説明

化学発光化合物

【課題】化学発光分子の検出の鋭敏な検出感度を共鳴エネルギー転移リガンド結合方法と結び付けるために使用することができる分子の提供。
【解決手段】互いに相補的である末端、及び標的配列に相補的である15から30塩基の配列を含む中央部分を有する40以下の塩基を含む核酸プローブに関し、この核酸プローブは、5’末端において一般式(I):


の化学発光アクリジニウムエステル標識化化合物で標識化され、そして、この核酸プローブは、3’末端において、クエンチャで標識化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種リガンド結合法で化学発光標識として有用である化合物、これらの化合物を用いる分析方法及びそれらを含むキットに関する。特に、特定のアクリジニウム誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
化学発光は化学反応が光の放出をもたらす現象である。これが生じるのは、反応生成物が電子的な励起状態で形成され、その結果、その基底状態に戻るために電磁放射(可視スペクトルでよく起こる)を発するためである。
【0003】
分析試薬の標識化のために化学発光エネルギー転移系を使用することについてこれまで説明されてきた。このような標識化系では、発光ドナー−アクセプター対が提供され、それらの相対的な距離がリガンド結合事象の有無に依存している。例えば、リガンドと反リガンドが結合複合体として存在するときに、化学発光放出がアクセプターの近接近によって変調されるように、リガンドは化学発光エミッターに結合し、対応する反リガンドはエネルギーアクセプターに結合する。このような変調は、アクセプター分子の性質にしたがって、化学発光強度全体の損失として、又は放出の波長の変化として現れる。
【0004】
免疫学的検定や核酸ハイブリダイゼーション分析などのリガンド結合法での標識化分子として、化学発光アクリジニウム塩が広く用いられてきた。このような分析方法は、直接的に共有結合によって、又は標識化分子がストレプトアビジンに結合するビオチン−ストレプトアビジン結合によって例証される二次的リガンド結合によって、これらの分子をリガンド又は反リガンドに結合することに関する。
【0005】
化学発光アクリジニウム標識化分子として作用可能である分子に必要な特徴としては、単純に、1)(例えば標識化)リガンドに前述のリガンドの反応性に影響を及ぼさないで結合可能であること、及び2)標識化化合物がその化学発光の活性を実質的に維持することである。これらの特徴をなす特定の分子構造であれば標識化化合物として作用することができ、実際に多くのそのような構造が説明されてきた。
【0006】
例えば、EP−A−0082636は式
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、RはH、C〜C10の任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールを表し、
及びRは水素、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、ヒドロキシル、アルコキシル、ニトロ又はハロであり、
は任意に置換されたフェノキシ部分である。]
【0009】
の化学反応標識としてのアクリジニウム化合物に関する。
【0010】
アクリジニウム系を酸化し、ジオキセタノン中間体を経由してC−9位置でケトン基の形成を引き起こす過酸化水素の処理で、このタイプのアクリジニウム化合物は化学発光放射を発する。この生成物は励起状態で形成され、この励起状態は引き続いて電磁放射の放出でその対応する基底状態に緩和する。
【0011】
しかしながら、EP−A−0082636に記載された化合物はフェノキシ部分Rの置換を経由してリガンドに結合し、これによって、過酸化水素の処理後にアクリドン環系を放出する放射はもはやリガンドに結合しない。化学発光放射がリガンドによって非特異的にクエンチされることがないという点で、これは特定の効果があるかもしれない。しかし、一方で、このタイプの化合物を使用すると、特定のクエンチングが必要である化学発光エネルギー転移系で最適でないかもしれない。
【0012】
この潜在的な問題は、PatelとCampbellによってClin. Chem., 29(9), 1604-1608(1983)で検討された。この文献は、化学発光化合物のアミノブチルエチル−イソルミノールとそのイソチオシン酸塩誘導体を用いた化学発光エネルギー転移分析方法に関する。別の化学発光ドナーを用いたエネルギー転移の大きさを改善する試みは失敗したと、著者は述べている。特に、「アクリジニウム標識IgGの間ではいかなるエネルギー転移もいまだ検出されていない…」と述べている。これは、化学発光反応の間に、励起したN−メチルアクリドンが抗原から切断されるためであるはずと推測している。アクリジニウムの励起反応は、抗体−抗原複合体を分離させる高pHで最適な触媒作用があるということも著者は指摘している。
【0013】
EP−A−0324202は式
【0014】
【化2】

【0015】
[式中、Aは二価の有機部分であり、
XはC−9のアクリジニウム原子と過酸化水素とともにジオキセタンを形成することができる置換基であり、
Yは対イオンであり、
Zは官能基であり、
ベンゼン環は低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲンなどのような一以上の置換基を担持することができる。]
【0016】
の化学発光アクリジニウム化合物に関する。
【0017】
これらの化合物とEP−A−0082636のものとの間には、それらがZ基を経由してリガンドに結合するという違いがあるといわれている。したがって、過酸化水素との反応に続いて、化学発光エミッターはリガンドに付着したままである。
【0018】
しかしながら、この技術に関する問題が以前認められたものより複雑であることと、EP−A−0324202の提案に反して、それに関するほとんどの化合物が化学発光エネルギー転移系での使用に適していないこととについて、本発明者らは理解するようになる。
【0019】
実際に、それは化学発光エネルギー転移系での問題になっており、これは、蛍光放出標識を用いるエネルギー転移系が広く使用される一方で、それらの化学発光に対応するものでは商業的な用途が見つからなかった。これは、化学発光が従来の蛍光よりはるかに大きい感度で検出されることができ、したがって分析的な終点としてはるかにより望ましくなるという事実にかかわらずである。
【0020】
共鳴エネルギー転移系での蛍光系の成功と、それらの化学発光の対応するものの成功の不足との1つの理由としては、蛍光の開始が物理的で非侵入のプロセスであることである。一方、化学発光の開始は化学状態での変化を必要とする。この化学状態はアクセプターの光学的特性を変換し、それがモニターするように設計されているまさにリガンド/反リガンドの相互作用を分離するかもしれない。
【0021】
EP−A−0324202に記載されたアクリジニウム化合物はエネルギー転移分析方法に役立つことを意図しているが、ほとんどのこれらの化合物は、評価される結合複合体の整合性を維持する間、開始される化学発光反応を可能にすることができないということを本発明者らは理解するようになる。これは、X基がフェノキシカルボニル基である化合物を標識化するアクリジニウムエステルの唯一の例として確かに真実である(実施例21及び25参照)。
【0022】
例証した唯一のアクリジニウムエステル化合物を含むEP−A−0324202のほとんどの化合物は、かなりのアルカリ状態を除いて役立つ化学発光放出をもたらさないため、問題が起こる。唯一の例で説明したように、化学発光はpH≧12で開始する。しかしながら、ほとんどの結合複合体は、標識化分子の化学発光反応を開始するために必要なかなりのアルカリ性のpHで解離する。化学発光標識としてのEP−A−0324202の多くのアクリジニウム化合物の使用では、信号測定時に維持されるように結合複合体の完全性を普遍的に必要とする化学発光共鳴エネルギー転移系でそれらを実行可能に使用することができないため、その使用が非常に制限されるということをこれは意味する。文献ではこの考慮を述べていないためEP−A−0324202の著者によって正しく理解されていないことは明らかであった。したがって、意図されるように化合物が実際に実施可能であるというEP−A−0324202の提案からは、立証する方法がない。
【0023】
先行技術の化合物で必要とされる高pH値の他の問題としては、一般的に使用される多くのクエンチャ分子の吸収スペクトルがpH依存性であり、従来のアクリジニウム標識から化学発光の開始のために必要とされる高いpHによってそのようなクエンチャが役立たなくなる。また、EP−A−0324202の著者によってこの問題は正しく評価されておらず、実際に、この文献では、説明している化合物との組合せで使用されるはずであるクエンチャについていずれも示唆していない。
【0024】
アクリジニウム化合物は12〜14より低いpH値で化学発光反応に耐えることが可能であると説明されているが(EP−A−0682254)、これらの化合物は酵素基質として使用され、リガンドと結合するための標識化化合物でない。EP−A−0682254によれば、適切な分子をEP−A−0324202のような文献で述べられる方法を使用して調製することができると提案するが、特に、生物学的興味の物質に共有結合するために必要な反応基がそこで示唆されている化合物の特徴ではないと述べている。したがって、これらの先に述べた化合物は本発明の化合物とは構造的に完全に別であり、それらは標識化化合物としての用途に適していない。カップリング基を含むEP−A−0682254の分子に適応して化学発光の開始に対するpHについての影響、及び生物学的興味の物質にそのように適用した分子のカップリングについての影響を予測することはできない。
【0025】
化学発光エネルギー転移反応での他の問題としては、化学発光標識化分子に加えて、それらが標識化分子の放出スペクトルで少なくとも部分的にであるが好ましくは完全に重複する吸収スペクトルを有する適切なクエンチャを必要とすることである。多数のクエンチャがわかっていると仮定すると問題となるようにみえないかもしれないが、実際は、標識化分子とクエンチャ両方のスペクトル範囲がそれらの環境のpHでかなり変化することができるため単純なことではない。
【0026】
したがって、化学発光転移系が必要とする化学発光標識化分子としては、結合複合体の解離を回避するために十分に低いpHで化学発光放射を放出するものであり、適切なクエンチャのスペクトルと重複するスペクトルを有するpHで化学発光放射を放出するものでもある。
【0027】
このように、化学発光分子の検出の鋭敏な検出感度を共鳴エネルギー転移リガンド結合方法と結び付けるために使用することができる分子が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の第1の構成では、一般式(I)
【0029】
【化3】

