説明

化学物質回収キット、生体分子検査システム、及び生体分子検査方法

【課題】効率的に化学物質を回収可能な化学物質回収キットを提供する。
【解決手段】溶液の流路111が設けられた基板10、基板10の流路111の出口22に配置される溶液フィルタ30、及び溶液フィルタ30を透過した溶液を吸収する吸収層40を備える化学物質回収キットであって、前記流路内に、プローブ生体分子15が固定され、前記流路内に、複数のビーズ5a,5b,5cが堰き止められ、前記複数のビーズのそれぞれの表面に、プローブ生体分子が固定されて、前記溶液フィルタが、ポリカーボネートを含むメンブレンフィルタであることを特徴とする化学物質回収キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学物質の検査技術に係り、特に化学物質回収キット、生体分子検査システム、及び生体分子検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な遺伝子組換え作物が開発され、組換え遺伝子の存在を検出する検査方法の開発が求められている。また食品に含まれるアレルギー原因蛋白質の検出方法の開発、あるいは医療分野における特定たんぱく質の検出方法の開発も求められている(例えば、特許文献1参照。)。通常、検査対象の溶液等に含まれる生体分子は非常に微量であったり、低濃度であったりする。そのため、生体分子等の化学物質を効率的に回収可能な手法の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2004 - 250385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、効率的に化学物質を回収可能な化学物質回収キット、生体分子検査システム、及び生体分子検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明の第1の特徴は、(イ)溶液の流路が設けられた基板と、(ロ)基板の流路の出口に配置される溶液フィルタと、(ハ)溶液フィルタを透過した溶液を吸収する吸収層とを備える化学物質回収キットであることを要旨とする。
【0005】
本発明の第2の特徴は、(イ)注入孔及び排出孔が設けられたカラムと、(ロ)注入孔に配置され、溶液を透過させる溶液フィルタと、(ハ)カラム内に配置され、溶液を吸収する吸収層と、(ニ)排出孔に配置され、吸収層内部の気体を透過させる気体フィルタとを備える化学物質回収キットであることを要旨とする。
【0006】
本発明の第3の特徴は、(イ)溶液の流路が設けられた基板と、(ロ)基板の流路の出口に配置される溶液フィルタと、(ハ)溶液フィルタを透過した、溶液を吸収する吸収層と、(ニ)吸収層に吸収された溶液に含まれている標識試薬を検出する検出機構とを備える生体分子検査システムであることを要旨とする。
【0007】
本発明の第4の特徴は、(イ)流路が設けられた基板を用意するステップと、(ロ)基板の流路内に、プローブ生体分子を固定するステップと、(ハ)流路にターゲット生体分子を含む溶液を流し、ターゲット生体分子をプローブ生体分子で捕捉するステップと、(ニ)捕捉されたターゲット生体分子を酵素で修飾するステップと、(ホ)基板に設けられた流路の出口に、溶液フィルタを配置するステップと、(ヘ)酵素の基質を含む溶液を流路に流し、酵素及び基質を反応させるステップと、(ト)酵素及び基質の反応生成物を含む溶液を溶液フィルタを介して、反応生成物を含む溶液を吸収する吸収層に導入するステップとを含む生体分子検査方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、効率的に化学物質を回収可能な化学物質回収キット、生体分子検査システム、及び生体分子検査方法を提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお以下の示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の配置等を下記のものに特定するものではない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0010】
実施の形態に係る化学物質回収キットは、図1及びA-A方向から見た断面図である図2に示すように、溶液の流路111が設けられた基板10、基板10の流路111の出口22に配置される溶液フィルタ30、及び溶液フィルタ30を透過した溶液を吸収する吸収層40を備える。
【0011】
基板10は、例えば環状ポリオレフィン(Cyclo‐olefin polymer、COP)樹脂、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane、PDMS)樹脂、アクリル樹脂又はポリカーボネート等の樹脂、あるいはガラス等の透明材料、あるいはタンパク低吸着素材からなる。流路111は例えば基板10の内部にトンネル状に設けられており、基板10の表面及び裏面と並行に延伸する。例えば流路111の幅は2mmであり、深さは200μmである。流路111の入口21は基板10の表面に設けられており、流路111の出口22は基板10の裏面に設けられている。基板10は金型を用いた樹脂成型技術等で製造される。なお基板10は複数の部材が組み合わさったものでもよい。
【0012】
溶液フィルタ30は基板10の裏面に密着することが望ましい。流路111の出口22を覆うように、基板10の裏面に着脱可能に配置される。溶液フィルタ30の直径は流路111の出口22の直径よりも長く、例えば5.6mmである。溶液フィルタ30としては、例えば光透過性であり、自家蛍光の低いポリカーボネートタイプメンブレンフィルタ(アドバンテック東洋株式会社製、カタログ番号16180001)が使用可能である。
【0013】
溶液フィルタ30の下方に、吸収層40を保持するカラム50が配置される。カラム50は環状ポリオレフィン(Cyclo‐olefin polymer、COP)樹脂、アクリル樹脂又はポリカーボネート等の樹脂、あるいはガラス等の材料からなる。カラム50の材料は、透明材料でも、不透明材料でもよい。吸収層40は例えば光透過性であり、高分子吸水樹脂(株式会社ケンユー製、携帯ミニトイレ・プルプル、品番3AP-100)からなる。吸収層40は、例えばカラム50内部の直径4mm、厚さ3mmの空間に充填されており、密度は40mg/mlである。
【0014】
