説明

化学誘引物質に対する増大させた感受性を有する幹細胞およびそれを産生および使用する方法

本発明は、化学的誘引物質に対する増大された感受性を示す幹細胞、さらに詳細には、幹細胞移植を含む臨床用途でのようなそれらの産生および使用の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的誘引物質(chemoattractant)に対する増大された感受性を示す幹細胞、さらに詳細には、幹細胞移植を含む臨床用途でのようなそれらの産生および使用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異常な臓器機能により引き起こされる障害の臨床的治療では、典型的にはこのような異常な臓器機能を補正するか、または機能不全の臓器組織を治療するために設計される薬剤を使用する。しかし、ある種の場合には、薬学的治療は、臓器機能がしばしば複雑であり、および/または、完全には理解されていないので授けられ得ない。
【0003】
このような場合には、唯一の生存可能な選択肢は、非機能的臓器の外科的置換であり、そしてそれは、現在、急性および慢性の両方の肝臓および腎臓不全の治療のために、並びに、癌および特定の先天性異常の治療のために広く使用されている。しかし、提供者の臓器の必要性は、その供給をはるかに超過している。臓器不足は、移植用の成人臓器を分割などの新たな外科的技術を生じた。十分に素晴らしい結果にもかかわらず、このような技術は、なお、提供者の組織の不足に悩んでいる。
【0004】
生存可能なドナー組織の不足は、幹細胞の柔軟性、すなわち、新しい場所において幹細胞が配置されるその臓器には通常は存在しない細胞種を生じる能力に依存する幹細胞交換療法の出現をもたらした。
【0005】
幹細胞は、一般に、それらの起源、特に成人、胚性または新生児の起源によって分類される。胚盤胞の内細胞塊に由来する胚性幹細胞は、多能性であり、そして全3つの胚葉に見出される細胞になり得る。長年信じられてきたにもかかわらず、成人の幹細胞は、以前に考えられていたようには、系統的に限定されない。特に、造血および神経系の幹細胞は、系統的境界を越えて最も多様性があるように見える。たとえば、最近の報告は、ヒト起源の造血幹細胞(HSC)が、肝性の(hepatic)潜在性を有することを示唆している。性別の不一致の提供者からの肝臓または骨髄移植の研究では、レシピエントにおいて骨髄由来の造血細胞を確認した[Alison(2000年)Nature 406巻:257頁、Theise(2000年)Hepatology 32巻:11-16頁、Korbling(2002年)N Engl J Med 346巻:738−746頁]。マウスおよびラットHSCも、照射または損傷を受けた成体肝臓に移動し、そして肝細胞に分化することも明らかになった[Petersen(1999年)、Science 284巻:1168−1170頁、Theise(2000年)Hepatology 31巻:235−240頁、Lagasse(2000年)Nat Med 6巻:1229−1234頁]。さらに、マウス造血幹細胞の単回移植では、照射を受けたレシピエントの肝臓において、肝上皮細胞の免疫組織化学的および形態学的特性を示す低い含有率の移植細胞を有するHSC由来の細胞を検出した[Krause(2001年)、Cell 105巻:369−377頁]。
【0006】
造血幹細胞の循環を誘導する機構は、幹細胞移植の成功がレシピエント標的組織に対する移植細胞の十分な標的化(ホーミングとも称される)によるので、臨床的に重要である[Mazoおよびvon Adrian(1999年)、Journal of leukocyte Biology 66巻、25−32頁]。あらゆる他の臓器の移植での場合と同様に、骨髄移植は浸潤的手術を必要としないが、むしろ単純な静脈灌流により達成される可能性があるのは、移植細胞のこのホーミングによる。
【0007】
HSCのホーミングは、循環中のHSCに、骨髄上皮細胞を識別させ、それに付着させ、そしてそれに渡って移動させる一連の分子相互作用として定義され、そして骨髄の特徴的な造血促進微環境(hematopoiesis-promoting microenvironment)でのHSCの蓄積を生じうる。前駆細胞のホーミングは、多段階現象として考えられうる[Voermans(2001年)、J.Hematother.Stem Cell Res.10巻:725−738頁、Lapidot(2002年)、Leukemia 16巻:1992−2003頁]。骨髄に出現するHSCは、骨髄内皮の管腔表面と最初に相互作用する必要がある。この相互作用は、HSCが微小血管(microvasculature)に入った後数秒以内に起こるはずであり、そして粘着細胞が、流動中の血液によって発揮されるずれ応力(shear force)に抵抗することを可能にするのに十分な物理的強度を供する。付着したHSCは、その後、内皮層を通過して、造血区分に入るに違いない。溢出した後にHSCは、系統特異的HSC分化、増殖および成熟に加えて、ストローマ細胞由来のサイトカインおよび他の成長シグナルに関与する過程である、ジャクスタポジションが自己更新過程により未熟なプールの維持をサポートする特化されたストローマ細胞に出会う。
【0008】
幹細胞ホーミングに関与するほんの限定された数の因子が、現在までに知られている;これらには、c−キット(c-kit)用のリガンド、幹細胞因子が含まれ、そしてそれは、基質に対するHSCの接着での主要な役割を果たすことが示された[Peled(1999年)Science 283巻:845−848頁];さらにインテグリン相互作用(たとえば、β1−インテグリン)が含まれ、そしてそれは、胎児の肝臓へのHSCの遊走に重要であることが示された[Zanjani(1999年)Blood94巻:2515−2522頁]。
【0009】
HSCホーミングに重要であると見なされる1つの重要な分子相互作用は、ケモカインであるストローマ細胞由来因子(SDF−1)およびそれの同種の受容体CXCR4によるものである。
【0010】
SDF−1は、今までに知られているヒト[Aiuti(1997年)J.Exp.Med.185巻:111−120頁]およびマウス[Wright(2002年)J.Exp.Med.195巻:1145−1154頁]両方の起源の造血幹細胞に対する唯一の強力な化学誘引物質である。SDF−1は、たとえば肝臓[Shirozu(1995年)Genomics 28巻:495−500頁;Nagasawa(1996年)Nature 382巻:635−638頁;Goddard(2001年)Transplantation 72巻:1957−1967頁]など、発生過程[McGrath(1999年)Dev.Biol.213巻:442−456頁]から成人期[Nagasawa(1994年)Proc Natl Acad Sci USA 91巻:2305−2309頁;Imai(1999年)Br J Haematol 106巻:905−911頁;Pablos(1999年)Am J Pathol 155巻:1577−1586頁]にわたって幅広く多数の組織で広く発現されている。これまでに本発明者らは、ソートしたヒトCD34+/CD38-/低幹細胞を、照射を受けた免疫欠損種NOD/SCIDおよびNOD/SCID/B2mヌルマウスの尾部静脈に、移植したことによって、骨髄へのホーミングおよび再構築(repopulation)が、SDF−1/CXCR4相互作用に依存することを示せた[Peled(1999年)Science 283巻:845−848頁;Kollet(2001年)Blood 97巻:3283−3291頁]。
【0011】
より最近、本発明者らは、マウスおよびヒト幹細胞のG−CSF誘導可動化(G-CSF-induced mobilization)におけるこれらの相互作用についての役割も確立した[Petit(2002年)Nat Immunol 3巻:687−694頁]。
【0012】
幹細胞療法の用途をいっそう拡張していくことの観点から、細胞置換療法(cell replacement therapy)の効率および成功率を改善するために、幹細胞ホーミングおよび標的再構築の背後の機構をさらに解明することは非常に望ましい。
【0013】
肝細胞成長因子(HGF)は、成熟肝細胞に対する強力な分裂促進因子として最初に発見されており、プラスミノーゲンと構造相同性を有するクリングル含有ポリペプチド成長因子(kringle-containing polypeptide growth factor)である[Nakamura(1984年)Biochem.Biophys.Res.Commun.122巻:1450頁;Nakamura(1987年)FEBS Lett 224巻:311頁;Gohda(1988年)J.Clin.Invest.81巻:414頁;Zanegar Cancer Res.49巻:3314頁;Nakamura(1989年)Nature 342巻:440頁]。
【0014】
HGFは、様々な種類の細胞において、細胞成長、細胞運動性および形態形成を調節する間葉由来の多面因子(pleiotropic factor)である[Matsumoto(1993年)Goldberg ID,Rosen EM(編):Hepatocyte Growth Factor-Scatter Factor(HG-SF) and C-met Receptor,スイス国バーゼル、ビルクハウザー・ベルラグ、1993年、225頁;Gherardi(1990年)Nature 346巻:228頁;Weidner(1990年)J.Cell Biol.111巻:2097頁;Higasho(1990年)Biochem.Biophys.Res.Commun.170巻:397頁;Rubin(1991年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88巻:415頁]。C−met癌原遺伝子(C-met proto-oncogene)は、今までに唯一知られている天然のHGF受容体である。HGFは、様々な組織および臓器の器官形成、臓器の再生および成長、腫瘍細胞の浸潤および転移、に起因する上皮−間葉相互作用の液体メディエーター(humoral mediator)と考えられている[Matzumoto(1996年)J.Biochem.119巻:591頁]。造血系においてHGFは、造血前駆細胞の成長を促進する[Kmiecik(1992年)Blood 80巻:2454頁;Nishino(1995年)Blood 85巻:3093頁;Mizuno(1993年)Biochem.Biophys.Res.Commun.194巻:178頁;Galimi(1994年)J.Cell Biol. 127巻:1743頁]。興味深いことに、ラットの肝臓を四塩化炭素で刺激した後に、HGFをインサイチューハイブリダイゼーション(in-situ hybridization)で測定したところ、急性肝障害がHGFの発現を誘発することが報告された[CCl4、Armbrust(2002年)Liver 22巻:486−494頁]。
【0015】
造血系において考えられる役割が示唆されてはいるが、HGFと造血細胞との相互作用に関する情報は不完全である。HGFは、ヒト骨髄ストローマ細胞により構造的に(constitutively)産生されることが発見された[Takai(1997年)Blood 89巻:1560−1565頁]。最近、骨髄(BM)または胎児肝臓から濃縮された、マウスミエロイド前駆体細胞株およびマウス造血前駆細胞(HPC)の増殖においてHGFがGM−CSFおよびIL−3と相乗作用をすることが発見された[Kmiecik(1992年)Blood 80巻:2454−2457頁;Mizuno(1993年)上記;Nishino(1995年)Blood 85巻:3093−3100頁]。さらには、ヒトHPCにおける他の成長因子とHGFとの相乗的な増殖効果が観察され、そしてCD34+HPCにおけるC−metの発現もまた検出された[Galami(1994年)J.Cell Biol.127巻:1743−1754頁;Goff(1996年)Stem Cells 14巻:592−602頁;Weimer(1998年)Exp.Hematol.26巻:885−894頁]。
【0016】
本発明を実施化しつつ、本発明者らは、HGFが、CXCR4発現をアップレギュレート(upregulate)でき、そしてSDF−1/CXCR4依存的幹細胞運動性および標的組織への遊走を促進することを解明した。これらの所見は、標的組織への幹細胞補充を刺激する新規アプローチを供し、そしてそれだけで、様々な細胞および組織交換プロトコールで使用されうる。
【発明の開示】
【0017】
本発明の1つの態様によれば、幹細胞を、幹細胞の少なくとも1種の化学誘引物質受容体のレベル(level)を増大させて、それにより化学誘引物質に対する幹細胞の感受性を増大させる能力があるHGFまたはそれの活性部分にさらすことを包含する、化学誘引物質に対する幹細胞の感受性を増大させる方法が提供される。
【0018】
本発明の別の態様によれば、それを必要とする対象(subject)に、幹細胞の少なくとも1種の化学誘引物質受容体のレベルを増大させて、それによりその対象における細胞または組織交換を必要とする障害を処理する能力があるHGFまたはそれの活性部分で予備処理した幹細胞の治療上有効な量を供することを包含する、細胞または組織交換を必要とする障害を治療する方法が提供される。
【0019】
本発明のさらに別の態様によれば、それを必要とする対象に、該幹細胞の少なくとも1種の化学誘引物質受容体のレベルを増大させて、それにより細胞または組織交換を必要とする障害を処理する能力があるHGFまたはそれの活性部分の治療上有効な量を供することを包含する、細胞または組織交換を必要とする障害を治療する方法が提供される。
【0020】
本発明のさらに別の態様によれば、標的組織に対する幹細胞のホーミングを増大させるための医薬品の製造のためのHGFまたはそれの活性部分の用途が提供される。
【0021】
(a)幹細胞を採取(collect)すること、
(b)該幹細胞を、HGFまたはそれの活性部分にさらすこと、および
(c)所定の閾値より上のCXCR4レベルを示す幹細胞を単離して、それにより、移植に適した幹細胞を産生させることを包含するものである、移植に適した幹細胞を産生させる方法が提供される。
【0022】