【0030】
[式中、[Rはアミノ又はチオール部分と反応可能である反応基であり、
はヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はC〜Cアルコキシと任意に置換される2〜12の炭素原子を有する炭化水素結合部分であり、及び
は水素、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、アリール、縮合アリール、C〜Cアルコキシ、C〜Cアシル、ハロゲン化物、ヒドロキシ又はニトロである、又は
−L−の組合せは、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はC〜Cアルコキシで任意に置換されるC〜Cアルキル基を有し、及び
は、R−L−基を有し、Rはアミン又はチオール部分と反応可能である反応基であり、Lは上記で定義したとおりである]、
[Lは−C(=O)O−、−C(=O)−S−、又は−C(=O)N(SO)−であり、いずれにおいても−C(=O)は環状炭素原子に結合し、RはC〜Cアルキル、アリール、C〜Cアルコキシ又はC〜Cアシルである]、
[Rは、置換C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル又はアリール基であり、前述の置換のうち少なくとも1つは、Rから形成される離脱基とL基の−O、−S又はーN(SO)との共役酸のpKaが≦約9.5であるように電子求引性である]、及び
[Xが分子の合成及び処理の結果として形成されるアニオンである]]の化合物であり、
この化合物は、一方又は両方の外環に1以上のさらなるR部分を、前述のR部分のうち1つのみがR−L−基を有することができるという条件で含む化合物を提供する。
【0031】
基の置換基は、Rによって形成される離脱基とL基の−O、−S又は−N(SO)の共役酸が≦約9.5となるように選択される。これは、実際に、Rの置換基の少なくとも1つが電子求引性であることを意味する。分子がpH8以下で有効な化学発光であるため、これは特に重要な特徴である。これによって、本発明の化合物は、先行技術の化合物、特にEP−A−0324202で例証される化合物に対して重要な利点を有する。EP−A−0324202(実施例21及び25)で例証されるエステル化合物のみではpH8で有効な化学発光放出を生成しないで、実際には、使用可能な化学発光放出のために少なくとも12のpHを必要とする。
【0032】
先行技術の化合物に対して、本発明の最適化されたアクリジニウム標識の化学発光放出は、一般的に使用されるクエンチャ及びリガンド結合複合体の安定した必要要件に適合したpH値で開始することができる。
【0033】
このように、EP−A−0324202では化学発光標識として役立つ化合物に関連することを意図しているが、上述したように概説される問題を特定していない。さらに、エネルギー転移分析方法にはいかなる化合物の使用について例がなく、実際、文献で述べられる一般式はそのような分析方法で完全に使用できない多数の化合物を包含する。この文献には、クエンチャを化合物との組合せで使用することができるかもしれないことについても提案がされていない。EP−A−0324202での化学発光のアクリジニウムエステルの唯一の例では、本発明のRに等価の位置にフェノキシ置換基を有し、化学発光放出の間、12を上回るpHで反応が起こる。このpHでは、いかなる結合複合体も解離してしまうし、多くのクエンチャの効果がなくなってしまう。
【0034】
EP−A−0324202は実施例1から8で中間体のエステル化合物を開示する。このように、多数の化合物がEP−A−0324202に包含されるが、この文献の著者はエネルギー転移分析方法での目的でその化合物の構造が重要であるという認識を示していない。実際に、電子吸引性の化合物のみがエネルギー転移分析方法で使用可能であるということを本発明者らが見つけたときに、非置換の化合物、電子求引性の化合物及び電子供与性の化合物を同量で与える。EP−A−0324202に記載される唯一の測定条件はpH≧12であり、結果としてエネルギー転移を不可能とするリガンド結合複合体の解離となる。置換基のタイプが有効であること、及び化学発光の最終生成物に変換される唯一のアクリジニウムエステルの前駆体が実施例1の化合物であり、これは非置換のフェニルエステルであることについて、文献には提案又は認識すらない。実施例25の実例によれば、この化合物は基本的な過酸化水素で処理するときに化学発光性であるが、化学発光化合物のリガンドへの結合又は化学発光エネルギー転移分析方法の例はない。実際に、すでに述べたように、例証された特定の化合物はこの分析で使用することができないはずである。したがって、この先行技術の文献から、特定の化合物が化学発光エネルギー転移分析方法で役立つかについて確認することは完全に不可能である。しかしながら、本発明のいくつかの実施の形態では、Rが4−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、4−アセチルフェニル又は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルである化合物が一般式(I)の定義から状況次第で除外される。
【0035】
本発明との関係では、「リガンド」という用語は、複合体を形成する「反リガンド」として称される第2部分に特に結合することができる任意の部分に関する。リガンドと反リガンドの例は、抗体と抗原又は抗原決定基、核酸配列、酵素と酵素基質、及びレセプターとレセプター結合分子を含む。
【0036】
「標識化分子」は、リガンド又は反リガンドと化学的に結合することができ、及びリガンド又は反リガンドを検出することを可能にする検出可能な信号を放出する分子に関する。本発明の標識化分子は化学発光標識化分子であり、これは適切な化学反応の開始で化学発光放射を放出することができる。
【0037】
「クエンチャ」は、リガンド又は反リガンドと化学的に結合することができる分子に関し、また、クエンチャを標識化分子と近接近(一般的に10nm未満)させるときに化学発光又は蛍光放出スペクトルが変調されるように、標識化分子の化学発光又は蛍光放出スペクトルと完全に又は部分的に重複する吸収スペクトルを有する分子に関する。
【0038】
「C〜Cアルキル」は、8以下の炭素原子を有する直鎖又は分岐飽和炭化水素鎖に関連する。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、t−ブチル、n−ヘキシル及びn−オクチルが含まれる。「C〜Cアルキル」は、同様の意味であるが1から4までの炭素原子を有する。
【0039】
「C〜Cアルケニル」は、2から8までの炭素原子を有し少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む直鎖又は分岐炭化水素鎖に関する。エテニル、2−プロペニル及び3−ヘキセニルが例として含まれる。
【0040】
「C〜Cアルキニル」は、2から8までの炭素原子を有し少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む直鎖又は分岐炭化水素鎖に関する。エチニル、2−プロピニル及び3−ヘキシニルが例として含まれる。
【0041】
「ハロアルキル」は、クロロ、フルロ、ブロモ及びヨードからなるグループから選択される1以上の置換基を有するアルキル基に関する。
【0042】
「アリール」は、例えば窒素、酸素又は硫黄などの1以上のヘテロ原子を含むことができる5から10員環の単一又は縮合芳香族環系に関する。フェニル、ピリジル、フラニル及びナフタレニルが例として含まれる。
【0043】
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードに関連し、「ハロゲン化物」はフッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物に関連する。
【0044】
標識化分子を生物学的に重要な分子に結合させる手段は十分に確立しており、本発明を実施することができるRおよびLの多くの変形例があることはいうまでもない。しかしながら、Lが2から10の炭素原子を含むときに良好な結果に達することがわかってきた。より好ましくは、Lがメチレン単位からなる完全飽和鎖である。
【0045】
化合物を生物学的に重要な分子と結合するときに特に役立つことがわかってきたRとR基は、スクシンイミジルエステル及びイミダートエステルのような活性エステルと、クロロカルボニル、ブロモカルボニル、ヨードカルボニル、クロロスルホニル及びフルオロジニトロフェニルのような活性ハロゲン化物とを含む。
【0046】
同様に、化学発光の活性化を保持させ、化学発光標識の放出波長を変換するために使用することができるRによって表すことができる多数の置換があることが十分に確立されている。これは分析方法で使用されるクエンチャの選択に影響する。しかしながら、本発明者らは、最も役立つ化合物はRが水素又はC〜Cアルキル、特にメチル又はエチルであるものを含むことをみつけた。これらがアクセプターメチルレッドとの組合せの用途に適しているからである。Rが水素である化合物が特に好ましい。
【0047】
本発明の好ましい化合物では、Lは−C(=O)−である。
【0048】
すでに上述したように、Rは、Rによって形成される離脱基と−O、−S又は−N(SO)との共役酸のpKaが≦約9.5となるように選択されなければならず、これは少なくとも1つの電子求引基を含むことを意味する。
【0049】
しかしながら、R部分が反応しすぎる離脱基を形成するならば、これは化合物が標識化化合物として役立つために必ずしも十分に安定していないことを意味する。化学発光転移分析方法のための標識化化合物としての最適効率のために、従って、Rで形成される離脱基とL基の−O、−S又は−N(SO)との共役酸のpKaは≧3であることが好ましい。
【0050】
したがって、電子求引基に加えて、R置換基は、電子求引性でない基を含むことができ、存在する電子求引基の効果が優性であるならば電子供与性であってもよい。Rの構造は、化学発光反応の結果である離脱基のpKa値の計算によって直ちに予測可能であり、従って、そのような基の範囲は当業者によって認識されることができる。
【0051】
しかしながら、例えば、有用なR基は、1以上のハロゲン化物又はハロゲン化アルキルと置換したアルキル又はアリール基を含む。特に好ましい化合物は、Rがそのような基と、特にニトロ、フッ素、塩素、臭素又はトリフルオロメチルと2及び6位置でそれぞれ置換されるフェニル基であるものを含む。このような基の例としては、2,6−ジブロモフェニル、2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニル及び2,6−ジニトロフェニルを含む。
【0052】
は、多くの適切なアニオンのうちの任意の1つであってもよいが、ヨウ化物、フルオロ硫酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩又はトリフルオロ酢酸のようなハロゲン化物又はハロゲン化物含有アニオンが好ましい。
【0053】
が水素又は低級アルキルである化合物がエネルギーアクセプターとしてのメチルレッドとの使用で特に適当である。これらの化合物は、これらの化学発光放出のスペクトルがpH9でのクエンチャのメチルレッドの吸収スペクトルの完全な範囲内であるという特有の利点を有するからである。リガンドと反リガンドの間の反応の範囲及び速度、したがって前述の反応に影響する物質又は事象の存在の定量測定をするために、上述した好ましい化合物の1つがエミッターとして使用され、メチルレッドがアクセプターである化学発光エネルギー転移系を使用することができることを意味する。化学発光シグナルの変化の範囲を測定することで、これを簡単にすることができる。
【0054】
すでに述べたように、特定の化学発光エミッターで使用するために適しているクエンチャを選択することは簡単ではない。エミッターとクエンチャ両方のスペクトル範囲がその環境のpHで変わるからであり、これらの式(I)の化合物のメリルレッドとのスペクトルの重なりは特に望ましい。
【0055】
本発明の特に好ましい化合物は次のものを含む。
9−(2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、及び、
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、及び、
9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩。
【0056】
本発明の化合物は周知の方法により調製することができる。例えば、一般式(I)の化合物は一般式(II)
【0057】
【化4】

