説明

化学的又は生化学的信号を発生するためのシステム及び方法

化学的又は生化学的作用物質のこのような作用物質に応答する系に対する効果を生じさせるための方法及び装置が開示されている。本発明の方法を実施する際に、系は、スペクトル分析において複数の作用物質特異的なスペクトルピークにより特徴付けられる低周波時間領域信号が印加される電磁変換器の磁場の領域内に置かれる。これらのスペクトルピークは、低周波時間領域信号のスペクトルプロットから識別され、この信号は、(i)そのような化学的又は生化学的作用物質を磁気遮蔽と電磁遮蔽の両方を持つ容器内に入れる工程と、(ii)時間領域信号のスペクトルプロットにそのような識別可能なスペクトルピークを生じさせる有効なノイズレベルのノイズを試料に注入しつつ試料からの低周波時間領域信号を記録する工程により生じる。試料は、印加される信号電力で、系内において系に対し作用物質特異的な効果を生じさせる十分な期間にわたって、変換器により発生する磁場に曝される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的又は生物学的エフェクター物質の効果の1つ又は複数をもたらすことができる化学的又は生物学的信号を発生する装置及び効果に関する。
【背景技術】
【0002】
化学及び生化学の分野において認められているパラダイムの1つは、化学的又は生化学的エフェクター物質、例えば、分子が、イオン、電荷、若しくは分散力などのさまざまな物理化学的力を通じて、又は電荷誘起結合(charge−induced bonds)の共有結合(covalent)の切断若しくは形成を通じて標的とする系と相互作用することである。これらの力は、エフェクター物質又は標的とする系のいずれかにおける振動若しくは回転エネルギーモードを伴い得る。
【0003】
従って、例えば、薬物分子が生物有機体に投与された場合、薬物の作用は、それと標的成分、例えば、膜、酵素、又は核酸成分と相互作用することを伴って、薬物の作用に関連する一連の事象を生じさせるか、又はその事象を引き起こす誘因となる。同様に、酵素が生体基質に加えられた場合、酵素は、ある種の空間整合を通じて基質と相互作用することができ、系内に存在するエネルギーモードは、活性又は活性化された状態に変換され、共有結合の切断又は形成に至る。
【0004】
このパラダイムからの明らかな帰結は、エフェクター−標的系においては、標的環境でエフェクター物質が要求されるということである。しかし、この要求がエフェクターの実際の存在に関係しているかどうか、又は少なくともいくつかのエフェクター機能については、エフェクターに特徴的なエネルギーモードの存在に帰因し得るのかどうかは、知られていない、又は理解されていない事項である。エフェクター機能が少なくとも一部でも特定の特性エネルギーモードによりまねることができる場合、エフェクターに特徴的な特定のモードに系を曝すことにより標的系内のエフェクター物質の効果を「まねる」ことが可能と思われる。そうであれば、当然持ち上がる疑問は、どのようなエフェクター−分子エネルギーモードが有効か、それらはどのようにして測定可能な信号の形態に変換できるのか、これらの信号をどのように使用して標的系に影響を及ぼすか、つまり標的系の分子の少なくともいくつかの機能をどのようにして模倣するのかということである。
【0005】
標的系を特徴的なエフェクター分子信号に曝すことにより、エフェクター物質が実際に存在することなしにエフェクター分子機能を達成するという可能性は、多くの重要な応用をもたらす。薬物を塗布することにより生物を治療する代わりに、生物を薬物特異的信号に曝すことにより同じ効果を達成する。ナノファブリケーションの分野では、所望のパターンの自己組織化を促進することができる多価エフェクター分子に特徴的な信号を集合体内に導入することにより自己組織化パターンを触媒するか、又は助長することが今なら可能かもしれない。
【0006】
本発明では、エフェクター分子に特徴的な低周波信号による変換により、エフェクターに応答することが知られている系においてエフェクター特異的な結果を得るための装置及び方法を説明する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、一態様では、化学的又は生化学的作用物質の効果をこのような物質に応答する系に生じさせるための方法を含む。この方法を実施する際に、系は、スペクトル分析において複数の作用物質特異的なスペクトルピークにより特徴付けられる低周波時間領域信号(alow−frequency,time−domain signal)が印加される電磁変換器の磁場の領域内に置かれる。これらのスペクトルピークは、(i)そのような化学的又は生化学的作用物質を磁気遮蔽と電磁遮蔽の両方を持つ容器内に入れ、(ii)時間領域信号のスペクトルプロットにそのような識別可能なスペクトルピークを発生させるのに有効なノイズレベルのノイズを試料に注入しつつ試料からの低周波時間領域信号を記録することにより生じる低周波時間領域信号のスペクトルプロットから識別される。試料は、印加される信号電力で、系内において系に対する作用物質特異的な効果を生じさせる十分な期間にわたって、変換器により発生する磁場に曝される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般的実施形態では、変換器に加えられる時間領域信号は、(i)そのような化学的又は生化学的作用物質を磁気遮蔽と電磁遮蔽の両方を持つ容器内に入れる工程と、(ii)時間領域信号のスペクトルプロットにおいてそのような識別可能なスペクトルピークを生じさせる有効なノイズレベルのノイズを試料に注入しつつ、試料からの低周波時間領域信号を記録する工程により生じる。この方法の工程(ii)は、(a)所定のノイズ振幅のノイズを試料に注入する工程と、(b)注入ノイズに重ね合わされた試料源放射線からなる電磁波時間領域信号を記録する工程と、(c)選択されたノイズレベル範囲内の複数のノイズレベルのそれぞれにおいて工程(a)及び(b)を繰り返す工程と、(d)時間領域信号のスペクトルプロットを作成することにより生成される複数の時間領域信号を分析し、スペクトルプロット内の情報に基づいて最適化された作用物質特異的な時間領域信号を識別する工程とを含むことができる。
【0009】
工程(iia)で試料に注入されるノイズの発生源は、電力調節可能ガウスノイズジェネレータ及びヘルムホルツコイルを備え、最大1ボルトまでの範囲内においてノイズジェネレータから選択されたノイズ出力信号を受信する。
【0010】
分析工程(d)は、
(i)fを時間領域信号をサンプリングするためのサンプリングレートとして、dcから8khzまでの範囲内の選択された周波数範囲のそれぞれの事象ビンfについて、それぞれのビンにおける事象数を示すヒストグラムを生成し、そのヒストグラムに対し、所定の閾値を超えるビンの数に関係するスコアを割り当て、そのスコアに基づいて時間領域信号を選択する工程、
(ii)dcから8khzまでの範囲内の選択された周波数範囲で自己相関信号のFFTを生成し、このFFT信号に対し、平均ノイズ値よりも高いピークの数に関係するスコアを割り当てて、そのスコアに基づいて時間領域信号を選択する工程、及び
(iii)dcから8kHzまでの選択された周波数範囲内で、複数の定義済み期間のそれぞれの時間領域信号のフーリエスペクトル系列を計算し、フーリエスペクトルを平均化し、平均されたFFT信号に対し、平均ノイズ値よりも高いピークの数に関係するスコアを割り当てて、そのスコアに基づいて時間領域信号を選択する工程、のうちの1つにより実行することができる。
【0011】
信号の記録は、スキッド(squid)に結合されたグラジオメーターを使用して実行することができ、注入は、ノイズをグラジオメーターに注入することを含む。
【0012】
系が応答性を有する作用物質は、リガンド特異的な非共有相互作用を通して生体系内の抗リガンド細胞標的と相互作用することができるリガンドである可能性がある。
【0013】
遺伝子又は遺伝子群のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションをもたらすために、この作用物質は、遺伝子プロモーターと相互作用することができる化合物である可能性があり、低周波時間領域信号は、その化合物の低周波時間領域信号を記録することにより発生させられる。例示的な化合物は、I(+)アラビノースであり、この場合、遺伝子は、細菌性lacオペロンを含む。
【0014】
生体系の測定可能な阻害又は増殖とバイアビリティとをもたらすために、作用物質は、生体系の増殖及びバイアビリティに必要な酵素と相互作用し、その酵素を競合的に阻害することができる化合物である可能性がある。低周波時間領域信号は、化合物の低周波時間領域信号を記録することにより生成することができる。一実施例では、作用物質は、グリホスフェートであり、標的酵素は、植物中の5−エノールピルビルシキメート−3−燐酸(EPSP)シンターゼである。他の例示的な作用物質は、フェプロペプチンDであり、標的酵素は、真核細胞内のプロテオソームに関連するタンパク質分解酵素である。
【0015】
哺乳類被検体の癌の治療で使用する場合、作用物質は、(a)細胞標的が染色体微小管スピンドルである、チュブリン結合物質、(b)細胞標的が2本鎖DNAである、アントラサイクリン、(c)細胞標的が酵素トポイソメラーゼである、トポイソメラーゼ阻害剤、(d)細胞標的が細胞代謝作用に必要な酵素である、代謝拮抗物質、(e)細胞標的が免疫応答細胞である、免疫抑制剤、及び(f)標的が細胞の核内のDNA複製機構である、腫瘍抑制タンパクのうちの1つから選択することができる。例示的なチュブリン結合作用物質は、タキソール又はタキソール類似体である。例示的な腫瘍抑制因子はp53である。
【0016】
電磁石変換器は、開いた内部を定めるコイル巻線を含み、試料は、その巻線の開いた内部内に置かれる。他の実施形態では、変換器は、埋め込み可能なコイルであり、これは、生体系内、例えば、血管領域の近くに埋め込まれる。
【0017】
MIDS信号は、1〜200mG(ミリガウス)、好ましくは10〜100mG、より好ましくは30〜80mGの範囲内の選択された磁場強度を発生する有効な選択された電力レベルで印加することができる。暴露は、1時間以上の期間の間欠的MIDS信号暴露、例えば、治療期間中、12時間オンにし、12時間オフにすることにより実行することができる。
【0018】
他の態様では、本発明は、このような作用物質に応答する系に化学的又は生化学的作用物質の効果を生じさせるための装置を含む。この装置は、(a)スペクトル分析に基づく複数の作用物質特異的スペクトルピークを特徴とする低周波時間領域信号を格納するためのメモリデバイスであって、当該作用物質特異的スペクトルピークが、
(i)磁気遮蔽と電磁遮蔽の両方を持つ容器内にそのような化学的又は生化学的作用物質を入れ、
(ii)時間領域信号のスペクトルプロットにそのような識別可能なスペクトルピークを生じさせる有効なノイズレベルのノイズを試料に注入しつつ、試料からの低周波時間領域信号を記録することにより得られる、低周波時間領域信号のスペクトルプロットから識別される、メモリデバイスを含む。
【0019】
さらにこの装置は、(b)電磁信号が変換器に印加されたときに発生する活性磁場の領域を定め、中に試料が置かれる、電磁石変換器と、(c)メモリデバイスを変換器に動作可能なように接続し、印加信号電力で、系内において系に対し作用物質特異的効果を生じさせるのに十分な期間の間、変換器の活性磁場の領域内に試料を置いた状態で、信号を変換器に印加するための増幅器を含む。
【0020】
電磁石変換器は、コイル巻線及び開いた内部を含み、試料は、その中に置かれるように適合される。一実施形態では、変換器は、その間にある暴露場を定める一対の整列した電磁コイルを備えるヘルムホルツコイルであり、試料、例えば、被検体は、この暴露場内に置かれる。他の実施形態では、変換器は、埋め込み可能なコイルを備える。
【0021】
メモリデバイスは、変換器及び増幅器から離れた場所に置くことができ、信号は、そのような離れた場所から変換器に伝送される。
【0022】
他の態様によれば、スペクトル分析に基づき、複数の作用物質特異的スペクトルピークを特徴とする化学又は生理活性物質の低周波時間領域信号が提供され、
この作用物質特異的スペクトルピークは、
(i)磁気遮蔽と電磁遮蔽の両方を持つ容器内にそのような化学的又は生化学的作用物質を入れ、
(ii)時間領域信号のスペクトルプロットにそのような識別可能なスペクトルピークを生じさせる有効なノイズレベルのノイズを試料に注入しつつ、試料からの低周波時間領域信号を記録することにより得られる、低周波時間領域信号のスペクトルプロットから識別される。
【0023】
この信号自体は、
(i)磁気遮蔽と電磁遮蔽の両方を持つ容器内にそのような化学的又は生化学的作用物質を入れる工程と、
(ii)時間領域信号のスペクトルプロットにそのような識別可能なスペクトルピークを生じさせる有効なノイズレベルのノイズを試料に注入しつつ、試料からの低周波時間領域信号を記録する工程とにより発生させることができる。
【0024】
本発明のこれら及び他の目的及び特徴は、付属の図面を参照しつつ本発明の以下の詳細な説明を読むとより完全に明らかになるであろう。
【0025】
特定の要素又は技術についての説明において、参照番号の最上位の1つ又は複数の桁は、その要素が最初に導入された図の図番を指している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
I.定義
以下の用語は、断りのない限り、以下の定義が適用される。
「分子旋光度を示す試料」は、試料を構成する、又は試料中に存在する分子化合物又は原子イオンの1つ又は複数が回転を示す気体、液体、又は固体(固体金属以外)である試料材料を指す。
「磁気遮蔽」は、遮蔽材料の透磁能の結果として磁束の通過を阻害又は防止する遮蔽を指す。
「電磁遮蔽」は、例えば、標準的なファラデー電磁遮蔽を指す。
「時間領域信号(time−domain signal)」又は「時系列信号(time−series signal)」は、時間の経過とともに変化する一時的信号特性を持つ信号を指す。
「試料源放射線」は、磁場内で分子双極子の回転などの試料の分子運動から結果として生じる磁束放射線を指す。
「ガウスノイズ」とは、ガウス型電力分布を持つランダムノイズのことである。
「定常白色ガウスノイズ(stationary white Gaussian noise)」とは、予測可能な未来の成分を持たないランダムガウスノイズのことである。
「均一ノイズ(uniform noise)」とは、振幅が一定のノイズのことである。
「周波数領域スペクトル(frequency−domain spectrum)」は、時間領域信号のフーリエ周波数プロットを指す。
「スペクトル成分」は、周波数、振幅、及び/又は位相領域において測定可能な時間領域信号内の特異的又は反復的な性質を指す。スペクトル成分は、典型的には、周波数領域内に存在する信号を指す。
「類似の試料」は、第1の試料を参照した場合、第1の試料と同じ試料又は実質的に同じ試料成分を持つ試料を指す。
「ファラデー箱」は、不要な電磁放射線のための大地までの電気的経路を用意し、それにより電磁環境を穏やかにする、電磁遮蔽構成を指す。
「スペクトル特徴スコア(spectral−features score)」は、作用物質又は試料に特異的な識別可能なスペクトル特徴を明らかにする、本明細書で説明されている3つの方法のうちの1つなどの好適な方法で処理された作用物質又は試料について記録された時間領域信号において選択された低周波数範囲、例えば、DCから1kHzまで、若しくはDCから8kHzまでの範囲で観察される作用物質特異的スペクトルピークの数及び/又は振幅に基づくスコアを指す。
「最適化された作用物質特異的時間領域信号」は、最大又は最大に近いスペクトル特徴スコアを持つ時間領域信号を指す。
「MIDS」即ち「Molecular Interrogation and Data Systems(登録商標)」は、試料から記録され、信号のスペクトル分析に関して明らかな試料依存スペクトルピークを含む時間領域信号を指す。MIDS信号は、以下で詳しく説明するように、好ましくは最適化又は増強される。MIDS信号は、さらに、本明細書で説明されているように、個別試料時間領域信号を組み合わせ、及び/又はフィルタ処理することにより生成することも可能である。
【0027】
II.低周波時間領域信号を生成し、処理するための装置
以下で詳述するのは、注目している試料の低周波電磁放射線又は信号を検出し、処理し、提示するためのシステム及び方法である。一実施形態では、知られている白色又はガウスノイズ信号が、試料に導入される。ガウスノイズは、試料からの電磁放射線を信号検出系により十分に検出できるように構成される。検出された信号群は、反復性と統計的妥当性が確実なものとなるようにまとめて処理される。結果として得られる放射パターン又はスペクトルは、特定の物質として表示し、格納し、及び/又は識別することができる。
【0028】
以下の説明では、本発明の実施形態が十分に理解されるように、また本発明の実施形態の有効な説明となるように、具体的な内容を取りあげる。しかし、当業者であれば、こうした詳細な説明がなくても本発明を実施できることを理解するであろう。他の場合には、本発明の実施形態の説明をいたずらにわかりにくくしないため、よく知られている構造及び機能については、詳細に示していないか、又は詳述していない。
【0029】
以下で詳しく説明するように、本発明のいくつかの実施形態は、低閾値分子電磁信号の反復可能な検出及び記録のための装置及び方法を提供することに関する。磁気遮蔽ファラデー箱は、試料物質及び検出装置を外部からの電磁信号から遮蔽する。磁気遮蔽されたファラデー箱内では、コイルが白色ノイズ又はガウスノイズを注入し、非鉄製トレイに試料を保持し、グラジオメーターが低閾値分子電磁信号を検出する。この装置は、さらに、超電導量子干渉素子(「SQUID」(スキッド))及び前置増幅器を備える。
【0030】
この装置は、ノイズコイル及びグラジオメーターに近接している磁気遮蔽ファラデー箱内に試料を置くことにより使用される。白色ノイズは、ノイズコイルを通じて注入され、分子電磁信号が確率共鳴により増強されるまで変調される。次いで、ファラデー箱とノイズコイルにより生じる磁場とにより外部干渉から遮蔽される、増強された分子電磁信号は、グラジオメーター及びSQUIDにより検出され測定される。次いで、信号は、増幅され、適切な記録又は測定機器に伝送される。
【0031】
図1を参照すると、外側から内側に向かう方向で、磁気遮蔽である導線箱16並びに電磁遮蔽を形成する内側導線箱18及び20を含む遮蔽構造10が示されている。他の実施形態では、外側磁気遮蔽は、アルミニウムニッケル合金コーティングを持つ固体アルミニウム板材から形成され、電磁遮蔽は、固体アルミニウムからそれぞれ形成される、2つの内壁構造により構成される。
【0032】
図2を参照すると、ファラデー箱10は、上部のところで開いており、側面開口部12及び14を備える。ファラデー箱10は、さらに、入れ子の形で中に収まっている、3つの銅製メッシュ箱16、18、及び20からなる。銅製メッシュ箱16、18、及び20はそれぞれ、それぞれの箱の間の誘電体バリア(図に示されていない)により他の箱から電気的に絶縁される。
【0033】
側面開口部12及び14は、さらに、減衰管22及び24を備え、これにより、外部干渉源から箱の内側を絶縁しつつファラデー箱10の内側にアクセスできる。図3を参照すると、減衰管24は、入れ子の形で収まっている、3本の銅製メッシュ管26、28、及び30からなる。外側の銅製メッシュ箱16、18、及び20は、それぞれ銅製メッシュ管26、28、及び30のうちの1つに電気的に接続される。減衰管24は、さらに、キャップ32を被されており、キャップは孔34を持つ。減衰管22は、同様に、銅製メッシュ管26、28、及び30からなるが、キャップ32を含まない。
【0034】
再び図2を参照すると、低密度非鉄製試料トレイ50が、ファラデー箱10の内側に取り付けられる。試料トレイ50は、減衰管22及び側面開口部12を通してファラデー箱10から取り出せるように取り付けられている。それぞれファラデー箱10の中心縦軸から減衰管22の一番外側の縁までの距離よりも長い3本の棒52が、試料トレイ50に取り付けられている。3本の棒52は、減衰管22の内側湾曲に合わせて適合され、試料トレイ50は、減衰管内に棒を置くことによりファラデー箱10の中心に位置するようにできる。例示されている実施形態では、試料トレイ50及び棒52は、グラスファイバーエポキシ製である。当業者であれば、試料トレイ50及び棒52は、非鉄製材料で作ることができ、トレイは、単一の棒など他の手段によりファラデー箱10内に据え付けることができる。
