説明

化学療法耐性モニタリングのためのErbB受容体方法及びキット

本発明は、対象の癌の予後を決定する又は癌治療の効果を改善する方法及びキットでのErbB受容体レベルのモニタリングに関する。本発明はまた、対象の癌の臨床的徴候の再発を予測する方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は化学療法レジメンに対する耐性発現を予測する方法を提供する。他の実施形態において、本発明は、ErbB-2、ErbB-3及び/又はErbB-4のレベルをモニタリングすることにより、対象の癌治療の効果を改善する方法を提供する。本発明の方法の対象は、ErbB-1陽性腫瘍の化学療法レジメンの治療を以前に受けたことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2003年8月5日出願の米国仮特許出願第60/492,759号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、対象の癌の予後決定又は癌治療の効果改善を目的としたErbB受容体レベルモニタリングの方法及びキットに関する。また、本発明は、対象の癌の臨床的徴候の再発を予測する方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、化学療法レジメンに対する耐性発現を予測する方法を提供する。他の実施形態において、本発明は、ErbB-2、ErbB-3、ErbB-4又はそれらの組み合わせのレベルのモニタリングにより、対象の癌治療の効果を改善する方法を提供する。本発明の方法の対象は、ErbB-1陽性腫瘍の化学療法レジメンで以前に治療されたことが好ましい。
【背景技術】
【0003】
2.1 ErbB受容体ファミリー及び細胞情報伝達
多くの細胞表面分子は、細胞の外部環境から内部環境へ情報を伝達している。細胞は、生体の変化するニーズに合わせて、適切に機能し、応答しなければならないため、多細胞生物ではこの「感知」は重要である。細胞表面感知器の主要ファミリーの1つは、内因性のタンパク質チロシンキナーゼ活性がある膜内外受容体を含むErbBファミリーである。このファミリーのプロトタイプのメンバーは、HER、ヒトEGFR又はErbB-1ともいわれる上皮成長因子受容体(EGFR)である。EGFRは、チロシンキナーゼ活性があるといわれた最初の受容体であり、また、クローン化し、配列決定されたErbB受容体ファミリーの最初のメンバーである(Schlessinger、2000年、Cell 103:211-225頁;Simon、2000年、Cell 103:13-15頁を参照)。
【0004】
EGFR(ErbB-1)は、Her2/neu(ErbB-2)、HER-3(ErbB-3)、及びHER-4(ErbB-4)を含む密接に関連した4つの受容体のうちの1つである。これらの受容体は、細胞膜内で、不活性な単量体として存在し、リガンド結合に誘導された活性化の後に二量化する。二量化は、ホモ二量体化でもよく、又は、EGFRと、ErbB受容体ファミリーの他のメンバーとの間のヘテロ二量体化でもよい。リガンド結合の後、ErbB受容体のチロシンキナーゼ細胞内ドメインが活性化する。次いで、細胞内ドメインの自己リン酸化が起こり、細胞内のカスケードが開始する。ErbB受容体情報伝達経路は、ras及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼの活性化に関与し、次いでこれが、G1期からS期への細胞周期進行に必要なタンパク質である、サイクリンD1等の数種の核タンパク質を活性化する(Wells、1999年、Int.J.of Biochem,&Cell Biol.31:637-43頁による概説を参照)。
【0005】
上皮成長因子(EGF)は、プロトタイプなErbB-1のリガンドであり、全てがErbB-1と結合し、形質転換成長因子アルファ(TGFα)、アンフィレグリン(amphireguline)、ヘパリン結合EGF、及びベータセルリン等の関連成長因子のファミリーのメンバーである。対照的に、ErbB-3受容体及びErbB-4受容体は、各々、ヘレグリン受容体及びノイレグリン受容体として機能するのに対し、ErbB-2のリガンドは特定されていない(Wells、1999年、Int.J.of Biochem,&Cell Biol.31:637-43頁による概説を参照)。
【0006】
2.2 癌の発現及び進行におけるErbB受容体ファミリーの役割
EGFR又はErbBファミリーの受容体は、癌病理で重要な役割を果たすと考えられ、多くの科学文献で概説されている(Goustinら、1986年、Cancer Res.46:1015-29頁; Aaranson、1991年、Science 254:1146-53頁; Sedlacek、2000年、Drugs 59:435-76頁; Wells、1999年、Int.J.of Biochem,& Cell Biol.31:637-43頁; Noonbergら、2000年、Drugs 59:753-67頁;Woodburn、1999年、Pharmacol.Ther.82:241-50頁;Olayioyeら、2000年、EMBO J.19:3159-67頁;Tang,C.K.&Lipman,M.E.、 Hormones and Signaling、O'Malley, B.W.、113-165頁、Academic Press、San Diegoを参照)。ErbB受容体は、例えば、非小細胞肺癌、乳癌、頭頸部癌、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、結腸直腸癌及びグリア芽腫の多くの癌に関与している。鳥類赤芽球症腫ウイルスがErbB-1の異常体をコードすることが判明した時、ErbB受容体が初めて癌に関与している。ErbB受容体はまた、細胞増殖、アポトーシス、分化、血管新生、運動性及び浸潤に関与する。癌のErbB情報伝達の調節不全は、受容体の転写、翻訳又はタンパク質の安定性を増加させる、遺伝子増幅及びErbB変異を含む種々の機構により生じうる。ErbB-1情報伝達の治療的遮断は、癌患者の治療に有益であると考えられている(例えば、Woodburn、1999年、Pharmacol.Ther.82:241-50頁を参照)。
【0007】
EGFR又はその刺激性リガンドの作用を阻害する種々の方法が研究され、例えば、酵素阻害剤、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド及び融合タンパク質等の多数の有望な治療薬が開発されている。初期の研究は、癌治療におけるEGFR阻害に対する期待しうる可能性を示している(概説は、Sedlacek、2000年、Drugs 59:435-76頁;Wells、1999年、Int. J.of Biochem、& Cell Biol.31:637-43頁;Noonbergら、2000年、Drugs 59:753-67頁;Woodburn、1999年、Pharmacol.Ther.82:241-50頁を参照)。
【0008】
ErbBに関連する癌治療の有望なアプローチの1つはEGFR特異的化学療法剤であるが、それらのいくつかは臨床試験中である(例えば、IMC-C225及びZD1839)。しかしながら、多くの化学療法剤は耐性発現により、その効果が限られてきた。あるErbB受容体の標的化が最終的に他のErbB受容体のアップレギュレーションを導き、臨床的な耐性発現が起こるか否かは未だ不明である(DeBonoら、2002年、Trends in Mol.Med.8:19-26頁)。従って、寛解中の対象を評価する予測法の開発、及び活性なErbB関連癌に罹患した対象の癌治療の効果改善が当業界で必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、癌又は癌病歴のある対象、好ましくはヒトの疾病の経過に影響を与える方法を提供する。また、本発明は、対象の癌治療が改善するように、癌に罹患した対象に対して、予後のための、また、治療方針決定の方法を提供する。本発明の方法は、ErbB関連癌、すなわち、ErbB受容体タンパク質の異常発現及び/又は活性に関連する癌に罹患した対象に特に有用である。特に、本発明は、ErbB-1陽性腫瘍に罹患した対象の、限定しないが、ErbB−2、ErbB−3、及びErbB−4のうちのいずれか1種以上を含む1種以上のErbB受容体のレベルのモニタリングにより、対象の癌の予後手段を、医師に提供するという知見にある程度基づく。本発明は、対象の1以上の試料中の少なくとも1種のErbB受容体又は2種以上のErbB受容体の組み合わせのレベルを測定することを含む。特定の一実施形態において、本発明は、ErbB-2、ErbB-3若しくはErbB-4又はそれらの組み合わせのレベルを測定することを含む。他の特定の実施形態において、本発明は、ErbB-3、若しくはErbB-4又は双方のレベルを測定することを含む。一実施形態において、本発明は、ErbB-2若しくはErbB-3又は双方のレベルを測定することを含む。他の実施形態において、本発明は、ErbB-2若しくはErbB-4又は双方のレベルを測定することを含む。ErbB受容体レベルのモニタリングは、限定はしないが、ErbB受容体活性、受容体タンパク質存在量及びErbB受容体mRNA発現プロフィルのモニタリングを含みうる。
【0010】
一実施形態において、本発明は、対象の癌の臨床的徴候の再発を予測する方法を提供する。好ましい一実施形態において対象はヒトである。最も好ましい一実施形態において、該対象は、療法レジメン例えば、ErbB-1陽性腫瘍の化学療法、放射線療法の治療を以前に受けたことがある。癌、特にErbB-1陽性腫瘍治療のための化学療法及び放射線療法のレジメンは、当業界に周知であり、本明細書に例示されている。特定の一実施形態において、対象の癌の臨床的徴候の再発を予測する方法は、寛解期に対象から得た試料中の少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定すること、及び該測定レベルから、対象の癌の臨床的徴候の再発危険性が増しているか否かを決定することを含む。他の特定の実施形態において、対象の癌の臨床的徴候の再発を予測する方法は、寛解期に対象から得た試料中の少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定すること;及び前記測定レベルを標準レベルと比較することを含み、該方法において、標準レベルと比較して、少なくとも1種のErbB受容体の測定レベルが高い場合に、対象の癌の臨床的徴候の再発危険性が増していることが示される。一実施形態において、ErbB受容体のレベルは、連続的にモニタリングされる。
【0011】
他の実施形態において、本発明は、対象の癌の予後を決定する方法を提供する。該対象は、ヒトであることが好ましく、該対象は、ErbB-1陽性腫瘍に対する療法レジメン、例えば、化学療法、放射線療法による治療を以前に受けたことが最も好ましい。特定の一実施形態において、対象の癌の予後を決定する方法は:寛解期に対象から得た試料中の少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定すること;及び前記測定レベルを標準レベルと比較することを含み、該方法において、少なくとも1種のErbB受容体の測定レベルが標準レベルと比較して高い場合に、対象の癌の転移、再発又は回帰の危険性が増していることが示される。一実施形態において、ErbB受容体のレベルは、連続的にモニタリングされる。
【0012】
他の実施形態において、本発明は、対象、好ましくはヒト、最も好ましくは、ErbB-1陽性腫瘍の化学療法レジメンの治療を以前に受けた対象における療法レジメン、例えば化学療法、放射線療法に対する耐性発現を予測する方法を含む。特定の一実施形態において、対象における化学療法レジメンに対する耐性発現を予測する方法は:寛解期に対象から得た試料中の少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定すること;及び前記測定レベルを、標準レベルと比較することを含み、該方法において、少なくとも1種のErbB受容体の測定レベルが標準レベルと比較して高い場合に、対象の該化学療法に対する耐性発現の危険性が増していることが示される。一実施形態において、ErbB受容体のレベルは、連続的にモニタリングされる。
【0013】
他の実施形態において、本発明は、癌に罹患した対象、好ましくはヒト対象の癌治療の効果を改善する方法を含む。特定の一実施形態において、該方法は:寛解するように治療レジメンで対象を治療すること;寛解期に対象から得た試料中の少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定すること;及び前記測定レベルを標準レベルと比較することを含み、該方法において、ErbB受容体の測定レベルが標準レベルと比較して高い場合に、対象に他の治療が必要であることが示される。一実施形態において、ErbB受容体のレベルは連続的にモニタリングされる。
【0014】
本発明の方法の種々の実施形態において、測定されるErbB受容体レベルは、ErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、又はErbB-4の1種以上のいずれでもない。
【0015】
本明細書に開示された種々の実施形態において、本発明は、癌又は癌の病歴がある少なくとも1個の対象からの、限定はしないが、生物学的液体(例えば血液、尿)、又は組織試料等の少なくとも1の試料を得ることを含む。該試料は、当業者に公知の任意の方法論を用いて得られうる。本発明の方法は、癌が、少なくとも1種のErbB受容体の過剰発現及び/又は異常発現に関与する癌である場合に特に有用である。本発明の特に好ましい実施形態において、癌は、非小細胞肺癌、乳癌、頭頸部癌、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、結腸直腸癌及びグリア芽腫からなる群から選択される。
【0016】
特定の一実施形態において、本発明は、ErbB受容体プローブを用いることを含む、上記癌のいずれかに関して、少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定することを含む。該ErbB受容体プローブは、限定しないが、抗体又はその断片、核酸、タンパク質及び小分子を含みうる。特定の一実施形態において、該タンパク質は、ErbB受容体リガンド又はその断片である。他の特定の実施形態において、該プローブは、ErbB受容体に免疫特異的に結合する抗ErbB受容体抗体、好ましくはモノクローナル抗体、又はその免疫特異的な断片もしくは誘導体である。さらに他の特定の実施形態において、該プローブは核酸である。
【0017】
本発明はさらに:(a)抗ErbB受容体抗体又はその免疫特異的断片、ErbB受容体mRNAに特異的にハイブリダイズしうる核酸プローブ、及びErbB受容体核酸の少なくとも一部のPCR増幅のしうる核酸プライマー対からなる群から選択される少なくとも1の試薬、及び(b)本発明のための、対象の少なくとも1種のErbB受容体レベルの測定で使用する使用説明書を含むキットに関する。特定の一実施形態において、該キットは、標準又は対照に使用する所定の量の精製ErbB受容体タンパク質又は核酸をさらに含む。他の特定の実施形態において、該キット内の該試薬は検出マーカーにより標識化される。該検出マーカーは、限定しないが、化学発光標識、酵素標識、蛍光標識又は放射性標識を含みうる。
【0018】
本発明の方法及びキットのいずれかの特定の一実施形態において、試料中のErbB受容体レベルの測定は、該試料を、ErbB受容体に免疫特異的な抗体又はその断片と接触させること;及び前記抗体又はその断片と試料中のErbB受容体との間に生じた結合を定量化することを含む。他の特定の実施形態において、試料中のErbB受容体レベルの測定は、該試料を、ErbB受容体mRNAに特異的にハイブリダイズする核酸と接触させ、該核酸プローブと試料中の該mRNAに生じたハイブリダイゼーションを定量化することを含む。
【0019】
他の実施形態において、試料中のErbB受容体レベルの測定は、試料中のErbB受容体活性を定量化すること(例えば、当業界に公知の任意の方法で受容体チロシンキナーゼ活性を測定することにより)を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、対象の癌の予後及び療法を最適化する方法及びキットを提供する。本発明の方法及びキットは、化学療法の耐性又は寛解終了の初期徴候として、限定はしないが、ErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、及びErbB-4等のErbB受容体の発現及び/又は活性レベルの上昇を示しうる寛解期の癌に特に有用である。本発明の方法に適する具体的な癌としては、限定はしないが、非小細胞肺癌、乳癌、頭頸部癌、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、結腸直腸癌及びグリア芽腫が挙げられる。