【0058】
[式中、R、L及びRは一般式(I)で定義されたとおりである。]
【0059】
の化合物を一般式(III)
【0060】
【化5】

【0061】
[式中、L、R及びXは一般式(I)で定義されていたとおりであり、Xはトリフレート又はヨウ化物のような離脱基であることが好ましい。]
【0062】
の化合物と処理することによって調製することができる。
【0063】
一般的に、ニトロベンゼンのような極性有機溶媒で、約80から150℃の高温で反応を行う。
【0064】
一般式(III)の化合物はよく知られており、簡単に入手することができ、又は、既知の方法によって簡単に入手可能な材料から調製することができる。例えば、一般式(III)のR部分がスクシンイミジルエステルの場合、N−ヒドロキシスクシンイミドの対応するカルボキシル酸との反応によって調製することができる。
【0065】
一般式(II)の化合物は、一般式(IV)
【0066】
【化6】

【0067】
[式中、Rは一般式(I)で定義された通りであり、Lは離脱基である]
【0068】
の化合物を一般式(V)
【0069】
【化7】

【0070】
[式中、Rは一般式(I)で定義された通りであり、ZはO又はSである]
【0071】
の化合物と反応させることで調製することができる。
【0072】
ピリジンのような極性有機溶媒で、好ましくは10から50℃の温度、一般的には室温で、反応を実行することができる。
【0073】
一般式(IV)の化合物はこの技術でよく知られており、簡単に入手することができる化合物から標準的な方法によって調製することができる。例えば、アクリジン−9−カルボキシル塩化物はアクリジン−9−カルボン酸から調製することができる。式(V)の化合物も簡単に入手することができる。
【0074】
上述したように、式(I)の化合物は、先行技術で知られている化合物よりもとても低いpHで化学発光を放出し、これによって、それらが多くの分析方法で特に役立つようになる。
【0075】
分子種の会合又は解離をモニターするために化学発光クエンチングを使用する分析方法において、一般式(I)の化合物は特に役立つ。例えば、クエンチングの損失で活性酵素の存在を測定するように、切断位置の両側に、それぞれ一般式(I)の化合物とクエンチャを組み込むことで、酵素基質の切断をモニターすることができる。このような方法は、任意の酵素の阻害剤又はプロモーターを同定するために役立つ。
【0076】
同様に、免疫学的検定、タンパク質結合、レセプター結合、核酸ハイブリダイゼーションなどによって例証されるような非共有結合プロセスを研究するときに、一般式(I)の化合物を組み込んでいる化学発光のエミッター/クエンチャ対が役立つ。したがって、そのようなプロセスに影響を与え、又はそのようなプロセスの一部となる物質を同定及び/又は定量するために、このような方法を用いることができる。このような測定の基本は十分に確立しており、本発明で開示する提案とともに使用することができ、1つの結合パートナーを一般式(I)の化合物で標識化し、さらにそれぞれの結合パートナーをクエンチャで標識化し又はそれ自体をクエンチャとするという知見によって改良した分析方法を提供する。特定の環境では、以下に例証するように結合パートナーがエミッターとクエンチャをともに組み込んでもよい。
【0077】
したがって、本発明の他の構成では、媒体中の第1及び第2結合パートナーの会合又は解離を検出又はモニターする方法であって、第1及び第2結合パートナーが会合するときに一般式(I)の化合物の化学発光シグナルが変調されるように、第1結合パートナーを一般式(I)の化合物で標識化し、第2結合パートナーをクエンチャで標識化し、又はそれ自体をクエンチャにし、この方法は、pHを約6〜10に維持しながら媒体に過酸化水素を添加すること、及び化学発光放射の放出を検出することを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0078】
第1及び第2結合パートナーは、例えば酵素によって触媒作用を及ぼすことができる共有反応を経由して会合又は解離する分子種とすることができる。又は、第1及び第2結合パートーは、リガンドと反リガンド、例えば相補的核酸、抗体と抗原又は抗原決定基、又はレセプターとレセプター結合分子とすることができる。
【0079】
上述した方法は媒体中の検体の検出に適用することもできる。検体と結合パートナーは、例えば酵素によって触媒作用を及ぼすことができる共有反応を介して会合又は解離する分子種とすることができる。又は、それらをリガンドと反リガンド、例えば相補的核酸、抗体と抗原又は抗原決定基、又はレセプターとレセプター結合分子とすることができる。
【0080】
一般式(I)の化合物に対しクエンチャを有する検体の媒体中の有無を検出する方法であって、
a)検体が存在するならば特定結合複合体を形成するように、一般式(I)の化合物で標識化される検体に対し特定結合パートナーを媒体中に添加すること、
b)pHを約6〜10に維持しながら媒体に過酸化水素を添加すること、
c)化学発光放射の放出を検出し、一般式(I)の化合物の変調信号が検体の存在を示すことを含む方法も提供される。
【0081】
検体が一般式(I)の化合物に対しクエンチャでない場合に、本発明では、媒体中の検体を検出する方法であって、
a)検体が存在するならば特定結合複合体を形成するように、一般式(I)の化合物、又は一般式(I)の化合物に対しクエンチャで標識化された検体に対し、特定結合パートナーを媒体に添加すること、
b)媒体に、二次的結合試薬を同時に又は連続して添加すること、
c)pHを約6〜10に維持しながら媒体に過酸化水素を添加するステップを有する化学発光方法によって特定結合複合体の存在を検出し、化学発光放射の放出を検出し、一般式(I)の化合物の変調信号が検体の存在を示すことを含む方法が提供される。
【0082】
上述した方法では、競合的結合測定方法又は「サンドイッチ」測定方法によって、前述の第1特定結合パートナーと結合する検体の存在を決定及び/又は定量することができる。前者の測定方法では、二次的結合試薬が、標識付けした第1標識特定結合パートナーに適合するように、クエンチャ又は一般式(I)の化合物で標識化された検体類似物である。後者の測定方法では、第2結合試薬が、第1標識特定結合パートナーに適合するように、クエンチャ又は一般式(I)の化合物で標識化された第2特定結合パートナーである。本発明で開示されるように改善された化合物及び関連する化学発光クエンチング系の特定の必要性に関連して本発明の特定の提案に付随することを別として、競合的及び非競合的結合測定方法の一般的な設計は当業者に良く知られており、確率された原理を本発明に適応させることができる。
【0083】
本発明の構成の分析方法の他の例では、検体が核酸であり、分析方法ではオリゴヌクレオチドプローブを特定結合パートナーとして用いる。これは、2つの末端(約4〜8塩基)が互いに相補的であり、中央部分が検体の標的配列の全部又は一部に対し相補的である約15から30の配列を有する約40以下の塩基を有する一本鎖核酸である。一方端で一般式(I)の化合物で、他方でクエンチャで、オリゴヌクレオチドプローブを標識化することができる。検体がない場合では、一般式(I)の分子が放出する任意の化学発光シグナルがクエンチャで変調されるように、オリゴヌクレオチドプローブの互いに相補的な末端が、分子の2つの末端を互いに接触させるように結合する。しかしながら、検体がある場合では、分子の中央部分が、分子の2つの末端の結合よりもより強固に検体に結合する。したがって、検体が存在する場合では、化学発光放射のクエンチングが全く起こらないように、クエンチャが一般式(I)の化合物から分離される。
【0084】
他の変形例では、結合プロセスの阻害剤又はプロモーターの存在を検出するためにこの方法を適用することができる。この方法では、一般式(I)の化合物及びクエンチャでそれぞれ標識化した第1及び第2特定結合パートナーを混合し、pHを約6〜10に維持しながら媒体に過酸化水素を添加し、化学発光放射の放出を検出することを含み、一般式(I)の化合物の化学発光シグナルの変調が結合プロセスの促進を示し、無変調信号の存在が結合プロセスの阻害を示す。
【0085】
上述したように、一例としては、酵素基質の切断をモニターする方法の使用であり、この場合では、第1及び第2結合パートナーが互いに共有結合している分子種(ペプチド)であり、基質の切断をクエンチングがないことで決定するように、切断部位の両側のそれぞれの部位で、一般式(I)の化合物及びクエンチャで標識化される。
【0086】
他の変形例では、核酸の2つの相補鎖のそれぞれを一般式(I)の化合物及びクエンチャでそれぞれ標識化する。相補鎖を二本鎖で結合するときにエミッターとクエンチャが互いに相互作用するように有効な近接近状態であるように、相対的な標識化位置を選択しなければならない。したがって、例えば、酵素活性、温度変化、非標識オリゴヌクレオチドとの結合に対する競合、カオトロピック剤などのプロセスによって、鎖が実質的に分離したときに化学発光が観察されるのみである。
【0087】
この分析方法での使用で一般式(I)の好ましい化合物は、第1の構成で上述したとおりである。
【0088】
一般式(I)の化合物が好ましい化合物の1つである場合、クエンチャとしてのメチルレッドとの組合せで使用することができる。好ましい化合物の化学発光放出スペクトルがpH6〜10でメチルレッドの吸収スペクトルの範囲内に完全に入るからである。
【0089】
上述した分析方法は、蛍光検出方法を用いた対応する分析方法よりも高感度である。したがって、化学発光検出方法のさらなる利点としては、核酸増幅のようなステップの必要性を除去することができる。この核酸増幅は、分析方法の検出限界の範囲内とするために、有効に存在する検体の量を簡単に増加するように、蛍光検出方法とともにしばしば使用される。
【0090】
本発明の分析方法は簡単に実行して、広い範囲の検体の検出に適している。
【0091】
本発明の他の構成では、一般式(I)の化合物で標識化されたリガンド又は反リガンドを有する試薬が提供される。リガンド又は反リガンドを標識核酸、又はペプチド又はタンパク質とすることができ、例えば抗体、抗原、抗原決定基、酵素、酵素基質、レセプター又はレセプター結合分子である。試薬は、上述した分析方法での用途に適している。
【0092】
一部の例では、リガンド又は反リガンドをクエンチャでさらに標識化することができる。例えば、試薬が、末端が互いに相補的であり、中央部分が標的配列に対し相補的である約15から30の塩基配列を含む約40以下の塩基を有する核酸分子を有し、この分子が一方端で一般式(I)の化合物で、他方端でクエンチャで標識化されている。
【0093】
又は、リガンド又は反リガンドが核酸二本鎖を有し、化学又は物理手段によって二本鎖が実質的に非完全のままであるときでなく、二本鎖が実質的に完全であるときに、光放出の減衰があるように、そのそれぞれの鎖が一般式(I)の化合物とクエンチャでそれぞれ標識化される。
【0094】
そのような試薬の他の例としては、基質の切断がクエンチングがないことで決定されるように、切断部位の両側のそれぞれの部位で、一般式(I)の化合物とクエンチャで標識化される酵素基質を有する。
【0095】
一般式(I)の好ましい化合物としては、上述したとおりであり、これらの好ましい化合物のうち1つを使用するときに、クエンチャをメチルレッドとすることができる。
【0096】
試薬はキットの一部を形成することができ、したがって、本発明でさらに提供されるキットとしては、上述した試薬、過酸化水素溶液、及び検体含有媒体のpHをpH6〜10に、好ましくは約pH9に調製するように合わせる緩衝剤を有する。
【0097】
上述したように、試薬としては、例えば、リガンド又は反リガンドが核酸分子又は酵素基質であるときに、一般式(I)の化合物に加えてクエンチャを有してもよい。
【0098】
又は、試薬は、検体に対し特定結合パートナー又は二次的結合パートナーを有してもよく、また、キットは、クエンチャで標識化される二次的試薬をさらに有してもよい。このように、試薬が検体に対し特定結合パートナーを有するならば、第2試薬としては二次的結合パートナーを有することになる。逆の場合も同様である。
【0099】
キットを競合結合測定方法用に適合するときに、標識付けした第1標識特定結合パートナーに応じて、二次的結合試薬がクエンチャ又は一般式(I)の化合物で標識化された検体類似物を有する。サンドイッチ測定方法では、第1標識特定結合パートナーに応じて、二次的結合試薬がクエンチャ又は一般式(I)の化合物で標識化された第2特定結合パートナーを有する。
【0100】
試薬と第2試薬を混合物又はキットの分離構成物として提供してもよい。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
一般式(I)
【化1】

