説明

化学分析装置

【課題】反応容器内に供給されたサンプル及び試薬からなる被測定液を上下動することによって高い攪拌効率が得られる化学分析装置を提供すること。
【解決手段】化学分析装置1は開口部を有する反応容器102内にサンプルを供給するサンプル供給手段と、反応容器102内に試薬を供給する試薬供給手段と、反応容器102内に供給されたサンプル及び試薬からなる被測定液213を攪拌する攪拌具300を有する攪拌手段109と、反応容器102内の被測定液の物性を計測する計測手段と、攪拌手段109の駆動を制御する制御装置とを備える。攪拌手段109は攪拌具300を上下に駆動させる上下駆動機構294を備える。制御装置は、反応容器102内の被測定液213中で攪拌具300を上下に駆動して、その攪拌具300の底面下方の被測定液213を上下流動させるように上下駆動機構294を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学分析装置に係り、特に反応容器内に供給されたサンプル及び試薬からなる微量な被測定液を攪拌する攪拌具を有する化学分析装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動分析装置の攪拌装置として、特開平10−62430号公報(特許文献1)に示されたものがある。この特許文献1の攪拌装置は、攪拌棒を回転運動させる回転運動手段と、この回転運動手段が取り付けられる支持ブラケットを前後方向に往復運動させる往復運動手段とを備え、反応容器内で攪拌棒に前後方向の往復運動と回転運動とを同時に行わせることにより、反応容器内のサンプルと試薬とを攪拌するものである。
【0003】
また、従来の自動分析装置の攪拌装置として、特開平11−64189号公報(特許文献2)に示されたものがある。この特許文献2の攪拌装置は、電圧の印加を受けて振動する振動発生部と、この振動発生部を保持する基板部と、液体を撹拌する撹拌棒と、前記基板部と前記撹拌棒との間に配置されるスペーサと、前記振動発生部に電圧を印加する電源部と、を具備したものである。
【0004】
【特許文献1】特開平10−62430号公報
【特許文献2】特開平11−64189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の攪拌装置では、反応容器内に供給されたサンプル及び試薬からなる被測定液の攪拌が旋回と前後動によるものであるため、被測定液における同じ高さの液同士における攪拌が主体となり、上下に分布するサンプルと試薬とが効率よく攪拌できないという課題があった。特に、サンプルが反応容器の底部に点着されるような被測定液の場合には、サンプルと試薬との攪拌が困難であった。
【0006】
また、上記特許文献2の攪拌装置では、反応容器内に供給されたサンプル及び試薬からなる被測定液の攪拌がブレードの前後動による振動によるものであるため、特許文献1の攪拌装置と同様に、被測定液における同じ高さの液同士における攪拌が主体となり、上下に分布するサンプルと試薬とが効率よく攪拌できないという課題があった。特に、サンプルが反応容器の底部に点着されるような被測定液の場合には、サンプルと試薬との攪拌が困難であった。
【0007】
本発明の目的は、反応容器内に供給されたサンプル及び試薬からなる被測定液を上下動することによって高い攪拌効率が得られる化学分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために、本発明は、開口部を有する反応容器内にサンプルを供給するサンプル供給手段と、前記反応容器内に試薬を供給する試薬供給手段と、前記反応容器内に供給された前記サンプル及び前記試薬からなる被測定液を攪拌する攪拌具を有する攪拌手段と、前記反応容器内の被測定液の物性を計測する計測手段と、前記攪拌手段の駆動を制御する制御装置とを備えた化学分析装置において、前記攪拌手段は前記攪拌具を上下に駆動させる上下駆動機構を備え、前記制御装置は、前記反応容器内の被測定液中で前記攪拌具を上下に駆動して、その攪拌具の底面下方の被測定液を上下流動させるように前記上下駆動機構を制御する構成にしたことにある。
【0009】
係る本発明のより好ましい具体的な構成例は次の通りである。
(1)前記攪拌具は前記反応容器内の平面領域の50%から90%の平面領域を有して前記反応容器内の前記被測定液に浸漬されること。
(2)前記攪拌具は隙間または貫通穴またはメッシュ構造を有して前記被測定液中に浸漬されること。
(3)前記制御装置は、前記被測定液中に前記攪拌具を浸漬した状態で、異なる周波数または異なる振幅により前記攪拌具を上下駆動するように前記上下駆動機構を制御すること。
(4)前記制御装置は、前記被測定液の底面近傍を中心として高周波数・低振幅による前記攪拌具の上下駆動を行った後に、前記被測定液の中央高さ付近を中心として低周波数・高振幅による前記攪拌具の上下駆動を行うように前記上下駆動機構を制御すること。
