化学療法誘発性ニューロパシーの治療または予防のためのIL−6
本発明は、化学療法誘導性ニューロパシー(CIPN)の治療または予防のための組成物および方法におけるIL−6の使用に関する。より具体的には、本発明は、CIPNの治療および/または予防のための、低用量のIL−6の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学療法誘発性ニューロパシー(CIPN)におけるIL−6の使用に関する。より具体的には、本発明は化学療法誘発性ニューロパシーの治療および/または予防のための、低用量のIL−6の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
末梢性ニューロパシーは、神経の、またはミエリン鞘の損傷に起因する末梢神経系の疾患の集合である。損傷は長期化し、通常、きっかけの傷より長く続く(outlasting)。
【0003】
化学療法誘発末梢性ニューロパシー(CIPN)は、多くの細胞毒性薬物のよく知られた、潜在的な身体を不能にする副作用(disabling side effect)である。化学療法誘発性ニューロパシーは、蓄積用量または用量−強度に関係する(Verstappen et al.2003 Drugs 63:1549−63)。
【0004】
現在、CIPNは、用量減少によってのみ緩和されるが、これは、化学療法治療の効果を減少させ得る。糖尿病、遺伝性ニューロパシー、または神経毒性化学療法での早期治療によって、神経因性症状をすでに持つ患者は、CIPNの発症をより受けやすいと考えられる。
【0005】
ビンカ−アルカロイド類(たとえば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、白金系化合物類(たとえばシスプラチン)およびタキサン類(パクリタキセルおよびドセタキセル)が、末梢神経毒性を誘導する最も重要な薬物の一群である(Visovsky C.Cancer Invest.2003 Jun;21(3):439−51)、Quasthoff S,Hartung HP J Neurol.2002 Jan;249(1):9−17.総説)。これらの薬物は、卵巣癌、乳癌、および血液性癌のような、種々の悪性物の治療のために広く使用されている(Verstappen et al.2003 Drugs 63(15):1549)。
【0006】
ビンクリスチン−駆動ニューロパシーは、主に、運動神経および感覚神経不全(ニューロパシーの混合型)によって特徴付けられる。関与する機構がいまだ完全に理解されてはいないが、最終的に軸索変性を導く、順行性軸索輸送の変化が関与することが記述されてきている。現在までのところ効果的な治療法が開発されてきていないので、ビンクリスチン−駆動ニューロパシーの治療は、現在一時しのぎのみである。
【0007】
シス−ジクロロジアミン白金(シスプラチン)は、生殖細胞がんの治療のために選択される薬物である。これはまた、他の固形癌に対しても併用されるが、投与可能な総量が、腎臓毒性および末梢性ニューロパシーなどの重篤な副作用によって制限される。用量を制限する、ニューロパシーの発生は、塩化利尿薬によって有意に減少した。末梢性ニューロパシーの問題は、この薬物の導入後すぐに現れる。ニューロパシーは用量を限定し、総蓄積薬物用量に非常に関連する。有意な末梢神経毒性が、>400〜500mg/m2のシスプラチンを受けた成人患者の大部分においてみられる。ニューロパシーは遠位先端での、知覚障害(バーニング、プリックリング、蟻走感のような異常な感覚)の初期病状を持つ、主に感覚的なものである。神経病理学研究によって、大有髄繊維の欠損および軸索編成の兆候が示された。ニューロパシーは、シスプラチンの停止後、数ヶ月間進展し続けえ、症状が、化学療法の最後の投与後、3〜8週間発達し得る(Thompsonら、(1984)Cancer.54(7):1269−75)。白金が蓄積する組織をモニタする、組織白金アッセイの研究によって、腫瘍組織中で、もっとも高い白金濃度が明らかになったが、同様に、末梢神経組織でも、高い濃度が見られた。一方、脳内では非常に低濃度であった。シスプラチンで処理したがん患者での、電気組織学的研究によって、大直径感覚軸索が関与することが確認される。
【0008】
タキソールは、悪性メラノーマおよび卵巣がんのような固形がんの治療において、非常に利用される、効果的な化学療法薬剤である。それにもかかわらず、タキソールによって引き起こされる末梢性ニューロパシーが、がんの治療において、ますます、用量を制限する問題となってきている(Rowinsky E.K.,Chaudhry V.,Cornblath D.R,Donehower R.C.Neurotoxicity of taxol(1993).Monogr.Natl.Cancer Inst.107−115)。タキソールは、チューブリンサブユニットへの結合を介して、微小管動力学を抑制する、植物アルカロイドであり、分裂細胞における核分裂停止(Derry W.B,Wilson L.,Jordan M.A.Substoichiometric binding of taxol suppresses microtubule dynamics(1995)Biochemistry 34:2203−2211)、および軸索輸送の干渉によって、末梢神経における軸索変性(Rowinskyら、1993)を引き起こす。結果としてのニューロパシーが、主に小感覚神経線維に影響を与え、またより高い用量で、運動神経および大感覚神経線維不全が起こる(Freilich R.I.、Balmaceda C.,Seidman A.D.,Rubin M.,DeAngelis L.M.Motor neuropathy due to docetaxel and paclitaxel(1996).Nutr.Rev.47:115−118)。
【0009】
一般的に、末梢性ニューロパシーの治療は、全身性であり、神経への損傷を根底におく有益な効果はない(Peltier AC,Russell JW.Recent advances in drug−induced neuropathies.Curr Opin Neurol.2002 Oct;15(5):633−8)。たとえば、ピリドキシン(ビタミンB6)は、末梢神経損傷に続く栄養サポートの方法として使用され、抗酸化剤類(たとえば、ガンマ−リノール酸、アルファリポ酸、およびPKC阻害剤およびアルドース還元酵素阻害剤)が、末梢性ニューロパシーに関与し得る毒素を排除するために使用され、抗けいれん剤が、痛み症状を抑制するために使用される。ビタミンB1、ビタミンB12、グルタミン酸(Boyle et al. J Pharmacol Exp Ther. 1996 Oct;279(1):410−5)、イソアキソニン(Le Quesne et al.,J Neurol Neurosurg Psychiatry.1985 Sep;48(9):933−5)、ガングリオシドまたは神経成長因子(Hayakawa et al.,Life Sci.1994;55(7):519−25.4;Lewis et al.Exp Neurol.1993 Nov;124(1):73−88.)のような推定される神経保護薬剤を用いる、ビンクリスチン−ニューロパシーを予防する試みは、ある程度の成功を示している。
【0010】
とりわけ、化学療法誘発性ニューロパシーの治療のための共通のアプローチには、以下の、化学療法薬剤の用量および期間制限、および神経増殖因子(NGF)およびグルタミンの利用が含まれる(Peliter AC,Russell JW.Recent advances in drug−induced neuropathies.Curr Opin Neurol.2002 Oct;15(5):633−8)。
【0011】
4−メチルカテコール(4−MC)は、坐骨神経再生において、および糖尿病性ニューロパシーの2つの実験モデルにおいて、有益な効果を持つ、カテコール誘導体である[Hanaokoa and Ohi J.Neurolog.1994 122,28−32、およびSaitaら、J.Pharmacol.Exp.Ther.1996,276,231−237]。4−メチルカテコール(4−MC)のようなカテコール誘導体は、インビトロおよびインビボにて、培養星状細胞からの、神経増殖因子(NGF)の産出を刺激し[Takeuchiら、FEBS Lett 1990,261,63−66]、ラットにて、脳−由来神経栄養因子(BDNF)を誘導する[Nittaら、J.Pharmacol.Exp.Ther.1999,291,1276−83]。しかしながら、反応性化学物質であり、治療濃度にて、多数の副作用または薬物−薬物相互作用を産出し得るので、カテコール類の治療的な有用性は明らかではない(Schweigertら、2001 Environmental Microbiology Volume 3 Issue 2 Page 81)。
【0012】
IL−6は、炎症促進サイトカインとしてのみでなく、抗炎症サイトカインとしても働く(Jonesら、FASEB J.2001 Jan;15(1):43−58.Review)。IL−6の機能的特性は非常に広く、本サイトカインを記述するために本来使用した用語によって反映される(Horst Ibelgaufts’ COPE:Cytokines Online Pathfinder Encyclopaedia)。
【0013】
2つのタンパク質、IL−6受容体(IL−6R)およびgp130がIL−6に結合する(Hiranoら、Stem Cells.1994 May;12(3):262−77.総説によって概説された)。gp80の細胞外ドメインに相当する、可溶型IL−6R(sIL−6R)は、血液および尿内で糖タンパク質として見出されるヒト体内の天然の産物である(Novickら,J Chromatogr.1990 27;510:331−7およびCytokine.1992 Jan;4(1):6−11)。sIL−6R分子の例外的特性は、これらが、ヒト細胞を含む種々の細胞に、IL−6の強力なアゴニストとして作用することである(Taga et al,Cell.1989 Aug 11;58(3):573−81.Novick et al.1992 Jan;4(1):6−11)。gp80の細胞質内ドメインなしでさえ、sIL−6Rは、IL−6に応答してgp130の二量体化を引き起こすことができ、言い換えれば、続くIL−6−特異的シグナル伝達および生物学的効果を仲介する(Murakami Science.1993 Jun 18;260(5115):1808−10)。sIL−6Rは、gp130との二種類の相互作用を有し、その両方がIL−6特異的生物学的活性に必須である(Halimi et al.,Eur Cytokine Netw.1995 May−Jun;6(3):135−43)、活性IL−6受容体複合体が、2つのgp130鎖、2つのIL−6Rおよび2つのIL−6リガンドによって形成される六量体構造であることが提案された(Ward et al.,1994;Paonessa et al,EMBO J.1995 May 1;14(9):1942−51)。
【0014】
限定的細胞分布を有する同起源IL−6Rの発現(Jonesら.2001)とは異なり、膜貫通全gp130の発現は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、肺、胎盤および脳などのほとんどすべての器官で見られる(Saitoら、J Immunol.1992 Jun 15;148(12):4066−71)。
【0015】
可溶性IL−6Rが投与されない限り、IL−6単独では特定の活性を誘導しないことを示す、多くの異なる実例が存在する。たとえば、IL−6は、sIL−6Rと組み合わせた場合のみ、マウス骨髄および骨芽細胞の共培養中で、骨芽細胞形成を誘導する(Jones et al.2001)。また、多くの神経細胞がIL−6を産生可能であるが、これらは、IL−6自身による刺激に対して応答しない。しかしながら、神経細胞の分化および生存は、sIL−6Rの作用を介して仲介され得る(Hirota J Exp Med.1996 Jun 1;183(6):2627−34.Martz Cheng,J.−G.,Gadient,R.A.,Patterson,P.H.,Stoyan,T.,Otten,U.,Rose−John,S.(1998)Sympathetic neurons can produce and respond to interleukin−6.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95,3251−3256)。
【0016】
健常被験者におけるsIL−6R(アンタゴニスト)の循環濃度は、比較的高く、可溶性gp130(IL−6の天然アンタゴニスト)の濃度、10ng/ml以上に匹敵する(Corbiら 2000 Eur J Cardiotherac Surg.18(1):98−103,DisthabanchongらClin Nephrol.2002 Oct;58(4):289−95)。反対に、IL−6の循環濃度は、およそ10pg/mlまたはそれ以下である(Kado et al.1999 Acta Diabetol.Jun 36(1−2)67−72、Corbi et al 2000.)。したがって、疾患におけるsIL−6Rとの同時投与なしでの、インビボでのIL−6の単独投与の効果は、有効かもしれないし、有効でないかもしれず、特定の疾患、および体内の特定の場所における、可溶性アゴニスト/アンタゴニストの濃度に依存する。
【0017】
可溶性IL−6受容体とIL−6とを一緒に連結するキメラ分子が記述された(Chebath et al.Eur Cytokine Netw.1997 Dec;8(4):359−65)。これらは、IL−6R/IL−6キメラと名付けられた。キメラIL−6R/IL−6分子は、可溶性IL−6受容体(sIL−6R)およびIL−6をコードしているcDNAsの全コード領域を融合することによって産出された。組換えIL−6R/IL−6キメラは、CHO細胞内で産生された(Chebath et al,Eur Cytokine Netw.1997,国際公開第99/02552号パンフレット)。IL−6R/IL−6は、sIL−6RとIL−6の混合物で行なうよりも、インビトロにおいてgp130鎖により高い効率で結合する(Kollet et al,Blood.1999 Aug 1;94(3):923−31)。
【0018】
上述したように、インターロイキン−6シグナリングは、gp130の、リガンド−レセプター複合体へのホモ二量体化を介して促進される。細胞内シグナル伝達が続いて、gp130−結合細胞質チロシンキナーゼ(JAK1、JAK2、およびTYK2)の活性化、およびSTAT1およびSTAT3のリン酸化を介して誘発される(Murakamiら、Science.1993 Jun 18;260(5115):1808−10.Gerhartzら、J Biol Chem.1996 May 31;271(22):12991−8)。反対に、LIF、OSMおよびCNTFの高親和性レセプターは、gp130とgp130−関連タンパク質(LIFレセプター)間のヘテロ二量体化によって細胞を活性化する(Davisら、Science.1993 Jun 18;260(5115):1805−8)。そのような、ホモ−またはヘテロ二量体は、細胞質チロシンキナーゼのJak−Tykファミリーを介して、異なるが、重なり合うパターンのチロシンリン酸化を活性化する(Boultonら、J Biol Chem.1994 Apr 15;269(15):11648−55)。これは、このタンパク質のファミリーに関連した、異なる細胞応答に寄与し得る。
【0019】
糖尿病−誘発末梢性ニューロパシーの動物モデルにおける、可溶性IL−6Rなしでの、組換えIL−6単独の治療効果は、特許出願、国際公開第03033015号パンフレットにて開示されている。しかしながら、化学療法誘発末梢性ニューロパシー(CIPN)のような異なる型の末梢性ニューロパシーにおいて、可溶性IL−6Rなしでの、単独で投与されるIL−6が、治療的および/または予防的効果を示し得るかどうかは明らかでない。
【0020】
骨髄異形成症候群およびトロンボサイトペニアの患者での、hrIL−6の第I相臨床試験において、許容された最大用量は、3.75μg/kg/dであることがわかった(Gordonら、Blood 1995 85(11):3066−76)。
【0021】
毒性を排除するであろう、低用量のIL−6が、化学療法誘発性ニューロパシーを予防すること、および/または治癒すること、および/または改善することにおいて、効果的であるかどうか、不明である。
【0022】
他のgp130活性物である、組換え体白血病阻害因子(LIF)が、神経速度、振幅およびH−反射潜時、振動知覚閾値および症状スコアに基づく、複合末梢神経電気生理学(CPNE)スコア(2003、ASCO annual meeting Abstract number 2976)によって査定した、カルボプラチン/パクリタキセルによって引き起こされるCIPNを予防するための、臨床試験にて試験された。これらの研究において、2または4μg/kg LIFのいずれかを、カルボプラチン/パクリタキセルの前日に開始して、7日間、毎日、ほぼ同時に与えた。臨床試験の結果によって、LIFが、試験した用量およびレジメにて、CIPNを予防することにおいて、効果を持たないことが示唆された。
【0023】
したがって、広範囲の化学療法によって引き起こされる、末梢性ニューロパシーを予防する/治療するための、新規の薬物/戦略が必要である。
【発明の開示】
【0024】
本発明は、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための医薬の製造のための、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の使用に関する。
【0025】
本発明の1つの実施様態において、化学療法誘発末梢性ニューロパシーは、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンまたはタキソールのような、少なくとも1つの化学療法薬剤によって引き起こされる。
【0026】
本発明のさらなる実施様態において、化学療法薬剤は、カルボプラチンおよびタキソールの混合からなる。
【0027】
本発明のさらなる実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量は、4〜210μgの範囲、好ましくは7〜140μgの範囲、または約4、7、14、28、70または140μgである。
【0028】
本発明の1つの実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩は、1つ以上の部位でグルコシル化され、一方、本発明の他の実施様態においては、IL−6はグルコシル化されない。
【0029】
本発明のさらなる実施様態において、IL−6の機能性誘導体は、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に結合した、ポリエチレングリコールのような、少なくとも1つの化学部位を含む。
【0030】
1つの観点において、本発明は、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための医薬の製造のための、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、活性画分または円順列誘導体を産出する組換え細胞の使用を提供する。
【0031】
他の観点において、本発明は、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための医薬の製造のための、IL−6のコード配列を含みかつ低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、活性画分または円順列誘導体を発現可能である、レンチウイルスベクターのような、ベクターの使用を提供する。
【0032】
さらなる観点において、本発明は、医薬の製造のための、ビンクリスチン、カルボプラチン、タキソールまたは化学療法薬剤の混合物などの少なくとも1つの化学療法薬剤との、好ましくは、カルボプラチンとタキソールの混合物との、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、または活性画分の組み合わせの使用を提供する。
【0033】
本発明の1つの実施様態において、前記組み合わせ中の、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩は1つ以上の部位でグルコシル化される。
【0034】
本発明の他の実施様態において、前記組み合わせ中の、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩はグルコシル化されない。
【0035】
本発明のさらなる実施様態において、前記組み合わせ中のIL−6の機能性誘導体はグルコシル化されず、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に結合した、ポリエチレングリコールのような、少なくとも1つの化学部分を含む。
【0036】
1つの観点において、本発明は、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を、少なくとも1つの化学療法薬剤での処理下または処理前に、患者に投与することを含む、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの治療および/または予防方法を提供する。
【0037】
本発明による治療における、治療および/または予防方法のさらなる実施様態において、患者は、化学療法誘発末梢性ニューロパシーを受ける高リスク患者、または循環中、高レベルのIL−6レセプターを示す患者である。
【0038】
本発明の方法のさらなる実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩は、毎日、または1週間、少なくとも2週間に3回投与される。
【0039】
本発明の方法のまたさらなる実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩は、皮下に投与される。
【0040】
本発明の方法のまたさらなる実施様態において、低用量のIL−6のIL−6投与は、内因性遺伝子活性化(EGA)によって、IL−6を産出している組換え細胞の投与によって、またはIL−6を発現可能な、レンチウイルスのようなベクターによって、影響を受ける。
【0041】
1つの観点において、本発明は、患者における、化学療法誘発末梢性ニューロパシーを予防するために、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩を投与することを含む、化学療法薬剤での治療下、または治療の前の、患者への少なくとも1つの化学療法薬剤の用量を増加させるため、および/または投与を延長するための方法を提供する。
【0042】
本発明の前記方法のさらなる実施様態において、IL−6は、化学療法薬剤の前、あいだ、および/または後のいずれかで投与される。
【0043】
本発明の方法のさらなる実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量は、0.06〜3μg/kg体重、好ましくは、0.1〜2μg/kg体重の範囲であり、または約0.2、0.3、1、2または3μg/kg体重である。
【0044】
本発明の方法のさらなる実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量は、4〜210μgの範囲、好ましくは7〜140μgの範囲であり、または約4、7、14、28、70または140μgである。
【0045】
本発明はまた、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンまたはタキソールのような、少なくとも1つの化学療法薬剤、またはカルボプラチンおよびタキソールの混合のようなこれらの混合物との、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、または活性画分の組み合わせと、薬学的に許容され得る担体を含む、医薬組成物も提供する。
【0046】
本発明のさらなる実施様態において、医薬組成物中の、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体、または塩は、1つ以上の部位で、グルコシル化されるか、またはIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体、または塩は、グルコシル化されない。
【0047】
本発明のさらなる実施様態において、医薬組成物中のIL−6の機能性誘導体は、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に結合した、ポリエチレングリコールのような、少なくとも1つの化学部位を含む。
【0048】
本発明のさらなる実施様態において、医薬組成物はさらに、神経増殖因子(NGF)またはグルタミンのような、神経保護薬物を含む。
【0049】
さらにとりわけ、本発明の1つの実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量は、4〜210μgの範囲、好ましくは7〜140μgの範囲であり、または約4、7、14、28、70または140μgである。
【0050】
1つの観点において、本発明は、それぞれ、化学療法薬剤を含む1つ以上の容器、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を含む1つの容器、および、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための、前記化学療法薬剤と、前記IL−6の投与のための説明書、を含むキットを提供する。
【0051】
1つの実施様態において、本発明にしたがうキットには、それぞれ1つの化学療法薬剤を含む2つの容器、カルボプラチンを含む1つの容器、およびタキソールを含む他の容器が含まれる。
【0052】
本発明のキットのさらなる実施様態において、各容器内の、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量は、4〜210mgの範囲、好ましくは7〜140μgの範囲であり、または約4、7、14、28、70または140μgである。
【0053】
またさらなる実施様態において、本発明のキットにはさらに、神経増殖因子(NGF)またはグルタミンのような、神経保護薬物を含む容器が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
本発明は、化学療法誘発末梢性ニューロパシー(CINP)の治療および/または予防のための、医薬品の製造のための、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の使用に関する。
【0055】
現在、末梢性ニューロパシーの治療は、全身性であり、神経への障害に関与している、有益な効果はない。典型的に、CIPNは、用量減少によって緩和され、これは、化学療法処置の効果を減少させる。
【0056】
したがって、本発明は、CIPN発達を予防するため、および/またはいったんCIPNが確立された場合、薬物の化学療法効果を損なうことなしに、CIPNを治療および/または改善するための、実質的な進展、すなわち、低用量のIL−6の使用を示している。さらに、本発明にしたがって、低用量のIL−6を投与することによって、化学療法薬剤の増加が可能でありえ、および/または必要なときに、化学療法を延長することが可能である。たとえば、本発明は、より高濃度の化学療法の投与、および/または、たとえばより耐性および/または浸潤性腫瘍をたたくため、必要なときに現在使用されている濃度および周期数よりも多くの化学療法周期を許容し得る。
【0057】
したがって、本発明は、ビンカ−アルカロイド類(たとえば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、白金基礎化合物類(たとえばシスプラチン)、およびタキサン類(パクリタキセルおよびドセタキセル)、カルボプラチン、またはカルボプラチンとパクリタキセルのような、それらの1つ以上の薬剤の組み合わせから選択される、広範囲の化学療法薬剤による、そして低用量のIL−6の投与による、CIPNの治療および/または予防に関連する。
【0058】
本発明は、信頼性のある動物モデルで、低用量のIL−6を投与することが、CIPNを予防すること、ならびに、いったんニューロパシーが確立された場合、CIPNを治療および/または改善することにおいて効果的である、という発見に基づいている。
【0059】
たとえば、CIPNの動物モデルで実施した実験によって、IL−6の、化学療法薬剤との同時投与が、化学療法誘発性運動神経/感覚神経欠損、および神経変性を予防することが示された。使用したプロトコールによって、IL−6投与が、投与のスケジュールにかかわらず、化学療法誘発性ニューロパシーに対して保護したこと、すなわち、毎日投与に対して、一週間に3回が、化合物の神経保護効果の減少を導かなかったことが示された。
【0060】
さらに、ニューロパシーがすでに確立された動物モデルにおいて実施した実験によって、IL−6が、化学療法誘発性感覚神経欠損、繊維/神経機能の欠損、ミエリン鞘厚逆転、大/小繊維比の増加を効果的に治療および/または緩和し、および化学療法−治療によって誘導された変性繊維の割合を減少させた、ことが示された。
【0061】
げっ歯類における、造血因子としての、ヒトIL−6の活性用量が、サルにおいて10μg/kgであるのに対して、500μg/kg以上であることに注意すべきである(Herodinら、1992 Blood 80 (3)688)。したがって、ヒトIL−6は、げっ歯類よりも、霊長類において、50倍以上効果的であると考えられる。したがって、ヒト組換え体IL−6(hrIL−6)は、げっ歯類においてよりも、ヒトにおいて、50倍、または1オーダー量より効果的であるか、またはすくなくとも5倍効果的であることが予想される。本実施様態において、CIPNにおける陽性の結果が、3〜10μg/kgの範囲の用量にて見られることから、50、10および/または5倍低いヒト組換え体IL−6の用量が、ヒトにおけるCIPNを予防する/治療するために効果的であると予想される。ヒトにおける好ましい用量は、約0.06〜3μg/kgの範囲、より好ましくは、0.1〜2μg/kgの範囲、より好ましくは、約0.2、0.3、1、2および〜3μg/kgの用量である。
【0062】
あるいは、4〜210μg/患者の範囲、好ましくは7〜140μgの範囲、より好ましくは、約4、7、14、28、70または140μg IL−6/患者の範囲のような、IL−6の固定低用量を、患者の体重に関係なく投与可能である。
【0063】
要するに、得られた結果は、CIPNにおける低用量IL−6の、予防的(preventive)、予防的(prophylactic)および/または治療的価値を明らかに示している。得られた結果はまた、低用量のIL−6が、化学療法誘発性ニューロパシーを、4−MCよりも効果的に保護したことを示した。
【0064】
本明細書で使用するところの語句「治療すること/改善すること(treating/ameliorating)」は、化学療法ニューロパシー、ならびに化学療法誘発性ニューロパシーに付随する症状、疾患または合併症の、1つ以上の症状または原因を、予防すること、阻害すること、弱めること、改善することまたは無効にすること、として理解されるべきである。化学療法誘発性ニューロパシーを「治療する/改善する」場合、本発明にしたがった薬物を、疾患の開始後に与え、「予防(prevention)」は、患者において診られ得る疾患の任意の兆候の前での、薬物の投与に関する。
【0065】
予防的投与は、長時間にわたりすでに糖尿病を患っている患者、後天性免疫欠損症候群(AIDS)によって、神経因性症状をすでに持つ患者、および遺伝性ニューロパシーの患者または神経毒性化学療法での早期治療を受けた患者などのような、病気であるか、またはCIPNを受ける高リスクをもつ患者でとりわけ有用である。
【0066】
IL−6投与はとりわけ、循環中に、高レベルのIL−6レセプターを示している患者で有用である。
【0067】
語句「化学療法(chemotherapy)」は、がん細胞を殺すか、より活性を弱くする薬物での治療に関する。
【0068】
語句「化学療法誘発性ニューロパシー(chemoltherapy-induced neuropathy)」は、化学療法に付随する、または化学療法によって引き起こされる、1つ以上の症状(類)または疾病(類)、または以上のイントロダクションにて詳細に記述したような、神経に影響を与える化学療法の合併症の任意の形態に関する。
【0069】
本発明の薬物、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩(「薬物(substance)」は、シスプラチン、ジカルバジン、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、ダカルバジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イフォスファミド、メルカプトプリン、ミトタン、ストレプトゾシン、タキソールおよびまたはこれらの2つ以上の薬剤の混合物のような、種々の化学療法薬剤によって引き起こされる、末梢性ニューロパシーにおいて、使用または投与可能である。
【0070】
本発明の1つの実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を、化学療法薬剤が、タキソール、シスプラチンおよびビンクリスチン、およびまたは、カルボプラチンとパクリタキセルのような混合物である場合に、CIPNを治療するため、および/または保護するために使用する。
【0071】
タキソールは、たとえば、約20〜250mg/m2の範囲で投与可能であり、シスプラチンは、約30〜100mg/m2の範囲で、ビンクリスチンは、約0.5〜2mg/m2の範囲で、そしてカルボプラチン/パクリタキセルは、100〜200μg/m2の範囲、好ましくは約175μg/m2にて使用可能である。化学療法は、1周期〜約6周期で与え、化学療法投与なしで、3〜4週間に分けられ得る。化学療法レジメは,WWW.ohaci.com/palm/chemopage.htm Oncology/hematology associates of central Illinoisにて見ることができる。
【0072】
本発明の薬物は、約0.06〜3μg/kg、より好ましくは、0.1〜2μg/kgの範囲、もっとも好ましくは、約0.2、0.3、1、2および〜3μg/kgの用量で、本発明にしたがって投与可能である。
【0073】
