化学分析装置
【課題】試料や試薬の流動に係わる分析工程そのものの信頼性を向上した化学分析装置を得る。
【解決手段】モータ11により回転可能に支持された保持ディスク12と、液体試料あるいは試薬が入れられ保持ディスクに装着される複数の検査モジュール2と、を有し、保持ディスクを分析工程に必要とされる回転速度,回転時間,停止時間のプロトコルに従って運転し、液体試料あるいは試薬を流動させて分析する化学分析装置において、保持ディスクの回転に伴うインバランス量と基準点からの発生角度を求め、少なくともインバランス量又は発生角度のいずれかに関連して液体試料あるいは試薬の流動に関する不具合を判定する。
【解決手段】モータ11により回転可能に支持された保持ディスク12と、液体試料あるいは試薬が入れられ保持ディスクに装着される複数の検査モジュール2と、を有し、保持ディスクを分析工程に必要とされる回転速度,回転時間,停止時間のプロトコルに従って運転し、液体試料あるいは試薬を流動させて分析する化学分析装置において、保持ディスクの回転に伴うインバランス量と基準点からの発生角度を求め、少なくともインバランス量又は発生角度のいずれかに関連して液体試料あるいは試薬の流動に関する不具合を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料中の特定の化学物質を抽出し、分析する化学分析装置に関し、特に、全血を試料としてウイルス核酸の抽出,増幅,検出を行うものに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の化学物質を含む試料から核酸等の特定の化学物質を抽出し分析する化学分析装置としては、回転ディスクの向心力を用いて試料を定量し、回転速度と回転時間を順次変えながら、特定の試薬を流動させて核酸の抽出を行う、核酸のPCRによる
(Polymerase Chain Reaction)遺伝子増幅装置が知られ、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
また、流体試料及び溶解試薬を入れたカートリッジ内部の流路中に抵抗性センサを設け、その電気的な出力を検出して流体試料及び溶解試薬の移動を検出することが知られ、例えば、特許文献2に記載されている。
【0004】
さらに、遠心分離機において、試料を搭載した回転体となるロータ室内のインバランスを検出してロータ室内を滅菌化するため殺菌灯を照射することが知られ、例えば、特許文献3に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特表2003−502656号公報
【特許文献2】特表2001−527220号公報(段落0046,図2)
【特許文献3】特許第3641987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記、特許文献1に記載のものでは、試料や試薬の流動良否に関しては着目しておらず、分析装置として信頼性を損なう恐れがあった。
【0007】
また、特許文献2に記載の流路内に抵抗性センサ設けるものでは、その出力の取り出しが複雑化し、特に、カートリッジの脱着及びカートリッジを使い捨てとするには信頼性を確保することが困難で、低価格化にも不利であった。
【0008】
さらに、特許文献3に記載のものでは、単にインバランスを検知して安全性と信頼性を高めるものであり、分析すること自体の信頼性が向上するものではなく、不十分であった。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、試料や試薬の流動に係わる分析工程そのものの信頼性を向上し、特に、全血を試料としてウイルス核酸の抽出,増幅,検出工程の異常を早期に判別して迅速な分析を行い、信頼性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、モータにより回転可能に支持された保持ディスクと、液体試料あるいは試薬が入れられ前記保持ディスクに装着される複数の検査モジュールと、を有し、前記保持ディスクを分析工程に必要とされる回転速度,回転時間,停止時間のプロトコルに従って運転し、前記液体試料あるいは試薬を流動させて分析する化学分析装置において、前記保持ディスクの回転に伴うインバランス量と基準点からの発生角度を求め、少なくとも前記インバランス量又は前記発生角度のいずれかに関連して前記液体試料あるいは試薬の流動に関する不具合を判定するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保持ディスクの回転に伴うインバランス量と基準点からの発生角度を求め、カートリッジ内部の液体試料あるいは試薬の流動に関する不具合を判定するので、カートリッジの構造に係わらず分析工程において試料や試薬の流動良否が容易に判定できる。したがって、カートリッジを脱着可能としたり、カートリッジを使い捨てとしたりしても分析装置として信頼性を損なう恐れがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図を参照して一実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明による遺伝子検査装置の全体構成図であり、遺伝子分析装置1は、モータ11により回転可能に支持された保持ディスク12と、保持ディスク12上に配置された複数の検査モジュール2と、液体の流動を制御するために用いられる穿孔機13と、加温装置14及び検出装置15を備えている。
【0014】
操作者は検査項目ごとに検査モジュール2を用意し、保持ディスク12に装着し、遺伝子検査装置1を起動させる。図2は検査モジュール2の構成図であり、検査モジュール2は、試薬カートリッジ20を検査カートリッジ30に装着して構成され、試薬カートリッジ20は試薬カートリッジ本体21に透明な試薬カートリッジカバー22を接合され、検査カートリッジ30は検査カートリッジ本体31に透明な検査カートリッジカバー32が接合されている。
【0015】
各試薬は各試薬容器220,230,240,250,260,270,280,290に予め所定量だけ分注されている。試薬カートリッジ20(図3)には、各試薬容器に連通する試薬流出口221,231,241,251,261,271,281,291が設けてあり、試薬カートリッジ20を検査カートリッジ30に装着することで、図4に示す検査カートリッジ30の各試薬流入口321,331,341,361,381,391に接続される。そして、試薬カートリッジ20を検査カートリッジ30に装着した時点で、各試薬容器は各試薬流出口および対応する各試薬流入口を通して検査カートリッジ内で連通する。
【0016】
図5には、図2に示したA−A部における試薬カートリッジ20および検査カートリッジ30の縦断面図の主要部を、図6に、試薬カートリッジ20を検査カートリッジ30に装着した状態の上記A−A部に対応する縦断面図を示す。
【0017】
試薬カートリッジ20の接続突起面には、試薬カートリッジ20内に予め貯蔵されている試薬の漏れや蒸発を防ぐため、試薬カートリッジ保護シート23が接着されており、検査カートリッジ30の上面には、検査カートリッジ30内部の汚染を防ぐため、検査カートリッジ保護シート33が接着されている。
【0018】
操作者は、試薬カートリッジ保護シート23および検査カートリッジ保護シート33をはがし、試薬カートリッジ20を検査カートリッジ30に装着する。試薬流出口となる突起部(例えば図5の299)は試薬流入口と嵌合わされることで両カートリッジの位置決めとなり、かつ試薬が検査カートリッジの外に漏れ出すことがなくなる。また、検査カートリッジ保護シートの接着している検査カートリッジカバー32に接着剤を添付することで、試薬カートリッジの接合面を接着し、試薬の漏れを防ぐことも良い。なお、試薬カートリッジに設けた突起部(例えば図5の299)は、検査カートリッジ側に設けても同様である。
【0019】
以下全血を試料として用いた場合のウイルス核酸の抽出および分析動作を説明する。
【0020】
操作者は、真空採血管等で採血した全血を、図4の検査カートリッジ30の試料注入口301より試料容器310に注入し、図5に示した試薬カートリッジ保護シート23および検査カートリッジ保護シート33をはがした後、試薬カートリッジ20を検査カートリッジ30に装着する(図6)。