カラム50には、吸収層40内部の気体を透過させる気体フィルタ60が設けられている。気体フィルタ60の直径は例えば3.97mmであり、光透過性でもよい。気体フィルタ60には、超高分子ポリエチレン製で孔径が30μmの多孔質シート、あるいはポリカーボネートタイプメンブレンフィルタ等が使用可能である。なお吸収層40と気体フィルタ60の間に、重りとしてワッシャ等を配置してもよい。また気体フィルタ60の材料としては、無灰パルプ(アドバンテック東洋株式会社製、カタログ番号48079000)も使用可能である。反射板を使用する場合には、気体フィルタ60が光透過性素材であることが望ましい。
【0015】
図3に示すように、基板10の流路111には堰き止め部112が設けられている。さらに流路111内部には、堰き止め部112によって複数のビーズ5a, 5b, 5c…が堰き止められている。例えば堰き止め部112上部の隙間は、複数のビーズ5a, 5b, 5c…のそれぞれの直径よりも狭くなるように流路111に設けられた空隙である。複数のビーズ5a, 5b, 5c…のそれぞれの表面には、図4に示すように、ターゲット生体分子を捕捉するためのプローブ生体分子15が固定されている。プローブ生体分子15としては、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、及びペプチド核酸(PNA)等の核酸、あるいは抗体、酵素、受容体、及びリガンド等のタンパク質が使用可能である。
【0016】
図1及び図2に示すように、基板10表面には、流路111の入口21を囲むように注入用漏斗部201が設けられている。注入用漏斗部201は、例えば環状ポリオレフィン(Cyclo‐olefin polymer、COP)樹脂、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane、PDMS)樹脂、アクリル樹脂又はポリカーボネート等の樹脂、あるいはガラス等の透明材料、あるいはタンパク低吸着素材からなる。注入用漏斗部201は基板10と一体的に成型されていてもよい。また注入用漏斗部201は、図5に示すように、基板10表面から取り外し可能である。
【0017】
また実施の形態に係る生体分子検査システムは、化学物質回収キットの構成要素に加えて、図2に示す気体フィルタ60を介して吸収層40内の気体を吸引する吸引ポンプを有する。また生体分子検査システムは、吸収層40に吸収された溶液に含まれている試薬を検出する検出機構70をさらに備える。例えば試薬が蛍光試薬である場合、検出機構70は蛍光試薬の蛍光を検出する蛍光顕微鏡である。また実施の形態に係る生体分子検査システムは、基板10の温度を制御する温度調節機構、及び流路111内の溶液を撹拌するための超音波発生装置等をさらに備えていてもよい。
【0018】
次に、実施の形態に係る生体分子検査システムを用いた、生体分子検査方法について説明する。
【0019】
(a) 図6に示すように、溶液フィルタ30、カラム50、吸収層40、及び気体フィルタ60が配置されていない基板10を用意し、基板10の流路111の出口22に吸引ポンプを接続する。次に、図4に示すように、表面にプローブ生体分子15が固定された複数のビーズ5a, 5b, 5c…を用意し、図7に示すように、流路111の堰き止め部112に堰き止める。
【0020】
(b) プローブ生体分子15によって捕捉されるターゲット生体分子を含む検査対象溶液を注入用漏斗部201に供給し、吸引ポンプを用いて流路111の出口22から検査対象溶液を20kPaの引圧で吸引する。この時、検査対象溶液に含まれるターゲット生体分子が複数のビーズ5a, 5b, 5c…のそれぞれの表面に固定されたプローブ生体分子15によって捕捉される。
【0021】
(c) 次にターゲット生体分子に特異的に結合し、ビオチンで標識された抗体を含む溶液を注入用漏斗部201に供給し、吸引ポンプを用いて流路111の出口22からビオチン標識抗体含有溶液を20kPaの引圧で吸引する。この時、溶液に含まれるビオチン標識抗体が、複数のビーズ5a, 5b, 5c…のそれぞれの表面に固定されたプローブ生体分子15によって捕捉されたターゲット生体分子に結合する。
【0022】
(d) 西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP: Horse Radish Peroxidase)等の酵素で標識されたアビジンを含む溶液を注入用漏斗部201に供給し、吸引ポンプを用いて流路111の出口22から酵素標識アビジン含有溶液を20kPaの引圧で吸引する。この時、溶液に含まれる酵素標識アビジンが、複数のビーズ5a, 5b, 5c…のそれぞれの表面に固定されたプローブ生体分子15によって捕捉されたターゲット生体分子に結合しているビオチン標識抗体に結合する。
【0023】
(e) 次に図2に示すように、流路111の出口に溶液フィルタ30、カラム50、吸収層40、及び気体フィルタ60を配置する。その後、10-アセチル-3, 7-ジヒドロキシフェノキサジン(10-acetyl-3,7-dihydroxyphenoxazine)等の酵素基質と過酸化水素(H2O2)を含む溶液を注入用漏斗部201に供給し、吸引ポンプを用いて気体フィルタ60から流路111及び吸収層40内の気体を20kPaの引圧で吸引し、酵素基質含有溶液を吸収層40に導入する。この時、複数のビーズ5a, 5b, 5c…のそれぞれの表面に固定された酵素標識アビジンと酵素基質が反応し、例えば7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オン(7-Hydroxy-3H-phenoxazin-3-one、慣用名:レゾルフィン(Resorufin))のような酵素反応生成物が生じる。酵素反応生成物は溶液によって吸収層40に運ばれ、吸収層40に回収される。
【0024】
(f) 7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンは波長563nmの励起光を照射すると、波長587nmの蛍光を発する。したがって、蛍光顕微鏡等の検出機構70から吸収層40に励起光を照射すると、7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンが蛍光を発する。その後、吸収層40の蛍光強度に基づいて、検査対象溶液中に含まれるターゲット生体分子の濃度を算出し、実施の形態に係る生体分子検査方法を終了する。なお蛍光観察の際には、カラム50の少なくとも一部に反射板等を配置してもよい。
