化学反応の平行スクリーニング用統合マイクロ流体工学
マイクロ流体デバイスは、ナノリットル量の試薬を利用して異なる反応を平行して行うことを可能ならしめる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年3月2日提出の米国仮出願番号第60/778,430の優先権を主張しており、その内容の全体を参照としてここに組み込む。
【0002】
本発明は、マイクロ流体デバイスおよび方法、より具体的には、平行反応用のマイクロ流体デバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体デバイスは、マクロリアクタに比して、試薬消費の削減、高い表面積対容積率、および質量および熱伝導について制御が向上する、などの様々な利点を提供しうる。これについては、K.Jahnisch,V.Hessel,H.Lowe,M.Baerns,Angew.Chem. 2004,116,410‐451,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2004,43,406‐446,P.Watts,S.J.Haswell,Chem.Soc.Rev.2005,34,235‐246,およびG.Jas,A.Kirschning,Chem.−Eur.J.2003,9,5708−5723を参照のこと。高反応性中間体に関する有機反応は、マイクロリアクタなどのマイクロ流体デバイスで起こる反応に、従来のマクロ合成法より多くの選択性および特異性を与える。これについては、T.Kawaguchi,H.Miyata,K.Ataka,K.Mae,J.Yoshida,Angew.Chem.2005,117,2465‐2468,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005,44,2413‐2416,およびD.M.Ratner,E.R.Murphy,M.Jhunjhunwala,D.A.Snyder,K.F.Jensen,P.H.Seeberger,Chem.Commun.2005,578‐580を参照のこと。マイクロ流体デバイスをコンピュータ制御システムと統合すると複雑な化学および生物学プロセスを自動で行うことができるようになる。
【0004】
しかし、過去のマイクロ流体デバイスは、多段階合成を実行する能力に限界があるものが多かった。多段階合成の個々の段階には、溶媒、試薬、および条件の変更が要求されうる。
【0005】
さらには、過去のマイクロ流体デバイスでは、平行合成ができない場合が多かった。平行合成においては、異なる試薬の組み合わせを利用して類似した種類の反応を行いうる。例えば、生物学あるいは生物化学研究において、研究者は、多くの異なる反応を同時に行う必要がある場合がある。例えば、反応の総数のうちの、望ましいプロダクトを生じるあるいは肯定的な結果を示す割合は低いかもしれないので、多くの数の反応を行う必要がある。このような研究には、例えば、薬効のために多くの化合物をスクリーニングすることが含まれる。多くのスクリーニング数を連続してこなすと、例えば、研究者あるいは技術者費用が非常に高価になってしまう。さらには、培養あるいは反応時間が長い場合、研究が長時間にわたる場合もある。多くの反応を平行して従来のマクロ研究所の機器を利用して行うと、必要な装置、全体コスト、あるいは必要な試薬の量などにおいて非常に高価になってしまう。
【0006】
マイクロ流体デバイスに特有の小さな長さスケールは幾らもの利点を提供するが、小さな長さスケールは操作によっては課題を生じる。例えば、過去のマイクロ流体デバイスの操作に特有の小さな長さスケールおよび関連する低流体速度により、デバイスを流れる流体速度のレイノルズ数が低くなる。つまり、流体の流れがしばしば層流型(laminar regime)であった。乱流を起こせないので、混合が不良に終わり、流体が不均一になるので、好ましくない結果に終わったり、データ解釈を複雑にしたりしていた。
【0007】
従って、多段階合成を平行して行うことができ、個々の段階を別々に行うことができ、流体の組み合わせにおいても試薬がきちんと混合されるマイクロ流体デバイスの必要性が叫ばれている。
【発明の開示】
【0008】
明細書、図面、および例を考慮することで、さらなる目的および利点が明らかになる。
【0009】
本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイスは、複数の流体入力マイクロチャネルと選択的に流体接続される複数の流体源と、複数の流体入力マイクロチャネルと流体接続される混合部と、混合部と各々選択的に流体接続される、複数のマイクロベセルと、を含む。混合部が、複数の流体入力マイクロチャネルから複数の流体の組み合わせを受け取り、対応する複数の混合流体を複数のマイクロベセルの各々に動作中に出力することで、マイクロ流体デバイスは平行して複数の化学反応を起こす。
【0010】
本発明の一実施形態による、平行して複数の化学反応を行う方法は、少なくとも二つの試薬の量を独立して選択することと、テスト混合物を形成すべく試薬を混合することと、マイクロベセルを選択することと、選択されたマイクロベセルにテスト混合物を搬送することと、少なくとも二つの試薬の量を独立して選択することと、試薬を混合することと、マイクロベセルを選択することと、テスト混合物を搬送することとを、所定の数のマイクロベセルが選択されるまで繰り返すことと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイスの概略図である。
【0012】
【図2A】本発明の一実施形態によるインサイチュークリック化学ライブラリの平行スクリーニングに利用されるマイクロ流体デバイスの概略図である。
【0013】
【図2B】本発明の一実施形態による実際のデバイスの光学画像である。
【0014】
【図3A−3D】本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイスに個々のインサイチュークリック化学混合物を用意する四つの連続的段階を示す概略図である。
【0015】
【図4】本発明の一実施形態によるマクロ流体デバイスおよび(カッコ内)96ウェルのマイクロタイタープレートを利用して、アセチレン1およびアジド2‐21のインサイチュークリック化学スクリーニング結果の概要である。
【0016】
【図5】アセチレン1およびアジド2のインサイチュークリック化学反応のLC/MS分析の結果を示す。a)Cu触媒反応により得られたトリアゾールプロダクト、b)bCAII(ウシカルボニックアンヒドラーゼII)が存在する際に行われるマイクロチップに基づく反応、c)bCAIIおよび阻害剤22両方が存在する際に行われるマイクロチップに基づく反応、およびd)bCAIIが不在の際に行われるマイクロチップに基づく反応、e)bCAIIが存在する際に96ウェルのマイクロタイタープレートに行われる反応。
【0017】
【図6】アセチレン1およびアジド3のインサイチュークリック化学反応のLC/MS分析の結果を示す。a)トリアゾールプロダクト、b)bCAIIが存在する際に行われるマイクロチップに基づく反応、c)bCAIIおよび阻害剤22両方が存在する際に行われるマイクロチップに基づく反応、およびd)bCAIIが不在の際に行われるマイクロチップに基づく反応。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の幾らかの実施形態を以下に詳述する。実施形態詳述にあたり、明確化のために特定の用語を利用する。しかし、選択された特定の用語に本発明を限定する意図はない。当業者であれば、本発明の精神および範囲を逸脱せずに他の均等物の利用、および他の方法の展開が可能であることを理解するであろう。ここで引用する全ての文献は、各々を個々に組み込むように参照として組み込まれる。
【0019】
図1は、本発明によるマイクロ流体デバイスの一実施形態の概略を示す。デバイスは、ソフトリソグラフィ技法により実施しうる。例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)層を表面に適用することが可能である。この層をレジストで覆い、光パターンに曝して、エッチングを行うことで、所定のパターンの流体チャネルを作製しうる。覆うこと、曝すこと、およびエッチングという段階を連続して行うことで、幾らかの多層上に流体チャネルを形成することができる。例えば、流体チャネルの第一段は、所望の化合物の合成を意図する試薬の流れを誘導するよう設計される。流体チャネルの第二段は、第一段で流れる試薬を搬送および制御するのに利用されるポンプおよび/またはバルブを起動するのに利用される制御ラインに圧力をかけるように設計される。第一段および第二段は、PDMSの薄膜で分離されうる。分離層は、第一段の試薬を第二段の制御ラインの流体から隔離する機能を有する。さらには、PDMSの分離層は、ポンプおよびバルブといったマイクロスケールデバイスの部材として機能しうる。例えば、第二段の制御ラインにかけられる圧力は、第一段の流体チャネル上の分離層を歪ませ、流体チャネルの試薬の流れをブロックすることがある、つまり分離層がバルブとして機能することがある。
【0020】
一実施形態においては、図1に示すマイクロ流体デバイス100は二以上の流体源(101a、101b、101c、101d)を含む。各流体源(101a、101b、101c、101d)は、異なる化学試薬を含みうる。マイクロ流体デバイス100は二以上の流体入力マイクロチャネル(102a、102b)を含む。マイクロ流体デバイス100は二つの入力マイクロチャネル(102a、102b)のみに限定されない。例えば、三以上の流体入力マイクロチャネルを含みうる。バルブ(170a、170b、170c、170d)は、流体源(101a、101b、101c、101d)から流体入力マイクロチャネル(102a、102b)への流体の流れを制御する。
【0021】
一実施形態においては、流体入力マイクロチャネル(102a、102b)は、定量ポンプ181を含む。定量ポンプ181は上流ポンプバルブ(180a、180b)、中流ポンプバルブ(182a、182b)、および下流ポンプバルブ(184a、184b)を含む。流体入力マイクロチャネル102aに関連付けられる上流ポンプバルブ180aは、上流制御ライン186により他の流体入力マイクロチャネル102bに関連付けられる他の上流ポンプバルブ180bに接続され、中流ポンプバルブ182aは、中流制御ライン188により他の中流ポンプバルブ182bに接続され、下流ポンプバルブ184aは、下流制御ライン190により他の下流ポンプバルブ184bに接続される。
【0022】
マイクロ流体デバイス100は、二以上の流体入力マイクロチャネル(102a、102b)に流体的に接続された混合部191を含みうる。
【0023】
一実施形態においては、混合部191は回転混合器106を含む。回転混合器106は流体入力マイクロチャネル(102a、102b)に流体的に接続される。回転混合器106は、回転混合ポンプを含む。本実施形態の回転混合ポンプは少なくとも三つのポンプバルブを含む。回転混合ポンプは、第一のポンプバルブ192、第二のポンプバルブ194、および第三のポンプバルブ196を含む。回転混合器106は回転混合出力マイクロチャネル109に流体的に接続される。回転混合出力マイクロチャネル109は回転混合出力バルブ108およびパージ入口バルブ110を含みうる。
【0024】
回転混合器106は、約5nL(ナノリットル)〜約12500nLの範囲の容積を持ち得、約25nL〜約2500nLの範囲の容積を持ち得、約250nLの容積を持ちうる。
【0025】
一実施形態においては、混合部は、カオス混合器112を含む。カオス混合器112は、カオス的移流を起こしてチャネル内を流れる流体を混合する少なくとも一つの突起を有する流体チャネル113を含む。カオス混合器112は、カオス混合出力マイクロチャネル115に流体的に接続される。カオス混合出力マイクロチャネル115は、カオス混合出力バルブ116およびパージ出口バルブ114を含む。
【0026】
一実施形態においては、回転混合出力マイクロチャネル109はカオス混合器112に流体的に接続される。
【0027】
マイクロ流体デバイス100は、例えばマイクロべセル(microvessel)124xなどの複数のマイクロべセル124を含み得、各マイクロべセル124は混合部191と選択的に流体接続される。