【0035】
再び図2を参照すると、ファラデー箱10内と試料トレイ50の上側に取り付けられているのは、極低温デューアフラスコ100である。開示されている実施形態では、デューアフラスコ100は、ファラデー箱10の上部の開口部内に収まるように適合され、これはTristan Technologies,Inc.社製Model BMD−6液体ヘリウムデューアである。デューアフラスコ100は、グラスファイバーエポキシ複合材で作られている。以上に狭い視野を持つグラジオメーター110は、その視野が試料トレイ50を含むようにデューアフラスコ100内の適所に取り付けられる。例示されている実施形態では、グラジオメーター110は、一次軸検出コイルで、直径は公称1センチメートルであり、2%のバランスを持ち、超導電体で形成される。グラジオメーターは、平面型グラジオメーター以外の任意の形態のグラジオメーターであってよい。グラジオメーター110は、1つの低音直流超電導量子干渉素子(「SQUID」)120の入力コイルに接続される。開示されている実施形態では、SQUIDは、Tristan Technologies,Inc.社製のModel LSQ/20 LTS dc SQUIDである。当業者であれば、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、高温又は交流SQUIDを使用できることを理解するであろう。他の実施形態では、SQUID 120は、ノイズ抑制コイルを備える。
【0036】
グラジオメーター110及びSQUID 120の開示されている組合せは、磁場を測定するときに5マイクロテスラ/√Hzの感度を持つ。
【0037】
SQUID 120の出力は、Tristan Technologies,Inc.社製のModel SP極低温用ケーブル130に接続される。極低温用ケーブル130は、デューア100内で、またデューア100なしで温度に耐えられ、SQUID 120から、ファラデー箱10及びデューア100に外部的に取り付けられている磁束ロックループ140に信号を転送する。開示されている実施形態における磁束ロックループ140は、Tristan Technologies,Inc.社製のiFL−301−L磁束ロックループである。
【0038】
図1を参照すると、磁束ロックループ140は、さらに、SQUID 120から受信された信号を増幅して、高レベル出力回路142を介して、iMC−303 iMAG(登録商標)SQUIDコントローラ150に出力する。磁束ロックループ140は、さらに、ケーブル144をSQUIDコントローラ150に接続するモデルCC−60 6メートル光ファイバー複合材を介して接続される。光ファイバー接続ケーブル144及びSQUIDコントローラ150は、Tristan Technologies,Inc.社製である。コントローラ150は、磁気遮蔽箱40に外部的に取り付けられている。光ファイバー接続ケーブル144は、SQUIDコントローラ150からの制御信号を磁束ロックループ140に伝送し、さらに、測定される信号との電磁干渉が発生する可能性を低減する。当業者であれば、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、他の磁束ロックループ、接続ケーブル、スキッドコントローラを使用できることを理解するであろう。
【0039】
SQUIDコントローラ150は、さらに、高分解能アナログ−デジタルコンバータ152、デジタイズされた信号を出力するための標準GP−IBバス154、及びアナログ信号を出力するためのBNCコネクタ156を備える。例示されている実施形態では、BNCコネクタは、パッチコード162を通してデュアルトレースオシロスコープ160に接続される。
【0040】
図2を参照すると、2要素のヘルムホルツトランス60は、試料トレイがファラデー箱10内に完全に挿入されたときに試料トレイ50のいずれかの側に取り付けられる。例示されている実施形態では、ヘルムホルツトランス60のコイル巻線62及び64は、直流から50キロヘルツまでの範囲で動作するように設計されており、中心周波数は25キロヘルツ、自己共振周波数は8.8メガヘルツである。例示されている実施形態では、コイル巻線62及び64は、一般的に四角形であり、高さ約8インチ×幅4インチである。他のヘルムホルツコイル形状も使用できるが、グラジオメーター110及び試料トレイ50がヘルムホルツコイルにより発生される磁場内に位置するように形状及びサイズを決定すべきである。コイル巻線62及び64はそれぞれ、2つの低密度非鉄製フレーム66及び68のうちの1つに取り付けられる。フレーム66及び68は、互いに蝶番で接続され、脚70により支えられる。フレーム66及び68は、脚70にスライドできるように取り付けられ、デューア100の下側部分に関してフレームは垂直に移動できる。フレームを移動して、ヘルムホルツトランス60のコイル巻線62及び64を調整し、グラジオメーター110で受信した白色ノイズの振幅を変えることができる。脚70は、ファラデー箱10の底部に据え付けられるか、又は接着され、例えば、エポキシ樹脂により接着される。例示されている実施形態では、フレーム66と68及び脚70は、グラスファイバーエポキシ製である。トランス又はコイルの他の配列も、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、試料トレイ50の周りで使用することができる。
【0041】
図4を参照すると、ファラデー箱及びその内容物の断面図が示されており、これは、デューア100及びファラデー箱10に関してヘルムホルツトランス60の巻線62を示している。また、図4では、試料トレイ50及び試料200の配置も示している。
【0042】
図5を参照すると、ヘルムホルツコイル巻線62及び64が垂直の向きに固定され、追加のノイズコイル300が試料トレイ50の下に配置されている他の実施形態が示されている。追加のノイズコイル300の巻線は、ヘルムホルツトランス60の垂直巻線62及び64に実質的に垂直であり、追加のノイズコイル300の巻線は、したがって、ファラデー箱10の底部に対し実質的に平行な向きである。
【0043】
この他の実施形態では、ノイズは、ヘルムホルツコイルを供給するものと同一のツイストペア線(図には示されていない)からノイズコイル300に供給されるであろう。ノイズ源の出所は、ヘルムホルツコイルにノイズを供給するために使用されるのと同じノイズジェネレータである。ノイズは、追加のノイズ出力接続を介して、又は出力接続からノイズジェネレータへの平衡スプリッタを介して、ノイズジェネレータのところでサンプリングされる。追加のノイズコイル300におけるノイズ信号の減衰は、多くは市販されている調整可能なRF信号減衰回路を通して、又は好適な一連の固定値RF減衰フィルタを介して、行われる。
【0044】
図6を参照すると、ヘルムホルツトランス60のコイルを支えるフレームの詳細が示されており、図6の基準点は、図4の図面から90度となっており、ファラデー箱10を省略している。フレーム66及び68は、実質的に垂直な位置にあり、互いに平行なヘルムホルツコイルのコイル巻線を示すように配置されている。フレーム66’及び68’は、互いに不平行関係にあるようにヘルムホルツトランスのコイル巻線を配置するための、フレームを結合する蝶番による接続の軸を中心とするフレームの回転を例示している。
【0045】
図1を再び参照すると、振幅調整可能な白色ノイズジェネレータ80は、磁気遮蔽箱40の外部にあり、電気ケーブル82によりフィルタ90を通してヘルムホルツトランス60に電気的に接続される。図3を参照すると、ケーブル82は、側面開口部12、減衰管24を通り、孔34を介してキャップ32内に通される。ケーブル82は、それぞれ内側及び外側磁気遮蔽86及び88により囲まれている銅製導線84のツイストペアをさらに含む同軸ケーブルである。他の実施形態では、導線は、銀又は金などの、非磁性導電性材料とすることができる。内側及び外側磁気遮蔽86及び88は、キャップ32で終端し、エンドキャップから図1に示されているヘルムホルツトランス60までの残りの距離にまたがるようにツイストペア84を残す。内側磁気遮蔽86は、キャップ32を通してファラデー箱16に電気的に接続されているが、外側磁気遮蔽は、図1に示されている磁気遮蔽箱40に電気的に接続されている。
【0046】
図1を参照すると、白色ノイズジェネレータ80は、0〜100キロヘルツまでの周波数スペクトルにわたってほぼ一様なノイズを発生することができる。例示されている実施形態では、フィルタ90は、50キロヘルツよりも高いノイズを除去するが、他の周波数範囲は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、使用することができる。
【0047】
白色ノイズジェネレータ80は、さらに、パッチコード164を通してデュアルトレースオシロスコープ160の他の入力に電気的に接続される。
【0048】
図1、2、及び3を参照すると、測定される物質200の試料は、試料トレイ50上に置かれ、試料トレイは、ファラデー箱10内に置かれる。第1の実施形態では、白色ノイズジェネレータ80は、ヘルムホルツトランス60を通じて白色ノイズを注入するために使用される。ノイズ信号は、グラジオメーター110内に誘導電圧を発生させる。次いで、グラジオメーター110内の誘導電圧は、SQUID 120により検出され、増幅され、SQUIDからの出力は、さらに、磁束ロックループ140により増幅され、SQUIDコントローラ150に送信され、次いで、デュアルトレースオシロスコープ160に送信される。デュアルトレースオシロスコープ160は、さらに、白色ノイズジェネレータ80により発生した信号を表示するためにも使用される。
【0049】
白色ノイズ信号は、白色ノイズジェネレータ80の出力を変えることにより、また図2に示されている試料200を中心にヘルムホルツトランス60を回転させることにより調整される。フレーム66及び68の蝶番による接続の軸を中心にヘルムホルツトランス60を回転させることで、グラジオメーター110に関して位相を変化させる。所望の位相変化に応じて、フレーム66及び68の蝶番による接続により、試料トレイ50を中心に30から40度回転させつつ巻線62及び64を互いに平行なままにすることができる。蝶番による接続では、さらに、巻線62及び64を平行な状態から約60度だけ回転させ、グラジオメーター110に関してヘルムホルツトランス60により発生される信号位相を変化させることができる。位相の物理的調整は、この平行からずれた向き付けを含むが、他の向き付けも、状況によっては、例えば、不規則な形状の試料200に応じるために好ましい場合がある。ノイズが検出を求められる分子電磁放射線よりも30から35デシベル高くなるまでノイズを加え、調整する。このノイズレベルで、ノイズは、確率共鳴のよく知られている現象を通じて分子電磁信号の特性を帯びる。求められる確率論的結果は、グラジオメーター110により検出された信号を反映するオシロスコープトレースが白色ノイズジェネレータ80から直接出る信号を反映するトレースから変化した場合に観察される。他の実施形態では、信号は、市販の機器により記録され、及び/又は処理されることができる。
【0050】
他の一実施形態では、分子電磁信号を検出する方法は、さらに、SQUID 120のノイズ抑制コイル124を通してヘルムホルツトランス60に加えられた元のノイズ信号から180度位相がずれているノイズを注入することを含む。次いで、求められる確率論的結果は、グラジオメーター110により検出された信号を反映するオシロスコープトレースが非ランダムになったときに観察することができる。
【0051】
ノイズなどのように注入され調整されるかに関係なく、確率論的結果は、スペクトルピークの増大がいつ発生するかを観察することにより決定することもできる。スペクトルピークは、オシロスコープ160上の直線プロットとして、又は数値として、或いは他のよく知られている測定デバイスにより
【0052】
本発明のいくつかの実施形態は、外部干渉を生じることなく極めて閾値の低い分子電磁信号を検出するための方法及び装置を実現する。これらは、さまざまな信号記録及び処理機器により容易に使用可能なフォーマットでこれらの信号の出力を行う。
【0053】
次に図7を参照すると、上記の図の分子電磁放射線検出及び処理システムの他の実施形態が示されている。システム700は、処理ユニット704に結合された検出ユニット702を備えている。処理ユニット704は検出ユニット702の外部にあるように示されているが、処理ユニットの少なくとも一部は、検出ユニット内に配置することができる。
【0054】
検出ユニット702は、図7の断面図に示されているが、互いに入れ子になった、又は同心円状に並ぶ複数のコンポーネントを備える。試料室又はファラデー箱706は、金属箱708内に入れ子になっている。試料室706及び金属箱708はそれぞれ、アルミニウム材料で構成することができる。試料室706は、真空中に保持し、プリリセットされた温度に合わせて温度制御することができる。金属箱708は、ローパスフィルタとして機能するように構成される。
【0055】
試料室706と金属箱708との間で、試料室706を囲んでいるのは、一組の平行な加熱コイル又は素子710である。1つ又は複数の温度センサ711も、加熱素子710及び試料室706の近くに配置される。例えば、4つの温度センサを、試料室706の外側の周りの異なる場所に位置決めすることができる。加熱素子710及び(複数の)温度センサ711は、試料室706の内側をある温度に保つように構成される。
【0056】
遮蔽712は、金属箱708を囲む。遮蔽712は、試料室706に対し追加の磁場遮蔽又は絶縁を施すように構成される。遮蔽712は、鉛又は他の磁気遮蔽材料で作ることができる。遮蔽712は、試料室706及び/又は金属箱708により十分な遮蔽が行われる場合には適宜備えてよい。
【0057】
遮蔽712の周りには、G10絶縁材を持つ寒剤層716がある。寒剤は液体ヘリウムであってよい。寒剤層716(極低温デューアともいう)は、4°Kの動作温度にある。寒剤層716の周りには、外側遮蔽718がある。外側遮蔽718は、ニッケル合金製であり、磁気遮蔽となるように構成される。検出ユニット702によりもたらされる磁気遮蔽の総量は、デカルト座標系の3つの直交面にそって約−100dB、−100dB、及び120dBである。
【0058】
上述のさまざまな要素は、空隙又は誘電体バリア(図に示されていない)により互いに電気的に絶縁される。これらの要素は、説明を簡単にするため互いに関して縮尺通りには示されていないことに留意されたい。
【0059】
試料ホルダ720は、試料室706内に手動で又は機械的に配置することができる。試料ホルダ720は、試料室706の上部から下げたり、持ち上げたり、又は取り外したりすることができる。試料ホルダ720は、渦電流を持ち込まず、またほとんど又は全く固有分子旋光度を示さない材料からなる。例えば、試料ホルダ720は、高品質ガラス又はパレイックスで作ることができる。
【0060】
検出ユニット702は、固体、液体、又は気体の試料を取り扱えるように構成される。さまざまな試料ホルダを、検出ユニット702において使用することができる。例えば、試料のサイズに応じて、より大きな試料ホルダを使用することができる。他の実施例としては、試料が空気に対し反応性を有する場合、試料ホルダは、試料を封入するか、又は試料の周りに気密シールを形成するように構成することができる。さらに他の実施例では、試料が気体状態にある場合、試料ホルダ720を使わずに試料を試料室706内に導入することができる。そのような試料では、試料室706は、真空に保たれる。試料室706の上部にある真空シール721は、真空を維持する、及び/又は試料ホルダ720を収納するのを補助する。
【0061】
感知コイル722及び感知コイル724は、検出コイルとも呼ばれるが、それぞれ試料ホルダ720の上及び下に用意される。感知コイル722、724のコイル巻線は、直流(DC)から50キロヘルツ(kHz)までの範囲で動作するように構成されており、中心周波数は25kHz、自己共振周波数は8.8MHzである。感知コイル722、724は、第2の派生形であり、約100%のカップリングが得られるように構成される。一実施形態では、コイル722、724は、一般的に四角形であり、G10留め具により適所に保持される。コイル722、724は、2次微分グラジオメーターとして機能する。
【0062】
ヘルムホルツコイル726及び728は、本明細書で説明されているように、遮蔽712と金属箱708との間に垂直に配置することができる。コイル726及び728はそれぞれ、互いに無関係に上げ下げできる。コイル726及び728は、白色又はガウスノイズ生成コイルとも呼ばれ、室温又は周囲温度にある。コイル726、728により発生するノイズは、約0.10ガウスである。
【0063】
試料及びコイル722、724からの放射線の間のカップリングの程度は、コイル722、724に関して試料ホルダ720の位置を変更するか、或いは試料ホルダ720に関してコイル726、728の一方又は両方の位置を変更することにより変えることができる。
【0064】
処理ユニット704は、コイル722、724、726、及び728に電気的に結合されている。処理ユニット704では、白色又はガウスノイズがコイル726、728により試料に注入されることを規定している。処理ユニット104は、さらに、注入されたガウスノイズと混合された試料の電磁放射線からコイル722、724のところで誘導電圧を受け取る。
【0065】
図8を参照すると、本発明の態様を採用する処理ユニットは、試料842をファラデー箱844及びヘルムホルツコイル746に挿入し、そこから取り出すことができる試料トレイ840を備える。SQUID/グラジオメーター検出器アセンブリ848は、極低温デューア850内に配置される。磁束ロックループ852は、SQUID/グラジオメーター検出器アセンブリ848とSQUIDコントローラ854との間に結合される。SQUIDコントローラ854は、Tristan社が市販しているモデルiMC−303iMAGマルチチャンネルコントローラとすることができる。
【0066】
アナログノイズジェネレータ856は、ノイズ信号(上記のような)を位相ロックループ858に供給する。位相ロックループのx軸出力は、ヘルムホルツコイル846に供給され、20dBなどだけ減衰させることができる。位相ロックループのy軸出力は、信号スプリッタ860により分割される。y軸出力の1つの部分は、SQUIDのノイズ消去コイルの入力であり、グラジオメーター用に別に入力を用意している。y軸信号の他の部分は、Tektronix TDS 3000b(例えば、モデル3032b)のようなフーリエ機能を備えたアナログ/デジタルオシロスコープなどのオシロスコープ862の入力である。つまり、位相ロックループのx軸出力は、ヘルムホルツコイルを駆動し、反転形式のy軸出力は、SQUIDとオシロスコープの入力となるように分割される。そのため、位相ロックループは、信号インバータとして機能する。オシロスコープトレースは、例えば、非定常スペクトル成分を発生する十分なレベルのノイズがいつ得られるかを判定するためにアナログノイズ信号を監視するために使用される。コントローラ854に結合されたアナログテープレコーダ又は記録デバイス864は、デバイスから出力された信号を記録するものであるが、好ましくは広帯域(例えば、50kHz)レコーダである。PCコントローラ866は、例えば、RS232ポートを介して、コントローラ854とインターフェイスするMS Windows(登録商標)ベースのPCであってよい。
【0067】
図9には、処理ユニットの他の実施形態のブロック図が示されている。二重位相ロックイン増幅器202は、第1の信号(例えば、「x」又はノイズ信号)をコイル726、728に、第2の信号(例えば、「y」又はノイズ消去信号)を超電導量子干渉素子(SQUID)206のノイズ消去コイルに供給するように構成される。増幅器202は、外部干渉なしでロックするように構成され、Perkins Elmerモデル7265DSPロックイン増幅器であってよい。この増幅器は、「仮想モード」で動作し、初期干渉周波数にロックし、その後、干渉周波数を除去し、自走を可能にし、「ノイズ」にロックするようにできる。
【0068】
アナログノイズジェネレータ200は、増幅器202に電気的に結合される。ジェネレータ200は、増幅器202を介してコイル726、728のところにアナログ白色ガウスノイズを発生又は誘導するように構成されている。例えば、ジェネレータ200は、General Radio社製のモデル1380であってよい。
