説明

化学処理用カートリッジシステム

【課題】迅速かつ安定的に流動体の温度を制御することができる化学処理用カートリッジシステムを提供する。
【解決手段】ヘッド3の先端は、ウェル21の膨らんだドーム形状に合致した内面形状の凹部31を有しており、凹部31の曲率半径R2は、ウェル21におけるドーム形状の曲率半径R1よりも大きく選ばれている。さらに、凹部31の深さ方向の寸法H2は、ウェル21におけるドーム形状の高さ方向の寸法H1よりも小さく選ばれている。このため、ヘッド3はウェル21の頂点に最初に接触し、順次、接触範囲が外周に向けて拡大してゆく。またこのとき、ウェル21の周囲ではヘッド2とカートリッジ10との間で隙間が生じている。これにより、ヘッド2とウェル21の間のエアは、ヘッド3を押し付けるに従ってウェル21の周囲から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外力を加えた際のカートリッジの変形によってカートリッジ内部の送液を行うとともに、カートリッジに設けられたウェル(室)内において化学処理を行う化学処理用カートリッジシステムに関する。更に詳しくは、特定のウェルにおいて、ウェル内の溶液を加熱または冷却する化学処理用カートリッジシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
外力を加えた際のカートリッジの変形によってカートリッジの内容物(溶液)を移送することで化学処理を行わせる化学処理用カートリッジシステムが開発されている(例えば、特開2005−024516号公報参照)。このカートリッジシステムでは、カートリッジ内部に化学反応のための複数のウェルや、ウェルを接続する流路が作り込まれており、外力を加えた際のカートリッジの変形によって流路を介して順次、次のウェルに溶液を移動させることで、所定の化学処理を行わせるものである。このカートリッジシステムによれば、カートリッジの構造自体により化学処理のためのプロトコルを規定することができるとともに、密閉状態が保たれるため、所望のプロトコルを個人差なく安全に実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−024516号公報
【0004】
図5は従来の化学処理用カートリッジシステムの一例を示す要部構成図であり、カートリッジ内においてPCR(Polymerase Chain Reaction)法により遺伝子を増幅する場合や、磁性粒子にDNAを結合した試料を扱う場合に適した構造を備えたものである。
【0005】
図5において、(a)はカートリッジ部分の縦断面図、(b)は室(ウェル)および流路等の配置状態を示す平面図である。
化学反応用カートリッジ100は、気密状で弾力性のあるゴムなどの弾性体110と、硬質材料で形成された平板状の基板120より形成されている。
【0006】
弾性体110の裏面には、図5(b)のように、それぞれ表面側に凹んだ、溶液用の穴(以下、室という)111、112と、反応部用の室(反応部室という)113と、廃液収容用の室(廃液収容室という)114と、各室にそれぞれつながる流路115が形成されている。
【0007】
弾性体110において、室と流路以外の平面状の接着領域116は、部分的に基板120の表面に接着される。これにより各室と流路は弾性体110と基板120で密閉され、溶液の外部漏れを防止できる構造となっている。
【0008】
このような構成のカートリッジにおける溶液の移送について説明する。
ローラ130をカートリッジ110の左端部で、室111が押し潰される程度に、上から押しつける。ローラ130はカートリッジ110を全幅にわたって押圧する。この状態で、ローラ130を左端部から回転させて右方向へ移動すると、室111に保存されている溶液および室112に保存されている溶液が右方向へ押し出される。これらの溶液は流路115を通って反応部室113へ送り込まれる。
【0009】
200はその先端部をカートリッジの薄い弾性膜110aに接触させて室(例えば図中の反応部室113)内の試料(溶液)に対して加熱や冷却を行ったり、振動を与えたりするための作用手段であり、ここでは、外部治具という。なお、前記試料は、例えばDNAや磁性粒子などを含む溶液を指す。
【0010】
弾性膜110aの形成部分は局所的であり、外部治具200が当接する室113の上部に限定される。その部分の弾性膜110aは他の弾性体部分よりも薄く、1mm以下の厚さに形成されている。最適な膜厚tは、例えば、0.1〜1mmである。
