説明

化学処理装置、めっき装置およびその装置を用いためっき処理方法

【課題】 装置の敷設効率に優れ、かつ生産性向上に優れた化学処理装置を提供する。
【解決手段】 長尺シート状のワークを連続して化学処理槽に搬入して化学処理する化学処理装置において、リールに巻かれた長尺シート状のワークを連続的に供給するワーク供給装置と化学処理されたワークを連続的にリールに巻き取るワーク巻取装置を、ワークの化学処理槽搬入時にワークの上端および下端をそれぞれクランプする上下端搬送クランプ群を有する一対のエンドレスベルトの片側に配置し、めっき処理における前処理槽と後処理槽とによりワーク供給装置及びワーク巻取装置の両者を挟み込む位置で、かつ同じエンドレスベルト側の位置に配置し、化学処理槽を対向するエンドレスベルト側に設けた構造を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCOF(Chip On Flexible)等に用いられるフレキシブル回路基板のような長尺のシート状に連続的にめっきなどの化学処理を施す化学処理装置及びその装置を用いためっき処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビ、携帯電話等の電子機器には可撓性のある絶縁性基板上に配線回路を形成したいわゆるフレキシブル回路基板が用いられることが多くなってきている。
そのようなフレキシブル回路基板の製造に用いられる従来のめっき装置は、例えば特許文献1に記載されるような装置が用いられてきている。
【0003】
図6に示す従来から用いられてきためっき装置は、リールに巻かれたワーク(長尺シート状の被めっき材料)を供給するためのワーク供給装置1と、そのワーク10をリールに巻き取るワーク巻取装置2との間に、ワーク10にめっきを施すための前処理槽3、めっき槽4、後処理槽5を、直線状に配置、構成した装置で、前処理槽3、めっき槽4、後処理槽5の各槽上部にワーク10の上端を挟持して給電し、ワーク10の面を垂直方向としてワーク供給装置1からワーク巻取装置2へワーク10を連続的に搬送しながらめっきを行うめっき装置40が開示されている。
【0004】
従来、図6に示す構成のめっき装置40を用いることにより、ワークの電流密度を均一、且つ高くすることによって、めっき槽を一槽とすることができ、ワークに大きな張力をかけることなく長尺シートにめっきを施すことを可能にしている。
しかしながら、このような装置であっても、さらに生産性を向上させようとした場合、電流密度は既に高電流密度となっていることから、さらに高くすることも限界があるため、各処理槽の大型化によって対応することが考えられる。しかしながら、各処理槽が直線状に配置されている構成であり、装置の設置スペースに制約を抱える場合、その大型化も限度があり、そのため生産性の更なる向上を図るには、図6のような装置構成では問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために本発明者らは特許文献2において開示される化学処理装置を提案している。
特許文献2に開示される化学処理装置は、長尺シート状のワークをその幅方向を上下方向にして連続的に供給するワーク供給装置と、そのワークの幅方向を上下方向にしてワークを連続的にリールに巻き取るワーク巻取装置と、そのワーク供給装置とワーク巻取装置との間に配置され、かつその幅方向を上下方向にしてエンドレスベルトに設けられたクランプにより搬送されるワークに対し化学処理を行う化学処理槽を、そのエンドレスベルトの両側に備える構成の化学処理装置で、特許文献1記載のめっき装置40よりも装置の小型化を可能にしている。
【0006】
しかし、一般的なめっき装置のような化学処理装置は、化学処理槽の前後に前処理槽と後処理槽を配置するため、エンドレスベルトの両側に化学処理槽を備える特許文献2に示される装置構成であっても、図5に示す化学処理装置30のようにエンドレスベルト8の片側に化学処理槽4と併せて前処理槽3か、後処理槽5を設置することになるため、化学処理槽4を大型化しようとすると装置長が長くってしまうという問題が生じていた。
図5、図6において、符号6、7はエンドレスベルト8の折り返し用プーリーで駆動用プーリーを兼ねている。
【0007】
また図5、図6に示されるめっき装置では、ワークを給電装置に接続されたクランプにより把持しながらめっきを行うことで、めっき槽中でワークに印加される電流が均一になることにより、電流密度を上げ、めっき速度を向上させてめっき形成することが可能になったが、上記構成により電流密度を上げてめっきを形成した場合、めっき表面にディンプル状の微細な凹部が形成されてしまい、その表面の平滑性を損なう問題を抱えていた。