【0028】
一実施形態においては、マイクロ流体デバイス100は、マイクロ流体マルチプレクサ122を含む。マイクロ流体マルチプレクサ122は混合部191に流体的に接続され、複数のマイクロベセル124に流体的に接続される。マイクロ流体マルチプレクサ122は各マイクロべセル124を混合部191と選択的に流体接続する役目を果たす。
【0029】
一実施形態においては、マイクロ流体マルチプレクサ122は、例えばマルチプレクサマイクロチャネル118xなどの、二以上のマルチプレクサマイクロチャネル118を含む。各マルチプレクサマイクロチャネル118は一つのマイクロべセル124と流体的に接続し、各マルチプレクサマイクロチャネル118は、例えばマルチプレクサバルブ132xなどの、少なくとも一つのマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)を含む。マイクロ流体マルチプレクサ122は、マルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)に関連して複数のマルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)を含む。マルチプレクサマイクロチャネル118の数は、マルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)の数に2を加えた数以上である。
【0030】
一実施形態においては、マイクロ流体マルチプレクサ122内の制御ライン(138、140、142、158、160、162)の数(NCL)は、偶数であって6以上である。マルチプレクサマイクロチャネル118の数は2NCL/2以下である。
【0031】
一実施形態においては、各マルチプレクサマイクロチャネル118はNCL/2個のマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)を含み、各マルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)は、マルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)のいずれかに接続される。各制御ラインは2(NCL/2−1)個のマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)に接続され、ここで各マルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)は別個のマルチプレクサマイクロチャネル118上にある。あるマルチプレクサマイクロチャネル118上のマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)が接続されるマルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)一式は、別のマイクロチャネル118上のマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)が接続されるマルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)一式とは同じではない。
【0032】
マイクロ流体マルチプレクサ122のマルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)は、圧力を有する流体を含みうる。圧力を流体にかけることで、マルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)が接続されるマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)の状態が変化しうる。例えば、圧力をかけることで、マルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)の状態は開から閉へと変化して、流体がマイクロチャネル118内を通らないようにしうる。別の例としては、圧力を解除すると、マルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)の状態が閉から開へと変化して、流体がマイクロチャネル118内を通るようにしうる。マイクロ流体マルチプレクサ122のマルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)は、流体として液体を含み得、制御ラインは、液体制御ライン(hydraulic control line)と称されうる。マイクロ流体マルチプレクサの制御ラインは流体として気体を含み得、制御ラインは気体制御ライン(pneumatic control line)と称されうる。
【0033】
本発明による方法の一実施形態は以下を含む。ユーザ(あるいはコンピュータなどの制御デバイス)は、二以上の試薬の量を独立して選択しうる。ユーザは、三以上の試薬の量を独立して選択しうる。マイクロ流体デバイス100の混合部は、選択された試薬を混合してテスト混合物を形成する。その後、ユーザ(あるいはコンピュータなどの制御部)は、テスト混合物が移されるマイクロベセル124を選択する。マイクロ流体デバイス100は選択されたマイクロベセル124へテスト混合物を搬送する。独立して少なくとも二つの試薬の量を選択する段階、試薬を混合する段階、マイクロベセル124を選択する段階、およびテスト混合物を搬送する段階は、所定の数のマイクロベセル124が選択されるまで繰り返してよい。
【0034】
テスト混合物は、約0.1μLから約80μLの容積を持ち得、約1μLから約16μLの容積を持ち得、約4μLの容積を持ち得る。
【0035】
ユーザは各選択されたマイクロベセル124内のテスト混合物を所定の時間の間反応させる。ユーザは選択されたマイクロベセル124からテスト混合物を抽出して、抽出されたテスト混合物を分析することができる。
【0036】
一実施形態においては、選択されたマイクロベセル124にテスト混合物を搬送することは以下を含む。ユーザ(あるいはコンピュータなどの制御部)は、選択されたマイクロベセルと流体接続されたマイクロチャネル118を識別する。ユーザは、識別されたマイクロチャネルに関連付けられたマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)を識別する。ユーザは、識別されたマルチプレクサバルブと関連付けられたマルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)を識別する。ユーザはその後、識別されたマルチプレクサ制御ラインの状態を設定する。例えば、ユーザは、識別されたマルチプレクサ制御ラインの行動を止め、全ての識別されたマルチプレクサバルブを開状態にしてよい。識別されたマルチプレクサ制御ラインの行動を止めることは、識別されたマルチプレクサ制御ライン内の流体に加えられる圧力を解除することを含みうる。ユーザは、その後、他の、識別されていないマルチプレクサ制御ラインの状態を設定することもできる。例えば、ユーザは、他の、識別されていないマルチプレクサ制御ラインを起動することで全ての識別されていないマルチプレクサバルブを閉状態にしてもよい。識別されていないマルチプレクサ制御ラインを起動することは、識別されていないマルチプレクサ制御ライン内の流体に圧力を加える、または圧力を維持することを含みうる。
【0037】
一実施形態においては、ユーザ(あるいはコンピュータなどの制御部)は、識別されたマルチプレクサ制御ラインの行動を止め、識別されていないマルチプレクサ制御ラインを起動することで、開状態にある識別されていないマイクロチャネルと関連付けられる全てのマルチプレクサバルブを、いずれの識別されていないマイクロチャネルもが有することのないようにする。
【0038】
一実施形態においては、選択されたマイクロベセル124にテスト混合物を搬送することは、テスト混合物に圧力をかけることを含みうる。選択されたマイクロベセル124にテスト混合物を搬送することは、テスト混合物と接触する流体に圧力をかけることを含みうる。
【0039】
一実施形態においては、入力試薬を混合してテスト混合物を形成することは、回転混合器106のバルブを所定の順序で開閉して、蠕動運動により入力試薬を時計回りあるいは反時計回りに駆動することを含みうる。例えば、ユーザ(あるいはコンピュータなどの制御部)は、(a)回転混合器106の第一のバルブ192を閉状態にして、第二のバルブ194および第三のバルブ196を開状態にして、(b)回転混合器106の第二のバルブ194を閉状態にして第一のバルブ192から流体を離し、(c)回転混合器106の第三のバルブ196を閉状態にして、第一のバルブ192および第二のバルブ194を開状態にしてよい。ユーザ(あるいはコンピュータなどの制御部)は、所望である間、例えば、テスト混合物が所定の均一な長さスケールを有するまで、段階(a)(b)(c)を繰り返すことができる。
【0040】
所定の均一な長さスケールは、二つの流体キューブ(two cubes of fluid)を考慮することで生まれる。流体の容積の各キューブの位置に関わらず、角の長さの減少によりこの所定のパーセンテージにわたる平均濃度の変化の増加を生じるであろう、一キューブ内の各試薬の平均濃度が他のキューブ内の試薬の平均濃度と所定のパーセンテージ(例えば10%)以内で異なるキューブの角の長さは、流体の均一な長さスケールである。
【0041】
パージ入口バルブ110を開き、圧力をかけてバルク流体をパージ入口バルブ110を経由させカオス混合器112に向けて駆動することで、テスト混合物はカオス混合器112を経由してマイクロ流体マルチプレクサ122に搬送される。バルク流体はテスト混合物に圧力をかけ、カオス混合器を介してテスト混合物を駆動することができる。バルク流体はテスト混合物に圧力をかけ、テスト混合物をへ、および、マイクロ流体マルチプレクサ122を通るよう駆動することができる。
【0042】
上述の実施形態は、液体および/または気体バルブを有するが、本発明の幅広いコンセプトはそのような構造に限られない。さらには、本発明によるマイクロ流体デバイスは、上述の実施形態に記載されたPDMS構造に限られない。
【0043】
上述の実施形態に示したようなマイクロ流体デバイスは、分析機器と統合することもできる。例えば、マイクロ流体デバイスからの反応生成物はLC/MS(liquid chromatography/mass spectrometry)機器などの分析機器に向けることができる。例えば、W.G.Lewis,L.G.Green,F.Grynszpan,Z.Radic,P.R.Carlier,P.Taylor,M.G.Finn,K.B.Sharpless,Angew.Chem.2002,114,1095−1099,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2002,41,1053−1057,V.D.Bock,H.Hiemstra,J.H.van Maarseveen,Eur.J.Org.Chem.2005,51‐68,およびV.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee,S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005,117,118‐122,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005,44,116‐120参照のこと。統合されたマイクロ流体工学は、平行化および自動化を可能とするので、薬効のある化合物の識別などの化合物のスクリーニング用などに、優れた実験的プラットフォームを提供することができる。統合されたマイクロ流体工学に関する小型化により、標的たんぱく質および高価な化合物などの試薬の節約利用が可能となる。
例
【0044】
本発明のマイクロ流体デバイスの概略図を図2Aに示す。このマイクロ流体デバイスの写真を図2Bに示す。このマイクロ流体デバイスにより、32個の異なる試薬混合物が同時に、つまり平行して反応することができる。
【0045】
