説明

化学的方法

【課題】ある種のキナゾリン誘導体類、又はその製薬学的に許容しうる塩を製造するための化学的方法の提供。
【解決手段】キナゾリン誘導体類の製造に有用なある種の中間体の製造法及び前記中間体を利用したキナゾリン誘導体類の製造法。特に、化合物4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリンの製造に有用な化学的方法及び中間体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種のキナゾリン誘導体類、又はその製薬学的に許容しうる塩を製造するための化学的方法に関する。本発明はまた、キナゾリン誘導体類の製造に有用なある種の中間体の製造法及び前記中間体を利用したキナゾリン誘導体類の製造法にも関する。
【0002】
特に、本発明は、化合物4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリンの製造に有用な化学的方法及び中間体に関する。本化合物は、WO98/13354の広義の開示範囲内に含まれ、またWO01/32651の実施例2a、2b及び2cに例示されている。
【0003】
化合物4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリンは、本明細書中では式I:
【0004】
【化1】

【0005】
によって、及びZD6474(該化合物のコード番号)として記載される。化合物ZD6474はVandetanib及びZactima(登録商標)としても知られている。
【0006】
正常の血管新生は、胚発育、創傷治癒及び女性生殖機能のいくつかの要素を含む様々なプロセスに重要な役割を果たしている。望ましくない又は病的な血管新生は、糖尿病性網膜症、乾癬、がん、関節リウマチ、アテローム、カポジ肉腫及び血管腫などの病的状態と関連している(Fanら,1995,Trends Pharmacol.Sci.16:57−66;Folkman,1995,Nature Medicine 1:27−31)。血管透過性の変化が正常及び病的な生理学的プロセスのどちらにも役割を果たしていると考えられている(Cullinan−Boveら,1993,Endocrinology 133:829−837;Sengerら,1993,Cancer and Metastasis Reviews,12:303−324)。インビトロで内皮細胞増殖促進活性を有するいくつかのポリペプチドが確認されている。例えば、酸性及び塩基性線維芽細胞増殖因子(aFGF&bFGF)及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などである。VEGFの増殖因子活性は、その受容体の発現が限られているため、FGFのそれとは対照的に、比較的内皮細胞に対して特異的である。最近の証拠によれば、VEGFは、正常及び病的血管新生の両方(Jakemanら,1993,Endocrinology,133:848−859;Kolchら,1995,Breast Cancer Research and Treatment,36:139−155)及び血管透過性(Connollyら,1989,J.Biol.Chem.264:20017−20024)の重要な刺激因子であることが示されている。VEGFを抗体で隔離することによるVEGF作用のアンタゴニズムは、腫瘍成長の阻害を起こすことができる(Kimら,1993,Nature 362:841−844)。
【0007】
受容体型チロシンキナーゼ(RTK)は細胞膜をまたぐ生化学的シグナルの伝達に重要である。これらの膜貫通分子は、細胞膜内のセグメントを通して細胞内チロシンキナーゼドメインに接続された細胞外リガンド結合ドメインからなるという特徴を持つ。受容体へのリガンドの結合は、受容体関連チロシンキナーゼの活性を刺激し、それによって受容体及びその他の細胞内分子のチロシン残基のリン酸化が起こる。チロシンリン酸化におけるこれらの変化は、様々な細胞応答をもたらすシグナリングカスケードを開始する。これまでにアミノ酸配列相同性によって定義された少なくとも19の異なるRTKサブファミリーが確認されている。これらのサブファミリーの一つは、現在のところ、fms様チロシンキナーゼ受容体であるFlt−1(VEGFR−1とも呼ばれる)、キナーゼインサートドメイン含有受容体であるKDR(VEGFR−2又はFlk−1とも呼ばれる)及び別のfms様チロシンキナーゼ受容体であるFlt−4を含む。これらの関連RTKの二つ、Flt−1とKDRは、VEGFと高親和性で結合することが示されている(De Vriesら,1992,Science 255:989−991;Termanら,1992,Biochem.Biophys.Res.Comm.1992,187:1579−1586)。異種細胞に発現されたこれらの受容体へのVEGFの結合は、細胞タンパク質のチロシンリン酸化状態及びカルシウムフラックスにおける変化に関連している。
【0008】
VEGFは脈管新生及び血管新生の重要な刺激因子である。このサイトカインは、内皮細胞の増殖、プロテアーゼの発現及び遊走を誘導し、その後細胞を組織化して毛細管を形成することによって血管発芽表現型を誘導する(Keck,P.J.,Hauser,S.D.,Krivi,G.,Sanzo,K.,Warren,T.,Feder,J.,及びConnolly,D.T.,Science(Washington DC),246:1309−1312,1989;Lamoreaux,W.J.,Fitzgerald,M.E.,Reiner,A.,Hasty,K.A.,及びCharles,S.T.,Microvasc.Res.,55:29−42,1998;Pepper,M.S.,Montesano,R.,Mandroita,S.J.,Orci,L.及びVassalli,J.D.,Enzyme Protein,49:138−162,1996)。その上、VEGFは顕著な血管透過性も誘導し(Dvorak,H.F.,Detmar,M.,Claffey,K.P.,Nagy,J.A.,van
de Water,L.,及びSenger,D.R.,(Int.Arch.Allergy Immunol.,107:233−235,1995;Bates,D.O.,Heald,R.I.,Curry,F.E.及びWilliams,B.J.Physiol.(Lond.),533:263−272,2001)、病的血管新生の特徴である高透過性の未熟な血管網の形成を促進する。
【0009】
KDRの活性化だけで、内皮細胞の増殖、遊走及び生存、並びに血管透過性の誘導といったVEGFに対する主な表現型的応答のすべてを促進するのに十分であることが示されている(Meyer,M.,Clauss,M.,Lepple−Wienhues,A.,Waltenberger,J.,Augustin,H.G.,Ziche,M.,Lanz,C.,Buttner,M.,Rziha,H−J.,及びDehio,C.,EMBO J.,18:363−374,1999;Zeng,H.,Sanyal,S.及びMukhopadhyay,D.,J.Biol.Chem.,276:32714−32719,2001;Gille,H.,Kowalski,J.,Li,B.,LeCouter,J.,Moffat,B,Zioncheck,T.F.,Pelletier,N.及びFerrara,N.,J.Biol.Chem.,276:3222−3230,2001)。
【0010】
ZD6474は、VEGF RTKの強力な阻害薬であると同時に、上皮増殖因子(EGF)RTKに対しても多少の活性を有している。ZD6474はVEGFの作用を阻害する。その抗血管新生及び/又は血管透過性作用は興味深い。血管新生及び/又は血管透過性の増大は、様々な病的状態、例えばがん(白血病、多発性骨髄腫及びリンパ腫を含む)、糖尿病、乾癬、関節リウマチ、カポジ肉腫、血管腫、急性及び慢性腎症、アテローム、動脈再狭窄、自己免疫疾患、急性炎症、過剰瘢痕形成及び接着、リンパ水腫、子宮内膜症、機能不全性子宮出血、及び加齢性黄斑変性症などの網膜血管増殖を伴う眼疾患に存在する。ZD6474は、1日1回の経口投与後、一連のモデルで広域の抗腫瘍活性を引き出すことが示されている(Wedge S.R.,Ogilvie D.J.,Dukes Mら,Proc.Am.Assoc.Canc.Res.2001;42:abstract 3126)。
【0011】
WO98/13354に4−アニリノキナゾリン化合物のいくつかの可能な経路が開示されている。しかしながら、WO98/13354には式Iの化合物の製造法の具体的な開示はない。
【0012】
WO98/10767にも4−アニリノキナゾリン化合物のいくつかの可能な経路が開示されている。しかしながら、WO98/10767にも式Iの化合物の製造法の具体的な開示はない。
【0013】
WO01/32651には式Iの化合物製造のいくつかの別の経路が開示されている。
WO01/32651の実施例2aに開示されている経路は、テトラヒドロフランとメタノールの溶媒混合物中で、化合物4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(ピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリンをホルムアルデヒド水溶液、次いでシアノ水素化ホウ素ナトリウムと反応させることを含む。生成物はクロマトグラフィーによって精製され、遊離塩基として単離される。次に、該遊離塩基は、塩化メチレンとメタノールの溶媒混合物中で塩化水素との反応によって塩酸塩に変換される。
【0014】
WO01/32651の実施例2bに開示されている経路は、化合物4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−(tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリンを、ギ酸中でホルムアルデヒド水溶液と、次いで水中で水酸化ナトリウムと反応させ、そして生成物を酢酸エチルで抽出することを含む。生成物は遊離塩基の形態である。
【0015】
WO01/32651の実施例2cに開示されている経路は、イソプロパノール中で、化合物4−クロロ−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリンを4−ブロモ−2−フルオロアニリン及び塩化水素と反応させることを含む。単離された生成物は塩酸塩の形態である。NMRの実験で、該塩酸塩はジメチルスルホキシドに溶解され、固体炭酸カリウムの添加によって遊離塩基に変換される。次に遊離塩基はトリフルオロ酢酸の添加によってトリフルオロ酢酸塩に変換される。別の実験で、該塩酸塩を塩化メチレン中に懸濁され、飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄されて遊離塩基となる。
【0016】
WO01/32651には、実施例2a、2b及び2cで使用される出発物質、すなわち4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(ピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン、4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−(tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン及び4−クロロ−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリンの製造経路も開示されている。これらの経路のいくつかについては以下でさらに詳細に解説する。
【0017】
WO01/32651に記載されているZD6474(塩酸塩又は遊離塩基として)の製造経路は、ZD6474を含む併用療法に関する文献、例えばWO03/039551、WO2004/014383、WO2004/014426、WO2004/032937、WO2004/071397及びWO2005/004870にも記載され及び/又は参照されている。
【0018】
式Iの化合物を製造するための既存の経路は、比較的少量の化合物の合成の場合、満足のいくものである。しかしながら、それらの経路は収束(convergent)合成というより線形合成を含むので、複数の精製工程の使用及び相当数の中間体の単離を必要とする。従って、合成の総収率は高くない。そこで、大量の式Iの化合物の製造に使用するのに適切な、より効率的な該化合物の合成法が求められている。また、式Iの化合物の合成に有用な中間体化合物を大量に製造するのに使用するためのより効率的な合成法も求められている。
【0019】
好ましくは、新規合成法は、単離を要する中間体化合物の数を最小限にすべきであり、費用及び時間のかかる精製手順を含むべきでない。さらに、新規合成法は、特に医薬品の高純度要件を満たす高品質の式Iの化合物を形成するために、常に高品質の化合物を形成するものでなくてはならない。また新規合成法は、製造プラントで安全に使用できる、そして環境ガイドラインにも適合する操作手順及び試薬を使用すべきである。
【0020】
本発明に従って、我々は今回ZD6474、すなわち式Iの化合物を製造するための改良法を提供する。
本発明に従って、ZD6474の製造に使用できる主要中間体化合物の製造法も提供する。
【0021】
新規方法は、化合物を高品質及び高収率で大規模に製造できるという利点を有する。該方法は、単離しなければならない中間体化合物の数の大幅削減を可能にし、一般に従来経路よりもより収束的である。このような変化は時間及び費用に著しい利益を提供する。
【0022】
誤解を避けるために言うと、“ZD6474”の用語は以後特に明記しない限りZD6474の遊離塩基を意味する。
ZD6474の製造に使用できる主要中間体は式IIa:
【0023】
【化2】

【0024】
[式中、Rは適切なスルホン酸エステル、例えばメシレート、エシレート、ベシレート又はトシレートである]の化合物である。
更なる態様において、式IIaの化合物は、式II:
【0025】
【化3】

【0026】
の化合物である1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−(4−メチルフェニルスルホニルオキシメチル)ピペリジンである。
WO01/32651の実施例2に式IIの化合物の製造経路が開示されている。該経路は、酢酸エチル溶媒中でエチル4−ピペリジンカルボキシレートをジ−tert−ブチルジカルボネートと反応させて、エチル4−(1−(tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン)カルボキシレートを製造し、それを単離することを含む。次に、エチル4−(1−(tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン)カルボキシレートをテトラヒドロフラン中で水素化リチウムアルミニウムと反応させて1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ヒドロキシメチルピペリジンを得、これを単離する。次に、1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ヒドロキシメチルピペリジンを、tert−ブチルメチルエーテル溶媒中で1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン及びトルエンスルホニルクロリドと反応させて式IIの化合物を得る。
【0027】
EP−A−0317997も式IIの化合物の製造経路を開示している。該経路は、4−カルボキシピペリジン(イソニペコチン酸としても知られる)を水溶媒中で炭酸ナトリウム及びジ−tert−ブチルジカルボネートと反応させて4−カルボキシ−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルを製造し、それを単離することを含む。次に、4−カルボキシ−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルをテトラヒドロフラン溶媒中でボランと反応させて式IIの化合物を得る。
【0028】
WO94/27965にも式IIの化合物の製造経路が開示されている。該経路は、4−ヒドロキシメチルピペリジンをテトラヒドロフラン溶媒中でジ−tert−ブチルジカルボネートと反応させてtert−ブチル4−(ヒドロキシメチル)ピペリジン−1−カルボキシレートを製造し、これを油として単離する。次に、1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ヒドロキシメチルピペリジンをトルエンスルホニルクロリド及びピリジンと反応させて式IIの化合物を得る。
【0029】
先行技術文献に開示されている式IIの化合物の製造経路は、比較的少量の化合物の合成の場合、満足のいくものである。しかしながら、それらはいずれも各中間体の単離を必要としているので、多数の単離及び/又は精製工程を含む。これは、使用された小規模では満足な式IIの化合物の総収率をもたらす。しかしながら、先行技術文献に開示されている経路は製造規模で使用するのには適切でない。なぜならば、該経路は多数の単離及び/又は精製工程を含むので、製造規模では効率的に実施することができない。特に、先行技術文献に開示されている経路は高純度の医薬品の製造に使用するのには不適切である。
【発明の概要】
【0030】
従って、大量の式IIの化合物の製造に使用するのに適切な、該化合物のより効率的な合成法が求められている。好ましくは、新規合成法は、費用及び時間のかかる単離及び/又は精製手順を含むべきでない。従って、新規合成法は、必要とされる単離及び/又は精製手順の数を削減すべきで、それによって製造の費用と時間が削減される。好ましくは、新規合成法は、プロセス全体で使用される溶媒数を最小限にすべきである。それによって環境パフォーマンスが改良され、溶媒回収の機会も提供される。好ましくは、新規合成法は、式IIの化合物の確固とした、信頼できる単離法も提供すべきであり、例えば医薬品の製造に出発物質を導入する際の規制要件を満たすために、一貫して高品質の式IIの化合物を提供すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ZD6474無水物のX線粉末回折パターンを示す図である。横軸に2シータ値をプロットし、縦軸に相対ライン強度(カウント)をプロットしてある。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の第一の側面に従って、式IIaの化合物を、式III:
【0033】
【化4】

【0034】
の(C1−C6)アルキル−4−ピペリジンカルボキシレート化合物から製造するための方法を提供する。該方法は、
(a)式IIIの(C1−C6)アルキル−4−ピペリジンカルボキシレート化合物を、トルエン又はキシレンの存在下でジ−tert−ブチルジカルボネートと反応させて、トルエン又はキシレンと、tert−ブタノールと、式IV:
【0035】
【化5】

【0036】
の化合物とを含む第一の混合物を形成させる工程と;
(b)tert−ブタノールを第一の混合物から実質的に除去する工程と;
(c)式IVの化合物をトルエン又はキシレンの存在下でその場で適切な還元剤と反応させて、トルエンと、アルコール副産物を含む還元副産物と、式V:
【0037】
【化6】

【0038】
の化合物とを含む第二の混合物を形成させる工程と;
(d)アルコール副産物を第二の混合物から実質的に除去する工程と;そして
(e)式Vの化合物を適切な塩基及びトルエンの存在下で、スルホン酸エステルを形成させるためにその場で適切なスルホン化剤と反応させて式IIa:
【0039】
【化7】