(5)前記制御装置は、前記攪拌具による前記被測定液の攪拌を終了してその被測定液から上方に引き上げた際に、前記攪拌具を高周波数で微小振動するように前記上下駆動機構を制御すること。
(6)前記攪拌具は中央部が高く周辺部が傾斜した上面を有すること。
(7)前記制御装置は前記攪拌具の下方駆動を上方駆動より速く行うように前記上下駆動機構を制御すること。
(8)前記制御装置は、前記攪拌具の上面が前記被測定液の液面より上方に露出し且つその攪拌具の底面がその被測定液中に浸漬した状態で、前記攪拌具を上下に駆動するように前記上下駆動機構を制御すること。
(9)前記攪拌具はその底面が反応容器深さ方向に関して非対称に構成されていること。
(10)前記制御装置は、前記攪拌具の底面の深い部分に対応する前記反応容器内の場所に前記サンプルを供給するように前記サンプル供給手段を制御すること。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反応容器内に供給されたサンプル及び試薬からなる被測定液を上下動することによって高い攪拌効率が得られる化学分析装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の複数の実施形態について図を用いて説明する。各実施形態の図における同一符号は同一物または相当物を示す。なお、本発明は、本明細書に開示した内容に限定されるのではなく、現在及び今後の周知事項に基づく変更を阻止するものではない。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の化学分析装置1を図1から図4を用いて説明する。
【0012】
まず、本実施形態の化学分析装置1の全体に関して図1を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施形態の化学分析装置1の構成図である。この化学分析装置1は、生体中に含まれる微量物質などのサンプルと試薬とからなる微量な被測定液を分析するための装置である。
【0013】
化学分析装置1は、反応ディスク101、恒温槽114、サンプルディスク103、試薬ディスク105、サンプル分注機構107、試薬分注機構108、洗浄機構111、攪拌機構109、検出機構110、洗浄機構119、制御装置120などから構成されている。
【0014】
これらの各構成要素は、分析を開始する前に予め制御装置12のコンソール113より設定された情報(分析項目や分析の液量など)に基づいて、制御装置12のコントローラ112より作成されるプログラムにしたがって所定のタイミングで順次自動的に動作するように構成されている。
【0015】
反応ディスク101は回転可能に設置された円盤で構成されている。反応ディスク101には反応容器格納部が形成されている。この反応容器格納部は反応ディスク101の外周縁に沿って等間隔に多数形成されている。反応容器102は、上面に開口部を有する略矩形状の極めて小さな容器で構成され、反応ディスク101の各反応容器格納部にそれぞれ設置されて微量な被測定液213(図2参照)が供給される。各反応容器102は、外径の小さな反応ディスク101に多数設置できるように、径方向に長く周方向に短い形状の容器で構成されている。
【0016】
恒温槽114は、反応ディスク101の外径より若干大きな外径を有する円形状に構成され、反応ディスク101の下方に設置されている。恒温槽114の外周部には、恒温水204が満たされた円環状の水槽部114aが形成されている。恒温槽114は、この恒温水214に反応容器102を浸した状態にして、その反応容器102及び被測定液213の恒温状態を保つように機能する。
【0017】
サンプルディスク103は、回転可能に設置された円盤で構成され、反応ディスク101の径方向外方に並置されている。サンプルディスク103にはサンプル容器格納部が形成されている。このサンプル容器格納部はサンプルディスク103の外周縁に沿って等間隔に多数形成されている。サンプル容器104は、サンプルディスク103の各サンプル容器格納部にそれぞれ設置されてサンプルが収納されている。
【0018】
試薬ディスク105は、回転可能に設置された円筒で構成され、反応ディスク101の径方向外方に並置されている。試薬ディスク105には試薬容器格納部が形成されている。この試薬容器格納部は試薬ディスク105の外周縁に沿って等間隔に多数形成されている。試薬容器106は、試薬ディスク105の各試薬容器格納部にそれぞれ設置されて試薬が収納されている。
【0019】
サンプル分注機構107は、サンプル容器104内のサンプルを反応容器102内に分注するためのものであり、サンプル供給手段を構成する。試薬分注機構108は、サンプル容器104内のサンプルを反応容器102内に分注するためのものであり、試薬供給手段を構成する。
【0020】