【0069】
インピーダンストランス204は、SQUID 206と増幅器202との間に電気的に結合される。インピーダンストランス204は、SQUID 206と増幅器202との間のインピーダンスを整合させるように構成されている。
【0070】
SQUID 206のノイズ消去機能は、オン又はオフにすることができる。ノイズ消去機能がオンにされている場合、SQUID 206は、検出された放射線から注入ノイズ成分を消去又は無効にすることができる。ノイズ消去を行うために、コイル726、728への第1の信号は、検出することが求められる分子電磁放射線よりも20dB又は35dB高いノイズ信号である。このレベルで、注入ノイズは、確率共鳴を通じて分子電磁信号の特性を帯びる。SQUID 206への第2の信号は、ノイズ消去信号であり、SQUID出力のところのノイズを十分に無効にできる振幅の第1の信号から反転された信号である(例えば、第1の信号に関して180度位相がずれている)。
【0071】
SQUID 206は、低温直接素子SQUIDである。例えば、SQUID 206は、Tristan Technologies,Inc.社製のModel LSQ/20 LTS dc SQUIDとすることができる。それとは別に、高温又は交流SQUIDを使用することができる。コイル722、724(例えば、グラジオメーター)及びSQUID 206(SQUID/グラジオメーター検出器アセンブリと総称される)の組合せは、約5マイクロテスラ/√Hzの磁場測定感度を有する。コイル722、724中の誘導電圧が検出され、SQUID 206により増幅される。SQUID 206の出力は、約0.2〜0.8マイクロボルトの範囲内の電圧である。
【0072】
SQUID 206の出力は、SQUIDコントローラ208への入力である。SQUIDコントローラ208は、SQUID 206の動作状態を制御し、検出された信号をさらに調整するように構成されている。例えば、SQUIDコントローラ208は、Tristan Technologies,Inc.社製のiMC−303 iMAGマルチチャネルSQUIDコントローラとすることができる。
【0073】
SQUIDコントローラ208の出力は、増幅器210に入力される。増幅器210は、0〜100dBの範囲内のゲインを持つように構成される。約20dBのゲインは、ノイズ消去ノードがSQUID 206のところでオンにされた場合に与えられる。約50dBのゲインは、SQUID 206がノイズ消去をもたらしていない場合に与えられる。
【0074】
増幅された信号は、レコーダ又は記憶装置デバイス212に入力される。レコーダ212は、アナログ増幅信号をデジタル信号に変化し、そのデジタル信号を格納するように構成されている。一実施形態では、レコーダ212は、1Hz当たり8600データ点を格納し、2.46Mビット/秒を処理することができる。例えば、レコーダ212は、Sony社製デジタルオーディオテープ(DAT)レコーダであってよい。DATレコーダを使用した場合、生信号又はデータ集合を第三者に送信し、必要に応じて表示させたり、又は具体的な処理を行わせることができる。
【0075】
ローパスフィルタ214は、レコーダ212からのデジタイズされたデータ集合をフィルタ処理する。ローパスフィルタ214は、アナログフィルタであり、バターワースフィルタであってよい。カットオフ周波数は、約50kHzである。
【0076】
帯域通過フィルタ216は、次に、フィルタ処理されたデータ集合をデルタ処理する。帯域通過フィルタ216は、DCから50kHzの範囲の帯域幅を持つデジタルフィルタとなるように構成される。帯域通過フィルタ216は、異なる帯域幅に合わせて調整することができる。
【0077】
帯域通過フィルタ216の出力は、フーリエ変換プロセッサ218への入力である。フーリエ変換プロセッサ218は、時間領域内のデータ集合を周波数領域内のデータ集合に変換するように構成される。フーリエ変換プロセッサ218は、高速フーリエ変換(FFT)型の変換を実行する。
【0078】
フーリエ変換されたデータ集合は、相関及び比較プロセッサ220への入力となる。レコーダ212の出力はプロセッサ220への入力である。プロセッサ220は、そのデータ集合とすでに記録されているデータ集合との相関を求め、閾値を決定し、ノイズ消去を実行するように構成される(ノイズ消去がSQUID 206で行われない場合)。プロセッサ220の出力は、試料の分子低周波電磁放射線のスペクトルを表す最終データ集合である。
【0079】
グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)などのユーザーインターフェイス(UI)222を、さらに、少なくともフィルタ216及びプロセッサ220に接続して、信号処理パラメータを指定するようにすることもできる。フィルタ216、プロセッサ218、及びプロセッサ220は、ハードウェア、ソフトウェア、又はファームウェアとして実装することができる。例えば、フィルタ216及びプロセッサ218は、1つ又は複数の半導体チップ内に実装することができる。プロセッサ220は、コンピューティングデバイス内に実装されたソフトウェアであってよい。
【0080】
この増幅器は、「仮想モード」で動作し、初期干渉周波数にロックし、その後、干渉周波数を除去し、自走を可能にし、「ノイズ」にロックするようにできる。アナログノイズジェネレータ(General Radio社製の、完全にアナログのノイズジェネレータである)は、ヘルムホルツコイル及びノイズ消去コイルに対しそれぞれ20dB及び45dBの減衰を必要とする。
【0081】
ヘルムホルツコイルは、1パーセントの1/100のバランスを持つ約1立方インチのスイートスポットを持つことができる。他の実施形態では、ヘルムホルツコイルは、垂直移動、回転移動(垂直軸を中心として)、及び平行の向きからの移動を行い、パイ型に広がることができる。一実施形態では、SQUID、グラジオメーター、及び駆動トランス(コントローラ)は、それぞれ、1.8、1.5、及び0.3マイクロヘンリーの値を持つ。ヘルムホルツコイルは、スイートスポットで1アンペア当たり0.5ガウスの感度を持つことができる。
【0082】
確率応答に対し約10から15マイクロボルトが必要になる場合がある。ノイズを注入することにより、系内のSQUIDデバイスの感度を高めている。SQUIDデバイスは、ノイズなしで約5フェムトテスラの感度を持っていた。この系は、ノイズを注入し、この確率共鳴応答を使用することにより、ほぼ1,500%の増大となる、25から35dBだけ感度を改善することが可能であった。
【0083】
系から信号を受信し、記録した後、メインフレームコンピュータ、スーパーコンピュータ、又は高性能コンピュータなどのコンピュータは、前処理及び後処理の両方を実行するが、そのために、前処理についてはカリフォルニア州リッチモンドのSystat Software社によるAutosignalソフトウェア製品を採用するが、Flexproソフトウェア製品が後処理を行う。Flexproは、Dewetron,Inc.社が販売するデータ(統計的)分析ソフトウェアである。以下の式又はオプションは、Autosignal及びFlexpro製品で使用することができる。
【0084】
順変換:
【数1】

【0085】
逆変換:
【数2】

【0086】
FFTアルゴリズム:
Temperton’s Prime Factor型FFTを使用したBest Exact N(C.Temperton、「自己整列インプレースPrime Factor型FFTアルゴリズムの実装(Implementation of a Self−Sorting In−Place Prime Factor FFT Algorithm)」、Journal of Computation Physics,v.58,p.283,1985)。
【0087】
データテーパリングウィンドウ:
[cs4 BHarris min]0.35875−0.48829*cos(2*Pi*i/(n−1))+0.14128*cos(4*Pi*i/(n−1))−0.01168*(6*Pi*i/(n−1)),i=0.n−1
[四角形]固定形状テーパリングは使用できない(オシロスコープ)
大きさ:sqrt(Re*Re+Im*Im)[Re=実成分,Im=虚成分]
振幅:2.0*sqrt(Re*Re+Im*Im)/n
db、デシベル:10.0*log10(Re*Re+Im*Im)
【0088】
複製の平均化:
複製は、1e−8の小数精度の範囲内に一致するX値に基づく。
【0089】
基準減算:
基準信号減算(基準ノイズ)は、X(時間)軸上の点(チャネル)毎にY軸(振幅)に対し実行される。次いで、負のY値は、0にされる。
【0090】
相互相関:
この関数は、総和及び積分を使用して相互相関関数を計算する。信号は過渡信号であるため、相関関数は、直接乗算及び積分を使用して計算される。ソースチャネル(データ系列)の外にある計算に必要な値はすべて0と見なされる。t<0に対する値も計算される。
【0091】
フーリエ有意水準:
モンテカルロデータをパラメトリックモデルに当てはめる。データサイズNが唯一の因子である場合、一変量TableCurve 2Dパラメトリックモデルが使用される。セグメントサイズ及び重なりが追加の影響因子となるセグメント化FFTでは、三変量チェビシェフ多項式が実装される。これらは、Autosignalの下で選択されるオプションである。個別に分析する、又は重なり合う形で分析することが可能なデータ集合もありえ、まずデータ集合1が分析され、次いでデータ集合1の第2の半分とデータ集合2の第1の半分、さらにデータ集合2、そして第2の半分というように分析される。
【0092】
システム100により実行される信号検出及び処理の流れ図が図10に示されている。ある試料が注目されている場合、信号検出又はデータランは、少なくとも4回実行され、第1のデータランは、試料なしで時刻tに実行され、第2のデータランは、試料ありで時刻tに実行され、第3のデータランは、試料ありで時刻tに実行され、第4のデータランは、試料ありで時刻tに実行される。複数のデータランからデータ集合を実行し収集すると、最終(例えば、相関された)データ集合の精度が上がる。4つのデータランでは、システム100のパラメータ及び条件は、一定に保持される(例えば、温度、増幅量、コイルの位置、ノイズ信号など)。
【0093】
ブロック300では、適切な試料(又はそれが第1若しくは第4のデータランであれば、試料なし)が、システム100内に置かれる。注入ノイズを含まない、与えられた試料は、約0.001マイクロテスラ以下の振幅でDC〜50kHzの範囲内の電磁放射線を放出する。このような低い放射線を捕捉するために、白色ガウスノイズがブロック301で注入される。
【0094】
ブロック302で、コイル722、724は、試料の放射線及び注入ノイズを表す誘導電圧を検出する。誘導電圧は、データランの持続時間に対する時間の関数である電圧値(振幅及び位相)の連続的な流れを含む。データランは、長さを2〜20分間分とすることができ、したがって、そのデータランに対応するデータ集合は、時間の関数である2〜20分間分の電圧値を含む。
【0095】
ブロック304で、注入ノイズは、誘導電圧が検出されると消去される。このブロックは、SQUID 206のノイズ消去機能がオフにされた場合に省かれる。
【0096】
ブロック306で、そのデータ集合の電圧値は、ブロック304でノイズ消去が行われたかどうかに応じて、20〜50dBだけ増幅される。さらに、ブロック308では、増幅されたデータ集合は、アナログ−デジタル(A/D)変換を適用され、レコーダ212に格納される。デジタイズされたデータ集合は、数百万行分のデータを含みうる。
【0097】
収集されたデータ集合が格納された後、ブロック310で、試料に対する少なくとも4つのデータランが実行されたか(例えば、少なくとも4つのデータ集合を収集したか)どうかを調べるチェックが実行される。与えられた試料に対する4つのデータ集合が得られた場合、ローパスフィルタによるフィルタ処理がブロック312で実行される。得られなかった場合、次のデータランが開始される(ブロック300に戻る)。
【0098】
デジタイズされたデータ集合に対しローパスフィルタ処理(ブロック312)及び帯域通過フィルタ処理(ブロック314)を行った後、データ集合は、フーリエ変換ブロック316において周波数領域に変換される。
【0099】
次に、ブロック318で、データ点毎に類似のデータ集合同士の相関が求められる。例えば、第1のデータラン(例えば、ベースライン又は周囲ノイズデータラン)に対応する第1のデータ集合及び第4のデータラン(例えば、他のノイズデータラン)に対応する第4のデータ集合の互いの相関が求められる。所定の周波数における第1のデータ集合の振幅値がその所定の周波数における第4のデータ集合の振幅値と同じである場合、その所定の周波数に対する相関値又は数は1.0となる。それとは別に、相関値の範囲は、0〜100の範囲に設定することができる。このような相関又は比較は、第2及び第3のデータラン(例えば、試料データラン)についても実行される。収集されたデータ集合は格納されるため、これらは、後で残りのデータランが完了したときにアクセス可能になる。
【0100】
SQUID 206がノイズ消去を行わない場合、所定の閾値レベルが、それぞれの相関が求められたデータ集合に適用され、統計的に無関係な相関値を除去する。データランの長さ(データランが長ければ長いほど、収集データ値の精度が高くなる)及び試料の実際の放出スペクトルと他の種類の試料とのあり得そうな類似性に応じて、さまざまな閾値を使用することができる。閾値レベルに加えて、相関が平均される。閾値及び平均相関を使用した結果、注入ノイズ成分は、その結果の相関が求められたデータ集合において非常に小さくなる。
【0101】
ノイズ消去がSQUID 206で行われる場合、閾値及び平均相関の使用は、不要である。
【0102】
2つの試料データ集合が相関試料データ集合に対し精密化され、2つのノイズデータ集合が相関ノイズデータ集合に対し精密化された後、相関ノイズデータ集合は、相関試料データ集合から減算される。その結果得られるデータ集合は、最終データ集合である(例えば、試料の放出スペクトルを表すデータ集合)(ブロック320)。
【0103】
1Hz当たり8600データ点がありえ、また最終データ集合は、DC〜50kHzの周波数範囲のデータ点を持ちうるため、最終データ集合は、数百万行分のデータを含む可能性がある。それぞれの行のデータは、周波数、振幅、位相、及び相関値を含むことができる。
【0104】
図11A及び11Bには、試料放出スペクトルの実施例が示されている。図11Aに示されているフーリエプロット400は、飽和塩化ナトリウム溶液の試料のスペクトルに対応している。図11Bに示されているフーリエプロット500は、酵素の試料のスペクトルに対応している。
【0105】
図16を参照すると、上述の系に対する他の代替え実施形態は、システム1600として記述される。一般に、本明細書で説明されている代替え及び他の実施形態は、すでに説明されている実施形態と実質的に類似しており、同じ参照番号は、共通要素及び機能を示していることが多い。構造又は動作の有意な違いのみが、詳しく説明される。
【0106】
2次微分グラジオメーターは、1602として示されており、標的試料は、コイルの上側と下側の対の間に配置されている。試料の向かい合う側にある2つの内側コイルは補完し合うが、2つの外側コイル(上部コイルと底部コイル)はそれぞれ、補完し合い、2つの内側コイルに対向する。このような配列をとると、試料からの信号抽出を大きくすることができ、ノイズ除去が改善される。
【0107】
図に示され、以下でさらに詳しく説明されているが、システム1600では、同心円状の一連の要素を採用し、デューア内に延びる中心軸にそった配置をとる。ステッパーモーター1604により、試料を同心円状要素のこの配列内で軸方向に配置することができる。特に、試料は、グラジオメーター1602の真ん中の所望の位置に配置することができる。
【0108】
同様に、機械式マイクロメーター又はステッパーモーターなどのマイクロメーター調整メカニズムにより、ヘルムホルツコイルは系内の複数の要素(試料及びグラジオメーターなど)に関して位置を揃えることができる。ヘルムホルツコイルのこのような調整は、システム1600の製造及び較正に役立つとともに、グラジオメーター1602に関して一様な場をかけられるなど、系内の場の正確な位置合わせを行うことができる。また、場のオフセット若しくは場の勾配の変化を与えると、確率的結果を改善したり、系内のノイズをオフセットしたり、又は他の利点をもたらすことができて有益である。
【0109】
図17A、17B、及び18は、システム1600内の要素の同心円状配列をより明確に示しており、そこでは、試料管は、ローパスフィルタ処理金属遮蔽1802(ステンレス合金など)の中心を通り軸方向に延び、2kHz未満の信号を通す。外側磁気(MU)遮蔽は、グラジオメーター、ヘルムホルツコイル、及び試料を囲む。システム1600の配列は、一般的に、図を見ればすぐにわかるであろう。
【0110】
General Radio社製の、上述の、ランダム白色ノイズジェネレータ、モデル1381は、Noise/Com社製のプログラマブルガウス白色ノイズジェネレータで置き換えることができる。このようなジェネレータは、2つの出力を使用し、一方は他方から反転されたものである。一方の出力は、ヘルムホルツコイルに接続され、他方(反転)の出力は、上記のSQUIDノイズ消去コイルに接続されるようにできる。
【0111】
同様に、図19に示されているが、上記のTektronixデジタルオシロスコープは、Stanford Research Systems社製の2チャネルダイナミック信号アナライザ1902、モデルSR 785で置き換えることができる。このような信号アナライザは、複数の時間領域信号をサンプリングし、それの信号を複数の周波数領域FFTにわたって平均することにより、受信信号を処理することができる。この結果、すべての非ランダム信号成分の完全スペクトル周波数領域の記録が可能になる。加えられる他の変更は、デジタルオーディオテープ記憶装置系をデジタル多用途ディスク(DVD)レコーダ1904で置き換えることを含む。さらに、後述のように、ヒストグラムを生成するソフトウェアと連係動作する、Keithley社製のデータ収集ボード1906、モデル3801も使用できる。
【0112】
図19に示されている他の実施形態では、ノイズ消去コイル1908は、グラジオメーターとSQUIDとの間に接続されている。(1次微分グラジオメーターが示されているが、図16に示されているような2次微分グラジオメーターも使用することができる。)図19に示されてはいないが、反転ノイズチャネル(ヘルムホルツコイルに加えられるノイズに関して反転)は、ノイズ消去コイル1908に印加することができる(まず最初に、例えば、45dBだけをノイズ信号を減衰させるインピーダンストランスを通過しうる)。図に示されていない、他の実施形態では、ノイズ消去コイルは、SQUID入力及び出力コイル間の、SQUID 120の中に、配置することができる。
【0113】
III.最適化された時間領域信号を発生する方法
本発明の一態様によれば、与えられた試料について得られた低周波時間領域信号の試料依存スペクトル特徴は、信号記録時に試料内に注入されるノイズに関する電力ゲインである一定範囲のノイズレベルにわたって試料の時間領域信号を記録することにより最適化することができることがわかった。次いで、記録された信号は、処理され、スペクトル信号特徴が明らかにされ、また後述のように、最適なスペクトル特徴スコアを有する時間領域信号が選択される。最適化された、又はほぼ最適化された時間領域信号が有用なのは、本発明にも従って、最適化された時間領域信号で化学的又は生物学的系を変換することで、非最適化時間領域信号の場合よりも強く、予測可能な応答が得られることがわかったからである。別の見方をすると、最適化された(又はほぼ最適化された)時間領域信号を選択することは、標的系が試料信号により変換された場合に確実で検出可能な試料効果が得られる点で有用である。
【0114】
一般に、時間領域信号が典型的には約0から1ボルトの間で記録される注入ノイズレベルの範囲、典型的には、又はそれとは別に、注入されたノイズは、好ましくは、検出されることが求められている分子電磁放射線よりも約30から35デシベル高い、例えば、70〜80−dbmの範囲内である。記録される試料の個数、つまり、時間領域信号が記録されるノイズレベル間隔の数は、典型的には10〜100以上、またどのような場合も、良好な最適信号が識別可能なように十分に小さい間隔とすることができる。例えば、ノイズジェネレータレベルの電力ゲインは、50 20mV間隔にわたって変化させることができる。以下からわかるように、信号に対するスペクトル特徴スコアが注入ノイズのレベルに対してプロットされた場合、このプロットは、ノイズレベル増分が十分に小さい場合にいくつかの異なるノイズレベルに及ぶピークを示す。