下に記述される本発明の好ましい実施態様での別の特徴によれば、該幹細胞を採取することは、(i)幹細胞可動化手段(stem cell mobilization procedure);および/または(ii)外科的手段によって達成される。
【0023】
記述される好ましい実施態様でのさらに別の特徴によれば、該所定の閾値より上のCXCR4レベルを示す幹細胞を単離することは、FACSによって達成される。
【0024】
記述される好ましい実施態様でのさらに別の特徴によれば、その方法は、さらに、段階(c)に続いて所定の閾値より上のCXCR4レベルを示す幹細胞のホーミング能力を決定することを包含する。
【0025】
本発明のさらに追加の態様によって、HGFまたはそれの活性部分をコードする第一のポリヌクレオチド配列、および細胞中のポリヌクレオチドの発現を指示する誘導性シス作用調節因子(cis-acting regulationary element)を包含する核酸構築物が提供される。
【0026】
記述される好ましい実施態様におけるさらに別の特徴によれば、誘導性シス作用調節因子は、ずれ応力活性化因子(shear stress activation element)である。
【0027】
記述される好ましい実施態様におけるさらに別の特徴によれば、核酸構築物は、さらに、第一のポリヌクレオチド配列に翻訳で融合される(translationally fused)第二のポリヌクレオチド配列を包含し、そしてその第二のポリヌクレオチド配列は、細胞の中から外へのHGFまたはそれの活性部分の分泌を指示する能力のある単独ペプチドをコードする。
【0028】
本発明のさらに追加の態様によれば、核酸構築物を包含する真核生物の細胞が提供される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、HGFまたはそれの活性部分をコードする外因性ポリヌクレオチドを発現するために形質転換した幹細胞を包含する細胞株の提供がある。
【0030】
本発明のさらに別の態様によれば、(i)幹細胞;および(ii)該幹細胞の少なくとも1種の化学誘引物質受容体のレベルを増大させる能力のあるHGFまたはそれの活性部分のそれぞれを発現するフィーダー細胞を包含する細胞培養物(cell culture)の提供がある。
【0031】
本発明のさらに別の態様によれば、さらに、幹細胞の内因性HGFまたはそれの活性部分の発現または活性をアップレギュレートして、それにより化学誘引物質に対する幹細胞の感受性を増大させることを包含するものである、化学誘引物質に対する幹細胞の感受性を増大させる方法が提供される。
【0032】
本発明のさらに別の態様によれば、幹細胞の運動性を増大させる能力があるHGFまたはそれの活性部分に、幹細胞をさらすことを包含する、幹細胞運動性を増大させる方法が提供される。
【0033】
本発明のさらに別の実施態様によれば、少なくとも1つの化学誘引物質受容体がCXCR4である。
【0034】
本発明のさらに別の実施態様によれば、その方法は、さらに、成長因子および/またはサイトカインに幹細胞をさらすことを包含する。
【0035】
本発明のさらに別の実施態様によれば、該成長因子および/またはサイトカインが、SCFおよびIL−6よりなる群から選択される。
【0036】
本発明のさらに別の実施態様によれば、幹細胞は、造血幹細胞である。
【0037】
本発明のさらに別の実施態様によれば、造血幹細胞は、CD34+造血幹細胞である。
【0038】
本発明のさらに別の実施態様によれば、造血幹細胞は、CD34+/CD38-/低造血幹細胞である。
【0039】
本発明のさらに別の実施態様によれば、造血幹細胞は、間葉幹細胞である。
【0040】
本発明のさらに別の実施態様によれば、HGFまたはそれの活性部分に幹細胞をさらすことは、(i)幹細胞中のHGFまたはそれの活性部分をコードするポリヌクレオチドを発現させ;および/または(ii)HGFまたはそれの該活性部分と、幹細胞を接触させることによって達成される。
【0041】
本発明のさらに別の実施態様によれば、その方法は、さらに、HGF−受容体に幹細胞をさらすことを包含する。
【0042】
本発明のさらに別の実施態様によれば、臓器炎症および/または損傷に罹っている対象に、HGFまたはそれの活性部分単独、またはSCFと一緒に投与すること包含する、損傷臓器に対する自家前駆細胞(self progenitor cells)の自家再増殖(self repopulation)および/または自家移植(self engraftment)を促進する方法の提供がある。
【0043】
本発明のさらに別の実施態様によれば、幹細胞およびSCFの運動性を増大させる能力があるHGFまたはそれの活性部分を包含する医薬組成物を提供し、そしてさらに詳細には、細胞または組織交換を必要とする障害を治療するための医薬組成物を提供する。
【0044】
本発明は、化学誘引物質に対する感受性が増大したことを示す幹細胞、およびそれを産出および使用する方法を提供することによって、現在知られている構成の欠点に首尾よく対処する。
【0045】
別段の規定のない限り、ここに使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を示す。ここに記述されるものに類似か、または等価な方法および材料は、本発明の実施または試験に使用されうるが、適切な方法および材料は以下に記述される。論争の場合には、定義を含めた特許明細書がコントロールするであろう。さらに、材料、方法および実施例は、例示のみであって、限定することが意図されない。多数の指示。
【0046】
本発明を、添付の図面を参照して、実施例としてのみによって記述する。ここで、詳細に図面に関して特に、示される詳細は、実施例により、そして本発明の好ましい実施形態の例示の検討の目的のみであり、そして本発明の原理および概念上の実施態様の最も有用で十分に理解される説明を提供する根拠に現れると強調される。これに関して、本発明を基本的に理解するのに必要であるよりさらに詳細に本発明の構造的詳細を示す試みはなされておらず、図面と一緒になった説明は、本発明のいくつかの形態がどのように実際に実現されうるかを当業者に明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明は、化学誘引物質に対して増大した感受性を示す幹細胞、およびそれを産生および使用する方法に関する。特に、本発明は、たとえば慢性または急性肝臓損傷を治療するような細胞または組織交換を必要とする障害を治療することを可能にする。
【0048】
本発明の原理および操作は、図面および付随の説明を参照してよりよく理解されうる。
【0049】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、以下の記述で開示されるか、または実施例によって具体化された詳細にその用途が限定されないと理解すべきである。本発明は、他の実施形態を含むことができ、または種々の方法で実施または実行されうる。さらに、ここに使用される語法および用語は、説明の目的のためであって、限定すると見なされるべきでないことを理解されるべきである。
【0050】
細胞療法の用途は急速に成長しており、そして種々の障害の治療において次第に重要な治療様式になりつつある。造血幹細胞(HSC)(たとえば、骨髄から、臍帯血(umbilical cord blood )または可動化末梢血(mobilized peripheral blood))移植は、日常的に実施される保証償還細胞療法(insurance-reimbursed cellular therapy)の1つの例である。しかし、癌および感染性疾患についての免疫療法、軟骨欠損のための軟骨細胞療法、神経変性疾患のための神経細胞療法、および膨大な用途のための幹細胞療法を含めた多くの他の細胞療法が、同様に開発されつつある[Forbes(2002年)Clinical Science 103巻:355−369頁]。
【0051】
幹細胞療法に関連した問題の1つは、標的組織における細胞の長期間にわたる首尾よい移植を達成することの困難さである。最近、首尾よく移植された患者でも、非常に低いレベルの幹細胞および望ましい表現型を示す細胞を産生する未熟な前駆体(immature progenitors)を示している。
【0052】
したがって、幹細胞移植の成功は、静脈内注入した幹細胞が標的組織(たとえば、骨髄)に留まる幹細胞の能力に依存するのであり、そしてこのプロセスは、ホーミングと称される。ホーミングは多段階プロセスであり、骨髄洞様毛細血管の内皮細胞への幹細胞の接着、続いて化学誘引物質により導かれるトランス内皮遊走(transendothelial migration)により構成され、そして最後に、増殖および分化が起こる骨髄空間管外(extravascular bone marrow spaces)に定着することからなると仮定されている。
【0053】
研究により、接着分子、サイトカインおよび成長因子を含めた膨大な因子が、ホーミング過程に関与することが示された。1997年に、研究は、CD34+細胞の遊走(migration)が、化学誘引物質SDF−1によって支配されることを明らかにした。継続的研究は、インビトロにおいて、SDF−1がHSC上のインテグリンを活性化させ、HSCのトランス内皮遊走を誘発することを示した。SDF−1の受容体は、Gタンパク質に連動した受容体(G-protein coupled receptor)であり、CXCR−4と称される。SDF−1またはCXCR−4ノックアウトマウスにおいて造血前駆体が、胎児発生のあいだに骨髄に移行しないことは、SDF−1/CXCR−4相互作用が、幹細胞遊走において重要な役割を担うことを示唆する[総説としては、Voermans(2001年)J.Hematother.Stem Cell Res.10巻:725−738頁、Lapidot(2002年)Leukemia 16巻:1992−2003頁を参照]。
【0054】
ホーミングプロセスの予備段階の理解にもかかわらず、幹細胞の遊走の調節についての情報は、いまだに、不完全および散漫である。幹細胞移植の効率の向上は、標的組織にホーミングする幹細胞の能力を調節することによって達成されうるであろうことは、十分に理解される。
【0055】
本発明を実施化しつつ、本発明者らは、HGFが、CXCR4発現をアップレギュレートし、そして損傷を受けた臓器組織へのSDF−1/CXCR4を介した幹細胞運動性および遊走を促進することを明らかにした。
【0056】
以下に説明され、そして続く実施例部分で示されるとおり、本発明者らは、肝臓損傷が、細胞骨格再編を誘導するHGFをアップレギュレートし、運動性を増大させ、そしてCXCR4発現を誘導し、そして幹細胞因子(SCF)と相乗作用することによって、SDF−1信号発生に対する未熟なCD34+細胞の応答を助長することを示す。
【0057】
HGFは、肝臓損傷の後にアップレギュレーションされること[Armbrust Liver 2002 Dec;22(6)巻:486−94頁]が先に示されたが、本発明者らは、HGF活性におけるこのアップレギュレーションが、細胞骨格再編に対するCXCR4発現でのアップレギュレーションを導き、そしてそれを発現した細胞のホーミングを促進することを最初に示した。
【0058】
本所見は、幹細胞の産生を可能にし、そしてそれは、標的組織に有効に補充され得て、そしてそのようなものとして、肝臓損傷の修復、および肝臓または骨髄移植のような膨大な臨床用途で使用されうる。
【0059】
したがって、本発明の1つの態様によれば、化学誘引物質に対する幹細胞の感受性を増大させる方法が提供される。
【0060】
本発明の別の態様によれば、臓器炎症および/または損傷に罹っている対象へのHGFの投与をして、細胞血液循環における前駆幹細胞レベルが増大されたことにより、損傷を受けた臓器に対する自己再増殖および/または自己移植を促進することを包含する方法が提供される。
【0061】
ここに使用されるとおり、用語「幹細胞」は、特定の特化された機能(すなわち、「十分に分化された」細胞)を有する他の細胞種に分化しうる能力を有する細胞を意味する。
【0062】
本発明のこの態様による方法としては、幹細胞の少なくとも1種の化学誘引物質受容体のレベルを増大させ、それによって化学誘引物質に対する幹細胞の感受性を増大させうる能力のあるHGFまたはそれの活性部分に幹細胞をさらすことが挙げられる。
【0063】
もう1つの方法として、化学誘引物質に対する幹細胞の感受性を増大させることは、幹細胞の内因性HGFの発現または活性をアップレギュレートすることによっても達成されうる。
【0064】
下記でさらに記述されるとおり、HGFまたはそれの活性部分に幹細胞をさらすことは、その細胞を、該タンパク質またはそれの活性部分と接触させるか、または、これらの細胞内で、もしくはそれと共に培養された非幹細胞(たとえば、供給層(feeder layer)として使用される繊維芽細胞)中でHGFまたはそれの活性部分を発現させるかのいずれかによって達成されうる。
【0065】
続く実施例部分で明瞭に示されるとおり、HGFに幹細胞をさらすことは、それらの運動性、およびそれの化学誘引物質、すなわちSDF−1に遊走するそれらの能力をかなり増大させた。
【0066】
本発明は、HGFおよびその塩、機能性誘導体、前駆体および活性分画(active fractions)、並びにそれの活性変異体に関するものであって、これらはHGFと同じ活性を有するポリペプチドまたはたんぱく質を得るために、その構造中の1つまたはそれ以上のアミノ酸が、除去、または他のアミノ酸で置換される、または、1つまたはそれ以上のアミノ酸が、その配列に加えられた他のタンパク質またはポリペプチド、および対応する「融合タンパク質」、すなわちHGFまたは他のタンパク質に融合したそれの突然変異体からなるポリペプチドをも包含するものである他のタンパク質またはポリペプチドである。したがって、HGFは、たとえば免疫グロブリンのような別のタンパク質と融合されうる。
【0067】
