説明

化学反応評価装置

【課題】反応媒体の化学反応を効率的に精度良く評価できる化学反応評価装置を提供する。
【解決手段】反応ガスを供給する反応ガス供給部と、反応ガスが供給される反応部と、反応部の排気側に設けられた検出部とを備える。反応部には複数の反応管(反応器)が互いに平行に収容可能とされている。また、検出部には筒状の複数の検出器が互いに平行に収容可能とされている。各検出器にそれぞれの検出ガスに対応した検知材を充填することで、一般的なガス検知器と同様の分析を行うことができる。反応部の反応管および検出部の検出器は互いに密閉状態で取り付けられ、反応管およびそれに対応する検出器は連続した筒状構造を構成する。それぞれの筒状構造は独立したブロックを形成しており、反応部および検出部はこのようなブロックを束ねた構造として構成され、筒状構造内のガスが別の筒状構造内のガスと混じり合うことはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応媒体の化学反応を評価する化学反応評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒の性能を評価する場合、触媒の収容部に反応ガスを流し、排出されたガス成分を分析している。成分分析には、GC(ガスクロマトグラフィー)やMS(質量分析)を用いた分析装置やガスセンサを使用している。
【0003】
【特許文献1】特開2000−193622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、触媒の初期評価(スクリーニング等)では、多数のガス成分についての評価が必要であり、GC等による分析では長時間を要し効率的でない。また、ガスセンサを用いる場合には、分析対象となる成分に応じてセンサの種類を適宜選択しなければならず、センサの取替え作業が煩雑になる。現状では、多数の成分についてコンタミネーションを回避しつつ、同時分析できる装置がなく、分析のための作業が負担となっている。
【0005】
本発明の目的は、反応媒体の化学反応を効率的に精度良く評価できる化学反応評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の化学反応評価装置は、反応媒体の化学反応を評価する化学反応評価装置において、反応媒体の供給部と、前記供給部から供給される前記反応媒体が並行して通過する複数の反応器と、個々の前記反応器に対してそれぞれ独立して検出器が設けられた検出部と、を備え、前記検出器は対応する前記反応器の排出側に密閉状態で取り付けられることを特徴とする。
この化学反応評価装置によれば、個々の反応器に対してそれぞれ独立して検出器が設けられているので、コンタミネーションを招くことなく短時間で複数の成分について分析することができる。
【0007】
前記検出器は、前記反応器の排出側に密閉状態で取り付けられる第1の検出器と、前記第1の検出器の排出側に密閉状態で取り付けられる第2の検出器と、を具備してもよい。
この場合には、同時に多数の成分について分析できる。
【0008】
前記反応器はマイクロリアクターとして構成されていてもよい。
【0009】
前記検出器はマイクロリアクターとして構成されていてもよい。
【0010】
前記反応器およびその反応器に対応する前記検出器は連続した筒状構造として構成され、前記化学反応評価装置は、前記筒状構造を束ねた構造として構成されていてもよい。
【0011】
前記検出器が取り外し可能に構成されていてもよい。
【0012】
前記反応器には触媒が収容されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化学反応評価装置によれば、個々の反応器に対してそれぞれ独立して検出器が設けられているので、コンタミネーションを招くことなく短時間で複数の成分について分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の化学反応評価装置について説明する。
【実施例1】
【0015】
以下、図1を参照して、実施例1の化学反応評価装置について説明する。本実施例は、本発明の化学反応評価装置を触媒の性能を評価するための分析装置に適用した例を示している。
【0016】
図1(a)は本実施例の化学反応評価装置の構成を示す斜視図、図1(b)は反応部の構成を示す斜視図である。
【0017】
図1(a)に示すように、本実施例の化学反応評価装置は、反応ガスを供給する反応ガス供給部1と、反応ガス供給部1から反応ガスが導入される反応部2と、反応部2の排気側に設けられた検出部3とを備える。
【0018】
図1(b)に示すように、反応部2には複数の反応管(反応器)21が互いに平行に収容可能とされている。また、図1(a)に示すように、検出部3には筒状の複数の検出器31が互いに平行に収容可能とされている。各検出器31にそれぞれの検出ガスに対応した検知材を充填することで、一般的なガス検知器と同様の分析を行うことができる。例えば、ガス検知材の色の変化に基づいて、特定成分の有無や濃度を検出できる。
【0019】
反応部2の反応管21および検出部3の検出器31は互いに密閉状態で取り付けられ、反応管21およびそれに対応する検出器31は連続した筒状構造を構成する。それぞれの筒状構造は独立したブロックを形成しており、反応部2および検出部3はこのようなブロックを束ねた構造として構成され、筒状構造内のガスが別の筒状構造内のガスと混じり合うことはない。
