説明

化学的プロセス

【課題】下式で示されたメチル(E)−2−(2−ヒドロキシフェニル)−3−(メトキシ)アクリレートを調製する方法の提供。


【解決手段】メチル2−(2−ヒドロキシフェニル)−3,3−(ジメトキシ)プロパノエートをベンジル保護してメチル2−[(2−ベンジルオキシ)フェニル]−(3,3−ジメトキシ)プロパノエートとし、続いてメタンスルホン酸で脱メタノール化した後、パラジウム/水素でベンジル保護基を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロビルリン殺真菌剤であるメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(アゾキシストロビン)、及びその新規の前駆体を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アゾキシストロビンを調製するための方法は、WO92/08703(特許文献1)に記載されている。1つの方法において、アゾキシストロビンは、2−シアノフェノールを、メチル(E)−2−[2−(6−クロロ−ピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3−メトキシアクリレートと反応させることにより調製される。
【0003】
不斉4,6−ビス(アリールオキシ)ピリミジン誘導体を製造する高収率の方法は、WO01/72719(特許文献2)に開示されており、そこでは、6−クロロ−4−アリールオキシピリミジンは、任意に、溶媒及び/又は塩基の存在下で、2〜40モル%の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を添加して、フェノートと反応させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO92/08703
【特許文献2】WO01/72719
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、触媒としてDABCOを用いて、アゾキシストロビン又はアゾキシストロビンの新規のアセタール前駆体を調製する場合に、収率について妥協せずに、WO01/72719で意図されているよりも顕著に少ない量のこの比較的高価な触媒を用いることができることの発見に基づいている。製造のコストを減少させるだけでなく、これは、工程廃水中に排出された触媒の量を減少させるという、更なる環境的な利益を有する。
【0006】
このように、本発明によると、式(I)の化合物を調製するための方法であって:
【化1】

{式中、Wは、メチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基C(CO2CH3)=CHOCH3若しくはメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基C(CO2CH3)CH(OCH32、又は当該2つの基の混合である}、
(a)式(II)の化合物を:
【化2】

{式中、Wは上記の意味を有する。}、0.1〜2モル%の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの存在下で、2−シアノフェノール又はその塩(適切には、カリウム2−シアノフェノキシド)と反応させること、或いは
(b)式(III)の化合物を:
【化3】

式(IV)の化合物と:
【化4】

{式中、Wは、上記の意味を有する}、0.1〜2モル%の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの存在下で反応させること、
のいずれかを含んで成る、前記方法が提供される。
【0007】
具体的な実施態様において、本発明の方法は、式(II)の化合物を:
【化5】