ここで用語「塩」は、本発明のHGFタンパク質またはそれの突然変異タンパク質のカルボキシル基の塩およびアミノ酸の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、当技術分野で知られている手段によって形成されうるのであって、無機塩たとえばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄または亜鉛塩など、およびたとえば、トリエタノールアミン、アルギニンまたはリシン、ピペリジン、プロカインなどのアミンと形成されるもののような有機塩基との塩が挙げられる。酸付加塩としては、たとえば、塩酸または硫酸のような鉱酸との塩、およびたとえば酢酸またはシュウ酸のような有機酸との塩が挙げられる。もちろん、あらゆるこのような塩は、本発明のHGFタンパク質またはそれの突然変異タンパク質に対して実質的に類似の活性を示すに違いない。
【0068】
ここに使用されるところの、定義「機能性誘導体(functional derivative)」は、既知方法によってアミノ酸部分の側鎖に、またはN−またはC−末端に存在する官能基から作製されうる誘導体を意味し、そしてそれらが、薬学上許容しうる場合、すなわち、それらが、タンパク質活性を破壊しないか、またはそれらを含有する医薬組成物に毒性を与えない場合に、本発明に含まれる。このような誘導体としては、たとえばカルボキシル基のエステルまたは脂肪族アミド、および遊離アミノ基のN−アシル誘導体または遊離水酸基のO−アシル誘導体が挙げられ、そしてたとえばアルカノイルまたはアロイル基などのアシル基を用いて形成される。
【0069】
本発明のタンパク質の「フラグメント」は、該化合物それ自体のポリペプチド鎖のあらゆるフラグメントまたは前駆体それ自体単独、またはそれに結合した関連分子または残基、たとえば、糖またはホスフェートの残基の組み合わせ、またはそのようなフラグメントまたは前駆体が、薬剤としてHGFと同じ活性を示す場合にポリペプチド分子の凝集体を意味する。
【0070】
ここに使用されるところの、用語「環状にて入れ替えた(circularly permuted)」とは、直線状分子の末端同士が、環状分子を生成するために直接的に、またはリンカーを介して一緒に連結され、そしてその後環状分子が、当初の分子中の末端と異なる末端を有する新たな直鎖分子を生成する別の位置で開環されるものである直鎖状分子を意味する。環状の入れ替え(circular permutation)としては、その構造が環状にされ、その後開環された分子に等価な分子が挙げられる。したがって、環状にて入れ替えた分子は、おそらく線状分子としデノボ(de novo)で合成されて、環状化および開環工程を経由しない。分子の特別の環状での入れ替えは、そのあいだでペプチド結合が除去されたアミノ酸残基を含有するブラケット(brackets)によって明示される。DNA、RNAおよびタンパク質を含みうる、環状で入れ替えた分子は、しばしばリンカーと融合したそれらの正常な末端を有し、そして別の位置で新たな末端を含む一本鎖状分子である。Goldenbergら、J.Mol.Biol.165巻:407−413頁(1983年)およびPanら、Gene 125巻:111−114頁(1993年)を参照。両者は、ここに参照することによって組込まれる(both incorporated by reference herein)。環状での入れ替えは、直鎖状分子の末端を融合して、環状分子を形成し、そしてその後、様々な位置で環状分子を切断して、様々な末端を有する新たな直鎖分子を形成したものと機能的に等価である。そのように得られる環状での入れ替えは、その配列を基本的に保存する効果を示し、そして様々な位置で新たな末端を産生しつつ、タンパク質のアミノ酸の同一性を示す。
【0071】
本明細書中、用語「ポリペプチドおよびタンパク質」は、置き換え可能である。
【0072】
本発明は、本発明の上記HGFタンパク質の突然変異タンパク質にも関し、そしてその突然変異タンパク質は、基本的にHGFの天然に生じる配列のみを有するHGFタンパク質と基本的に同じ生物学的活性を保持する。そのような「突然変異タンパク質」は、約20および10個までのアミノ酸残基が、この種の修飾が、タンパク質それ自体に関してタンパク質突然変異タンパク質の生物学上の活性を実質的に変化させないように、HGFタンパク質においてそれぞれ、欠失されるか、付加されるか、または他のもので置換されうるものでありうる。
【0073】
これらの突然変異タンパク質は、既知の合成法により、および/または部位特異的突然変異誘発技術により、またはそれに適切ないずれかの他の既知技術により調製される。
【0074】
あらゆるこのような突然変異タンパク質は、好ましくは、それと実質的に類似の活性を示す基本のHGFのものの十分な複製であるアミノ酸配列を有する。したがって、突然変異タンパク質を下記の実施例で説明される生物学的活性試験に付することからなる日常的な実験の手段によって、いずれかの所定の突然変異タンパク質が、本発明の基本的タンパク質と実質的に同じ活性を示すかどうかが決定されうる。
【0075】
本発明によって使用されうるHGFタンパク質の突然変異タンパク質、またはそれをコードする核酸は、ここに表される教示および指針に基づいて、過度の実験なしに、当業者によって日常的に得られうる置換ペプチドまたはポリヌクレオチドとして実質的にHGFに対応する配列の限定された組が挙げられる。タンパク質化学および構造の詳細な説明については、Schulz,G.E.ら、Principles of Protein Structure、Springer−Verlag、New York、1978年;およびCreighton,T.E.Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.、サンフランシスコ、1983年を参照。これらは、ここに参照して組込まれる。コドン優先のようなヌクレオチド配列置換の表示については、See Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publications and Wiley Interscience、ニューヨーク、ニューヨーク州、1987−1995年;Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、1989年を参照。
【0076】
本発明による突然変異タンパク質についての好ましい変化は、「保存的(conservative)」置換として知られるものである。基本的に天然に生じるHGF配列を有するタンパク質中の保存的アミノ酸置換は、グループ内の同義のアミノ酸を含み得て、そしてそれは、グループの構成要素間の置換は、分子の生物学上の機能を保存するのに十分に類似の物理化学的特性を有する。Grantham、Science 185巻、862−864頁(1974年)を参照。特に、挿入または欠失が、わずかなアミノ酸のみ、たとえば50個以下、そして好ましくは、20個以下下のHGFを包含し、そして機能的配座、たとえばシステイン残基に重要であるアミノ酸を除去または置換しない場合、アミノ酸の挿入および欠失も、それの機能を改変せずに、上で定義された配列で行われうることも明らかである。Anfinsen、「Principles That Govern The Folding of Protein Chains」,Science 181巻、223−230頁(1973年)。このような欠失および/または挿入により産生される突然変異タンパク質は、本発明の範囲内になる。
【0077】
好ましくは、同義アミノ酸のグループ(synonymous amino acid group)は、表Aで定義されるものである。さらに好ましくは、同義アミノ酸のグループは、表Bで定義されるものである;そして最も好ましくは、同義アミノ酸のグループは、表Cで定義されるものである。
【0078】
表A 同義アミノ酸のグループ
アミノ酸 同義のグループ
Ser Ser、Thr、Gly、Asn
Arg Arg、Gln、Lys、Glu、His
Leu Ile、Phe、Tyr、Met、Val、Leu
Pro Gly、Ala、Thr、Pro
Thr Pro、Ser、Ala、Gly、His、Gln、Thr
Ala Gly、Thr、Pro、Ala
Val Met、Tyr、Phe、Ile、Leu、Val
Gly Ala、Thr、Pro、Ser、Gly
Ile Met、Tyr、Phe、Val、Leu、Ile
Phe Trp、Met、Tyr、Ile、Val、Leu、Phe
Tyr Trp、Met、Phe、Ile、Val、Leu、Tyr
Cys Ser、Thr、Cys
His Glu、Lys、Gln、Thr、Arg、His
Gln Glu、Lys、Asn、His、Thr、Arg、Gln
Asn Gln、Asp、Ser、Asn
Lys Glu、Gln、His、Arg、Lys
Asp Glu、Asn、Asp
Glu Asp、Lys、Asn、Gln、His、Arg、Glu
Met Phe、Ile、Val、Leu、Met
Trp Trp
【0079】
表B 同義アミノ酸のさらに好ましいグループ
アミノ酸 同義のグループ
Sers Sers
Arc His、Lys、Arg
Leu Ile、Phe、Met、Leu
Pro Ala、Pro
Thr Thr
Ala Pro、Ala
Val Met、Ile、Val
Gly Gly
Ilea Ile、Met、Phe、Val、Leu
Phe Met、Tyr、Ile、Leu、Phe
Try Phi、Try
Cys Ser、Cys
His Arg、Gln、His
Gln Glu、His、Gln
Asn Asp、Asn
Lys Arg、Lys
Asp Asn、Asp
Glu FLN、Glu
Met Phe、Ile、Val、Leu、Met
Trp Trp
【0080】
表C 同義アミノ酸の最も好ましいグループ
アミノ酸 同義のグループ
Sers Sers
Arc Arc
Leu Ile、Met、Leu
Pro Pro
Thr Thar
Alan Alan
Val Val
Gly Gly
Ilea Ile、Met、Leu
Phi Phi
Try Try
Cys Ser、Cys
His His
Gln Gln
Asn Asn
Lys Lys
Asp Asp
Glu Glu
Met Ile、Leu、Met
Trp Trp
【0081】
本発明で使用するためのタンパク質の突然変異タンパク質を得るために使用されうるタンパク質におけるアミノ酸置換の生成の例は、Markらに対する米国特許番号RE33,653号、4,959,314号、4,588,585号および4,737,462号;Kothsらに対する5,116,943号、Namenらに対する4,965,195号;Chongらに対する4,879,111号;およびLeeらに対する5,017,691号で表されるもの;および米国特許第4,904,584号(Strawら)で表されるリシン置換タンパク質のような、あらゆる公知の工程が挙げられる。
【0082】
本発明の別の好ましい実施形態で、本発明で使用するためのHGFタンパク質のあらゆる突然変異タンパク質は、本発明の上に明記されるHGFタンパク質のものに原則的に相当するアミノ酸配列を有する。用語「〜に原則的に相当する(essentially corresponding to)」とは、基本となるタンパク質の配列に対し、そのタンパク質の基本的な特徴に影響を及ぼさない程度の些細な変化を伴う突然変異タンパク質を含むことが意図され、HGFとしての能力についての(基本的な特徴に影響を及ぼさないことが)重要である。「〜に原則的に相当する」言語の範囲に入ると一般的にみなされる変化のタイプは、本発明のHGFタンパク質をコードするDNAの従来の突然変異誘発技術(mutagenesis techniques)から生じるものであり、そしていくつかのマイナーな修飾を生じたり、たとえば化学誘引物質に対する幹細胞の感受性を増大させるような望みの活性をスクリーニングする。
【0083】
本発明は、HGF変異体(HGF variant)をも包含する。好ましいHGF変異体は、HGFアミノ酸配列に対して、少なくとも80%アミノ酸同一性を示すものであり、さらに好ましいHGF変異体は、少なくとも90%同一性を示し、そして最も好ましい変異体は、少なくとも95%同一性を示すものである。
【0084】
ここに示される場合、用語「配列の同一性(sequence identity)」は、アミノ酸配列が、HanksおよびQuinn(1991年)による配列によって比較され、低相同性領域の微細な区分においては、ClustalW多配列の配列プログラムについてのウインドウズインターフェース(Thompsonら、1994年)であるClustal−Xプログラムを用いてリファインメントすることを意味する。Clustal−Xプログラムは、ftp://ftp−igbmc.u−strasbg.fr/pub/clustalx/でインターネットじゅうで利用可能である。もちろん、このリンクが、無効になった場合、当業者は、過度な実験なしに、標準インターネット検索技術を使用して、他のリンクでこのプログラムのバージョンを見出しうるということが、理解されるべきである。別段の規定のない限り、本発明の有効出願日現在で最新版の、ここで参照したいずれかのプログラムは、本発明を実施するために使用されるものである。
【0085】
「配列の同一性」を測定する別の方法は、以下のものである。配列は、−12のギャップ開放ペナルティー(ギャップの第一のヌルについて)および−4のギャップ拡張ペナルティー(ギャップでの個々の追加の連続ヌル当たり)を示すデフォルト(BLOSUM62)マトリックス(値−4から+11まで)を使用して、Genetic Computing GroupのGDAP(グローバル・アラインメント・プログラム)のバージョン9を使用して配列する。配列の後、同一性百分率は、請求された配列中のアミノ酸の数の百分率として適合の数を表すことによって計算される。
【0086】
本発明による突然変異タンパク質としては、ストリンジェントな条件下でDNAまたはRNAとハイブリッドを形成し、そして本発明によるHGFタンパク質をコードするDNAまたはRNAのような核酸によってコードされるものが挙げられるのであって、基本的にHGFをコードする天然に生じる配列、および、遺伝子コードの縮重に基づいてそれのヌクレオチド配列で、天然に由来するヌクレオチド配列と異なる可能性のある、すなわちある程度異なる核酸が、この縮重により、なお、同じアミノ酸配列をコードする可能性がある配列の全てを包含するものである。
【0087】