【0115】
本発明では、記録された時間領域信号に対するスペクトル特徴スコアを計算する3つの異なる方法を考察する。これらは、(1)ヒストグラムビン法、(2)自己相関信号のFFTの生成、及び(3)FFTの平均化であり、それぞれについて、以下で説明する。
【0116】
具体的には説明されていないが、それぞれの方法は、ユーザーがスペクトル特徴スコアの基になるスペクトルを評価し、次の記録に対するノイズレベル調整を行い、ピークスコアにいつ達したかを決定する手動モードで実行することができるか、又はコンピュータ駆動プログラムにより、ノイズレベルの連続増分及び/又はスペクトル特徴スコアの評価が実行される自動又は半自動モードで実行することができる。
【0117】
A.スペクトル情報を生成するヒストグラム法
図20は、スペクトル情報を生成するヒストグラム法における高水準データ流れ図である。SQUIDから得られたデータ(ボックス2002)又は格納されているデータ(ボックス2004)は、16ビットWAVデータ(ボックス2006)として保存され、倍精度浮動小数点データ(ボックス2008)に変換される。変換されたデータは、保存されるか(ボックス2010)、又は生波形(ボックス2012)として表示されるようにできる。次いで、変換されたデータは、図21に関して以下で説明されているアルゴリズムに渡され、「フーリエ解析」というラベルが付いているボックス2014により示される。ヒストグラムは、2016で表示することができる。それとは別に、以下で説明されるように、変換されたデータは、2つの追加のアルゴリズムのうちの1つに渡され、時間流域信号中のスペクトル特徴を識別することができる。
【0118】
図21を参照すると、ヒストグラムアルゴリズムの一般的流れでは、離散サンプリング時間領域信号を抽出し、フーリエ解析を使用してそれを周波数領域スペクトルに変換し、さらに解析を行う。時間領域信号は、ADC(アナログ/デジタルコンバータ)から取得され、2102で示されているバッファ内に格納される。この試料は、SampleDuration秒の長さを持ち、1秒当たり試料SampleRate個の速さでサンプリングされ、SampleCount(SampleDuration*SampleRate)個の試料が得られる。信号から回復できるFrequencyRangeは、Nyquistにより定義されているように、SampleRateの半分として定義される。そのため、時系列信号が1秒当たり試料10,000個の速さでサンプリングされる場合、FrequencyRangeは0Hzから5kHzとなる。使用できるフーリエアルゴリズムの1つは、Radix 2 Real Fast Fourier Transform(RFFT)であるが、この選択可能周波数領域分解能(FFTSize)は、最大216までの2のべき乗である。FFTSizeとして8192が選択され、FrequencyRangeが8kHz以下に留まる限り1ヘルツ当たり少なくとも1つのスペクトルビンを持つ十分な分解能を与える。SampleDurationは、SampleCount>(2*)FFTSize*10が成り立ち、確実な結果が得られる十分な長さでなければならない。
【0119】
このFFTは、一度にFFTSize個の試料にのみ作用できるので、プログラムでは、FFTを試料に対し順次実行し、結果をまとめて平均し、最終的なスペクトルを得るようにしなければならない。FFT毎にFFTSize個の試料をスキップすることを選択した場合、1/FFTSize^0.5の統計誤差が入り込む。しかし、FFTSizeの半分だけFFT入力をオーバーラップすることを選択した場合、この誤差は、1/(0.81*2*FFTSize)^0.5に縮小される。これにより、誤差は、0.0110485435から0.0086805556に減らされる。一般的な誤差及び相関分析に関する詳細については、Bendat & Piersol、「相関及びスペクトル分析の工学応用(Engineering Applications of Correlation and Spectral Analysis)」、1993を参照されたい。
【0120】
与えられたウィンドウ上でFFTを実行するのに先立って、データテーパリングフィルタを適用し、サンプリングエイリアシングによるスペクトルの漏れを回避することができる。このフィルタは、例えば、Rectangular(フィルタなし)、Hamming、Hanning、Bartlett、Blackman、及びBlackman/Harrisから選択することができる。
【0121】
例示的な方法では、ボックス2104に示されているように、変数FFTSizeに対し8192を選択しており、これは、一時に操作する時間領域試料の個数であるとともに、FFTにより出力される離散周波数の個数でもある。FFTSize=8192は分解能、又はサンプリングレートにより指示される範囲内のビンの数であることに注意されたい。多数の離散RFFTの(実FFT)がどのように実行されるかを指示する変数nは、FFTビンの数である、FFTSize*2でSampleCountを除算することにより設定される。アルゴリズムで理にかなった結果を生み出すために、この数nは、少なくとも10から20でなければならず(他の変数も可能であるが)、弱い信号を拾うためにはさらに多いのが好ましい。これは、所定のSampleRate及びFFTSizeについて、SampleDurationは十分に長くなければならないことを示す。0からnまで計数する、カウンタmは、ボックス2104にも示されているように、0に初期化される。
【0122】
プログラムは、最初に、3つのバッファ、各ビン周波数のカウントを累計する、FFTSizeヒストグラムビンに対するバッファ2108、各ビン周波数の平均電力に対するバッファ2110、及び各mに対するFFTSize個のコピーされた試料を含むバッファ2112を設定する。
【0123】
プログラムは、ヒストグラム及び配列を初期化し(ボックス2113)、波形データのFFTSize個の試料をバッファ2112に、2114でコピーし、波形データに対しRFFTを実行する(ボックス2115)。FFTは、最高振幅が1となるように正規化され(ボックス2116)、FFTSize個のビンすべてに対する平均電力が、正規化された信号から決定される(ボックス2117)。ビン周波数毎に、その周波数でFFTから正規化された値が、バッファ2108内のそれぞれのビンに加えられる(ボックス2118)。
【0124】
ボックス2119において、次いで、プログラムは、上で計算した平均電力に関して、各ビン周波数での電力を調べる。電力が平均電力の特定の係数エプシロン(0から1の間)の範囲内にある場合、計数され、対応するビンが、16においてヒストグラムバッファ内で増分される。その範囲内にない場合は、破棄される。
【0125】
比較対象の平均電力は、このFFTの場合のみに対するものであることに注意されたい。低速ではあるが機能強化されているアルゴリズムでは、データに対し2パスを用い、全体にわたって平均を計算してから、ヒストグラムレベルを設定することが可能である。エプシロンとの比較で、周波数ビンに対し十分有意な電力値を表すことができる。或いは、広い意味では、エプシロンを使用する式により、「この時点のこの周波数で信号があるか?」という質問に答えられる。答えが「はい」であれば、これは、当然、(1)この一時だけこのビンに入る定常ノイズ、又は(2)ほぼすべての時刻に発生する実低レベル周期的信号のうちの1つと考えられる。そのため、ヒストグラムのカウントで、ノイズヒットが除去され、低レベル信号ヒットが増強される。したがって、平均及びエプシロン係数により、有意とみなせる最小の電力レベルを選択することができる。
【0126】
カウンタmは、ボックス2120で増分され、上記プロセスは、mがnに等しくなるまで(ボックス2121)WAVデータのnセット毎に繰り返される。毎サイクル、それぞれのビンの平均電力が、2118で関連するビンに加えられ、それぞれのヒストグラムビンは、2114における電力振幅条件が満たされたときに1だけ増分される。
【0127】
nサイクルのデータすべてが考察されていた場合、それぞれビンにおける平均電力は、それぞれのビンにおける総累計平均電力を、サイクル総数であるnで除算することにより(ボックス2122)決定され、結果が表示される(ボックス2123)。構造化ノイズが存在している場合、例えば、DC=0又は60Hzの倍数の場合を除き、それぞれのビンにおける平均電力は、ある程度比較的低い数値となる。これは、図22A〜Dに示されているプロットで表されている(400、600、700、及び900mVで生成されるヒストグラム)。図22A〜22Dのプロットは、ヒストグラムビンの一部のみ、つまり7953Hzから8533Hzまでのスペクトルを示している。図22A及び22Bに示されているように、それぞれ注入ノイズの400mV又は600mVのところでは確率事象は見られない。しかし、図22Cに示されているように、700mVでは、確率事象が見られるのは明らかである。その後、図22Dに示されているように、900mVでは、確率事象は、失われる。
【0128】
上記工程により生成されるヒストグラムは、それぞれのビンにおいて、その周波数の電力が(エプシロン*そのFFT出力全体に対する平均電力)よりも高かった回数の0からnまでの範囲のカウントを含む。非構造化ノイズのせいでビンカウントが増分される場合、そのノイズは、時間の経過とともにすべての周波数ビンにわたって分散され、そのため、所定のビンにおいて、合計して大きくなることはない。所定の周波数で一貫した信号がある場合、これはn個の時間スライスのそれぞれにおいて存在し、そのため、nに近づくビンカウントを持つ。60ヘルツ及びその高調波などの大きな振幅のノイズは、ビンカウントが高いだけでなく、平均電力も高い。これらの周波数を区別することができ、われわれが関心を持っているものは、平均電力が低いが、ビンカウントは高い。
【0129】
図22A〜22Dは、4つの異なるノイズ電力入力でこの方法により生成されるヒストグラムを示している。図に示されているように、プログラムは、それぞれの周波数の平均電力を縦の棒として表示することができる。ヒストグラムビンカウントは、接続された上側線として表すことができる。電力が「低」(例えば、平均/3未満)と考えられ、ヒストグラムが特定のカウントを持つ場合、接続線は、電力の棒のピークとヒストグラムの棒のピークとの間で観察可能になることがある。接続線により強調表示されているビンは、低エネルギー分子スペクトルの考えられる候補である。
【0130】
図22A〜22D及び上記から、意味のあるヒストグラム、つまり、問い合わせされる試料に関係する確率共鳴効果を示すヒストグラムを生成する際に使用される注目すべき2つの設定があることがわかる。第1は、試料に与えられるノイズ(この場合、ガウス白色ノイズ)の電力レベルである。このレベルが低くすぎる場合、ノイズレベルは、確率共鳴を発生するほどには十分でなく、ビンヒストグラムは、ノイズのみを反映する。電力入力が高すぎる場合、それぞれのビンについて計算された平均電力レベルは高く、確率事象は、区別できない。この調査から得られる最適なノイズレベルは、700mV程度であるが、真の最適値は、さらに、この方法を例えば650から750mVの範囲の多数の小さな増分の信号ゲインで記録された信号に適用することにより決定することができる。
【0131】
この方法のスペクトル特徴スコアは、確率事象が存在しない場合にそのビンに対する平均ノイズよりも統計的に大きい値に対応するビンカウントよりも大きい確率事象の数をカウントすることにより決定される。図22A〜22Cに示されているプロットでは、この平均ビンカウントは、図22A〜22Cで特に示されているように、スペクトル軸にそって見かけ上ランダムに分布するピークのところか、又はそれよりもわずかに上のところにある。最適なノイズゲインで(図22A)、このレベルよりも明らかに高いビンピークが多数観察され、これらのピークは、選択された周波数間隔、例えば、DCから1kHz又はDC〜8kHzの間隔でカウントされ、これにより、対応する時間領域信号に対するスペクトル特徴スコアを決定する。
【0132】
この方法の臨界的設定は、ノイズゲイン、及びエプシロンの値である。この値は、平均値に対し事象を区別するために使用される電力値を決定する。値1では、事象はいっさい検出されないが、それは、電力が平均電力よりも決して大きくならないからである。エプシロンが0に近づくにつれ、実質的にすべての値が1つのビン内に置かれる。0から1の間、及び典型的には、構造化ノイズに対する総ビンカウントの約20〜50%の間の多数のビンカウントを与える値では、エプシロンは、最大の「スペクトル特性」を持つが、これは、確率共鳴事象が純粋なノイズよりも最も大きく有利であることを意味する。
【0133】
したがって、本発明を実施する際に、ノイズ入力上の電力ゲインをシステマティックに大きくする、例えば、0から1Vまでの間50mV増分で大きくし、それぞれの電力設定において、はっきりしたピークを持つヒストグラムが観察されるまでエプシロンを調節することができる。例えば、処理される試料が、20秒の時間間隔を表し、それぞれの異なる電力及びエプシロンに対する総処理時間は、約25秒である。はっきりした信号が観察された場合、電力設定又はエプシロン又はその両方を精密化し、最大数の識別可能なピークを持つヒストグラムを意味する、最適なヒストグラムが生成されるようにすることができる。
【0134】
このアルゴリズムでは、多数のビンを満たすことができ、低い周波数でノイズ(環境ノイズなど)が一般的に発生することから低周波数に対する関連するヒストグラムを描画することができる。そのため、系では、所定の周波数(例えば、1kHz未満)よりも下のビンを単純に無視し、それでいて、試料と試料との間の一意的な信号を決定するためにより高い周波数で十分なビン値を描画することができる。
【0135】
それとは別に、エプシロン変数の目的はそれぞれのサイクルで決定された異なる平均電力レベルに適応することであるため、このプログラムは、平均電力レベルをエプシロンの最適値に関係付ける定義済み関数を使用してエプシロンを自動的に調製することも可能である。
【0136】
同様に、このプログラムは、それぞれの電力設定でピーク高さを比較し、最適なピーク高さ又は特性がヒストグラムにおいて観察されるまでノイズ電力設定を自動的に調節することが可能である。
【0137】
エプシロンの値はすべての周波数について固定値とすることができるが、エプシロンに対し周波数依存の値を採用し、低い周波数、例えば、DCから1,000Hzで観察できる平均エネルギーをより高い値に対して調節することも考えられる。周波数依存のエプシロン係数は、例えば、多数の低周波数FFT領域を平均し、平均値をより高い周波数で観察される値と比較可能な値に「調節する」エプシロンの値を決定することにより、求めることが可能である。
【0138】
図23A〜23Cを参照すると、ヒストグラムを生成するためのユーザーインターフェイスの実施例が示されている。スライダーバー2302は、300〜600秒などの試料波形セグメントの長さを決定し、これを使用することで、ユーザーは、波形内で実際にスクロールすることができる。ボックス2304では、ユーザーは、Nyquist周波数を5、10、又は20kHzなどに設定することができ、また隣にリセットボタンも用意されている。スライダーバー2306を使用することで、ユーザーは、ヒストグラムの基準線を移動することができ、その一方で、60Hzチェックボックス2308を使用することで、ユーザーは、縦線で60Hzビン及びすべての関係する60Hz高調波を識別することができる(図23Cに示されているように)。acquireボタン2312が選択された場合、ソフトウェアは、試料から図23Bに示されているような波形を生成又は取得する。fftボタン2310が選択された場合、ソフトウェアは、図23Cに示されているようなヒストグラムプロットを生成する。
【0139】
B.自己相関信号のFFT
スペクトル特徴スコアを決定する第2の一般的な方法では、選択されたノイズにおいて記録された時間領域信号の自己相関が求められ、スペクトル特徴プロット、つまり、周波数領域内の信号のプロットを生成するために、自己相関信号の高速フーリエ変換(FFT)が使用される。次いで、選択された周波数範囲、例えば、DCから1kHz又はDCから8kHZまでの範囲にわたって平均ノイズレベルよりも高いスペクトル信号の個数を記録するためにFFTが使用される。
【0140】
図24は、この第2の実施形態による記録された時間領域信号のスコアを記録する際に実行される工程の流れ図である。時間領域信号は、上述のようにサンプリングされ、デジタイズされ、フィルタ処理され(ボックス402)、その際にノイズレベルに関するゲインは、404でのように、初期レベルに設定される。図25Aは、試料化合物、この場合、除草剤グリホスフェート(Roundup(登録商標))に対する典型的な時間領域信号を示しており、ここに示されているセグメントは、14.08から14.16秒の時間間隔にわたって取られた。次いで、408でのように、標準自己相関アルゴリズムを使用して、時間領域信号の自己相関が求められ、410でのように、標準FFTアルゴリズムを使用して、自己相関関数のFFTが生成される。
【0141】
図25B〜25Dに示されているようなFFTプロットを使用し、414でのように、自己相関FFTで観察された平均ノイズよりも統計的に大きいスペクトルピークの個数をカウントすることによりプロットのスコアが求められる。このプロセスは、ピークスコアが記録される、つまり、所定の信号に対するスコアが増大するノイズゲインとともに減少し始めるまで416及び406のロジックを介して、繰り返される。ピークスコアは、418で、記録され、プログラム又はユーザーは、422の時間領域信号のファイルから、ピークスコアに対応する信号を選択する(ボックス420)。
【0142】
図25B〜25Dの一連の自己相関FFTプロットは、この方法に関わる信号解析を例示している。70.9−dbmのノイズレベルでは(図22B)、暗ノイズよりも高いごく少数のピークが観察される(最高のスパイクは、60サイクルノイズを表している)。同じノイズレベルでの異なる記録を表している、74.8−dbmの最適なノイズレベルでは(図25C及び25D)、DC〜8kHzの周波数範囲全体にわたって、平均ノイズよりも統計的に大きい多数のピークが観察される。これらのピークのうちいくつかは、78.3−dbmのより高いノイズゲインでは、あまり目立たないか、又は消失している。
【0143】
これらの信号に対するスペクトル特徴スコアが、図26に示されているように、ノイズ設定の関数としてプロットされた場合、約75−dbmのノイズ設定のピークスコアが観察される。このプロットから、1つ又はピークスコアに対応する時間領域信号が選択される。
【0144】
上述のように、この実施形態は、手動モードで実行することができ、ユーザーは、ノイズ設定を増分単位で手動により調整し、FFTスペクトルプロットから手作業で分析し(ピークをカウントし)、そのピークスコアを使用して、1つ又は複数の最適な時間領域信号を識別する。それとは別に、これらの工程の1つ又は複数の態様は、自動化することができる。
【0145】
C.平均FFT
スペクトルピークスコアを決定する他の実施形態では、それぞれのノイズゲインにおける多数の、例えば、10〜20個の時間領域信号のFFTを平均して、スペクトルピークプロットを生成し、上述のようにスコアを計算する。
【0146】
図27は、この第3の実施形態による記録された時間領域信号のスコアを記録する際に実行される工程の流れ図である。時間領域信号は、上述のようにサンプリングされ、デジタイズされ、フィルタ処理され(ボックス424)、その際にノイズレベルに関するゲインは、426でのように、初期レベルに設定される。次いで、このプログラムは、428において、それぞれのノイズゲインで(複数の)時間領域信号に対する一連のFFTを生成し、430において、これらのプロットの平均をとる。平均されたFFTプロットを使用し、432、434でのように、平均FFTで観察された平均ノイズよりも統計的に大きいスペクトルピークの個数をカウントすることによりスコアが求められる。このプロセスは、ピークスコアが記録される、つまり、所定の信号に対するスコアが増大するノイズゲインとともに減少し始めるまで436及び437のロジックを介して、繰り返される。ピークスコアは、438で、記録され、プログラム又はユーザーは、442の時間領域信号のファイルから、ピークスコアに対応する信号を選択する(ボックス440)。