{式中、Wは、上記の意味を有する}、0.1〜2モル%の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの存在下で、2−シアノフェノール又はその塩(適切には、カリウム2−シアノフェノキシド)と反応させることを含んで成る。
【0008】
Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基C(CO2CH3)CH(OCH32[すなわち、化合物メチル2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3,3−ジメトキシプロパノエート(本明細書中で「アゾキシストロビンアセタール」と呼ぶ)]である式(I)の化合物は、新規の化合物であり、本発明の一部を形成する。具体的には、本発明は、実質的に純粋な形態の単離されたアゾキシストロビンアセタールを含む[これは、85〜100重量%、好ましくは90〜100重量%のアゾキシストロビンアセタールを含んで成る、単離された形態である]。
【0009】
Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基である式(II)の化合物を用いて、或いはWがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基である式(IV)の化合物を用いて本発明の方法を実施する場合、得られた生成物は、ある割合の、Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基である式(I)の化合物を含み得る。この方法の条件下で、メチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基からメタノールが除去される可能性があるため、これは起こり得る。同様の理由で、Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基とメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基の混合である式(II)の化合物又は式(IV)の化合物を用いて、この方法を実施する場合(本発明は、このような方法を含む)、得られる生成物は、Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基とメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基の混合である式(I)の化合物であるだろう;しかし、当該生成物は、この潜在的なメタノールの除去により、混合出発物質中の(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基の割合から予想されるよりも高い割合の、Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基である式(I)の化合物を有し得る。後に論じるように、メタノールの除去により、Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基である式(I)の生成物を、Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基である式(I)の化合物へと変換することが、通常必要とされるので、これは実際の結果ではない。
【0010】
都合良くは、本発明の方法は、適切な不活性溶媒又は希釈剤中で実施する。これらは、例えば以下のものが挙げられる:脂肪族、脂環式及び芳香族炭化水素、例えば石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びデカリン;ハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン及びトリクロロエタン;芳香族複素環溶媒、例えばピリジン又は置換ピリジン、例えば2,6−ジメチルピリジン;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−tert−アミルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン及びアニソール;ケトン、例えばアセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン;ニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、n−及びi−ブチロニトリル並びにベンゾニトリル;アミド、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチル−ピロリドン及びヘキサメチルリントリアミド;4級アミン、具体的には、R1、R2及びR3がそれぞれ独立にC1-10(特に、C1-8)アルキル、C3-6シクロアルキル、アリール(特に、フェニル)又はアリール(C1-4)アルキル(特に、ベンジル)であるか;或いは、R1、R2及びR3の2つ又は3つが、それらが結合する窒素原子と共に結合して、任意に縮合し、任意に第二の窒素環原子を含む1個、2個又は3個の5−、6−又は7−員脂環式環を形成する、式R123Nのアミン、適切な4級アミンの例は、N,N−ジ−イソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)、N,N−ジメチルアニリン、トリエチルアミン、t−ブチルジメチルアミン、N,N−ジイソプロピルメチルアミン、N,N−ジイソプロピルイソブチルアミン、N,N−ジイソプロピル−2−エチルブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルエチルアミン、N−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン又は2−ジメチルアミノピリジンである;エステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸イソプロピル;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド;スルホン、例えばスルホラン(sulpholane);及び、そのような溶媒及び希釈剤の混合物、並びにそれらの1つ以上ものと水との混合物。特に適切な希釈剤は、ケトン[例えば、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン]、エステル[例えば、酢酸イソプロピル]、4級アミン[例えば、[N,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)]及びアミド[例えば、N,N−ジメチルホルムアミド]である。本発明の具体的な側面において、希釈剤としてメチルイソブチルケトンが用いられる。本発明の更なる側面において、希釈剤としてシクロヘキサノンが用いられる。本発明の更なる側面において、希釈剤として酢酸イソプロピルが用いられる。本発明の更なる側面において、希釈剤としてN,N−ジメチルホルムアミドが用いられる。本発明の更なる側面において、希釈剤としてN,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)が用いられる。最も適切には、本発明で用いられる希釈剤は、N,N−ジメチルホルムアミドである。
【0011】
本発明の更なる実施態様において、水性二相溶媒系中で本方法を実施する。適切には、この実施態様において、式(II)の化合物を2−シアノフェノールと反応させる場合、2−シアノフェノールは塩として存在する。最も適切には、塩はカリウム2−シアノフェノキシドである。有利には、水は反応を通して除去される。このような水性工程における使用に適した共溶媒は、少なくとも部分的に水非混和性の溶媒である溶媒であり、例えばシクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン及び酢酸イソプロピルである。最も適切には、このような水溶液系を用いる場合、2−シアノフェノールの塩はカリウム2−シアノフェノキシドであり、希釈剤はシクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン又は酢酸イソプロピルである。2−シアノフェノールを、カリウム2−シアノフェノキシドの水溶液として、この工程に添加する場合、用いる酸受容体(以下を参照のこと)の量を減少させることができることに留意する。
【0012】
更に、本発明の方法は、都合良くは、酸受容体の存在下で実施する。適切な酸受容体は、全て通例の無機塩基及び有機塩基である。これらとしては、例えば以下のものが挙げられる:アルカリ土類金属及びアルカリ金属の水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、重炭酸塩及び水素化物[例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水素化カルシウム、水素化ナトリウム及び水素化カリウム]、グアニジン、ホスファジン(phosphazine)(例えば、Liebigs Ann. 1996, 1055-1081を参照のこと)、プロホスファトラン(prophosphatrane)(例えば、JACS 1990、9421−9422を参照のこと)、及び4級アミン[例えば、可能な溶媒又は希釈剤としての上記のもの]。特に適切な酸受容体は、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の炭酸塩、特に炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム、並びに4級アミン1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エンである。最も適切には、酸受容体は炭酸カリウムである。最も適切には、本発明は、酸受容体として、炭酸カリウムと共に、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸イソプロピル、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)又はN,N−ジメチルホルムアミドの存在下で実施する。
【0013】
本発明の方法は、0.1〜2モル%の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、すなわち0.1超で2モル%未満のDABCOの存在下で実施する。好ましくは、それは、0.2〜2モル%のDABCOの存在下で実施する。0.1又は0.2〜2、0.1又は0.2〜1.9、0.1又は0.2〜1.8、0.1又は0.2〜1.7、0.1又は0.2〜1.6、及び0.1又は0.2〜1.5モル%の任意の量のDABCOは適切であるが、本発明は、用いるDABCOの量が0.2〜1.4モル%において特に有利である。通常、それは、0.5〜1.4モル%、典型的には0.8〜1.2モル%、例えば約1モル%であるだろう。
【0014】
本発明の特定の実施態様において、本方法は、希釈剤としてメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸イソプロピル、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)、又はN,N−ジメチルホルムアミドと共に、約1モル%のDABCOの存在下で実施する。最も適切には、希釈剤は、N,N−ジメチルホルムアミドである。適切には、酸受容体は、炭酸カリウムであるだろう。
【0015】
本発明の方法を実施する際に、反応温度は、相対的に広い範囲内で変わり得る。選択される温度は、溶媒又は希釈剤の性質、例えばその沸点及び/又は所望の反応を促進する有効性、及び反応が実施される速度に依存するだろう。任意の所定の溶媒又は希釈剤において、反応は、より低い温度でより遅く進行する傾向にあるだろう。一般的に、反応は、0〜120℃の温度、適切には40〜100℃の温度、典型的には45〜95℃、例えば60〜85℃の温度で実施され得る。
【0016】
本発明の方法を実施するために、1モルの式(II)の化合物あたり、0.8〜4モル、通常0.95〜1.2モルの2−シアノフェノールを用いる;1モルの式(III)の化合物あたり、同様の量(0.8〜4モル、通常0.95〜1.2モル)の式(IV)の化合物を用いる。
【0017】
都合良くは、本発明の方法は、塩基と共に、好ましくは溶媒又は希釈剤の存在下で、反応の成分の1つを混合することにより実施する。その後、適切な場合、溶媒又は希釈剤の存在下で、他の成分を添加し、通常高温で当該混合物を撹拌する。任意の段階でDABCO触媒を添加することができるが、これは高い生成物収量を促進する傾向があるので、好ましくは最後の成分として添加する。反応が完了したと判断された後、反応混合物をワークアップし、当業者に周知の従来の方法を用いて生成物を単離する。
【0018】
2−シアノフェノールは、市販の物質である。
【0019】
Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基C(CO2CH3)=CHOCH3である式(II)の化合物、及びWがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基C(CO2CH3)CH(OCH32である式(II)の化合物は、3−(α−メトキシ)メチレンベンゾフラン−2(3H)−オン(ベンゾフラン−2(3H)−オンから得られる)の4,6−ジクロロピリミジンとの反応から、WO92/08703に記載のように調製することができる。Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基である式(II)の化合物は、WO92/08703又はWO98/07707に記載されているように、Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基である式(II)の化合物からメタノールを除去することにより(すなわち、脱メタノリシス(demethanolysis)により)、調製することもできる。Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基である式(II)の化合物は、Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基である式(IV)の化合物を、4,6−ジクロロピリミジンと反応させることにより、GB−A−2291874に記載されているように調製することができる。これは、既知の方法により使用の前に精製することができ、或いは、前の反応から未精製状態で、例えば「ワン−ポット」反応で用いることができる。
【0020】
Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基である式(IV)の化合物は、GB−A−2291874に記載されているように、3−(α−メトキシ)メチレン−ベンゾフラン−2(3H)−オンから調製することができる。Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基である式(IV)の化合物は、Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基である式(IV)の化合物の脱メタノリシスにより調製することができる。この場合、フェノール基は、例えば脱メタノリシスの前のベンジル化により保護し、その後の脱保護される必要がある。
【0021】
更なる側面において、本発明は、以下の段階:
(i)Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基である式(IV)の化合物を、その後の脱メタノリシスの間の反応からその化合物のヒドロキシル基を保護する試薬と反応させる段階;
(ii)段階(i)において形成されたヒドロキシル保護化合物からメタノールを除去する段階;及び
(iii)段階(i)において形成されたヒドロキシル保護基を除去し、Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基である式(IV)の化合物を形成させる段階、
を含んで成る、Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基である式(IV)の化合物を調製するための方法を含む。
【0022】
前記方法の段階(i)において、Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基である式(IV)の化合物を、標準的な保護試薬、例えばハロゲン化ベンジル又は置換ハロゲン化ベンジル[例えば、2−ニトロベンジルハロゲン化物]、例えば臭化ベンジル又は2−ニトロベンジル臭化物と、都合良くは適切な溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド及び適切な塩基、例えば炭酸カリウム中で反応させて、式(V)の化合物:
【化6】