ここに使用される場合、用語「ハイブリダイゼーション」は、核酸の鎖が、塩基対を通して相補的な鎖と連結するあらゆる過程を包含するべきである(Coombs J、1994年、Dictionary of Biotechnology、ストックトン・プレス、ニューヨーク、ニューヨーク州)。「増幅」は、核酸配列をさらに複写した産物として定義され、そして一般に、当技術分野で周知であるポリメラーゼ連鎖反応技術(DieffenbachおよびDveksler、1995年、PCR Primer、a Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・プレス、ニューヨーク州プレインビュー(Plainview NY))を使用して行われる。
【0088】
「ストリンジェンシー」は、特に、約Tm−5℃(プローブの溶融温度(melting temperature)より5℃低い)から、Tmより下の約20℃〜25℃までの範囲に生じる。
用語「「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイゼーションおよびそれにひきつづく洗浄(washing)の条件に該当し、それを当業者では、従来「ストリンジェント」と呼ばれる。Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、グリーン・パブリケーションズ・アンド・ウイリー・インターサイエンス、ニューヨーク州ニューヨーク、1987-1995;Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー、1989年を参照。
【0089】
ここで使用される場合、ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション実験で使用される温度、一価陽イオンのモル濃度、およびハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの含有率の関数である。あらゆる特定の組の条件に含まれるストリンジェンシーの程度を決定するために、ひとつとしては、DNA−DNAハイブリッドの融解温度Tmとして表される100%同一性のハイブリッドの安定性を測定するためにMeinkothら(1984年)の方程式を使用する。
Tm=81.5C+16.6(LogM)+0.41(%GC)−0.61(%from)−500/L
【0090】
式中、Mは、一価陽イオンのモル濃度であり、%GCは、DNA中のGおよびCヌクレオチドの含有率であり、%formは、ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの含有率であり、そしてLは、塩基対中のハイブリッドの長さである。各1C毎に、100%同一性ハイブリッドについて計算されたTmから減じられ、許容されるミスマッチの量は、約1%ずつ増加される。したがって、特定の塩およびホルムアミド濃度でのいずれかの所定のハイブリダイゼーション実験のために使用されるTmが、Meinkothの方程式によって100%ハイブリッドについて計算されたTmより10C下である場合、ハイブリダイゼーションは、約10%までミスマッチある場合でさえ生じる。
【0091】
ここで使用される場合、「高度にストリンジェントな条件(highly stringent conditions)」は、上の方程式により計算される場合、または実際に測定される場合のいずれかにおいて、完全な二重鎖について存在するであろうTmより10Cよりは低くない標的配列のTmを提供するものである。「中程度にストリンジェントな条件(moderately stringent conditions)」とは、上の方程式により計算される場合、または実際に測定される場合のいずれかにおいて、完全な二重鎖について存在するであろうTmより下に20Cよりは低くない標識配列のTmを提供するものである。制限することなく、高度にストリンジェントな(ハイブリッドの計算または測定されたTmより5−10C低い)および中程度のストリンジェントな(ハイブリッドの計算または測定されたTmより15−20C低い)条件の例では、ハイブリッドの計算されたTmより下の適切な温度で、2×SSC(標準クエン酸生理食塩水)および5%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の洗浄溶液を使用する。非常に高度なストリンジェントな条件(ultimate stringency of the conditions)は、第一に、洗浄条件によるのであって、とくに用いられるハイブリダイゼーションの条件がそれらである場合、安定性の低いハイブリッドが安定なハイブリッドと共に形成されうる。その後非常に高度なストリンジェントの洗浄条件は、安定性の低いハイブリッドを取り除く。上に記述される非常にストリンジェントから中程度にストリンジェントな洗浄条件までで使用されうる一般のハイブリダイゼーション条件は、Tmよりおよそ20から25Cまで低い温度で、6×SSC(または6×SSPE)(標準リン酸生理食塩水−EDTA)、5×デンハート(Denhard's)の試薬、0.5%SDS、100およびマイクロ;g/ml変性された断片化サーモン精子DNAの溶液中でのハイブリダイゼーションである。混合プローブを使用する場合、SSCの代わりに塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を使用することが好ましい(Ausubel、1987、1999)。
【0092】
本発明の本態様によって使用されうる幹細胞の限定されないの例は、あらゆる年齢での個体の骨髄組織から、または新生児個体の臍帯血から得られる造血幹細胞(HSC)および間葉幹細胞(MSC)、懐胎後形成した胚性組織から得られる胚性幹(ES)細胞(たとえば、胚盤胞)、または懐胎のあいだのいずれの時期、好ましくは懐胎の10週前の胎児の生殖組織から得られる胚性原基(EG)細胞である。本発明の本態様によって使用されうる幹細胞についてのさらなるの説明を、下記に要約する。
【0093】
HSC−造血幹細胞(HSC)は、中でも、赤血球、リンパ球、マクロファージおよび巨核球のような造血または血液細胞の特定の種類のいずれかに分化する能力がある骨髄、胎児肝臓、臍帯血および末梢血に見出される形態形成的に多能性芽球細胞formative pluripotential blast cells)である。HSCは特に骨髄内を適所として存在し、それらの能力を維持するために必要な全ての因子および全ての接着特性をサポートし、そして生体の寿命を超えて、成熟前駆体を適当なバランスがとれた生産をする[Whetton(1999年)Trends Cell Biol 9巻:233−238頁;Weissman(2000年)Cell 100巻:157−168頁;Jankowska−Wieczorek(2001年)Stem Cells 19巻:99−107頁;Chan(2001年)Br.J.Haematol.112巻:541−557頁]。
【0094】
本発明の本態様によるHSCは、好ましくは、CD34+細胞、そしてさらに好ましくはCD34+/CD38-/低細胞であり、そしてそれは、いっそう未発達の幹細胞集団であり、したがって、系統制限(lineage-restricted)されておらず、そして主要な長期骨髄再構築細胞(major long-term bone marrow repopulating cells )である。
【0095】
MSC−間葉幹細胞は、サイトカインのような生物活性因子からの種々の影響によって、間葉または結合組織(すなわち、特化された要素をサポートする体の組織;たとえば、脂肪、骨性、基質、軟骨性、弾性および繊維性結合組織)の1つ以上の特定の型に分化する能力のある、特に骨髄、血、真皮および骨膜で見出される形成多能性芽球細胞(formative pluripotential blast cells)である。
【0096】
およそ、プラスチックに粘着する30%のヒト骨髄アスピレート細胞(human marrow aspirate cells)は、MSCであると考えられている。これらの細胞は、インビトロで展開され、そしてその後、分化誘導される。成熟したMSCが、インビトロで展開され、そして刺激により、骨、軟骨、腱、筋肉、または脂肪細胞を形成しうるという事実は、組織工学および遺伝子療法戦略にとって魅力である。インビボアッセイは、MSC機能を分析するために開発された。その循環に注入されたMSCは、上記された多量の組織に組込みうる。特に、骨格および心臓の筋肉は、5−アザシチジンにさらすことにより誘発され得て、そして培養中のラットおよびヒトMSCの神経系の分化は、β−メルカプトエタノール、DMSOまたはブチル化ヒドロキシアニソールにさらすことによって誘発されうる[Tomita(1999年)100巻:11247−11256頁;Woodbury(2000年)J.Neurosci.Res.61巻:364−370頁]。さらに、MSC由来の細胞は、末梢注入の後、並びにラットの脳へのヒトMSCの直接注入の後に、脳に深く組込まれることが見られた;それらは、神経幹細胞の発生時の遊走に使用される経路にそって遊走し、広く分布されるようになり、そしてHSC特化のマーカーを失い始める[Azizi(1998年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95巻:3908−3913頁]。間葉幹および系統特化(lineage-specific)細胞増殖を促進する方法は、米国特許第6,248,587号に開示される。
【0097】
米国特許第5,486,359号で記述されるSH2、SH3およびSH4のようなヒト間葉幹細胞(hMSC)表面のエピトープは、たとえば骨髄で存在するような、異種細胞集団から得られる間葉幹細胞集合をスクリーニングおよび捕捉する試薬として使用されうる。これらの前駆体間葉幹細胞は、種々の間葉系統に分化しうるので、CD45について陽性である前駆体間葉幹細胞は、好ましくは、本発明の本態様によって使用される。
【0098】
本発明の本態様による好ましい幹細胞は、ヒト幹細胞である。
【0099】
下の表1は、成人幹細胞(adult stem cell)の例を提供し、そしてそれは、本発明の本態様によって、目的の標的組織中の指標表現型を得るために使用されうる。
【0100】
【表1】

【0101】
上記のとおり、本発明の本態様による幹細胞は、HGFまたはそれの活性部分にさらされる。
【0102】
HGFは、62kDaのα−サブユニットおよび34kDaのβ−サブユニットを含んでいる、ヘテロダイマーなポリペプチドである。α−サブユニットは、27個のアミノ酸、続いて3つの内部ジスルフィド架橋によって安定化された80−アミノ酸二重ループ状構造である4つの標準的なクリングルドメインを含めたN末端ヘアピンドメインを含有する[Comoglio(1999年)Exp.Cell Res.253巻:88−99頁;Comoglio(1993年)Exs 65巻:131−65頁;Comoglio(1996年)Gene Cells 1巻:347−54頁]。クリングルドメインは、タンパク質−タンパク質相互作用に重要である。第一のクリングルドメインは、HGF−受容体についての高い親和性結合ドメインを含有する一方で、第二のクリングルドメインは、膜結合ヘパラン−硫酸・プロテオグリカンに対して低い親和性結合部位を含有する。低い親和性相互作用は、標的細胞近傍に高い濃度のHGFを維持する。HGF遺伝子は、単一のプロHGFタンパク質(single pro-HGF protein)をコードしており、それが切断されて活性型異種二量体分子を形成することで、受容体に高い親和性を示す。
【0103】
ここで使用されるように、HGFの活性部分は、化学誘引物質に対する本発明の幹細胞の感度を増大させるのに十分である最小HGF配列を意味する。ここで使用されるように、HGFの活性部分は、突然変異タンパク質、融合タンパク質、官能性誘導体、フラグメント、環状にて入れ替えたHGFおよび/またはそれの塩をも意味する。
【0104】
本発明によるHGFの活性部分を決定するために、幹細胞は、HGFセグメントと接触され得て、そしてそこへの細胞の応答は、当業者に周知であり、そしてさらに下記の方法を使用して、分子的に、生化学的に、または機能的に(たとえば、運動性、ホーミング、移動アッセイ)モニターされうる。
【0105】
ここで上に記述されるとおり、HGFまたはそれの活性部分に幹細胞をさらすことは、幹細胞の少なくとも1種の化学誘引物質受容体のレベルを増大させる。
【0106】
多数の走化性細胞受容体(chemotactic cell receptors)が、幹細胞のトランス内皮遊走(transendothelial migration)に関与することが知られている。これらの受容体の多くは、Gタンパク質連動型7膜貫通受容体(G protein-coupled seven-transmembrane receptors)(7−TMR)のファミリーに属する。Gタンパク質、特にGiタンパク質を介したシグナリングは、対応するリガンドの勾配に向かう細胞の走化性応答を生じる[Voermans(2001年)J.Hematother.Stem Cell Res.10巻:725−738頁]。最近の研究において、走化性効果を強力に仲介しうる未熟な造血前駆細胞でのいくつかの7−TMRの発現についての証拠を提供した:ケモカイン受容体(たとえば、CXCR4、ストローマ細胞由来因子−1のための受容体)、脂質メディエーターのための受容体(たとえば、システイニルロイコトリエン受容体(cysteinyl leukotriene receptor)cysLT1および末梢カナビノイド受容体(peripheral cannabinoid receptor)cb2)およびニューロエンドクラインホルモンのための受容体(たとえば、ソマトスタチン受容体sst2)。これらの研究から、造血前駆体および幹細胞の遊走が、単一のケモカイン(たとえば、SDF−1)によるよりむしろ多様な走化性因子によって制御されると結論づけられうる。
【0107】
本発明の本態様の好ましい実施態様によれば、走化性受容体はCXCR4である。
【0108】
HGFは、HGF受容体、すなわち、c−metに対する結合を介してその生物学上の活性を発揮するので、本発明は、HGFシグナリングにおける制限因子(limiting factor)でありうるHGF受容体、すなわち、c−metに細胞をさらすことも目論まれる。
【0109】
上記に明記されるとおり、HGFまたはそれの活性部分に幹細胞をさらすことは、幹細胞を、該タンパク質と接触させるか、または幹細胞内で該タンパク質を発現させることによって達成されうる。