【0021】
組上げた検査モジュール2を、図1の保持ディスク12に必要な数だけ装着し、遺伝子検査装置1を稼動させ、全血からウイルスの遺伝子を抽出し、最終的に遺伝子を増幅・検出する。この検査の全工程図を図7に示す。
【0022】
検査は、全血からの核酸抽出工程と増幅工程に分けられ、図中の核酸抽出工程では、保持ディスクを遠心分離や流動で必要な所定の回転数と回転時間、また停止時間等を所定のプロトコルに従って運転し、所定のポート内に核酸が抽出される。増幅工程では、NASBA法での感染症におけるRNA検査とした場合には、ポート内の核酸抽出後の試料と増幅液の混ざった反応液を65℃で約5分間保持し、その後、酵素至適温度の41℃に下げ酵素を添加した後に41℃で約90分間保持する。このときの蛍光発光量をリアルタイムで測定することによりウイルスの遺伝子量が評価できる。
【0023】
次に、遺伝子検査装置1内部での各動作における液の流動状態を、図8を用いて説明する。
【0024】
全血を全血ポート301に注入後、モータ11で保持ディスク12を回転する。試料容器310に注入された全血は、保持ディスク12の回転により発生する遠心力の作用で外周側に流動し、血球貯蔵容器311および血清定量容器312を満たし、余分な全血はオーバーフロー細管流路313からオーバーフロー太管流路314を通って全血廃棄容器
315へ流れる。オーバーフロー細管流路313からオーバーフロー太管流路314にかけての接続部は急拡大しており、かつオーバーフロー細管流路313の最内周側(半径位置601)にあるため、全血はオーバーフロー細管流路313を満たした状態で、接続部において切れる。したがって、半径位置601より内周側に液はないので、血清定量容器312の液面も半径位置601になる。また、血清定量容器312から分岐している血清毛細管316にも全血が流れ込み、ここでも全血の最内周部は半径位置601になる。
【0025】
さらに回転を続けると全血は血球と血清あるいは血漿(以下血清と呼ぶ)に分離し(遠心分離)、血球は外周側の血球貯蔵容器311へ移動し、血清定量容器312内は血清だけになる。
【0026】
以上の一連の血清分離動作時に、試薬カートリッジ20にある各試薬容器の通気孔(例えば、試薬容器220の222部)は試薬カートリッジカバー22(図5)で蓋をされていて空気が入らない状態になっている。遠心力により各試薬は試薬容器外周側より流出するが、容器内に空気が入らないため試薬容器内の圧力が低下し、遠心力と釣り合って試薬は流出することができない。しかし、回転数が増加し遠心力が大きくなると、試薬容器内の圧力は徐々に低下し、試薬の飽和蒸気圧以下になると気泡が発生する。そこで、図8に示すように、各試薬容器外周側から流出する試薬を一旦内周側に戻すような流路(例えば、試薬容器220の戻り流路223)とすることで、試薬容器内の圧力低下を抑制し、気泡の発生を防ぐ。したがって、血清分離動作時には、各試薬は試薬容器に保持されたまま流動しないことになる。
【0027】
所定の時間回転させ血清分離動作が終了すると、検査モジュール2は停止させられ、血清定量容器312内の血清の一部が血清毛細管316内部に表面張力により毛細管流動し、血清毛細管316との接続部である混合部410まで流動し、血清毛細管316を満たすことになる。
【0028】
つぎに、穿孔機13で各試薬容器上流部の通気孔にひとつずつ穴を開け、さらにモータ11を回転し、各試薬を遠心力で流動させる。
【0029】
つぎに、血清分離終了後の動作を説明する。
【0030】
溶解液容器220には血清中のウイルスの膜蛋白を溶解するための溶解液が分注してある。穿孔機13が溶解液通気孔222に穴をあけた後、モータ11を回転させると、遠心力の作用により溶解液は溶解液容器220より溶解液戻り流路223を経て、混合部410に流れ込む。
【0031】
また、血清定量容器312内の血清の最内周側(血清分離終了時には半径位置601)が混合部410(半径位置602)より内周側にあるため、遠心力によるヘッド差で血清定量容器312および血清毛細管316内の血清は、混合部410に流れ込む。混合部
410は、血清と溶解液を混合する部材で構成され、樹脂やガラス,紙等の多孔性フィルタや繊維、或いはエッチングや機械加工等で製作したシリコンや金属等の突起物で構成される。
【0032】
血清と溶解液は混合部410で混合し反応容器420へ流れ込む。血清定量容器312から血清毛細管316への分岐部317(半径位置603)は混合部410(半径位置
602)より内周側にあるため、サイホン効果により血清毛細管316内の血清はすべて混合部410に流れ出る。一方、血清定量容器312の血清は遠心力で血清毛細管316に流れ込むから、血清定量容器312内での血清の液面が分岐部317(半径位置603)に到達するまで血清は混合部410に流出し続け、血清の液面が分岐部317に到達した時点で、血清毛細管316に空気が混入し空になって流動は終了する。すなわち血清分離終了時点での半径位置601から半径位置603までの血清定量容器312,オーバーフロー細管流路313および血清毛細管流路316内の血清が混合部410に流出し、溶解液と混合する。
【0033】
半径位置601から半径位置603までの血清定量容器312,オーバーフロー細管流路313および血清毛細管流路316を所定の容積(必要血清量)になるよう設計すれば、全血に対する血清の比率が全血試料ごとに異なっても、分析に使用する血清を定量することができる。例えば、血球貯蔵容器の容積を250マイクロリットルとし、必要血清量を200マイクロリットルに設計したとき、全血を500マイクロリットル分注すれば、全血廃棄容器315へ50マイクロリットルの全血がオーバーフローし、残りの450マイクロリットルが血清と血球に分離し、分離した血清のうち200マイクロリットルが混合部410へ流出する。450マイクロリットルの全血に対して、血清の量が200マイクロリットル以上の全血試料については本デバイスで分析が可能になる。血清の比率が小さい全血に対しては、血球貯蔵容器の容積を大きくし全血試料を多くすればよい。
【0034】
反応容器420では混合した血清と溶解液が反応する。血清と溶解液の混合液が反応容器420に流入した後の反応容器420内の液面は、反応液流路421の最内周部(半径位置604)よりも外周側にあるため、反応液流路421の最内周部を越えることができず、回転中は混合液が反応容器420に保持される。
【0035】
溶解液は、血清中のウイルスや細菌等からその膜を溶解して核酸を溶出させる働きをするが、さらに核酸結合部材301への核酸の吸着を促進させる。このような試薬としては、DNAの溶出及び吸着には塩酸グアニジンを、RNAにはグアニジンチオシアネートを用いればよく、核酸結合部材としては石英やガラスの多孔質材や繊維フィルタ等を用いればよい。
【0036】
血清と溶解液が反応容器420に保持された後、モータ11を停止し、穿孔機13で追加液容器230に空気を供給するための追加液通気孔232に穴をあけ、再びモータ11を回転させると、遠心力の作用により追加液は追加液容器230より追加液戻り流路233を経て、反応容器420に流れ込み、反応容器内の混合液の液面を内周側に移動させる。液面が反応液流路421の最内周部(半径位置604)に達すると、混合液は反応液流路の最内周部を越えて流れ出し、合流流路701を経て核酸結合部材301へ流れ込む。追加液としては、たとえば上述の溶解液を使用すればよい。なお、試料によっては混合液の壁面に対する濡れ性がよく、停止状態では反応液流路421内を毛細管現象で混合液が流動する場合もあり、このときは追加液を必要としない。
【0037】
溶解液と血清の混合液が核酸結合部材を通過すると、血清中の標的核酸および内部コントロールとしての核酸が核酸結合部材301に吸着し、液は溶離液回収容器390へと流れ込む。
【0038】
核酸結合部材301通過後の廃液は、混合容器420のときと同様、廃液戻り流路393のために、一旦溶離液回収容器390に保持されるが、廃液量に比べて溶離液回収容器
390の容積が十分小さいため、廃液は廃液戻り流路393の最内周側を越え、廃液流出流路399を経て廃液貯蔵容器402へと流出する。