攪拌機構109は、反応容器102内に分注されたサンプルと試薬とからなる被測定液213を反応容器102内で攪拌するためのものであり、攪拌手段を構成する。攪拌機構109の詳細は後述する。
【0021】
検出機構110は、反応容器102内のサンプルと試薬の混合体である被測定液213の反応過程及び反応後の吸光度や蛍光発光などの光強度、電気化学的な検出などを測定するためのものであり、測定手段を構成する。この検出機構110は、恒温槽114の外周側面に対向して設置され、反応容器102の外周側面(換言すれば、被測定液213)に対応して設置されている。
【0022】
2つの洗浄機構111は、サンプル分注機構107及び試薬分注機構108をそれぞれ洗浄するためのものであり、洗浄手段を構成する。洗浄機構119は、検査(測光)が終了した後に反応容器102を洗浄するためのものであり、洗浄手段を構成する。
【0023】
次に、攪拌機構109の詳細について、図2から図4を参照しながら説明する。図2は図1の化学分析装置1における攪拌機構付近の縦断面図、図3は図2の攪拌機構付近の横断面図、図4は図2の攪拌機構109の攪拌シーケンスを示すフローチャートである。
【0024】
攪拌機構109は、上述したように、反応容器102内のサンプルと試薬とからなる被測定液213を混合・攪拌する要素である。反応ディスク101に格納された反応容器102は、反応ディスク101の回転及び停止動作に伴って、恒温水204に浸されながら自動的に回転及び停止動作を繰り返しており、攪拌機構109を備えた位置で停止したときに被測定液213が攪拌されるようにプログラムされている。
【0025】
攪拌機構109は、攪拌具の一例であるパドル板300とパドル棒291からなるパドル290と、パドルアーム292と、パドル290及びパドルアーム292を回転、上下する駆動機構294とを備えて構成されている。駆動機構294は制御装置120で制御される。制御装置120は、反応容器102内の被測定液103中でパドル板300を上下に駆動して、そのパドル板300の底面下方の被測定液103を上下流動させるように駆動機構294を制御する。このことによって、高い攪拌効率が得られる。
【0026】
なお、駆動機構294による回転動作は回転モータ250によってなされ、駆動機構294による上下動作は上下動モータ260とクランク270とレール280とによってなされる。
【0027】
パドル板300は、図2及び図3に示すように、反応容器102内の平面領域のかなりの面積を占める平面領域を有して反応容器102内の被測定液103に浸漬される。具体的には、パドル板300は、反応容器102内の平面領域の50%から90%の平面領域を有して反応容器102内の被測定液103に浸漬される。このことによって、被測定液103の下部に存在するサンプル630に直接、パドル板300の上下動による力を働きかけることが可能となり、効率的な攪拌が可能となる。また、図3に示すように、反応容器102内の平面領域が幅の極端に狭い矩形状の場合でも、パドル板300の平面領域をこれに合致する形状とすることにより、パドル板300を上下動することが可能であり、効率的な攪拌が可能となる。
【0028】
パドル板300は、中央部が高く周辺部が傾斜したテーパ面の上面と、平坦面の底面とを有して被測定液103中に浸漬される。このことによって、パドル板300を下方に移動する際にその底面でその下方の被測定液103を確実に上下流動させることができると共に、パドル板300を上方に移動する際にその上面上方の被測定液103をテーパ面に沿ってスムースにパドル板300の底面側に導くことができる。
【0029】
攪拌機構109は、図4に示すようなシーケンスによって被測定液213を攪拌する。
【0030】
まず、反応ディスク101を回転させて被測定液213の入った反応容器102を移動させる(ステップS11)。ここで、反応ディスク101の外周面には各反応容器102に対応した切欠き282がそれぞれ形成され、水槽部114aの所定位置(反応容器102内の被測定液213を攪拌する位置)にはバネ式の位置決め突起281が設けられている。
【0031】
反応ディスク101が回転されて被測定液213の入った反応容器102が所定箇所に移動されると、図3に示すように、反応ディスク101の切欠き282にバネ式の位置決め突起281が嵌り、反応容器102とパドル板300との位置決めが行われる(ステップS12)。反応容器102が幅狭で小さく、かつパドル板300の平面領域の面積を反応容器102内の平面領域の面積に近くしているため、このような位置決め機構を設けることで効率の良い攪拌が可能となる。なお、反応容器102、パドル板300、切欠き282および位置決め突起281の中心線295が一致するように設定されている。
【0032】
次いで、パドル板300を下降し、被測定液213に浸漬する(ステップS13)。パドル板300と反応容器102の側壁とのクリアランス310は、望ましくはパドル板300の20分の一程度である。パドル板300を反応容器102の底面近傍、望ましくはパドル板300厚みの3倍程度まで降下させる。