【0011】
次に、このような構成における動作を説明する。カートリッジの室113に試料(溶液)を導入し、カートリッジ内の流路などを塞いで室113の内圧を高くする。弾性膜110aは張った状態となる。
【0012】
なお、内圧は、局所的な室113部分のみに限定せず、カートリッジ内の室と流路の全体にわたって高くしてもよい。
【0013】
内圧の高くなった弾性膜110aの表面に外部治具200の先端部を押し当てて密着させる。処理に応じて、試料に加熱・冷却あるいは加振することができる。
【0014】
PCR法により遺伝子を増幅する処理では、加熱と冷却を繰返し行う。弾性膜110aが薄く、また密着した弾性膜110aを通しての、試料への直接的な加熱・冷却であるので、その応答は従来の間接的な加熱・冷却に比べて格段に速い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、室113の外部から加熱または冷却のための外部治具200を押し付けることで、室113内の溶液の温度を制御することができる。また、外部治具200の温度はペルチェ素子などを用いて制御することが可能である。
【0016】
しかしながら、上記のように、平面状のヘッド(外部治具)をカートリッジに対して押し当てるようにした装置では、溶液の流入によりウェルが膨らむようなタイプのカートリッジの場合には、ヘッドと当接するウェルの面が平坦とはならず、ウェルとヘッドとが十分に接触せず、迅速かつ安定的にウェル内の溶液の温度を制御することができないという問題がある。
【0017】
本発明の目的は、迅速かつ安定的に溶液の温度を制御することができる化学処理用カートリッジシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の化学処理用カートリッジシステムは、外力を加えた際のカートリッジの変形によってカートリッジ内部の送液を行うとともに、カートリッジに設けられたウェル内において化学処理を行う化学処理用カートリッジシステムにおいて、少なくとも一方の面に弾性部材よりなる基板を有し、2枚の基板を部分的に貼り合わせて、溶液が流通する流路および溶液が流入した際にドーム状に膨らんでこの溶液を保持するウェルを形成したカートリッジと、前記ウェルの膨らんだ形状に合致した内面形状の凹部を有し、このウェルを内包してウェル内に保持された溶液を加熱または冷却するヘッドと、を具備したことを特徴とする。
この化学処理用カートリッジシステムによれば、ヘッドの内面がウェルの膨らんだ形状に合致した形状を有しているので、ヘッドの内面がウェルの外周に密着し、迅速かつ安定的にウェル内の溶液の温度を制御することができる。
【0019】
前記ヘッドにおける凹部の形状は、前記ウェルにおけるドーム形状の曲率半径に比べて大きい曲率半径を有し、その深さ方向の寸法が前記ウェルにおけるドーム形状の高さ方向の寸法に比べて小さい形状としてもよい。
【0020】
前記カートリッジは、基板の両面方向にドーム状に膨らむウェルを有し、前記ヘッドは、前記基板を挟んで対向する一組のヘッドよりなり、前記ウェルを両面から挟み込むようにしてもよい。
【0021】
前記ヘッドは、前記ウェルを内包した状態でこのウェルに押し付けられ、このウェルに保持された溶液を加圧するとともに、この溶液を加熱または冷却するようにしてもよい。
【0022】
前記ウェルにおけるドーム形状は、中央部に窪みを有する形状とされていてもよい。
【0023】
前記ウェルにおけるドーム形状は、凹凸の繰り返し形状とされていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の化学処理用カートリッジシステムによれば、ウェルと接触するヘッドの内面がウェルの膨らんだ形状に合致した形状を有しているので、ヘッドの内面がウェルの外周に密着し、迅速かつ安定的にウェル内の溶液の温度を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施形態の化学処理用カートリッジシステムの構成を示す図であり、(a)は、一実施形態の化学処理用カートリッジシステムの構成を示す断面図、(b)は、ヘッドをウェルに押し当てた状態を示す図、(c)は、ヘッドを完全に押し付けた状態を示す図。
【図2】ウェルの両側から対向して配置された一組のヘッドを押し付ける例を示す図であり、(a)は、ウェルの両側からヘッドを押し付ける例を示す断面図、(b)は、溶液の加熱・冷却時の様子を示す図、(c)は、一方のヘッドの表面を平坦とした場合の例を示す図。
