説明

化学物質の生体毒性の検出方法

【課題】生体毒性(特に腎毒性)が起こる前におよびそれが病理学的検査により実証される前に生体毒性(特に腎毒性)を迅速かつ正確に検出するための新たなマーカー遺伝子の提供。
【解決手段】毒性作用のある化合物に曝露された生体の腎臓組織または細胞、及び、少なくとも前記化合物に毒性作用を呈していない生体の腎臓組織または細胞、のそれぞれについてSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを検出するSod3遺伝子発現レベル検出ステップと、前記発現レベルのそれぞれを比較するステップと、を含むことを特徴とする腎臓毒性検出・予測方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体における疾患、損傷もしくは毒性の検出、診断、予測および/もしくは処置のための方法、および、生体毒性を検出又は予測するためのキットに関する。特に、本発明は、腎臓毒性を決定するためのおよび/または腎臓毒性に対する種々の処置の有効性を確認することを助けるための遺伝子発現解析手段およびその結果の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、環境と調和した健全な産業活動及び安心・安全な国民生活の実現を目指した化学物質リスク評価・管理システムの構築へ向け、公的な環境安心イノベーションプログラムが進められている。
【0003】
これまでの化学物質のリスク評価は、細菌等を用いた単純で簡便な試験、及び、ラット等の実験動物を用いた長期毒性試験によって取得・蓄積されてきた知見を、その基盤とした毒性学的な手法によっていた。
【0004】
しかし、かかる手法によって獲得される生物学的情報は限定的であること、特に長期毒性試験では費用と効率等の面で問題があること、などから新規な手法の確立が望まれた。
【0005】
近年、急速な発展を見せるゲノム学的なアプローチもその1つである。例えば、薬剤の有効性評価(ファーマコゲノミクス)(非特許文献1、非特許文献2)や、食物の生体への影響評価(ニュートリゲノミクス)(非特許文献3)等と同様に、化学物質の生物学的活性(特にその有害性)の評価にもゲノム学的アプローチが応用され始めている(トキシコゲノミクス)(非特許文献4、非特許文献5)。
【0006】
このゲノム学的手法は、全遺伝子を個々のパラメータとして活用できるという、従来の手法では得られない膨大かつ多様な生物学的現象の評価を可能にし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許出願2004−518691
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Alison H. Harrill et al.,Expert Opin. Drug Metab. Tosicol. November;4(11):1379−1389(2008)
【非特許文献2】Elisa Giovannetti et al., Mol.Cancer Ther. 5(6):1387−1394(2006)
【非特許文献3】Licia Iacoviello et al., GenesNutr. 3:19−24(2008)
【非特許文献4】Preeti Chavan et al., EvidBased Complement Alternat Med. Dec;3(4):447−457(2006)
【非特許文献5】渡邉肇 YAKUGAKU ZASSHI:127(12):1967−1974(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、化学物質の生物学的活性の評価のうちの1つである、化学物質の生体に対する毒性を簡便かつ確実に検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、生体毒性を有することが知られている既知の化学物質を投与したラットの腎臓と正常なラットの腎臓とにおける遺伝子発現を網羅的に比較し、両者間での発現レベルに統計的有意差がある遺伝子を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、(1)所定の化合物の生体に対する毒性作用のうちの1つを検出または予測するための方法であって、前記化合物に曝露された生体の腎臓組織または細胞、及び、少なくとも前記化合物に毒性作用を呈していない生体の腎臓組織または細胞、のそれぞれについてSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを検出するSod3遺伝子発現レベル検出ステップと、前記前記発現レベルのそれぞれを比較するステップと、を含むことを特徴とする腎臓毒性検出・予測方法である。
【0012】
特に、(2)上記(1)の方法において、前記生体がマウス、ラット、イヌ、サルまたはヒト由来であることを特徴とすることが望ましい。
【0013】
さらに、(3)上記(1)または(2)の方法であって、前記毒性がp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)またはp-クミルフェノール(p-Cumylphenol)の影響によることを特徴としてもよい。
【0014】
さらに、(4)上記(1)〜(3)において、前記遺伝子の発現レベルの測定を逆転写PCR法によって増幅させて測定してもよい。
【0015】
さらに、(5)上記(1)〜(3)において、前記遺伝子の発現レベルの測定をiAFLP(introduced Amplified Fragment Length Polymorphism)法により行ってもよい。
【0016】
さらに、(6)上記(1)〜(3)において、前記遺伝子の発現レベルの測定をLAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法により増幅させて行ってもよい。
【0017】