【0025】
従来、基板に設けられた流路内でELISA (Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay) 法を実施し、流路内で7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンを検出しようとする試みはあった。しかし酵素反応で生じた7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンは流路内の溶液と共に流れ去ってしまうため、検出が困難であった。これに対し、実施の形態に係る生体分子検査方法によれば、7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンを含む溶液は高分子吸水樹脂等からなる吸収層40に吸収される。したがって7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンを容易に回収することが可能となる。
【0026】
なお、流路111の出口22に溶液フィルタ30が無い場合、流路111の出口22から出た溶液が、基板10の裏面にまわりこみ、吸収層40への導入が困難となる場合がある。これに対し、出口22の直径よりも小さな細孔が多数設けられた多孔質等からなる溶液フィルタ30を出口22に配置すると、溶液が基板10の裏面にまわりこむという現象が生じなくなり、効率的に溶液を吸収層40に回収することが可能となる。
【0027】
また吸収層40に蛍光を照射することにより、7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンの蛍光を容易に検出することが可能となる。さらに吸収層40は固形であるために取り扱いが容易であり、蛍光観察の際に、特別な光学系を組む必要もない。7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンの蛍光が検出された場合、検査対象溶液にターゲット生体分子が存在していたと判定可能である。
【0028】
また検査対象溶液の量は充分にあるが、検査対象溶液に含まれるターゲット生体分子の濃度が薄い場合、従来は検出感度を上げるために、ターゲット生体分子を濃縮してから検査対象溶液を検査していた。これに対し、実施の形態に係る生体分子検査方法によれば、検査対象溶液におけるターゲット生体分子の濃度を上げる処理は、プローブ生体分子15の数が充分にあれば不要である。
【0029】
例えば、ターゲット生体分子としての菌の濃度が105細胞/mlの30μlの検査対象溶液を流路111に流した場合と、菌の濃度が104細胞/mlの300μlの検査対象溶液を流した場合において、プローブ生体分子15に捕捉される菌の数は近似する。したがって、実施の形態に係る生体分子検査方法によれば、流路111に堰き止められた複数のビーズ5a, 5b, 5c…上にターゲット生体分子を捕捉する工程で、ターゲット生体分子が濃縮される。そのため、流路111に供給する前にターゲット生体分子を濃縮する必要がない。また複数のビーズ5a, 5b, 5c…上でターゲット生体分子が濃縮されることにより、後の酵素反応が効率的に進行し、酵素反応生成物を効率的に回収できることはいうまでもない。
【0030】
(第1の実施例)
図6に示す基板10の流路111の出口22に吸引ポンプを接続した。次に直径が30μmのビーズを用意し、ビーズ表面にウサギ抗リステリア抗体を結合させた。次にビーズを1%BSA-PBSで1/20に希釈し、吸引ポンプを用いて20kPaの引圧で吸引しながら注入用漏斗部201から流路111に流し、堰き止め部112に堰き止めた。次に30μlの1%BSA-PBSを流路111に導入した。その後、30μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を2回洗浄し、さらに60μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を1回洗浄した。
【0031】
1倍濃度のPBSで希釈した、濃度が107細胞/ml、106細胞/ml、105細胞/ml、又は0細胞/mlのリステリア死菌含有検査対象溶液を、吸引ポンプを用いて20kPaの引圧で吸引しながら注入用漏斗部201から流路111に30μl導入した。導入により、ビーズ表面のウサギ抗リステリア抗体にリステリア死菌が特異的に結合する。その後、30μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を2回洗浄し、さらに60μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を1回洗浄した。
【0032】
次に、1%BSA-PBSでけん濁した濃度が4μg/mlのビオチン標識抗リステリア抗体含有溶液を、吸引ポンプを用いて20kPaの引圧で吸引しながら注入用漏斗部201から流路111に30μl導入した。導入により、ビーズ表面のウサギ抗リステリア抗体に捕捉されたリステリア死菌に、ビオチン標識抗リステリア抗体が結合する。その後、30μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を2回洗浄し、さらに60μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を1回洗浄した。
【0033】
1%BSA-PBSでけん濁した濃度が1μg/mlのHRP標識ストレプトアビジン(ピアス(PIERCE)社製、カタログ番号29994)を、吸引ポンプを用いて20kPaの引圧で吸引しながら注入用漏斗部201から流路111に30μl導入した。導入により、ビーズ表面のウサギ抗リステリア抗体に捕捉されたリステリア死菌に結合しているビオチン標識抗リステリア抗体に、HRP標識ストレプトアビジンが結合する。その後、30μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を2回洗浄し、さらに60μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を1回洗浄した。
【0034】