{式中、Qは保護基、例えばベンジル又は2−ニトロベンジルである}、を形成させる。
【0023】
前記方法の段階(ii)において、任意の適切な物理的又は化学的手段により、例えばWO92/08703又はWO98/07707に記載されているように、メタノールを除去する。都合良くは、それは、式(V)の化合物を、無水酢酸の存在下で、たとえば20℃〜110℃、典型的には20℃〜80℃、好ましくは30℃〜60℃の範囲の温度、例えば約40℃で、メタンスルホン酸により処理することにより、除去される。
【0024】
前記方法の段階(iii)において、保護基を除去するための任意の標準的な方法により、例えば周囲温度での酢酸エチル中の10%のパラジウム/炭素触媒による水素を用いた還元法により、保護基は除去することができる。
【0025】
本発明は、Qが保護基である式(V)の新規の中間体、具体的には、Qがベンジルである式(V)の中間体[すなわち、化合物メチル2−(2−ベンジルオキシ)フェニル−3,3−ジメトキシプロパノエート]も含む。より具体的には、本発明は、実質的に純粋な形態の単離されたメチル2−(2−ベンジルオキシ)フェニル−3,3−ジメトキシプロパノエート[すなわち、85〜100重量%、好ましくは90〜100重量%のメチル2−(2−ベンジルオキシ)フェニル−3,3−ジメトキシプロパノエートを含んで成る単離された形態]を含む。
【0026】
以下の実施例は、本発明を例示する。実施例をとおして、以下の省略が用いられる:
【化7】

【実施例】
【0027】
実施例1
この実施例は、DABCOの減少した濃度の効果を示すために設計された一連の実験について説明する。
【0028】
a)2モル%のDABCOを用いたDMF中での、メチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートの2−シアノフェノールとのカップリング
DMF(130ml)中のメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(99%で80.9g、0.25モル)、炭酸カリウム(98%で52.8g、0.375モル)及び2−シアノフェノール(97.5%で33.6g、0.275モル)を含むスラリーを、約60℃まで加熱した。DMF(10ml)中のDABCO(0.56g、0.005モル)の溶液を添加した。この混合物を、80℃まで加熱し、この温度で60分間保持した。減圧蒸留により、DMFを除去した。トルエン(160ml)及び水(265ml)を蒸留残渣に添加し、この2相混合物を70〜80℃まで加熱した。この混合物を40分間撹拌し、その後静置し、下方の水相を分離した。トルエン溶液(237.8g)は、理論上、メチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(41.3%w/w)を97.5%含んでいた。
【0029】
b)1モル%のDABCOを用いたDMF中のメチル(E)−2−(2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートの2−シアノフェノールとのカップリング。
DMF(130ml)中のメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(99%で80.9g、0.25モル)、炭酸カリウム(98%で52.8g、0.375モル)及び2−シアノフェノール(97.5%で33.6g、0.275モル)を含むスラリーを、約60℃まで加熱した。DMF(10ml)中のDABCO(0.28g、0.0025モル)の溶液を添加した。この混合物を、80℃まで加熱し、この温度で60分間保持した。減圧蒸留により、DMFを除去した。トルエン(160ml)及び水(265ml)を蒸留残渣に添加し、この2相混合物を70〜80℃まで加熱した。この混合物を40分間撹拌し、その後静置し、下方水相を分離した。トルエン溶液(227.9g)は、理論上、メチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(43.6%w/w)を98.7%含んでいた。
【0030】
c)0.2モル%のDABCOを用いたDMF中のメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートの2−シアノフェノールとのカップリング。
DMF(130ml)中のメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(99%で80.9g、0.25モル)、炭酸カリウム(98%で52.8g、0.375モル)及び2−シアノフェノール(97.5%で33.6g、0.275モル)を含むスラリーを、約60℃まで加熱した。DMF(10ml)中のDABCO(0.056g、0.0005モル)の溶液を添加した。この混合物を、80℃まで加熱し、この温度で300分間保持した。減圧蒸留により、DMFを除去した。トルエン(160ml)及び水(265ml)を60℃で蒸留残渣に添加し、この2相混合物を70〜80℃まで加熱した。この混合物を40分間撹拌し、その後静置し、下方水相を分離した。トルエン溶液(243.1g)は、理論上、メチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(38.6%w/w)を93.1%含んでいた。
【0031】
d)0.1モル%のDABCOを用いたDMF中のメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートの2−シアノフェノールとのカップリング。
DMF(130ml)中のメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(99%で80.9g、0.25モル)、炭酸カリウム(98%で52.8g、0.375モル)及び2−シアノフェノール(97.5%で33.6g、0.275モル)を含むスラリーを、約60℃まで加熱した。DMF(10ml)中のDABCO(0.028g、0.00025モル)の溶液を添加した。この混合物を、80℃まで加熱し、この温度で300分間保持した。減圧蒸留により、DMFを除去した。トルエン(160ml)を蒸留残渣に添加し、70〜80℃の温度を保持し、その後60℃まで加熱した水(265ml)を添加した。この混合物を80℃で40分間撹拌し、その後静置し、下方水相を分離した。トルエン溶液(226.7g)は、理論上、メチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(41.5%w/w)を93.4%含んでいた。
【0032】
e)DABCOが存在しないDMF中のメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートの2−シアノフェノールとのカップリング。
DMF(130ml)中のメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(99%で80.9g、0.25モル)、炭酸カリウム(98%で52.8g、0.375モル)及び2−シアノフェノール(97.5%で33.6g、0.275モル)を含むスラリーを、約80℃まで加熱し、この温度で8時間保持した。100℃の最大温度までの減圧蒸留により、DMFを除去した。トルエン(160ml)を蒸留残渣に添加し、60〜70℃の温度を保持し、その後60℃まで加熱した水(265ml)を添加し、再び60〜70℃の温度を保持した。この混合物を80℃で40分間撹拌し、その後静置し、下方水相を分離した。トルエン溶液(223.3g)は、理論上、メチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(38.8%w/w)を86.6%含んでいた。
【0033】
これらの実験の結果の概要を、以下の表に示す:
【表1】