さらに、(7)上記(1)〜(3)において、前記遺伝子の発現レベルが、該遺伝子に対応する核酸又は該遺伝子によってコードされるタンパク質の存在もしくは量を測定することによって決定されてもよい。
【0018】
さらに、(8)上記(1)〜(3)において、前記遺伝子の発現レベルが、ハイブリダイゼーション法で測定することによって決定されてもよい。
【0019】
さらに、(9)上記(8)において、前記ハイブリダイゼーション法が、マイクロアレイ法又はブロット法であってもよい。
【0020】
さらに、(10)上記(9)において、前記マイクロアレイ法又はブロット法に用いられるプローブがヌクレオチド又はタンパク質であってもよい。
【0021】
さらに、(11)上記(10)において、前記ヌクレオチドがmRNA、cDNA、合成オリゴヌクレオチドであってもよい。
【0022】
さらに、(12)上記(10)または(11)において、前記ヌクレオチドが、標識化ヌクレオチドであってもよい。
【0023】
さらに、(13)上記(1)〜(3)において、前記遺伝子の発現レベルが、免疫学的方法によって測定されてもよい。
【0024】
さらに、(14)上記(13)において、前記免疫学的方法が、前記遺伝子によってコードされるタンパク質又はその断片に対する特異抗体と標的タンパク質との免疫学的複合体を検出することを含むことを特徴としてもよい。
【0025】
さらに、(15)上記(14)において、前記抗体がモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、または抗体フラグメントで選択されてもよい。
【0026】
さらに、本発明は(16)上記(1)〜(3)のいずれか1つの方法に用いられるキットであって、Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子に特異的にハイブリダイズする配列を有する分子または特異的に結合する分子をプローブとすることを特徴とした、毒性作用を検出または予測するためのキットである。
【0027】
さらに、(17)上記(16)において、前記プローブが、前記免疫学的方法が、ヌクレオチド又はタンパク質であってもよい。
【0028】
さらに、(18)上記(17)において、前記ヌクレオチドがmRNA、cDNA、合成オリゴヌクレオチドであってもよい。
【0029】
さらに、(19)上記(17)または(18)において、前記ヌクレオチドが、前記遺伝子のセンス鎖又はアンチセンス鎖とハイブリダイズする10〜100merのプローブ用のヌクレオチドであってもよい。
【0030】
さらに、(20)上記(16)において、前記ヌクレオチドが、標識化ヌクレオチドであってもよい。
【0031】
さらに、(21)上記(16)〜(20)において、前記プローブが少なくとも1つ以上固体支持体に固定されているDNAマイクロアレイ、DNAチップ、タンパクチップまたは抗体チップを利用することを特徴とするキットでもよい。
【0032】
さらに、(22)上記(21)において、前記固体支持体がガラス、シリコン、プラスチック又は膜から選択されてもよい。
【0033】
さらに、(23)上記(16)または(20)において、前記プローブが、前記タンパク質又はその断片に特異的に結合することを特徴としたキットでもよい。
【0034】
さらに、本発明は(24)個体における臓器毒性を処置する方法であって、当該個体の臓器においてSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の合成、発現もしくは活性を調整する調整化合物を、臓器毒性の少なくとも1つの症状が改善されるように、投与する工程を含む腎臓毒性処置方法である。
【0035】
さらに、(25)上記(24)において、前記毒性がp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)またはp-クミルフェノール(p-Cumylphenol)の影響によることを特徴としてもよい。
【0036】
さらに、本発明は(26)臓器毒性の処置に使用する候補薬剤を確認するための方法であって、
(A)
毒性を受けている毒性臓器組織の少なくとも一部を取り出し、候補薬剤と接触させるステップと、
(B)
前記毒性臓器組織のSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを測定するステップと、
(C)
前記毒性臓器組織を前記候補薬剤と接触させることなくSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを測定するステップと、
(D)
前記(B)及び(C)ステップで測定した前記Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを比較して前記候補薬剤の前記指標を得るステップと、
を含むことを特徴とする候補薬剤の確認方法である。
【0037】
さらに、(32)上記(30)または(31)において、Sod3(Superoxide dismutase3)遺伝子の発現レベルを請求項5ないし請求項16のいずれか1つの方法によって測定してもよい。
【0038】
さらに、本発明は(33)臓器毒性を引き起こさないまたは誘発しない候補薬剤を確認するための方法であって、
(A)
毒性を受けていない臓器(組織)の試料を候補薬剤と接触させること、
(B)
上記の臓器(組織)におけるSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを測定すること、
(C)
前記試料と同じ条件で毒性を受けていない臓器(組織)の試料であり、かつ、候補薬剤と接触させていない臓器(組織)におけるSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを測定すること、
(D)
前記(B)と(C)で測定したSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを比較すること、
により候補薬剤が臓器毒性を引き起こさないまたは誘発しない指標とする方法である。