【0021】
特定の一実施形態において、本発明は、寛解期の対象から得た試料中の少なくとも1種のErbB受容体のレベルを連続的にモニタリングすること;及び前記測定レベルを、標準レベルと比較することを含む、対象、好ましくはヒトの癌の臨床的徴候の再発を予測する方法を提供し、該方法において、測定レベルが標準レベルと比較して高い場合に、対象の癌の臨床的徴候の再発危険性が増していることが示される。特定の一実施形態において、該対象は、ErbB-1陽性腫瘍の化学療法レジメンで以前治療を受けていた。
【0022】
本明細書で用いる「癌の臨床的徴候」とは、対象の癌に存在する何らかの徴候又は指標をいい、該徴候又は指標は、当業者(例えば、腫瘍学者、ナース・プラクティショナー)に周知と考えられる。癌の臨床的徴候とは、癌に関連することが知られている任意の症状でありうる。いくつかの癌の臨床的徴候としては、例えば、慢性痛、悪心、嘔吐、味覚異常、便秘、泌尿器症状(例えば、膀胱痙攣)、呼吸器症状、皮膚不調(例えば、そう痒、脱毛)、又は発熱等が挙げられる。
【0023】
本明細書で用いる「寛解」とは、寛解は通常、腫瘍分野で規定されているように癌の症状が軽減又は除去された期間をいう。
【0024】
本明細書で用いる、試料中のErbB受容体レベルを「連続的にモニタリングする」とは、試料中のErbB受容体レベルを1回より多く、例えば、年4回、2ヶ月毎、1月毎、2週間毎、週1回、3日毎又は1日毎に測定することをいう。レベルの連続的モニタリングは、当業者が必要と考える定期的間隔で、ErbB受容体のレベルを定期的に測定することを含む。
【0025】
本明細書で用いる用語「標準レベル」は、1以上の正常な対象で決定したErbB受容体レベルの基線量をいう。例えば、基線は少なくとも1の対象から得ることができ、好ましくは、複数の対象(例えば、n=2〜100以上)の平均から得られ、単数又は複数の該対象は、以前に癌の病歴がない。本発明において、ErbB受容体レベルの測定は、ErbB受容体プローブ又はErbB受容体活性試験を用いて実施しうる。
【0026】
本明細書で用いる、ErbB受容体の測定レベルが標準レベルと比較して「高い場合」とは、試料中のErbB受容体の量又は濃度が、ErbB受容体レベルの測定で、当業界に公知の又は将来開発される任意の方法で検出される標品と比較して対象が十分により高いことを意味する。例えば、測定レベルが標準レベルと比較して高い場合とは、検出しうる、いかなる統計的に有意に高い場合もありうる。このような高い場合としては、標品と比較して、限定はしないが、約1%、約10%、約20%、約40%、約80%、約2倍、約4倍、約8倍、約20倍、又は約100倍、又はそれ以上に高い場合を列挙しうる。本明細書で用いる「約」は、該数値のプラス又はマイナス10%の数値をいう。
【0027】
本明細書で用いる、本発明の方法の「ErbB受容体レベルの測定」という記載は、ErbB受容体レベル又はErbB受容体レベルのいかなる代用測定方法をも意味する。このような代用方法は、限定しないが、ErbB受容体チロシンキナーゼ活性試験を挙げることができる。ErbB受容体レベルは、完全長ErbB受容体タンパク質の存在量に相当しうる。あるいは、ErbB受容体レベルは、ErbB受容体タンパク質断片の存在量に相当しうる。ErbB受容体レベルは、ErbB受容体全体又はその一部をコードする核酸(又はそれに相補的な配列)の存在量を測定して決定できる。好ましい一実施形態において、ErbB受容体をコードするmRNAの存在量は、定量的PCRを用いて決定される。
【0028】
ErbB受容体の量又は濃度を決定しうる、本明細書において用いられるプローブとしては、限定はしないが、核酸、タンパク質(例えば、抗体)、又は小分子(例えば、OS1-774、OSI Pharmaceuticals / Genetech社)が挙げられる。特定の一実施形態において、該プローブは、ErbB受容体に特異的に結合するErbB受容体リガンド(例えば、ノイレグリン)又はその断片である。他の実施形態において、該プローブは、ErbB受容体に免疫特異的に結合する、例えば、モノクローナル抗体等の抗体又はその結合断片である。
【0029】
他の実施形態において、本発明は、寛解期に対象から得た試料中の少なくとも1種のErbB受容体のレベルを連続的にモニタリングすること;及び前記レベルを標準レベルと比較することを含む、対象、好ましくはErbB-1陽性腫瘍の化学療法レジメン治療を以前に受けた対象の癌の予後を決定する方法を含み、該方法において、少なくとも1種のErbB受容体の測定レベルが標準レベルと比較して高い場合に、対象の癌の転移、再発又は回帰の危険性が増していることが示される。
【0030】
他の実施形態において、本発明は、寛解期に対象から得た試料中の少なくとも1種のErbB受容体のレベルを連続的にモニタリングすること;及び前記測定レベルを標準レベルと比較することを含む、対象、好ましくはErbB-1陽性腫瘍の化学療法レジメン治療を受けた対象の化学療法レジメンへの耐性発現を予測する方法を包含し、該方法で、測定レベルが標準レベルと比較して高い場合に、対象の該化学療法レジメンに対する耐性発現の危険性が増していることが示される。
【0031】
対象が耐性となった化学療法レジメンは、特にErbB-1受容体の異常発現及び/又は活性に関連する癌の、当業界に公知のいかなる化学療法治療、限定はしないが、例えば、IMC-225(ErbB-1受容体に結合する抗体であり、EGF誘導自己リン酸化を遮断すると考えられている;Imclone Systems、New York, NY, USA)、又はZD1839(ErbB-1チロシンキナーゼ活性の選択的可逆的阻害剤であるキニザロン(quinizalone)誘導体、AstraZeneca PLC)等、ErbB情報伝達経路指向の化学療法剤による治療を挙げることができる。
【0032】
当業界に公知の化学療法剤の非限定的例は、メトトレキサート、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イフォスファミド、ニトロソ尿素、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン、エトポシド類、カンパテシン類(campathecins)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、及びドセタキセル、ドキソルビジン、エピルビシン、5-フルオロウラシル、タキサン類、例えばドセタキセル、及びパクリタキセル、ロイコボリン、レバミソール、イリノテカン、エストラムスチン、エトポシド、ニトロソ尿素、例えばカルムスチン及びロムスチン、ビンカアルカロイド、白金化合物、マイトマイシン、ゲンシタビン、ヘキサメチルメラミン、トポテカン、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン類、Gleevec(商標)(メシル酸イマチニブ)、ハービマイシンA、ゲニステイン、エルブスタチン及びラベンダスチンAである。好ましい一実施形態において、該化学療法剤は、Gleevec (商標)(メシル酸イマチニブ)である。化学療法剤の他の例は、標準的な教科書で見出せうる。例えば、Manual of Clinical Oncology、Dennis A.Casciato及びBarry B. Lowitz 編集、第4版、2000年、7月15日、Little, Brown and Company、米国を参照されたい。
【0033】
放射線療法もまた当業界で周知である。例えば、その全体が参照として本明細書に組み込まれる、DeVita、Vincent、Hellman、Samuel及びRosenberg編集Cancer:Principles and Practice of Oncology、第6版、Lippincott Williams & Wilkins、2001年7月を参照されたい。
【0034】
本発明は、さらに:寛解になるように治療レジメンで該対象を治療すること;寛解期に対象から得た試料中の少なくとも1種のErbB受容体のレベルを連続的にモニタリングすること;及び前記測定レベルを標準レベルと比較することを含む、癌に罹患した対象の癌治療の効果を改善する方法を包含し、該方法では、少なくとも1種のErbB受容体の測定レベルが標準レベルと比較して高い場合に、対象に他の治療が必要であることが示される。
【0035】
さらなる一実施形態において、該抗体又は他のプローブは、検出マーカーで標識化される。特定の一実施形態において、該検出マーカーは、化学発光標識、酵素標識、蛍光標識、又は放射性標識である。
【0036】
本発明の方法及びキットのいずれかの特定の一実施形態において、試料中のErbB受容体レベルの測定工程は、該試料をErbB受容体に免疫特異的な抗体又はその断片と接触させること;及び該抗体又はその断片と試料中のErbB受容体との間に生じた何らかの結合を定量化することを含む。他の特定の実施形態において、試料中のErbB受容体レベルの測定工程は、該試料をErbB受容体mRNAに特異的にハイブリダイズする核酸と接触させ、該核酸プローブと試料中のmRNAとの間に生じた何らかのハイブリダイゼーションを定量化することを含む。
【0037】
本発明の方法は、限定はしないが、ErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、及びErbB-4等のErbB受容体タンパク質をコードする何らかの核酸のレベルを測定するために使用しうる。例えば、本発明の方法は、(i)ヒトErbB-1、例えば、胎盤細胞及びA431癌細胞由来のヒトErbB-1のヌクレオチド配列(Ulrichら、1984年、Nature 309:418-425頁);(ii)ヒトErbB-2、例えば、Coussensら(1985年Science230:1132-9頁)によるヒト胎児DNAライブラリーからクローン化したヒトErbB-2のヌクレオチド配列;(iii)GENBANK登録番号AH001455、M11762、M11763、M11764、M11765、M11766、M11767を各々有する、ヒトErbB-2のエクソン1〜7のいずれか1以上のヌクレオチド配列;(iv)ヒトErbB-3、例えば、ヒト癌細胞系から単離されたErbB-3のヌクレオチド配列(Plowmanら,1990年、Proc.Natl.Acad.Sci.米国、87:4905-9頁);又は(v)GENBANK登録番号AF041792を有するニワトリErbB-4のヌクレオチド配列の少なくとも一部を使用しうる。これらの文献に引用されたヌクレオチド配列は全て、その全体が参照により、本明細書に組み込まれている。
【0038】
また、本発明の方法は、限定はしないが、ErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、及びErbB-4等の1以上のErbB受容体タンパク質のレベルを測定するために用いられうる。例えば、本発明の方法はポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)若しくは酵素結合免疫吸着試験(ELISA)又はタンパク質定量化の当業界で公知の他の任意の標準的方法でErbB受容体タンパク質の存在量を測定しうる。
【0039】
他の実施形態において、本発明は:(a)ErbB受容体レベルを定量化しうる少なくとも1の試薬;及び(b)本発明の方法で該試薬を使用するための使用説明書を含むキットを提供する。ErbB受容体レベルは、例えば、抗ErbB受容体抗体、ErbB受容体のmRNAとハイブリダイズしうる核酸プローブ、及びErbB受容体の核酸の少なくとも一部の増幅をプライムしうる核酸プライマー対からなる群から選択される試薬を用いて定量化しうる。該説明書は本発明の種々の実施形態の1以上を記載しうる。例えば、該説明書はErbB受容体活性試験を詳述しうる。他の特定の実施形態において、該キットは、標準又は対照としての使用に十分な、所定量の精製ErbB受容体タンパク質又はErbB受容体をコードする核酸又はその断片をさらに含む。他の特定の一実施形態において、該キット内の該試薬は検出マーカーにより標識化される。特定の一実施形態において、該検出マーカーは、化学発光標識、酵素標識、蛍光標識、又は放射性標識である。
【0040】
4.1 癌の予後法
本発明は、対象の癌の療法及び/又は予後を改善するために、当業界で利用しうる任意の方法を用いて、ErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、及びErbB-4から選択されるErbB受容体のレベルをモニタリングするための種々の方法及びキットを提供する。特に、ErbB受容体モニタリングは、(i)例えば、以前に化学療法レジメン治療を受けたErbB-1陽性腫瘍がある対象の癌の臨床的徴候の再発を予測すること;(ii)以前に化学療法レジメン治療を受けた対象の癌の予後を決定すること;(iii)癌に罹患した対象の化学療法の耐性発現を予測すること;及び(iv)癌に罹患した対象の癌治療の効果を改善することに有用である。
【0041】
ErbB受容体レベルの検出及び/又は定量化の当業界に公知の任意の方法が、本発明の方法及びキットに使用でき、その多くが本明細書に例示されている。ErbB受容体活性又はErbB受容体相対活性、例えば、ErbB受容体チロシンキナーゼ活性の検出及び/又は定量化の当業界に公知の方法が特に好ましい。
【0042】
ある実施形態において、本発明は、限定はしないが、ErbB受容体チロシンキナーゼ活性レベルの測定又はErbB受容体情報伝達カスケードの1以上の下流エフェクターの活性測定等、ErbB受容体活性又はErbB受容体相対活性の測定を含む。ErbB受容体活性又はErbB受容体相対活性の測定は、本明細書に開示の何らかの方法、又は当業者に公知の任意の標準的方法により行うことができる。
【0043】
他の実施形態において、本発明は、本明細書に開示の方法又は当業界に公知の任意の標準方法を用いて、対象から得た試料中のErbB受容体をコードする核酸の定量化を含む。
【0044】
さらに他の実施形態において、本発明は、癌に罹患した対象から得た試料中のErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、ErbB-4又はその組み合わせの定量化を含む。ErbB受容体タンパク質の検出及び定量化の当業界に公知の任意の方法が本発明の範囲内に包含される。
【0045】
4.2 本発明の方法に使用される試料
本発明の予後法の試料は、対象から、好ましくは非観血的方法で得られうる任意の試料を含む。対象から試料を得る方法は手間がかからないことが好ましい。本発明の目的のための試料としては、限定はしないが、生物学的液体、例えば、血清、血漿、尿、又は血液;組織試料;又は組織抽出物を挙げることができる。このような試料は、当業界で公知の任意の標準方法、例えば、指刺し血液試料、頬側スワッブ、生検材料等から得られうる。
【0046】
好ましい実施形態において、本発明の方法の試料は該対象から定期的に得られる血液又は血清試料である。本発明の方法で使用される試料は腫瘍が生じた特定の組織から得る必要はない。特定の作用機構には拘束されないが、ErbB受容体が偏在的に発現することを考慮すると、例えば化学療法等の療法がErbB受容体に標的化される際は、本質的に体内の全てのErbB受容体が標的化される。従って、ErbB指向療法に対する耐性が一度発現すれば、腫瘍が生じた特定の組織だけからではなく、生体全体から検出可能と考えられる。
【0047】
本発明は、癌に罹患した対象から試料を得るため当業界で公知の任意の組織試料採取又は生検法の使用を含む。一部の実施形態において、対象に乳癌又は乳癌の病歴がある場合、乳房組織を得るために、限定はしないが、コア生検及び微細針吸引等当業者に公知の任意の方法を使用しうる(例えば、その全体が参照として本明細書に組み込まれるLawrenceら, 2001年, J.Clin.Oncol.19:2754-63頁;Fabianら1993年J.Cell.Biochem.17G: 153-160頁;Boernerら、1999年、Cancer87(1):19-24頁;Rottenら、1993年、Eur.J.Obstet.Gynecol. Reprod.Biol.49(3):175-86頁を参照)。他の実施形態において、本発明は、癌に罹患した対象から乳房組織試料を得るための洗浄及び乳管液の乳首吸引を含む。洗浄及び乳管液の乳首吸引の例示的方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kleinら(2002年、Environmental and Molecular Mutagenesis 39:127-33頁)に提示されている。