【0110】
本発明は、組織から循環への幹細胞の可動化、およびHGFまたはそれの活性部分に循環中の幹細胞をさらすことをも目論んでいるが、幹細胞をHGFと接触させることは、好ましくは、収穫した細胞(harvested)を使用して達成される。
【0111】
成人幹細胞は、骨髄吸引のような外科的手段を使用して得られうるか、または米国カリフォルニア州アービンのネックスエル・セラピューティックス・インク.から入手可能なもののような市販のシステムを使用して収穫されうる。
【0112】
本発明により利用される幹細胞は、好ましくは、幹細胞可動化手段(stem cell mobilization procedure)を使用して採取(すなわち収穫)されるのであって化学療法または対象の循環へのHSCの放出に対するサイトカイン刺激を利用する。幹細胞は、好ましくは、可動化(mobilization)が、骨髄手術より多くのHSCおよび前駆細胞を生じることが知られているので、この手段を使用して回収される。
【0113】
幹細胞の可動は、多数の分子によって誘導されうる。例としては、それに限定はされないが、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン(IL)−7、IL−3、IL−12、幹細胞因子(SCF)、およびflt−3リガンドのようなサイトカイン;IL−8、Mip−1α、Groβ、またはSDF−1のようなケモカイン;および化学療法剤シクロホスホアミド(Cy)およびパクリタキセル(paclitaxel)が挙げられる。これらの分子は、反応速度論および効率で異なることが予測されるが、最近知られる実施態様によれば、G−CSFは、好ましくは、単独で、または幹細胞を可動化するシクロホスホアミドのようなものと組み合わせて使用されることが予測される。特に、G−CSFは、5−10日間、5−10μg/kgの用量で毎日投与される。幹細胞を流動化する方法は、米国特許第6,447,766号および第6,162,427号に開示される。
【0114】
ヒト胚性幹細胞は、ヒト胚盤胞から単離されうる。ヒト胚盤胞は、特に、インビボにおいて、着床前の胚から、またはインビトロ受精(IVF)胚から得られる。代わりに、単細胞ヒト胚は、胚盤胞段階まで延長されうる。ヒトES細胞の単離については、透明帯状物(zona pellucida)を、胚盤胞から除去し、そして内細胞塊(ICM)を、免疫手術により除去し、そしてそれは、栄養外胚葉細胞(trophectoderm)を溶解させ、そして穏やかなピペッティングにより無傷のICMから取り出す。その後、ICMを、それの生長を可能にする適切な培地を含有する組織培養フラスコで培養する。9から15日に続いて、ICMで誘導された生産物は、機械的解離によるか、または酵素的分解によるかのいずれかにより、凝集塊(clumps)に解離され、そしてその後、細胞を、新たな組織培養培地上で再度培養させる。未分化形態を示すコロニーは、マイクロピペットにより個々に選択され、機械的に、凝集塊に解離され、そして再度平板培養される。その後、生じるES細胞を、1−2週間ごとに定期的に分割する。ヒトES細胞を作製する方法についてさらに詳細には、Thomsonら[米国特許第5,843,780号;Science 282巻:1145頁、1988年;Curr.Top.Dev.Biol.38巻:133頁、1998年;Proc.Natl.Acad.Sci.USA92巻:7844、1995年];Bongsoら[Hum Reprod 4巻:706頁、1989年];Gardnerら[Fertil.Steril.69巻:84頁、1998年]を参照。
【0115】
市販で入手可能な幹細胞は、本発明の本態様によっても使用されうることが予想される。ヒトES細胞は、NIHヒト胚性幹細胞レジストリー(<http://escr.nih.gov>)から購入されうる。市販で入手可能な胚性幹細胞株の制限なしの例は、BG01、BG02、BG03、BG04、CY12、CY30、CY92、CY10、TE03、TE32である。
【0116】
ヒトEG細胞は、当業者に知られる実験技術を使用して、妊娠約8−11週のヒト胎児から得られる原初の生殖細胞から回収されうる。生殖隆起(genital ridges)は、解離され、したがって、機械的解離により分けられる小さな塊に切断される。その後、EG細胞は、適切な培地を用いて組織培養フラスコ中で育成される。EG細胞と一致する細胞形態学が、大体7−30日後、または1−4世代に観察されるまで、細胞を毎日培地を交換して培養する。EG細胞を作製する方法における別の詳細のために、Shamblottら[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95巻:13726頁、1998年]および米国特許第6,090,622号を参照。
【0117】
多分化能を示す幹細胞個体群(population)の濃縮(enrichment)は、好ましくは達成されうることが評価される。したがって、たとえば、ここで上に概説されるとおり、CD34+幹細胞は、下記でさらに記述されるとおり、アフィニティーカラムまたはFACSを使用して濃縮されうる。
【0118】
増殖条件下で幹細胞を培養することは、幹細胞数が治療で使用するのには少なすぎる場合にも達成されうる。幹細胞の培養は、米国特許第6,511,958号、第6,436,704号、第6,280,718号、第6,258,597号、第6,184,035号、第6,132708号および第5,837,5739号に記述される。
【0119】
いったん幹細胞が得られると、それらは、HGFまたはそれの活性部分と接触される。
【0120】
可溶性HGF、そして特に、その活性部分は、たとえば標準的固相技術を使用することによって生化学的に合成されうる。これらの方法は、限定的固相合成(exclusive solid phase synthesis)、部分的固相合成法(partial solid phase synthesis)、フラグメント圧縮(fragment condensation)、古典的溶液合成(classical solution synthesis)が含まれる。固相ペプチド合成手段は、当技術分野で周知であり、そしてJohn Morrow StewartおよびJanis Dillaha Young、Solid Phase Peptide Syntheses(2版、ピアス・ケミカル・カンパニー、1984年)によりさらに詳述される。
【0121】
合成ペプチドは、分取高速液体クロマトグラフィー[Creighton T.(1983年)Proteins, structures and molecular principles,ダブリュ・エイチ・フリーマン・アンド・シーオー.ニューヨーク]によって精製され得て、そしてそれの組成物は、アミノ酸配列決定を介して確認されうる。
【0122】
HGFは、シグマ−アルドリッチ(イスラエル国レホボト)のような商業上の供給者からも得られうる;製品番号H1404号。
【0123】
大量のHGFまたはそれの活性部分が望まれる場合には、このようなポリペプチドは、好ましくは、組換え技術(recombinant techniques)を使用して得られる。
【0124】
このようなポリペプチドを組換え体で合成するためには、プロモーターのような調節因子の転写制御の下流にHGFまたはそれの活性部分をコードするポリヌクレオチドを含めた発現構築物(すなわち、発現ベクター)を、宿主細胞に導入される。
【0125】
「形質転換された」細胞を、ポリヌクレオチドによりコードされる融合タンパク質の発現を可能にする適切な条件下で培養する。
【0126】
予備測定期間に続いて、発現したタンパク質は、細胞または細胞培養物から回収され、そして精製が達成される。
【0127】
多様な原核生物または真核生物の細胞の多様性は、修飾されたポリペプチドコーディング配列を発現する宿主−発現系として使用されうる。これらとしては、それに制限はされないが、所望のコーディング配列を含有する組換え体バクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換されたバクテリアのような微生物が挙げられる;真核生物の細胞は、翻訳後での修飾タンパク質の産生を可能にするので、好ましくは、哺乳類発現系は、HGFまたはそれの活性部分を発現するために使用される。しかし、細菌系は、それらが、低費用で高生産量を可能にするので、特に、組換え体タンパク質を産生させるために使用される。したがって、宿主系は、産生されるべき組換えタンパク質およびそれの最終用途によって選択される。
【0128】
バクテリアの系では、発現された修飾ポリペプチドとして意図される用途によって、多数の発現ベクターが都合よく有利に選択されうる。たとえば多量の接合体が望まれる場合は、おそらく疎水性シグナル配列との融合として、タンパク質産物が容易に精製されうるように、バクテリアのペリプラズムまたは培養培地に発現産物を導くように、高濃度のタンパク質産物の発現を指示するベクターが、望まれる可能性がある。コンジュゲートからの回収を助けるために特定の切断部位が設計された融合タンパク質も望ましい。このような操作に適合性のあるこのようなベクターとしては、それに限定されないが、イー.コリ(大腸菌)発現ベクターのpETシリーズ[Studierら(1990年)Methods in Enzymol.185巻:60−89頁]が挙げられる。
【0129】
当技術分野で周知である昆虫および哺乳類宿主細胞系のような他の発現系も、本発明によって使用されうる(米国特許第6,541,623号を参照)。
【0130】
どのような場合でも、形質転換細胞は、有効な条件下で培養され、そしてそれは、多量の組換えポリペプチドの発現に対処する。有効な培養条件は、それに限定されないが、有効な培地(effective media)、生物反応器(bioreactor)、温度、pHおよびタンパク質生産を可能にする酸素条件が挙げられる。有効な培地は、細胞が、本発明の組換え修飾ポリペプチドを産生するために培養されるあらゆる培地に該当する。このような培地としては、特に、同化できる炭素、窒素およびリン酸源、および適切な塩、ミネラル、金属およびビタミン類のような他の栄養分を有する水性溶液が挙げられる。本発明の細胞は、従来の発酵生物反応器、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイター皿、およびペトリ皿で培養されうる。培養は、組換え細胞に適切な温度、pHおよび酸素含有量で行われうる。このような培養条件は、当業者の専門知識の範囲内にある。
【0131】
結果物の本発明の組換え体タンパク質は、好ましくは、成長(たとえば、発酵)培地に分泌される。
【0132】
培養中の所定の時間に続いて、組換えタンパク質の回収が達成される。語句「組換えタンパク質を回収すること」は、タンパク質を含有する全成長培地を採取することに該当し、そして分離または精製の別の段階を意味する必要はない(実施例区分の実施例2を参照)。本発明のタンパク質は、それに限定されないが、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、およびディファレンシャル可溶化のような多様な標準タンパク質精製技術を使用して精製されうる。
【0133】
本発明のタンパク質は、好ましくは、「十分に純粋な(substantially pure)」形態で回収される。ここに使用される場合、「十分に純粋な」は、ここで下に記述された多様な用途においてタンパク質を有効に使用できる純度に該当する。
【0134】
本発明のHGFまたはそれの活性部分の組換え体産物は、インビトロでも達成されうることが予測される。
【0135】
HGFまたはそれの活性部分は、収穫された幹細胞を培養または維持するために利用される培養培地に含まれうる。このような培養培地としては、特に、幹細胞培養のために適した緩衝溶液(すなわち、成長培地)が挙げられる。培養培地は、幹細胞の成長および生存を支持する成長因子を含む血清または血清置換も含まれうる。培養培地は、SDF−1、IL−6、SCFなどのようなホーミング剤も含み得る。さらに、本発明の成長培地は、白血病阻害剤因子(LIF)のような分化阻害剤も含みうる。
【0136】
本発明の幹細胞は、HGF分泌細胞とも接触されうる。これは、HGFまたはそれの活性部分を発現する細胞との本発明の幹細胞を共培養することによって達成されうる。たとえば、未分化状態でそれ(幹細胞)の増殖をサポートするために幹細胞としばしば共培養される繊維芽細胞フィーダー細胞は、HGFを発現して、それにより二重の役割、すなわち、幹細胞の成長支持および移動および運動性能力の増大を行うことができる。
【0137】
しかし、本発明の幹細胞は、好ましくは、臨床用途に使用されるので、幹細胞の少なくとも1つの化学誘引物質受容体の十分な濃度の誘導に続く第二のHGF−発現細胞集合から幹細胞を単離する手段が取られる。細胞集合を分類する方法は、ここで下にさらに記述される。
【0138】
代わりに、本発明の幹細胞は、幹細胞中のHGFまたはそれの活性部分を発現するために、上に記述されるもののような発現構築物で形質転換されうる。
【0139】
このような場合に、発現構築物としては、好ましくは誘導性成長特異的または組織特異的条件下で、哺乳類細胞(上の例)で活性なシス作用調節要素が挙げられる。
【0140】
細胞型特異的および/または組織特異的プロモーターの例としては、肝臓特異的[Pinkertら、(1987年)Genes Dev. 1巻:268−277頁]、リンパ系特異的プロモーター[Calameら(1988年)Adv.Immunol.43巻:235−275頁]であるアルブミンのようなプロモーター;特にT細胞受容体のプロモーター[Winotoら、(1989年)EMBO J.8巻:729−733頁]および免疫グロブリン;[Banerjiら、(1983年)Cell 33729−740]、ニューロフィラメントプロモーターのような神経単位特異的プロモーター[Byrneら,(1989年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86巻:5473−5477頁]、膵臓特異的プロモーター[Edlunchら、(1985年)Science 230巻:912−916頁]またはミルクホエイプロモーターのような乳腺特異的プロモーター(米国特許第4,873,316号および欧州出願広報番号第264,166号)が挙げられる。本発明の核酸構築物は、さらに、プロモーター配列に隣接または遠位にあるうるエンハンサーを含むことができ、そしてそこから転写をアップレギュレートするのに機能できる。