【0039】
さらに、(34)上記(33)において、前記臓器毒性が腎臓毒性であってもよい。
【0040】
さらに、(35)上記(33)または(34)においてSod3(Superoxide dismutase3)遺伝子の発現レベルを請求項5ないし請求項16のいずれか1つの方法によって測定することが望ましい。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、化学物質を生体に投与した後の各臓器における遺伝子発現様式を比較することにより、化学物質が生体に対して毒性を有するか否かを簡便に判定あるいは予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】BUN(血清尿素窒素)の値を表す。対照-1、対照-2、対照-3はそれぞれオリブ油を28日間反復投与したラットの個体を表している。また、化合物A-1、化合物A-2、化合物A-3はそれぞれ化学物質p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)を28日間反復投与したラットの個体を表している。
【図2】CRE(血中クレアチニン)の値を表す。対照-1、対照-2、対照-3はそれぞれオリブ油を28日間反復投与したラットの個体を表している。また、化合物A-1、化合物A-2、化合物A-3はそれぞれ化学物質p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)を28日間反復投与したラットの個体を表している。
【図3】clusterin遺伝子の発現レベル比を表す。発現レベルは、対照レファレンスに対する比で算出しておりlog2比で表している。対照-1、対照-2、対照-3はそれぞれオリブ油を28日間反復投与したラットの個体を表している。また、化合物A-1、化合物A-2、化合物A-3はそれぞれ化学物質p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)を28日間反復投与したラットの個体を表している。また、下段の数値は対照レファレンスに対する相対比(log2比)を表している。
【図4】KIM-1(kidney injury molecule-1)遺伝子の発現レベル比を表す。発現レベルは、対照レファレンスに対する比で算出しておりlog2比で表している。対照-1、対照-2、対照-3はそれぞれオリブ油を28日間反復投与したラットの個体を表している。また、化合物A-1、化合物A-2、化合物A-3はそれぞれ化学物質p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)を28日間反復投与したラットの個体を表している。また、下段の数値は対照レファレンスに対する相対比(log2比)を表している。
【図5】Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベル比を表す。発現レベルは、対照レファレンスに対する比で算出しておりlog2比で表している。対照-1、対照-2、対照-3はそれぞれオリブ油を28日間反復投与したラットの個体を表している。また、化合物A-1、化合物A-2、化合物A-3はそれぞれ化学物質p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)を28日間反復投与したラットの個体を表している。また、下段の数値は対照レファレンスに対する相対比(log2比)を表している。
【図6】RE(血中クレアチニン)の値を表す。対照-1、対照-2、対照-3はそれぞれオリブ油を28日間反復投与したラットの個体を表している。また、化合物B-1、化合物B-2、化合物B-3はそれぞれ化学物質p-クミルフェノール(p-Cumylphenol)を28日間反復投与したラットの個体を表している。
【図7】Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベル比を表す。発現レベルは、対照レファレンスに対する比で算出しておりlog2比で表している。対照-1、対照-2、対照-3はそれぞれオリブ油を28日間反復投与したラットの個体を表している。また、化合物B-1、化合物B-2、化合物B-3はそれぞれ化学物質p-クミルフェノール(p-Cumylphenol)を28日間反復投与したラットの個体を表している。また、下段の数値は対照レファレンスに対する相対比(log2比)を表している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
他に特に規定されない限り、本明細書中に使用される用語は、本発明が属する分野における通常の知識を有する者(当業者)によって、一般的に理解されるものと同一の意味を有する。
【0044】
当業者は、本明細書中に記載されるものと同等または類似の多くの方法および物質を認識する。ただし、本発明は本明細書に記載される方法および物質に限定されない。
【0045】
「遺伝子発現レベルを測定する」とは、該遺伝子の発現レベルを検出又は定量する限り特に制限されず、例えば、該遺伝子のmRNAやcDNAを検出又は定量してもよい。これらの検出又は定量には、該遺伝子又はその遺伝子産物であるペプチド若しくはタンパク質に特異的に結合する分子を用いることが望ましい。遺伝子又はその遺伝子産物であるペプチド若しくはタンパク質に特異的に結合する分子とは、特に制限されないが、該遺伝子に特異的に結合するヌクレオチド、DNA、cDNA、RNA、ペプチド若しくはタンパク質に特異的に結合する抗体等を例示することができる。また、該遺伝子の発現レベルの検出又は定量には、該遺伝子のmRNAもしくはタンパク質の断片またはホモログを用いてもよい。
【0046】
「DNAマイクロアレイ」とは、オリゴヌクレオチドや一本鎖または二本鎖のDNAをガラス基板上などに高密度に配置したものをいい、「DNAマイクロアレイ法」とは、そのDNAマイクロアレイ上で蛍光標識したRNA分子などとハイブリッド形成を行わせて定性的定量的にDNAと結合した核酸の種類や量を測定する手法をいう。