【0048】
他の実施形態において、該対象に前立腺癌又は前立腺癌の病歴がある場合、限定はしないが、針生検及び経直腸吸引生検等、当業界に公知の任意の生検法が本発明の方法に使用しうる。例えば、その全体が参照として本明細書に組み込まれるKaufmanら、1982年、Urology 19(6):587-91頁を参照されたい。
【0049】
ある実施形態において、該対象に結腸直腸癌がある場合、限定はしないが、針吸引及び固体生検等、当業界に公知の任意の生検又は組織試料採取法が本発明の範囲内にある。例えば、その全体が参照として本明細書に組み込まれているGreenbaumら、1984年、Am.J.Clin.Pathol.82(5):559-64頁を参照されたい。
【0050】
肺癌の場合、本発明は、限定はしないが、微細針吸引、EUS誘導微細針吸引、気管支生検、経食道生検、及び気管支肺胞洗浄等当業界に公知の任意の組織試料採取法及び生検法の使用を含む。例えば、その全体が参照として本明細書に組み込まれているDevereauxら、2002年、Gastorintest.Endosc.56:397-401頁; Rosellら、1998年、Eur.Respir.J.12(6): 1415-8頁; Hunerbeinら、1998年、J.Thorac.Cardiovasc.Surge.116(4):554-9頁; Kvale、1996年、Chest Surg.Clin.N.Am.6:205-22頁を参照されたい。
【0051】
4.3 ErbB受容体レベルの定量化法
ErbB受容体レベルは、本発明の方法及びキットにおいて、例えば、受容体活性、核酸存在量、又はタンパク質存在量を測定することにより定量化しうる。
【0052】
4.3.1 ErbB受容体活性の試験
ErbB受容体は、自己リン酸化によるチロシンキナーゼドメインの活性化後のリガンド結合で多数の下流情報伝達経路を誘発する。ErbB受容体の細胞内キナーゼドメインのアミノ酸位置、992、1068、1086、1148、及び1173に、5つの自己リン酸化部位がある(ErbB-3触媒ドメインの配列は、この受容体にタンパク質チロシンキナーゼ触媒活性がないことを示唆しているため、ErbB-3を除いている;Carraway及びCantley、1994年、Cell 78:5-8頁;Schlessinger、2000年、Cell 103:211-225頁を参照)。ErbB受容体のチロシン自己リン酸化は、種々の情報伝達タンパク質、特に、PTB及びSH2ドメインを含む情報伝達タンパク質が動員及び活性化され、その後、限定はしないが、PHドメイン、SH3ドメイン、WWドメイン、PDZドメイン、及びFYVEドメイン等の他の連結部位を含有するタンパク質ファミリーが動員され、ErbB受容体活性化を介在する(概要は、Schlessinger、2000年、Cell 103:211-225頁を参照)。
【0053】
ras-MAPキナーゼカスケードは、ErbB受容体情報伝達機構により活性化される(Wells、1999年、The Int.J.of Biochem.& Cell Biol.31:637-43頁を参照)。PLCγ-介在経路及びras-介在経路は共に、ErbB受容体ファミリーを介して誘導されたシグナルを中継する。PLCγは、ErbB細胞内キナーゼドメインのリン酸化チロシン部位のそのSH2ドメインの結合を介して活性化ErbB受容体へ速やかに動員され;PLCγが活性化されると、その基質PtdIns(4,5)P2を加水分解し、2つの第2伝達物質DAG及びIns(1,4,5)P3を形成し、次いでこれらが特定の細胞内受容体と結合してカルシウム放出をおこす。
【0054】
本発明は、限定はしないが、ErbB受容体チロシンキナーゼ活性のレベル測定及びPLCγ、ras、MAPキナーゼ、PKC等のErbB受容体情報伝達カスケードの1以上の下流エフェクターの活性測定等ErbB受容体相対活性及び/又はErbB受容体活性のレベル測定を含む。本発明は、当業者に公知の標準試験を用いた1以上のErbB受容体介在性生物学的応答の測定法、例えば、流動細胞計測法によるカルシウム動員の測定、ErbB受容体のチロシンキナーゼドメインのリン酸化測定及びMAPKのリン酸化及び活性化の測定を含む。特定の一実施形態において、本発明はErbB受容体情報伝達経路の1種以上の下流情報伝達分子活性化測定法を含む。
【0055】
ある実施形態において、本発明の試験は、対象から得た試料中のErbB受容体のチロシンリン酸化量を測定し、ErbB受容体のチロシンリン酸化量を標準レベルと比較するインビトロキナーゼ試験を含みうる。例えば、限定ではないが、これらの試験は、限定はしないが、抗ホスホ-ErbB-2ポリクローナル抗体(Y1428)、抗ErbB-2抗体、抗ErbB-3クローン2F12、抗ErbB-3クローンH3.105.5、抗ErbB-4のモノクローナル及びポリクローナル抗体等、本明細書の4.9節に開示されたErbBに特異的な抗体(又は、Upstate USA、Charlottesville、VAの抗体等、商品として入手しうるもの;hppt://www.upstate.comを参照)のいずれかを使用し、当業者に公知の方法を用いて、試料からErbB受容体を免疫沈降させること、及び免疫沈降したキナーゼのErbB受容体自己リン酸化活性を測定することを含みうる。ErbB受容体のリン酸化は、例えば、商品として入手しうる抗ホスホトリオシン(anti-phosphotryosine)抗体(例えば、Upstate USA)を用いて決定しうる。
【0056】
他の実施形態において、ErbB受容体情報伝達カスケードの構成要素を試料から免疫沈降させ、そのキナーゼ活性を、キナーゼの基質を用いて測定しうる。例えば、一実施形態において、MAPキナーゼを、試料から免疫沈降させ、そのキナーゼ活性を公知のキナーゼ基質、例えば、ミエリン塩基性タンパク質、例えば、AFT-2、CHOP、HSP27、及びMAX等の転写因子を用いて測定しうる。MAPキナーゼの活性は、基質のリン酸化状態の測定値として決定しうる。MAPキナーゼに対する基質及び抗体は当業界に知られており、例えばUpstate USA社から、商品として入手しうる。
【0057】
さらに他の実施形態において、ErbB活性化の際に動員されるErbB受容体情報伝達カスケードの成分を、その構成要素に用いうる抗体を用いて、試料から免疫沈降させて動員された成分量を標準レベルと比較できる。このような成分は当業界において周知である。例えば、限定ではないが、これらの試験は、ErbB受容体情報伝達カスケードの成分、例えば、Shc、Grb-2等を、該成分に対する当業界に公知の抗体(又はUpstate USA社からのもの等、商品として入手しうるもの)のいずれかを用いて、当業者に公知の方法で、試料から免疫沈降させることを含むことができ、該成分量を標準レベルと比較しうる。
【0058】
4.3.2 核酸分子の検出
本発明の方法及びキットは、対象から得た試料中のErbB受容体をコードする核酸配列の検出及び/又は定量化を含む。一定の実施形態において、本発明は、癌に罹患した対象から得た試料中の特定のErbB受容体核酸配列を増幅し、それを検出及び/又は定量化する方法を提供する。ErbB受容体をコードする核酸は当業界で周知である。例えば、下記の4.7節を参照されたい。
【0059】
本発明の方法及びキットは、それらの全体が参照として本明細書に組み込まれている米国特許第5,525,462号;第6,528,632号;第6,344,317号;米国特許第6,114,117号;第6,127,120号;第6,448,001号に記載されているもの等当業界で公知の任意の核酸増幅法又は検出法を使用しうる。
【0060】
ある実施形態において、ErbB受容体をコードする核酸は、当業者に公知の方法論を用いてPCR増幅で増幅しうる。しかし、当業者は癌に罹患した対象から得た試料中の標的配列(すなわち、ErbB受容体をコードする核酸配列)の増幅が、公知の任意の方法、例えば、各々が増幅を十分に提供するリガーゼ連鎖反応(LCR)、QP-レプリカーゼ増幅、転写増幅及び自己持続配列複製により達成しうることを認識するだろう。PCR法は当業界で周知なため本明細書では詳述していない。PCR法及びプロトコルの概要は、例えば、その全体が参照として本明細書に組み込まれている、Innisら編集, PCR protocols, A Guide to Methods and Application、Academic Press社、San Dirgo、Calf.、1990年を参照されたい。また、その全体が参照として本明細書に組み込まれている米国特許第4,683,202号を参照されたい。PCRの試薬及びプロトコルは、Roche Molecular Systems等の販売会社からも入手しうる。
【0061】
本発明は、ErbB受容体の定性的及び/又は定量的発現レベルを決定する方法を含む。限定はしないが、定量的及び/又は半定量的RT PCR及びノーザンブロット分析等、ErbB受容体の発現を測定するための当業界に公知の任意の方法は本発明の範囲内にある。
【0062】
ある実施形態において、本発明は、本発明の方法に従って蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を用いた、癌に罹患した対象から得た試料、好ましくは、組織試料中のErbB受容体核酸の検出及び/又は定量化を含む。FISHは、例えば、診断及び腫瘍の病期決定を助けるための、特に腫瘍細胞の特定の染色体異常検出分野で用いられる一般的な方法論である。本発明の方法に用いられる際、FISHは、ErbB受容体核酸の検出及び/又は定量化の方法としても使用しうる。FISH方法論の概要は、例えばそれらの全体が参照として本明細書に組み込まれているWeierら、2002年、Expert Rev.Mol.Diagn .2(2):109-119頁; Traskら、1991年、Trends Genet.7(5):149-154頁;及びTkachukら、1991年、Genet.Anal. Tech.Appl.8:676-74頁を参照されたい。
【0063】
本発明は、天然ErbB受容体転写体及びそれらの変異体並びにそれらの非天然変異体の測定を含む。本発明の方法を用いた対象の癌の予後では、ErbB受容体転写体は天然のErbB受容体転写体であることが好ましい。
【0064】
ゆえに、本発明は、対象のErbB受容体転写体発現を測定することによる、対象の癌の予後方法に関する。例えば標準、例えば非癌性試料と比較してErbB受容体をコードするmRNAのレベル増加は、前記対象の癌発現の危険性の増大を示すと考えられる。他の実施形態において、標品と比較したときのErbB受容体をコードするmRNAのレベル増加は、前記対象の癌の転移危険性、又は前記対象の予後の不良を示すと考えられる。
【0065】
一実施形態において、本発明は、癌に罹患した対象から得た試料のRNAを単離し、ErbB受容体のレベルを決定するために、上記のハイブリダイゼーション又はPCR法を利用して該RNAを試験することを含む。他の実施形態において、本発明は、逆転写により単離された該RNAからcDNAを合成することを含む。その後生成したcDNAの全体又は一部を、PCR等の核酸増幅反応の鋳型として使用する。本発明の逆転写工程及び核酸増幅工程における合成開始剤(例えば、プライマー)として用いられる核酸試薬は、4.7節に記載されたErbB受容体核酸試薬の中から選択される。このような核酸試薬の好ましい長さは、少なくとも9〜30ヌクレオチドである。増幅産物の検出のための核酸の増幅は、放射性標識又は非放射性標識されたヌクレオチドを用いて実施しうる。あるいは、増幅産物が標準的なエチジウムブロマイド染色により又は他の好適な核酸染色法を利用することにより視覚化しうるように、十分な増幅産物を作製しうる。
【0066】
他の実施形態において、癌に罹患した対象から得た試料で当業者に公知の標準ノーザン分析法を行うことができる。ノーザン分析に用いられる好ましいプローブの長さは、9〜50ヌクレオチドである。このような方法を利用して、ErbB受容体転写体間の定量的並びに関連するサイズの違いをも検出できる。
【0067】
他の実施形態において、本発明は、核酸を精製する必要がないように、in situ、すなわち、生検材料から得られた患者の組織の組織切片(固定化及び/又は凍結された)又はリセクションに対して直接的な遺伝子発現試験を含む。4.7節に記載したような核酸試薬が、このようなin situ操作のためのプローブ及び/又はプライマーとして使用しうる(例えば、その全体が参照として本明細書に組み込まれているNuovo、G.J.、1992年、PCR In Situ Hybridization:Protocols And Applications、Raven Press、NYを参照)。
【0068】
また、本発明の標的ErbB受容体核酸は、当業者に周知の他の標準的方法を用いて検出できる。典型的には、検出工程より増幅工程が先行するが、増幅は本発明の方法では必ずしも必要ではない。例えば、ErbB受容体核酸はサイズ分割(例えば、電気泳動)で同定しうる。対照と比較して試料中の異なるバンド又は他のバンドが存在すれば、本発明の標的核酸の存在が示される。あるいは、標的のErbB受容体核酸は、周知の方法に従った配列決定で同定しうる。他の実施形態において特定の断片の存在を検出するために、標的ErbB受容体核酸に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いうる。
【0069】
配列特異的プローブハイブリダイゼーションは生物学的液体を含む試料又は組織試料中の所望の核酸検出の周知の方法であり、本発明の範囲内にある。簡便には、十分にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、該プローブは、実質的に相補的な配列とのみ特異的にハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション条件の緊縮性を緩和させると、配列ミスマッチの量変化を許容できる。まず標的を増幅した場合、増幅産物の検出において、この配列特異的なハイブリダイゼーションを利用すると、正しい増幅標的のみが確実に検出され、それにより、関連生物又は他の混入配列からの相同配列の存在からおこる偽陽性の危険が減る。
【0070】
限定はしないが、液相、固相、混合相、又はin situ ハイブリダイゼーション試験等の当業界に周知の多数のハイブリダイゼーション形式が本発明の核酸検出法の範囲内に包含される。液(又は液)相ハイブリダイゼーションでは、標的核酸及びプローブ又はプライマーは共に、自由に反応混合物と相互作用する。固相ハイブリダイゼーション試験では、標的又はプローブのいずれもが固体支持体に結合し、溶液中で相補的な核酸とのハイブリダイゼーションに利用される。代表的な固相形式としては、サザンハイブリダイゼーション、ドットブロット法等が挙げられる。以下の論文は、種々のハイブリダイゼーション形式の概要を提供しており、それらは全て、それらの全体が参照として本明細書に組み込まれる:Singerら、1986年、Biotechniques 4:230頁;Haaseら、1984年、Methods in Virology、第VII巻、189-226頁;Wilkinson、In Situ Hybridization、D.G. Wilkinsonら、IRL Press、Oxford University Press、Oxford;及びNucleic Acid Hybridization: A Practical Approach, Hames, B.D.及びHiggins, S.J.編集、IRL Press(1987)。
【0071】
本発明は、ErbB受容体核酸配列の検出及び/又は定量化の、本発明の方法の同種ベースのハイブリダイゼーション試験並びに異種ベースの試験を含む。異種ベースの試験は、ハイブリダイズしない核酸からハイブリダイズした核酸の分離能に依存する。このような試験の一つは、ハイブリダイゼーション反応の完了後に、液相に残存するハイブリダイズしていない核酸を容易に分離できるように、標的核酸又はプローブ核酸のいずれかを固体支持体上に固定化することを含む(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているSouthern、1975年、J.Mol.Biol.98:503-517頁を参照)。対照的に、同種試験は、ハイブリダイズした核酸とハイブリダイズしない核酸を区別する他の手段に依存する。一般に、同種試験は分離工程が必要なく、より望ましいと考えられている。このような同種試験の1つは、標的がプローブにハイブリダイズした場合のみシグナルをおこしうるプローブ核酸に結合した標識の使用に依存する(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているNelsonら、1992年、Nonisotopic DNA Probe Techniques、Academic Press、New York, NY 274-310頁を参照)。