本例のマイクロ流体デバイスは、約4μLの容積を有するテスト混合物を生成することができる。例えば、インサイチュークリック化学反応を、このようなテスト混合物とともに調査することができる。例えば、V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee,S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb, Angew.Chem.2005,117,118‐122,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005,44,116‐120参照のこと。たとえば、4μLの容積のテスト混合物は19μgの酵素、2.4nmolのアセチレン化合物、および3.6nmolのアジド化合物を含みうる。
【0046】
これに比して、従来の方法によると、インサイチュークリック化学反応物は100μLの容積を持ち、94μgの酵素、6nmolのアセチレン、および40nmolのアジドを含む。これは、本発明によるマイクロ流体デバイスが、従来の方法よりも少ない試薬量でよいことを示す。マイクロ流体デバイスが試薬を保護できることは、例えば、試薬が高価である場合や製造が難しい場合に、利点である。
【0047】
本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイス200(図2A、図2B)は以下を含む。全容積が約250nLであるナノリットル(nL)レベルの回転混合器206を図2Aに示す。関連する流体入力マイクロチャネル202、ポンプバルブ(280、282、284)、バルブ270、および流体源201とともに、円形のループが、ナノリットルの量の試薬を、選択的にサンプル、正確には計測および混合することができる。これについては、M.A.Unger,H.P.Chou,T.Thorsen,A.Sherer,S.R.Quake,Science2000,288,113‐116を参照のこと。例えば、行われるインサイチュークリック化学実験においては、80nLのアセチレン化合物(アセチレン1)、120nLのアジド化合物(アジド1‐11、12‐21)、および40nLまでの阻害剤(阻害剤22)を各テスト混合物に混合した。
【0048】
回転混合器206からのナノリットル量の混合試薬を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH7.4)のμL量のbCAII(ウシカルボニックアンヒドラーゼII)溶液に混ぜるための、マイクロリットル(μL)レベルのカオス混合器212を図2Aに示す。A.D.Stroock,S.K.W.Dertinger,A.Ajdari,I.Mezic,H.A.Stone,G.M.Whitesides,Science2002,295,647‐651参照のこと。カオス的移流を起こし比較的短いマイクロチャネル内で混合を促した埋め込みマイクロパターンを有する、つまり、突起を有する37.8mmの長さのマイクロチャネル213内に、均一な反応混合物がカオス混合により生成された。A.D.Stroock,S.K.W.Dertinger,A.Ajdari,I.Mezic,H.A.Stone,G.M.Whitesides,Science2002,295,647‐651参照のこと。マイクロパターンは、効率的な混合を保証すべく理論が要求するものよりも20%長かった。200μmの幅のマイクロチャネルで効率的に混合するには31.5mmの長さのマイクロパターンが要求される。この長さは、A.D.Stroock,S.K.W.Dertinger,A.Ajdari,I.Mezic,H.A.Stone,G.M.Whitesides,Science2002,295,647‐651に記載の理論モデルにより得られた。
【0049】
マイクロ流体マルチプレクサ222は、各テスト混合物を、32個のテスト混合物保存用の個々にアドレス可能なマイクロベセルのいずれかに誘導する働きをする。T.Thorsen,S.J.Maerkl,S.R.Quake,Science2002,298,580‐584参照のこと。マイクロベセルは、直径1.3mmおよび深さ6mmの(故に約8μLの容積の)円筒ウェルの形状を有するていた。
【0050】
コンピュータ制御インタフェースを利用して、操作サイクルの多段階をプログラムして各テスト混合物を準備する。三十二のこのような操作サイクルは順々にコンパイルされ、32個のテスト混合物(各マイクロベセルにつき一つ)を作動中のマイクロ流体デバイス内に生成する。
操作サイクル
【0051】
各テスト混合物をマイクロ流体デバイス300内に生成する方法を図3A〜図3Dに示す。図3Aは、定量ポンプ380、382、384を利用してアジド2、アセチレン1、および阻害剤22を、約10nL/秒の流量で回転混合器306に順に導入することを示す。バルブ370の適切な構成を示す(閉バルブがXとして示される)。その後、定量ポンプ380、382、384を利用して、PBS溶液を導入して、回転混合器306の円形のループを完全に充たす。
【0052】
図3Bは、混合ポンプを利用してnLスケール回転混合器306(循環率がca18サイクル/分)に、試薬溶液を15秒間混入することを示す。混合ポンプは、上述のように、回転して開閉するバルブ392、394、396からなり、回転混合器306のループの周りに試薬溶液の蠕動ポンプ運動を引き起こした。
【0053】
図3Cは、次に、PBS溶液を回転混合器306に約25nL/秒の流量で導入することで、回転混合器306内の試薬溶液が、回転混合器306からカオス混合器312へと追い出されたことを示す。同時に、全3.8μLのbCAII溶液が約400nL/秒の流量でカオス混合器312に導入された。テスト混合物は故に、カオス混合器312内を流れ、その後マイクロ流体マルチプレクサ322へと流れた。マルチプレクサ制御ライン338、340、342、344、および346は、行動を止められ、マイクロチャネル318xに関する全てのマルチプレクサバルブが開状態になり、テスト混合物がマイクロチャネル318xを介してマイクロチャネル318x(不図示)の端部に流体的に接続されたマイクロベセルへと流れるようにされた。他のマルチプレクサ制御ライン358、360、362、364、および366は全て起動されてマルチプレクサバルブを閉じ、関連するマルチプレクサバルブが全て開いているマイクロチャネルが他に一つもないようにして、テスト混合物が他のマイクロベセル内に流れないようにする。
【0054】
図3Dは、テスト混合物が図3A〜図3Cに示され上述された段階で経る、回転混合器306、カオス混合器312、およびマイクロ流体マルチプレクサ322のチャネルが、その後2μLのPBS溶液を導入して気流パージを導入することで洗浄されたことを示す。これは、操作サイクルと後続の操作サイクルの間の二次汚染を防ぐ。
【0055】
図3A〜図3Dに示され上述された操作サイクルは繰り返されたが、それは、異なるマイクロベセルを計32回選択すべく、順に異なるマルチプレクサ制御ライン338、340、342、344、346、358、360、362、364、および366の設定で行われた。各マイクロベセルを異なるテスト混合物で充たすべく32の操作サイクルを完了するには、約30分(約57秒/サイクル)かかる。32マイクロベセル各々が充たされた後、マイクロ流体デバイス300が湿度制御されたインキュベータに摂氏37度で40時間配置され、マイクロベセル内のテスト混合物の反応を完成させた。故に、32の異なる反応を同時に、しかも32の反応を互いに順番に行ったのと比べてずっと短い時間で行うことができた。
【0056】
インキュベーションの後、反応したテスト混合物はマイクロベセルから収集された。各マイクロベセルはMeOH(5μL×3)で洗浄され、マイクロベセル用の洗浄液がマイクロベセル内で元の反応したテスト混合物と混合された。LC/MS分析が各テスト混合物に対して行われた。
化学
【0057】
本発明によりマイクロ流体デバイスとともに調べたインサイチュークリック化学は、標的の結合ポケット内の相補アジドおよびアセチレン構成要素を1,3−双極性環状付加によりアセンブルすることで、高親和性たんぱく質リガンドを発見する標的誘導合成法(target-guided synthesis method)である。これについては以下を参照のこと。D.Rideout,Science1986,233,561−563,I.Huc,J.M.Lehn,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1997,94,2106‐2110,J.M.Lehn,A.V.Eliseev,Science2001,291,2331‐2332,O.Ramstrom,J.M.Lehn,Nat.Rev.Drug Discovery2002,1,26‐36,D.A.Erlanson,A.C.Braisted,D.R.Raphael,M.Randal,R.M.Stroud,E.M.Gordon,J.A.Wells,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2000,97,9367−9372,K.C.Nicolaou,R.Hughes,S.Y.Cho,N.Wissinger,C.Smethurst,H.Labischinski,R.Endermann,Angew.Chem.2000,112,3981−3986,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2000,39,3823‐3828,W.G.Lewis,L.G.Green,F.Grynszpan,Z.Radic,P.R.Carlier,P.Taylor,M.G.Finn,K.B.Sharpless,Angew.Chem.2002,114,1095−1099,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2002,41,1053−1057,V.D.Bock,H.Hiemstra,J.H.van Maarseveen,Eur.J.Org.Chem.2005,51‐68,V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee,S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005,117,118‐122,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005,44,116‐120,およびA.Krasinski,Z.Radic,R.Manetsch,J.Raushel,P.Taylor,K.B.Sharpless,H.C.Kolb,J.Am.Chem.Soc.2005,127,6686−6692。
【0058】
結果生じるリガンドは、個々のフラグメントよりも標的に対する高い結合親和性を示し、ヒットした識別は、LS/MSなどの分析機器を利用してプロダクト形成を検知するのと同じくらい単純である。これについては、W.G.Lewis,L.G.Green,F.Grynszpan,Z.Radic,P.R.Carlier,P.Taylor,M.G.Finn,K.B.Sharpless,Angew.Chem.2002,114,1095−1099,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2002,41,1053−1057,および、V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee、S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005、117、118−122、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005、44、116−120を参照のこと。bCAIIクリック化学システムを実験において利用した。これについては、V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee、S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005、117、118−122、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005、44、116−120を参照のこと。アセチレンのベンゼンスルホンアミド(1)(Kd=37±6nM)を反応足場(reactive scaffold)(アンカー分子(anchor molecule))として利用して20の相補アジド(complementary azides)2−21のライブラリをスクリーニングするのに利用した。制御実験においては、活性部位阻害剤である、イソクサゾールアミド(ethoxazolamide)(22)(Kd=0.15±0.03nM)を利用してインサイチュークリック化学反応を抑制した。