【0039】
次にモータ11を停止し、穿孔機13で第一洗浄液容器240に空気を供給するための第一洗浄液通気孔242に穴をあけた後、再びモータ11を回転させると、遠心力の作用により第一洗浄液は第一洗浄液容器240より第一洗浄液戻り流路243および合流流路701を経て、核酸結合部材301に流れ込み、核酸結合部材301に付着した蛋白等の不要成分を洗浄する。第一洗浄液としては、たとえば上述の溶解液或いは溶解液の塩濃度を低減した液を使用すればよい。洗浄後の廃液は、上述の混合液同様、溶離液回収容器
390を経て、廃液貯蔵容器402へと流出する。
【0040】
同様の洗浄動作を複数回繰り返す。第一洗浄液に引き続き、モータ停止の状態で、穿孔機13で第二洗浄液容器250に空気を供給するための第二洗浄液通気孔252に穴をあけ再びモータ11を回転させ、核酸結合部材301に付着した塩等の不要成分を洗浄する。第二洗浄液としては、たとえばエタノールあるいはエタノール水溶液を用いればよい。
【0041】
同様に第三洗浄液容器260に空気を供給するための第三洗浄液通気孔262の蓋に穴をあける。第三洗浄液は溶離液回収容器390に直接流入し、溶離液回収容器390に付着した塩等の成分を洗浄する。第三洗浄液としては、たとえば滅菌水やpHを7から9に調整した水溶液を用いればよい。
【0042】
つぎに、核酸結合部材301および溶離液回収容器390を洗浄した後、核酸の溶離工程に移行する。
【0043】
モータ停止の状態で、穿孔機13で溶離液容器270に空気を供給するための溶離液通気孔272の蓋に穴をあけ再びモータ11を回転させ、核酸結合部材301に溶離液を流す。溶離液は、核酸を核酸結合部材301から溶離する液で、水或いはpHを7から9に調整した水溶液を用いればよい。特に溶離しやすくするため、40度以上に加温することが望ましい。加温には図1の加温装置14を用いる。溶離後は、検出工程での検査対象の容器となる検査容器390内に流れる。
【0044】
次に、第一の試薬溶解液容器280内の第一試薬溶解液を穿孔により流動させる。検査カートリッジ30の先には第一の試薬として内部コントロールや蛍光色素を含む増幅試薬を乾燥状態にした第一の試薬を溶解しながら検査容器390内に流れる。第一の反応温度、例えば65℃で5分間保持した後に、第二の反応温度例えば41℃に到達後、第二の試薬溶解液290容器を穿孔し、第二の試薬溶解液を流動させる。この流路の先の検査カートリッジ30内には、第二の試薬となる凍結乾燥状態の酵素を溶解しながら検査容器390に至る。
【0045】
次に、第二の反応温度41℃で90分間保持することにより遺伝子の増幅が行われる。この時間中に保持ディスク2を回転させることにより、検出装置15を検査容器となる溶離液回収容器390の下に移動させ、標的核酸および内部コントロール核酸の蛍光発光量を検出する。
【0046】
内部コントロールは、予め定量された核酸あるいは核酸を含む合成物であり、血清中の標的核酸の抽出・増幅・検出と全く同じ試薬・カートリッジ・検査装置を使用して抽出・増幅・検出を行う。そのため、抽出・増幅・検出の工程が正常に機能していれば内部コントロールからは、所定の蛍光や吸光等の信号を検出できる。逆に、信号強度が低く全く検出されない場合は、試薬・カートリッジ・検査装置等の不具合により、抽出・増幅・検出いずれかの工程に異常があったことが分かる。また、標的核酸の検出信号を予め定量している内部コントロールの検出信号と比較することで、標的核酸の濃度を定量評価することができる。
【0047】
次に、遺伝子検査装置の詳細をブロック図で示す。図9に示して説明する。
【0048】
保持ディスク12上には検査モジュール2が複数個搭載され、モータ11表面には上下2箇所の軸受外周部に振動計801が取り付けられている。また、回転シャフト807には、光学式等の回転計802が取り付けられ、シャフト807の回転角度を検出し、一定時間の回転角度より回転速度も求める。振動計801と回転計802の信号は、インバランス検出装置803に導かれ、モータ11は、プロトコル制御装置804によって回転速度と回転時間,休止時間等が制御される。さらに、インバランス検出装置803の信号とプロトコル制御装置804の信号は、不具合箇所判定装置805に導かれ、プロトコル制御装置804と不具合箇所判定装置の信号は最終的に表示装置806に至る。
【0049】
カートリッジの検体および試薬の流動不具合によって生じたインバランスは、振動計
801で検出され、インバランス検出装置803内で、振動計の出力と回転計802の信号によってインバランスの絶対量と基準点からの発生角度が算出される。
【0050】
なお、インバランスの基準点からの発生角度は、振動計801の振幅信号の最も大きい角度を回転計802によって測定することによって得られる。回転計としては、高分解能型のロータリーエンコーダが好適である。
【0051】
インバランスの絶対量は、一般の回転体の不釣合い修正装置と同様に、装置製造時に所定重量の錘をディスクに故意に付加して回転させ、その際に発生した各回転数ごとのインバランス量と振動計801で得られる振幅との相関を予め得て、実際に所定回転数でしたときの振動計801で得られる振幅と、先の相関関係によりインバランスの絶対量を算出する。
【0052】
不具合箇所判定装置805は、運転中はインバランス検出装置803とプロトコル制御装置804からの信号が常時入力され、一方、プロトコル制御装置804は、どの試薬の流動中であるかを監視している。したがって、インバランス検出装置803からの信号により、どの試薬の流動時にインバランスが発生したかを判断することができる。また、先のインバランスの発生角度との検証を行い、どの検査カートリッジに発生したかを判断することもできる。また、不具合の結果は、表示装置806にて不具合カートリッジ、不具合試薬として表示される。
【0053】
以上により、流動不具合が検出判定可能となるが、ディスク上複数の検査カートリッジのインバランスが相殺されるような流動不具合、例えば、ディスク上の検査カートリッジの全数が同時に発生した流動不具合は検出できない。しかし、数個程度の検査カートリッジで流動不具合が発生した場合、それぞれをベクトル合成したインバランス量と基準点からの角度が検出されるので、インバランス発生角度が検査カートリッジ上に無いと言う状態になり、そのこと自体より複数のカートリッジで発生したことが分かる。
【0054】
図10以降を参照して、流動不具合によるインバランスが発生した場合を説明する。
【0055】
図10は、保持ディスク12上に検査モジュール2を6個搭載した状態を示し、検査カートリッジ201が回転シャフト807を中心として、2個ずつ対に3組が60度の等しい角度で配置されている。各容器のハッチング部が検体や試薬を示し、全血遠心分離のため検査カートリッジを回転した後を示している。
【0056】
そして、1個のカートリッジにおいて、空気孔の穿孔が不十分であり、流動不具合が発生し、全血が流れなかった例である。つまり、204をはじめとする5個のカートリッジでは、回転半径円605を内周とする位置まで全血が血球貯蔵容器311まで流れているが、検査カートリッジ201では、全血容器310から流動していない。このような場合が、流動不具合現象の一つであり、検体が流れないことによって検査が正常に行われないことになる。したがって、このままでは最悪の場合、陽性試料においても、陰性の検査結果となる可能性があり、内部コントロールと合わせて、流動不具合を判定する。
【0057】
図11は、不具合現象の他の事例であり、検査カートリッジ201の1個のカートリッジのみ第三洗浄液260が約半分程先に流れてしまい、容器に半径位置円606を内周とする気液界面ができている。この場合にも、反応ポート390の洗浄が不十分であり検査の異常が懸念される。そして、核酸増幅の阻害因子の洗浄が不足の場合にも、遺伝子の増幅が阻害されるため、間違った検査結果となる。
【0058】