あるいは、低用量のIL−6を、たとえば、低用量で、体重に関係なく、7〜140μg/患者の範囲、好ましくは、約7、28、70または140μgIL−6/患者で投与する。
【0074】
本発明の薬物は、1つ以上の部位でグルコシル化されていてよく、またはグルコシル化されていなくてもよい。
【0075】
本発明の薬物は、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に連結した、少なくとも1つの化学部位を含む、機能性誘導体でありえ、より好ましくは、前記部位は、ポリエチレングリコール部位である。
【0076】
本発明にしたがった薬物は、本発明の薬物を発現している細胞、および/または、本発明の薬物のコード配列を含むベクター、好ましくはレンチウイルスとして投与し得る。
【0077】
通常はIL−6の発現にサイレントである細胞内で、IL−6の内因性産出を、または十分でないIL−6の発現量を誘導する、および/または増強するためのベクターがまた、本発明にしたがって企図される。ベクターは、IL−6を発現することが望ましい細胞内で機能的である、調節配列を含み得る。そのような調節配列には、プロモーターまたはエンハンサーが含まれる。ついで、調節配列を、相同組み換えによって、ゲノムの正しい座に、したがって、その発現が、誘導または増強される必要がある遺伝子と、前記調節配列を動作可能に連結して、導入する。本技術は通常、「内因性遺伝子活性化(endogenous gene activation)」(EGA)として呼ばれ、たとえば国際特許第WO91/09955号にて記述されている。
【0078】
本発明はまた、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を、任意に薬学的に許容され得る担体と一緒に、それを必要とする患者に投与することを含む、CIPNを治療する、および/または予防するための方法に関する。
【0079】
本発明はまた、すでに長時間糖尿病を患っている患者、すでに糖尿病によって、神経因性症状を持つ患者、すでにAIDSによって神経因性症状を持つ患者、および遺伝性ニューロパシーの患者、または神経毒性化学療法による早期治療を受けている患者などのような、CIPN高リスク患者を治療する方法も提供する。
【0080】
本発明はまた、循環中のIL−6Rレベルが上昇した、白血病、卵巣癌または乳癌の患者のような、がん患者におけるCIPNを治療および/または予防するための方法も提供する。
【0081】
本発明の薬物の用量は、毎日、および好ましくは1週間、少なくとも2週間あたり3回投与し得る。
【0082】
語句「用量(dose)」は、医薬品の規定量のような、一度に投与されるべき量に関する。
【0083】
本明細書で使用するところの語句「ムテイン(muteins)」は、天然に存在するIL−6の成分の1つ以上のアミノ酸残基が、本来のIL−6と比較して得られた産物の活性を著しく変化することなく、異なるアミノ酸残基によって置換されるか、または欠損するか、または1つ以上のアミノ酸残基が本来のIL−6の配列に加えられる、IL−6の類似体を意味する。これらのムテインは、公知の合成によって、および/または部位特異的変異導入技術によって、または適切な他の任意の公知の技術によって製造される。
【0084】
本発明により使用されるムテインには、ストリンジェントな条件下で、IL−6をコードするDNAまたはRNAにハイブリダイズする、DNAまたはRNAのような核酸によってコードされるタンパク質が含まれる。語句「ストリンジェントな条件」は、当業者が「ストリンジェント」として従来言及した、ハイブリダイゼーションと、それに続く洗浄条件を意味する。Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology、上記、Interscience,N.Y.,§§6.3および6.4(1987,1992)、およびSambrook et al.(Sambrook,J.C.,Fritsch,E.F.,and Maniatis,T.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)を参照のこと。
【0085】
限定はせずに、ストリンジェントな条件の例としては、試験下のハイブリッドの計算Tmより12〜20℃低い洗浄条件、たとえば、2×SSCおよび0.5% SDS 5分間、2×SSCおよび0.1% SDS 15分間、0.1×SSCおよび0.5% SDS 37℃にて30〜60分間、ついで、0.1×SSCおよび0.5% SDS 68℃にて30〜60分間が含まれる。当業者は、ストリンジェントな条件がまた、DNA配列の長さ、オリゴヌクレオチドプローブ(10〜40塩基など)、または混合オリゴヌクレオチドプローブに依存することを理解する。混合プローブを使用する場合、SSCのかわりに、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を使用することが好ましい。Ausubel 上記を参照のこと。
【0086】
そのような任意のムテインは好ましくは、IL−6と実質的に同様の、またはよりよい活性を有するような、IL−6のアミノ酸配列の十分に複製であるアミノ酸配列を有する。
【0087】
IL−6の特徴的な活性は、IL−6受容体のgp80部分への結合能力および/または肝細胞増殖を誘導能力である。ムテインが、実質的にIL−6受容体のgp80部分に結合可能であり、および/または肝細胞増殖を誘導可能である限り、実質的にIL−6と同様の活性を有するとみなすことができる。したがって、任意の所定のムテインがIL−6と少なくとも同等の活性を有するかどうかは、肝細胞にそのようなムテインを作用させ、肝細胞の増殖を誘導するかどうかを、たとえばBrdUまたは標識化メチオニンの取り込みを測定するか、または単に、未処理対照細胞およびWT IL−6にて処理した細胞と比較して細胞の数を計測するかによって決定することを含む決まりきった実験によって決定することができる。IL−6R/IL−6キメラのgp130への結合を測定するための、酵素免疫吸着法(ELISA)型のアッセイが、本明細書で参考文献として完全に組み込まれている国際公開第99/02552号パンフレットの39頁、実施例7にて詳細に記述されている。ムテインが、GP80のその結合部位に対する、実質的な結合活性を有する限り、IL−6に対して実質的に同様の活性を有すると考えられ得る。
【0088】
たとえば、マイクロタイター96−ウェルプレート(ヌンク(Nunc))を、抗−ヒトgp80モノクローナル抗体でコートし、50ng/mlのgp80を加える(両方ともR&Dシステムズ、ミネアポリスより入手)。リン酸緩衝食塩水中での洗浄の後、IL−6を、異なるウェルに、0.1〜50ng/mlの範囲の異なる濃度で加える。40℃で一晩インキュベーションした後、ウサギポリクローナル抗−IL−6を加え、続いて、ホースラディッシュ ペルオキシダーゼ共役ヤギ抗ウサギIgを加え、発色反応によって検出する(シグマ(Sigma)、セントルイス)。
【0089】
マイクロタイター96−ウェルプレート(ヌンク(Nunc))を、抗−ヒトgp80モノクローナル抗体でコートし、50ng/mlのgp80を加える(両方ともR&Dシステムズ(R&D Systems)Minneapolisより)。リン酸緩衝食塩水中での洗浄の後、IL−6を、異なるウェルに、0.1〜50ng/mlの範囲の異なる濃度で、加える。40℃での一晩のインキュベーションの後、ウサギポリクローナル抗−IL−6を加え、続いて、ホースラディッシュ ペルオキシダーゼ共役ヤギ抗ウサギIgを加え、発色反応によって検出する(シグマ、セントルイス)。
【0090】
したがって、任意の所定の変異体が、少なくとも実質的に、IL−6と同一の活性を有するかどうかは、そのような変異体を、たとえば国際公開第99/02552号パンフレットの実施例7で記述されたような、単純サンドイッチ結合アッセイにかけ、固定化gp80または可溶性gp80(gp80の細胞外断片)に結合するかしないかを決定することを含む、決まりきった実験によって決定することができる。
【0091】
好ましい実施様態において、任意のそのようなムテインは、成熟IL−6R/IL−6キメラの配列と、少なくとも40%の同一性または相同性を有する。より好ましくは、任意のそのようなムテインは、成熟IL−6の配列に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の同一性または相同性を有する。
【0092】
同一性は、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列間、または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係を反映する。一般的に、同一性は、比較している配列の長さにわたって、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチドの、それぞれ、ヌクレオチドに対するヌクレオチドの、またはアミノ酸に対するアミノ酸の正確な対応関係を意味する。
【0093】
実際、正確な対応関係が存在しない配列に関して、「%同一性」が決定され得る。一般的に、比較されるべき2つの配列を、配列間の最大の相関が得られるように並べる。これには、アライメントの程度を高めるために、いずれか1つまたは両方の配列に、「ギャップ」を挿入することが含まれ得る。%同一性は、比較されている各配列の全長にわたって決定されてもよく(いわゆるグローバルアライメント)(これはとりわけ、同一または非常に類似の長さの配列により適している)、またはより短い、定義された長さにわたって決定されてもよい(いわゆるローカルアライメント)(これは等しくない長さの配列に対してより適している)。
【0094】
2つ以上の配列の同一性および相同性を比較するための方法は、本技術分野でよく知られている。したがって、たとえば、Wisconsin Sequence Analysis Package,バージョン9.1(Devereux J ら 1984)にて使用可能なプログラム、たとえば、プログラムBESTFITおよびGAPを、2つのポリヌクレオチド配列間の%同一性、および2つのポリペプチド配列間の%同一性および%相同性を決定するために使用し得る。BESTFITは、Smith および Waterman(1981)の「ローカル相同性」アルゴリズムを使用し、2つの配列間の類似性の最もよい単一領域を発見する。配列間の同一性および/または類似性を決定するための他のプログラムも、本技術分野で公知であり、たとえば、BLASTプログラムファミリー(Altschul S F ら,1990, Altschul S F ら,1997, www.ncbi.nlm.nih.govにてNCBIのホームページよりアクセス可能)、およびFASTA(Pearson W R, 1990;Pearson 1988)があげられる。
【0095】
本発明により使用可能であるIL−6のムテイン、またはそれをコードする核酸には、過度の実験をすることなく、本明細書で提示される教示およびガイドラインに基づいて、当業者によって通常得られ得る、置換ペプチドまたはポリヌクレオチドのような、実質的に対応する配列の限定された組が含まれる。
【0096】
本発明により、ムテインに対する好ましい変化は、「保存的(conservative)」置換として知られるものである。IL−6の保存的アミノ酸置換には、充分に類似した物理化学的特性を有し、かつ群のメンバー間での置換が分子の生物学的機能を保存している一群内の同義アミノ酸が含まれ得る(Grantham, 1974)。特に、挿入または欠失が数個のアミノ酸(たとえば30個未満、好ましくは10個未満)のみを伴い、かつ機能的コンホメーションに必須のアミノ酸(たとえば、システイン残基)が除去または置換されない場合、アミノ酸の挿入および欠失もまた、その機能を改変することなく前記規定配列において行なわれ得ることは明白である。かかる欠失および/または挿入によって生じるタンパク質およびムテインは、本発明の範囲に含まれる。
【0097】
好ましくは、同義アミノ酸群は表Aに規定されるものである。より好ましくは、同義アミノ酸群は表Bに規定されるものであり、最も好ましくは、同義アミノ酸群は表Cに規定されるものである。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
本発明における使用のため、IL−6ポリペプチドのムテインを得るのに使用され得るタンパク質内でのアミノ酸置換の生成の例としては、任意の公知の方法の工程(たとえば、Markらの米国特許第4,959,314号、同第4,588,585号および同第4,737,462号;Kothsらの同第5,116,943号、Namenらの同第4,965,195号;Chongらの同第4,879,111号;およびLeeらの同第5,017,691号に示されるものなど)ならびに米国特許第4,904,584号(Shawら)に示されたリジン置換タンパク質が挙げられる。
【0102】
本発明に連結して有用である、IL−6の特定のムテインが記述されている(国際特許第WO9403492A1号)。さらに、欧州特許第EP667872B1号は、野生型IL−6上で生物学的活性が改善された、ムテインIL−6を記述している。これに加えて、欧州特許第EP0656117号は、IL−6のスーパーアゴニストを単離する方法を記述している。ムテインまたはスーパーアゴニストは、本発明にしたがって使用し得る。
【0103】
用語「融合タンパク質」は、IL−6、またはそのムテインもしくは断片を、別のタンパク質と融合された状態で含有するポリペプチドをいい、これは、体液中で長期の滞留時間を有する。IL−6は、したがって、たとえば、免疫グロブリンまたはその断片と融合されていてもよい。
【0104】
本明細書で使用するところの「機能性誘導体」は、残基の側鎖またはNまたはC末端基として存在する官能基から、当該技術分野において公知の手段により調製され得る、IL−6の誘導体ならびにそのムテインおよび融合タンパク質を包含し、薬学的に許容され得る状態を維持している(すなわち、IL−6の活性に実質的に類似したタンパク質の活性を破壊せず、かつこれを含有する組成物に対して毒性を付与しない)限り、本発明に含まれる。
【0105】
このような誘導体としては、たとえば、ポリエチレングリコール側鎖が挙げられ得、これは、抗原性部位をマスクし、体液中でのIL−6の滞留時間を延長し得る。他の誘導体としては、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアもしくは第一級または第二級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部分と形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体(たとえば、アルカノイルまたは炭素環式アロイル基)またはアシル部分と形成される遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体(たとえば、セリル残基もしくはスレオニル残基のもの)があげられる。
【0106】
本発明による「活性画分」は、たとえば、IL−6の画分であり得る。語句画分は、分子の任意のサブセット、すなわち、望む生物額的活性を持つより短いペプチドを意味する。画分は、IL−6分子のいずれかの末端からアミノ酸残基を除去すること、およびgp80および/またはgp130に結合するその特性に関して、得られた画分を試験することによって簡単に調製し得る。ポリペプチドのN−末端またはC−末端のいずれかから、一時点で、1つのアミノ酸を除去し、望む生物学的活性を維持する断片を決定するためのプロテアーゼが、従来の実験にのみ関与する。
【0107】
IL−6、そのムテインおよび融合タンパク質の活性画分のように、前記画分が、本質的にIL−6に対する本質的に同様の活性、たとえばgp80および/またはgp130のIL−6結合部位に結合するという条件で、本発明は、さらに、単独または関連した分子と一緒に、タンパク質のポリペプチド鎖の任意の画分または前駆体、またはそれに連結した残基、たとえば、糖またはリン酸残基、またはそれらによるタンパク質分子または糖残基の凝集物をカバーする。
【0108】
本明細書において、用語「塩」は、IL−6分子またはそのアナログのカルボキシル基の塩およびアミノ基の酸付加塩の両方をいう。カルボキシル基の塩は、当該技術分野において公知の手段により形成され得、無機塩(たとえば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄または亜鉛の塩など)、および有機塩基との塩(たとえば、トリエタノールアミンなどのアミン、アルギニンまたはリジン、ピペラジン、プロカインなどと形成されるものなど)があげられる。酸付加塩としては、たとえば、無機酸(たとえば、塩酸または硫酸など)との塩および有機酸(たとえば、酢酸またはシュウ酸など)との塩があげられる。もちろん、任意のかかる塩は、IL−6の生物学的活性(たとえば、gp80および/またはgp130のIL−6結合部位への結合能力)を維持していなければならない。
【0109】
IL−6の「アイソフォーム」は、gp80および/またはgp130に結合することができるタンパク質、または選択的スプライシングによって生成し得るその断片である。
【0110】
用語「円順列誘導体」は、本明細書で使用する場合、末端同士を直接またはリンカーを介してのいずれかで互いに結合して環状分子を作製し、次いで該環状分子を別の位置で開裂して末端が元の分子の末端と異なる新たな線状分子が作製された線状分子をいう。円順列誘導体のものとしては、その構造が、環化した後開裂された分子と等価である分子が挙げられる。したがって、円順列誘導体分子は、線状分子として最初から合成され、環化工程および開裂工程を経ないものであってもよい。円順列誘導体の製造は、国際公開第95/27732号パンフレットに記載されている。
【0111】
本発明の1つの実施様態において、本発明の薬物は、1つ以上の部位でグルコシル化される。
【0112】
本発明によるIL−6は、酵母細胞、昆虫細胞、細菌などのような、適切な任意の原核または真核細胞中で産出され得る。1つの実施様態において、IL−6は、国際公開第99/02552号パンフレットにて記述されたような、遺伝子工学的に改変されたCHO細胞などの哺乳動物細胞中で産出される。
【0113】
本発明のさらなる実施様態において、本発明の物質はグルコシル化されない。有利には、分子はついで、グリコシル残基は合成することができないが、通常、高い収率で組み換えタンパク質を産生する細菌細胞内で産出することができる。非グルコシル化IL−6の産生は、たとえば、欧州特許第EP504751B1号にて詳しく記述されている。
【0114】
またさらなる実施様態において、本発明による物質には、免疫グロブリン融合体が含まれ、すなわち、本発明による分子が、免疫グロブリンのすべて、または一部分に融合する。免疫グロブリン融合タンパク質の作製方法は、たとえば、国際公開第01/03737号パンフレットにて記述されたもののように、本技術分野でよく知られている。当業者は、本発明の得られた融合タンパク質が、IL−6の生物学的活性を維持することを理解するであろう。得られた融合タンパク質は、理想的に、長期間の体液中の滞留時間(半減期)、特異的活性の増加、発現レベルの増加、または融合タンパク質の精製を容易にするなどの改善された特性を持つ。
【0115】
好ましくは、本発明による物質はIg分子の定常領域に融合される。たとえば、ヒトIgG1のCH2およびCH3ドメインのような重鎖領域に融合され得る。たとえば、IgG2またはIgG4アイソフォーム、またはIgMまたはIgAのような他のIgクラスなどのIgG分子の他のアイソフォームも本発明による融合タンパク質の産生に適している。融合タンパク質は、単量体または多量体、ヘテロ−またはホモ多量体であり得る。
【0116】
本発明による物質の機能性誘導体は、安定性、半減期、バイオアベイラビリティー、ヒト体によるトレランスまたは免疫原性のような、タンパク質の特性を改善するために、ポリマーに連結してもよい。
【0117】
したがって、本発明の好ましい実施様態は、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に連結した、少なくとも1つの部分を含む、本発明による薬物の機能性誘導体に関する。
【0118】
非常に好ましい実施様態は、ポリエチレングリコール(PEG)に連結した本発明の薬物に関連する。PEG化は、たとえば、国際公開第92/13095号パンフレットにて記述されたもののような、公知の方法によって実施し得る。
【0119】
1つの実施様態において、本発明の薬物は、0.06〜3μg/kg体重の範囲の用量で投与される。本発明の好ましい実施様態において、薬物は毎日投与される。さらに好ましい実施様態において、薬物は一週間あたり3回投与される。またさらに好ましい実施様態において、薬物は一週間に一回投与される。
【0120】
「薬学的に許容され得る」の定義は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、かつ投与対象の宿主に対して毒性でない任意の担体を包含することを意味する。たとえば、非経口投与では、薬物は、ビヒクル(たとえば、生理食塩水,デキストロース溶液,血清アルビミンおよびリンガー溶液)中にて注射用の単位投薬形態に製剤化され得る。
【0121】
1つの実施様態において、本発明は、IL−6またはそのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質、機能性誘導体または断片と、1つ以上の化学療法薬剤との組み合わせを含む医薬組成物を提供する。
【0122】
薬物は、それを必要とする患者に、種々の様式で投与され得る。投与経路としては、肝臓内、皮内、経皮(たとえば、低速放出製剤にて)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、硬膜外、局所および鼻腔内経路が挙げられる。任意の他の治療上有効な投与経路が使用され得、たとえば、上皮または内皮の組織からの吸収、またはIL−6をコードするDNA分子を患者に投与し(たとえば、ベクターにより)、インビボでIL−6の発現および分泌を引き起こす遺伝子療法によるものである。加えて、IL−6は、生物学的に活性な薬剤の他の成分(たとえば、薬学的に許容され得る界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤およびビヒクルなど)と共に投与してもよい。
【0123】
薬物を種々の方法において、それを必要とする患者に投与可能である。投与経路は、肝臓内、皮内、経皮(たとえば、持続放出処方)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、硬膜外、局所および鼻腔内経路が含まれる。たとえば、内皮または外皮組織を介した吸収、またはIL−6がインビボで発現し、分泌させる、IL−6をコードしているDNAを(たとえばベクターを介して)患者に投与する、遺伝子治療によってのような、任意の他の治療的に効果的な投与経路を使用可能である。さらに、薬物を、薬学的に許容され得る界面活性剤、ビヒクル、担体、希釈液およびビヒクルのような、生物学的に活性や薬剤の他の成分と一緒に投与可能である。
【0124】
非経口(たとえば、静脈内、皮下、筋肉内)投与のためには、IL−6は、薬学的に許容され得る非経口用ビヒクル(たとえば、水、生理食塩水、デキストロース溶液)ならびに等張性を維持する添加剤(たとえば、マンニトール)または化学的安定性を維持する添加剤(たとえば、保存剤およびバッファー)と組合せて、液剤、懸濁剤、乳剤または凍結乾燥した散剤として製剤化され得る。製剤は、一般的に用いられる手法によって滅菌する。
【0125】
本発明のさらなる目的は、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩を、任意には薬学的に許容され得る担体とともに、必要とする患者に投与することを含む、CIPNの治療および/または予防方法を提供することである。
【0126】
個体に、単回用量または反復用量として投与される投薬量は、種々の要因(薬物の薬物動態学的性質、投与経路、患者の状態および特徴(性別、年齢、体重、健康状態、体格)、症状の程度、併用療法、処置の頻度ならびに所望の効果など)に依存して変化する。確立された投薬範囲の調整および操作は、充分、当業者の能力の範囲である。
【0127】
語句「投薬量(dosage)」は、投与の頻度および回数の決定および調節に関する。
【0128】
本発明は、CIPNの治療/予防のための医薬の製造における、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、または円順列誘導体の使用に関する。
【0129】
低用量の薬物は、化学療法の前、あいだおよび/または後に投与可能である。低用量の薬物は、CIPNが確立する前に予防的に投与してもよく、または確立したCIPNを治療するために投与してもよい。
【0130】
本発明は、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための、それぞれ1つの化学療法薬剤を含む1つ以上の容器;IL−6、またはそのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩を含む1つの容器;および前記化学療法薬剤と前記IL−6の投与のための取扱説明書を含むキットにも関する。
【0131】
前記キットは、それぞれが1つの化学療法薬剤を含む2つの容器を含み得、たとえば、1つの容器がカルボプラチンを含有しおよびもう1つがタキソールを含有し得る。
【0132】
各容器内の、IL−6、またはそのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩の量は、4〜210μg、7〜140μgの範囲、または約4、7、14、28、70または140μgであり得る。
【0133】
本発明は、さらに神経増殖因子(NGF)およびグルタミンのような神経保護薬物含有容器を含む、前記キットを検討する(contemplates)。
【0134】
本発明を充分に記載してきたが、当業者には、広範な均等のパラメータ、濃度および条件の範囲内で、過度の実験をすることなく、本発明の精神および範囲を逸脱することなく本発明を行ない得ることが認識されよう。
【0135】
本発明を、その特定の実施形態に関して記載したが、さらなる改良が可能であることを理解されたい。本特許出願明細書は、一般的に本発明の原理にしたがう本発明の任意の変形、使用または適応を包含し、本発明が属する技術分野において既知または慣用的な実務の範囲内である場合、および以下の添付の特許請求の範囲に記載された前述の本質的な特徴に適用され得る場合、本開示からのかかる逸脱を含むものとする。
【0136】
本明細書で引用した参考文献、たとえば、学術論文もしくは要約、公開もしくは未公開の米国もしくは外国の特許出願、発行済の米国もしくは外国の特許、または任意の他の参考文献などは、引用により本明細書に完全に組み込まれる(引用した参考文献に示されたすべてのデータ、表、図および文章を含む)。加えて、参考文献内に引用された参考文献の全内容もまた、引用により本明細書に完全に組み込まれる。
【0137】
公知の方法の工程、従来の方法の工程、公知の方法または従来の方法を参照することは、決して、本発明の任意の側面、説明または実施態様が関連技術において開示、教示または示唆されているという是認(admission)ではない。
【0138】
特定の実施様態の以上の記述によって、完全に、他ではなく、本発明の一般的な性質が、(本明細書で引用した参考文献の内容を含む)当業者の知識を適用することによって、余計な実験なしに、本発明の一般的なコンセプトから逸脱することなしに、そのような特定の実施様態への種々の適用のために、簡単に改変および/または適合可能である。したがって、そのような適合および改変が、本明細書で示した協議およびガイダンスに基づいて、開示された実施様態の等価のものの範囲を意味することの範囲内であることが意図される。本明細書の語法または専門用語は、記述の目的であって、制限の目的ではなく、本明細書の専門用語または語法が、当業者の知識と組み合わせて、本明細書で示された協議およびガイドラインに関して、当業者によって解釈されるべきものであることが理解されるべきである。
【0139】
次に、以下の非限定的な実施例および添付の図面にしたがって本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0140】
実施例1:ビンクリスチン誘発ニューロパシー、動物および薬物投与
ビンクリスチン誘発ニューロパシーは、混合型のニューロパシー(すなわち、感覚神経および運動神経関連ニューロパシー)である。Boyleと共同研究者ら(Boyleら、J Pharmacol Exp Ther.1996 Oct;279(1):410−5)は、ビンクリスチンニューロパシーのラットモデルを開発し、そこで、行動試験(それぞれテール−フリックおよびロータロッド行動)によって測定したような感覚神経および運動神経末梢欠損が、任意の先に記述されたものよりも、ヒトでの状態をより近く象徴すると報告された。このビンクリスチン−誘発ニューロパシーのモデルを、IL−6がビンクリスチン−誘発ニューロパシーから保護可能であるかどうかを調査するために使用した。
【0141】
実験は、10週齢雌Dark Agoutiラット(Janvier,Le Genest−St−Isle、フランス)を用いて実施した。ラットを無作為に以下のように7つの実験群にわけた。(a)生理食塩水中0.02% BSAのIP注射を受けるビヒクル対照群(n=10);(b)生理食塩水中0.02%BSAの皮下(SC)注射で毎日投与される、ビンクリスチン−処置群(n=10);(c)0.3、1、3または10μg/kgにて、ヒト組換えIL−6(実施例23)のSC注射を毎日投与される、ビンクリスチン−処置ラットの4つの異なる群(各群n=10);および(d)4−メチルカテコール(4−MC)の腹腔内(IP)注射を毎日受けるビンクリスチン−処置群。4−MCは、確立された神経保護作用を有する標準化合物であり、10μg/kgの用量で使用した(n=10)。
【0142】
動物を、ケージあたり2匹で飼い、えさおよび水が自由に得られる状態で、制御した温度(21〜22℃)、および逆明暗周期(12時間/12時間)の部屋内で維持した。
【0143】
ビンクリスチン(トクリス(Tocris)、Illkirch、フランス)を、0日〜5日目、8日〜12日目および15日〜16日目に、0.15mg/kgの用量で、ビンクリスチン溶液を注射することによって与えた。ビンクリスチン溶液(0.03mg/ml)は生理食塩水中で調製した。
【0144】
IL−6を、0.02% BSAを含む生理食塩水中で希釈し、ビンクリスチン投与の第1日から、実験の最後まで、毎日皮下経路にて投与した。
【0145】
4−MC(先のページを参照のこと)を生理食塩水中で希釈し、ビンクリスチン投与の第1日から、試験の最後まで、毎日IP経路を介して注射した。
【0146】
体重におけるビンクリスチンの効果を調査した。図1は、ビンクリスチンで処置した動物が、対照群よりも、有意に軽い体重を示すことをあらわしている[F(6,210)=7.144およびp<0.001、繰り返し測定ANOVA]。たとえば、ビヒクルで処理したビンクリスチン中毒動物は、ビンクリスチン投与の完了の時点で、その体重の約10%を失った。しかしながら、IL−6の投与にかかわらず、ビンクリスチン治療にかけた群間では、有意な差は検出されなかった。いったんビンクリスチンを停止すると、動物はすぐに成長した。
【0147】
実施例2:ビンクリスチン仲介運動神経協調障害を予防する/減少させることにおける、IL−6同時投与の効果
ビンクリスチンによる運動神経協調の障害、およびIL−6同時投与の効果を査定するために、a、生理食塩水中0.02%BSAのIP注射を受けるビヒクル対照ラット群(n=10);(b)生理食塩水中0.02%BSAのSC注射にて、毎日処置したビンクリスチン−処置群(n=10)(実施例1);(c)0.3、1、3または10μg/kgの用量にて、IL−6のSC注射にて毎日投与される、ビンクリスチン−処置ラットの4つの異なる群(以下を参照のこと)(各群n=10);および(d)10μg/kgの用量にて、4−MCのIP注射で毎日投与したビンクリスチン−治療群(n=10)を、走行試験にてモニタした(実施例16)。
【0148】
図2は、対照、ビンクリスチン−処置およびIL−6処置動物群における、走行試験の結果を要約している。結果は、各実験動物がロッドを横断するために必要な時間を示している。
【0149】
ビンクリスチン投与の2および3週間後、未処置対照ラットと比較して、パフォーマンスが有意に減少した。
【0150】
IL−6と同時投与したラットは、ビンクリスチンのみ投与したラットと比較して、より早くロッドを横断した。IL−6の有益な効果が、試験したIL−6の用量すべてで観察され、0.3、1、3または10μg/kgが、中毒後、2および3週間で観察された。
【0151】
したがって、走行試験で得られた結果によって、試験したすべてのIL−6用量、0.3、1、3または10μg/kgで、IL−6の同時投与が、ビンクリスチンによって誘発される運動神経協調障害を予防することが示される。
【0152】
実施例3:ビンクリスチン−誘導傷害受容欠損(nociception loss)におけるIL−6の効果
ラットにおけるビンクリスチンによって誘導された感覚神経欠損(すなわち傷害受容欠損)、およびIL−6同時投与の効果を評価するために、a、生理食塩水中0.02%BSAのIP注射を受けるビヒクル対照ラット群(n=10)、(b)生理食塩水中0.02%BSAのSC注射にて、毎日処理したビンクリスチン−処理群(n=10)(実施例1)、(c)0.3、1、3または10μg/kgにて、ヒト組換え体IL−6のSC注射にて毎日投与される、ビンクリスチン−治療ラットの4つの異なる群(各群n=10)。および(d)10μg/kgにて、4−MCのIP注射で、毎日投与したビンクリスチン−治療群(n=10)を、実施例15で記述したように、ホットプレート試験にてモニタした。
【0153】
ホットプレート試験の結果を、図3で要約している。ビンクリスチン−治療群において、対照未処理群のラットと比較して、熱に対する第一反応の遅延が観察された。第一反応の遅延は、治療開始後3および5週間で有意であった。
【0154】
試験したすべての用量にて、IL−6の同時投与が、処理開始後5週間で、痛覚を有意に予防し、また、IL−6の予防的傾向が、実験を通して観察されえた。
【0155】
4−MCは、ラットにおける、ビンクリスチン−誘導傷害受容欠損において、主要な保護効果を持つようには見られなかった。
【0156】
したがって、ホット試験プレートで得られた結果は、試験したすべての用量、0.3、1、3または10μg/kgで、IL−6の同時投与が、ラットにおけるビンクリスチン−誘導傷害受容欠損から保護したことを示している。ホットプレート試験はまた、IL−6が、4−MCよりも、ラットにおけるビンクリスチン−誘導傷害受容欠損より、保護することも示した(図3)。
