説明

化学変化制御方法及び化学変化制御装置並びに物質生成システム

【課題】
従来の技術では、サンプルの取出し、サンプルの運搬、分子量測定に時間がかかり、その間に変化が進んでしまい、正確な変化状況を確認できなかった。また、溶剤、触媒は性質が均一ではなく、温度等により変化の程度が大きく異なる。
【解決手段】
本発明では、このような課題を解決するため、溶剤タンクに覗き窓を設置し撮像装置を溶剤タンクに設置し、覗き窓から内部の溶剤を撮像する。撮像画像は画像処理部に伝送され、リアルタイムに画像処理部で色変化を連続監視し、一定時間後にあらかじめ決めておいた数値に達した場合は触媒の追加投入を行わず、達しない場合は追加投入を行うように制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学変化の進行状況の管理を目的とした制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は化学変化を進行させているタンク内から、変化中の溶液の一部をサンプルとして取出し、サンプルの分子量等を測定して化学変化の進行状況の確認を行い、触媒等の化学物質を追加投入する必要があるか否かを判断していた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−081896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、サンプルの取出し、サンプルの運搬、分子量測定にかかる時間が多かった。従って、反応速度が速い化学変化では、測定時間が終わるまでに変化が進んでしまい、変化状況を確実に制御できなかった。また、溶剤と触媒では性質が均一ではなく、温度等の条件により、その違いによって、変化状況が異なってしまっていた。
本発明の目的は、上記のような問題を解決し、迅速で確実な制御を可能とする制御装置および物質生成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の制御装置は、タンク内の混合液の様子を撮影するためのカメラを設置し、得られた画像を事務所等の管理場所に設置した画像処理装置により、色の変化を検出し、検出した値により触媒の追加投入を判断する。
【0006】
即ち、本発明の化学変化制御方法は、タンク内に第1の物質を投入してタンク内の溶液に化学変化を起こし、所望の第2の物質を生成する物質生成システムの化学変化制御方法において、タンク内の第2の物質を撮像装置によって撮像し、撮像された画像を色表現し、色表現された色の変化の度合いを画像処理によって検出し、検出された色の変化の度合いがあらかじめ定められた所定の条件を満足した場合に、第1の物質の上記タンク内への投入を停止するものである。
【0007】
即ち、本発明の化学変化制御装置あるいは物質生成システムは、溶液を入れたタンクと、タンク内に第1の物質を投入する投入ユニットと、タンク内の溶液を所定範囲の波長の光で撮像して画像を取得する手段と、撮像された画像を色表現し、色表現された色の変化の度合いを画像処理によって検出し、検出された色の変化の度合いがあらかじめ定められた所定の条件を満足した場合に、投入ユニットに投入停止信号を出力する画像処理手段とを備え、投入ユニットは、投入停止信号を得た場合には、所定の時間後に第1の物質のタンク内への投入を停止するものである。
【0008】
望ましくは、本発明では、タンクからの溶剤を循環するパイプの窓にカラーテレビジョンカメラを設置し、窓から内部の溶剤を撮像する。撮像画像は管理場所に設置した画像処理部に伝送され、リアルタイムに画像処理部で色変化を色信号のレベル変化として連続監視を行い、触媒投入開始後に色信号レベルが予め決めておいた数値に達した場合は触媒の追加投入を行わず、達しない場合は追加投入を継続するように制御信号を出力する。
なお、制御信号の代わりに色信号を出力し、触媒投入装置により色信号レベルを判定して触媒の追加投入の判断を行ってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化学変化制御方法及び化学変化制御装置並びに物質生成システムにより、溶剤等の化学物質の化学変化の進行状況を撮像装置で撮像し、撮像した画像を画像処理することにより、リアルタイムで容易に変化タイミングを検出できる。これにより、迅速かつ確実に触媒投入量を選択または決定することができ、化学変化の最適な制御を実現できる。従って、従来に比べ、薬品等の化学物質を製造するときの生産性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の一実施例を図1によって説明する。図1は、本発明の物質生成システムの一実施例の構成を示すブロック図である。1 は溶剤と触媒を入れ化学変化を起こし、所望の物質を生成するためのタンク、2 はパイプ、3 はパイプ 2 に設けた窓、19 はカラーテレビジョンカメラ、4 は照明ユニット、5 は拡散板、6 は遮光フード、7 は信号線、8 は制御装置、9 はテレビモニタ、10 はキャプチャボード、11 はディスプレイ、12 はインタフェースボード( I/F ボード)、13 は画像処理ボード、14 は映像分配器、15 は電源ユニット、16 はアイリス制御ユニット、17 はアイリス制御線、18 は触媒投入ユニット、20 はポンプである。制御装置 8 は、少なくとも、キャプチャボード 10 、ディスプレイ 11 、I/F ボード 12 、画像処理ボード 13 、電源ユニット 15 、及びアイリス制御ユニット 16 で構成される。電源ユニット 15 は、例えば、UPS( Uninterruptible Power Supply )である。