【0034】
表に示すように、驚いたことに、DABCO濃度が2モル%未満に減少した場合に、当該方法において形成されたアゾキシストロビンの収率は、大きく減少しなかった:0.1モル%のDABCOの濃度でさえも、理論上の93.4%の収率を得るのに十分だった。更に、DABCOを含まない実験でははるかに低い収率が得られるだけでなく、それは、0.1モル%及び0.2モル%のDABCOに対する5時間、並びに1.0モル%及び2.0モル%のDABCOに対する60分間と比較して、この点に達するまで8時間を必要とすることにも留意する(この観点において、1.0モル%のDABCOを含む実験は、驚くべきことに、2.0モル%のDABCOを含む実験と同じ時間において、同様の収率が得られることにも留意する)。
【0035】
実施例2
様々な溶媒を用いる場合に、低い濃度のDABCOにより得られる収率を調査するために、更なる個別の実験を実施した。更に、実施例2c)において、メチル2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3,3−ジメトキシプロパノエートに関する特性データが得られる。
【0036】
a)1モル%のDABCOを用いたDMF中の2−シアノフェノール及びメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートのカップリングによるアゾキシストロビンの調製。
DMF(約100g)中のメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(96.2g;WO92/08703に記載されているように調製した)の溶液に、2−シアノフェノールDMF溶液(50%w/wで78.5g 2−シアノフェノール)のDMF溶液を添加し、その後炭酸カリウム(63.5g)及びDABCO(0.34g)を添加した。この混合物を、80℃まで加熱し、75分間保持した。100℃の最終温度までの減圧蒸留により、DMFを除去した。
【0037】
トルエン(165.8g)を、蒸留残渣に入れ、熱水(318.6g)を添加し80℃で30分間撹拌する前に、温度を75℃とした。水相を除去し、その後、トルエン層をサンプリングし、分析した。メチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(アゾキシストロビン)の溶液収率は、90.0%であった。減圧下で、トルエンを蒸留した。メタノール(88g)を70℃で蒸留残渣に添加し、その混合物を<5℃に冷却し、ろ過し、そのケーキをメタノールで洗って(2×30ml)、乾燥後にメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートを得た(83.2%の収率)。
【0038】
b)0.9モル%のDABCOを用いたシクロヘキサノン中の2−シアノフェノール及びメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートのカップリングによるアゾキシストロビンの調製。
シクロヘキサノン(約80g)中のメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(64.4g;WO92/08703に記載されているように調製した)の溶液に、2−シアノフェノール(26.6g)及びシクロヘキサノン(26.6g)を添加した。この混合物を50℃まで加熱し、シクロヘキサノン(2g)中のDABCO(0.2g)及び炭酸カリウム(42.4g)を入れた。反応物を90℃まで加熱し、3時間保持した。温度を50〜60℃に調整し、熱水(88g)を添加し、15分間撹拌し、水相を分離した。シクロヘキサノン層の分析により、91.3%の収率のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(アゾキシストロビン)が得られた。シクロヘキサノンを減圧蒸留により除去し、蒸留残渣に80℃でメタノール(59g)を添加した。メタノール溶液を0〜5℃までゆっくりと冷却し、ろ過し、そのケーキをメタノールで洗い(2×15.8g)、乾燥後にメチル(E)− 2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(87.0%の収率)を得た。
【0039】
c)1.0モル%のDABCOを用いたシクロヘキサノン中の2−シアノフェノール及びメチル2−(2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3,3−ジメトキシプロパノエートのカップリングによる、アゾキシストロビン及びアゾキシストロビンアセタールの調製。
メチル2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3,3−ジメトキシプロパノエート(43g)及びメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(6.1g)(WO92/08703に記載されているように調製した)を含む粗混合物(53g)を、シクロヘキサノン(156g)中に溶解した。炭酸カリウム(21.9g)、2−シアノフェノール(15.6g)及びDABCO(0.14g)を添加し、その混合物を90℃まで加熱し、4時間この温度を保持した。水(100ml)を90℃で添加し、その混合物を10分間撹拌し、静置して、水相を分離した。塩酸水溶液(1%)及び塩化ナトリウム(10g)を添加し、その混合物を撹拌し、静置し、水層を除去した。シクロヘキサノン溶液の分析は、メチル2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3,3−ジメトキシプロパノエート(73%)及びメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(27%)を明らかにした。
【0040】
以下の式を有する、メチル2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3,3−ジメトキシプロパノエート(Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基である化合物(I))のための特性データ:
【化8】