【0157】
実施例4:電気生理学的試験(筋電図検査またはEMG)は、ビンクリスチン−誘発ニューロパシーに対する、IL−6の保護効果を示す
行動試験と平行して、実施例17で記述したように、電気生理学的試験を実施して、IL−6を同時投与したラットと比較して、ビンクリスチン−投与ラットにおける繊維/神経機能を評価した。
【0158】
(実施例17で記述したように試験した)M波振幅における有意な減少が、すでにビンクリスチン投与の2週間後に検出され得る(図4)。動物は、対照未処理動物と比較して、約20%の振幅を失った。振幅欠損が、ビンクリスチンを停止した後でさえも維持された。
【0159】
試験したすべてのIL−6用量で、IL−6との同時投与が、M派振幅のビンクリスチン−誘導欠損を予防することが示され、1〜10μg/kgの用量で使用したIL−6が、完全にH波振幅を予防した。
【0160】
4−MCとの同時投与が、一時的にのみ、M派振幅の欠損を保護することが観察され、一方で、3〜10μg/kg IL−6が、実験全体にわたって安定であった。
【0161】
図5で示したように、化合物筋肉活性電位(CMAP)潜時における最初の変化が、ビンクリスチン処理を停止した後にのみ検出された。
【0162】
ビンクリスチン−誘導CMAP潜時は、試験したすべての濃度0.3〜10μg/kgにて、IL−6の同時投与(p<0.05;ダネット検定)によって減少したことが示された。10μg/kg IL−6と同時投与したラットは、実験を通して、それらのCAMP潜時を完全に予防した。
【0163】
感覚神経伝導速度(SNCV)における初期変化が、ビンクリスチンの停止の際(またはビンクリスチン投与後2週間で 図6)検出された。その時点で、未処理対照ラットにおけるそれと比較して、SNCVのわずかな減少が観察された。ビンクリスチンの効果は、ビンクリスチン処理開始の5週間後に有意になり始め、これは、約10m/sの欠損を示している。
【0164】
SNCVの完全な復旧が、1〜10μg/kg IL−6で同時投与した、ビンクリスチン処理動物群で観察された。
【0165】
したがって、電気生理学的試験の結果は、試験したすべてのIL−6用量、0.3、1、3および10μg/kgで、IL−6との同時投与が、ビンクリスチン−誘導繊維/神経機能欠損に対して保護したことを示している。電気生理学的試験はまた、IL−6が、4−MCよりも、ビンクリスチン−誘導繊維/神経機能欠損に対して、より保護を与えることを示した(図4)。
【0166】
実施例5:形態学的解析ビンクリスチン−誘発ニューロパシーに対する、IL−6の保護効果を示す
形態学的解析を、実験の完了時に、実施例18で記述したように実施し、ビンクリスチンで処理したラット、およびIL−6と同時投与したラットにおいて、繊維および軸索直径およびミエリン厚でおこる形態学的変化を調査した。
【0167】
図7で示したように、ビンクリスチン処理ラットから回収した坐骨神経は、対照未処理標本と比較して、繊維直径の有意な減少を示した。用量1〜10μg/kgでのIL−6との同時投与によって、ビンクリスチン−誘導繊維収縮が予防された。ビンクリスチン−誘導繊維収縮はまた、4−MC治療によっても保護された。
【0168】
軸索の直径が、ビンクリスチン処理ラットで有意に減少した(図8)。0.3〜10μg/kgの用量でのIL−6の同時投与が、ビンクリスチンによる軸索直径の減少を、有意に減らし/予防した。
【0169】
4−MC治療が、ビンクリスチンによる軸索直径の減少を、有意に減らし/予防した。
【0170】
ミエリン厚が、対照未処理ラットと比較して、ビンクリスチン−処理で、軸索において、有意に減少した。
【0171】
1〜10μg/kgの用量でのIL−6との同時投与が、ビンクリスチン−誘導ミエリン欠損を減少させ/予防した(図9)。
【0172】
変性した繊維の割合をまた、対照、ビンクリスチンおよびビンクリスチン−IL−6投与ラットから回収した試料中でモニタした(図10)。ビンクリスチン処理ラットの試料から回収した変性した繊維の割合は、対照ラットからの試料中のものよりも、2倍高かった。さらに、ビンクリスチン処理群での有髄繊維の割合は、対象未処理群でのものよりも少なかった。
【0173】
IL−6(0.3〜10μg/kg)または4−MCとの同時投与が、ビンクリスチン処理ラットでの、変性繊維の割合を減少させることがわかった。
【0174】
したがって、上記形態学的解析によって、試験したすべての用量、0.3、1、3および10μg/kgでのIL−6との同時投与が、ビンクリスチン−誘導神経変性を効果的に予防/減少させ、とりわけ、繊維および軸索直径の減少、ミエリン厚の減少、および繊維の変性を予防したことが示されている。
【0175】
皮膚の5〜10mm直径面積を、後ろ足からパンチ−生検した。皮膚試料をすぐに、4℃にてパラホルムアルデヒド中で一晩固定化し、冷凍保存のために、0.1M PBS中30% スクロース中でインキュベート(一晩)し、OCT中に埋包し、解凍まで−80℃で冷凍した。ついで、50μm−厚凍結切片を、クリオスタットにて、皮膚の表面に垂直に切断した。遊離浮遊切片を、4℃にて、ウサギ抗−タンパク質遺伝子産物9.5(1:10000、Ultraclone,Isle of Man,UK)の浴中で7日間インキュベートした。次いで切片を、ABCペルオキシダーゼ法にしたがって、免疫応答性を明らかにするために処理した。簡単に記すと、ビオチン化抗−ヤギ抗体(1:200)で、1時間インキュベートし、ついで、室温にて、アビジンビオチン化複合体中で30分間インキュベートした。ペルオキシダーゼ活性を、DABシステムを用いて視覚化した。ついで切片を、エオシンまたはヘマトキシリンにて対比染色した。切片を脱水し、バイオクリアで洗浄し、エウキット上にマウントした。3つの顕微鏡視野の皮膚神経の数を、’40倍率視野下、マニュアルで計数した。ビンクリスチン中毒は、表皮神経線維の密度の、50%以上の減少を誘導した。皮膚生検が、ヒトにおけるニューロパシーをモニタする種々の技術の1つである。本実験の結果によって、ビンクリスチン中毒が、皮膚繊維の密度の大きな減少に関連することが示唆され、これは、臨床条件で起こっているものと似ている。10μg/kg IL−6での処理が、皮膚繊維欠損の症状を完全に予防した(データは示していない)。
【0176】
実施例6:シスプラチン誘発ニューロパシー、動物および薬物投与
Holmesおよびその共同研究者ら(Holmesら、Toxicol Sci.1998 Dec;46(2):342−51)によって開発された、シスプラチン誘発ニューロパシーの信頼性のある動物モデルを使用して、シスプラチン誘発ニューロパシーにおけるIL−6同時投与の効果を調査した。ラットにおけるシスプラチン−誘発ニューロパシーが、臨床条件の写しであると記述されてきている。実際、(ヒトで見られるような)軸索変性の行動および電気生理学的相関が、シスプラチンニューロパシーのラットモデルにおいてすでに報告されている(Holmesら、1998)。
【0177】
10週齢メスDark Agoutiラット(Janvier,Le Genest−St−Isle,France)を、無作為に以下のように7つの実験群にわけた。(a)生理食塩水−0.02% BSA(重量/容量)の無菌溶液を注射した、ビヒクル対照群(n=10)。(b)生理食塩水−0.02%BSAの無菌溶液を注射した、シスプラチン−中毒化群(n=10)。(c)0.3、1、3または10μg/kgの4つの異なる用量での、IL−6化合物の毎日SC注射を受ける動物からなる、4つの治療−シスプラチン−中毒化群群(n=10)。および(d)10μg/kgでの、4−MCの毎日IP注射を受ける、4−メチルカテコール(4−MC)処理、シスプラチン−中毒化群(n=10)。
【0178】
動物を、グループで飼い(ケージあたり2匹)、えさおよび水が自由に得られる状態で、制御した温度(21〜22℃)、および逆明暗周期(12時間/12時間)の部屋内で維持した。すべての実験を、研究所ガイドラインにしたがって実施した。
【0179】
シスプラチン(シグマ、L‘Isle d’Abeau Chesnes,France)を、4週間のあいだ、2mg/kgの用量にて一週間に二回、腹腔内に注射することによって誘導した。薬物を、塩化ナトリウムの0.9%無菌水溶液中に希釈した。
【0180】
IL−6を、生理食塩水−0.02% BSAの無菌溶液中で希釈し、シスプラチン投与の第一日から、実験の最後まで、毎日皮下経路にて投与した。
【0181】
4−MCを、塩化ナトリウムの0.9%無菌水溶液中で希釈し、シスプラチン投与の第一日から、試験の最後まで、毎日、IP経路を介して注射した。
【0182】
体重におけるシスプラチンの効果を調査した。図11は、シスプラチンで処理した動物が、対照群よりも、有意に軽い体重を示すことをあらわしている[p<0.001]。IL−6の投与にかかわらず、シスプラチンの投与が、動物の成長の明らかな阻害を誘導することも注目される。たとえば、ビヒクルで処理したシスプラチン中毒動物は、シスプラチン投与の完了の時点で、その体重の約10%を失う。いったんシスプラチンを停止した場合、動物はすぐに成長した。
【0183】
実施例7:シスプラチン−誘導傷害受容欠損における、IL−6の効果
ラットにおけるシスプラチン治療によって誘導された感覚神経欠損(すなわち傷害受容欠損)、およびIL−6同時投与の効果を評価するために、a、生理食塩水中0.02%BSAのIP注射を受けるビヒクル対照ラット群(n=10)、(b)生理食塩水中0.02%BSAのSC注射にて、毎日処理したビンクリスチン−処理群(n=10)(実施例1)、(c)0.3、1、3または10μg/kgにて、ヒト組換え体IL−6のSC注射にて毎日投与される、ビンクリスチン−治療ラットの4つの異なる群(各群n=10)。および(d)10μg/kgにて、4−MCのIP注射で、毎日投与したビンクリスチン−治療群(n=10)を、実施例15で記述したように、ホットプレート試験にてモニタした。
【0184】
シスプラチン投与3週間後に、ラットが、対照未処理群のラットと比較して、熱に対する第一反応の有意な遅延を示した。シスプラチン治療群対対照群での、熱に対する第一反応の遅延は有意であり、シスプラチン治療の停止後(またはシスプラチン治療開始5および6週間後)でさえ持続する。
【0185】
試験したすべての用量、0.3、1、3または10μg/kgにて、IL−6の同時投与が、シスプラチンによる熱に対する第一応答の遅延を、完全に予防/減少させた。
【0186】
シスプラチンによる、熱に対する第一反応の遅延が、10μg/kg IL−6との同時投与によって完全に予防された。
【0187】
4−MC治療によって、シスプラチンのみで処理したラットと比較して、3週間シスプラチン−処理ラットで、第一反応時間の、明らかであるが、有意ではない減少が産出された。差は、シスプラチン治療開始4および6時間後のみで有意であった。
【0188】
ホットプレート試験で得られた結果は、シスプラチンと一緒の、IL−6の同時投与が、試験したすべての用量、0.3、1、3および10μg/kgにて、シスプラチン−仲介感覚神経欠損を予防したことを示している。
【0189】
実施例8:電気生理学的試験(筋電図検査またはEMG)は、シスプラチン−誘発ニューロパシーに対する、IL−6の保護効果を示す
シスプラチン−誘発ニューロパシーモデルにおける、電気生理学的モニタリングを、実施例17で記述したように実施した。目的は、繊維/神経機能のシスプラチン−誘導欠損における、IL−6との同時投与の効果を査定することであった。
【0190】
H波振幅における最初の変化が、シスプラチンを投与した後3週間で観察された(図13)。振幅のわずかな減少が、対照未処理群と比較して、シスプラチン処理群で観察された。シスプラチン治療開始から4〜6週間で、Hは振幅が、約80%まで、劇的に減少した。
【0191】
それぞれ、0.3、1、3および10μg/kg IL−6の同時投与が、H波振幅の欠損を減少/予防することがわかった一方で、10μg/kg IL−6との同時投与が、実験を通して、H波振幅の欠損を完全に予防した。
【0192】
一方で、4−MC同時投与は、シスプラチンによって誘導されたH波の欠損を予防することにおいて、遅延および一過性の効果しか持たなかった(図13)。
【0193】
感覚神経伝道速度(SNCV)における最初の変化が、シスプラチン投与の4週間後に観察された。その時点で、シグナル速度が、相当する未処理対照においてのものよりも、有意に遅かった(図14)。
【0194】
IL−6との同時投与が、5週間後、特に3および10μg/kg IL−6(図14)にて、SNCVを改善することがわかった。
【0195】
4−MCとの同時投与は、治療のわずか5週間後に、シスプラチン中毒のSNCVの減少を一過性に阻害した(図14)。
【0196】
上記電気生理学的試験の結果によって、IL−6との同時投与が、繊維/神経機能のシスプラチン−誘導欠損を効果的に予防することが示されている。電気生理学的試験の結果はまた、IL−6が、4−MCよりも、繊維/神経機能のシスプラチン−誘導欠損を予防することにおいて、より効果的であることも示している(図13および14)。
【0197】
実施例9:シスプラチン−誘発ニューロパシーに対する、IL−6の保護効果−形態学的解析
組織形態学的解析を、シスプラチン投与に続く、繊維/軸索直径およびミエリン厚で発生する形態学的変化、およびIL−6同時投与の効果を調査するために、実験の完了時点で実施した。
【0198】
図15は、対照、シスプラチンおよびシスプラチンIL−6同時投与ラットから回収した試料中での、繊維直径測定を示している。
【0199】
得られた直径測定値は、シスプラチンが、繊維直径を有意に減少させたことを示している。試験したすべてのIL−6用量で、IL−6と同時投与したラットの切片からの結果によって、IL−6が、シスプラチンによる直径減少を予防/減少させることが示されている。有意な統計学的有意さが、1〜10μg/kg IL−6の範囲で検出された。
【0200】
さらに有髄繊維の割合の測定を、対照未処理、シスプラチン処理ラットおよびIL−6とのシスプラチン同時投与ラットから回収した繊維内で実施した(図17)。有髄繊維の割合における有意な減少が、対照未処理ラットでのものと比較して、シスプラチン処理ラットで観察された。
【0201】
IL−6(1、3、10μg/kg)が、ミエリン壁の欠損に対して、繊維を有意に保護することがわかった。
【0202】
4−MC処理は、シスプラチン−誘導繊維直径または軸索の減少を保護し、ミエリン壁の欠損に対する有意な保護を誘導した。
【0203】
また、変性繊維の割合を、対照、シスプラチン処理ラット、およびIL−6とシスプラチンを同時投与したラットから回収した試料中でモニタした(図18)。シスプラチン処理ラットから回収した試料中の変性繊維の割合が、対照未処理ラットから回収した試料中のものよりも、2倍高いことがわかった。このことに加えて、有髄繊維の割合が、対照未処理群でのものと比較して、シスプラチン処理群で減少した(図17)。
【0204】
1、3、10μg/kg IL−6との同時投与が、シスプラチンによる変性繊維の割合を減少することがわかった(図18)。図17は、変性繊維の割合の減少に加えて、IL−6との同時投与が、シスプラチン処理ラットでの有髄繊維を増加させたことを示している(図17)。
【0205】
したがって、上記形態学的解析によって、1、3または10μg/kg IL−6との同時投与が、神経変性を効果的に予防/減少させ、とりわけ、シスプラチンによる、軸索直径の減少、ミエリン厚の減少、またはミエリン壁の欠損および繊維の変性を予防したことが示された。
【0206】
実施例10:シスプラチン−誘発ニューロパシーモデルにおける、IL−6の治療的効果−動物および薬物投与
実験の進行において、化学療法剤との、IL−6(0.3、1、3、10μg/kg)の同時投与が、行動、電気生理学的および組織学的査定によって証明されるように、ラットにおいて、化学療法によって引き起こされる神経因性欠損を予防/減少することが示された。そのような実験においては、IL−6治療を、ニューロパシーの発達の前、または間に開始した。したがって、先の実験では、化学療法−関連ニューロパシーの発達におけるIL−6の予防的解析が確認された。以下の実験は、動物モデルにおいて、ニューロパシーがすでに確立された後の、IL−6の効果を評価するために実施した。IL−6の可能性のある治療効果を、行動、電気生理学的および組織学的査定を用いて調査した。
【0207】
10週齢メスDark Agoutiラット(Janvier,Le Genest−St−Isle,France)を、無作為に以下のように7つの実験群にわけた。(a)生理食塩水−0.02% BSA(重量/容量)の無菌溶液を注射した、ビヒクル対照群(n=10)。(b)生理食塩水−0.02%BSAの無菌溶液を注射した、シスプラチン−中毒化群(n=10)。(c)2つの異なる用量、3および10μg/kgにて、IL−6を毎日SC注射にて与えられる動物からなる、2つの処理−シスプラチン−中毒化群(n=10)。および(d)10μg/kgでの、4−MCの毎日IP注射を受ける、4−メチルカテコール(4−MC)処理、シスプラチン−中毒化群(n=10)。
【0208】
動物を、グループで飼い(ケージあたり2匹)、えさおよび水が自由に得られる状態で、制御した温度(21〜22℃)、および逆明暗周期(12時間/12時間)の部屋内で維持した。
【0209】
シスプラチン(シグマ、L‘Isle d’Abeau Chesnes,France)を、4週間の間、2mg/kgの用量にて一週間に二回、腹腔内に注射することによって誘導した。薬物を、塩化ナトリウムの0.9%無菌水溶液中に希釈した。
【0210】
IL−6を、生理食塩水−0.02% BSAの無菌溶液中で希釈し、23日目(シスプラチン投与の最終週)から、実験の最後まで、毎日皮下経路にて投与した。
【0211】
4−MCを、塩化ナトリウムの0.9%無菌水溶液中で希釈し、23日目から、試験の最後まで、毎日、IP経路を介して注射した。
【0212】
体重および生存率を毎日記録した。
【0213】
ホットプレートおよびEMG試験を、−6、23、30,37および44日にて実施した。
【0214】
シスプラチン投与の最初の日を1日目と考えた。
【0215】
実施例11:シスプラチンによって確立した傷害受容欠損における、IL−6の治療的効果
IL−6が、シスプラチンによって誘導された、感覚神経欠損(または傷害受容欠損)を治癒させる、および/または改善し得るかどうかを決定するために、ラットを、(a)生理食塩水−0.02% BSA(重量/容量)の無菌溶液を注射した、ビヒクル対照群(n=10)。(b)生理食塩水−0.02%BSAの無菌溶液を注射した、シスプラチン−中毒化群(n=10)。(c)2つの異なる用量、3および10μg/kgにて、IL−6を毎日SC注射にて与えられる動物からなる、2つの処理−シスプラチン−中毒化群(n=10)。および(d)10μg/kgでの、4−MCの毎日IP注射を受ける、4−メチルカテコール(4−MC)処理、シスプラチン−中毒化群(n=10)で処理し、実施例15にて記述したように、ホットプレート試験を用いて試験した。
【0216】
結果は、2日目(ベースライン)から23日目まで、対照動物におけるホットプレートスコアが、明らかに減少し、これが、試験に対する習慣作用と関連した現象であることが示された。23日目から後、対照動物のスコアが安定した。
【0217】
シスプラチン投与のあいだ、およびシスプラチン後治療3週間にわたり、シスプラチン−治療群が、対照未処理ラットと比較して、熱に対する第一反応の有意な遅延を示した(図19)。
【0218】
IL−6処理開始2週間後、第一反応の時間の合計減少が、IL−6で処理したラットで観察された(p<0.05、マノバ−ダネット検定)。IL−6での有意な結果が、10μg/kgの用量でのIL−6処理後2週間で観察された(p<0.05、マノバ−ダネット検定)。
【0219】
4−MCで処理したラットにおける、熱に対する第一反応の時間の減少も、4−MC治療開始から2週間後に観察された(p<0.05、マノバ−ダネット検定)。
【0220】
ホットプレート試験を用いて得られた結果により、IL−6が、シスプラチン−誘導感覚神経欠損を効果的に治癒する、および/または改善することが示されている。
【0221】
実施例12:シスプラチン−誘発ニューロパシーにおける、IL−6の治療的効果−電気生理学的測定
実施例17で記述した電気生理学的試験を、シスプラチン−確立ニューロパシーモデルにおいて、(先の実施例で記述した)行動試験と平行して実施した。目的は、繊維/神経機能のシスプラチン−誘導欠損における、IL−6の治療効果を査定することである。
【0222】
本実験組において、H波振幅の最初の変化が、シスプラチン処理開始後23日で検出された(図20)。シグナル振幅の劇的な欠損(約70%)が、シスプラチン処理群で観察された。H−波振幅の自発的回復は観察されなかった。
【0223】
3および10μg/kgを用いるIL−6処理によって、H波振幅の欠損が明らかになった(p<0.05、マノバ−ダネット検定)。IL−6処理の開始後1週間ほどで、約50%の振幅欠損が回復し、IL−6処理の2週間までに、完全回復に至った(図20)。
【0224】
4−MC処理もまた、増幅における、シスプラチン誘導H波欠損を逆転させた。
【0225】
シスプラチン投与によって誘導された、感覚神経伝導速度(SNCV)の最初の変化が、シスプラチン処理の開始後23日で観察され得る(図21)。シスプラチン処理ラットにおけるSNCVが、相当する未処理対照群におけるSNCVよりも、有意に遅いことがわかった(p<0.01、マノバ−ダネット検定)(図21)。
【0226】
結果によって、3μg/kgの用量でのIL−6が、処理の1週間のみのあとで、シスプラチン−処理動物におけるSNCVを有意に(p<0.01、マノバ−ダネット検定)改善したことを示している。
【0227】
反対に、4−MC処理は、シスプラチン処理ラットのSNCVを改善するように見えるが、有意な統計学的差が、処理開始後2週間で検出されただけである(p<0.05、マノバ−ダネット検定)。
【0228】
したがって、電気生理学的試験の結果が、シスプラチン−処理動物におけるSNCVでの有意な改善が、IL−6処理の1週間のみの後で観察され、早期効果が、試験したもっとも低い用量のIL−6、すなわち3μg/kgを用いて観察され、H波の欠損を逆転させた、ことを示している。電気生理学的試験によって、IL−6が、シスプラチンによって誘導された繊維/神経機能の欠損を治癒させる、および または改善させることにおいて、4−MCよりもより効果的であることが示されている(図21)。
【0229】
実施例13:シスプラチン−誘発ニューロパシーにおける、IL−6の治療的効果−形態学的解析
組織形態学的解析を、シスプラチン誘発CIPNのモデルにおいて、繊維および軸索直径、およびミエリン厚にて起こる、形態学的変化、およびそのようなモデルにおいて、IL−6投与後に起こる変化を調査するために、実験の完了時に実施した。
【0230】
結果は、治療開始の前(23日まで)、シスプラチン処理ラットにおけるミエリンの総サイズが、対照未処理ラットと比較して、わずかに減少したが、差は有意ではなかった(p>0.05、ステューデントt−検定)、ことを示している(図22)。
【0231】
シスプラチン処理ラットから回収した試料が、対照未処理ラットからのものよりも有意に大きな、変性繊維の割合を含んだことが観察された(図23A、p<0.05、ステューデントt−検定)。さらに、非変性有髄繊維の割合が、対照未処理群においてよりも、シスプラチン処理群で低かった(図23B)。
【0232】
ミエリン面積における、わずかだが、有意ではない減少が、シスプラチン処理開始後44日で観察された(p>0.05、One−way Anova)(図24)。
【0233】
10μg/kgでのIL−6の投与が、シスプラチン−誘導ミエリン鞘薄化を逆転することが明らかであった。
【0234】
反対に、4−MC治療は、シスプラチン−誘導ミエリン鞘薄化を干渉しなかった。
【0235】
小(直径<8μm)および大(直径>8.5μm)繊維をモニタし、大/小繊維比を計算した。図25の結果が、大/小繊維比が、シスプラチン−処理ラットから回収した試料中で明らかに減少したことを示している。大/小繊維比のわずかな増加が、IL−6処理の後に観察された。
【0236】
図26Aで描写したように、シスプラチン投与の停止後3週間で、いまだ、変性繊維の割合が、対照未処理試料と比較して、シスプラチン処理にて、有意に高かった。さらに、非変性有髄繊維の割合は、対照群に比べて、シスプラチン処理群でより低かった(図26B)。IL−6でのラットの処理が、変性繊維の割合を有意に減少させた。有意な効果が、10μg/kg IL−6で得られた。
【0237】
反対に、変性繊維の割合における、わずかだが、有意ではない減少が、4−MC処理によって誘導された(p>0.05、ダネット検定)。
【0238】
上記形態学的解析結果は、10μg/kgでのIL−6が、ミエリン鞘薄化、および繊維の変性を逆転させることを示している。形態学的解析は、システインによって仲介された、ミエリンおよび繊維変性の回復において、4−MCよりも効果的であることを示している(図24および26)。
【0239】
あわせて、実施例11での行動試験、実施例12での電気生理学的試験、および本形態学的解析が、等しく、シスプラチン誘発ニューロパシーにおける、低用量のIL−6の治療的価値を示している。これらの試験は、低用量のIL−6が、シスプラチン−誘発ニューロパシーに対して、よりよい治療効果を持つことを示している。
【0240】
実施例14:タキソール誘発ニューロパシーにおける、IL−6同時投与の効果
先の実施例は、シスプラチンおよびビンクリスチンによって誘発されたニューロパシーにおける、IL−6の効果を示している。
【0241】
以下の実験の目的は、タキソールによって仲介された化学療法誘発ニューロパシーのさらなるモデルにおける、IL−6の可能性のある神経保護効果を調査することであった。IL−6同時投与の可能性のある保護効果を試験した。IL−6の投与を、タキソールの投与と一緒に開始した。3および10μg/kgのIL−6の用量を、毎日、または10μg/kgの場合はまた、1週間に3回のみ投与した。
【0242】
メス10週齢Dark Agoutiラットを使用し、群あたり12匹の動物を以下のように含めた。
1. ビヒクル 毎日 sc
2. タキソールビヒクル 毎日 sc、1日〜49日
3. タキソール IL−6 3μg/kg 毎日、sc 1日〜49日
4. タキソール IL−6 10μg/kg 毎日、sc 1日〜49日
5. タキソール IL−6 10μg/kg sc 3×/wk(TIW)、1日〜49日
6. 4−MC 10μg/kg 毎日、(腹腔内)i.p. 1日〜49日
【0243】
タキソールを、クレモホア/エタノール/デキストロース 5%の溶液中で希釈し、4週間、1週間に2回投与した。
【0244】
4−MCおよび試験化合物処理は、中毒化の最初の日に開始し、試験の最後に終了した。
【0245】
本研究は8週間で実施した(ベースラインのために1週間、タキソール中毒化のために4週間、回復に3週間)。
【0246】
表示用量での、対照、タキソールおよびタキソール−IL−6同時投与ラット群を、繊維/神経機能のタキソール誘導欠損における、IL−6の効果を査定するために、電気生理学的モニタリングにかけた。
【0247】
H波潜時を、すべてのラット群でモニタした。H波潜時における有意な増加が、タキソール処理後3週間で観察した。潜時は、タキソール治療後6週間で、劇的に増加した。
【0248】
3または10μg/kgいずれか、毎日または一週間に3回の、IL−6の同時投与が、実験を通して、H波潜時を予防し/減少させることがわかった(図27)。
【0249】
4−MC処理が、3、5、6および7週にて、H波潜時における改善を示した。
【0250】
H−波振幅を、タキソールで処理したラット、およびIL−6または4−MCを投与したタキソールラットの群からの試料中でモニタした。試験したすべての用量で、IL−6が、実験を通して、タキソールによるH波振幅誘導における減少を、有意に予防したことがわかった(図28)。
【0251】
タキソール投与によって誘導された感覚神経伝導速度(SNCV)における最初の変化が、シスプラチン投与後3週間で観察された。この時点で、シグナル速度は、未処理対照における相当する速度よりも、有意にゆっくりであった(図29)。
【0252】
タキソールとの、3または10μg/kgいずれか、毎日または一週間に3回の、IL−6の同時投与が、タキソールによるSNCVでの変化を予防することがわかった。
【0253】
結果により、毎日または一週間に3回いずれかで、すべての用量で、IL−6の同時投与が、繊維/神経機能のタキソール−誘導欠損を効果的に予防することが示される。結果はまた、低用量のIL−6同時投与の効果的な保存効果が、4−MC同時投与のものよりも有意であることも示している(図28)。
【0254】
実施例15:感覚機能−ホットプレート試験
ラットを、52℃にて維持した加熱−プレート上、17cm高および21cm直径のガラスシリンダーの内部に入れた(Medite OTS 40、Microm、Francheville、Rhone、France)。動物の行動、とりわけ、足をたたくこと、および調節飛躍を観察した。足をたたく前、または熱から逃げるためのジャンプ前(調節飛躍)の潜時を記録した。温度痛を感じるのに必要な時間は、温度感受性に関連し、温度感受性が変わったときに、増加する傾向にある。
【0255】
実施例16:運動神経協調試験
運動神経協調を、5.5cm直径の100cm−長水平木製ロッド、このロッド上1mの距離をカバーするための、テーブル上40cmの一端においたラットによって取られた時間を測定することを含む走行試験を用いて査定した。3回の試験(最大期間:各60s)を実施し、平均値を計算し、特性値として保持した。動物が骨折した場合、60sの最大値でスコア化した。
【0256】
実施例17:筋電図検査法(EMG)
電気生理学的レコーディングを、Neuromatic 2000M筋電図検査法(EMG)(Dantec,Les Ulis,France)を用いて実施した。ラットを、60mg/kg塩化水素ケタミン(Imalgen 500(登録商標)、Rhone Merieux,Lyon,France)のIP注射によって麻酔した。通常の体温を、加熱ランプで30℃周辺に維持し、尾表面上においた、コンタクト温度計(Quick,Bioblock Scientific,Illkirch,France)を用いて確認した。
【0257】
M波シグナルの化合物筋肉活性電位(CMAP)(または電気的に誘因された筋肉電位)を、坐骨神経の刺激後、腓腹筋内で記録した。M波は、筋肉繊維の活性電位のあいだに発達する電流を反映する。参照電極および活性ニードルを、後足に配置した。グラウンドニードルをラットの下背上に挿入した。坐骨神経を、最大上強度にて、単一0.2msパルスで刺激した。運動神経波の速度を記録し、msで表した。
【0258】
感覚神経伝導速度(SNCV)もまた記録した。尾皮膚電極を以下のように置いた。尾のベースにて挿入した参照ニードル、および尾の先端に向かう参照ニードルから30mmはなして配置した陽極ヌードル。グランドニードル電極を、陽極と参照ニードルあいだに挿入した。尾神経を、12.8mAの強度にて、一連の20パルス(たとえば、0.2ms)で刺激した。速度をm/sで表した。
【0259】
H−波反射を、坐骨神経の刺激の後、後足パッド筋肉内で記録した。参照電極およびグランドニードルを、ラットの下背においた。坐骨神経を、最大刺激強度で、単一0.2msパルスで刺激した。H波の振幅(mV)および動物ラッキングH波応答が、研究したパラメータであった。
【0260】
実施例18:形態学的解析
ビンクリスチンとともに、形態学的解析を、群あたり3匹の動物で、ビンクリスチン投与の終了後2週間で実施した。動物を、100mg/kg Imalgene 500(登録商標)のIP注射によって麻酔した。坐骨神経の5mm−切片を摘出し、リン酸緩衝食塩水(PBS)(pH=7.4)中の4% グルタルアルデヒド(シグマ、L’Isle d’Abeau−Chesnes,France)で一晩固定化し、30%スクロース中で維持し、さらなる処理まで、4℃にて保存した。使用する時点で、神経試料を、PBS中1% オスミウム テトラオキシド(シグマ、L’Isle d’Abeau−Chesnes,France)内で2時間、後固定し、連続アルコール溶液中で脱水し、Epon内に埋包した。埋包組織をついで、3日間、70℃にて置き、組織ワックスの重合化を可能にした。1.5μm圧の断面を実施し、1%トルイジン ブルー溶液(シグマ、L’Isle d’Abeau−Chesnes,France)にて2分間染色し、脱水し、Eukitt上にマウントした。試料あたり12切片を、光学顕微鏡(ニコン、東京、日本)を用いて試験し、半自動デジタルイメージ解析ソフトウェア(バイオコム(Biocom)、フランス)を用いて解析した。繊維直径(a)、軸索直径(b)、およびミエリン厚(c)を、以下で図解したように測定した。
【0261】
実施例8でのシスプラチン治療のために、形態学的解析を、群あたり3匹の動物で、実験の最後(週6)に実施した。神経切片あたりの繊維の総数を、各試料の3つの無作為化スライスから得た。計数を、スライスあたり2つの選択した視野上で実施した。
【0262】
実施例13でのシスプラチンのために、形態学的解析を、群あたり3匹の動物で、23および44日で実施した。各神経切片の全表面上の、変性および未変性繊維の数を、ブラインド様式で、オペレーターが計数した。すべての結果(比値としてあらわしたデータを除く)は、対照値に関して、変化の割合として報告した。
【0263】
実施例19:データ解析
すべてのデータを、平均値±SEMとして報告した。統計学的解析を、ウインドウズのためのStatview(SAS インスティテュート社(Institute Inc.))を用いて実施した。2つの治療群(対照対ビヒクル)からのデータの比較を、対応のないステューデントt−検定を用いることによって実施した。2つ以上の治療群からのデータを、Anova、続いて多重比較試験のためのダネット検定によって解析した。データを、種々の群の変数の、時間での多重解析(すなわちデータの縦モード解析)を可能にする、Manovaによって、実験の時間経過にわたって比較し、ダネット検定を使用して、他の群から異なる群を検出した。対象の個々の時間点を、Anovaを用いることによってさらに解析した。H−波シグナルをあらわしている動物の割合を示しているデータの統計学的解析のために、0をH−波を示している動物に割り当て、1をH−波を欠く動物に割り当てた。そのような名目上データに関して、χ2−検定を使用して、統計学的解析を実施した。0.05より小さいか、または等しいp値をあらわしている統計学的解析値を、有意であるとみなした。
【0264】
実施例20:インビボでの、種々の化学療法薬物の抗−腫瘍活性における、IL−6の効果