次に図2に示すように、流路111の出口22に溶液フィルタ30、吸収層40、及び気体フィルタ60を配置した。溶液フィルタ30及び気体フィルタ60のそれぞれにはポリカーボネートフィルタを用いた。また吸収層40の材料には、40mg/mlの高分子吸収剤を用いた。また吸収層40には、濃度が5.5mg/mlの酵素反応停止液((モリキュラー・プローブス(Molecular Probes)社製、Amplex(登録商標)Red/UltraRed Stop reagent、カタログ番号A33855)を8μl添加した。
【0035】
濃度が50m mol/lのリン酸ナトリウム(pH 7.4)に過酸化水素と10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン(10-acetyl-3,7-dihydroxyphenoxazine、商品名:Amplex(登録商標)Red)を加え、酵素基質溶液を調整した。なお酵素基質溶液中の過酸化水素の濃度は2m mol/lであり、10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジンの濃度は100μmol/lである。
【0036】
次に吸引ポンプを用いて気体フィルタ60から20kPaの引圧で気体を吸引しながら、30μlの酵素基質溶液を注入用漏斗部201から流路111に導入した。導入により、ビーズ表面のウサギ抗リステリア抗体に捕捉されたリステリア死菌に結合しているビオチン標識抗リステリア抗体に結合したHRP標識ストレプトアビジンのHRPの存在下、10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジンと過酸化水素が反応し、7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンに変わる。7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンを含む溶液は流路111を流れ、溶液フィルタ30を透過して、吸収層40に吸収される。なお反応所要時間は約20分であった。
【0037】
次に吸収層40内の3箇所を波長563nmの励起光で照射し、蛍光顕微鏡(オリンパス社製、AX70)で観察した。図8に示すように、リステリア死菌の濃度が最も濃い時に、最も強い蛍光が検出され、濃度の低下に応じて、蛍光強度の低下が確認された。なお第1の実施例においては、試薬のコンタミを防ぐため、試薬含有溶液は8連チューブに分注して操作した。また濃度が異なる4種のリステリア死菌含有検査対象溶液を4つの生体分子検査システムを用いて同時に試験した。
【0038】
(第2の実施例)
図6に示す基板10の流路111の出口22に吸引ポンプを接続した。次に60μlのPBSTで流路111を洗浄した。その後、直径が40μmのビーズを用意し、ビーズ表面にウサギ抗リステリア抗体を結合させた。次にビーズを15% glycerol-1%BSA-PBSで1/20に希釈した希釈溶液を、吸引ポンプを用いて注入用漏斗部201から流路111に40μl流し、ビーズを堰き止め部112に堰き止めた。次に30μlの1%BSA-PBSを注入用漏斗部201から流路111に導入した。その後、30μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を2回洗浄し、さらに60μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を1回洗浄した。
【0039】
フレーザー(Fraser)培地で希釈した、濃度が106細胞/ml、105細胞/ml、104細胞/ml、又は0細胞/mlのリステリア死菌含有検査対象溶液を注入用漏斗部201から流路111に30μlを導入した。その後、30μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を2回洗浄し、さらに60μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を1回洗浄した。なお濃度が異なる4種のリステリア死菌含有検査対象溶液を4つの生体分子検査システムを用いて同時に試験している。
【0040】
次に、1%BSA-PBSでけん濁した濃度が4μg/mlのビオチン標識抗リステリア抗体含有溶液を注入用漏斗部201から流路111に30μl導入した。その後、30μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を2回洗浄し、さらに60μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を1回洗浄した。
【0041】
1%BSA-PBSでけん濁した濃度が1μg/mlのHRP標識ストレプトアビジンを注入用漏斗部201から流路111に30μl導入した。その後、30μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を2回洗浄し、さらに60μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を1回洗浄した。その後、注入用漏斗部201の内部をクリーンルーム用綿棒(アズワン♯1-6918-04、クリーンフォームスティック、型番TX752B、頭部サイズ(mm)3.4×3.4×20.0、全長69mm)で拭いた。PBSTでの洗浄及び綿棒での拭き取りの操作は2回繰り返した。
【0042】
次に図2に示すように、流路111の出口に溶液フィルタ30、吸収層40、及び気体フィルタ60を配置した。溶液フィルタ30及び気体フィルタ60のそれぞれには蛍光が発生しにくいポリカーボネートフィルタ(ADVANTEC、カタログ番号16180001)を直径5.6mmに丸抜きにしたものを用いた。また吸収層40の材料には、40mg/mlの高分子吸水樹脂(株式会社ケンユー、携帯ミニトイレ・プルプル、品番3AP-100)を用いた。また吸収層40には、濃度が5.5mg/mlの酵素反応停止液を8μl添加した。
【0043】
濃度が50m mol/lのリン酸ナトリウム(pH 7.4)に過酸化水素と10-アセチル-3, 7-ジヒドロキシフェノキサジンを加え、酵素基質溶液を調整した。なお酵素基質溶液中の過酸化水素の濃度は2m mol/lであり、10-アセチル-3, 7-ジヒドロキシフェノキサジンの濃度は100μ mol/lである。次に気体フィルタ60から気体を吸引しながら、流路111に酵素基質溶液を30μl導入した。酵素反応によって生じた7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンを含む溶液を吸収層40に回収した。なお反応所要時間は約25分であった。