【0141】
好ましくは、誘導性シス作用調節因子(cis-acting regulationary element)は、ホーミング−移植過程のあいだに幹細胞の環境変化によって調節可能である。
【0142】
これらの移動のあいだに、幹細胞は、循環中の血液内の細胞の運動によって発生するせん断力(shear forces)を受ける。いったん移植されると、幹細胞は、もはやそのようなせん断力を受けない。HGFは、好ましくは、ホーミング段階(移動)のあいだに活性であるので、移動の段階でのみ活性であるシス作用調節要素は、特に利点を有する。1つのこのような調節因子は、Resnickら、PNAS USA90巻:4591−4595頁、1993年により記述されたせん断応力応答性因子である。
【0143】
間葉幹細胞の遺伝的修飾(genetic modification)は、米国特許第5,591,625号で検討される。HSCの遺伝子修飾は、Zheng 2000年 Nat.Biotechnol.18巻:176−180頁およびLotti、2002年、J.Virol.76(8)巻、3996−4007頁で検討される。
【0144】
いったんHGFまたはそれの活性部分にさらされると、化学誘引物質受容体の発現レベルが増大し結果として、化学誘引物質に対する感度が増大したことを示す幹細胞は、好ましくは識別され、単離される。そのような段階は、走化性が高い細胞で濃縮されているが、濃縮されていないHGF処理細胞郡の使用も、本発明に想定される。
【0145】
本発明の本態様によるこのような細胞の識別および単離は、当技術分野で周知である多数の細胞学上、生化学上および分子の方法を使用して達成されうる
【0146】
たとえば、受容体レベルの分析は、フローサイトメトリーによって達成されうる。このアプローチは、液体培地中において励起源をフローする単一の細胞をスキャンする装置を使用する。その技術は、可視および蛍光発光の測定をもとに、単一の生存(または死滅)細胞を高速、定量、マルチパラメーター分析を提供しうる。この基本的プロトコールでは、細胞結合分子を特異的に結合する蛍光標識抗体およびリガンドによって発せられる蛍光強度の測定を中心とする。本発明の蛍光活性化セルソーターを使用して細胞個体群を単離するために、本発明の幹細胞をR&D、ミネソタ州エヌイー・ミネアポリス、マッキンレイ・パレス614から市販で入手可能な抗CXCR4と接触させる。
【0147】
走化性受容体発現のレベルを定量的に評価するための他の細胞学上または生化学的方法としては、それに限定はされないが、標識(たとえば、放射性標識)ケモカイン、ウエスタン・プロット分析、細胞表面ビオチン化および免疫蛍光染色を用いたバインディングアッセイが挙げられる。
【0148】
受容体の発現レベルは、mRNAレベルでも測定されうることが予測される。たとえば、CXCR4のmRNAは、特異的プローブに対するハイブリダイゼーションにより細胞中で検出されうる。このようなプローブは、クローン化DNAまたはそれのフラグメント、特にインビトロ転写によって作製されるRNA、または固相合成により通常に生産されるオリゴヌクレオチドプローブでありうる。特異的ハイブリダイゼーションに適したプローブを産生および使用する方法は、周知であり、そして当技術分野で使用される。mRNAレベルの定量は、増幅反応[たとえば、PCR、「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、アカデミック・プレス、カリフォルニア州サンディエゴ(1990年)]を使用して、目的の走化性受容体のmRNAに特異的にハイブリッド形成するプライマーを使用しても達成されうる。
【0149】
多様なコントロールが、mRNA検出アッセイでの精度を改善するために有効に使用されうる。たとえば、サンプルは、関連性のないプローブにハイブリッド形成され、そしてハイブリダイゼーションの前にRNAseAで処理して、偽ハイブリダイゼーションを見極めうる。
【0150】
機能性アッセイは、走化性受容体発現を測定するためにも使用されうる。たとえば、走化性試薬(たとえば、SDF−1)の勾配を用いた走化性試薬に向かって膜を貫通して幹細胞の遊走を使用する走化性アッセイは、走化性が増大したことを示す幹細胞を識別および単離するために利用されうる。細胞が、十分なレベルの走化性受容体(たとえば、CXCR4)を発現しない場合、それにより、細胞の大半は、膜上に保持される。しかし、本発明の化学誘引物質受容体の発現が増大されたことにより、細胞は、膜を貫通して遊走し、そして走化性プレート(実施例区分の実施例1を参照)のウエルの底に定着する。
【0151】
機能性ホーミングアッセイが、本発明の方法によっても利用されうることが予想される。このようなアッセイは、Kollet(2001年)Blood 97巻:3283−3291頁に記述される。
【0152】
免疫蛍光染色は、HGFへさらすことに続いて細胞の形態学を測定するための機能性アッセイでも使用されうる。実施例1の図1Aで示されるとおり、抗CXCR4および抗可動化アクチン抗体を用いた同時染色は、HGFでの処理に続く幹細胞形態学における変化(すなわち、細胞分散およびラメリポジア形成)を解明した。
【0153】
化学誘引物質に対する感度が増大したことを示す幹細胞は、広範な臨床用途で使用されうる。
【0154】
したがって、本発明の別の態様によって、細胞または組織交換を要求する傷害を治療する方法の提供がある。本発明は、それを必要とする対象に、ここで上に記述されるとおりの幹細胞の少なくとも1種の化学誘引物質受容体のレベルを増大する能力があるHGFまたはそれの活性部分で予め処理された治療上有効な量の幹細胞を供して、それにより対象における細胞または組織交換を必要とする障害を処理することによって達成される。
【0155】
細胞または組織交換を必要とする障害としては、それに限定はされないが、Tおよび/またはBリンパ球で、またはリューマチ様関節炎(rheumatoid arthritis)のような免疫障害のような種々の免疫欠損が挙げられる。このような免疫欠損は、ウイルス感染、HTLVI、HTLVII、HTLVIII、重篤な放射線被爆、癌治療、または他の医療上の治療の結果でありうる;血液不全(hematological deficiencies)は、それに限定されないが、重篤な複合免疫不全(severe combined immunodeficiency)(SCID)症候群[たとえば、アデノシンデアミナーゼ(ADA)不全およびX−リンク(X-linked)SCID(XSCID)]、大理石骨病(osteopetriosis)、再生不良性貧血(aplastic anemia)、ゴシュ病(Gaucher's disease)、サラセミアおよび他の先天的または遺伝子的に決定された造血異常(hematopoietic abnormalities)でありうる;細胞または組織交換を必要とする他の障害としては、肝不全、膵不全、神経学上の障害に関連したもの、骨形成が増大されることを必要とする障害として変形性関節炎(osteoartbritis)および骨粗しょう症(osteoporosis);骨欠損、結合組織欠損、骨格欠損または軟骨欠損のような結合組織のいずれかに関与する外傷性の、または病理学上の症状のようなものが挙げられる。
【0156】
本発明による好ましい個体の対象は、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシおよび好ましくはヒトのような哺乳類である。
【0157】
本発明の本態様による幹細胞は、好ましくは、治療されるべき対象から得られる。しかし、幹細胞は、同一遺伝子の、同種異系の、そして好ましくなくは異種のドナーからも得られうる。
【0158】
同種異系または異種の幹細胞が使用される場合、対象のレシピエントおよび/または細胞は、好ましくは、移植片対宿主および宿主対移植片拒絶を防止するために治療されることが予測される。免疫抑制プロトコールは、当技術分野で周知であり、そしてある種のものは、米国特許第6,447,765号に開示される。
【0159】
本発明の幹細胞は、米国特許第5,928,638号で記述される肝炎に対する抗ウイルス剤のようないずれかの治療的遺伝子を発現するように遺伝子で修飾されうる。
【0160】
幹細胞は、対象のレシピエントに移植される。これは、一般に、当技術分野で周知な方法を使用して達成され、そして通常には、当業者に周知の医療のツールを使用して、処理された幹細胞(treated stem cells)を対象に注入または導入することを含む(米国特許第6,447,765号、第6,383,481号、第6,143,292号および第6,326,198号)。
【0161】
たとえば、本発明の幹細胞を導入することは、静脈内または動脈内投与、腹腔内投与などを含めた血管内投与を介して達成されうる。細胞は、滅菌シリンジまたは他の滅菌トランスファーメカニズムを使用して、50モル・フェンウォール注入バック(50 mol Fenwall infusion bag)に注入されうる。その後、細胞は、たとえば15分間をかけてIV投与を介して、患者にフリーフローIVラインに直ぐに注入されうる。ある種の実施形態では、緩衝液または塩のような別の試薬も同様に添加しうる。投与のための組成物は、適切な滅菌性および安定性を伴う標準的な方法によって、配合、生産および保存されなければならない。
【0162】
幹細胞投与量は、処方された使用法によって決定されうる。一般に、非経口投与の場合には、レシピエントの体重の1キログラム当たり約0.01から約5百万個までの細胞を投与するのが通例である。使用される細胞の数は、レシピエントの体重および症状、投与の回数または頻度、そして当業者に知られる他の変数に依存する。
【0163】
細胞を対象に投与した後、治療の効果は、所望であれば、当技術分野で知られるとおりに評価されうる。処置は、必要な場合、または要求される場合、繰り返されうる。
【0164】
本発明は、単独で投与されるか、またはSCFと同時投与されるべき、治療上有効な量のHGFまたはそれの活性部分を包含する医薬組成物も提供する。さらに詳細には、本発明は、細胞または組織交換を必要とする傷害を処置するための医薬組成物を提供する。
【0165】
本発明の別の目的、利点、または新規特性は、限定されることを意図されることなく以下の実施例の試験により当業者に明らかになろう。さらに、ここに上で概説されるとおり、そして下の請求項区分で請求されるとおり本発明の種々の実施形態および態様の各々は、以下の実施例における実験上のサポートを見出す。
【実施例】
【0166】
ここで、以下の実施例の参照を行い、そしてそれは、上の説明と一緒に、限定なしの形態で本発明を示す。
【0167】
一般に、ここに使用される専門用語および本発明で利用される実験室手段としては、分子、生化学、微生物学上および組換えDNA技術が挙げられる。このような技術は、文献で十分に説明される。たとえば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら(1989年);「Current Protocols in Molecular Biology」、I-III巻、Ausubel,R.M.編(1994年);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、ジョン・ウイリー・アンド・サンズ、メリーランド州ボルチモア(1989年);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、ジョン・ウイリー・アンド・サンズ、ニューヨーク(1988年);Watsonら、「Recombinant DNA」、サイエンティフィック・アメリカン・ブックス、ニューヨーク;Birrenら(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、1−4巻、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、ニューヨーク(1998年);米国特許第4,666,828号;第4,683,202号;第4,801,531号;第5,192,659号および第5,272,057号で説明されるとおりの方法論;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I−III巻、Cellis,J.E.編(1994年);「Current Protocols in Immunology」、I−III巻 Coligan J.E.編(1994年);Stitesら(編)、「Basic and Clinical Immunology」(8版)、アップルトン・アンド・レンジ、コネチカット州ノーウォーク(1994年);MishellおよびShiigi(編)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、ダブリュ・エイチ・フリーマン・アンド・シーオー.、ニューヨーク(1980年を参照;利用可能な免疫アッセイは、特許および科学文献で集約的に記述され、たとえば、米国特許第3,791,932号;第3,839,153号;第3,850,752号;第3,850,578号;第3,853,987号;第3,867,517号;第3,879,262号;第3,901,654号;第3,935,074号;第3,984,533号;第3,996,345号;第4,034,074号;第4,098,876号;第4,879,219号;第5,011,771号および第5,281,521号を参照;「Oligonucleotide Synthesis」、Gait,M.J.編(1984年);「Nucleic Acid Hybridization」、Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985年);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984年);「Animal Cell Culture」、Freshney,R.I.編(1986年q;「Immobilized Cells and Enzymes」、IRL Press、(1986年);「A Practical Guide to Molecular Cloning」、Perbal,B.、(1984年)および「Methods in Enzymology」、1巻-317、アカデミック・プレス;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、アカデミック・プレス、カリフォルニア州サンディエゴ(1990年);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」、CSHLプレス(1996年)を参照;その全ては、ここで十分に説明されるように参照により組込まれる。他の一般的文献は、この文書に渡って供される。そこにある手段は、当技術分野で周知であり、そして読み手の便宜を与えると考えられる。そこに含まれる全ての情報は、参照してここに組込まれる。