【図3】ドーナツ状のウェルの例を示す図であり、(a)は、ドーナツ状のウェルの例を示す断面図、(b)はドーナツ状のウェルの平面図、(c)は、ヘッドを完全に押し付けた状態を示す図。
【図4】凹凸の繰り返し形状を与えたウェルの例を示す断面図。
【図5】従来の化学処理用カートリッジシステムの一例を示す要部構成図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1〜図4を参照して、本発明による化学処理用カートリッジシステムの実施形態について説明する。
【0027】
図1(a)は、一実施形態の化学処理用カートリッジシステムの構成を示す断面図である。
【0028】
図1(a)に示すように、本実施形態の化学処理用カートリッジ10は、基板1と、この基板1(第1の基板)に重ね合わされる弾性部材2(第2の基板)とを備える。
【0029】
基板1と弾性部材2よりなる2枚の基板は、部分的に貼り合わされており、弾性部材2の一部には、溶液が流し込まれると、基板1から解離してカートリッジの表面方向(図1(a)において上方)にドーム状に膨らむ領域(ウェル21)が形成されている。このウェル21は、基板1と弾性部材2との間に空間を生み出すことで、図1(a)および図1(b)に示すように、カートリッジ10内の溶液を保持する。カートリッジ10には、基板1と弾性部材2との間の空間として複数のウェルおよびウェル間を接続する流路が作り込まれており、これらのウェルの1つとして上記ウェル21が形成されている。
【0030】
次に、本実施例のカートリッジ10の使用方法について説明する。
【0031】
カートリッジ10にローラ(不図示)等を押し付けると弾性部材2が弾性変形し、カートリッジ基板1と弾性部材2との空間が押し潰される。ローラを移動させると、押し潰される領域が移動することにより、カートリッジ10内の溶液がウェルおよび流路を介して移動する。溶液がウェル21に到達した後、例えば、ウェル21の前後の流路部分において、カートリッジ10にローラを押し付けると、ウェル21内に溶液を閉じ込めることができる。
【0032】
図1(a)に示すように、ヘッド3の先端は、ウェル21の膨らんだドーム形状に合致した内面形状の凹部31を有しており、凹部31の曲率半径R2は、ウェル21におけるドーム形状の曲率半径R1よりも大きく選ばれている。さらに、凹部31の深さ方向の寸法H2は、ウェル21におけるドーム形状の高さ方向の寸法H1よりも小さく選ばれている。
【0033】
また、ヘッド3には、ペルチェ素子が内蔵されており、ヘッド3の温度はペルチェ素子により制御されている。ウェル21内に溶液を閉じ込めた状態でヘッド3をウェル21に押し付けることで、弾性部材2を介する熱伝導によりウェル21内の溶液の温度を制御することができる。ヘッド3およびヘッド3の温度および位置を制御する装置は、上記のようにカートリッジ10内の溶液を移動させるための駆動装置の一部として構成することができる。
【0034】
図1(b)は、ヘッド3をウェル21に押し当てた状態を示している。上記したように、ヘッド3における凹部31の内面形状をウェル21のドーム形状に合致させると、図に示すように、ヘッド3はウェル21の頂点に最初に接触し、順次、接触範囲が外周に向けて拡大してゆく。またこのとき、ウェル21の周囲ではヘッド3とカートリッジ10との間で隙間が生じている。これにより、ヘッド3とウェル21の間のエアは、ヘッド3を押し付けるに従ってウェル21の周囲から排出される。
【0035】
図1(c)は、ヘッド3を完全に押し付けた状態を示している。この状態では、ヘッド3がウェル21を内包し、その凹部31の全面がウェル21の表面に接触するとともに、ウェル21がヘッド3の凹部31により押し付けられる。これにより、ウェル21はこれ以上膨らむことができなくなり、ウェル21内部で蒸気などが発生した場合にも、内部の気泡が膨らむことが防止される。
【0036】
ここで、ウェル21の周囲はヘッド3の先端部により押さえられ、ウェル21は密閉された状態となっているので、ウェル21内の溶液が加熱されて、内部の圧力が高くなった場合にも、溶液がウェル21の外部へ漏れ出してしまうことはない。
【0037】
したがって、ヘッド3の凹部31の全面がウェル21に密着し接触面積の増大により熱伝導の効率を向上させることができるので、ウェル21内の流動体の温度を急激に変化させることも可能となる。なお、必要であれば、図1(b)に示すエア抜きの動作を繰り返した後に、ヘッド3を完全に押し付けるようにしてもよい。また、ヘッド3の押し付けを利用して、ウェル21内の溶液を加圧することも可能である。