【0147】
上述のように、この方法は、手動、半自動、又は完全自動モードで実行することができる。
【0148】
D.追加のスペクトル解析法
この節では、作用物質特異的なスペクトルピークを識別することを目的として、時間領域信号のスペクトル解析を行う他の方法について簡単に考察する。上記のように、この系は、入力として、確率共鳴実験で得られたサウンドファイルを使用し、内容の正弦波の周波数、振幅、及び位相を出力する。この系は、「peakfinder」という名前のソフトウェアルーチンを使用することができ、このルーチンは、さらに、Octave及びPdなどの他のソフトウェアパッケージを利用し、また両者とも、オープンソースであり、現在サポートされているソフトウェアプラットフォームである。
【0149】
それに加えて、一時ディレクトリを指定するPF_TMP、及びpeakfinderホルダの場所を指定するPF_BASEという2つの環境変数を使用することができる。PF_BASEが与えられない場合、peakfinder.shスクリプトは、自分の呼び出しからそれを推論しようとする(絶対パス名で呼び出されていると想定する)。入力ファイルは、ステレオサウンドファイルであり、標準サンプリングレートは44100であると仮定される。ファイル形式は、「wav」、「au」、又はq「aiff」で、サンプルフレームは、16、24、又は32ビットとすることができる。出力ファイルは、1つの正弦波を指定するASCIIファイルである。例えば、以下の通りである。
【表1】


ここで、第1のフィールドは、以下で説明する基本解析周波数の単位による周波数であり、第2のフィールドは、ヘルツ単位の周波数であり、第3のフィールドは、入力サウンドファイル固有単位による、正弦波のピークの大きさであり、第4及び第5のフィールドは、正弦波の余弦及び正弦成分の振幅であり、複素振幅の実部及び虚部である。もちろん、大きさは、実成分と虚成分とから推論することが可能である。第1のフィールドは、物理的意味を持たず、デバッグ用である。
【0150】
白色ノイズの単一正弦波の振幅及び周波数を決定する技術は、最大尤度(ML)法であり、複数の正弦波をとるように拡張されている。この方法では、正弦波の数が予め知られていると仮定する。予め定められていない数の正弦波を見つけるという問題は、数学的取り扱いが難しいが、注目する正弦波は周波数が十分隔てられていると仮定して取り扱うことができる。さらに、正弦波の有無を判別する方法も必要である。
【0151】
以下の解析は、白色ノイズの単一正弦波を考察することから始まり、複数の正弦波及び非白色(例えば、ピンク)ノイズの問題へと進む。測定された信号、
x[n],n=0,...,N
が与えられたとすると、(離散時間)非正規化フーリエ変換は、
【数3】


と定義されるが、ただし、kは、解析の基本周波数の単位による周波数であり、2π/Nラジアン/試料である。kは、整数である必要はなく、実際、kの余分な値は、必要に応じて、信号のゼロ詰めで埋めることができる。単一の正弦波が存在すると仮定すると、その最もあり得そうな周波数は、
k=arg max|FT{x[n]}(k)|
で与えられる。
【0152】
言い換えると、最良推定値は、単に、フーリエ変換の大きさが最大であるkの値である。次に、系は、kの推定値が真の正弦波に対応するのか、又は単純に不規則変動に対応するのかを決定する。これについて、帰無仮説を分析して、x[n]が、例えば、平均値0、RMS振幅σを持つ白色ノイズのみを含むかどうかを調べる。それぞれの点kにおけるフーリエ変換は、N個の独立確率変数の総和であり、それぞれは試料x[n]に単位大きさの複素数を掛けた値に等しく、フーリエ変換のそれぞれの点の平均は、そのままゼロであり、標準偏差は、
【数4】


である。個々のノイズ試料のすそ部分の挙動がよい挙動であれば(例えば、ガウス又は均一ノイズ)、その結果得られる確率変数FT{x[x]}(k)は、使用されるNの値についてガウス分布に非常に近い(10のオーダー)。したがって、ほぼ
【数5】


を超える確率は、非常に小さい。
【0153】
他方、ピーク振幅a及び周波数kを持つ実数値をとる正弦波(2π/Nの通常の単位)のフーリエ変換の大きさは、aN/2である。大きさ
【数6】


を得るには、aを少なくとも
【数7】


とするだけでよい。
【0154】
この方法では、記録されたサウンドファイルにゼロ詰めをし(次の2のべき乗に応じて、2倍から4倍まで)、次いで、この振幅閾値を超えるピークを報告する。ピークは、kの与えられた値について、その隣接要素についてよりも大きな大きさを持ち、さらに、kの20個の隣接値の大きさの少なくとも1倍半の大きさを持つものとして定義される(1分間分の試料について、おおよそ20π/N Hz、又は1/3Hzの帯域)。
【0155】
複数の正弦波が存在する場合、それらの周波数の相互に隔てられる間隔が約20π/Nを超えるとすると、上記の方法では、別々に分解しなければならず、計算されたフーリエ変換に対するそれぞれの正弦波の影響は、ピークからk周波数単位離れると振幅の2/3πkとして減少する。
【0156】
ノイズ信号の非白色の特性を補正するために、測定された信号のスペクトル包絡線が推定される。ノイズは、それぞれの狭い周波数範囲(上述のように20π/N)において局所的に白色であり、σの値は選択された周波数範囲に応じて穏やかに変化すると仮定できる。他の問題としては、注入ノイズ試料を実験の測定された出力から減算できるかどうかを決定する問題がある。このような状況では、この2つに関係する容易に測定可能な伝達関数では、たとえそれが非線形であろうと、伝達関数の推定値を使用して、測定された信号からノイズの大部分を取り除く。これにより、この方法の感度が高まる。
【0157】
E.複合信号
上記の説明からわかるように、この系を使用すると、ユーザーは、生物学的系に治療上の影響を及ぼすか、又は他の何らかの形の反応を誘起するために使用することができる波形を発生させることができる。2つ又はそれ以上の化合物から発生する波形又はスペクトル系列を得ることができる。次いで、これら2つの信号を組み合わせて、それら2つの個別の信号の特性を持つ単一の組合せ信号を生成することができる。例えば、2つの異なる化合物に関係する2つの元の信号が2つの異なる治療特性を有する場合、その結果得られる組合せ信号は、それら2つの化合物の組み合わせた治療特性を有しているであろう。次いで、組合せ信号を操作して、生体系内の副作用又はネガティブな反応に関連していることが判明している周波数成分を除去することができる。組合せ信号は、注目するスペクトル成分の振幅及び周波数がわかっていれば、知られているシンセサイザ技術から容易に作成される。
【0158】
それとは別に、2つの化合物が生体系内に類似の応答を発生させる場合、これらの化合物から発生する2つの信号を比較することで、生物学的効果を生み出すことと関連する共通周波数成分を識別することができる。次いで、生物学的効果に関連する周波数成分のみを含む第3の信号を発生させることができる。こうして、特定の鎮痛剤からの信号を比較することで、共通周波数成分を識別し、次いで、結果の信号を発生させ、伝送、格納、又は生体系への適用に使用できる。実際、この系では、1つ又は複数の化合物から生成される信号に直接的には基づかない新しい信号を形成することができる。その代わりに、この系では、所望の周波数においてのみピークを持つ信号を生成し、そのようなピークが生体系内に所望の結果をもたらすようにできる。そのため、このような合成された信号は、既存の化合物と無関係である。
【0159】
IV.標的試料の変換
この節では、最適化された低周波時間領域信号で試料を変換する機器及び方法(節A)、並びに多数の生体試料に対し実行される変換実験(節B)について説明する。変換される試料は、化学的又は生化学的作用物質への適切に特徴付けられた、容易に検出可能な応答を示す試料であり、変換信号は、化学的又は生化学的作用物質の最適化された時間領域信号である。
【0160】
A.変換装置及びプロトコル
図28Aは、本発明により、作用物質特異的信号で試料を変換するための機器のレイアウトを示している。特定のレイアウトは、変換コイル内に保持され、電磁信号に曝される、3つの試料444、446、及び448、対照として使用される試料450、並びに化学作用誘導対照として使用される試料452を含む、5つの異なる試料を受け入れるものである。図28Cに示されるように、サンプル試料は、典型的には、誘導期間中、同一の振盪、温度、及び湿度条件の下で、シェーカーテーブル上に固定され、そこに保持される。
【0161】
作用物質特異的信号による変換は、最適化された作用物質特異的信号を使用する試料に対し「再生」させることにより実行され、信号はCDに記録され、前置増幅器456及びオーディオ増幅器458を通じて記録されたCD 454上で再生される。この信号は、図に示されているように、別々のチャネルを通じて電磁コイル444及び446に供給される。一実施形態では、Sony Model CDP CE375 CD Playerが使用される。Playerのチャネル1は、Adcom Pre Amplifier Model GFP 750のCD入力1に接続される。チャネル2は、Adcom Pre Amplifier Model GFP 750のCD入力2に接続される。CDは、それぞれのチャネルから同一の信号を再生するように記録される。それとは別に、CDは、それぞれのチャネルから異なる信号を再生するように記録されることができる。試料448におけるコイルは、主に、それぞれの実験内で白色ノイズ場を対照として発生するために使用される。例えば、GRアナログノイズジェネレータは、このコイル用に白色ガウスノイズ源を備える。それとは別に、このコイルは、第2のCrown増幅器を介して事前記録変換信号を再生するために使用することができる。
【0162】
CDプレーヤと前置増幅器との間のケーブル配線は、標準RCAオーディオパッチケーブル(6フィート)である。Adcom Pre Amplifier Model GFP 750は、Sony CDプレーヤから出力を受け取り、Crown増幅器を十分駆動できるようにその出力を増幅する。それとは別に、前置増幅器は、さらに、Sound Blaster PCボードなどの他のソースから変換信号を受け取るように構成することもできる。前置増幅器とCrown増幅器との間のケーブル配線は、Crown増幅器に接続するためそれぞれのケーブル(3フィート)の一端にRCA−1/4電話プラグを備えた標準RCAオーディオパッチケーブルである。Crown Amplifier Model Micro−Tech 2400、Stereo (1チャネル当たり1000ワット)は、前置増幅器から信号を受け取り、変換コイルを十分に駆動できるように信号レベルを高める。Crown増幅器と変換コイルとの間のケーブル配線は、各端にバナナプラグを持つ14ゲージのオーディオ用銅より線ケーブルである。バナナプラグは、位置決めネジでケーブルに機械的に接続される。
【0163】
化学作用誘導対照試料をVWRコンパクトインキュベータ内にシェーカーテーブルとともに置き、変換コイルと同じ温度に保持した。
【0164】
図28Bは、図28Aの試料444、446、及び448のどれかで表されるような試料変換機器466を示している。この機器は、電磁石470を収納した室468、及び室内の状態、例えば温度を監視するためのさまざまなプローブを備える。電磁石は、基部474上に置かれ、都合よく、強磁性トロイダルコイル及び巻線を含む。
【0165】
一実施形態では、コイルは、American Magnetics社により、コイル間の性能が一様なものなるように設計製造されている。それぞれのコイルは、約2”の空芯を持ち、エナメルコーティングされた、416巻きの#8ゲージ(awg)平方形マグネットワイヤからなる。それぞれのコイルは、温度15℃を超えることなく11ヘルツ、10アンペアRMS、10ボルトRMSで中心に約1500ガウスを発生することができる。化学作用誘導対照はない。化学作用誘導対照試料は、VWRコンパクトインキュベータ内にシェーカーテーブルとともに置かれず、変換コイルと同じ温度に保持された。
【0166】
コイルは、高さ2インチ幅4インチのPVC支持材474で支えられる。一連の1 7/8インチOD PVC管を異なる縦寸法に合わせて切断し、それぞれのコイルの中心に試料を配置しやすくする。試料は、コイルの上部に通され、PVC位置決め管(図に示されていない)上に置かれる。コイル及び基部は、高速乾燥エポキシ樹脂でエンクロージャの床に固定される。コイル柱とRF入力コネクタとの間の接続は、長さ4インチの14ゲージ銅より線をアルミニウム製ボルト、ナット、及びワッシャでコイルに機械的に接続することにより行われる。他端は、60%ハンダでRF入力コネクタにハンダ付けする。RFプローブは、オスBNCコネクタの絶縁された中心柱にハンダ付けされた1本の長さ6インチの12ゲージ銅線からなる。RFプローブは、各端にBNCコネクタで取り付けられるRG 6同軸ケーブルを使用して、Stanford Research Systems Model SR 785 2 Channel Dynamic Signal Analyzerに接続される。
【0167】
Sensatronics Model E4温度モニタは、3つのコイル及びインキュベータすべての温度を監視するために使用される。センサは、それぞれの遮蔽されたエンクロージャの壁及びインキュベータの内壁にテープで固定される。(プローブは、Sensatronics Standardモデル温度プローブである。)プローブのケーブル配線は、プローブ及びモニタに合わせて、Sensatronics社のものを使用した。
【0168】
図28Cは、室466などの3つの試料室がテーブル486などの個々のシェーカーテーブルで支えられているシェーカーテーブル配列を示しており、すべて、変換実験時に一定の温度及び湿度に保持される遮蔽された室又はエンクロージャ490内の支持テーブル488上に載せられている。
【0169】
例えば、遮蔽されたエンクロージャは、10×10×10インチの寸法であり、ワシントン州メリーズビルのRowe Air Manufacturing社製などの125インチの6061 T6アルミニウム板で形成される。
【0170】
図29Aに例示されている、第2の一般的な実施形態では、変換コイルは、ヘルムホルツコイルである。理想的なヘルムホルツコイルは、半径1つ分だけ互いに隔てられた、同じ半径を持つ2つの同軸円電流ループからなる。言い換えると、ループは、I=rとして、Iだけ離れている。ヘルムホルツコイルの軸上の任意の点においてコイルにより発生する磁場Bx(テスラ)は、以下の式により与えられ、磁場の方向は、ループの平面に垂直である。
【数8】

【0171】
この式のmは、透磁率(1.26×10−6H/m)であり、iは、電線内の電流(アンペア)であり、rは、電流ループの半径(メートル)であり、gは、比x/rであるが、ただしxは、ヘルムホルツコイルの中心からの軸上の距離であり、rは、コイルの半径である。
【0172】
図29Aからわかるように、それぞれのコイルにより発生する磁場が加わって、コイルの中心で比較的大きな一様な磁場を与える。コイルは、さらに、正方形でも長方形でもよく、コイル間隔は、知られている原理により、コイル間に一様な磁場を発生するような間隔である。
【0173】
図29B及び29Cは、本発明で使用するのに好適な代替え変換コイルを示している。図29Bの変換器494は、長いソレノイドであり、例えば、最大数フィートまでの長さである。ソレノイドの内側の磁場は、ソレノイドの軸に平行であり、ソレノイド内では一定であり、ソレノイドの外側ではゼロになる(無限に長いソレノイドの近似として)。この有限長コイルは、中心近くのみ実質的に一様な場を持つ。そのため、コイルの中心に試料を置くことにより、MIDS信号でコイルに通電すると、試料のところに実質的に一様な磁場が発生する。
【0174】
図29Cにおいてさらに500回巻くなど、ソレノイド496にさらに巻きを加えることにより、その端のコイルの磁場からの減少を補正するためにコイルの両端にさらに磁場強度を加えることができる。
【0175】
さらに他の実施形態では、変換コイルは、小さな埋め込み可能な強磁性コイルとすることができ、この場合、コイルの対向端に取り付けられた電極により、又は患者の胸部に対して電磁石が体表面近くに置かれ、信号が埋め込まれているコイルに誘導的に送られる、離れた場所にある誘導系により変換信号を受け取ることができる血管ステントコイルとすることができる。
【0176】
B.変換に関する研究
本発明の方法例示するために使用される試料/作用物質系は、以下、及びB1〜B6までの節で詳しく説明されており、(1)L−(+)アラビノース(+)により誘導できるlacオペロンを持つアラビノース誘導細菌系、(2)茎長増殖が除草剤グリホスフェートの存在により阻害されうるスナップえんどう豆植物、(3)茎長増殖が植物ホルモンジベレリン酸により刺激されうるスナップえんどう豆植物、(4)プロテオソーム活性のフェプロペプチンD阻害及び信号が存在しない場合の活性の回復を伴うインビトロ系、(5)パクリタキソール(タキソール)に曝すことによるマウス動物モデル系内の癌の治療、及び(6)腫瘍抑制因子ペプチドp53に曝すことによるマウス動物モデル系内の癌の治療を含む。
【0177】
さまざまな試料物質に対するMIDS信号を取得する詳細な方法及びMIDS信号による生体系の変換を行う詳細な方法が、それぞれ、実施例1及び2において以下で説明される。
【0178】
B1.L(+)アラビノースMIDSによる細菌lacオペロンの誘導
細菌内のアラビノースオペロンは、遺伝子産物araC及びその同族誘導因子L−アラビノース、つまり糖の制御の下で、遺伝子プロモーター遺伝子からなる厳重に調節されている系である。異種タンパク質発現は、アラビノース及びaraC遺伝子を持つプラスミドを使用して厳格に制御することができ、これは両方とも、プロモーター遺伝子の正と負の調節因子である。誘導の機序は、アラビノースの連結反応の後DNA要素へのaraC遺伝子の結合特性のアロステリック変化を伴う。
【0179】
この研究のために選択された化学センサ系は、L(+)アラビノース形態に対して選択的であることが知られているが、D(−)−アラビノースは、実験式が同一であり、構造も類似しているにもかかわらず、レポーターGFP uvタンパク質のaraC−PBADプロモーター遺伝子依存誘導及び発現を誘導しない。したがって、この系及び関係する化合物は、これらの類似の分子に特徴的な回復された分子放射信号(MIDS)の再生を介して変換された遺伝子発現の特異性にアクセスする理想的なツール群となる。
【0180】
L(+)Ara及びD(−)Araの両方に対する最適化された信号は、以下の実施例1で詳述されているように生成された。簡単にいうと、注入ノイズレベル、及び信号回復に使用される物質の物理的濃縮を変化させることにより、確率共鳴産物について最適化されたということである。アラビノース異性体の等モル溶液の測定結果から導かれる最適化されたSR信号産物の比較は、著しく異なっていた。回復されたMIDS信号は、2つの異なるアラビノース異性体について著しく異なり、はっきり区別できると判断された。これらの結果から、回復された分子放射信号は、同一の化学組成及び実験式を持つこれら2つの分子の化学構造に対し反応しやすいことが示唆される。これら2つの異性体は、六炭糖環に結合された4つのヒドロキシル基のシス−トランス配置においてのみ異なる。
【0181】
細菌試料を、L(+)Ara及びD(−)Araの両方に対するMIDS信号に曝したが、その際に、実施例2で詳述されている変換のセットアップ及びプロトコルを使用した。簡単に言うと、典型的な実験において、100〜500μg/mlのアンピシリンナトリウム(LB/amp)を含むルリア培地で増殖させたpBAD−GFPuv形質転換JM109の一晩培養物を1〜3滴使用して、50mlの新鮮なLB/ampの種とした。これをよく混合し、10mlを25mlの三角フラスコに移し、基準化学誘導物質の100X原液0.1ml(D又はLアラビノース)を加えて所望の最終濃度を得た。これらの種培養物を変換コイル内に入れるか、又は対照としてシェーカープラットフォーム上に残した。ほとんどの場合、変換は、一晩インキュベートとして実施された。
【0182】
