説明

化学分析装置

【課題】低コストで、装置構成も簡単であり、かつ、反応容器の温度安定性の良好な恒温槽を備える化学分析装置を提供することにある。
【解決手段】反応容器3は、反応容器ディスク5に円周状に配列され、恒温槽10に対して回転可能に保持され、かつ、各反応容器3は恒温槽の内部の温度制御された恒温水中に保持されている。恒温槽10は、環状流路として構成されて恒温水は前記流路に沿って流れる。水流制御板12は、恒温槽10の流路中に設けられ、隣接する反応容器3の間に恒温水流を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液,尿等の生体試料検体の分析を行う化学分析装置に係り、特に、反応容器を一定温度に保つ恒温槽を備えたものに好適な化学分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の化学分析装置では、検体と試薬をそれぞれ反応容器に分注し、攪拌した上で一定温度下に保温することで検体と試薬の化学反応を進め、吸光度等を測定することにより検体の成分分析を行う装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、反応容器の保温に際して反応容器を恒温水に浸し、恒温水を恒温槽内で温度制御することにより、反応容器内の液温を一定に保っている。分析においては反応容器に対し順次検体を分注し、さらに分析項目に応じた試薬を分注し、検体と試薬を攪拌し、一定時間経過後に分析操作を実施するが、複数検体を効率良く処理するために複数の反応容器列を円周上に配列し、この円周に沿って反応容器列を搬送しながら円周上の特定位置で分注,攪拌,分析を行うプロセスを採用している。
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の装置では、攪拌後の検体−試薬溶液は、一定時間、所定の温度を維持するインキュベーション工程を経ることで反応が進み、その後で成分分析のための測定操作が可能となる。そのため、恒温槽におけるインキュベーション中は、反応容器の温度は一定に保持される必要があり、インキュベーション中の温度変化は分析結果の誤差に繋がる可能性がある。
【0004】
一方で、従来の恒温槽では、恒温水の水温が一定に保たれることを前提に反応容器の保温を行っているが、この方式の恒温槽では反応容器同士が恒温水を介して近接する構造を取っているため、反応容器のうちの一つが温度変化した場合、周囲の恒温水の温度変化を引き起こした上、隣接する反応容器も温度変化させることになる。特に攪拌、分注操作はそれを実施する反応容器に対して熱流入、損失を招く場合があり、操作を実施される反応容器とともに隣接する反応容器の温度変化も招きやすい。従って、従来装置では隣接反応容器への攪拌、分注操作により、上記インキュベーション工程中に温度変化が生じる可能性があった。
【0005】
なお、反応容器間の温度変化の影響を回避しようとする場合、反応容器相互の距離を広げるという手段もあるが、装置の省スペース性、さらにはスループット維持の関係上反応容器列の間隔をむやみに拡げることは困難である。
【0006】
それに対して、隣接する反応容器の間に水流を導くために、各反応容器にフィンを設けるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、隣接する反応容器の間に噴流を導くためのノズルを設けるものが知られている(例えば、特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−181087号公報
【特許文献2】特開平11−174059号公報
【特許文献3】特開平11−153603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2記載のものでは、全ての反応容器にフィンを設ける必要があり、コストが上昇するという問題がある。
【0010】
また、特許文献3記載のものでは、流路の切り替え機構を備え、試薬を吐出するときだけ、ノズルから噴流を噴き出すような構成としているため、装置構成が複雑になると言う問題がある。
【0011】
本発明の目的は、低コストで、装置構成も簡単であり、かつ、反応容器の温度安定性の良好な恒温槽を備える化学分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記目的を達成するために,本発明は、試薬及び検体を反応容器に分注、混合攪拌し、分析を行う化学分析装置であって、前記反応容器は、円周状に配列され、該円周中心を軸としてディスクにより恒温槽に対して回転可能に保持され、かつ、各反応容器は前記恒温槽の内部の温度制御された恒温水中に保持されており、前記恒温槽は、環状流路として構成され、恒温水は前記流路に沿って流れるものであり、さらに、前記恒温槽の流路中に設けられ、隣接する前記反応容器の間に恒温水流を発生させる流路制御手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、低コストで、装置構成も簡単であり、かつ、反応容器の温度安定性も良好となる。