[式中、[Rがアミン又はチオール部分と反応可能である反応基であり、
がヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はC〜Cアルコキシと任意に置換される2〜12の炭素原子を有する炭化水素結合部分であり、及び
が水素、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、アリール、縮合アリール、C〜Cアルコキシ、C〜Cアシル、ハロゲン化物、ヒドロキシ又はニトロである、又は
組み合せのR−L−がヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はC〜Cアルコキシと任意に置換されるC〜Cアルキル基を有し、及び
がR−L−基を有し、Rがアミン又はチオール部分と反応可能である反応基であり、Lが上記定義されたとおりである]、
[Lが−C(=O)O−、−C(=O)−S−又は−C(=O)N(SO)−であり、それぞれの場合で、前記−C(=O)が環状炭素原子に結合され、RがC〜Cアルキル、アリール、C〜Cアルコキシ又はC〜Cアシルである]、
[Rが置換C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル又はアリール基であり、前記置換のうち少なくとも1つは、Rから形成される離脱基とL基の−O、−S又は−N(SO)との共役酸のpKaが≦約9.5となるように、電子求引性である]、及び
[Xが分子の合成及び処理の結果として形成されるアニオンである]]の化合物であり、
前記化合物は、一方又は両方の外環に1以上のさらなるR部分を、前記R部分のうち1つのみがR−L−基を有することができるという条件で含むことができることを特徴とする化合物。
(項目2)
が活性エステル、イミダート又は活性ハロゲン化物であること、
が3から10の炭素原子を有すること、
が水素又はC〜Cアルキルであること、
が−C(=O)O−であること、及び
がハロゲン化物又はハロゲン化物含有アニオンであることのそれぞれ又はいずれかの組み合せであることを特徴とする項目1に記載された化合物。
(項目3)
がスクシンイミジルエステル、イミダートエステル、マレイミド、クロロカルボニル、ブロモカルボニル、ヨードカルボニル、クロロスルホニル又はフルオロジニトロフェニル部分であること、
が3から10のメチレン単位を有すること、
が水素であること、及び
がヨウ化物、フルオロスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩又はトリフルオロ酢酸塩であることのそれぞれ又はいずれかの組み合わせであることを特徴とする項目2に記載された化合物。
(項目4)
−R離脱基の共役酸のpKaが≧3となるようにRを選択することを特徴とする項目1から3のいずれか1項に記載された化合物。
(項目5)
が1以上のハロゲン化物又はハロゲン化アルキルと置換されるアルキル又はアリールであることを特徴とする項目1から4のいずれか1項に記載された化合物。
(項目6)
が、ニトロ、フッ素、塩素、臭素又はトリフルオロメチル基と2及び6位置でそれぞれ置換されるフェニル基であることを特徴とする項目5に記載された化合物。
(項目7)
9−(2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、又は
9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩を含むことを特徴とする項目1から6のいずれか1項に記載された化合物。
(項目8)
項目1から7のいずれか1項に記載された化合物の調製のためのプロセスであって、一般式(II)
【化2】