【0072】
本発明は、このような試験において、限定はしないが、サイクリックプローブ法(その全体が参照により本明細書に組み込まれているBakkaouiら、1996年、BioTechniques 20:240-8頁)の使用;及び分枝プローブ(その全体が参照により本明細書に組み込まれているUrdeaら、1993年、Clin.Chem.39:725-6頁)の使用等、検出可能なシグナルの感度を高めるための当業界に公知の任意の方法を含む。
【0073】
ハイブリダイゼーション複合体は、当業界に周知の方法に従って検出される。標的に対して特異的にハイブリダイズしうる核酸プローブは、ハイブリダイズした核酸の存在を検出するために典型的に用いられる数種のうちのいずれか1の方法により標識しうる。一般的な検出方法の1つは、3H、125I、35S、14C、又は32P等により標識化したプローブを用いたオートラジオグラフィーの使用である。放射性同位体の選択は、合成容易性、安定性、及び選択する同位体の半減期の研究の選好に依存する。他の標識としては、蛍光体、化学発光剤、又は酵素により標識化抗リガンド又は抗体に結合する化合物(例えば、ビオチン及びジゴキシゲニン)が挙げられる。あるいは、蛍光体、化学発光剤、又は酵素等の標識に、プローブを直接共役できる。標識の選択は、必要な感度、プローブとの共役容易性、安定性要件、及び利用する計器装備に依存する。
【0074】
本発明のプローブ及びプライマーは当業者に公知の方法を用いて、合成し標識化できる。プローブ及びプライマーとして使用するオリゴヌクレオチドは、Needham-VanDevanter,D.R.ら、1984年、Nucleic Acids Res.12:6159-6168頁に記載された自動合成機を用い、Beaucage,S.L.及びCaruthers,M.H.、1981年、Tetrahedron Lett.22(20):1859-1862頁に記載された固相ホスホラミダイトトリエステル法に従って化学的に合成しうる。オリゴヌクレオチドの精製は、Pearson,J.D.及びRegnier,F.E.、1983年、J.Chrom.255:137-149頁に記載されたように、未変性アクリルアミドゲル電気泳動又はアニオン交換HPLCで可能である。上記引用文献は全ての、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0075】
ある実施形態において、本発明は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている国際公開第00/29112号パンフレットに記載されているような、本開示を考慮して調製された使い捨て計量棒を用いるErbB受容体をコードする核酸の検出を含む。しかしながら、核酸分子検出の当業界に公知の任意の装置が、本発明の方法の範囲内にあることは当業者は認識するだろう。簡便には、国際公開第00/29112号パンフレットに開示された使い捨て計量棒を用いる核酸検出により試料中の核酸配列の1工程検出が提供される。典型的には、該装置は、分析すべき試料を菅からチャンバー内へ吸引させて操作する。チャンバー内で、該試料は、予め計量され、予め付着させた試薬と接触して調製される。次に、該試料は、試料中の1以上の対象核酸、例えば、ErbB受容体をコードする核酸の特定検出のため、予め計量し、付着させた、情報伝達及び/又は検出用試薬がある膜から毛細管作用による移行により処理される。
【0076】
4.3.3 タンパク質の検出
本発明の方法及びキットは、限定はしないが、対象から得た試料中のErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、及びErbB-4等の、当業界に公知の1以上のErbB受容体タンパク質のいずれかの検出及び/又は定量化を含む。当業者に公知のErbB受容体タンパク質の検出及び定量化の任意の方法が本発明の範囲内に包含される。本発明の方法及びキットに有用なErbB受容体タンパク質配列は当業界で周知である。例えば、下記の4.8節を参照されたい。
【0077】
ErbB受容体タンパク質及び抗ErbB抗体並びにそれらの免疫特異的断片は、対象の癌の予後を評価する本発明の試験において好適である。
【0078】
ErbB遺伝子産物の検出及び定量化は、本明細書に例示されたタンパク質の検出を含む。本発明の対象から得た試料中のErbB遺伝子産物の検出された上昇レベルを、一般に標準試料と比較する。
【0079】
ある実施形態において、天然のErbBタンパク質に対する抗体を、本発明の予後法に使用しうる。本発明は、限定はしないが、ウェスタンブロット、ELISA、及びFACS等、当業者に公知の任意の標準的免疫試験法の使用を含む。
【0080】
一実施形態において、本発明は、対象の試料中のErbB受容体に対する免疫特異的結合がおこり、それにより、免疫複合体が形成され、形成された複合体の量が、検出及び/又は測定されるような条件下で、該試料を、抗ErbB抗体又はその免疫特異的断片と接触させることを含む免疫試験の使用を含む。特定の一実施形態において、ErbB受容体の存在について試料を試験するために、ErbB受容体の抗体が用いられ、標準試料と比較したErbB受容体のレベル増加が検出される。
【0081】
ある実施形態において、細胞、細胞粒子又は溶解性タンパク質を固定化しうるニトロセルロース又は他の固体支持体等の固相の支持体又は担体に生物学的試料を接触させ、固定化できる。該支持体を、好適な緩衝液により洗浄してから、ErbB受容体タンパク質に選択的又は特異的に結合する抗体で処理しうる。次いで、固相支持体を緩衝液で洗浄して、非結合抗体を除去しうる。次に、固体支持体に結合した抗体量を従来の手段で検出しうる。
【0082】
本明細書で用いる「固相の支持体又は担体」とは、抗原又は抗体と結合できる任意の支持体をいう。周知の支持体又は担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ類、天然又は修飾セルロース、ポリアクリルアミド類、ガッブロス(gabbros)、及び磁鉄鉱が挙げられる。本発明の目的のため、該担体の性質はある程度溶解性か、又は不溶性でありうる。結合分子が抗原又は抗体に結合できる限り、該支持体材料は、事実上、いかなる構造形態をもとりうる。従って、該支持体の形態は、ビーズのような球形でもよく、試験管の内表面、又は、ロッドの外表面の円筒形でもよい。あるいは、該表面は、シート、試験ストリップのように平坦でもよい。好ましい支持体としては、ポリスチレンビーズが挙げられる。当業者は、抗体又は抗原を結合する他の多くの好適な担体を認識するか、又は、ルーチン的な実験法でそれらを確かめることができるだろう。
【0083】
ある実施形態において、抗ErbB抗体又はその免疫特異的断片は、酵素に結合して検出可能に標識でき、酵素免疫試験(EIA)において前記標識抗体を用いる(Voller,A.「The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA)」、1978年、Diagnostic Horizons 2:1頁、Microbiological Associates Quarterly Publication、walkersville MD.;Voller,A.ら、1978年、J.Clin.Pathol.31:507-520頁;Butler,J.E.1981年、Meth.Enzymol.73:482頁;Maggio,E.編集、1980年、Enzyme Immunoassay、CRC Press、Boca Raton, FL.;Ishikawa,E.ら編集、1981年、Enzyme Immunoassay、Kgaku Shoin、Tokyo、これらの全ては参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている)。抗体に結合した酵素は、検出しうる化学部分を産生する方法で、適切な基質、好ましくは、色素産生基質と反応し、例えば、分光光度的手段、蛍光定量的手段又は視覚手段により検出しうる。抗体を検出可能に標識するために使用しうる酵素としては、限定はしないが、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロホスフェート、デヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼ等が挙げられる。検出は、酵素に対して色素産生基質を使用する比色法により達成しうる。検出はまた、同様に調製した標品と比較した基質の酵素的反応程度を視覚的に比較することにより達成しうる。
【0084】
検出はまた、当業者に公知の任意の他の方法を用いて達成しうる。例えば、抗体又は抗体断片を放射性標識して放射免疫試験(RIA)(例えば、Weintraub, B.、Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques、The Endocrine Society、1986年3月を参照)を用いてErbB受容体タンパク質を検出できる。放射性同位元素は、ガンマカウンター又はシンチレーションカウンターの使用手段により、又はオートラジオグラフィーにより検出しうる。
【0085】
他の実施形態において、本発明は、抗体を蛍光化合物で標識することを包含する。蛍光標識された抗体は、適切な波長光に暴露されると、その存在を蛍光により検出しうる。最も一般的に用いられる蛍光標識化合物には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルデヒド及びフルオレスカミンがある。さらに他の実施形態において、抗体はまた、蛍光放射金属、例えば、152Eu、又はその他ランタニド類を用いて検出可能に標識しうる。これらの金属は、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)又はエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)のような金属キレート基を用いて抗体に結合できる。
【0086】
本発明はさらに、抗体を化学発光化合物に結合して抗体を検出可能に標識化することを含む。次いで化学発光タグ化抗体の存在を、化学反応過程で生じる発光の存在を検出して決定する。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、テロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及び蓚酸エステルである。同様に、本発明の抗体を標識するために生物発光化合物を使用しうる。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を増加させる生物系に見られる化学発光のタイプである。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出して決定される。標識目的の生物発光化合物としては、例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及びエクオリンが挙げられる。
【0087】
本発明はまた、ErbB受容体タンパク質の間接的検出法を含む。特定の実施形態において、本発明は、試料中のErbB受容体タンパク質に免疫特異的結合が生じうる条件下で、癌に罹患した対象由来の試料と、抗ErbB抗体(一次抗体)又はその免疫特異的断片とを接触させ、それにより、免疫複合体を形成させ、該一次抗体に対する免疫特異的結合が生じる条件下で標識される二次的抗体を加え、間接的に形成された複合体量を検出及び/又は定量化することを含む免疫試験の使用を含む。
【0088】
抗ErbB抗体又はその免疫特異的断片を、試料中のErbB受容体を検出するために定量的又は定性的に使用しうる。ある実施形態において、試料が組織である場合、抗ErbB抗体又はその免疫特異的断片をErbB受容体のin situ検出のために、当業者に公知の通常の技法、
例えば、免疫蛍光法試験又は顕微鏡試験を組織学的に用いうる。in situ検出は、対象からの組織学的標本、例えば、組織、例えば、乳房組織のパラフィン埋込み切片を調製し、それに本発明の標識抗体を塗布して達成しうる。抗体(又は断片)は、標識抗体(又は断片)を生体試料上に重ねて塗布することが好ましい。このような方法を用いて、ErbB受容体タンパク質の存在のみならず、試験した組織における分布を決定できる。通常の当業者であれば、本発明の方法を用いて、このようなin situ検出を達成するために任意の多種多様の組織学的方法(例えば、染色法)を修飾しうることを容易に察知するであろう。
【0089】
他の実施形態において、ErbB受容体のリガンドを当業者に公知の方法を用いて試料中の受容体数を定量化するために使用しうる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれているGoodmanら、1996年版;Goodman and Gilman's:The Pharmacological Basis of Therapeutics, New York, McGraw Hillを参照されたい。ErbB受容体に関するリガンドは当業界に周知であり、それらの使用は本発明の方法とキット内に包含される。例えば、ノイレグリン類が、ErbB-2、ErbB-3、及びErbB-4に結合することが知られている。ノイレグリン(NRG)類は、ErbBファミリーの受容体チロシンキナーゼ類に関するリガンドである細胞−細胞情報伝達タンパク質である。遺伝子のノイレグリンファミリーには、4種のメンバー:NRG1、NRG2、NRG3、及びNRG4がある(Fallsによるレビュー、2003年、Exp.Cell.Res.284(1):14-30頁を参照;これはその全体が参照により本明細書に組み込まれている)。限定はしないが、GENBANK登録番号AY207002を有するヒトNRG1; GENBANK登録番号NM-013985; NM-013984; NM-013983; NM-013982; NM-013981; NM-004883を有するヒトNRG2の変異体、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Zhangら、1997年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:9562-7頁に記載されているNRG3等、ノイレグリンをコードする任意のヌクレオチド配列が、本発明の方法とキットに関して使用しうる。このようなNRG核酸配列は、従来の方法によるNRGタンパク質の組換え産生に有用であり、前記タンパク質は、周知の方法を用いてErbB受容体を定量化するためのリガンドとして用いうる。
【0090】
4.4 癌
本発明の予後診断法は、任意の癌、特にErbB受容体タンパク質の異常発現に関係する癌に有用でありうる。本明細書に用いられる用語「癌」とは、当業界での通常の意味であり、細胞の異常な非制御増殖から生じる新生物又は腫瘍をいう。ある実施形態において、癌は局在した保持される良性腫瘍をいう。他の実施形態において、癌は隣接する身体構造を侵襲し、破壊し、遠方部位に拡がる悪性腫瘍をいう。
【0091】