【0013】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記水流制御板は、板状体であり、前記恒温槽の底部に対して垂直に、しかも、恒温水の流れ方向に対して直交する方向に対して、斜めに配置されているものである。
【0014】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記反応容器は一定間隔で配置されているとともに、前記水流制御板も前記反応容器の間隔と等しい一定間隔で配置されているものである。
【0015】
(4)上記(3)において、好ましくは、前記水流制御板は、2枚の板材で構成され、第1の板材は、前記反応容器に対して、恒温水の流れ方向の前面側に水流を形成し、第2の板材は、前記反応容器に対して、恒温水の流れ方向の後面側に水流を形成するようにしたものである。
【0016】
(5)上記(4)において、好ましくは、前記第1の板材は、その上流側の面が、前記反応容器のディスク外周側で水流の上流側の角と一致するように設置されているものである。
【0017】
(6)上記(1)において、好ましくは、前記水流制御板は、少なくとも、前記反応容器に検体を分注する位置,前記反応容器内部の溶液を撹拌する位置,及び前記反応容器内部を洗浄する位置に設けられている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低コストで、装置構成も簡単であり、かつ、反応容器の温度安定性の良好な恒温槽を備える化学分析装置を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による化学分析装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態による化学分析装置の恒温槽の周囲の要部構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による化学分析装置の恒温槽の底部の構成を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態による化学分析装置の恒温槽に設けた水流制御板の構成を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による化学分析装置の恒温槽に設けた水流制御板の構成を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による化学分析装置の恒温槽に設けた水流制御板の構成を示す図である。
【図7】化学分析装置における反応容器の温度低下による隣接する反応容器への影響の説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態による化学分析装置の恒温槽に設けた水流制御板の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜図7を用いて、本発明の一実施形態による化学分析装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による化学分析装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による化学分析装置の全体構成を示す平面図である。
【0021】
サンプルディスク1には、複数のサンプル容器1Aが保持されている。サンプル容器1Aの内部には、検体溶液が収納されている。試薬ディスク2には、複数の試薬容器2Aが保持されている。試薬容器2Aの内部には、それぞれ試薬が収納されている。
【0022】
環状に形成された恒温槽10の内部には恒温水が充填されて円周に沿って流れるように設定されている。恒温槽10の上部には、反応ディスク5が設置されている。反応ディスク5には、複数の反応容器3が保持されている。反応容器3は、恒温槽10の内部の恒温水に浸されるよう配置され、反応容器3の内部の溶液は恒温水の水温と等温になる。反応容器3は箱型形状で光学的に透明な材料で構成される。反応ディスク5は、矢印R方向に回転する。
【0023】
検体分注装置4は、サンプルディスク1に保持されたサンプル容器1Aから検体を吸引し、反応ディスク5に保持された反応容器3の内部に吐出する。試薬分注装置6は、試薬ディスク2に保持された試薬容器2Aから分析項目に応じた試薬を吸引し、反応ディスク5に保持された反応容器3の内部に吐出する。
【0024】
攪拌ステーション7は、反応容器3の内部に収容された検体と試薬を混合する。攪拌後は所定時間一定温度下で、検体−試薬間の反応を進めるインキュベーション工程に置かれる。
【0025】
複数の反応容器3の列は、前述の各工程を経由するよう恒温槽内の円周上を搬送され、最終的に、吸光度測定ステーション8において吸光度測定を行い、検体の成分分析結果が得られる。
【0026】
また、分析が終了した反応容器3の内部は、洗浄装置9により洗浄される。
【0027】
