説明

化学分析装置及び化学分析方法

本発明の化学分析装置は、小型化、低コスト化、携帯化が可能で、かつ試料の分離、濃縮及び希釈の各工程の操作を可能とすることを課題とし、磁気微粒子を混入させた液滴を液滴とは異なる他の液体中に単一の液滴を維持したまま導入させる導入手段(S1)と、導入手段による他の液体中に磁気微粒子を混入させた液滴を導入させた状態で、磁気微粒子に対して外部より磁場を加えることにより磁気微粒子を混入させた液滴を導入手段における他の液体中で搬送する搬送手段と、搬送手段により磁気微粒子を混入させた液滴を搬送する過程で化学的分析の処理の
ための操作を順次施す処理手段(S2〜S6)とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、微量な液滴を用いて化学分析を行う化学分析装置及び化学分析方法に関するものである。
【背景技術】
従来から、例えば半導体微細加工技術を応用展開したマイクロマシニング技術で、化学及び生化学分析及びDNA配列分析を目的とした微小な分離用流路及び反応器が開発されている(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2参照)。また、微量な液滴を電気的な手法にて操作し、これにより微量な液体の生化学反応操作を行うデバイスが提案されている(特許文献2、非特許文献3、非特許文献4参照)。
【特許文献1】 特開平13−132861号公報
【特許文献2】 特表平15−526523号公報
【非特許文献1】「集積化ミクロ化学システム」、マテリアルインテグレーション、Vol.15,No.2,2002,
【非特許文献2】「マイクロチップに集積した化学システム」、ケミカル・エンジニアリング、11月号,2002,
【非特許文献3】「Droplet Manipulation on a Superhydrophobic Surface for Microchemical Analysis」,Digest of Technical Papers of transducers’01,pp.1150−1153,
【非特許文献4】「Towards Digital Microfludic Circuits:Creating,Transporting,Cutting and Merging Liquid Droplets by Electrowtting−based Actuation」,Technical Digest of MEMS’02,pp.32−35,
【発明の開示】
上述した従来技術では、微小流路及び反応器はシリコンもしくはガラスチップ上に集積化されており、分析装置の小型化、低コスト化が図られている。しかしながら、これらの流路及び反応器は分析装置の一部であり、液体の搬送機構として、例えばポンプ、バルブなどの流体機械などの他の要素が大型であるために、装置全体としての小型化、低コスト化には至っていない(非特許文献1、非特許文献2参照)。
また、装置の携帯性が乏しいために、様々な化学及び生化学物質をその場で分析することが難しいという問題も抱えている。
一方、微量な液滴操作で化学及び生化学反応を行うデバイスは電気的な手法で液滴を操作するために、上述した微小流路及び反応器の例に比べると、複雑な機構が不必要であるために、分析装置全体の小型化、低コスト化を図ることができるが、化学分析装置の機構である試料の濃縮及び希釈が困難であるという不都合がある(非特許文献3、非特許文献4参照)。
そこで、本発明は上述した不都合を解決することを課題とするものであって、小型化、低コスト化、携帯化が可能で、かつ試料の分離、濃縮及び希釈の各工程の操作が可能な化学分析装置及び化学分析方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の化学分析装置は、微量な液滴を化学的に分析するために各種処理を施す化学分析装置において、液滴に磁気微粒子を混入させた状態で、磁気微粒子を混入させた液滴を、磁気微粒子に対して磁場を加えることにより化学的分析の処理のために他の液体中で搬送する搬送手段を備えたものである。
また、本発明の化学分析方法は、微量な液滴を化学的に分析するために各種処理を施す化学分析方法において、液滴に磁気微粒子を混入させた状態で、磁気微粒子を混入させた液滴を、磁気微粒子に対して磁場を加えることにより化学的分析の処理のために他の液体中で搬送する搬送ステップを備えたものである。
本発明の化学分析装置では、磁気微粒子を含む液滴を、反応、分離、希釈、検出の各ユニット間で搬送することにより、一連の化学もしくは生化学反応及び検出を行う。液滴の搬送には液滴内部に閉じ込めた磁気微粒子を利用する。外部磁場により液滴内部に分散している磁気微粒子を捕集すると共に磁気微粒子に作用する磁気力を利用して液滴を搬送する。また、磁気微粒子は試料搬送用としての役目も担っており、磁気微粒子表面に目的とする試料が吸着している。
液滴の形成には表面張力を利用する。他の液体であるシリコーンオイル中に磁気微粒子を含んだ溶媒を滴下し液滴を形成する。溶媒には試料の化学及び生化学的な性質が変化しないような液体を用いる。液滴搬送時に磁気微粒子に作用する磁気力を利用するが、磁気微粒子が液滴内部に閉じ込められているために、磁気微粒子が流路表面上に吸着することはない。このため、磁気力で磁気微粒子を容易に操作することができる。