【0038】
図2は、ウェルの両側から対向して配置された一組のヘッドを押し付ける例を示す断面図である。図2(a)に示すように、カートリッジ10Aは、弾性部材2Aおよび弾性部材2Bにより構成されており、部分的に接着されて、基板の両面方向にドーム状に膨らむウェル22を形成している。図2(a)に示すように、ウェル22は、溶液が流入した際に、カートリッジ10Aの両面方向に均等に突出する。
【0039】
図2(b)は、溶液の加熱・冷却時の様子を示す図である。図2(b)に示すように、カートリッジ10Aの両面から、ペルチェ素子が内蔵された一組のヘッド3Aおよびヘッド3Bによりウェル22を挟み込むことにより、ヘッド3A、3Bの間にウェル22を内包し、ウェル22内部の溶液を加熱または冷却する。
【0040】
ウェル22を内包するヘッド3Aおよびヘッド3Bにおける凹部の形状(寸法)は、図1(a)と同様の関係を満たしている。このため、ヘッド3Aおよびヘッド3Bをウェル22に押し付ける過程で、ヘッド3Aとウェル22の間、およびヘッド3Bとウェル22の間のエアは、ウェル22の周囲から排出される。ヘッド3Aおよびヘッド3Bを完全に押し付けた状態では、ヘッド3Aおよびヘッド3Bの凹部とウェル22とが密着し、ウェル22はこれ以上膨らむことができなくなり、ウェル22内部で蒸気などが発生した場合にも、内部の気泡が膨らむことが防止される。
【0041】
図2の例では、ウェル22の両側からヘッド3Aおよびヘッド3Bを押し当てているので、内部の溶液をより急激に加熱、冷却できる。とくに、PCRのように温度を急激に変化させたい処理には効果的であり、所定の手順を短時間で済ませることができる。また、ヘッド3A、3Bの押し付けを利用して、ウェル22内の溶液を加圧することも可能である。
【0042】
更に、図2(c)に示すように、一方のヘッド(ここでは、3B’)の先端部を平坦として、ウェル22を挟み込むように構成することも可能である。
【0043】
次に、図3(a)は、ドーナツ状のウェル23の例を示す断面図、図3(b)はドーナツ状のウェル23の平面図である。
【0044】
図3(a)および図3(b)に示すように、カートリッジ10Bに形成されたウェル23の中央部には、窪み24が形成されており、図3(b)に示すように、カートリッジ10Bの上面から見たときに、ウェル23は窪み24を中心とするドーナツ状の形状を呈している。
【0045】
一方、図3(a)に示すように、溶液を加熱、冷却するためのヘッド3Cには、ウェル23を内包する凹部33と、窪み24に対応する凸部34とが形成されている。
【0046】
ヘッド3Cの凹部33の寸法は、図1(a)と同様の関係を満たしており、凹部33の曲率半径は、ウェル23におけるドーム形状の曲率半径よりも大きく選ばれている。さらに、凹部33の深さ方向の寸法は、ウェル23におけるドーム形状の高さ方向の寸法よりも小さく選ばれている。このため、ヘッド3Cをウェル23に押し付ける過程で、ヘッド3Cとウェル23の間のエアは、ウェル23の周囲から排出される。図3(c)に示すように、ヘッド3Cを完全に押し付けた状態では、ヘッド3Cの凹部33とウェル23とが密着し、ウェル23はこれ以上膨らむことができなくなり、ウェル23内部で蒸気などが発生した場合にも、内部の気泡が膨らむことが防止される。
【0047】
また、図3(c)に示すように、ヘッド3Cを押し付けたときに、ウェル23の窪み24にヘッド3Cの凸部34が入り込むことにより、ヘッド3Cの内面がウェル23に密着する。このため、ヘッド3Cとウェル23との接触面積が増加し、熱伝導の効率を向上させることができ、ウェル23内の溶液に対して、より急激な温度変化を与えることが可能となる。
【0048】
次に、図4は、凹凸の繰り返し形状を与えたウェルの例を示す断面図である。
【0049】
図4に示すように、カートリッジ10Cに形成されたウェル25の外面26は、凹凸の繰り返し形状を呈しており、ウェル25の外面26に押し当てられるヘッド3Dの内面35にも、同様の形状が与えられている。
【0050】
ヘッド3Dをウェル25に押し付けると、ウェル25の外面26と、ヘッド3Dの内面35とが密着するように設計されている。図4の例では、凹凸の繰り返し形状により、ウェル25とヘッド3Dの接触面積が増加し、熱伝導の効率を向上させることができる。このため、ウェル25内の溶液に対して、より急激な温度変化を与えることが可能となる。