【0008】
さらに、図5、図6に示される装置共に、ワーク上端(図5の装置は下端も)をクランプでチャック(把持)して搬送する方法のめっき装置であるために低張力でワークを搬送することができるが、後処理後の巻き取りもワークは、幅方向を鉛直方向にした状態で巻き取られるので、処理量が増大する(すなわち、ワークが長尺化する)と巻き取り後のワークの自重により巻き乱れが発生し、めっき面やワーク表面に擦り傷やシワなどの欠陥を発生させてしまうため300m長のワークを処理することが限界で処理量の増大に対応できなかった。
そのため、処理量を増やそうとすると巻き乱れ防止のため、ワークへのめっき処理時のワークに掛ける張力を上げることが行われたが、ワークが伸縮状態であることによるめっき不良の発生を招き易くなり生産性の低下を招く結果となっている。
【0009】
また図5の装置を用いた場合、ワーク10を折り返しプーリー7で折り返すことにより装置の小型化を実現していたが、折り返し側搬送プーリー7に巻きまわされたエンドレスベルト8に支持されたクランプは折り返し搬送プーリー7の外周に沿って円弧を描いて移動する。この時に隣り合うクランプの直線距離が短くなるため、クランプ9に挟持されたワーク10が波打ち状態で撓むことにより、ワーク表面に「しわ」が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−193794号公報
【特許文献2】特開2009−120889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、小型で、生産性向上に優れた化学処理装置、めっき装置およびその装置を用いためっき処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決する本発明の第1の発明は、長尺シート状のワークを連続して化学処理槽に搬入して化学処理する化学処理装置において、リールに巻かれた長尺シート状のワークを連続的に供給するワーク供給装置と、化学処理されたワークを連続的にリールに巻き取るワーク巻取装置を、ワークの化学処理槽搬入時にワークの少なくとも上端をクランプする上端搬送クランプ群を有する一対のエンドレスベルトの片側に配置し、化学処理における前処理槽と後処理槽を、ワーク供給装置及びワーク巻取装置の両者を挟み込む配置で、かつ同じエンドレスベルト側の位置に前処理槽、ワーク供給装置、ワーク巻取装置、及び後処理槽を配置し、対向するエンドレスベルト側に化学処理槽を設けた構造を特徴とするものである。
【0013】
本発明の第2の発明は、長尺シート状のワークを連続して化学処理槽に搬入して化学処理する化学処理装置において、ワークの化学処理槽搬入時にワークの少なくとも上端をクランプする上端搬送クランプ群を有する一対のエンドレスベルトを備え、そのエンドレスベルトの片側に化学処理槽を配し、対向するエンドレスベルト側に化学処理の前処理を行う前処理槽と後処理を行う後処理槽を配して、ワークが連続的に前処理槽に搬入される位置に配置されるワーク供給装置と、後処理槽を搬出されたワークが連続的にリールに巻き取られる位置に配置されるワーク巻取装置を有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明における化学処理装置の化学処理槽がワークを搬入してめっき処理する際に、少なくともワーク上端を搬送クランプ群により把持して鉛直状態としたワークのワーク面に化学処理を施す化学処理槽であり、ワーク巻取装置が、ワークを巻き取る際に、化学処理されたワークを水平状態とした後に巻き取りを行う巻取装置であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第4の発明は、第1から第3の発明おける化学処理装置の折り返しプーリーに、エンドレスベルトの移動に伴い、エンドレスベルトに備えられた搬送クランプ群のクランプが着脱自在に嵌合するクランプ脱着部位を備えることを特徴とするものである。なお、ここでの「嵌合」は、密接に嵌めあうことのみならず、クランプ脱着部位が大となる緩い嵌合の方が良い。
【0016】