実施例1〜14にて、IL−6治療が、ビンクリスチン、シスプラチンおよびタキソール治療いずれかで中毒化したラットでの、ニューロパシーを予防する、および遅延させたことが示された。しかしながら、化学療法薬剤による、ニューロパシーの阻害における、IL−6の活性が、悪性細胞の殺傷に関する薬剤の、化学療法的特性を改善することを含まないことを示すことが重要である。
【0265】
この問題を扱うために、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチン、タキソールのような種々の抗腫瘍薬剤、または組み合わせカルボプラチン−タキソールの抗−腫瘍活性におけるIL−6の効果を、2つの腫瘍細胞株、ヒト肺(SK−MES1)および乳(MCF7)腫瘍細胞株の培養液を用いて、インビトロで調査した。
【0266】
ヒト肺(SK−MES1)および乳(MCF7)腫瘍細胞株を、ATCCから得た。細胞株を、1% 抗生物質/抗ミコティック混合溶液(ギブコ(Gibco)、参照15240062)および10% 熱不活性化胎児ウシ血清(ギブコ、参照F7524、バッチ92K3387)を含む、ダルベッコMEM培地(ギブコ、インビトロジェン(Invitrogen)、Cergy−Pontoise,France、参照41965039)中で維持した。細胞を、95%空気中、5%CO2で、37℃にて、加湿インキュベーター中、ヌンク(Nunc)組織培養フラスコ(80cm2)中で増幅させた。
【0267】
ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンおよびタキソールの抗増殖効果におけるIL−6の効果を、実施例22にて記述したように、酸ホスファターゼ活性アッセイを用いて評価した。酵素的活性が、生細胞の数に比例することが証明されてきている(Uedaら;1994)。
【0268】
最後の複製の3日後、腫瘍細胞を、100μl/ウェルの総容量中、ウェルあたり1,500細胞(MCF7株)または3,000細胞(SK−MES1株)の密度で、96−ウェルプレート(TPP、VWR International,Fontenay−sous−bois,France)中にまき、95%空気中5%CO2、37℃にて、加湿インキュベーター中で一晩インキュベートした。細胞培養液をついで、ビンクリスチン(10nM)、シスプラチン(2.5mM)、カルボプラチン(25mM)、タキソール(MCF7細胞のために30nM、SK−MES1細胞のために50nM)、またはシスプラチン(10mM)とタキソール(10nM)の混合液を、細胞培養培地中に加えることによって、中毒化した。(1.8mg/ml、pH:7にて、緩衝溶液中)IL−6を、すぐに、0、3、12、50または200ng/mlの濃度で加えた。
【0269】
中毒化の開始4日後、各細胞培養液中の酸ホスファターゼ活性(実施例21)を査定した。
【0270】
結果によって、両方の腫瘍細胞株において、ビンクリスチン(10nM)、シスプラチン(2.5μM)およびカルボプラチン(25μM)が、対照未処理細胞培養液と比較して、細胞の増殖において、有意な減少(約50%)を誘導した(p<0.001、フィッシャー検定)(それぞれ図30−1 A、B、C、D、図30−2 I、J)。IL−6の存在で、ビンクリスチンまたはシスプラチンまたはカルボプラチン処理MCF7細胞の生存、ビンクリスチン−シスプラチンまたはカルボプラチン中毒化細胞の生存は有意に変化しなかった(p>0.05、One−way Anova)(それぞれ、図30−1 A、C、図30−2 I)。IL−6の存在下、ビンクリスチンまたはシスプラチン治療SK−MES1の生存は、有意に変化しなかった(p>0.05、One−way Anova)(それぞれ、図30−1 B、D)。一方、カルボプラチン−中毒化SK−MES1細胞は、IL−6の存在下、有意な(p£0.001、One−way Anova)生存の減少を示した(図30−2 J)。
【0271】
タキソール(30nM)が、MCF7細胞株の生存において、約55%減少を誘導した(p£0.001、フィッシャー検定)(図30−2 E)。発生した本濃度のタキソールの細胞毒性が、SK−MES1細胞中でわずかに増強され、生存の約70%の減少を示している(図30−2 F)。MCF7またはSK−MES1細胞両方で、IL−6での処理が、細胞増殖におけるタキソールの効果を変化させなかった(p>0.05、One−way Anova)(それぞれ図30−2 EおよびF)。
【0272】
10μMカルボプラチンおよび10nMタキソールの組み合わせで、両方の腫瘍細胞株の型の生存において、40%の減少が観察された(p£0.001、フィッシャー検定)(図30−2 GおよびH)。カルボプラチンとタキソールの組み合わせで中毒化させた両方の型の細胞株の生存は、IL−6の存在下で変化ないままであった(p>0.05、One−way Anova)。
【0273】
以上の実験において、IL−6と種々の化学療法薬剤間のインビトロでの可能性のある薬物相互作用を査定した。インビトロでの結果によって、IL−6が、試験した種々の化学療法薬剤の抗腫瘍活性を改善しなかったことが示された。
【0274】
実施例21:インビボでのシスプラチンの抗腫瘍活性におけるIL−6の効果
以下の実験を、インビボでの、IL−6と化学療法薬剤間の、可能性ある薬物相互作用を確認するために実施した。この目的のために、ヌードマウスでの、ヒトWiDr大腸がん増殖における、IL−6の、単独および/またはシスプラチンとの組み合わせでの効果を評価した。
【0275】
ヒトWiDr大腸がん腫瘍細胞の増殖に関して、影響を受けやすい宿主型であることが証明されているので、Balb/cヌードマウスを使用した。WiDr細胞は、National Cancer Research Institute Genova−Italyのバンクより提供された。細胞種:ヒト78週齢メス、組織:大腸、がん:大腸アデノカルシノーマ、受け入れ番号:ICLC HTLO00003。
【0276】
WiDr細胞を、連続培養液中の培地DMEM+2mM グルタミン+10% FBS中で培養し、単層、上皮形態として増殖させた。
【0277】
64匹のメスBalb/cヌードマウスを、チャールズリバー(Charles River)Italia S.p.A.,Via Indipendenza 11−w22050 CALCO(Lecco)より購入した。前処理順応期間のあいだ、動物を毎日臨床的に観察した。
【0278】
動物を、それぞれ28℃±2および55%±10の温度および相対湿度で、換気薄板状フローキャビネット内でかった。一時間あたり、およそ15〜20空気変化をした。部屋を、12時間サーカディアン周期(7a.m.−7p.m.)で、人口光線によって証明した。
【0279】
各ケージには3匹以上のマウスをいれなかった。各ケージに、実験番号、群、動物数、実験開始日および接種日を含むラベルを貼った。ケージおよび寝具および飲用ボトルを、各ケージ交換の前に、オートクレーブ内で滅菌した。
【0280】
体重を、細胞注射後、4週間、一週間に2回記録した。
【0281】
腫瘍サイズを、細胞接種4日後に開始して4週間、一週間に二回記録した。
【0282】
4週間の観察期間の最後に、動物を、過剰容量のチオペンタールナトリウムのi.p.注射によって犠牲死させた。
【0283】
各Balb/cヌードマウス(約20〜25g体重)に、1日目に、107+5% WiDr細胞/マウス(細胞懸濁、0.2mL/マウス)で皮下(s.c.)で接種させた。
【0284】
ついで動物を、無作為に、群あたり8ラットで、以下の実験群に割り当てた。
【0285】
pH=7、40mMリン酸緩衝液中の0.02%マウスアルブミン(シグマ)をs.c.で与える群。(注射のために、0.9% NaCl無菌水中)3.5mg/kg シス−白金、i.p.を与える群。3、10または30μg/kgにて、(pH=7.0、40mM リン酸緩衝液中、0.02%マウスアルブミン中)IL−6、s.c.でそれぞれ処理する3つのラット群、およびシス−白金3.5mg/kg i.p.との組み合わせで、3、10または30μg/kg IL−6、s.c.のいずれかのIL−6で処理した3つのラット群。
【0286】
3、10および30mg/kgでのIL−6を、4日目から18日目まで、毎日s.c.(10mL/kg)与えた。シス白金(シグマ)3.5mg/kg(10mL/kg)i.p.を、細胞注射の後、4、8、12および18日にのみ与えた。腫瘍サイズを、細胞接種4日後に開始して、4週間、一週間に二回記録した。腫瘍容積(mm3)を方程式(Geran R.I.ら、Cancer Chemotherapy Reports(1972)Part 3,3(2):51):腫瘍容積(mm3)=(長直径)×(短直径)2/2にしたがって推定した。
【0287】
得られた結果により、4、8、12および18日に、3.5mg/kgにて投与したシスプラチンが、腫瘍増殖および抗−増殖効果を減少可能であったことが示される(図31)。シスプラチンの効果は、シスプラチンを中断した後維持された。有意な腫瘍阻害が、18日(p<0.05)、22日(p<0.01)および25日(p<0.001、one−way ANOVA、続いてターキー検定)にて達成された。
【0288】
4日目から18日目までの、皮下経路による毎日の、2、10および30μg/kgでの IL−6のみの投与は、腫瘍の増殖に有意な影響を与えなかった(図32)。IL−6のシスプラチンとの組み合わせが、結果として、シスプラチンのみの治療と似たような阻害腫瘍増殖となった(図33)。
【0289】
結論として、単独またはシス白金との組み合わせでの、IL−6は、WiDr細胞腫瘍増殖、またはシス−白金の化学療法活性いずれも干渉しなかった。
【0290】
実施例22:ホスファターゼアッセイ
培養培地の除去の後、細胞を、リン酸緩衝食塩水(PBS、ギブコ(Gibco)、参照14190−094)でリンスし、さらに、0.1mol/l酢酸ナトリウム(pH5.5)、0.1% Triton X100(シグマ、参照T9284)および10mmol/l リン酸p−ニトロフェニル(シグマ、参照N9389)を含む100μlの緩衝液中、37℃にて90分間インキュベートした。反応を、10μlの、1mol/l、水酸化ナトリウム溶液(Laboratoire de Produit Chimjiques de la Robertsau,Strasbourg,France;参照28.252.293)の添加によって停止させた。着色溶液の吸収を、マイクロプレートリーダー(Labsystems Multiskan Bichromatic,EST−LAB,Strasbourg,France)中、405nmにて測定した。
【0291】
結果を、対照細胞培養液の光学密度の割合としてあらわした。カラムの高さは、2つの独立した培養液からの、5〜6ウェルの割合の、平均値±SEMをあらわしている。
【0292】
データの広範囲の解析を、変数の一方解析を用いて実施した(Anova)。適用可能である場合、フィッシャーのPLSD検定を、多重対比較のために使用した。有意さのレベルは、p<0.05に設定した。
【0293】
実施例23:組換え体ヒトIL−6産出
組換え体ヒトIL−6(r−hlL−6)を、遺伝子工学的に改変したチャイニーズ ハムスター卵巣(CHO)細胞内で産出させた。産出工程は、ワーキング細胞バンク(WCB)からの細胞の増殖と拡張で始まり、r−hlL−6が培養培地中に分泌される条件下で続けられる。r−hlL−6を、改変細胞の培養培地から回収し、精製した。純度は99.6%以上であり、強度は、23.3×106IU/ml(Van Damme J,Van Snick J.Dev Biol Stand.1988:69:31−8の、IL−6のハイブリドーマ増殖因子(HGF)活性に基づく)であった。
【図面の簡単な説明】
【0294】
【図1】ラットの体重における、ビンクリスチン、表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与の効果を示す。平均値±s.e.m.
【図2】ビンクリスチン−誘導運動神経協調欠損の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットでの、歩行試験の結果を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図3】ビンクリスチン−誘導傷害受容欠損の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットでの、ホットプレート試験の結果を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図4】繊維/神経機能のビンクリスチン−誘導機能障害の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットでの、化合物筋肉活性電位(CAMP)の振幅を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図5】繊維/神経機能のビンクリスチン−誘導機能障害の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットでの、CAMPの潜時を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図6】繊維/神経機能のビンクリスチン−誘導機能障害の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットでの、感覚神経伝導速度(SNCV)を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対対照/ビヒクル;ダネット検定)
【図7】繊維/神経形態のビンクリスチン−介在障害の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットから回収した、坐骨神経の線維直径を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図8】繊維/神経形態のビンクリスチン−介在障害の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットから回収した、坐骨神経の軸索直径を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図9】ミエリンのビンクリスチン−介在欠損の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットから回収した、坐骨神経のミエリン厚を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)
【図10】ビンクリスチン介在線維変性の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットから回収した、試料中の変性線維の割合を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図11】ラットの体重における、シスプラチン、表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与の効果を示す。平均値±s.e.m.。
【図12】シスプラチン誘導傷害受容欠損の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットからの、ホットプレート試験の結果を示す。*p<0.05(対 シスプラチン/ビヒクル)。
【図13】繊維/神経機能のシスプラチン−誘導機能障害の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチンン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットでの、H波の振幅を示す。*p<0.05(対 シスプラチン/ビヒクル)。
【図14】繊維/神経機能のシスプラチン−誘導機能障害の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットでの、SNCVを示す。平均値±s.e.m *p<0.05(対 シスプラチン/ビヒクル)。
【図15】繊維形態のシスプラチン−誘導障害の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットから回収した、坐骨神経の繊維直径を示す。
【図16】神経形態のシスプラチン−誘導障害の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットから回収した、坐骨神経の軸索直径を示す。
【図17】ミエリンのシスプラチン−誘導欠損の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットから回収した試料中の、有髄線維の割合を示す。
【図18】シスプラチン−誘導線維変性の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットから回収した、試料中の変性線維の割合を示す。
【図19】傷害受容欠損のシスプラチン−仲介誘導の改善によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットからの、ホットプレート試験の結果を示す。
【図20】繊維/神経機能のシスプラチン−誘導機能障害の改善によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチンン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットでの、振幅H波を示す。
【図21】繊維/神経機能のシスプラチン−誘導機能障害の改善によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットでの、SNCVを示す。
【図22】ラットのシスプラチン−処置群から回収した試料中のミエリン面積の変化を示す。
【図23A】ラットのシスプラチン−処置群から回収した試料中の変性線維の変化を示す。
【図23B】ラットのシスプラチン−処置群から回収した試料中の、非変性線維における変化を示す。
【図24】ミエリンのシスプラチン−誘導欠損の改善によって明らかにされた、シスプラチン−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、シスプラチン−処置ラット、およびIL−6または4−MCを投与したシスプラチン処置ラットから回収した試料中の、ミエリン面積を示す。
【図25】シスプラチン−処置ラット、およびIL−6または4−MCを投与したシスプラチン処置ラットから回収した試料中の、大/小繊維比のシスプラチン仲介変化の改善によって明らかにされた、シスプラチン−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。
【図26A】シスプラチン−誘導線維変性の改善によって明らかにされた、シスプラチン−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、シスプラチン−処置ラット、およびIL−6または4−MCを投与したシスプラチン処置ラットから回収した試料中の、変性線維の変化を示す。
【図26B】シスプラチン−誘導線維変性の改善によって明らかにされた、シスプラチン−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、シスプラチン−処置ラット群、およびIL−6または4−MCを投与したシスプラチン処置ラットから回収した試料中の、非変性線維の変化を示す。
【図27】タキソール−誘導線維変性の改善によって明らかにされた、タキソール−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、タキソールで処置したラット、およびIL−6または4−MCを投与したタキソール−処置ラットにおける、H−波潜時を示す。
【図28】H−波の振幅の減少の予防によって明らかにされた、タキソール−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、タキソールで処置したラット群、およびIL−6または4−MCを投与したタキソール−処置ラットにおける、H−波の振幅を示す。
【図29】タキソール仲介SNCV減少の予防によって明らかにされた、タキソール−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、タキソールで処置したラット、およびIL−6または4−MCを投与したタキソール−処置ラットにおける、SNCVを示す。
【図30−1】MCf−7またはSK−MES1細胞中の、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンおよびタキソールの抗増殖効果対するIL−6の効果を示す。A−MCF7−ビンクリスチン、B−SK−MES−1−ビンクリスチン、C−MCF−7−シスプラチン、D−SK−MES1−シスプラチン。
【図30−2】MCf−7またはSK−MES1細胞中の、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンおよびタキソールの抗増殖効果に対するIL−6の効果を示す。E−MCF7−タキソール、F−SK−MES1−タキソール、G−MCF7−タキソール+カルボプラチン、H−SK−MES−タキソール+カルボプラチン、I−MCF7−カルボプラチンおよびJ−SK−MES1−カルボプラチン。
【図31】ヌードマウスにおける、ヒトWiDr結腸癌腫瘍増殖における、シス−プラチナの効果を示す。
【図32】ヌードマウスにおける、ヒトWiDr結腸腫瘍増殖における、IL−6(アテキサキン アルファ)の効果を示す。
【図33】ヌードマウスにおける、ヒトWiDr結腸腫瘍増殖における、シス−プラチナとの組み合わせでの、IL−6(アテキサキン アルファ)の効果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学療法誘発性ニューロパシー(CIPN)におけるIL−6の使用に関する。より具体的には、本発明は化学療法誘発性ニューロパシーの治療および/または予防のための、低用量のIL−6の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
末梢性ニューロパシーは、神経の、またはミエリン鞘の損傷に起因する末梢神経系の疾患の集合である。損傷は長期化し、通常、きっかけの傷より長く続く(outlasting)。
【0003】
化学療法誘発末梢性ニューロパシー(CIPN)は、多くの細胞毒性薬物のよく知られた、潜在的な身体を不能にする副作用(disabling side effect)である。化学療法誘発性ニューロパシーは、蓄積用量または用量−強度に関係する(Verstappen et al.2003 Drugs 63:1549−63)。
【0004】
現在、CIPNは、用量減少によってのみ緩和されるが、これは、化学療法治療の効果を減少させ得る。糖尿病、遺伝性ニューロパシー、または神経毒性化学療法での早期治療によって、神経因性症状をすでに持つ患者は、CIPNの発症をより受けやすいと考えられる。
【0005】
ビンカ−アルカロイド類(たとえば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、白金系化合物類(たとえばシスプラチン)およびタキサン類(パクリタキセルおよびドセタキセル)が、末梢神経毒性を誘導する最も重要な薬物の一群である(Visovsky C.Cancer Invest.2003 Jun;21(3):439−51)、Quasthoff S,Hartung HP J Neurol.2002 Jan;249(1):9−17.総説)。これらの薬物は、卵巣癌、乳癌、および血液性癌のような、種々の悪性物の治療のために広く使用されている(Verstappen et al.2003 Drugs 63(15):1549)。
【0006】
ビンクリスチン−駆動ニューロパシーは、主に、運動神経および感覚神経不全(ニューロパシーの混合型)によって特徴付けられる。関与する機構がいまだ完全に理解されてはいないが、最終的に軸索変性を導く、順行性軸索輸送の変化が関与することが記述されてきている。現在までのところ効果的な治療法が開発されてきていないので、ビンクリスチン−駆動ニューロパシーの治療は、現在一時しのぎのみである。
【0007】
シス−ジクロロジアミン白金(シスプラチン)は、生殖細胞がんの治療のために選択される薬物である。これはまた、他の固形癌に対しても併用されるが、投与可能な総量が、腎臓毒性および末梢性ニューロパシーなどの重篤な副作用によって制限される。用量を制限する、ニューロパシーの発生は、塩化利尿薬によって有意に減少した。末梢性ニューロパシーの問題は、この薬物の導入後すぐに現れる。ニューロパシーは用量を限定し、総蓄積薬物用量に非常に関連する。有意な末梢神経毒性が、>400〜500mg/m2のシスプラチンを受けた成人患者の大部分においてみられる。ニューロパシーは遠位先端での、知覚障害(バーニング、プリックリング、蟻走感のような異常な感覚)の初期病状を持つ、主に感覚的なものである。神経病理学研究によって、大有髄繊維の欠損および軸索編成の兆候が示された。ニューロパシーは、シスプラチンの停止後、数ヶ月間進展し続けえ、症状が、化学療法の最後の投与後、3〜8週間発達し得る(Thompsonら、(1984)Cancer.54(7):1269−75)。白金が蓄積する組織をモニタする、組織白金アッセイの研究によって、腫瘍組織中で、もっとも高い白金濃度が明らかになったが、同様に、末梢神経組織でも、高い濃度が見られた。一方、脳内では非常に低濃度であった。シスプラチンで処理したがん患者での、電気組織学的研究によって、大直径感覚軸索が関与することが確認される。
【0008】
タキソールは、悪性メラノーマおよび卵巣がんのような固形がんの治療において、非常に利用される、効果的な化学療法薬剤である。それにもかかわらず、タキソールによって引き起こされる末梢性ニューロパシーが、がんの治療において、ますます、用量を制限する問題となってきている(Rowinsky E.K.,Chaudhry V.,Cornblath D.R,Donehower R.C.Neurotoxicity of taxol(1993).Monogr.Natl.Cancer Inst.107−115)。タキソールは、チューブリンサブユニットへの結合を介して、微小管動力学を抑制する、植物アルカロイドであり、分裂細胞における核分裂停止(Derry W.B,Wilson L.,Jordan M.A.Substoichiometric binding of taxol suppresses microtubule dynamics(1995)Biochemistry 34:2203−2211)、および軸索輸送の干渉によって、末梢神経における軸索変性(Rowinskyら、1993)を引き起こす。結果としてのニューロパシーが、主に小感覚神経線維に影響を与え、またより高い用量で、運動神経および大感覚神経線維不全が起こる(Freilich R.I.、Balmaceda C.,Seidman A.D.,Rubin M.,DeAngelis L.M.Motor neuropathy due to docetaxel and paclitaxel(1996).Nutr.Rev.47:115−118)。
【0009】
一般的に、末梢性ニューロパシーの治療は、全身性であり、神経への損傷を根底におく有益な効果はない(Peltier AC,Russell JW.Recent advances in drug−induced neuropathies.Curr Opin Neurol.2002 Oct;15(5):633−8)。たとえば、ピリドキシン(ビタミンB6)は、末梢神経損傷に続く栄養サポートの方法として使用され、抗酸化剤類(たとえば、ガンマ−リノール酸、アルファリポ酸、およびPKC阻害剤およびアルドース還元酵素阻害剤)が、末梢性ニューロパシーに関与し得る毒素を排除するために使用され、抗けいれん剤が、痛み症状を抑制するために使用される。ビタミンB1、ビタミンB12、グルタミン酸(Boyle et al. J Pharmacol Exp Ther. 1996 Oct;279(1):410−5)、イソアキソニン(Le Quesne et al.,J Neurol Neurosurg Psychiatry.1985 Sep;48(9):933−5)、ガングリオシドまたは神経成長因子(Hayakawa et al.,Life Sci.1994;55(7):519−25.4;Lewis et al.Exp Neurol.1993 Nov;124(1):73−88.)のような推定される神経保護薬剤を用いる、ビンクリスチン−ニューロパシーを予防する試みは、ある程度の成功を示している。
【0010】
とりわけ、化学療法誘発性ニューロパシーの治療のための共通のアプローチには、以下の、化学療法薬剤の用量および期間制限、および神経増殖因子(NGF)およびグルタミンの利用が含まれる(Peliter AC,Russell JW.Recent advances in drug−induced neuropathies.Curr Opin Neurol.2002 Oct;15(5):633−8)。
【0011】
4−メチルカテコール(4−MC)は、坐骨神経再生において、および糖尿病性ニューロパシーの2つの実験モデルにおいて、有益な効果を持つ、カテコール誘導体である[Hanaokoa and Ohi J.Neurolog.1994 122,28−32、およびSaitaら、J.Pharmacol.Exp.Ther.1996,276,231−237]。4−メチルカテコール(4−MC)のようなカテコール誘導体は、インビトロおよびインビボにて、培養星状細胞からの、神経増殖因子(NGF)の産出を刺激し[Takeuchiら、FEBS Lett 1990,261,63−66]、ラットにて、脳−由来神経栄養因子(BDNF)を誘導する[Nittaら、J.Pharmacol.Exp.Ther.1999,291,1276−83]。しかしながら、反応性化学物質であり、治療濃度にて、多数の副作用または薬物−薬物相互作用を産出し得るので、カテコール類の治療的な有用性は明らかではない(Schweigertら、2001 Environmental Microbiology Volume 3 Issue 2 Page 81)。
【0012】
IL−6は、炎症促進サイトカインとしてのみでなく、抗炎症サイトカインとしても働く(Jonesら、FASEB J.2001 Jan;15(1):43−58.Review)。IL−6の機能的特性は非常に広く、本サイトカインを記述するために本来使用した用語によって反映される(Horst Ibelgaufts’ COPE:Cytokines Online Pathfinder Encyclopaedia)。
【0013】
2つのタンパク質、IL−6受容体(IL−6R)およびgp130がIL−6に結合する(Hiranoら、Stem Cells.1994 May;12(3):262−77.総説によって概説された)。gp80の細胞外ドメインに相当する、可溶型IL−6R(sIL−6R)は、血液および尿内で糖タンパク質として見出されるヒト体内の天然の産物である(Novickら,J Chromatogr.1990 27;510:331−7およびCytokine.1992 Jan;4(1):6−11)。sIL−6R分子の例外的特性は、これらが、ヒト細胞を含む種々の細胞に、IL−6の強力なアゴニストとして作用することである(Taga et al,Cell.1989 Aug 11;58(3):573−81.Novick et al.1992 Jan;4(1):6−11)。gp80の細胞質内ドメインなしでさえ、sIL−6Rは、IL−6に応答してgp130の二量体化を引き起こすことができ、言い換えれば、続くIL−6−特異的シグナル伝達および生物学的効果を仲介する(Murakami Science.1993 Jun 18;260(5115):1808−10)。sIL−6Rは、gp130との二種類の相互作用を有し、その両方がIL−6特異的生物学的活性に必須である(Halimi et al.,Eur Cytokine Netw.1995 May−Jun;6(3):135−43)、活性IL−6受容体複合体が、2つのgp130鎖、2つのIL−6Rおよび2つのIL−6リガンドによって形成される六量体構造であることが提案された(Ward et al.,1994;Paonessa et al,EMBO J.1995 May 1;14(9):1942−51)。
【0014】
限定的細胞分布を有する同起源IL−6Rの発現(Jonesら.2001)とは異なり、膜貫通全gp130の発現は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、肺、胎盤および脳などのほとんどすべての器官で見られる(Saitoら、J Immunol.1992 Jun 15;148(12):4066−71)。
【0015】
可溶性IL−6Rが投与されない限り、IL−6単独では特定の活性を誘導しないことを示す、多くの異なる実例が存在する。たとえば、IL−6は、sIL−6Rと組み合わせた場合のみ、マウス骨髄および骨芽細胞の共培養中で、骨芽細胞形成を誘導する(Jones et al.2001)。また、多くの神経細胞がIL−6を産生可能であるが、これらは、IL−6自身による刺激に対して応答しない。しかしながら、神経細胞の分化および生存は、sIL−6Rの作用を介して仲介され得る(Hirota J Exp Med.1996 Jun 1;183(6):2627−34.Martz Cheng,J.−G.,Gadient,R.A.,Patterson,P.H.,Stoyan,T.,Otten,U.,Rose−John,S.(1998)Sympathetic neurons can produce and respond to interleukin−6.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95,3251−3256)。
【0016】
健常被験者におけるsIL−6R(アンタゴニスト)の循環濃度は、比較的高く、可溶性gp130(IL−6の天然アンタゴニスト)の濃度、10ng/ml以上に匹敵する(Corbiら 2000 Eur J Cardiotherac Surg.18(1):98−103,DisthabanchongらClin Nephrol.2002 Oct;58(4):289−95)。反対に、IL−6の循環濃度は、およそ10pg/mlまたはそれ以下である(Kado et al.1999 Acta Diabetol.Jun 36(1−2)67−72、Corbi et al 2000.)。したがって、疾患におけるsIL−6Rとの同時投与なしでの、インビボでのIL−6の単独投与の効果は、有効かもしれないし、有効でないかもしれず、特定の疾患、および体内の特定の場所における、可溶性アゴニスト/アンタゴニストの濃度に依存する。
【0017】