【表2】

【0041】
上記の表において:
ArHは、フェニル環に結合した水素である;
帰属欄中のボールド体で示された水素は、特定のシグナルに関連するものである;
「m」は、多重項シグナルを意味する;個々の水素シグナルは、完全に分解されていない;
「d」は、二重項を意味する;
「s」は、一重項を意味する;
積分は、シグナルに関連する水素の数を示す;
ピリミジン水素は、PyHxとして示され、xは水素のピリミジン環への結合の位置を示す。
【0042】
メチル2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3,3−ジメトキシプロパノエートのいくつかの試料の示差走査熱量測定は、約129℃で融解吸熱を示し、その直後発熱遷移及び約139℃での別の融解吸熱を示す。この挙動は、この物質の1つ(又はそれ以上)の多形相の存在の強く示し、主な多形体は、結晶化溶媒及び条件に依存する。129℃の遷移前及び後の粉末X線回折は、異なる結晶形が存在することを示している。
【0043】
d)1モル%のDABCOを用いたMIBK/水中の2−シアノフェノール及びメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートのカップリングによるアゾキシストロビンの調製。
メチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(97.1%の強度で20g;WO92/08703に記載されているように調製した)を、MIBK(77ml)及び水(11ml)に添加し、その後2−シアノフェノール(8.0g)、DABCO(0.07g)及び炭酸カリウム(14.1g)を添加した。反応物を80℃まで加熱し、反応の終わりを観察した(8時間後に完了)。反応混合物を、80℃の水で洗った。MIBK層の分析は、メチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(アゾキシストロビン)の95.7%の収率を明らかにした。
【0044】
e)1.5モル%のDABCOを用いたMIBK中の2−シアノフェノール及びメチル(E)−2−(2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートのカップリングによるアゾキシストロビンの調製。
メチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(97.7%強度で98.4g;WO92/08703に記載されているように調製した)を、MIBK(214g)に添加し、45〜50℃まで加熱した。2−シアノフェノール(40.1g)、炭酸カリウム(63.4g)及びDABCO(0.51g)を添加し、温度を80℃まで上昇させて、この温度で4.5時間保持した。水(316g)を添加し、静置し水層を分離する前に、撹拌を30分間継続した。MIBK溶液の分析は、メチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(アゾキシストロビン)の97.2%の収率を明らかにした。
【0045】
f)1.5モル%のDABCOを用いたMIBK/水中の2−シアノフェノール及びメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートのカップリングによるアゾキシストロビンの調製。
メチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(97.7%強度で98.4g;WO92/08703に記載されているように調製した)を、MIBK(210g)及び水(38.3g)に添加し、45〜50℃まで加熱した。2−シアノフェノール(40.1g)、炭酸カリウム(63.4g)及びDABCO(0.51g)を添加し、温度を80℃まで上昇させて、5.5時間保持した。水(316g)を添加し、静置し水層を分離する前に、撹拌を30分間継続した。MIBK溶液の分析は、メチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(アゾキシストロビン)の91.8%の収率を明らかにした。
【0046】
g)1.3モル%DABCOを用いた酢酸イソプロピル中のメチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエートの2−シアノフェノールとのカップリング
2−シアノフェノール(99%で15.02g、0.125モル)、炭酸カリウム(23.39g、0.169モル)、メチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(98.3%で40.61g、0.113モル)(これは、メチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(0.69g、0.0022モル)を含んでいた)及び最後にDABCO(0.172g、0.0015モル)を、順に酢酸イソプロピル(80g)に添加した。更なる量の酢酸イソプロピル(80.3g)を添加し、この混合物を6.5時間加熱還流した。反応物を室温まで冷却し、一晩置いた後に、5℃まで更に冷却し、1時間保持し、その後ろ過した。ろ過ケーキは水(2×100g)で洗ったスラリーであり、その後減圧下(45℃、400mbar)で乾燥した。乾燥した固体は、理論上74.1%のメチル2−[2−[6−(2−シアノフェノキシ)−ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(90.8%w/w)及び理論上2.1%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(2.41%w/w)を含んでいた。酢酸イソプロピルろ液は、理論上8.75%のメチル2−[2−[6−(2−シアノフェノキシ)−ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(3.44%w/w)及び理論上4.95%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(1.8%w/w)を含んでいた。Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基C(CO2CH3)=CHOCH3又はメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基C(CO2CH3)CH(OCH32である化合物(I)の合わせた収率は、理論上89.8%であった。
【0047】
h)1.3モル%のDABCOを用いたシクロヘキサノン中のメチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエートの2−シアノフェノールとのカップリング
2−シアノフェノール(99%で15.02g、0.125モル)、炭酸カリウム(23.39g、0.169モル)、メチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(98.3%で40.61g、0.113モル)(これは、メチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(0.69g、0.0022モル)を含んでいた)及び最後にDABCO(0.172g、0.0015モル)を、順にシクロヘキサノン(75.6g)に添加した。更なる量のシクロヘキサノン(76.3g)を添加し、この混合物を140分間90℃まで加熱した。減圧蒸留により、シクロヘキサノンを除去した。水(100g)及びジクロロメタン(200g)を蒸留残渣に添加し、得られた混合物を60℃まで加熱し、30分間保持した。この混合物をろ過し、相を分離した。ジクロロメタンを有機相から蒸留し、茶色の油状固体を得、これをメタノール(20ml)でトリチュレートし、明るいベージュ色の固体を得た。一部のメタノールを減圧して除去し、水(125g)を添加した。得られたスラリーをろ過し、ろ紙上で吸引乾燥し、その後減圧して乾燥した(45℃、400mbar)。乾燥した固体は、理論上74.0%のメチル2−[2−[6−(2−シアノフェノキシ)−ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(81.19%w/w)、及び理論上18.3%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(18.55%w/w)を含んでいた。Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基C(CO2CH3)=CHOCH3又はメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基C(CO2CH3)CH(OCH32である化合物(I)の合わせた収率は、理論上92.3%であった。
【0048】
i)1.0モル%のDABCOを用い、塩基として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)を用いた、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)中でのメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートの2−シアノフェノールとのカップリング。
N,N−ジイソプロピルエチルアミン(105ml)中にメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(98%で65.4g、0.2モル)、2−シアノフェノール(97.5%で26.8g、0.22モル)及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)(99%で36.9g、0.24モル)を含むスラリーを、50〜60℃まで加熱した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(10ml)中のDABCO(0.224g、0.002モル)の溶液を添加した。反応が完了するまで(3時間)、混合物をこの温度で撹拌した。90℃までの減圧蒸留により、溶媒を除去した。トルエン(130ml)を蒸留残渣に添加し、温度を70〜80℃に保持し、その後水(210ml)を添加し、前記の温度に保持した。混合物を80℃で10分間撹拌し、その後静置し、下方の水相を分離した。トルエン溶液(180.2g)は、理論上87.4%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(39.1%w/w)を含んでいた。
【0049】
j)1.0モル%のDABCOを用いた、酢酸イソプロピル中でのメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートの2−シアノフェノールとのカップリング。
酢酸イソプロピル(130ml)中にメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(99%で80.9g、0.25モル)、炭酸カリウム(98%で52.8g、0.375モル)及び2−シアノフェノール(97.5%で33.6g、0.275モル)を含むスラリーを、約60℃まで加熱した。酢酸イソプロピル(10ml)中のDABCO(0.28g、0.0025モル)の溶液を添加した。この混合物を80℃まで加熱して、この温度で360分間保持した。80℃の最大温度までの減圧蒸留により、酢酸イソプロピルを除去した。トルエン(160ml)を蒸留残渣に添加し、この温度を60〜70℃に保持し、その後60℃まで加熱した水(265ml)を添加し、再び60〜70℃の温度に保持した。この混合物を80℃で40分間撹拌し、その後静置し、下方水相を分離した。トルエン溶液(229.8g)は、理論上94.2%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(41.2%w/w)を含んでいた。
【0050】
k)1.3モル%のDABCOを用いた、酢酸イソプロピル中のメチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエートの2−シアノフェノールとのカップリング
2−シアノフェノール(99%で15.02g、0.125モル)、炭酸カリウム(98%で18.3g、0.13モル)及びメチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(98.84%で40.39g、0.113モル)(これは、メチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(0.29g、9.1×10-4モル)を含んでいた)を、順に室温で酢酸イソプロピル(160.3g)に添加した。この混合物を60℃まで加熱し、10分間保持した。DABCO(0.172g、0.0015モル)を添加し、この混合物を加熱還流(〜90℃)した。この反応は6時間で完了した。この混合物を85℃まで冷却し、温度が75℃未満にならないように、水(100g)をゆっくりと添加した。15分間撹拌した後に、反応を静置し、水相を分離した。同様の方法で、第二の水洗浄(100g)を適用した。洗浄した有機相(201.6g)は、理論上91.45%のメチル2−[2−[6−(2−シアノフェノキシ)−ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(22.5%w/w)及び理論上4.4%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(1.00%w/w)を含んでいた。Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基C(CO2CH3)=CHOCH3又はメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基C(CO2CH3)CH(OCH32である化合物(I)の合わせた収率は、理論上95.85%であった。
【0051】
上記から分かるように、実施例2a)〜k)に記載した方法において用いる条件は、優れた収率のアゾキシストロビンを与える。
【0052】
実施例3
この実施例は、成分の添加の順序が、得られたアゾキシストロビンの収率に対して相違をもたらすかどうかを調べるために実施する実験に関する。具体的には、この実施例は、DABCOを最後の成分として添加する場合に、収率がより高くなるかどうかについて調べる。
【0053】
a)2−シアノフェノールの後、すなわち最後に添加する1モル%のDABCOを用いたMIBK中でのメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートの2−シアノフェノールとのカップリング。
MIBK(160ml)中のメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(99%で80.9g、0.25モル)、炭酸カリウム(98%で52.8g、0.375モル)及び2−シアノフェノール(97.5%で33.6g、0.275モル)を含むスラリーを、約60℃まで加熱した。MIBK(10ml)中のDABCO(0.28g、0.0025モル)の溶液を添加した。この混合物を80℃まで加熱し、この温度で360分間保持した。水(300ml)をこの反応に入れ、70〜80℃の範囲の温度を保持した。この混合物を70分間撹拌し、その後静置し、下方の水相を分離した。MIBK溶液(235.3g)は、理論上95.8%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(41.0%w/w)を含んでいた。
【0054】
b)2−シアノフェノールの前に添加する1モル%のDABCOを用いたMIBK中でのメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートの2−シアノフェノールとのカップリング。
MIBK(160ml)中にメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(99%で80.9g、0.25モル)及び炭酸カリウム(98%で52.8g、0.375モル)を含むスラリーに、MIBK(10ml)中のDABCO(0.28g、0.0025モル)の溶液を添加した。この混合物を約60℃まで加熱し、その後2−シアノフェノール(97.5%で33.6g、0.275モル)を入れた。この混合物を80℃まで加熱し、この温度で350分間保持した。この反応混合物を一晩で室温まで冷却し、その後80℃まで再加熱した。水(300ml)をこの反応に入れ、70〜80℃の範囲の温度に保持した。この混合物を40分間撹拌し、その後静置し、下方の水相を分離した。MIBK溶液(237.5g)は、理論上91.9%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(39.0%w/w)を含んでいた。
【0055】
c)2−シアノフェノールの後、すなわち最後に添加する1モル%のDABCOを用いたMIBK中でのメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートの2−シアノフェノールとのカップリング。
MIBK(160ml)中のメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(99%で80.9g、0.25モル)、炭酸カリウム(98%で52.8g、0.375モル)及び2−シアノフェノール(97.5%で33.6g、0.275モル)を含むスラリーを、約60℃まで加熱した。MIBK(10ml)中のDABCO(0.28g、0.0025モル)の溶液を添加した。この混合物を80℃まで加熱し、この温度で240分間保持した(反応の終わりに残った(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートは、GC上で4.4面積%であった)。60℃の水(300ml)をこの反応に入れ、70〜80℃の範囲の温度を保持した。この混合物を40分間撹拌し、その後静置し、下方の水相を分離した。MIBK溶液(237.1g)は、理論上89.1%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(38.7%w/w)を含んでいた。
【0056】
d)2−シアノフェノールの前に添加する1モル%のDABCOを用いたMIBK中でのメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートの2−シアノフェノールとのカップリング。
MIBK(160ml)中にメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(99%で80.9g、0.25モル)及び炭酸カリウム(98%で52.8g、0.375モル)を含むスラリーに、MIBK(10ml)中のDABCO(0.28g、0.0025モル)の溶液を添加した。この混合物を約60℃まで加熱し、その後2−シアノフェノール(97.5%で33.6g、0.275モル)を入れた。この混合物を80℃まで加熱し、この温度で360分間保持した(反応の終わりに残った(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートは、GC上で5.8面積%であった)。60℃の水(300ml)をこの反応に入れ、70〜80℃の範囲の温度に保持した。この混合物を40分間撹拌し、その後静置し、下方の水相を分離した。MIBK溶液(232.6g)は、理論上81.6%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(35.3%w/w)を含んでいた。
【0057】
更に、比較を提供するために、以下の実施例3e)は、より高い濃度のDABCOを用いる場合(2モル%)に予想される収率の指示を与える:
【0058】
e)2モル%のDABCOを用いるMIBK中でのメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレートの2−シアノフェノールとのカップリング。
MIBK(160ml)中のメチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(99%で80.9g、0.25モル)及び炭酸カリウム(98%で52.8g、0.375モル)を含むスラリーに、MIBK(10ml)中のDABCO(0.56g、0.005モル)の溶液を添加した。この混合物を約60℃まで加熱し、その後2−シアノフェノール(97.5%で33.6g、0.275モル)を入れた。この混合物を80℃まで加熱し、この温度で280分間保持した。水(300ml)をこの反応に入れ、70〜80℃の範囲の温度を保持した。この混合物を40分間撹拌し、その後静置し、下方の水相を分離した。MIBK溶液(237.0g)は、理論上94.5%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(40.2%w/w)を含んでいた。
【0059】
これらの実験の結果の概要を、以下の表に示す:
【表3】