【0168】
実施例1
HGFを介した運動性およびCXCR4が増大されることは、損傷を受けた肝臓へのヒトCD34+前駆細胞の遊走を仲介する。
【0169】
HGFが、損傷を受けた肝臓でアップレギュレートされること[Armbrust(2002年)Liver 22巻:486−494頁]、そしてヒトHGFの添加は、移植された免疫不全キメラマウスにおけるCCl4で損傷を受けた肝臓でのヒトアルブミン産生細胞のレベルを増大させること[Wang(2003年)Blood(印刷に先立つ電子公表)]は、周知である。したがって、HGFは、損傷を受けた肝臓へのヒトCD34+細胞遊走および補充の調節にも関与することが仮定された。
【0170】
ヒト細胞 − ワインズマン研究所(Weinzmann Institute)の人間倫理委員会により承認された手段によって承諾を得た後、臍帯血および成人可動化末梢血(MPB)細胞を得た。CD34+細胞の濃縮は、先に記述[Kollet(2001年)Blood 97巻:3283−3291頁]されるとおりマグネットビーズでの分離を使用して得られた。CXCR4の発現は、精製抗ヒトCXCR4(クローン12G5、アール・アンド・ディー、ミネソタ州ミネアポリス)および二次としてヤギ抗マウスIgG FITCの二次F(ab’)2フラグメント(ジャクソン、ペンシルベニア州ウエスト・グローブ)を用いて、フローサイトメトリーによって測定した。
【0171】
肝臓損傷 − マウス腹腔内(IP)にCCl4を10、15または30μl/マウスあたり注入し、そして肝臓サンプルを、示されるとおり注入し続いて数時間、または1−2日以内に採取した。
【0172】
免疫細胞化学 − 臍帯血のCD34+濃縮細胞を、サイトカインの非存在下、またはSCF(50ng/ml、R&D)、HGF(100ng/ml、ペプロテック(PeproTech))または両方のサイトカインの存在下で、10%FCSを添加したRPMI中で、40時間インキュベートした。細胞を、フィブロネクチン(10μg/cm2、カルバイオケム(Calbiochem)、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA))でコートしたカバーガラススリップ(2時間、37℃、5%CO2)で平板培養し、PBS中3%パラホルムアルデヒドで25分間固定させ、PBS中0.5%TritonX100中で5分間浸透させた。細胞を、ウサギ抗ヒトCXCR4ポリクローナルAb(ケミコン(Chemicon)、カリフォルニア州テメクラ(Temecula,CA))で間接的に免疫標識し、PBSで頻繁に洗浄し、そしてファロイジン−TRITC(シグマ(Sigma)、イスラエル国レホボト(Rehovot,IL))およびヤギ抗ウサギAlexa488(モレキュラー・プローブズ(Molecular Probes)、オレゴン州ユージーン(Eugene,OR))とインキュベートした。PBSで頻繁に洗浄した後に、サンプルをエルバトール(Elvanol)(Mowiol4−88;ヘキスト(Hoechst)、ドイツ国フランクフルト(Frankfurt,Germany))にマウントした;全ての手順は、室温で、加湿雰囲気下で行われた。免疫蛍光を観察し、そして100×倍率で、バイオラッド(BioRad)の共焦点顕微鏡を使用して分析した。
【0173】
走化性 − SDF−1の勾配に向かってのCD34+濃縮細胞の遊走は、記述されるとおりにトランスウエルアッセイによって測定した[Peled(1999年)Science 283巻:845−848頁]。CD34+細胞を、125ng/mlのSDF−1に向かう遊走の前に、ヒトサイトカインの非存在下、またはSCF(50ng/ml、ミネソタ州ミネアポリス、マッキンレイ・プレイス・エヌイー 614(614 McKinley Place NE Minneapolis, MN))、HGF(100ng/ml、ペプロテック(PeproTech)、ニュージャージー州ロッキーヒル(Rocky Hill,NJ))、または両方のサイトカインの存在下、10%FCSを添加したRPMI中で、40時間インキュベートした。
【0174】
結果
臍帯血のCD34+濃縮細胞を、サイトカインの非存在下、またはCXCR4発現およびSDF−1依存性遊走[Peled(1999年)Science 283巻:845−848頁]を誘導することが知られている、幹細胞因子、HGFまたは両方のサイトカインの組合せの存在下において、40時間培養した。その後細胞を、抗CXCR4および/または抗重合化アクチンとインキュベートし、PBSで頻繁に洗浄し、そしてファロイジン−TRITCおよびヤギ抗ウサギAlexa488とインキュベートした。サイトカインの非存在で培養されたCD34+細胞は、丸い形態を維持する一方で、SCFで培養した細胞は広がっており、そして分極していた。興味深くは、HGFは単独で、細胞表面からアクチンをベースとする突起部の形成を誘導し、そしてSCFとHGFの組合せは、SCFまたはHGF単独で観察されるもの(データは示されず)と異なる表現型であるラメリポジウム形成(lamellipodia formation)を促進した。最も重要なことに、これらの細胞骨格再編成は、CXCR4アップレギュレーション(図1A)およびSDF−1に対し機能的に増強された走化性応答(図1B)と関連があった。HGFは、ヒト前駆体単独の走化性を誘導しなかった(データは示されず)。しかし、HGFは、ヒト前駆体の運動性を増大させ、そしてSCFと相乗作用して、CXCR4発現およびSDF−1で誘導される方向性遊走(directional migration)の両方を可能とした。
【0175】
これらの予想外の所見は、損傷を受けた肝臓ストレス信号に応答したヒトCD34+細胞の運動性および方向性遊走を促進する上でのHGFにおける重要な役割を示唆する。
【0176】
照射を受けたマウスの骨髄および肝臓でのHGFmRNAの発現を増大した。
【0177】
実施例2
照射は、肝臓および骨髄でのHGFをアップレギュレートする
移植前に使用され、そしてSDF−1のような様々なサイトカインをアップレギュレートすることが知られている照射が、肝臓そして骨髄でのHGFのアップレギュレーションを誘導しうるかを探索した。
【0178】
NOD/SCIDマウスを、致死量近くまで照射した(375cGy)。非照射マウスから得たサンプルと一緒に、24および48時間後に採取された肝臓および骨髄サンプルを、Try試薬(Tryreagent)(MRC)でホモジナイズした。mRNAを抽出し、そして特異的プライマーを用いてRT−PCRにかけた。図2は、HGFの発現が、骨髄および肝臓両方において照射により増大されることを示す。
【0179】
実施例3
HGFはSCFと相乗作用して、臍帯血のCD34+細胞の再構築能力を増大させる。
【0180】
実施例1で示されるとおり、HGFは、ヒト前駆体の運動性を増大させ、そしてSCFと相乗作用して、CXCR4発現およびSDF−1で誘導される方向性遊走の両方を可能とした。
【0181】
HGFが、SCFと相乗作用して、造血前駆体の再構築能力を増大させうるか探査するために、別の実験を行った。したがって、ヒト臍帯血のCD34+細胞を、SCF、HGFまたは両方の組合せの存在下で培養した。NOD/SCIDマウスを、照射し(375cGy)、そして培養細胞で移植した。1ヶ月後、移植されたマウスの骨髄は、ヒト移植細胞のレベルを調査した。
【0182】
臍帯血のCD34+細胞を、36時間、10%FCS+RPMI中のSCF(50ng/ml)、HGF(100ng/ml)または両方の存在下で培養した。NOD/SCIDマウス(群当たり3匹)を、照射し(375cGy)、そして2×105細胞/マウスに由来する培養細胞で、24時間後移植した。1ヶ月後、抗ヒトCD45−FITC AbおよびFACSカリブル(FACSCalibur)を使用することによって、移植されたマウスの骨髄において、ヒト移植細胞のレベルを調査した。
【0183】
【表2】

【0184】
表2での結果は、HGFで処理された細胞のみが、コントロール細胞に類似して、そしてSCFで前処理された細胞より明らかに少ない範囲で、骨髄を再構築することを示す。対照的に、SCFおよびHGFで同時刺激された細胞は、HGFまたはSCF単独で処理された細胞と比較して再構築能力が増大されたことを示す。
【0185】
実施例4
HGFは、CCl4損傷に続いて、SDF−1に向かって遊走する骨髄細胞の能力、および前駆細胞可動化の速度を増大させる。
【0186】
実施例1で示されるとおり、幹細胞前駆体へのエキソビボHGF投与は、細胞表面におけるCXCR4発現を誘導し、そしてSDF−1への細胞の遊走を増強する。
【0187】
臓器損傷に続く再構築におけるHGFのインビボ投与の効果を知るために、以下の実験を行った。
【0188】
その目的のために、NOD/SCIDマウスを、CCl4単独で(損傷を誘導するために)、CCl4続いてHGFの組合せで、処理するか、または未処理(コントロール)のままにした。マウスを屠殺し、骨髄細胞を抽出し、そしてSDF−1へのこのような骨髄細胞の遊走を、インビトロでモニターした(図3)。
【0189】
NOD/SCIDマウスを、CCl4単独の単回注射(10ml CCl4)で、またはCCl4、続いて2日後に始まるHGFの4回の連続毎日注射(1.5mg/マウス、CCl4+HGF)で処理した。これらの処理マウスに由来する骨髄細胞によるSDF−1誘導性遊走を、非処理マウス(ctrl)から、またはG−SCF(300mg/Kg、5日連続)で処理したマウスに由来する骨髄細胞によるSDF−1誘導性遊走と比較した。
【0190】
CCl4処理マウスから単離された骨髄細胞は、コントロールの非処理マウスから得られる骨髄細胞で得られる遊走のレベルと類似のレベルのSDF−1依存性遊走を示した。対照的に、G−SCF処理マウスから単離された骨髄細胞は、コントロールの非処理マウスから得られる骨髄で観察される遊走のレベルと比較して、増強されたレベルのSDF−1依存性遊走を示した。予想外にも、HGFおよびCCl4での混合処理を受けるマウスから単離された骨髄細胞は、CCl4処理または未処理マウスから得られる骨髄細胞で観察された遊走のレベルに比較して、SDF−1依存性遊走のレベルが増強されたことを示した。
【0191】
HGF/CCl4処理されたマウスで観察される骨髄細胞の遊走能力における増大の点で、HGF/CCl4処理されたマウスが、その結果として骨髄可動化、血流中の原種前駆体細胞(progenitor precursor cells)のレベルを増大しうるであろうと仮説を立てた。
【0192】
この仮説を検証するために、循環中の原種前駆体の数が、CCl4処理で、CCl4およびHGF処理対未処理マウスでモニターされた(図3)。
【0193】
得られた結果は、CCl4処理による損傷または炎症の誘導が、血液循環での原種前駆体の数を増大させたことを示した。この結果は、CCl4処理による損傷または炎症の誘導が、骨髄から血液までであり、可動化についてのポジティブコントロールより少ない程度で、原種前駆体の可動化を促進することを示唆する(G−SCFを参照)。しかし、HGF投与との組合せでのCCl4処理により誘導される炎症または損傷は、血液循環での原種前駆体のレベルにおけるさらなる増大を誘導した。
【0194】
得られた結果は、細胞血液循環における前駆体レベルが増大したことにより、損傷を受けた臓器へ自家再構築(self repopulation)および/または自家移植(self engraftment)を促進するために、臓器炎症および/または損傷に罹っている対象へのHGFの投与を示唆する。
【0195】
明瞭さのため、別個の実施形態の内容で記述される本発明の特定の特徴は、単独の実施形態での組合わせでも提供されうることが予測される。反対に、簡潔さのため、単独の実施形態の内容で記述される本発明の種々の特徴は、別個に、またはいずれかの適切な従属の組合わせでも供されうる。
【0196】
本発明は、それの特定の実施形態と関連して記述されたが、多くの代替物、修飾および変異は、当業者に明らかであることは明白である。したがって、付随の請求項の概念および広範な範囲に入る全てのこのような代替物、修飾および変異を受け入れることが意図される。本明細書で明記される全ての出版物、特許および特許出願は、個別の出版物、特許または特許出願が、参照してここに組込まれることが特定に、そして個々に示される場合に、同じ範囲までそれらの全体に参照して明細書に組込まれる。さらに、本出願でのいずれの参照文献の引用および同一性は、かかる参照文献が、本発明に先行技術として利用可能であるという認可と見なされるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1A】図1Aは、フローサイトメトリーを使用して測定された場合の臍帯血の CD34+細胞中のCXCR4のサイトカイン誘導発現を描くグラフである。
【図1B】図1Bは、トランスウエル遊走アッセイを使用して測定された場合のHGF、SCFまたはそれの組合せの存在下で、CD34+細胞のSDF−1を介した方向性遊走(SDF-1 mediated directed migration)を描く棒グラフである。データは、遊走の百分率を表す。(a)文字は、SDF−1の不在下で自律遊走を示す。
【図2】図2は、照射を受けたマウスの骨髄および肝臓におけるHGF mRNAの発現が増大したことを示す。NOD/SCIDマウスに、致死的に照射(375cGy)した。非照射マウスから得られたサンプルと一緒に24時間および48時間後に採取した肝臓および骨髄サンプルを、Try試薬(Tryreagent)(MRC)中でホモジナイズさせた。mRNAを、標準プロトコールを使用して抽出させた。RNAを、RT−PCRにかけた。
