説明

化学感覚能センサ装置

【課題】雑音の影響が少なくなる周波数帯域までセンサ信号を周波数変換し、さらに電灯線からの漏洩雑音による影響を低減するために帯域制限ΔΣ変調を行い、S/Nを向上させる。
【解決手段】本発明は、各センサからの電気信号を処理する信号処理回路と、その出力信号を無線変調して出力する無線回路と、外部からの電磁波を受けて電力を生成して供給する電源回路とを有する。信号処理回路は、センサからの電気信号であるベースバンド信号を周波数変換する回路と、その周波数変換された信号をA/D変換する帯域制限ΔΣ変調回路を備える。無線回路は、A/D変換されたデジタル信号と、帯域制限ΔΣ変調回路に用いたクロック信号を直交変調して、無線信号としてアンテナを介して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩味、甘味、苦味、酸味、旨味等のイオンや化学物質に反応して電位を発生させるセンサからの電気信号を処理して、無線で送信する化学感覚能センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の五感の一つである味覚を測定する味覚センサのような化学感覚能センサが公知技術として知られている。「化学感覚能」とは、水溶液中に溶解、若しくは混在する化学物質が有する性質を受容できる機能を意味する。例えば、水溶性化学物質の溶解した水溶液を味、すなわち塩味、甘味、苦味、酸味、旨味として感知できる機能や、当該水溶液の水素イオン濃度を測定する機能等が該当する。化学感覚能センサは、イオン選択性電極の技術を応用して開発された膜電位計測型のセンサである。すなわち、当該化学感覚能センサは作用電極に生物の生体膜を模した多種類の脂質高分子膜を使用することで、基本味である塩味、甘味、苦味、酸味、旨味に対して様々な膜電位を発生させることができる。
【0003】
味覚センサのような化学感覚能センサは公知の技術であるが、従来の味覚センサは大型の装置でデスクトップサイズであった。そのため、まず特許文献1で示されるようなセンサ部分の小型化が図られ、また、測定装置自体も非特許文献1で示される程度まで小型化された。しかし、それでも弁当箱程度の大きさがあり、持ち運びできるものではなかった。
【0004】
また、味センサ部からの電気信号は、低周波数成分が主で、周波数帯域も数百Hz以下といった信号である。このような低周波電気信号を、CMOS集積回路により信号処理する場合、MOSトランジスタのフリッカ雑音(1/f雑音)が、特に味センサ部からの信号を増幅するフロントエンドアンプで問題となる。MOSトランジスタでは周波数に反比例する1/f雑音が支配的になることが知られている。1/f 雑音は、ゲート酸化膜とシリコン基板の境目に出来たエネルギー準位に、キャリアが不規則にトラップされることで発生する。
【0005】
図8(A)は、従来技術に基づきフリッカ雑音を低減した信号処理回路の構成を示し、(B)は信号及びアンプ雑音成分を示す図である。また、図9は、その動作を説明するためのスペクトル図である。図8(B)に例示したような信号成分を有する入力信号Vinが、センサから第1の周波数変換回路(ミキサー)に入力される。第1の周波数変換回路(ミキサー)の別の入力には、局部発振(局発)信号VLCが入力される。第1の周波数変換回路(ミキサー)に、周波数fCの局部発振(局発)信号を印加すると、fCの整数倍の周波数領域にセンサ信号(ベースバンド信号)が周波数変換される(図9の(1)参照)。これによって、その出力信号VAは、フリッカ雑音の影響を受けない程度の高い周波数領域にアップコンバージョンされる。
【0006】
第1の周波数変換回路の出力信号VAは、アンプの入力に印加され、また、このアンプには、図8(B)に例示したようなアンプ雑音成分を有する雑音信号VUが追加されるものとして図示している。両信号がアンプで増幅されるが、両信号の周波数帯域は、図9の(2)に示すように異なっている。
【0007】
アンプで増幅された出力信号VBは、局部発振(局発)信号がfCである第2の周波数変換回路(ミキサー)により、再び周波数変換する。これによって、センサ信号は、ベースバンド信号にダウンコーバージョンされる一方、逆に、雑音信号VUは、fCの整数倍の周波数領域にアップコンバージョンされることになる(図9の(3)参照)。元周波数成分を持つ信号VCに戻った後に、センサ信号は、アナログ・デジタル変換回路ADCで、デジタル信号に変換される。その後、無線回路で変調して無線信号として送信する。
【0008】
このように従来技術は周波数変換回路(ミキサー)を2回通過することになり、回路規模が増大し、また、周波数変換回路(ミキサー)でも雑音が発生し、雑音の影響が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-057459号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】S. Etoh et al., “Fabrication of Taste Sensor Chip and Portable Taste Sensor System” TA6, 2006 International Conference on Microtechnologies in Medicine and Biology, May 2006.
