説明

化学療法誘導嘔吐を治療するためのパロノセトロン

【課題】パロノセトロンを含む新規な組成物の提供。
【解決手段】5-HT3レセプターアンタゴニスト、特に下記化学式のパロノセトロンを使用する、化学療法または放射線療法誘導急性および遅延嘔吐の治療方法および組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、5-HT3レセプターアンタゴニストを使用する化学療法および放射線療法誘導嘔吐を減少する方法に関する。特に、本発明は、パロノセトロンで化学療法および放射線療法誘導嘔吐を減少する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
嘔吐は、細胞障害性化学療法および放射線療法を受ける人々の生命・生活の質に著しく影響を与える、このような治療の破壊的な結果である。近年、5-HT3 (5-ヒドロキシトリプタミン) レセプターアンタゴニストと呼ぶ薬剤の1クラスが開発されてきており、これらは5-HT3レセプターに関連する大脳機能を中和することによってこのような嘔吐を治療する。下記の文献を参照のこと:Drugs Acting on 5-Hydrxtryptamine Receptors: The Lancet Sep. 23、1989およびその中に引用されている文献。
【0003】
このクラス内の薬剤は、下記の文献に記載されているように、オンダンセトロン、グラニセトロンおよびドラセトロンを包含する: 米国特許第4,695,578号、米国特許第4,753,789号、米国特許第4,929,632号、米国特許第5,240,954号、米国特許第5,578,628号、米国特許第5,578,632号、米国特許第5,922,749号、米国特許第5,622,720号、米国特許第5,955,488号、および米国特許第6,063,802号 (オンダンセトロン) 、米国特許第4,906,755号、米国特許第5,011,846号、および米国特許第4,906,755号 (ドラセトロン) 、および米国特許第4,886,808号、米国特許第4,937,247号、米国特許第5,034,398号および米国特許第6,294,548号 (グラニセトロン) 。
【0004】
典型的には、これらの5-HT3アンタゴニストは、化学療法または放射線療法の開始少し前に、静脈内投与され、そして1サイクルの化学療法または放射線療法間に2回以上投与することができる。例えば、化学療法剤を1サイクルにおいて2回以上投与するとき(例えば、28日の化学療法サイクルにおいて1〜7日に) 、5-HT3アンタゴニストを1〜7日の各々において投与して最適な抗嘔吐効果が得ることができる。いくつかの化学療法剤はただ1回投与するときでさえ、数日間の延長した期間にわたって嘔吐を誘導することがあるので、嘔吐の危険が実質的におさまるまで、嘔吐抑制薬剤、例えば、5-HT3アンタゴニストを毎日投与することが望ましいであろう。
【0005】
しかしながら、現在市販されている5-HT3レセプターアンタゴニストは、急性嘔吐の抑制におけるよりも、遅延悪心の抑制において効果が低いことが証明されているので、5-HT3アンタゴニストの現在のクラスはこの要求を満足するために特別に助けとなることが証明されてきていない。Sabra K、Choice of 5-HT3 Receptor Antagonist for the Hospital Formulary、EHP、Oct. 1996; 2 (suppl 1): S19-24。
【0006】
また、現在入手可能な5-HT3アンタゴニストは、療法的実用性を制限する下記の欠陥の1または2以上に悩まされる: 効力、作用期間、治療的効能のウィンドウ、投与の容易さ、副作用、および投与養生法の確実性。Sabra K (1996) (前掲) 。副作用は典型的には軽度〜中程度および一時的であるが、それらは頭痛、めまいまたは眩暈感、腹痛または痙攣、便秘、鎮静および疲労、肝臓トランスアミナーゼおよび/またはビリルビンの増加、および心電図の変化を包含する。Gregory REおよびEttinger DS、5HT3 receptor antagonists for the prevention of chemotherapy-induced nausea and vomiting. A comparison of their pharmacology and clinical efficacy. Drugs、Feb 1998; 55 (2): 173-189。
【0007】
種々の特許および参考文献には、嘔吐抑制剤および5-HT3アンタゴニストとして有効な化合物のクラスが開示されている。例えば、Ponchant 他、”Synthesis of 5-125I-Iodo=Zacopride, A New Probe for 5-HT3 Receptor Sites.” J. Lab. Cpds. and Radiopharm. Vol. XXIX、No. 10、pp. 1147-1155 (1991) には、5-HT3セロトニンレセプターの結合に有効な置換3-キヌクリジニルベンズアミドが開示されている。米国特許第4,717,563号 (Alphin 他) には、特定のN-3-キヌクリジニルベンズアミドおよびチオベンズアミドを利用する非白金抗癌剤により引き起こされる嘔吐を抑制する方法が開示されている。
【0008】
米国特許第4,820,715号 (Monkovic 他) には、嘔吐、例えば、化学療法誘導嘔吐の治療、および/または胃運動性の損傷に関係する障害の治療に有効であると主張されている、置換3-キヌクリジニルベンズアミド化合物が開示されている。米国特許第5,202,303号 (Berger 他) には、5-HT3レセプターアンタゴニストとして作用するベンズ[de]イソキノリン-1-オンの1クラスが開示されている。この特許に開示されている種はパロノセトロンを含む。この特許によれば、このクラスの化合物は、嘔吐、胃腸障害、不安、抑鬱状態、および疼痛の治療に有効である。この特許には、適当な治療的養生法を決定するための特定のデータ、例えば、化合物の効力、化合物の血清半減期、投与量-応答データ、または作用期間は開示されていない。
【0009】