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明の化学処理装置において、後処理槽とワーク巻取装置の間に、低張力熱処理装置を備えることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第6の発明は、ワークを化学処理槽に搬入してめっき処理する際に、少なくとも上端を搬送クランプ群により把持してワークを鉛直状態としてワーク面にめっきを施し、後処理槽での後処理を施したワークを巻き取る前に、そのワークに低張力熱処理を施し、その低張力熱処理を施したワークを水平状態とした後にワーク巻取装置により巻き取ることを特徴とするめっき処理方法で、第5の発明によるめっき装置を用い行われるものである。
【0018】
本発明の第7の発明は、第6の発明における低張力熱処理が、めっきを施されたワークを5N以下の低張力状態で、そのめっきが再結晶する熱処理であることを特徴とするめっき処理方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来と同等の生産能力を有する化学処理装置を、設置効率に優れた敷設形状で、かつ生産能力の向上にも柔軟に対応可能である化学処理などに用いられる化学処理装置が提供できるため、工業上顕著な効果を奏するものである。
さらに本発明によれば、水平な巻取軸でワークを巻き取ることで巻き乱れによるワーク表面不良の発生を防ぐことができ、その低張力熱処理により、巻取時におけるめっき皮膜の再結晶の進展により生じるめっき面のディンプル状凹みの発生を防ぎ、搬送中のワークの伸びとめっきの再結晶の完了によるウェーブ(波目模様)発生を防止する。さらに、本発明の非接触搬送構造の上下のクランプにより折り返し時に生じるワークの弛みが防止でき、ワークを弛ませずに搬送することを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の化学処理装置の一実施例を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の化学処理装置を説明するための図で、(a)は図1の化学処理装置の配置模式図で、(b)は他の実施例における配置模式図ある。
【図3】本発明の低張力熱処理装置の実施例の一例を説明する模式図である。
【図4】本発明の折り返しプーリーの構造を示す図で、(a)は外観斜視図、(b)はクランプ脱着部位の外観斜視図である。
【図5】従来の化学処理装置の形態を示す配置模式図である。
【図6】従来のめっき装置の形態を示す配置模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る化学処理装置は、図1、図2に示す構造を有している。
図1は、本発明の化学処理装置の全景を表す外観斜視図で、20は化学処理装置を表し、1はワーク供給装置、2はワーク巻取装置、3は前処理槽、4は化学処理槽、5は後処理槽、6はエンドレスベルトの折り返し用プーリー、8はエンドレスベルト、8aは上下端搬送クランプ群、9はめっき剥離槽、10はワーク、11は低張力熱処理装置、12は搬送方向変更ローラー、13は水平ローラー、20は化学処理装置である。
【0022】
図2(a)は、図1に示す本発明の化学処理装置20の構造を説明するために簡素化した配置模式図である。図1のエンドレスベルト8の折り返し用プーリー6を、一対の折り返し用プーリー(駆動用プーリーを兼ねる)6、7で表したものである。
図2(b)は、他の実施例における配置模式図で、ワーク供給装置1、ワーク巻取装置2をエンドレスベルト8の内側、若しくは上方に配置した場合を表すものである。
【0023】
図1、2に示すように、リール(図示せず)に巻かれた長尺シート状のワーク10を連続的に供給するワーク供給装置1と、その長尺状のワーク10を連続的にリール(図示せず)に巻き取るワーク巻取装置2は、ワーク10の化学処理時に、少なくともワーク10の上端をクランプ(把持)する上下搬送クランプ群8a(図1では上端側のクランプのみで把持しているが、下端側にもクランプを設け、上下端で把持しても良い)を有するエンドレスベルト8の片側(図1、2(a)の[Aサイド])、若しくは図2(b)ではエンドレスベルト8の内側或いは上方に集中して配置されている。
【0024】
さらに化学処理を行う際の前処理槽3と後処理槽5も、図1、2に見られるようにワーク供給装置1及びワーク巻取装置2の両者を挟み込む形、すなわちワーク供給装置とワーク巻取装置の両サイドに分かれて配置されている。
一方、化学処理槽4は、ワーク供給装置1、前処理槽3、後処理槽5、ワーク巻取装置2が配置されるエンドレスベルト側(図1、2の[Aサイド側])と対向する向きのエンドレスベルト側(図1、2の[Bサイド側])に配置された構造となっている。
なお、9のめっき剥離槽は、エンドレスベルト8や上下搬送クランプ群8aに付着した「めっき」を取り除くものである。
【0025】