図12は図11における、力の不釣合い(インバランス)を模式的に示したもので、保持ディスク12上の6個の検査カートリッジを破線で示している。先に第三洗浄液260が流出したカートリッジ201と対抗するカートリッジ204の第三洗浄液は満液である。そのため検査カートリッジ201の第三洗浄液の部分に、回転中心から半径rの位置で201の基準位置から角度θの位置に先行流動した試薬分の不釣合い重量mが発生していることに相当する。この状態で高速回転した場合、不釣合いによる振動が大きくなる。そこで、不釣合い重量と位置をインバランス検出装置で検知し、不具合箇所判定装置で位置を分析して、不具合カートリッジの特定と、試薬の種類を特定する。また、検査の途中で検査カートリッジ201の検査に第三洗浄液の流動不具合の問題が発生したことを操作者は表示により確認できる。さらに、検査の初期段階であれば、操作者により第三洗浄液を追加して再度検査を再開できる。
【0059】
図13は、以上の手順を説明する図であり、横軸に分析工程に必要とされるプロトコルの進行を、縦軸に検出されたインバランス量を示している。図13(a)は、破線は正常な検査の場合で、所定の小さなインバランス量のまま検査が終了する。一方、実線は検体の全血の流動から開始して試薬1のプロトコルで試薬が何らかの要因により外部に漏れ出た場合を示している。図により、プロトコルの開始直後では小さなインバランス量であったものが、液漏れの発生と同時に瞬時に大きなインバランス量に変化していることが分かる。また、その後のプロトコルでは、他のカートリッジの液も外周側に順番に移動するためインバランス量の差はプロトコルの進行に従って小さくなる傾向を示す。
【0060】
図13(b)の点線は試薬の流動の遅れが発生した例を示し、試薬1の流動が何かの要因で遅れた場合には、図のように遅れた瞬間からインバランス量が大きくなる。この場合、最大インバランス量は図13(a)よりも小さく、正常にもどればインバランス量も正常値となる。しかし、最終時点でも流れない場合には図13(b)に示すように正常な流動で示す値よりも大きな値となる傾向がある。
【0061】
インバランス量は、事前に故意に漏れ状態や、先行流動等を発生させるなど模擬試験を行うことで、インバランス量の絶対値,変化のパターンを求めて記録して置き、実際の場合と比較することで、どのような事象が発生したかを判断する。
【0062】
また、机上で想定されるインバランスのパターンを取得する方法としては、一つの検査カートリッジ内の複数試薬のそれぞれについて流動不具合を想定して不釣合い量と角度を求めておく。(検査カートリッジの形状や試薬の封入量や比重を入力した3次元CADを用いることによって容易に行うことができる。)そして、一つのカートリッジでの不具合は、実際にこのデータとの比較を行うことによって可能となる。
【0063】
さらに、流動不具合が複数のカートリッジで発生した場合を想定した場合には、複数分のカートリッジの不釣合い量と基準点からの角度をベクトル合成し、可能性のあるパターンを事前に複数取得しておくことによって、実際の流動不具合のインバランス変化との比較で最も近いパターンを流動不具合のパターンとすれば良い。インバランスのパターン比較は、パーソナルコンピュータを用いることによって、プロトコルとインバランス量との関係を想定パターンと比較する。
【0064】
図14は、検査カートリッジ201の液が全く流動せずに、他の203を代表とする5個の検査カートリッジの液が廃液貯蔵容器402に流れた場合を示す。この場合にも大きなインバランスにより、装置を大きく振動させる不具合を生じてしまう。
【0065】
図15は、実際の液の移動に伴うカートリッジの重心移動の様子を示し、図の横軸は、シャフト中心からのカートリッジの長手、かつ遠心方向の位置を示し、縦軸はそれと直角の方向の位置を示す。図15(a)は、図12の状況に相当するもので、カートリッジ1個の検体が移動した場合の変化を示す。液重量は0.5 グラム一定であるので、重心移動分の不釣合いがインバランス量として検出されることになる。
【0066】
また、図15(b)は、図14のカートリッジ1個の全液が廃液貯蔵容器に移動した状況に相当する。この場合も液重量3グラムは一定で、当初の液の位置から、全液が外周側に移動したカートリッジの重心移動がインバランス量の変化となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明における一実施の形態による遺伝子検査装置を示す斜視図。
【図2】一実施の形態による検査モジュールを示す斜視図。
【図3】図2における検査モジュールのうち試薬カートリッジを示す斜視図。
【図4】図2における検査モジュールのうち検査カートリッジを示す斜視図。
【図5】図3,図4における試薬,検査カートリッジの非接続時を示す部分断面図。
【図6】図3,図4における試薬,検査カートリッジの接続時を示す部分断面図。
【図7】一実施の形態による検査工程の流れを表すフローチャート。
【図8】一実施の形態による検査モジュールの流路と液流動を示す正面図。
【図9】一実施の形態による分析装置のブロック図。
【図10】一実施の形態における流動不具合の一例を示す正面図。
【図11】一実施の形態における流動不具合の他例を示す正面図。
【図12】図11における流動不具合とインバランスの関係を説明する模式図。
【図13】一実施の形態における分析プロトコルにおける流動不具合とインバランスとの関係を示すグラフ。
【図14】一実施の形態における流動不具合のさらに他例を示す正面図。
【図15】一実施の形態における流動不具合とインバランスとの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0068】
1…遺伝子検査装置(化学分析装置)、2…検査モジュール、11…モータ、12…保持ディスク、801…振動計、802…回転計、803…インバランス検出装置、804…プロトコル制御装置、805…不具合箇所判定装置、806…表示装置、807…回転シャフト。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料中の特定の化学物質を抽出し、分析する化学分析装置に関し、特に、全血を試料としてウイルス核酸の抽出,増幅,検出を行うものに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の化学物質を含む試料から核酸等の特定の化学物質を抽出し分析する化学分析装置としては、回転ディスクの向心力を用いて試料を定量し、回転速度と回転時間を順次変えながら、特定の試薬を流動させて核酸の抽出を行う、核酸のPCRによる
(Polymerase Chain Reaction)遺伝子増幅装置が知られ、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
また、流体試料及び溶解試薬を入れたカートリッジ内部の流路中に抵抗性センサを設け、その電気的な出力を検出して流体試料及び溶解試薬の移動を検出することが知られ、例えば、特許文献2に記載されている。
【0004】
さらに、遠心分離機において、試料を搭載した回転体となるロータ室内のインバランスを検出してロータ室内を滅菌化するため殺菌灯を照射することが知られ、例えば、特許文献3に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特表2003−502656号公報
【特許文献2】特表2001−527220号公報(段落0046,図2)
【特許文献3】特許第3641987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記、特許文献1に記載のものでは、試料や試薬の流動良否に関しては着目しておらず、分析装置として信頼性を損なう恐れがあった。
【0007】
また、特許文献2に記載の流路内に抵抗性センサ設けるものでは、その出力の取り出しが複雑化し、特に、カートリッジの脱着及びカートリッジを使い捨てとするには信頼性を確保することが困難で、低価格化にも不利であった。
【0008】