【非特許文献2】S. Etoh et al., “Taste Sensor Chip for Portable Taste Sensor System” Sensors and Materials, Vol.20, No.4, pp.151-160, 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、小型化するために化学感覚能センサと、それらからの電気信号を処理する信号処理回路とをひとつの半導体基板上に形成し、かつ、外部からの電磁波を受けて電力を生成する回路を有し、無線で動作させる。しかし、無線で情報を伝送するにあたり、消費電力を低減するために送信電力を絞る必要があり、受信側でデータの抽出等の信号処理に負担がかかる。化学感覚能センサは出力インピーダンスが非常に高く電灯線からの漏洩雑音に弱い。また、化学感覚能センサは、低周波に主な信号成分を有しているので、CMOS回路の1/f雑音(フリッカ雑音)の影響が大きく、信号対雑音比(S/N)の確保が問題となる。このため、データ伝送の信頼性が下がったり、消費電力が増大したりすることが問題となる。
【0012】
そこで、本発明は、CMOS回路の1/f雑音(フリッカ雑音)の影響を低減するため、1/f雑音の影響が少なくなる周波数帯域までベースバンド信号を周波数変換し、さらに電灯線からの漏洩雑音による影響を低減するために帯域制限ΔΣ変調を行い、S/Nを向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の化学感覚能センサ装置は、イオンや化学物質に反応して電位を発生させる複数個のセンサと、各センサからの電気信号を処理する信号処理回路と、該信号処理回路からの出力信号を無線変調して出力する無線回路と、外部からの電磁波を受けて電力を生成して装置内の各回路に供給する電源回路とを有する。信号処理回路は、センサからの電気信号であるベースバンド信号を周波数変換する回路と、その周波数変換された信号をA/D変換する帯域制限ΔΣ変調回路を備える。無線回路は、A/D変換されたデジタル信号と、帯域制限ΔΣ変調回路に用いたクロック信号を直交変調して、無線信号としてアンテナを介して送信する。
【0014】
各センサの出力を切換えて、一つの信号を選択するマルチプレクサを備えても良い。このマルチプレクサの出力信号を、周波数変換回路に入力する。或いは、複数個のセンサのそれぞれに対応して、信号処理回路及び無線回路を個々に設けても良い。或いは、複数個のセンサのそれぞれに対応して信号処理回路を設け、かつ、この信号処理回路の信号を切換えるマルチプレクサを備えて、複数の信号処理回路からの信号を切替えて無線回路に出力するよう構成しても良い。帯域制限ΔΣ変調回路は、バンドパスフィルタ型ΔΣ変調回路、或いは高域通過フィルタ型ΔΣ変調回路である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、データ伝送の信頼性を上げた、低消費電力の無線型小型化学感覚能センサ装置を提供することができる。本発明は、1/f雑音の影響が少なくなる周波数帯域までベースバンド信号を周波数変換し、さらに、帯域制限ΔΣ変調を行なうことにより、CMOS回路の1/f雑音(フリッカ雑音)の影響を低減することができるだけでなく、電灯線からの漏洩雑音による影響を低減して、S/Nを向上させることができる。ここで得られた信号をクロック信号と直交変調することにより、受信側でクロックとデータ抽出(CDR; Clock Data Recovery)を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に基づき構成した化学感覚能センサ装置の第1の例の概略回路図である。
【図2】本発明に基づき構成した化学感覚能センサ装置の第2の例の概略回路図である。
【図3】本発明に基づき構成した化学感覚能センサ装置の第3の例の概略回路図である。
【図4】(A)は、図1及び図2におけるアンプ部、信号処理回路、及び無線回路のより具体的な回路構成例を示す図であり、(B)は信号及びアンプ雑音成分を示す図である。
【図5】帯域制限ΔΣ変調器としてバンドパスフィルタ型(BPF)を使用した際の動作を説明するためのスペクトル図である。