図1、2により説明したように、化学処理装置の各構成要素を、エンドレスベルト8の折り返し用プーリー6間(図2では、折り返し用プーリー6と7間)に配置することによって、本発明では、化学処理装置の全長を短縮することを可能とし、敷設形状(装置の設置スペース)の縦横比(以下、アスペクト比と称す)を1.0に近づけることができ、めっき装置の敷設に際する敷地面積の効率を高めるものである。
すなわち、従来の装置では、アスペクト比が大きく、敷設形状(設置スペース)は長辺が大きな長方形敷地を必要としたために、設置場所の選定に制約を受けていたが、本発明ではアスペクト比が1.0に近くなるため、その設置スペースは正方形に近い長方形となり、従来の装置に比べて設置場所の制約を受けにくく、その自由度が大きいと言える。
【0026】
次に、本発明で使用する前処理槽3、化学処理槽4、後処理槽5は、ワーク10を搬入して化学処理する際に、少なくとも上端を上下搬送クランプ群8aにより把持して鉛直状態としたワーク10のワーク面に化学処理を施す処理槽であり、各処理槽によって化学処理されたワーク10は、後処理槽5を搬出された後に、ワーク巻取装置2で巻き取られるが、その巻取の際に、搬送方向変更ローラー12によって搬送の向きを変更され、その後水平ローラー13を経由して、水平方向、すなわち水平方向にワーク10を巻き取るリール(図示せず)の巻取軸を設定したワーク巻取装置2に巻き取られる。
このように、水平な巻取軸でワークを巻き取ることで、その巻き取る量が多くなっても、すなわち巻径が大きく、ワークのコイル自重が増大しても巻き乱れによるワーク表面不良の発生を防ぐことができる。
【0027】
さらにワーク巻取装置2にワーク10を巻き取る前に、低張力下で、めっきが再結晶する条件における熱処理(以下、低張力熱処理と称す)を図1の低張力熱処理装置11により行う。
この低張力熱処理は、巻取時におけるめっき皮膜の再結晶の進展により生じるめっき面のディンプル状凹みの発生を防ぎ、搬送中のワークの伸びとめっきの再結晶の完了によるウェーブ(波目模様)発生を防止するために行うもので、張力5N以下で、めっきが再結晶する条件で行う。
【0028】
用いる低張力熱処理装置としては、図3に示すような構造の低張力熱処理装置を用いると良い。この低張力熱処理装置11を用いて低張力熱処理を説明すると、後処理槽(図1、符号5)などの最終処理槽を搬出されたワーク10は、低張力熱処理装置11の吸着ロール14に吸着されながら導入され、熱風加熱装置16により、めっき表面の再結晶を目指して加熱されると同時に、エアーフローターン部15に導かれてエアーフローにより非接触状態となり、その張力を5N以下に制御される。張力が5N以下の状態でさらに熱風加熱装置16によってめっき面の再結晶化が行われることで、健全な平滑性を有するワークが装置外に導出されて処理が終了する。なお、図1の低張力熱処理装置11では、水平ローラー13が吸着ロールを兼ねているものを示している。
【0029】
その張力が5Nより大きい場合には、この熱処理時においてワークにウェーブが発生しやすくなり、品質低下の原因となってしまう。
【0030】
さらに本発明では、折り返し用プーリー6に、エンドレスベルトの移動に伴いエンドレスベルトに備えられた上下搬送クランプ群8aの上端クランプ8b、下端クランプ8cが着脱自在に嵌合するクランプ脱着部位6bを備えている(図4(a)、(b)参照)。
そしてクランプ脱着部位6bの間は円弧状を形成し、その円弧状部分に、ワークの上端面および下端面が接した状態で搬送される。
このような機構により、折り返し時に上下のクランプ8b、8cがクランプ脱着部位6bに、はめ込まれことで折り返し時に生じるワークの弛みが防止でき、ワークを弛ませずに搬送することを可能とする。なお、クランプ脱着部位6bの一例は、図4(a)に見られるように上下の折り返しプーリー6間にクランプリード円板6aを設け、その全周に設ける形態としても良く、クランプ8b、8c間に連続した円柱状部材の上下端にクランプ脱着部位を設けても良い。
そして、上下の折り返しプーリー6間にそれぞれクランプリード円板6aを設けることにより、ワーク10と円弧状部分の接触面積が減少するので、ワークに傷や汚れの付着が防止できるためより好ましい。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を用いて本発明を説明する。
【実施例1】
【0032】
設計製造能力を90km/月とし、装置全周に処理工程を設けることで基板搬送が2回Uターンする図2(a)に示す本発明に係る「全周型」の化学処理装置を作製した。