【0040】
[式中、Rは適切なスルホン酸エステル、例えばメシレート、エシレート、ベシレート又はトシレートである]の化合物を形成する工程とを含む。一態様において、スルホン化剤は塩化トシルである。
【0041】
誤解を避けるために言うと、‘その場’という用語は、反応物をその前のプロセス工程から単離せずに反応が行われたことを意味する。
本発明の第一の側面の方法は、式IIaの化合物を高品質及び高収率で大規模に製造できるという利点を有する。典型的には、本発明の第一の側面の方法の各工程は、95%を超える収率で進行する。
【0042】
本発明の第一の側面の方法のすべての工程は溶媒としてトルエン又はキシレン中で実施される。別の態様では、本発明の第一の側面のすべての工程はトルエン中で実施される。このことは、方法を、式IV及びVの中間体化合物の単離及び/又は精製なしに連続法として実施することを可能にする。これによって式IIaの化合物を大規模製造するための時間と費用が著しく削減される。トルエン又はキシレンのような単一溶媒の使用は、溶媒のリサイクルも可能にするので、方法の効率を増大し環境上の利益も提供する。溶媒としてトルエン又はキシレンを使用することは、反応性副産物(例えばアルコール)の、例えば蒸留による効率的で便利な除去も可能にする。このような反応性副産物の存在は、適当な時期に除去されなければ式IIaの化合物中に不純物をもたらすことになる。
【0043】
さらに、本発明の第一の側面の方法でトルエン又はキシレンを溶媒として使用することは、式IIaの化合物の結晶化による便利な単離も可能にする。式IIaの化合物は、例えば反応混合物から直接結晶化によって更なる精製を必要とせずとも99.5%を超える純度で単離できる。このことは、例えば、式IIaの化合物を、医薬品、例えば式Iの化合物の製造に後段階で導入する場合に好都合である。なぜならば、医薬品に不純物が導入される危険性が最小限化されるからである。
【0044】
方法の工程(a)は式IIIの(C1−C6)アルキル−4−ピペリジンカルボキシレート化合物、特に式IIIの(C1−C4)アルキル−4−ピペリジンカルボキシレート化合物を使用する。特に、工程(a)で使用されうる適切な式IIIの(C1−C6)アルキル−4−ピペリジンカルボキシレート化合物は、例えばエチル4−ピペリジンカルボキシレートであり得る。エチル4−ピペリジンカルボキシレートの別名はイソニペコチン酸エチルである。
【0045】
工程(a)の反応は、例えば0〜45℃の範囲、好適には15〜35℃の範囲、更に好適には25〜30℃の範囲の温度で実施される。
方法の工程(a)で使用される出発物質の式IIIの(C1−C6)アルキル−4−ピペリジンカルボキシレート化合物及びジ−tert−ブチルジカルボネートは、市販されているか又は従来法を用いて製造できる。例えば、式IIIの(C1−C6)アルキル−4−ピペリジンカルボキシレート化合物は、日本特許公開番号JP03002162 A2に記載のようにして製造できる。
【0046】
工程(a)で形成されるtert−ブタノールは式IIIの(C1−C6)アルキル−4−ピペリジンカルボキシレート化合物とジ−tert−ブチルジカルボネート間の反応の副産物である。本発明の方法では、この副産物は例えば工程(b)での蒸留によって反応混合物から容易に、好適には実質的に除去される。
【0047】
反応混合物から例えば工程(b)での蒸留によってtert−ブタノール副産物を実質的に除去することは好都合である。なぜならば、除去されない何らかのtert−ブタノール副産物は工程(c)で還元剤と反応する可能性があり、それによって式IVの化合物との所望反応に利用できる還元剤の量が少なくなるからである。従って、工程(b)でtert−ブタノール副産物を除去することは、方法の工程(c)での正確な化学量論の試薬の使用、従って該工程でのより効率的な反応を可能にする。ひいては、工程(c)で高収率及び純度の式Vの化合物が提供される。
【0048】
“実質的に除去される”という用語は、工程(a)で形成されたtert−ブタノール副産物の少なくとも85%が例えば蒸留によって除去されることを意味する。典型的には、蒸留は102〜112℃の範囲の内部温度が達成されるまで実施される。工程(b)での蒸留は、周囲圧又は部分減圧のいずれかで都合よく実施される。
【0049】
工程(c)で使用するための適切な還元剤は、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化リチウムアルミニウム及び水素化ジイソブチルアルミニウムなどである。とりわけ、工程(c)で使用される還元剤は水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムである。
【0050】
工程(c)の反応は、例えば20〜55℃の範囲、好適には30〜50℃の範囲、更に好適には35〜45℃の範囲の温度で実施される。
当業者に理解される通り、工程(c)の反応は、通常式Vの所望化合物のほかに還元副産物ももたらす。還元副産物はアルコール副産物を含む。アルコール副産物は、式IVの化合物のエステル基の−O−(C1−C6)アルキル部分に由来しているが、還元剤にも由来しうる。例えば、式IVの化合物がエチル4−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン)カルボキシレートで、工程(c)で使用される還元剤が水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムの場合、典型的な還元副産物は、アルミニウム塩及びアルコール副産物、例えばエタノール及び2−メトキシエタノールを含む。該アルコール副産物は、工程(d)で反応混合物から例えば蒸留によって容易に、好適には実質的に除去される。
【0051】
工程(d)でアルコール副産物を実質的に除去することは好都合である。なぜならば、除去されない何らかのそのような副産物は工程(e)でスルホン化剤と反応する可能性があり、それによって所望生成物を汚染しかねない不純物が生じ、式Vの化合物との所望反応に利用できるスルホン化剤の量も少なくなるからである。従って、アルコール副産物を除去することは、方法の工程(e)での正確な化学量論の試薬の使用、従って該工程でのより効率的な反応を可能にする。ひいては、工程(e)で高収率及び高純度の式IIの化合物が提供される。
【0052】
“実質的に除去される”という用語は、工程(c)で形成されたアルコール副産物の少なくとも98%が例えば蒸留によって除去されることを意味する。典型的には、蒸留は102℃〜112℃の範囲の内部温度が達成されるまで実施される。工程(d)での蒸留は、周囲圧又は部分減圧のいずれかで都合よく実施される。
【0053】
工程(d)での蒸留は、典型的には存在する何らかの水も実質的に除去する。このことも、方法の工程(e)での正確な化学量論の試薬の使用を可能にする。なぜならば、除去されない何らかの水は工程(e)でスルホン化剤と反応する可能性があり、それによって式Vの化合物との所望反応に利用できるスルホン化剤の量が少なくなるからである。“実質的に除去される”という用語は、蒸留後20mol%未満の水しか残っていないことを意味する。
【0054】
当業者に理解される通り、工程(c)で反応混合物をクエンチングし、工程(e)での反応を実施する前に存在するあらゆる未反応の還元剤を除去することが通常必要である。典型的には、該クエンチング工程で上記還元副産物の一部、例えばアルミニウム塩及びすべてではないが一部のアルコール副産物も除去される。適切なクエンチング剤は、一般に文献に記載の及び/又は当業者に公知の任意の薬剤から選ぶことができる。例えば、工程(c)で使用される還元剤が水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムの場合、クエンチング剤は典型的には酒石酸カリウムナトリウム(ロッシェル塩としても知られる)の水溶液でありうる。典型的には、次に、得られた水性相(クエンチングされた還元剤を含有する)を分離によって除去する。クエンチング工程は、工程(d)の蒸留の前に実施する。
【0055】
工程(e)で使用するための適切な塩基は、第三級アミン塩基、例えばトリエチレンジアミンである。
工程(e)の反応は、例えば15〜45℃の範囲、更に好適には25〜35℃の範囲の温度で実施される。
【0056】
当業者に理解される通り、工程(e)で反応混合物をクエンチングして存在するあらゆる未反応のスルホン化剤を除去することが通常必要である。適切なクエンチング剤は、一般に文献に記載の及び/又は当業者に公知の任意の薬剤から選ぶことができる。例えば、適切なクエンチング剤は水酸化ナトリウム又は炭酸カリウムのような塩基でありうる。
【0057】
一側面において、式IIの化合物の製造法は、式IIの化合物を単離及び/又は精製する工程(f)をさらに含んでいてもよい。工程(f)は、文献に記載の及び/又は当業者に公知の、所望生成物を単離するための任意の適切な工程又は手順を含みうる。有用と思われる特別の工程は高品質及び高純度の生成物を提供するものであろう。例えば、工程(f)は、式IIの化合物を水及び/又はクエン酸水溶液で洗浄する工程を含みうる。工程(f)は、例えば、適切な溶媒系を用いる結晶化も含みうる。適切な溶媒系の例はトルエン及びイソヘキサンを含む溶媒系で、これは式IIの化合物を高純度、典型的には98%を超える純度、好適には99.5%を超える純度で、そしてまた高収率、典型的には80%を超える収率、好適には85%を超える収率で提供する。当業者に理解される通り、工程(f)は、必要であれば、生成物の物理的形状を改良するために式IIの化合物の温度サイクル(“オストワルド熟成”とも呼ぶ)の工程を含んでいてもよい。
【0058】
ZD6474の製造に使用できる別の主要中間体は、式VI:
【0059】
【化8】

【0060】
[式中、Rは酸に不安定な保護基、例えばベンジル、置換ベンジル、tert−ブチル、アリル又はメトキシエトキシメチルである]の化合物である、7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンの保護誘導体である。
【0061】
WO01/32651の実施例2及びWO97/32856の実施例24にそれぞれ、Rがベンジルである式VIの化合物の塩酸塩の製造経路が開示されている。該経路は、2−プロパノール溶媒中で7−ベンジルオキシ−4−クロロ−6−メトキシキナゾリンの塩酸塩を4−ブロモ−2−フルオロアニリンと反応させて式VIの化合物の塩酸塩を得、それを単離することを含む。WO01/32651の実施例2に、7−ベンジルオキシ−4−クロロ−6−メトキシキナゾリンの塩酸塩はWO97/22596の実施例1に従って製造すると記載されている。WO97/22596の実施例1で7−ベンジルオキシ−4−クロロ−6−メトキシキナゾリンの塩酸塩は、N,N−ジメチルホルムアミド溶媒中で7−ベンジルオキシ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オンと塩化チオニルとの反応によって製造されている。7−ベンジルオキシ−4−クロロ−6−メトキシキナゾリンの塩酸塩の同じ製造法がWO97/32856の実施例4に開示されている。
【0062】
WO98/10767に、6,7−ジ置換4−アニリノキナゾリン化合物の製造経路が開示されている。該経路は、6,7−ジ置換キナゾリノン化合物を溶媒の不存在下で塩素化剤及び触媒と、又は捕捉剤の存在下で塩素化剤と反応させて6,7−ジ置換4−クロロキナゾリン化合物を製造することを含む。次に、6,7−ジ置換4−クロロキナゾリン化合物を置換アニリン化合物と、所望により適切な塩基の存在下で反応させて、6,7−ジ置換4−アニリノキナゾリン化合物の塩酸塩を得る。次にこれを遊離塩基に変換してもよい。WO98/10767には7−ベンジルオキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン又はその製造法に関する開示はない。
【0063】
先行技術文献に開示されている式VIの化合物の製造経路は、比較的少量の化合物の合成の場合、満足のいくものである。しかしながら、それらはいずれも中間体化合物の単離及び/又は精製を必要とする。このため、式VIの化合物の総収率は満足できるものではあるが高くない。
【0064】
従って、大量の式VIの化合物の製造に使用するのに適切な、該化合物のより効率的な合成法が求められている。好ましくは、新規合成法は、費用及び時間のかかる単離及び/又は精製手順を含まないのがよい。従って、新規合成法は、必要とされる単離及び/又は精製手順の数を削減すべきで、それによって製造の費用と時間が削減される。新規合成法はまた、式VIの化合物を高純度及び高収率で、結晶形で効果的に単離することも可能にすべきである。結晶形であれば良好なろ過特性を有するからである。
【0065】
本発明の第二の側面に従って、式VI:
【0066】
【化9】

【0067】
[式中、Rは酸に不安定な保護基である]の化合物を、式VII:
【0068】
【化10】

【0069】
の化合物から製造する方法を提供する。該方法は、
(g)式VIIの化合物を適切な塩基及び適切な溶媒の存在下で適切な塩素化剤と反応させる工程において、反応を、
(g−1)溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物を溶媒中の塩素化剤の混合物に60〜110℃、好適には60〜80℃の範囲の温度で約60分かけて加えるか;又は
(g−2)塩素化剤を溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物に周囲温度で約15分かけて加えた後、反応混合物を約90分かけて70〜90℃の範囲の温度に加熱し、該反応混合物を該温度で約1時間撹拌するか;又は
(g−3)塩素化剤を溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物に60〜110℃、好適には70〜90℃の範囲の温度で約15分かけて加えることによって実施して、式VIII:
【0070】
【化11】