特に多投与量を数日の期間にわたって投与するとき、薬剤投与における最大の課題の1つは、十分に許容され、投与養生法を通じて終始一貫して有効なである投与量を見出すことである。最適量の発見は、血清半減期、投薬/効能の関係のような因子により複雑であり、そして、抗嘔吐剤の場合において、薬剤を投与する化学療法の養生法の変動性および誘導される嘔吐の種類 (すなわち、遅延/急性嘔吐および中程度/高度に嘔吐発生性の化学療法) により複雑である。ある範囲の体重にわたって有効である抗嘔吐剤の単一単位投与量の処方物を分割するとき、この課題は重大である。なぜなら、単一単位投与量は典型的には看護婦および医師が診療室において投与量を滴定するのを防止するように設計されているからである。
【発明の概要】
【0010】
発明の目的
本発明の目的は、強化された効力を有し、そして不適当な副作用の発生率をより低くするより少ない投与量で投与できる5-HT3レセプターアンタゴニストを使用して、嘔吐を抑制する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、化学療法剤または放射線療法により誘導される急性嘔吐および遅延嘔吐を抑制しかつ軽減する方法、およびこのような急性嘔吐および遅延嘔吐を抑制しかつ軽減する能力を有する薬剤を提供することである。
本発明の他の目的は、連続的24時間の期間においてほとんど任意の体重の患者に投与して即時型嘔吐および遅延型嘔吐を抑制できる、パロノセトロンの均一な規定された投与量を提供することである。
本発明のなお他の目的は、増加した血漿半減期および延長したin vivo 活性を有する5-HT3アンタゴニストを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、化学療法的養生法または放射線療法に先だって嘔吐抑制剤を投与するとき、前治療のためのウィンドウの大きさ増加することによって、より大きい柔軟性を提供することである。
本発明のなお他の目的は、嘔吐抑制剤を投与するとき、嘔吐抑制剤ボーラスの投与に必要な時間を短縮することによって、より大きい柔軟性を提供することである。
本発明のなお他の目的は、医師がパロノセトロンの不必要に増加した投与量を処方することを防止し、かつパロノセトロンが投与量の増加以外にパロノセトロンが有効であることが証明されないとき、医師が他の抗嘔吐剤に切り替えることを可能とすることによって、化学療法または放射線療法誘導嘔吐を治療する、いっそう明確に限定された養生法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の要約
5-HT3アンタゴニストが遅延嘔吐の治療または予防において最小の利益を有するという発表された報告と反対に、パロノセトロンは両方の中程度および高度に嘔吐発生性の化学療法的養生法において急性嘔吐および遅延嘔吐を軽減および防止すること、およびパロノセトロンは中程度に嘔吐発生性の化学療法の開始後24時間以上において起こる悪心および嘔吐を防止および軽減する能力において、オンダンセトロンおよびドラセトロンの両方よりも実質的にすぐれることを本発明者らは驚くべきことには発見した。したがって、1つの態様において、本発明は、治療的に有効量のパロノセトロンを投与することを含んでなる嘔吐発生性化学療法または放射線療法を受ける患者における急性嘔吐および遅延嘔吐を治療する方法を提供する。治療的に有効量は、この文書中のどこかでより詳細に開示する投与量の1つであることが好ましい。
【0013】
本発明者らは、また、パロノセトロンを使用して嘔吐を治療および予防する、驚くべきほどに有効なかつ融通性の臨床的養生法を支持する、1連の発見を行った。特に、本発明者らは下記の事実を発見した:
・ パロノセトロンは他の5-HT3アンタゴニストのレベルのわずかに約1/10のレベルにおいて化学療法および放射線療法により誘導される嘔吐を治療および予防ことができる;
・ パロノセトロンは約40時間の血漿半減期を有する; および
・ パロノセトロンの効能のプラトーは約30 μg/kg〜約90 μg/kgの広い投与量範囲にわたる。
【0014】
前述の発見に基づいて、本発明者らは、0.25 mg/日のパロノセトロンは診療室において使用するためにパロノセトロンの特に有効でありかつ融通性のある投与量であることを決定した。なぜなら、この投与量は化学療法または放射線療法の1サイクルにおいてわずかに1回使用するとき有効であるが、パロノセトロンの長い間半減期および多投与間のパロノセトロンの付随的蓄積にかかわらず、観測されるプラトーのために、パロノセトロンの各投与量から終始一貫した効能を期待することができるで、連続的日数で投与するとき前記投与量はまた有効であるからである。その上、このような効能は広い範囲の患者の体重にわたって期待することができる。
【0015】
したがって、他の態様において、本発明は、0.25 mgのパロノセトロンを患者に投与することを含んでなる、患者における化学療法または放射線療法誘導嘔吐を治療する方法を提供する。他の態様において、本発明は、0.25 mgのパロノセトロンを含んでなるパロノセトロンの単一単位投与量の形態を提供する。
また、パロノセトロンの驚くべき効力、パロノセトロンの延長した血漿半減期、およびパロノセトロンについて観測されたプラトー投与量は、下記を包含する多数の他の実際的利点を有する:
【0016】
・ パロノセトロンの効力は、パロノセトロンの必要量がより少ないので、より大きい原価効率を可能とする。
・ また、パロノセトロンの効力は、減少した濃度における薬剤の処方を可能とする。パロノセトロンはより低い濃度において最も安定であることが見出されたので、この利点はパロノセトロンの処方において特に有意である。パロノセトロンはわずかに約10〜30秒におけるボーラスとして静脈内投与するように十分に濃縮できるので、この利点は便利さの観点からまた有意である。
【0017】
・ 延長した血漿半減期は、嘔吐を治療するために投与しなくてはならないパロノセトロンの量をさらにいっそう減少する。
・ 延長した血漿半減期は、約24時間の間隔、またはある種の治療的設定においてただ1回のパロノセトロンの投与を可能とする。
・ 延長した血漿半減期は、化学療法または放射線療法の投与に先行する時間のより大きいウィンドウにわたって、薬剤投与を可能とすることによって、臨床的設定においてより大きい柔軟性を可能とする。
【0018】
・ 延長した血漿半減期およびプラトーの投与現象は、組み合わさって、嘔吐を経験する場合でさえ、セッションにおけるパロノセトロンのそれ以上の投与量が特定の時間ウィンドウ内で正当化されないということを医師に保証することによって、養生法に対してより多い確実性を提供する。