可溶性IL−6受容体とIL−6とを一緒に連結するキメラ分子が記述された(Chebath et al.Eur Cytokine Netw.1997 Dec;8(4):359−65)。これらは、IL−6R/IL−6キメラと名付けられた。キメラIL−6R/IL−6分子は、可溶性IL−6受容体(sIL−6R)およびIL−6をコードしているcDNAsの全コード領域を融合することによって産出された。組換えIL−6R/IL−6キメラは、CHO細胞内で産生された(Chebath et al,Eur Cytokine Netw.1997,国際公開第99/02552号パンフレット)。IL−6R/IL−6は、sIL−6RとIL−6の混合物で行なうよりも、インビトロにおいてgp130鎖により高い効率で結合する(Kollet et al,Blood.1999 Aug 1;94(3):923−31)。
【0018】
上述したように、インターロイキン−6シグナリングは、gp130の、リガンド−レセプター複合体へのホモ二量体化を介して促進される。細胞内シグナル伝達が続いて、gp130−結合細胞質チロシンキナーゼ(JAK1、JAK2、およびTYK2)の活性化、およびSTAT1およびSTAT3のリン酸化を介して誘発される(Murakamiら、Science.1993 Jun 18;260(5115):1808−10.Gerhartzら、J Biol Chem.1996 May 31;271(22):12991−8)。反対に、LIF、OSMおよびCNTFの高親和性レセプターは、gp130とgp130−関連タンパク質(LIFレセプター)間のヘテロ二量体化によって細胞を活性化する(Davisら、Science.1993 Jun 18;260(5115):1805−8)。そのような、ホモ−またはヘテロ二量体は、細胞質チロシンキナーゼのJak−Tykファミリーを介して、異なるが、重なり合うパターンのチロシンリン酸化を活性化する(Boultonら、J Biol Chem.1994 Apr 15;269(15):11648−55)。これは、このタンパク質のファミリーに関連した、異なる細胞応答に寄与し得る。
【0019】
糖尿病−誘発末梢性ニューロパシーの動物モデルにおける、可溶性IL−6Rなしでの、組換えIL−6単独の治療効果は、特許出願、国際公開第03033015号パンフレットにて開示されている。しかしながら、化学療法誘発末梢性ニューロパシー(CIPN)のような異なる型の末梢性ニューロパシーにおいて、可溶性IL−6Rなしでの、単独で投与されるIL−6が、治療的および/または予防的効果を示し得るかどうかは明らかでない。
【0020】
骨髄異形成症候群およびトロンボサイトペニアの患者での、hrIL−6の第I相臨床試験において、許容された最大用量は、3.75μg/kg/dであることがわかった(Gordonら、Blood 1995 85(11):3066−76)。
【0021】
毒性を排除するであろう、低用量のIL−6が、化学療法誘発性ニューロパシーを予防すること、および/または治癒すること、および/または改善することにおいて、効果的であるかどうか、不明である。
【0022】
他のgp130活性物である、組換え体白血病阻害因子(LIF)が、神経速度、振幅およびH−反射潜時、振動知覚閾値および症状スコアに基づく、複合末梢神経電気生理学(CPNE)スコア(2003、ASCO annual meeting Abstract number 2976)によって査定した、カルボプラチン/パクリタキセルによって引き起こされるCIPNを予防するための、臨床試験にて試験された。これらの研究において、2または4μg/kg LIFのいずれかを、カルボプラチン/パクリタキセルの前日に開始して、7日間、毎日、ほぼ同時に与えた。臨床試験の結果によって、LIFが、試験した用量およびレジメにて、CIPNを予防することにおいて、効果を持たないことが示唆された。
【0023】
したがって、広範囲の化学療法によって引き起こされる、末梢性ニューロパシーを予防する/治療するための、新規の薬物/戦略が必要である。
【発明の開示】
【0024】
本発明は、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための医薬の製造のための、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の使用に関する。
【0025】
本発明の1つの実施様態において、化学療法誘発末梢性ニューロパシーは、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンまたはタキソールのような、少なくとも1つの化学療法薬剤によって引き起こされる。
【0026】
本発明のさらなる実施様態において、化学療法薬剤は、カルボプラチンおよびタキソールの混合からなる。
【0027】
本発明のさらなる実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量は、4〜210μgの範囲、好ましくは7〜140μgの範囲、または約4、7、14、28、70または140μgである。
【0028】
本発明の1つの実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩は、1つ以上の部位でグルコシル化され、一方、本発明の他の実施様態においては、IL−6はグルコシル化されない。
【0029】
本発明のさらなる実施様態において、IL−6の機能性誘導体は、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に結合した、ポリエチレングリコールのような、少なくとも1つの化学部位を含む。
【0030】
1つの観点において、本発明は、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための医薬の製造のための、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、活性画分または円順列誘導体を産出する組換え細胞の使用を提供する。
【0031】
他の観点において、本発明は、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための医薬の製造のための、IL−6のコード配列を含みかつ低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、活性画分または円順列誘導体を発現可能である、レンチウイルスベクターのような、ベクターの使用を提供する。
【0032】
さらなる観点において、本発明は、医薬の製造のための、ビンクリスチン、カルボプラチン、タキソールまたは化学療法薬剤の混合物などの少なくとも1つの化学療法薬剤との、好ましくは、カルボプラチンとタキソールの混合物との、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、または活性画分の組み合わせの使用を提供する。
【0033】
本発明の1つの実施様態において、前記組み合わせ中の、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩は1つ以上の部位でグルコシル化される。
【0034】
本発明の他の実施様態において、前記組み合わせ中の、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩はグルコシル化されない。
【0035】
本発明のさらなる実施様態において、前記組み合わせ中のIL−6の機能性誘導体はグルコシル化されず、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に結合した、ポリエチレングリコールのような、少なくとも1つの化学部分を含む。
【0036】
1つの観点において、本発明は、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を、少なくとも1つの化学療法薬剤での処理下または処理前に、患者に投与することを含む、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの治療および/または予防方法を提供する。
【0037】
本発明による治療における、治療および/または予防方法のさらなる実施様態において、患者は、化学療法誘発末梢性ニューロパシーを受ける高リスク患者、または循環中、高レベルのIL−6レセプターを示す患者である。
【0038】
本発明の方法のさらなる実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩は、毎日、または1週間、少なくとも2週間に3回投与される。
【0039】
本発明の方法のまたさらなる実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩は、皮下に投与される。
【0040】
本発明の方法のまたさらなる実施様態において、低用量のIL−6のIL−6投与は、内因性遺伝子活性化(EGA)によって、IL−6を産出している組換え細胞の投与によって、またはIL−6を発現可能な、レンチウイルスのようなベクターによって、影響を受ける。
【0041】
1つの観点において、本発明は、患者における、化学療法誘発末梢性ニューロパシーを予防するために、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩を投与することを含む、化学療法薬剤での治療下、または治療の前の、患者への少なくとも1つの化学療法薬剤の用量を増加させるため、および/または投与を延長するための方法を提供する。
【0042】
本発明の前記方法のさらなる実施様態において、IL−6は、化学療法薬剤の前、あいだ、および/または後のいずれかで投与される。
【0043】
本発明の方法のさらなる実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量は、0.06〜3μg/kg体重、好ましくは、0.1〜2μg/kg体重の範囲であり、または約0.2、0.3、1、2または3μg/kg体重である。
【0044】
本発明の方法のさらなる実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量は、4〜210μgの範囲、好ましくは7〜140μgの範囲であり、または約4、7、14、28、70または140μgである。
【0045】
本発明はまた、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンまたはタキソールのような、少なくとも1つの化学療法薬剤、またはカルボプラチンおよびタキソールの混合のようなこれらの混合物との、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、または活性画分の組み合わせと、薬学的に許容され得る担体を含む、医薬組成物も提供する。
【0046】
本発明のさらなる実施様態において、医薬組成物中の、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体、または塩は、1つ以上の部位で、グルコシル化されるか、またはIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体、または塩は、グルコシル化されない。
【0047】
本発明のさらなる実施様態において、医薬組成物中のIL−6の機能性誘導体は、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に結合した、ポリエチレングリコールのような、少なくとも1つの化学部位を含む。
【0048】
本発明のさらなる実施様態において、医薬組成物はさらに、神経増殖因子(NGF)またはグルタミンのような、神経保護薬物を含む。
【0049】
さらにとりわけ、本発明の1つの実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量は、4〜210μgの範囲、好ましくは7〜140μgの範囲であり、または約4、7、14、28、70または140μgである。
【0050】
1つの観点において、本発明は、それぞれ、化学療法薬剤を含む1つ以上の容器、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を含む1つの容器、および、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための、前記化学療法薬剤と、前記IL−6の投与のための説明書、を含むキットを提供する。
【0051】
1つの実施様態において、本発明にしたがうキットには、それぞれ1つの化学療法薬剤を含む2つの容器、カルボプラチンを含む1つの容器、およびタキソールを含む他の容器が含まれる。
【0052】
本発明のキットのさらなる実施様態において、各容器内の、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量は、4〜210mgの範囲、好ましくは7〜140μgの範囲であり、または約4、7、14、28、70または140μgである。
【0053】
またさらなる実施様態において、本発明のキットにはさらに、神経増殖因子(NGF)またはグルタミンのような、神経保護薬物を含む容器が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
本発明は、化学療法誘発末梢性ニューロパシー(CINP)の治療および/または予防のための、医薬品の製造のための、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の使用に関する。
【0055】
現在、末梢性ニューロパシーの治療は、全身性であり、神経への障害に関与している、有益な効果はない。典型的に、CIPNは、用量減少によって緩和され、これは、化学療法処置の効果を減少させる。
【0056】
したがって、本発明は、CIPN発達を予防するため、および/またはいったんCIPNが確立された場合、薬物の化学療法効果を損なうことなしに、CIPNを治療および/または改善するための、実質的な進展、すなわち、低用量のIL−6の使用を示している。さらに、本発明にしたがって、低用量のIL−6を投与することによって、化学療法薬剤の増加が可能でありえ、および/または必要なときに、化学療法を延長することが可能である。たとえば、本発明は、より高濃度の化学療法の投与、および/または、たとえばより耐性および/または浸潤性腫瘍をたたくため、必要なときに現在使用されている濃度および周期数よりも多くの化学療法周期を許容し得る。
【0057】
したがって、本発明は、ビンカ−アルカロイド類(たとえば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、白金基礎化合物類(たとえばシスプラチン)、およびタキサン類(パクリタキセルおよびドセタキセル)、カルボプラチン、またはカルボプラチンとパクリタキセルのような、それらの1つ以上の薬剤の組み合わせから選択される、広範囲の化学療法薬剤による、そして低用量のIL−6の投与による、CIPNの治療および/または予防に関連する。
【0058】
本発明は、信頼性のある動物モデルで、低用量のIL−6を投与することが、CIPNを予防すること、ならびに、いったんニューロパシーが確立された場合、CIPNを治療および/または改善することにおいて効果的である、という発見に基づいている。
【0059】
たとえば、CIPNの動物モデルで実施した実験によって、IL−6の、化学療法薬剤との同時投与が、化学療法誘発性運動神経/感覚神経欠損、および神経変性を予防することが示された。使用したプロトコールによって、IL−6投与が、投与のスケジュールにかかわらず、化学療法誘発性ニューロパシーに対して保護したこと、すなわち、毎日投与に対して、一週間に3回が、化合物の神経保護効果の減少を導かなかったことが示された。
【0060】
さらに、ニューロパシーがすでに確立された動物モデルにおいて実施した実験によって、IL−6が、化学療法誘発性感覚神経欠損、繊維/神経機能の欠損、ミエリン鞘厚逆転、大/小繊維比の増加を効果的に治療および/または緩和し、および化学療法−治療によって誘導された変性繊維の割合を減少させた、ことが示された。
【0061】
げっ歯類における、造血因子としての、ヒトIL−6の活性用量が、サルにおいて10μg/kgであるのに対して、500μg/kg以上であることに注意すべきである(Herodinら、1992 Blood 80 (3)688)。したがって、ヒトIL−6は、げっ歯類よりも、霊長類において、50倍以上効果的であると考えられる。したがって、ヒト組換え体IL−6(hrIL−6)は、げっ歯類においてよりも、ヒトにおいて、50倍、または1オーダー量より効果的であるか、またはすくなくとも5倍効果的であることが予想される。本実施様態において、CIPNにおける陽性の結果が、3〜10μg/kgの範囲の用量にて見られることから、50、10および/または5倍低いヒト組換え体IL−6の用量が、ヒトにおけるCIPNを予防する/治療するために効果的であると予想される。ヒトにおける好ましい用量は、約0.06〜3μg/kgの範囲、より好ましくは、0.1〜2μg/kgの範囲、より好ましくは、約0.2、0.3、1、2および〜3μg/kgの用量である。
【0062】
あるいは、4〜210μg/患者の範囲、好ましくは7〜140μgの範囲、より好ましくは、約4、7、14、28、70または140μg IL−6/患者の範囲のような、IL−6の固定低用量を、患者の体重に関係なく投与可能である。
【0063】
要するに、得られた結果は、CIPNにおける低用量IL−6の、予防的(preventive)、予防的(prophylactic)および/または治療的価値を明らかに示している。得られた結果はまた、低用量のIL−6が、化学療法誘発性ニューロパシーを、4−MCよりも効果的に保護したことを示した。
【0064】
本明細書で使用するところの語句「治療すること/改善すること(treating/ameliorating)」は、化学療法ニューロパシー、ならびに化学療法誘発性ニューロパシーに付随する症状、疾患または合併症の、1つ以上の症状または原因を、予防すること、阻害すること、弱めること、改善することまたは無効にすること、として理解されるべきである。化学療法誘発性ニューロパシーを「治療する/改善する」場合、本発明にしたがった薬物を、疾患の開始後に与え、「予防(prevention)」は、患者において診られ得る疾患の任意の兆候の前での、薬物の投与に関する。
【0065】
予防的投与は、長時間にわたりすでに糖尿病を患っている患者、後天性免疫欠損症候群(AIDS)によって、神経因性症状をすでに持つ患者、および遺伝性ニューロパシーの患者または神経毒性化学療法での早期治療を受けた患者などのような、病気であるか、またはCIPNを受ける高リスクをもつ患者でとりわけ有用である。
【0066】
IL−6投与はとりわけ、循環中に、高レベルのIL−6レセプターを示している患者で有用である。
【0067】
語句「化学療法(chemotherapy)」は、がん細胞を殺すか、より活性を弱くする薬物での治療に関する。
【0068】
語句「化学療法誘発性ニューロパシー(chemoltherapy-induced neuropathy)」は、化学療法に付随する、または化学療法によって引き起こされる、1つ以上の症状(類)または疾病(類)、または以上のイントロダクションにて詳細に記述したような、神経に影響を与える化学療法の合併症の任意の形態に関する。
【0069】
本発明の薬物、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩(「薬物(substance)」は、シスプラチン、ジカルバジン、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、ダカルバジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イフォスファミド、メルカプトプリン、ミトタン、ストレプトゾシン、タキソールおよびまたはこれらの2つ以上の薬剤の混合物のような、種々の化学療法薬剤によって引き起こされる、末梢性ニューロパシーにおいて、使用または投与可能である。
【0070】
本発明の1つの実施様態において、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を、化学療法薬剤が、タキソール、シスプラチンおよびビンクリスチン、およびまたは、カルボプラチンとパクリタキセルのような混合物である場合に、CIPNを治療するため、および/または保護するために使用する。
【0071】
タキソールは、たとえば、約20〜250mg/m2の範囲で投与可能であり、シスプラチンは、約30〜100mg/m2の範囲で、ビンクリスチンは、約0.5〜2mg/m2の範囲で、そしてカルボプラチン/パクリタキセルは、100〜200μg/m2の範囲、好ましくは約175μg/m2にて使用可能である。化学療法は、1周期〜約6周期で与え、化学療法投与なしで、3〜4週間に分けられ得る。化学療法レジメは,WWW.ohaci.com/palm/chemopage.htm Oncology/hematology associates of central Illinoisにて見ることができる。
【0072】
本発明の薬物は、約0.06〜3μg/kg、より好ましくは、0.1〜2μg/kgの範囲、もっとも好ましくは、約0.2、0.3、1、2および〜3μg/kgの用量で、本発明にしたがって投与可能である。
【0073】
あるいは、低用量のIL−6を、たとえば、低用量で、体重に関係なく、7〜140μg/患者の範囲、好ましくは、約7、28、70または140μgIL−6/患者で投与する。
【0074】
本発明の薬物は、1つ以上の部位でグルコシル化されていてよく、またはグルコシル化されていなくてもよい。
【0075】
本発明の薬物は、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に連結した、少なくとも1つの化学部位を含む、機能性誘導体でありえ、より好ましくは、前記部位は、ポリエチレングリコール部位である。
【0076】
本発明にしたがった薬物は、本発明の薬物を発現している細胞、および/または、本発明の薬物のコード配列を含むベクター、好ましくはレンチウイルスとして投与し得る。
【0077】
通常はIL−6の発現にサイレントである細胞内で、IL−6の内因性産出を、または十分でないIL−6の発現量を誘導する、および/または増強するためのベクターがまた、本発明にしたがって企図される。ベクターは、IL−6を発現することが望ましい細胞内で機能的である、調節配列を含み得る。そのような調節配列には、プロモーターまたはエンハンサーが含まれる。ついで、調節配列を、相同組み換えによって、ゲノムの正しい座に、したがって、その発現が、誘導または増強される必要がある遺伝子と、前記調節配列を動作可能に連結して、導入する。本技術は通常、「内因性遺伝子活性化(endogenous gene activation)」(EGA)として呼ばれ、たとえば国際特許第WO91/09955号にて記述されている。
【0078】
本発明はまた、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を、任意に薬学的に許容され得る担体と一緒に、それを必要とする患者に投与することを含む、CIPNを治療する、および/または予防するための方法に関する。
【0079】
本発明はまた、すでに長時間糖尿病を患っている患者、すでに糖尿病によって、神経因性症状を持つ患者、すでにAIDSによって神経因性症状を持つ患者、および遺伝性ニューロパシーの患者、または神経毒性化学療法による早期治療を受けている患者などのような、CIPN高リスク患者を治療する方法も提供する。
【0080】
本発明はまた、循環中のIL−6Rレベルが上昇した、白血病、卵巣癌または乳癌の患者のような、がん患者におけるCIPNを治療および/または予防するための方法も提供する。
【0081】
本発明の薬物の用量は、毎日、および好ましくは1週間、少なくとも2週間あたり3回投与し得る。
【0082】
語句「用量(dose)」は、医薬品の規定量のような、一度に投与されるべき量に関する。
【0083】
本明細書で使用するところの語句「ムテイン(muteins)」は、天然に存在するIL−6の成分の1つ以上のアミノ酸残基が、本来のIL−6と比較して得られた産物の活性を著しく変化することなく、異なるアミノ酸残基によって置換されるか、または欠損するか、または1つ以上のアミノ酸残基が本来のIL−6の配列に加えられる、IL−6の類似体を意味する。これらのムテインは、公知の合成によって、および/または部位特異的変異導入技術によって、または適切な他の任意の公知の技術によって製造される。
【0084】
本発明により使用されるムテインには、ストリンジェントな条件下で、IL−6をコードするDNAまたはRNAにハイブリダイズする、DNAまたはRNAのような核酸によってコードされるタンパク質が含まれる。語句「ストリンジェントな条件」は、当業者が「ストリンジェント」として従来言及した、ハイブリダイゼーションと、それに続く洗浄条件を意味する。Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology、上記、Interscience,N.Y.,§§6.3および6.4(1987,1992)、およびSambrook et al.(Sambrook,J.C.,Fritsch,E.F.,and Maniatis,T.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)を参照のこと。
【0085】
限定はせずに、ストリンジェントな条件の例としては、試験下のハイブリッドの計算Tmより12〜20℃低い洗浄条件、たとえば、2×SSCおよび0.5% SDS 5分間、2×SSCおよび0.1% SDS 15分間、0.1×SSCおよび0.5% SDS 37℃にて30〜60分間、ついで、0.1×SSCおよび0.5% SDS 68℃にて30〜60分間が含まれる。当業者は、ストリンジェントな条件がまた、DNA配列の長さ、オリゴヌクレオチドプローブ(10〜40塩基など)、または混合オリゴヌクレオチドプローブに依存することを理解する。混合プローブを使用する場合、SSCのかわりに、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を使用することが好ましい。Ausubel 上記を参照のこと。
【0086】
そのような任意のムテインは好ましくは、IL−6と実質的に同様の、またはよりよい活性を有するような、IL−6のアミノ酸配列の十分に複製であるアミノ酸配列を有する。
【0087】
IL−6の特徴的な活性は、IL−6受容体のgp80部分への結合能力および/または肝細胞増殖を誘導能力である。ムテインが、実質的にIL−6受容体のgp80部分に結合可能であり、および/または肝細胞増殖を誘導可能である限り、実質的にIL−6と同様の活性を有するとみなすことができる。したがって、任意の所定のムテインがIL−6と少なくとも同等の活性を有するかどうかは、肝細胞にそのようなムテインを作用させ、肝細胞の増殖を誘導するかどうかを、たとえばBrdUまたは標識化メチオニンの取り込みを測定するか、または単に、未処理対照細胞およびWT IL−6にて処理した細胞と比較して細胞の数を計測するかによって決定することを含む決まりきった実験によって決定することができる。IL−6R/IL−6キメラのgp130への結合を測定するための、酵素免疫吸着法(ELISA)型のアッセイが、本明細書で参考文献として完全に組み込まれている国際公開第99/02552号パンフレットの39頁、実施例7にて詳細に記述されている。ムテインが、GP80のその結合部位に対する、実質的な結合活性を有する限り、IL−6に対して実質的に同様の活性を有すると考えられ得る。
【0088】
たとえば、マイクロタイター96−ウェルプレート(ヌンク(Nunc))を、抗−ヒトgp80モノクローナル抗体でコートし、50ng/mlのgp80を加える(両方ともR&Dシステムズ、ミネアポリスより入手)。リン酸緩衝食塩水中での洗浄の後、IL−6を、異なるウェルに、0.1〜50ng/mlの範囲の異なる濃度で加える。40℃で一晩インキュベーションした後、ウサギポリクローナル抗−IL−6を加え、続いて、ホースラディッシュ ペルオキシダーゼ共役ヤギ抗ウサギIgを加え、発色反応によって検出する(シグマ(Sigma)、セントルイス)。
【0089】
マイクロタイター96−ウェルプレート(ヌンク(Nunc))を、抗−ヒトgp80モノクローナル抗体でコートし、50ng/mlのgp80を加える(両方ともR&Dシステムズ(R&D Systems)Minneapolisより)。リン酸緩衝食塩水中での洗浄の後、IL−6を、異なるウェルに、0.1〜50ng/mlの範囲の異なる濃度で、加える。40℃での一晩のインキュベーションの後、ウサギポリクローナル抗−IL−6を加え、続いて、ホースラディッシュ ペルオキシダーゼ共役ヤギ抗ウサギIgを加え、発色反応によって検出する(シグマ、セントルイス)。
【0090】
したがって、任意の所定の変異体が、少なくとも実質的に、IL−6と同一の活性を有するかどうかは、そのような変異体を、たとえば国際公開第99/02552号パンフレットの実施例7で記述されたような、単純サンドイッチ結合アッセイにかけ、固定化gp80または可溶性gp80(gp80の細胞外断片)に結合するかしないかを決定することを含む、決まりきった実験によって決定することができる。
【0091】
好ましい実施様態において、任意のそのようなムテインは、成熟IL−6R/IL−6キメラの配列と、少なくとも40%の同一性または相同性を有する。より好ましくは、任意のそのようなムテインは、成熟IL−6の配列に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の同一性または相同性を有する。
【0092】
同一性は、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列間、または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係を反映する。一般的に、同一性は、比較している配列の長さにわたって、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチドの、それぞれ、ヌクレオチドに対するヌクレオチドの、またはアミノ酸に対するアミノ酸の正確な対応関係を意味する。
【0093】
実際、正確な対応関係が存在しない配列に関して、「%同一性」が決定され得る。一般的に、比較されるべき2つの配列を、配列間の最大の相関が得られるように並べる。これには、アライメントの程度を高めるために、いずれか1つまたは両方の配列に、「ギャップ」を挿入することが含まれ得る。%同一性は、比較されている各配列の全長にわたって決定されてもよく(いわゆるグローバルアライメント)(これはとりわけ、同一または非常に類似の長さの配列により適している)、またはより短い、定義された長さにわたって決定されてもよい(いわゆるローカルアライメント)(これは等しくない長さの配列に対してより適している)。
【0094】
2つ以上の配列の同一性および相同性を比較するための方法は、本技術分野でよく知られている。したがって、たとえば、Wisconsin Sequence Analysis Package,バージョン9.1(Devereux J ら 1984)にて使用可能なプログラム、たとえば、プログラムBESTFITおよびGAPを、2つのポリヌクレオチド配列間の%同一性、および2つのポリペプチド配列間の%同一性および%相同性を決定するために使用し得る。BESTFITは、Smith および Waterman(1981)の「ローカル相同性」アルゴリズムを使用し、2つの配列間の類似性の最もよい単一領域を発見する。配列間の同一性および/または類似性を決定するための他のプログラムも、本技術分野で公知であり、たとえば、BLASTプログラムファミリー(Altschul S F ら,1990, Altschul S F ら,1997, www.ncbi.nlm.nih.govにてNCBIのホームページよりアクセス可能)、およびFASTA(Pearson W R, 1990;Pearson 1988)があげられる。
【0095】
本発明により使用可能であるIL−6のムテイン、またはそれをコードする核酸には、過度の実験をすることなく、本明細書で提示される教示およびガイドラインに基づいて、当業者によって通常得られ得る、置換ペプチドまたはポリヌクレオチドのような、実質的に対応する配列の限定された組が含まれる。
【0096】
本発明により、ムテインに対する好ましい変化は、「保存的(conservative)」置換として知られるものである。IL−6の保存的アミノ酸置換には、充分に類似した物理化学的特性を有し、かつ群のメンバー間での置換が分子の生物学的機能を保存している一群内の同義アミノ酸が含まれ得る(Grantham, 1974)。特に、挿入または欠失が数個のアミノ酸(たとえば30個未満、好ましくは10個未満)のみを伴い、かつ機能的コンホメーションに必須のアミノ酸(たとえば、システイン残基)が除去または置換されない場合、アミノ酸の挿入および欠失もまた、その機能を改変することなく前記規定配列において行なわれ得ることは明白である。かかる欠失および/または挿入によって生じるタンパク質およびムテインは、本発明の範囲に含まれる。
【0097】
好ましくは、同義アミノ酸群は表Aに規定されるものである。より好ましくは、同義アミノ酸群は表Bに規定されるものであり、最も好ましくは、同義アミノ酸群は表Cに規定されるものである。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
本発明における使用のため、IL−6ポリペプチドのムテインを得るのに使用され得るタンパク質内でのアミノ酸置換の生成の例としては、任意の公知の方法の工程(たとえば、Markらの米国特許第4,959,314号、同第4,588,585号および同第4,737,462号;Kothsらの同第5,116,943号、Namenらの同第4,965,195号;Chongらの同第4,879,111号;およびLeeらの同第5,017,691号に示されるものなど)ならびに米国特許第4,904,584号(Shawら)に示されたリジン置換タンパク質が挙げられる。
【0102】
本発明に連結して有用である、IL−6の特定のムテインが記述されている(国際特許第WO9403492A1号)。さらに、欧州特許第EP667872B1号は、野生型IL−6上で生物学的活性が改善された、ムテインIL−6を記述している。これに加えて、欧州特許第EP0656117号は、IL−6のスーパーアゴニストを単離する方法を記述している。ムテインまたはスーパーアゴニストは、本発明にしたがって使用し得る。
【0103】
用語「融合タンパク質」は、IL−6、またはそのムテインもしくは断片を、別のタンパク質と融合された状態で含有するポリペプチドをいい、これは、体液中で長期の滞留時間を有する。IL−6は、したがって、たとえば、免疫グロブリンまたはその断片と融合されていてもよい。