【0011】
図1において、タンク 1 の下部に設置されたパイプ 2 には、窓 3 が対抗する両側に設けてある。パイプ 2 はパイプの途中に取り付けたポンプ20 によってタンク 1 内の溶剤が循環するようにしている。即ち、パイプ 2 とタンク 1 の接合部に描かれた矢印の方向に溶液が循環する。
窓 3 の一方の側にカラーテレビジョンカメラ 19 を設置し、窓 3 の対向した他方の側に照明ユニット 4 を設置する。照明ユニット 4 から照射された照明光は、窓 3 からパイプ 2 内に入射し、窓 3 の対向した方向から出射する。出射した光はカラーテレビジョンカメラ 19 の光電面に入射して、画像が得られる。得られた画像は、パイプ 2 内を通過することで、タンク 1 内の溶液中を通過したことになり、溶剤の画像が得られることになる。
【0012】
なお、カラーテレビジョンカメラ 3 の光軸は、パイプ 2 の両側の窓 3 、拡散板 5 、照明ユニット 4 の中心を通過するように設置している。しかし、溶液の色を検出するために最適な条件であれば良く、照明光の入射角や照明側の窓が別の角度であっても良い。
また、パイプを介して撮像せず、タンク部分に窓を設けて溶液の画像を取得しても良い。
【0013】
照明ユニット 4 とその照明光が入射する窓 3 との間には、拡散板 5 を設置している。従って、照明ユニット 4 からの入射光は、平均化されて、のぞき窓である窓 3 を通して均一な光として溶剤に照射される。
パイプ 2 と照明ユニット 4 間、及びパイプ 2 とカラーテレビジョンカメラ 3 間は、外光が入射しないように(あるいは、影響しないように)遮光フード 6 を設置し、外光を遮断する。
【0014】
カラーテレビジョンカメラ 3 は、撮像した画像を画像信号に変換し、信号線 7 を介して、映像分配器 14 に伝送する。信号線 7 は、有線、無線、またはネットワーク回線等、周知の伝送方法で行う。
映像分配器 14 は、受信した映像信号をテレビジョンモニタ 9 と制御装置 8 とに分配する。
映像分配器 14 、テレビジョンモニタ 9 、及び制御装置 8 は、タンク 1 の隣あるいは近くに設置しても良いが、通常は、タンク 1 とは別の場所に設置する。また、映像分配器 14 とテレビジョンモニタ 9 は、それぞれ複数台あっても良い。
【0015】
テレビジョンモニタ 9 は、主に、撮像状況の確認用として使用し、表示された画像により、化学変化状況をリアルタイムで確認する。
制御装置 8 に伝送された画像信号は、先ずディスプレイ 11 に表示される。そして同時に画像処理ボード 13 入力される。画像処理ボード 13 は、入力された画像を色レベル信号に変換し、各色レベルの監視を行い、変換した色レベル信号と入力された画像信号をキャプチャボード 10 に出力する。
【0016】
キャプチャボード 10 は、次に、入力された画像信号と色レベル信号をデジタル合成してディスプレイ 11 に表示する。
画像処理ボード 13 は、各色レベル信号があらかじめ定めた、所定の値を超えたあるいは所定の範囲に入ったことを検知して、触媒投入停止信号を I/F ボード 12 を介して触媒投入ユニット 18 に出力する。なお、触媒投入停止信号の代わりに、それぞれの色レベル信号を、I/F ボード 12 を介して、触媒投入ユニット 18 に出力しても良い。
触媒投入ユニット 18 は、触媒投入停止信号または色レベル信号を受け取ると、直ちにまたは所定時間経過後、触媒投入を停止する。
【0017】
画像処理ボード 13 では、例えば、化学変化進行中の混合液の各色(赤色〜R信号、青色〜B信号)について、輝度レベルを検出する。単一の信号または複数の信号についてそれぞれ検出レベル(R信号検出レベル、B信号検出レベル)を設定し、そのレベルに達したことにより、触媒投入を停止する。
【0018】
また別の方法として、画像処理ボード 13 では、例えば、化学変化進行中の混合液の画像を、あらかじめ定めた形式で色表現し、色表現された色の変化の度合いを画像処理によって検出し、検出された色の変化の度合いがあらかじめ定められた所定の条件を満足した場合に、触媒投入を停止する。
あらかじめ定めた形式で色表現とは、例えば、特願2004−142372号の発明のアルゴリズムを用いて、画像処理を実行するものである。
【0019】
窓 3 に汚れが付着したり(内面または外面)、カラーテレビジョンカメラ 19 の撮像能力が劣化したり、または、照明ユニット 4 の出力が劣化または変動したり、制御装置 8 に入力する画像の輝度レベルが変動することにより、画像処理が変動することがある。このため、アイリス制御ユニット 16 は、図示しない操作部からユーザの指示によって操作可能な半固定的にアイリスを可変することができる。
このため、カラーテレビジョンカメラ 19 は、例えば、オートアイリスレンズとアイリス制御端子を備え、アイリス制御ユニット 16 から、有線または無線あるいはネットワーク回線等の伝送線によって伝送されるアイリス制御信号を、アイリス制御端子を介して入力し、入力されたアイリス制御信号に基づいてレンズの絞りをリモート制御する。
【0020】
また、カラーテレビジョンカメラ 19 に色補正手段を備え、例えば、特許第3461621号公報、特許第3573442号公報、特許第3456818号公報、あるいは特願2004−142372号の発明を用いることによって、アイリス制御とは別な方法で、色再現させて画像処理することも可能である。