試料を含む液滴の反応、分離、希釈操作は、液滴を融合、分割することで実施する。反応の場合、障壁により隔てられた小室となる反応ユニットに反応試薬の液滴を形成しておく。このとき、反応試薬の液滴は隔壁などのゲートによりユニットに固定されるようにしておく。このユニット及びゲート材料に、液滴よりもシリコーンオイルとのぬれ性が良い材質を適用することで液滴をユニット壁面から分離してその内部に閉じ込める。
試料を含んだ液滴を磁気微粒子に対する磁気力により搬送し、反応ユニットの隔壁となるゲートを通過した後、反応試薬の液滴と融合させる。試料を含んだ液滴は反応試薬の液滴に比べて体積が小さいのでユニット内の反応ユニットの隔壁となるゲートを通過することができる仕組みになっている。また、二つの液敵同士のぬれ性が良いことから二つの液滴が接触することで二つの液滴が一つになる。
液滴の分離・分割は、液滴を各ユニット間に設けてある隔壁の下を通過させるときに行う。液滴の体積を考慮して障壁の高さを調整する。磁気微粒子を含んだ液滴が隔壁下にさしかかると、外部磁場の移動に伴い磁気引力により磁気微粒子とその周辺部は移動するが、その他の液滴の大部分は隔壁に対する液滴のぬれ性が良くないために隔壁にトラップ(捕捉)される。その結果、磁気微粒子を含んだ液滴部分と、磁気微粒子を含まない液滴部分との間に首状部分ができるネッキングが発生する。さらに外部磁場の移動により磁気微粒子を移動させると、ネッキングが大きくなり最終的には液滴は、磁気微粒子を含んだ液滴と、磁気微粒子を含んでいない液滴とに分割される。このように液滴のぬれ性を利用して磁気微粒子を含んだ液滴と、磁気微粒子を含んでいない液滴とに分離する。なお、液滴の体積と隔壁の高さを調整することにより分割比率を制御することができる。
希釈は基本的には反応ユニットと同じメカニズムを用いて、磁気微粒子を含んだ液滴と希釈用液滴とを融合させることにより行う。液滴の体積比率を制御することにより希釈倍率を変えることができる。検出には吸光あるいは発光などの光学的な手法を用いて反応後の試料の変化を計測する。なお、試料搬送用として用いている磁気微粒子の搬送効率を上げるために、液滴搬送時には、磁気微粒子を凝集させて移動させ、反応及び希釈工程においては化学反応を促進するために磁気微粒子を液滴内に分散させる。この分散、凝集手段には磁気力と、熱、光、又はpH(ペーハー)による物理的及び化学的な反応を利用する。また、反応ユニットでは必要に応じてマイクロヒータ及び温度センサーを基板に集積化することにより、精度の良い温度制御を行うことができる。
以上のように、本発明の化学分析装置では、磁気微粒子を含んだ液滴を外部磁場により搬送するのみで、試料の反応、分離、希釈、検出を行うことができ、その結果、ポンプ、バルブなどの液体の搬送機構が不要にすることができる。また、液滴搬送の駆動原として用いている磁気微粒子が液滴のなかに閉じ込められているために流路表面での凝集がなく磁気微粒子を容易に駆動させることができる。また、分離、希釈工程時の液滴の体積比率を制御することにより、磁気微粒子を含んだ試料の濃縮、洗浄を効率的に行うことができる。
本発明の化学分析装置及び方法によれば、バルブなどが不要となるため、装置を小型化して、コストを下げることができるとともに、携帯化が可能となる。また、磁気微粒子を含む液滴を、反応、分離、希釈、検出の各ユニット間で搬送することにより、一連の化学もしくは生化学反応及び検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、小型化学分析装置における試料処理の流れを示す図である。
図2は、小型化学分析装置における液滴搬送メカニズムを示す図である。
図3は、小型化学分析装置における反応方法を示す図であり、図3(a)は液滴搬送工程、図3(b)は隔壁通過工程、図3(c)は液滴接触工程、図3(d)は液滴融合工程、図3(e)は磁気微粒子分散工程を示す図である。
図4は、小型化学分析装置における分離・分割方法を示す図であり、図4(a)は液滴搬送工程、図4(b)は隔壁通過工程、図4(c)は液滴トラップ工程、図4(d)は液滴分離工程を示す図である。
図5は、小型化学分析装置における希釈方法を示す図であり、図5(a)は液滴搬送工程、図5(b)は隔壁通過工程、図5(c)は液滴融合工程、図5(d)は液滴分散工程を示す図である。
図6は、小型化学分析装置における分離及び融合機能を示す図であり、図6(a)は液滴搬送工程、図6(b)は隔壁通過工程、図6(c)は液滴トラップ工程、図6(d)は液滴分離工程、図6(e)は液滴接触工程、図6(f)は液滴融合工程、図6(g)は反応試薬洗浄工程を示す図である。
図7は、液滴内部の磁気微粒子の分散・凝集の制御を示す図であり、図7(a)は反応・希釈工程、図7(b)は搬送・分割工程、図7(c)は搬送・分割工程、図7(d)は反応・希釈工程を示す図である。
図8は、磁気微粒子の熱による分散・凝集の制御を示す図であり、図8(a)は液滴導入工程、図8(b)は液滴加熱オン工程、図8(c)は液滴加熱オフ工程、図8(d)は液滴加熱オフ工程、図8(e)は液滴加熱オン工程を示す図である。
図9は、アレイ状のコイルヒータによる液滴内部の磁気微粒子の分散、凝集の制御及び液滴の搬送を示す図であり、図9(a)は液滴加熱オン工程、図9(b)は液滴加熱オフ工程、図9(c)は搬送工程、図9(d)は融合液滴加熱オフ工程、図9(e)は融合液滴加熱オン工程を示す図である。
引用符号の説明
1…液滴
2…磁気微粒子とその表面に吸着した試料
3…磁気微粒子
4…試料
5…シリコーンオイル
6…薄板