さらに、特許文献3に記載のものでは、単にインバランスを検知して安全性と信頼性を高めるものであり、分析すること自体の信頼性が向上するものではなく、不十分であった。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、試料や試薬の流動に係わる分析工程そのものの信頼性を向上し、特に、全血を試料としてウイルス核酸の抽出,増幅,検出工程の異常を早期に判別して迅速な分析を行い、信頼性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、モータにより回転可能に支持された保持ディスクと、液体試料あるいは試薬が入れられ前記保持ディスクに装着される複数の検査モジュールと、を有し、前記保持ディスクを分析工程に必要とされる回転速度,回転時間,停止時間のプロトコルに従って運転し、前記液体試料あるいは試薬を流動させて分析する化学分析装置において、前記保持ディスクの回転に伴うインバランス量と基準点からの発生角度を求め、少なくとも前記インバランス量又は前記発生角度のいずれかに関連して前記液体試料あるいは試薬の流動に関する不具合を判定するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保持ディスクの回転に伴うインバランス量と基準点からの発生角度を求め、カートリッジ内部の液体試料あるいは試薬の流動に関する不具合を判定するので、カートリッジの構造に係わらず分析工程において試料や試薬の流動良否が容易に判定できる。したがって、カートリッジを脱着可能としたり、カートリッジを使い捨てとしたりしても分析装置として信頼性を損なう恐れがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図を参照して一実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明による遺伝子検査装置の全体構成図であり、遺伝子分析装置1は、モータ11により回転可能に支持された保持ディスク12と、保持ディスク12上に配置された複数の検査モジュール2と、液体の流動を制御するために用いられる穿孔機13と、加温装置14及び検出装置15を備えている。
【0014】
操作者は検査項目ごとに検査モジュール2を用意し、保持ディスク12に装着し、遺伝子検査装置1を起動させる。図2は検査モジュール2の構成図であり、検査モジュール2は、試薬カートリッジ20を検査カートリッジ30に装着して構成され、試薬カートリッジ20は試薬カートリッジ本体21に透明な試薬カートリッジカバー22を接合され、検査カートリッジ30は検査カートリッジ本体31に透明な検査カートリッジカバー32が接合されている。
【0015】
各試薬は各試薬容器220,230,240,250,260,270,280,290に予め所定量だけ分注されている。試薬カートリッジ20(図3)には、各試薬容器に連通する試薬流出口221,231,241,251,261,271,281,291が設けてあり、試薬カートリッジ20を検査カートリッジ30に装着することで、図4に示す検査カートリッジ30の各試薬流入口321,331,341,361,381,391に接続される。そして、試薬カートリッジ20を検査カートリッジ30に装着した時点で、各試薬容器は各試薬流出口および対応する各試薬流入口を通して検査カートリッジ内で連通する。
【0016】
図5には、図2に示したA−A部における試薬カートリッジ20および検査カートリッジ30の縦断面図の主要部を、図6に、試薬カートリッジ20を検査カートリッジ30に装着した状態の上記A−A部に対応する縦断面図を示す。
【0017】
試薬カートリッジ20の接続突起面には、試薬カートリッジ20内に予め貯蔵されている試薬の漏れや蒸発を防ぐため、試薬カートリッジ保護シート23が接着されており、検査カートリッジ30の上面には、検査カートリッジ30内部の汚染を防ぐため、検査カートリッジ保護シート33が接着されている。
【0018】
操作者は、試薬カートリッジ保護シート23および検査カートリッジ保護シート33をはがし、試薬カートリッジ20を検査カートリッジ30に装着する。試薬流出口となる突起部(例えば図5の299)は試薬流入口と嵌合わされることで両カートリッジの位置決めとなり、かつ試薬が検査カートリッジの外に漏れ出すことがなくなる。また、検査カートリッジ保護シートの接着している検査カートリッジカバー32に接着剤を添付することで、試薬カートリッジの接合面を接着し、試薬の漏れを防ぐことも良い。なお、試薬カートリッジに設けた突起部(例えば図5の299)は、検査カートリッジ側に設けても同様である。
【0019】
以下全血を試料として用いた場合のウイルス核酸の抽出および分析動作を説明する。
【0020】
操作者は、真空採血管等で採血した全血を、図4の検査カートリッジ30の試料注入口301より試料容器310に注入し、図5に示した試薬カートリッジ保護シート23および検査カートリッジ保護シート33をはがした後、試薬カートリッジ20を検査カートリッジ30に装着する(図6)。
【0021】
組上げた検査モジュール2を、図1の保持ディスク12に必要な数だけ装着し、遺伝子検査装置1を稼動させ、全血からウイルスの遺伝子を抽出し、最終的に遺伝子を増幅・検出する。この検査の全工程図を図7に示す。
【0022】
検査は、全血からの核酸抽出工程と増幅工程に分けられ、図中の核酸抽出工程では、保持ディスクを遠心分離や流動で必要な所定の回転数と回転時間、また停止時間等を所定のプロトコルに従って運転し、所定のポート内に核酸が抽出される。増幅工程では、NASBA法での感染症におけるRNA検査とした場合には、ポート内の核酸抽出後の試料と増幅液の混ざった反応液を65℃で約5分間保持し、その後、酵素至適温度の41℃に下げ酵素を添加した後に41℃で約90分間保持する。このときの蛍光発光量をリアルタイムで測定することによりウイルスの遺伝子量が評価できる。
【0023】
次に、遺伝子検査装置1内部での各動作における液の流動状態を、図8を用いて説明する。
【0024】
全血を全血ポート301に注入後、モータ11で保持ディスク12を回転する。試料容器310に注入された全血は、保持ディスク12の回転により発生する遠心力の作用で外周側に流動し、血球貯蔵容器311および血清定量容器312を満たし、余分な全血はオーバーフロー細管流路313からオーバーフロー太管流路314を通って全血廃棄容器
315へ流れる。オーバーフロー細管流路313からオーバーフロー太管流路314にかけての接続部は急拡大しており、かつオーバーフロー細管流路313の最内周側(半径位置601)にあるため、全血はオーバーフロー細管流路313を満たした状態で、接続部において切れる。したがって、半径位置601より内周側に液はないので、血清定量容器312の液面も半径位置601になる。また、血清定量容器312から分岐している血清毛細管316にも全血が流れ込み、ここでも全血の最内周部は半径位置601になる。
【0025】
さらに回転を続けると全血は血球と血清あるいは血漿(以下血清と呼ぶ)に分離し(遠心分離)、血球は外周側の血球貯蔵容器311へ移動し、血清定量容器312内は血清だけになる。
【0026】
以上の一連の血清分離動作時に、試薬カートリッジ20にある各試薬容器の通気孔(例えば、試薬容器220の222部)は試薬カートリッジカバー22(図5)で蓋をされていて空気が入らない状態になっている。遠心力により各試薬は試薬容器外周側より流出するが、容器内に空気が入らないため試薬容器内の圧力が低下し、遠心力と釣り合って試薬は流出することができない。しかし、回転数が増加し遠心力が大きくなると、試薬容器内の圧力は徐々に低下し、試薬の飽和蒸気圧以下になると気泡が発生する。そこで、図8に示すように、各試薬容器外周側から流出する試薬を一旦内周側に戻すような流路(例えば、試薬容器220の戻り流路223)とすることで、試薬容器内の圧力低下を抑制し、気泡の発生を防ぐ。したがって、血清分離動作時には、各試薬は試薬容器に保持されたまま流動しないことになる。
【0027】
所定の時間回転させ血清分離動作が終了すると、検査モジュール2は停止させられ、血清定量容器312内の血清の一部が血清毛細管316内部に表面張力により毛細管流動し、血清毛細管316との接続部である混合部410まで流動し、血清毛細管316を満たすことになる。
【0028】
つぎに、穿孔機13で各試薬容器上流部の通気孔にひとつずつ穴を開け、さらにモータ11を回転し、各試薬を遠心力で流動させる。
【0029】
つぎに、血清分離終了後の動作を説明する。
【0030】
溶解液容器220には血清中のウイルスの膜蛋白を溶解するための溶解液が分注してある。穿孔機13が溶解液通気孔222に穴をあけた後、モータ11を回転させると、遠心力の作用により溶解液は溶解液容器220より溶解液戻り流路223を経て、混合部410に流れ込む。