【0044】
次に吸収層40内の3箇所を波長563nmの励起光で照射し、蛍光顕微鏡で観察した。図9に示すように、リステリア死菌の濃度が最も濃い時に、最も強い蛍光が検出され、濃度の低下に応じて、蛍光強度の低下が確認された。なお蛍光顕微鏡の表示スケールは2000-3000であり、露光時間は100msである。また蛍光顕微鏡のフィルタにはU-DM-CY-2を用いた。次に蛍光顕微鏡で得られた画像から蛍光強度を、図10に示すように数値化した。
【0045】
なお第2の実施例においては、試薬のコンタミを防ぐため、試薬含有溶液は8連チューブに分注して操作した。また注入用漏斗部201内部を綿棒で拭いたことにより、非特異的に吸着したHRP標識抗体が減少し、バックグランドノイズが低下した。
【0046】
(第3の実施例)
気体フィルタ60にポリエチレンフィルタ(ワトソン社製特注品、直径4mmフィルターチップ、超高分子ポリエチレン多孔質シート、ポアサイズ30mm)を用いた以外は、第2の実施例と同様にして、7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンを吸収層40に回収した。なお反応所要時間は約36分であった。
【0047】
次に吸収層40内の3箇所を波長563nmの励起光で照射し、蛍光顕微鏡で観察した。図11に示すように、リステリア死菌の濃度が最も濃い時に、最も強い蛍光が検出され、濃度の低下に応じて、蛍光強度の低下が確認された。なお蛍光顕微鏡の表示スケールは2000-3000であり、露光時間は100msである。また蛍光顕微鏡のフィルタにはU-DM-CY-2を用いた。次に蛍光顕微鏡で得られた画像から蛍光強度を、図12及び図13に示すように数値化した。
【0048】
(第4の実施例)
第3の実施例では、濃度が106細胞/ml、105細胞/ml、104細胞/ml、又は0細胞/mlのリステリア死菌含有検査対象溶液を流路111に30μlを導入した。これに対し、第4の実施例では、濃度が105細胞/ml又は0細胞/mlのリステリア死菌含有検査対象溶液を流路111に30μl又は300μlを導入した。他の手順は第3の実施例と同様に実施し、7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンを吸収層40に回収した。
【0049】
次に吸収層40内の3箇所を波長563nmの励起光で照射し、蛍光顕微鏡で観察した。図14及び図15に示すように、濃度が同じでも、リステリア死菌含有検査対象溶液の溶液量が多い方が、蛍光強度も強くなることが確認された。なお蛍光顕微鏡の表示スケールは2000-3000であり、露光時間は100msである。また蛍光顕微鏡のフィルタにはU-DM-CY-2を用いた。次に蛍光顕微鏡で得られた画像から蛍光強度を、図16に示すように数値化した。
【0050】
(第5の実施例)
図6に示す基板10の注入用漏斗部201及び流路111内部への生体分子の非特異吸着について検査した。まず基板10の流路111の出口22に吸引ポンプを接続した。次に60μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を洗浄し、吸引ポンプを用いて20kPaの引圧で吸引した。次に流路111にビーズを配置しないで、1%BSA-PBSでけん濁した濃度が1μg/mlのHRP標識ストレプトアビジン含有溶液を30μl流した。HRP標識ストレプトアビジン含有溶液も、吸引ポンプを用いて20kPaの引圧で吸引した。その後、30μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を2回洗浄し、さらに60μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を1回洗浄した。
【0051】
次に図2に示すように、流路111の出口に溶液フィルタ30、吸収層40、及び気体フィルタ60を配置した。また濃度が50m mol/lのリン酸ナトリウム(pH 7.4)に過酸化水素と10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジンを加え、酵素基質溶液を調整した。なお酵素基質溶液中の過酸化水素の濃度は2m mol/lであり、10-アセチル-3, 7-ジヒドロキシフェノキサジンの濃度は100μ mol/lである。次に気体フィルタ60から気体を吸引しながら、注入用漏斗部201から流路111に酵素基質溶液を30μl導入し、吸収層40に吸収させた。
【0052】
次に吸収層40内の3箇所を波長563nmの励起光で照射し、蛍光顕微鏡で観察した。なお蛍光顕微鏡の表示スケールは2000-5000であり、露光時間は100msである。また蛍光顕微鏡のフィルタにはU-DM-CY-2を用いた。流路111には、HRP標識ストレプトアビジンを捕捉する生体分子が無かったものの、図17に示すように、HRP標識ストレプトアビジンを流すと、7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンの蛍光が確認された。よって基板10の注入用漏斗部201及び流路111内部に、HRP標識ストレプトアビジンが非特異的に吸着する場合があることが示された。
【0053】
次に、別個の図6に示す基板10を新たに用意し、同一の条件で注入用漏斗部201からHRP標識ストレプトアビジン含有溶液を流路111に流し、注入用漏斗部201及び流路111を洗浄した。その後、綿棒で注入用漏斗部201の内部を拭き取り、30μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を2回洗浄し、さらに60μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を1回洗浄した。また再度、綿棒で注入用漏斗部201の内部を拭き取り、30μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を2回洗浄し、さらに60μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を1回洗浄した。
【0054】