5つの独立の実験に対するOD測定データは、図30A〜30Eにおいてプロットされている。図30Aのプロットは、MIDS信号及び化学作用物質自体への応答としてのGFPの誘導を示している。これからわかるように、MIDS L(+)Ara信号は、その誘導効果において、0.2mM L(+)Araと比較可能であり、D(−)Ara MIDS信号又はD(−)Ara化合物のいずれかに対する応答よりも実質的に大きかった。MIDS信号又はAra化合物のいずれかが存在しない場合には、ほとんど誘導は見られなかった。図30Bにプロットされているデータは、2つのMIDS信号に関して、類似の効果を示している。これ第1の2つの実験では、2つのコイルしか使用しなかった。非MIDS対照は、インキュベータ内に独立に置かれたが、振ることをせず、またインキュベータ温度は、手作業で、コイルの温度に合わせた。コイルは、使用される電圧及び電流で抵抗により熱せられた。したがって、L(+)及びD(−)MIDS試料の間の相対的差異測定結果が使用された。対照は、単純に、系の正しい化学的応答を示しているだけであり、定量では使用されない。
【0183】
図30C〜30Fにプロットされている3つの実験は、D(−)MIDS信号又は白色ノイズ対照の場合と比べてL(+)MIDS信号の場合のほうが実質的に大きな誘導を示す。これらのデータは、不活性化学異性体D(−)アラビノースではなく、同族化学誘導物質L(+)−アラビノースから回復されたMIDS信号によるaraC−PBADオペロンの特定的変換を示している。この系は、基準化学物質は、組成の点は同一であり、立体化学でのみ異なるので、変換効果の特異性のよいモデルとなっている。明らかに、生体系は、これらの構造に対して選択的である。実施された実験では、連続的一晩再生により生じるL対D MIDS信号の相対的誘導は15〜20%とかなり整合していた。一実験では、Suresthaらの化学作用誘導プロトコルで使用された誘導期間は、3.5時間と短かったことで、見かけの相対的誘導は7.8%で、バックグラウンドレベルに近かった。
【0184】
これらの実験条件の下で、増殖と誘導の両方がかなりの長期間にわたって行われる。これらのデータは、MIDS再生が遺伝子の特異的誘導を引き起こすオペロンスイッチオン経路に影響を及ぼすことができるという概念と整合している。作用を持つ可能な遺伝子座は、araCタンパク質と相互作用してそれにL(+)アラビノース結合状態を模倣させるL(+)ara MIDS内にあり、遺伝子導入を引き起こす可能性がある。このモデルは、化学結合の形成を必要としないが、むしろ、アロステリックに系に影響を及ぼすと思われる。
【0185】
B2.グリホスフェートMIDSによる茎細胞増殖の阻害
単量体植物酵素5−エノールピルビルシキメート−3−ホスフェート(EPSP)シンターゼ(EPSPS)は、エノールピルビルトランスフェラーゼのクラスに含まれる2つの酵素のうちの1つである。リガンド結合は、誘導適合機序のパターンに従って、酵素を開状態から密集閉状態に変換する。EPSPシンターゼは、ホスホエノールピルビン酸塩(PEP)を使用してシキメート−3−ホスフェート(S3P)から、芳香族アミノ酸を含む、細胞内で生産される芳香族化合物の大半の前駆体である5−エノールピルビル−3−シキメートホスフェートに変換する、シキミ酸経路に関与する。この経路内で生産される化合物は、植物乾燥質量の35%又はそれ以上を構成することが報告されている。この酵素は、哺乳類、魚類、は虫類、鳥類、及び昆虫には存在しないという事実から、抗生物質及び除草剤のよい標的となる。
【0186】
合成化合物グリホセート(N−ホスホノメチルグリシン、除草剤Roundup(登録商標)中の活性成分)は、この酵素に対する競合的阻害剤として作用し、実際、芳香族アミノ酸生合成を、さらにはこれらのアミノ酸から誘導される他の芳香族化合物合成をも遮断する。グリホセートは、PEP結合部位に結合する遷移状態類似体である(ホスフェート及びホルメートイオンは、PEPオキソカルベニウムイオンの活性基を模倣する)。グリホセートは、エノールピルビルトランスフェラーゼクラスにおける他の唯一の酵素である、UDP−N−アセチルグルコサミンエノールピルビルトランスフェラーゼ(MurA)に結合すらしない、EPSPシンターゼに対する高い特異性を示す。
【0187】
グリホスフェートの最適化された固有(MIDS)放射信号は、以下の方法の節で詳述されているような系機器及びプロトコルを使用して、上のII節及びIII節で説明されている通りに得られた。一実験では、最適化されたグリホスフェートMIDS信号は、湿った媒体上で支えられている豆苗に印加され、信号は、72時間、37℃、100%湿度で印加された。さまざまな対照として、(1)無信号、(2)化学的Roundup(登録商標)、及び(3)白色ノイズ信号があった。茎長は、刺激に曝された後1時間以内に測定され、それぞれのグループにおいて5〜50個の芽が得られた。
【0188】
図31は、4つの実験群のそれぞれにおける茎長の棒グラフプロットを示しており、それぞれの棒の上限及び下限は、茎長最大値及び最小値をそれぞれ表し、中間の線は、その群に対する茎長平均値を表す。図からわかるように、グリホスフェートとグリホスフェートMIDS化学信号は両方とも、植物中の実質的に阻害された茎成長に有効であったが、白色ノイズ対照は、茎成長に対しほとんど又は全く効果がなかった。
【0189】
図32A及び32Bは、豆苗試料に対するグリホスフェートMIDS信号の効果のグラフィックによるわかりやすい証拠を示している。図32Aは、化学又はMIDS信号処理が行われない場合の、72時間経った豆苗の写真である。同じ齢であるが、刺激に曝された後1時間以内に取った豆苗は、崩壊した異常成長の明白な兆候を示している。
【0190】
B3.ジベレリンMIDSによる茎細胞増殖の刺激
時系列電磁信号が特異的生物活性分子の生物活性を模倣する能力も、ジベレリン酸−3(GA−3)を使用してスナップえんどう豆の芽で実証された。ジベレリン酸(ジベレリン酸カリウム、Mega Grow(登録商標)とも呼ばれる)は、場合によっては、種子発芽の刺激を含むさまざまな効果を引き起こしうる、天然に存在する植物成長調節因子である。GA−3は、多くの種の種子中に天然に存在し、バット内でジベレラフジクロイ(Gibberella Fujikuroi)カビ培養物を培養し、GA−3を抽出精製することにより商業生産される。種子をGA−3溶液中に予浸すると、多くの場合、他の方法では冷却処理、後熟若しくは熟成、又は他の長期にわたる前処理を必要とする多くの種類の高休眠種子の高速発芽が引き起こされる。
【0191】
一定量の成長調節因子ジベレリン酸(.001%)を1.5ccのPyrex(登録商標)試料バイアルに入れ、1次超電導グラジオメーターのすぐ近くに配置した。DCから2000Hzの周波数範囲内の白色ガウスノイズ電流は、B場の向きがグラジオメーターの軸の法線方向である、磁場を発生する16巻きヘルムホルツコイルを介してブロードキャストされた。このノイズ信号は、グラジオメーターにより測定されたようにジベレリン酸の分子電磁(磁気)放射線に特徴的な確率論的信号の形成を促進すると想定される。この確率論的信号は、上述のように、WAV形式で記録され格納された。それぞれの信号には、一意的な制御番号が与えられた。
【0192】
上述のように記録された成長調節因子の信号は、アゴニストにのみ固有のスペクトルを識別するために後処理され、IFFTを使用してWAVファイルに変換された。5つの研究群が作成され、それぞれの群はサンジエゴのSun Grown,Inc.社から入手した生きたスナップえんどう豆の芽からなる。それぞれの研究群の準備のため、濡れたペーパータオルに芽を置き、スナップえんどう豆の発芽を促進するようにした。
【0193】
この5つの群は、(1)非影響対照群(十分な光、水、換気があれば自然に発芽する)、(2)成長調節因子GA−3群(芽は、成長調節因子で処理される)、(3)ノイズコイルを介して印加される白色ガウスノイズ、(4)成長調節因子放出群(工程1の記録された成長調節因子がそれらの芽に対して再生された)、及び(5)成長調節因子放出群(ノイズが除去される−IFFT、つまり、記録された成長調節因子は、アゴニストに固有のスペクトルのみを含むように後処理され、芽に対して再生された)であった。
【0194】
信号源は、工程1で作成されたWAVファイルであり、これは、アナログに変換され、十分な強度及び品質の信号を手巻き4インチ(ID)テスラコイルに供給するように構成された低周波RF増幅器により増幅され、群3、4、及び5は、変換器の上に配置された。十分な電磁遮蔽を使用して、群を互いに絶縁した。十分な光、熱、及び換気を用意して、すべての群に対する健全な成長を促進させた。それぞれの研究の期間は、動的な結果が早い段階で得られない限り72時間とした。変換器は、直径18インチの修正ヘルムホルツであり、芽はコイル芯の中心に置かれた。
【0195】
研究の結果は、図33にプロットされており、これは、上の群1〜4について茎長が平均的であることを示している。これからわかるように、ジベレリン酸(群4)に対するMIDS信号は、自由成長対照(群1)、白色ノイズ(群3)、さらにはジベレリン酸(群2)にわたって平均茎長の著しい増大をもたらした。
【0196】
B4.フェプロペプチンD MIDSによるプロテアソーム活性の阻害
20Sプロテアソーム酵素は、中性洗剤(SDS)で活性化される。活性化された酵素による基質Suc−Leu−Leu−Val−Tyr−AMCの切断により、380nmでAMCを励起し、460nmの蛍光を検出することにより監視できる蛍光AMC分子が遊離される。プロテオソーム活性は、フェプロペプチンDにより阻害される。
【0197】
第1の研究では、蛍光信号を発生する基質Suc−Leu−Leu−Val−Tyr−AMCの変換の出現により測定されるような、フェプロペプチンD及びフェプロペプチンDのMIDS信号がプロテオソーム活性を阻害する能力は、上で、また実施例の中で説明されているのと実質的に同じ方法に従って、測定された。
【0198】
20Sプロテアソームアッセイキット(EMD Biosciences Cat# 539158)は、最終体積200μlのキュベットフォーマットで使用できるように適合された。実施例3で詳述されている手順を使用して9つの試料をセットアップした。陽性対照試料#2を700に設定し、他のすべての測定をその試料に関して実行した。化学阻害剤は、20Sプロテアソームの活性を非阻害活性の20%未満に阻害した。フェプロペプチンD試料から導かれるMIDS場では、1.5時間「治療」期間の後分析されたときに、20Sプロテアソーム酵素の活性を36%未満に下げた。
【0199】
追跡研究で、試料を室温で一晩(20時間)インキュベートし、基質が蛍光生成物に変換され続けるかどうかを調べた。MIDS信号が20Sプロテアソームを阻害し、酵素がその場から除外された後も活性を有していた場合、MIDS暴露試料の活性は、阻害剤なしの対照と一致する化学阻害剤を含む他の試料に関して増大するであろう。
【0200】
以下の表に示されている結果から、陽性対照は、蛍光光度計の感度レベルが減少したことからわかるように、増大し続けたことが示されている。化学阻害剤の活性は、増大し続けた陽性対照に関してより顕著になった。MIDS試料は、20時間後信号の後増大した唯一の試料であり、これは、1時間30分のインキュベートに続いて最初に検出された阻害は、もはや、試料が場から除外した後には存在していなかったことを示している。以下の表形式で示されている結果は、図34にプロットされている。
【表2】

【0201】
B5.タキソールMIDSによる癌の治療
この研究では、ヒト乳房腫瘍の標準マウス異種移植片モデルにおいて、タキソールの変換分子放射信号の成長阻害ポテンシャルを評価した。タキソールは、特に重合チュブリンからなる細胞骨格要素中のチュブリンサブユニットに非共有的に結合し、その分解を防止し、そうして細胞分裂を阻止し、アポトーシスを誘発することにより働く臨床的に実証されている細胞毒作用物質である。したがって、タキソールは、さらに大きな高分子構造に影響を及ぼす、初期結合事象の下流に波及効果を有するタンパク質単量体に対しアロステリック効果を持つ。細胞傷害効果は、急速に分裂する癌細胞においてより顕著である。タキソールの作用機序は、標的チュブリン分子への結合の後の共有結合の形成又は破壊を必要としない。実験計画法と条件が、実施例4で詳述されている。
【0202】
図35Aでプロットされているデータに関して、個別の動物腫瘍容積の比較から、腫瘍増殖は、この研究の完了時(第36日)に統計的有意に阻害されたことが明らかになった。標準偏差の2倍の範囲を超えた値として定義される、外れ値は、統計解析に先立ってすべての群から取り除かれた。第36日には、タキソール、40mG、及び60mG治療で、それぞれ、腫瘍増殖が43%、36%、及び38%だけ阻害された。40mG及び60mG治療と標準化学療法薬、タキソールとの比較から、治療には違いがないことが明らかにされ、40mG及び60mG治療は、外れ値を取り除いた状態で、タキソール治療と似た効き目を示したことが示唆される。
【0203】
第36日の腫瘍重量の比較から、腫瘍重量は、さらに、タキソール対照群及び40mG治療群においても統計的有意に阻害されたことがわかった。タキソール、40mG、及び60mGは、それぞれ、43%、36%、及び26%、増殖を阻害した(図35B)。まとめると、40mGと60mGの両方の治療は、MDA−MB−435ヒト乳房腫瘍モデルにおいて不利な臨床的徴候なしで類似の効き目を示した。統計的有意性は、36日後の腫瘍容積及び腫瘍重量を賦形剤対照と比較した場合に両方の治療で得られた。しかし、60mG治療から2つの外れ値、及び40mG治療から1つの外れ値を統計解析に含めることで、統計的有意性が排除される。40mG及び60mGの両方の治療をタキソール治療と比較したところ、有意な違いのないことが明らかになったが、これは、36日間の治療後の類似の効き目を示唆している。
【0204】
B6.p53 MIDSによる腫瘍増殖の減少
Ant−p53 pepの効果は、内因性p53−273His突然変異遺伝子を含む、MDA−MB−468ヒト乳癌細胞系を使用して試験された。この突然変異は、すべてのp53突然変異の最大18%までを占める、p53遺伝子中の2つの最も優勢な突然変異部位のうちの1つとして報告されている。細胞の生存に対するAnt−p53pepの効果は、最初に、トリパンブルー除外により調べられた。細胞生存カウントは、MDA−MB−468細胞において30μM Ant−p53pepで5時間治療した後、生存細胞が10倍減少したことを示していた。対照的に、5時間の間30μMのペプチドは、悪性でないwt p53胸部上皮細胞系、MCF10−2Aにおける生存性に対し何ら効果を有しなかった。
【0205】
アポトーシス細胞死は、さらに、Annexin Vを外部化リン脂質ホスファチジルセリンに結合することにより確認された。多くの細胞種類において、ホスファチジルセリンは、アポトーシスの初期に膜非対称が失われるため細胞外環境に暴露されてしまう。MDA−MB−468細胞は、さまざまな期間にわたり30μMのAnt−p53pepで治療され、Annexin V−FITCによりインキュベートされ、フローサイトメトリーにより分析された。これらの結果から、約35%の細胞は、未治療対照と比較して、30分間のAnt−p53pepへの暴露の後のAnnexin Vを結合することがわかった。
【0206】
Annexin V結合は、MDA−MB−231及びMCF7細胞でも観察されたが、27sk細胞では観察されなかった。MDA−MB−468細胞は、膜ブレブ形成、細胞収縮、及び核断片化を含む、アポトーシスに関連する特徴的形態変化を示した。ペプチド治療MCF10−2A細胞の形態は、対照細胞に類似していた。さらに、p53ヌル/ヌル乳癌細胞系、MDA−MB−453をAnt−p53pepで治療すると、sub−G DNA含量又はAnnexin V結合の蓄積のないことが示された。ヌルp53ステータスを持つ2つの他の細胞系である、肺腺癌系のH1299及び骨肉腫系のSaos2も、Ant−p53pepによりアポトーシスには誘導されなかった。
【0207】
さらに、MDA−MB−468細胞を30μM Ant−p53pepで2時間治療すると、ウエスタンブロット法による特徴的な切断活性型のFLICE(p26)が生成された。これらのデータから、Ant−p53pep−治療MDA−MB−468細胞におけるアポトーシスは、Fas/APO−1シグナル経路を介して媒介され、その結果FLICE活性が得られたことが示唆される。
【0208】
MIDS研究では、培地内のMCF10−2A細胞をAnt−p53ペプチドの溶液について記録されたMIDS信号のMIDS信号に曝した。細胞は、1時間オン、1時間オフというやり方で、合計治療時間18時間の間、60mGのMIDS信号に曝された。治療が終了すると、細胞数について培養皿が調べられた。28時間後に観察された細胞の個数は、対照(MIDS信号なし)について観察されたものに比べて著しく減少していた(対照細胞の約50%)。
【0209】
C.MIDS作用物質及び化学的又は生化学的標的の選択
上述の方法では、本発明が広範なリガンド生化学的作用物質MIDS信号に対し運用可能であることを実証しており、作用物質自体は、細胞内環境の抗リガンド標的と非共有結合的に相互作用することが知られている。これらの研究で考察されているリガンド/抗リガンド標的の対は、細菌系内のlacオペロンと相互作用する、L(+)アラビノース、両方ともそれぞれの標的酵素に結合し阻害する、2つの酵素阻害剤(グリホスフェート及びフェプロペプチンD)、染色体チュブリン構造に結合し、自己組織化チュブリン構造の解離を阻害する、タキソール、及びDNA及び可能なタンパク質標的上の結合部位と相互作用し、細胞分裂の停止に関与する因子、例えば、p21の発現、又は細胞アポトーシスに関与するbax、Fas、FasL、及びDR5を含む、多数のタンパク質の発現を誘発する、腫瘍抑制因子ペプチドp53を含む。
【0210】
これらの場合のそれぞれにおいて、実際のリガンドは、イオン結合、疎水結合、分散結合、及び/又は水素結合を伴うことができる非共有結合的相互作用を通じてその抗リガンド標的と相互作用する。これらの観察結果に基づき、生物学的作用が生物学的標的、例えば、タンパク質及び/又はDNA標的との非共有結合的相互作用を伴うリガンドをMIDS信号が表す他の系が、リガンドMIDS信号に対する類似の応答を示すと当然予想できる。
【0211】
今日まで、研究された1つのリガンド/生体系は、統計的に意味のあるMIDS信号応答を示すことができなかった。この場合、MIDS信号が腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)タンパク質について記録された低周波時間領域信号である癌細胞応答系を伴う。このタンパク質は、細胞内のアポトーシス経路の誘導によりある種の癌細胞を阻害することが知られている。活性型のタンパク質は、リガンド受容体相互作用、例えば、TRAILタンパク質のDR4及びDR5細胞受容体への結合に関与するように見える配位亜鉛(Zn)原子を持つ三量体である。TRAIL化合物(1個の配位Zn原子及び約60Kの総分子量の三量体)の複雑さ、MIDS信号が三量体又は結合亜鉛特徴を反映できないこと、又は溶液中のTRAIL成分が必要なリガンド複合体を形成できないことが、MIDS効果を観察できないことに関わっているかどうかは知られていない。しかしながら、この結果は、以下で考察されるように、この方法を実施するうえで好適なエフェクター化合物を選択する際の案内として有益であると思われる。しかし、TRAIL MIDS信号による結果は、癌細胞増殖の意味のある変化がMIDS信号への細胞暴露の過程で観察されなかったため、生体試料を不活性MIDS信号に曝すプロセスが単独では系の挙動に影響を及ぼさないことを示している。
【0212】
共有結合の形成を伴う1つのリガンド/応答系が研究されたが、結果は曖昧なものである。この系は、細菌標的系に対抗するベータラクタム系抗生物質アンピシリンにMIDS信号を使用することを伴う。ベータラクタム系抗生物質は、少なくとも一部は、ペプチド転移酵素中のセリン残基の共有結合修飾を通じて作用することが知られている。MIDS信号は、共有結合の破壊又は形成に必要なエネルギーよりもかなり低い相互作用エネルギーを伴うことが予想されるため、共有結合の破壊又は形成を必要とする機序を有するMIDS信号が標的内の作用物質特異的応答を引き起こすことができなかった場合に予期されないということはないであろう。
【0213】
上述の結果に基づく、以下のガイドラインは、生体系に影響を及ぼすMIDS信号として使用するのに好適なリガンドエフェクター化合物を選択する際に役立つ。