【0031】
また、血清定量容器312内の血清の最内周側(血清分離終了時には半径位置601)が混合部410(半径位置602)より内周側にあるため、遠心力によるヘッド差で血清定量容器312および血清毛細管316内の血清は、混合部410に流れ込む。混合部
410は、血清と溶解液を混合する部材で構成され、樹脂やガラス,紙等の多孔性フィルタや繊維、或いはエッチングや機械加工等で製作したシリコンや金属等の突起物で構成される。
【0032】
血清と溶解液は混合部410で混合し反応容器420へ流れ込む。血清定量容器312から血清毛細管316への分岐部317(半径位置603)は混合部410(半径位置
602)より内周側にあるため、サイホン効果により血清毛細管316内の血清はすべて混合部410に流れ出る。一方、血清定量容器312の血清は遠心力で血清毛細管316に流れ込むから、血清定量容器312内での血清の液面が分岐部317(半径位置603)に到達するまで血清は混合部410に流出し続け、血清の液面が分岐部317に到達した時点で、血清毛細管316に空気が混入し空になって流動は終了する。すなわち血清分離終了時点での半径位置601から半径位置603までの血清定量容器312,オーバーフロー細管流路313および血清毛細管流路316内の血清が混合部410に流出し、溶解液と混合する。
【0033】
半径位置601から半径位置603までの血清定量容器312,オーバーフロー細管流路313および血清毛細管流路316を所定の容積(必要血清量)になるよう設計すれば、全血に対する血清の比率が全血試料ごとに異なっても、分析に使用する血清を定量することができる。例えば、血球貯蔵容器の容積を250マイクロリットルとし、必要血清量を200マイクロリットルに設計したとき、全血を500マイクロリットル分注すれば、全血廃棄容器315へ50マイクロリットルの全血がオーバーフローし、残りの450マイクロリットルが血清と血球に分離し、分離した血清のうち200マイクロリットルが混合部410へ流出する。450マイクロリットルの全血に対して、血清の量が200マイクロリットル以上の全血試料については本デバイスで分析が可能になる。血清の比率が小さい全血に対しては、血球貯蔵容器の容積を大きくし全血試料を多くすればよい。
【0034】
反応容器420では混合した血清と溶解液が反応する。血清と溶解液の混合液が反応容器420に流入した後の反応容器420内の液面は、反応液流路421の最内周部(半径位置604)よりも外周側にあるため、反応液流路421の最内周部を越えることができず、回転中は混合液が反応容器420に保持される。
【0035】
溶解液は、血清中のウイルスや細菌等からその膜を溶解して核酸を溶出させる働きをするが、さらに核酸結合部材301への核酸の吸着を促進させる。このような試薬としては、DNAの溶出及び吸着には塩酸グアニジンを、RNAにはグアニジンチオシアネートを用いればよく、核酸結合部材としては石英やガラスの多孔質材や繊維フィルタ等を用いればよい。
【0036】
血清と溶解液が反応容器420に保持された後、モータ11を停止し、穿孔機13で追加液容器230に空気を供給するための追加液通気孔232に穴をあけ、再びモータ11を回転させると、遠心力の作用により追加液は追加液容器230より追加液戻り流路233を経て、反応容器420に流れ込み、反応容器内の混合液の液面を内周側に移動させる。液面が反応液流路421の最内周部(半径位置604)に達すると、混合液は反応液流路の最内周部を越えて流れ出し、合流流路701を経て核酸結合部材301へ流れ込む。追加液としては、たとえば上述の溶解液を使用すればよい。なお、試料によっては混合液の壁面に対する濡れ性がよく、停止状態では反応液流路421内を毛細管現象で混合液が流動する場合もあり、このときは追加液を必要としない。
【0037】
溶解液と血清の混合液が核酸結合部材を通過すると、血清中の標的核酸および内部コントロールとしての核酸が核酸結合部材301に吸着し、液は溶離液回収容器390へと流れ込む。
【0038】
核酸結合部材301通過後の廃液は、混合容器420のときと同様、廃液戻り流路393のために、一旦溶離液回収容器390に保持されるが、廃液量に比べて溶離液回収容器
390の容積が十分小さいため、廃液は廃液戻り流路393の最内周側を越え、廃液流出流路399を経て廃液貯蔵容器402へと流出する。
【0039】
次にモータ11を停止し、穿孔機13で第一洗浄液容器240に空気を供給するための第一洗浄液通気孔242に穴をあけた後、再びモータ11を回転させると、遠心力の作用により第一洗浄液は第一洗浄液容器240より第一洗浄液戻り流路243および合流流路701を経て、核酸結合部材301に流れ込み、核酸結合部材301に付着した蛋白等の不要成分を洗浄する。第一洗浄液としては、たとえば上述の溶解液或いは溶解液の塩濃度を低減した液を使用すればよい。洗浄後の廃液は、上述の混合液同様、溶離液回収容器
390を経て、廃液貯蔵容器402へと流出する。
【0040】
同様の洗浄動作を複数回繰り返す。第一洗浄液に引き続き、モータ停止の状態で、穿孔機13で第二洗浄液容器250に空気を供給するための第二洗浄液通気孔252に穴をあけ再びモータ11を回転させ、核酸結合部材301に付着した塩等の不要成分を洗浄する。第二洗浄液としては、たとえばエタノールあるいはエタノール水溶液を用いればよい。
【0041】
同様に第三洗浄液容器260に空気を供給するための第三洗浄液通気孔262の蓋に穴をあける。第三洗浄液は溶離液回収容器390に直接流入し、溶離液回収容器390に付着した塩等の成分を洗浄する。第三洗浄液としては、たとえば滅菌水やpHを7から9に調整した水溶液を用いればよい。
【0042】
つぎに、核酸結合部材301および溶離液回収容器390を洗浄した後、核酸の溶離工程に移行する。
【0043】
モータ停止の状態で、穿孔機13で溶離液容器270に空気を供給するための溶離液通気孔272の蓋に穴をあけ再びモータ11を回転させ、核酸結合部材301に溶離液を流す。溶離液は、核酸を核酸結合部材301から溶離する液で、水或いはpHを7から9に調整した水溶液を用いればよい。特に溶離しやすくするため、40度以上に加温することが望ましい。加温には図1の加温装置14を用いる。溶離後は、検出工程での検査対象の容器となる検査容器390内に流れる。
【0044】
次に、第一の試薬溶解液容器280内の第一試薬溶解液を穿孔により流動させる。検査カートリッジ30の先には第一の試薬として内部コントロールや蛍光色素を含む増幅試薬を乾燥状態にした第一の試薬を溶解しながら検査容器390内に流れる。第一の反応温度、例えば65℃で5分間保持した後に、第二の反応温度例えば41℃に到達後、第二の試薬溶解液290容器を穿孔し、第二の試薬溶解液を流動させる。この流路の先の検査カートリッジ30内には、第二の試薬となる凍結乾燥状態の酵素を溶解しながら検査容器390に至る。
【0045】
次に、第二の反応温度41℃で90分間保持することにより遺伝子の増幅が行われる。この時間中に保持ディスク2を回転させることにより、検出装置15を検査容器となる溶離液回収容器390の下に移動させ、標的核酸および内部コントロール核酸の蛍光発光量を検出する。
【0046】
内部コントロールは、予め定量された核酸あるいは核酸を含む合成物であり、血清中の標的核酸の抽出・増幅・検出と全く同じ試薬・カートリッジ・検査装置を使用して抽出・増幅・検出を行う。そのため、抽出・増幅・検出の工程が正常に機能していれば内部コントロールからは、所定の蛍光や吸光等の信号を検出できる。逆に、信号強度が低く全く検出されない場合は、試薬・カートリッジ・検査装置等の不具合により、抽出・増幅・検出いずれかの工程に異常があったことが分かる。また、標的核酸の検出信号を予め定量している内部コントロールの検出信号と比較することで、標的核酸の濃度を定量評価することができる。
【0047】
次に、遺伝子検査装置の詳細をブロック図で示す。図9に示して説明する。
【0048】