【図3】図3は、HGFが、CCl4損傷に続いてSDF−1に向かって遊走する骨髄細胞の能力、および前駆細胞可動化の速度を増大することを示す。NOD/SCIDマウスを、CCl4(10ml、CCl4)単独の単回注入、またはCCl4、続いて2日後に始まるHGFの4回継続の毎日注入(1.5mg/マウス、CCl4+HGF)で処理した。これらのマウスの骨髄細胞によるSDF−1誘導遊走、および血流中の前駆体のレベルを、非処理マウス(コントロール)と、またはG−SCF(300mg/Kg、5日間連続)で処理したマウスと比較した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学誘引物質に対する幹細胞の感受性を増大させる方法であって、幹細胞の少なくとも1種の化学誘引物質受容体のレベルを増大させて、それにより化学誘引物質に対する幹細胞の感受性を増大させる能力があるHGFまたはそれの活性部分に、幹細胞をさらすことを包含する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の化学誘引物質受容体が、CXCR4である請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、幹細胞を、成長因子および/またはサイトカインにさらすことを包含する請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記成長因子および/またはサイトカインが、SCFおよびIL−6よりなる群から選択される請求項3記載の方法。
【請求項5】
幹細胞が、造血幹細胞である請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記造血幹細胞が、CD34+造血幹細胞である請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記造血幹細胞が、CD34+/CD38-/低造血幹細胞である請求項6記載の方法。
【請求項8】
造血幹細胞が、間葉幹細胞である請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記HGFまたはそれの前記活性部分に幹細胞をさらすことは、
(i)幹細胞中で該HGFまたはそれの該活性部分をコードするポリヌクレオチドを発現させ;および/または
(ii)その幹細胞を、該HGFまたはそれの該活性部分と接触させることによって達成される請求項1記載の方法。
【請求項10】
さらに、幹細胞をHGF−受容体にさらすことを包含する請求項1記載の方法。
【請求項11】
細胞または組織交換を必要とする障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、前記幹細胞の少なくとも1種の化学誘引物質受容体のレベルを増大させて、それによりその対象における細胞または組織交換を必要とする障害を治療する能力があるHGFまたはそれの活性部分で処理した治療上有効な量の幹細胞を供することを包含する方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の化学誘引物質受容体が、CXCR4である請求項11記載の方法。
【請求項13】
さらに、幹細胞の前記少なくとも1種の化学誘引物質受容体の該レベルを増大させる能力がある、成長因子および/またはサイトカインで、前記幹細胞を処置することを包含する請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記成長因子および/またはサイトカインが、SCFおよびIL−6よりなる群から選択される請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記幹細胞が、造血幹細胞である請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記造血幹細胞が、CD34+造血幹細胞である請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記造血幹細胞が、CD34+/CD38-/低造血幹細胞である請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記幹細胞が、間葉幹細胞である請求項11記載の方法。
【請求項19】
細胞または組織交換を必要とする障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、幹細胞の少なくとも1種の化学誘引物質受容体のレベルを増大させ、それにより細胞または組織交換を必要とする障害を治療する能力があるHGFまたはそれの活性部分の治療上有効な量を供することを包含する方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの化学誘引物質受容体が、CXCR4である請求項19記載の方法。
【請求項21】
さらに、幹細胞の前記少なくとも1種の化学誘引物質受容体の該レベルを増大させる能力のある、成長因子および/またはサイトカインの治療上有効な量を、前記それを必要とする対象に供することを包含する請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記成長因子および/またはサイトカインが、SCFおよびIL−6よりなる群から選択される請求項21記載の方法。
【請求項23】
さらに、前記それを必要とする対象に、幹細胞を供することを包含する請求項19〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記造血幹細胞が、CD34+造血幹細胞である請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記造血幹細胞が、CD34+/CD38-/低造血幹細胞である請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記幹細胞が、間葉幹細胞である請求項19記載の方法。
【請求項27】
標的組織に対する幹細胞のホーミングを増大させるための医薬品の製造のためのHGFまたはそれの活性部分の用途。
【請求項28】
前記幹細胞が、造血幹細胞である請求項27記載の用途。
【請求項29】
前記造血幹細胞が、CD34+造血幹細胞である請求項28記載の用途。
【請求項30】
前記造血幹細胞が、CD34+/CD38-/低造血幹細胞である請求項29記載の用途。
【請求項31】
前記幹細胞が、間葉幹細胞である請求項27記載の用途。
【請求項32】
前記標的組織が、骨髄、血管、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、神経系、皮膚、骨および骨格筋よりなる群から選択される請求項27記載の用途。
【請求項33】
さらに、成長因子および/またはサイトカインを包含する請求項27〜32のいずれかに記載の用途。
【請求項34】
前記成長因子および/またはサイトカインは、SCFおよびIL−6より構成される群から選択される請求項33記載の用途。
【請求項35】
該成長因子が、SCFである請求項34記載の用途。
【請求項36】
移植に適した幹細胞を産生させる方法であって、
(a)幹細胞を採取すること、
(b)該幹細胞を、HGFまたはそれの活性部分にさらすこと、
(c)所定の閾値より上のCXCR4レベルを有する幹細胞を単離して、それにより、移植に適した幹細胞を産生させること、
を包含する方法。
【請求項37】
前記幹細胞を採取することが、
(i)幹細胞可動化手段;および/または
(ii)外科的手段によって達成される請求項36記載の方法。
【請求項38】
さらに、CXCR4の発現を増大させる能力のある成長因子および/またはサイトカインに前記幹細胞をさらすことを包含する請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記成長因子および/またはサイトカインが、SCFおよびIL−6よりなる群から選択される請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記幹細胞が、造血幹細胞である請求項36記載の方法。
【請求項41】
前記造血幹細胞が、CD34+造血幹細胞である請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記造血幹細胞が、CD34+/CD38-/低造血幹細胞である請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記造血幹細胞が、間葉幹細胞である請求項36記載の方法。
【請求項44】
前記HGFまたはそれの該活性部分に前記幹細胞をさらすことが、
(i)該幹細胞中で該HGFまたはそれの活性部分をコードするポリヌクレオチドを発現させ;および/または
(ii)該幹細胞を、該HGFまたはそれの活性部分と接触させることによって達成される請求項36記載の方法。
【請求項45】
前記所定の閾値より上のCXCR4レベルを有する幹細胞を単離することが、FACSによって達成される請求項36記載の方法。
【請求項46】
さらに、工程(c)に続いて前記所定の閾値より上のCXCR4レベルを有する前記幹細胞のホーミング能力を測定することを包含する請求項45記載の方法。
【請求項47】
HGFまたはそれの活性部分をコードする第一のポリヌクレオチド配列、および細胞中の該ポリヌクレオチドの発現を指示する誘導性シス作用調節因子、および前記第一のポリヌクレオチド配列に翻訳で融合されるべき第二のポリヌクレオチド配列を包含し、前記第二のポリヌクレオチド配列は、前記細胞の中から外へ前記HGFまたはそれの該活性部分の分泌を指示する能力のあるシグナルペプチドをコードするものである核酸構築物を包含する幹細胞。
【請求項48】
さらに、IL−6およびSCFよりなる群から選択されるサイトカインまたは成長因子をコードする第三のポリヌクレオチド配列を包含する請求項47記載の幹細胞。
【請求項49】
SCFである第三のポリヌクレオチドを包含する請求項48記載の幹細胞。
【請求項50】
前記幹細胞が、造血幹細胞である請求項47〜49のいずれかに記載の幹細胞。
【請求項51】
HGFまたはそれの活性部分をコードする内因性ポリヌクレオチドを発現するように形質転換された幹細胞を包含する細胞株。
【請求項52】
前記幹細胞が、造血幹細胞である請求項50または51記載の細胞株。
【請求項53】
前記造血幹細胞が、CD34+造血幹細胞である請求項52記載の細胞株。
【請求項54】
前記造血幹細胞が、CD34+/CD38-/低造血幹細胞である請求項53記載の細胞株。
【請求項55】
前記幹細胞が、間葉幹細胞である請求項52記載の細胞株。
【請求項56】
細胞培養物であって、
(i)幹細胞;および
(ii)前記幹細胞の少なくとも1種の化学誘引物質受容体のレベルを増大させる能力のあるHGFまたはそれの活性部分のそれぞれを発現するフィーダー細胞を包含する細胞培養物。
【請求項57】
前記幹細胞が、造血幹細胞である請求項56記載の細胞培養物。
【請求項58】
前記造血幹細胞が、CD34+造血幹細胞である請求項57記載の細胞培養物。
【請求項59】
前記造血幹細胞が、CD34+/CD38-/低造血幹細胞である請求項58記載の細胞培養物。
【請求項60】
前記幹細胞が、間葉幹細胞である請求項56記載の細胞培養物。
【請求項61】
化学誘引物質に対する幹細胞の感受性を増大させる方法であって、
幹細胞の内因性HGFまたはそれの活性部分の発現または活性をアップレギュレートして、それにより化学誘引物質に対する幹細胞の感受性を増大させることを包含する方法。
【請求項62】
幹細胞運動性を増大させる方法であって、幹細胞の運動性を増大させる能力があるHGFまたはそれの活性部分に、幹細胞をさらすことを包含する方法。
【請求項63】
さらに、成長因子および/またはサイトカインに幹細胞をさらすことを包含する請求項62記載の方法。
【請求項64】
前記成長因子および/またはサイトカインが、SCFおよびIL−6よりなる群から選択される請求項63記載の方法。
【請求項65】
サイトカインが、SCFである請求項64記載の方法。
【請求項66】
前記幹細胞が、造血幹細胞である請求項62記載の方法。
【請求項67】
前記造血幹細胞が、CD34+造血幹細胞である請求項66記載の方法。
【請求項68】
前記造血幹細胞が、CD34+/CD38-/低造血幹細胞である請求項67記載の方法。
【請求項69】
幹細胞が、間葉幹細胞である請求項62記載の方法。
【請求項70】
前記HGFまたはそれの該活性部分に幹細胞をさらすことが、
(i)幹細胞中の該HGFまたはそれの該活性部分をコードするポリヌクレオチドを発現させ;および/または
(ii)該HGFまたはそれの該活性部分と、幹細胞を接触させることによって達成される請求項62記載の方法。
【請求項71】
臓器炎症および/または損傷に罹っている対象における損傷臓器に対する自家再増殖および/または自家移植を促進する方法であって、幹細胞の運動性を増大させる能力があるHGFまたはそれの活性部分の投与を包含する方法。
【請求項72】
さらに、SCFを包含する、請求項71記載の自家再増殖および/または自家移植を促進する方法。
【請求項73】
幹細胞およびSCFの運動性を増大させる能力があるHGFまたはそれの活性部分を包含する医薬組成物。
【請求項74】
細胞または組織交換を必要とする障害を治療するための請求項73記載の医薬組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−522604(P2006−522604A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507603(P2006−507603)
【出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000315
【国際公開番号】WO2004/090121
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
ウィンドウズ
【出願人】(500018608)イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド (35)
【Fターム(参考)】