本発明の予後診断法から利益を得ることができる癌及び関連障害としては、限定はしないが、以下のものが挙げられる:限定はしないが、急性白血病、急性リンパ球性白血病、等の白血病、急性骨髄性白血病、例えば、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病及び骨髄形成異常性症候群、慢性白血病、例えば、限定はしないが、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、毛様細胞性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、例えば、限定はしないが、ホジキン病、及び非ホジキン病、多発性骨髄腫、例えば、限定はしないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫及び骨髄外形質細胞腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症、良性単クローン性高ガンマグロブリン血症、重鎖疾患、骨及び結合組織肉腫、例えば、限定はしないが、骨の肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫瘍、骨の線維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟組織肉腫、血管肉腫(血管内皮腫)、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、及び滑膜肉腫、限定はしないが、膠腫、星状細胞腫、脳幹膠腫、脳室上衣腫、乏枝神経膠腫、非膠細胞腫、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽腫、及び一次脳リンパ腫等の脳腫瘍、限定はしないが、腺癌、小葉(小細胞)癌、分泌管内癌、髄内乳癌、粘液性乳癌、管状乳癌、乳頭乳癌、パジェット病、及び炎症性乳癌等の乳癌、限定はしないが、褐色細胞腫及び副腎皮質癌等の副腎癌、甲状腺癌、例えば、限定はしないが、乳頭又は濾胞甲状腺癌、髄内甲状腺癌及び未分化甲状腺癌、限定はしないが、膵島細胞腺腫、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、及びカルチノイド又は膵島細胞腫瘍等の膵臓癌、限定はしないが、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、末端肥大症、及び尿崩症等の脳下垂体癌、限定はしないが、眼メラノーマ等の眼癌、例えば、虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫、毛様体黒色腫、及び網膜芽腫、限定はしないが、扁平上皮細胞癌、腺癌、及び黒色腫等の膣癌;限定はしないが、扁平上皮細胞癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫等の外陰部癌、限定はしないが、扁平上皮細胞癌及び腺癌等のパジェット病頸部癌、限定はしないが、子宮体癌及び子宮肉腫等の子宮癌、限定はしないが、卵巣上皮癌、境界域腫瘍、生殖細胞腫瘍、及び間質性腫瘍等の卵巣癌、限定はしないが、扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘液性類表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、いぼ状癌、及び燕麦細胞癌(小細胞)等の食道癌、限定はしないが、腺癌、肉芽腫性軟性(ポリポイド)、潰瘍性、表在性拡大、びまん性拡大、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、及び癌肉腫等の胃癌、大腸癌、直腸癌、限定はしないが、肝細胞癌及び肝芽腫等の肝臓癌、限定はしないが、腺癌、等の胆嚢癌、限定はしないが、乳頭、結節性、及びびまん性等の胆管癌、限定はしないが、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌及び小細胞肺癌等の肺癌、限定はしないが、性細胞癌、精上皮腫、未分化、古典的(典型的)、精母細胞、非精上皮腫、精上皮腫、奇形腫、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)等の睾丸癌、限定はしないが、腺癌、平滑筋腫、及び横紋筋肉腫等の前立腺癌;腎臓癌;限定はしないが、扁平上皮癌、基底癌等の口腔癌、限定はしないが、腺癌、粘液性類表皮癌、及び腺様嚢胞癌等の唾液腺癌、限定はしないが、扁平上皮細胞癌、及びいぼ状癌等の咽頭癌、限定はしないが、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌及び黒色腫、表在性拡大黒色腫、結節性黒色腫、黒子悪性黒色腫、末端性ほくろ性黒色腫等の皮膚癌、限定はしないが、腎細胞癌、腺癌、腎細胞腫、線維肉腫、及び移行細胞癌(腎盂及び/又は子宮)、ウィルムス腫瘍等の腎臓癌、限定はしないが、移行細胞癌、扁平上皮細胞癌、腺癌、及び癌肉腫等の膀胱癌。さらに、癌としては、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管内肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌及び乳頭腺癌が挙げられる(このような障害のレビューに関しては、Fishmanら、1985年、Medicine、第2版、J.B. Lippincott社、Philadelphia及びMurphyら、1997年、Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis,Treatment, and Recovery、Viking Penguin、Penguin Books U.S.A.を参照されたい)。
【0092】
本発明の方法とキットはまた、以下の(限定はしないが):膀胱、乳房、大腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、前立腺、頸部、甲状腺及び皮膚等の上皮性悪性腫瘍;扁平上皮細胞癌等;白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、及びバーケッツ(Burketts)リンパ腫等のリンパ球系列の造血腫瘍;急性及び慢性骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病、線維肉腫及び横紋筋肉腫等の間充織起源の腫瘍等の骨髄性造血腫瘍;黒色腫、精上皮腫、テトラト癌(tetratocarcinoma)、神経芽細胞腫及び膠腫等の他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫、膠腫、及びシュワン細胞腫(schwannomas)等の中枢及び末梢神経系腫瘍、フィブロサフコーマ(fibrosafcoma)、横紋筋肉腫、及び骨肉腫等の間充織起源の腫瘍、及び黒色腫、ゼノデルマペグメントサム(xenoderma pegmentosum)、ケラトアクタントーマ(keratoactanthoma)、精上皮腫、甲状腺濾胞癌及び奇形癌腫等の他の腫瘍等、種々の癌又は他の異常増殖疾患の予後に有用である。具体的な実施形態において、本発明の予後診断法は、卵巣、膀胱、乳房、大腸、肺、皮膚、膵臓、又は子宮における悪性又は悪性増殖変化(例えば、転移及び異形成)、又は過剰増殖障害に有用である。他の具体的な実施形態において、本発明の予後診断法は、肉腫、黒色腫、又は白血病に有用である。
【0093】
4.5 対象
本発明の診断法と予後診断法及びキットは、愛玩動物等の哺乳動物、最も好ましくはヒト等いかなる対象にも有用である。該対象は、ErbB-1陽性腫瘍と診断されていることが好ましい。特定の実施形態において、該対象は、癌、特にErbB受容体の異常発現及び/又は異常活性に関連する癌の治療及び/又は予防及び/又は管理による、当業者に公知の任意の標準療法の治療を受けたことがありうる。このような治療レジメンは、当業界に公知で、あるものはNoonbergら、2000年、Drugs 59(4): 753-767頁に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。好ましい実施形態において、該対象は、ErbB-1陽性腫瘍に特異的な化学療法レジメンの治療を以前に受けた。化学療法レジメンとしては、限定はしないが、例えば、IMC-225(ErbB-1に結合し、EGF誘導自己リン酸化をブロックすると考えられている抗体)又はZD1839(ErbB-1チロシンキナーゼ活性の選択的可逆性阻害剤であるキニザロン誘導体)のErbBシグナル化経路に対する化学療法剤の治療等、癌、特にErbB受容体の異常発現及び/又は異常活性に関連する癌の治療に関して、当業界に公知の任意の化学療法治療が挙げられる。
【0094】
該対象は、本明細書に用いられ、腫瘍又は癌の治療を補助する任意の分子又は化合物をいう任意の化学療法剤(又は「抗癌剤」又は「抗腫瘍剤」又は「癌療法剤」)で治療を受けたことがありうる。このような薬剤の例としては、限定はしないが、シトシンアラビノシド、タキソイド類(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル)、抗チューブリン剤(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロンB、又はその類縁体)、マクロライド類(例えば、リゾキシン)、シスプラチン、カルボプラチン、アドリアマイシン、テノポシド、ミトザントロン、ディスコデルモリド(discodermolide)、エロイテロビン(eleutherobine)、2-クロロデオキシアデノシン、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メクロレタミン、チオエパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、チオテパ)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン)、抗代謝物(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フラボピリドール、5−フルオロウラシル、フルダラビン、ゲンシタビン、ダカルバジン、テモゾラミド)、アスパラギナーゼ、バチルスカルメッテ(Bacillus Calmette)及びグエリン(Guerin)、ジフテリア毒素、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシ尿素、リソドレン(LYSODREN(登録商標))、ヌクレオシド類縁体、植物アルカロイド(例えば、タキソール、パクリタキセル、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン(カンプトサール(CAMPTOSAR)、CPT-11)、ビンクリスチン、ビンブラスチン等のビンカアルカロイド)、ポドフィロトキシン(例えば、エピポドフィロトキシン、VP-16(エトポシド)、VM-26(テニポシド)の誘導体を含む)、シトカラシンB、コルチン(colchine)、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、プロカルバジン、メクロレタミン、アントラサイクリン類(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)、ドキソルビシン、ドキソルビシンリポソーム)、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロパノロール、ピューロマイシン、抗有糸分裂剤、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、アルデスロイキン、アルタミン、アナストロズル、ビカルタミド、ビアオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプライン、クロラブシル、クラドリビン、シララビン、ダクリノマイシン、エストラムシン、フロクスリドヘ、ガンシタビン、ゴセレイン、イダルビシン、イトスファミド、酢酸ラウプロリド、レバミソール、ロムスリン、メクロレタミン、マゲストロール、アセテート、メルカプトプリノ、メスナ、ミトランク、ペガスペルガーゼ、ペントスラチン、ピカマイシン、リウクスルマブ、カンパト-1、ストラプロゾシン、チオグアニン、トレチノイン、ビノレルビン、又は任意のそれらの断片、それらのファミリーメンバー、又はそれらの誘導体、又はそれらの類縁体が挙げられる。化学療法剤のさらなる例としては、標準的教科書に見ることができる。例えば、Manual of Clinical Oncology、Dennis A. Casciato及びBarry A. Lowitz編集、第4版、2000年7月15日、Little, Brown and Company、U.S.を参照されたい。
【0095】
特定の実施形態において、化学療法剤は、ErbB受容体のチロシンキナーゼ活性阻害に指向されるキナゾリン誘導体である。このような化合物は、当業界に知られており、ZD1839 (Zeneca Pharmaceuticals);CP-358,774(Pfizer、グロトン、コネチカット州);及びCGP 59326A(Novartis、バーゼル、スイス国)(レビューに関してWoodburn、1999年、Pharmacol. Ther.82(2-3):241-50頁;de Bonoら、2002年、Trends in Mol.Med、8(4):S19-26頁;Noonbergら、2000年、Drugs 59(4):753-767頁を参照;これら全ては、それら全体が参照として本明細書に組み込まれている)のような化合物が挙げられる。
【0096】
さらに他の特定の実施形態において、該対象は、ErbB2を標的とし、商品として入手しうるトラスツズマブ(ハーセプチン;Genentech)による治療を受けたことがありうる。
【0097】
他の実施形態において、本発明は、限定はしないが、キナゾリン誘導体であって、ErbB-1のATP結合を競合的に阻害するOSI-774(OSI/Genentech);ピロロピリミジンであって、ErbB-1のATP結合を競合的に阻害するPKI 116 (Novartis);キナゾリン誘導体であって、ErbB-1及びErbB-2のATP結合を競合的に阻害するGW2016 (Glaxo Smithkline);3-シアノキノリン誘導体であって、ATP結合部位でErbB1に非可逆的に結合し、ErbB-1及びErbB-2陽性腫瘍の増殖を阻害することが報告されており、ErbB受容体のチロシンキナーゼ活性を非可逆的にブロックするEKB-569 (Genetics Institute、Wyeth-Ayerst);及びキノゾリン(quinozoline)誘導体であって、全てのErbB受容体、特にErbB-1及びErbB-2のATP結合部位を競合的に阻害するCI-1033 (Pfizer)等、現在臨床開発中であるErbB受容体チロシンキナーゼ活性の任意の小分子阻害剤を含む。
【0098】
4.6 キット
本発明の方法を実施するためのキットもまた提供される。一実施形態において、本発明は、1以上の容器に、抗ErbB抗体又はその免疫特異的断片、また任意に抗体又はその断片に対する標識結合対を含むキットが提供される。あるいは、抗ErbB抗体は、検出マーカー(例えば、化学発光部分、酵素部分、蛍光部分、又は放射性部分)で標識しうる。
【0099】
他の実施形態において、1以上の容器に、核酸プローブ、又はErbB受容体をコードするmRNAにハイブリダイズしうるプローブを含むキットが提供される。特定の実施形態において、キットは、1以上の容器に、例えば、PCR(例えば、Innisら、1990年、PCR Protocols、Academic Press社、San Diego CA;Erlichら1989年、PCR Technology、 Principles and Applications for DNA Amplification、Stockton Press、New York;Erlichら、1991年、Science 252;1643-1651頁を参照)、リガーゼ鎖反応(EP 320,308号明細書)、b-レプリカーゼの使用、環状プローブ反応、又は当業界に公知の方法により、ErbB受容体をコードする核酸の少なくとも一部の適切な条件下で増幅をプライムしうるプライマー対(例えば、各々が6〜30個のヌクレオチドのサイズ範囲)を含みうる。
【0100】
他の特定の実施形態において、1以上の容器に、核酸プローブ又はErbB受容体をコードするmRNAを増幅する必要がないように、ErbB受容体をコードするmRNAにハイブリダイズしうるプローブを含むキットが提供される。
【0101】
キットは、容器にErbB受容体タンパク質量又はmRNA量の定量化において有用な標品又は対照として使用するための精製ErbB受容体タンパク質又はErbB受容体をコードする所定量の核酸をさらに任意に含みうる。各キットはまた、本明細書に記載された1以上の実施形態に従って本発明の実施を記載している使用説明書及び/又は印刷ラベルを含みうる。キットは場合より無菌容器でもよい。
【0102】
4.7 ErbB受容体をコードする核酸
本発明の方法は、限定はしないが、ErbB受容体レベルを決定のための代用代理として、限定はしないが、ErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、及びErbB-4等のErbB受容体をコードする任意の核酸を使用しうる。核酸は、当業者に公知の技法を用いて生成させたDNA分子(例えば、cDNA、ゲノムDNA)、RNA分子(例えば、hnRNA、前mRNA、mRNA)及びDNA又はRNAの類縁体(例えば、ペプチド核酸)を含むことが意図されている。ErbB受容体レベルの代用に測定された核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。
【0103】