【0059】
このマイクロ流体工学に基づくインサイチュークリック化学スクリーニングのための適切な反応条件を決定すべく、アセチレン1およびアジド2の間のクリック反応を異なる反応条件下で行い、酵素および試薬の最小利用かつ、ヒットした識別用に信頼性かつ再生可能なLC/MS信号の生成を保証した。これについては、V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee、S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005、117、118−122、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005、44、116−120を参照のこと。この論文に記載のマイクロ流体スクリーニングプラットフォームは、各反応について、19μgの酵素、2.4nmolのアセチレン、および3.6nmolのアジドに相当する約4μLの反応容積を、従来の方法で利用される100μLの反応混合物(94μgの酵素、6nmolのアセチレン、および40nmolのアジドを含む)の代替として利用する。概して、2倍から12倍のサンプルエコノミーが達成された。
【0060】
以下の種類の32個の個々の反応混合物を用意して10個の異なる二成分のアジド/アセチレンの組み合わせのインサイチュークリック化学スクリーニングを平行して行った:(i)bCAIIが存在する際に10個のインサイチュークリック化学反応をアセチレン1および10のアジドの間で行う、(ii)インサイチュークリック化学反応の活性部位特異性を確かめるために阻害剤22が存在する際に(i)同様に行われる10個の制御反応、(iii)酵素―独立反応(enzyme-independent reactions)を監視すべくbCAIIの不在時に(i)同様に行われる10個の熱クリック化学反応、および(iv)bCAIIのみを含むブランクのPBS溶液とチャネル洗浄に利用されるPBS溶液。これらの条件下においては、20個のアジド2−21全体のライブラリが二つのバッチでスクリーニングされる、つまり、まずアジド2−11で、そして12−21で、である。PDMSに基づくマイクロチャネルを傷つけたり埋め込みバルブおよびポンプの性能に影響したりしないので、DMSO/EtOH混合物(VDMSO/VEtOH=1:4)を全ての試薬の溶剤として利用した。これについては、J.N.Lee,C.Park,G.M.Whitesides,Anal.Chem.2003,75,6544−6554を参照のこと。各インサイチュークリック化学反応は、アセチレン1(30mM、2.4nmol)の80nLの溶液、アジド2−21(30mM、3.6nmol)の120nL溶液、およびbCAII(5mg/mLm、19μg)の3.8μLのPBS溶液を利用した。制御反応のためには、これに阻害剤22(100mM、4nmol)の40nL溶液を追加した。熱反応においては、bCAII溶液がブランクのPBSに置き換えられた。
結果
【0061】
参照目的で、1,4二置換(反)トリアゾールを、対応するCuI触媒反応とは別途に用意した。これについては、V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee,S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005,117,118−122,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005,44,116-120を参照のこと。LC/MS分析は、20反応の組み合わせのうち10が、bCAIIが存在する際にトリアゾールプロダクトを生じたことを示した。これに比べて、20個のインサイチュークリック化学反応を96個のウェルマイクロタイタープレートにおいて行った。図4は、新たなマイクロ流体工学形式および従来のシステムにおいてアセチレン1および二十個のアジド(2−21)のインサイチュークリック化学スクリーニングを行った結果を示しており、これは、とてもよく似た結果を示している(96個のウェルマイクロタイタープレートで行われた反応結果は括弧で示す)。これについては、V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee、S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005,117,118−122,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005,44,116−120を参照のこと。図5は、アセチレン1およびアジド2およびその制御研究におけるスクリーニング反応について得られた肯定的にヒットした識別のLC/MS分析を示し、図6は、アセチレン1およびアジド3における否定的にヒットした識別について得られたものを示す。
【0062】
ここで引用する全ての文献は、各々を個々に組み込むように参照として組み込まれる。本明細書で図示および説明された実施形態は、当業者に対して発明者が知っている範囲内で発明をなす、および利用する最良の方法を教示することを意図している。図面は原寸に比例していない。発明の実施形態を記載する際に、特定の用語を用いて明瞭化に努めた。しかし、発明はこれら選択された特定の用語に限定されることを意図しない。明細書にあるいかなるものも、本発明の範囲を限定するものとして捉えられるべきではない。提示された全ての例は表示目的であって限定的ではない。本発明の上述の実施形態には、上述の教示に鑑みれば、本発明を逸脱しない範囲の変形例あるいは変更例が考えられることが、当業者には明らかである。従って、請求項およびその均等物の範囲内で、発明は具体的に記載された以外の方法でも実施されうる。
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年3月2日提出の米国仮出願番号第60/778,430の優先権を主張しており、その内容の全体を参照としてここに組み込む。
【0002】
本発明は、マイクロ流体デバイスおよび方法、より具体的には、平行反応用のマイクロ流体デバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体デバイスは、マクロリアクタに比して、試薬消費の削減、高い表面積対容積率、および質量および熱伝導について制御が向上する、などの様々な利点を提供しうる。これについては、K.Jahnisch,V.Hessel,H.Lowe,M.Baerns,Angew.Chem. 2004,116,410‐451,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2004,43,406‐446,P.Watts,S.J.Haswell,Chem.Soc.Rev.2005,34,235‐246,およびG.Jas,A.Kirschning,Chem.−Eur.J.2003,9,5708−5723を参照のこと。高反応性中間体に関する有機反応は、マイクロリアクタなどのマイクロ流体デバイスで起こる反応に、従来のマクロ合成法より多くの選択性および特異性を与える。これについては、T.Kawaguchi,H.Miyata,K.Ataka,K.Mae,J.Yoshida,Angew.Chem.2005,117,2465‐2468,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005,44,2413‐2416,およびD.M.Ratner,E.R.Murphy,M.Jhunjhunwala,D.A.Snyder,K.F.Jensen,P.H.Seeberger,Chem.Commun.2005,578‐580を参照のこと。マイクロ流体デバイスをコンピュータ制御システムと統合すると複雑な化学および生物学プロセスを自動で行うことができるようになる。
【0004】
しかし、過去のマイクロ流体デバイスは、多段階合成を実行する能力に限界があるものが多かった。多段階合成の個々の段階には、溶媒、試薬、および条件の変更が要求されうる。
【0005】
さらには、過去のマイクロ流体デバイスでは、平行合成ができない場合が多かった。平行合成においては、異なる試薬の組み合わせを利用して類似した種類の反応を行いうる。例えば、生物学あるいは生物化学研究において、研究者は、多くの異なる反応を同時に行う必要がある場合がある。例えば、反応の総数のうちの、望ましいプロダクトを生じるあるいは肯定的な結果を示す割合は低いかもしれないので、多くの数の反応を行う必要がある。このような研究には、例えば、薬効のために多くの化合物をスクリーニングすることが含まれる。多くのスクリーニング数を連続してこなすと、例えば、研究者あるいは技術者費用が非常に高価になってしまう。さらには、培養あるいは反応時間が長い場合、研究が長時間にわたる場合もある。多くの反応を平行して従来のマクロ研究所の機器を利用して行うと、必要な装置、全体コスト、あるいは必要な試薬の量などにおいて非常に高価になってしまう。
【0006】
マイクロ流体デバイスに特有の小さな長さスケールは幾らもの利点を提供するが、小さな長さスケールは操作によっては課題を生じる。例えば、過去のマイクロ流体デバイスの操作に特有の小さな長さスケールおよび関連する低流体速度により、デバイスを流れる流体速度のレイノルズ数が低くなる。つまり、流体の流れがしばしば層流型(laminar regime)であった。乱流を起こせないので、混合が不良に終わり、流体が不均一になるので、好ましくない結果に終わったり、データ解釈を複雑にしたりしていた。
【0007】
従って、多段階合成を平行して行うことができ、個々の段階を別々に行うことができ、流体の組み合わせにおいても試薬がきちんと混合されるマイクロ流体デバイスの必要性が叫ばれている。
【発明の開示】
【0008】
明細書、図面、および例を考慮することで、さらなる目的および利点が明らかになる。
【0009】
本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイスは、複数の流体入力マイクロチャネルと選択的に流体接続される複数の流体源と、複数の流体入力マイクロチャネルと流体接続される混合部と、混合部と各々選択的に流体接続される、複数のマイクロベセルと、を含む。混合部が、複数の流体入力マイクロチャネルから複数の流体の組み合わせを受け取り、対応する複数の混合流体を複数のマイクロベセルの各々に動作中に出力することで、マイクロ流体デバイスは平行して複数の化学反応を起こす。
【0010】
本発明の一実施形態による、平行して複数の化学反応を行う方法は、少なくとも二つの試薬の量を独立して選択することと、テスト混合物を形成すべく試薬を混合することと、マイクロベセルを選択することと、選択されたマイクロベセルにテスト混合物を搬送することと、少なくとも二つの試薬の量を独立して選択することと、試薬を混合することと、マイクロベセルを選択することと、テスト混合物を搬送することとを、所定の数のマイクロベセルが選択されるまで繰り返すことと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイスの概略図である。
【0012】
【図2A】本発明の一実施形態によるインサイチュークリック化学ライブラリの平行スクリーニングに利用されるマイクロ流体デバイスの概略図である。
【0013】
【図2B】本発明の一実施形態による実際のデバイスの光学画像である。
【0014】
【図3A−3D】本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイスに個々のインサイチュークリック化学混合物を用意する四つの連続的段階を示す概略図である。
【0015】