【0033】
この状態において、被測定液103の底面近傍を中心として高周波数・低振幅(短いストローク長)でパドル板300を上下動させる(ステップS14)。このときのパドル板300の上下動の速度はパドル板300を液に浸漬する際の速度の2倍以上が望ましく、パドル板300の振幅は被測定液213の液高さの2割程度が好ましい。パドル板300と反応容器102の側壁とのクリアランス幅310が小さいため、パドル板300を上下動させる際の流動抵抗が大きく、パドル板300の底面で押し引きされる反応容器102の底面部での局所的な流動305が生じる。これによって、反応容器102の底面に付着、沈殿しているサンプル630を含む被測定液213を重点的に流動させることができる。このときの流動は底面部に限定され、液面320にまで至る流動エネルギは途中の液により消散され、液面320の短周期の大幅な遥動を避けることができる。これによって、コンタミネーションや分析精度に影響する攪拌不十分な液の飛散や、検出に影響を及ぼす空気の巻き込み等は生じない。この動作時間は、液量などにも依存するが、攪拌時間全体の半分から5分の1程度が望ましい。
【0034】
次いで、被測定液103の中央高さ付近を中心として低周波数・高振幅によるパドル板300の上下駆動を行う(ステップS15)。このときのパドル板300の上下動の速度はパドル板300を液に浸漬する際の速度の2分の1から2倍程度が好ましく、パドル板300の振幅は被測定液213の液高さの8割程度が好ましい。このパドル板300の上下駆動によって、パドル板300と反応容器102の側壁とのクリアランス310を通過した被測定液213は、パドル板300上面や下面に回り込んで行くため、反応容器102内の被測定液213全体の流動306が生じる。このとき、パドル板300の振幅は大きいが、低周波数でパドル板300が上下動するため、液面320が大きく揺動することはない。この動作によって、先に攪拌された反応容器102の底面付近の被測定液213が反応容器102の全体に均等に攪拌される。
【0035】
上述したように、被測定液103中にパドル板300を浸漬した状態で、異なる周波数または異なる振幅によりパドル板300を上下駆動することにより、効率の良い攪拌が可能となる。なお、被測定液の種類によっては、パドル板300を複数回上下動せず、パドル板300を被測定液103中に浸漬し、そのまま被測定液から引き上げるのみで上下流動が大きく生じ、十分な攪拌がなされる場合もある。
【0036】
次いで、パドル板300を被測定液213から引き上げる(ステップS16)。液面からパドル板300が少し出た位置で、パドル板300の高周波数で微小振動の上下動を行い、パドルに付着した液を除去する。パドル板300を振動させる位置は、上下動の最下点が、パドル板300の板厚程度以上、液面320から上にあることが望ましい。このとき、非対称な上下動作(上昇はゆっくり、下降は速い動作)にすることが望ましい。このことにより、パドル300に付着した液を被測定液213液に戻す慣性を生じやすい。パドル板300上面はテーパ状になっているので液は流れ落ち易い。
【0037】
また、パドル290に対してフッ素系樹脂などで撥水コーティングを施しておくことが好ましい。このとき、パドル板300を被測定液213から引き上げたときに被測定液213を付着し難いだけではなく、被測定液213中にパドル板300があるときの流体抵抗を小さくし、パドル動作所要動力を減らすことができ、攪拌効率向上に寄与できる。さらには、液面320が変形して空気を巻き込み気泡を形成したとしても、濡れが悪い面が空気をまとい易いため、気泡が付着しやすくなり、したがって巻き込まれた気泡を除去することが可能となり、検出精度向上に寄与できる。
【0038】
次いで、図2の一点差線に示すように、パドル板300を完全に上昇、回転させ(ステップS18)、パドル板300を洗浄槽330に移動し(ステップS19)、洗浄水吐出口340から洗浄水をかける(ステップS20)。洗浄水をかけている間、パドル板300を上下移動し、洗浄流動を促進し、洗浄効果を上げる。洗浄水をかけ終わり洗浄が完了した後、洗浄槽330内か直上で高周波数、微小振動の上下動を行い(ステップS21)、パドル板300に付着した洗浄水を振り切る。この動作は、先の液面近傍と同様、上昇は遅く、下降は速く行うことで、付着した洗浄液を洗浄槽330に押し出すことが可能となる。
【0039】
以上の構成及び動作により、攪拌効率が高く、コンタミネーションなどに強い、単純な構造の攪拌要素を備えた化学分析装置を提供することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の化学分析装置1について図5を用いて説明する。図5は本発明の第2実施形態の化学分析装置1における攪拌機構付近の縦断面図である。この第2実施形態は、次に述べる点で第1実施形態と相違するものであり、その他の点については第1実施形態と基本的には同一であるので、重複する説明を省略する。