【0071】
の化合物を形成させる工程と;そして
(h)式VIIIの化合物を4−ブロモ−2−フルオロアニリンと、工程(g)で使用された
溶媒の存在下、その場で反応させて式VIの化合物の塩酸塩を形成させる工程とを含み;
その後、必要であれば、塩酸塩の形態で得られた式VIの化合物は遊離塩基又は他の塩の形態に変換することができる。
【0072】
‘酸に不安定な保護基’という用語は、酸性条件下で容易に除去される基を意味する。保護のための適切な方法は当業者に公知のものである。従来の保護基を標準的実践に従って使用することができる(例えばT.W.Green,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,1991参照)。Rにおける適切な保護基は、ベンジル、置換ベンジル(例えばC1−4アルコキシベンジル及びC1−4アルキルベンジル)、tert−ブチル、1,1−ジメチル−1−エチルメチル、アリル、置換アリル(例えばC1−4アルキルアリル)又はメトキシエトキシメチルなどである。別の態様においてRはベンジルである。
【0073】
本発明の第二の側面の方法は、式VIの化合物を高純度及び高収率で大規模に製造できるという利点がある。典型的には、本発明の第二の側面の方法の各工程は90%を超える収率で進行する。
【0074】
工程(g)の適切な溶媒は、アリールアルキルエーテル、例えばアニソール、ジアルキルエーテル、例えば1,2−ジメチルエーテル、ハロ置換ベンゼン、例えばクロロベンゼンもしくはトリフルオロトルエン、又はアルキル置換ベンゼン、例えばキシレン、エチルベンゼンもしくはトルエンから選ばれる。本発明の一態様において工程(g)の溶媒はアニソール又はトルエンである。本発明の別の態様において工程(g)の溶媒はトルエンである。
【0075】
工程(g)及び(h)はどちらも同じ溶媒中で実施される。該溶媒は上記の適切な溶媒から選ばれる。このことは、方法を式VIIIの中間体化合物の単離及び/又は精製なしに連続法として実施することを可能にする。これによって式VIの化合物を大規模に製造する時間と費用が著しく削減される。さらに、単一溶媒の使用は溶媒のリサイクルも可能にしうるので、方法の効率を増大し環境上の利益も提供する。反応溶媒としてトルエン又はアニソールを使用することは、これらの溶媒が、前述のように式VIIの化合物の二量体化によって誘導されうる副産物の形成を最小限化するので好都合である。溶媒の選択は、式VIの化合物の容易で便利な単離も可能にする。例えば、反応混合物を周囲温度に冷却すると、式VIの化合物は通常固体を形成するので、該固体は任意の従来法によって回収することができる。
【0076】
工程(g)での試薬の添加方式(すなわち、工程(g−1)、(g−2)及び(g−3)に記載の通り)は、該工程での副産物/不純物の形成を最小限化するので好都合である。典型的には、何らかのそのような副産物/不純物は、式VIIの化合物の二量体化によって主に形成される。副産物/不純物の形成を削減することは、工程(g)で製造される式VIIIの中間体化合物を単離及び/又は精製せずに工程(h)で使用することを可能にする。工程(g)での副産物/不純物の形成の削減は、方法の工程(h)での正確な化学量論の試薬の使用、従って該工程でのより効率的な反応も可能にする。ひいては、工程(h)で高収率及び高純度の式VIの化合物が提供される。
【0077】
本発明の一側面において、工程(g)及び(h)はどちらも溶媒としてトルエン中で実施される。本発明の別の側面において、工程(g)及び(h)はどちらも溶媒としてアニソール中で実施される。本発明のさらに別の側面において、工程(g)及び(h)はトルエンとアニソールの溶媒混合物中で実施される。
【0078】
工程(g)で使用するための適切な塩素化剤はオキシ塩化リンである。典型的には、工程(g)では式VIIの化合物に対してモル過剰の塩素化剤が使用される。例えば、1.3〜2.0の範囲、好適には1.7〜1.8の範囲のモル過剰が使用されうる。
【0079】
工程(g)で使用するための適切な塩基は、トリエチルアミン及びN,N−ジイソプロピルエチルアミンから選ばれる塩基である。特に、塩基はN,N−ジイソプロピルエチルアミンである。N,N−ジイソプロピルエチルアミンを工程(g)で塩基として使用することは、該塩基が、前述のように式VIIの化合物の二量体化によって誘導されうる副産物の形成を最小限化するので好都合である(例えば工程(g)で塩基としてトリエチルアミンを使用する場合と比べて)。塩化物源を反応混合物に添加することも(例えばトリエチルアミン塩酸塩)、そのような副産物の形成を削減できる。
【0080】
工程(g−1)において、反応は60〜110℃、好適には60〜80℃の範囲、好適には65〜80℃の範囲、更に好適には70〜75℃の範囲の温度で実施される。
工程(g−2)において、試薬の添加は周囲温度で実施される。“周囲温度”という用語は、10〜30℃の範囲の温度、特に15〜25℃の範囲の温度、とりわけ約20℃の温度を意味する。次に、反応混合物を70〜90℃の範囲、好適には75〜85℃の範囲、更に好適には80〜85℃の範囲の温度に加熱する。
【0081】
工程(g−3)において、反応は60〜110℃、好適には70〜90℃の範囲、好適には75〜85℃の範囲、更に好適には80〜85℃の範囲の温度で実施される。
工程(g)において、“約〜”という用語が“約60分”、“約15分”、“約90分”及び“約1時間”という表現に使用されて、引用された時間を絶対値と解釈すべきでないことを示している。なぜならば、当業者に理解される通り、時間はわずかに変動しうるからである。例えば、引用されている時間は、工程(g)で引用された値から±50%、特に±15%、特に±10%変動しうる。
【0082】
当業者に理解される通り、工程(g)で、適切な溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物は、典型的には懸濁液の形態を取る。トルエン及びアニソールから選ばれる溶媒中の塩素化剤の混合物は典型的には溶液の形態を取る。しかしながら、いくつかの要因によってこれらの形態に変動が起きることがある。そのような要因とは、例えば、溶媒に添加される各試薬の量、工程(g)で使用するために選ばれる特別の塩基又は塩素化剤及び/又は工程(g)で使用するために選ばれる温度などである。
【0083】
工程(h)の反応は、60〜85℃の範囲、好適には65〜80℃の範囲、更に好適には70〜75℃の範囲の温度で実施される。
本発明の一側面において、方法の工程(h)の後、式VIの化合物は別の方法でそのまま使用される(例えば、以下に記載する7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンの製造法で)。本発明の別の側面において、方法の工程(h)の後、式VIの化合物は、例えば貯蔵、取扱い及び/又は更なる反応の前に単離及び/又は精製される。従って、本発明の一側面において、式VIの化合物の製造法は、式VIの化合物を単離する工程(i)をさらに含む。工程(i)は、所望生成物を単離するための、文献に記載の及び/又は当業者に公知の任意の適切な工程又は手順を含みうる。有用と思われる特別の工程は高品質及び高純度の生成物を提供するものであろう。反応混合物を周囲温度に冷却すると、その温度で式VIの化合物は通常固体を形成する。このようにして形成された固体は、任意の従来法、例えばろ過によって回収できる。
【0084】
式VIIの化合物及び4−ブロモ−2−フルオロアニリンの両出発物質とも、市販されている又は従来法を用いて製造できる。例えば、Rがベンジルである式VIIの化合物は、以下の実施例2の出発物質の製造に記載されているようにして製造できる。
【0085】
ZD6474の製造に使用できる別の主要中間体は、式IX:
【0086】
【化12】

【0087】
の化合物である7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンである。
WO01/32651の実施例2及びWO97/32856の実施例24にそれぞれ、式IXの化合物の塩酸塩の製造経路が開示されている。該経路は、7−ベンジルオキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンの塩酸塩をトリフルオロ酢酸と反応させて式IXの化合物を得ることを含む。
【0088】
前述のように、WO98/10767は6,7−ジ置換4−アニリノキナゾリン化合物の製造経路を開示している。WO98/10767には7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン又はその製造法に関する開示はない。
【0089】
先行技術文献に開示されている式IXの化合物の製造経路は、比較的少量の化合物の合成の場合、満足のいくものである。しかしながら、それらはいずれも中間体化合物の単離及び/又は精製を必要とする。このため、式IXの化合物の総収率は満足できるものではあるが高くない。
【0090】
従って、大量の式IXの化合物の製造に使用するのに適切な、該化合物のより効率的な合成法が求められている。好ましくは、新規合成法は、費用及び時間のかかる精製手順を含まないのがよい。従って、新規合成法は、必要とされる単離及び/又は精製手順の数を削減すべきで、それによって製造の費用と時間が削減される。好ましくは、新規合成法は方法全体で使用される溶媒の数も最小限にすべきである。それによって環境パフォーマンスが改良され、溶媒回収の機会も提供される。新規合成法はまた、式IXの化合物を、良好なろ過特性を有する結晶形で、そしてまた高純度及び高収率で効果的に結晶化することも可能にすべきである。
【0091】
本発明の第三の側面に従って、式IX:
【0092】
【化13】

【0093】
の化合物である7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンを、式VII:
【0094】
【化14】

【0095】
の化合物から製造する方法を提供する。該方法は、
(g)式VIIの化合物を適切な塩基及び適切な溶媒の存在下で適切な塩素化剤と反応させる工程であって、反応を、
(g−1)溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物を溶媒中の塩素化剤の混合物に60〜110℃、好適には60〜80℃の範囲の温度で約60分かけて加えるか;又は
(g−2)塩素化剤を溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物に周囲温度で約15分かけて加えた後、反応混合物を約90分かけて70〜90℃の範囲の温度に加熱し、該反応混合物を該温度で約1時間撹拌するか;又は
(g−3)塩素化剤を溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物に60〜110℃、好適には70〜90℃の範囲の温度で約15分かけて加えることによって実施して、式VIII:
【0096】
【化15】

【0097】
の化合物を形成させる工程と;
(h)式VIIIの化合物を4−ブロモ−2−フルオロアニリンと、工程(g)で使用された溶媒の存在下、その場で反応させて式VI:
【0098】
【化16】

【0099】
の化合物を形成させる工程と;そして
(j)式VIの化合物から、工程(g)及び(h)で使用された溶媒の存在下で、Rをその場で除去して式IXの化合物又はその塩を形成させる工程とを含み;
その後、必要であれば、遊離塩基の形態で得られた式IXの化合物は塩形に変換することができ、塩の形態で得られた式IXの化合物は遊離塩基又は他の塩の形態に変換することができる。
【0100】
本発明の第三の側面の方法は、式IXの化合物を高純度及び高収率で大規模に製造できるという利点がある。典型的には、本発明の第三の側面の方法の各工程は少なくとも95%の収率で進行する。典型的には、本発明の第三の側面の方法は、式IXの化合物を少なくとも85%の収率で製造する。
【0101】
工程(g)、(h)及び(j)はすべて同じ溶媒中で実施され、該溶媒は、アリールアルキルエーテル、例えばアニソール、ジアルキルエーテル、例えば1,2−ジメチルエーテル、ハロ置換ベンゼン、例えばクロロベンゼンもしくはトリフルオロトルエン、又はアルキル置換ベンゼン、例えばキシレン、エチルベンゼンもしくはトルエンから選ばれる。本発明の一態様において工程(g)、(h)及び(j)の溶媒はアニソール又はトルエンである。本発明の別の態様において工程(g)、(h)及び(j)の溶媒はトルエンである。このことは、方法を式VIII及びVIの中間体化合物の単離及び/又は精製なしに連続法として実施することを可能にする。これによって式IXの化合物を大規模に製造する時間と費用が著しく削減される。単一溶媒の使用は溶媒のリサイクルも可能にしうるので、方法の効率を増大し環境上の利益も提供する。反応溶媒としてこれらの溶媒を使用することは、これらの溶媒が、前述のように式VIIの化合物の二量体化によって誘導されうる副産物
の形成を最小限化するので好都合である。溶媒の選択は、式VIの化合物の容易で便利な単離も可能にする。例えば、反応混合物を周囲温度に冷却すると、式VIの化合物は通常固体を形成するので、該固体は任意の従来法によって回収することができる。
【0102】
前述のように、工程(g)での試薬の添加方式(すなわち、工程(g−1)、(g−2)及び(g−3)に記載の通り)は、該工程での副産物/不純物の形成を最小限化するので好都合である(該副産物/不純物は、典型的には式VIIの化合物の二量体化によって主に形成される)。このことは、工程(g)で製造される式VIIIの中間体化合物を単離及び/又は精製せずに工程(h)で使用することを可能にする。工程(g)での副産物/不純物の形成の削減は、方法の工程(h)での正確な化学量論の試薬の使用、従って該工程でのより効率的な反応も可能にする。ひいては、工程(h)で高収率及び高純度の式VIの化合物が提供される。
【0103】
本発明の一側面において、工程(g)、(h)及び(j)はすべて溶媒としてトルエン中で実施される。Rがベンジルの場合に工程(j)でトルエンを溶媒として使用することは、トルエンが脱保護反応中に生成するベンジルカチオンを捕獲するように働くので好都合である。このことは、方法の工程(j)で形成される可能性のあるベンジル化不純物を削減するのに役立つ。トルエンはまた、化合物IXのより堅牢(robust)な結晶化と、優れたろ過特性を有する結晶形の化合物IXも提供する。
【0104】
本発明の別の側面において、工程(g)、(h)及び(j)はすべて、アニソール、クロロベンゼン、トリフルオロトルエン、キシレン又はエチルベンゼンのような単一溶媒中で実施される。
【0105】
工程(g)で使用するための適切な塩素化剤はオキシ塩化リンである。典型的には、工程(g)では式VIIの化合物に対してモル過剰の塩素化剤が使用される。例えば、1.3〜2.0の範囲、好適には1.7〜1.8の範囲のモル過剰が使用されうる。
【0106】
工程(g)で使用するための適切な塩基は、トリエチルアミン、トリプロピルアミン及びN,N−ジイソプロピルエチルアミンから選ばれる塩基である。特に、塩基はトリエチルアミンである。トリエチルアミンを工程(g)で塩基として使用することは、該塩基が化合物IXのより堅牢な結晶化と、優れたろ過特性を有する結晶形の化合物IXを可能にするので好都合である。
【0107】
工程(g−1)において、反応は60〜110℃、好適には60〜80℃の範囲、好適には65〜75℃の範囲、更に好適には70〜75℃の範囲の温度で実施される。
工程(g−2)において、試薬の添加は周囲温度で実施される。“周囲温度”という用語は、10〜30℃の範囲の温度、特に15〜25℃の範囲の温度、とりわけ約20℃の温度を意味する。次に、反応混合物を70〜90℃の範囲、好適には75〜85℃の範囲、更に好適には80〜85℃の範囲の温度に加熱する。
【0108】
工程(g−3)において、反応は60〜110℃、好適には70〜90℃の範囲、好適には75〜85℃の範囲、更に好適には80〜85℃の範囲の温度で実施される。
工程(g)において、“約〜”という用語が“約60分”、“約15分”、“約90分”及び“約1時間”という表現に使用されて、引用された時間を絶対値と解釈すべきでないことを示している。なぜならば、当業者に理解される通り、時間はわずかに変動しうるからである。例えば、引用されている時間は、工程(g)で引用された値から±50%、特に±15%、特に±10%変動しうる。
【0109】
当業者に理解される通り、工程(g)で、適切な溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物は、典型的には懸濁液の形態を取る。トルエン及びアニソールから選ばれる溶媒中の塩素化剤の混合物は典型的には溶液の形態を取る。しかしながら、いくつかの要因によってこれらの形態に変動が起きることがある。そのような要因とは、例えば、溶媒に添加される各試薬の量及び工程(g)で使用するために選ばれる特別の塩基又は塩素化剤などである。
【0110】
工程(h)の反応は、60〜90℃、好適には60〜85℃の範囲、好適には65〜80℃の範囲、更に好適には70〜75℃の範囲の温度で実施される。
本発明のこの側面において、工程(h)で式VIの化合物の製造後、該化合物は式IXの化合物を製造するための工程(j)でそのまま使用される。言い換えれば、式VIの化合物はそのものとして単離されず、アリールアルキルエーテル、例えばアニソール、ジアルキルエーテル、例えば1,2−ジメトキシエタン、ハロ置換ベンゼン、例えばクロロベンゼンもしくはトリフルオロトルエン、又はアルキル置換ベンゼン、例えばキシレン、エチルベンゼンもしくはトルエンから選ばれる溶媒中の溶液又はスラリーとして使用される。本発明の一態様において、工程(j)の溶媒はアニソール又はトルエンである。本発明の別の態様において、工程(j)の溶媒はトルエンである。従って、式IXの化合物は式VIIの化合物からワンポット法で製造できる。
【0111】
工程(j)で酸に不安定な保護基をその場で除去する適切な方法は、トリフルオロ酢酸のような酸との反応による。所望により、第二の酸(例えば塩化水素又は臭化水素)をトリフルオロ酢酸に加えて又はそれに代えて使用してもよい。工程(j)でRの除去に酸が使用されると、式IXの化合物は塩の形態で得られる。工程(j)でのトリフルオロ酢酸の使用は好都合である。なぜならば、式IXの化合物を、例えば、水の添加と冷却によって、又は水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、さらに好ましくは水酸化カリウムのようなアルカリ金属塩基の水溶液の添加の後、水の添加と冷却によって、トリフルオロ酢酸から結晶化によって容易に単離できるからである。このようにして形成された結晶固体は、任意の従来法、例えばろ過によって回収することができる。
【0112】
工程(j)の反応は、60〜90℃、好適には60〜80℃の範囲、更に好適には70〜75℃の範囲の温度で実施される。
本発明の一側面において、方法の工程(j)の後、式IXの化合物は単離及び/又は精製される。所望生成物の単離及び/又は精製には、文献に記載の及び/又は当業者に公知の任意の適切な工程又は手順が使用できる。有用と思われる特別の工程は、高品質及び高純度の生成物を提供するものであろう。例えば、式IXの化合物は、前述のように、水の添加と冷却によって、又はさらに好ましくは水酸化カリウムのようなアルカリ金属塩基の水溶液及び水の添加と冷却によって、トリフルオロ酢酸から単離できる。
【0113】
本発明の第四の側面に従って、式IX:
【0114】
【化17】

【0115】
の化合物である7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンを、式VII:
【0116】
【化18】

【0117】
の化合物から製造する方法を提供する。該方法は、
(g)式VIIの化合物を適切な塩基とトルエン及びアニソールから選ばれる適切な溶媒の存在下で適切な塩素化剤と反応させる工程において、反応を、
(g−1)溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物を溶媒中の塩素化剤の混合物に60〜110℃、好適には60〜80℃の範囲の温度で約60分かけて加えるか;又は
(g−2)塩素化剤を溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物に周囲温度で約15分かけて加えた後、反応混合物を約90分かけて70〜90℃の範囲の温度に加熱し、該反応混合物を該温度で約1時間撹拌するか;又は
(g−3)塩素化剤を溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物に60〜110℃、好適には70〜90℃の範囲の温度で約15分かけて加えることによって実施して、式VIII:
【0118】
【化19】