【図6】高域通過フィルタ型(HPF)を使用した際の動作を説明するためのスペクトル図である。
【図7】無線回路における直交変調回路の動作を説明するための図である。
【図8】(A)は、従来技術に基づきフリッカ雑音を低減した信号処理回路の構成を示し、(B)は信号及びアンプ雑音成分を示す図である。
【図9】信号処理回路の動作を説明するためのスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、例示に基づき、本発明を説明する。図1は、本発明に基づき構成した化学感覚能センサ装置の第1の例の概略回路図である。図示のセンサ装置は、塩味、甘味、苦味、酸味、旨味等のイオンや化学物質に反応して参照電極(基準電極、図示しない)との間で電位を発生させる1以上(ここでは、3つとして例示)のセンサ(作用電極)A〜Cと、マルチプレクサと、アンプ部及び信号処理回路からなるアナログフロントエンド回路と、無線回路と、アンテナと、電源回路とから構成されている。電源回路は、アンテナからの電流を整流して本装置内の各回路に必要な電力を供給する。
【0018】
各センサA〜Cは、塩味、甘味、苦味、酸味、及び旨味にそれぞれ反応して電位を発生させるものである。このセンサA〜Cは、例えば、特許文献1に開示されたものを使用できる。なお、参照電極(基準電極)は従来の液膜型参照電極の内部液を固相化したものであり、センサA、B、Cは、生物の生体膜を模した多種類の脂質高分子膜を使用した作用電極である。
【0019】
マルチプレクサは、各センサA〜Cの出力を切換えて、一つの信号を選択する回路である。このマルチプレクサの切換えには、タイマ回路(図示しない)を使用するのがよいが、例えば、外部信号を用いて切換えを行ってもよい。このように、マルチプレクサを使用することで、各センサA〜Cからの出力時期をずらすことができるので、各センサA〜Cからの出力を同時に行う場合(図2参照)と比較して、出力の際に必要な電力量を小さくできる。
【0020】
アナログフロントエンド回路は、アンプ部と、信号処理回路とから構成される。アンプ部は、詳細は後述するように、マルチプレクサを通過した電気信号(ベースバンド信号)を1/f雑音の影響が少なくなる周波数帯域まで周波数変換した後、アンプを用いて増幅する。この増幅信号は、信号処理回路で帯域制限ΔΣ変調器を用いてA/D変換する。その出力は、無線回路及びアンテナを介して無線送信される。
【0021】
無線回路は、信号処理回路でA/D変換されたデジタル信号を直交変調して、無線信号(無線周波数)とする回路である。なお、前記したマルチプレクサの切換えにタイマ回路を使用した場合、このタイマ回路の切換え信号を、この無線回路を通じ外部に無線出力することが好ましいが、他の無線回路を使用して、外部に無線出力することもできる。
【0022】
無線回路の出力は、アンテナを介して外部に出力される。また、アンテナは、外来電波を受けて、電源回路に供給する。電波を受けていない間は回路が停止(スリープ状態)しており、回路を起動するために必要な十分なエネルギーを有する電波(キャリア信号のみ、あるいは変調されていても可)を与える。電源回路は、アンテナからの電流(電磁波)を整流して、本装置内の回路(マルチプレクサ、アナログフロントエンド回路、無線回路)に必要な電力を供給する。これによって、基板上に動作用電池を内蔵することなく、必要な電力量を電源回路で賄うことができる。
【0023】
以上に示したようなセンサA〜Cを除く各回路、即ちマルチプレクサ、アナログフロントエンド回路、無線回路、アンテナ、及び電源回路は、一つの基板(例えば、半導体基板)に組込まれて、樹脂で覆われ、外気に対して密封されている。一方、各センサA〜Cは、隣り合う隣接するセンサの間が樹脂で仕切られ、各センサA〜Cの表面を露出させて上記の基板上に配置されている。
【0024】
以上のように構成することで、化学感覚能センサ装置を測定対象である水溶液中に浸漬させても、各センサA〜Cの表面のみが水溶液に接触し、基本味である塩味、甘味、苦味、酸味、及び旨味に対して、様々な膜電位を発生させることができる。
【0025】