【0051】
上記の説明では、本発明の化学処理用カートリッジシステムをウェルの温度を変化させて遺伝子の増幅を行うPCR増幅に適用した場合を例示したが、本発明の用途はこれに限られず、細胞から核酸を溶出させる核酸抽出にも利用することが可能である。
【0052】
例えば、ウェル内に細胞懸濁液を入れ、ヘッドを押し付けてウェルを密閉状態にするとともに、ウェル内を高温に加熱する。
このように、細胞懸濁液を高温に加熱すると、細胞の膜構造を弱め、核酸の溶出を促進することができる。
【0053】
ここで、ウェルに対する加熱温度や加熱時間は、対象とする細胞の種類に応じて、最適の値に選択される。
また、ヘッドには冷却機能を付加することも可能であるので、ウェルの温度を所望の値まで上昇させた後に、急激に低下させることも可能である。
【0054】
さらに、ウェルの温度を上昇させた後に、ヘッドの押付力を急激に取り去り、ウェルの密閉状態を解除したり、ウェルが膨らめる状態にすると、加熱により上昇していたウェル内の圧力を急激に開放することができる。
加熱後の圧力開放が核酸の溶出をさらに促進させる場合もある。
【0055】
以上説明したように、本発明の化学処理用カートリッジシステムによれば、ウェルと接触するヘッドの内面がウェルの膨らんだ形状に合致した形状を有しているので、ヘッドの内面がウェルの外周に密着し、迅速かつ安定的にウェル内の溶液の温度を制御することができる。
【0056】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、外力を加えた際のカートリッジの変形によってカートリッジ内部の送液を行うとともに、カートリッジに設けられたウェル(室)内において化学処理を行う化学処理用カートリッジシステムに対し、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10,10A,10B,10C 化学処理用カートリッジ
21,22,23,25 ウェル
3,3A,3B,3B’,3C,3D ヘッド
24 窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力を加えた際のカートリッジの変形によってカートリッジ内部の送液を行うとともに、カートリッジに設けられたウェル内において化学処理を行う化学処理用カートリッジシステムにおいて、
少なくとも一方の面に弾性部材よりなる基板を有し、2枚の基板を部分的に貼り合わせて、溶液が流通する流路および溶液が流入した際にドーム状に膨らんでこの溶液を保持するウェルを形成したカートリッジと、
前記ウェルの膨らんだ形状に合致した内面形状の凹部を有し、このウェルを内包してウェル内に保持された溶液を加熱または冷却するヘッドと、
を具備したことを特徴とする化学処理用カートリッジシステム。
【請求項2】
前記ヘッドにおける凹部の形状が、前記ウェルにおけるドーム形状の曲率半径に比べて大きい曲率半径を有し、その深さ方向の寸法が前記ウェルにおけるドーム形状の高さ方向の寸法に比べて小さいことを特徴とする請求項1に記載の化学処理用カートリッジシステム。
【請求項3】
前記カートリッジは、基板の両面方向にドーム状に膨らむウェルを有し、前記ヘッドは、前記基板を挟んで対向する一組のヘッドよりなり、前記ウェルを両面から挟み込むことを特徴とする請求項1または2に記載の化学処理用カートリッジシステム。
【請求項4】
前記ヘッドは、前記ウェルを内包した状態でこのウェルに押し付けられ、このウェルに保持された溶液を加圧するとともに、この溶液を加熱または冷却することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学処理用カートリッジシステム。
【請求項5】
前記ウェルにおけるドーム形状は、中央部に窪みを有する形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学処理用カートリッジシステム。
【請求項6】
前記ウェルにおけるドーム形状は、凹凸の繰り返し形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学処理用カートリッジシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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