【0040】
この第2実施形態では、パドルアーム292が分析装置上の支持台275から伸びる支持棒276に支持されている。また、パドル290の駆動機構294は、上下動モータ501とクランク502とを備えて構成され、パドル290を上下動させる機能のみを備えている。パドル棒291はパドルガイド503に沿って動作する。
【0041】
パドル板300には複数の隙間510が設けられており、パドル上下動によって隙間を流れる流動511が生じる。このとき隙間510での強い剪断力によって効果的な攪拌がなされる。隙間510は、パドル板300に貫通穴を設けることや、パドル板300をメッシュ構造にすることでも得ることができる。さらに、図5に示すように、捩じった板をパドル翼512として狭い間隔で複数並べることでパドル板300を構成することにより、捩じりによる旋回流も発生し、攪拌効率が向上することができる。
【0042】
攪拌がなされた後、パドル300を液面320から少し引き上げた地点で、パドルアーム292に取り付けられたエアチューブ520からエアブロー521を噴出す。化学分析装置には分注機構107などを洗浄するための洗浄水圧力送液用にコンプレッサ523が設置されている。バルブ522を介してコンプレッサ523にエアチューブ520を接続することにより、パドル300の引き上げのタイミングでエアブロー521を噴出す。このとき、パドル板隙間510に入り込んでいる液は、被測定液213に吹き戻され、外部へのコンタミネーションや持ち去りなどは生じない。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の化学分析装置1について図6を用いて説明する。図6は本発明の第3実施形態の化学分析装置1における攪拌機構付近の縦断面図である。この第3実施形態は、次に述べる点で第1実施形態と相違するものであり、その他の点については第1実施形態と基本的には同一であるので、重複する説明を省略する。
【0043】
攪拌機構109は、反応容器102内のサンプルと試薬からなる被測定液213を混合・攪拌する装置であり、パドル290と、それを上下動する駆動機構294と、分析装置上の支持台275から伸びる支持棒276に支持されたパドルアーム292とを備えて構成されている。上下駆動機構294は、パドルアーム292に取り付けられたネジ式モータ601と、ばね293とから構成されている。パドル棒291は、ネジ602に接しているのみで、独立した動作が可能となっている。パドル棒291は、ネジ602により押し下げられ、バネ293によって持ち上げられることにより、上下動がなされる。
【0044】
パドル板300は、その側面一側が反応容器102の側壁610に接することで位置決めがなされ、容器側壁610に沿って上下動し被測定液213を攪拌する。パドル板300の底面は反応容器深さ方向に関して非対称に構成されている。図示例では、反応容器102に対して、左右位置で非対称な形状となっており、左側が下方に突出し、右側が凹んでいる。このような形状により、凹んでいるスペースに被測定液213が流れ易くなり、流動を大きくすることができる。また、被測定液213に不均一で乱れた流れ場を生じることになり、単純で規則的な振動流よりも効率的な攪拌が可能となる。このとき、サンプル点着位置630は、容器中央部ではなく側壁付近であることが望ましい。このとき、非対称な流動の影響を受けやすく、効率的な攪拌が可能となる。
【0045】
パドル動作ストロークの範囲は、容器の底面付近に設定されている検出光が照射される領域である光学検出領域620には入らない領域になっており、検出精度には影響がない。望ましくは、パドル板300は液面付近のみを上下動すると、パドル板300の一部のみが液に接触するので、液の持ち去りやコンタミネーションへの影響を小さくすることが可能となる。このとき、非対称形状による流動の影響は液面320を必要以上に大きく揺動することはない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態の化学分析装置の構成図である。
【図2】図1の化学分析装置における攪拌機構付近の縦断面図である。
【図3】図2の攪拌機構付近の横断面図である。
【図4】図2の攪拌機構の攪拌シーケンスを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態の化学分析装置における攪拌機構付近の縦断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態の化学分析装置における攪拌機構付近の縦断面図である。
【符号の説明】
【0047】