7…磁場発生装置(永久磁石)
8…磁場発生装置の移動方向
9…隔壁
10…反応用液滴
11…磁気微粒子と試料を含んだ反応用液滴
12…分割された液滴(磁気微粒子と試料を含んでいない部分)
13…分割された液滴(磁気微粒子と試料を含んでいる部分)
14…希釈用液滴
15…磁気微粒子が希釈用液滴内部で分散している状態
20…幅広隔壁
30…ヒータ
31…アレイ状コイル
【発明を実施するための最良の形態】
本発明による小型化学分析装置における試料処理の流れを図1に示す。
図1において、磁気ビーズなどの磁気微粒子表面に試料を吸着、固定させることにより、磁気微粒子を含む試料である液滴を装置の導入ユニットに導入する(ステップS1)。その後、その液滴を磁気力により反応ユニットに搬送し、反応試薬との混合及び反応処理を行う(ステップS2)。この場合、反応処理に応じて温度制御も行う。次に、反応後の液滴を分離ユニットに搬送し、ここで不要になった大部分の反応溶媒と磁気微粒子を含む最小限の溶媒とに分離する(ステップS3)。磁気微粒子を含む液滴は希釈ユニットに搬送され、ここで液滴の成分検出用に希釈される(ステップS4)。なお、この処理は必要に応じて削除することもある。また、分離及び希釈ユニットの組み合わせを複数個連続して設けることにより希釈効率を高めるように構成することもできる。液滴を希釈した後は検出ユニットに搬送し、ここで反応処理の結果を計測する(ステップS5)。なお、検出には光学的な手法を用いるが、これ以外にも必要に応じて、電気的、化学的手法を用いるようにする。検出後、液滴は装置から排出される(ステップS6)。以上のように、本発明による小型化学分析装置では、磁気微粒子を含む液滴を、反応、分離、希釈、検出ユニットに逐次搬送することにより一連の生化学反応及び検出を行うことができる。
次に、この小型化学分析装置における液滴搬送メカニズムを図2に示す。
図2において、液滴1の搬送には液滴内部に閉じ込めた磁気微粒子2を利用する。例えば永久磁石などの外部磁場発生装置7により液滴内部に分散している磁気微粒子2を招集するとともに、磁気微粒子2に作用する磁気力を利用して液滴1を搬送する。また、磁気微粒子2は、試料の搬送用としての役目も担っており、その実体は磁気微粒子表面3に試料4が吸着して固定されている状態のものを示している。液滴1の形成には表面張力が利用される。すなわち、ユニット内に充満させたシリコーンオイル5中に磁気微粒子2を含んだ試料4を溶媒と共にスポイトなどにより滴下して液滴1を形成する。溶媒には試料4の生化学的な性質が変化しないような液体が用いられる。なお、上述した磁気微粒子2の表面に試料4が吸着することにより形成される液滴1に限らず、液滴1−1に示すように、磁気微粒子2の隙間を含めて液滴1−1中に試料4−1が一様に分散している状態で液滴1−1を形成するようにしてもよい。液滴1では磁気微粒子2が試料4の直接的なキャリアとなるのに対して、液滴1−1では磁気微粒子2が試料4−1の間接的なキャリアとなる。この液滴1−1の場合には、上述した液滴1と同様の作用となるが、試料の搬送の自由度がより広がることになる。以下の説明において、液滴1のみを説明するが、液滴1−1についても同様に適用されるものである。また、液滴1及び液滴1−1が混合した状態であってもよい。
液滴1の搬送には磁気微粒子2に作用する磁気力が利用される。ユニット下部に配置された薄板6を介して例えば永久磁石などの外部磁場発生装置7を図示しない駆動装置により矢印8で示す移動方向に移動させると、それに伴い磁気微粒子2が引きつけられ、その結果、磁気微粒子2を覆っている液滴1が移動する。本発明による小型化学分析装置における液滴搬送メカニズムでは、磁気微粒子2が液滴1内部に閉じ込められているために、磁気微粒子2が流路となる薄板6表面上に吸着することはない。その結果、磁気力で磁気微粒子2を容易に操作することができると共に、試料搬送用として用いている磁気微粒子2を搬送中に脱落させることなく搬送させることができる。
なお、上述した装置の導入ユニットは、上方を除く4方向の側面及び下面が薄板6により覆われているものとする。また、磁気微粒子2に作用する外部磁場7の磁気力に対応するように予め磁気微粒子2の大きさ及び数を決定することにより、液滴の搬送をスムーズに行うことができる。
本発明による実施の形態の例では、磁気微粒子2として酸化鉄材をベースとするものを用いている。また、磁気微粒子2の大きさは例えば数10ミクロン〜数10ナノメートルである。なお、磁気微粒子2の大きさは試料の種類及び外部磁場発生装置7の駆動装置の仕様に基づいて決定するのが望ましい。駆動装置としては、例えば、ラックアンドピニオンの機構とモータを用いて、モータの回転によりラック上を外部磁場発生装置7を移動させるものが用いられる。また、駆動経路は、上述した各ユニットの直線状又は/及び円状の組み合わせに対応して、適宜、形成される。
また、液滴形成用の溶媒も試料の種類により決定される。例えば、生化学物質が試料の場合には溶媒として緩衝液が用いられる。また、外部磁場発生装置7としては永久磁石もしくは後述するようにアレイ状に配置したコイルが用いられる。外部磁場発生装置7に永久磁石を用いる場合には、試料の種類に応じて磁気微粒子2を搬送するための永久磁石の磁場の強度を操作する必要があるが、この場合には比較的大きな磁気力を得ることができる。一方、外部磁場発生装置7にアレイ状に配置したコイルを用いる場合には、永久磁石に比べて得られる磁場の強度が小さくなるが、外部磁場を電気的な方法で制御することができ、装置全体を小型化することができる。