【図4】本発明の一実施形態によるマクロ流体デバイスおよび(カッコ内)96ウェルのマイクロタイタープレートを利用して、アセチレン1およびアジド2‐21のインサイチュークリック化学スクリーニング結果の概要である。
【0016】
【図5】アセチレン1およびアジド2のインサイチュークリック化学反応のLC/MS分析の結果を示す。a)Cu触媒反応により得られたトリアゾールプロダクト、b)bCAII(ウシカルボニックアンヒドラーゼII)が存在する際に行われるマイクロチップに基づく反応、c)bCAIIおよび阻害剤22両方が存在する際に行われるマイクロチップに基づく反応、およびd)bCAIIが不在の際に行われるマイクロチップに基づく反応、e)bCAIIが存在する際に96ウェルのマイクロタイタープレートに行われる反応。
【0017】
【図6】アセチレン1およびアジド3のインサイチュークリック化学反応のLC/MS分析の結果を示す。a)トリアゾールプロダクト、b)bCAIIが存在する際に行われるマイクロチップに基づく反応、c)bCAIIおよび阻害剤22両方が存在する際に行われるマイクロチップに基づく反応、およびd)bCAIIが不在の際に行われるマイクロチップに基づく反応。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の幾らかの実施形態を以下に詳述する。実施形態詳述にあたり、明確化のために特定の用語を利用する。しかし、選択された特定の用語に本発明を限定する意図はない。当業者であれば、本発明の精神および範囲を逸脱せずに他の均等物の利用、および他の方法の展開が可能であることを理解するであろう。ここで引用する全ての文献は、各々を個々に組み込むように参照として組み込まれる。
【0019】
図1は、本発明によるマイクロ流体デバイスの一実施形態の概略を示す。デバイスは、ソフトリソグラフィ技法により実施しうる。例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)層を表面に適用することが可能である。この層をレジストで覆い、光パターンに曝して、エッチングを行うことで、所定のパターンの流体チャネルを作製しうる。覆うこと、曝すこと、およびエッチングという段階を連続して行うことで、幾らかの多層上に流体チャネルを形成することができる。例えば、流体チャネルの第一段は、所望の化合物の合成を意図する試薬の流れを誘導するよう設計される。流体チャネルの第二段は、第一段で流れる試薬を搬送および制御するのに利用されるポンプおよび/またはバルブを起動するのに利用される制御ラインに圧力をかけるように設計される。第一段および第二段は、PDMSの薄膜で分離されうる。分離層は、第一段の試薬を第二段の制御ラインの流体から隔離する機能を有する。さらには、PDMSの分離層は、ポンプおよびバルブといったマイクロスケールデバイスの部材として機能しうる。例えば、第二段の制御ラインにかけられる圧力は、第一段の流体チャネル上の分離層を歪ませ、流体チャネルの試薬の流れをブロックすることがある、つまり分離層がバルブとして機能することがある。
【0020】
一実施形態においては、図1に示すマイクロ流体デバイス100は二以上の流体源(101a、101b、101c、101d)を含む。各流体源(101a、101b、101c、101d)は、異なる化学試薬を含みうる。マイクロ流体デバイス100は二以上の流体入力マイクロチャネル(102a、102b)を含む。マイクロ流体デバイス100は二つの入力マイクロチャネル(102a、102b)のみに限定されない。例えば、三以上の流体入力マイクロチャネルを含みうる。バルブ(170a、170b、170c、170d)は、流体源(101a、101b、101c、101d)から流体入力マイクロチャネル(102a、102b)への流体の流れを制御する。
【0021】
一実施形態においては、流体入力マイクロチャネル(102a、102b)は、定量ポンプ181を含む。定量ポンプ181は上流ポンプバルブ(180a、180b)、中流ポンプバルブ(182a、182b)、および下流ポンプバルブ(184a、184b)を含む。流体入力マイクロチャネル102aに関連付けられる上流ポンプバルブ180aは、上流制御ライン186により他の流体入力マイクロチャネル102bに関連付けられる他の上流ポンプバルブ180bに接続され、中流ポンプバルブ182aは、中流制御ライン188により他の中流ポンプバルブ182bに接続され、下流ポンプバルブ184aは、下流制御ライン190により他の下流ポンプバルブ184bに接続される。
【0022】
マイクロ流体デバイス100は、二以上の流体入力マイクロチャネル(102a、102b)に流体的に接続された混合部191を含みうる。
【0023】
一実施形態においては、混合部191は回転混合器106を含む。回転混合器106は流体入力マイクロチャネル(102a、102b)に流体的に接続される。回転混合器106は、回転混合ポンプを含む。本実施形態の回転混合ポンプは少なくとも三つのポンプバルブを含む。回転混合ポンプは、第一のポンプバルブ192、第二のポンプバルブ194、および第三のポンプバルブ196を含む。回転混合器106は回転混合出力マイクロチャネル109に流体的に接続される。回転混合出力マイクロチャネル109は回転混合出力バルブ108およびパージ入口バルブ110を含みうる。
【0024】
回転混合器106は、約5nL(ナノリットル)〜約12500nLの範囲の容積を持ち得、約25nL〜約2500nLの範囲の容積を持ち得、約250nLの容積を持ちうる。
【0025】
一実施形態においては、混合部は、カオス混合器112を含む。カオス混合器112は、カオス的移流を起こしてチャネル内を流れる流体を混合する少なくとも一つの突起を有する流体チャネル113を含む。カオス混合器112は、カオス混合出力マイクロチャネル115に流体的に接続される。カオス混合出力マイクロチャネル115は、カオス混合出力バルブ116およびパージ出口バルブ114を含む。
【0026】
一実施形態においては、回転混合出力マイクロチャネル109はカオス混合器112に流体的に接続される。
【0027】
マイクロ流体デバイス100は、例えばマイクロべセル(microvessel)124xなどの複数のマイクロべセル124を含み得、各マイクロべセル124は混合部191と選択的に流体接続される。
【0028】
一実施形態においては、マイクロ流体デバイス100は、マイクロ流体マルチプレクサ122を含む。マイクロ流体マルチプレクサ122は混合部191に流体的に接続され、複数のマイクロベセル124に流体的に接続される。マイクロ流体マルチプレクサ122は各マイクロべセル124を混合部191と選択的に流体接続する役目を果たす。
【0029】
一実施形態においては、マイクロ流体マルチプレクサ122は、例えばマルチプレクサマイクロチャネル118xなどの、二以上のマルチプレクサマイクロチャネル118を含む。各マルチプレクサマイクロチャネル118は一つのマイクロべセル124と流体的に接続し、各マルチプレクサマイクロチャネル118は、例えばマルチプレクサバルブ132xなどの、少なくとも一つのマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)を含む。マイクロ流体マルチプレクサ122は、マルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)に関連して複数のマルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)を含む。マルチプレクサマイクロチャネル118の数は、マルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)の数に2を加えた数以上である。
【0030】
一実施形態においては、マイクロ流体マルチプレクサ122内の制御ライン(138、140、142、158、160、162)の数(NCL)は、偶数であって6以上である。マルチプレクサマイクロチャネル118の数は2NCL/2以下である。
【0031】
一実施形態においては、各マルチプレクサマイクロチャネル118はNCL/2個のマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)を含み、各マルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)は、マルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)のいずれかに接続される。各制御ラインは2(NCL/2−1)個のマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)に接続され、ここで各マルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)は別個のマルチプレクサマイクロチャネル118上にある。あるマルチプレクサマイクロチャネル118上のマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)が接続されるマルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)一式は、別のマイクロチャネル118上のマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)が接続されるマルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)一式とは同じではない。
【0032】
マイクロ流体マルチプレクサ122のマルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)は、圧力を有する流体を含みうる。圧力を流体にかけることで、マルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)が接続されるマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)の状態が変化しうる。例えば、圧力をかけることで、マルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)の状態は開から閉へと変化して、流体がマイクロチャネル118内を通らないようにしうる。別の例としては、圧力を解除すると、マルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)の状態が閉から開へと変化して、流体がマイクロチャネル118内を通るようにしうる。マイクロ流体マルチプレクサ122のマルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)は、流体として液体を含み得、制御ラインは、液体制御ライン(hydraulic control line)と称されうる。マイクロ流体マルチプレクサの制御ラインは流体として気体を含み得、制御ラインは気体制御ライン(pneumatic control line)と称されうる。
【0033】
本発明による方法の一実施形態は以下を含む。ユーザ(あるいはコンピュータなどの制御デバイス)は、二以上の試薬の量を独立して選択しうる。ユーザは、三以上の試薬の量を独立して選択しうる。マイクロ流体デバイス100の混合部は、選択された試薬を混合してテスト混合物を形成する。その後、ユーザ(あるいはコンピュータなどの制御部)は、テスト混合物が移されるマイクロベセル124を選択する。マイクロ流体デバイス100は選択されたマイクロベセル124へテスト混合物を搬送する。独立して少なくとも二つの試薬の量を選択する段階、試薬を混合する段階、マイクロベセル124を選択する段階、およびテスト混合物を搬送する段階は、所定の数のマイクロベセル124が選択されるまで繰り返してよい。
【0034】
テスト混合物は、約0.1μLから約80μLの容積を持ち得、約1μLから約16μLの容積を持ち得、約4μLの容積を持ち得る。
【0035】
ユーザは各選択されたマイクロベセル124内のテスト混合物を所定の時間の間反応させる。ユーザは選択されたマイクロベセル124からテスト混合物を抽出して、抽出されたテスト混合物を分析することができる。
【0036】