【0104】
本明細書で使用するところの「機能性誘導体」は、残基の側鎖またはNまたはC末端基として存在する官能基から、当該技術分野において公知の手段により調製され得る、IL−6の誘導体ならびにそのムテインおよび融合タンパク質を包含し、薬学的に許容され得る状態を維持している(すなわち、IL−6の活性に実質的に類似したタンパク質の活性を破壊せず、かつこれを含有する組成物に対して毒性を付与しない)限り、本発明に含まれる。
【0105】
このような誘導体としては、たとえば、ポリエチレングリコール側鎖が挙げられ得、これは、抗原性部位をマスクし、体液中でのIL−6の滞留時間を延長し得る。他の誘導体としては、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアもしくは第一級または第二級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部分と形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体(たとえば、アルカノイルまたは炭素環式アロイル基)またはアシル部分と形成される遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体(たとえば、セリル残基もしくはスレオニル残基のもの)があげられる。
【0106】
本発明による「活性画分」は、たとえば、IL−6の画分であり得る。語句画分は、分子の任意のサブセット、すなわち、望む生物額的活性を持つより短いペプチドを意味する。画分は、IL−6分子のいずれかの末端からアミノ酸残基を除去すること、およびgp80および/またはgp130に結合するその特性に関して、得られた画分を試験することによって簡単に調製し得る。ポリペプチドのN−末端またはC−末端のいずれかから、一時点で、1つのアミノ酸を除去し、望む生物学的活性を維持する断片を決定するためのプロテアーゼが、従来の実験にのみ関与する。
【0107】
IL−6、そのムテインおよび融合タンパク質の活性画分のように、前記画分が、本質的にIL−6に対する本質的に同様の活性、たとえばgp80および/またはgp130のIL−6結合部位に結合するという条件で、本発明は、さらに、単独または関連した分子と一緒に、タンパク質のポリペプチド鎖の任意の画分または前駆体、またはそれに連結した残基、たとえば、糖またはリン酸残基、またはそれらによるタンパク質分子または糖残基の凝集物をカバーする。
【0108】
本明細書において、用語「塩」は、IL−6分子またはそのアナログのカルボキシル基の塩およびアミノ基の酸付加塩の両方をいう。カルボキシル基の塩は、当該技術分野において公知の手段により形成され得、無機塩(たとえば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄または亜鉛の塩など)、および有機塩基との塩(たとえば、トリエタノールアミンなどのアミン、アルギニンまたはリジン、ピペラジン、プロカインなどと形成されるものなど)があげられる。酸付加塩としては、たとえば、無機酸(たとえば、塩酸または硫酸など)との塩および有機酸(たとえば、酢酸またはシュウ酸など)との塩があげられる。もちろん、任意のかかる塩は、IL−6の生物学的活性(たとえば、gp80および/またはgp130のIL−6結合部位への結合能力)を維持していなければならない。
【0109】
IL−6の「アイソフォーム」は、gp80および/またはgp130に結合することができるタンパク質、または選択的スプライシングによって生成し得るその断片である。
【0110】
用語「円順列誘導体」は、本明細書で使用する場合、末端同士を直接またはリンカーを介してのいずれかで互いに結合して環状分子を作製し、次いで該環状分子を別の位置で開裂して末端が元の分子の末端と異なる新たな線状分子が作製された線状分子をいう。円順列誘導体のものとしては、その構造が、環化した後開裂された分子と等価である分子が挙げられる。したがって、円順列誘導体分子は、線状分子として最初から合成され、環化工程および開裂工程を経ないものであってもよい。円順列誘導体の製造は、国際公開第95/27732号パンフレットに記載されている。
【0111】
本発明の1つの実施様態において、本発明の薬物は、1つ以上の部位でグルコシル化される。
【0112】
本発明によるIL−6は、酵母細胞、昆虫細胞、細菌などのような、適切な任意の原核または真核細胞中で産出され得る。1つの実施様態において、IL−6は、国際公開第99/02552号パンフレットにて記述されたような、遺伝子工学的に改変されたCHO細胞などの哺乳動物細胞中で産出される。
【0113】
本発明のさらなる実施様態において、本発明の物質はグルコシル化されない。有利には、分子はついで、グリコシル残基は合成することができないが、通常、高い収率で組み換えタンパク質を産生する細菌細胞内で産出することができる。非グルコシル化IL−6の産生は、たとえば、欧州特許第EP504751B1号にて詳しく記述されている。
【0114】
またさらなる実施様態において、本発明による物質には、免疫グロブリン融合体が含まれ、すなわち、本発明による分子が、免疫グロブリンのすべて、または一部分に融合する。免疫グロブリン融合タンパク質の作製方法は、たとえば、国際公開第01/03737号パンフレットにて記述されたもののように、本技術分野でよく知られている。当業者は、本発明の得られた融合タンパク質が、IL−6の生物学的活性を維持することを理解するであろう。得られた融合タンパク質は、理想的に、長期間の体液中の滞留時間(半減期)、特異的活性の増加、発現レベルの増加、または融合タンパク質の精製を容易にするなどの改善された特性を持つ。
【0115】
好ましくは、本発明による物質はIg分子の定常領域に融合される。たとえば、ヒトIgG1のCH2およびCH3ドメインのような重鎖領域に融合され得る。たとえば、IgG2またはIgG4アイソフォーム、またはIgMまたはIgAのような他のIgクラスなどのIgG分子の他のアイソフォームも本発明による融合タンパク質の産生に適している。融合タンパク質は、単量体または多量体、ヘテロ−またはホモ多量体であり得る。
【0116】
本発明による物質の機能性誘導体は、安定性、半減期、バイオアベイラビリティー、ヒト体によるトレランスまたは免疫原性のような、タンパク質の特性を改善するために、ポリマーに連結してもよい。
【0117】
したがって、本発明の好ましい実施様態は、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に連結した、少なくとも1つの部分を含む、本発明による薬物の機能性誘導体に関する。
【0118】
非常に好ましい実施様態は、ポリエチレングリコール(PEG)に連結した本発明の薬物に関連する。PEG化は、たとえば、国際公開第92/13095号パンフレットにて記述されたもののような、公知の方法によって実施し得る。
【0119】
1つの実施様態において、本発明の薬物は、0.06〜3μg/kg体重の範囲の用量で投与される。本発明の好ましい実施様態において、薬物は毎日投与される。さらに好ましい実施様態において、薬物は一週間あたり3回投与される。またさらに好ましい実施様態において、薬物は一週間に一回投与される。
【0120】
「薬学的に許容され得る」の定義は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、かつ投与対象の宿主に対して毒性でない任意の担体を包含することを意味する。たとえば、非経口投与では、薬物は、ビヒクル(たとえば、生理食塩水,デキストロース溶液,血清アルビミンおよびリンガー溶液)中にて注射用の単位投薬形態に製剤化され得る。
【0121】
1つの実施様態において、本発明は、IL−6またはそのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質、機能性誘導体または断片と、1つ以上の化学療法薬剤との組み合わせを含む医薬組成物を提供する。
【0122】
薬物は、それを必要とする患者に、種々の様式で投与され得る。投与経路としては、肝臓内、皮内、経皮(たとえば、低速放出製剤にて)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、硬膜外、局所および鼻腔内経路が挙げられる。任意の他の治療上有効な投与経路が使用され得、たとえば、上皮または内皮の組織からの吸収、またはIL−6をコードするDNA分子を患者に投与し(たとえば、ベクターにより)、インビボでIL−6の発現および分泌を引き起こす遺伝子療法によるものである。加えて、IL−6は、生物学的に活性な薬剤の他の成分(たとえば、薬学的に許容され得る界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤およびビヒクルなど)と共に投与してもよい。
【0123】
薬物を種々の方法において、それを必要とする患者に投与可能である。投与経路は、肝臓内、皮内、経皮(たとえば、持続放出処方)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、硬膜外、局所および鼻腔内経路が含まれる。たとえば、内皮または外皮組織を介した吸収、またはIL−6がインビボで発現し、分泌させる、IL−6をコードしているDNAを(たとえばベクターを介して)患者に投与する、遺伝子治療によってのような、任意の他の治療的に効果的な投与経路を使用可能である。さらに、薬物を、薬学的に許容され得る界面活性剤、ビヒクル、担体、希釈液およびビヒクルのような、生物学的に活性や薬剤の他の成分と一緒に投与可能である。
【0124】
非経口(たとえば、静脈内、皮下、筋肉内)投与のためには、IL−6は、薬学的に許容され得る非経口用ビヒクル(たとえば、水、生理食塩水、デキストロース溶液)ならびに等張性を維持する添加剤(たとえば、マンニトール)または化学的安定性を維持する添加剤(たとえば、保存剤およびバッファー)と組合せて、液剤、懸濁剤、乳剤または凍結乾燥した散剤として製剤化され得る。製剤は、一般的に用いられる手法によって滅菌する。
【0125】
本発明のさらなる目的は、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩を、任意には薬学的に許容され得る担体とともに、必要とする患者に投与することを含む、CIPNの治療および/または予防方法を提供することである。
【0126】
個体に、単回用量または反復用量として投与される投薬量は、種々の要因(薬物の薬物動態学的性質、投与経路、患者の状態および特徴(性別、年齢、体重、健康状態、体格)、症状の程度、併用療法、処置の頻度ならびに所望の効果など)に依存して変化する。確立された投薬範囲の調整および操作は、充分、当業者の能力の範囲である。
【0127】
語句「投薬量(dosage)」は、投与の頻度および回数の決定および調節に関する。
【0128】
本発明は、CIPNの治療/予防のための医薬の製造における、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、または円順列誘導体の使用に関する。
【0129】
低用量の薬物は、化学療法の前、あいだおよび/または後に投与可能である。低用量の薬物は、CIPNが確立する前に予防的に投与してもよく、または確立したCIPNを治療するために投与してもよい。
【0130】
本発明は、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための、それぞれ1つの化学療法薬剤を含む1つ以上の容器;IL−6、またはそのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩を含む1つの容器;および前記化学療法薬剤と前記IL−6の投与のための取扱説明書を含むキットにも関する。
【0131】
前記キットは、それぞれが1つの化学療法薬剤を含む2つの容器を含み得、たとえば、1つの容器がカルボプラチンを含有しおよびもう1つがタキソールを含有し得る。
【0132】
各容器内の、IL−6、またはそのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩の量は、4〜210μg、7〜140μgの範囲、または約4、7、14、28、70または140μgであり得る。
【0133】
本発明は、さらに神経増殖因子(NGF)およびグルタミンのような神経保護薬物含有容器を含む、前記キットを検討する(contemplates)。
【0134】
本発明を充分に記載してきたが、当業者には、広範な均等のパラメータ、濃度および条件の範囲内で、過度の実験をすることなく、本発明の精神および範囲を逸脱することなく本発明を行ない得ることが認識されよう。
【0135】
本発明を、その特定の実施形態に関して記載したが、さらなる改良が可能であることを理解されたい。本特許出願明細書は、一般的に本発明の原理にしたがう本発明の任意の変形、使用または適応を包含し、本発明が属する技術分野において既知または慣用的な実務の範囲内である場合、および以下の添付の特許請求の範囲に記載された前述の本質的な特徴に適用され得る場合、本開示からのかかる逸脱を含むものとする。
【0136】
本明細書で引用した参考文献、たとえば、学術論文もしくは要約、公開もしくは未公開の米国もしくは外国の特許出願、発行済の米国もしくは外国の特許、または任意の他の参考文献などは、引用により本明細書に完全に組み込まれる(引用した参考文献に示されたすべてのデータ、表、図および文章を含む)。加えて、参考文献内に引用された参考文献の全内容もまた、引用により本明細書に完全に組み込まれる。
【0137】
公知の方法の工程、従来の方法の工程、公知の方法または従来の方法を参照することは、決して、本発明の任意の側面、説明または実施態様が関連技術において開示、教示または示唆されているという是認(admission)ではない。
【0138】
特定の実施様態の以上の記述によって、完全に、他ではなく、本発明の一般的な性質が、(本明細書で引用した参考文献の内容を含む)当業者の知識を適用することによって、余計な実験なしに、本発明の一般的なコンセプトから逸脱することなしに、そのような特定の実施様態への種々の適用のために、簡単に改変および/または適合可能である。したがって、そのような適合および改変が、本明細書で示した協議およびガイダンスに基づいて、開示された実施様態の等価のものの範囲を意味することの範囲内であることが意図される。本明細書の語法または専門用語は、記述の目的であって、制限の目的ではなく、本明細書の専門用語または語法が、当業者の知識と組み合わせて、本明細書で示された協議およびガイドラインに関して、当業者によって解釈されるべきものであることが理解されるべきである。
【0139】
次に、以下の非限定的な実施例および添付の図面にしたがって本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0140】
実施例1:ビンクリスチン誘発ニューロパシー、動物および薬物投与
ビンクリスチン誘発ニューロパシーは、混合型のニューロパシー(すなわち、感覚神経および運動神経関連ニューロパシー)である。Boyleと共同研究者ら(Boyleら、J Pharmacol Exp Ther.1996 Oct;279(1):410−5)は、ビンクリスチンニューロパシーのラットモデルを開発し、そこで、行動試験(それぞれテール−フリックおよびロータロッド行動)によって測定したような感覚神経および運動神経末梢欠損が、任意の先に記述されたものよりも、ヒトでの状態をより近く象徴すると報告された。このビンクリスチン−誘発ニューロパシーのモデルを、IL−6がビンクリスチン−誘発ニューロパシーから保護可能であるかどうかを調査するために使用した。
【0141】
実験は、10週齢雌Dark Agoutiラット(Janvier,Le Genest−St−Isle、フランス)を用いて実施した。ラットを無作為に以下のように7つの実験群にわけた。(a)生理食塩水中0.02% BSAのIP注射を受けるビヒクル対照群(n=10);(b)生理食塩水中0.02%BSAの皮下(SC)注射で毎日投与される、ビンクリスチン−処置群(n=10);(c)0.3、1、3または10μg/kgにて、ヒト組換えIL−6(実施例23)のSC注射を毎日投与される、ビンクリスチン−処置ラットの4つの異なる群(各群n=10);および(d)4−メチルカテコール(4−MC)の腹腔内(IP)注射を毎日受けるビンクリスチン−処置群。4−MCは、確立された神経保護作用を有する標準化合物であり、10μg/kgの用量で使用した(n=10)。
【0142】
動物を、ケージあたり2匹で飼い、えさおよび水が自由に得られる状態で、制御した温度(21〜22℃)、および逆明暗周期(12時間/12時間)の部屋内で維持した。
【0143】
ビンクリスチン(トクリス(Tocris)、Illkirch、フランス)を、0日〜5日目、8日〜12日目および15日〜16日目に、0.15mg/kgの用量で、ビンクリスチン溶液を注射することによって与えた。ビンクリスチン溶液(0.03mg/ml)は生理食塩水中で調製した。
【0144】
IL−6を、0.02% BSAを含む生理食塩水中で希釈し、ビンクリスチン投与の第1日から、実験の最後まで、毎日皮下経路にて投与した。
【0145】
4−MC(先のページを参照のこと)を生理食塩水中で希釈し、ビンクリスチン投与の第1日から、試験の最後まで、毎日IP経路を介して注射した。
【0146】
体重におけるビンクリスチンの効果を調査した。図1は、ビンクリスチンで処置した動物が、対照群よりも、有意に軽い体重を示すことをあらわしている[F(6,210)=7.144およびp<0.001、繰り返し測定ANOVA]。たとえば、ビヒクルで処理したビンクリスチン中毒動物は、ビンクリスチン投与の完了の時点で、その体重の約10%を失った。しかしながら、IL−6の投与にかかわらず、ビンクリスチン治療にかけた群間では、有意な差は検出されなかった。いったんビンクリスチンを停止すると、動物はすぐに成長した。
【0147】
実施例2:ビンクリスチン仲介運動神経協調障害を予防する/減少させることにおける、IL−6同時投与の効果
ビンクリスチンによる運動神経協調の障害、およびIL−6同時投与の効果を査定するために、a、生理食塩水中0.02%BSAのIP注射を受けるビヒクル対照ラット群(n=10);(b)生理食塩水中0.02%BSAのSC注射にて、毎日処置したビンクリスチン−処置群(n=10)(実施例1);(c)0.3、1、3または10μg/kgの用量にて、IL−6のSC注射にて毎日投与される、ビンクリスチン−処置ラットの4つの異なる群(以下を参照のこと)(各群n=10);および(d)10μg/kgの用量にて、4−MCのIP注射で毎日投与したビンクリスチン−治療群(n=10)を、走行試験にてモニタした(実施例16)。
【0148】
図2は、対照、ビンクリスチン−処置およびIL−6処置動物群における、走行試験の結果を要約している。結果は、各実験動物がロッドを横断するために必要な時間を示している。
【0149】
ビンクリスチン投与の2および3週間後、未処置対照ラットと比較して、パフォーマンスが有意に減少した。
【0150】
IL−6と同時投与したラットは、ビンクリスチンのみ投与したラットと比較して、より早くロッドを横断した。IL−6の有益な効果が、試験したIL−6の用量すべてで観察され、0.3、1、3または10μg/kgが、中毒後、2および3週間で観察された。
【0151】
したがって、走行試験で得られた結果によって、試験したすべてのIL−6用量、0.3、1、3または10μg/kgで、IL−6の同時投与が、ビンクリスチンによって誘発される運動神経協調障害を予防することが示される。
【0152】
実施例3:ビンクリスチン−誘導傷害受容欠損(nociception loss)におけるIL−6の効果
ラットにおけるビンクリスチンによって誘導された感覚神経欠損(すなわち傷害受容欠損)、およびIL−6同時投与の効果を評価するために、a、生理食塩水中0.02%BSAのIP注射を受けるビヒクル対照ラット群(n=10)、(b)生理食塩水中0.02%BSAのSC注射にて、毎日処理したビンクリスチン−処理群(n=10)(実施例1)、(c)0.3、1、3または10μg/kgにて、ヒト組換え体IL−6のSC注射にて毎日投与される、ビンクリスチン−治療ラットの4つの異なる群(各群n=10)。および(d)10μg/kgにて、4−MCのIP注射で、毎日投与したビンクリスチン−治療群(n=10)を、実施例15で記述したように、ホットプレート試験にてモニタした。
【0153】
ホットプレート試験の結果を、図3で要約している。ビンクリスチン−治療群において、対照未処理群のラットと比較して、熱に対する第一反応の遅延が観察された。第一反応の遅延は、治療開始後3および5週間で有意であった。
【0154】
試験したすべての用量にて、IL−6の同時投与が、処理開始後5週間で、痛覚を有意に予防し、また、IL−6の予防的傾向が、実験を通して観察されえた。
【0155】
4−MCは、ラットにおける、ビンクリスチン−誘導傷害受容欠損において、主要な保護効果を持つようには見られなかった。
【0156】
したがって、ホット試験プレートで得られた結果は、試験したすべての用量、0.3、1、3または10μg/kgで、IL−6の同時投与が、ラットにおけるビンクリスチン−誘導傷害受容欠損から保護したことを示している。ホットプレート試験はまた、IL−6が、4−MCよりも、ラットにおけるビンクリスチン−誘導傷害受容欠損より、保護することも示した(図3)。
【0157】
実施例4:電気生理学的試験(筋電図検査またはEMG)は、ビンクリスチン−誘発ニューロパシーに対する、IL−6の保護効果を示す
行動試験と平行して、実施例17で記述したように、電気生理学的試験を実施して、IL−6を同時投与したラットと比較して、ビンクリスチン−投与ラットにおける繊維/神経機能を評価した。
【0158】
(実施例17で記述したように試験した)M波振幅における有意な減少が、すでにビンクリスチン投与の2週間後に検出され得る(図4)。動物は、対照未処理動物と比較して、約20%の振幅を失った。振幅欠損が、ビンクリスチンを停止した後でさえも維持された。
【0159】
試験したすべてのIL−6用量で、IL−6との同時投与が、M派振幅のビンクリスチン−誘導欠損を予防することが示され、1〜10μg/kgの用量で使用したIL−6が、完全にH波振幅を予防した。
【0160】
4−MCとの同時投与が、一時的にのみ、M派振幅の欠損を保護することが観察され、一方で、3〜10μg/kg IL−6が、実験全体にわたって安定であった。
【0161】
図5で示したように、化合物筋肉活性電位(CMAP)潜時における最初の変化が、ビンクリスチン処理を停止した後にのみ検出された。
【0162】
ビンクリスチン−誘導CMAP潜時は、試験したすべての濃度0.3〜10μg/kgにて、IL−6の同時投与(p<0.05;ダネット検定)によって減少したことが示された。10μg/kg IL−6と同時投与したラットは、実験を通して、それらのCAMP潜時を完全に予防した。
【0163】
感覚神経伝導速度(SNCV)における初期変化が、ビンクリスチンの停止の際(またはビンクリスチン投与後2週間で 図6)検出された。その時点で、未処理対照ラットにおけるそれと比較して、SNCVのわずかな減少が観察された。ビンクリスチンの効果は、ビンクリスチン処理開始の5週間後に有意になり始め、これは、約10m/sの欠損を示している。
【0164】
SNCVの完全な復旧が、1〜10μg/kg IL−6で同時投与した、ビンクリスチン処理動物群で観察された。
【0165】
したがって、電気生理学的試験の結果は、試験したすべてのIL−6用量、0.3、1、3および10μg/kgで、IL−6との同時投与が、ビンクリスチン−誘導繊維/神経機能欠損に対して保護したことを示している。電気生理学的試験はまた、IL−6が、4−MCよりも、ビンクリスチン−誘導繊維/神経機能欠損に対して、より保護を与えることを示した(図4)。
【0166】
実施例5:形態学的解析ビンクリスチン−誘発ニューロパシーに対する、IL−6の保護効果を示す
形態学的解析を、実験の完了時に、実施例18で記述したように実施し、ビンクリスチンで処理したラット、およびIL−6と同時投与したラットにおいて、繊維および軸索直径およびミエリン厚でおこる形態学的変化を調査した。
【0167】
図7で示したように、ビンクリスチン処理ラットから回収した坐骨神経は、対照未処理標本と比較して、繊維直径の有意な減少を示した。用量1〜10μg/kgでのIL−6との同時投与によって、ビンクリスチン−誘導繊維収縮が予防された。ビンクリスチン−誘導繊維収縮はまた、4−MC治療によっても保護された。
【0168】
軸索の直径が、ビンクリスチン処理ラットで有意に減少した(図8)。0.3〜10μg/kgの用量でのIL−6の同時投与が、ビンクリスチンによる軸索直径の減少を、有意に減らし/予防した。
【0169】
4−MC治療が、ビンクリスチンによる軸索直径の減少を、有意に減らし/予防した。
【0170】
ミエリン厚が、対照未処理ラットと比較して、ビンクリスチン−処理で、軸索において、有意に減少した。
【0171】
1〜10μg/kgの用量でのIL−6との同時投与が、ビンクリスチン−誘導ミエリン欠損を減少させ/予防した(図9)。
【0172】
変性した繊維の割合をまた、対照、ビンクリスチンおよびビンクリスチン−IL−6投与ラットから回収した試料中でモニタした(図10)。ビンクリスチン処理ラットの試料から回収した変性した繊維の割合は、対照ラットからの試料中のものよりも、2倍高かった。さらに、ビンクリスチン処理群での有髄繊維の割合は、対象未処理群でのものよりも少なかった。
【0173】
IL−6(0.3〜10μg/kg)または4−MCとの同時投与が、ビンクリスチン処理ラットでの、変性繊維の割合を減少させることがわかった。
【0174】
したがって、上記形態学的解析によって、試験したすべての用量、0.3、1、3および10μg/kgでのIL−6との同時投与が、ビンクリスチン−誘導神経変性を効果的に予防/減少させ、とりわけ、繊維および軸索直径の減少、ミエリン厚の減少、および繊維の変性を予防したことが示されている。
【0175】
皮膚の5〜10mm直径面積を、後ろ足からパンチ−生検した。皮膚試料をすぐに、4℃にてパラホルムアルデヒド中で一晩固定化し、冷凍保存のために、0.1M PBS中30% スクロース中でインキュベート(一晩)し、OCT中に埋包し、解凍まで−80℃で冷凍した。ついで、50μm−厚凍結切片を、クリオスタットにて、皮膚の表面に垂直に切断した。遊離浮遊切片を、4℃にて、ウサギ抗−タンパク質遺伝子産物9.5(1:10000、Ultraclone,Isle of Man,UK)の浴中で7日間インキュベートした。次いで切片を、ABCペルオキシダーゼ法にしたがって、免疫応答性を明らかにするために処理した。簡単に記すと、ビオチン化抗−ヤギ抗体(1:200)で、1時間インキュベートし、ついで、室温にて、アビジンビオチン化複合体中で30分間インキュベートした。ペルオキシダーゼ活性を、DABシステムを用いて視覚化した。ついで切片を、エオシンまたはヘマトキシリンにて対比染色した。切片を脱水し、バイオクリアで洗浄し、エウキット上にマウントした。3つの顕微鏡視野の皮膚神経の数を、’40倍率視野下、マニュアルで計数した。ビンクリスチン中毒は、表皮神経線維の密度の、50%以上の減少を誘導した。皮膚生検が、ヒトにおけるニューロパシーをモニタする種々の技術の1つである。本実験の結果によって、ビンクリスチン中毒が、皮膚繊維の密度の大きな減少に関連することが示唆され、これは、臨床条件で起こっているものと似ている。10μg/kg IL−6での処理が、皮膚繊維欠損の症状を完全に予防した(データは示していない)。
【0176】
実施例6:シスプラチン誘発ニューロパシー、動物および薬物投与
Holmesおよびその共同研究者ら(Holmesら、Toxicol Sci.1998 Dec;46(2):342−51)によって開発された、シスプラチン誘発ニューロパシーの信頼性のある動物モデルを使用して、シスプラチン誘発ニューロパシーにおけるIL−6同時投与の効果を調査した。ラットにおけるシスプラチン−誘発ニューロパシーが、臨床条件の写しであると記述されてきている。実際、(ヒトで見られるような)軸索変性の行動および電気生理学的相関が、シスプラチンニューロパシーのラットモデルにおいてすでに報告されている(Holmesら、1998)。
【0177】
10週齢メスDark Agoutiラット(Janvier,Le Genest−St−Isle,France)を、無作為に以下のように7つの実験群にわけた。(a)生理食塩水−0.02% BSA(重量/容量)の無菌溶液を注射した、ビヒクル対照群(n=10)。(b)生理食塩水−0.02%BSAの無菌溶液を注射した、シスプラチン−中毒化群(n=10)。(c)0.3、1、3または10μg/kgの4つの異なる用量での、IL−6化合物の毎日SC注射を受ける動物からなる、4つの治療−シスプラチン−中毒化群群(n=10)。および(d)10μg/kgでの、4−MCの毎日IP注射を受ける、4−メチルカテコール(4−MC)処理、シスプラチン−中毒化群(n=10)。
【0178】
動物を、グループで飼い(ケージあたり2匹)、えさおよび水が自由に得られる状態で、制御した温度(21〜22℃)、および逆明暗周期(12時間/12時間)の部屋内で維持した。すべての実験を、研究所ガイドラインにしたがって実施した。
【0179】
シスプラチン(シグマ、L‘Isle d’Abeau Chesnes,France)を、4週間のあいだ、2mg/kgの用量にて一週間に二回、腹腔内に注射することによって誘導した。薬物を、塩化ナトリウムの0.9%無菌水溶液中に希釈した。
【0180】
IL−6を、生理食塩水−0.02% BSAの無菌溶液中で希釈し、シスプラチン投与の第一日から、実験の最後まで、毎日皮下経路にて投与した。
【0181】
4−MCを、塩化ナトリウムの0.9%無菌水溶液中で希釈し、シスプラチン投与の第一日から、試験の最後まで、毎日、IP経路を介して注射した。
【0182】
体重におけるシスプラチンの効果を調査した。図11は、シスプラチンで処理した動物が、対照群よりも、有意に軽い体重を示すことをあらわしている[p<0.001]。IL−6の投与にかかわらず、シスプラチンの投与が、動物の成長の明らかな阻害を誘導することも注目される。たとえば、ビヒクルで処理したシスプラチン中毒動物は、シスプラチン投与の完了の時点で、その体重の約10%を失う。いったんシスプラチンを停止した場合、動物はすぐに成長した。
【0183】
実施例7:シスプラチン−誘導傷害受容欠損における、IL−6の効果
ラットにおけるシスプラチン治療によって誘導された感覚神経欠損(すなわち傷害受容欠損)、およびIL−6同時投与の効果を評価するために、a、生理食塩水中0.02%BSAのIP注射を受けるビヒクル対照ラット群(n=10)、(b)生理食塩水中0.02%BSAのSC注射にて、毎日処理したビンクリスチン−処理群(n=10)(実施例1)、(c)0.3、1、3または10μg/kgにて、ヒト組換え体IL−6のSC注射にて毎日投与される、ビンクリスチン−治療ラットの4つの異なる群(各群n=10)。および(d)10μg/kgにて、4−MCのIP注射で、毎日投与したビンクリスチン−治療群(n=10)を、実施例15で記述したように、ホットプレート試験にてモニタした。
【0184】
シスプラチン投与3週間後に、ラットが、対照未処理群のラットと比較して、熱に対する第一反応の有意な遅延を示した。シスプラチン治療群対対照群での、熱に対する第一反応の遅延は有意であり、シスプラチン治療の停止後(またはシスプラチン治療開始5および6週間後)でさえ持続する。
【0185】
試験したすべての用量、0.3、1、3または10μg/kgにて、IL−6の同時投与が、シスプラチンによる熱に対する第一応答の遅延を、完全に予防/減少させた。
【0186】
シスプラチンによる、熱に対する第一反応の遅延が、10μg/kg IL−6との同時投与によって完全に予防された。
【0187】
4−MC治療によって、シスプラチンのみで処理したラットと比較して、3週間シスプラチン−処理ラットで、第一反応時間の、明らかであるが、有意ではない減少が産出された。差は、シスプラチン治療開始4および6時間後のみで有意であった。
【0188】
ホットプレート試験で得られた結果は、シスプラチンと一緒の、IL−6の同時投与が、試験したすべての用量、0.3、1、3および10μg/kgにて、シスプラチン−仲介感覚神経欠損を予防したことを示している。
【0189】
実施例8:電気生理学的試験(筋電図検査またはEMG)は、シスプラチン−誘発ニューロパシーに対する、IL−6の保護効果を示す
シスプラチン−誘発ニューロパシーモデルにおける、電気生理学的モニタリングを、実施例17で記述したように実施した。目的は、繊維/神経機能のシスプラチン−誘導欠損における、IL−6との同時投与の効果を査定することであった。
【0190】
H波振幅における最初の変化が、シスプラチンを投与した後3週間で観察された(図13)。振幅のわずかな減少が、対照未処理群と比較して、シスプラチン処理群で観察された。シスプラチン治療開始から4〜6週間で、Hは振幅が、約80%まで、劇的に減少した。
【0191】
それぞれ、0.3、1、3および10μg/kg IL−6の同時投与が、H波振幅の欠損を減少/予防することがわかった一方で、10μg/kg IL−6との同時投与が、実験を通して、H波振幅の欠損を完全に予防した。
【0192】
一方で、4−MC同時投与は、シスプラチンによって誘導されたH波の欠損を予防することにおいて、遅延および一過性の効果しか持たなかった(図13)。
【0193】
感覚神経伝道速度(SNCV)における最初の変化が、シスプラチン投与の4週間後に観察された。その時点で、シグナル速度が、相当する未処理対照においてのものよりも、有意に遅かった(図14)。
【0194】
IL−6との同時投与が、5週間後、特に3および10μg/kg IL−6(図14)にて、SNCVを改善することがわかった。
【0195】
4−MCとの同時投与は、治療のわずか5週間後に、シスプラチン中毒のSNCVの減少を一過性に阻害した(図14)。
【0196】
上記電気生理学的試験の結果によって、IL−6との同時投与が、繊維/神経機能のシスプラチン−誘導欠損を効果的に予防することが示されている。電気生理学的試験の結果はまた、IL−6が、4−MCよりも、繊維/神経機能のシスプラチン−誘導欠損を予防することにおいて、より効果的であることも示している(図13および14)。
【0197】
実施例9:シスプラチン−誘発ニューロパシーに対する、IL−6の保護効果−形態学的解析
組織形態学的解析を、シスプラチン投与に続く、繊維/軸索直径およびミエリン厚で発生する形態学的変化、およびIL−6同時投与の効果を調査するために、実験の完了時点で実施した。
【0198】
図15は、対照、シスプラチンおよびシスプラチンIL−6同時投与ラットから回収した試料中での、繊維直径測定を示している。