[式中、R、L及びRが、一般式(I)で定義されたとおりである]の化合物を、一般式(III)
【化3】

[式中、L及びRが一般式(I)で定義されたとおりであり、Xが離脱基である]
の化合物と処理することを含むことを特徴とするプロセス。
(項目9)
媒体中で第1及び第2結合パートナーの会合又は解離を検出又はモニターする方法であって、前記第1及び第2結合パートナーが会合するときに、項目1から7のいずれか1項に記載された化合物の化学発光シグナルが変調されるように、前記第1結合パートナーが項目1から7のいずれか1項に記載された化合物で標識化され、前記第2結合パートナーがクエンチャで標識化され、又はそれ自体をクエンチャとし、前記方法は、pHを約6〜10に維持しながら媒体に過酸化水素水を添加すること、及び化学発光放射の放出を検出することを含むことを特徴とする方法。
(項目10)
前記第1及び第2結合パートナーは、共有結合を経由して会合又は解離する分子種であることを特徴とする項目9に記載された方法。
(項目11)
前記第1及び第2結合パートナーはリガンド及び反リガンドであることを特徴とする項目9に記載された方法。
(項目12)
項目1から7のいずれか1項に記載された化合物に対しクエンチャを有する検体の媒体中の有無を検出する方法であって、
a)前記媒体に前記検体に対して特定結合パートナーを添加することであり、検体が存在するならば特定結合複合体を形成するように、前記特定結合パートナーが項目1から7のいずれか1項に記載された化合物で標識化されていること、
b)pHを約6〜10に維持しながら前記媒体に過酸化水素を添加すること、及び
c)化学発光放射の放出を検出することであり、項目1から7のいずれか1項に記載された化合物の変調信号が前記検体の存在を示すこと、を含むことを特徴とする方法。
(項目13)
項目1から7のいずれか1項に記載された化合物に対しクエンチャでない検体の媒体中の有無を検出する方法であって、
a)前記媒体に前記検体に対し特定結合パートナーを添加することであり、検体が存在するならば特定結合複合体を形成するように、前記特定結合パートナーが項目1から7のいずれか1項に記載された化合物、又は項目1から7のいずれか1項に記載された化合物に対しクエンチャで標識化されていること、
b)前記媒体に、ステップ(a)で使用される項目1から7のいずれか1項に記載された化合物に対するクエンチャ、又はステップ(a)でクエンチャを使用するならば項目1から7のいずれか1項に記載された化合物で標識化された二次的結合試薬を同時に又は連続して添加すること、及び
c)pHを約6〜10に維持しながら前記媒体に過酸化水素を添加するステップを含む化学発光方法によって特定結合複合体の存在を検出し、化学発光放射の放出を検出し、項目1から7のいずれか1項に記載された化合物の変調信号が前記検体の存在を示すこと、を含むことを特徴とする方法。
(項目14)
項目1から7のいずれか1項に記載された化合物に対しクエンチャでない検体の媒体中の有無を検出する方法であって、
a)検体が存在するならば特定結合複合体を形成するように、項目1から7のいずれか1項に記載された化合物、又は項目1から7のいずれか1項に記載された化合物に対するクエンチャで標識化された検体に対し、特定結合パートナーを前記媒体に添加すること、
b)前記媒体に、前記第1標識特定結合パートナーに応じて適切に、クエンチャ又は項目1から7のいずれか1項に記載された化合物で標識化された第2特定結合パートナーを同時又は連続して添加すること、及び
c)pHを6〜10に維持しながら前記媒体に過酸化水素を添加するステップを含む化学発光方法によって特定結合複合体の存在を検出し、化学発光放射の放出を検出し、項目1から7のいずれか1項に記載された化合物の変調信号が前記検体の存在を示すこと、
を含むことを特徴とする方法。
(項目15)
結合プロセスの阻害剤又はプロモーターの存在を検出する方法であって、
項目1から7のいずれか1項に記載された化合物とクエンチャでそれぞれ標識化された第1及び第2特定結合パートナーを混合すること、
pHを6〜10に維持しながら前記媒体に過酸化水素を添加すること、及び
化学発光放射の放出を検出することを含み、
項目1から7のいずれか1項に記載された化合物の化学発光シグナルの変調が結合プロセスの促進を示し、無変調信号の存在が結合プロセスの阻害を示すことを特徴とする方法。
(項目16)
酵素基質の切断又は相補的核酸のハイブリダイゼーションをモニターするための項目15に記載された方法。
(項目17)
前記クエンチャがメチルレッドであることを特徴とする項目9から16のいずれか1項に記載された方法。
(項目18)
項目1から7のいずれか1項に記載された化合物で標識化されたリガンド又は反リガンドを有することを特徴とする試薬。
(項目19)
前記リガンド又は反リガンドが核酸、ペプチド又はタンパク質であることを特徴とする項目18に記載された試薬。
(項目20)
前記リガンド又は反リガンドがさらにクエンチャで標識化されることを特徴とする項目19に記載された試薬。
(項目21)
互いに相補的である末端、及び標的配列に相補的である約15から30塩基の配列を含む中央部分を有する約40以下の塩基を有し、一方端で項目1から7のいずれか1項に記載された化合物で、他方端でクエンチャで標識化されることを特徴とする項目20に記載された試薬。
(項目22)
核酸二本鎖を有し、化学又は物理手段によって前記二本鎖が実質的に非完全のままであるときではなく、前記二本鎖が実質的に完全であるときに光放出の減衰が存在するように、前記核酸二本鎖のそれぞれの鎖が項目1から7のいずれか1項に記載の化合物及びクエンチャでそれぞれ標識化されることを特徴とする項目20に記載された試薬。
(項目23)
切断部位の両側のそれぞれの部位で、項目1から7のいずれか1項に記載された化合物とクエンチャで標識化された酵素基質を有することを特徴とする項目20に記載された試薬。
(項目24)
前記クエンチャがメチルレッドであることを特徴とする項目21から23のいずれか1項に記載された試薬。
(項目25)
項目19から24のいずれか1項に記載された試薬、過酸化水素溶液、及び媒体を含む検体のpHをpH6〜10に維持するように合わせる緩衝剤を有することを特徴とするキット。
(項目26)
クエンチャで標識化された第2試薬をさらに有することを特徴とする項目25に記載されたキット。
(項目27)
前記第1試薬が検体に対し特定結合パートナーであり、前記第2試薬が二次的結合パートナーであること、又は、前記第1試薬が二次的結合パートナーであり、前記第2試薬が検体に対し特定結合パートナーであることを特徴とする項目26に記載されたキット。
(項目28)
前記クエンチャがメチルレッドであることを特徴とする項目26又は27に記載されたことを特徴とするキット。
(項目29)
9−(2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、及び
9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩からなるグループから選択することを特徴とする化合物。
【0101】
以下、次の限定されない実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【0102】
プロットでは、pH9でのクエンチャDabcylとメチルレッドの吸収スペクトルがこのpHでのアクリジニウムエステルの放出スペクトルとして同じ軸にプロットされ、アクリジニウムエステルの放出スペクトルがメチルレッドのものと完全に重複している。
【0103】
テスト溶液の標的配列の量を、一般式(I)の化合物及びメチルレッドでそれぞれ標識化した相補的末端配列を有する核酸プローブから得た化学発光強度に対しプロットすると、溶液中の標的配列の量が増加するにつれて、プローブの2つの末端配列の互いのハイブリダイゼーションが減少し、したがって化学発光シグナルのクエンチングの量も減少する。
【0104】
次の実施例では、合成されテストされた化合物が全て、Rがアミン又はチオール部分と反応可能である反応基であり、Lが結合部分である化合物である。しかしながら、R部分を経由してリガンドに結合することができる化合物(例えばRがR−Lである化合物)もまた本発明で有用である。このタイプの化学発光化合物を外環置換基(一般式(I)のR)を経由してリガンドに結合する原理としては、先行技術、例えばUS5283334(MaCapra)でよく知られ、そのような化合物が化学発光することが実証されてきた。
【実施例】
【0105】
(実施例1)
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩
【0106】
a.11−ヨードウンデカン酸[8,9]
【0107】
【化8】

【0108】
50mlのフラスコに、11−ブロモウンデカン酸(2.192g、8.27mmol)とNaI(3.0370g、20.3mmol)を添加し、混合物をオイルポンプで1時間乾燥した。アセトン(20ml)を添加し、混合物を20時間攪拌した。得られた混合物を水(20ml)に注ぎ、ジエチルエーテル(25ml×4)で抽出し、次に、組み合せた有機抽出液を飽和NaSOで洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、蒸発させ、粗淡赤色固体生成物(2.3609g、91.5%の収率)を得た。固体をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン+エーテル+ギ酸、100:100:0.1)で精製した。Rf=0.49の画分を集め、乾燥のため蒸発させ、白色固体(2.230g、83%、m.p.63〜64℃[8])を生成した。
【0109】
1HNMR, (CDCl3, δ, ppm), 3.12 (2H, t, J=7Hz), 2.28 (2H, t, J=7Hz), 1.75 (2H, quintet, J=7Hz), 1.56 (2H, quintet, J=7Hz), 1.24-1.18 (12H, m) ; 13CNMR (CDCl3, δ, ppm), 179.9 (C=O), 34.3, 33.9, 30.8, 29.7, 29.6, 29.5, 29.4, 28.9, 25.0, 7.5 (10 x CH2); IR (ν, cm-1) 1693 (C=O); MS (EI) 313 (M + H+, 3%), (CI) 330 (M + NH4+,100%).
【0110】
b.スクシンイミジル11−ウンデカノアート[10]
【0111】
【化9】