【0060】
表から分かるように、驚くべきことに、この方法で回収されたアゾキシストロビンの収率は、2−シアノフェノールの後にDABCOを添加した場合に増大した。
【0061】
実施例3e(2.0モル%のDABCO)の、実施例3a及び3b(1.0モル%のDABCO)との比較は、異なる溶媒(DMF)中で実施例1において既に得られた結果を裏付けることに留意する:1.0モル%のDABCOにより完了した実験の収率は、驚くべきことに、2.0モル%のDABCOを用いて得られた収率に匹敵する。
【0062】
実施例4
この実施例は水溶液系で実施した実験に関する。
a)カリウム2−シアノフェノキシド溶液の後、すなわち最後に添加する1.0モル%のDABCOを用いた酢酸イソプロピル中でのメチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエートの2−シアノフェノールとのカップリング
酢酸イソプロピル(161.3g)中のメチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(99%で40.6g、0.113モル)の撹拌溶液を50℃まで加熱し、その後カリウム2−シアノフェノキシド(46.0%で32.44g、0.126モル)の水溶液を添加し、その後炭酸カリウムの水溶液(40%で5.95g、0.017モル)及びDABCOの水溶液(20%で0.644g、0.00115モル)を添加した。この混合物を、還流下で5.5時間撹拌し、その間還流温度を82℃〜88℃に増大させた。水をディーン・スターク・トラップ(Dean and Stark Trap)中で除去した。反応混合物を70℃の水(100ml)で洗い、その後70℃の1%のHCl水溶液(100ml)で洗った。酢酸イソプロピル溶液(164.3g)は、理論上75.4%のメチル2−[2−[6−(2−シアノフェノキシ)−ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(22.05%w/w)、及び理論上11%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(3.04%w/w)を含んでいた。Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基C(CO2CH3)=CHOCH3又はメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基C(CO2CH3)CH(OCH32である化合物(I)の合わせた収率は、理論上86.4%であった。
【0063】
b)カリウム2−シアノフェノキシド溶液の後、すなわち最後に添加する1.4モル%のDABCOを用いた酢酸イソプロピル中でのメチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエートの2−シアノフェノールとのカップリング
メチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(8.52g、0.0266モル)を含むメチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(83.72%で96.0g、0.228モル)及び酢酸イソプロピル(305.4g)の混合物を、50℃まで加熱した。炭酸カリウム(98%で27g、0.19モル)及びカリウム2−シアノフェノキシド水溶液(50%で90.0g、0.286モル)を添加し、その後DABCOの水溶液(5%で8.17g、0.0036モル)を添加した。反応混合物を還流しながら225分間加熱した。反応の間、ディーン・スターク・トラップ中で水を除去した。この混合物を75℃まで冷却し、水(241.1g)をゆっくりと添加した。この混合物を75℃で20分間撹拌し、静置し、水相を除去した。この酢酸イソプロピル溶液に、第二の量の水(99.2g)を添加した。この混合物を75℃で30分間撹拌し、静置し、水相を除去した。有機相(353.1g)は、理論上72.6%のメチル2−[2−[6−(2−シアノフェノキシ)−ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(22.8%w/w)、及び理論上15.4%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(4.47%w/w)を含んでいた。Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基C(CO2CH3)=CHOCH3又はメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基C(CO2CH3)CH(OCH32である化合物(I)の合わせた収率は、理論上88%であった。
【0064】
c)カリウム2−シアノフェノキシド溶液の後、すなわち最後に添加する1.4モル%のDABCOを用いた酢酸イソプロピル中でのメチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエートの2−シアノフェノールとのカップリング
メチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(6.16g、0.019モル)を含むメチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(83.72%で69.4g、0.165モル)及び酢酸イソプロピル(220.8g)の混合物を、50℃まで加熱し、この温度で10分間撹拌した。炭酸カリウム水溶液(40%で19.5g、0.0565モル)、その後カリウム2−シアノフェノキシド水溶液(50%で65.0g、0.207モル)。最後に、DABCOの水溶液(5.0%で5.91g、0.0026モル)を添加した。反応混合物を還流しながら300分間加熱した。反応の間、ディーン・スターク・トラップ中で水を除去した。この混合物を70〜75℃まで冷却し、水(174.5g)をゆっくりと添加し、この温度を保持した。この混合物を75℃で20分間撹拌し、静置し、水相を除去した。この酢酸イソプロピル溶液に、第二の量の水(71.7g)を添加した。この混合物を75℃で20分間撹拌し、静置し、水相を除去した。有機相(233.1g)は、理論上73%のメチル2−[2−[6−(2−シアノフェノキシ)−ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(25.09%w/w)、及び理論上15.6%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(4.96%w/w)を含んでいた。Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基C(CO2CH3)=CHOCH3又はメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基C(CO2CH3)CH(OCH32である化合物(I)の合わせた収率は、理論上88.6%であった。
【0065】
d)カリウム2−シアノフェノキシド溶液の前に添加する1.4モル%のDABCOを用いた酢酸イソプロピル中でのメチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエートの2−シアノフェノールとのカップリング。
メチル(E)−2−{2−[6−クロロピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(8.78g、0.0274モル)を含むメチル2−[2−(6−クロロピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(83.72%で99.0g、0.235モル)及び酢酸イソプロピル(314.9g)の混合物を、50℃まで加熱し、この温度で10分間撹拌した。炭酸カリウム水溶液(40%で27.8g、0.081モル)、その後DABCOの水溶液(5%で8.42g、0.0038モル)を添加した。最後に、カリウム2−シアノフェノキシド水溶液(50%で92.8g、0.295モル)を入れた。反応混合物を還流しながら260分間加熱した。反応の間、ディーン・スターク・トラップ中で水を除去した。この混合物を70℃まで冷却し、水(249g)をゆっくりと添加した。この混合物を75℃で20分間撹拌し、静置し、水相を除去した。この酢酸イソプロピル溶液に、第二の量の水(102.3g)を添加した。この混合物を75℃で20分間撹拌し、静置し、水相を除去した。有機相(373.2g)は、理論上68%のメチル2−[2−[6−(2−シアノフェノキシ)−ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル]−3,3−ジメトキシプロパノエート(20.8%w/w)、及び理論上12.4%のメチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(3.52%w/w)を含んでいた。Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基C(CO2CH3)=CHOCH3又はメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基C(CO2CH3)CH(OCH32である化合物(I)の合わせた収率は、理論上80.4%であった。
【0066】
これらの実験の結果の概要を、以下の表に示す:
【表4】