【0199】
得られた直径測定値は、シスプラチンが、繊維直径を有意に減少させたことを示している。試験したすべてのIL−6用量で、IL−6と同時投与したラットの切片からの結果によって、IL−6が、シスプラチンによる直径減少を予防/減少させることが示されている。有意な統計学的有意さが、1〜10μg/kg IL−6の範囲で検出された。
【0200】
さらに有髄繊維の割合の測定を、対照未処理、シスプラチン処理ラットおよびIL−6とのシスプラチン同時投与ラットから回収した繊維内で実施した(図17)。有髄繊維の割合における有意な減少が、対照未処理ラットでのものと比較して、シスプラチン処理ラットで観察された。
【0201】
IL−6(1、3、10μg/kg)が、ミエリン壁の欠損に対して、繊維を有意に保護することがわかった。
【0202】
4−MC処理は、シスプラチン−誘導繊維直径または軸索の減少を保護し、ミエリン壁の欠損に対する有意な保護を誘導した。
【0203】
また、変性繊維の割合を、対照、シスプラチン処理ラット、およびIL−6とシスプラチンを同時投与したラットから回収した試料中でモニタした(図18)。シスプラチン処理ラットから回収した試料中の変性繊維の割合が、対照未処理ラットから回収した試料中のものよりも、2倍高いことがわかった。このことに加えて、有髄繊維の割合が、対照未処理群でのものと比較して、シスプラチン処理群で減少した(図17)。
【0204】
1、3、10μg/kg IL−6との同時投与が、シスプラチンによる変性繊維の割合を減少することがわかった(図18)。図17は、変性繊維の割合の減少に加えて、IL−6との同時投与が、シスプラチン処理ラットでの有髄繊維を増加させたことを示している(図17)。
【0205】
したがって、上記形態学的解析によって、1、3または10μg/kg IL−6との同時投与が、神経変性を効果的に予防/減少させ、とりわけ、シスプラチンによる、軸索直径の減少、ミエリン厚の減少、またはミエリン壁の欠損および繊維の変性を予防したことが示された。
【0206】
実施例10:シスプラチン−誘発ニューロパシーモデルにおける、IL−6の治療的効果−動物および薬物投与
実験の進行において、化学療法剤との、IL−6(0.3、1、3、10μg/kg)の同時投与が、行動、電気生理学的および組織学的査定によって証明されるように、ラットにおいて、化学療法によって引き起こされる神経因性欠損を予防/減少することが示された。そのような実験においては、IL−6治療を、ニューロパシーの発達の前、または間に開始した。したがって、先の実験では、化学療法−関連ニューロパシーの発達におけるIL−6の予防的解析が確認された。以下の実験は、動物モデルにおいて、ニューロパシーがすでに確立された後の、IL−6の効果を評価するために実施した。IL−6の可能性のある治療効果を、行動、電気生理学的および組織学的査定を用いて調査した。
【0207】
10週齢メスDark Agoutiラット(Janvier,Le Genest−St−Isle,France)を、無作為に以下のように7つの実験群にわけた。(a)生理食塩水−0.02% BSA(重量/容量)の無菌溶液を注射した、ビヒクル対照群(n=10)。(b)生理食塩水−0.02%BSAの無菌溶液を注射した、シスプラチン−中毒化群(n=10)。(c)2つの異なる用量、3および10μg/kgにて、IL−6を毎日SC注射にて与えられる動物からなる、2つの処理−シスプラチン−中毒化群(n=10)。および(d)10μg/kgでの、4−MCの毎日IP注射を受ける、4−メチルカテコール(4−MC)処理、シスプラチン−中毒化群(n=10)。
【0208】
動物を、グループで飼い(ケージあたり2匹)、えさおよび水が自由に得られる状態で、制御した温度(21〜22℃)、および逆明暗周期(12時間/12時間)の部屋内で維持した。
【0209】
シスプラチン(シグマ、L‘Isle d’Abeau Chesnes,France)を、4週間の間、2mg/kgの用量にて一週間に二回、腹腔内に注射することによって誘導した。薬物を、塩化ナトリウムの0.9%無菌水溶液中に希釈した。
【0210】
IL−6を、生理食塩水−0.02% BSAの無菌溶液中で希釈し、23日目(シスプラチン投与の最終週)から、実験の最後まで、毎日皮下経路にて投与した。
【0211】
4−MCを、塩化ナトリウムの0.9%無菌水溶液中で希釈し、23日目から、試験の最後まで、毎日、IP経路を介して注射した。
【0212】
体重および生存率を毎日記録した。
【0213】
ホットプレートおよびEMG試験を、−6、23、30,37および44日にて実施した。
【0214】
シスプラチン投与の最初の日を1日目と考えた。
【0215】
実施例11:シスプラチンによって確立した傷害受容欠損における、IL−6の治療的効果
IL−6が、シスプラチンによって誘導された、感覚神経欠損(または傷害受容欠損)を治癒させる、および/または改善し得るかどうかを決定するために、ラットを、(a)生理食塩水−0.02% BSA(重量/容量)の無菌溶液を注射した、ビヒクル対照群(n=10)。(b)生理食塩水−0.02%BSAの無菌溶液を注射した、シスプラチン−中毒化群(n=10)。(c)2つの異なる用量、3および10μg/kgにて、IL−6を毎日SC注射にて与えられる動物からなる、2つの処理−シスプラチン−中毒化群(n=10)。および(d)10μg/kgでの、4−MCの毎日IP注射を受ける、4−メチルカテコール(4−MC)処理、シスプラチン−中毒化群(n=10)で処理し、実施例15にて記述したように、ホットプレート試験を用いて試験した。
【0216】
結果は、2日目(ベースライン)から23日目まで、対照動物におけるホットプレートスコアが、明らかに減少し、これが、試験に対する習慣作用と関連した現象であることが示された。23日目から後、対照動物のスコアが安定した。
【0217】
シスプラチン投与のあいだ、およびシスプラチン後治療3週間にわたり、シスプラチン−治療群が、対照未処理ラットと比較して、熱に対する第一反応の有意な遅延を示した(図19)。
【0218】
IL−6処理開始2週間後、第一反応の時間の合計減少が、IL−6で処理したラットで観察された(p<0.05、マノバ−ダネット検定)。IL−6での有意な結果が、10μg/kgの用量でのIL−6処理後2週間で観察された(p<0.05、マノバ−ダネット検定)。
【0219】
4−MCで処理したラットにおける、熱に対する第一反応の時間の減少も、4−MC治療開始から2週間後に観察された(p<0.05、マノバ−ダネット検定)。
【0220】
ホットプレート試験を用いて得られた結果により、IL−6が、シスプラチン−誘導感覚神経欠損を効果的に治癒する、および/または改善することが示されている。
【0221】
実施例12:シスプラチン−誘発ニューロパシーにおける、IL−6の治療的効果−電気生理学的測定
実施例17で記述した電気生理学的試験を、シスプラチン−確立ニューロパシーモデルにおいて、(先の実施例で記述した)行動試験と平行して実施した。目的は、繊維/神経機能のシスプラチン−誘導欠損における、IL−6の治療効果を査定することである。
【0222】
本実験組において、H波振幅の最初の変化が、シスプラチン処理開始後23日で検出された(図20)。シグナル振幅の劇的な欠損(約70%)が、シスプラチン処理群で観察された。H−波振幅の自発的回復は観察されなかった。
【0223】
3および10μg/kgを用いるIL−6処理によって、H波振幅の欠損が明らかになった(p<0.05、マノバ−ダネット検定)。IL−6処理の開始後1週間ほどで、約50%の振幅欠損が回復し、IL−6処理の2週間までに、完全回復に至った(図20)。
【0224】
4−MC処理もまた、増幅における、シスプラチン誘導H波欠損を逆転させた。
【0225】
シスプラチン投与によって誘導された、感覚神経伝導速度(SNCV)の最初の変化が、シスプラチン処理の開始後23日で観察され得る(図21)。シスプラチン処理ラットにおけるSNCVが、相当する未処理対照群におけるSNCVよりも、有意に遅いことがわかった(p<0.01、マノバ−ダネット検定)(図21)。
【0226】
結果によって、3μg/kgの用量でのIL−6が、処理の1週間のみのあとで、シスプラチン−処理動物におけるSNCVを有意に(p<0.01、マノバ−ダネット検定)改善したことを示している。
【0227】
反対に、4−MC処理は、シスプラチン処理ラットのSNCVを改善するように見えるが、有意な統計学的差が、処理開始後2週間で検出されただけである(p<0.05、マノバ−ダネット検定)。
【0228】
したがって、電気生理学的試験の結果が、シスプラチン−処理動物におけるSNCVでの有意な改善が、IL−6処理の1週間のみの後で観察され、早期効果が、試験したもっとも低い用量のIL−6、すなわち3μg/kgを用いて観察され、H波の欠損を逆転させた、ことを示している。電気生理学的試験によって、IL−6が、シスプラチンによって誘導された繊維/神経機能の欠損を治癒させる、および または改善させることにおいて、4−MCよりもより効果的であることが示されている(図21)。
【0229】
実施例13:シスプラチン−誘発ニューロパシーにおける、IL−6の治療的効果−形態学的解析
組織形態学的解析を、シスプラチン誘発CIPNのモデルにおいて、繊維および軸索直径、およびミエリン厚にて起こる、形態学的変化、およびそのようなモデルにおいて、IL−6投与後に起こる変化を調査するために、実験の完了時に実施した。
【0230】
結果は、治療開始の前(23日まで)、シスプラチン処理ラットにおけるミエリンの総サイズが、対照未処理ラットと比較して、わずかに減少したが、差は有意ではなかった(p>0.05、ステューデントt−検定)、ことを示している(図22)。
【0231】
シスプラチン処理ラットから回収した試料が、対照未処理ラットからのものよりも有意に大きな、変性繊維の割合を含んだことが観察された(図23A、p<0.05、ステューデントt−検定)。さらに、非変性有髄繊維の割合が、対照未処理群においてよりも、シスプラチン処理群で低かった(図23B)。
【0232】
ミエリン面積における、わずかだが、有意ではない減少が、シスプラチン処理開始後44日で観察された(p>0.05、One−way Anova)(図24)。
【0233】
10μg/kgでのIL−6の投与が、シスプラチン−誘導ミエリン鞘薄化を逆転することが明らかであった。
【0234】
反対に、4−MC治療は、シスプラチン−誘導ミエリン鞘薄化を干渉しなかった。
【0235】
小(直径<8μm)および大(直径>8.5μm)繊維をモニタし、大/小繊維比を計算した。図25の結果が、大/小繊維比が、シスプラチン−処理ラットから回収した試料中で明らかに減少したことを示している。大/小繊維比のわずかな増加が、IL−6処理の後に観察された。
【0236】
図26Aで描写したように、シスプラチン投与の停止後3週間で、いまだ、変性繊維の割合が、対照未処理試料と比較して、シスプラチン処理にて、有意に高かった。さらに、非変性有髄繊維の割合は、対照群に比べて、シスプラチン処理群でより低かった(図26B)。IL−6でのラットの処理が、変性繊維の割合を有意に減少させた。有意な効果が、10μg/kg IL−6で得られた。
【0237】
反対に、変性繊維の割合における、わずかだが、有意ではない減少が、4−MC処理によって誘導された(p>0.05、ダネット検定)。
【0238】
上記形態学的解析結果は、10μg/kgでのIL−6が、ミエリン鞘薄化、および繊維の変性を逆転させることを示している。形態学的解析は、システインによって仲介された、ミエリンおよび繊維変性の回復において、4−MCよりも効果的であることを示している(図24および26)。
【0239】
あわせて、実施例11での行動試験、実施例12での電気生理学的試験、および本形態学的解析が、等しく、シスプラチン誘発ニューロパシーにおける、低用量のIL−6の治療的価値を示している。これらの試験は、低用量のIL−6が、シスプラチン−誘発ニューロパシーに対して、よりよい治療効果を持つことを示している。
【0240】
実施例14:タキソール誘発ニューロパシーにおける、IL−6同時投与の効果
先の実施例は、シスプラチンおよびビンクリスチンによって誘発されたニューロパシーにおける、IL−6の効果を示している。
【0241】
以下の実験の目的は、タキソールによって仲介された化学療法誘発ニューロパシーのさらなるモデルにおける、IL−6の可能性のある神経保護効果を調査することであった。IL−6同時投与の可能性のある保護効果を試験した。IL−6の投与を、タキソールの投与と一緒に開始した。3および10μg/kgのIL−6の用量を、毎日、または10μg/kgの場合はまた、1週間に3回のみ投与した。
【0242】
メス10週齢Dark Agoutiラットを使用し、群あたり12匹の動物を以下のように含めた。
1. ビヒクル 毎日 sc
2. タキソールビヒクル 毎日 sc、1日〜49日
3. タキソール IL−6 3μg/kg 毎日、sc 1日〜49日
4. タキソール IL−6 10μg/kg 毎日、sc 1日〜49日
5. タキソール IL−6 10μg/kg sc 3×/wk(TIW)、1日〜49日
6. 4−MC 10μg/kg 毎日、(腹腔内)i.p. 1日〜49日
【0243】
タキソールを、クレモホア/エタノール/デキストロース 5%の溶液中で希釈し、4週間、1週間に2回投与した。
【0244】
4−MCおよび試験化合物処理は、中毒化の最初の日に開始し、試験の最後に終了した。
【0245】
本研究は8週間で実施した(ベースラインのために1週間、タキソール中毒化のために4週間、回復に3週間)。
【0246】
表示用量での、対照、タキソールおよびタキソール−IL−6同時投与ラット群を、繊維/神経機能のタキソール誘導欠損における、IL−6の効果を査定するために、電気生理学的モニタリングにかけた。
【0247】
H波潜時を、すべてのラット群でモニタした。H波潜時における有意な増加が、タキソール処理後3週間で観察した。潜時は、タキソール治療後6週間で、劇的に増加した。
【0248】
3または10μg/kgいずれか、毎日または一週間に3回の、IL−6の同時投与が、実験を通して、H波潜時を予防し/減少させることがわかった(図27)。
【0249】
4−MC処理が、3、5、6および7週にて、H波潜時における改善を示した。
【0250】
H−波振幅を、タキソールで処理したラット、およびIL−6または4−MCを投与したタキソールラットの群からの試料中でモニタした。試験したすべての用量で、IL−6が、実験を通して、タキソールによるH波振幅誘導における減少を、有意に予防したことがわかった(図28)。
【0251】
タキソール投与によって誘導された感覚神経伝導速度(SNCV)における最初の変化が、シスプラチン投与後3週間で観察された。この時点で、シグナル速度は、未処理対照における相当する速度よりも、有意にゆっくりであった(図29)。
【0252】
タキソールとの、3または10μg/kgいずれか、毎日または一週間に3回の、IL−6の同時投与が、タキソールによるSNCVでの変化を予防することがわかった。
【0253】
結果により、毎日または一週間に3回いずれかで、すべての用量で、IL−6の同時投与が、繊維/神経機能のタキソール−誘導欠損を効果的に予防することが示される。結果はまた、低用量のIL−6同時投与の効果的な保存効果が、4−MC同時投与のものよりも有意であることも示している(図28)。
【0254】
実施例15:感覚機能−ホットプレート試験
ラットを、52℃にて維持した加熱−プレート上、17cm高および21cm直径のガラスシリンダーの内部に入れた(Medite OTS 40、Microm、Francheville、Rhone、France)。動物の行動、とりわけ、足をたたくこと、および調節飛躍を観察した。足をたたく前、または熱から逃げるためのジャンプ前(調節飛躍)の潜時を記録した。温度痛を感じるのに必要な時間は、温度感受性に関連し、温度感受性が変わったときに、増加する傾向にある。
【0255】
実施例16:運動神経協調試験
運動神経協調を、5.5cm直径の100cm−長水平木製ロッド、このロッド上1mの距離をカバーするための、テーブル上40cmの一端においたラットによって取られた時間を測定することを含む走行試験を用いて査定した。3回の試験(最大期間:各60s)を実施し、平均値を計算し、特性値として保持した。動物が骨折した場合、60sの最大値でスコア化した。
【0256】
実施例17:筋電図検査法(EMG)
電気生理学的レコーディングを、Neuromatic 2000M筋電図検査法(EMG)(Dantec,Les Ulis,France)を用いて実施した。ラットを、60mg/kg塩化水素ケタミン(Imalgen 500(登録商標)、Rhone Merieux,Lyon,France)のIP注射によって麻酔した。通常の体温を、加熱ランプで30℃周辺に維持し、尾表面上においた、コンタクト温度計(Quick,Bioblock Scientific,Illkirch,France)を用いて確認した。
【0257】
M波シグナルの化合物筋肉活性電位(CMAP)(または電気的に誘因された筋肉電位)を、坐骨神経の刺激後、腓腹筋内で記録した。M波は、筋肉繊維の活性電位のあいだに発達する電流を反映する。参照電極および活性ニードルを、後足に配置した。グラウンドニードルをラットの下背上に挿入した。坐骨神経を、最大上強度にて、単一0.2msパルスで刺激した。運動神経波の速度を記録し、msで表した。
【0258】
感覚神経伝導速度(SNCV)もまた記録した。尾皮膚電極を以下のように置いた。尾のベースにて挿入した参照ニードル、および尾の先端に向かう参照ニードルから30mmはなして配置した陽極ヌードル。グランドニードル電極を、陽極と参照ニードルあいだに挿入した。尾神経を、12.8mAの強度にて、一連の20パルス(たとえば、0.2ms)で刺激した。速度をm/sで表した。
【0259】
H−波反射を、坐骨神経の刺激の後、後足パッド筋肉内で記録した。参照電極およびグランドニードルを、ラットの下背においた。坐骨神経を、最大刺激強度で、単一0.2msパルスで刺激した。H波の振幅(mV)および動物ラッキングH波応答が、研究したパラメータであった。
【0260】
実施例18:形態学的解析
ビンクリスチンとともに、形態学的解析を、群あたり3匹の動物で、ビンクリスチン投与の終了後2週間で実施した。動物を、100mg/kg Imalgene 500(登録商標)のIP注射によって麻酔した。坐骨神経の5mm−切片を摘出し、リン酸緩衝食塩水(PBS)(pH=7.4)中の4% グルタルアルデヒド(シグマ、L’Isle d’Abeau−Chesnes,France)で一晩固定化し、30%スクロース中で維持し、さらなる処理まで、4℃にて保存した。使用する時点で、神経試料を、PBS中1% オスミウム テトラオキシド(シグマ、L’Isle d’Abeau−Chesnes,France)内で2時間、後固定し、連続アルコール溶液中で脱水し、Epon内に埋包した。埋包組織をついで、3日間、70℃にて置き、組織ワックスの重合化を可能にした。1.5μm圧の断面を実施し、1%トルイジン ブルー溶液(シグマ、L’Isle d’Abeau−Chesnes,France)にて2分間染色し、脱水し、Eukitt上にマウントした。試料あたり12切片を、光学顕微鏡(ニコン、東京、日本)を用いて試験し、半自動デジタルイメージ解析ソフトウェア(バイオコム(Biocom)、フランス)を用いて解析した。繊維直径(a)、軸索直径(b)、およびミエリン厚(c)を、以下で図解したように測定した。
【0261】
実施例8でのシスプラチン治療のために、形態学的解析を、群あたり3匹の動物で、実験の最後(週6)に実施した。神経切片あたりの繊維の総数を、各試料の3つの無作為化スライスから得た。計数を、スライスあたり2つの選択した視野上で実施した。
【0262】
実施例13でのシスプラチンのために、形態学的解析を、群あたり3匹の動物で、23および44日で実施した。各神経切片の全表面上の、変性および未変性繊維の数を、ブラインド様式で、オペレーターが計数した。すべての結果(比値としてあらわしたデータを除く)は、対照値に関して、変化の割合として報告した。
【0263】
実施例19:データ解析
すべてのデータを、平均値±SEMとして報告した。統計学的解析を、ウインドウズのためのStatview(SAS インスティテュート社(Institute Inc.))を用いて実施した。2つの治療群(対照対ビヒクル)からのデータの比較を、対応のないステューデントt−検定を用いることによって実施した。2つ以上の治療群からのデータを、Anova、続いて多重比較試験のためのダネット検定によって解析した。データを、種々の群の変数の、時間での多重解析(すなわちデータの縦モード解析)を可能にする、Manovaによって、実験の時間経過にわたって比較し、ダネット検定を使用して、他の群から異なる群を検出した。対象の個々の時間点を、Anovaを用いることによってさらに解析した。H−波シグナルをあらわしている動物の割合を示しているデータの統計学的解析のために、0をH−波を示している動物に割り当て、1をH−波を欠く動物に割り当てた。そのような名目上データに関して、χ2−検定を使用して、統計学的解析を実施した。0.05より小さいか、または等しいp値をあらわしている統計学的解析値を、有意であるとみなした。
【0264】
実施例20:インビボでの、種々の化学療法薬物の抗−腫瘍活性における、IL−6の効果
実施例1〜14にて、IL−6治療が、ビンクリスチン、シスプラチンおよびタキソール治療いずれかで中毒化したラットでの、ニューロパシーを予防する、および遅延させたことが示された。しかしながら、化学療法薬剤による、ニューロパシーの阻害における、IL−6の活性が、悪性細胞の殺傷に関する薬剤の、化学療法的特性を改善することを含まないことを示すことが重要である。
【0265】
この問題を扱うために、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチン、タキソールのような種々の抗腫瘍薬剤、または組み合わせカルボプラチン−タキソールの抗−腫瘍活性におけるIL−6の効果を、2つの腫瘍細胞株、ヒト肺(SK−MES1)および乳(MCF7)腫瘍細胞株の培養液を用いて、インビトロで調査した。
【0266】
ヒト肺(SK−MES1)および乳(MCF7)腫瘍細胞株を、ATCCから得た。細胞株を、1% 抗生物質/抗ミコティック混合溶液(ギブコ(Gibco)、参照15240062)および10% 熱不活性化胎児ウシ血清(ギブコ、参照F7524、バッチ92K3387)を含む、ダルベッコMEM培地(ギブコ、インビトロジェン(Invitrogen)、Cergy−Pontoise,France、参照41965039)中で維持した。細胞を、95%空気中、5%CO2で、37℃にて、加湿インキュベーター中、ヌンク(Nunc)組織培養フラスコ(80cm2)中で増幅させた。
【0267】
ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンおよびタキソールの抗増殖効果におけるIL−6の効果を、実施例22にて記述したように、酸ホスファターゼ活性アッセイを用いて評価した。酵素的活性が、生細胞の数に比例することが証明されてきている(Uedaら;1994)。
【0268】
最後の複製の3日後、腫瘍細胞を、100μl/ウェルの総容量中、ウェルあたり1,500細胞(MCF7株)または3,000細胞(SK−MES1株)の密度で、96−ウェルプレート(TPP、VWR International,Fontenay−sous−bois,France)中にまき、95%空気中5%CO2、37℃にて、加湿インキュベーター中で一晩インキュベートした。細胞培養液をついで、ビンクリスチン(10nM)、シスプラチン(2.5mM)、カルボプラチン(25mM)、タキソール(MCF7細胞のために30nM、SK−MES1細胞のために50nM)、またはシスプラチン(10mM)とタキソール(10nM)の混合液を、細胞培養培地中に加えることによって、中毒化した。(1.8mg/ml、pH:7にて、緩衝溶液中)IL−6を、すぐに、0、3、12、50または200ng/mlの濃度で加えた。
【0269】
中毒化の開始4日後、各細胞培養液中の酸ホスファターゼ活性(実施例21)を査定した。
【0270】
結果によって、両方の腫瘍細胞株において、ビンクリスチン(10nM)、シスプラチン(2.5μM)およびカルボプラチン(25μM)が、対照未処理細胞培養液と比較して、細胞の増殖において、有意な減少(約50%)を誘導した(p<0.001、フィッシャー検定)(それぞれ図30−1 A、B、C、D、図30−2 I、J)。IL−6の存在で、ビンクリスチンまたはシスプラチンまたはカルボプラチン処理MCF7細胞の生存、ビンクリスチン−シスプラチンまたはカルボプラチン中毒化細胞の生存は有意に変化しなかった(p>0.05、One−way Anova)(それぞれ、図30−1 A、C、図30−2 I)。IL−6の存在下、ビンクリスチンまたはシスプラチン治療SK−MES1の生存は、有意に変化しなかった(p>0.05、One−way Anova)(それぞれ、図30−1 B、D)。一方、カルボプラチン−中毒化SK−MES1細胞は、IL−6の存在下、有意な(p£0.001、One−way Anova)生存の減少を示した(図30−2 J)。
【0271】
タキソール(30nM)が、MCF7細胞株の生存において、約55%減少を誘導した(p£0.001、フィッシャー検定)(図30−2 E)。発生した本濃度のタキソールの細胞毒性が、SK−MES1細胞中でわずかに増強され、生存の約70%の減少を示している(図30−2 F)。MCF7またはSK−MES1細胞両方で、IL−6での処理が、細胞増殖におけるタキソールの効果を変化させなかった(p>0.05、One−way Anova)(それぞれ図30−2 EおよびF)。
【0272】
10μMカルボプラチンおよび10nMタキソールの組み合わせで、両方の腫瘍細胞株の型の生存において、40%の減少が観察された(p£0.001、フィッシャー検定)(図30−2 GおよびH)。カルボプラチンとタキソールの組み合わせで中毒化させた両方の型の細胞株の生存は、IL−6の存在下で変化ないままであった(p>0.05、One−way Anova)。
【0273】
以上の実験において、IL−6と種々の化学療法薬剤間のインビトロでの可能性のある薬物相互作用を査定した。インビトロでの結果によって、IL−6が、試験した種々の化学療法薬剤の抗腫瘍活性を改善しなかったことが示された。
【0274】
実施例21:インビボでのシスプラチンの抗腫瘍活性におけるIL−6の効果
以下の実験を、インビボでの、IL−6と化学療法薬剤間の、可能性ある薬物相互作用を確認するために実施した。この目的のために、ヌードマウスでの、ヒトWiDr大腸がん増殖における、IL−6の、単独および/またはシスプラチンとの組み合わせでの効果を評価した。
【0275】
ヒトWiDr大腸がん腫瘍細胞の増殖に関して、影響を受けやすい宿主型であることが証明されているので、Balb/cヌードマウスを使用した。WiDr細胞は、National Cancer Research Institute Genova−Italyのバンクより提供された。細胞種:ヒト78週齢メス、組織:大腸、がん:大腸アデノカルシノーマ、受け入れ番号:ICLC HTLO00003。
【0276】
WiDr細胞を、連続培養液中の培地DMEM+2mM グルタミン+10% FBS中で培養し、単層、上皮形態として増殖させた。
【0277】
64匹のメスBalb/cヌードマウスを、チャールズリバー(Charles River)Italia S.p.A.,Via Indipendenza 11−w22050 CALCO(Lecco)より購入した。前処理順応期間のあいだ、動物を毎日臨床的に観察した。
【0278】
動物を、それぞれ28℃±2および55%±10の温度および相対湿度で、換気薄板状フローキャビネット内でかった。一時間あたり、およそ15〜20空気変化をした。部屋を、12時間サーカディアン周期(7a.m.−7p.m.)で、人口光線によって証明した。
【0279】
各ケージには3匹以上のマウスをいれなかった。各ケージに、実験番号、群、動物数、実験開始日および接種日を含むラベルを貼った。ケージおよび寝具および飲用ボトルを、各ケージ交換の前に、オートクレーブ内で滅菌した。
【0280】
体重を、細胞注射後、4週間、一週間に2回記録した。
【0281】
腫瘍サイズを、細胞接種4日後に開始して4週間、一週間に二回記録した。
【0282】
4週間の観察期間の最後に、動物を、過剰容量のチオペンタールナトリウムのi.p.注射によって犠牲死させた。
【0283】
各Balb/cヌードマウス(約20〜25g体重)に、1日目に、107+5% WiDr細胞/マウス(細胞懸濁、0.2mL/マウス)で皮下(s.c.)で接種させた。
【0284】
ついで動物を、無作為に、群あたり8ラットで、以下の実験群に割り当てた。
【0285】
pH=7、40mMリン酸緩衝液中の0.02%マウスアルブミン(シグマ)をs.c.で与える群。(注射のために、0.9% NaCl無菌水中)3.5mg/kg シス−白金、i.p.を与える群。3、10または30μg/kgにて、(pH=7.0、40mM リン酸緩衝液中、0.02%マウスアルブミン中)IL−6、s.c.でそれぞれ処理する3つのラット群、およびシス−白金3.5mg/kg i.p.との組み合わせで、3、10または30μg/kg IL−6、s.c.のいずれかのIL−6で処理した3つのラット群。
【0286】
3、10および30mg/kgでのIL−6を、4日目から18日目まで、毎日s.c.(10mL/kg)与えた。シス白金(シグマ)3.5mg/kg(10mL/kg)i.p.を、細胞注射の後、4、8、12および18日にのみ与えた。腫瘍サイズを、細胞接種4日後に開始して、4週間、一週間に二回記録した。腫瘍容積(mm3)を方程式(Geran R.I.ら、Cancer Chemotherapy Reports(1972)Part 3,3(2):51):腫瘍容積(mm3)=(長直径)×(短直径)2/2にしたがって推定した。
【0287】
得られた結果により、4、8、12および18日に、3.5mg/kgにて投与したシスプラチンが、腫瘍増殖および抗−増殖効果を減少可能であったことが示される(図31)。シスプラチンの効果は、シスプラチンを中断した後維持された。有意な腫瘍阻害が、18日(p<0.05)、22日(p<0.01)および25日(p<0.001、one−way ANOVA、続いてターキー検定)にて達成された。
【0288】
4日目から18日目までの、皮下経路による毎日の、2、10および30μg/kgでの IL−6のみの投与は、腫瘍の増殖に有意な影響を与えなかった(図32)。IL−6のシスプラチンとの組み合わせが、結果として、シスプラチンのみの治療と似たような阻害腫瘍増殖となった(図33)。
【0289】
結論として、単独またはシス白金との組み合わせでの、IL−6は、WiDr細胞腫瘍増殖、またはシス−白金の化学療法活性いずれも干渉しなかった。
【0290】
実施例22:ホスファターゼアッセイ
培養培地の除去の後、細胞を、リン酸緩衝食塩水(PBS、ギブコ(Gibco)、参照14190−094)でリンスし、さらに、0.1mol/l酢酸ナトリウム(pH5.5)、0.1% Triton X100(シグマ、参照T9284)および10mmol/l リン酸p−ニトロフェニル(シグマ、参照N9389)を含む100μlの緩衝液中、37℃にて90分間インキュベートした。反応を、10μlの、1mol/l、水酸化ナトリウム溶液(Laboratoire de Produit Chimjiques de la Robertsau,Strasbourg,France;参照28.252.293)の添加によって停止させた。着色溶液の吸収を、マイクロプレートリーダー(Labsystems Multiskan Bichromatic,EST−LAB,Strasbourg,France)中、405nmにて測定した。
【0291】
結果を、対照細胞培養液の光学密度の割合としてあらわした。カラムの高さは、2つの独立した培養液からの、5〜6ウェルの割合の、平均値±SEMをあらわしている。
【0292】
データの広範囲の解析を、変数の一方解析を用いて実施した(Anova)。適用可能である場合、フィッシャーのPLSD検定を、多重対比較のために使用した。有意さのレベルは、p<0.05に設定した。
【0293】
実施例23:組換え体ヒトIL−6産出
組換え体ヒトIL−6(r−hlL−6)を、遺伝子工学的に改変したチャイニーズ ハムスター卵巣(CHO)細胞内で産出させた。産出工程は、ワーキング細胞バンク(WCB)からの細胞の増殖と拡張で始まり、r−hlL−6が培養培地中に分泌される条件下で続けられる。r−hlL−6を、改変細胞の培養培地から回収し、精製した。純度は99.6%以上であり、強度は、23.3×106IU/ml(Van Damme J,Van Snick J.Dev Biol Stand.1988:69:31−8の、IL−6のハイブリドーマ増殖因子(HGF)活性に基づく)であった。
【図面の簡単な説明】
【0294】
【図1】ラットの体重における、ビンクリスチン、表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与の効果を示す。平均値±s.e.m.
【図2】ビンクリスチン−誘導運動神経協調欠損の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットでの、歩行試験の結果を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図3】ビンクリスチン−誘導傷害受容欠損の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットでの、ホットプレート試験の結果を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図4】繊維/神経機能のビンクリスチン−誘導機能障害の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットでの、化合物筋肉活性電位(CAMP)の振幅を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図5】繊維/神経機能のビンクリスチン−誘導機能障害の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットでの、CAMPの潜時を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図6】繊維/神経機能のビンクリスチン−誘導機能障害の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットでの、感覚神経伝導速度(SNCV)を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対対照/ビヒクル;ダネット検定)
