38 導線
36 測定器
42 コンピューターユニット
44 モニター
52 アラーム装置
60 反応容器
70 ウエハー
80 ウエハー搬送装置
90 パイプラインシステム
92 スイッチバルブ
100 半導体製作制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食性液体化学薬品を保存する化学タンクの腐食監視システムであって、
導電外殻と絶縁ライニングからなって腐食性液体化学薬品を収容するタンク本体と、
タンク本体に収容される腐食性液体化学薬品にひたる検知電極と、
検知電極と電気的に接続される測定器とを含み、そのうち測定器は導電外殻と電気的に接続され、絶縁ライニングが腐食されてタンク本体内の腐食性液体化学薬品が導電外殻と接触すると対応する信号を受信することを特徴とする化学タンクの腐食監視システム。
【請求項2】
前記導電外殻はステンレス鋼または炭素鋼からなることを特徴とする請求項1記載の化学タンクの腐食監視システム。
【請求項3】
前記導電外殻はアルミニウムからなることを特徴とする請求項1記載の化学タンクの腐食監視システム。
【請求項4】
前記絶縁ライニングはフルオロポリマー樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の化学タンクの腐食監視システム。
【請求項5】
前記フルオロポリマー樹脂は四弗化エチレン(PTFE)を含むことを特徴とする請求項1記載の化学タンクの腐食監視システム。
【請求項6】
前記フルオロポリマー樹脂はパーフルオロアルコキシルアルカン(PFA)を含むことを特徴とする請求項1記載の化学タンクの腐食監視システム。
【請求項7】
前記検知電極は防食材料からなることを特徴とする請求項1記載の化学タンクの腐食監視システム。
【請求項8】
前記防食材料は白金を含むことを特徴とする請求項7記載の化学タンクの腐食監視システム。
【請求項9】
前記測定器がオームメーターであることを特徴とする請求項1記載の化学タンクの腐食監視システム。
【請求項10】
前記オームメーターの測定範囲は1MΩから40GΩであることを特徴とする請求項9記載の化学タンクの腐食監視システム。
【請求項11】
前記測定器が受信した信号は抵抗信号であることを特徴とする請求項1記載の化学タンクの腐食監視システム。
【請求項12】
液体化学薬品の品質を原位置かつ実時間に監視する半導体製作制御システムであって、
ウェット処理前の半導体ウエハーを1枚以上収容する反応容器と、
半導体ウエハーを反応容器に搬入またはそれから搬出するためのウエハー搬送装置と、
導電外殻と絶縁ライニングからなって液体化学薬品を収容し、パイプラインシステムで液体化学薬品を反応容器に輸送するタンク本体と、
測定器と接続されて測定器が対応する信号を受信すると第一制御信号をウエハー搬送装置に出力する制御ユニットとを含み、そのうちタンク本体には、タンク本体に収容される液体化学薬品にひたる検知電極と、検知電極と電気的に接続される測定器とを含む監視システムが設けられ、測定器は導電外殻と電気的に接続され、絶縁ライニングが腐食されてタンク本体内の腐食性液体化学薬品が導電外殻と接触すると対応する信号を受信することを特徴とする半導体製作制御システム。
【請求項13】
前記第一制御信号はウエハー搬送装置による半導体ウエハーの反応容器への搬入を停止させることを特徴とする請求項12記載の半導体製作制御システム。
【請求項14】
前記制御ユニットは更に、パイプラインシステムに設けられるスイッチバルブと接続され、測定器が対応する信号を受信すると、第二制御信号をスイッチバルブに出力することを特徴とする請求項12記載の半導体製作制御システム。
【請求項15】
前記第二制御信号はスイッチバルブをオフにすることを特徴とする請求項14記載の半導体製作制御システム。
【請求項16】
前記測定器がオームメーターであることを特徴とする請求項12記載の半導体製作制御システム。
【請求項17】
前記オームメーターの測定範囲は1MΩから40GΩであることを特徴とする請求項16記載の半導体製作制御システム。
【請求項18】
前記絶縁ライニングはフルオロポリマー樹脂からなることを特徴とする請求項12記載の半導体製作制御システム。
【請求項19】
前記フルオロポリマー樹脂はPTFEを含むことを特徴とする請求項18記載の半導体製作制御システム。
【請求項20】
前記フルオロポリマー樹脂はPFAを含むことを特徴とする請求項18記載の半導体製作制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−17691(P2006−17691A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328492(P2004−328492)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(599039843)聯華電子股▲ふん▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】