【0020】
反応ガス供給部1から反応部2に反応ガスを供給すると、反応ガスは反応管21のそれぞれに並行して導入される。反応管21には触媒が収容され、反応管21からの排気は、分析対象となるガスとして対応する検出器31に導入される。
【0021】
本実施例の化学反応評価装置によれば、反応ガス供給部1から供給された反応ガスが反応管21および検出器31に順次、導入されるので、分析のための作業を要することなく、短時間で多数の目的成分についての分析を行える。したがって、触媒の初期評価等にとくに適している。
【0022】
また、反応ガスを複数の反応管21に同時に与えるため、同一条件での比較評価を高い精度で、しかも短時間で実施できる。
【0023】
また、反応管21および検出器31が独立したブロックとして構成されるので、他の反応管21あるいは検出器31からのコンタミネーションが起こらない。したがって、目的成分についての分析を高精度に行える。さらに、供給された反応ガスが効率的に検出部3に到達するので、反応ガスの消費を大幅に減らすことができる。
【0024】
検出部3は、各種の検出手法に対応できる。例えば、検出部3をガラス等の透明部材で構成すれば、レーザによる分光測定も可能となる。
【0025】
上記実施例では、触媒の性能を評価するための分析装置を例示したが、本発明の装置は、各種分析装置等に対し適用できる。例えば、検出部においてレーザを照射したときのスペクトルを測定し、成分を分析することもできる。また、ガス分析に限定されず、液体の分析を行うこともできる。液体の分析方法として、例えば、検出部を通過する媒体の導電率を測定することもできる。
【0026】
検出部3を取り外し可能に構成すれば、分析対象の切り替え等の作業が容易なものとなる。触媒の評価等において、分析したい成分が変更されたような場合にも、容易に対応できる。
【0027】
さらに、反応管21および検出器31をマイクロリアクター(例えば、1mm径以下の流路を形成したマイクロリアクター)として構成することで、死容量を大幅に抑制して反応時間および検出時間を短縮することができる。また、装置の小型化を図ることができる。
【実施例2】
【0028】
以下、図2(a)を参照して、実施例2の化学反応評価装置について説明する。本実施例は、本発明の化学反応評価装置を触媒の性能を評価するための分析装置に適用した例を示している。
【0029】
図2(a)は本実施例の化学反応評価装置の構成を示す斜視図である。
【0030】
図2(a)に示すように、本実施例の化学反応評価装置は、反応ガスを供給する反応ガス供給部1と、反応ガスが導入される反応部2と、反応部2の排気側に設けられた検出部3A,3B,3C・・・とを備える。
【0031】
実施例1と同様、反応部2には複数の反応管21が互いに平行に収容可能とされている(図1(b))。また、図2(a)に示すように、検出部3A,3B,3C・・・には筒状の複数の検出器31が互いに平行に収容可能とされている。各検出器31にそれぞれの検出ガスに対応した検知材を充填することで、一般的なガス検知器と同様の分析を行うことができる。本実施例では、検出部3A,3B,3C・・・を直列に接続することで、同一のガスから複数成分を同時に分析することができる。検出部の個数は任意に選択できる。
【0032】
反応部2の反応管21および検出部3Aの検出器31、および隣り合った検出部3A,3B,3C・・・の検出器31は互いに密閉状態で取り付けられ、反応管21およびそれに対応する検出器31,31,・・・は連続した筒状構造を構成する。それぞれの筒状構造は独立したブロックを形成しており、筒状構造内のガスが別の筒状構造内のガスと混じり合うことはない。
【0033】
反応ガス供給部1から反応部2に反応ガスを供給すると、反応ガスは反応管21のそれぞれに並行して導入される。反応管21には触媒が収容され、反応管21からの排気は分析対象のガスとして、対応する検出器31,31,・・・に導入される。このガスは、検出部3A,3B,3C・・・において、それぞれ異なる成分について分析が行われる。
【0034】
本実施例の化学反応評価装置によれば、分析のための作業を要することなく、反応ガス供給部1から供給された反応ガスが反応管21および検出器31,31,・・・に順次、導入されるので、分析時間を短縮できる。
【0035】
また、反応管21および検出器31,31,・・・が独立したブロックとして構成されるので、他の反応管21あるいは検出器31,31,・・・からのコンタミネーションが起こらない。さらに、供給された反応ガスが効率的に検出部3に到達するので、反応ガスの消費を大幅に減らすことができる。
【0036】
上記実施例では、触媒の性能を評価するための分析装置を例示したが、本発明の装置は、各種分析装置等に対し適用できる。
【実施例3】
【0037】
以下、図2(b)を参照して、実施例3の化学反応評価装置について説明する。本実施例は、本発明の化学反応評価装置を触媒の性能を評価するための分析装置に適用した例を示している。
【0038】
図2(b)は本実施例の化学反応評価装置の構成を示す斜視図である。
【0039】