1.リガンド又はエフェクター化合物は、非共有結合的相互作用、例えば、イオン結合、疎水結合、分散結合、及び/又は水素結合相互作用により生物学的標的と相互作用すべきである。
2.リガンド又はエフェクター化合物は、比較的大きな生体分子、例えば、p53腫瘍抑制因子のようなタンパク質であってよいが、MIDS信号が生成される際に元になる分子又は複合体の溶液形態は、生物学的活性型であるべきである。そのため、生物学的活性型が二量体又は三量体形成、若しくは配位金属結合を含む場合、これらの活性型は、MIDS信号が記録されるときに主要な形態でなければならない。例示的な化合物は、比較的小さな有機分子又はペプチド、例えば、1kダルトン未満のMWである。
3.特に有利な化合物は、生体系内の化合物自体の知られている制限を克服する化合物である。特に、例えば標的腫瘍細胞に多剤耐性がある、P450薬物代謝経路が誘導される、又は血液脳関門を越えられないために、化合物の薬物動態プロファイルが劣る場合、化合物のMIDS信号送出は、これらの制限を効果的に克服できる。
4.同様に、体内に化合物が蓄積すること、又は薬物が毒性代謝産物に分解することに関係する非特異的毒性効果のため化合物が望ましくない、又はひどい副作用を持つ場合に、MIDS信号は、有利な代替え物質であると期待することができる。
【0214】
作用物質又は試料が選択された後、好ましくは標的と親和性のある媒体、例えば、水媒体中において、標的系における有効な濃度と似た、又はそれ以上の濃度で、最適化されたMIDS信号が生成される。次いで、MIDS信号を使用して、標的系の変換を行い、選択されたレベル、例えば、40〜60mGで、作用物質特異的効果を生じさせるのに十分な期間、例えば、24時間の間、信号を再生する。作用物質特異的効果が観察された場合、MIDS信号は、本発明の変換方法で使用するのに好適なものとして識別される。作用物質特異的効果が観察されない場合、MIDS信号は、さらに、例えば、試料の最も有意なスペクトル成分のみを含む合成信号を生成することにより、最適化することができる。
【0215】
好適な化合物又は試料を識別した後、化合物の(又は試料の)MIDS信号効果は、標的系、例えば、インビボ若しくはインビトロ生体系を複数の信号レベル、例えば、10から100mGの範囲のレベルのそれぞれで、また複数の時間間隔のそれぞれで、例えば、典型的には12時間から1週間又はそれ以上の期間にわたって連続的暴露又は交互時間暴露で、MIDS信号に曝すことにより最適化し、最適な実現可能な治療投薬量及びスケジュールを設定することができる。
【0216】
以下の実施例では、本発明のさまざまな方法を例示するが、いかなる形であっても、本発明の範囲を制限することは意図されていない。
【実施例】
【0217】
実施例1:MIDS信号取得方法
測定時に、試料物質は70から74°Fの範囲の室温である。試料温度の広範な変動は、温度の増減に応じて、放射を高い周波数又は低い周波数に変移させうる。試料が室温よりも上又は下で記録される場合、測定の前、及び後の物質の温度を記録し、加熱又は冷却の手段を指示する必要がある。
【0218】
測定される物質が大気に曝される場合、大気湿度は、測定時に記録されなければならない。測定される物質が大気に曝される場合、大気圧は、測定時に記録されなければならない。試料が加圧される場合、圧力は、ポンド/平方インチ、又は水銀柱の高さを単位として記録されなければならない。
【0219】
環境電磁障害は、分子測定が実行される前、及び後に記録されなければならない。このデータは、後処理のときに試料データから差し引くことができる。
【0220】
A.試料調製
試料サイズ:0.8から1.5cc
試料容器:1cc又は2ccのPyrex(登録商標)平底バイアル。
試料貯蔵:試料は、さまざまな条件の下で複数回の測定について安全に保持される。試料は、無反応性のネジ蓋をしっかり留めた元のPyrex(登録商標)試料バイアルに貯蔵される。
【0221】
B.SQUIDパラメータの設定
冷却:すべての極低温構成要素は、4ケルビンの動作温度にされる。
電源投入:SQUID及びSQUIDコントローラが電源投入されると、内部テストが実行され、適切な動作であることが確認される。
チューニング:SQUIDは、最適な動作となるようにチューニングされる(白色ノイズ注入なしで0.4〜0.8マイクロボルトの出力)。
ゲイン:100X
DCオフセット:ゼロ
帯域幅:通常(50kHz)
フィルタ:0.3Hz(ハイパス)
【0222】
C.ノイズジェネレータ
信号タイプ:アナログ白色ガウスノイズ、又は均一ノイズ(振幅一定)
出力電圧:最小から最大までの開回路出力電圧は、3ボルトrms最小。印加される出力電圧は、最初に、ゼロ出力に設定される。
Xチャネル:ノイズ注入のためヘルムホルツコイルに接続される。
Yチャネル(反転):SQUID入力コイルの前のグラジオメーターと直列にノイズ消去コイルに接続される(オプション)。
出力インピーダンス:50オーム
【0223】
D.スペクトル解析
MIDS(Molecular Interrogation and Data System)から出力されたアナログ信号は、PCIデータ収集ボードを通じて収集され、格納される。WavGrabは、さらに、Noise ComモデルUFX 9837白色ノイズジェネレータと直列にインターフェイスするように設計されている。試料は、後の記録毎にヘルムホルツコイルに印加されるノイズの量を徐々に大きくしながら複数回記録される。一連の記録は、さまざまなノイズレベルの単一の標的試料からなる。
【0224】
それとは別に、信号収集の手動による方法も使用できる。
【0225】
E.確率論的生成
試料ステージは、SQUID検出器から引き出される。(試料なし)。わずかな量のゲインがノイズジェネレータチャネルXに印加される。ノイズジェネレータチャネルYからの出力は、SQUID出力で可能な最も深いヌルを生じるように調整される(白色ノイズ消去−オプション)。ノイズジェネレータの主ゲイン制御は、ゼロに下げられる。試料トレイをグラジオメーターの下の適切な位置にスライドさせることにより、試料が検出器内に挿入される。平均されたフーリエ表示が監視され、基準スペクトルが記録される(注目する帯域幅内)。主ゲイン制御(ノイズジェネレータ)は、基準スペクトルの変化について平均されたフーリエ表示を監視しながら、徐々に進められる。
【0226】
基準スペクトルを表さない顕著なスペクトルピークが出現した場合、ノイズゲインを進める作業は、停止され、放射の時系列記録が記録される。
【0227】
F.後処理
単一分子標的のいくつかの未処理時系列記録が収集され、WAV形式で格納される。それぞれの記録は、一定範囲の白色ノイズ振幅にわたって実行された測定の一連の記録のうちの1つを表す。単一分子標的から得られたすべて未処理時系列記録は、バッチ処理を行うようにマークを付けられる。バッチ内のそれぞれの未処理時系列記録の自己相関が求められる。
【0228】
自己相関関数は、以下の2つの目的に使用される。
A.データ中の非ランダム性を検出すること。
B.データがランダムでない場合に適切な時系列モデルを識別すること。
【0229】
自己相関時系列は、追加の処理のためバッチで未処理時系列記録とともに格納される。バッチ内のそれぞれの自己相関時系列は、フーリエ変換を使用して周波数領域に変換される。それぞれ周波数領域変換に対し、X軸(周波数)内のすべてのデータ点にわたりY軸(自己相関スコア)についてRMS平均が計算される。それぞれの周波数領域変換について、RMS平均を超えるすべてのY軸外れ値は、表にされる。バッチ内のそれぞれの時系列記録に対する表にされた外れ値の総和が、記録名及び外れ値カウントを表示するスプレッドシートに書き出される。最高の外れ値スコアを持つ時系列記録は、最良の記録信号を表す。
【0230】
実施例2
変換方法及び条件
2組のコイルで変換研究が実施された。第1の系では、30ゲージのアルミニウム線からなるコイルの対を、外径2 5/8”のPVC芯の高さ3”のセクションに巻き付け、開始コイルの巻き数の35倍に巻いた。これらは、アルミニウム製ファラデー箱5 1/2”×4”×8 3/4”(W×H×D)内に配置され、クロスオーバーRF信号について試料を隔離した。両方の箱をオービタルシェーカープラットフォーム上に置き、変換培地を曝気した。試料及びコイルの温度をCraftsman Model 82327 Non−contact Infra−red Thermometerで監視した(一致したRF白色ノイズ対照は、実験時には利用できなかった)。
【0231】
3つの高さ4”のストックからなる第2の組において、内径1”のプラスチック芯を持つ28G絶縁銅線の4000ftスプールを変換コイル(「メガコイル」)として直接使用し、2つのコイルをMIDS信号で駆動したが、第3の対照コイルは、ランダム白色ノイズジェネレータで駆動した。この場合、3つのコイルはすべて、ファラデー箱内で絶縁され、オービタルシェーカーに取り付けられた6ftの厚板上で2ft隔てて取り付けられた。これにより、3つの試料すべてが1つのシェーカーを使用し同じ速度で攪拌されるようにした。サーミスタ温度プローブも、試料の近くのそれぞれのコイルの芯の中に入れ、温度をリアルタイムで読み取るようにした。MIDS信号コイルの両方の組を、最高の入力電圧設定で駆動し、その温度が巻線の抵抗熱から94〜97°F近くで平衡するようにした。試料は、コイルの芯の中心に置き、RF束の最大の、最も一様な領域を通るようにした(電流設定の制限は、RF束を制御する駆動電圧による加熱の連関であった)。
【0232】
実施例3
フェプロペプチンD MIDSによるプロテアソーム活性の阻害
20Sプロテアソームアッセイキット(EMD Biosciences Cat# 539158)は、最終体積200μlのキュベットフォーマットで使用できるように適合された。以下の手順を使用して9つの試料をセットアップした。
1)反応緩衝液(20×)100μlを、最終体積が1mlとなるようにHPLCグレード水880μl及び100×活性化緩衝液20μlで希釈した。
2)希釈された2×反応緩衝液100μlを酵素なしの対照管のそれぞれに加えた。
3)20Sプロテアソーム酵素3.2μlを残りの2×反応緩衝液800μlに加え、7本の残りの管それぞれに100μlずつ加えた。
4)それぞれの管に水又は水と阻害剤100μlを加えた。
5)別の管で、基質4μlをHPLCグレード水96μlで希釈し、希釈基質の10μl管の分を反応管のそれぞれに加えて最終体積200μlを得た。
6)ピペッティングを繰り返して試料をすべて混合し、反応を2時間、37℃でインキュベートした。37℃の水槽に一部浸けたヘルムホルツコイル内でMIDS場暴露試料をインキュベートして、フェプロペプチンDの60mG AC場をブロードキャストした。
7)蛍光光度計(Turner Designs、カリフォルニア州サニーベール−Model TD−700)を使用して蛍光を定量し、記録した。
8)2つの複製を含む試料は、グラフの上にアスタリスクを付けて示されている。
【0233】
試料は以下の通りであった。
1 24.91(ディスク)酵素なし対照(陰性対照)
2 697.9(ディスク)阻害剤なし(陽性対照)
3 25.83(ディスク)化学阻害剤ALLN
4 105.6(ディスク)化学阻害剤フェプロペプチンD
5 79.35(ディスク)化学阻害剤フェプロペプチンD+MIDSフェプロペプチンD(60mG)
6 251.1(ディスク)MIDSフェプロペプチンD(60mG)
7 519.3(ディスク)阻害剤なし(陽性対照)
8 21.96(ディスク)酵素なし対照(陰性対照)
9 209.7(ディスク)MIDSフェプロペプチンD(60mG)
この研究の結果については上で説明されている。
【0234】
実施例4
タキソールMIDSによる腫瘍増殖の減少
ガラス製試料保持器(Kimbleオートインジェクタバイアル)において、(1)事前製剤配合タキソール臨床用バイアルの生の溶液で、1mlのツベルクリン注射器及び22Gの針を使用して、マルチドーズバイアルから0.7ml取り出して(無菌状態と完全性を保持し、注射器をまた差し込まない)、MIDS測定を行い、次いで(2)この0.7mlのタキソール製剤を使用して、さらに1mgバイアル分のタキソールを溶解し、Cremophor(登録商標)に関してタキソールの量を増やす。この研究は、インビボヒト腫瘍マウス異種移植片モデルにおいて腫瘍増殖を阻害する変換技術の効き目を評価し、その効果を標準化学療法−タキソールと比較するように計画された。懸濁液中の500万個のMDA−MB−435を、無胸腺ヌードマウスの脇腹に皮下注射した。治療は、細胞移植の同じ日に開始した(第1日)。動物を4群のうちの1群に割り当てた。それぞれの動物は、研究持続期間中毎週2回腫瘍増殖について監視された。1つの群は、タキソールで治療され、2つの群は、変換で治療され、1つの群は、対照として作用するタキソール賦形剤で治療された。
【0235】
マウスは、無胸腺ヌードマウスnu/nuで、BALB/cバックグラウンドを持っていた。American Culture Type Collection、ATCC (メリーランド州ロックビル)から入手した500万個の乳癌腫瘍系MDA−MB−435(元々NCIからのNCI標準)を埋め込んだ。これは、増殖に対し非エステロゲン依存である乳管癌腫である。従来の治療群(それぞれマウス10匹):賦形剤のみ、15mg/kgのタキソール、2×週i.p.、研究期間中週2回、MIDS変換群(それぞれマウス11匹):2つの異なる電力レベルで。
【表3】

【0236】
マウスが常時タキソールのMIDS再生に曝されるように標準のマウスケージを収納する、Tristan Technologies社設計のコイル巻線を持つ直径2ftの直角円柱内にマウスを閉じこめた。治療群のすべてのマウスは、1つのケージに入れられ、連続再生の下で大型変換コイルの中心円筒空洞の領域内で、餌と水を与えつつ飼育された。腫瘍容積測定が行われた期間、及びケージの清掃時に、ケージはコイルから取り出された。この結果、連続的暴露デューティ時間は研究期間の約80〜90%となった。
【0237】
本発明は、特定の実施形態及び用途に関して説明されているが、さまざまな変更、修正、及び他の応用は、請求項に記載されている通り、本発明の範囲内にあることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】本発明の一実施形態により形成される分子電磁信号発生検出装置の一実施形態の等角図である。
【図2】図1に示されているファラデー箱とその内容の拡大詳細図である。
【図3】図1及び2に示されている減衰管の1つの拡大断面図である。
【図4】図2に示されているファラデー箱とその内容の拡大断面図である。
【図5】図1から4に示されている本発明の他の実施形態の断面図である。
【図6】本明細書に説明されているヘルムホルツトランスのコイルを支えるフレームの拡大詳細図である。
【図7】他の電磁放射線検出系の図である。
【図8】上記の図の検出系に含まれる処理ユニットの図である。
【図9】図8の処理ユニットの代替えとなる処理ユニットの図である。
【図10】本発明の系により実行される信号検出及び処理の流れ図である。
【図11A】第1の試料の放射線のスペクトルプロットである。
【図11B】第2の試料の放射線のスペクトルプロットである。
【図12A】非相関時間領域試料信号をフーリエ変換することにより生じる、飽和NaClの試料に対する500〜530Hzまでの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図12B】相互相関試料スペクトルをフーリエ変換することにより生じる、飽和NaClの試料に対する500〜530Hzまでの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図13A】非相関時間領域試料信号をフーリエ変換することにより生じる、アルキルエーテル硫酸塩の試料に対する500〜530Hzまでの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図13B】相互相関試料スペクトルをフーリエ変換することにより生じる、アルキルエーテル硫酸塩の試料に対する500〜530Hzまでの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図14A】脱イオン水の試料に対する500〜530Hzまでの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図14B】飽和NaCl溶液の試料に対する500〜530Hzまでの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図14C】脱イオン水の1%NaCl水溶液の試料に対する500〜530Hzまでの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図14D】飽和NaBrの試料に対する500〜530Hzまでの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図14E】脱イオン水のアルキルエーテル硫酸塩水溶液の試料に対する500〜530Hzまでの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図14F】試料なしに対する500〜530Hzまでの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図15A】スペクトルが50秒間の記録及び40分間の相関で生成された、1:100重量/体積溶液でのアミノ酸の試料の、500から535Hzの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図15B】スペクトルが50秒間の記録及び40分間の相関で生成された、1:10,000の高重量/体積濃度の希釈のアミノ酸の試料の、500から535Hzの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図15C】スペクトルが50秒間の記録及び40分間の相関で生成された、1:1,000,000の重量/体積濃度の希釈のアミノ酸の試料の、500から535Hzの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図15D】スペクトルが50秒間の記録及び40分間の相関で生成された、1:100,000,000の重量/体積濃度の希釈のアミノ酸の試料の、500から535Hzの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図15E】スペクトルが50秒間の記録及び40分間の相関で生成された、1:10,000,000,000の重量/体積濃度の希釈のアミノ酸の試料の、500から535Hzの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図15F】スペクトルが4:25分の記録及び12時間の相関で生成された、1:10,000,000,000の重量/体積濃度のアミノ酸の試料の、500から535Hzの範囲のスペクトル領域内のスペクトルプロットである。
【図16】分子電磁信号発生検出装置の他の実施形態を例示する概略図である。
【図17A】図16の他の実施形態の断面図である。
【図17B】図17Aの一部の拡大図である。
【図18】図17Bの等角断面図である。
【図19】図9の処理ユニットの代替えとなる処理ユニットの図である。
【図20】本発明のヒストグラムスペクトルプロット法のデータフローの高水準流れ図である。
【図21】本発明による、スペクトルプロットヒストグラムを生成するためのアルゴリズムの流れ図である。
【図22A】4つの異なるノイズ電力レベルのうちの1つで抽出した試料のヒストグラムスペクトルの図である。
【図22B】4つの異なるノイズ電力レベルのうちの1つで抽出した試料のヒストグラムスペクトルの図である。
【図22C】4つの異なるノイズ電力レベルのうちの1つで抽出した試料のヒストグラムスペクトルの図である。
【図22D】4つの異なるノイズ電力レベルのうちの1つで抽出した試料のヒストグラムスペクトルの図である。
【図23A】スペクトルプロットヒストグラムを生成し、表示するためのユーザーインターフェースを表示しているコンピュータスクリーンショットである。
【図23B】スペクトルプロットヒストグラムを生成し、表示するためのユーザーインターフェースを表示しているコンピュータスクリーンショットである。
【図23C】スペクトルプロットヒストグラムを生成し、表示するためのユーザーインターフェースを表示しているコンピュータスクリーンショットである。