具体的な液滴の反応、分離、希釈の操作は、液滴を融合、分割することにより実施することができる。この反応、分離、希釈の3つの液滴の操作の例を以下に順次説明する。
図3は、上述した小型化学分析装置における液滴を用いた反応方法の例を示すものである。図3(a)は液滴搬送工程、図3(b)は隔壁通過工程、図3(c)は液滴接触工程、図3(d)は液滴融合工程を示す図である。
装置のユニットは、上方を除く4方向の側面及び下面が薄板6により覆われていると共に、各ユニットはそれぞれ隔壁9−1、9−2、9−3により隔てられているものとする。
基本的な操作としては、図3(a)に示す液滴搬送工程において試料を固定した磁気微粒子2を含む液滴1を外部磁場発生装置7からの磁気力により搬送し、図3(b)に示す隔壁通過工程において反応ユニットに至る隔壁9−2を通過させた後、図3(c)に示す液滴接触工程及び図3(d)に示す液滴融合工程において反応試薬の液滴10と融合させて試料の反応処理を行うようにする。
このため、図3(a)に示す液滴搬送工程において隔壁9−2、9−3により形成される反応ユニットには予め反応試薬の液滴10を形成しておくようにする。また、隔壁9−1、9−2により形成される導入ユニットには予め磁気微粒子2とその表面に試料が吸着した液滴1が導入されている。
このとき、反応試薬の液滴10は隔壁9−2、9−3により一定の場所に固定されるようにしておく。反応ユニットを形成する薄板6の内側表面及び隔壁9−2、9−3の材質としては、反応試薬の液滴10に対してよりもシリコーンオイル5に対する方がぬれ性の良いものにすることにより、反応試薬の液滴10を反応ユニット内部に閉じ込めることができる。例えば、薄板6及び隔壁9−2、9−3は、ガラス板にパリレン樹脂を蒸着させることにより、疎水化処理を施すようにしてもよい。なお、ここでは高さ方向に流路を狭くする隔壁9−1、9−2のみを示したが、高さ方向と直交する横(幅)方向に流路を狭くする隔壁を設けるようにしてもよい。以下の説明において、高さ方向に流路を狭くする隔壁9−1、9−2のみを説明するが、横(幅)方向に流路を狭くする隔壁についても同様に適用されるものである。
図3(b)に示す隔壁通過工程において、磁気微粒子2を含む液滴1を外部磁場発生装置7からの磁気力により搬送し、反応ユニットに至る隔壁9−2を通過させた後、図3(c)に示す液滴接触工程において磁気微粒子2を含む液滴1を反応試薬の液滴10と接触させる。磁気微粒子2を含む液滴1は反応試薬の液滴10に比べて体積が小さいので反応ユニットに至る隔壁9−2を通過することができる構成になっている。また、二つの液滴同士のぬれ性が良いことから接触することで二つの液滴が一つになる。
図3(d)に示す液滴融合工程において、二つの液滴が一つの融合液滴11になった後、図3(e)に示す磁気微粒子分散工程において磁気微粒子2を融合液滴11中に分散させる。これは、磁気微粒子2表面に吸着している試料の反応効率を上げるためである。この分散の方法としては、外部磁場発生装置7を矢印8で示すように融合液滴11から離れる方向に移動させて磁気力を弱くするように制御する方法が用いられる。また、この方法に限らず、熱、光、又はpH(ペーハー)による物理的及び化学的な反応を利用した磁気微粒子2の凝集及び分散現象を用いることも考えられる。図3(e)では永久磁石を外部磁場発生装置7として用いて、永久磁石を離れる方向に移動させて磁気微粒子2を融合液滴11内に分散させる様子を示した。
次に、上述した小型化学分析装置における液滴を用いた分離・分割方法の例を図4に示す。
装置のユニットは、上方を除く4方向の側面及び下面が薄板6により覆われていると共に、各ユニットはそれぞれ隔壁9−1、9−2、9−3により隔てられているものとする。ここで分離させる液滴は、例えば図3の反応操作において生成された融合液滴11である。
以下、図4に示す液滴の分離・分割方法について説明する。
図4(a)は液滴搬送工程、図4(b)は隔壁通過工程、図4(c)は液滴トラップ工程、図4(d)は液滴分離工程を示す図である。
融合液滴11の分離は、まず、図4(a)に示す液滴搬送工程において、融合液滴11を外部磁場発生装置7からの磁気力を用いて分離ユニットに至る隔壁9−2の手前まで搬送する。
その後、図4(b)に示す隔壁通過工程において分離ユニットに至る隔壁9−2の下の方へ融合液滴11を移動させる。すると、隔壁9−2に対する融合液滴11自体のぬれ性が良くないために、図4(c)に示す液滴トラップ工程において融合液滴11の大部分は隔壁9−2にトラップ(捕捉)され、磁気微粒子を含んだ融合液滴11の周辺部分のみが外部磁場発生装置7の磁気力に追従して移動する。その結果、融合液滴11は磁気微粒子を含まない部分と磁気微粒子を含む部分との間に首状部分ができるネッキングが発生する。
さらに外部磁塲装置7の移動により磁気微粒子を移動させると、ネッキングが大きくなり最終的には図4(d)に示す液滴分離工程において、融合液滴11は、磁気微粒子を含んだ液滴13と、磁気微粒子を含んでいない液滴12とに分割される。このように融合液滴11は、そのぬれ性を利用して磁気微粒子を含んだ液滴13と、磁気微粒子を含んでいない液滴12とに分離される。この分離・分割方法では、融合液滴11の体積と隔壁9−2の高さを調整することで分割比率を制御することができる。また、隔壁9−2を通過させるだけで、融合液滴11を磁気微粒子を含んだ液滴13と、磁気微粒子を含んでいない液滴12とに分離することができる。