【0047】
「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオチドが数個重合した分子の総称のことをいう。
【0048】
本明細書中、mRNAの「ホモログ」とは、該mRNAに実質的に類似したヌクレオチドに関連する。「実質的に類似した」とは、当業者によって十分理解され、具体的にはそれぞれの配列類似性が少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%を有することを意味する。
【0049】
また、本明細書中、タンパク質の「ホモログ」とは、該mRNAに実質的に類似したペプチドに関連する。「実質的に類似した」とは、当業者によって十分理解され、具体的にはそれぞれの配列類似性が少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%を有することを意味する。
【0050】
「候補化合物」とは、その毒性について試験される任意の化合物を指す。
【0051】
「化合物に曝露された臓器組織または細胞試料」とは、臓器組織もしくは細胞試料、または試料が由来した動物が、化合物により処理されたことを意味する。
【0052】
「腎臓毒性」とは、多くの疾病もしくは障害のプロセスにより誘発され得るところの急性もしくは慢性の腎臓の不全もしくは機能障害を意味する。
【0053】
「毒性作用」とは、化合物の存在に起因する、生体、臓器系、各臓器、組織、細胞、または細胞内単位に対する有害作用を指す。毒性作用は、生理的もしくは物理的な症状、または細胞もしくは臓器の壊死のような撹乱であり得る。
【0054】
「試料」には、好ましくは腎臓の生検材料、並びに、例えば血液、血漿、血清、リンパ液、腹水、尿、便のような任意の体液が含まれるものとする。なお、これに限られるものではない。
【0055】
本明細書で使用される際には、「個体」とは、ヒトの個体、動物又は個体の集団もしくはプールを意味するものとする。
【0056】
「候補薬剤」には、タンパク質もしくはそのフラグメント、抗体、小分子の阻害剤もしくはアゴニスト、核酸分子、たとえば、アンチセンスヌクレオチド、リボザイム、二重鎖RNA、有機および無機化合物等のような天然のまたは合成の分子を含む。
【0057】
遺伝子の発現レベルを検出又は定量する具体的な方法としては、該遺伝子に特異的に結合するプローブ用の標識化ヌクレオチド、標識化cDNAまたは標識化RNAを用いたノーザンブロット法、ドットブロット法、iAFLP法、LAMP法またはPCR法を用いることができる。PCR法として、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、コンペティティブPCR法を挙げることができる。
【0058】
さらに、遺伝子の発現レベルを検出又は定量する具体的な方法としては、DNAマイクロアレイ、DNAチップ、または抗体アレイ等が挙げられる。DNAマイクロアレイ又はDNAチップには該遺伝子のヌクレオチド又はcDNAが少なくとも1つ以上固定化されているものを用いる。
【0059】
なお、ヌクレオチド又はcDNAは、該遺伝子の一部に相当する部分でもよい。
【0060】
上記プローブの標識化に用いられる標識試薬は、例えば放射性同位元素である[125I]、[131I]、[H]、[14C]、[32P]、[35S]、酵素であるβーガラクトシダーゼ、βーグルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、また、蛍光物質であるシアニン蛍光色素蛍光色素(例えば、Cy2、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cyanine3、Cyanine5など)を用いることができる。
【0061】
また、上記リアルタイムPCR法としては、例えば、臓器(組織)内又は細胞内のトータルRNAやmRNAから逆転写酵素により合成したcDNAを鋳型にして、PCRの増幅産物をリアルタイムでモニタリングする方法が挙げられる。リアルタイムPCR用モニタリング試薬としては、例えばSYBR GreenIやTapManプローブ等が用いられる。
【0062】
通常、DNAマイクロアレイやDNAチップは、プローブが支持体の上に固定されているアレイ又はチップであり、DNAマイクロアレイ又はDNAチップの支持体としては、ハイブリダイゼーションに使用可能なものであればよく、例えばガラス、シリコン、プラスチックなどの基板や、ニトロセルロース膜、ナイロン膜等を用いることができる。
【0063】
DNAマイクロアレイやDNAチップに用いるプローブはcDNAでも合成オリゴDNAでも構わない。
【0064】
DNAマイクロアレイやDNAチップの使用方法については特に制限されない。例えば、生体試料からmRNAを精製し、該mRNAを鋳型とした逆転写反応を行う際に、適切な標識を付したプライマーや標識ヌクレオチドを使用することにより、標識されたcDNAを得ることができる。この標識化cDNAとDNAマイクロアレイやDNAチップ表面上に固定された本発明におけるプローブとの間でハイブリダイゼーションを行わせ、被検試料とのハイブリダイゼーション及び対照試料とのハイブリダイゼーションのそれぞれの結果を比較し、Sod3遺伝子の有無を検出したり、発現レベルを測定することにより、臓器毒性の検出または予測を行うことができる。
【0065】
上記標識化cDNAの作製に用いられる標識物質としては、放射性同位元素、蛍光物質等を用いることができる。例えば、蛍光物質としては、Cy2、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cyanine3、Cyanaine5、FITC(イソチオシアン酸フルオレセイン)、テキサスレッド、ローダミン等が挙げられる。
【0066】
Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子に対応するポリペプチド又はタンパク質は上記遺伝子の発現産物であり、該ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列の配列情報は、NCBIの遺伝子データベースにおいて、それぞれのアクセッションナンバーによりアプローチすることもできる。
【0067】
上記ポリペプチド又はタンパク質を検出又は定量する方法としては、所定のポリペプチド又はタンパク質を検出又は定量する方法であれば特に制限されない。例えば、該ポリペプチド又はタンパク質に特異的に結合する抗体やアプタマー等を用いることができ、抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、2つのエピトープを同時に認識することができる二機能性抗体等を例示できる。これらの抗体は、慣用のプロトコルを用いて該ポリペプチド又はタンパク質又はそれらの断片を抗原として用いて作製することができる。また、アプタマーとは、タンパク質、アミノ酸等の分子に特異的に結合する核酸分子である。
【0068】
上記ポリペプチド又はタンパク質に特異的に結合する抗体を用いて、被検試料中に存在する該ポリペプチド又はタンパク質を検出又は定量する場合、免疫沈降法、電気化学発光法、RIA(Radioimmunoassay)法、ELISA(Enzyme-liked immunosorbent assay)法、蛍光抗体法等の公知の免疫学的方法を用いることができる。
【0069】
上記判定の基準としては、被検試料中に存在するSod3遺伝子(GenBank登録番号:NM_012880)の発現レベル(又は該遺伝子に対応するポリペプチド若しくはタンパク質の発現レベル)が正常対照試料中に存在する、該遺伝子の発現レベル(又は該遺伝子に対応するポリペプチド若しくはタンパク質の発現レベル)よりも高いことを用いる。例えば、1群3検体以上の試料の発現レベルを測定した結果について、t検定を行った場合に、P<0.05、より好ましくはP<0.01、さらに好ましくはP<0.001、さらにより好ましくはP<0.0001である場合が挙げられる。
【0070】
検定方法はt検定に限定されるものではなく、マン・ホイットニ検定やウィルコクサン符号付順位検定でもよい。
【0071】
なお、上記判定基準は検定に限定されるものではなく、例えば各群の平均値の差を用いてもよい。
【0072】
基準値は、被検試料における発現レベルを測定する度に毎回測定する必要はなく、例えば、様々な種の生体試料における正常対照試料中に存在するSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルをあらかじめ測定しておき、その測定値を用いて比較することができる。
【0073】
遺伝子発現レベルの変化には特定の化合物と生体組織との直接の反応のみならず、臓器に障害が生じた結果としての二次的反応も含まれる。
【0074】
Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子は、ヒト、ラット、マウス、またはサルのような任意の哺乳動物において、マーカーとして用いられ得る。好ましくは、Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子は、ラットにおいてマーカーとして用いられる。
【0075】
動物の種類は特に限定されるものではなく、例えば、ラットの場合にはSprague Dawleyラット、Wistarラットなどでもよく、雄でも雌でも構わない。
【0076】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0077】
本発明の毒性作用を検出または予測するための方法に用いられるSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子は、p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)(和光純薬株式会社製)を雄のSprague Dawleyラット(日本チャールス・リバー社製)(7週齢)に28日間反復投与(300mg/kg)することにより腎臓で発現レベルが著しく変化した遺伝子である。
【0078】
本発明で用いられるSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子は以下の方法により得られる。なお、ここで、「発現レベル」とは絶対量である必要はなく相対量でよい。
【0079】
[動物試験]
国立医薬品食品衛生研究所の既存化学物質毒性データベースにおいて腎臓毒性が報告されている化学物質p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)(300mg/kg)を28日間反復してSprague Dawleyラット(6週齢、雄)に経口投与した。正常対照群として、化学物質p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)を溶解したオリブ油(小堺製薬株式会社製)を28日間反復してSprague Dawleyラット(6週齢、雄)に経口投与した。28日間の反復投与後、ラットから腎臓を採取し、速やかに液体窒素で凍結させた。凍結させた腎臓組織はISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いて粉砕した。なお、動物試験は28日間に制限されることはなく、数日間でもよい。
【0080】
[マイクロアレイの作製]
マイクロアレイ用合成DNAを用いてマイクロアレイを作製する。マイクロアレイの作製方法・条件に限定はないが、例えば(Schena,M. et.al., Science, 270,
467-470. (1995))に記載の作製方法を用いることができる。
【0081】
ラット遺伝子断片ライブラリー(マイクロダイアグノスティック社製)を超微量分注装置(マイクロダイアグノスティク社製)によりスライドガラス(松波硝子工業社製、HAコートスライドガラス)にプリントしてマイクロアレイを作製した。該マイクロアレイを気相恒温器内にて80℃で1時間静置し、更にUVクロスリンカー(Hoefer社製、UVC500)を用いて120mJの紫外線を照射した。