例えば、限定はしないが、本発明の方法及びキットに使用するためのヌクレオチド配列としては、以下のいずれかの全て又は一部を含むことができる:胎盤及びA431癌細胞から決定されるヒトErbB-1のヌクレオチド配列(Ulrichら、1984年、Nature 309:418-425頁を参照);GENBANK登録番号NM-031507であるラットErbB-1のヌクレオチド配列;ヒト胎児DNAライブラリーから決定されたヒトErbB-2のヌクレオチド配列(Coussensら、1985年、Science 230:1132-9頁);GENBANK登録番号AH001455、M11762、M11763、M11764、M11765、M11766、及びM11767であるヒトErbB-2のエクソン1〜7のいずれかのヌクレオチド配列;ヒト癌細胞系から決定されたErbB-3のヌクレオチド配列(Plowmanら、1990年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:4905-9頁);GENBANK登録番号AF041792であるニワトリErbB-4のヌクレオチド配列;及びマウス黒色腫細胞系のErbB-4のヌクレオチド配列(Plowmanら、1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:1746-50頁)。上記に引用された文献のヌクレオチド配列は全て参照としてそれらの全体が本明細書に組み込まれている。
【0104】
一般に、当業界に公知のいずれのErbB受容体核酸も、本発明の方法及びキットに有用でありうる。このような核酸は、一般にErbB受容体、例えば、ErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、又はErbB-4の少なくとも一部をコードするか、又は本明細書に記載されたハイブリダイズする条件下でErbB受容体をコードする核酸にハイブリダイズする配列を有する。
【0105】
一実施形態において、本発明の方法は、プローブとして、ErbB受容体をコードする核酸又はその断片をコードする配列又は5'又は3'未翻訳領域を天然及び非天然変異体を含め使用できる。非天然変異体は、人為的に設計されるもの(例えば、ペプチド核酸プローブ)である。対象からの試料中のErbB受容体又はErbB受容体をコードするmRNAが検出又は測定される本発明の方法において、限定はしないが、野生型遺伝子産物並びに突然変異体、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、多形変異体等の天然遺伝子産物が検出される。一般に、変異体は、例えば、少なくとも90%、95%、98%又は99%のアミノ酸配列同一性(当業界に公知の標準的アルゴリズムにより決定される、Altschul、1990年、Proc.Natl. Acad.Sci.USA、87:2264-2268頁;Altschul、1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:5873- 5877頁;Altschulら、1990年、J.Mol.Biol.215:403-410頁を参照)を有し、ErbB受容体をコードする野生型遺伝子産物に対する相同性が高い。
【0106】
プローブとして使用されるErbB受容体変異体は、ErbB受容体をコードする核酸に対するストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能な核酸をコードしうる。核酸ハイブリダイゼーション法は当業界に周知である(例えば、Sambrookら、2001年Molecular Cloning,A Laboratory Mannual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor NY;Ausubelら編集、1994~1997年、Current Protocols in Molecular Biology:Series of laboratory technique mannuals、John Wiley and Sons社; Shilo及びWeinberg、1981年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78:6789-92頁;Dyson、1991年Essential Molecular Biology:A Practical Approach、第2巻、T.A. Brown編集、111-156頁、オックスフォード大学プレスにて印刷、オックスフォード、英国を参照)。用語の「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイズし、そして65℃で0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA、次いで、42℃で0.2×SSC/0.1% SDSでの洗浄において第2のフィルタ結合ポリヌクレオチド分子に結合したまま、ハイブリダイズするための第1のポリヌクレオチド分子の能力を称する(Ausubelら(編集者)、1989年、Current Protocols in Molecular Biology、第I巻、Green Publishing Associates社、及びJohn Wiley and Sons社、New York、2.10.3頁を参照)。特定の実施形態において、検出又は測定される変異体は、野生型配列に比較して1、2、3、4、5、10、15又は20点以下の変異体(置換体)を含む(又は、核酸の場合は、コードする)。
【0107】
ErbB受容体ファミリーメンバー、例えば、ErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、ErbB-4、又はその一部をコードする単離核酸プローブは、当業界に公知の任意の方法、例えば配列の3'及び5'末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを用いるPCR増幅により、及び/又は標準スクリーニング法を用いるcDNA又はゲノムライブラリーからのクローニングにより、又はポリヌクレオチド合成による堆積プラスミドから得ることができる。特定の配列の検出及び定量化のためのこのようなプローブの使用は、当業界で周知である。例えば、Erlich編集、1989年、PCR Technology Principles and Applications for DNA Amplification、Macmillan Publishers社、England; Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Mannual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、 NY、2001年、を参照されたい。
【0108】
ある実施形態において、本発明の方法は、遺伝子コード配列、例えば、限定はしないが、本明細書に記載された癌の予後に関してErbB受容体タンパク質の検出に有用な、ErbB受容体タンパク質の配列をコードする遺伝子の少なくとも約6個、好ましくは約12個、最も好ましくは約18個又はそれ以上の連続ヌクレオチドに、上記のストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが好ましいErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、及びErbB-4等のErbB受容体のcDNAを用いることができる。
【0109】
本明細書に例示されるもの等、ErbB受容体タンパク質をコードする核酸配列の全体又は一部をハイブリダイゼーションプローブとして用いて、ErbB受容体タンパク質をコードする完全長核酸分子を、本発明の方法、すなわち、ErbB受容体レベルを代用するために、標準ハイブリダイゼーション法を用いて定量化しうる(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Mannual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、2001年を参照)。
【0110】
本発明の方法に用いられるErbB受容体配列は、ヒト配列であることが好ましい。しかしながら、他の動物から単離されたヒトErbB受容体の相同体もまた、特に対象が非ヒト動物である場合のErbB受容体レベルの代用として本発明の方法で使用しうる。従って、本発明はまた、本発明の方法において非ヒト動物、例えば、非ヒト霊長類、ラット、マウス、限定はしないが、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ等を含む家畜、限定はしないが、ネコ、イヌ等を含むペットから同定されたErbB受容体の相同体の使用を含む。
【0111】
本発明の方法は、本発明のいずれかの方法において本明細書に開示されたいずれかの核酸の断片を使用してもよい。断片は、好ましくは本明細書に記載された配列の少なくとも10、20、50、100又は200個の隣接ヌクレオチドを含む。
【0112】
当業界に公知の標準的組換えDNA法は、本発明の方法及びキットに使用するErbB受容体タンパク質又はErbB受容体タンパク質をコードする核酸、又はそれらの断片を提供するために使用しうる。ある実施形態において、標品としてErbBタンパク質又は核酸を提供するために、対象のErbBタンパク質をコードする、対応するヌクレオチド配列をクローン化しうる。本発明により使用しうるPCR法及びクローニング方法の概要は、例えば、PCR Primer、1995年、Dieffenbachら編集、Cold Spring Harbor Laboratory Press; Sambrookら、2001年、上記)を参照されたい。
【0113】
4.8 ErbB受容体タンパク質
本発明は、本発明の方法に関する抗体生成のために、限定はしないが、ErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、及びErbB-4ポリペプチド等のErbB受容体タンパク質、又はそれらの断片の使用を提供する。ErbB受容体ポリペプチドと断片は、本発明におけるタンパク質の存在量又は活性の標品としても使用しうる。
【0114】
例えば、限定はしないが、ErbB受容体のアミノ酸配列としては、胎盤及びA431癌細胞系からのヒトErbB-1(Ulrichら、1984年、Nature 309:418-425頁を参照);又はヒト胎児cDNAライブラリーからクローン化されたヒトErbB−2(Coussensら、1985年、Science 230:1132-9頁);又はヒト癌細胞系からのヒトErbB-3(Plowmanら、1990年、Proc.Natl. Acad.Sci.USA、87:4905-9頁);又はマウス黒色腫細胞系から単離されたcDNAクローンに相当するErbB-4のアミノ酸配列(Plowmanら、1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:1746 -50頁)が挙げられる。上記の同定文献に引用されたアミノ酸配列は、参照としてそれらの全体が本明細書に組み込まれている。
【0115】
ある実施形態において、ErbB受容体タンパク質は、ErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、又はErbB-4のいずれかのアミノ酸配列に対して、少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列類似性を示すアミノ酸配列を含む。2つのタンパク質配列間の同一性比率を決定するアルゴリズムは、当業界に周知であり、例えば、Altschul、1990年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:2264-2268頁;Altschul、1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:5873-5877頁;Altschulら、1990年、J.Mol.Biol.215:403-410頁を参照されたい。
【0116】
特定の実施形態において、タンパク質は、少なくとも10個の連続アミノ酸からなるErbB受容体タンパク質の断片からなるか、又はそれを含んで提供される。他の実施形態において、該断片は、例えば、抗体増加に使用するために、ErbB受容体の少なくとも20、30、40、又は50個の連続アミノ酸からなるか、又は含む。このような断片はまた、例えば、本発明の方法及びキットにおける標品又は対照として有用でありうる。
【0117】
種々の宿主発現ベクター系は、本発明の方法に使用するErbB受容体タンパク質又は断片を発現させるために利用しうる。このような宿主発現系は周知であり、対象のタンパク質が産生され、その後精製しうるのに必要な手段を提供する。本発明で用いうる宿主発現ベクター系の例は:組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はErbB受容体核酸コード配列を含有するコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌細胞(例えば、大腸菌、枯草菌(B.subtilis))、ErbB受容体核酸コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターにより形質転換された酵母細胞(例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピチア属(Pichia));ErbB受容体核酸コード配列を含有する組換えウィルス発現ベクター(例えば、バキュロウィルス)に感染させた昆虫細胞;組換えウィルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウィルス、TMV)に感染させた植物細胞又はErbB受容体核酸コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)により形質転換させた植物細胞;又は哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウィルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウィルス遅発型プロモーター;ワクチンウィルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築体を有する哺乳動物細胞(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3)である。
【0118】
細菌系において、多くの発現ベクターは、発現させるErbB受容体のために意図した使用に依存して選択することが有利でありうる。例えば、このような大量なタンパク質が、抗体増加のために産生される場合、容易に精製されるタンパク質産物の発現を高レベルにするベクターが望ましいと思われる。このようなベクターとしては、限定はしないが、融合タンパク質が産生されるように、lac Zコード領域を有するベクターインフレームにErbB受容体コード配列が結合しうる大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherら、1983年、EMBO J.2:1791頁);pINベクター(Inouye及びInouye、1985年、Nucleic Acids Res.13:3101頁;Van Heeke及びSchuster、1989年、J.Biol.Chem.264:5503頁);等が挙げられる。pGEXベクター類は、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチド類を発現させるために使用しうる。一般に、このような融合タンパク質は溶解性であり、グルタチオン−アガロースビーズを含むカラムへの吸着及び結合に次いで、遊離グルタチオンの存在下で溶出することにより溶解細胞から容易に精製しうる。クローン化標的遺伝子産物がGST部分から遊離しうるように、pGEXベクター類は、例えば、トロンビン又はXa因子プロテアーゼ開裂部位を含むように設計される。
【0119】
昆虫系において、Autographa californica核多角体病ウィルス(AcNPV)は、外来性遺伝子を発現するベクターとして使用しうる。該ウィルスは、Spodoptera frugiperda細胞中で増殖する。ErbB受容体コード配列は、ウィルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個々にクローン化でき、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。ErbB受容体コード配列挿入の好結果により、ポリヘドリン遺伝子の不活化及び非閉塞組換えウィルス(すなわち、ポリヘドリン遺伝子がコードするタンパク質コートがないウィルス)の産生をもたらす。これらの組換えウィルスは、挿入遺伝子を発現させるSpodoptera frugiperda細胞に感染させるために使用しうる(例えば、Smithら、1983年、J.Virol.46:584頁;Smith米国特許第4,215,051号を参照)。