【0067】
本発明の方法は、水溶液系でも実施することができることが、これらの結果から分かる。更に、DABCOの添加の順序の観点から、実施例3から分かる驚くべき結果は、水溶液系において理解される−2−シアノフェノール(カリウム2−シアノフェノキシドの形態)の後、すなわち最後のDABCOの添加は、前にそれを添加するよりもより高い収率を提供する。
【0068】
実施例5
メチル(E)−2−(2−ヒドロキシフェニル)−3−(メトキシ)アクリレートの調製。
段階1:メチル2−[(2−ベンジルオキシ)フェニル]−(3,3−ジメトキシ)プロパノエートの調製。
粗メチル2−(2−ヒドロキシフェニル)−3,3−(ジメトキシ)プロパノエート(15g)、DMF(82g)及び炭酸カリウム8.7を室温で撹拌し、15分間にわたって臭化ベンジル(9.8g)を添加した。6時間後に、更なる量の臭化ベンジル(1.0g)を添加した。一晩撹拌した後、水(200ml)を添加した。形成された固体を、吸引ろ過により単離し、水で洗い、ろ紙上で吸引乾燥し、メチル2−[(2−ベンジルオキシ)フェニル]−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート(57%)を得た。
【0069】
段階2:メチル(E)−2−(2−ベンジルオキシ)フェニル−3−メトキシアクリレートの調製。
無水酢酸(7.0g)中のメチル2−[(2−ベンジルオキシ)フェニル]−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート(5g;段階1から)の溶液を、40℃まで加熱し、メタンスルホン酸(0.33g)を添加した。90分後、この混合物を室温まで冷却し、トルエン(25ml)を添加した。得られた溶液を水(3×75ml)で洗い、その後トルエンを減圧して蒸発させ、液体を得た。一晩置いた後、結晶が形成した。これらは、ろ過により単離された。更なる濃縮及びエタノールによるトリチュレートの後に、ろ液から第二のクロップを単離した。メチル(E)−2−(2−ベンジルオキシ)フェニル−3−メトキシアクリレートの合わせた収率は、44%であった。
【0070】
段階3:メチル(E)−2−(2−ヒドロキシ)フェニル−3−メトキシアクリレートの調製。
減圧の適用により、酢酸エチル(25ml)を脱気し、窒素でパージした。メチル(E)−2−(2−ベンジルオキシ)フェニル−3−メトキシアクリレート(0.8g)及び木炭上のパラジウム(0.02g)を、酢酸メチル(10ml)中に添加した。窒素雰囲気を水素で置換し、反応物を周囲温度で撹拌した。約40時間後に、触媒をろ過し、反応を新たな触媒(0.02g)を用いて再開した。2時間後に、反応を完了した。反応フラスコを窒素でパージした。触媒をろ過し、酢酸エチルで洗い、ろ液を混合し、洗浄液を減圧下で蒸発させ、油としてメチル(E)−2−(2−ヒドロキシ)フェニル−3−メトキシアクリレートを得た。これは、放置すると結晶化した。
【0071】
以下の式を有する、メチル2−(2−ベンジルオキシ)フェニル−3,3−ジメトキシプロパノエートに関する特性データ(表5を参照のこと)(Qがベンジルである化合物(V)):
【化9】