【0119】
の化合物を形成させる工程と;
(h)式VIIIの化合物を4−ブロモ−2−フルオロアニリンと、工程(g)で使用された溶媒の存在下、その場で反応させて式VI:
【0120】
【化20】

【0121】
の化合物を形成させる工程と;
(i)式VIの化合物を単離する工程と;そして
(k)式VIの化合物からRを除去して式IXの化合物又はその塩を形成させる工程とを含み;
その後、必要であれば、遊離塩基の形態で得られた式IXの化合物は塩形に変換することができ、塩の形態で得られた式IXの化合物は遊離塩基又は他の塩、例えばトリフルオロ酢酸塩又は塩酸塩の形態に変換することができる。
【0122】
本発明の第四の側面の方法は、式IXの化合物を高純度及び高収率で大規模に製造できるという利点がある。
工程(g)及び(h)はいずれも同じ溶媒中で実施され、該溶媒は、アリールアルキルエーテル、例えばアニソール、ジアルキルエーテル、例えば1,2−ジメチルエーテル、ハロ置換ベンゼン、例えばクロロベンゼンもしくはトリフルオロトルエン、又はアルキル置換ベンゼン、例えばキシレン、エチルベンゼンもしくはトルエンから選ばれる。本発明の一態様において工程(g)及び(h)の溶媒はアニソール又はトルエンである。本発明の別の態様において工程(g)及び(h)の溶媒はトルエンである。このことは、方法を式VIIIの中間体化合物の単離及び/又は精製なしに連続法として実施することを可能にする。これによって式IXの化合物を大規模に製造する時間と費用が著しく削減される。工程(g)及び(h)での単一溶媒の使用は溶媒のリサイクルも可能にしうるので、方法の効率を増大し環境上の利益も提供する。工程(g)及び(h)で反応溶媒としてトルエン又はアニソールを使用することは、これらの溶媒が、前述のように式VIIの化合物の二量体化によって誘導されうる副産物の形成を最小限化するので好都合である。溶媒の選択は、式VIの化合物の容易で便利な単離も可能にする。例えば、反応混合物を周囲温度に冷却すると、式VIの化合物は通常固体を形成するので、該固体は任意の従来法によって回収することができる。
【0123】
前述のように、工程(g)での試薬の添加方式(すなわち、工程(g−1)、(g−2)及び(g−3)に記載の通り)は、該工程での副産物/不純物の形成を最小限化するので好都合である(該副産物/不純物は、典型的には式VIIの化合物の二量体化によって主に形成される)。このことは、工程(g)で製造される式VIIIの中間体化合物を単離及び/又は精製せずに工程(h)で使用することを可能にする。工程(g)での副産物/不純物の形成の削減は、方法の工程(h)での正確な化学量論の試薬の使用、従って該工程でのより効率的な反応も可能にする。ひいては、工程(h)で高収率及び高純度の式VIの化合物が提供される。
【0124】
本発明の一側面において、工程(g)及び(h)はいずれも溶媒としてトルエン中で実施される。本発明の別の側面において、工程(g)及び(h)はいずれも溶媒としてアニソール中で実施される。
【0125】
工程(g)で使用するための適切な塩素化剤はオキシ塩化リンである。典型的には、工程(g)では式VIIの化合物に対してモル過剰の塩素化剤が使用される。例えば、1.3〜2.0の範囲、好適には1.7〜1.8の範囲のモル過剰が使用されうる。
【0126】
工程(g)で使用するための適切な塩基は、トリエチルアミン及びN,N−ジイソプロピルエチルアミンから選ばれる塩基である。一態様において塩基はトリエチルアミンである。トリエチルアミンを工程(g)で塩基として使用することは、該塩基が化合物IXのより堅牢な結晶化と、優れたろ過特性を有する結晶形の化合物IXを可能にするので好都合である。
【0127】
別の態様において、塩基はN,N−ジイソプロピルエチルアミンである。N,N−ジイソプロピルエチルアミンを工程(g)で塩基として使用することは、該溶媒が、前述のように式VIIの化合物の二量体化によって誘導されうる副産物の形成を最小限化するので好都合である(例えば工程(g)で塩基としてトリエチルアミンを使用する場合と比べて)。塩化物源を反応混合物に添加することも(例えばトリエチルアミン塩酸塩)、そのような副産物の形成を削減できる。
【0128】
工程(g−1)において、反応は60〜110℃、好適には60〜80℃の範囲、好適には65〜75℃の範囲、更に好適には70〜75℃の範囲の温度で実施される。
工程(g−2)において、試薬の添加は周囲温度で実施される。“周囲温度”という用語は、10〜30℃の範囲の温度、特に15〜25℃の範囲の温度、とりわけ約20℃の温度を意味する。次に、反応混合物を70〜90℃の範囲、好適には75〜85℃の範囲、更に好適には80〜85℃の範囲の温度に加熱する。
【0129】
工程(g−3)において、反応は60〜110℃、好適には70〜90℃の範囲、好適には75〜85℃の範囲、更に好適には80〜85℃の範囲の温度で実施される。
工程(g)において、“約〜”という用語が“約60分”、“約15分”、“約90分”及び“約1時間”という表現に使用されて、引用された時間を絶対値と解釈すべきでないことを示している。なぜならば、当業者に理解される通り、時間はわずかに変動しうるからである。例えば、引用されている時間は、工程(g)で引用された値から±50%、特に±15%、特に±10%変動しうる。
【0130】
当業者に理解される通り、工程(g)で、適切な溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物は、典型的には懸濁液の形態を取る。トルエン及びアニソールから選ばれる溶媒中の塩素化剤の混合物は典型的には溶液の形態を取る。しかしながら、いくつかの要因によってこれらの形態に変動が起きることがある。そのような要因とは、例えば、溶媒に添加される各試薬の量及び工程(g)で使用するために選ばれる特別の塩基又は塩素化剤などである。
【0131】
工程(h)の反応は、60〜90℃の範囲、好適には60〜90℃、好適には65〜80℃の範囲、更に好適には70〜75℃の範囲の温度で実施される。
本発明のこの側面において、工程(h)で式VIの化合物の製造後、該化合物を方法の工程(i)で単離し、所望により精製する。次に単離された式VIの化合物は、工程(k)で式IXの化合物の製造のために直後又は適当な時間の保管後に使用される。Rがベンジルの場合、工程(i)での式VIの化合物の単離は、工程(k)で式VIの化合物からベンジル基を除去するための方法を、例えば該工程をその場で実施する場合に比べてより幅広く選択できるため有利である。
【0132】
がベンジルの場合、工程(k)は、ベンジル基を除去するための文献に記載の及び/又は当業者に公知の任意の適切な工程又は手順を含みうる。有用と思われる特別の工程は、高品質及び高純度の生成物を提供するものであろう。例えば、工程(k)でベンジル基は、例えば臭化亜鉛又はヨウ化亜鉛のような適切な減速剤(moderating agent)の存在下、パラジウム担持炭素のような適切な水素化剤との反応によって除去できる。水素化剤の使用は、工程(k)でベンジル基を除去する非常に効率的な方法を提供し、また廃流からの副産物も効率的に除去できるので好都合である。
【0133】
工程(k)でRがベンジル基である場合の酸に不安定な保護基を除去するさらに適切な方法は、トリフルオロ酢酸のような酸との反応による。所望により、第二の酸(例えば塩化水素又は臭化水素)をトリフルオロ酢酸に加えて又はそれに代えて使用してもよい。工程(k)でベンジル基の除去に酸が使用されると、式IXの化合物は塩の形態で得られる。工程(k)でのトリフルオロ酢酸の使用は好都合である。なぜならば、式IXの化合物を、例えば、水の添加と冷却によって、又はさらに好ましくは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、さらに好ましくは水酸化カリウムのようなアルカリ金属塩基の水溶液の添加の後、水の添加と冷却によって、トリフルオロ酢酸から結晶化によって容易に単離できるからである。このようにして形成された結晶固体は、任意の従来法、例えばろ過によって回収することができる。
【0134】
がベンジルである場合の工程(k)の反応は、任意の温度及び使用されるベンジル基の特別な除去法に適切な任意の溶媒中で実施できる。酸をベースにしたベンジル基除去法の適切な溶媒の例は、エタノール、アリールアルキルエーテル、例えばアニソール、ジアルキルエーテル、例えば1,2−ジメチルエーテル、ハロ置換ベンゼン、例えばクロロベンゼンもしくはトリフルオロトルエン、又はアルキル置換ベンゼン、例えばキシレン、エチルベンゼンもしくはトルエン、又はジクロロメタンなどである。
【0135】
本発明の一側面において、方法の工程(k)の後、式IXの化合物は単離及び/又は精製される。所望生成物の単離及び/又は精製には、文献に記載の及び/又は当業者に公知の任意の適切な工程又は手順が使用できる。有用と思われる特別の工程は、高品質及び高純度の生成物を提供するものであろう。
【0136】
ZD6474の製造に使用できる別の主要中間体は、式X:
【0137】
【化21】

【0138】
の化合物である7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンである。
WO01/32651の実施例2に式Xの化合物の製造経路が開示されている。該経路は、N,N−ジメチルホルムアミド溶媒中で、7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンを炭酸カリウム及び1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−(4−メチルフェニルスルホニルオキシメチル)ピペリジンと反応させて式Xの化合物を得ることを含む。
【0139】
前述のように、WO98/10767は6,7−ジ置換4−アニリノキナゾリン化合物の製造経路を開示している。WO98/10767には7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン又はその製造法に関する開示はない。
【0140】
先行技術文献に開示されている式Xの化合物の製造経路は、比較的少量の化合物の合成の場合、満足のいくものである。しかしながら、大量の式Xの化合物の製造に使用するのに適切な、該化合物のより効率的な合成法が求められている。好ましくは、新規合成法は、費用及び時間のかかる精製手順を含まないのがよい。従って、新規合成法は、必要とされる単離及び/又は精製手順の数を削減すべきで、それによって製造の費用と時間が削減される。好ましくは、新規合成法は方法全体で使用される溶媒の数も最小限にすべきである。それによって環境パフォーマンスが改良され、溶媒回収の機会も提供される。新規合成法はまた、式Xの化合物を高純度及び高収率で提供すべきである。
【0141】
本発明の第五の側面に従って、式X:
【0142】
【化22】

【0143】
の化合物である7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンを、式VII:
【0144】
【化23】

【0145】
の化合物から製造する方法を提供する。該方法は、式VIIの化合物を式IX:
【0146】
【化24】

【0147】
の化合物に、本発明の第三又は第四の側面との関連で前述した方法を実施し;そして
(l)式IXの化合物を上記定義の式IIの化合物と適切な塩基の存在下で反応させて式Xの化合物又はその塩を得ることによって変換する工程を含み;
その後、必要であれば、溶媒和形又は非溶媒和形いずれかの遊離塩基の形態で得られた式Xの化合物は塩形に変換することができ、塩の形態で得られた式Xの化合物は遊離塩基又は他の塩の形態に変換することができる。
【0148】
本発明の第五の側面の方法は、式Xの化合物を高純度及び高収率で大規模に製造できるという利点がある。典型的には、本発明の第五の側面の方法は80%を超える収率で進行する。本発明の第五の側面の方法は、少なくとも本発明の第三及び第四の側面との関連で前述した理由ゆえにも好都合である。
【0149】
典型的には、式IXの化合物は、工程(l)の実施前に、例えば前述のように文献に記載の及び/又は当業者に公知の任意の適切な工程又は手順を用いて単離及び/又は精製される。
【0150】
本発明の別の態様において、工程(j)で式IXの化合物の製造後(Rがベンジル(又は置換ベンジル)で、ベンジル基の脱保護法として水素化を用いた場合)、該化合物は式Xの化合物の製造のために工程(l)でそのまま使用される。言い換えれば、式IXの化合物はそのものとして単離されず、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミドのような適切な溶媒中の溶液又はスラリーとして使用される。本発明の一態様において、工程(j)の溶媒はN−メチルピロリドンである。従って、式Xの化合物は式VIIIの化合物からワンポット法で製造できる。
【0151】
工程(l)で使用するのに適切な塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムtert−ブタノール、及び水酸化カリウムから選ばれる。
【0152】
工程(l)は任意の適切な溶媒中及び任意の適切な温度で実施できる。
工程(l)で使用される塩基が炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる場合、適切な溶媒は、例えばN−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホリン(sulpholine)、メチルエチルケトン及びN,N−ジメチルホルムアミドなどである。この側面において、工程(l)は、典型的には、60〜120℃、好適には70〜105℃の範囲、好適には80〜100℃の範囲、好適には70〜90℃の範囲、好適には90〜95℃の範囲の温度で実施できる。更なる態様においては75〜85℃の範囲である。
【0153】
工程(l)で使用される塩基が水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる場合、適切な溶媒は、例えばアリールアルキルエーテル、例えばアニソール、ジアルキルエーテル、例えば1,2−ジメトキシエタン、ハロ置換ベンゼン、例えばクロロベンゼンもしくはトリフルオロトルエン、又はアルキル置換ベンゼン、例えばキシレン、エチルベンゼンもしくはトルエン、又はアセトニトリルなどである。本発明の一態様において工程(l)の溶媒はアニソール又はトルエンである。本発明の別の態様において工程(l)の溶媒はトルエンである。この側面において、工程(l)は、典型的には、60〜90℃の範囲、好適には65〜85℃の範囲、好適には70〜80℃の範囲の温度で実施できる。この側面において、工程(l)は、水、塩基(例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)及びトルエン中の適切な相間移動触媒を反応混合物に加えることによって都合よく実施できる。適切な相間移動触媒は、例えばテトラブチルアンモニウムブロミド及びAdogen(登録商標)464(メチルトリアルキル(C8−10)アンモニウムクロリド、CAS 63393−96−4)などである。
【0154】
一側面において、本発明の第五の側面の方法は式Xの化合物を単離する工程(m)を含んでもよい。工程(m)は、式Xの化合物を単離するための、文献に記載の及び/又は当業者に公知の任意の適切な工程又は手順を含みうる。
【0155】
例えば、工程(l)で使用される塩基が炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる場合、工程(m)は、
(m−1)水を添加して式Xの化合物の結晶化を起こさせ、式Xの化合物を回収し、そして式Xの化合物を水で洗浄し、その後25〜55℃、好適には45〜55℃の範囲の温度の酢酸エチル、酢酸ブチル及びアセトニトリルから選ばれる溶媒で洗浄する工程;又は
(m−2)水と、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn−プロパノールから選ばれるアルコール(特にイソプロパノール)を添加して式Xの化合物の結晶化を起こさせ、式Xの化合物を回収し、そして式Xの化合物を水とメタノール、エタノール、イソプロパノール及びn−プロパノールから選ばれるアルコールとの混合物で洗浄し、その後25〜55℃、好適には45〜55℃の範囲の温度の酢酸エチル、酢酸ブチル及びアセトニトリルから選ばれる溶媒で洗浄する工程を含みうる。
【0156】
工程(m−1)及び(m−2)は、方法の工程(l)中に通常形成される不純物だけでなく未反応の式IXの化合物も効率的に除去するので都合がよい。そのような不純物は、式IIの化合物の反応によって、キナゾリン環のヒドロキシ置換基のある所望位置ではなく1位の窒素原子の位置に形成されるものなどである。
【0157】
工程(l)で使用される塩基が水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる場合、工程(m)は、式Xの化合物の結晶化を起こさせる工程と(例えばトルエン相からの結晶化)、式Xの化合物を任意の従来法によって回収する工程とを含みうる。この側面は、式Xの化合物が反応混合物から高収率(例えば少なくとも80%の収率)及び生成物をさらに精製する必要のない高品質で直接結晶化されるので好都合である。
【0158】
工程(m)で、このようにして形成された式Xの化合物(例えば結晶固体として単離されている)は任意の従来法、例えばろ過によって回収できる。回収された結晶固体は、必要であればその後適当な溶媒で洗浄し、次いで乾燥させてもよい。
【0159】
本発明の第六の側面に従って、式X:
【0160】
【化25】