ここで、反応ディスク5が回転し、反応容器3が位置m(検体分注ステーション)に位置すると、検体分注動作が行われ、位置n(試薬分注ステーション)に位置すると、試薬分注動作が行われ、位置o(攪拌ステーション)に位置すると、攪拌動作が行われ、位置p(洗浄ステーション)に位置すると洗浄動作が行われる。
【0028】
次に、図2を用いて、本実施形態による化学分析装置の恒温槽の周囲の構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による化学分析装置の恒温槽の周囲の要部構成を示す斜視図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0029】
分注装置6は、アーム6Aと、ノズル6Bとを備えている。アーム6Aは、上下動するとともに、および破線で示した軌跡上を回転動作する。ノズル6Bは、アーム6Aの先端に固定されている。ノズル6Bによって、図1に示した試薬ディスク2に設置された試薬容器2Aから所定の試薬を吸引後、反応容器3に対して吐出する操作を行う。
【0030】
また、反応容器3は、恒温槽10の上部に設置された反応ディスク5に着脱可能に配置されている。反応ディスク11は、矢印方向に回転するものであり、この回転に伴い、図1にて説明した各ステーション位置に搬送される。
【0031】
次に、図3を用いて、本実施形態による化学分析装置の恒温槽の底部の構成について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による化学分析装置の恒温槽の底部の構成を示す平面図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0032】
恒温槽10の底部には、給水口10iから温度制御された恒温水を所定の圧力で供給され、排水口10oから恒温水を回収することにより、実線矢印Qの方向に水流を生じさせる。
【0033】
そのために、恒温水制御部20と、ポンプ22と、ヒータ24とを備える。ポンプ22は、排水口10oから流出した恒温水を、給水口10iから恒温槽10の内部に供給する。ヒータ24は、恒温水の温度が一定温度(例えば、37℃)となるように、温度制御する。ポンプ22及びヒータ24は、恒温水制御部20により制御される。
【0034】
破線矢印で示した部分PDは、図1に示した吸光度測光ステーション8を中心に、恒温槽10の流路幅を狭めて同部分内の恒温水流量を制限させるために設けてある。水流量の制限部分を設けている理由は、測光を行う領域では気泡の混入等、恒温水の水量が大きすぎる場合に測定の障害となる条件があるためで、これにより安定した吸光度測定が可能となる。
【0035】
なお、符号3a,3b,3cは、試薬分注ステーションの位置nの前後に位置する反応容器を示している。
【0036】
次に、図4〜図6を用いて、本実施形態による化学分析装置の恒温槽に設けた水流制御板の構成について説明する。
図4〜図6は、本発明の一実施形態による化学分析装置の恒温槽に設けた水流制御板の構成を示す図である。図4及び図5は平面図であり、図6(A)は恒温槽の周方向の断面図であり、図6(B)は図6(A)に直交する方向からの断面図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0037】
図4に示すように、恒温槽10の底部には、複数の水流制御板12が設けられている。水流制御板12は、板状体である。水流制御板12は、恒温槽10の底部に対して垂直に、しかも、恒温水の流れ方向に対して直交する方向に対して、角度θ1だけ、斜めに配置されている。角度θ1は、例えば、30度〜60度である。
【0038】
水流制御板12が設けられている位置は、恒温槽10の位置n(試薬分注ステーション),位置o(攪拌ステーション),位置p(洗浄ステーション)である。
【0039】
反応容器は、反応容器ディスクにより所定角度回転した後、停止する訳であるが、図5は、反応容器3が停止している状態において、反応容器3と水流制御板12との位置関係を示している。図示のように、平面位置において、反応容器3のディスク外周側で、反応容器の上流側の角が、水流制御板12の上流側の面と一致するように、水流制御板12は設置されている。
【0040】
また、反応容器3は一定間隔で配置されている。水流制御板12も一定間隔で配置されており、その間隔は反応容器3の間隔と等しくなっている。
【0041】
このような配置により、矢印Q方向の水流の内、底部に近い方の水流は、水流制御板12に遮られることで、破線矢印Q1方向に向きを変える。
【0042】
そして、図6(B)に示すように、矢印Q1方向の水流は、恒温槽10の内周壁面に当たることで、図6(B)及び図6(A)に示すような、矢印Q2方向の上向きの流れとなる。上向きの流れQ2は、恒温水の上面に至ると、図6(B)に示すように、矢印Q3方向の流れとなる。
【0043】