【0082】
[マイクロアレイの後処理]
マイクロアレイの後処理については、公開特許公報(特開2004-233105)記載の方法により行った。
【0083】
[核酸検体の調製]
検体用mRNAの調製は、腎臓組織からISOGEN試薬(ニッポンジーン社製)を用いて抽出した全RNAから、Poly(A)Pureキット(Ambion社製)を用い、各社推奨のプロトコルに従って行った。
【0084】
[標識cDNAの合成]
該mRNA 1.5μgを核酸標識・ハイブリダイゼーション試薬(マイクロダイアグノスティック社製)、逆転写酵素 SuperScript II(インビトロジェン社製)、Cyanine 5-deoxyuridinetriphosphate (Cyanine 5-dUTP)(Perkin Elmer社製)を用い、標識cDNAを作製した。一方、対照としてラット共通レファレンス(マイクロダイアグノスティック社製)を使用した。共通レファレンスに対しては核酸標識・ハイブリダイゼーション試薬(マイクロダイアグノスティック社製)、逆転写酵素 SuperScript II(インビトロジェン社製)、Cyanine 3-deoxyuridinetriphosphate (Cyanine 3-dUTP) (Perkin Elmer社製)を用い、標識cDNAを作製した。作製方法は、各社推奨のプロトコルに従った。
【0085】
[標識プローブの作製]
これらの標識cDNA、すなわち、Cyanine5-dUTPで標識した検体およびCyanine3-dUTPで標識した対照レファレンスを同一試験管内で混合した後、Micropure EZ(ミリポア社製)およびMicrocon YM30(ミリポア社製)により精製した。最終的には核酸標識・ハイブリダイゼーション試薬に付属のハイブリダイゼーションバッファーおよび純水を用いて15μlに調製した。
【0086】
[ハイブリダイゼーション]
該溶液を99℃で5分間加熱して熱変性させた後に、マイクロアレイ上に滴下し、ハイブリダイゼーションカセット(マイクロダイアグノスティック社製)に格納した。該ハイブリダイゼーションカセットを気相恒温器(三洋電機バイオメディカ社製)に入れ、42℃で20時間、静置した状態で保温した。
【0087】
[洗浄]
ハイブリダイゼーションカセットからスライドガラスを取り出し、核酸標識・ハイブリダイゼーション試薬(マイクロダイアグノスティック社製)付属のハイブリダイゼーション洗浄溶液を用い、同社推奨のプロトコルに従ってスライドガラスを洗浄した。
【0088】
[蛍光強度の検出および数値化]
洗浄したスライドガラスをスキャナGenePix4000B(Axon Instrument社製)を用いて蛍光を測定し、スキャナに付属の解析ソフトウエアGenePixPro(Axon Instrument社製)を用いて光学的に評価し、蛍光強度を対照レファレンスとの相対比(log2比)で表した。
【0089】
[血液サンプル処理]
採血は、投与最終日翌日に実施する剖検と同時に行った。ラットは採血前日の午後5時から除餌し、水のみを給与した。エーテル麻酔下でラットを開腹し、腹部大静脈より血液を採取した。採取した血液は、ガラス製試験管に入れ、室温で10分間静置し、さらに氷中で15分静置した後、遠心分離を行い、上清を採って、これを血液生化学検査用血清とした。なお、血液生化学検査は財団法人畜産生物科学安全研究所にて行った。
【0090】
[血液生化学検査]
クレアチニン(CRE)、血中尿素窒素(BUN)は腎臓機能に障害が生じているときに異常値となることが知られているが、これらの値は対照群よりも化学物質p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)を投与した群の方が高値であった(図1、図2)。その中でも、動物番号「化合物-2」は対照群に近い値であった。
【0091】
[統計学的処理]
生体毒性を判別するための有用な遺伝子を選択するために、p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)を28日間反復投与したラットの腎臓と対照群のラットの腎臓における遺伝子発現データから、各遺伝子の対数変換相対的発現比に対するスチューデントのt検定を行ってP値を算出した。なお、解剖所見より毒性がより高いと思われた2個体(個体番号:化合物-1および化合物-3)と対照群の3個体(対照-1、対照-2、対照-3)(計5個体)をP値の算出に用いた。その結果、発現レベルの平均値の比が2倍以上、かつ、P値が0.01未満である遺伝子を同定した。
【0092】
[既知腎毒性マーカーの発現レベル]
腎毒性マーカーとして報告されているclusterin遺伝子およびkidney injury molecule-1(KIM-1)遺伝子(特許文献1)の発現レベルは化合物を投与した群で有意に上昇していた(clusterin:P<0.0051、KIM-1:P<0.0086)(図3、図4)。
【0093】
[Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベル比]
一方、上記の方法で同定した遺伝子の中の一つであるSod3(Superoxide dismutase3)遺伝子の発現レベルは、上記腎毒性マーカーと同様の発現パターンであり、対照群と比較して、発現レベルの上昇は統計的に有意であった(P<0.0047)(図5)。したがって、Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを指標とすることで腎毒性マーカーとして利用可能である。
【実施例2】
【0094】
[p-クミルフェノール(p-Cumylphenol)の腎臓毒性]