【0161】
の化合物である7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンを、式IX:
【0162】
【化26】

【0163】
の化合物である7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンから製造する方法を提供する。該方法は、
(l)式IXの化合物を上記定義の式IIの化合物と適切な塩基の存在下で反応させて式Xの化合物又はその塩を得;そして
(m)式Xの化合物を、
(m−1)水を添加して式Xの化合物の結晶化を起こさせ、式Xの化合物を回収し、そして式Xの化合物を水で洗浄し、その後25〜55℃、好適には45〜55℃の範囲の温度の酢酸エチル、酢酸ブチル及びアセトニトリルから選ばれる溶媒で洗浄する;又は
(m−2)水と、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn−プロパノールから選ばれるアルコール(特にイソプロパノール)を添加して式Xの化合物の結晶化を起こさせ、式Xの化合物を回収し、そして式Xの化合物を水とメタノール、エタノール、イソプロパノール及びn−プロパノールから選ばれるアルコールとの混合物で洗浄し、その後25〜55℃、好適には25〜55℃の範囲の温度の酢酸エチル、酢酸ブチル及びアセトニトリルから選ばれる溶媒で洗浄することによって単離する。
【0164】
その後、必要であれば、溶媒和形又は非溶媒和形(又はNMP、酢酸エチルもしくはその両方の混合物からの溶媒の溶媒和物)いずれかの遊離塩基の形態で得られた式Xの化合物は塩形に変換することができ、塩の形態で得られた式Xの化合物は遊離塩基又は他の塩の形態に変換することができる。
【0165】
本発明の第六の側面の方法は、式Xの化合物を高純度及び高収率で大規模に製造できるという利点がある。典型的には、本発明の第六の側面の方法の各工程は80%を超える収率で進行する。
【0166】
該方法は、方法の工程(l)中に通常形成される何らかの不純物だけでなく何らかの未反応の式IXの化合物の効率的な除去も提供する。そのような不純物は、式IIの化合物の反応によって、キナゾリン環のヒドロキシ置換基のある所望位置ではなく1位の窒素原子の位置に形成されるものなどである。
【0167】
工程(l)で使用するのに適切な塩基は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸カリウムから選ばれる。
工程(l)は任意の適切な溶媒中又は任意の適切な温度で実施できる。
【0168】
工程(l)で使用される塩基が炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる場合、適切な溶媒は、例えばN−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン及びN,N−ジメチルホルムアミドなどである。この側面において、工程(l)は、典型的には、70〜105℃、好適には80〜100℃、好適には90〜95℃の範囲の温度で実施できる。
【0169】
工程(m−1)及び(m−2)は、方法の工程(l)中に通常形成される不純物だけでなく未反応の式IXの化合物も効率的に除去するので都合がよい。そのような不純物は、式IIの化合物の反応によって、キナゾリン環のヒドロキシ置換基のある所望位置ではなく1位の窒素原子の位置に形成されるものなどである。
【0170】
工程(m−1)及び(m−2)で、このようにして形成された結晶固体は任意の従来法、例えばろ過によって回収できる。回収された結晶固体は、必要であればその後適当な溶媒で洗浄し、次いで乾燥させてもよい。
【0171】
本発明の第五及び第六の側面の方法の工程(l)で使用される式IIの化合物は、任意の文献又は従来法によって得ることができる。本発明の一側面において、本発明の第五又は第六の側面の工程(l)で使用される式IIの化合物は、前述の本発明の第一の側面の方法に従って製造される。
【0172】
本発明の第七の側面に従って、ZD6474:
【0173】
【化27】

【0174】
を、式X:
【0175】
【化28】

【0176】
の化合物から製造する方法を提供する。該方法は、
(n)式Xの化合物をギ酸及びホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドのポリマーと、好適には水中70〜95℃、好適には70〜90℃の範囲の温度で反応させてZD6474のギ酸塩を形成させる工程と;
(o)テトラヒドロフラン、ブチロニトリル及びメタノールから選ばれる不活性有機溶媒と適切な塩基を添加してZD6474の遊離塩基を形成させる工程とを含み;
その後、必要であれば、遊離塩基の形態で得られたZD6474は製薬学的に許容しうる塩に変換することができる。
【0177】
本発明の第七の側面の方法の工程(n)において、反応は過渡的中間体を介して進行する。該中間体は、式XI:
【0178】
【化29】

【0179】
の化合物である4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(ピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリンである。
本発明の第七の側面の方法は、ZD6474を高純度及び高収率で大規模に製造できるという利点がある。典型的には、本発明の第七の側面の方法の各工程は90%を超える収率で進行する。
【0180】
本発明の第七の側面の方法の工程(n)で使用される式Xの化合物は、任意の文献又は従来法によって得ることができる(例えば前述のWO01/32651に記載のように)。あるいは、本発明の一側面において、本発明の第七の側面の工程(n)で使用される式Xの化合物は、前述の本発明の第五又は第六の側面の方法に従って製造される。
【0181】
工程(n)は、70〜95℃、好適には70〜90℃の範囲、好適には75〜85℃の範囲、さらに好適には約80℃で実施される。
好ましくは、工程(n)は不活性雰囲気下、例えば窒素雰囲気下で実施される。このことは、工程(n)のプロセスで副産物として水素ガスと一酸化炭素が生成しうるので、その水素ガスを反応容器から安全かつ効果的に除去する必要があるため好都合である。
【0182】
工程(n)でZD6474のギ酸塩が製造される。この塩は方法の工程(o)でZD6474の遊離塩基に変換される。
工程(n)で、ホルムアルデヒドのポリマーの例は、パラホルムアルデヒド及びs−トリオキサン(1,3,5トリオキサン)などである。
【0183】
工程(o)で使用するための適切な不活性有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ブチロニトリル及びメタノールから選ばれる(好ましくはテトラヒドロフラン又はメタノール)。該不活性有機溶媒は反応混合物に工程(n)での反応の完了後添加される。当業者に理解される通り、不活性有機溶媒を添加する前に反応混合物を冷却することが必要となろう。
【0184】
工程(o)で使用するための適切な塩基は水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである(特に水酸化カリウム)。工程(o)での塩基の添加によって、ギ酸塩のZD6474は遊離塩基のZD6474に変換される。
【0185】
工程(o)で使用される不活性有機溶媒をテトラヒドロフラン及びブチロニトリルから選ぶと、ZD6474生成物は水性相から有機相に効果的に移動する。これは、遊離塩基のZD6474は、ひとたび製造されると不活性有機溶媒に優先的に溶解するためである(一方、ZD6474のギ酸塩は水性相に可溶である)。工程(o)で使用される不活性有機溶媒がメタノールの場合、遊離塩基のZD6474は典型的には反応混合物から直接結晶化する。これは、塩基が水酸化カリウムの場合、ギ酸塩はメタノール溶媒中に完全に溶解し、単離された化合物ZD6474を汚染しないので特に好都合である。これによって、良好なろ過特性を有する結晶性化合物も提供される(これは無水物形、メタノエート(methanoate)形又は混合メタノエート水和物のいずれかとして単離できる)。従って、方法の工程(o)は、ZD6474生成物の単離及び精製を補助及び簡素化するので、特に方法を大規模に実施する場合、好都合である。
【0186】
工程(o)は30〜70℃の範囲、好適には40〜65℃の範囲、さらに好適には40〜60℃の範囲の温度で実施される。
一側面において、本発明の第七の側面の方法は、ZD6474の遊離塩基を単離及び/又は精製する工程(p)を含みうる。工程(p)はZD6474の遊離塩基を単離及び/又は精製するための、文献に記載の及び/又は当業者に公知の任意の適切な工程又は手順を含みうる。あるいは、例えば工程(o)で使用される不活性有機溶媒がテトラヒドロフラン及びブチロニトリルから選ばれる場合、工程(p)は、
(p−1)有機相から水性相を分離及び除去し;
(p−2)酢酸n−ブチルを有機相に入れ;
(p−3)有機相を水洗し、有機相から水性相を分離及び除去し;
(p−4)テトラヒドロフラン及び酢酸n−ブチルを有機相に加え;
(p−5)有機相を蒸留して、水とテトラヒドロフランを実質的に除去し、主として酢酸n−ブチル中のZD6474の懸濁液を作製し;
(p−6)ZD6474の結晶化を完了させ;そして
(p−7)ZD6474を回収する
工程を含みうる。
【0187】
工程(p−1)、(p−2)及び(p−3)は、有機相中に溶解しているZD6474生成物からギ酸塩及び残留ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドのポリマーをすぐに容易に除去するので好都合である。
【0188】
一側面において工程(p−1)、(p−2)、(p−3)及び(p−4)はそれぞれ、50〜65℃の範囲、好適には55〜65℃の範囲、さらに好適には約60℃の温度で実施される。
【0189】
典型的には、工程(p−1)、(p−2)及び(p−3)は、工程(p−4)を実施する前にそれぞれ2回ずつ繰り返すことができる。
工程(p−5)は、工程(p−1)及び(p−3)で水性相から分離された有機相中に存在するあらゆる水及びテトラヒドロフランを実質的に除去する。蒸留は、約90%w/wの酢酸n−ブチルを含有する溶媒組成物を得るために実施する。言い換えると、主として酢酸n−ブチル中のZD6474溶液は、約90%w/wの酢酸n−ブチルを含有する溶媒組成物中のZD6474溶液である。典型的には、蒸留は90〜110℃、好適には90〜104℃の範囲の内部温度が達成されるまで行われる。好適には100〜110℃の範囲である。工程(p−5)での蒸留は周囲圧力(又は減圧、しかしより好適には周囲圧力)で都合よく実施される。
【0190】
誤解を避けるために言うと、(p−6)で‘ZD6474の結晶化を完了させる’と述べていることの意味は、使用された条件で結晶化プロセスが完了したということであって、反応混合物中の100%のZD6474が結晶化したということではない。
【0191】
ZD6474の遊離塩基を単離及び/又は精製する他の工程(p)は、工程(o)で使用された不活性有機溶媒がテトラヒドロフランの場合、
(p−8)工程(p−1)の後に得られた有機相中のZD6474溶液に水を加えてZD6474の結晶化を起こさせ;そして
(p−9)ZD6474を回収する
工程を含みうる。
【0192】
上記各単離工程において、そのようにして形成された結晶固体は任意の従来法、例えばろ過によって回収できる。回収された結晶固体は、必要であればその後さらに精製し、次いで乾燥させることもできる。
【0193】
ZD6474生成物を単離する工程(p)は、高収率(例えば典型的には90%を超える収率)及び高純度(例えば典型的には99%を超える純度)のZD6474を提供するので好都合である。さらに、工程(p)は大規模でも容易にろ過できる形態のZD6474を提供する。
【0194】
本発明の別の側面において、前述のように本発明の第七の側面の方法に従って製造されたZD6474はさらに精製することもできる。ZD6474の更なる精製は、ZD6474を単離及び/又は精製するための、文献に記載の及び/又は当業者に公知の任意の適切な工程又は手順を含みうる。あるいは、ZD6474の更なる精製は、本発明の第七の側面の方法で製造されたようなZD6474のテトラヒドロフラン、水及び酢酸ブチルの混合物中懸濁液を加熱して還流し、得られた混合物を50〜65℃の範囲の温度(好適には約60℃)に冷却し、水性相と有機相を分離し、有機相をろ過する工程を含んでなることもできる。次にろ液を更なるテトラヒドロフラン及び酢酸ブチルと合わせ、得られた混合物を90〜110℃の範囲の温度、好適には90〜110℃(好適には100〜110℃の範囲)に加熱した後、40〜−10℃の範囲、好適には25℃〜0℃(好適には0〜10℃の範囲、さらに好適には約5℃、更なる態様においては約25℃の温度)に冷却し、ZD6474のスラリーを得る。次にZD6474は、任意の従来法、例えばろ過によって回収し、所望により酢酸エチルで洗浄してもよい。記載の方法は、蒸留終了時の水分レベルを1%未満に削減し、無水物形のZD6474の製造を確実にするので好都合である。
【0195】
あるいは、例えば、工程(o)で使用される不活性有機溶媒がテトラヒドロフランの場合、工程(p)は、
(p−1)有機相から水性相を分離及び除去し;
(p−2)有機相をろ過し;
(p−3)酢酸n−ブチルを有機相に入れ;
(p−4)有機相を水洗し、有機相から水性相を分離及び除去し;
(p−5)テトラヒドロフラン及び酢酸n−ブチルを有機相に加え;
(p−6)有機相を蒸留して、水とテトラヒドロフランを実質的に除去し、主として酢酸n−ブチル中のZD6474の懸濁液を作製し;
(p−7)冷却し、追加のテトラヒドロフランを入れ;そして
(p−8)ZD6474の結晶化を完了させ;そして
(p−9)ZD6474を回収する
工程を含みうる。
【0196】
工程(p−7)は、不純物を母液中に可溶化することによって得られた生成物の品質を改良するので好都合である。これは、粗API(Active Pharmaceutical Ingredient、医薬品有効成分)の製造の短縮化を可能にするので、精製されたAPIが単一工程で単離される。
【0197】
本発明の第八の側面に従って、ZD6474を、式VII:
【0198】
【化30】

【0199】
の化合物から製造する方法を提供する。該方法は、
(g)式VIIの化合物を適切な塩基とクロロベンゼン、トリフルオロトルエン、キシレン
、エチルベンゼン、トルエン及びアニソール、とりわけアニソール及びトルエンから選ばれる溶媒の存在下で適切な塩素化剤と反応させる工程において、反応を、
(g−1)溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物を溶媒中の塩素化剤の混合物に60〜90℃、好適には60〜80℃の範囲の温度で約60分かけて加えるか;又は
(g−2)塩素化剤を溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物に周囲温度で約15分かけて加えた後、反応混合物を約90分かけて70〜90℃の範囲の温度に加熱し、該反応混合物を該温度で約1時間撹拌するか;又は
(g−3)塩素化剤を溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物に60〜110℃、好適には70〜90℃の範囲の温度で約15分かけて加えることによって実施して、式VIII:
【0200】
【化31】

【0201】
の化合物を形成させる工程と;
(h)式VIIIの化合物を4−ブロモ−2−フルオロアニリンと、工程(g)で使用された溶媒の存在下、その場で反応させて式VI:
【0202】
【化32】

【0203】
の化合物を形成させる工程と;
(j)式VIの化合物から、工程(g)及び(h)で使用された溶媒の存在下で、Rをその場で除去して式IX:
【0204】
【化33】