一実施形態においては、選択されたマイクロベセル124にテスト混合物を搬送することは以下を含む。ユーザ(あるいはコンピュータなどの制御部)は、選択されたマイクロベセルと流体接続されたマイクロチャネル118を識別する。ユーザは、識別されたマイクロチャネルに関連付けられたマルチプレクサバルブ(132、134、136、152、154、156)を識別する。ユーザは、識別されたマルチプレクサバルブと関連付けられたマルチプレクサ制御ライン(138、140、142、158、160、162)を識別する。ユーザはその後、識別されたマルチプレクサ制御ラインの状態を設定する。例えば、ユーザは、識別されたマルチプレクサ制御ラインの行動を止め、全ての識別されたマルチプレクサバルブを開状態にしてよい。識別されたマルチプレクサ制御ラインの行動を止めることは、識別されたマルチプレクサ制御ライン内の流体に加えられる圧力を解除することを含みうる。ユーザは、その後、他の、識別されていないマルチプレクサ制御ラインの状態を設定することもできる。例えば、ユーザは、他の、識別されていないマルチプレクサ制御ラインを起動することで全ての識別されていないマルチプレクサバルブを閉状態にしてもよい。識別されていないマルチプレクサ制御ラインを起動することは、識別されていないマルチプレクサ制御ライン内の流体に圧力を加える、または圧力を維持することを含みうる。
【0037】
一実施形態においては、ユーザ(あるいはコンピュータなどの制御部)は、識別されたマルチプレクサ制御ラインの行動を止め、識別されていないマルチプレクサ制御ラインを起動することで、開状態にある識別されていないマイクロチャネルと関連付けられる全てのマルチプレクサバルブを、いずれの識別されていないマイクロチャネルもが有することのないようにする。
【0038】
一実施形態においては、選択されたマイクロベセル124にテスト混合物を搬送することは、テスト混合物に圧力をかけることを含みうる。選択されたマイクロベセル124にテスト混合物を搬送することは、テスト混合物と接触する流体に圧力をかけることを含みうる。
【0039】
一実施形態においては、入力試薬を混合してテスト混合物を形成することは、回転混合器106のバルブを所定の順序で開閉して、蠕動運動により入力試薬を時計回りあるいは反時計回りに駆動することを含みうる。例えば、ユーザ(あるいはコンピュータなどの制御部)は、(a)回転混合器106の第一のバルブ192を閉状態にして、第二のバルブ194および第三のバルブ196を開状態にして、(b)回転混合器106の第二のバルブ194を閉状態にして第一のバルブ192から流体を離し、(c)回転混合器106の第三のバルブ196を閉状態にして、第一のバルブ192および第二のバルブ194を開状態にしてよい。ユーザ(あるいはコンピュータなどの制御部)は、所望である間、例えば、テスト混合物が所定の均一な長さスケールを有するまで、段階(a)(b)(c)を繰り返すことができる。
【0040】
所定の均一な長さスケールは、二つの流体キューブ(two cubes of fluid)を考慮することで生まれる。流体の容積の各キューブの位置に関わらず、角の長さの減少によりこの所定のパーセンテージにわたる平均濃度の変化の増加を生じるであろう、一キューブ内の各試薬の平均濃度が他のキューブ内の試薬の平均濃度と所定のパーセンテージ(例えば10%)以内で異なるキューブの角の長さは、流体の均一な長さスケールである。
【0041】
パージ入口バルブ110を開き、圧力をかけてバルク流体をパージ入口バルブ110を経由させカオス混合器112に向けて駆動することで、テスト混合物はカオス混合器112を経由してマイクロ流体マルチプレクサ122に搬送される。バルク流体はテスト混合物に圧力をかけ、カオス混合器を介してテスト混合物を駆動することができる。バルク流体はテスト混合物に圧力をかけ、テスト混合物をへ、および、マイクロ流体マルチプレクサ122を通るよう駆動することができる。
【0042】
上述の実施形態は、液体および/または気体バルブを有するが、本発明の幅広いコンセプトはそのような構造に限られない。さらには、本発明によるマイクロ流体デバイスは、上述の実施形態に記載されたPDMS構造に限られない。
【0043】
上述の実施形態に示したようなマイクロ流体デバイスは、分析機器と統合することもできる。例えば、マイクロ流体デバイスからの反応生成物はLC/MS(liquid chromatography/mass spectrometry)機器などの分析機器に向けることができる。例えば、W.G.Lewis,L.G.Green,F.Grynszpan,Z.Radic,P.R.Carlier,P.Taylor,M.G.Finn,K.B.Sharpless,Angew.Chem.2002,114,1095−1099,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2002,41,1053−1057,V.D.Bock,H.Hiemstra,J.H.van Maarseveen,Eur.J.Org.Chem.2005,51‐68,およびV.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee,S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005,117,118‐122,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005,44,116‐120参照のこと。統合されたマイクロ流体工学は、平行化および自動化を可能とするので、薬効のある化合物の識別などの化合物のスクリーニング用などに、優れた実験的プラットフォームを提供することができる。統合されたマイクロ流体工学に関する小型化により、標的たんぱく質および高価な化合物などの試薬の節約利用が可能となる。
例
【0044】
本発明のマイクロ流体デバイスの概略図を図2Aに示す。このマイクロ流体デバイスの写真を図2Bに示す。このマイクロ流体デバイスにより、32個の異なる試薬混合物が同時に、つまり平行して反応することができる。
【0045】
本例のマイクロ流体デバイスは、約4μLの容積を有するテスト混合物を生成することができる。例えば、インサイチュークリック化学反応を、このようなテスト混合物とともに調査することができる。例えば、V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee,S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb, Angew.Chem.2005,117,118‐122,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005,44,116‐120参照のこと。たとえば、4μLの容積のテスト混合物は19μgの酵素、2.4nmolのアセチレン化合物、および3.6nmolのアジド化合物を含みうる。
【0046】
これに比して、従来の方法によると、インサイチュークリック化学反応物は100μLの容積を持ち、94μgの酵素、6nmolのアセチレン、および40nmolのアジドを含む。これは、本発明によるマイクロ流体デバイスが、従来の方法よりも少ない試薬量でよいことを示す。マイクロ流体デバイスが試薬を保護できることは、例えば、試薬が高価である場合や製造が難しい場合に、利点である。
【0047】
本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイス200(図2A、図2B)は以下を含む。全容積が約250nLであるナノリットル(nL)レベルの回転混合器206を図2Aに示す。関連する流体入力マイクロチャネル202、ポンプバルブ(280、282、284)、バルブ270、および流体源201とともに、円形のループが、ナノリットルの量の試薬を、選択的にサンプル、正確には計測および混合することができる。これについては、M.A.Unger,H.P.Chou,T.Thorsen,A.Sherer,S.R.Quake,Science2000,288,113‐116を参照のこと。例えば、行われるインサイチュークリック化学実験においては、80nLのアセチレン化合物(アセチレン1)、120nLのアジド化合物(アジド1‐11、12‐21)、および40nLまでの阻害剤(阻害剤22)を各テスト混合物に混合した。
【0048】
回転混合器206からのナノリットル量の混合試薬を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH7.4)のμL量のbCAII(ウシカルボニックアンヒドラーゼII)溶液に混ぜるための、マイクロリットル(μL)レベルのカオス混合器212を図2Aに示す。A.D.Stroock,S.K.W.Dertinger,A.Ajdari,I.Mezic,H.A.Stone,G.M.Whitesides,Science2002,295,647‐651参照のこと。カオス的移流を起こし比較的短いマイクロチャネル内で混合を促した埋め込みマイクロパターンを有する、つまり、突起を有する37.8mmの長さのマイクロチャネル213内に、均一な反応混合物がカオス混合により生成された。A.D.Stroock,S.K.W.Dertinger,A.Ajdari,I.Mezic,H.A.Stone,G.M.Whitesides,Science2002,295,647‐651参照のこと。マイクロパターンは、効率的な混合を保証すべく理論が要求するものよりも20%長かった。200μmの幅のマイクロチャネルで効率的に混合するには31.5mmの長さのマイクロパターンが要求される。この長さは、A.D.Stroock,S.K.W.Dertinger,A.Ajdari,I.Mezic,H.A.Stone,G.M.Whitesides,Science2002,295,647‐651に記載の理論モデルにより得られた。
【0049】
マイクロ流体マルチプレクサ222は、各テスト混合物を、32個のテスト混合物保存用の個々にアドレス可能なマイクロベセルのいずれかに誘導する働きをする。T.Thorsen,S.J.Maerkl,S.R.Quake,Science2002,298,580‐584参照のこと。マイクロベセルは、直径1.3mmおよび深さ6mmの(故に約8μLの容積の)円筒ウェルの形状を有するていた。
【0050】
コンピュータ制御インタフェースを利用して、操作サイクルの多段階をプログラムして各テスト混合物を準備する。三十二のこのような操作サイクルは順々にコンパイルされ、32個のテスト混合物(各マイクロベセルにつき一つ)を作動中のマイクロ流体デバイス内に生成する。
操作サイクル
【0051】
各テスト混合物をマイクロ流体デバイス300内に生成する方法を図3A〜図3Dに示す。図3Aは、定量ポンプ380、382、384を利用してアジド2、アセチレン1、および阻害剤22を、約10nL/秒の流量で回転混合器306に順に導入することを示す。バルブ370の適切な構成を示す(閉バルブがXとして示される)。その後、定量ポンプ380、382、384を利用して、PBS溶液を導入して、回転混合器306の円形のループを完全に充たす。
【0052】
図3Bは、混合ポンプを利用してnLスケール回転混合器306(循環率がca18サイクル/分)に、試薬溶液を15秒間混入することを示す。混合ポンプは、上述のように、回転して開閉するバルブ392、394、396からなり、回転混合器306のループの周りに試薬溶液の蠕動ポンプ運動を引き起こした。
【0053】
図3Cは、次に、PBS溶液を回転混合器306に約25nL/秒の流量で導入することで、回転混合器306内の試薬溶液が、回転混合器306からカオス混合器312へと追い出されたことを示す。同時に、全3.8μLのbCAII溶液が約400nL/秒の流量でカオス混合器312に導入された。テスト混合物は故に、カオス混合器312内を流れ、その後マイクロ流体マルチプレクサ322へと流れた。マルチプレクサ制御ライン338、340、342、344、および346は、行動を止められ、マイクロチャネル318xに関する全てのマルチプレクサバルブが開状態になり、テスト混合物がマイクロチャネル318xを介してマイクロチャネル318x(不図示)の端部に流体的に接続されたマイクロベセルへと流れるようにされた。他のマルチプレクサ制御ライン358、360、362、364、および366は全て起動されてマルチプレクサバルブを閉じ、関連するマルチプレクサバルブが全て開いているマイクロチャネルが他に一つもないようにして、テスト混合物が他のマイクロベセル内に流れないようにする。