次に、上述した小型化学分析装置における液滴を用いた希釈方法の例を図5に示す。図5(a)は液滴搬送工程、図5(b)は隔壁通過工程、図5(c)は液滴融合工程、図5(d)は液滴分散工程を示す図である。
希釈操作は、基本的には図3に示した反応ユニットと同じメカニズムで行うことができ、図5において、図4の分割操作で得られた希釈の対象となる水溶液物質及び磁気微粒子を含んだ液滴13と、希釈用液滴14とを融合させることにより行う。
まず、図5(a)に示す液滴搬送工程において磁気微粒子を含んだ液滴13を外部磁場発生装置7からの磁気力により搬送する。そして、融合ユニットに至る隔壁9−2を通過した後、希釈用液滴14と融合させて、試料の希釈処理を行う。このとき、図5(a)に示す液滴搬送工程において隔壁9−2、9−3により形成される希釈ユニットには希釈用液滴14が予め用意されている。また、隔壁9−1、9−2により形成される導入ユニットには予め磁気微粒子を含んだ液滴13が導入されている。
希釈用液滴14は、隔壁9−2、9−3により一定の場所に固定されるようにしておく。ここで、希釈ユニットを形成する薄板6の内側表面及び隔壁9−2、9−3の材質として、希釈用液滴14に対してよりもシリコーンオイル5に対する方がぬれ性の良いものにすることにより、希釈用液滴14を希釈ユニット内部に閉じ込めることができる。また、この点は、図3の反応ユニットにおける融合液滴11、図4の分離ユニットにおける磁気微粒子を含んだ液滴13、磁気微粒子を含んでいない液滴12も同様である。
図5(b)に示す隔壁通過工程において磁気微粒子を含んだ液滴13を外部磁場発生装置7からの磁気力により搬送し、反応ユニットに至る隔壁9−2を通過させた後、図5(c)に示す液滴接触工程において磁気微粒子を含んだ液滴13を希釈用液滴14と融合させる。これにより、磁気微粒子を含んだ液滴13に含まれた水溶性物質が希釈用液滴14により希釈される。ここで、磁気微粒子を含む液滴13は希釈用液滴14に比べて体積が小さいので希釈ユニットに至る隔壁9−2を通過することができる構成になっている。また、二つの液滴同士のぬれ性が良いことから接触することで二つの液滴が一つになる。
図5(c)に示す液滴融合工程において二つの液滴が一つの融合液滴15になった後、図5(d)に示す磁気微粒子分散工程において希釈対象の水溶性物質の希釈効率を上げるために、磁気微粒子2を融合液滴15中に分散させる。分散の方法としては、外部磁場発生装置7を矢印8で示すように融合液滴15から離れる方向に移動させて磁気力を弱くするように制御する方法が用いられる。この方法以外に、熱、光、又はpH(ペーハー)による物理的及び化学的な反応を利用した磁気微粒子2の凝集及び分散現象を用いることもできる。図5(d)では永久磁石を外部磁場発生装置7として用いて、永久磁石を離れる方向に移動させて磁気微粒子2を融合液滴15内に分散させる様子を示した。
ここで、希釈倍率は、融合液滴15の体積比率を制御することにより変えることができる。また、このようにして液滴を希釈した後に、反応処理の結果の試料の検出には吸光あるいは発光などの光学的な手法を用いて反応後の試料の変化を計測する。
上述した図4及び図5の操作例では、液滴の分離及び融合機能を各ユニット毎に行う場合を示したが、一つのユニットで液滴の分離及び融合機能を有する例を図6に示す。
装置のユニットは、上方を除く4方向の側面及び下面が薄板6により覆われていると共に、各ユニットはそれぞれ隔壁9−1、9−3により隔てられているものとする。ここで分離させる液滴は、例えば図3の反応操作において生成された融合液滴11であり、融合させる液滴は図5の希釈操作で示した希釈用液滴14である。
以下、図6に示す一つのユニットで液滴の分離及び融合機能を有する例における、液滴の分離について説明する。図6(a)は液滴搬送工程、図6(b)は隔壁通過工程、図6(c)は液滴トラップ工程、図6(d)は液滴分離工程、図6(e)は液滴接触工程、図6(f)は液滴融合工程、図6(g)は反応試薬洗浄工程を示す図である。
まず、図6(a)に示す液滴搬送工程において融合液滴11を外部磁場発生装置7からの磁気力により搬送し、図6(b)に示す隔壁通過工程において分離・融合ユニットに至る幅広隔壁20の下を融合液滴11を通過させることにより、図6(c)に示す液滴トラップ工程において融合液滴11をトラップ(捕捉)し、図6(d)に示す液滴分離工程において融合液滴11を磁気微粒子を含まない液滴12と磁気微粒子を含む液滴13に分離する。
図6(e)に示す液滴接触工程及び図6(f)に示す液滴融合工程において磁気微粒子を含む液滴13を希釈用液滴14と接触、融合させることにより、図6(g)の反応試薬洗浄工程に示すように反応試薬の洗浄が行われる。
この図6に示す一つのユニットで液滴の分離及び融合機能を有する例では、導入ユニットと分離・融合ユニット間に設ける隔壁の幅を大きくして幅広隔壁20として構成することにより、融合液滴11の磁気微粒子を含む液滴13と融合液滴11の磁気微粒子を含まない液滴12の分離を幅広隔壁20下の通過時に行い、その後、磁気微粒子を含む液滴13が幅広隔壁20下を潜り抜けた後に、磁気微粒子を含む液滴13と希釈用液滴14とが融合するように構成されている。