【0205】
の化合物を形成させる工程と;
(l)式IXの化合物を上記定義の式IIの化合物と適切な塩基の存在下で反応させて式X:
【0206】
【化34】

【0207】
の化合物を得る工程と;
(n)式Xの化合物をギ酸及びホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドのポリマーと、好適には水中70〜90℃の範囲の温度で反応させてZD6474のギ酸塩を形成させる工程と;そして
(o)テトラヒドロフラン、ブチロニトリル及びメタノールから選ばれる不活性有機溶媒と適切な塩基を添加してZD6474の遊離塩基を形成させる工程と;そして所望により(p)テトラヒドロフラン、水及び酢酸ブチルの混合物中のZD6474をさらに精製して、錠剤製造に適切な所要の無水結晶形を得る工程とを含み;
その後、必要であれば、遊離塩基の形態で得られたZD6474は製薬学的に許容しうる塩の形態に変換することができる。
【0208】
本発明の第八の側面の方法は、ZD6474を高純度及び高収率で大規模に製造できるという利点がある。典型的には、本発明の第七の側面の方法の各工程は90%を超える収率で進行する。
【0209】
本発明の第八の側面の方法の好適な側面は、本発明の第一、第二、第三、第四、第五、第六及び第七の側面に記載の各工程との関連で上に示したとおりである。特に、本発明の第八の側面の方法の好適な側面は、本発明の第三、第五、第六及び/又は第七の側面の各工程との関連で上に示したとおりである。
【0210】
好適には、本発明の第八の側面の方法の工程(g)、(h)及び(j)はいずれも、溶媒としてトルエン及び塩基としてトリエチルアミン中で実施される。
好適には、本発明の第八の側面の方法の工程(j)で、Rがベンジルの場合、ベンジル基をその場で除去する適切な方法はトリフルオロ酢酸との反応による。
【0211】
好適には、本発明の第八の側面の方法の工程(l)で使用される塩基は炭酸カリウムであり、適切な溶媒はN−メチルピロリドンである。
本発明の第八の側面の方法は、典型的には、工程(n)及び(o)を実施する前に式Xの化合物を単離する工程(m)を含みうる。好適には、工程(m)は本明細書中で先に記載したように実施できる。
【0212】
好適には、本発明の第八の側面の工程(o)で使用するための適切な塩基は水酸化カリウムである。
好適には、本発明の第八の側面の工程(o)で使用するための適切な溶媒はメタノールである。
【0213】
本発明の第八の側面の方法は、ZD6474の遊離塩基を単離及び/又は精製する工程(p)を含みうる。工程(p)は本明細書中で先に記載したように実施できる。
次に本発明を以下の非制限的実施例及びデータによって説明する。そこでは別途記載のない限り、
(i)蒸発は真空下の回転蒸発によって実施し、後処理操作は乾燥剤のような残留固体をろ過によって除去後に実施した;
(ii)収率は例示のために示したものであり、必ずしも到達可能な最大値ではない;
(iii)融点は未補正であり、Mettler DSC820eを用いて測定した;
(iv)最終生成物の構造は、核(一般的にプロトン)磁気共鳴(NMR)及び質量分析技術によって確認した;プロトン磁気共鳴の化学シフト値はデルタスケールで測定し、ピークの多重度は以下のように示す:s、一重線;d、二重線;t、三重線;m、多重線;br、ブロード;q、四重線;quin、五重線;全サンプルともBruker DPX 400MHzで、300K、指定溶媒中、16スキャン、パルス繰り返し時間10秒で測定した;
(v)中間体は一般的に十分な特性分析を行わず、純度はNMR分析によって評価した;
(vi)化学記号はそれらの通常の意味を有する;SI単位及び記号を使用;そして
(vii)下記の略号を使用した:
THF テトラヒドロフラン
IPA イソプロパノール
DMSO ジメチルスルホキシド
TEDA トリエチレンジアミン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
NMP N−メチルピロリジノン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMA N,N−ジメチルアセトアミド
v/v 体積/体積比
w/w 重量/重量比
w/v 重量/体積比
【0214】
実施例1
1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−(4−メチルフェニルスルホニルオキシメチル)−ピペリジン(式IIの化合物)の製造
トルエン(296ml)中ジ−tert−ブチルジカルボネート(88.63g)をトルエン(317ml)中イソニペコチン酸エチル(62.88g)の撹拌溶液に加えた。次に該反応混合物を大気圧で蒸留し、最終蒸留温度112℃で約130mlの留出物を除去した。次に、トルエン(220ml)中水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red−Al、トルエン中65%w/w溶液、161g)を約60分かけて反応混合物に添加した。0.5モルのロッシェル塩の溶液(191ml)を反応混合物に加え、水性相を40℃で分離した。有機相は15%w/vの食塩水(3×136ml)及び水(136ml)で洗浄した。該溶液を大気圧で蒸留し、最終蒸留温度112℃で約400mlの留出物を除去した。トリエチレンジアミン(51.62g)を反応混合物に加え、その後トルエン(416ml)中塩化トシル(87.90g)を約60分かけて加えた。水酸化ナトリウム(2N、160ml)を反応混合物に加え、有機層を分離して、水(80ml)、クエン酸(0.5M、80ml)及び水(80ml)で順に洗浄した。有機相を減圧下最大内部温度70℃で濃縮して約600mlの留出物を回収した。該溶
液を20℃に冷却し、イソヘキサン(160ml)を加えた。結晶化が起こったらさらにイソヘキサン(320ml)を加えた。生成物を40℃に温度サイクルし、懸濁液を5℃に冷却し、生成物をろ過によって単離し、40℃で乾燥させた。収率: 127.9 g, 86.5 %;
NMR スペクトル (CDCl) 1.0-1.2 (m, 2H), 1.45 (s, 9H), 1.65 (d, 2H), 1.75-1.9 (m, 2H), 2.45 (s, 3H), 2.55-2.75 (m, 2H) 3.85 (d, 1H), 4.0-4.2 (br s, 2H), 7.35 (d, 2H), 7.8 (d, 2H); 質量スペクトル[ESI]: (MNa) = 392。
【0215】
実施例2
7−ベンジルオキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンの塩酸塩(式VIの化合物の塩酸塩)の製造
7−ベンジルオキシ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オン(20.00g)をアニソール(190ml)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(13.74g)と混合した。反応混合物を窒素で不活化し、15℃に冷却した。オキシ塩化リン(14.12g)を反応混合物に15分かけて加え、次いで洗液(wash)としてアニソール(10ml)を加えた。該反応混合物を15℃で15分間撹拌した後90分かけて80℃に加熱した。次に該反応混合物を80℃で1時間撹拌した。4−ブロモ−2−フルオロアニリン(16.8g)のアニソール(20ml)中溶液を反応混合物に40分かけて加えた。次に該反応混合物を80℃で90分間撹拌した。次いで反応混合物を25℃に冷却し、生成物をろ過によって単離した。収率: 26.9 g, 84%; NMR スペクトル(DMSOd, CDCOOD) 4.0 (s, 3H), 5.37 (s, 2H), 7.35-7.5 (m, 4H), 7.52-7.62 (m, 4H), 7.8 (d, 1H), 8.14 (s, 1H), 8.79 (s, 1H); 質量スペクトル[ESI] (M+H) = 454.0591。
【0216】
出発物質の7−ベンジルオキシ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オンは以下のようにして製造した。
バニリン酸(200g)、アセトニトリル(600ml)及びN−エチルジイソプロピルアミン(580ml)の混合物を加熱還流した。次に臭化ベンジル(347ml)を3時間かけて加えた。該反応混合物を15時間還流状態に保った。トリエチルアミン(50ml)を加え、反応混合物をさらに30分間還流状態に保った。アセトニトリル(400ml)を加え、反応混合物を81℃に加熱した。水(300ml)を加え、反応混合物を45℃に冷却した。該反応混合物を結晶化が起こるまで30分間45℃に保持した。次に該反応混合物を24℃に冷却させた後、さらに8℃に冷却し、生成物(ベンジル4−(ベンジルオキシ)−3−メトキシベンゾエート)をろ過によって単離した。該固体を水洗し(3×500ml)、次いで真空下45℃で乾燥させた。収率: 387 g, 93.4%; NMR ス
ペクトル(CDCl) 3.9 (s, 3H), 5.2 (s, 2H), 5.3 (s, 2H), 6.9 (d, 1H), 7.2-7.4 (m,
10H), 7.6-7.7 (m, 2H); 質量スペクトル(M+H) = 349.2。
【0217】
ベンジル4−(ベンジルオキシ)−3−メトキシベンゾエート(78g)をジクロロメタン(580ml)、水(72ml)及び氷酢酸(288ml)と混合した。該混合物を10℃に冷却した。濃硫酸(108ml)を反応混合物の温度を25℃未満に維持しながら制御添加した。次に濃硝酸(17.5ml)を反応混合物の温度を20℃未満に維持しながら加えた。次に該反応混合物を20℃で23時間撹拌した。下部水性層を除去し、有機層を水(290ml)で洗浄した。有機層を分離し、大気圧で蒸留して270mlにした。イソプロパノール(750ml)を反応混合物に45℃で加えた。次に該反応混合物を40℃に加熱し、この温度で15分間撹拌した。次に得られた懸濁液を20℃、次いで5℃に冷却し、この温度に1時間保持した。生成物(ベンジル4−(ベンジルオキシ)−5−メトキシ−2−ニトロベンゾエート)をろ過により単離し、イソプロパノール(200ml)で洗浄し、25℃未満で乾燥させた。収率: 78.4 g, 89.6%; NMR スペクトル (CDCl) 3.9 (s, 3H), 5.2 (s, 2H), 5.3 (s, 2H), 7.1 (s, 1H), 7.3-7.4 (m, 10H), 7.5 (s, 1H); 質量スペクトル(M+H)= 394.1。
【0218】
ベンジル4−(ベンジルオキシ)−5−メトキシ−2−ニトロベンゾエート(77g)をアセトニトリル(882ml)に溶解した。亜ジチオン酸ナトリウム(160.5g)を該溶液に加え、温度を25℃に調整した。次に水(588ml)を、温度を25℃に維持しながら加えた。還元中、8.8Mの水酸化ナトリウムを用いてpHを6に維持した。次にスラリーを65℃に加熱し、下部水性相を除去した。次に濃塩酸(35%w/w、7.25ml)を加えた。スラリーを40℃、次いで20℃に冷却させた。水酸化ナトリウム溶液(47%w/w、12.4ml)を加え、スラリーを0℃に冷却した。生成物(ベンジル2−アミノ−4−(ベンジルオキシ)−5−メトキシベンゾエート)をろ過によって単離し、水洗し(2×196ml)、次いで真空下40℃で乾燥させた。収率: 66.2 g, 92.4%; NMR スペクトル (CDCl) 3.8 (s, 3H), 5.1 (s, 2H), 5.3 (s, 2H), 6.2 (s,
1H), 7.3-7.4 (m, 10H); 質量スペクトル(M+H) = 364.1。
【0219】
ベンジル2−アミノ−4−(ベンジルオキシ)−5−メトキシベンゾエート(5.55kg)、酢酸ホルムアミジン(2.2kg)及びイソブタノール(33.3L)を混合した。次に該反応混合物を97℃に加熱し、この温度で6時間撹拌した。次に該反応混合物を少なくとも1時間かけて25℃に冷却し、次いでこの温度で30分間撹拌した。生成物(7−ベンジルオキシ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オン)をろ過によって単離し、イソブタノール(6.1L)で洗浄し、40〜45℃の真空オーブン中で乾燥させた。収率: 4.25 kg, 98%; NMR スペクトル(DMSOd) 3.9 (s, 3H), 5.3 (s, 2H), 7.3 (s, 1H), 7.3-7.5 (m, 6H), 8.0 (s, 1H); 質量スペクトル (M+H)= 283.1。
【0220】
出発物質の7−ベンジルオキシ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オンを以下のようにして追加製造した。
バニリン酸(20g)、アセトニトリル(60ml)及びN−エチルジイソプロピルアミン(58ml)の混合物を加熱還流した。次に臭化ベンジル(34.7ml)を15分以内に加えた。該反応混合物を10時間還流状態に保った。トリエチルアミン(5ml)を加え、反応混合物をさらに30分間還流状態に保った。アセトニトリル(40ml)及び水(30ml)を加え、反応混合物を45℃に冷却した。該反応混合物を結晶化が起こるまで45℃に保持した。次に該反応混合物を24℃に冷却させた後、さらに8℃に冷却し、生成物(ベンジル4−(ベンジルオキシ)−3−メトキシベンゾエート)をろ過によって単離した。該固体を水洗し(3×50ml)、次いで真空下45℃で乾燥させた。収率: 38.7 g, 93%; NMR スペクトル (CDCl) 3.9 (s, 3H), 5.2 (s, 2H), 5.3 (s, 2H), 6.9 (d, 1H), 7.2-7.4 (m, 10H), 7.6-7.7 (m, 2H); 質量スペクトル(M+H) = 349.2。
【0221】
ベンジル4−(ベンジルオキシ)−3−メトキシベンゾエート(135g)をジクロロメタン(339ml)に溶解した。氷酢酸(175.5g)を加え、混合物を10℃に冷却した。濃硫酸(151.6g)を反応混合物の温度を25℃未満に維持しながら制御添加した。次に濃硝酸(61.6g)を反応混合物の温度を25℃未満に維持しながら15分で加えた。次に該反応混合物を40℃に加熱し、3時間撹拌した。下部水性層を除去し、有機層を水で2回洗浄した(2×168ml)。有機層を大気圧で蒸留し、ジクロロメタン(186ml)を除去した。イソプロパノール(339ml)を反応混合物に40℃で加えた。該反応混合物を40℃に15分間維持した。次に得られた懸濁液を30分以内に20℃、次いで5℃に冷却し、この温度に1時間保持した。生成物(ベンジル4−(ベンジルオキシ)−5−メトキシ−2−ニトロベンゾエート)をろ過により単離し、イソプロパノール(336ml)で洗浄し、25℃未満で乾燥させた。収率: 135.7 g, 89.6%;
NMR スペクトル (CDCl) 3.9 (s, 3H), 5.2 (s, 2H), 5.3 (s, 2H), 7.1 (s, 1H), 7.3-7.4 (m, 10H), 7.5 (s, 1H); 質量スペクトル (M+H)= 394.1。
【0222】
ベンジル4−(ベンジルオキシ)−5−メトキシ−2−ニトロベンゾエート(90g)をアセトニトリル(660g)に入れた。85%の亜ジチオン酸ナトリウム(75g)を該溶液に加え、温度を20℃に調整した。次に水(516g)を、温度を20℃に維持しながら加えた。次にスラリーを65℃に加熱し、30分間撹拌した。亜ジチオン酸ナトリウム(75g)を加え、混合物をさらに30分間撹拌した。下部水性相を除去した。次に濃塩酸(33%w/w、12.48g)を加え、pHを<1に調整した。懸濁液を1時間保持した。スラリーを30分かけて20℃に冷却した。水酸化ナトリウム溶液(20%w/w、59.29g)を加え、pHを10にした。スラリーを0℃に冷却し、1時間撹拌した。生成物(ベンジル2−アミノ−4−(ベンジルオキシ)−5−メトキシベンゾエート)をろ過によって単離し、水で2回洗浄し(2×222ml)、次いで真空下60℃で乾燥させた。収率: 78.81 g, 95%; NMR スペクトル(CDCl) 3.8 (s, 3H), 5.1 (s, 2H), 5.3 (s, 2H), 6.2 (s, 1H), 7.3-7.4 (m, 10H); 質量スペクトル(M+H) = 364.1。
【0223】
ベンジル2−アミノ−4−(ベンジルオキシ)−5−メトキシベンゾエート(80.0g)、酢酸ホルムアミジン(32.0g)及びイソブタノール(480ml)を混合した。次に該反応混合物を97℃に加熱し、この温度で6時間撹拌した。次に該反応混合物を少なくとも1時間かけて25℃に冷却し、次いでこの温度で30分間撹拌した。生成物(7−ベンジルオキシ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オン)をろ過によって単離し、イソブタノール(64.2g)で洗浄し、40〜45℃の温度の真空オーブン中で乾燥させた。収率: 60.8 g, 98%; NMR スペクトル(DMSOd) 3.9 (s, 3H), 5.3
(s, 2H), 7.3 (s, 1H), 7.3-7.5 (m, 6H), 8.0 (s, 1H); 質量スペクトル (M+H) = 283.1。
【0224】
実施例3
7−ベンジルオキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンの塩酸塩(式VIの化合物の塩酸塩)の製造
7−ベンジルオキシ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オン(20.00g)をトルエン(190ml)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(13.74g)と混合した。反応混合物を窒素で不活化し、15℃に冷却した。オキシ塩化リン(19.8g)を反応混合物に15分かけて加え、次いで洗液としてトルエン(10ml)を加えた。該反応混合物を15℃で15分間撹拌した後、90分かけて80℃に加熱した。次に該反応混合物を80℃で2時間撹拌した。4−ブロモ−2−フルオロアニリン(16.8g)のトルエン(40ml)中溶液を反応混合物に40分かけて加え、次いで洗液としてトルエン(10ml)を加えた。次に該反応混合物を80℃で4時間撹拌した。次いで反応混合物を25℃に冷却し、生成物をろ過によって単離した。ろ過ケーキを水で2回洗浄した(2×40ml)。収率: 34.37 g, 87%; NMR スペクトル(DMSOd, CDCOOD) 4.0 (s, 3H), 5.37 (s, 2H), 7.35-7.5 (m, 4H), 7.52-7.62 (m, 4H), 7.8 (d, 1H), 8.14 (s, 1H), 8.79 (s, 1H); 質量スペクトル[ESI] (M+H) = 454.0591。
【0225】
実施例4
7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンのトリフルオロ酢酸塩(式IXの化合物のトリフルオロ酢酸塩)の製造
7−ベンジルオキシ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オン(100g)、トリエチルアミン(59.3ml)及びトルエン(650ml)を容器に入れ、窒素で不活化した。内容物を40℃に加熱し、約40分かけてオキシ塩化リン(97.7g)のトルエン(400ml)中溶液(窒素で不活化された容器中で73℃に保持されている)に入れた。次に反応混合物を約73℃の温度で約90分間保持した。4−ブロモ−2−フルオロアニリン(84.1g)をトルエン(250ml)に溶解し、73℃の反応混合物に入れ、この温度で約4時間撹拌を続けた。次にトリフルオロ酢酸(350ml)を73℃の反応混合物に加え、該反応混合物を73℃で6時間撹拌し、次いで60℃に冷却した。水(1750ml)を反応混合物に加え、温度を60℃で約30分間維持し、次いで70℃に温めて70℃で約22時間撹拌した。次に反応混合物を20℃に冷却し、生成物をろ過によって単離し、水(200ml)で洗浄し、50℃で乾燥させた。収率: 120 g, 93%; NMRスペクトル(DMSOd) 4.0 (s, 3H), 7.24 (s, 1H), 7.56 (m, 2H), 7.78 (d, 1H), 8.02 (s, 1H), 8.73 (s, 1H); 質量スペクトル(M+H) = 454.0591。
【0226】
実施例5
7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンのトリフルオロ酢酸塩(式IXの化合物のトリフルオロ酢酸塩)の製造
7−ベンジルオキシ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オン(15g)、トリエチルアミン(9.0ml)及びトルエン(90ml)を容器に入れ、窒素で不活化した。内容物を周囲温度に保持し、約40分かけてオキシ塩化リン(14.7g)のトルエン(60ml)中溶液(窒素で不活化された容器中で73℃に保持されている)に入れた。この後、トルエン(7.5ml)のライン洗液(line wash)を入れた。次に反