その後、図2に示すように、流路111の出口に溶液フィルタ30、吸収層40、及び気体フィルタ60を配置し、気体フィルタ60から気体を吸引しながら、注入用漏斗部201から流路111に酵素基質溶液を30μl導入し、吸収層40に吸収させた。その後、注入用漏斗部201を綿棒で拭かなかった場合と同一の条件で吸収層40を蛍光顕微鏡で観察したところ、図18に示すように、HRP標識ストレプトアビジンを流した場合と、流さなかった場合の蛍光強度の差は小さくなった。よって注入用漏斗部201を綿棒で拭くことにより、注入用漏斗部201内部に非特異的に吸着したHRP標識ストレプトアビジンが効果的に除去できることが示された。
【0055】
次に、別個の図6に示す基板10を新たに用意し、同一の条件で注入用漏斗部201からHRP標識ストレプトアビジン含有溶液を流路111に流した。その後、図5に示すように、注入用漏斗部201を除去した。次に30μlのPBSTで流路111を2回洗浄し、さらに60μlのPBSTで流路111を1回洗浄した。
【0056】
その後、流路111の出口に溶液フィルタ30、吸収層40、及び気体フィルタ60を配置し、気体フィルタ60から気体を吸引しながら、注入用漏斗部201から流路111に酵素基質溶液を30μl導入し、吸収層40に吸収させた。その後、注入用漏斗部201を除去しなかった場合と同一の条件で吸収層40を蛍光顕微鏡で観察したところ、図19に示すように、HRP標識ストレプトアビジンを流した場合と、流さなかった場合の蛍光強度の差はほとんどなくなった。よって注入用漏斗部201を除去することにより、注入用漏斗部201内部に非特異的に吸着したHRP標識ストレプトアビジンが効果的に除去できることが示された。
【0057】
次に、別個の図6に示す基板10を新たに用意し、同一の条件で注入用漏斗部201からHRP標識ストレプトアビジン含有溶液を流路111に流した。その後、過酸化水素濃度が30〜35.5%の原液を1/100に薄めた30μlの過酸化水素で注入用漏斗部201及び流路111を洗浄し、その後、30μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を2回洗浄し、さらに60μlのPBSTで注入用漏斗部201及び流路111を1回洗浄した。
【0058】
その後、図2に示すように、流路111の出口に溶液フィルタ30、吸収層40、及び気体フィルタ60を配置し、気体フィルタ60から気体を吸引しながら、注入用漏斗部201から流路111に酵素基質溶液を30μl導入し、吸収層40に吸収させた。その後、注入用漏斗部201を除去した場合と同一の条件で吸収層40を蛍光顕微鏡で観察したところ、図20に示すように、HRP標識ストレプトアビジンを流した場合と、流さなかった場合の蛍光強度の差は僅かであった。よって注入用漏斗部201及び流路111を過酸化水素で洗浄することにより、注入用漏斗部201及び流路111内部に非特異的に吸着したHRP標識ストレプトアビジンが効果的に除去できることが示された。
【0059】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。例えば上面図である図21及び側面図である図22に示すように、支持部材100に、複数のカラム50a, 50b, 50cを設けてもよい。図22に示すように、カラム50a, 50b, 50cの注入孔141a, 141b, 141cに溶液フィルタ30a, 30b, 30cがそれぞれ配置されており、排出孔142a, 142b, 142cに気体フィルタ60a, 60b, 60cがそれぞれ配置されている。またカラム50a, 50b, 50cの内部に、吸収層40a, 40b, 40cを構成する高分子吸水樹脂ビーズがそれぞれ充填されている。支持部材100の上方に、複数の流路が設けられた基板を配置することにより、実施の形態に係る生体分子検査方法を同時に複数実施することが可能となる。また図23に示すように、支持部材100の表面と裏面にシリコンゴム層91, 92をそれぞれ設けてもよい。シリコンゴム層91, 92を配置することにより、支持部材100の安定性を増すことが可能となる。
【0060】
また実施の形態では、7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンを図2に示す吸収層40に回収する例を示したが、実施の形態に係る化学物質回収キットは、種々の物質の回収に利用可能である。例えば図24に示すように、ビーズ5aに抗体を固定し、抗原を含む溶液を基板10の流路に流すと、抗原だけがビーズ5a上の抗体に捕捉される。その後、基板10の流路の出口に吸収層を配置し、基板10の流路に酸性溶液等を流せば、精製された抗原を吸収層に回収することが可能となる。また図25に示すように、同一濃度で抗原を含む溶液を10倍量流せば、10倍量の抗原がビーズ5a上の抗体に捕捉される。したがって、その後、基板10の流路の出口に吸収層を配置し、基板10の流路に酸性溶液等を流せば、濃縮かつ精製された抗原を吸収層に回収することが可能となる。
【0061】
あるいは実施の形態に係る化学物質回収キットは、抗体の回収にも利用可能である。例えば、アミノ基に反応し共有結合を形成するNHS基(N-Hydroxy succinimide ester)を有するビーズを基板の流路に堰き止め、ビーズ上に抗原タンパク質を結合させる。その後、抗体を含む溶液を基板の流路に流すと、抗体だけがビーズ上の抗原に結合する。その後、基板の流路に酸性溶液等を流し、流路を流れた溶液を吸収層に吸収することにより、精製された抗体を回収することが可能となる。
【0062】
また実施の形態に係る化学物質回収キットは、核酸の回収にも利用可能である。例えばストレプトアビジンでコートされた基板の流路に堰き止め、ビオチン標識二本鎖DNAを含む溶液を基板の流路に流すと、ビオチン標識二本鎖DNAだけがビーズ上のストレプトアビジンに結合する。その後、アルカリ性の溶出液を流路に導入し、一本鎖DNAを含む溶液を吸収層に吸収することにより、精製された一本鎖DNAを回収することが可能となる。
【0063】