・ 延長した血漿半減期およびプラトーの投与現象は、さらに組み合わさって、以前のセッションにおいて嘔吐を経験する場合、引き続くセッションにおいてパロノセトロンの投与量を増加させる医師の傾向を回避することによって、養生法に対してより多い確実性を提供する。
【0019】
定義
「アンプル」は、わずかに1回使用する投薬の小さい密封した容器を意味し、そして破壊可能なおよび破壊不可能なガラスアンプル、破壊可能なプラスチックアンプル、微小スクリュー-トップ型ジャー、わずかに1単位投与量のパロノセトロン (典型的には約5 ml) を保持できる大きさの任意の他の型の容器を意味する。
【0020】
「動物」は、ヒト、非ヒト哺乳動物 (例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、畜牛、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、およびシカ) を包含する。本明細書に開示する方法は一般に人々に適用可能であるが、その上動物に適用可能である。
「化学療法剤」は、増殖性障害を治療するための種々のクラスの化合物、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗物質、天然物、酵素、生物学的応答変更剤、その他の成分、放射性医薬 (例えば、ホルモンまたは抗体を標識化するY-90) 、ホルモンおよびアンタゴニスト、例えば、下に列挙するものを包含する。
【0021】
抗血管形成剤: アンギオスタチン、エンドスタチン。
アルキル化剤: 窒素マスタード、例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン (L-サルコリシン) 、およびクロランブシル; エチレンイミンおよびメチルメラミン、例えば、ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ; アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン; ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン (BCNU) 、ロムスチン (CCNU) 、セムスチン (メチル-CCNU) 、およびストレプトゾシン (STR); およびトリアゼン、例えば、ダカルバジン (DTIC; ジメチルトリアゼノイミダゾール-カルボキシアミド) 。
【0022】
代謝拮抗物質: 葉酸アナローグ、例えば、メトトレキセート (アメトプテリン); ピリミジンアナローグ、例えば、フルオロウラシル (5-フルオロウラシル; 5-FU) 、フルクスウリジン (フルオロデオキシウリジン; FUdR) 、およびシタラビン (シトシンアラビノシド); プリンアナローグおよび関係するインヒビター、例えば、メルカプトプリン (6-メルカプトプリン; 6-MP) 、チオグアニン (6-チオグアニン; TG) 、およびペントスタチン (2’-デオキシシオホルマイシン); ツルニリソウアルカロイド、例えば、ビンブラスチン (VLB) 、およびビンクリスチン; およびエピポドフィロトキシン、例えば、エトポシドおよびテニポシド。
【0023】
天然物: 抗体、例えば、ダクチノマイシン (アクチノマイシンD) 、ダウノルビシン (ダウノマイシン; ルビドマイシン) 、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン (ミトラマイシン) 、およびミトマイシン (ミトマイシンC); 酵素、例えば、L-アスパラギナーゼ; および生物学的応答変更剤、例えば、インターフェロン-α。
その他の成分: 白金配位錯体、例えば、シスプラチン (シス-DDP) およびカルボプラチン; ミクソトザントロン; ヒドロキシ尿素; プロカルバジン (N-メチルヒドラジン、MIH); ミトタン (o,p’-DDD); アミノグルテチミド; アドレノルチコステリオド、例えば、プレドニゾン; およびプロゲスチン、例えば、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、メドロキシプロゲステロンアセテート、およびメゲストロールアセテート。
【0024】
ホルモンおよびアンタゴニスト: エストロゲン、例えば、ジエチルスチベストロールおよびエチニルエストラジオール; 抗エストロゲン、例えば、タモキシフェン; アンドロゲン、例えば、テストステロンプロピオネート; フルクソミエステロン; 抗アンドロゲン、例えば、フルタミド (前立腺); およびゴナドトロピン放出ホルモンアナローグ、例えば、ロイプロリド。
この明細書を通じて、用語 「を含んでなる」 は、記載した要素、整数または工程、または要素、整数または工程のグループを含むと理解されるが、他の要素、整数または工程、または要素、整数または工程のグループを排除しない。
【0025】
「疾患」は、動物または動物の部分の健康でない状態を特別に包含し、そしてその動物に適用される医学的または獣医学的治療により引き起こされるか、あるいはそれらに付随する健康でない状態、すなわち、このような治療の副作用を包含する。こうして、ここにおいて疾患は嘔吐発生副作用を有する薬剤を使用する治療により、特に癌の治療、例えば、化学療法剤を使用する化学療法および放射線療法により引き起こされる嘔吐を包含する。
「嘔吐」は、この出願の目的に対して、通常の辞書の定義よりも広い意味を有し、そして嘔吐ばかりでなく、かつまた悪心およびむかつきを包含する。
【0026】
「遅延嘔吐」は、嘔吐誘導化学療法または放射線療法の事象の開始後約24時間以上において起こる嘔吐を意味する。こうして、嘔吐は、化学療法または放射線療法の事象後2、3、4、またはさらに5日までに起こる嘔吐を包含する。
「急性嘔吐」は、嘔吐誘導化学療法または放射線療法の事象の開始後約24時間以内に起こる嘔吐を包含する嘔吐を意味する。
「中程度に嘔吐発生性の化学療法」は、嘔吐発生潜在性がカルボプラチン、シスプラチン≦50 mg/m2、シクロホスアミド<1500 mg/m2、ドキソルビジン>25 mg/ms、エピルビシン、イリノテカン、またはメトトレキセート>250 mg/m2の嘔吐発生潜在性に匹敵するか、あるいは等しい化学療法を意味する。
【0027】
「高度に嘔吐発生性の化学療法」は、シスプラチン≧60 mg/m2、シクロホスアミド>1500 mg/m2、またはダカルバジンの嘔吐発生潜在性に匹敵するか、あるいは等しい化学療法を意味する。