応混合物を約73℃の温度に約90分間保持した。4−ブロモ−2−フルオロアニリン(12.6g)をトルエン(30ml)に溶解し、73℃の反応混合物に入れ、この温度で約4時間撹拌を続けた。次にトリフルオロ酢酸(60ml)を73℃の反応混合物に加え、該反応混合物を73℃で6時間撹拌し、次いで60℃に冷却した。水(10.5ml)中水酸化カリウム(48〜50%w/w、16.1ml)を約30分かけて入れ、次いで60℃に1時間保持した。水(180ml)を反応混合物に約70分かけて加え、次いで7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリントリフルオロ酢酸塩の種(0.13g)を加えた。このバッチを60℃で約60分間保持し、次いで水(60ml)を約20分かけて加えた。該反応混合物を約2時間保持した後20℃に冷却し、生成物をろ過によって単離し、トルエン(50ml)及びメタノール/水(1:10、50ml)で洗浄し、50℃で乾燥させた。収率: 22 g, 89%; NMR スペクトル (DMSOd) 4.0 (s, 3H), 7.24 (s, 1H), 7.56 (m, 2H), 7.78 (d, 1H), 8.02 (s,
1H), 8.73 (s, 1H); 質量スペクトル (M+H)= 454.0591。
【0227】
実施例6
7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンの塩化水素塩(式IXの化合物の塩化水素塩)の製造
7−ベンジルオキシ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オン(30.00g)を、トリエチルアミン塩酸塩(2.99g)、アニソール(285ml)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(20.71g)と混合した。該反応混合物を窒素で不活化し、15℃に冷却した。オキシ塩化リン(21.4g)を反応混合物に15分かけて加え、次いでアニソール(30ml)洗液を加えた。次に該反応混合物を15℃で15分間撹拌し、次いで90分かけて80℃に加熱した。反応混合物を80℃で1時間撹拌した。4−ブロモ−2−フルオロアニリン(25.2g)のアニソール(15ml)中溶液を反応混合物に25分かけて加えた。該反応混合物を80℃で4時間撹拌した。塩化水素水溶液(35%w/w、122ml)及び酢酸(198ml)を反応混合物に入れた。該反応混合物を3時間撹拌した後、アニソール層を除去した。反応混合物を25℃に冷却し、固体をろ過によって単離した。収率: 13.9 g, 54%; NMR スペクトル(DMSOd) 4.0 (s, 3H), 7.43 (s, 1H), 7.5 (m, 2H), 7.7 (d, 1H), 8.37 (s, 1H), 8.72 (s, 1H); 質量スペクトル(M+H) = 454.0591。
【0228】
実施例7
7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンの塩化水素塩(式IXの化合物の塩化水素塩)の製造
オキシ塩化リン(6.0ml)を60分かけて、7−ベンジルオキシ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オン(10.0g)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(7.45ml)のトルエン(105ml)中撹拌スラリー(20℃)に加えた。該反応混合物を20℃で30分間撹拌後、反応混合物を90分かけて73℃に加熱し、次いで該温度でさらに3時間撹拌した。トルエン(20ml)中4−ブロモ−2−フルオロアニリン(8.4g)を73℃の反応混合物に加え、次いでトルエン洗液(5ml)を加えた。トリフルオロ酢酸(35ml、3.5vol)を10分かけて73℃の反応混合物に加え、次いで該反応混合物をその温度で5時間撹拌した。次に反応混合物を60℃に冷却し、水(175ml)を15分かけて加えた。次に反応混合物を68℃に温め、その温度で8時間撹拌した。次に該反応混合物を1時間かけて20℃に冷却し、生成物をろ過して取り出し、水(20ml)で洗浄した。収率: 11.56 g, 90%; NMR スペクトル(DMSOd
) 4.0 (s, 3H), 7.43 (s, 1H), 7.5 (m, 2H), 7.7 (d, 1H), 8.37 (s, 1H), 8.72 (s, 1H); 質量スペクトル(M+H) = 454.0591。
【0229】
実施例8
7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンのトリフルオロ酢酸塩(式IXの化合物のトリフルオロ酢酸塩)の製造
オキシ塩化リン(6.0ml)を15分かけて、7−ベンジルオキシ−6−メトキシ−3,4−ジヒドロキナゾリン−4−オン(10.0g)とトリエチルアミン(5.9ml)のトルエン(105ml)中撹拌スラリー(73℃)に加え、反応混合物をさらに3時間撹拌した。トルエン(20ml)中4−ブロモ−2−フルオロアニリン(8.4g)を73℃の反応混合物に加え、次いでトルエン洗液(5ml)を加えた。次いでトリフルオロ酢酸(35ml、3.5vol)を10分かけて73℃の反応混合物に加え、次いで該反応混合物をその温度でさらに5時間撹拌した。反応混合物を60℃に冷却し、水(175ml)を15分かけて加えた。次に反応混合物を68℃に温め、その温度で8時間撹拌した。スラリーを1時間かけて20℃に冷却し、生成物をろ過して取り出し、水(20ml)で洗浄した。収率: 11.24 g, 87%; NMR スペクトル(DMSOd) 8.72 (1H, s), 8.02 (1H, s), 7.76-7.73 (1H, m), 7.56-7.50 (2H, m), 7.25 (1H, s), 3.97 (3H, s); 質量
スペクトル (M+H) = 454.0591。
【0230】
実施例9
7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン(式Xの化合物)の製造
7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン(100g)と炭酸カリウム(113.8g)をN−メチルピロリジノン(1070ml)中に懸濁させ、10分間撹拌した後、1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−(4−メチルフェニルスルホニルオキシメチル)ピペリジン(152.2g)を加えた。次に該反応混合物を95℃で4時間加熱後70℃に冷却した。次に水(1922ml)を15分かけて加えた。該反応混合物を73℃で1時間保持した後40℃に冷却し、生成物をろ過によって単離した。該生成物を水(549ml)で洗浄し、50℃の酢酸エチル(549ml)で1時間スラリー洗浄し、次いで酢酸エチル(275ml)で洗浄して50℃で乾燥させた。収率: 137 g, 86%; NMR スペクトル(DMSOd) 1.15-1.3 (m, 2H), 1.46 (s, 9H), 1.8 (d, 2H), 2.0-2.1 (m, 1H), 2.65-2.9 (m, 2H) 3.95 (s, 3H), 4.02 (br
s, 2H), 4.05 (d, 2H), 7.2 (s, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.55 (t, 1H), 7.65 (d, 1H), 7.8 (d, 1H), 8.35 (s, 1H), 9.55 (br s, 1H); 質量スペクトル [ESI] (M+H)= 561-563。
【0231】
実施例10
7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン(式Xの化合物)の製造
7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン(5.0g)と炭酸カリウム(5.7g)をN−メチルピロリジノン(53.5ml)中に懸濁させ、10分間撹拌した。次に1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−(4−メチルフェニルスルホニルオキシメチル)ピペリジン(7.6g)を加えた。次に該反応混合物を95℃に加熱し、その温度で3.5時間撹拌した後70℃に冷却した。イソプロパノール(25ml)を加え、次いで水(75ml)を15分かけて加えた。次に該反応混合物を73℃で1時間撹拌後40℃に冷却して生成物をろ過により単離した。生成物を水(27.4ml)で洗浄し、50℃で乾燥させた。収率: 6.72 g, 87.2%; NMR スペクトル(DMSOd) 1.15-1.3 (m, 2H), 1.46 (s, 9H), 1.8 (d, 2H), 2.0-2.1 (m, 1H), 2.65-2.9 (m, 2H) 3.95 (s, 3H), 4.02 (br s, 2H), 4.05 (d, 2H), 7.2 (s, 1H), 7.48
(d, 1H), 7.55 (t, 1H), 7.65 (d, 1H), 7.8 (d, 1H), 8.35 (s, 1H), 9.55 (br s, 1H); 質量スペクトル [ESI] (M+H) = 561-563。
【0232】
実施例11
7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン(式Xの化合物)の製造
7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン(9.7g)、水酸化ナトリウム(47%w/w、5.0ml)及びAdogen(登録商標)464(1.5g)を水(50ml)に撹拌しながら加えた。次に、トルエン(35ml)中溶液としての1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−(4−メチルフェニルスルホニルオキシメチル)ピペリジン(10.0g)を反応混合物に加え、70℃で18時間加熱した。次に該反応混合物を20℃に冷却し、生成物をろ過により単離した。次いで生成物をトルエン(20ml)で洗浄し、50℃で乾燥させた。収率: 8.72 g, 77%; NMR スペクトル(DMSOd) 1.15-1.3 (m, 2H), 1.46 (s, 9H), 1.8 (d, 2H), 2.0-2.1 (m, 1H), 2.65-2.9 (m, 2H) 3.95 (s, 3H), 4.02 (br s, 2H), 4.05 (d, 2H), 7.2 (s, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.55 (t, 1H), 7.65 (d, 1H), 7.8 (d, 1H), 8.35 (s, 1H), 9.55
(br s, 1H); 質量スペクトル [ESI] (M+H)= 561-563。
【0233】
実施例12
4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474)の製造
7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン(100g)、水(80ml)、ギ酸(120ml)及びホルムアルデヒド水溶液(38%w/w、28.2g)を、オーバーヘッド撹拌機、還流冷却器を備え、窒素でパージした容器に加えた。該反応混合物を90分かけて80℃に加熱し、この温度で5時間撹拌した。次に反応混合物を20℃に冷却し、テトラヒドロフラン(500ml)を加えた。該反応混合物を40℃に温め、水酸化ナトリウム(47%w/w、265ml)を加え、次いで水(60ml)を加えた。水性相を分離して捨てた。有機相を60℃に調整し、水(300ml)及び酢酸ブチル(300ml)を加えた。得られた混合物を60℃で15分間撹拌した後、水性相を分離して捨てた。次に水(400ml)を有機相に加え、これを60℃で15分間撹拌した後、水性相を分離して捨てた。酢酸ブチル(300ml)とテトラヒドロフラン(50ml)を有機相に加え、周囲圧力で蒸留を行った。内容物の温度が104℃に達したら蒸留を停止した。次にスラリーを20℃に冷却し、2時間保持した後、生成物をろ過により単離した。生成物を酢酸ブチル(300ml)で洗浄し、50℃で乾燥させた。収率: 76.7 g, 90.6%; NMR スペクトル (ピリジン-d5) 1.49 (2H, m), 1.75-1.90 (5H, m), 2.15
(3H, s),2.76 (2H, m), 3.63 (3H, s), 3.97 (2H, d), 7.38 (1H, ddd), 7.49 (1H, dd), 7.64 (1H, s), 7.88 (1H, t), 7.89 (1H, s), 9.01 (1H, s), 10.37 (1H, s); 質量スペクトル (M+H) = 475。
【0234】
実施例13
4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474)の製造
7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(
4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン(35.0g)、水(28ml)、ギ酸(42ml)及びホルムアルデヒド水溶液(37%w/w、8.2g)を、オーバーヘッド撹拌機、還流冷却器を備え、窒素でパージした容器に加えた。該反応混合物を80℃に加熱し、この温度で5時間撹拌した。次に反応混合物を40℃に冷却し、テトラヒドロフラン(175ml)を加えた。水酸化ナトリウム(47%w/w、61.9ml)を40℃で加え、次いで水(21ml)を加えた。次に水性相を分離して捨てた。水(420ml)を有機相に40℃で30分かけて加えた。次にスラリーを20℃に冷却した後、生成物をろ過により単離した。生成物を水(175ml)で洗浄し、50℃で乾燥させた。収率: 27.1 g, 91.4 %; NMR スペクトル (ピリジン-d5) 1.49 (2H, m), 1.75-1.90 (5H, m), 2.15 (3H, s),2.76 (2H, m), 3.63 (3H, s), 3.97 (2H, d), 7.38 (1H, ddd), 7.49 (1H, dd), 7.64 (1H, s), 7.88 (1H, t), 7.89 (1H, s), 9.01 (1H, s), 10.37 (1H, s); 質量スペクトル (M+H) = 475。
【0235】
実施例14
4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474)の製造
7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン(100g)、水(80ml)、ギ酸(120ml)及びホルムアルデヒド水溶液(37%w/w、26.7g)を、オーバーヘッド撹拌機、還流冷却器を備え、窒素でパージした容器に加えた。該反応混合物を90分かけて80℃に加熱し、この温度で5時間撹拌した。次に反応混合物を60℃に冷却し、メタノール(800ml)を加え、次いで水酸化カリウム(49%w/w、228ml)を2時間かけて加えた。スラリーを2時間かけて20℃に冷却した後、生成物をろ過により単離した。生成物をメタノール水溶液(メタノール:水 2:1、300ml)で2回洗浄し、50℃で乾燥させた。収率: 79.6 g, 94%; NMR スペクトル (ピ
リジン-d5) 1.49 (2H, m), 1.75-1.90 (5H, m), 2.15 (3H, s), 2.76 (2H, m), 3.63 (3H, s), 3.97 (2H, d), 7.38 (1H, ddd), 7.49 (1H, dd), 7.64 (1H, s), 7.88 (1H, t), 7.89 (1H, s), 9.01 (1H, s), 10.37 (1H, s); 質量スペクトル(M+H)= 475。
【0236】
実施例15
4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474)の製造
7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン(100g)、水(45ml)、ギ酸(120ml)及びホルムアルデヒド水溶液(37%w/w、101.8g)を、オーバーヘッド撹拌機及び還流冷却器を備え、窒素でパージした容器に加えた。該反応混合物を90分かけて80℃に加熱し、この温度で5時間撹拌した。次に反応混合物を60℃に冷却し、メタノール(800ml)を加え、次いで水酸化カリウム(49%w/w、228ml)を2時間かけて加えた。スラリーを2時間かけて20℃に冷却した後、生成物をろ過により単離した。生成物をメタノール水溶液(メタノール:水 2:1、300ml)で2回洗浄し、50℃で乾燥させた。収率: 79.6 g, 94%; NMR スペクトル (ピリジン-d5) 1.49 (2H, m), 1.75-1.90 (5H, m), 2.15 (3H, s), 2.76 (2H, m), 3.63 (3H, s), 3.97 (2H, d), 7.38 (1H, ddd), 7.49 (1H, dd), 7.64 (1H, s), 7.88 (1H, t), 7.89 (1H, s), 9.01 (1H, s), 10.37 (1H, s); 質量スペクトル(M+H)= 475。
【0237】
実施例16
4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474)の製造
7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン(36g@100%w/w)、水(16ml)、ギ酸(44ml)及びホルムアルデヒド水溶液(37%w/w、36.4g)を、オーバーヘッド撹拌機及び還流冷却器を備え、窒素でパージした容器に加えた。該反応混合物を90分かけて80℃に加熱し、この温度で7時間撹拌した。次に反応混合物を60℃に冷却し、メタノール(376ml)を加え、次いで水酸化カリウム(49%w/w、86ml)を2時間かけて加えた。スラリーにZD6474の種を入れ(メタノレート形、300mg)、2時間かけて20℃に冷却した後、生成物をろ過により単離した。生成物をメタノール水溶液(メタノール:水 80:20、67ml)で2回洗浄し、周囲温度で乾燥させた。収率: 32.4 g, 95%; NMR スペクトル (ピリジン-d5) 1.49 (2H, m), 1.75-1.90 (5H, m), 2.15 (3H, s), 2.76 (2H, m), 3.63 (3H, s), 3.97 (2H, d), 7.38 (1H, ddd), 7.49 (1H, dd), 7.64 (1H, s), 7.88 (1H, t), 7.89 (1H, s), 9.01 (1H, s), 10.37 (1H, s); 質量スペクトル(M+H) = 475。
【0238】
実施例17
4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474)の精製
実施例9に記載のようにして製造された4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(100g)を、テトラヒドロフラン(500ml)、水(250ml)及び酢酸ブチル(400ml)中に懸濁させ、加熱還流して溶解させた。次に該混合物を60℃に冷却し、水性相を分離して捨てた。有機相はろ過した。テトラヒドロフラン(50ml)と酢酸ブチル(600ml)を有機ろ液に加え、次いで加熱して内部温度が106℃に達するまで周囲圧力で蒸留した。次にスラリーを5℃に冷却し、ろ過し、酢酸エチル(200ml)で洗浄した。生成物を50℃で乾燥させた。収率: 91.8g, 91.8%; NMR スペクトル (ピリジン-d5) 1.49 (2H, m), 1.75-1.90 (5H, m), 2.15 (3H, s), 2.76 (2H, m), 3.63 (3H, s), 3.97 (2H, d), 7.38 (1H, ddd), 7.49 (1H, dd), 7.64 (1H, s), 7.88 (1H, t), 7.89 (1H, s), 9.01 (1H, s), 10.37 (1H, s); 質量スペクトル(M+H)= 475。
【0239】
実施例18
4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474)の製造
7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリン(40g)、水(16ml)、ギ酸(43ml)及びホルムアルデヒド水溶液(37%w/w、33ml)を、オーバーヘッド撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えた容器に加えた。該反応混合物を81℃に加熱し、この温度で5時間撹拌した。反応混合物を60℃に冷却し、テトラヒドロフラン(178ml)を加えた。反応混合物の温度を40℃に調整し、水酸化カリウム(49%w/w、84ml)を加え、次いで水(22ml)を加えた。水性相を分離して捨てた。有機相を60℃に調整し、水(107ml)と酢酸ブチル(107ml)を加えた。水性相を分離して捨てた。テトラヒドロフラン(18ml)洗液を通した後、有機相をろ過した。ろ液の温度を60℃に調整し、酢酸ブチル(107ml)を加えた。反応混合物を周囲圧力で蒸留した。蒸留は内容物の温度が106℃に達したら停止した。スラリーを65℃に冷却し、テトラヒドロフラン(107ml)を加えた。スラリーを0〜5℃に冷却し、1時間保持した後、生成物をろ過により単離した。生成物を酢酸エチル(72ml)で洗浄し、50℃で乾燥させた。収率: 24.82 g, 80.3%。
【0240】
実施例19
無水ZD6474のX線粉末回折
本発明の方法によって無水形のZD6474が合成される。無水形のZD6474をX線粉末回折によって特性決定すると、CuKα線を用いる測定で次の2シータ値、すなわち15.0°と21.4°の少なくとも一つを提供することを特徴とする。無水形のZD
6474は、図1に示すようなCuKα X線粉末回折パターンを提供することを特徴とする。10大ピークを表1に示す。
【0241】
【表1】