以上示したように、この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明からは妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の化学物質回収キット、生体分子検査システム、及び生体分子検査方法は、リステリア、サルモネラ、0-157、大腸菌群、酵母、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌、及びシュードモナス等の微生物及び食中毒菌の検査、黄色ブドウ球菌毒素やセレウス等のバシルス下痢性毒素等の微生物毒素の検査、組換え大豆、及び組換えトウモロコシ等の遺伝子組換え作物(GMO: Genetically modified organism)の検査、卵、ピーナッツ、アーモンド、大豆、及びヘーゼルナッツ等のアレルギー原材料の検査、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、カモ、七面鳥、及びアヒル等の牛海綿状脳症(BSE: Bovine Spongiform Encephalopathy)対策関連の検査、ヒスタミンの検査、かび毒(マイコトキシン)の検査、アラクロル、アルジカルブ、アトラジン、トリアジン、及び尿素除草剤系等の残留農薬の検査、葉酸、ビタミンB21、及びビオチン等のビタミンB群の定量、多環状芳香族、石油系燃料、DDT(Dichloro-diphenyl-trichloroethane)、クロルデン、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、及びフェンサイクリジン(PCP)等の化学汚染物質や環境ホルモンの検査、及びスギ花粉の検査に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態に係る生体分子検査システムの上面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る生体分子検査システムの断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る基板の拡大斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るビーズの模式図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る生体分子検査チップの第1の断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る生体分子検査チップの第2の断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る生体分子検査チップの第3の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の第1の実施例に係る吸収層の蛍光観察像である。
【図9】本発明の実施の形態の第2の実施例に係る吸収層の蛍光観察像である。
【図10】本発明の実施の形態の第2の実施例に係る吸収層の蛍光強度を示すグラフである。
【図11】本発明の実施の形態の第3の実施例に係る吸収層の蛍光観察像である。
【図12】本発明の実施の形態の第3の実施例に係る吸収層の蛍光強度を示すグラフである。
【図13】本発明の実施の形態の第3の実施例に係る吸収層の蛍光強度を示す表である。
【図14】本発明の実施の形態の第4の実施例に係る吸収層の蛍光観察像である。
【図15】本発明の実施の形態の第4の実施例に係る吸収層の蛍光観察像である。
【図16】本発明の実施の形態の第4の実施例に係る吸収層の蛍光強度を示すグラフである。
【図17】本発明の実施の形態の第5の実施例に係る吸収層の第1の蛍光観察像である。
【図18】本発明の実施の形態の第5の実施例に係る吸収層の第2の蛍光観察像である。
【図19】本発明の実施の形態の第5の実施例に係る吸収層の第3の蛍光観察像である。
【図20】本発明の実施の形態の第5の実施例に係る吸収層の第4の蛍光観察像である。
【図21】本発明のその他の実施の形態に係る生体分子検査チップの上面図である。
【図22】本発明のその他の実施の形態に係る生体分子検査チップの第1の側面図である。
【図23】本発明のその他の実施の形態に係る生体分子検査チップの第2の側面図である。
【図24】本発明のその他の実施の形態に係る生体分子検査チップの第1の断面図である。
【図25】本発明のその他の実施の形態に係る生体分子検査チップの第2の断面図である。
【符号の説明】
【0066】
5a, 5b, 5c…ビーズ
10…基板
15…プローブ生体分子
21…入口
22…出口
30, 30a, 30b, 30c…溶液フィルタ
40, 40a, 40b, 40c…吸収層
50, 50a, 50b, 50c…カラム
60, 60a, 60b, 60c…気体フィルタ
70…検出機構
91, 92…シリコンゴム層
100…支持部材
111…流路
112…堰き止め部
141a, 141b, 141c…注入孔
142a, 142b, 142c…排出孔
201…注入用漏斗部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液の流路が設けられた基板と、
前記基板の前記流路の出口に配置される溶液フィルタと、
前記溶液フィルタを透過した前記溶液を吸収する吸収層
とを備えることを特徴とする化学物質回収キット。
【請求項2】
前記流路内に、プローブ生体分子が固定されることを特徴とする請求項1に記載の化学物質回収キット。
【請求項3】
前記流路内に、複数のビーズが堰き止められることを特徴とする請求項1に記載の化学物質回収キット。
【請求項4】
前記複数のビーズのそれぞれの表面に、プローブ生体分子が固定されることを特徴とする請求項3に記載の化学物質回収キット。
【請求項5】
前記溶液フィルタが、ポリカーボネートを含むメンブレンフィルタであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の化学物質回収キット。
【請求項6】
前記溶液フィルタが、前記流路の出口を覆うように配置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化学物質回収キット。
【請求項7】
前記吸収層が、高分子吸水樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の化学物質回収キット。
【請求項8】
前記吸収層を保持するカラムを更に備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の化学物質回収キット。
【請求項9】
前記カラムに、前記吸収層内部の気体を透過させる気体フィルタが設けられていることを特徴とする請求項8に記載の化学物質回収キット。
【請求項10】
前記気体フィルタが、ポリカーボネートを含むメンブレンフィルタであることを特徴とする請求項9に記載の化学物質回収キット。