101…反応ディスク、102…反応容器、103…サンプルディスク、104…サンプル容器、105…試薬ディスク、106…試薬容器、107…サンプル分注機構(サンプル供給手段)、108…試薬分注機構(試薬供給手段)、109…攪拌機構(攪拌手段)、110…検出機構(測定手段)、111…洗浄機構、112…コントローラ、113…コンソール、114…恒温槽、114a…水槽部、119…洗浄機構、120…制御装置、213…被測定液、214…恒温水、250…回転モータ、260…上下動モータ、270…クランク、275…支持台、276…支持棒、280…レール、281…位置決め突起、282…切欠き、290…パドル、291…パドル棒、292…パドルアーム、293…ばね、294…駆動機構(上下駆動機構)、300…パドル板、305…流動、310…クリアランス幅、320…液面、330…洗浄槽、340…洗浄水吐出口、501…上下動モータ、502…クランク、503…パドルガイド、510…隙間、511…流動、520…エアチューブ、521…エアブロー、522…バルブ、523…コンプレッサ、601…ネジ式モータ、602…ネジ、620…光学検出領域、630…サンプル点着位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する反応容器内にサンプルを供給するサンプル供給手段と、
前記反応容器内に試薬を供給する試薬供給手段と、
前記反応容器内に供給された前記サンプル及び前記試薬からなる被測定液を攪拌する攪拌具を有する攪拌手段と、
前記反応容器内の被測定液の物性を計測する計測手段と、
前記攪拌手段の駆動を制御する制御装置とを備えた化学分析装置において、
前記攪拌手段は前記攪拌具を上下に駆動させる上下駆動機構を備え、
前記制御装置は、前記反応容器内の被測定液中で前記攪拌具を上下に駆動して、その攪拌具の底面下方の被測定液を上下流動させるように前記上下駆動機構を制御する
ことを特徴とする化学分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の化学分析装置において、前記攪拌具は前記反応容器内の平面領域の50%から90%の平面領域を有して前記反応容器内の前記被測定液に浸漬されることを特徴とする化学分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の化学分析装置において、前記攪拌具は隙間または貫通穴またはメッシュ構造を有して前記被測定液中に浸漬されることを特徴とする化学分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の化学分析装置において、前記制御装置は、前記被測定液中に前記攪拌具を浸漬した状態で、異なる周波数または異なる振幅により前記攪拌具を上下駆動するように前記上下駆動機構を制御することを特徴とする化学分析装置。
【請求項5】
請求項4記載の化学分析装置において、前記制御装置は、前記被測定液の底面近傍を中心として高周波数・低振幅による前記攪拌具の上下駆動を行った後に、前記被測定液の中央高さ付近を中心として低周波数・高振幅による前記攪拌具の上下駆動を行うように前記上下駆動機構を制御することを特徴とする化学分析装置。
【請求項6】
請求項1記載の化学分析装置において、前記制御装置は、前記攪拌具による前記被測定液の攪拌を終了してその被測定液から上方に引き上げた際に、前記攪拌具を高周波数で微小振動するように前記上下駆動機構を制御することを特徴とする化学分析装置。
【請求項7】
請求項6記載の化学分析装置において、前記攪拌具は中央部が高く周辺部が傾斜した上面を有することを特徴とする化学分析装置。
【請求項8】
請求項6記載の化学分析装置において、前記制御装置は前記攪拌具の下方駆動を上方駆動より速く行うように前記上下駆動機構を制御することを特徴とする化学分析装置。
【請求項9】
請求項1記載の化学分析装置において、前記制御装置は、前記攪拌具の上面が前記被測定液の液面より上方に露出し且つその攪拌具の底面がその被測定液中に浸漬した状態で、前記攪拌具を上下に駆動するように前記上下駆動機構を制御することを特徴とする化学分析装置。
【請求項10】
請求項1記載の化学分析装置において、前記攪拌具はその底面が反応容器深さ方向に関して非対称に構成されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項11】
請求項10記載の化学分析装置において、前記制御装置は、前記攪拌具の底面の深い部分に対応する前記反応容器内の場所に前記サンプルを供給するように前記サンプル供給手段を制御することを特徴とする化学分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−303901(P2007−303901A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131105(P2006−131105)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】