説明

化学発光物質

【課題】生化学検査や臨床検査等の分野で使用するために、紅色から赤色の発光を誘導するローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物およびその製造法を提供する。さらに、そのローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物を用いたスーパーオキシドアニオンの高感度分析方法を提供する。
【解決手段】イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン類とローダミン類がシクロデキストリンを介して共有結合した化合物をスーパーオキシドアニオンの発光分析用試薬の有効成分として用いることにより、課題が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物に関する。本発明のローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物は、化学発光することができる化合物であり、スーパーオキシドアニオンの発光分析用試薬として利用することができ、生体内外のスーパーオキシドアニオンを検出することによる疾病の診断あるいは疾患の研究に寄与するものとして使用できる。
【背景技術】
【0002】
これまでイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン類は、種々合成されており、それらは、化学発光試薬として有用であることが知られている。これらのイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン類の中でCLA、 MCLA、 FCLAは、スーパーオキシドアニオンの発光分析試薬としても用いられ、市販(東京化成工業株式会社)されている。しかし、これらの発光試薬から誘導される発光は、水溶液中、中性条件下ではCLAおよびMCLAでは青色であり、FCLAでは緑色の発光であり、被検体中の夾雑物による消光や被検体からの光透過性が低いという欠点がある。又、以下に示す特許文献が公知であるが、これらの発光試薬では、使用できる発光波長(発光色)の範囲が狭く、分析の多様化のためにはさらに長波長域での発光、例えば黄色、橙色、紅色、赤色の発光が可能な発光試薬が望まれる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−66048号公報
【特許文献2】PCT/JP03/01617号公報
【特許文献3】特開平11−209379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、発光波長の長い、紅色、赤色の発光が可能な発光化合物を提供し、さらには、発光波長を長くすることにより被検体からの透過性を高め、高い発光強度を示し且つ高い検出感度を有するスーパーオキシドアニオンの発光分析用試薬を提供する。さらには、スーパーオキシドアニオンの発光分析法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上述のような背景において、従来の化合物よりも発光波長の長い発光試薬を創出するために鋭意検討した結果、紅色〜赤色発光を示し、高い発光強度を示し、且つ高い検出感度でスーパーオキシドアニオンを検出する化合物を合成し、本発明を完成したものである。
すなわち本発明は、まず第1には、ローダミン類とイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン類がシクロデキストリンを介して共有結合してなる下記の化式(1)で示されるローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物(ただし、式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基または複素環であり、R2は、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基または複素環であり、R3は、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基または複素環であり、R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基または複素環であり、R1、R2、R3、R4のいずれかにローダミン類が共有結合している。ローダミン類とは、例えば、ローダミン123、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン19、ローダミン110、ローダミン575、スルホローダミン101、スルホローダミンB、スルホローダミンG等およびローダミン誘導体を示す)。シクロデキストリンとしては、グルコピラノースが6分子から16分子結合した環状性オリゴ糖を用いることができる。
【化1】

【0006】
本発明の代表的な例として次の化式2、化式3、化式4および化式5で表わされるスルホローダミン類とイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン類がシクロデキストリンを介して共有結合してなるスルホローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物を例示できる。ただし化式3および化式5におけるmは0から6の整数である。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【0007】