【図24】本発明の方法の第2の実施形態による最適な時間領域信号を識別するための工程の流れ図である。
【図25A】除草剤化合物の40%を含有する試料に対する時間領域信号の一部を示す図である。
【図25B】70.9−dbmのノイズレベルで記録された、25Aの試料からの自己相関時間領域信号のFFTを示す図である。
【図25C】74.8−dbmのノイズレベルで記録された、25Aの試料からの自己相関時間領域信号のFFTを示す図である。
【図25D】74.8−dbmのノイズレベルで記録された、25Aの試料からの自己相関時間領域信号のFFTを示す図である。
【図25E】78.3−dbmのノイズレベルで記録された、25Aの試料からの自己相関時間領域信号のFFTを示す図である。
【図26】図25の試料に対する自己相関スコア対ノイズ設定のプロットである。
【図27】本発明の方法の第3の実施形態による最適な時間領域信号を識別するための工程の流れ図である。
【図28A】典型的な変換実験における変換機器レイアウトを示す図である。
【図28B】典型的な変換実験において使用される変換コイル及び容器を示す図である。
【図28C】シェーカーテーブル上の変換コイルの配列を示す図である。
【図29A】コイル間の位置の関数としてヘルムホルツコイル変換器内の磁場のプロットを示す図である。
【図29B】ソレノイド変換器を示す図である。
【図29C】修正されたソレノイド変換器を示す図である。
【図30A】MIDS AraL(+)信号を含む、さまざまな刺激に対する大腸菌(Escherichia coli)中のAraL(+)誘導緑色蛍光タンパク質の応答を示す図である。
【図30B】MIDS AraL(+)信号を含む、さまざまな刺激に対する大腸菌(Escherichia coli)中のAraL(+)誘導緑色蛍光タンパク質の応答を示す図である。
【図30C】MIDS AraL(+)信号を含む、さまざまな刺激に対する大腸菌(Escherichia coli)中のAraL(+)誘導緑色蛍光タンパク質の応答を示す図である。
【図30D】MIDS AraL(+)信号を含む、さまざまな刺激に対する大腸菌(Escherichia coli)中のAraL(+)誘導緑色蛍光タンパク質の応答を示す図である。
【図30E】MIDS AraL(+)信号を含む、さまざまな刺激に対する大腸菌(Escherichia coli)中のAraL(+)誘導緑色蛍光タンパク質の応答を示す図である。
【図31】除草剤MIDS信号(31A)、茎細胞長の確率プロット(31B)、及び同じ実験における幹長の経験的CDFを含む、さまざまな刺激に応答する幹長の箱ひげ図を示す図である。
【図32A】MIDS除草剤信号に曝されない場合のスナップえんどう豆の芽の写真である。
【図32B】MIDS除草剤信号に曝された場合のスナップえんどう豆の芽の写真である。
【図33】刺激に応答する茎長の箱ひげ図として表されている、増殖因子MIDS信号を含む、茎長に対するさまざまな刺激の効果を示す図である。
【図34】生化学的阻害剤又はMIDS信号で1.5時間治療した後(暗色の棒)、及び20時間の後処理で化学分析されたときの(明るい棒)、20Sプロテオソーム活性の阻害を示す棒グラフである。
【図35A】40又は60mGのいずれかにより、賦形剤単独、タキソール、又はタキソールMIDS信号で処理されたマウスにおいて腫瘍組織を接種した後の日数の関数として腫瘍重量の変化率を示す図である。
【図35B】同じ4つの動物群に対する腫瘍重量の変化率を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的又は生化学的作用物質に応答する系(system)に対する前記作用物質の効果を生じさせるための方法であって、
(a)前記系を電磁変換器の磁場の領域内に置き、
(b)前記変換器に、スペクトル分析に基づき、複数の作用物質特異的スペクトルピークを特徴とする低周波時間領域信号を印加し、
ここで、前記作用物質特異的スペクトルピークは、
(i)磁気遮蔽と電磁遮蔽の両方を持つ容器内に前記化学的又は生化学的作用物質を入れ、
(ii)前記時間領域信号のスペクトルプロットに前記識別可能なスペクトルピークを生じさせるのに有効なノイズレベルのノイズを前記試料に注入しつつ、前記試料からの低周波時間領域信号を記録することとにより得られる、低周波時間領域信号のスペクトルプロットから識別され、
(c)前記信号を、印加される信号電力で、前記系内において前記系に対し作用物質特異的な効果を生じさせる十分な期間にわたって印加しながら、前記試料を、前記変換器により発生する前記磁場に暴露することとを含む方法。
【請求項2】
前記変換器に印加される前記時間領域信号は、
(i)磁気遮蔽と電磁遮蔽の両方を持つ容器内に前記化学的又は生化学的作用物質を入れる工程と、
(ii)前記時間領域信号のスペクトルプロットに前記識別可能なスペクトルピークを生じさせるのに有効なノイズレベルのノイズを前記試料に注入しつつ、前記試料からの低周波時間領域信号を記録する工程
とにより得られる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(ii)は、
(a)所定のノイズ振幅のノイズを前記試料に注入する工程と、
(b)前記注入ノイズに重ね合わされた試料源放射線からなる電磁波時間領域信号を記録する工程と、
(c)選択されたノイズレベル範囲内の複数のノイズレベルのそれぞれにおいて工程(a)及び(b)を繰り返す工程と、
(d)前記時間領域信号のスペクトルプロットを作成することにより生成された前記複数の時間領域信号を分析し、前記スペクトルプロット内の情報に基づいて最適化された作用物質特異的な時間領域信号を識別する工程とを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(iia)で前記試料に注入されるノイズの発生源は、電力調節可能なガウスノイズジェネレータ及びヘルムホルツコイルを備え、最大1ボルトまでの範囲内で、前記ノイズジェネレータから、選択されたノイズ出力信号を受信する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記分析工程(d)は、
(i)fを時間領域信号をサンプリングするサンプリングレートとして、DCから8kHzまでの範囲内の選択された周波数範囲のそれぞれの事象ビンfについて、それぞれのビンにおける事象数を示すヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムに対し、所定の閾値を超えるビンの数に関係するスコアを割り当て、前記スコアに基づいて時間領域信号を選択する工程、
(ii)前記時間領域信号を自己相関し、DCから8kHzまでの範囲内の選択された周波数範囲で前記自己相関された信号のFFTを生成し、前記FFT信号に対し、平均ノイズ値よりも高いピークの数に関係するスコアを割り当てて、前記スコアに基づいて時間領域信号を選択する工程、及び
(iii)DCから8kHzまでの選択された周波数範囲内で、複数の所定期間のそれぞれで時間領域信号のフーリエスペクトル系列を計算し、前記フーリエスペクトルを平均化し;前記平均化されたFFT信号に対し、平均ノイズ値よりも高いピークの数に関係するスコアを割り当てて、前記スコアに基づいて時間領域信号を選択する工程
のうちの1つにより実行される請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記分析工程(d)は、
(i)サンプル持続時間にわたって前記試料の時間領域信号を格納する工程、
(ii)前記時間領域信号をサンプリングするためのサンプリングレートFを選択する(F*Tは、総サンプルカウントSであり、Fは、サンプリングレートFでサンプリングされた時間領域信号の実高速フーリエ変換(Real Fast Fourier Transform)の周波数領域分解能fのほぼ2倍であり、S>(2)f*nであり、nは少なくとも10である)工程、
(iii)前記格納された時間領域信号からS/n個の試料を選択し、前記試料に対し実高速フーリエ変換(RFFT)を実行する工程、
(iv)前記RFFT信号を正規化し、前記信号の平均電力を計算する工程、
(v)対応する選択された周波数≧平均電力*εで測定電力が得られ、0<ε<1であり、事象ビンに入れられたカウント総数がそのビンの中の可能な最大のビンカウントの約20〜50%の範囲であるように選択される、f個の選択周波数事象ビンのそれぞれに事象カウントを入れる工程、
(vi)工程(iii)〜(v)をN>2回繰り返す工程、及び
(vii)選択された周波数範囲にわたってそれぞれの事象ビンfについて、それぞれのビン内の事象カウントの個数を示すヒストグラムを生成する工程
のうちの1つにより実行される請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記RFFT信号を正規化するための工程(iv)において、前記RFFTからの正規化された電力値をf個の対応する周波数電力ビンに入れ、工程(viii)において、(a)f個の電力ビンのそれぞれに入れられた累計値をnで除算し、それぞれのビン内の平均電力を求め、(b)それぞれのビン内の前記平均電力を前記ヒストグラムに表示することをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記記録は、SQUIDに結合されたグラジオメーターを使用して実行され、前記注入は、ノイズを前記グラジオメーターに注入することを含む請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記作用物質は、リガンド特異的な非共有相互作用を通じて生体系内の抗リガンド細胞標的と相互作用することができるリガンドである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記作用物質は、1つ又は複数の遺伝子のプロモーターと相互作用することができる化合物であって、前記1つ又は複数の遺伝子は前記化合物の存在によりアップレギュレーション又はダウンレギュレーションされ、前記低周波時間領域信号は、前記化合物の低周波時間領域信号を記録することにより生成され、前記適用は、前記1つ又は複数の遺伝子の測定可能なアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを生じさせるのに十分な信号振幅及び時間で実行される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記作用物質は、L(+)アラビノースであり、前記遺伝子は、細菌lacオペロン遺伝子を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記作用物質は、生体系の増殖及び生存に必要な酵素と相互作用して、前記酵素を競争的に阻害することができ、前記低周波時間領域信号は、前記化合物の低周波時間領域信号を記録することにより生成され、前記適用は、生体系の測定可能な阻害又は増殖及び生存を生み出すのに十分な信号振幅及び時間の間に実行される請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記作用物質は、グリホスフェートであり、前記標的酵素は、植物中の5−エノールピルビルシキメート−3−燐酸(EPSP)シンターゼである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記作用物質は、フェプロペプチンDであり、前記標的酵素は、真核細胞内のプロテオソームに関連するタンパク質分解酵素である請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記作用物質が、
(a)前記細胞標的が染色体微小管スピンドルである、チュブリン結合作用物質、
(b)前記細胞標的が2本鎖DNAである、アントラサイクリン、
(c)前記細胞標的が酵素トポイソメラーゼである、トポイソメラーゼ阻害剤、
(d)前記細胞標的が細胞代謝作用に必要な酵素である、代謝拮抗物質、
(e)前記細胞標的が免疫応答細胞である、免疫抑制剤、及び
(f)前記標的が細胞の核内のDNA複製機構である、腫瘍抑制因子タンパク質からなる群から選択される、哺乳類被検体の癌を治療するための、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記作用物質は、タキソール又はタキソール類似体である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記作用物質は、p53抑制因子である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記電磁変換器は、開放内部を定めるコイル巻線を含み、前記暴露は、前記試料を前記巻線の開放内部に入れることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記電磁変換器は、埋め込み可能なコイルを備え、前記変換器は、前記暴露前に生体系中に埋め込まれる請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記信号は、10〜100mGの範囲内の選択された磁場強度を生じる効果のある選択された電力レベルで印加される請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記暴露は、1時間又はそれ以上の期間にわたり交互の間欠的暴露により実行される請求項1に記載の方法。
【請求項22】
化学的又は生化学的作用物質に応答する系に対する前記作用物質の効果を生じさせるための装置において、
(a)スペクトル分析に基づき、複数の作用物質特異的スペクトルピークを特徴とする低周波時間領域信号を格納するためのメモリデバイスであって、前記作用物質特異的スペクトルピークが、
(i)前記化学的又は生化学的作用物質を磁気遮蔽と電磁遮蔽の両方を持つ容器内に入れ、
(ii)前記時間領域信号のスペクトルプロットに前記識別可能なスペクトルピークを生じさせるのに有効なノイズレベルのノイズを前記試料に注入しつつ前記試料からの低周波時間領域信号を記録することとにより得られる低周波時間領域信号のスペクトルプロットから識別される、メモリデバイスと、
(b)電磁信号が前記変換器に印加されたときに発生する活性磁場の領域を定め、中に前記試料が置かれる、電磁変換器と、
(c)メモリデバイスを変換器に動作可能なように接続し、印加信号電力で、系内において系に対し作用物質特異的効果を生じさせるのに十分な期間の間、変換器の活性磁場の領域内に試料を置いた状態で前記信号を前記変換器に印加するための増幅器とを備える装置。
【請求項23】
前記電磁変換器は、コイル巻線及び開放内部を含み、開放内部の中に前記試料が置かれるように適合される請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記電磁変換器は、その間に暴露場を定める1対の電磁コイルを持つヘルムホルツコイルであり、前記暴露は、前記場内に前記試料を配置することを含む請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記電磁変換器は、埋め込み可能コイルを含む請求項22に記載の装置。
【請求項26】
前記メモリデバイスは、前記変換器及び増幅器から離れた場所にあり、前記信号は、前記離れた場所から前記変換器に伝送される請求項22に記載の装置。
【請求項27】
スペクトル分析に基づく複数の作用物質特異的スペクトルピークを特徴とする化学又は生物活性作用物質の低周波時間領域信号であって、
前記作用物質特異的スペクトルピークが、
(i)前記化学的又は生化学的作用物質を磁気遮蔽と電磁遮蔽の両方を持つ容器内に入れ、
(ii)前記時間領域信号のスペクトルプロットに前記識別可能なスペクトルピークを生じさせる有効なノイズレベルのノイズを前記試料に注入しつつ、前記試料からの低周波時間領域信号を記録することとにより得られる低周波時間領域信号のスペクトルプロットから識別される、低周波時間領域信号。
【請求項28】
(i)前記化学的又は生化学的作用物質を磁気遮蔽と電磁遮蔽の両方を持つ容器内に入れる工程と、
(ii)前記時間領域信号のスペクトルプロットに前記識別可能なスペクトルピークを生じさせる有効なノイズレベルのノイズを前記試料に注入しつつ、前記試料からの低周波時間領域信号を記録する工程とにより発生される請求項27に記載の信号。
【請求項29】
工程(ii)において、
(a)所定のノイズ振幅のノイズを前記試料に注入する工程と、
(b)前記注入ノイズに重ね合わされた試料源放射線からなる電磁波時間領域信号を記録する工程と、
(c)選択されたノイズレベル範囲内の複数のノイズレベルのそれぞれにおいて工程(a)及び(b)を繰り返す工程と、
(d)前記時間領域信号のスペクトルプロットを作成することにより生成された前記複数の時間領域信号を分析し、前記スペクトルプロット内の情報に基づいて最適化された作用物質特異的な時間領域信号を識別する工程とにより発生される請求項28に記載の信号。
【請求項30】
スペクトル分析に基づき、2つ又はそれ以上の異なる化合物からの作用物質特異的スペクトルピークを含む請求項27に記載の信号。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図15F】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図25D】
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【図25E】
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【図26】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図28C】
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【図29A】
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【図29B】
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【図29C】
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【図30A】
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【図30B】
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【図30C】
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【図30D】
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【図30E】
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【図31】
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【図32A】
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【図32B】
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【図33】
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【図34】
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【図35A】
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【図35B】
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【公表番号】特表2008−507977(P2008−507977A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523775(P2007−523775)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/026678
【国際公開番号】WO2006/073491
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(507028262)ネイティヴィス、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】