【0112】
50mlのフラスコに、11−ヨードウンデカン酸(556mg、1.78mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(440mg、3.83mmol)及び乾燥THF(10ml)を添加し、この系を窒素で洗い流した。混合物をアイスバスで10分間冷却し、次にTHF(10ml)中のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、770mg、3.76mmol)を導入した。混合物を0℃で3時間、次に室温で一晩維持した。得られた混合物をろ過し、副生成物のジシクロヘキル尿素(DCU)をほとんど取り除き、ろ液を減圧下で濃縮し、次に残渣をクロマトグラフィーのシリカゲルカラムに導入した。トルエン+酢酸エチル(4:1)でカラムを溶出し、Rf=0.59の画分を組み合せ蒸発し、白色固体(639mg、mp83℃)を得た。65℃でヘキサン+EtOAcから結晶化によって不純物を取り除き、純粋生成物(387mg、53%)を生成した。
【0113】
1HNMR, (CDCl3, δ, ppm), 3.16 (2H, t, J=7Hz), 2.81 (4H, s), 2.57 (2H, t, J=7Hz), 1.79, (2H, quintet, J=7Hz), 1.71 (2H, quintet, J=7Hz), 1.41-1.22 (12H, m); 13CNMR (CDCl3, δ, ppm) 169.6, 169.1 (2 x C=O), 34.0, 31.3, 30.9, 29.7, 29.6, 29.4, 29.1, 28.9, 26.0, 25.0, 7.7 (12 x CH2); IR (ν, cm-1) 1725; MS (CI) 427 (M+NH4+, 15%), 301 (15%), 225 (16%), 149 (30%), 132 (100%).
【0114】
c.スクシンイミジル11−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ウンデカノアート[11〜13]
【0115】
【化10】

【0116】
5mlのフラスコに、スクシンイミジル11−ウンデカノアート(188mg、0.460mmol)及び銀トリフレート(214mg、0.836mmol)を添加し、フラスコをNで5分間洗い流した。ベンゼン(1.5ml)をシリンジに導入し、そこに若干の黄色固体がすぐに現れた。混合物を18時間、室温で攪拌し、次に短いクロマトグラフィーカラム(シリカゲル、2g)に導入し、それをジクロロメタン(DCM)で溶出した。Rf=0.48の画分を組み合わせ蒸発し、白色固体(133mg、収率、67%)を得た。
【0117】
1HNMR (CDCl3, δ, ppm), 4.44 (2H, t, J=6Hz) 2.75 (4H, s), 2.51 (2H t, J=7Hz), 1.73 (2H, m), 1.63 (2H, quintet, J=7Hz), 1.37-1.17, (12H, m); 19FNMR (CDCl3, δ, ppm), -74.8; 13CNMR (CDCl3, δ, ppm), 169.6, 169.0 (C=O), 119.0 (quartet, CF3SO3), 78.1, 31.3, 29.6, 29.5, 29.4, 29.3, 29.2, 29.1, 26.0, 25.4, 24.9 (12 x CH2); IR (ν, cm-1), 1725.
【0118】
d.2,6−ジブロモフェニル アクリジン−9−カルボン酸塩[3〜5]
【0119】
【化11】

【0120】
CaCl乾燥管とマグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコ(50ml)で、ピリジン中のアクリジニウム−9−カルボン酸塩化物(2.036g、8.42mmol)を(70℃)まで加熱した。固体が完全に溶解した後、溶液を室温まで冷却し、2,6−ジブロモフェノール(2.325g、9.23mmol)を添加し、混合物をしっかり一晩攪拌した。得られた混合物から茶色固体を残してピリジンを取り除いた。DCM(10ml)を使用して生成物を抽出し、抽出物をカラムクロマトグラフィーにさらし、トルエン+EtOAc(4:1)で溶出した。Rf0.51での画分を集め蒸発し、淡黄色固体を得た。固体をDCM(40ml)に再溶解し、希NaOH(5×40ml)で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過及び蒸発し、淡黄色粉体(2.080g、54%の収率)、mp159〜160℃を得た。
【0121】
e.9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩[6,7]
【0122】
【化12】

【0123】
5mlのフラスコに、2,6−ジブロモフェニル アクリジン−9−カルボン酸塩(93.2mg、0.204mmol)、スクシンイミジル11−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ウンデカノアート(94.1mg、0.218mmol)、及びスターラーバーを添加し、次にフラスコに空気冷却機を備え、Nで洗い流す。テトラクロロエタン(1.5ml)をシリンジで導入し、そこで混合物が明るい黄色に変わった。フラスコをオイルバス(140℃)に4時間置き、その間、混合物が徐々にオレンジ色に変わり、最終的に黄褐色溶液を得た。混合物全体から溶媒を取り除き、次にDCMで抽出し、EtOEtで沈殿させた。TLCが出発原料の存在を示さなくなるまで、繰り返し沈殿物をDCMで再溶解し、沈殿させる。黄色固体(28mg、15%の収率、mp165〜166℃)を得て、特性を示した。
【0124】
1HNMR, (CDCl3, δ, ppm), 8.84 (2H, d, J=8Hz), 8.66 (2H, d, J=9Hz), 8.39 (2H, dd, J=8, 7Hz), 7.89 (2H, dd, J=9, 7Hz), 7.58 (2H, d, J=8Hz), 7.06 (1H,t,J=8Hz), 5.47 (2H,t,J=8Hz), 2.65 (4H, s), 2.41 (2H,t,J=7Hz), 2.03 (2H, m), 1.64-1.49 (4H, m), 1.31-1.07 (10H, m); 19FNMR (CDCl3, δ, ppm), -78.2; 13CNMR (CDCl3, δ, ppm), 169.7, 169.1, 161.5 (3 x C=O), 147.1, 145.8, 141.7, 140.8, 133.8, 130.3, 129.9, 129.3, 123.9, 119.8, 117.7, 52.9, 31.3, 30.1, 29.6, 29.5, 29.4, 29.3, 29.0, 26.9, 26.0, 24.9; IR (ν, cm-1) 1774, 1728 (C=O); MS (ES-), 149 (100%, CF3SO3); (ES+), 739 (80%, M-CF3SO3), 519 (100%).
【0125】
(実施例2)
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩の調製
【0126】
a.スクシンイミジル4−ヨードブタノアート
【0127】
テトラヒドロフラン(THF、5ml)中の4−ヨード酪酸(115mg、0.54mmol)を0℃まで冷却する。この溶液に、TFT(1ml)中のN−ヒドロキシスクシンイミド(65mg、0.57mmol)とTFT(2ml)中のジシクロヘキシルカルボジイミド(125mg、0.61mmol)をそれぞれ添加する。混合物を0℃で3時間、次に室温で一晩攪拌する。得られた懸濁液をろ過する。ろ液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル(Tol−EtOAc)、4:1)で精製する。所望の生成物(132mg)を淡黄色固体、mp86〜87℃として得た。
【0128】
b.9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニル)プロピル)アクリジニウム ヨウ化物
【0129】
ガラス管内でニトロベンゼン(2ml)中にある、実施例1dのように合成した2,6−ジブロモフェニル アクリジン−9−カルボン酸塩(43mg、0.094mmol)とスクシンイミジル4−ヨードブタノアート(50mg、0.16mmol)をオイルバス中で120℃、2時間加熱した。得られた茶色溶液を石油エーテル(40〜60)(5×2ml)で洗浄し、茶色固体(約2mg)を得た。洗浄液を組み合わせ、ロータリーエバポレーターで蒸発させ、次に2時間真空化に置き、オレンジ色溶液を得た。混合物を再利用した。実施例1eで説明した条件で実験を行った。
【0130】
(実施例3)
9−(2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩の調製
【0131】
a.2−トリフルオロメチル−6−ヨードフェノール[1、2]
【0132】
【化13】

【0133】
50mlのフラスコに、2−トリフルオロメチルフェノール(1.00g、6.17mmol)と3,4−ジヒドロピラン(2ml)を添加し、次にトルエンスルホン酸一水塩(TsOH.HO)の数個の結晶を添加した。エーテル(25ml)を導入した後、フラスコをオイルバスに置いて19時間還流した。得られた混合物を飽和NaHCO(20ml)中に注ぎ、水層をジエチルエーテル(25ml×2)で抽出し、組み合せた抽出物を飽和NaClで洗浄し、MgSOで乾燥し、溶媒を取り除き、無色油分、2−(トリフルオロメチル)フェノール テトラヒドロピラニル エーテル(1.35g、5.50mmol、89%の収率)を得た。
【0134】
1HNMR (CDCl3, δ, ppm), 7.50 (1H, d, J=8Hz), 7.38 (1H, t, J=8Hz), 7.18 (1H, d, J=8Hz), 6.94 (1H, t, J=8Hz), 5.48 (1H, approx. t, J=3Hz), 3.77 (1H, dt, J=3, 11Hz), 3.55 (1H, m), 1.96 (1H, m), 1.89-1.73 (2H, m), 1.71-1.46 (3H, m).
【0135】
油分をTHF(8.5ml)に溶解し、BuLi(2.5Mの3ml、7.5mmol)で処理し、−78℃で30分間攪拌した後、反応混合物をTHF(8.5ml)中のヨウ化物(2.2013g、8.67mmol)の溶液で処理し、10分間攪拌し、次に室温まで暖めた。混合物を20%NaSOに注ぎ、しっかりと振動させた。水層をジエチルエーテルで抽出し、組み合せた抽出物を飽和NaClで洗浄し、次にMgSOで乾燥した。溶媒を取り除いた後、黄褐色の油分を得た。
【0136】
1HNMR (CDCl3, δ, ppm), 7.88 (1H, dd, J =8, 1Hz), 7.46 (1H, dd, J=8, 1Hz), 6.80 (1H,t, J=8Hz), 5.25 (1H, dd, J=5, 2Hz), 4.04 (1H, m), 3.43 (1H, m), 2.01 (1H, m), 1.91-1.79 (2H, m), 1.58-1.42 (3H, m).
【0137】
これより油分が2−(トリフルオロメチル)−6−ヨードフェノール テトラヒドロピラニル エーテルであることを示した。油分を短経路の蒸留にさらし、その間、テトラヒドロピラニルエーテルの分解が生じ、2−(トリフルオロメチル)−6−ヨードフェノール(1.66g、収率、純粋であると仮定するならば収率94%であるが、実際には約15%のジヒドロピラン水和物で汚染されている)の生成物を得た。
【0138】
1HNMR (CDCl3, δ, ppm), 7.88(1H, d, J=8Hz), 7.47 (1H, d, J=8Hz), 6.79 (1H, t, J=8Hz), 5.85 (1H, s).
【0139】
b.2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノール[1,2]
【0140】
【化14】