【0054】
図3Dは、テスト混合物が図3A〜図3Cに示され上述された段階で経る、回転混合器306、カオス混合器312、およびマイクロ流体マルチプレクサ322のチャネルが、その後2μLのPBS溶液を導入して気流パージを導入することで洗浄されたことを示す。これは、操作サイクルと後続の操作サイクルの間の二次汚染を防ぐ。
【0055】
図3A〜図3Dに示され上述された操作サイクルは繰り返されたが、それは、異なるマイクロベセルを計32回選択すべく、順に異なるマルチプレクサ制御ライン338、340、342、344、346、358、360、362、364、および366の設定で行われた。各マイクロベセルを異なるテスト混合物で充たすべく32の操作サイクルを完了するには、約30分(約57秒/サイクル)かかる。32マイクロベセル各々が充たされた後、マイクロ流体デバイス300が湿度制御されたインキュベータに摂氏37度で40時間配置され、マイクロベセル内のテスト混合物の反応を完成させた。故に、32の異なる反応を同時に、しかも32の反応を互いに順番に行ったのと比べてずっと短い時間で行うことができた。
【0056】
インキュベーションの後、反応したテスト混合物はマイクロベセルから収集された。各マイクロベセルはMeOH(5μL×3)で洗浄され、マイクロベセル用の洗浄液がマイクロベセル内で元の反応したテスト混合物と混合された。LC/MS分析が各テスト混合物に対して行われた。
化学
【0057】
本発明によりマイクロ流体デバイスとともに調べたインサイチュークリック化学は、標的の結合ポケット内の相補アジドおよびアセチレン構成要素を1,3−双極性環状付加によりアセンブルすることで、高親和性たんぱく質リガンドを発見する標的誘導合成法(target-guided synthesis method)である。これについては以下を参照のこと。D.Rideout,Science1986,233,561−563,I.Huc,J.M.Lehn,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1997,94,2106‐2110,J.M.Lehn,A.V.Eliseev,Science2001,291,2331‐2332,O.Ramstrom,J.M.Lehn,Nat.Rev.Drug Discovery2002,1,26‐36,D.A.Erlanson,A.C.Braisted,D.R.Raphael,M.Randal,R.M.Stroud,E.M.Gordon,J.A.Wells,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2000,97,9367−9372,K.C.Nicolaou,R.Hughes,S.Y.Cho,N.Wissinger,C.Smethurst,H.Labischinski,R.Endermann,Angew.Chem.2000,112,3981−3986,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2000,39,3823‐3828,W.G.Lewis,L.G.Green,F.Grynszpan,Z.Radic,P.R.Carlier,P.Taylor,M.G.Finn,K.B.Sharpless,Angew.Chem.2002,114,1095−1099,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2002,41,1053−1057,V.D.Bock,H.Hiemstra,J.H.van Maarseveen,Eur.J.Org.Chem.2005,51‐68,V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee,S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005,117,118‐122,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005,44,116‐120,およびA.Krasinski,Z.Radic,R.Manetsch,J.Raushel,P.Taylor,K.B.Sharpless,H.C.Kolb,J.Am.Chem.Soc.2005,127,6686−6692。
【0058】
結果生じるリガンドは、個々のフラグメントよりも標的に対する高い結合親和性を示し、ヒットした識別は、LS/MSなどの分析機器を利用してプロダクト形成を検知するのと同じくらい単純である。これについては、W.G.Lewis,L.G.Green,F.Grynszpan,Z.Radic,P.R.Carlier,P.Taylor,M.G.Finn,K.B.Sharpless,Angew.Chem.2002,114,1095−1099,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2002,41,1053−1057,および、V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee、S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005、117、118−122、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005、44、116−120を参照のこと。bCAIIクリック化学システムを実験において利用した。これについては、V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee、S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005、117、118−122、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005、44、116−120を参照のこと。アセチレンのベンゼンスルホンアミド(1)(Kd=37±6nM)を反応足場(reactive scaffold)(アンカー分子(anchor molecule))として利用して20の相補アジド(complementary azides)2−21のライブラリをスクリーニングするのに利用した。制御実験においては、活性部位阻害剤である、イソクサゾールアミド(ethoxazolamide)(22)(Kd=0.15±0.03nM)を利用してインサイチュークリック化学反応を抑制した。
【0059】
このマイクロ流体工学に基づくインサイチュークリック化学スクリーニングのための適切な反応条件を決定すべく、アセチレン1およびアジド2の間のクリック反応を異なる反応条件下で行い、酵素および試薬の最小利用かつ、ヒットした識別用に信頼性かつ再生可能なLC/MS信号の生成を保証した。これについては、V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee、S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005、117、118−122、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005、44、116−120を参照のこと。この論文に記載のマイクロ流体スクリーニングプラットフォームは、各反応について、19μgの酵素、2.4nmolのアセチレン、および3.6nmolのアジドに相当する約4μLの反応容積を、従来の方法で利用される100μLの反応混合物(94μgの酵素、6nmolのアセチレン、および40nmolのアジドを含む)の代替として利用する。概して、2倍から12倍のサンプルエコノミーが達成された。
【0060】
以下の種類の32個の個々の反応混合物を用意して10個の異なる二成分のアジド/アセチレンの組み合わせのインサイチュークリック化学スクリーニングを平行して行った:(i)bCAIIが存在する際に10個のインサイチュークリック化学反応をアセチレン1および10のアジドの間で行う、(ii)インサイチュークリック化学反応の活性部位特異性を確かめるために阻害剤22が存在する際に(i)同様に行われる10個の制御反応、(iii)酵素―独立反応(enzyme-independent reactions)を監視すべくbCAIIの不在時に(i)同様に行われる10個の熱クリック化学反応、および(iv)bCAIIのみを含むブランクのPBS溶液とチャネル洗浄に利用されるPBS溶液。これらの条件下においては、20個のアジド2−21全体のライブラリが二つのバッチでスクリーニングされる、つまり、まずアジド2−11で、そして12−21で、である。PDMSに基づくマイクロチャネルを傷つけたり埋め込みバルブおよびポンプの性能に影響したりしないので、DMSO/EtOH混合物(VDMSO/VEtOH=1:4)を全ての試薬の溶剤として利用した。これについては、J.N.Lee,C.Park,G.M.Whitesides,Anal.Chem.2003,75,6544−6554を参照のこと。各インサイチュークリック化学反応は、アセチレン1(30mM、2.4nmol)の80nLの溶液、アジド2−21(30mM、3.6nmol)の120nL溶液、およびbCAII(5mg/mLm、19μg)の3.8μLのPBS溶液を利用した。制御反応のためには、これに阻害剤22(100mM、4nmol)の40nL溶液を追加した。熱反応においては、bCAII溶液がブランクのPBSに置き換えられた。
結果
【0061】
参照目的で、1,4二置換(反)トリアゾールを、対応するCuI触媒反応とは別途に用意した。これについては、V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee,S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005,117,118−122,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005,44,116-120を参照のこと。LC/MS分析は、20反応の組み合わせのうち10が、bCAIIが存在する際にトリアゾールプロダクトを生じたことを示した。これに比べて、20個のインサイチュークリック化学反応を96個のウェルマイクロタイタープレートにおいて行った。図4は、新たなマイクロ流体工学形式および従来のシステムにおいてアセチレン1および二十個のアジド(2−21)のインサイチュークリック化学スクリーニングを行った結果を示しており、これは、とてもよく似た結果を示している(96個のウェルマイクロタイタープレートで行われた反応結果は括弧で示す)。これについては、V.P.Mocharla,B.Colasson,L.V.Lee、S.Roper,K.B.Sharpless,C.H.Wong,H.C.Kolb,Angew.Chem.2005,117,118−122,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2005,44,116−120を参照のこと。図5は、アセチレン1およびアジド2およびその制御研究におけるスクリーニング反応について得られた肯定的にヒットした識別のLC/MS分析を示し、図6は、アセチレン1およびアジド3における否定的にヒットした識別について得られたものを示す。
【0062】
ここで引用する全ての文献は、各々を個々に組み込むように参照として組み込まれる。本明細書で図示および説明された実施形態は、当業者に対して発明者が知っている範囲内で発明をなす、および利用する最良の方法を教示することを意図している。図面は原寸に比例していない。発明の実施形態を記載する際に、特定の用語を用いて明瞭化に努めた。しかし、発明はこれら選択された特定の用語に限定されることを意図しない。明細書にあるいかなるものも、本発明の範囲を限定するものとして捉えられるべきではない。提示された全ての例は表示目的であって限定的ではない。本発明の上述の実施形態には、上述の教示に鑑みれば、本発明を逸脱しない範囲の変形例あるいは変更例が考えられることが、当業者には明らかである。従って、請求項およびその均等物の範囲内で、発明は具体的に記載された以外の方法でも実施されうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイスであって、