【請求項11】
前記気体フィルタが、パルプからなることを特徴とする請求項9に記載の化学物質回収キット。
【請求項12】
前記気体フィルタが、無灰パルプからなることを特徴とする請求項9に記載の化学物質回収キット。
【請求項13】
前記基板に設けられた前記流路の入口に配置された注入用漏斗部を更に備えることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の化学物質回収キット。
【請求項14】
前記注入用漏斗部が前記基板から取り外し可能であることを特徴とする請求項13に記載の化学物質回収キット。
【請求項15】
注入孔及び排出孔が設けられたカラムと、
前記注入孔に配置され、溶液を透過させる溶液フィルタと、
前記カラム内に配置され、前記溶液を吸収する吸収層と、
前記排出孔に配置され、前記吸収層内部の気体を透過させる気体フィルタ
とを備えることを特徴とする化学物質回収キット。
【請求項16】
前記溶液フィルタが、ポリカーボネートを含むメンブレンフィルタであることを特徴とする請求項15に記載の化学物質回収キット。
【請求項17】
前記吸収層が、高分子吸水樹脂を含むことを特徴とする請求項15又は16に記載の化学物質回収キット。
【請求項18】
前記気体フィルタが、ポリカーボネートを含むメンブレンフィルタであることを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の化学物質回収キット。
【請求項19】
前記気体フィルタが、パルプからなることを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の化学物質回収キット。
【請求項20】
前記気体フィルタが、無灰パルプからなることを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の化学物質回収キット。
【請求項21】
溶液の流路が設けられた基板と、
前記基板の前記流路の出口に配置される溶液フィルタと、
前記溶液フィルタを透過した前記溶液を吸収する吸収層と、
前記吸収層に吸収された前記溶液に含まれている試薬を検出する検出機構
とを備えることを特徴とする生体分子検査システム。
【請求項22】
前記流路内に、プローブ生体分子が固定されることを特徴とする請求項21に記載の生体分子検査システム。
【請求項23】
前記流路内に、複数のビーズが堰き止められることを特徴とする請求項21に記載の生体分子検査システム。
【請求項24】
前記複数のビーズの表面に、プローブ生体分子が固定されることを特徴とする請求項23に記載の生体分子検査システム。
【請求項25】
前記溶液フィルタが、ポリカーボネートを含むメンブレンフィルタであることを特徴とする請求項21乃至24のいずれか1項に記載の生体分子検査システム。
【請求項26】
前記溶液フィルタが、前記流路の出口を覆うように配置されることを特徴とする請求項21乃至25のいずれか1項に記載の生体分子検査システム。
【請求項27】
前記吸収層が、高分子吸水樹脂を含むことを特徴とする請求項21乃至26のいずれか1項に記載の生体分子検査システム。
【請求項28】
前記吸収層を保持するカラムを更に備えることを特徴とする請求項21乃至27のいずれか1項に記載の生体分子検査システム。
【請求項29】
前記カラムに、前記吸収層内部の気体を透過させる気体フィルタが設けられていることを特徴とする請求項28に記載の生体分子検査システム。
【請求項30】
前記気体フィルタが、ポリカーボネートを含むメンブレンフィルタであることを特徴とする請求項29に記載の生体分子検査システム。
【請求項31】
前記気体フィルタが、パルプからなることを特徴とする請求項29に記載の生体分子検査システム。
【請求項32】
前記気体フィルタが、無灰パルプからなることを特徴とする請求項29に記載の生体分子検査システム。
【請求項33】
前記試薬が蛍光試薬であり、前記検出機構が前記蛍光試薬を検出することを特徴とする請求項21乃至32のいずれか1項に記載の生体分子検査システム。
【請求項34】
前記気体フィルタを介して前記カラム内の気体を吸引する吸引ポンプを更に備えることを特徴とする請求項26乃至32のいずれか1項に記載の生体分子検査システム。
【請求項35】
前記基板に設けられた前記流路の入口に配置された注入用漏斗部を更に備えることを特徴とする請求項21乃至34のいずれか1項に記載の生体分子検査システム。
【請求項36】
前記注入用漏斗部が前記基板から取り外し可能であることを特徴とする請求項35に記載の生体分子検査システム。
【請求項37】
流路が設けられた基板を用意するステップと、
前記基板の流路内に、プローブ生体分子を固定するステップと、
前記流路にターゲット生体分子を含む溶液を流し、前記ターゲット生体分子を前記プローブ生体分子で捕捉するステップと、
前記捕捉されたターゲット生体分子を酵素で修飾するステップと、
前記基板に設けられた流路の出口に、溶液フィルタを配置するステップと、
前記酵素の基質を含む溶液を前記流路に流し、前記酵素及び前記基質を反応させるステップと、
前記酵素及び前記基質の反応生成物を含む溶液を前記溶液フィルタを介して、前記反応生成物を含む溶液を吸収する吸収層に導入するステップ
とを含むことを特徴とする生体分子検査方法。
【請求項38】
前記反応生成物が蛍光物質であることを特徴とする請求項37に記載の生体分子検査方法。
【請求項39】
前記吸収層に励起光を照射し、前記蛍光物質の蛍光を検出するステップを更に含むことを特徴とする請求項38に記載の生体分子検査方法。
【請求項40】
前記検出した蛍光の強度に基づいて、前記ターゲット生体分子を計測するステップを更に含むことを特徴とする請求項39に記載の生体分子検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−198259(P2009−198259A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39237(P2008−39237)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度、関東経済産業局、地域新生コンソーシアム研究開発事業、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(501131302)株式会社生体分子計測研究所 (15)
【Fターム(参考)】