更に、撮像装置に補正手段を設けず、制御装置側に設けて色補正しても良いことは自明である。
【0021】
以上のように、本発明によれば、触媒や溶剤等の化学物質の化学変化の進行状況をカラーテレビジョンカメラ等の撮像装置で撮像、撮像した画像を用いて画像処理することにより、リアルタイムで容易かつ迅速に変化タイミングを検出できる。検出した結果に基づき、適切な触媒投入量を選択することにより、迅速かつ確実に最適な化学変化を得ることができる。これにより、従来に比べ、薬品等の化学物質を製造するときの生産性が向上する。
【0022】
図2は、本発明の別の実施例を説明するための図で、本発明の溶剤変化状況検出装置の一実施例の構成を示すブロック図である。
図2は、図1に対して、更に記憶装置 21を備え、制御装置 8 を制御装置 8´とし、キャプチャボード 10 、I/F ボード 12 、及び画像処理ボード 13 を画像処理ユニット 22 としてまとめて構成している。
【0023】
記憶装置は、図1の物質反応システムがそれぞれに1台あっても良いが、複数台の物質反応システムのデータをまとめて記憶し管理する場合に特に有効である。
データとは、撮像した画像、撮像した年月日日時、タンク名、タンク内で生成した物質名、触媒の名前と投入量、その他設定パラメータ条件と実際の測定値、そのときの環境条件、または画像処理した結果及びその画像、等生成に関わるデータである。
【0024】
図2では、記憶装置は、触媒投入ユニット 18 に内蔵させているが、外付けでも良い。また、制御装置 8 に内蔵または外付けしても良く、さらには、ネットワーク回線を介して、別の場所に設けても良い。また、異なる場所に複数あっても良い。
【0025】
上記実施例では、モニタリングするタンクは1台で説明した。
しかし、複数台のタンクの制御をタイムシェアリングで実行しても良いし、複数台のテレビモニタと複数台のディスプレイをタンクの当該数分用意して制御しても良い。
【0026】
また、化学反応を起こすために触媒を投入する例で説明したが、複数の物質を混合することによって化学反応を起こし所望の物質を生成する場合にも適用可能である。
また、投入する触媒や物質が液体である必要は無く、何でも良い。
また、触媒投入ユニット(あるいは、物質投入ユニット)は、投入する触媒や物質が複数ある場合には、複数を制御できるよう複数あっても良いし、1台で制御するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の物質生成システムの一実施例の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の物質生成システムの一実施例の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0028】
1:タンク、 2:パイプ、 3:窓、 4:照明ユニット、 5:拡散板、 6:遮光フード、 7:信号線、 8:制御装置、 9:テレビモニタ、 10:キャプチャボード、 11:ディスプレイ、 12:I/Fボード、 13:画像処理ボード、 14:映像分配器、 15:電源ユニット、 16:アイリス制御ユニット、 18:触媒投入ユニット、 19:カラーテレビジョンカメラ、 20:ポンプ、 21:記憶装置、 22:画像処理ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内に第1の物質を投入してタンク内の溶液に化学変化を起こし、所望の第2の物質を生成する物質生成システムの化学変化制御方法において、
上記タンク内の第2の物質を撮像装置によって撮像し、上記撮像された画像を色表現し、色表現された色の変化の度合いを画像処理によって検出し、上記検出された色の変化の度合いがあらかじめ定められた所定の条件を満足した場合に、上記第1の物質の上記タンク内への投入を停止することを特徴とする化学変化制御方法。
【請求項2】
溶液を入れたタンクと、上記タンク内に第1の物質を投入する投入ユニットと、上記タンク内の溶液を所定範囲の波長の光で撮像して画像を取得する手段と、上記撮像された画像を色表現し、色表現された色の変化の度合いを画像処理によって検出し、上記検出された色の変化の度合いがあらかじめ定められた所定の条件を満足した場合に、上記投入ユニットに投入停止信号を出力する画像処理手段とを備え、
上記投入ユニットは、上記投入停止信号を得た場合には、所定の時間後に上記第1の物質の上記タンク内への投入を停止することを特徴とする化学変化制御装置。
【請求項3】
溶液を入れたタンクと、上記タンク内に第1の物質を投入する投入ユニットと、上記タンク内の溶液を所定範囲の波長の光で撮像して画像を取得する手段と、上記撮像された画像を色表現し、色表現された色の変化の度合いを画像処理によって検出し、上記検出された色の変化の度合いがあらかじめ定められた所定の条件を満足した場合に、上記投入ユニットに投入停止信号を出力する画像処理手段とを少なくとも備え、
上記投入ユニットは、上記投入停止信号を得た場合には、所定の時間後に上記第1の物質の上記タンク内への投入を停止することを特徴とする物質生成システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−29788(P2007−29788A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213010(P2005−213010)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】