次に本発明は、上述のローダミン類とイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン類がシクロデキストリンを介して共有結合してなるローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物を有効成分として含有することを特徴とするスーパーオキシドアニオンの発光検出試薬に関わる。
【0008】
さらに本発明は、上述の発光試薬を検体溶液と接触させた後、発光強度を測定することを特徴とするスーパーオキシドアニオンの分析方法である。
なお、本明細書中で「アルキル基」とは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20個の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基をいい、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコサニルなどの直鎖の基または、分岐状に結合した基をいう。
【0009】
本明細書で「アルコキシル基」とは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、メチキシエトキシ、メトキシプロポキシ、エトキシエトキシ、エトキシプロポキシ、メトキシエトキシエトキシ基などの炭素数1〜20個のアルコキシル基が直鎖上にまたは分岐状に結合したものなどをあげることができる。又、本明細書で「アリール基」とは、フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜20個の芳香族炭化水素をあげることができる。
【0010】
さらに、本明細書で「複素環」とは、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、トリアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、フラザン、ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどをあげることができる。又、本明細書で「ハロゲン原子」とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などをあげることができる。次に、本明細書で「ローダミン類」とは、例えば、ローダミン123、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン19、ローダミン110、ローダミン575、スルホローダミン101、スルホローダミンB、スルホローダミンG等およびそれらの誘導体をあげることができる。
本明細書で「シクロデキストリン」とは,D-グルコピラノースがa-1,4結合した非還元性の環状オリゴ糖であり、グルコピラノース6分子、7分子、8分子からなるものをa-、b-、g-シクロデキストリンと称す。本発明のシクロデキストリンとしては、これらのシクロデキストリンの他に、グルコピラノースが9分子から16分子結合した環状性オリゴ糖を用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、従来の化合物よりも発光波長が長く紅色〜赤色の発光を誘導する化合物を開発し、さらには、紅色〜赤色発光を示し、高い発光強度を示し且つ高い感度でスーパーオキシドアニオンを検出する試薬およびその製造法さらには分析方法が提供される。この発明のスーパーオキシドアニオンの分析用試薬は、スーパーオキシドアニオンと反応して高い発光強度を示し、最大発光波長約610nmであり効率的なスーパーオキシドアニオンの分析が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の紅色〜赤色の発光を誘導する発光化合物は、少なくとも、ローダミン類とイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン類がシクロデキストリンを介して共有結合してなるローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物を含有することを特徴とするものである。この時、ローダミン類とシクロデキストリンおよびシクロデキストリンとイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン類は、直接共有結合しているもののみならず、適当なスペーサー分子鎖を介して共有結合しているものであってもよい。さらに本発明のスーパーオキシドアニオンの発光分析用試薬は、ローダミン類とイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン類がシクロデキストリンを介して共有結合してなるローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物を有効成分として含有することを特徴とする発光試薬である。
【0013】
具体的には、本発明のスーパーオキシドアニオンの分析用試薬に用いられるローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物としては、上述の化式2、化式3、化式4および化式5のものが好ましい。なお、化式3および化式5におけるmは0から6の整数である。
【0014】