この図6に示す一つのユニットで液滴の分離及び融合機能を有する例によれば、図3の反応操作において生成された反応後の融合液滴11を幅広隔壁20により分割し、これにより、試料を表面に吸着した磁気微粒子を含む液滴13のみを抽出し、その後、希釈用液滴14と融合させることで試薬を洗浄するという工程を簡単に実現することができる。
また、本例によれば、融合液滴11の分割比率及び融合液滴15の融合比率を変えることにより洗浄効率を簡単に変えることができる。そして、このような構成をシリーズに配置することにより反応試薬の洗浄効率をさらに高めることができる。
上述した実施の形態の各例で説明したとおり、図3に示した反応後の融合液滴11の分散及び図5に示した希釈後の融合液滴15の分散以外の、図3〜図6に示した液滴の搬送時及び分割時には磁気微粒子を凝集状態にする。外部磁場発生装置7による外部磁場により磁気微粒子に作用する磁気力は磁気微粒子の体積に依存するので、それが大きいほど強い力が得られる。しかし、実際に用いる磁気微粒子は直径数10ミクロン以下と小さいため、そこに作用する磁気力も小さいので、液滴を搬送するために十分な磁気力を得ることが難しい。
そこで、以下に説明する実施の形態の例では、液滴の搬送時には磁気微粒子を凝集させて、一つの大きな磁性体にさせることにより大きな磁気力を得て、これにより液滴を容易に搬送するようにしている。また、液滴を分割するときにも、試料搬送の役目を担っている磁気微粒子のみを取り出すために磁気微粒子を凝集させた状態にする。
一方、反応用液滴若しくは希釈用液滴中に磁気微粒子を導入するときには、磁気微粒子を凝集させた状態にしておくと、磁気微粒子の液滴への拡散が良くない状態となる。従って、上記のような条件下では磁気微粒子を液滴中に分散させ、磁気微粒子表面の試料と液滴との反応及び希釈効率を高める必要がある。
以上のように、磁気微粒子は液滴中において、状況に応じて分散若しくは凝集のどちらかの状態に制御されることが要求される。図7は、上記の仕組みを物理的に実施する方法として、液滴内部の磁気微粒子の分散・凝集の制御を行う方法を示すものである。図7(a)は反応・希釈工程、図7(b)は搬送・分割工程、図7(c)は搬送・分割工程、図7(d)は反応・希釈工程を示す図である。
装置のユニットは、上方を除く4方向の側面及び下面が薄板6により覆われていると共に、各ユニットはそれぞれ隔壁9−1、9−3により隔てられているものとする。ここで分散・凝集させる液滴は、例えば図3の反応操作において生成された融合液滴11、あるいは図5の希釈操作において生成された融合液滴15である。
まず、図7(a)に示す反応・希釈工程において、反応・希釈操作で生成された磁気微粒子を含んだ液滴1に対して永久磁石を離れる方向に移動させて磁気微粒子2を液滴1内に分散させる。次に、図7(b)に示す搬送・分割工程において、分散された磁気微粒子を含んだ液滴1に対して永久磁石を近づく方向に移動させて磁気微粒子2を液滴1内に凝集させ、凝集させた磁気微粒子を含んだ液滴1を外部磁場発生装置7からの磁気力により搬送する。続いて、図7(c)に示す搬送・分割工程において、他の反応ユニットに至る図示しない隔壁を通過した後、他の液滴と融合させて、図7(d)に示す反応・希釈工程において永久磁石を外部磁場発生装置7として用いて、永久磁石を離れる方向に移動させて磁気微粒子2を液滴1内に分散させる。
このように、図7(a)に示す反応・希釈時には外部磁場を液滴1から遠ざけることにより磁場の強さを弱くして、これにより磁気微粒子2を液滴1内に分散させるように制御する。一方、図7(b)及び図7(c)に示す搬送・分割時には外部磁場を液滴1近傍に近づけて磁気微粒子2を液滴1内に凝集させるように制御し、再び、図7(d)では外部磁場を液滴1から遠ざけ、磁気微粒子2を液滴1内に分散させる。
なお、図7では、外部磁場発生装置7として永久磁石を用いる例のみを示したが、これに限らず、外部磁場発生装置7に後述するようにアレイ状に配置したコイルを用いても良い。なお、この場合には、外部磁場の有無若しくは強弱をコイルに流す電流を制御することにより簡単に制御することができる。
本発明の実施の形態の化学分析装置によれば、上述した図7に示した外部磁場による液滴内部の磁気微粒子の分散・凝集の制御の例に限らず、熱、光、又はpH(ペーハー)による物理的及び化学的な反応を利用して磁気微粒子の分散・凝集の制御を行うことも可能である。
図8は、その一例として熱を利用して磁気微粒子の分散・凝集を制御する例を示すものである。図8(a)は液滴導入工程、図8(b)は液滴加熱オン工程、図8(c)は液滴加熱オフ工程、図8(d)は液滴加熱オフ工程、図8(e)は液滴加熱オン工程を示す図である。
この場合には、特に、熱により凝集を起こすように、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドなどの温度感受性ポリマーで化学修飾した磁気微粒子が用いられる。上記熱応答の磁気微粒子にはいくつかの種類があり、例えば、低温時に凝集、若しくは高温時に凝集するものなどがある。これらの凝集のタイプは磁気微粒子の表面に付ける化学的修飾を変えることにより変更することができる。なお、pH(ペーハー)応答性ポリマーであるポリオキシエチレンビニルエーテルを用いれば、pH(ペーハー)変化により上記と同様の効果を得ることができる。
上記熱応答の磁気微粒子を試料搬送に用いた一例を図8を用いて説明する。なお、この例は、上述した低温時に凝集するタイプの場合である。