「パロノセトロン」は、(3aS)-2,3,3a,4,5,6-ヘキサヒドロ-2-[(S)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-3-イル]2,2,3a,4,5,6-ヘキサヒドロ-1-オキソ-1Hベンズ[de]イソキノリン塩酸塩を意味し、そして好ましくは一塩酸塩として存在する。パロノセトロンは下記の化学構造により表すことができる:
【0028】
【化1】

【0029】
「薬学上許容される」は、一般的に安全、無毒であり、生物学的にまたはその他の点で望ましい医薬組成物の製造において有用であり、そして獣医学的使用ならびにヒト薬学的使用に許容されるものを包含する。
【0030】
「薬学上許容される塩」は、上に定義したように、薬学上許容され、そして必要な薬理学的活性を有する塩を意味する。このような塩は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、およびその他と形成した酸付加塩; または下記の有機酸と形成した酸付加塩を包含する: 酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸) 、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、t-ブチル酢酸、ラウリルスルホン酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸、およびその他。
【0031】
さらに、存在する酸性プロトンが無機塩基または有機塩基と反応することができるとき、薬学上許容される塩を形成することができる。許容される塩基は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムおよび水酸化カルシウムを包含する。許容される有機塩基は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンおよびその他。
【0032】
「治療的有効量」は、疾患を治療するために動物に投与するとき、このような疾患の治療を実施するために十分である量を意味する。
疾患の「治療」または 「治療する」 は下記を包含する: (1) 疾患に対する素因を有することがあるが、疾患の症候を経験または表示していない動物において疾患が起こることを防止する、(2) 疾患を治療する、すなわち、その進展を阻止する、または (3) 疾患を軽減する、すなわち、疾患を退行させる。
【0033】
詳細な説明
本発明の1つの態様は、パロノセトロンが遅延嘔吐を治療する能力において他の5-HT3アンタゴニストよりも驚くべきほどに優れると同時に、その上急性嘔吐の治療において顕著な効能を示すという発見を前提とする。こうして、1つの態様において、本発明は、治療的有効量のパロノセトロンを投与するとを含んでなる、化学療法または放射線療法誘導遅延嘔吐および急性嘔吐を治療する方法を提供する。この方法は、中程度に嘔吐発生性の化学療法および高度に嘔吐発生性の化学療法の両方により誘導される嘔吐の治療に有効である。
【0034】
他の態様において、本発明は、 (a) ヒトまたは動物に約1〜約10 μg/kgのパロノセトロンを投与し、そして (b) 動物または動物に嘔吐誘導量の化学療法剤または放射線療法を投与することを含んでなる、急性嘔吐および/または遅延嘔吐を治療する方法を提供する。約30、60、または90 μg/kgまでのより多い投与量のパロノセトロンを効果的に投与して嘔吐を減少することができるが、パロノセトロンの有効性は試験する化学療法的養生法においてこれらのより低い濃度において典型的にはプラトーを有することが驚くべきことには発見された。したがって、好ましい態様において、約3〜約10 μg/kgのパロノセトロンを投与する。他の態様において、パロノセトロンはデキサメタゾンのようなステロイドの非存在において投与される。
【0035】
他の態様において、本発明は、0.25 mgの投与量のパロノセトロンを患者に投与することを含んでなる、化学療法または放射線療法誘導嘔吐を治療する方法を提供する。この投与量は約40〜約120 kgの範囲の体重にわたって有効であることが発見され、そしてこの範囲内の患者の体重に基づいて滴定する必要がない単一単位投与量のアンプルで好都合に提供することができる。この投与量は、化学療法誘導遅延および急性嘔吐の治療に有効である。さらに、この投与量は中程度に嘔吐発生性の化学療法および高度に嘔吐発生性の化学療法の両方により誘導される嘔吐の治療に有効である。
【0036】
パロノセトロンの必要なより低い投与量の特に驚くべき利点は、パロノセトロンの濃度が減少するにつれて、溶液中のパロノセトロンの安定性が増加するという事実に由来する。こうして、このパロノセトロンの効力のために、広い範囲のパロノセトロン濃度、好ましくは約0.01 mg/ml〜約0.20 mg/mlのパロノセトロン、最も好ましくは約0.05 mg/mlの濃度のパロノセトロンを含んでなる安定な組成物に処方することができる。こうして、1つの特定の態様において、パロノセトロンは5 mlの溶液を含んでなるアンプルで供給され、ここでこの量は約0.05 mg/mlの濃度における約0.25 mgのパロノセトロンに等しい。
【0037】
増強された安定性により、パロノセトロンは延長した期間の間貯蔵することができ、ここで期間は約1月、3ヶ月、6ヶ月、1年、または18ヶ月を超えるが、好ましくは30ヶ月を越えない (我々は安定性を試験し、これはFDAファイルの中に含まれている) 。この増強された安定性は、室温を含む種々の貯蔵条件において見られる。
この方法は、経口的、全身的 (例えば、経皮的、鼻内または坐剤による) または非経口的 (例えば、筋肉内、静脈内または皮下) を包含する事実上任意の投与方法を使用して実施することができる。好ましい態様において、パロノセトロンは経口的液体としてまたは静脈内に投与され、最も好ましくはパロノセトロンは静脈内に投与される。
【0038】
パロノセトロンのより低い投与量に関連する他の特定の利点は、薬剤を単一静脈内ボーラスとして短い、不連続の期間にわたって投与できることである。この時間期間は、一般に、約10〜60秒、または約10〜約40秒、最も好ましくは約10〜30秒である。
【0039】