次に、例示の化学感覚能センサ装置を用い、測定対象である水溶液の味を測定する方法について説明する。まず、本装置を水溶液中に浸漬させる。なお、化学感覚能センサ装置を水溶液中に浸漬させる方法としては、持ち運び可能なポータブルタイプの測定装置の先部に化学感覚能センサ装置を取付け、これを水溶液中に浸漬させる方法、また容器の底部に化学感覚能センサ装置を取付け、この容器内に水溶液を供給する方法がある。
【0026】
このように、化学感覚能センサ装置を、水溶液中に浸漬させることで、参照電極(基準電極)と、作用電極であるセンサA、B、Cから、膜電位がそれぞれ発生する。なお、各センサA〜Cの膜電位は、マルチプレクサを切換えることで、その一つが選択され、上述のように信号処理された後、無線回路で変調した無線信号は、アンテナを介して、例えば、コンピュータやメモリー等に送信し、記憶させる。
【0027】
図2は、本発明に基づき構成した化学感覚能センサ装置の第2の例の概略回路図である。本装置は、上述したように、1つの参照電極(基準電極)と、他のセンサとして少なくとも1つの作用電極を備えているが、この第2の例は、複数個のセンサA〜Cのそれぞれに、個別の回路(アンプ部、信号処理回路や無線回路)を対応させた点で、マルチプレクサを設けて、複数のセンサからの信号を切替え処理するよう構成した上述の第1の例とは相違している。
【0028】
図3は、本発明に基づき構成した化学感覚能センサ装置の第3の例の概略回路図である。この第3の例は、複数個のセンサA〜Cのそれぞれに、アンプ部及び信号処理回路を対応させるが、複数の信号処理回路の後段にマルチプレクサを設けて、複数の信号処理回路からの信号を切替えて、無線回路に出力するよう構成した点で、上述の第1の例或いは第2の例とは相違している。
【0029】
第2の例或いは第3の例の各回路自体の詳細な構成及びその動作は、第1の例と同じである。以下、説明する。
【0030】
図4(A)は、図1及び図2におけるアンプ部、信号処理回路、及び無線回路のより具体的な回路構成例を示す図であり、(B)は信号及びアンプ雑音成分を示す図である。図5は、帯域制限ΔΣ変調器としてバンドパスフィルタ型(BPF)を使用した際の動作を説明するためのスペクトル図であり、図6は、高域通過フィルタ型(HPF)を使用した際の動作を説明するためのスペクトル図である。アンプ部は、周波数変換回路及びアンプから構成される。マルチプレクサを通過した入力信号Vinは、周波数変換回路(ミキサー)を用いて周波数変換した後アンプを用いて増幅する。周波数変換回路を構成するミキサーは、単純なスイッチによるパッシブミキサーでも、アクティブミキサーでも構わない。センサからは、図4(B)に例示したような信号成分を有する入力信号Vinが、直接或いはバッファ(図示省略)を介して周波数変換回路(ミキサー)に入力される。周波数変換回路(ミキサー)の別の入力には、局部発振(局発)信号VLCが入力される。これによって、その出力信号VAは、フリッカ雑音の影響を受けない程度の高い周波数領域にアップコンバージョンされる。ここで、周波数変換回路(ミキサー)に、周波数fLCの局部発振(局発)信号を印加すると、fLCの整数倍の周波数領域にセンサ信号(ベースバンド信号)が周波数変換される(図5の(1)参照)。
【0031】
周波数変換回路(ミキサー)からの出力信号VAは、アンプの入力に印加されて、アンプで増幅される。このとき、特に、アンプを構成するMOSトランジスタからはフリッカ雑音(1/f雑音)のような雑音が発生する。図4(B)に例示したようなアンプ雑音成分を有する雑音信号VUが、図4(A)においては、アンプに印加されるものとして図示している。但し、図5の(2)に示すように、アンプ出力信号VBにおいては、上記のようにfLCの整数倍の周波数領域に周波数変換されたセンサ信号と、雑音信号VUの周波数帯域は異なっている。アンプの出力信号VBは、次段の信号処理回路(ADC)でアナログ・デジタル変換される。
【0032】