【0141】
スターラーバーを備えた50mlのフラスコに、Cd粉体(3.057g、27.2mmol)とジメチルホルムアミド(DMF、10ml)と添加した。フラスコをNで洗い流し、次にアイスバスで0℃まで冷却した。CBr(1ml+1ml+0.5ml、全体で27.17mmol)をシリンジでゆっくりと添加し、次に混合物を室温まで温め、さらに30分間攪拌する。混合物をヘキサメチルホスホルアミド(HMPA、10ml)で希釈し、0℃まで冷却し、CuBr(1.8036g、12.57mmol)を添加し、全体を10分間攪拌した。結果としてのFCCuを含む混合物に2−トリフルオロメチル−6−ヨードフェノール(937.1mg、3.25mmol)を添加し、混合物をオイルバス(65℃)で2時間攪拌しながら加熱した。混合物全体を3MのHCl(30ml)とエーテル(30ml)の混合物に注ぎ、ろ過によって固体を混合物から取り除き、2層の液層を分離した。水層をさらにエーテル(25ml×5)で抽出し、組み合せた抽出物を飽和NaClで洗浄し、次にMgSOで乾燥した。ロータリーエバポレーターで溶媒を取り除き、残渣を短経路の蒸留にさらした。bp70℃(1mbar)での画分を集めた。収率283.4mgで38%である。
【0142】
1HNMR (CDCl3, δ, ppm), 7.70 (2H, d, J=8Hz), 7.06 (1H, t, J=8Hz); 13CNMR (CDCl3, δ, ppm), 153.0, 131.0, 123.8 (3F核に結合するためのq), 120.3, 120.0. EI-MS, mJz, 230 (M+, 18%), 213 (28%), 179 (23%) , 163 (30%), 135 (100%).
【0143】
c.2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニル アクリジン−9−カルボン酸塩[3〜5]
【0144】
【化15】

【0145】
スターラーバー、冷却機、及びCaCl乾燥管を備えた5mlのフラスコ中で、アクリジン−9−カルボン酸塩化物(131.6mg、0.544mmol)、2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノール(130mg、0.565mmol)及びピリジン(3ml)を混合し、40℃で1日しっかりと攪拌した。溶媒を混合物から蒸発させ、残渣の固体をカラムクロマトグラフィー(シリカ、トルエン:EtOAc4:1)にさらした。Rf=0.49での画分を集め蒸発させ、オレンジ色固体(137.5mg、58%の収率)、mp171℃を得た。
【0146】
1HNMR (CDCl3, δ, ppm), 8.51 (2H, d, J=9Hz), 8.32 (2H, d, J=9Hz), 7.96 (2H, d, J=8Hz), 7.79 (2H, dd, J=9. 7Hz), 7.61 (2H, dd, J=9, 7Hz), 7.56 (1H, t, J=8Hz); 13CNMR (CDCl3, δ, ppm), 164.6 (C=O), 148.6, 146.3, 131.9, 131.0, 130.0, 128.5, 127.8, 126.5, 126. 2, 125.8, 123.8, 122.8 (3F核に結合するためのq); IR (ν, cm-1), 1758 (C=O); MS: (EI), m/z, 435 (M+, 10%), 206 (82%) , 178 (100%); (CI), m/z, 436 (M+H+, 39%), 180 (100%).
【0147】
d.9−(2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩[6,7]
【0148】
【化16】

【0149】
窒素であらかじめ洗い流した5mlのフラスコに、2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニルアクリジニウム−9−カルボン酸塩(74.9mg、0.172mmol)とスクシンイミジル11−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ウンデカノアート(実施例1cに従って調製、74.8g、0.174mmol)を添加した。フラスコをNで再度洗い流し、次に乾燥ジクロロエタン(1.6ml)をシリンジで導入した。混合物を80℃で20時間維持し、その後、ロータリーエバポレーターで溶媒を取り除いた。混合物をジクロロメタン(1ml)で抽出し、次に抽出物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにさらし、ジクロロメタン(DCM)/CHCN(3:1)で溶出した。Rf=0.19での成分を集め蒸発させ、黄色固体(15.9mg、10.7%の収率)、mp164〜165℃を得た。
【0150】
1HNMR (CDCl3, δ, ppm) 8.88 (2H, d, J=9Hz), 8.77 (2H, d, J=9Hz), 8.58 (2H, dd, J=9, 7Hz), 8.15 (2H, d, J=8Hz), 8.07 (2H, dd, 9, 7 Hz), 7. 81, (1H, t, J=8Hz), 5.69 (2H, t, J=8Hz), 2.85 (4H, s), 2.60 (2H, t, J=7Hz), 2.29-2.18 (2H, m), 1.84-1.69 (4H, m), 1.51-1.26 (10H, m); 13CNMR (CDCl3, δ, ppm), 169.7, 169.1, 161.8, 144.9, 141.7, 140.6, 132.4, 130.0, 129.0, 128.5, 126.0, 125.7, 124.3, 119.8, 53.3, 31.3, 30.1, 29.6, 29.5 (2シグナル), 29.3, 29.0, 26.9, 26.0, 24.9 (CF3シグナルはノイズ比に対するシグナルが低すぎたため見られなかった。); MS (ES+) 717 (C37H35F6N2O6+, 25%), (ES-) 149 (CF3SO3-, 100%).
【0151】
9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩と9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩を調製するために、実施例1から3と同様の方法を用いてきた。
【0152】
(実施例4)
化学発光での各種のX基の効果
本実施例では、EP−A−0324202で提案されるようなX基を有する化合物全てが適度なpHで化学発光反応を起こすことができるわけではないことを示す。次の一般式の化合物を確立された方法に従って合成した。
【0153】
【化17】

【0154】
[式中、化合物(a)では、Rはメチル、Rはフェニルであり、
化合物(b)では、Rはメチル、Rは3−メチルフェニルであり、
化合物(c)では、Rはメチル、Rは2,6−ジフルオロフェニルであり、
化合物(d)では、Rは(スクシンイミジルオキシカルボニル)プロピル、Rは2,6−ジブロモフェニルである。]
【0155】
pH9又はpH12の緩衝過酸化水素の注入(200μl)によって反応の機内の開始に続いて、ルミノメーター(LuminoTM、Stratec Electronik GmbH、Pfortzheim、ドイツ)を使用して、これらの化合物からの化学発光を測定した。二ナトリウム水素オルトリン酸塩(0.02M/l)を用いてpH9が達成され、100μlの5M水酸化ナトリウム水溶液と20μlの30%過酸化水素水溶液を20mlの水に希釈することでEP−A−0324202で説明されるようにpH12が達成される。どちらの場合も、30%の過酸化水素水を使用した。
【0156】
測定時間を5秒とし、その時間の間、光子係数を積分し、すぐに試薬を注入し始めた。それぞれの化合物がpH12と同等のピーク高さを示すように、使用するそれぞれの化合物の量とルミノメーターの係数要素を選択した。通常、1〜10ng/mlの範囲の濃度では、最初に1mg/mlの濃度でアセトニトリルに溶解し、次に、mM/lの塩酸にさらに希釈した純粋化合物とともに使用した。発光測定では10μlの体積を使用した。
【0157】
【表1】

【0158】
表1には、pH9での化学発光放出強度を、EP−A−0324202で設定された従来の反応条件(pH12)を用いて得られたものの百分率で示す。4つの化合物全てがEP−A−0324202の範囲内となっているX基を備えているが、化合物(c)と(d)のみが適度なpHで有効な化学発光を放出することができる。これらの2つの化合物は、本発明で必要とされる電子求引基を備えるフェニル部分を有する。
【0159】
(実施例5)
結合複合体の安定性についてのpHの効果
それぞれの末端修飾がメチルレッド(MR)と1級アミン結合部分を備える次の配列のステムループオリゴヌクレオチドを必要に応じて合成し、商業的に購入した(Oswel Research Products, Romsey, イギリス)。
【0160】
NH−5’−CCGGTCCGGGCAATGACAGCAAAAACAGGGACCGGT−MR
【0161】
確立された方法によって、スクシンイミジルエステルの化学反応を用いて、実施例2のアクリジニウムエステル化合物(d)で1級アミンを標識化した。(Nelson他, Nonisotopic Probing, Blotting and Sequencing, pp. 391-428, Academic Press, 1995)明らかに、化合物(a)も化合物(b)も標識として使用することができなかった。上述した表1に示すように、それらはpH9で有効な化学発光を放出しないからである。しかしながら、化合物(d)は、pHが9まで減少したときに、pH12の放出強度の100%を維持する特性を有する。
【0162】
実施例2で設定された方法を用いて、化合物(d)で標識化されたオリゴヌクレオチドが放出した化学発光をpH9とpH12で測定した。結果を表2に示す。
【0163】
【表2】