【図7】繊維/神経形態のビンクリスチン−介在障害の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットから回収した、坐骨神経の線維直径を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図8】繊維/神経形態のビンクリスチン−介在障害の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットから回収した、坐骨神経の軸索直径を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図9】ミエリンのビンクリスチン−介在欠損の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットから回収した、坐骨神経のミエリン厚を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)
【図10】ビンクリスチン介在線維変性の予防によって明らかにされた、ビンクリスチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、ビンクリスチン−処置、対表示用量でのビンクリスチン−IL−6同時投与、またはビンクリスチン−4−MC同時投与ラットから回収した、試料中の変性線維の割合を示す。*p<0.05 平均値±s.e.m.(対 対照/ビヒクル;ダネット検定)。
【図11】ラットの体重における、シスプラチン、表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与の効果を示す。平均値±s.e.m.。
【図12】シスプラチン誘導傷害受容欠損の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットからの、ホットプレート試験の結果を示す。*p<0.05(対 シスプラチン/ビヒクル)。
【図13】繊維/神経機能のシスプラチン−誘導機能障害の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチンン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットでの、H波の振幅を示す。*p<0.05(対 シスプラチン/ビヒクル)。
【図14】繊維/神経機能のシスプラチン−誘導機能障害の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットでの、SNCVを示す。平均値±s.e.m *p<0.05(対 シスプラチン/ビヒクル)。
【図15】繊維形態のシスプラチン−誘導障害の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットから回収した、坐骨神経の繊維直径を示す。
【図16】神経形態のシスプラチン−誘導障害の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットから回収した、坐骨神経の軸索直径を示す。
【図17】ミエリンのシスプラチン−誘導欠損の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットから回収した試料中の、有髄線維の割合を示す。
【図18】シスプラチン−誘導線維変性の予防によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットから回収した、試料中の変性線維の割合を示す。
【図19】傷害受容欠損のシスプラチン−仲介誘導の改善によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットからの、ホットプレート試験の結果を示す。
【図20】繊維/神経機能のシスプラチン−誘導機能障害の改善によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチンン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットでの、振幅H波を示す。
【図21】繊維/神経機能のシスプラチン−誘導機能障害の改善によって明らかにされた、シスプラチン−仲介ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、シスプラチン−処置、対表示用量でのシスプラチン−IL−6同時投与、またはシスプラチン−4−MC同時投与ラットでの、SNCVを示す。
【図22】ラットのシスプラチン−処置群から回収した試料中のミエリン面積の変化を示す。
【図23A】ラットのシスプラチン−処置群から回収した試料中の変性線維の変化を示す。
【図23B】ラットのシスプラチン−処置群から回収した試料中の、非変性線維における変化を示す。
【図24】ミエリンのシスプラチン−誘導欠損の改善によって明らかにされた、シスプラチン−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、シスプラチン−処置ラット、およびIL−6または4−MCを投与したシスプラチン処置ラットから回収した試料中の、ミエリン面積を示す。
【図25】シスプラチン−処置ラット、およびIL−6または4−MCを投与したシスプラチン処置ラットから回収した試料中の、大/小繊維比のシスプラチン仲介変化の改善によって明らかにされた、シスプラチン−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。
【図26A】シスプラチン−誘導線維変性の改善によって明らかにされた、シスプラチン−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、シスプラチン−処置ラット、およびIL−6または4−MCを投与したシスプラチン処置ラットから回収した試料中の、変性線維の変化を示す。
【図26B】シスプラチン−誘導線維変性の改善によって明らかにされた、シスプラチン−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、シスプラチン−処置ラット群、およびIL−6または4−MCを投与したシスプラチン処置ラットから回収した試料中の、非変性線維の変化を示す。
【図27】タキソール−誘導線維変性の改善によって明らかにされた、タキソール−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の治療効果を示す。本図は、タキソールで処置したラット、およびIL−6または4−MCを投与したタキソール−処置ラットにおける、H−波潜時を示す。
【図28】H−波の振幅の減少の予防によって明らかにされた、タキソール−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、タキソールで処置したラット群、およびIL−6または4−MCを投与したタキソール−処置ラットにおける、H−波の振幅を示す。
【図29】タキソール仲介SNCV減少の予防によって明らかにされた、タキソール−誘導ニューロパシーにおけるIL−6の予防効果を示す。本図は、タキソールで処置したラット、およびIL−6または4−MCを投与したタキソール−処置ラットにおける、SNCVを示す。
【図30−1】MCf−7またはSK−MES1細胞中の、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンおよびタキソールの抗増殖効果対するIL−6の効果を示す。A−MCF7−ビンクリスチン、B−SK−MES−1−ビンクリスチン、C−MCF−7−シスプラチン、D−SK−MES1−シスプラチン。
【図30−2】MCf−7またはSK−MES1細胞中の、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンおよびタキソールの抗増殖効果に対するIL−6の効果を示す。E−MCF7−タキソール、F−SK−MES1−タキソール、G−MCF7−タキソール+カルボプラチン、H−SK−MES−タキソール+カルボプラチン、I−MCF7−カルボプラチンおよびJ−SK−MES1−カルボプラチン。
【図31】ヌードマウスにおける、ヒトWiDr結腸癌腫瘍増殖における、シス−プラチナの効果を示す。
【図32】ヌードマウスにおける、ヒトWiDr結腸腫瘍増殖における、IL−6(アテキサキン アルファ)の効果を示す。
【図33】ヌードマウスにおける、ヒトWiDr結腸腫瘍増殖における、シス−プラチナとの組み合わせでの、IL−6(アテキサキン アルファ)の効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための医薬の製造のための、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の使用。
【請求項2】
前記化学療法誘発末梢性ニューロパシーが、少なくとも1つの化学療法薬剤によって引き起こされる請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記少なくとも1つの化学療法薬剤が、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンまたはタキソールである請求項2記載の使用。
【請求項4】
前記化学療法薬剤が、カルボプラチンとタキソールとの混合物よりなる請求項2記載の使用。
【請求項5】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量が、4〜210μgの範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量が、7〜140μgの範囲である請求項5記載の使用。
【請求項7】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量が、約4、7、14、28、70または140μgである請求項5記載の使用。
【請求項8】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩が、1つ以上の部位でグルコシル化される請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩が、グルコシル化されていない請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記IL−6の機能性誘導体が、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に連結した少なくとも1つの化学部分を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記化学部分が、ポリエチレングリコール部分である請求項10記載の使用。
【請求項12】
化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための医薬の製造のための、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、活性画分または円順列誘導体を産生する組換え細胞の使用。
【請求項13】
化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための医薬の製造のための、IL−6のコード配列を含み、かつ低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、活性画分または円順列誘導体を発現可能であるベクターの使用。
【請求項14】
前記ベクターがレンチウイルスベクターである請求項13記載の使用。
【請求項15】
医薬の製造のための、少なくとも1つの化学療法薬剤と、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体または断片との組み合わせの使用。
【請求項16】
前記少なくとも1つの化学療法薬剤がビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンまたはタキソールである請求項15記載の使用。
【請求項17】
前記化学療法薬剤が、カルボプラチンとタキソールとの混合物である請求項15記載の使用。
【請求項18】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩が、1つ以上の部位でグルコシル化されている請求項15〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩が、グルコシル化されていない請求項15〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
IL−6の機能性誘導体が、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に連結した少なくとも1つの化学部分を含む請求項15〜19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記化学部分が、ポリエチレングリコール部分である請求項20記載の使用。
【請求項22】
低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩を、少なくとも1つの化学療法薬剤での治療下または治療前に、患者に投与することを含む、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの治療および/または予防方法。
【請求項23】
前記患者が、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの罹患に関してハイリスク患者である請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記患者が、循環中に高レベルのIL−6レセプターを示す請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を、毎日投与する請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を、1週間に3回投与する請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩を、少なくとも2週間投与する請求項22〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を、皮下に投与する請求項22〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記低用量のIL−6の投与が、内因性遺伝子の活性化(EGA)によって達成される請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記低用量のIL−6の投与が、IL−6を産出する組換え細胞の投与によって達成される請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記低用量のIL−6の投与が、IL−6を発現可能であるベクターの投与によって達成される請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
患者における、化学療法誘発末梢性ニューロパシーを予防するために、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩を投与することを含む、化学療法薬剤での治療下、または治療の前の、患者への少なくとも1つの化学療法薬剤の用量を増加させるため、および/または投与を延長するための方法。
【請求項33】
前記IL−6が、化学療法薬剤の投与前、あいだおよび/または後のいずれかに投与される請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩の用量が、0.06〜3μg/kg体重の範囲内である請求項32または33記載の方法。
【請求項35】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩の用量が、0.1〜2μg/kg体重の範囲内である請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩の用量が、約0.2、0.3、1、2または3μg/kg体重である請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量が、4〜210μgの範囲である請求項32または33記載の方法。
【請求項38】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量が、7〜140μgの範囲である請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量が、約4、7、14、28、70または140μgである請求項37記載の使用。
【請求項40】
薬学的に許容され得る担体、およびIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体または断片と少なくとも1つの化学療法薬剤との組み合わせを含む医薬組成物。
【請求項41】
前記少なくとも1つの化学療法薬剤が、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンまたはタキソールである請求項40記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記化学療法薬剤が、カルボプラチンとタキソールの混合物からなる請求項40記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩が、1つ以上の部位でグルコシル化されている請求項40〜42のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩が、グルコシル化されない請求項40〜42のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記IL−6の機能性誘導体が、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に連結した、少なくとも1つの化学部分を含む請求項40〜44のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記化学部分が、ポリエチレングリコール部分である請求項45記載の医薬組成物。
【請求項47】
さらに神経保護薬物を含む請求項40〜46のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記神経保護薬物が、神経増殖因子(NGF)である請求項47記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記神経保護薬物が、グルタミンである請求項47記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の量が、4〜210μgの範囲である請求項40〜49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の量が、7〜140μgの範囲である請求項50記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の量が、約4、7、14、28、70または140μgである請求項50記載の医薬組成物。
【請求項53】
それぞれ1つの化学療法薬剤を含む1つ以上の容器;IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を含む1つの容器;および化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための、該化学療法薬剤および該IL−6の投与のための仕様説明書、を含むキット。
【請求項54】
それぞれ1つの化学療法薬剤を含む2つの容器(1つの容器がカルボプラチンを含み、もう1つの容器がタキソールを含む)を含む請求項53記載のキット。
【請求項55】
各容器内のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の量が、4〜210μgの範囲である請求項53または54記載のキット。
【請求項56】
各容器内のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の量が、7〜140μgの範囲である請求項55記載のキット。
【請求項57】
各容器内のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の量が、約4、7、14、28、70または140μgである請求項55記載のキット。
【請求項58】
神経保護薬物を含むさらなる容器を含む請求項53、54、55、56または57記載のキット。
【請求項59】
前記神経保護薬物が、神経増殖因子(NGF)である請求項58記載のキット。
【請求項60】
前記神経保護薬物が、グルタミンである請求項58記載のキット。
【請求項1】
化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための医薬の製造のための、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の使用。
【請求項2】
前記化学療法誘発末梢性ニューロパシーが、少なくとも1つの化学療法薬剤によって引き起こされる請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記少なくとも1つの化学療法薬剤が、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンまたはタキソールである請求項2記載の使用。
【請求項4】
前記化学療法薬剤が、カルボプラチンとタキソールとの混合物よりなる請求項2記載の使用。
【請求項5】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量が、4〜210μgの範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量が、7〜140μgの範囲である請求項5記載の使用。
【請求項7】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量が、約4、7、14、28、70または140μgである請求項5記載の使用。
【請求項8】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩が、1つ以上の部位でグルコシル化される請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩が、グルコシル化されていない請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記IL−6の機能性誘導体が、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に連結した少なくとも1つの化学部分を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記化学部分が、ポリエチレングリコール部分である請求項10記載の使用。
【請求項12】
化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための医薬の製造のための、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、活性画分または円順列誘導体を産生する組換え細胞の使用。
【請求項13】
化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための医薬の製造のための、IL−6のコード配列を含み、かつ低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、活性画分または円順列誘導体を発現可能であるベクターの使用。
【請求項14】
前記ベクターがレンチウイルスベクターである請求項13記載の使用。
【請求項15】
医薬の製造のための、少なくとも1つの化学療法薬剤と、IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体または断片との組み合わせの使用。
【請求項16】
前記少なくとも1つの化学療法薬剤がビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンまたはタキソールである請求項15記載の使用。
【請求項17】
前記化学療法薬剤が、カルボプラチンとタキソールとの混合物である請求項15記載の使用。
【請求項18】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩が、1つ以上の部位でグルコシル化されている請求項15〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩が、グルコシル化されていない請求項15〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
IL−6の機能性誘導体が、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に連結した少なくとも1つの化学部分を含む請求項15〜19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記化学部分が、ポリエチレングリコール部分である請求項20記載の使用。
【請求項22】
低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩を、少なくとも1つの化学療法薬剤での治療下または治療前に、患者に投与することを含む、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの治療および/または予防方法。
【請求項23】
前記患者が、化学療法誘発末梢性ニューロパシーの罹患に関してハイリスク患者である請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記患者が、循環中に高レベルのIL−6レセプターを示す請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を、毎日投与する請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を、1週間に3回投与する請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩を、少なくとも2週間投与する請求項22〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を、皮下に投与する請求項22〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記低用量のIL−6の投与が、内因性遺伝子の活性化(EGA)によって達成される請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記低用量のIL−6の投与が、IL−6を産出する組換え細胞の投与によって達成される請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記低用量のIL−6の投与が、IL−6を発現可能であるベクターの投与によって達成される請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
患者における、化学療法誘発末梢性ニューロパシーを予防するために、低用量のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩を投与することを含む、化学療法薬剤での治療下、または治療の前の、患者への少なくとも1つの化学療法薬剤の用量を増加させるため、および/または投与を延長するための方法。
【請求項33】
前記IL−6が、化学療法薬剤の投与前、あいだおよび/または後のいずれかに投与される請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩の用量が、0.06〜3μg/kg体重の範囲内である請求項32または33記載の方法。
【請求項35】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩の用量が、0.1〜2μg/kg体重の範囲内である請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分、円順列誘導体または塩の用量が、約0.2、0.3、1、2または3μg/kg体重である請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量が、4〜210μgの範囲である請求項32または33記載の方法。
【請求項38】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量が、7〜140μgの範囲である請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の用量が、約4、7、14、28、70または140μgである請求項37記載の使用。
【請求項40】
薬学的に許容され得る担体、およびIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体または断片と少なくとも1つの化学療法薬剤との組み合わせを含む医薬組成物。
【請求項41】
前記少なくとも1つの化学療法薬剤が、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンまたはタキソールである請求項40記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記化学療法薬剤が、カルボプラチンとタキソールの混合物からなる請求項40記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩が、1つ以上の部位でグルコシル化されている請求項40〜42のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩が、グルコシル化されない請求項40〜42のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記IL−6の機能性誘導体が、アミノ酸残基上の1つ以上の側鎖に存在する1つ以上の官能基に連結した、少なくとも1つの化学部分を含む請求項40〜44のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記化学部分が、ポリエチレングリコール部分である請求項45記載の医薬組成物。
【請求項47】
さらに神経保護薬物を含む請求項40〜46のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記神経保護薬物が、神経増殖因子(NGF)である請求項47記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記神経保護薬物が、グルタミンである請求項47記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の量が、4〜210μgの範囲である請求項40〜49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の量が、7〜140μgの範囲である請求項50記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の量が、約4、7、14、28、70または140μgである請求項50記載の医薬組成物。
【請求項53】
それぞれ1つの化学療法薬剤を含む1つ以上の容器;IL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩を含む1つの容器;および化学療法誘発末梢性ニューロパシーの予防および/または治療のための、該化学療法薬剤および該IL−6の投与のための仕様説明書、を含むキット。
【請求項54】
それぞれ1つの化学療法薬剤を含む2つの容器(1つの容器がカルボプラチンを含み、もう1つの容器がタキソールを含む)を含む請求項53記載のキット。
【請求項55】
各容器内のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の量が、4〜210μgの範囲である請求項53または54記載のキット。
【請求項56】
各容器内のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の量が、7〜140μgの範囲である請求項55記載のキット。
【請求項57】
各容器内のIL−6、そのムテイン、アイソフォーム、融合タンパク質、機能性誘導体、活性画分または円順列誘導体または塩の量が、約4、7、14、28、70または140μgである請求項55記載のキット。
【請求項58】
神経保護薬物を含むさらなる容器を含む請求項53、54、55、56または57記載のキット。
【請求項59】
前記神経保護薬物が、神経増殖因子(NGF)である請求項58記載のキット。
【請求項60】
前記神経保護薬物が、グルタミンである請求項58記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30−1】
【図30−2】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30−1】
【図30−2】
【図31】
【図32】
【図33】
【公表番号】特表2007−534746(P2007−534746A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510235(P2007−510235)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000444
【国際公開番号】WO2005/105135
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(303066954)アプライド・リサーチ・システムズ・エイアールエス・ホールディング・ナムローゼ・フェンノートシャップ (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000444
【国際公開番号】WO2005/105135
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(303066954)アプライド・リサーチ・システムズ・エイアールエス・ホールディング・ナムローゼ・フェンノートシャップ (4)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]