p-クミルフェノール(p-Cumylphenol)は、国立医薬品食品衛生研究所の既存化学物質毒性データベースにおいて腎臓毒性が報告されている化学物質である。本発明におけるSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルで、上記化学物質による腎臓毒性を検出できるかを検証した。
【0095】
[p-クミルフェノール(p-Cumylphenol)投与試験]
上記と同様の方法により、p-クミルフェノール(p-Cumylphenol)(和光純薬株式会社製)(500mg/kg)を28日間反復してSprague Dawleyラット(6週齢、雄)に経口投与した。正常対照群として、化学物質p-クミルフェノール(p-Cumylphenol)を溶解したオリブ油(小堺製薬株式会社製)を28日間反復してSprague Dawleyラット(6週齢、雄)に経口投与した。さらに、上記と同様の方法によりラットから腎臓を採取し、血液生化学検査および遺伝子発現プロファイルを取得した。
【0096】
[血液生化学検査]
クレアチニン(CRE)の値が対照群と比較して上記化学物質投与群が有意に高かった(P<0.004)(図6)。
【0097】
[Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベル比]
上記化合物を投与した群のSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルは、前記p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)を投与したときと同様に、有意に高かった(P<0.0056)(図7)。
【0098】
[p-クミルフェノール(p-Cumylphenol)の腎毒性の評価]
上記より、Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを指標とすることで、p-クミルフェノール(p-Cumylphenol)の腎臓毒性を検出できることが判明した。したがって、Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを指標とすることで腎毒性マーカーとして利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の新規の腎毒性マーカーは、腎障害、すなわち、腎臓疾患、損傷または毒性のモニタリング、それらの診断および/またはそれらに対する種々の措置もしくは薬剤の有効性を選択することを助けることができる可能性がある。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の化合物の生体に対する毒性作用のうちの1つを検出または予測するための方法であって、前記化合物に曝露された生体の腎臓組織または細胞、及び、少なくとも前記化合物に毒性作用を呈していない生体の腎臓組織または細胞、のそれぞれについてSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを検出するSod3遺伝子発現レベル検出ステップと、前記前記発現レベルのそれぞれを比較するステップと、を含むことを特徴とする腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項2】
前記生体は、マウス、ラット、イヌ、サルまたはヒトであることを特徴とする、請求項1に記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項3】
前記化合物がp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)またはp-クミルフェノール(p-Cumylphenol)であることを特徴とする、請求項1または請求項2のうちの1つに記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項4】
前記Sod3遺伝子発現レベル検出ステップは、遺伝子の発現レベルの測定を逆転写PCR法によって増幅させて行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項5】
前記Sod3遺伝子発現レベル検出ステップは、遺伝子の発現レベルの測定をiAFLP(introduced Amplified Fragment Length Polymorphism)法により行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか1つに記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項6】
前記Sod3遺伝子発現レベル検出ステップは、遺伝子の発現レベルの測定をLAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法によって増幅させて行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか1つに記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項7】
前記Sod3遺伝子発現レベル検出ステップにおいて、遺伝子の発現レベルを前記遺伝子に対応する核酸又は前記遺伝子によってコードされるタンパク質の存在もしくは量を測定することで決定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項8】
前記Sod3遺伝子発現レベル検出ステップにおいて、遺伝子の発現レベルをハイブリダイゼーション法によって測定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項9】
前記ハイブリダイゼーション法が、マイクロアレイ法又はブロット法によることを特徴とする請求項8記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項10】
前記マイクロアレイ法又は前記ブロット法に用いられるプローブがヌクレオチド又はタンパク質であることを特徴とする請求項9記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項11】