以上の結果、図6(A)において、水流制御板12Bによって、反応容器3aと反応容器3bとの間の空間の水流は攪拌される。また、水流制御板12Cによって、反応容器3bと反応容器3cとの間の空間の水流は攪拌され、反応容器間の恒温水は常時置換されるために反応容器の熱交換効率は向上する。従って、例えば、反応容器3bが停止している位置が恒温槽10の位置n(試薬分注ステーション)とし、反応容器3bに低温の試薬が分注され、反応容器3bの内部の溶液の温度が低下した場合でも、その低下の影響が隣接する反応容器3aや反応容器3cに及ぶのを防止することができる。その結果、反応容器3a,3c内の検体、試薬溶液は温度一定の条件下で所定の反応過程を進めることが可能となる。
【0044】
このことは、反応容器3bが停止している位置が恒温槽10の位置o(攪拌ステーション)や位置p(洗浄ステーション)の場合でも同様である。位置p(洗浄ステーション)において、反応容器3bに低温の洗浄液が分注され、反応容器3bの内部の溶液の温度が低下した場合でも、その低下の影響が隣接する反応容器3aや反応容器3cに及ぶのを防止することができる。また、位置o(攪拌ステーション)において、反応容器3bの内部の溶液が攪拌され、反応容器3bの内部の溶液の温度が変化した場合でも、その温度変化の影響が隣接する反応容器3aや反応容器3cに及ぶのを防止することができる。
【0045】
特に、近年の反応液量の微量化に伴って、分析操作に伴う熱の出入の影響を受けやすくなっているが、このような場合でも、隣接する反応容器の内部の温度変化の影響を受けにくくなる。
【0046】
なお、反応容器3bの内部の温度変化が、隣接する反応容器3aや反応容器3cに及ぶの防止する観点では、水流制御板12Bと水流制御板12Cを備えることで十分であるが、本実施形態では念のため、さらに、上流側の水流制御板12Aと、下流側の水流制御板12Dとを備えている。
【0047】
なお、水流制御板12の、恒温水の流れ方向に対して直交する方向に対する角度θ1は、例えば、30度〜60度と説明したが、この範囲より小さかったり、大きかったりすると、隣接する反応容器の間に、十分な水流が生じないことが判明している。
【0048】
次に、図7を用いて、化学分析装置における反応容器の温度低下による隣接する反応容器への影響について説明する。
【0049】
図7は、化学分析装置における反応容器の温度低下による隣接する反応容器への影響の説明図である。
【0050】
図7において、横軸は,測定時間を示し、縦軸は反応率及び反応容器内液温を示している。
【0051】
ここで、位置pに反応容器3bにて反応容器3bの洗浄が行われ、隣接する反応容器3aには、検体に試薬が分注され、反応が進んでいる溶液が収納されているとする。
【0052】
反応容器3aの内部では、図7の時間0において、検体に試薬が分注され、反応が開始している。この反応容器3aの内部の溶液は次第に反応が進むと、図7の実線Xで示すように、一定の割合で反応が進行する。ある時間が経過すると、反応率は飽和する。
【0053】
そこで、例えば、レートアッセイ法の場合には、時刻t1に、反応容器3aを吸光度測定ステーション8に移送し、1回目の反応率を測定する。その後、反応容器3aは反応ディスク5により回転され、時刻t2に、反応容器3aを吸光度測定ステーション8に移送し、2回目の反応率を測定する。そして、第1回目と第2回目の測定時間の差(t2−t1)の間の反応率の変化を求める。
【0054】
このような場合、反応容器3aに検体に試薬が分注され、反応が進んでいる間において、時刻t0において、反応容器3bが位置pに移送され、反応容器3bの洗浄が行われる場合が生じる。洗浄液は、恒温水の温度よりも低い。そのため、時刻t0において、反応容器3bに洗浄液が注入され、しかも、図4〜図6にて説明した水流制御板12が無い場合には、反応容器3aの内部の溶液の温度は、図7に一点鎖線Zで示すように低下する。
【0055】
その場合の反応率の変化は、図7に破線Yで示されている。すなわち、破線Yで示すように、時刻t0において、反応容器3bに洗浄液が注入され、反応容器3aの内部の溶液の温度が低下すると、反応の進み具合が変化し、その後、反応が通常通りに進むことになる。このような場合に、時刻t1と時刻t2において反応率を計算し,反応率の変化を測定すると、実線Xに対して測定した場合と異なり、誤差となる。
【0056】
隣接する反応容器の内部の溶液の温度が変化する要因は、1)位置nにおける試薬分注、2)位置oにおける攪拌、3)位置pにおける洗浄がある。この中で一番温度が変化しやすいのは、位置pにおける洗浄工程である。洗浄工程では、約100μLの洗浄液が反応容器の内部に注入される。恒温水の温度が例えば37℃のとき、洗浄液の温度は常温(例えば、25℃)である。2番目に温度が変化しやすいのは、位置nにおける試薬分注である。分注される試薬の量は、例えば、30μLと洗浄液に比べて少ないもののと、その温度は低温(例えば、12℃)に保たれているからである。また、位置oにおける攪拌でも、反応容器内の反応が進むため、温度が変化が生じる。
【0057】