表1に、装置の敷設形状、性能などを纏めて示す。
【0033】
(比較例1)
装置片側のみに処理工程を設けることで基板搬送のUターンがなく直線のみである図5に示す「直線型」の化学処理装置を作製した。設計製造能力は、実施例1の化学処理装置と同様に90km/月とした。
表1に、その敷設形状、性能などを実施例1と併せて示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1から明らかなように、装置コスト以下のメンテナンス性、操作性、搬送機構の難易度などに優劣は見られないが、装置1台の設置面積に関しては、実施例1(全周型:図2(a)参照)も比較例1(直線型:図5参照)も大差ないが、全長で2/3、また装置の敷設形状のアスペクト比は直線型と比べて1/2以下であり、単位面積当たりの設置密度(表1の50×50m敷地における設置台数)に優れていることがわかる。
【実施例2】
【0036】
ポリイミドフィルム上に導電性金属が形成された、幅524mm、厚み75μm、長さ1500mの材料をワーク10として図2(a)に示すワーク供給装置1に取り付け、本発明に係る「全周型」の化学処理装置を用いてワークの上下端部を把持し、搬送張力を50N、搬送速度でワークを搬送しながら、化学処理槽4にて電流密度3A/cmでめっき処理を行い、後処理槽5にて洗浄処理後にワークの搬送方向を搬送方向変更ローラー12(図1に表示)によって搬送方向を変更し、水平ローラーを通してワーク巻き取り装置2で巻取りを行った結果、ワークの巻き乱れによるしわの発生も無く長尺ワークのめっき処理を行う事が出来た。
【0037】
(比較例2)
ワークを垂直で巻取るワーク巻取装置を備えた図5に示す「直線型」の化学処理装置を用いた以外は、実施例2と同じ条件でワークにめっきを施した。ワークの処理長が300mを越えると巻き乱れが発生しはじめたため、その後、ワークの搬送張力を100Nに上げ1500mのめっき処理を行った。
【実施例3】
【0038】
ポリイミドフィルム上に導電性金属層を形成した幅524mm、長さ300m、その厚みが125μm、100μm、75μm、50μm、38μm、25μm、12.5μmの7種類のワーク10を、図2に示すワーク供給装置1に取り付け、本発明に係る化学処理装置を用いてワークの上下端部を把持し、搬送張力を50N、搬送速度0.5m/minでワークを搬送しながら、化学処理槽4にて電流密度3A/cmでめっき処理を行った。
【0039】
使用したクランプリード円板6aは、図4に見られるような直径70cm、板厚12mmの円盤状部材に、クランプ脱着部位6bを形成したもので、ワークの鉛直面両端の幅10mmを支持するように調整した。またクランプは、ワーク鉛直面両端の幅15mmを把持するように調整した。その結果めっき後のワークにしわも無く良好なめっき処理を行う事ができた。
【実施例4】
【0040】
使用したクランプリード円板として、直径70cm、高さ550mmの円柱状部材の上下端にクランプ位置規制凹部を形成したものを用いた以外は、実施例1と同じ条件でめっき処理を行った。
その結果めっき後のワークにしわは生じなかったが、所々、めっき表面に傷状の不良が発生したが、不良部分を取り除くことで製品として用いる事ができた。
【0041】
(比較例3)
図6に記載した従来の化学処理装置を用いた以外は、実施例1と同じ条件でめっき処理を行った。
その結果、ワークの厚みが薄くなるほど、めっき後のワークにしわが生じており、ワーク厚みが50μm以下では、しわがワーク全体に多数発生しており、製品として供する事ができなかった。
【実施例5】
【0042】
ポリイミドフィルム上に導電性金属層を形成した幅524mm、長さ300m、その厚みが25μmのワーク10を、図1に示すワーク供給装置1に取り付け、本発明に係るめっき処理装置を用いて、搬送張力を50N、搬送速度0.5m/minでワークを搬送しながら、化学処理槽4にて電流密度6A/cmでめっき処理を行った。
【0043】
両面に8μmのCuめっきを形成した後に、熱処理時間を36秒に固定し、熱処理温度を、25℃、50℃、75℃、100℃、120℃、140℃、150℃として熱処理を施してめっき部材を作成し、作成後のディンプル状凹みを観察した。
【0044】
その結果、熱処理温度が50℃を越えるところからディンプル状凹みが減少し、140℃以上では、めっき部材にディンプル状凹みは観察できず、平滑性に優れためっき部材を得る事が出来た。
【実施例6】
【0045】