保持ディスク12上には検査モジュール2が複数個搭載され、モータ11表面には上下2箇所の軸受外周部に振動計801が取り付けられている。また、回転シャフト807には、光学式等の回転計802が取り付けられ、シャフト807の回転角度を検出し、一定時間の回転角度より回転速度も求める。振動計801と回転計802の信号は、インバランス検出装置803に導かれ、モータ11は、プロトコル制御装置804によって回転速度と回転時間,休止時間等が制御される。さらに、インバランス検出装置803の信号とプロトコル制御装置804の信号は、不具合箇所判定装置805に導かれ、プロトコル制御装置804と不具合箇所判定装置の信号は最終的に表示装置806に至る。
【0049】
カートリッジの検体および試薬の流動不具合によって生じたインバランスは、振動計
801で検出され、インバランス検出装置803内で、振動計の出力と回転計802の信号によってインバランスの絶対量と基準点からの発生角度が算出される。
【0050】
なお、インバランスの基準点からの発生角度は、振動計801の振幅信号の最も大きい角度を回転計802によって測定することによって得られる。回転計としては、高分解能型のロータリーエンコーダが好適である。
【0051】
インバランスの絶対量は、一般の回転体の不釣合い修正装置と同様に、装置製造時に所定重量の錘をディスクに故意に付加して回転させ、その際に発生した各回転数ごとのインバランス量と振動計801で得られる振幅との相関を予め得て、実際に所定回転数でしたときの振動計801で得られる振幅と、先の相関関係によりインバランスの絶対量を算出する。
【0052】
不具合箇所判定装置805は、運転中はインバランス検出装置803とプロトコル制御装置804からの信号が常時入力され、一方、プロトコル制御装置804は、どの試薬の流動中であるかを監視している。したがって、インバランス検出装置803からの信号により、どの試薬の流動時にインバランスが発生したかを判断することができる。また、先のインバランスの発生角度との検証を行い、どの検査カートリッジに発生したかを判断することもできる。また、不具合の結果は、表示装置806にて不具合カートリッジ、不具合試薬として表示される。
【0053】
以上により、流動不具合が検出判定可能となるが、ディスク上複数の検査カートリッジのインバランスが相殺されるような流動不具合、例えば、ディスク上の検査カートリッジの全数が同時に発生した流動不具合は検出できない。しかし、数個程度の検査カートリッジで流動不具合が発生した場合、それぞれをベクトル合成したインバランス量と基準点からの角度が検出されるので、インバランス発生角度が検査カートリッジ上に無いと言う状態になり、そのこと自体より複数のカートリッジで発生したことが分かる。
【0054】
図10以降を参照して、流動不具合によるインバランスが発生した場合を説明する。
【0055】
図10は、保持ディスク12上に検査モジュール2を6個搭載した状態を示し、検査カートリッジ201が回転シャフト807を中心として、2個ずつ対に3組が60度の等しい角度で配置されている。各容器のハッチング部が検体や試薬を示し、全血遠心分離のため検査カートリッジを回転した後を示している。
【0056】
そして、1個のカートリッジにおいて、空気孔の穿孔が不十分であり、流動不具合が発生し、全血が流れなかった例である。つまり、204をはじめとする5個のカートリッジでは、回転半径円605を内周とする位置まで全血が血球貯蔵容器311まで流れているが、検査カートリッジ201では、全血容器310から流動していない。このような場合が、流動不具合現象の一つであり、検体が流れないことによって検査が正常に行われないことになる。したがって、このままでは最悪の場合、陽性試料においても、陰性の検査結果となる可能性があり、内部コントロールと合わせて、流動不具合を判定する。
【0057】
図11は、不具合現象の他の事例であり、検査カートリッジ201の1個のカートリッジのみ第三洗浄液260が約半分程先に流れてしまい、容器に半径位置円606を内周とする気液界面ができている。この場合にも、反応ポート390の洗浄が不十分であり検査の異常が懸念される。そして、核酸増幅の阻害因子の洗浄が不足の場合にも、遺伝子の増幅が阻害されるため、間違った検査結果となる。
【0058】
図12は図11における、力の不釣合い(インバランス)を模式的に示したもので、保持ディスク12上の6個の検査カートリッジを破線で示している。先に第三洗浄液260が流出したカートリッジ201と対抗するカートリッジ204の第三洗浄液は満液である。そのため検査カートリッジ201の第三洗浄液の部分に、回転中心から半径rの位置で201の基準位置から角度θの位置に先行流動した試薬分の不釣合い重量mが発生していることに相当する。この状態で高速回転した場合、不釣合いによる振動が大きくなる。そこで、不釣合い重量と位置をインバランス検出装置で検知し、不具合箇所判定装置で位置を分析して、不具合カートリッジの特定と、試薬の種類を特定する。また、検査の途中で検査カートリッジ201の検査に第三洗浄液の流動不具合の問題が発生したことを操作者は表示により確認できる。さらに、検査の初期段階であれば、操作者により第三洗浄液を追加して再度検査を再開できる。
【0059】
図13は、以上の手順を説明する図であり、横軸に分析工程に必要とされるプロトコルの進行を、縦軸に検出されたインバランス量を示している。図13(a)は、破線は正常な検査の場合で、所定の小さなインバランス量のまま検査が終了する。一方、実線は検体の全血の流動から開始して試薬1のプロトコルで試薬が何らかの要因により外部に漏れ出た場合を示している。図により、プロトコルの開始直後では小さなインバランス量であったものが、液漏れの発生と同時に瞬時に大きなインバランス量に変化していることが分かる。また、その後のプロトコルでは、他のカートリッジの液も外周側に順番に移動するためインバランス量の差はプロトコルの進行に従って小さくなる傾向を示す。
【0060】
図13(b)の点線は試薬の流動の遅れが発生した例を示し、試薬1の流動が何かの要因で遅れた場合には、図のように遅れた瞬間からインバランス量が大きくなる。この場合、最大インバランス量は図13(a)よりも小さく、正常にもどればインバランス量も正常値となる。しかし、最終時点でも流れない場合には図13(b)に示すように正常な流動で示す値よりも大きな値となる傾向がある。
【0061】
インバランス量は、事前に故意に漏れ状態や、先行流動等を発生させるなど模擬試験を行うことで、インバランス量の絶対値,変化のパターンを求めて記録して置き、実際の場合と比較することで、どのような事象が発生したかを判断する。
【0062】
また、机上で想定されるインバランスのパターンを取得する方法としては、一つの検査カートリッジ内の複数試薬のそれぞれについて流動不具合を想定して不釣合い量と角度を求めておく。(検査カートリッジの形状や試薬の封入量や比重を入力した3次元CADを用いることによって容易に行うことができる。)そして、一つのカートリッジでの不具合は、実際にこのデータとの比較を行うことによって可能となる。
【0063】
さらに、流動不具合が複数のカートリッジで発生した場合を想定した場合には、複数分のカートリッジの不釣合い量と基準点からの角度をベクトル合成し、可能性のあるパターンを事前に複数取得しておくことによって、実際の流動不具合のインバランス変化との比較で最も近いパターンを流動不具合のパターンとすれば良い。インバランスのパターン比較は、パーソナルコンピュータを用いることによって、プロトコルとインバランス量との関係を想定パターンと比較する。
【0064】
図14は、検査カートリッジ201の液が全く流動せずに、他の203を代表とする5個の検査カートリッジの液が廃液貯蔵容器402に流れた場合を示す。この場合にも大きなインバランスにより、装置を大きく振動させる不具合を生じてしまう。
【0065】
図15は、実際の液の移動に伴うカートリッジの重心移動の様子を示し、図の横軸は、シャフト中心からのカートリッジの長手、かつ遠心方向の位置を示し、縦軸はそれと直角の方向の位置を示す。図15(a)は、図12の状況に相当するもので、カートリッジ1個の検体が移動した場合の変化を示す。液重量は0.5 グラム一定であるので、重心移動分の不釣合いがインバランス量として検出されることになる。
【0066】