なお他の態様は、この方法を実施する工程の順序およびタイミングである。この方法は任意の順序で実施できるが、好ましい態様において、工程 (a) (パロノセトロンの投与) は工程 (b) (化学療法または放射線療法の投与) に順序で先行する。その上、工程 (a) は、工程 (b) の直前から工程 (b) の1、2、5、8、または10時間前までの、工程 (b) に先行する大きい時間ウィンドウにわたって実施することができ、パロノセトロンは好ましくは化学療法剤または放射線療法前の約15分〜約2時間に、より好ましくは化学療法剤または放射線療法前の約15分〜約1時間に、最も好ましくは化学療法剤または放射線療法前の約30分に投与する。
【0040】
本発明の方法は、化学療法または放射線療法の集中的養生法を規定された期間にわたって実施し、次いで延長した回復期間を存在させる、化学療法または放射線療法のサイクル、および治療および回復の順序を反復する、引き続くサイクルの関係において実施することが好ましい。化学療法の集中的養生法は化学療法剤のわずかに1回の投与を含んでなることができるか、あるいはそれは同一化学療法剤を投与する数日間を含んでなることができる。同様に、養生法は2種以上の化学療法剤の投与を含むことができる。その上、1または2以上の化学療法剤は急性嘔吐および/または遅延嘔吐を誘導することがある。
【0041】
パロノセトロンは、嘔吐を最も経験することが期待されるときに基づいて化学療法または放射線療法と組み合わせて、約24時間の時間間隔で投与することが好ましい。例えば、急性嘔吐を誘導するが、遅延嘔吐を誘導しない嘔吐誘導化学療法剤を1サイクルの化学療法 (すなわち、1つのセッション) 間にただ1回投与する場合、パロノセトロンはその上ただ1回投与されるであろう。化学療法剤が急性嘔吐および遅延嘔吐を誘導する場合、化学療法の開始時にかつその後24時間毎に、嘔吐がおさまるまで、パロノセトロンを投与することが好ましい。同様に、嘔吐誘導剤を化学療法サイクル間に2回以上 (すなわち、2回以上のセッションにおいて) 投与する場合、パロノセトロンもまた24時間毎に2回以上投与することが好ましいであろう。
【0042】
本発明の方法は、広い範囲の前述の化学療法剤および放射線療法により誘導される嘔吐の治療に有効であるが、特にシスプラチン、シクロホスファミド、カルムスチン、ジカルバジン、アクチノマイシンD、メルクロレタミン、カルボプラチン、ドキソルビシン、エピルビシン、イリノテカン、メトトレキセート、およびデカルバジンと組み合わせてを使用するとき、特に有効である。また、この方法は、高度に嘔吐発生性の化学療法と組み合わせてを使用するとき、特に典型的には延長した嘔吐期間、または嘔吐の遅延した開始に関連する化学療法剤を使用するとき、特に有効であることが見出された。
【0043】
種々の態様において、化学療法剤は少なくとも約24時間、48時間、72時間、または5日間の期間の間嘔吐を誘導する。例えば、1つの態様において、化学療法剤はシプラチンまたはシクロホスファミドであり、またそれ以上の好ましい態様において、シプラチンは約30、40、50、60、または70 mg/m2を超える投与量で投与され、そしてシクロホスファミドは約500、600、700、800、900、1000、または1100 mg/m2を超える投与量で投与される。
【0044】
増加する投与量のパロノセトロンを使用して観測されるプラトー効果は、その延長した半減期と組み合わせて、患者がパロノセトロンに対して少なくとも部分的に非応答性であるとき、実施すべき適当な養生法を処方医師にさらに知らせる。例えば、ある環境下に、患者をより高い投与量のパロノセトロンを投与するよりむしろ引き続くセッションにおいてパロノセトロンから切り替えるべきであることを医師は確信するであろう。
【0045】
したがって、他の態様において、本発明は、(1) 1つの化学療法のセッションにおいて: ヒトまたは他の動物に第1量のパロノセトロンを投与し、そして前記ヒトまたは他の動物に嘔吐誘導量の化学療法剤を投与し、(2) パロノセトロンの有効性を評価し、そして (3) 前記ヒトまたは他の動物が前記第1化学療法のセッションにおける前記パロノセトロンに対して少なくとも部分的に非応答性である場合、前記ヒトまたは動物に治療的有効量の第2抗嘔吐化合物を投与し、第1量より高い第2量のパロノセトロンを投与する介在化学療法のセッションを使用しないで、引き続くパロノセトロンのセッションを実施する、ことを含んでなる化学療法誘導嘔吐を防止する方法を提供する。
【0046】
プラトー投与効果は、延長した血清半減期と組み合わせるとき、ある環境において、嘔吐を経験する場合、単一治療セッションにおいてパロノセトロンの追加の投与量を早期に投与する医師の傾向を回避することによって、投与養生法をいっそう確実にすることもできる。こうして、他の態様において、本発明は、(1) 1つの化学療法のセッションにおいて: ヒトまたは他の動物に第1量のパロノセトロンを投与し、そして前記ヒトまたは他の動物に嘔吐誘導量の化学療法剤を投与し、(2) パロノセトロンの有効性を評価し、そして (3) 前記ヒトまたは他の動物が前記第1化学療法のセッションにおける前記パロノセトロンに対して少なくとも部分的に非応答性である場合、工程 (a) または (b) 後少なくとも約20、24、28、または32時間の間、第2投与量のパロノセトロンを投与しないことを含んでなる化学療法誘導嘔吐を防止する方法を提供する。
【0047】
医薬組成物
前述の説明はパロノセトロンの静脈内投与が好ましい投与モードであるためにそれに集中したが、本発明の方法は下記のルートの任意の1つによりパロノセトロンを投与することによって実施することができる: 経口的、全身的 (例えば、経皮的、鼻内または坐剤による) または非経口的 (例えば、筋肉内、静脈内または皮下) 。
【0048】
一般に、経口組成物は不活性希釈剤または食用担体を含む。それらはゼラチンカプセルの中に包むか、あるいは錠剤に圧縮することができる。経口治療的投与の目的に対して、活性化合物を賦形剤とともに組込み、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用することができる。薬学的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント物質を組成物の一部分として含めることができる。
【0049】
錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤およびその他は、下記の成分、または同様な特質の化合物を含有することができる: 結合剤、例えば、微結晶質セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン; 賦形剤、例えば、澱粉またはラクトース; 崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル、またはコーンスターチ; 潤滑、例えば、ステアリン酸マグネシウム; グリダント、例えば、コロイド状二酸化ケイ素; 甘味剤、例えば、スクロースまたはサッカリン; または香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香味剤。投与単位形態がカプセル剤であるとき、それは、前述の種類の物質に加えて、脂肪油のような液状担体を含有することができる。さらに、投与単位形態は、投与単位の物理的形態を変更する種々の他の物質、例えば、糖、シェラック、または腸溶剤のコーティングを含有することができる。
【0050】
化合物はエリキシル剤、懸濁液、シロップ剤、ウェーハ、チューインガムまたはその他の1成分として投与することができる。シロップは、活性化合物に加えて、甘味剤としてスクロースおよびある種の保存剤、色素および着色剤および香味剤を含有することができる。
【0051】
また、化合物または薬学上許容されるプロドラッグまたはそれらの塩を、必要な作用を障害しない他の活性物質と、または必要な作用を補助する物質、例えば、抗生物質、抗真菌剤、抗炎症剤、他の抗ウイルス剤、例えば、他のヌクレオシド化合物と混合することができる。非経口的、皮内、皮下、または局所適用に使用される溶液または懸濁液は下記の成分を含むことができる: 無菌の希釈剤、例えば、注射用水、生理的食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒; 抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン; 酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム; キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸; 緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩および張度調節剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキシトロース。非経口的製剤は、ガラスまたはプラスチックから作られたアンプル、使い捨て注射器または多投与量バイアルの中に包むことができる。
【0052】
静脈内に投与する場合、好ましい担体は生理的食塩水またはリン酸塩緩衝液 (PBS) である。
好ましくは、医薬組成物は連続的治療のために単一単位投与量形態で投与されるか、あるいは病徴の軽減が特別に要求されるとき任意に単一単位投与量形態で投与される。
【実施例】
【0053】
実施例1動物モデルにおけるパロノセトロンの抗嘔吐作用
静脈内および経口的に投与されるパロノセトロンの抗嘔吐作用を、雄および雌のイヌ (組み合わせた性別) において評価した。これらの実験において使用した抗嘔吐剤は、シスプラチン (3 mg/kg) 、デカルバジン (30 mg/kg) 、メクロレタミン (0.4 mg/kg) およびアクチノマイシンD (0.15 mg/kg) を含んだ。
【0054】
パロノセトロンおよび比較薬剤を抗腫瘍剤の前後に投与し、そして動物を嘔吐エピソードの数について観察した。平均嘔吐数を計算し、そして治療群間の差の統計的有意性をデネット検定 (Dunnett’s test) で決定した。パロノセトロンおよび比較薬剤 (オンダンセトロンおよびグラニセトロン) を蒸留水中で調製した。賦形剤対照群に、蒸留水を与えた。
【0055】
静脈内および経口的に投与したパロノセトロンの治療効果を、シスプラチン治療イヌにおいてオンダンセトロンおよび賦形剤のそれらと比較した。静脈内経路で投与したとき、パロノセトロン (0.1 mg/kg) およびオンダンセトロン (1.0 mg/kg) の両方は、シスプラチン3.0 mg/kgの投与後、5時間の期間に嘔吐エピソードの数を減少させた。パロノセトロンは、観測された嘔吐エピソードの平均数に基づいて、オンダンセトロンよりも統計的に有意にいっそう効力があった (賦形剤対照についての12.50に比較して、パロノセトロンおよびオンダンセトロンについてそれぞれ2.20および6.83であった) 。
【0056】
異なる研究において、シスプラチン誘導嘔吐を逆転する比較的能力についてパロノセトロンおよびオンダンセトロンを評価した。これらの実験において、3.0 mg/kgのシスプラチンを静脈内投与した後1時間に、パロノセトロン、オンダンセトロン、または賦形剤をイヌに静脈内投与した。シスプラチン投与後5時間の間嘔吐エピソードの数について、各動物を連続的に観察した。この実験の結果を表1に要約する。
【0057】
【表1】

【0058】
統計学的に最小の効果的な投与量はパロノセトロンについて1.0 μg/kgであり、そしてオンダンセトロンについて100 μg/kgであり、パロノセトロンがこの実験においてオンダンセトロンよりも実質的にいっそう効力があることを示唆する。
パロノセトロンおよびオンダンセトロンの経口的投与量-応答関係をシスプラチン治療イヌにおいて比較する実験間に、効力差の観測がさらに見られた。シスプラチン投与の1時間前に、パロノセトロン、オンダンセトロンまたは賦形剤対照を経口的経路により投与した。シスプラチン投与後5時間の間、嘔吐エピソードの数について、各動物を連続的に観察した。この実験の結果を表2に要約する。
【0059】
【表2】

【0060】
パロノセトロンおよびオンダンセトロンの両方を使用する前治療は、嘔吐エピソードの発生率を減少した。オンダンセトロンについて300 μg/kgの最小に有効な投与量に比較して、パロノセトロンは、10 μg/kg後におけるエピソードの有意な減少により証明されるように、より大きい効力を示した。
【0061】
実施例2シスプラチン治療イヌにおける作用期間
イヌにおける静脈内投与したパロノセトロン、オンダンセトロンおよびグラニセトロンの作用期間を実験において比較し、その結果を表3に示す。この研究において、6匹のイヌの群に3.0 mg/kgのシスプラチンを静脈内注射する12、10、8、6、4、2、または1時間前に、パロノセトロン、オンダンセトロン、またはグラニセトロン (それぞれ、0.1、0.15、または0.04 mg/kg) を静脈内投与した。
【0062】
【表3】

【0063】