図2(b)に示すように、本実施例の化学反応評価装置は、反応ガスを供給する反応ガス供給部1と、反応ガスが導入される反応部2と、反応部2の排気側に設けられた検出部3と、反応部2と検出部3の間に接続されたジョイント4と、を備える。
【0040】
実施例1と同様、反応部2には複数の反応管21が互いに平行に収容可能とされている(図1(b))。また、図2(b)に示すように、検出部3には筒状の複数の検出器31が互いに平行に収容可能とされている。各検出器31にそれぞれの検出ガスに対応した検知材を充填することで、一般的なガス検知器と同様の分析を行うことができる。
【0041】
反応部2の反応管21および検出部3の検出器31はジョイント4を介して互いに密閉状態で取り付けられ、反応管21、ジョイント4およびそれに対応する検出器31は連続した筒状構造を構成する。それぞれの筒状構造は独立したブロックを形成しており、筒状構造内のガスが別の筒状構造内のガスと混じり合うことはない。
【0042】
反応ガス供給部1から反応部2に反応ガスを供給すると、反応ガスは反応管21のそれぞれに並行して導入される。反応管21には触媒が収容され、反応管21からの排気がジョイント4を介して対応する検出器31に導入される。本実施例では、ジョイント4により反応部2から検出部3までの距離を稼ぐことで、検出器31に導入されるガスの温度を低下させることができる。
【0043】
本実施例の化学反応評価装置によれば、分析のための作業を要することなく、反応ガス供給部1から供給された反応ガスが反応管21、ジョイント4、および検出器31に順次、導入されるので、分析時間を短縮できる。
【0044】
また、反応管21から検出器31までの区間が独立したブロックとして構成されるので、他の反応管21あるいは検出器31からのコンタミネーションが起こらない。さらに、供給された反応ガスが効率的に検出部3に到達するので、反応ガスの消費を大幅に減らすことができる。
【0045】
上記実施例では、触媒の性能を評価するための分析装置を例示したが、本発明の装置は、各種分析装置等に対し適用できる。
【0046】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、反応媒体の化学反応を評価する化学反応評価装置に対し、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1の化学反応評価装置の構成を示す図であり、(a)は化学反応評価装置の斜視図、(b)は反応部の斜視図。
【図2】化学反応評価装置の構成を示す図であり、(a)は実施例2の化学反応評価装置の構成を示す斜視図、(b)は実施例3の化学反応評価装置の構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0048】
1 反応ガス供給部(供給部)
2 反応部
3 検出部
21 反応管(反応器)
31 検出器
31A,31B,31C 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応媒体の化学反応を評価する化学反応評価装置において、
反応媒体の供給部と、
前記供給部から供給される前記反応媒体が並行して通過する複数の反応器と、
個々の前記反応器に対してそれぞれ独立して検出器が設けられた検出部と、
を備え、
前記検出器は対応する前記反応器の排出側に密閉状態で取り付けられることを特徴とする化学反応評価装置。
【請求項2】
前記検出器は、前記反応器の排出側に密閉状態で取り付けられる第1の検出器と、前記第1の検出器の排出側に密閉状態で取り付けられる第2の検出器と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の化学反応評価装置。
【請求項3】
前記反応器はマイクロリアクターとして構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の化学反応評価装置。
【請求項4】
前記検出器はマイクロリアクターとして構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学反応評価装置。
【請求項5】
前記反応器およびその反応器に対応する前記検出器は連続した筒状構造として構成され、
前記化学反応評価装置は、前記筒状構造を束ねた構造として構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学反応評価装置。
【請求項6】
前記検出器が取り外し可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の化学反応評価装置。
【請求項7】
前記反応器には触媒が収容されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の化学反応評価装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−93416(P2007−93416A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283847(P2005−283847)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】