【0120】
哺乳動物宿主細胞において、多くのウィルスベース発現系が利用しうる。アデノウィルスを発現ベクターとして用いる場合、対象のErbB受容体コード配列は、アデノウィルス転写/翻訳制御複合体、例えば、遅発プロモーター及びトライパタイトリーダー配列に結合しうる。次にこのキメラ遺伝子を、インビトロ又はインビボ組換え遺伝子によりアデノウィルスゲノムに挿入しうる。該ウィルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1又はE3)への挿入により、生存可能で、感染宿主においてErbB受容体を発現しうる組換えウィルスが生じる(例えば、Logan及びShenk、1984年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3655頁を参照)。特定の開始シグナルもまた、挿入されたErbB受容体コード配列の効率的な翻訳に必要でありうる。これらのシグナルとしては、ATG開始コドン及び隣接配列が挙げられる。それ自体の開始コドン及び隣接配列を含めて、ErbB受容体ファミリーメンバー遺伝子全体が、適切な発現ベクターに挿入される場合、他の翻訳制御シグナルは必要ないと考えられる。しかしながら、ErbB受容体コード配列の一部だけが挿入される場合、必要ならばATG開始コドンを含めて、外因性翻訳制御シグナルを用意しなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成双方の種々の起源でありうる。さらに、該開始コドンは、挿入断片全体の正確で確実な翻訳のために所望のコード配列のリーディングフレームと一致して存在しなければならない。この発現効率は、適切な転写エンハンサー要素、転写ターミネーター等の包含により増強できる(Bittnerら、1987年、Methods in Enzymol.153:516頁を参照)。
【0121】
さらに、挿入配列の発現を調節するか、又は所望の特異的様式で遺伝子産物を修飾及び処理するような宿主細胞株を選択しうる。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)及び処理(例えば、開裂)は、タンパク質の機能に重要でありうる。種々の宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後の処理及び修飾に関して特徴的かつ特異的機構を有する。発現される外来タンパク質の正確で確実な修飾及び処理のために適切な細胞系又は宿主系を選択しうる。最後に遺伝子産物の一次転写、グリコシル化、及びリン酸化の適切な処理のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞を使用しうる。このような哺乳動物宿主細胞としては、限定はしないが、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38が挙げられ、特に、例えばBT483、Hs578T、HTB26、BT20及びT47D等の乳癌細胞系、例えば、CRL7030及びHs578Bst等の正常乳腺細胞系が挙げられる。
【0122】
組換えタンパク質の長期間高収率産生のために安定な発現が好ましい。例えば、ErbB受容体遺伝子産物を安定に発現する細胞系を操作しうる。複製のウィルス起源を含有する発現ベクターを用いるよりも、宿主細胞は、適切な発現制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)、及び選択性マーカーにより制御されるDNAにより形質転換しうる。
【0123】
外来DNAの導入後、操作された細胞を、濃縮媒体中1〜2日間増殖でき、次いで選択的媒体に切り替えることができる。プラスミドのような組換え構築体における選択性マーカーは、選択的媒体に対する抵抗性を付与でき、細胞が、それらの染色体にプラスミドを安定に一体化させ、細胞増殖巣を形成するために増殖し、次いでクローン化して細胞系に拡大しうる。この方法は、ErbB受容体遺伝子産物を安定に発現する細胞系を操作するために有利に使用できる。このように操作された細胞系は、ErbB受容体ファミリーメンバー遺伝子産物の内因性活性に影響を与える化合物のスクリーニングと評価に特に有用となりうる。
【0124】
単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、1977年、Cell 11:223頁)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska及びSzybalski、1962年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:2026頁)、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、1980年、Cell 22:817頁)遺伝子を含む多くの選択系は、各々tk-細胞、hgprt-細胞又はaprt-細胞に使用しうる。また、抗代謝剤抵抗性は、以下の遺伝子:メトトレキサートに対する抵抗性を付与するdhfr(Wiglerら、1980年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:3567頁;O'Hareら、1981年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527頁);ミコフェノール酸に対する抵抗性を付与するgpt(Mulligan及びBerg、1981年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072頁);アミノグリコシドG-418に対する抵抗性を付与するneo(Colberre-Garapinら、1981年、J.Mol.Biol.150:1頁);及びハイグロマイシンに対する抵抗性を付与するhygro(Santerreら、1984年、Gene 30:147頁)、の選択に基づいて使用しうる。
【0125】
4.9 ErbB受容体、誘導体及び類縁体に対する抗体
本発明の方法及びキットは、ErbB受容体タンパク質、例えば、ErbB-1、ErbB-2、ErbB-3、又はErbB-4の1以上のエピトープを特異的に認識する抗ErbB受容体抗体又はそれらの断片の使用を含む。従って、任意のErbB受容体タンパク質、誘導体、又は断片は、ErbB受容体タンパク質に免疫特異的に結合する抗体を生成するための免疫原として使用しうる。このような抗体及び断片は、本明細書に開示された本発明の任意の方法を実施するために、試料中のErbB受容体の検出及び定量化に用いることができる。
【0126】
このような抗体類としては、限定はしないが、ポリクローナル抗体類、モノクローナル抗体(mAb)類、ヒト化又はキメラ抗体類、一本鎖抗体類、Fab断片、F(ab')2断片、Fv断片、Fab発現ライブラリーにより産生された断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体類、及び上記の任意のエピトープ結合断片を挙げることができる。具体的実施形態において、ヒトErbB-2、-3又は-4受容体タンパク質に対する抗体を使用する。
【0127】
抗体類又はそれらの免疫特異的断片の産生に関する一般法が、本明細書に記載されている。任意のこのような抗体類又は断片は、標準免疫学的方法によるか、又は適切な宿主生物で抗体又はその免疫特異的断片をコードする核酸分子の組換え発現により産生しうる。
【0128】
ErbB受容体に対する抗体の産生に関して、任意の種々の宿主動物を、ErbB受容体遺伝子産物、又はその一部に注入して免疫化しうる。このような宿主動物としては、限定はしないが、ウサギ、マウス、及びラットを挙げることができる。限定はしないが、フロイント(完全又は不完全)アジュバント、例えば、水酸化アルミニウム等の無機ゲル、リソレシチン等の表面活性物質、プルロニックポリオール類、ポリアニオン類、ペプチド類、油性乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール又は有用でありうるアジュバント、例えば、BCG(カルメット・ゲラン杆菌)及びCorynebacterium parvum等種々のアジュバントを、宿主の種に依存して免疫学的応答を高めるために使用しうる。
【0129】
抗ErbB受容体モノクローナル抗体は、本発明の方法及びキットの使用に好ましい。モノクローナル抗体は、培養で連続細胞系による抗体分子の産生を提供する任意の方法により得られうる。これらには、限定はしないが、Kohler及びMilsteinのハイブリドーマ法(1975年、Nature 256:495頁;及び米国特許第4,376,110号)、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kosborら、1983年、Immunology Today 4:72頁;Coleら、1983年、Proc.Natl.Acad. Sci.USA 80:2026頁)、及びEBVハイブリドーマ法(Coleら、1985年、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Alan R. Liss社、77頁)が挙げられる。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD及びそれらの任意のサブクラス等、任意の免疫グロブリンクラスでありうる。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロ又はインビボで培養しうる。
【0130】
適切な生物学的な活性のヒト抗体分子の遺伝子と共に適切な抗原特異性のマウス抗体分子の遺伝子をスプライシングすることによる「キメラ抗体」の産生のために開発された方法(Morrisonら、1984年、Proc.Natl.Acad.Sci.81:6851-6855頁;Neubergerら、1984年、Nature 312、604-608頁;Takedaら、1985年、Nature 314、452-454頁)は、本発明に有用な抗体を調製に使用しうる。キメラ抗体は、異なる部分が種々の動物種、例えば、マウスmAbから由来する可変領域及びヒト免疫グロブリンの一定領域を有する部分に由来する分子である(例えば、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;及びBossら、米国特許第5,816,397号を参照)。従って、本発明は、ErbB受容体タンパク質に特異的又は選択的であるキメラ抗体を考慮する。治療的に設計することが多いが、このようなキメラ抗体は、本発明の方法に従ってErbB受容体レベルを定量化するために有用でありうる。
【0131】
さらに、ヒト化抗体を、本発明の方法及びキットに用いることができる。簡潔に述べると、ヒト化抗体は、非ヒト種からの1以上の高頻度可変領域又は補足的決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を有する非ヒト種の抗体分子である。該フレームワーク領域の範囲及びCarsは、正確に定義されている(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、Kabat,E.ら、米国厚生省(1983)を参照)。ヒト化抗体の産生のために開発された技法の例は、当業界に公知であり、本発明の範囲内で有用である(例えば、Queenら、米国特許第5,585,089号及びWinter、米国特許第5,225,539号を参照)。ヒト化抗体は、治療剤として典型的に開発されている。しかしながら、このような抗体は、本発明によるErbB受容体レベルを定量化するために使用できるように、本発明の方法及びキットにも使用しうる。
【0132】
ファージディスプレー法は、ErbB受容体遺伝子産物に対する抗体の親和性を増すために使用しうる。本法は、ErbB受容体遺伝子産物に対する、より高い親和性の抗体を得るのに有用であり得、本発明による癌患者の診断及び予後診断に使用しうるであろう。親和性熟成という技法は、ErbB受容体遺伝子産物抗原を用い、変異誘発又はCDRウォーキング及び再選択を使用して、初発抗体又は親抗体と比較した場合、より高い親和性で該抗原に結合する抗体を同定する(例えば、Glaserら、1992年、J.Immunology 149:3903頁を参照)。単一ヌクレオチドではなくコドン全体を変異誘発することで、アミノ酸変異の半無作為化レパートリーを生じる。ライブラリーは、変異体クローンのプールで構築でき、それらの各々は、単一CDRにおける単一アミノ酸変化により異なり、各CDR残渣について各々可能性のあるアミノ酸置換を表す変異体を含有する。抗原に対する結合親和性の増加した変異体を、標識抗原を有する固定化変異体と接触させてスクリーニングしうる。当業界に公知の任意のスクリーニング法を用いて、抗原に対し結合力が増した変異体抗体を同定するために使用しうる(例えば、ELISA)(Wuら、1998年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:6037頁;Yeltonら、1995年、J.Immunology 155:1994頁を参照)。軽鎖を無作為化するCDRウォーキングもまた有用でありうる(Schierら、1996年、J.Mol.Bio.263:551頁を参照)。
【0133】
あるいは、一本鎖抗体の産生のために記載された技法(米国特許第4,946,778号; Bird、1998年、Science 242:423頁;Hustonら、1988年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879頁;Wardら、1989年、Nature 334:544頁)は、ErbB受容体遺伝子産物に対する一本鎖抗体を産生するために適応しうる。一本鎖抗体は、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖及び軽鎖断片を結合することにより形成され、一本鎖ポリペプチドを生じる。大腸菌における機能性Fv断片の組立て法もまた使用しうる(Skerraら、1988年、Science 242:1038頁)。
【0134】
特定のエピトープを認識する抗体断片を、公知の技法により生成しうる。このような断片は、当業界に公知の任意の利用しうる方法に従ってErbB受容体遺伝子産物を定量化するために使用しうる。例えば、このような断片としては、限定はしないが:抗体分子のペプシン消化により産生しうるF(ab')2断片;及びF(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することにより生成しうるFab断片;抗体分子をパパイン及び還元剤と処理することにより生成しうるFab断片;及びFv断片が挙げられる。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築でき(Huseら、1989年、Science 246:1275-1281頁)、所望の特異性があるモノクローナルFab断片が迅速かつ簡便に同定できる。
【0135】
対象の抗原に対する抗体の分子クローンを、当業者に公知の技法により調製しうる。組換えDNAの方法論(例えば、Maniatisら、1982年、Molecular Cloning,A Laboratory Mannual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New Yorkを参照)は、モノクローナル抗体分子、又はその免疫特異的断片をコードする核酸配列を構築するために使用しうる。
【0136】
抗体分子は、周知の技法、例えば、免疫吸収クロマトグラフィ又は免疫アフィニティークロマトグラフィ、クロマトグラフィ法、例えばHPLC(高性能液体クロマトグラフィ)、又はそれらの組合せにより精製しうる。
【0137】
抗体の産生において、所望の抗体に関するスクリーニングは、当業界に公知の技法、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着試験)により達成しうる。例えば、ErbB受容体の特定のドメインを認識する抗体を選択するために、生成ハイブリドーマを、このようなドメインを含有するErbB受容体断片に結合する産物について試験しうる。
【0138】
前述の抗体は、本発明の方法とキットにおいてErbB受容体タンパク質を定量化するために、例えば、適切な試料中のそのレベルを測定するために使用しうる。