また、図15(b)は、図14のカートリッジ1個の全液が廃液貯蔵容器に移動した状況に相当する。この場合も液重量3グラムは一定で、当初の液の位置から、全液が外周側に移動したカートリッジの重心移動がインバランス量の変化となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明における一実施の形態による遺伝子検査装置を示す斜視図。
【図2】一実施の形態による検査モジュールを示す斜視図。
【図3】図2における検査モジュールのうち試薬カートリッジを示す斜視図。
【図4】図2における検査モジュールのうち検査カートリッジを示す斜視図。
【図5】図3,図4における試薬,検査カートリッジの非接続時を示す部分断面図。
【図6】図3,図4における試薬,検査カートリッジの接続時を示す部分断面図。
【図7】一実施の形態による検査工程の流れを表すフローチャート。
【図8】一実施の形態による検査モジュールの流路と液流動を示す正面図。
【図9】一実施の形態による分析装置のブロック図。
【図10】一実施の形態における流動不具合の一例を示す正面図。
【図11】一実施の形態における流動不具合の他例を示す正面図。
【図12】図11における流動不具合とインバランスの関係を説明する模式図。
【図13】一実施の形態における分析プロトコルにおける流動不具合とインバランスとの関係を示すグラフ。
【図14】一実施の形態における流動不具合のさらに他例を示す正面図。
【図15】一実施の形態における流動不具合とインバランスとの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0068】
1…遺伝子検査装置(化学分析装置)、2…検査モジュール、11…モータ、12…保持ディスク、801…振動計、802…回転計、803…インバランス検出装置、804…プロトコル制御装置、805…不具合箇所判定装置、806…表示装置、807…回転シャフト。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより回転可能に支持された保持ディスクと、液体試料あるいは試薬が入れられ前記保持ディスクに装着される複数の検査モジュールと、を有し、前記保持ディスクを分析工程に必要とされる回転速度,回転時間,停止時間のプロトコルに従って運転し、前記液体試料あるいは試薬を流動させて分析する化学分析装置において、
前記保持ディスクの回転に伴うインバランス量と基準点からの発生角度を求め、少なくとも前記インバランス量又は前記発生角度のいずれかに関連して前記液体試料あるいは試薬の流動に関する不具合を判定することを特徴とする化学分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記保持ディスクの回転に伴う振動を検出する振動計と、前記保持ディスクの回転角度を検出する回転計と、を備え、前記振動計及び前記回転計の出力より前記インバランス量と基準点からの発生角度を算出することを特徴とする化学分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記発生角度に関連して不具合の生じた前記検査モジュールを特定することを特徴とする化学分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記分析工程の進行に伴って前記インバランス量を算出し、前記液体試料あるいは試薬の液漏れ又は流動の遅れを判断することを特徴とする化学分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、前記分析工程において前記インバランス量と前記発生角度に関連して不具合と判定された前記検査モジュールと共に、前記液体試料あるいは試薬を特定し、表示することを特徴とする化学分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載のものにおいて、前記振動計により検出された値が所定値よりも大きく検出された場合、前記分析工程において流動させた前記液体試料あるいは試薬を不具合として表示することを特徴とする化学分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載のものにおいて、予め前記液体試料あるいは試薬の流動に異常がある状態を定め、そのときのインバランス量を記録し、記録された値に基づいて前記分析工程において発生した前記液体試料あるいは試薬の流動に関する不具合を特定することを特徴とする化学分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載のものにおいて、前記分析工程の進行に伴って前記インバランス量を算出し、前記インバランス量と前記発生角度に基づいて不具合と判定された前記検査モジュールと共に、前記液体試料あるいは試薬の液漏れを特定し、表示することを特徴とする化学分析装置。
【請求項1】
モータにより回転可能に支持された保持ディスクと、液体試料あるいは試薬が入れられ前記保持ディスクに装着される複数の検査モジュールと、を有し、前記保持ディスクを分析工程に必要とされる回転速度,回転時間,停止時間のプロトコルに従って運転し、前記液体試料あるいは試薬を流動させて分析する化学分析装置において、
前記保持ディスクの回転に伴うインバランス量と基準点からの発生角度を求め、少なくとも前記インバランス量又は前記発生角度のいずれかに関連して前記液体試料あるいは試薬の流動に関する不具合を判定することを特徴とする化学分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記保持ディスクの回転に伴う振動を検出する振動計と、前記保持ディスクの回転角度を検出する回転計と、を備え、前記振動計及び前記回転計の出力より前記インバランス量と基準点からの発生角度を算出することを特徴とする化学分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記発生角度に関連して不具合の生じた前記検査モジュールを特定することを特徴とする化学分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記分析工程の進行に伴って前記インバランス量を算出し、前記液体試料あるいは試薬の液漏れ又は流動の遅れを判断することを特徴とする化学分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、前記分析工程において前記インバランス量と前記発生角度に関連して不具合と判定された前記検査モジュールと共に、前記液体試料あるいは試薬を特定し、表示することを特徴とする化学分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載のものにおいて、前記振動計により検出された値が所定値よりも大きく検出された場合、前記分析工程において流動させた前記液体試料あるいは試薬を不具合として表示することを特徴とする化学分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載のものにおいて、予め前記液体試料あるいは試薬の流動に異常がある状態を定め、そのときのインバランス量を記録し、記録された値に基づいて前記分析工程において発生した前記液体試料あるいは試薬の流動に関する不具合を特定することを特徴とする化学分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載のものにおいて、前記分析工程の進行に伴って前記インバランス量を算出し、前記インバランス量と前記発生角度に基づいて不具合と判定された前記検査モジュールと共に、前記液体試料あるいは試薬の液漏れを特定し、表示することを特徴とする化学分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−183140(P2007−183140A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1014(P2006−1014)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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