本発明においてスーパーオキシドアニオンの分析用試薬の有効成分として使用されるこれらのローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物は、以上のとおりのものであり、その合成法等はとくに限定されない。例えば、下記の例をあげることができる。
工程1は、次の化式6および化式7で示されるシクロデキストリン化合物の混合物と市販のスルホローダミンクロリド;化式8およびスルホローダミンクロリド;化式9との混合物を反応させることによって化式10、化式11、化式12および化式13を製造するものである。なお、化式6および化式7で示されるシクロデキストリン化合物は、公知の化合物であり(例えばAnal. Biochem.,
325, 185-195 (2004))、位置異性体の混合物あるいは一種のみの異性体のみでもよい。化式7におけるmは0から6の整数である。化式8および化式9で示されるスルホローダミンクロリドは、市販のものあるいは独自に製造したものであり、化式8および化式9で示される位置異性体の混合物あるいは一種のみの異性体のみでもよい。化式10、化式11、化式12および化式13で示される化合物は、位置異性体の混合物あるいは一種のみの異性体のみでもよい。第1工程において使用しうる反応溶媒は四塩化炭素,クロロホルム,塩化メチレン,ベンゼン,トルエン,キシレン,クロロベンゼン,ピリジン,THF,エーテル、DMFのごときハロゲン系溶媒,芳香族炭化水素,エーテル系溶媒,アセトアミド系溶媒、および水、あるいはこれらの混合溶媒から適宜選択されるが、これに限定されるものではない。反応温度は−78℃から溶媒の還流温度の間で選択されるが,好ましくは0℃から60℃である。反応時間は使用する反応溶媒,反応温度などにより異なるが,1分から12時間の間で適宜選択される。
【0015】
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【0016】
工程2では、化式10、化式11、化式12および化式13で示される化合物を、位置異性体の混合物あるいは一種のみの異性体として、アンモニア水と反応することにより、化式14、化式15、化式16および化式17で示される化合物を製造する。化式14、化式15、化式16および化式17で示される化合物は、位置異性体の混合物あるいは一種の異性体のみでもよい。ここで、化式15および化式17におけるmは0から6の整数である。第2工程において使用しうる反応溶媒は四塩化炭素,クロロホルム,塩化メチレン,ベンゼン,トルエン,キシレン,クロロベンゼン,ピリジン,THF,エーテル、DMFのごときハロゲン系溶媒,芳香族炭化水素,エーテル系溶媒,アセトアミド系溶媒、あるいは水、あるいはこれらの混合溶媒から適宜選択されるが,これに限定されるものではない。反応温度は−78℃から溶媒の還流温度の間で選択されるが,好ましくは0℃から60℃である。反応時間は使用する反応溶媒,反応温度などにより異なるが,1分から10日間の間で適宜選択される。
【0017】
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【0018】
工程3は、化式14、化式15、化式16および化式17で示される化合物と、化式18で示される化合物とを脱水縮合することにより化式2、化式3、化式4および化式5を製造するものである。化式14、化式15、化式16および化式17で示される化合物は、位置異性体の混合物あるいは一種の異性体のみでもよい。化式18で示される化合物は公知の化合物(例えば、Carbohydr Res 1998;306:177-187)であり、化式2、化式3、化式4および化式5で示される化合物は位置異性体であり、混合物あるいは一種の異性体のみでもよい。第3工程において使用しうる反応溶媒は四塩化炭素,クロロホルム,塩化メチレン,ベンゼン,トルエン,キシレン,クロロベンゼン,ピリジン,DFM,THF,エーテル、DMFのごときハロゲン系溶媒,芳香族炭化水素,エーテル系溶媒,アセトアミド系溶媒、あるいは水、あるいはこれらの混合溶媒から適宜選択されるが,これに限定されるものではない。反応温度は−78℃から溶媒の還流温度の間で選択されるが,好ましくは−20℃から100℃の間で選ばれる。縮合剤としては1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド,DCC,6-メチル-2-ニトロ安息香酸無水物などが挙げられるが,これに限定されるものではない。反応時間は使用する反応溶媒,反応温度,縮合剤などにより異なるが,1分から48時間で適宜選択される。
【0019】
【化18】

【0020】
さらに、本発明のスーパーオキシドアニオンの分析用試薬は、以上のとおりのローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物を有効成分とするものであれば、その他の物質、例えば、溶剤、緩衝剤、安定剤、界面活性剤等を含有してもよい。
そして本発明は、スーパーオキシドアニオンを検出する方法をも提供する。すなわち、本発明のスーパーオキシドアニオンの分析方法では、前記のローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物によって発せられる光の強度を測定することによりスーパーオキシドアニオンを簡便に分析することが可能となるのである。