【0242】
【表2】

【0243】
分析機器:Siemens D5000、石英を用いて較正。
X線粉末回折スペクトルの測定は、結晶ZD6474材料のサンプルをSiemensの単シリコン結晶(SSC)ウェハマウントに載せ、顕微鏡用スライドを用いて該サンプルを薄い層に広げることによって行う。サンプルを毎分30回回転させ(計数統計を改良するため)、X線を照射する。X線は40kV及び40mAで作動させた銅のロングファインフォーカス管によって発生させ、波長1.5406オングストロームのCuKα線を用いる。平行X線源はV20にセットされた自動可変発散スリットを通過し、反射された放射線は2mmの散乱防止スリット(antiscatter slit)を通って0.2mmの検出器スリットに向かう。サンプルは、シータ−シータモードで2度から40度の2シータ範囲にわたって0.02度の2シータ増分あたり1秒間暴露される(連続スキャンモード)。運転時間は31分41秒となる。該機器は検出器としてシンチレーション計数管を備えている。対照及びデータ収集は、Diffract+ソフトウェアで動作するDell Optiplex 686 NT 4.0 Workstationによって行う。X線粉末回折の分野の専門家であれば、ピークの相対強度は、例えば30ミクロンを超えるサイズの粒子やサンプルの分析に影響を与えかねないノンユニタリー(non-unitary)なアスペクト比
によって影響されうることは分かるであろう。また、当業者であれば、反射の位置は、回折計の中でのサンプルの位置の正確な高さ及び回折計のゼロ較正によって影響されうることも分かるであろう。サンプル表面の平面性も多少の影響を及ぼしうる。従って、提示されている回折パターンデータは絶対的な値と解釈すべきでない。
X線粉末回折に関する更なる情報を求める読者は、Jenkins,R & Snyder,R.L.‘Introduction to X−Ray Powder Diffractometry’John Wiley & Sons 1996;Bunn,C.W.(1948),Chemical Crystallography,Clarendon Press,London;Klug,H.P.& Alexander,L.E.(1974),X−Ray Diffraction Proceduresを参照のこと。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIa:
【化1】

[式中、Rは適切なスルホン酸エステルである]の化合物を、式III:
【化2】

の(C1−C6)アルキル−4−ピペリジンカルボキシレート化合物から製造する方法であって、該方法は、
(a)式IIIの(C1−C6)アルキル−4−ピペリジンカルボキシレート化合物を、トルエン又はキシレンの存在下でジ−tert−ブチルジカルボネートと反応させて、トルエン又はキシレンと、tert−ブタノールと、式IV:
【化3】

の化合物とを含む第一の混合物を形成させる工程と;
(b)tert−ブタノールを第一の混合物から実質的に除去する工程と;
(c)式IVの化合物をトルエン又はキシレンの存在下でその場で適切な還元剤と反応させて、トルエンと、アルコール副産物を含む還元副産物と、式V:
【化4】

の化合物とを含む第二の混合物を形成させる工程と;
(d)アルコール副産物を第二の混合物から実質的に除去する工程と;そして
(e)式Vの化合物を適切な塩基及びトルエンの存在下で、スルホン酸エステルを形成させるためにその場で適切なスルホニル化剤と反応させて式IIaの化合物を得る工程とを含む方法。
【請求項2】
式IIaの化合物が式II:
【化5】

の化合物であり、スルホン化剤が塩化トシルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式IIIの(C1−C6)アルキル−4−ピペリジンカルボキシレート化合物がエチル−4−ピペリジンカルボキシレートである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)において、還元剤が、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化リチウムアルミニウム及び水素化ジイソブチルアルミニウムから選ばれる、請求項1又は2又は3に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)において、還元剤が水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(e)において、塩基がトリエチレンジアミンである、請求項1〜5のいずれか1項又は複数項に記載の方法。
【請求項7】
式IIaの化合物を単離する工程(f)をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項又は
複数項に記載の方法。
【請求項8】
工程(f)がトルエン及びイソヘキサン溶媒系を用いる結晶化を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式VI:
【化6】

[式中、Rは酸に不安定な保護基である]の化合物を、式VII:
【化7】

の化合物から製造する方法であって、該方法は、
(g)式VIIの化合物を適切な塩基及び適切な溶媒の存在下で適切な塩素化剤と反応させる工程において、反応を、
(g−1)溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物を溶媒中の塩素化剤の混合物に60〜90℃の範囲の温度で約60分かけて加えるか;又は
(g−2)塩素化剤を溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物に周囲温度で約15分かけて加えた後、反応混合物を約90分かけて70〜90℃の範囲の温度に加熱し、該反応混合物を該温度で約1時間撹拌するか;又は
(g−3)塩素化剤を溶媒中の式VIIの化合物と塩基の混合物に60〜110℃の範囲の温度で約15分かけて加えることによって実施して、式VIII:
【化8】

の化合物を形成させる工程と;そして
(h)式VIIIの化合物を4−ブロモ−2−フルオロアニリンと、工程(g)で使用された溶媒の存在下、その場で反応させて式VIの化合物の塩酸塩を形成させる工程とを含み;
その後、必要であれば、塩酸塩の形態で得られた式VIの化合物は遊離塩基又は他の塩の形態に変換することができる
上記方法。
【請求項10】
工程(g)及び(h)がいずれもトルエン中で実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(g)で使用される塩素化剤がオキシ塩化リンである、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
工程(g)で使用される塩基が、トリエチルアミン及びN,N−ジイソプロピルエチルアミンから選ばれる、請求項9〜11のいずれか1項又は複数項に記載の方法。
【請求項13】
式VIの化合物を単離する工程(i)をさらに含む、請求項9〜12のいずれか1項又は複数項に記載の方法。
【請求項14】
式IX:
【化9】

の化合物である7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンを、式VII:
【化10】

[式中、Rは酸に不安定な保護基である]の化合物から製造する方法であって、該方法は、式VIIの化合物を式VI:
【化11】

の化合物に、請求項9〜12のいずれか1項又は複数項に記載の方法を実施することによって変換する工程と;そして
(j)式VIの化合物から、工程(g)及び(h)で使用された溶媒の存在下で、Rをその場で除去して式IXの化合物又はその塩を形成させる工程とを含み;
その後、必要であれば、遊離塩基の形態で得られた式IXの化合物は塩形に変換することができ、塩の形態で得られた式IXの化合物は遊離塩基又は他の塩の形態に変換することができる
上記方法。
【請求項15】
がベンジルであり、工程(j)で該ベンジル基は60〜80℃の範囲の温度でトリフルオロ酢酸との反応によってその場で除去される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
がベンジルであり、該ベンジル基はトリフルオロ酢酸の存在下で除去され、式IXの化合物は、水酸化カリウムの添加又は水酸化ナトリウムと水の添加によってトリフルオロ酢酸塩に変換される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
式IX:
【化12】

の化合物である7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンを、式VII:
【化13】

の化合物から製造する方法であって、該方法は、式VIIの化合物を式VI:
【化14】

の化合物に、請求項13に記載の方法を実施することによって変換する工程と;そして
(k)式VIの化合物からRを除去して式IXの化合物又はその塩を形成させる工程とを含み;
その後、必要であれば、遊離塩基の形態で得られた式IXの化合物は塩形に変換することができ、塩の形態で得られた式IXの化合物は遊離塩基又は他の塩の形態に変換することができる
上記方法。
【請求項18】
がベンジルであり、工程(k)で該ベンジル基は適切な水素化剤との反応によって除去される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
式X:
【化15】

の化合物である7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンを、式VII:
【化16】

の化合物から製造する方法であって、該方法は、式VIIの化合物を式IX:
【化17】

の化合物に、請求項14〜17のいずれか1項又は複数項に記載の方法を実施することによって変換する工程と;そして
(l)式IXの化合物を式II:
【化18】

の化合物と適切な塩基の存在下で反応させて式Xの化合物又はその塩を得る工程とを含み;
その後、必要であれば、遊離塩基の形態で得られた式Xの化合物は塩形に変換することができ、塩の形態で得られた式Xの化合物は遊離塩基又は他の塩の形態に変換することができる
上記方法。
【請求項20】
工程(l)で使用される塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
式Xの化合物を単離する工程(m)をさらに含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
式X:
【化19】

の化合物である7−(1−tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメトキシ)−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンを、式IX:
【化20】

の化合物である7−ヒドロキシ−4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシキナゾリンから製造する方法であって、該方法は、
(l)式IXの化合物を式II:
【化21】

の化合物と適切な塩基の存在下で反応させて式Xの化合物又はその塩を得る工程と;そして
(m)式Xの化合物を、
(m−1)水を添加して式Xの化合物の結晶化を起こさせ、式Xの化合物を回収し、そして式Xの化合物を水で洗浄し、その後25〜55℃の範囲の温度の酢酸エチル、酢酸ブチル及びアセトニトリルから選ばれる溶媒で洗浄するか;又は
(m−2)水と、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn−プロパノールから選ばれるアルコールを添加して式Xの化合物の結晶化を起こさせ、式Xの化合物を回収し、そして式Xの化合物を水とメタノール、エタノール、イソプロパノール及びn−プロパノールから選ばれるアルコールとの混合物で洗浄し、その後25〜55℃の範囲の温度の酢酸エチル、酢酸ブチル及びアセトニトリルから選ばれる溶媒で洗浄する
ことによって単離する工程とを含み;
その後、必要であれば、遊離塩基の形態で得られた式Xの化合物は塩形に変換することができ、塩の形態で得られた式Xの化合物は遊離塩基又は他の塩の形態に変換することができる
上記方法。
【請求項23】
工程(l)で使用される塩基が、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
工程(l)で使用される式IIの化合物が、請求項1〜8のいずれか1項又は複数項に記載の方法に従って製造される、請求項19〜23のいずれか1項又は複数項に記載の方法。
【請求項25】
4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリンであるZD6474:
【化22】

を式X:
【化23】

の化合物から製造する方法であって、該方法は、
(n)式Xの化合物をギ酸及びホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドのポリマーと反応させてZD6474のギ酸塩を形成させる工程と;
(o)不活性有機溶媒と適切な塩基を添加してZD6474の遊離塩基を形成させる工程とを含み;
その後、必要であれば、遊離塩基の形態で得られたZD6474は製薬学的に許容しうる塩に変換することができる
上記方法。
【請求項26】
工程(n)が70〜90℃の範囲の温度の水中で実施される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程(o)で使用される不活性有機溶媒が、テトラヒドロフラン、ブチロニトリル及びメタノールから選ばれる、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
工程(o)で使用される塩基が水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
工程(n)で使用される式Xの化合物が、請求項19〜24のいずれか1項又は複数項に記載の方法に従って製造される、請求項25〜28のいずれか1項又は複数項に記載の方法。
【請求項30】
ZD6474を、テトラヒドロフラン、水及び酢酸ブチルの混合物中でさらに精製して無水結晶形を提供することをさらに含む、請求項25〜29のいずれか1項又は複数項に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−63998(P2013−63998A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−259782(P2012−259782)
【出願日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【分割の表示】特願2008−532864(P2008−532864)の分割
【原出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】