前記ヌクレオチドがmRNA、cDNA、合成オリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項10記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項12】
前記ヌクレオチドが標識化ヌクレオチドであることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項13】
前記Sod3遺伝子発現レベル検出ステップは、遺伝子の発現レベルの測定を免疫学的方法によって測定することを特徴とする請求項1ないし3のうちのいずれか1つに記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項14】
前記免疫学的方法は、前記遺伝子によってコードされるタンパク質又はその断片に対する特異抗体と標的タンパク質との免疫学的複合体を検出するステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項15】
前記特異抗体がモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、または抗体フラグメントのうちから選択されることを特徴とする請求項14に記載の腎臓毒性検出・予測方法。
【請求項16】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載の方法に用いられるキットであって、前記生体の臓器組織またはこれを構成する細胞の前記Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子に特異的にハイブリダイズする配列を有する分子または特異的に結合する分子をプローブとすることを特徴とする腎臓毒性検出・予測キット。
【請求項17】
前記プローブはヌクレオチドであって、前記ヌクレオチドはmRNA、cDNA、合成オリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項16に記載の腎臓毒性検出・予測キット。
【請求項18】
前記ヌクレオチドが、前記遺伝子のセンス鎖又はアンチセンス鎖とハイブリダイズする10〜100merの前記プローブのヌクレオチドであることを特徴とする請求項17記載の腎臓毒性検出・予測キット。
【請求項19】
前記ヌクレオチドが、標識化ヌクレオチドであることを特徴とする請求項17又は18に記載の腎臓毒性検出・予測キット。
【請求項20】
前記プローブはタンパク質であって、前記タンパク質が、抗体及び/又はアプタマーであることを特徴とする請求項16に記載の腎臓毒性検出・予測キット。
【請求項21】
前記プローブは、少なくとも1つ以上を固体支持体に固定したDNAマイクロアレイ、DNAチップ、タンパクチップまたは抗体チップを含むことを特徴とする請求項16ないし請求項20のうちの1つに記載の腎臓毒性検出・予測キット。
【請求項22】
前記固体支持体がガラス、シリコン、プラスチック又は膜から選択されることを特徴とする請求項21に記載の腎臓毒性検出・予測キット。
【請求項23】
前記プローブが、前記タンパク質又はその断片に特異的に結合することを特徴とする請求項16または請求項20に記載の腎臓毒性検出・予測キット。
【請求項24】
腎臓に毒性を有する個体の処置方法であって、前記個体の前記臓器のSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の合成、発現もしくは活性を調整する調整化合物であって、これを腎臓毒性の少なくとも1つの症状が改善されるように、投与する工程を含む腎臓毒性処置方法。
【請求項25】
前記腎臓毒性がp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenol)またはp-クミルフェノール(p-Cumylphenol)の影響によることを特徴とする、請求項23に記載の腎臓毒性処置方法。
【請求項26】
腎臓毒性に対する候補薬剤の症状改善指標又は生体毒性の誘発指標を確認するための方法であって、
(A)
毒性を受けている毒性臓器組織の少なくとも一部を取り出し、候補薬剤と接触させるステップと、
(B)
前記毒性臓器組織のSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを測定するステップと、
(C)
前記毒性臓器組織を前記候補薬剤と接触させることなくSod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを測定するステップと、
(D)
前記(B)及び(C)ステップで測定した前記Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを比較して前記候補薬剤の前記指標を得るステップと、
を含むことを特徴とする候補薬剤の確認方法。
【請求項27】
前記Sod3(Superoxide dismutase 3)遺伝子の発現レベルを請求項4ないし請求項15のいずれか1つの方法によって測定することを特徴とする請求項26に記載の候補薬剤の確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−177144(P2011−177144A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46954(P2010−46954)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構「高機能簡易型有害性評価手法の開発/28日間反復投与試験結果と相関する遺伝子発現データセットの開発」にかかる業務委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(509088653)株式会社メディクローム (19)
【Fターム(参考)】