パロノセトロンは、シスプラチン注射の少なくとも10時間程度に長い期間前に投与したとき、多少の抗嘔吐活性を示した。オンダンセトロンは、1時間の前治療期間後にのみ、嘔吐エピソードを減少した。グラニセトロンは、これらの実験において抗嘔吐作用をもたなかった。パロノセトロンは、シスプラチン12時間前に投与したとき、保護しなかった。以前の実験において、より高い投与量のオンダンセトロン(0.3 mg/kg、静脈内) は、シスプラチン注射の数時間程度に長い期間前に投与したとき、保護効果を示した。その実験において、0.03 mg/kgの投与量のパロノセトロンは同様に有効であった。これらの実験の結果は、パロノセトロンの抗嘔吐作用がオンダンセトロンのそれより長く、かつ同等の作用を達成するためにより高い投与量のオンダンセトロンが必要であるという結論を支持する。
【0064】
実施例3全身的暴露と抗嘔吐作用との間の関係
パロノセトロンの血漿濃度とシスプラチン誘導嘔吐に対するイヌの保護との間の関係を研究するために、実験を実施した。シスプラチン注射30分前に、経口投与量のパロノセトロン (0、100、316、または1000 μg/kg) または賦形剤対照を投与した。パロノセトロン投与後0、0.25、0.5、1、2、4、 8、24、および48時間に、パロノセトロンの血漿濃度をHPLC-ラジオイムノアッセイ法により測定し、そして全身的暴露をAUC0-4時間として表した。結果を表4に要約する。
【0065】
【表4】

【0066】
パロノセトロンに対する全身的暴露は、計算したAUC0-4時間値により推定して、研究した範囲にわたってほぼ投与量比例的であるが、全身的暴露と抗嘔吐作用の大きさとの間の関係は証明できなかった。パロノセトロンを投与したイヌは賦形剤対照動物よりも有意に少ない嘔吐エピソードを有したが、有意な投与量-応答関係の証拠は存在しなかった。試験した最低の投与量は、応答プラトーに存在するように見えた。
【0067】
実施例4ダカルバジン、アクチノマイシンD、およびメクロレタミンの嘔吐作用の拮抗作用
ダカルバジン、アクチノマイシンD、またはメクロレタミンにより引き起こされる嘔吐に対するパロノセトロンおよびオンダンセトロンの保護的作用をイヌにおいて評価した。これらの実験において、パロノセトロン、オンダンセトロンまたは賦形剤を抗腫瘍剤注射2時間前に投与し、そして動物を5時間の間観察した。これらの実験の結果を表5に要約する。
【0068】
【表5】

【0069】
これらの実験の条件下に、パロノセトロンおよびオンダンセトロンの両方は、静脈内または経口的経路による投与であるかどうかにかかわらず、すべての3種類の抗腫瘍剤に対する嘔吐性応答を減少した。両方の薬剤の抗嘔吐作用は投与量に関係し、そしてパロノセトロンは終始一貫してオンダンセトロンよりも少なくとも10倍いっそう効力がある。
【0070】
実施例5高度に嘔吐発生性の化学療法誘導悪心および嘔吐を防止する単一静脈内投与量のパロノセトロンの作用を評価するヒト実験
ランダム化二重盲式マルチセンター投与量範囲期II実験を実施して、パロノセトロンの単一静脈内投与量の間で投与量応答関係を同定した。普通に遅延嘔吐に関係付けられる、シクロホスファミド (>1100 mg/m2) およびシスプラチン (>70 mg/m2) を含む高度に嘔吐発生性の化学療法を受けた患者を、パロノセトロンの単一静脈内投与の5投与量群の1つに割り当てた。化学療法投与の30分前に、パロノセトロンを単独で (デキサメタゾンを使用しないで) 30秒の静脈内注射として投与した。一次終点は24時間の完全な応答 (嘔吐なし、レスキューなし) (CR) であった。二次終点は完全な抑制 (嘔吐なし、レスキューなし、軽度の悪心) (CC) および5日のCRを含んだ。
【0071】
161人の患者 (32人の女性、129人の男性) が参加した。主要な効能パラメーターおよび結果を下記表6に要約する。悪い事象の大部分 (83.9%)は軽度または中程度であり、そして投薬の研究に起因しなかった (86.0%) 。投薬の研究に関係づけられる最も普通に報告される悪い事象は下記のものを含む: 頭痛 (19.3%) 、便秘 (8.7%) 、眩暈感 (2.5%) および異常な疼痛 (2.5%) 。薬剤に関係する重大な事象は報告されなかった。
これらの患者において、パロノセトロンは急性嘔吐の治療において安全かつ有効であり、そして活性を5日間維持することが、結果から証明される。
【0072】
【表6】

【0073】
実施例6
静脈内投与のために処方したパロノセトロンの代表的処方物を下記表7に示す。
【0074】
【表7】

【0075】
この出願を通じて、種々の刊行物を参照した。これらの刊行物の開示をそれらの全体において引用することによって本明細書の一部として、本発明が関係する技術水準をいっそう完全に記載する。
当業者にとって明らかなように、本発明の精神および範囲から逸脱しないで、種々の変更および変化が可能である。本発明の他の態様は、本明細書に開示する本発明の明細書および実施を考慮すると、当業者にとって明らかであろう。明細書および実施例は例証としてのみ考慮されることを意図し、本発明の真の範囲および精神は添付された特許請求の範囲により示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的に有効量のパロノセトロンを投与することを含んでなる化学療法または放射線療法誘導急性および遅延嘔吐を治療する方法。
【請求項2】
化学療法または放射線療法が、化学療法剤または放射線療法の連続的毎日投与により規定され、ここで前記方法は2日以上の連続日間パロノセトロンを投与することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学療法が、1サイクルの化学療法間における単一投与量の遅延嘔吐誘導化学療法剤の投与により規定され、ここで前記方法は2日以上の連続日間パロノセトロンを投与することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
約0.25 mgのパロノセトロンを投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記パロノセトロンを静脈内に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記パロノセトロンを経口的に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
任意の順序で、