この時、添加する分析試薬の量等の分析条件は特に限定されない。具体的には、分析試薬の濃度は、分析系に影響を与えない程度であればよい。また、分析は、被検体に影響を与えない温度範囲で行なえばよい。例えば、一般に生体を被検体とし、水溶液中で分析を行なう場合には、約10〜40℃の温度範囲が好ましく例示される。
さらに本発明のローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物によって発せられる光の発光波長は、最大波長約610nmであるため他成分による消光は少なく被検体からの透過性がよい。さらに、従来の緑色発光するFCLAより発光強度が高く、且つ高い感度でスーパーオキシドアニオンを検出することができる
【0021】
以下に本発明のローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物[化学式](1)の代表例であるローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物[化式2、化式3、化式4および化式5で示される化合物は位置異性体]を用いるスーパーオキシドアニオンの分析を実施例にて示し,本発明の有用性をさらに明らかにする。
【実施例1】
【0022】
「モノ-6-N-(ローダミン)-2,3-モノマンノエポキシ γ-CD [化学式(10)、化学式(11)、化学式(12)および化学式(13)]の混合物の合成」
モノ-6-アミノ-2,3-モノマンノエポキシ γ-CD
[化学式(6)および化学式(7)]の混合物(0.11 g)を、0.1 M リン酸緩衝液(pH7.0)(3.0 mL)に溶解し、氷冷下でスルホローダミンクロリド[化学式(8)および化学式(9)]の位置異性体混合物(0.061g)を加え、アセトン(7 mL)を加え氷冷下で50分間攪拌を行った。その後、アセトニトリルを加え、シリカゲルカラムに供し、アセトニトリルおよびアセトニトリル-水混合溶液で溶出し、溶出液を減圧濃縮しモノ-6-N-(ローダミン)-2,3-モノマンノエポキシ γ-CD化合物[化学式(10)、化学式(11)、化学式(12)、および化学式(13)]の位置異性体混合物(0.078 g)を得た。
青紫色粉末1H
NMR (500MHz, 23℃, 5%D2O/DMSO-d6):
1.7-2.1 (8H, m), 2.5-2.7 (4H, m), 2.9-3.2 (4H, m), 3.2-5.2 (m), 6.1-8.5 (5H, m)
ppm.IR(KBr): 3423, 2933,
1598, 1498, 1300 cm-1
UV-vis(MeOH):268 (e 22000), 298 (e 13900), 369 (e
5700), 424 (e 2170), 583 (e 82100) nm
【実施例2】
【0023】
「化合物[化学式(14)、化学式(15)、化学式(16)、および化学式(17)]の合成」
モノ-6-N-(ローダミン)-2,3-モノマンノエポキシ γ-CD化合物[化学式(10)、化学式(11)、化学式(12)、および化学式(13)]の位置異性体混合物(0.070 g)を28%アンモニア水(12 mL)に溶解し、30℃で4日間放置し、減圧濃縮を行った。残渣に水を加えSephadex CM-25Cカラムに供し、水および1M アンモニア水で溶出し、溶出液を減圧濃縮し、残渣を少量の水に溶解し、アセトン(10 mL)に加え粉体化を行い、遠心分離により粉体[化学式(14)、化学式(15)、化学式(16)および化学式(17)の位置異性体混合物](0.050 g)を得た。
青紫色粉末
1H NMR(500MHz, 23℃, 5%D2O/DMSO-d6) 1.7-2.1 (8H, m), 2.6-2.7 (4H,
m), 2.8-5.0 (m), 6.2-8.4 (5H, m)ppm. IR(KBr): 3398, 2932, 1597, 1498, 1300 cm-1
UV-vis(MeOH):268 (e 28400), 298 (e 18000), 369 (e 7120), 428 (e 2360), 583 (e 110000) nm
【実施例3】
【0024】
「化合物[化学式(2)、化学式(3)、化学式(4)、および化学式(5)]の合成」
化合物[化学式(14)、化学式(15)、化学式(16)および化学式(17)の混合物](0.020
g)、化合物[化学式(18)](0.005 g)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.015 g), ピリジン(0.6 mL)、および水(0.2 mL)の混合物をアルゴンガス下で室温で2.5時間攪拌し、その後、減圧濃縮した。残渣を0.1%トルフルオロ酢酸-40%メタノール-10%N,N-ジメチルホルムアミド水溶液で溶解しODSカラムに供し、0.1%トルフルオロ酢酸-メタノール-水溶液で溶出し、溶出液を減圧濃縮し、アセトンを用いて粉体化し、遠心分離により粉体 [化学式(2)、化学式(3)、化学式(4)および化学式(5)の位置異性体混合物]
(0.019 g)を得た。
青紫色粉末
1H NMR(500MHz, 23 oC,
0.5%TFA/D2O-DMSO-d6
= 10:1): 1.6-2.0 (8H, m), 2.5-2.6 (4H, m), 2.8-5.0 (m),
6.5-8.4 (11H, m) ppm.
IR(KBr): 3397, 2931, 1597, 1497, 1299 cm-1.
UV-vis(MeOH): 268 (e 51200), 369 (e 13900), 428 (e 10200), 583
(e 111000) nm.