【表5】

【0072】
以下の式を有する、メチル(E)−2−(2−ベンジルオキシ)フェニル−3−メトキシアクリレートに関する特性データ(表6を参照のこと):
【化10】

【表6】

【0073】
以下の式を有する、メチル(E)−2−(2−ヒドロキシ)フェニル−3−メトキシアクリレート(Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基である化合物(IV))に関する特定データ(表7を参照のこと):
【化11】

【表7】

【0074】
上記の表において:
ArHは、フェニル環に結合した水素である、
帰属欄中のボールド体で示された水素は、特定のシグナルに関連するものである、
「m」は、多重項シグナルを意味する;個々の水素シグナルは、完全に分解されていない、
「d」は、二重項を意味する;
「s」は、一重項を意味する;
積分は、シグナルに関連する水素の数を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物を調製するための方法であって:
【化1】

(a)式(II)の化合物を:
【化2】

0.1〜2モル%の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの存在下で、2−シアノフェノール、又はその塩と反応させること、或いは
(b)式(III)の化合物を:
【化3】

式(IV)の化合物と:
【化4】

0.1〜2モル%の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの存在下で反応させること;
{式中、Wはメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基C(CO2CH3)=CHOCH3若しくはメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基C(CO2CH3)CH(OCH32、又は当該2つの基の混合である}
のいずれかを含んで成る、前記方法。
【請求項2】
0.2〜1.4モル%の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの存在下で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不活性溶媒又は希釈剤中で実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記不活性溶媒又は希釈剤が、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、酢酸イソプロピル又はN,N−ジメチルホルムアミドである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性溶媒又は希釈剤が、N,N−ジメチルホルムアミドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1.0モル%の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの存在下で実施する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水溶液系で実施される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
2−シアノフェノールの塩として、カリウム2−シアノフェノキシドを用いる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
酸受容体の存在下で実施される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸受容体が、炭酸カリウム又は炭酸ナトリウムである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
0〜100℃の温度で実施される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが、添加される最後の成分である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
化合物メチル2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3,3−ジメトキシプロパノエートである、Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基C(CO2CH3)CH(OCH32である式(I)の化合物。
【請求項14】
単離された、実質的に純粋な形態の請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
85〜100重量%の請求項13に記載の化合物を含んで成る組成物。
【請求項16】
(i)Wがメチル2−(3,3−ジメトキシ)プロパノエート基である式(IV)の化合物を、その後の脱メタノリシスの間の反応からその化合物のヒドロキシル基を保護する試薬と反応させる段階;
(ii)段階(i)において形成されたヒドロキシル保護化合物からメタノールを除去する段階;及び
(iii)段階(i)において形成されたヒドロキシル保護基を除去し、Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基である式(IV)の化合物を形成させる段階、
を含んで成る、Wがメチル(E)−2−(3−メトキシ)アクリレート基である式(IV)の化合物を調製するための方法。
【請求項17】
式(V)の化合物
【化5】

{式中、Qは保護基である}。
【請求項18】
メチル2−(2−ベンジルオキシ)フェニル−3,3−ジメトキシプロパノエートである化合物。
【請求項19】
単離された、実質的に純粋な形態の請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
85〜100重量%の請求項18に記載の化合物を含んで成る組成物。

【公開番号】特開2012−232998(P2012−232998A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−164910(P2012−164910)
【出願日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【分割の表示】特願2008−508278(P2008−508278)の分割
【原出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】