めっき処理後の熱処理温度150℃、36秒と固定し、図3に示す低張力熱処理装置11を用いて、熱処理(加熱)中のワーク10の搬送張力を0N、5N、10N、15N、20N、25N、50Nとして熱処理を施した以外は、実施例1と同一条件にてめっき部材を作成し、作成後のディンプル状凹みとワークのウェーブを観察した。
【0046】
その結果、いずれの搬送張力においても、ディンプル状凹みの個数に変化は無かったが、搬送張力が5Nを超えるとワーク10が顕著にウェーブ状になることが判った。
【符号の説明】
【0047】
1 ワーク供給装置
2 ワーク巻取装置
3 前処理槽
4 めっき槽(化学処理槽)
5 後処理槽
6、7 エンドレスベルトの折り返し用プーリー
6a クランプリード円板
6b クランプ脱着部位
8 エンドレスベルト
8a 上下端搬送クランプ群
8b 上端クランプ
8c 下端クランプ
9 めっき剥離槽
10 ワーク
11 低張力熱処理装置
12 搬送方向変更ローラー
13 水平ローラー
14 吸着ロール
15 エアーフローターン部
16 熱風加熱装置
20 本発明の化学処理装置
30 従来のめっき装置
40 従来の化学処理装置(めっき装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺シート状のワークを連続して化学処理槽に搬入して化学処理する化学処理装置において、
リールに巻かれた長尺シート状のワークを連続的に供給するワーク供給装置と化学処理されたワークを連続的にリールに巻き取るワーク巻取装置を、ワークの化学処理槽搬入時にワークの少なくとも上端をクランプする搬送クランプ群を有し、かつ一対の折り返しプーリーを備えてエンドレスループを構成するエンドレスベルトの片側に配置し、
めっき処理における前処理槽と後処理槽とにより、前記ワーク供給装置及びワーク巻取装置の両者を挟み込む位置で、かつ同じエンドレスベルト側の位置に、前記前処理槽、ワーク供給装置、ワーク巻取装置、及び後処理槽を配置し、
対向するエンドレスベルト側に化学処理槽を設けた構造を特徴とする化学処理装置。
【請求項2】
長尺シート状のワークを連続して化学処理槽に搬入して化学処理する化学処理装置において、
前記ワークの化学処理槽搬入時にワークの少なくとも上端をクランプする搬送クランプ群を有する一対のエンドレスベルトを備え、
前記エンドレスベルトの片側に化学処理槽を配し、対向するエンドレスベルト側に化学処理の前処理を行う前処理槽と後処理を行う後処理槽を配して、
前記ワークが連続的に前処理槽に搬入される位置に配置されるワーク供給装置と、後処理槽を搬出されたワークが連続的にリールに巻き取られる位置に配置されるワーク巻取装置を有することを特徴とする化学処理装置。
【請求項3】
前記化学処理槽が、ワークを搬入してめっき処理する際に、少なくとも上端を前記搬送クランプ群により把持して鉛直状態としたワークのワーク面に化学処理を施す化学処理槽であり、
前記ワーク巻取装置が、ワークを巻き取る際に、前記ワークを水平状態とした後に巻き取る巻取装置であることを特徴とする請求項1又は2記載の化学処理装置。
【請求項4】
前記折り返しプーリーに、エンドレスベルトの移動に伴い前記エンドレスベルトに備えられた搬送クランプ群のクランプが着脱自在に嵌合するクランプ脱着部位を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の化学処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の化学処理装置の、前記後処理槽と前記ワーク巻取装置の間に、低張力熱処理装置を備えることを特徴とするめっき装置。
【請求項6】
ワークを化学処理槽に搬入してめっき処理する際に、少なくとも上端を端搬送クランプ群により把持してワークを鉛直状態としてワーク面にめっきを施し、
後処理槽での後処理を施したワークを巻き取る前に、前記ワークに低張力熱処理を施し、
低張力熱処理を施したワークを水平状態とした後にワーク巻取装置により巻き取ることを特徴とする請求項5に記載のめっき装置を用いためっき処理方法。
【請求項7】
前記低張力熱処理が、めっきを施されたワークを5N以下の低張力状態で、前記めっきが再結晶する熱処理であることを特徴とする請求項6記載のめっき処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−251182(P2012−251182A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122767(P2011−122767)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】