複数の流体入力マイクロチャネルと選択的に流体接続される複数の流体源と、
前記複数の流体入力マイクロチャネルと流体接続される混合部と、
前記混合部と各々選択的に流体接続される、複数のマイクロベセルと、を含み、
前記混合部が、前記複数の流体入力マイクロチャネルから複数の流体の組み合わせを受け取り、対応する複数の混合流体を前記複数のマイクロベセルの各々に動作中に出力することで、前記マイクロ流体デバイスは平行して複数の化学反応を起こす、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
各流体入力マイクロチャネルは定量ポンプを含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
各定量ポンプは上流ポンプバルブ、中流ポンプバルブ、および下流ポンプバルブを含む、請求項2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記複数の流体入力マイクロチャネルは、少なくとも三つの流体入力マイクロチャネルを含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記混合部は回転混合器を含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記回転混合器は、回転混合ポンプを含む、請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記回転混合ポンプは、少なくとも三つのポンプバルブを含む、請求項6に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記回転混合器は、約5nL〜約12500nLの範囲にある容積を有する、請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記回転混合器は、約25nL〜約2500nLの範囲にある容積を有する、請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記回転混合器は、約250nLの容積を有する、請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記混合部は、カオス混合器を含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
前記カオス混合器は、突起を有する流体チャネルを含む、請求項11に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
前記混合部と流体接続され、前記複数のマイクロベセルと流体接続されるマイクロ流体マルチプレクサをさらに含み、
前記マイクロ流体マルチプレクサは、各マイクロベセルの前記混合部に対する前記選択的流体接続を提供する、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
平行して複数の化学反応を行う方法であって、
少なくとも二つの試薬の量を独立して選択することと、
テスト混合物を形成すべく前記試薬を混合することと、
マイクロベセルを選択することと、
前記選択されたマイクロベセルに前記テスト混合物を搬送することと、
前記少なくとも二つの試薬の量を独立して選択することと、前記試薬を混合することと、前記マイクロベセルを選択することと、前記テスト混合物を搬送することとを、所定の数のマイクロベセルが選択されるまで繰り返すことと、を含む、方法。
【請求項15】
前記テスト混合物は、約0.1μL〜約80μLの容積を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記テスト混合物は、約1μL〜約16μLの容積を有する、請求項14に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項17】
前記テスト混合物は、約4μLの容積を有する、請求項14に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項18】
各選択されたマイクロベセル内の各テスト混合物を所定の期間反応させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
選択されたマイクロベセルからテスト混合物を抽出することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
抽出された前記テスト混合物を分析することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも三つの試薬の量を独立して選択することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記テスト混合物を形成すべく前記試薬を混合することは、
回転混合器中のバルブを所定の順序で開閉して、入力された前記試薬を蠕動運動により時計回りあるいは反時計回りに駆動することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記テスト混合物を形成すべく前記試薬を混合することは、
前記試薬をカオス混合器を介して搬送することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項1】
マイクロ流体デバイスであって、
複数の流体入力マイクロチャネルと選択的に流体接続される複数の流体源と、
前記複数の流体入力マイクロチャネルと流体接続される混合部と、
前記混合部と各々選択的に流体接続される、複数のマイクロベセルと、を含み、
前記混合部が、前記複数の流体入力マイクロチャネルから複数の流体の組み合わせを受け取り、対応する複数の混合流体を前記複数のマイクロベセルの各々に動作中に出力することで、前記マイクロ流体デバイスは平行して複数の化学反応を起こす、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
各流体入力マイクロチャネルは定量ポンプを含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
各定量ポンプは上流ポンプバルブ、中流ポンプバルブ、および下流ポンプバルブを含む、請求項2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記複数の流体入力マイクロチャネルは、少なくとも三つの流体入力マイクロチャネルを含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記混合部は回転混合器を含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記回転混合器は、回転混合ポンプを含む、請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記回転混合ポンプは、少なくとも三つのポンプバルブを含む、請求項6に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記回転混合器は、約5nL〜約12500nLの範囲にある容積を有する、請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記回転混合器は、約25nL〜約2500nLの範囲にある容積を有する、請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記回転混合器は、約250nLの容積を有する、請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記混合部は、カオス混合器を含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
前記カオス混合器は、突起を有する流体チャネルを含む、請求項11に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
前記混合部と流体接続され、前記複数のマイクロベセルと流体接続されるマイクロ流体マルチプレクサをさらに含み、
前記マイクロ流体マルチプレクサは、各マイクロベセルの前記混合部に対する前記選択的流体接続を提供する、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
平行して複数の化学反応を行う方法であって、
少なくとも二つの試薬の量を独立して選択することと、
テスト混合物を形成すべく前記試薬を混合することと、
マイクロベセルを選択することと、
前記選択されたマイクロベセルに前記テスト混合物を搬送することと、
前記少なくとも二つの試薬の量を独立して選択することと、前記試薬を混合することと、前記マイクロベセルを選択することと、前記テスト混合物を搬送することとを、所定の数のマイクロベセルが選択されるまで繰り返すことと、を含む、方法。
【請求項15】
前記テスト混合物は、約0.1μL〜約80μLの容積を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記テスト混合物は、約1μL〜約16μLの容積を有する、請求項14に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項17】
前記テスト混合物は、約4μLの容積を有する、請求項14に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項18】
各選択されたマイクロベセル内の各テスト混合物を所定の期間反応させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
選択されたマイクロベセルからテスト混合物を抽出することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
抽出された前記テスト混合物を分析することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも三つの試薬の量を独立して選択することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記テスト混合物を形成すべく前記試薬を混合することは、
回転混合器中のバルブを所定の順序で開閉して、入力された前記試薬を蠕動運動により時計回りあるいは反時計回りに駆動することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記テスト混合物を形成すべく前記試薬を混合することは、
前記試薬をカオス混合器を介して搬送することを含む、請求項14に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【公表番号】特表2009−528163(P2009−528163A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557366(P2008−557366)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/005248
【国際公開番号】WO2007/103100
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(506064119)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ カリフォルニア (15)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/005248
【国際公開番号】WO2007/103100
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(506064119)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ カリフォルニア (15)
【Fターム(参考)】
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