【0164】
表2では、化合物(d)が放出する化学発光シグナルをメチルレッドによって98%クエンチするが、pH12ではクエンチングは2%しかない。
【0165】
化合物(d)で標識化されたオリゴヌクレオチドは、構造(A)の安定な分子間結合複合体の形成のため、自由溶液中に穏和な条件(pH9)下でステムループ構造として存在する。
【0166】
【化18】

【0167】
このように、pH9で、クエンチャ、メチルレッドの近接近から、エミッター、化合物(d)まで生じる化学発光クエンチングのため、最小の背景化学発光放射が見られる。
【0168】
一方、EP−A−0324202で設定されたようにpH12で化学発光を開始するときに、有効な化学発光放出を観察する。これは、pH12では、オリゴヌクレオチドの5’と3’の末端での相補的な核酸の間のハイブリダイゼーションが分裂し、したがって標識化オリゴヌクレオチドが構造(B)を選択するからである。
【0169】
【化19】

【0170】
構造(B)では、放出化合物(d)は、クエンチングを生じさせるために、クエンチャ、メチルレッドに十分に接近していない。
【0171】
この実験の結果から、結合複合体がこれらの条件下で非特定で分離するため、EP−A−0324202で提案される条件下で分析系の基礎として、化学発光クエンチングを使用することができないことは明らかである。核酸系以外の系、例えば抗体−抗原結合に基づくものもまた同じである。
【0172】
一方、結合複合体はpH9で完全なままであり、クエンチングを発生させることができる。このように、均一系のエネルギー転移結合分析の基礎として、本発明で開示するように、適度のpHで化学発光反応を起こすアクリジニウム標識のみを使用することができる。
【0173】
(実施例6)
式(I)の化合物との使用でのクエンチャの選択
ドナーのそれから異なる波長で吸収エネルギーを再放出するフルオレセインとLucifer Yellowのようなエネルギー転移アクセプターをEP−A−0324202では示唆し、したがって、そのようなアクセプターをクエンチャとして使用することができない。特許請求の範囲の化合物としてその他の役立つクエンチャについて文献には全く示されていない。しかしながら、蛍光クエンチャが記載されており、一般的に使用される蛍光クエンチャを使用することができると予想しているのかもしれない。本実施例では、十分に確立されたクエンチャDabcylTMを全ての環境下でアクリジニウムエミッタからの放出をクエンチするために、予想されてきたもののように、使用することができないことを実証する。これは、化学発光反応をもたらすために必要であるpHでクエンチャの吸収スペクトルがアクリジニウム標識の放出スペクトルと比較してシフトするからである。
【0174】
アクリジニウムエステル化学発光(N−メチルアクリドン)の第一放出の放出スペクトルは十分に確立されている。メチルレッドとDabcylTMの吸収スペクトルを蛍光分光計で測定した。複合スペクトルを生成するために、N−メチルアクリドンの放出スペクトルのものとこれらのスペクトルを重ねた。pH9でN−メチルアクリドンの放出スペクトルとDabcylTMの吸収スペクトルの間で1つの緩やかな重複のみがあった。有効な共鳴エネルギー転移クエンチングは最大のスペクトルの重複を必要とするため、好ましいアクリジニウムエステルの化学発光反応を開始するために必要なpHで、このようなDabcylTMクエンチングは有効でないことがわかる。一方、本発明の好ましい化合物は、pH9でメチルレッドクエンチャと100%のスペクトルの重複を示す。このように、従来使用されるDabcylTMではなく、メチルレッドクエンチャのみが、pH9で化学発光反応を引き起こすことができるアクリジニウムエステルの有効なクエンチャである。DabcylTMが多くのエネルギー転移分析で役立つクエンチャであると述べられているため、これは多少予想外である。
【0175】
(実施例7)
式(I)の化合物の化学発光特性
本実施例では、均一系のエネルギー転移クエンチング結合分析の基礎として、本発明の化合物を使用することができることについて、このような化合物が適度なpHで化学発光を示すことができ、慎重に選択されたクエンチャ、例えばメチルレッドなどとともに効果的なクエンチング系の部分として作用することができるからであることを実証する。本実施例では、一方で、EP−A−0324202の範囲内にある多数の化合物と同様に、このような目的のために、化学発光を引き起こす高いpHを必要とするアクリジニウムエステルを使用することができないことも実証する。
【0176】
10μlのハイブリダイゼーション緩衝剤(0.1M/lリチウムコハク酸塩、pH5.1、8.5% w/v リチウムラウリル硫酸、0.125M/lリチウム水酸化物、1.5mM/lEDTA及び1.5mM/lEGTA)中の実施例3で説明された標識ステムループオリゴヌクレオチド(1〜10fM)を、ハイブリダイゼーション緩衝剤(10μl)中の部分的に相補的なオリゴヌクレオチド標的配列(gcccgttactgtcgtttttgtcc)を0、1、10、50、100、500及び1000pM含む溶液とそれぞれ混合する。混合物を60℃で60分間インキュベートし、適当なpH開始溶液を用いて発光測定の前に室温と平衡にする。ループ領域のその標的への相補的な結合が、ドナーとアクセプター部分が分離するようになることを引き起こして、ステム結合を分離するように、これらの相互作用の原理はよく知られている。したがって、標的がないと、結果としての混合物は、pH9で構造Aからなり、pH12で構造Bからなるものであった(参照、実施例3)。標的の濃度が増加すると、構造Cの量が増加するように形成される結果となり、これはクエンチングがないことに基づいて構造Aと区別される。
【0177】
【化20】

【0178】
したがって、pH9で、化学発光の強度は標的配列の濃度に比例する。一方、結合複合体の分離のため、pH12で化学発光強度と標的濃度の間には関係がない。これによって、適度なpHで化学発光を生成することができるアクリジニウムエステルのみをそのような分析で使用することができることが確認される。
【0179】
(参照)
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10. Z. Li, Report 43, Swansea University.
11. S.E. Denmark; D. C. Forbes; D. S. Hays, J. Org. Chem., 1995, 60, 1391-1407.
12. C. D. Beard, K. Baurn, J. Org Chem., 1974, 39, 3875-3877.
W. K. Fife, P. Ranganathan, M. Zeldin, J. Org. Chem., 1990, 55, 5610-5613.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相補的である末端、及び標的配列に相補的である15から30塩基の配列を含む中央部分を含む40以下の塩基を有する核酸プローブであって、該核酸プローブは、5’末端において一般式(I)
【化1】

[式中、[Rがスクシンイミジルカルボニルであり、
が3〜10のメチレン単位であり、及び
が水素である]、
[Lが−C(=O)O−であり、該−C(=O)がアクリジン環の9位に結合され、RがC〜Cアルキル、アリール、C〜Cアルコキシ又はC〜Cアシルである]、
[Rがニトロ、フッ素、塩素、臭素又はトリフルオロメチル基と2位及び6位でそれぞれ置換されるフェニル基であり、該置換基は、R及びL基の−O−から形成されるフェノキシ離脱基のpKaが≦約9.5となるように電子求引性である]、及び
[Xがヨウ化物、フルオロスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩又はトリフルオロ酢酸塩である]]
の化学発光アクリジニウムエステル標識化化合物で標識化され、そして、該核酸プローブは、3’末端において、クエンチャで標識化されており、該核酸プローブの相補的末端の二本鎖が、該核酸プローブの該中央部分の、該標的配列へのハイブリダイゼーションのような、化学手段又は物理手段によって実質的に非完全のままであるときではなく、該相補的末端の二本鎖が実質的に完全であるときに、該アクリジニウムエステルからの化学発光放出の減衰が存在する、核酸プローブ。
【請求項2】
前記式(I)のアクリジニウムエステル標識化化合物が、以下:
9−(2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、及び
9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩
からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の核酸プローブ。
【請求項3】
前記クエンチャがメチルレッドであることを特徴とする、請求項1または2に記載の核酸プローブ。
【請求項4】
標的核酸配列を検出する方法であって、該方法は、
該標的配列を、請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸プローブと合わせる工程、
pHを6〜10に維持しながら媒体に過酸化水素を添加する工程、及び
前記アクリジニウムエステルからの化学発光放射の放出を検出する工程
を含む、方法。
【請求項5】
前記化学発光放射の放出を検出する工程がpH9で実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
9−(2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジブロモフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、
9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(10−スクシンイミジルオキシカルボニルデシル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩、及び
9−(2,6−ジニトロフェノキシカルボニル)−10−(3−スクシンイミジルオキシカルボニルプロピル)アクリジニウム トリフルオロメタンスルホン酸塩
からなるグループから選択される、アクリジニウムエステル標識化化合物。

【公開番号】特開2011−219489(P2011−219489A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−137782(P2011−137782)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【分割の表示】特願2006−524419(P2006−524419)の分割
【原出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(502151565)ジェン−プロウブ カーディフ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】