装置のユニットは、上方を除く4方向の側面及び下面が薄板6により覆われていると共に、各ユニットはそれぞれ隔壁9−1、9−3により隔てられているものとする。ここで分散・凝集させる液滴は、例えば図3の反応操作において生成された融合液滴11、もしくは図5の希釈操作において生成された融合液滴15である。
まず、図8(a)に示す液滴導入工程において外部磁場発生装置7の移動により磁気微粒子を含んだ液滴1を隔壁9−1側の反応ユニットに導入する。導入後に、図8(b)に示す液滴加熱オン工程において反応ユニット下部の薄板6−2に設けられたヒータ30−1への通電及び加熱の状態をオンにすることにより液滴1の温度をある一定レベル以上にする。この温度を磁気微粒子2の分散条件及び反応促進温度の二つを満たすように設定することにより、分散及び反応の両方の効率を上げることができる。
反応終了後、液滴1を隔壁9−3側の他の反応ユニットに搬送する場合には、図8(c)に示す液滴加熱オフ工程においてヒータ30−1への通電及び加熱の状態をオフにすることにより磁気微粒子2を化学的に凝集させてヒータ30−1下方の外部磁場発生装置7の近傍に集める。
その後、図8(d)に示す液滴加熱オフ工程において液滴の分割、希釈用液滴との融合とを経由した後、ここで再度、図8(e)に示す液滴加熱オン工程において隔壁9−3側の他の反応ユニット下部の薄板6−2に設けられたヒータ30−2への通電及び加熱の状態をオンにすることにより液滴1を加熱して、磁気微粒子2を希釈用液滴中に分散させる。
以上のような加熱による分散・凝集の制御を用いることにより、液滴内部の磁気微粒子の凝集若しくは分散状態を作り出し、これにより搬送、分割、洗浄などの一連の生化学的操作の効率を高めることができる。図8の例では磁気微粒子の搬送系として例えば永久磁石による外部磁場発生装置7を用いた場合を示したが、この場合、外部磁場発生装置7を移動させる駆動装置を必要とすることはいうまでもない。
また、これに限らず、磁気微粒子の搬送系として搬送系路上に配置したアレイ状の電磁コイルを用いてもよい。図9は、アレイ状のコイルヒータによる液滴内部の磁気微粒子の分散、凝集の制御及び液滴の搬送を示すものである。図9(a)は液滴加熱オン工程、図9(b)は液滴加熱オフ工程、図9(c)は搬送工程、図9(d)は融合液滴加熱オフ工程、図9(e)は融合液滴加熱オン工程を示す図である。
装置のユニットは、上方を除く4方向の側面及び下面が薄板6により覆われていると共に、各ユニットはそれぞれ隔壁9−1、9−3により隔てられているものとする。ここで分散・凝集させる液滴は、例えば図3の反応操作において生成された融合液滴11、又は図5の希釈操作において生成された融合液滴15である。
まず、図9(a)に示す液滴加熱オン工程において、反応ユニット下部に設けられたヒータ30−1への通電及び加熱の状態をオンにし、これにより液滴1の温度をある一定レベル以上にする。この温度を磁気微粒子2の分散条件及び反応促進温度の二つを満たすように設定することにより、分散及び反応の両方の効率を上げることができる。
反応終了後、液滴1を隔壁9−3側の他の反応ユニットに搬送する。すなわち、図9(b)に示す液滴加熱オフ工程において、ヒータ30−1への通電及び加熱の状態をオフにすることにより磁気微粒子2を化学的に凝集させてヒータ30−1下方の外部磁場発生装置7の近傍に集める。この状態で、図9(c)に示す搬送工程において搬送系路上に配置したアレイ状コイル31−1〜31−6に対して順次移動方向へ通電制御し、これにより、得られる磁気力が移動方向へ向けて移動するため、凝集させた磁気微粒子を含んだ液滴1が順次移動方向へ向けて搬送される。
その後、図9(d)に示す融合液滴加熱オフ工程において、液滴の分割、希釈用液滴との融合とを経由した後、ここで再度、図9(e)に示す融合液滴加熱オン工程において隔壁9−3側の他の反応ユニット下部に設けられたヒータ30−2への通電及び加熱の状態をオンにすることにより融合液滴15を加熱して、磁気微粒子2を希釈用液滴中に分散させる。
以上のような加熱による分散・凝集の制御を用いることにより、液滴内部の磁気微粒子の凝集若しくは分散状態を作り出し、これにより搬送、分割、洗浄などの一連の生化学的操作の効率を高めることができ、さらに、磁気微粒子の搬送系としてアレイ状コイル31−1〜31−6を用いることにより、液滴内部の磁気微粒子の分散、凝集の制御及び液滴の搬送の全ての工程を電気的な制御のみで行うことができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微量な液滴を化学的に分析するために各種処理を施す化学分析装置において、
液滴に磁気微粒子を混入させた状態で、上記磁気微粒子を混入させた液滴を、上記磁気微粒子に対して磁場を加えることにより化学的分析の処理のために上記他の液体中で搬送する搬送手段
を備えたことを特徴とする化学分析装置。
【請求項2】
請求の範囲第1項記載の化学分析装置において、
上記搬送手段により上記磁気微粒子を混入させた液滴を搬送する過程で化学的分析の処理のための操作を順次施す処理手段
を備えたことを特徴とする化学分析装置。
【請求項3】
請求の範囲第2項記載の化学分析装置において、
上記磁気微粒子を混入させた液滴又は液滴のみを複数種類設け、上記処理手段は複数の隔壁により隔てられた小室を有し、上記各小室に上記複数種類の上記磁気微粒子を混入させた液滴もしく液滴のみが配置され、