【0139】
本明細書に使用される抗体産生法としては、Harlow及びLane(Harlow,E及びLane,D、1988年、及び後続版、Antibodies:A Laboratory Mannual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)に記載するものが挙げられ、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0140】
ErbB受容体の1種以上のエピトープに対する任意の抗体を、本発明の方法とキットに使用しうる。ErbB特異的抗体の非限定例は、ErbB-1特異的抗体であるIMC-225(セツキシマブ(Cetuximab(登録商標)としても知られる)、ImClone Systems、ニューヨーク; Goldsteinら、1995年、Clin.Cancer Res.1:1311-8頁;Prewettら、1996年、J.Immunother. Tumor Immunol.19:419-27頁;Fanら、1994年、J.Biol.Chem.269:27585-602頁; Baselga、2001年、Eur.J.Cancer 37:S16-22頁を参照;それら全ては、参照としてそれら全体が本明細書に組み込まれている);及びErbB-1特異的抗体であるABX-EGF(Abgenix、フレモント、カリフォルニア州;ヒトモノクローナル抗体;Yangら、2000年、Proc.Am.Soc. Clin.Oncol.19:48頁;Sampsonら、2000年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:7503-8頁;これら2つは、参照としてそれら全体が本明細書に組み込まれている);及びErbB-2特異的抗体であるトラスツズマブ(レビューに関して、Baselgaら、2001年、Semin.Oncol.28:4-11頁;Hancockら、1991年、Cancer Res.51:4575-80頁を参照、それら全ては、参照としてそれら全体が本明細書に組み込まれている)である。ErbB特異的抗体のレビューに関して、Ciardelloら、2002年、Clin.Cancer Res.7:2598-70頁;Noonbergら、2000年、Drugs、753-767頁;de Bonoら、2002年、Trends in Mol.Med.8(4):S19-26頁; Woodburnら、1999年、Pharmacol.Ther.82:241-50頁を参照;それら全ては、参照としてそれら全体が本明細書に組み込まれている。さらに、商品として入手しうるErbB受容体抗体を、本発明に従って使用しうる。例えば、Upstate USA社、シャーロッツビル、バージニア州から入手しうるものである; HYPERLINK http://www.upstate.com http://www.upstate.com。
【0141】
本明細書に記載され、請求された本発明は、これらの実施形態が、本発明のある態様の例証として意図されていることから、本明細書に開示された特定の実施形態により範囲を限定されることはない。等価の任意の実施形態が、本発明の範囲内であることを意図している。実際、本明細書に示され、記載されたものに加えて本発明の種々の修飾が、前述の記載から当業者にとって明らかとなるであろう。このような修飾はまた、添付の請求項の範囲内に入ることが意図されている。
【0142】
本出願を通して、種々の刊行物が引用されている。それらの内容は、全ての目的のためにそれらの全体が参照として本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ErbB-1陽性腫瘍の化学療法レジメンの治療を以前に受けた対象の癌の臨床的徴候の再発を予測する方法であって、前記方法が:
(a)寛解期に前記対象から得た試料中の少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定すること;及び
(b)工程(a)で測定されたレベルを標準レベルと比較すること
を含み、少なくとも1種のErbB受容体の前記測定レベルが前記標準レベルと比較して高い場合は、前記対象の癌の臨床的徴候の再発危険性が増していることを示す、方法。
【請求項2】
ErbB-1陽性腫瘍の放射線療法又は化学療法レジメンで治療を以前に受けた対象の癌の予後を決定する方法であって、前記方法が:
(a)寛解期に前記対象から得た試料中の少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定すること;及び
(b)工程(a)で測定されたレベルを標準レベルと比較すること
を含み、少なくとも1種のErbB受容体の前記測定レベルが前記標準レベルと比較して高い場合は、前記対象の癌の転移、再発又は回帰の危険性が増していることを示す、方法。
【請求項3】
ErbB-1陽性腫瘍の化学療法レジメンで治療を以前に受けた対象の化学療法レジメンに対する耐性発現を予測する方法であって、前記方法が:
(a)寛解期に前記対象から得た試料中の少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定すること;及び
(b)工程(a)において測定されたレベルを標準レベルと比較すること
を含み、少なくとも1種のErbB受容体の前記測定レベルが前記標準レベルと比較して高い場合は、前記対象の前記化学療法レジメンに対する耐性発現の危険性が増していることを示す、方法。
【請求項4】
工程(a)で測定された前記ErbB受容体が、ErbB-1、ErbB-2、ErbB-3又はErbB-4、又はそれらの組合せである請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程(a)で測定された前記ErbB受容体が、ErbB-2、ErbB-3又はErbB-4、又はそれらの組合せである請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程(a)で測定された前記ErbB受容体が、ErbB-3又はErbB-4、又はそれらの組合せである請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程(a)における少なくとも1種のErbB受容体レベルの測定が、前記ErbB受容体のレベルを連続的にモニタリングすることを含む請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記癌が、非小細胞肺癌、乳癌、頭頸部癌、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、結腸直腸癌、及びグリア芽腫からなる群から選択される請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記化学療法レジメンが、IMC-C225又はZD1839による治療を含む請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
ErbB受容体レベルの測定が、ErbB受容体プローブを用いて行われる請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ErbB受容体レベルの測定が、ErbB受容体相対活性を測定することを含む請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記ErbB受容体プローブが、核酸、タンパク質及び小分子からなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質が、抗体又はその断片である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質が、ErbB受容体リガンド又はその断片である請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、モノクローナル抗体である請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体が、ErbB受容体と免疫特異的に結合する請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記対象から得た前記試料が血液試料である請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
連続モニタリングが、少なくとも年4回、少なくとも2ヵ月毎、少なくとも1月毎、少なくとも2週間毎、少なくとも週1回、少なくとも3日毎、又は少なくとも1日毎に行われる請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
(a)抗ErbB受容体抗体又は抗ErbB受容体抗体の断片、ErbB受容体mRNAに特異的にハイブリダイズしうる核酸プローブ、及びErbB受容体をコードする核酸の少なくとも一部のPCR増幅がしうる核酸プライマー対からなる群から選択される少なくとも1種の試薬;及び(b)ErbB-1陽性腫瘍の化学療法レジメンで治療を以前に受けた対象の、少なくとも1種のErbB受容体レベルの測定に使用する使用説明書、を含むキット。
【請求項20】
前記試薬が、検出マーカーにより標識されている請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記検出マーカーが、化学発光標識、酵素標識、蛍光標識又は放射性標識である請求項20に記載のキット。
【請求項22】
(a)寛解するように治療レジメンで対象を治療すること;
(b)寛解期に前記対象から得た試料中の少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定すること;及び
(c)工程(b)で測定したレベルを標準レベルと比較すること
を含み、少なくとも1種のErbB受容体の前記測定レベルが前記標準レベルと比較して高い場合は、前記対象の癌治療の効果を改善するために他の治療が必要であることを示す、癌に罹患した対象の癌治療の効果を改善する方法。
【請求項23】
対象の癌の臨床的徴候の再発を予測する方法であって、前記方法が、寛解期に前記対象から得た試料中の、ErbB-1ではない少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定すること、及び前記測定レベルから前記対象の癌の臨床的徴候の再発危険性が増しているか否かを決定すること、を含む方法。
【請求項24】
前記対象の癌の臨床的徴候の再発危険性が増しているか否かを決定することが、前記試料中の少なくとも1種のErbB受容体の前記測定レベルを標準レベルと比較することを含み、前記測定レベルが前記標準レベルと比較して高い場合は、前記対象の癌の臨床的徴候の再発危険性が増していることを示す請求項23に記載の方法。
【請求項25】
対象の癌の予後を決定する方法であって、前記方法が、寛解期の前記対象から得た試料中の、ErbB-1ではない少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定すること、及び前記測定レベルから前記対象の癌の転移、再発又は回帰の危険性が増しているか否かを決定すること、を含む方法。
【請求項26】
対象の化学療法レジメンに対する耐性発現を予測する方法であって、前記方法が、寛解期に前記対象から得た試料中の、ErbB-1ではない少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定すること、及び前記測定レベルから前記対象の前記化学療法レジメンに対する耐性発現の危険性が増しているか否かを決定すること、を含む方法。
【請求項27】
前記対象がErbB-1陽性腫瘍の化学療法レジメンで治療を以前に受けた請求項23、25又は26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記療法レジメンが化学療法レジメンである請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記療法レジメンが放射線療法レジメンである請求項27に記載の方法。
【請求項30】
測定した前記ErbB受容体がErbB-2、ErbB-3又はErbB-4、又はそれらの組合せである請求項23、25又は26のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
測定された前記ErbB受容体がErbB-3又はErbB-4、又はそれらの組合せである請求項23、25又は26のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
測定された前記ErbB受容体がErbB−3及びErbB−4である請求項23、25又は26のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1種のErbB受容体レベルの測定が、前記ErbB受容体のレベルを連続的にモニタリングすることを含む請求項23、25又は26のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
前記癌が、非小細胞肺癌、乳癌、頭頸部癌、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、結腸直腸癌、及びグリア芽腫からなる群から選択される請求項23、25又は26のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
前記化学療法レジメンがIMC-C225又はZD1839の治療を含む請求項28に記載の方法。
【請求項36】
ErbB受容体レベルの測定がErbB受容体プローブを用いて行われる請求項23、25又は26のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
ErbB受容体レベルの測定がErbB受容体相対活性を測定することを含む請求項23、25又は26のいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記ErbB受容体プローブが、核酸、タンパク質及び小分子からなる群から選択される請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記タンパク質が抗体又はその断片である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記タンパク質がErbB受容体リガンド又はその断片である請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体がモノクローナル抗体である請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記抗体がErbB受容体と免疫特異的に結合する請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記対象から得た前記試料が血液試料である請求項23、25又は26のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
連続モニタリングが、少なくとも年4回、少なくとも2ヵ月毎、少なくとも1月毎、少なくとも2週間毎、少なくとも週に1回、少なくとも3日毎、又は少なくとも1日毎行われる請求項23、25又は26のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
(a)寛解するように治療レジメンで対象を治療すること;
(b)寛解期に前記対象から得た試料中の、ErbB-1ではない少なくとも1種のErbB受容体のレベルを測定すること;及び
(c)癌治療の効果を改善するため、前記対象に他の治療が必要か否かを決定すること、
を含む癌に罹患した対象の癌治療の効果を改善する方法。
【請求項46】
前記対象の他の治療が必要か否かを決定することが、前記試料中の、少なくとも1種のErbB受容体の前記測定レベルを標準レベルと比較することを含み、前記測定レベルが前記標準レベルと比較して高い場合は、前記対象の他の治療が必要であることを示す請求項45に記載の方法。

【公表番号】特表2007−506068(P2007−506068A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522768(P2006−522768)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/025545
【国際公開番号】WO2005/013804
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】