【実施例4】
【0025】
スーパーオキシドアニオンは、ヒポキサンチンにキサンチンオキシダーゼを作用させ,キサンチンを尿酸に変化させる過程で生じる。この系に下記の実施例3で得たローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物[化学式(2)、化学式(3)、化学式(4)および化学式(5)の位置異性体混合物]を共存させ,スーパーオキシドアニオン検出の性能を明らかにする。また,従来用いられているスーパーオキシドアニオン発光分析用試薬の中で最も発光波長が長く高い感度を有するFCLAと比較した。
KCl(0.2M)、EDTA(0.1mM)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)(20mM)を含む緩衝水溶液 (pH 7.2、0.5ml)に25℃で、ヒポキサンチン水溶液(0.3mM,0.5ml)、ローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物[化学式(2)、化学式(3)、化学式(4)および化学式(5)の位置異性体混合物]水溶液(2.5x10-5M,40μl)およびキサンチンオキシダーゼ水溶液(0.37unit/ml,40μl)を加え、アトー社ルミネッセンサーPSNを用いて発光強度を測定した(発光波長による発光量の補正はせず)。発光はキサンチンオキシダーゼ水溶液の添加後、すぐに最高強度を示した。比較のためローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物[化学式(2)、化学式(3)、化学式(4)および化学式(5)の位置異性体混合物]に代えてFCLAを用いた。得られた相対発光強度はローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物[化学式(2)、化学式(3)、化学式(4)および化学式(5)の位置異性体混合物]が1.5x107 counts
であり,FCLAは1.4x106
countsであった。
【実施例5】
【0026】
KCl(0.2M)、EDTA(0.1mM)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)(20mM)を含む緩衝水溶液(pH 7.2、0.5ml)に25℃で、ヒポキサンチン水溶液(0.3mM,0.5ml)、ローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物[化学式(2)、化学式(3)、化学式(4)および化学式(5)の位置異性体混合物]水溶液(2.5x10-5M,40μl) およびキサンチンオキシダーゼ水溶液(0.37unit/ml,40μl)を加え、蛍光分光光度計を用いて発光スペクトルを測定した(ただし,励起光は使用しない)。発光スペクトルは最大発光波長約610nmを示した。発光スペクトルを図1に示した。
【実施例6】
【0027】
KCl(0.2M)、EDTA(0.1mM)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)(20mM)を含む緩衝水溶液(pH 7.2、0.5ml)に25℃で、ヒポキサンチン水溶液(0.3mM,0.5ml)、ローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物[化学式(2)、化学式(3)、化学式(4)および化学式(5)の位置異性体混合物]水溶液(最終濃度が2.4x10-7Mから1.8x10-5Mになるように加える)およびキサンチンオキシダーゼ水溶液(0.37unit/ml,40μl)を加え、アトー社ルミネッセンサーPSNを用いてローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物[化学式(2)、化学式(3)、化学式(4)および化学式(5)の位置異性体混合物]の各種濃度における発光強度を測定した。発光はキサンチンオキシダーゼ水溶液の添加後,すぐに最高強度を示した。比較のためローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物[化学式(2)、化学式(3)、化学式(4)および化学式(5)の位置異性体混合物]の代わりに従来用いられているスーパーオキシドアニオン発光分析用試薬のなかでもっとも発光波長が長く高い感度を有するFCLAも同様にして実験を行なった。得られた相対発光強度の結果を図2に示した。









【図面の簡単な説明】
【0028】

【図1】実施例5で得られたローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物[化学式(2)、化学式(3)、化学式(4)および化学式(5)の位置異性体混合物]とスーパーオキシドアニオンとの反応によって生じた発光の発光スペクトルを示す図である。横軸は発光波長[wavelength (nm)]であり、縦軸は発光強度(Intensity)である。
【図2】実施例6で得られたヒポキサンチン−キサンチンオキシダーゼ系におけるローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物[化学式(2)、化学式(3)、化学式(4)および化学式(5)の位置異性体混合物](◆)およびFCLA(■)の濃度と発光強度の相関図である。横軸はそれぞれの化合物の濃度(μM)であり、縦軸は発光開始の発光強度(counts x 106)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローダミン類とイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン類がシクロデキストリンを介して共有結合してなる化式(1)で示されるローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物(ただし、式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基または複素環であり、R2は、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基または複素環であり、R3は、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基または複素環であり、R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基または複素環であり、R1、R2、R3、R4のいずれかにローダミン類が共有結合している。ローダミン類とは、例えば、ローダミン123、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン19、ローダミン110、ローダミン575、スルホローダミン101等あるいはこれらのローダミン誘導体を示す)。
【化1】

【請求項2】
化式2、化式3、化式4、化式5で表わされるスルホローダミン類とイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン類がシクロデキストリンを介して共有結合してなるスルホローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物。ただし化式3および化式5におけるmは0から6の整数である。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【請求項3】
請求項1および2のいずれか1項に記載のローダミン類とイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン類がシクロデキストリンを介して共有結合してなるローダミン-シクロデキストリン-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン結合化合物を有効成分とすることを特徴とするスーパーオキシドアニオンの発光分析用試薬。
【請求項4】
請求項3に記載のスーパーオキシドアニオン分析試薬を検体溶液と接触させた後、発光強度を測定することを特徴とするスーパーオキシドアニオンの分析方法。







【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−99967(P2007−99967A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293468(P2005−293468)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【Fターム(参考)】