上記搬送手段により任意の小室に配置される上記磁気微粒子を混入させた液滴を上記各小室に設けられた各隔壁を乗り越えることにより搬送し、他の小室に配置される上記複数種類のうちの他の液滴と合体させて化学反応操作そのものあるいはその操作の一部を行う
ことを特徴とする化学分析装置。
【請求項4】
請求の範囲第3項記載の化学分析装置において、
上記搬送手段により任意の小室に配置される上記磁気微粒子を混入させた上記複数種類のうちの任意の液滴を上記各小室に設けられた各隔壁を乗り越えて上記他の小室に搬送する際に、上記液滴のぬれ性及び表面張力などの物理的及び化学的性質を利用して上記磁気微粒子を混入させた上記複数種類のうちの任意の液滴を、上記磁気微粒子を含んだ液滴と、上記磁気微粒子を含まない液滴とに分離操作を行う
ことを特徴とする化学分析装置。
【請求項5】
請求の範囲第1項、第2項、第3項又は第4項記載の化学分析装置において、
上記磁気微粒子を混入させた液滴に対して、外部より加える磁場を制御することにより、上記磁気微粒子を上記液滴中に分散又は凝集させると共に、上記磁気微粒子を混入させた液滴の操作を行う
ことを特徴とする化学分析装置。
【請求項6】
請求の範囲第5項記載の化学分析装置において、
上記外部磁場の制御の他に、少なくとも光、熱、又はpH(ペーハー)による物理的及び化学的な反応制御を用いる
ことを特徴とする化学分析装置。
【請求項7】
請求の範囲第1項、第2項、第3項又は第4項記載の化学分析装置において、
上記磁気微粒子の表面に化学反応操作を行うための試料を吸着した状態で、上記磁気微粒子を上記試料に対する化学反応操作を行うためのキャリアーとして用いる
ことを特徴とする化学分析装置。
【請求項8】
請求の範囲第2項、第3項又は第4項記載の化学分析装置において、
上記処理手段となる複数の隔壁により隔てられた上記小室を複数個組み合わせることにより、上記磁気微粒子の表面に吸着した試料に対する少なくとも反応、分離、希釈による一連の化学反応操作を行う
ことを特徴とする化学分析装置。
【請求項9】
微量な液滴を化学的に分析するために各種処理を施す化学分析方法において、
液滴に磁気微粒子を混入させた状態で、上記磁気微粒子を混入させた液滴を、上記磁気微粒子に対して磁場を加えることにより化学的分析の処理のために上記他の液体中で搬送する搬送ステップ
を備えたことを特徴とする化学分析方法。
【請求項10】
請求の範囲第9項記載の化学分析方法において、
上記搬送ステップにより上記磁気微粒子を混入させた液滴を搬送する過程で化学的分析の処理のための操作を順次施す処理ステップ
を備えたことを特徴とする化学分析方法。
【請求項11】
請求の範囲第10項記載の化学分析方法において、
上記磁気微粒子を混入させた液滴又は液滴のみを複数種類設け、上記処理ステップによる処理状態は複数の隔壁により隔てられた小室において形成され、上記各小室に上記複数種類の上記磁気微粒子が配置され、
上記搬送ステップにより任意の小室に配置される上記磁気微粒子を混入させた上記複数種類の液滴のうちの任意の液滴を上記各小室に設けられた各隔壁を乗り越えることにより搬送し、他の小室に配置される上記複数種類のうちの他の液滴と合体させて化学反応操作そのものあるいはその操作の一部を行う
ことを特徴とする化学分析方法。
【請求項12】
請求の範囲第11項記載の化学分析方法において、
上記搬送ステップにより任意の小室に配置される上記磁気微粒子を混入させた上記複数種類のうちの任意の液滴を上記各小室に設けられた各隔壁を乗り越えて上記他の小室に搬送する際に、上記液滴のぬれ性及び表面張力などの物理的及び化学的性質を利用して上記磁気微粒子を混入させた上記複数種類のうちの任意の液滴を、上記磁気微粒子を含んだ液滴と、上記磁気微粒子を含まない液滴とに分離操作を行う
ことを特徴とする化学分析方法。
【請求項13】
請求の範囲第9項、第10項、第11項又は第12項記載の化学分析方法において、
上記磁気微粒子を混入させた液滴に対して、外部より加える磁場を制御することにより、上記磁気微粒子を上記液滴中に分散又は凝集させると共に、上記磁気微粒子の表面に吸着された試料の操作を行う
ことを特徴とする化学分析方法。
【請求項14】
請求の範囲第13項記載の化学分析方法において、
上記外部磁場の制御の他に、少なくとも光、熱、又はpH(ペーハー)による物理的及び化学的な反応制御を用いる
ことを特徴とする化学分析方法。
【請求項15】
請求の範囲第9項、第10項、第11項又は第12項記載の化学分析方法において、
上記磁気微粒子の表面に化学反応操作を行うための試料を吸着した状態で、上記磁気微粒子を上記試料に対する化学反応操作を行うためのキャリアーとして用いる
ことを特徴とする化学分析方法。
【請求項16】
請求の範囲第10項、第11項又は第12項記載の化学分析方法において、
上記処理ステップによる処理状態を形成する複数の隔壁により隔てられた上記小室を複数個組み合わせることにより、上記磁気微粒子の表面に吸着した上記試料に対する少なくとも反応、分離、希釈による一連の化学反応操作を行う
ことを特徴とする化学分析方法。

【国際公開番号】WO2005/069015
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517121(P2005−517121)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000633
【国際出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】