図4に例示の回路においては、図9を参照して説明したような第2の周波数変換回路(ミキサー)を使わずに、帯域制限ΔΣ変調回路によってセンサ信号成分を直接アナログ・デジタル変換することによりデジタル値を得る。このとき、帯域制限ΔΣ変調回路で帯域を制限することで、雑音を含まない必要なセンサ信号成分のみを得ることができる(図5の(3)参照)。このように、従来技術と比較して周波数変換回路(ミキサー)の個数を減らすことができる。ここで、帯域制限ΔΣ変調器とは、ΔΣ変調器の後段にフィルタを配置したものに相当するが、通常は、ΔΣ変調器の回路構成を変えることで、帯域制限フィルタの信号伝達関数(STF; Signal Transfer Function)にしている。本発明においては、この帯域制限フィルタとして、バンドパスフィルタ型(BPF)、或いは高域通過フィルタ型(HPF)を使用することができる。バンドパスフィルタ型(BPF)を用いた際の通過域、及び阻止域は、図5の(3)に示す通りである。また、高域通過フィルタ型(HPF)を用いた際の通過域、及び阻止域は、図6の(3)に示す通りである。
【0033】
いずれのフィルタ型であっても、帯域制限ΔΣ変調回路からはデジタル1ビットの信号列(ビットストリーム)が出力される。このビットストリームを無線回路で変調して無線信号として送信する。
【0034】
図7は、無線回路における直交変調回路の動作を説明するための図である。ビットストリームは、”1”と”0”のデータ列であるため、データ区切り情報が必要であるが、通常の変調、例えば、振幅変調や周波数変調、あるいは位相変調では1つのキャリア信号に対して1つの信号しか変調できず、データ区切り情報を同時に変調することはできない。そこで、本発明では、図示のように、90度位相の違う2つのキャリア信号(正弦波(sin)と余弦波(cos))を使って直交変調する。すなわちデータ信号を正弦波(sin)(或いは余弦波(cos))を使って変調する一方、データ区切り情報となる帯域制限ΔΣ変調回路のクロック信号を余弦波(cos)(或いは正弦波(sin))を使って変調することにより、同時に2つの信号を無線で伝送することが可能となる。クロック信号を同時に送信することにより、受信側でのクロックデータリカバリ(CDR; Clock Data Recovery)のための回路が簡単化されるメリットもある。また、クロック信号が一緒に送信されていることから、送信電力を下げてもビット誤り率(BER; Bit Error Rate)の劣化を防止することが可能となる。逆に言えば、同じビット誤り率BERであれば低消費電力化を図ることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンや化学物質に反応して電位を発生させる複数個のセンサと、各センサからの電気信号を処理する信号処理回路と、該信号処理回路からの出力信号を無線変調して出力する無線回路と、外部からの電磁波を受けて電力を生成して装置内の各回路に供給する電源回路とを有する化学感覚能センサ装置において、
前記信号処理回路は、前記センサからの電気信号であるベースバンド信号を周波数変換する回路と、その周波数変換された信号をA/D変換する帯域制限ΔΣ変調回路を備え、
前記無線回路は、前記A/D変換されたデジタル信号と、前記帯域制限ΔΣ変調回路に用いたクロック信号を直交変調して、無線信号としてアンテナを介して送信することから成る化学感覚能センサ装置。
【請求項2】
各センサの出力を切換えて、一つの信号を選択するマルチプレクサを備え、該マルチプレクサの出力信号を、前記周波数変換回路に入力する請求項1に記載の化学感覚能センサ装置。
【請求項3】
前記複数個のセンサのそれぞれに対応して、信号処理回路及び無線回路を個々に設けた請求項1に記載の化学感覚能センサ装置。
【請求項4】
前記複数個のセンサのそれぞれに対応して信号処理回路を設け、かつ、この信号処理回路の信号を切換えるマルチプレクサを備えて、複数の信号処理回路からの信号を切替えて無線回路に出力するよう構成した請求項1に記載の化学感覚能センサ装置。
【請求項5】
前記帯域制限ΔΣ変調回路は、バンドパスフィルタ型ΔΣ変調回路である請求項1に記載の化学感覚能センサ装置。
【請求項6】
前記帯域制限ΔΣ変調回路は、高域通過フィルタ型ΔΣ変調回路である請求項1に記載の化学感覚能センサ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−194114(P2012−194114A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59529(P2011−59529)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】