そこで、本実施形態では、図4にて説明したように、恒温槽10の位置n(試薬分注ステーション),位置o(攪拌ステーション),位置p(洗浄ステーション)に、水流制御板12を設けるようにしている。このように、水流制御板12を設けることで、隣接する反応容器との間に水流を形成し、反応容器の内部の温度変化の影響が隣接する反応容器の内部に及ぶことを防止できる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、化学分析装置において隣接する反応容器間に恒温水の水流を発生させ、温度維持を容易にすることにより、反応容器の温度変化の影響が隣接する反応容器に及ぼすことを回避できる。それにより検体−試薬溶液の反応過程は一定温度下で進められ、分析結果の誤差を低減できる。
【0059】
また、恒温槽の底部に水流制御板を備えるだけであるため、装置構成も簡単であり、コスト上昇の低減することができる。
【0060】
次に、図8を用いて、本発明の他の実施形態による化学分析装置の構成及び動作について説明する。なお、本実施形態による化学分析装置の全体構成は、図1に示したものと同様である。
図8は、本発明の他の実施形態による化学分析装置の恒温槽に設けた水流制御板の構成を示す図である。なお、図1〜図6と同一符号は、同一部分を示している。
【0061】
恒温槽10の底部には、図示するように、恒温水の水流量制限区間PD及び給水口10iと排水口10oの位置を除いて、恒温槽10の底部全周に水流制限板12を設けている。
【0062】
これにより分析操作の全工程で反応容器の熱交換効率を向上させ、良好な温度安定性を実現することができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によっても、化学分析装置において隣接する反応容器間に恒温水の水流を発生させ、温度維持を容易にすることにより、反応容器の温度変化の影響が隣接する反応容器に及ぼすことを回避できる。それにより検体−試薬溶液の反応過程は一定温度下で進められ、分析結果の誤差を低減できる。
【0064】
また、恒温槽の底部に水流制御板を備えるだけであるため、装置構成も簡単であり、コスト上昇の低減することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…検体ディスク
2…試薬ディスク
2A…試薬容器
3…反応容器
4…検体分注装置
5…反応ディスク
6…試薬分注装置
7…攪拌ステーション
8…吸光度測定ステーション
9…洗浄装置
10…恒温槽
10i…給水口
10o…排水口
12…水流制御板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬及び検体を反応容器に分注、混合攪拌し、分析を行う化学分析装置であって、
前記反応容器は、円周状に配列され、該円周中心を軸としてディスクにより恒温槽に対して回転可能に保持され、かつ、各反応容器は前記恒温槽の内部の温度制御された恒温水中に保持されており、
前記恒温槽は、環状流路として構成され、恒温水は前記流路に沿って流れるものであり、
さらに、前記恒温槽の流路中に設けられ、隣接する前記反応容器の間に恒温水流を発生させる流路制御手段を備えることを特徴とする化学分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の化学分析装置において、
前記水流制御板は、板状体であり、前記恒温槽の底部に対して垂直に、しかも、恒温水の流れ方向に対して直交する方向に対して、斜めに配置されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の化学分析装置において、
前記反応容器は一定間隔で配置されているとともに、前記水流制御板も前記反応容器の間隔と等しい一定間隔で配置されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項4】
請求項3記載の化学分析装置において、
前記水流制御板は、2枚の板材で構成され、
第1の板材は、前記反応容器に対して、恒温水の流れ方向の前面側に水流を形成し、第2の板材は、前記反応容器に対して、恒温水の流れ方向の後面側に水流を形成することを特徴とする化学分析装置。
【請求項5】
請求項4記載の化学分析装置において、
前記第1の板材は、その上流側の面が、前記反応容器のディスク外周側で前記反応容器の上流側の角と一致するように設置されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項6】
請求項1記載の化学分析装置において、
前記水流制御板は、少なくとも、前記反応容器に検体を分注する位置,前記反応容器内部の溶液を撹拌する位置,及び前記反応容器内部を洗浄する位置に設けられていることを特徴とする化学分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−99807(P2011−99807A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255751(P2009−255751)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】