a) 動物に約3〜約10 μg/kgのパロノセトロンを投与し、そして
b) 動物に嘔吐誘導量の化学療法剤を投与する、
ことを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程 (a) および (b) を順次に実施する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程 (a) を工程 (b) の約30分前に実施する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記パロノセトロンを静脈内ボーラスとして約10〜30秒の時間期間にわたって投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
約0.05 mg/mlの濃度でパロノセトロンを含んでなる無菌の静脈内溶液で、約0.25 mgのパロノセトロンを投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
約0.05 mg/mlの濃度でパロノセトロンを含んでなる無菌の静脈内溶液で、約0.25 mgのパロノセトロンを投与し、ここで前記パロノセトロンが約1月〜約2年のエイジを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
無菌の注射溶液中の約0.25 mgのパロノセトロンを含んでなる単一単位投与量のアンプルから、前記パロノセトロンを投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
約0.25 mgのパロノセトロンを動物に投与することを含んでなる、動物における化学療法または放射線療法誘導嘔吐を治療する方法。
【請求項16】
化学療法が化学療法剤の連続的毎日の投与により規定され、ここで前記方法が2日以上の間0.25 mgのパロノセトロンを投与することを含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
化学療法が1サイクルの化学療法間における化学療法剤の単一投与量の投与と急性嘔吐および遅延嘔吐とにより規定され、ここで前記方法が2日以上の間において0.25 mgのパロノセトロンを投与することを含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記パロノセトロンを静脈内に投与する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記パロノセトロンを経口的に投与する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記パロノセトロンを静脈内ボーラスとして約10〜30秒の時間期間にわたって投与する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
約0.05 mg/mlの濃度のパロノセトロンを含んでなる無菌の静脈内溶液で、前記パロノセトロンを投与する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
約0.05 mg/mlの濃度のパロノセトロンを含んでなる無菌の静脈内溶液で、前記パロノセトロンを投与し、ここで前記パロノセトロンが約1月〜約2年のエイジを含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記嘔吐が遅延嘔吐である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
無菌の注射溶液中の約0.25 mgのパロノセトロンを含んでなる単一単位投与量のアンプルから、前記パロノセトロンを投与する、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記動物がヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
工程:
a) 第1化学療法または放射線療法のセッションにおいて、
i) ヒトに第1量のパロノセトロンを投与し、そして
ii) 前記ヒトに嘔吐誘導の化学療法剤または放射線療法を投与し、
b) パロノセトロンの有効性を評価し、
c) 引き続く化学療法または放射線療法のセッションにおいて、前記ヒトが前記第1化学療法のセッションにおける前記パロノセトロンに対して少なくとも部分的に非応答性である場合、前記動物に治療的有効量の第2抗嘔吐化合物を投与し、そして
d) 第1量より高い第2量のパロノセトロンを投与する介在化学療法のセッションを使用しないで、引き続くパロノセトロンのセッションを実施する、
を含んでなる化学療法または放射線療法誘導嘔吐を防止する方法。
【請求項27】
1つの化学療法または放射線療法のセッションにおいて、工程:
a) ヒトに第1量のパロノセトロンを投与し、そして
b) 前記ヒトに嘔吐誘導量の化学療法剤または放射線療法を投与し、
c) パロノセトロンの有効性を評価し、そして
d) 前記ヒトが前記第1化学療法のセッションにおける前記パロノセトロンに対して少なくとも部分的に非応答性である場合、工程 (b) 後少なくとも24時間、第2投与量のパロノセトロンを投与しない、
を含んでなる化学療法または放射線療法誘導嘔吐を防止する方法。
【請求項28】
無菌の静脈内溶液中の0.25 mgのパロノセトロンのアンプルを含んでなるパロノセトロンの単一単位投与量。
【請求項29】
前記パロノセトロンが約0.05 mg/mlの濃度で存在する、請求項28に記載の単一単位投与量。
【請求項30】
前記無菌の静脈内溶液のpHが約5である、請求項28に記載の単一単位投与量。
【請求項31】
前記約1月〜約2年のエイジを有する、請求項28に記載の単一単位投与量。

【公開番号】特開2012−131811(P2012−131811A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−34259(P2012−34259)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【分割の表示】特願2004−553037(P2004−553037)の分割
【原出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【出願人】(505180070)ヘルシン ヘルスケア ソシエテ アノニム (4)
【Fターム(参考)】